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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1218046
審判番号 不服2009-5416  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-12 
確定日 2010-06-10 
事件の表示 特願2002-370296「パチンコ機の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月15日出願公開、特開2004-195095〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第一、手続きの経緯
本願は、平成14年12月20日の出願であって、平成20年10月29日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年12月22日付けで手続補正がなされ、平成21年2月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月12日付けで拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同年4月10日付け手続補正書によって明細書の一部が補正されたものである。
なお、当審において、平成21年12月25日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、平成22年2月25日に回答書が提出されている。

第二、平成21年4月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年4月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正前・後の本願発明
本件補正は、補正前(平成20年12月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲)の、
「【請求項1】 入賞部品への球の入賞を検出した入賞検出信号の入力で当該入賞検出信号に対応する制御処理を実行し、実行した制御処理の結果で動作部品を駆動するパチンコ機の制御装置において、
上記制御装置は、スピーカの放出する音や音声を制御する音制御装置と、表示灯の点灯パターンを制御する表示灯制御装置と、上記音制御装置と上記表示灯制御装置とに対する制御処理を行う主制御装置とを有し、
上記音制御装置は、音処理部と音駆動部とに機能分割されて別体として構成され、
上記表示灯制御装置は、表示灯処理部と表示灯駆動部とに機能分割されて別体として構成され、
上記音処理部と上記表示灯処理部とは、制御処理部として遊技盤に取り付けられる単一の盤側回路基板に構成され、
上記音駆動部と上記表示灯駆動部とは、駆動部として遊技機枠に取り付けられる単一の枠側回路基板に構成されて成る
ことを特徴とするパチンコ機の制御装置。」
を以下のように補正するものである(当審で補正部分に下線を付与した)。

「【請求項1】 入賞部品への球の入賞を検出した入賞検出信号の入力で当該入賞検出信号に対応する制御処理を実行し、実行した制御処理の結果で動作部品を駆動するパチンコ機の制御装置において、
上記制御装置は、スピーカの放出する音や音声を制御する音制御装置と、表示灯の点灯パターンを制御する表示灯制御装置と、上記音制御装置と上記表示灯制御装置とに対する制御処理を行う主制御装置とを有し、
上記音制御装置は、音処理部と音駆動部とに機能分割されて別体として構成され、
上記表示灯制御装置は、表示灯処理部と表示灯駆動部とに機能分割されて別体として構成され、
上記音処理部と上記表示灯処理部とは、制御処理部として単一の盤側回路基板に構成されて、遊技盤に取り付けられ、
上記音駆動部と上記表示灯駆動部とは、駆動部として単一の枠側回路基板に構成されて、遊技機枠に取り付けられて成る
ことを特徴とするパチンコ機の制御装置。」

要するに、本件補正は、
イ)補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「音処理部と表示灯処理部」について、「制御処理部として遊技盤に取り付けられる単一の盤側回路基板に構成され、」を「制御処理部として単一の盤側回路基板に構成されて、遊技盤に取り付けられ、」と補正し、
ロ)同「音駆動部と表示灯駆動部」について、「駆動部として遊技機枠に取り付けられる単一の枠側回路基板に構成されて成る」を「駆動部として単一の枠側回路基板に構成されて、遊技機枠に取り付けられて成る」と補正するものである。

(2)補正の目的について
本件補正の前後において、「音処理部と表示灯処理部」が「単一の盤側回路基板に構成され」ること及び「遊技盤に取り付けられ」ることに何ら技術的な変更点は認められず、また「音駆動部と表示灯駆動部」が「単一の枠側回路基板に構成され」ること及び「遊技機枠に取り付けられ」ることに何ら技術的な変更点は認められない。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項各号に規定する、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものでないことは明らかであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


なお、審判請求人は上記回答書の「2.目的外補正について」の欄において、以下の旨の主張をしている。

補正後の請求項1の「上記音処理部と上記表示灯処理部とは、制御処理部として単一の盤側回路基板に構成されて、遊技盤に取り付けられ」は、「音処理部と表示灯処理部」とが、「制御処理部として単一の盤側回路基板に構成されて」、その後に「遊技盤に取り付けられる」という取り付けの手順を特定しており、「上記音駆動部と上記表示灯駆動部とは、駆動部として単一の枠側回路基板に構成されて、遊技機枠に取り付けられ」についても同様であり(審決注 即ち「音駆動部と表示灯駆動部」とが、「駆動部として単一の枠側回路基板に構成されて」、その後に「遊技機枠に取り付けられる」という取り付けの手順を特定しており)、本件補正は、特許請求の範囲を限定的に縮小したもので、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものではない。

そこで、本件補正が補正要件を満たしているかどうかを検討する。
1)本願の出願当初の明細書における「音処理部と表示灯処理部」と「盤側回路基板」、「遊技盤」との関連構成及び「音駆動部と表示灯駆動部」と「枠側回路基板」、「遊技機枠」との関連構成に係る記載を集めると(下線は当審で付与したもの)、
1a)【0013】には「・・・音制御装置3の音処理部5および表示灯制御装置4の表示灯処理部7は図2の遊技盤9に取り付けられる単一の盤側回路基板31に構成される。・・・音駆動部6および表示灯駆動部8は図2の遊技機枠13に取り付けられる単一の枠側回路基板41に構成される。・・・」と、
1b)【0016】には「・・・本実施形態のように、音駆動部6と表示灯駆動部8とを遊技機枠13に取り付ければ、遊技盤9を交換する場合に、音駆動部6と表示灯駆動部8との取り外しおよび取り付け作業が不要であるので、遊技盤9を交換する作業がやり易くなる。」と、
1c)【0017】には「・・・また、音処理部5と表示灯処理部7とが単一の盤側回路基板31に構成されることで、音処理部5と表示灯処理部7とが盤側回路基板31に類似する別々の回路基板に構成された場合に比べ、単一の盤側回路基板31を遊技盤9に取り付ければよいので、盤側回路基板31の取り付け作業や取り外し作業が容易になる。」と、それぞれ記載されているから、
1d)本願の出願当初の明細書には、
音処理部5および表示灯処理部7について「音制御装置3の音処理部5および表示灯制御装置4の表示灯処理部7は遊技盤9に取り付けられる単一の盤側回路基板31に構成されることで、単一の盤側回路基板31を遊技盤9に取り付ければよいので、盤側回路基板31の取り付け作業や取り外し作業が容易になる。」との技術が記載され、
音駆動部6および表示灯駆動部8について「音駆動部6および表示灯駆動部8は遊技機枠13に取り付けられる単一の枠側回路基板41に構成される。」並びに「音駆動部6と表示灯駆動部8とを遊技機枠13に取り付ければ、遊技盤9を交換する作業がやり易くなる。」との技術が記載されていると認められる。
2)そうすると、本願の出願当初の明細書には、
2a)「音処理部5と表示灯処理部7とが、制御処理部として単一の盤側回路基板に構成されて、その後に遊技盤に取り付けられる」技術及び「音駆動部6と表示灯駆動部8とが、単一の枠側回路基板41に構成され、かつ音駆動部6と表示灯駆動部8とが遊技機枠13に取り付けられる」技術は記載されているものの、
2b)「音駆動部と表示灯駆動部とが、駆動部として単一の枠側回路基板に構成されて、その後に遊技機枠に取り付けられる」技術は記載されていない。
3)したがって、補正後の請求項1の「上記音駆動部と上記表示灯駆動部とは、駆動部として単一の枠側回路基板に構成されて、遊技機枠に取り付けられ」を「音駆動部と表示灯駆動部とが、駆動部として単一の枠側回路基板に構成されて、その後に遊技機枠に取り付けられる」と解釈することは「新規事項の追加」に該当し、本件補正は却下されることとなる。そして、「新規事項の追加」に該当する補正が「特許請求の範囲の減縮」に該当しないことは明らかであるから、審判請求人の「本件補正は、特許請求の範囲を限定的に縮小したもので、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものではない」旨の主張を採用することはできない。


第三、本願発明について
平成21年4月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明は、上記平成20年12月22日付けで補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 入賞部品への球の入賞を検出した入賞検出信号の入力で当該入賞検出信号に対応する制御処理を実行し、実行した制御処理の結果で動作部品を駆動するパチンコ機の制御装置において、
上記制御装置は、スピーカの放出する音や音声を制御する音制御装置と、表示灯の点灯パターンを制御する表示灯制御装置と、上記音制御装置と上記表示灯制御装置とに対する制御処理を行う主制御装置とを有し、
上記音制御装置は、音処理部と音駆動部とに機能分割されて別体として構成され、
上記表示灯制御装置は、表示灯処理部と表示灯駆動部とに機能分割されて別体として構成され、
上記音処理部と上記表示灯処理部とは、制御処理部として遊技盤に取り付けられる単一の盤側回路基板に構成され、
上記音駆動部と上記表示灯駆動部とは、駆動部として遊技機枠に取り付けられる単一の枠側回路基板に構成されて成る
ことを特徴とするパチンコ機の制御装置。」(以下、「本願発明」という。)

第四、刊行物に記載された発明
刊行物1;特開2002-126196号公報
(平成14年5月8日公開)
刊行物A;特開2002-315932号公報
(平成14年10月29日公開)
刊行物B;特開2001-300017号公報
刊行物C;特開2002-224295号公報
(平成14年8月13日公開)
刊行物D;特開2002-219239号公報
(平成14年8月6日公開)
刊行物E;特開2002-191821号公報
(平成14年7月10日公開)

原査定の拒絶理由通知に引用され、本願出願前に頒布された特開2002-126196号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には以下の記載がある。
(1a)「【0007】そこで、本発明は、遊技機本体に対して交換部品が交換可能に取り付けられた構造の遊技機において、機種変更に伴って交換が必要となる部品点数を減少させることを目的とする。」、
(1b)「【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機1を正面からみた正面図である。・・・」、
(1c)「【0023】遊技盤6には、複数の入賞口19,24が設けられ、遊技球のそれぞれの入賞口19,24への入賞は、対応して設けられている入賞口スイッチ19a,19b,24a,24bによって検出される。・・・
【0024】また、遊技領域7の外側の左右上部のガラス扉枠2には、効果音や音声を発する2つのスピーカ27が設けられている。遊技領域7の外周のガラス扉枠2には、天枠ランプ28a、左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28cが設けられている。」、
(1d)「【0031】遊技機裏面側では、可変表示部9を制御する図柄制御基板を含む可変表示制御ユニット29、遊技制御用マイクロコンピュータ等が搭載された遊技制御基板(主基板)31が設置されている。また、球払出制御を行う払出制御用マイクロコンピュータ等が搭載された払出制御基板37、およびモータの回転力を利用して打球を遊技領域7に発射する打球発射装置が設置されている。さらに、遊技盤6に設けられているセンター飾りLED60a,60b,60c、大入賞口内飾りLED61a、大入賞口左飾りLED61b、大入賞口右飾りLED61c、始動記憶表示器18およびゲート通過記憶表示器41に信号を送るためのランプ制御基板35、スピーカ27からの音発生を制御するための音制御基板70および打球発射装置を制御するための発射制御基板91も設けられている。」、
(1e)「【0033】さらに、枠側(本体側)に設けられている天枠ランプ60a、左枠ランプ60b、右枠ランプ60c、賞球ランプ51および球切れランプ52に信号を送るための枠側ランプ基板35B、および枠側に設けられているスピーカ27に信号を送るための枠側音基板70Bも設けられている。図3は、遊技機裏面に設置されている各基板の設置状況を示す説明図である。図3(A)に示すように、主基板31、ランプ制御基板35、音制御基板70および図柄制御基板80は遊技盤6に取り付けられている。なお、可変表示制御ユニット29も遊技盤6に取り付けられている。また、図3(B)に示すように、払出制御基板37、発射制御基板91、電源基板910、枠側ランプ基板35(審決注;明細書全体の記載から見て「35」は「35B」の誤記と認められる。)および枠側音基板70Bは、遊技枠側の例えば機構板に取り付けられている。
【0034】図4は、主基板31およびその他の基板における回路構成の一例を示すブロック図である。図4には、遊技盤6に設けられているランプ制御基板35、音制御基板70および図柄制御基板80と、枠側に設けられている払出制御基板37、発射制御基板91、枠側ランプ基板35Bおよび枠側音基板70Bも示されている。なお、以下、払出制御基板37、ランプ制御基板35、音制御基板70および図柄制御基板80を電気部品制御基板ということがある。また、電気部品制御基板に搭載されているマイクロコンピュータを含む制御手段を電気部品制御手段ということがある。」、
(1f)「【0040】なお、この実施の形態では、ランプ制御基板35に搭載されているランプ制御用CPUおよびその周辺回路(ROM、RAM、I/Oポート等)で構成されるランプ制御手段が、遊技盤に設けられているセンター飾りLED60a,60b,60c、大入賞口内飾りLED61a、大入賞口左飾りLED61b、大入賞口右飾りLED61c、始動記憶表示器18およびゲート通過記憶表示器41の表示制御を行う。枠側に設けられている天枠ランプ60a、左枠ランプ60b、右枠ランプ60c、賞球ランプ51および球切れランプ52の表示制御はランプ制御手段によって行われるが、それらのランプ・LEDへの信号は、枠側ランプ基板35Bに搭載されている出力ドライバ回路(出力手段)を介して出力される。同様に、スピーカ27から発せられる音の制御は音制御基板70に搭載されている音声制御用CPUおよびその周辺回路(ROM、RAM、I/Oポート等)で構成される音制御手段によってなされるが、スピーカ27への信号は、枠側音基板70Bに搭載されている出力ドライバ回路(出力手段)を介して出力される。」、
(1g)「【0043】図5は、主基板31、ランプ制御基板35および枠側ランプ基板35Bにおける信号送受信部分を示すブロック図である。この実施の形態では、遊技盤に設けられているセンター飾りLED60a,60b,60c、大入賞口内飾りLED61a、大入賞口左飾りLED61b、大入賞口右飾りLED61c、始動記憶表示器18およびゲート通過記憶表示器41の点灯/消灯と、枠側に設けられている天枠ランプ60a、左枠ランプ60b、右枠ランプ60c、賞球ランプ51および球切れランプ52の点灯/消灯とを示すランプ制御コマンドが主基板31からランプ制御基板35に出力される。また、始動記憶表示器18およびゲート通過記憶表示器41の点灯個数を示すランプ制御コマンドも主基板31からランプ制御基板35に出力される。」、
(1h)「【0051】この実施の形態では、枠側に設けられている発光体(この例では、天枠ランプ60a、左枠ランプ60b、右枠ランプ60c、賞球ランプ51および球切れランプ52)の点灯/消灯を示す信号は、電気部品制御手段としてのランプ制御手段が搭載されているランプ制御基板35とは別の枠側ランプ基板35Bに搭載されている出力手段としての枠側出力ドライバ回路357から出力される。枠側ランプ基板35Bは、遊技盤6ではなく枠側に取り付けられている。従って、遊技盤6のコストを低減させることができる。なお、遊技盤6に設けられている発光体および枠側に設けられている発光体を点灯させるか消灯させるかの制御は、ともに、ランプ制御基板35に搭載されているランプ制御用CPU351によってなされている。」、
(1i)「【0058】図7は、主基板31における音制御コマンドの信号送信部分と音制御基板70および枠側音基板70Bの構成例を示すブロック図である。この実施の形態では、遊技進行に応じて、遊技領域7の外側に設けられているスピーカ27の音出力を指示するための音制御コマンドが、主基板31から音制御基板70に出力される。」、
(1j)「【0063】スピーカ27には、+12V電圧が供給されるが、+12V電圧は電源基板910で生成され、主基板31、音制御基板70および枠側音基板70Bを介してスピーカ27に供給される。枠側音基板70Bには、音制御基板70から入力された+12V電圧のノイズを除去するためのノイズ除去回路706も搭載されている。・・・
【0064】この実施の形態では、枠側に設けられている音出力手段(この例では、スピーカ27)から出力される音を示す信号は、電気部品制御手段としての音制御手段が搭載された音制御基板70とは別の枠側音基板70Bに搭載されている出力手段としての音量増幅回路704から出力される。枠側音基板70Bは、遊技盤6ではなく枠側に取り付けられている。従って、遊技盤6のコストを低減させることができる。」。

なお、上記(1d)乃至(1h)においては符号「60a,60b,60c」の用語として「センター飾りLED60a,60b,60c」と「天枠ランプ60a、左枠ランプ60b、右枠ランプ60c」とを重複して使用されているが、上記(1c)における「【0024】・・・天枠ランプ28a、左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28c・・・」との記載及び図面(特に【図1】、【図4】、【図5】)の記載に基づき、正しくは「センター飾りLED60a,60b,60c」及び「天枠ランプ28a、左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28c」と認め、以下の記載はこれによるものとした。

したがって、上記の記載事項を併せると、引用刊行物1には、
「 遊技盤6には複数の入賞口19,24が設けられ、遊技球のそれぞれの入賞口19,24への入賞は、対応して設けられている入賞口スイッチ19a,19b,24a,24bによって検出され、
遊技領域7の外側の左右上部のガラス扉枠2には効果音や音声を発する2つのスピーカ27が設けられ、遊技領域7の外周のガラス扉枠2には天枠ランプ28a、左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28cが設けられている パチンコ遊技機1において、
遊技機裏面側では、主基板31、ランプ制御基板35、音制御基板70が遊技盤6に取り付けられ、
天枠ランプ28a、左枠ランプ28b、右枠ランプ28cに信号を送るための枠側ランプ基板35Bおよびスピーカ27に信号を送るための枠側音基板70Bは、遊技枠側の例えば機構板に取り付けられ、
遊技盤に設けられている発光体(センター飾りLED60a,60b,60c、大入賞口内飾りLED61a、大入賞口左飾りLED61b、大入賞口右飾りLED61c、始動記憶表示器18およびゲート通過記憶表示器41)の点灯/消灯と、枠側に設けられている発光体(天枠ランプ28a、左枠ランプ28b、右枠ランプ28c、賞球ランプ51および球切れランプ52)の点灯/消灯とを示すランプ制御コマンドが主基板31からランプ制御基板35に出力され、
遊技盤6に設けられている発光体および枠側に設けられている発光体を点灯させるか消灯させるかの表示制御は、ともに、ランプ制御基板35に搭載されているランプ制御用CPU351およびその周辺回路で構成されるランプ制御手段によってなされ、
枠側に設けられている発光体の点灯/消灯を示す信号は、ランプ制御手段が搭載されているランプ制御基板35とは別の枠側ランプ基板35Bに搭載されている出力手段としての枠側出力ドライバ回路357から出力され、
遊技進行に応じて、遊技領域7の外側の枠側に設けられているスピーカ27の音出力を指示するための音制御コマンドが、主基板31から音制御基板70に出力され、音制御基板70に搭載されている音声制御用CPUおよびその周辺回路で構成される音制御手段によって音の制御はなされ、スピーカ27から出力される音を示す信号は、音制御手段が搭載された音制御基板70とは別の枠側音基板70Bに搭載されている出力ドライバ回路を介して出力され、
+12V電圧は電源基板910で生成され、主基板31、音制御基板70および枠側音基板70Bを介してスピーカ27に供給され、
機種変更に伴って交換が必要となる部品点数を減少させることを目的とする、パチンコ遊技機1。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

特開2002-315932号公報(以下、「周知刊行物A」という。)には、以下の記載がある。
(A1)「【0026】裏機構板30の開口部30aには、遊技盤5の裏側に装着された裏カバー37と、・・・とが夫々嵌合されている。・・・その裏カバー37の上端部の内部(前側)に装着された基板ケース40(図5参照)に図柄兼サウンド制御基板41が収納されている。この図柄兼サウンド制御基板41は、後述する図柄制御手段60を構成する図柄制御基板と、サウンド制御手段73を構成するサウンド制御基板とを同一基板にユニット化して設けられたものである。」、
(A2)「【0027】このように、図柄制御基板とサウンド制御基板とが同一基板にユニット化されているため、・・・」。

特開2001-300017号公報(以下、「周知刊行物B」という。)には、以下の記載がある。
(B1)「【0021】裏カバー33は、図2に示すように、遊技盤4に装着された液晶表示手段16等の遊技部品を裏側から覆うためのもので、遊技盤4に着脱自在に固定されている。裏カバー33には、・・・ランプ制御基板45を収納するランプ制御基板ケース46と、音声制御基板47を収納する音声制御基板ケース48とが着脱自在に装着されている。・・・」、
(B2)「【0035】ランプ制御基板45には、ランプ制御手段60が設けられている。ランプ制御手段60は、ランプ制御基板45に装着されたCPU、ROM、RAM等により構成され、・・・」、
(B3)「【0036】音声制御基板47には、音声制御手段61が設けられている。音声制御手段61は、音声制御基板47に装着されたCPU、ROM、RAM等により構成され、・・・」、
(B4)「【0081】更に実施形態では、主制御基板43に主遊技制御手段55を、ランプ制御基板45にランプ制御手段60を、音声制御基板47に音声制御手段61を、払い出し制御基板52に払い出し制御手段62を夫々設け、各制御手段55,60,61,62 をその制御機能別に別々の基板に設ける別基板構成とする場合を例示しているが、必ずしも別基板構成とする必要はなく、例えば主遊技制御手段55、ランプ制御手段60及び/又は音声制御手段61を共通基板に設ける等、制御手段55,60,61,62 の一部を共通の基板に設けても良い。」。

特開2002-224295号公報(以下、「周知刊行物C」という。)には、以下の記載がある。
(C1)「【0015】・・・また打撃槌15、発射モータ16は前枠2の裏側に装着されており、例えば発射モータ16の裏側には、発射制御基板18を収納する発射基板ケース19が着脱自在に装着されている。」、
(C2)「【0055】発射制御基板18には、発射制御手段124と回収制御手段123とが設けられている。発射制御手段124は、各ゲーム毎に適当な休止時間をおいて発射手段10の発射動作を制御するためのもので、・・・」、
(C3)「【0056】回収制御手段123は、ゲームの開始前に回収手段80を作動させて規定数の遊技球の回収処理を行うためのもので、・・・」、
(C4)「【0070】また、回収制御手段123を、主制御手段114が設けられた主制御基板52とは別の発射制御基板18上に設けているため、主制御基板52の構成の複雑化、大型化等による製造コストの増加を抑えることができ、また故障時等の基板交換時のコストも低く抑えることができる。更に、回収制御手段123を、制御動作が回収制御手段123の制御動作と密接に関連する発射制御手段124と同じ発射制御基板18上に設けているため、装置構成の簡略化による更なるコスト低減が可能である。」。

特開2002-219239号公報(以下、「周知刊行物D」という。)には、以下の記載がある。
(D1)「【0033】・・・さらに、機構板36の下部には、モータの回転力を利用して打球を遊技領域7に発射する打球発射装置34と、遊技効果ランプ・LED28a,28b,28c、賞球ランプ51および球切れランプ52に信号を送るためのランプ制御基板35が設置されている。」、
(D2)「【0214】なお、表示制御基板80、ランプ制御基板35、および音制御基板70を同一の基板で構成して、一つの基板で、表示、ランプ、および音を制御する構成とした場合であっても、上記のように表示、ランプ、および音をそれぞれ独立させた予告演出、あるいは同期させた予告演出を行うことが可能である。」。

特開2002-191821号公報(以下、「周知刊行物E」という。)には、以下の記載がある。
(E1)「【0008】単一基板4はプリント基板のような基板であって、遊技制御全般を主制御、図柄制御、音制御、表示灯制御、球払出制御及び球発射制御等の機能分割毎に対応する複数の領域15;16;17;18に区分され、それらの領域15?18毎に機能分割された制御部品を実装する。単一基板4は例えば主制御、図柄制御、音制御及び表示灯制御等に対応する4つの領域15?18に区分され、各領域15?18の区分たる境界を単一基板4の板面よりV字形、U字形、角形、多角形等に切込まれた溝19;20;21で外部より視認し得るように形成し、四隅に取付孔22を有する。溝19?21は単一基板4を分断(分割)してはいない。」、
(E2)「【0009】最も面積の広い領域15には図外の主制御用のCPU、ROM、RAM等の半導体部品やそれ以外の電気部品を実装し、中程度の面積の一方の領域16には図外の図柄制御用のCPU、ROM、RAM、半導集積回路等の半導体部品やそれ以外の電気部品を実装し、中程度の面積の他方の領域17には図外の音制御用のCPU、ROM、RAM、半導集積回路等の半導体部品やそれ以外の電気部品を実装し、最も面積の狭い領域18には図外の表示灯制御用のCPU、ROM、RAM、半導集積回路等の半導体部品やそれ以外の電気部品を実装する。尚、上記各領域に実装された電気部品は図2に仮想線Lで模式的に図示した。」、
(E3)「【0012】図3を参照し、前記遊技制御装置1をパチンコ機に搭載した構造について説明する。遊技制御装置1は遊技機枠体41に設けられた電源装置45から供給される電源でCPU、ROM、RAM、半導集積回路等の半導体部品やそれ以外の電気部品による電気的な制御動作を行うものであって、遊技機枠体41に取付けられる枠側遊技制御装置42と遊技機枠体41に装着される遊技盤43に取付けられる盤側遊技制御装置44とにより構成される。枠側遊技制御装置42は遊技盤43の種類が異なる場合でも共通に使用可能である遊技の種類との関連が浅い制御としての球払出制御や球発射制御等を備え、盤側遊技制御装置44は遊技盤43の種類が異なる場合には交換が必要である遊技の種類との関連が深い制御としての主制御、図柄制御、音制御及び表示灯制御等を備える。遊技盤43と遊技機枠体41とに搭載される制御装置が個別に単一体として集約でき、遊技盤43を交換する場合でも枠側遊技制御装置42はそのまま使用可能である。・・・」、
(E4)「【0013】主制御は遊技全般を制御するものであり、球払出制御、球発射制御、図柄制御、音制御及び表示灯制御は主制御から一方向に出力されるコマンドにより動作する従制御である。例えば、図1に示す遊技制御装置1を盤側遊技制御装置44とすれば、枠側遊技制御装置42は図1に示すベース2とカバー3とからなる容器に収納された単一基板4において、図1の溝19?21で区分された領域15?18の数を2つとみなし、一方の領域に球払出制御用のCPU、ROM、RAM等の半導体部品やそれ以外の電気部品を実装し、他方の領域に球発射制御用のCPU、ROM、RAM等の半導体部品やそれ以外の電気部品を実装するものと読替えれば容易に実施できることは理解できるであろう。」。

第五、本願発明と引用発明1との比較・検討
(五a)引用発明1の「複数の入賞口19,24」は、本願発明の「入賞部品」に相当し、以下同様に、「遊技球」は「球」に、「パチンコ遊技機1」は「パチンコ機」に、「スピーカ27」は「スピーカ」に、「発光体」は「表示灯」に、「主基板31」は「主制御装置」に、「音制御基板70」は「音処理部」に、「枠側音基板70B」は「音駆動部」に、「ランプ制御基板35」は「表示灯処理部」に、「枠側ランプ基板35B」は「表示灯駆動部」に、「遊技盤6」は「遊技盤」に、「遊技枠」は「遊技機枠」に、それぞれ相当する。
(五b)入賞口及び入賞口スイッチを備えたパチンコ遊技機が入賞検出信号に基づき作動する制御装置を有し、該制御装置の制御内容に対応して発音や発光などが行われパチンコ遊技が進行することはパチンコ遊技機の分野においては技術常識である。そして、引用発明1は「遊技進行に応じて、スピーカ27の音出力を指示するための音制御コマンドが、主基板31から音制御基板70に出力され、音制御基板70に搭載されている音制御手段によって音の制御はなされ、スピーカ27から出力される音を示す信号は、音制御手段が搭載された音制御基板70とは別の枠側音基板70Bに搭載されている出力手段から出力され」るものであり、また「ランプ制御コマンドが主基板31からランプ制御基板35に出力され」、「発光体を点灯させるか消灯させるかの表示制御は、ランプ制御基板35に搭載されているランプ制御手段によってなされ」、「枠側に設けられている発光体の点灯/消灯を示す信号は、ランプ制御手段が搭載されているランプ制御基板35とは別の枠側ランプ基板35Bに搭載されている出力手段から出力され」るものであるから、引用発明1が本願発明の「入賞部品への球の入賞を検出した入賞検出信号の入力で当該入賞検出信号に対応する制御処理を実行し、実行した制御処理の結果で動作部品を駆動するパチンコ機の制御装置」、「スピーカの放出する音や音声を制御する音制御装置と、表示灯の点灯パターンを制御する表示灯制御装置と、上記音制御装置と上記表示灯制御装置とに対する制御処理を行う主制御装置とを有する、制御装置」、「音処理部と音駆動部とに機能分割されて別体として構成される、音制御装置」、「表示灯処理部と表示灯駆動部とに機能分割されて別体として構成される、表示灯制御装置」に相当する事項を有していることは技術常識から明らかである。
(五c)引用発明1の「音制御基板70」は「音声制御用CPUおよびその周辺回路」が搭載され、同「ランプ制御基板35」は「ランプ制御用CPU351およびその周辺回路」が搭載され、両者は遊技盤6に取り付けられているから、引用発明1が本願発明の「音処理部と表示灯処理部とは、制御処理部として遊技盤に取り付けられる盤側回路基板に構成され」に相当する事項を有していることは技術常識から明らかである。
(五d)引用発明1の「枠側音基板70B」は「出力ドライバ回路」が搭載され、同「枠側ランプ基板35B」は「枠側出力ドライバ回路357」が搭載され、両者は遊技枠側の例えば機構板に取り付けられているから、引用発明1が本願発明の「音駆動部と表示灯駆動部とは、駆動部として遊技機枠に取り付けられる枠側回路基板に構成され」に相当する事項を有していることは技術常識から明らかである。

そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

一致点
入賞部品への球の入賞を検出した入賞検出信号の入力で当該入賞検出信号に対応する制御処理を実行し、実行した制御処理の結果で動作部品を駆動するパチンコ機の制御装置において、
上記制御装置は、スピーカの放出する音や音声を制御する音制御装置と、表示灯の点灯パターンを制御する表示灯制御装置と、上記音制御装置と上記表示灯制御装置とに対する制御処理を行う主制御装置とを有し、
上記音制御装置は、音処理部と音駆動部とに機能分割されて別体として構成され、
上記表示灯制御装置は、表示灯処理部と表示灯駆動部とに機能分割されて別体として構成され、
上記音処理部と上記表示灯処理部とは、制御処理部として遊技盤に取り付けられる盤側回路基板に構成され、
上記音駆動部と上記表示灯駆動部とは、駆動部として遊技機枠に取り付けられる枠側回路基板に構成されて成る、パチンコ機の制御装置。

相違点A
遊技盤に取り付けられる音処理部と表示灯処理部とが、本願発明では単一の盤側回路基板に構成されるのに対し、引用発明1では別々の盤側回路基板に構成される点
相違点B
遊技機枠に取り付けられる音駆動部と表示灯駆動部とが、本願発明では単一の枠側回路基板に構成されて成るのに対し、引用発明1では別々の枠側回路基板に構成されて成る点

そこで、上記相違点について検討する。
相違点A及びBは「単一の回路基板に構成」する点において共通しているから併せて検討する。
遊技機において別々の部材を制御する別々の制御部が遊技盤に取り付けられる単一の回路基板に構成される技術は、例えば周知刊行物Aに示された「遊技盤5の裏側に装着された、図柄制御基板とサウンド制御基板とを同一基板にユニット化して設けられた図柄兼サウンド制御基板41」及び周知刊行物Bに示された「遊技盤4に着脱自在に装着されている、ランプ制御手段60及び音声制御手段61を設けた共通基板」並びに周知刊行物Eに示された「遊技盤43に取付けられる、主制御、図柄制御、音制御及び表示灯制御等を備える盤側遊技制御装置44を構成する単一基板4」のように周知・慣用の技術である(以下、「周知・慣用の技術1」という。)。また、遊技機において別々の部材を制御する別々の制御部が遊技機枠に取り付けられる単一の回路基板に構成される技術は、例えば周知刊行物Cに示された「前枠2の裏側に装着される、発射制御手段124と回収制御手段123とが設けられている発射制御基板18」及び周知刊行物Dに示された「機構板36の下部に設置されている、同一の基板で構成される表示制御基板80、ランプ制御基板35、および音制御基板70」並びに周知刊行物Eに示された「遊技機枠体41に取付けられる、球払出制御や球発射制御等を備える枠側遊技制御装置42を構成する単一基板4」のように周知・慣用の技術である(以下、「周知・慣用の技術2」という。)。そして、周知刊行物A乃至Eは遊技機の制御基板において共通していることを併せて考慮すれば、当該「周知・慣用の技術1及び2」を引用発明1に適用し、相違点A及びBに係る本願発明を特定する事項とすることは当業者が容易になし得たものである。

そして、効果の点においても、引用発明1は、「機種変更に伴って交換が必要となる部品点数を減少させることを目的とする」ものであるから、本願発明が格別の効果を有するとは認められない。

第六、むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び周知・慣用の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2010-03-31 
結審通知日 2010-04-06 
審決日 2010-04-22 
出願番号 特願2002-370296(P2002-370296)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 智也▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 池谷 香次郎
川島 陵司
発明の名称 パチンコ機の制御装置  
代理人 宮園 純一  

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