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審決分類 |
審判 一部無効 2項進歩性 H04N |
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管理番号 | 1218067 |
審判番号 | 無効2009-800189 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2009-08-31 |
確定日 | 2010-06-10 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3965462号発明「ダウンロード可能なソフトウエアの更新情報を有するテレビジョン・システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第一 経緯 1 本件特許 本件特許に係る経緯は、概要、以下のとおりである。 国際出願日 平成8年6月6日 (特願平09-501931号) 遡及出願日 平成7年6月7日 (パリ条約による優先権主張) 設定登録日 平成19年6月8日 (請求項の数:18、権利者:スターサイト・テレキャスト・インコーポレーテッド) 別件無効審判:無効2008-800130号 審決確定日 平成22年3月11日 審決の要旨:訂正を認める。本件審判請求は、成り立たない。 2 本件請求 本件請求に係る経緯は、概要、以下のとおりである。 請求書 平成21年8月31日 手続補正書(請求書)平成21年10月8日 答弁書 平成22年1月26日 口頭審理 平成22年3月26日 (口頭審理陳述要領書(請求人、被請求人)の提出あり) 第二 本件特許発明 本件特許に係る請求項1から請求項18までの発明(以下、各請求項に係る発明を請求項の番号を用いて「本件特許発明1」等という。)は、それぞれ、訂正後における明細書の特許請求の範囲の請求項1から請求項18に記載された下記のとおりのものである。 記 【請求項1】 ソフトウエアの更新情報をダウンロード可能なテレビジョン・システムにおいて、 複数の受信装置であって、各々が、テレビジョン受信機と、セットトップ・ボックスと、ビデオ・レコーダと、テレビジョン及びビデオ・レコーダの結合体とのいずれか1つからなる、複数の受信装置と、 前記複数の受信装置の各々に対応して設けられた受信機であって、前記ソフトウエアの更新情報に関連しかつ前記複数の受信装置の少なくとも1つを識別する識別子を含んでいるデータを受信する受信機と、 前記複数の受信機それぞれに対応して設けられ、前記ソフトウエアの更新情報に関連するデータを記憶するメモリであって、前記識別子が対応する受信装置を表している場合にのみ、当該データが記憶される、ところのメモリと、 前記受信装置のそれぞれに対応して設けられたプロセッサであって、それぞれが、前記メモリと前記受信機の少なくとも1つとに結合しており、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装すべき旨のユーザ指示に応答して、前記データを用いて、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを、前記受信装置の少なくとも1つにおいて実装するプロセッサと を備えていることを特徴とするテレビジョン・システム。 【請求項2】 請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、該システムはさらに、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つに関係する情報を表示するスクリーンを有するデバイスを少なくとも1つ備えていることを特徴とするテレビジョン・システム。 【請求項3】 請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、該システムはさらに、前記ソフトウエアの更新情報を注文するための少なくとも1つの電話を購えており、前記ソフトウエアの更新情報の実装に必要なデータは、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つが前記電話を用いて注文された後に、前記受信装置にダウンロードされることを特徴とするテレビジョン・システム。 【請求項4】 請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、該システムはさらに、セットトップ・ボックスを介して前記ソフトウエアの更新情報を注文する少なくとも1つの遠隔制御装置を備えており、前記ソフトウエアの更新情報の実装に必要なデータは、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つが前記遠隔制御装置を用いて注文された後に、前記受信装置にダウンロードされることを特徴とするテレビジョン・システム。 【請求項5】 請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、前記ソフトウエアの更新情報は、ソフトウエアの修理に関する情報を含むことを特徴とするテレビジョン・システム。 【請求項6】 請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、前記ソフトウエアの更新情報は、赤外線(IR)コードを指定することを特徴とするテレビジョン・システム。 【請求項7】 請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、前記ソフトウエアの更新情報は、ピクチャ・イン・ピクチャの拡張、ピクチャ・イン・ピクチャ画面のチャネル識別子、表示されたチャネル識別子を有するグラフィック・ネットワークのロゴ及びアイコン、拡張されたデータ・サービス、株相場サービス、バーチャル・チャネル・サービス、ニュース・サービス、気象情報サービス、及びスポーツ・スコア・サービスの少なくとも1つに関する情報であることを特徴とするテレビジョン・システム。 【請求項8】 請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、前記受信装置の各々は、テレビジョンと、セットトップ・ボックスと、ビデオ・レコーダとのいずれか1つからなることを特徴とするテレビジョン・システム。 【請求項9】 請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、前記プロセッサは各々、ダウンロード可能な新規のソフトウエアの更新情報が利用可能となったときに、該ソフトウエアの更新情報を広告するためのアイコンを表示するように構成されていることを特徴とするテレビジョン・システム。 【請求項10】 請求項9記載のテレビジョン・システムにおいて、前記プロセッサは、ユーザによる新規のダウンロード可能なソフトウエアの更新情報に関連するデータの要求に応答して、該情報を受信するよう構成されていることを特徴とするテレビジョン・システム。 【請求項11】 ダウンロード可能なソフトウエアの更新情報を有するテレビジョン・システムにおいて、 複数の受信装置であって、各々が、テレビジョンと、セットトップ・ボックスと、ビデオ・レコーダと、テレビジョン及びビデオ・レコーダの結合体とのいずれか1つからなる複数の受信装置と、 前記複数の受信装置の各々に対応して設けられた受信機であって、前記ソフトウエアの更新情報に関連しかつ前記複数の受信装置の少なくとも1つを識別する識別子を含んでいるデータを受信する受信機と、 前記複数の受信機の各々に対応して設けられ、前記ソフトウエアの更新情報に関連するデータを記憶するメモリであって、前記識別子が対応する受信装置を表している場合にのみ、当該データが記憶される、ところのメモリと、 前記受信装置の各々に対応して設けられたプロセッサであって、各々が、前記メモリと前記受信機の少なくとも1つとに結合しており、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装すべき旨のユーザ指示に応答して、前記データを用いて、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを、前記受信装置の少なくとも1つにおいて実装するプロセッサと を備え、 前記ソフトウエアの更新情報に関連するデータは、システムのユーザが、自分のテレビジョン・システムに前記ソフトウエアの更新情報をダウンロードすることを望むかどうかの選択をすることができるようにするための情報を含んでいる ことを特徴とするテレビジョン・システム。 【請求項12】 ソフトウエアの更新情報をダウンロード可能なテレビジョン・システムにおいて、 複数の受信装置であって、各々が、テレビジョンと、セットトップ・ボックスと、ビデオ・レコーダと、テレビジョン及びビデオ・レコーダの結合体とのいずれか1つからなる複数の受信装置と、 前記複数の受信装置の各々に対応して設けられた受信機であって、前記ソフトウエアの更新情報に関連しかつ前記複数の受信装置の少なくとも1つを識別する識別子を含んでいるデータを受信する受信機と、 前記複数の受信機の各々に対応して設けられ、前記ソフトウエアの更新情報に関連するデータを記憶するメモリであって、前記識別子が対応する受信装置を表している場合にのみ、当該データを記憶するよう構成されているメモリと、 前記受信装置の各々に対応して設けられたプロセッサであって、各々が、前記メモリと前記受信機の少なくとも1つとに結合しており、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装すべき旨のユーザ指示に応答して、前記データを用いて、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを、前記受信装置の少なくとも1つにおいて実装するプロセッサと を備え、 前記識別子は、モデル、ブランド、及び製品タイプの1つによって、受信装置を識別するよう構成されている ことを特徴とするテレビジョン・システム。 【請求項13】 テレビジョン・システムにおいて、ソフトウエアの更新情報をダウンロードする方法において、 複数の受信装置に対して、前記ソフトウエアの更新情報に関連するデータであって、前記複数の受信装置の少なくとも1つを識別する識別子を含んでいるデータが送信されるステップと、 前記データを、前記受信装置のそれぞれに配置されている複数の受信機において受信するステップと、 前記データを、該データに含まれる前記識別子によって識別された前記受信装置において記憶するステップと、 前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを使用可能にすべき旨のユーザ指示に応答して、前記識別子に識別された前記受信装置において記憶された前記データを用いて、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを、前記受信装置の少なくとも1つにおいて使用可能にするステップと を含むことを特徴とする方法。 【請求項14】 請求項13記載の方法において、前記ソフトウエアの更新情報は、ピクチャ・イン・ピクチャの拡張、ピクチャ・イン・ピクチャ画面のチャネル識別子、表示されたチャネル識別子を有するグラフィック・ネットワークのロゴ及びアイコン、拡張されたデータ・サービス、株相場サービス、バーチャル・チャネル・サービス、ニュース・サービス、気象情報サービス、及びスポーツ・スコア・サービスの少なくとも1つ用のソフトウエアの更新情報であることを特徴とする方法。 【請求項15】 請求項13記載の方法において、前記受信装置の各々は、テレビジョンと、セットトップ・ボックスとのいずれか1つからなることを特徴とする方法。 【請求項16】 請求項13記載の方法において、該方法はさらに、ダウンロード可能な新規のソフトウエアの更新情報が利用可能となったときに、該ソフトウエアの更新情報を広告するためのアイコンを表示するステップを含んでいることを特徴とする方法。 【請求項17】 請求項13記載の方法において、該方法はさらに、ユーザによる新規のソフトウエアの更新情報に関する情報の要求に応答して、該情報を受信するステップを含んでいることを特徴とする方法。 【請求項18】 テレビジョン・システムにおいて、ソフトウエアの更新情報をダウンロードする方法において、 複数の受信装置に対して、前記ソフトウエアの更新情報に関連するデータであって、前記複数の受信装置の少なくとも1つを、モデル、ブランド、プロダクション、製品タイプの1つによって識別する識別子を含んでいるデータが送信されるステップと、 前記データを、前記受信装置のそれぞれに配置されている複数の受信機において受信するステップと、 前記データを、該データに含まれる前記識別子によって識別された前記受信装置において記憶するステップと、 前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを使用可能にすべき旨のユーザ指示に応答して、前記識別子に識別された前記受信装置において記憶された前記データを用いて、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを、前記受信装置の少なくとも1つにおいて使用可能にするステップと を含むことを特徴とする方法。 第三 当事者の主張 1 請求 (1)請求の趣旨 特許第3965462号発明の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された発明についての特許を無効とする 審判費用は被請求人の負担とする との審決を求める。 (2)請求の理由(概要) 本件特許発明1及び2は、特許出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその特許出願前に国内又は外国において、頒布された刊行物を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項に違反しており、同法第123条第1項第2号により無効にすべきである。 (3)請求の理由の要点 (平成21年10月8日付け手続補正により補正した審判請求書) ア 本件特許発明1について特許法第29条第2項違反 本件特許発明1は、甲第1号証記載の発明(以下「甲1発明」という。)に甲2号証記載の技術を組み合わせることにより、当業者は容易に本件特許発明に想到する。 甲1発明は、構成要件1Eのうち「前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装すべき旨のユーザ指示に応答して」の部分を備えていない(相違点)。 甲第2号証には、ユーザーの選択によりソフトウエア(ここではゲーム)のダウンロードを行う技術が記載されている。 甲1発明と甲第2号証記載の技術はいずれも、ユーザー宅のテレビシステムをオンラインで通信をしてソフトウエアをインストールするものである点で技術分野を共通する。 そして、甲1発明では、ファームウエアというユーザーがその内容に対する関心が低いソフトウエアをダウンロードの対象としていたのに対して、甲第2号証記載の技術では、ゲームというユーザがその内容に対する関心が高いソフトウエアをダウンロードの対象としている。 そうであれば、甲1発明のケーブルテレビジョンシステムにおいても、ユーザがその内容に対する関心が高いソフトウエアをダウンロードするシステムを構築しようとすれば、当然に、ユーザーによる選択の処理を組み合わせるはずであり、この程度の周知技術を組み合わせることは、当業者であれば極めて容易に想到できたものである。 したがって、本件特許発明1は、甲1発明に、甲第2号証記載の技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明できたものである。 また仮に、構成要件1Cを相違点としたとしても、甲第2号証段落【0025】の記載から受信する端末を指定するデータをソフトウエアのデータに組み込む技術が開示されており、インストールの対象となる装置に応じて実行できるソフトウエアは依存するのであるから、ダウンロードする際にソフトウエアに何らかの形で、識別情報を付加しておくことは、いわば機能から当然に要求される構成ということも出来るのであり、周知の設計事項にすぎない。 したがって、仮に構成要件1Cを相違点としたとしても、周知の設計事項にすぎず、当業者であれば容易に発明をすることができたものである。 イ 本件特許発明2について特許法第29条第2項違反 本件特許発明2は、甲第1号証記載の発明に甲2号証記載の技術を組み合わせることにより、当業者は容易に本件特許発明に想到する。 甲第1号証第11頁左下欄第8行?同頁右下欄第2行の記載から、甲1発明は、ダウンロードされたファームウエアの内容に従った情報がユーザーのテレビジョンセットにディスプレイすることができるから、甲1発明は構成要件2Aを備える。 甲1発明と甲第2号証記載の技術との相違点についての判断は、既に述べたとおりである。 本件特許発明2は、甲1発明に甲第2号証記載の技術を組み合わせることにより当業者が容易に発明をすることができたものである。 (陳述要領書) 被請求人は、構成要件1Eについて、甲1発明を改変する動機付けが存在しない、甲1発明に阻害要因が存在する、また甲1発明に甲第2号証の技術を組み合わせることが容易でない、と反論するが、いずれも誤りである。 ウ 動機付けは存在する 甲1発明を改変する動機付けは存在する。 例えば、甲第1号証第11頁左下欄第2行?第7行には以下の記載がある。 「コンバータ40にはまたケーブルテレビ側で受信した特別プログラムのスクランブル解除装置70が含まれている。個々のスクランブル解除法が周知であり、また相異なる技法がコンバータに夫々異なるファームウエアをダウンロードさせることで適用できる。」 すなわち甲1発明では、ユーザが指示に応答する形でダウンロードすることが直接的に記載されているものではないが、ファームウェアのダウンロードによりスクランブル解除が可能になる場合がある。 このスクランブルの解除は、番組の視聴可否にかかわるものでありユーザにとって大きな関心事であるため、解除の方法、すなわち、ファームウェアの実装(更新)をユーザの指示により行うように設計することは当業者であれば当然に思い至る。 そのため、スクランブル解除の機能が存在することは、ユーザ指示に応答してファームウェアを実装するように甲1発明を改変する示唆であると考えることができる。 したがって、被請求人の指摘は誤りである。 なお、ファームウェアは、ハードウェアの基本的制御のために機器に組み込まれるソフトウエアであるため、ファームウエアの実装中(更新中)は、機器の使用が不可能になることは、広く知られた事実である。 このため、機器の使い勝手を向上させるために機器の使用が不可能になるタイミングをユーザに委ねるようにすること、つまり、ファームウェアの実装(更新)をユーザの指示により行うように設計すること、の動機付けは当業者に当然に存在するものである。 エ 甲1発明に阻害要因は存在しない 構成要件1Eについての相違点をなくすように甲1発明を改変することにつき阻害事由は存在しない。 甲1発明の課題及び機能は、「ケーブルテレビジョンコンバー夕またはその他の端末装置の機能を、遠隔操作で変更するための方法とシステムを提供する」(甲第1号証第6頁右下欄第2行?第4行)ことにあるが、機能変更を保証するための方法を提供するとはどこにも記載されていない。そして、甲1発明の課題及び機能の範躊には、遠隔操作による機能変更を実現しつつ、機能変更のタイミングを柔軟にするような技術も、当然ながら含まれるものである(種々の特許公報の課題と従属項の関係を見ても明らかであるし、含まれないと考える理由がない)。 すなわち、構成要件1Eについての相違点をなくすように甲1発明を改変したとしても、「ケーブルデレビジョンコンバータまたはその他の端末装置の機能を、遠隔操作で変更するための方法とシステムを提供する」ことが不可能になるわけではなく、機能変更タイミングがユーザの指示に依存するようになるだけである。 したがって、構成要件1Eについての相違点をなくすように甲1発明を改変することの阻害要因は存在せず、この点についての被請求人の指摘は誤りである。 オ 甲1発明に甲第2号証の技術を組み合わせることは容易である 甲1発明に甲第2号証記載の技術を組み合わせることは本件特許出願当時の当業者にとって容易であった。 (ア)同一の技術分野にある 両文献ともユーザ宅に存在するテレビジョンシステムについてのソフトウェアをダウンロードする技術分野に属しており、これが同一の技術分野でないとする被請求人の主張は根拠がない。 (イ)一般化・抽象化を必要とせず、また後知恵でもない この点、被請求人は、(a)甲1発明及び甲第2号証記載の技術を「ソフトウエア」というレベルにまで一般化・抽象化することの問題を指摘する。 しかしながら、ファームウエアとは、一般的に「ハードウェアの基本的制御のために機器に組み込まれたソフトウェア」を意味しており(広辞苑第六版第2415頁、甲第7号証)、ソフトウエアの一種であることは明らかである。 そして甲1発明の構成はヘッドエンドからチャネルを通じてファームウェアをダウンロードする技術が開示されており、ダウンロードされるソフトウェアをファームウェアに限定する必要はなく、これをソフトウェアに一般化・抽象化することが困難であるとは考えられない。 また、(b)後知恵であるとの指摘については、本件特許出願当時の従来技術を示すものとして、甲第8号証?甲第10号証がある。 これら甲第9号証及び甲第10号証によって示されるように、ファームウェアをユーザの指示に基づいて更新すること自体は、本件特許発明以前より周知の事実である。 したがって、甲1発明に甲第2号証記載の技術を組み合わせることは本件特許出願時の当業者にとって容易であり、この点についての被請求人の指摘は誤りである。 (4)証拠方法 甲第1号証:特開平3-21184号公報 甲第2号証:特開平6-319874号公報 甲第3号証:特表平7-502629号公報 甲第4号証:特開平7-59072号公報 甲第5号証:特開平7-64796号公報 甲第6号証:特開平6-334780号公報 甲第7号証:広辞苑第六版 2415頁 甲第8号証:特開平4-276824号公報 甲第9号証:特開平6-266552号公報 甲第10号証:特開平5-216639号公報 2 答弁 (1)答弁の趣旨 本件特許権には無効理由がなく本件特許権を維持する、本件審判費用は審判請求人の負担とする、との審決を求める。 (2)答弁の理由(概要) 審判請求書における審判請求人の主張は、いずれも失当である。本件特許発明に無効理由はない。 (3)答弁の理由の要点 (答弁書) ア 本件特許発明1に対する無効理由について 手続補正書により補正された審判請求書において、請求人は、本件特許発明1と甲第1号証発明との相違点として、2つの相違点を認識している。しかし、請求人は、かかる相違点については甲第2号証に記載の技術を組み合わせることにより当業者が容易に想到することができたものであると主張している。 しかしながら、請求人の上記主張は誤りである。なぜなら、請求人は、構成要件1Eについての相違点の認定を誤っているからである。 請求人は、上記構成要件1Eについての相違点を補償するために甲第2号証発明に依存する。 しかしながら、被請求人は、請求人の主張に同意することができない。なぜなら、(A)上記構成要件1Eについての相違点をなくすように甲第1号証発明を改変する動機付けが存在しないばかりか、(B)上記構成要件1Eについての相違点をなくすように甲第1号証発明を改変する阻害要因が存在するからである。 それ故、甲第2号証の教示の如何にかかわらず、上記構成要件1Eについての相違点をなくすように甲第1号証発明を改変することは不可能であるというべきである。 (A)上記構成要件1Eについての相違点をなくすように甲第1号証発明を改変する動機付けが存在しない 本件特許発明1と甲第1号証発明との間の根本的な相違点は、甲第1号証発明では、ケーブル局(システムオペレータ)によってコンバータの中のファームウエアを実装している点である。コンバータがケーブル局によって制御されることは周知である。 甲第1号証発明におけるポイントは、ファームウエアをコンバータにダウンロードおよび実行することをケーブル局によって管理する点である。このことは、甲第1号証の多くの箇所で強調されている。(例えば、甲第1号証の第6頁左下欄第9行?第16行) 甲第1号証には、ソフトウエアのダウンロードおよび実行をユーザによって制御することに関する記載は存在せず、ユーザがコンバータの何らかの機能を制御することに関する記載も存在しない。 それ故、ユーザ指示に応答してファームウエアを実装するようにコンバータが改変されるように甲第1号証発明を改変する動機付けが存在しないことは明らかである。 (B)上記構成要件1Eについての相違点をなくすように甲第1号証発明を改変する阻害要因が存在する 甲第1号証発明の解決すべき課題:ケーブル局がテレビジョンコンバータの一部または全部の機能を効率的に制御することを可能にするシステムおよび方法が必要とされていた。 甲第1号証発明の解決策:ケーブル局が、分配ネットワークを介して加入者宅にあるコンバータに提供されるファームウエアを制御することによって、ヘッドエンド機器から、加入者宅にあるコンバータの機能を遠隔的に変更する。 このように、甲第1号証発明の解決すべき課題は、ケーブル局がコンバータに提供されるファームウエアを制御することによって解決される(例えば、甲第1号証の第6頁右下欄第6行?第16行)。 ケーブル局がコンバータにダウンロードされるファームウエアを制御するという特徴を、ユーザ指示に応答してファームウエアを実装するという特徴に置き換えると、甲第1号証発明の解決すべき課題はもはや解決することができなくなってしまう。 それ故、当業者であれば甲第1号証発明の解決すべき課題をもはや解決することができなくしてしまうような上述した改変を行わない(すなわち、阻害要因が存在する)というべきである。 それに加えて、甲第1号証発明において上述した改変を行うことは、コンバータ自体の動作にも反している。すなわち、コンバータのファームウエアは、ケーブル局によってのみ制御されなければならない。なぜなら、コンバータは、そのコンバータを介してユーザにサービスを提供しているもの(すなわち、ケーブル局)によって変更されるべきだからである。「ユーザ指示に応答して」ソフトウエアを実装するという特徴を含むように甲第1号証発明を改変することは、ユーザ自身が自分の思うままにコンバータのファームウエアを変更することを可能にすることを意味する。このようにユーザ自身が自分の思うままにコンバータのファームウエアを変更することは、元来、コンバータの動作にそぐわない。コンバータがどのように動作するかは、ケーブル局によって制御されるべきだからである。 甲第1号証および甲第2号証の組み合わせに関する請求人の主張について 被請求人は、請求人の主張に同意しない。以下、その理由を説明する。 第一に、請求人は、甲第1号証および甲第2号証が同一の技術分野に属するものであると主張する。しかしながら、請求人のこの主張は誤りである。なぜなら、上述したように、甲第1号証は、ケーブル局の制御下でファームウエアの更新が受信されるケーブルテレビジョン装置に関するものであるところ、甲第2号証は、ゲームソフトウエアをユーザの自宅から選択することが可能なように実装されたシステムに関しているからである。 第二に、請求人は、「甲1発明のケーブルテレビジョンシステムにおいても、ユーザがその内容に対する関心が高いソフトウエアをダウンロードするシステムを構築しようとすれば、当然に、ユーザーによる選択の処理を組み合わせるはずであり、・・・」と主張する。しかしながら、請求人のこの主張は誤りである。なぜなら、請求人のこの主張は、(a)甲第1号証および甲第2号証の教示を抽象化ないし一般化することを必要とすることに加えて、(b)後知恵を用いて甲第1号証および甲第2号証の教示の組み合わせを推定することを必要とするからである。 上記(a)について、請求人は、甲第1号証および甲第2号証から特定の教示を取り出し、具体的な根拠を示すことなく、甲第1号証および甲第2号証の教示を抽象化ないし一般化して、甲第1号証のファームウエアはユーザの関心が低く、甲第2号証のゲームソフトウエアはユーザの関心が高い旨を主張する。甲第1号証には、ユーザがコンバータのファームウエアに関心をもっていない旨の記載は存在しない。これは、甲第1号証の開示がユーザのコンバータにおけるファームウエアのダウンロードおよび実行の制御をケーブル局によって行うことに関しているからである。甲第1号証発明において、ユーザがファームウエアに関心をもっているか否かは無関係である。それ故、甲第1号証のファームウエアはユーザの関心が低いと解釈することはできないというべきである。 同様に、甲第2号証の開示は、ゲームソフトウエアのダウンロードに関連しているにすぎない。甲第2号証は、ゲームソフトウエアの関心度を変化させること、または、ユーザによる発明の他の局面に言及していない。甲第2号証には、ユーザに何を表示すべきかに影響を与えるユーザの関心度についての記載は何ら存在しない。 上記(b)について、請求人は、本件特許発明1は、甲第1号証発明に甲第2号証の技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明できたものである旨を主張する。しかしながら、請求人のこの主張は誤りである。なぜなら、甲第1号証は、ダウンロード可能なソフトウエアがケーブル局によって制御されることを教示しているにすぎず、甲第2号証は、ゲーム機で用いられるゲームソフトウエアがアダプタにダウンロードされることを教示しているにすぎないからである。 甲第1号証および甲第2号証のいずれにも、ユーザの関心がダウンロード可能なソフトウエアの表示に関与していることは開示されていない。それ故、「甲1発明のケーブルテレビジョンシステムにおいても、ユーザがその内容に対する関心が高いソフトウエアをダウンロードするシステムを構築しようとすれば、当然に、ユーザーによる選択の処理を組み合わせるはずであり、この程度の周知技術を組み合わせることは、当業者であれば極めて容易に想到できたものである。」という請求人の主張は根拠がないというべきである。 イ 本件特許発明2に対する無効理由について 本件特許発明2は、本件特許発明1に従属する。従って、本件特許発明1について上述した理由と少なくとも同一の理由から、本件特許発明2に対する甲第1号証および甲第2号証に基づく無効理由もまた存在しないというべきである。 (陳述要領書) ウ 「動機付けは存在する」という請求人の主張について 「動機付けは存在する」という請求人の主張は理由がないというべきである。 請求人は、構成要件1Eについての相違点をなくすように甲第1号証発明を改変する動機付けが存在すると主張する。その根拠として、請求人は、甲第1号証の第11頁左下欄第2行?第7行の記載を引用している。 被請求人は、請求人の主張に同意しない。なぜなら、甲第1号証の上記引用箇所は、単に、コンバータによって用いられる複数のスクランブル解除技術が、互いに異なるファームウエアとしてコンバータにダウンロードされ得るということを述べているにすぎず、このようなダウンロードがユーザ指示に応答して行われることを示唆するものでもヒントを与えるものでもないからである。 請求人の主張とは対照的に、テレビションシステムの分野では、スクランブルを解除するためのソフトウエアは、ケーブル局からの命令に応答してコンバータに提供されるのみであることが当業者には周知である。なぜなら、ユーザが視聴を許可される番組やチャンネルを制御するのは、ユーザではなく、ケーブル局であるからである。 さらに、請求人は、「機器の使い勝手を向上させるために機器の使用が不可能になるタイミングをユーザに委ねようとすること、つまり、ファームウエアの実装(更新)をユーザの指示により行うように設計すること、の動機付けは当業者に当然に存在するものである。」と主張する。 被請求人は、請求人の主張に同意しない。なぜなら、甲第1号証の教示を考慮すると、請求人の主張は適切でないからである。 甲第1号証は、ケーブル局の制御の下で、コンバータ内のファームウエアを更新することを記載しているにすぎない。 さらに、甲第1号証は、ソフトウエアヘの侵入を防御するために、ファームウエアを周期的にチェックすることにより、ダウンロードされたバージョンが承認されたダウンロードであり、かつ、その承認されたダウンロードが用いられることを確実にすることを記載している(例えば、甲第1号証の第14頁左下欄第10行?右上欄第1行)。仮にユーザがファームウエアの更新を制御することができるとすると、このような最新の承認されたダウンロードが実行されることを保証することが不可能になってしまう。 このように、甲第1号証発明は、ファームウエアの更新がユーザによって制御されることとは反対の事項を教示していることは明らかである。 エ 「甲1発明に阻害要因は存在しない」という請求人の主張について 請求人は、構成要件1Eについての相違点をなくすように甲第1号証発明を改変することにつき阻害要因は存在しないと主張する。しかしながら、請求人の主張は、甲第1号証発明の課題及び機能の誤った認識に基づくものであるから失当である。 請求人が引用している「ケーブルテレビジョンコンバータまたはその他の端末装置の機能を、遠隔操作で変更するための方法とシステムを提供する」という記載における「方法とシステム」は、引用する直前の記載からケーブル局が、ケーブルテレビジョンコンバータまたはその他の端末装置の機能を、遠隔操作で変更することを可能にする方法とシステムを指すというべきである。 構成要件1Eについての相違点をなくすように甲第1号証発明を改変することは、ユーザがコンバータの機能の変更を制御することを意味する。そのように甲第1号証発明を改変してしまうと、甲第1号証発明によって解決すべき課題をもはや解決することができなくなってしまう。なぜなら、コンバータの機能の変更を制御するのがケーブル局のみではなくなるからである。 それ故、構成要件1Eについての相違点をなくすように甲第1号証発明を改変する阻害要因が存在するというべきである。 オ 「甲1発明に甲2号証の技術を組み合わせることは容易である」という請求人の主張について 請求人は、甲第1号証発明に甲第2号証の技術を組み合わせることは本件特許出願当時の当業者にとって容易であったと主張する。その根拠として、請求人は、 (ア)同一の技術分野にある、(イ)一般化・抽象化を必要とせず、また後知恵でもないことを挙げている。被請求人は、請求人の主張に同意しない。 (ア)甲第1号証と甲第2号証とは同一の技術分野に属しないというべきである。 甲第1号証発明の教示から、甲第1号証発明がケーブル局の制御下でファームウェアの更新が受信されるケーブルテレビジョン装置に関するものであることは明らかである。それ故、甲第1号証の技術分野は、テレビションシステムにおいて用いられるソフトウェアに関するものであると認定されるべきである。 甲第2号証は、送受信システムにおけるゲームソフトウエアに関している。ゲームソフトウエアがテレビジョンシステムにおいて用いられないことは明らかである。特に、ゲームソフトウエアをテレビの画面に表示することは可能であるとしても、ゲームソフトウエアは基地局を介して子局に送信され、ゲームソフトウエアは、ゲーム機において用いられる。 (イ)請求人は、甲第1号証の「ファームウエア」を「ソフトウエア」に一般化・抽象化することが困難であるとは考えられないと主張する。「ファームウエア」が 「ソフトウエア」の一種であることはそのとおりであるが、そうだからといって、一般的な「ソフトウエア」に関する任意の技術が甲第1号証の技術分野であるテレビジョンシステムにおいても容易に適用することができるとは限らない。上述したように、甲第1号証のテレビジョンシステムの技術分野においては、テレビジョンシステムに特有の事情を考慮する必要があるからである、それ故、請求人の主張はその前提において失当である。 さらに、後知恵であるという指摘について、請求人は、本件特許出願当時の従来技術を示すものとして、甲第8号証?甲第10号証を新たに引用して、ダウンロードしたファームウエアをユーザの指示に基づいて更新する技術は既に本件特許出願当時から周知であったと主張する。 この請求人の主張に対し、被請求人は、テレビジョンシステムという特定の技術分野においては、ダウンロードしたファームウエアをユーザの指示に基づいて更新する技術は本件特許出願当時に周知ではなかったと反論する。 甲第8号証?甲第10号証は、テレビジョンシステムという特定の技術分野に属する文献ではない。それ故、甲第8号証?甲第10号証をもって、テレビジョンシステムという特定の技術分野においてダウンロードしたファームウエアをユーザの指示に基づいて更新する技術は既に本件特許出願当時から周知であったという主張は立証不十分である。仮に甲第8号証?甲第10号証のような一般のコンピュータ分野で周知であったとしても、そのことがテレビジョンシステムの分野で周知であるとはいえないからである。 テレビジョンシステムの分野では、ファームウエアの更新はケーブル局からの命令に応答して行われることが本件特許出願当時に周知であった(乙第1号証?乙第3号証)。 (4)証拠方法 乙第1号証:特開昭63-26093号公報 乙第2号証:特開昭60-7245号公報 乙第3号証:特表平2-501343号公報 第四 当審の判断 1 本件特許発明1 (1)分説 本件特許発明1を分説すると次のとおりである(以下、分説の記号を用いて、それぞれの構成要件を「構成要件1A」等という。)。 1A ソフトウエアの更新情報をダウンロード可能なテレビジョン・システムにおいて、 1B 複数の受信装置であって、各々が、テレビジョン受信機と、セットトップ・ボックスと、ビデオ・レコーダと、テレビジョン及びビデオ・レコーダの結合体とのいずれか1つからなる、複数の受信装置と、 1C 前記複数の受信装置の各々に対応して設けられた受信機であって、前記ソフトウエアの更新情報に関連しかつ前記複数の受信装置の少なくとも1つを識別する識別子を含んでいるデータを受信する受信機と、 1D 前記複数の受信機それぞれに対応して設けられ、前記ソフトウエアの更新情報に関連するデータを記憶するメモリであって、前記識別子が対応する受信装置を表している場合にのみ、当該データが記憶される、ところのメモリと、 1E 前記受信装置のそれぞれに対応して設けられたプロセッサであって、それぞれが、前記メモリと前記受信機の少なくとも1つとに結合しており、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装すべき旨のユーザ指示に応答して、前記データを用いて、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを、前記受信装置の少なくとも1つにおいて実装するプロセッサと 1F を備えていることを特徴とするテレビジョン・システム。 (2)甲第1号証の記載 ア 甲第1号証の記載 発明の背景 (あ)「本発明はケーブルテレビジョン装置、特にダウンロードが可能なファームウェアにより、遠隔操作で機能変更が出来るコンバータに関するものである。 最近ケーブルテレビジョンコンバータは、ケーブル局で中央ヘッドエンド機器からの加入者サービス受信の可否を遠隔操作出来るようになってきた。 これらの機器は普通“アドレス表示コンバータ”として分類されているが、ヘッドエンドから加入者宅に設置してある個々のコンバータにコントロール信号を送り、種々の特別番組を受信することを可能にさせている。受信を許可する信号はケーブルテレビジョンシステムを通じて搬送され、特別料金を払った加入者がその番組を視聴することか出来る。通常このコントロール信号は加入者が視聴しようとする特別番組のスクランブル解除を行うコンバータをコントロール出来る。 その他アドレス表示システムは、最近ヘッドエンドからコンバータにダウンロードされる操作パラメータが限られたセットに適用出来るようになった。この操作パラメータとしては、例えば、同調チャンネルをディスプレイしたチャンネルマップ、タイムアウト時間、バーカーチャンネル、コンバータ出力チャンネル、端末配置、及びリモートコントローラ、主にコントロール、人気チャンネルリコール、ボリュームコントロール等の様な加入者に対する操作 可/不可 機能がある。 現代の技術ではケーブルテレビジョンコンバータの製作またはとりつけ時に、予め決められたセットの特徴に対し構成情報をダウンロードしている。このようなコンバータの例として Hatboro,Pennsylvania,U.S.A.の Jerrold Division of General Instrument Corporation により製作されているモデルDPV7200アドレス表示コンバータである。 データをダウンロード出来るその他のシステムもまた知られている。 Fletcher等による米国特許4,054,911はパケットまたは映像ディスプレイ万能なデータ列、及び(または)通常の予め定めたフォーマットとして連続的に送信されるデータからコントロールプログラム指令を捕捉出来る情報検索システムに関するものである。特許の中で説明されているシステムは、ユーザーがどの情報を検索するか決め、端末にその情報を検索させる。ユーザーは違う送信データを捕捉して端末機能を変えることが出来るけれども、どの映像ディスプレイ可能の情報を受けるのか、また端末がどの様にして情報を受けるかを決めるのはユーザーである。 多端末回路網の個々の端末に対する機能動作をケーブル局が設定する説明または規定はなされていない。 Frezza等の米国特許4,712,239の“ダウウンロード可能なケーブルテレビジョンコンバータに対する安全装置”をここで参考としてあげると、 ダウンロードの可能なコンバータがダウンロードからの誤ったブーターイメージを防止することを説明している。偽のイメージは認可していないユーザーが、特別番組を視聴するのを可能にさせる様なシステムを種々の保全の問題に被らされることになる。この特許のシステムではブーターイメージは一つのチャンネルで受信され、そのチェックサムが計算される。別のチャンネルでスクランブルされたプログラム信号と一緒に送信されてきたフラグデータから抜き出した正しいチェックサムとこの計算されたチェックサムが比較される。もしチェックサムが合致しないと、コンバータのスクランブル解除装置はプログラム信号のスクランブル解除を妨げられる。 特許の説明によるとシステムは専用の“ブータチャンネル”でケーブルテレビジョンコンバータにすべての操作ソフトウェアがダウンロードされており、コンバータが最初にスイッチオンされた時に強制的にこのチャンネルに同調させられる。ダウンロードが完全に行われた後、コンバータ受信器は通常のチャンネルに戻り、コンバータがスイッチオフされるまでそこにとどまる。 ケーブルテレビジョンコンバータの様な離れた端末に、ファームウェアをダウンロードするための方法とシステムを提供し、ケーブル局によって端末のファーアムウエア機能の一部またはすべてを実質的に変更出来るのは好都合である。更に端末装置の製作または設置時に、ケーブル局が置替えまたは改良オプションをその様な方法またはシステムに予め定めておくことが出来有利である。 ヘッドエンドの位置から端末の変更が自動的に行える効果により、この様な方法およびシステムは、機能変更のため加入者の端末装置の改良または置き替えに技術者が加入者宅に出張する必要がなくなることになる。 本発明はケーブルテレビジョンコンバータまたはその他の端末装置の機能を、遠隔操作で変更するための方法とシステムを提供するものである。」(第5頁左下欄第7行?第6頁右下欄第4行) 発明の実施例 (い)「第1図はケーブルテレビジョンシステムのヘッドエンド機器を10で表し、加入者機器を12で表したものである。ヘッドエンドは分配ケーブル36を経て加入者と通信する。」(第8頁左下欄下から3行?右下欄第1行) (う)「ダウンロードファームウェアのためのコンバータへの二次チャンネルの使い方は第1図に図示したとおりである。コンバータアドレス、プログラム認可コード、その他のデータを含むコントロール信号はアドレス表示コントローラ14からコントロールデータ変調器26を経てコンバータ40に伝送される。コントロールデータ変調器26の出力はタップ34で分配ケーブル36に接続され、データはタップ38を経てコンバータ40で受信される。コントロールデータ変調器は一次チャンネルでデータ信号を伝送し、本発明ではこのデータにアドレス表示にコントローラ14からのダウンロードされた特定のファームウェアをコンバータが受信する命令を含ませてある。」(第9頁左上欄第10行?右上欄第3行) (え)「第1図には2チャンネルの具体化例が示してあるが、ファームウェアはタップ30でケーブル網と接続されたファームウェア変調器24により2次チャンネルとして伝送される。1次チャンネルを通しての命令を受け取ると、コンバータ40は指定ファームウェアを受けるために2次チャンネルにスイッチされる。」(第9頁右上欄第4行?第10行) (お)「本発明によると、ヘッドエンド10によりダウンロードされた異なるファームウェアパッケージに対し、コンバータ40は異なる機能を備えることになり、サービスのレベルが高くなるとコンバータの機能も増加することになる。課金システム22は各加入者に対するサービスレベルを記録保管しておき、また各加入者のコンバータ機能に準じて、各コンバータに特定のファームウェアパッケージを割り当てる。」(第9頁左下欄第2行?第10行) (か)「加入者側では、加入者はコンバータ40の出力に接続された一つ又はそれ以上のビデオ機器42,44を備えている。今例えばビデオレコーダをビデオレコーダ(”VCR”)とする。本発明によるとコンバータ40へのダウンロードされたファームウェアは、VCRに関連する機能も備えており、例えばタイムコードプログラミングの機能も一例である。 この機能により、何時でもVCRが他のチャンネルのテレビ番組を録画出来るようコンバータが自動的に選局するようプログラムされる。またこの様な機能で加入者のコンバータにプログラムされた“インパルス応答有料テレビ”が可能になる。これは加入者が在宅していない時、後刻視聴するために特別番組をVCRに録画しておくことで果たせる。」(第9頁左下欄第11行?右下欄第6行) (き)「第2図に本発明に関するコンバータ40の一つの具体例の適切な構成を示す。図示の例では、コンバータは一つのデータチャンネルアドレス表示データを、また他のデータチャンネルでダウンロードされたファームウェアを受信する。本発明のその他の具体例では、アドレス表示データとファームウェアの両者を一つのデータチャンネルで受信したり、またファームウェアを一般電話回線の様なその他の手段で搬送したりすることも行われる。 第2図に示した2つのチャンネルを使用する具体例では、マイクロプロセッサ50が周波数跳躍受信器52を経てケーブル36からデータを受ける。送信器61及び戻り経路62は、コンバータが双方向ケーブルテレビジョンシステムとして使用される場合、マイクロプロセッサ50からアドレス表示コントローラ14への帰路のために設けられている。」(第9頁右下欄第7行?第10頁左上欄第4行) (く)「種々のメモリーデバイスがマイクロプロセッサ50に接続されており、読み出し専用メモリー(“ROM”)56、ランダムアクセスメモリー(“RAM”)58、および不揮発性ファームウェアRAM60である。ROM56中にはコンバータ40にダウンロードされたファームウェアパッケージを回収し、実行するプログラムが含まれている。アドレス表示コントローラから適切な指令を受けると、コンバータは現在実行中のダウンロードパッケージを中止し、ダウンロードされた指定するファームウェアパッケージを受けるため適当するデータチャンネルにアクセスし、ファームウェアを受け、不揮発性ファームウェアRAM60に送る。」(第10頁右上欄第18行?左下欄第11行) (け)「コンバータ40にはまたケーブルテレビ綱で受信した特別プログラムのスクランブル解除装置70が含まれている。種々のスクタンブル解除法が周知であり、また相異なる技法がコンバータに夫々異なるファームウェアをダウンロードさせることで適用出来る。」(第11頁左下欄第2行?第7行) (こ)「その他の特徴として、コンバータ40により、ユーザーのテレビセットに情報をディスプレイすることが出来ることである。オンスクリーンディスプレイ装置がこの目的に備えられている。通常このディスプレイの例としてはチャンネル番号又は時刻等であるが、加えてケーブル局からのメッセージ、例えば“貴下は料金切れになっています。恐れ入りますが御ご送金下さい。”という様な文が表示出来る。電子メール即ち“Eメール”の特徴も備わっていてケーブルシステムを通じてテレビセット(又はその他のディスプレイ装置)にメッセージを送信出来る。オンスクリーンディスプレイの実行および(または)変更はコンバータにタウンロードされたファームウェアにより行われる。」(第11頁左下欄第8行?右下欄第2行) (さ)「その他の機能はコンバータに対する通信規約及びケーブルテレビ回路網を通じて供給されるザービスへのユーザーインターフェイスを含めて、コンバータにダウンロードされたファームウェアにより履行することが出来る。 例えば、ユーザーはインパルス応答ベースで有料番組を指定することが可能である。この様な番組を指定する方法は、ダウンロードの可能なファームウエアを通じて修正することが出来る。」(第12頁左上欄第10行?第18行) 発明の効果 (し)「ケーブルテレビジョンシステムにおいて、ケーブル局のヘッドエンドからユーザーのコンバータにコントロールプログラムを送り、遠隔操作でコンバータの機能を変更するシステムである。送出されたプログラムが完全に受信されたか、もし不完全に受信されたときはそれを取り繕い、またコンバータに記憶された後も、常時その完全さを確認する手段が整っている。このためヘッドエンド側にとっては、ユーザーの希望でコンバータの機能を変更するに当り、装置の改善及び置替え等のため、ユーザー宅に出張する手間がはぶけ、また盗視聴を実質的に不可能にする様プログラムが組込まれているメリットがある。 一方ユーザーにとっては、プレミアム番組の視聴とか、ビデオレコーダの遠隔制御とか、オンスクリーンディスプレイとか、種々のレベルサービスが随時コンバータの操作で得られているのも本発明の効果である。」(第16頁左下欄下から4行?右下欄第14行) イ 甲第1号証に記載された発明 (ア)ケーブルテレビジョンシステム 甲第1号証には、 「第1図はケーブルテレビジョンシステムのヘッドエンド機能を10で表し、加入者機器を12で表したものである。へッドエンドは分配ケーブル36を経て加入者と通信する。」(甲第1号証第8頁左下欄下から第3行?同頁右下欄第1行、上記(い)) と記載され、 「ダウンロードファームウエアのためのコンバータヘの二次チャンネルの使い方は第1図に図示したとおりである。コンバータアドレス、プログラム認可コード、その他のデータを含むコントロール信号はアドレス表示コントローラ14からコントロールデータ変調器26を経てコンバータ40に伝送される。コントロールデータ変調器26の出力はタップ34で分配ケーブル36に接続され、データはタップ38を経てコンバータ40で受信される。コントロールデータ変調器は一次チャンネルでデータ信号を伝達し、本発明ではこのデータにアドレス表示にコントローラ14からのダウンロードされた特定のファームウエアをコンバータが受信する命令を含ませてある。」(甲第1号証第9頁左上欄第10行?同頁右上欄第3行、上記(う)) と記載されており、さらに第1図の記載から、甲第1号証に記載された「ケーブルテレビジョンシステム」は、加入者機器12に、ヘッドエンド機器10のアドレス表示コントローラ14から特定のファームウエアをダウンロードするシステムである。 (イ)複数の加入者機器 甲第1号証には、 「加入者側では、加入者はコンバータ40の出力に接続された一つ又はそれ以上のビデオ機器42、44を備えている。今例えばビデオレコーダをビデオレコーダ(“VCR”)とする。本発明によるとコンバータ40へのダウンロードされたファームウエアは、VCRに関連する機能も備えており、例えばタイムレコードプログラミングの機能もまた一例である。」(甲第1号証第9頁左下欄第11行?第18行、上記(か)) と記載され、さらに図1の記載から、加入者機器12はコンバータ40とビデオレコーダからなる。 また、甲第1号証には、 「本発明によると、ヘッドエンド10によりダウンロードされた異なるファームウェアパッケージに対し、コンバータ40は異なる機能を備えることになり、サービスのレベルが高くなるとコンバータの機能も増加することになる。課金システム22は各加入者に対するザービスレベルを記録保管しておき、また各加入者のコンバータ機能に準して、各コンバータに特定のファームウェアパッケージを割り当てる。」(甲第1号証第9頁左下欄第2行?第10行、上記(お)) と記載され、さらに甲第1号証がケーブルテレビジョンシステムに関するものであることから、加入者機器は複数あることが理解できる。 以上より、甲第1号証に記載された「ケーブルテレビジョンシステム」は複数の加入者機器12を備え、複数の加入者機器12はコンバータ40とビデオレコーダからなる。 (ウ)コンバータ 甲第1号証には、 「コンバータアドレス、プログラム認可コード、その他のデータを含むコントロール信号はアドレス表示コントローラ14からコントロールデータ変調器26を経てコンバータ40に伝送される。」(甲第1号証第9頁左上欄第12行?第16行、上記(う)) 「コントロールデータ変調器は一次チャンネルでデータ信号を伝送し、本発明ではこのデータにアドレス表示にコントローラ14からのダウンロードされた特定のファームウェアをコンバータが受信する命令を含ませてある。」(甲第1号証第9頁左上欄第19行?右上欄第3行、上記(う)) と記載されているから、「コンバータアドレス、プログラム認可コード、その他のデータを含むコントロール信号はアドレス表示コントローラ14からコンバータ40に伝送される。」 甲第1号証には、 「第2図に本発明に関するコンバータ40の一つの具体例の適切な構成を示す。図示の例では、コンバータは一つのデータチャンネルアドレス表示データを、また他のデータチャンネルでダウンロードされたファームウェアを受信する。」(甲第1号証第9頁右下欄第7行?第11行、上記(き)) と記載されているから、コンバータ40はファームウエアを受信するものである。 以上より、コンバータ40は、コンバータアドレス、ファームウエアを受信するものである。 (エ)RAM 甲第1号証には、 「アドレス表示コントローラから適切な指令を受けると、コンバータは現在実行中のダウンロードパッケージを中止し、ダウンロードされた指定するファームウェアパッケージを受けるため適当するデータチャンネルにアクセスし、ファームウェアを受け、不揮発性ファームウェアRAM60に送る。」(甲第1号証第10頁左下欄第6行?第11行、上記(く)) と記載されているから、 「アドレス表示コントローラから適切な指令を受けると」「ファームウェアを受け、不揮発性ファームウェアRAM60に送る」ものである。 「アドレス表示コントローラから適切な指令」に関して、甲第1号証には、 「第1図には2チャンネルの具体化例が示してあるが、ファームウェアはタップ30でケーブル網と接続されたファームウェア変調器24により2次チャンネルとして伝送される。1次チャンネルを通しての命令を受け取ると、コンバータ40は指定ファームウェアを受けるために2次チャンネルにスイッチされる。」(甲第1号証第9頁右上欄第4行?第10行、上記(え))と記載され、「命令」は「1次チャンネルを通して」「受け取(る)」られるものであり、 「ダウンロードファームウェアのためのコンバータへの二次チャンネルの使い方は第1図に図示したとおりである。コンバータアドレス、プログラム認可コード、その他のデータを含むコントロール信号はアドレス表示コントローラ14からコントロールデータ変調器26を経てコンバータ40に伝送される。コントロールデータ変調器26の出力はタップ34で分配ケーブル36に接続され、データはタップ38を経てコンバータ40で受信される。コントロールデータ変調器は一次チャンネルでデータ信号を伝送し、本発明ではこのデータにアドレス表示にコントローラ14からのダウンロードされた特定のファームウェアをコンバータが受信する命令を含ませてある。」(甲第1号証第9頁左上欄第10行?右上欄第3行、上記(う))と記載されており、「一次チャンネル」で伝送される「コントロール信号」には「コンバータアドレス」「その他のデータ」が含まれ、「データ」に「アドレス表示にコントローラ14からのダウンロードされた特定のファームウェアをコンバータが受信する命令を含ませてある」から、「アドレス表示コントローラから適切な指令」には、「コンバータアドレス」が含まれる。 したがって、「アドレス表示コントローラからコンバータアドレスを含む適切な指令を受けるとファームウェアを受け、不揮発性ファームウェアRAM60に送る」。 (オ)プロセッサ 甲第1号証には、 「第2図に本発明に関するコンバータ40の一つの具体例の適切な構成を示す。図示の例では、コンバータは一つのデータチャンネルアドレス表示データを、また他のデータチャンネルでダウンロードされたファームウエアを受信する。本発明のその他の具体例では、アドレス表示データとファームウエアの両者を一つのデータチャンネルで受信したり、またファームウエアを一般電話回線の様なその他の手段で搬送したりすることも行われる。 第2図に示した2つのチャンネルを使用する具体例では、マイクロプロセッサ50が周波数跳躍受信器52を経てケーブル36からデータを受ける。送信器61及び戻り経路62は、コンバータが双方向ケーブルテレビジョンシステムとして使用される場合、マイクロプロセッサ50からアドレス表示コントローラ14への帰路のために設けられている。」(甲第1号証第9頁右下欄第7行?第10頁左上欄第4行、第2図、上記(き)) 「種々のメモリーデバイスがマイクロプロセッサ50に接続されており、読み出し専用メモリー(“ROM”)56、ランダムアクセスメモリ(“RAM”)58、および不揮発性ファームウェアRAM60である。ROM56中にはコンバータ40にダウンロードされたファームウェアパッケージを回収し、実行するプログラムが含まれている。アドレス表示コントローラから適切な指令を受けると、コンバータは現在実行中のダウンロードパッケージを中止し、ダウンロードされた指定するファームウェアパッケージを受けるため適当するデータチャンネルにアクセスし、ファームウェアを受け、不揮発性ファームウェアRAM60に送る。」(甲第1号証第10頁右上欄第18行?左下欄第11行、上記(く)) と記載されている。 コンバータ40は、プロセッサ50を備えており、プロセッサ50には不揮発性ファームウェアRAM60が接続されている。プロセッサ50は、アドレス表示コントローラから適切な指令を受けると、ダウンロードされた指定するファームウェアパッケージを受けるため適当するデータチャンネルにアクセスし、ファームウェアを受け、不揮発性ファームウェアRAM60に送る。 (カ)甲第1発明 以上より、甲第1号証には、次の発明(以下「甲第1発明」という。)が記載されている。 「加入者機器12に、ヘッドエンド機器10のアドレス表示コントローラ14から特定のファームウエアをダウンロードするケーブルテレビジョンシステムにおいて、 複数の加入者機器12を備え、複数の加入者機器12はコンバータ40とビデオレコーダからなり、 コンバータ40は、コンバータアドレス、ファームウエアを受信するものであり、 コンバータ40は、プロセッサ50を備えており、 プロセッサ50には不揮発性ファームウェアRAM60が接続され、 プロセッサ50は、アドレス表示コントローラ14からコンバータアドレスを含む適切な指令を受けると、ダウンロードされた指定するファームウェアパッケージを受けるため適当するデータチャンネルにアクセスし、ファームウェアを受け、不揮発性ファームウェアRAM60に送る ことを特徴とするケーブルテレビジョンシステム。」 (3)対比 1A 「ソフトウエアの更新情報をダウンロード可能なテレビジョン・システム」 甲第1発明は、「加入者機器12に、ヘッドエンド機器10のアドレス表示コントローラ14から特定のファームウエアをダウンロードするケーブルテレビジョンシステム」であり、「ケーブルテレビジョンコンバータまたはその他の端末装置の機能を、遠隔操作で変更するための・・・システムを提供するものである。」(甲第1号証第6頁右下欄第2行?第4行) ダウンロードされるファームウエアはファームウエアを変更するためのものであるから、ファームウエアは「ソフトウエアの更新情報」といえる。 また、「ケーブルテレビシステム」は「テレビジョン・システム」といえる。 したがって、甲第1発明は、「ソフトウエアの更新情報をダウンロード可能なテレビジョン・システム」といえる。 1B 「複数の受信装置であって、各々が、テレビジョン受信機と、セットトップ・ボックスと、ビデオ・レコーダと、テレビジョン及びビデオ・レコーダの結合体とのいずれか1つからなる、複数の受信装置」 甲第1発明は、「複数の加入者機器12を備え、複数の加入者機器12はコンバータ40とビデオレコーダからな」る。また、甲第1発明の「コンバータ40は、コンバータアドレス、ファームウエアを受信するものであ」るから、加入者機器12は受信装置といえる。 したがって、甲第1発明における「複数の加入者機器12を備え、複数の加入者機器12はコンバータ40とビデオレコーダからな」ることは、本件特許発明1における「複数の受信装置であって、各々が、テレビジョン受信機と、セットトップ・ボックスと、ビデオ・レコーダと、テレビジョン及びビデオ・レコーダの結合体とのいずれか1つからなる、複数の受信装置」といえる。 1C 「前記複数の受信装置の各々に対応して設けられた受信機であって、前記ソフトウェアの更新情報に関連しかつ前記複数の受信装置の少なくとも1つを識別する識別子を含んでいるデータを受信する受信機」 甲第1発明は、「複数の加入者機器12を備え、複数の加入者機器12はコンバータ40とビデオレコーダからなり、 コンバータ40は、コンバータアドレス、ファームウエアを受信するものであ」る。 上記1Bのとおり「加入者機器12」は「受信装置」といえる。 「コンバータ40は、コンバータアドレス、ファームウエアを受信するものであ」るから、「コンバータ40」は「受信機」といえ、「コンバータアドレス」は、コンバータのアドレスであるから、コンバータを識別する識別子といえる。 「ファームウエア」は、上記1Aのとおり「ソフトウェアの更新情報」といえるから、「コンバータ40」は、「ソフトウェアの更新情報」に関連するデータを受信するといえる。 したがって、甲第1発明の「コンバータ40」は、 「前記複数の受信装置の各々に対応して設けられた受信機であって、前記ソフトウェアの更新情報に関連するデータ及び前記複数の受信装置の少なくとも1つを識別する識別子を含んでいるデータを受信する受信機」といえる。 もっとも、本件特許発明1が受信するデータが「前記ソフトウェアの更新情報に関連しかつ前記複数の受信装置の少なくとも1つを識別する識別子を含んでいるデータ」であるのに対し、甲第1発明が受信するデータは、そのようなデータではない点で相違する。 1D 「前記複数の受信機それぞれに対応して設けられ、前記ソフトウエアの更新情報に関連するデータを記憶するメモリであって、前記識別子が対応する受信装置を表している場合にのみ、当該データが記憶される、ところのメモリ」 甲第1発明は、 「コンバータ40は、プロセッサ50を備えており、 プロセッサ50には不揮発性ファームウェアRAM60が接続され、 プロセッサ50は、アドレス表示コントローラ14からコンバータアドレスを含む適切な指令を受けると、ダウンロードされた指定するファームウェアパッケージを受けるため適当するデータチャンネルにアクセスし、ファームウェアを受け、不揮発性ファームウェアRAM60に送る」ものである。 「不揮発性ファームウェアRAM60」は、「コンバータ40」に設けられ、「前記ソフトウエアの更新情報に関連するデータ」である「ファームウエア」(上記1A参照)を記憶するものである。 「プロセッサ50は、アドレス表示コントローラ14からコンバータアドレスを含む適切な指令を受けると、ダウンロードされた指定するファームウェアパッケージを受けるため適当するデータチャンネルにアクセスし、ファームウェアを受け、不揮発性ファームウェアRAM60に送る」ものであり、「コンバータアドレス」は「識別子」といえる(上記1C参照)から、「不揮発性ファームウェアRAM60」は、「前記識別子が対応する受信装置を表している場合にのみ、当該データが記憶される、ところのメモリ」といえる。 したがって、甲第1発明の「不揮発性ファームウェアRAM60」は、「前記複数の受信機それぞれに対応して設けられ、前記ソフトウエアの更新情報に関連するデータを記憶するメモリであって、前記識別子が対応する受信装置を表している場合にのみ、当該データが記憶される、ところのメモリ」といえる。 1E 「前記受信装置のそれぞれに対応して設けられたプロセッサであって、それぞれが、前記メモリと前記受信機の少なくとも1つとに結合しており、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装すべき旨のユーザ指示に応答して、前記データを用いて、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを、前記受信装置の少なくとも1つにおいて実装するプロセッサ」 甲第1発明は、 「コンバータ40は、プロセッサ50を備えており、 プロセッサ50には不揮発性ファームウェアRAM60が接続され、 プロセッサ50は、アドレス表示コントローラ14からコンバータアドレスを含む適切な指令を受けると、ダウンロードされた指定するファームウェアパッケージを受けるため適当するデータチャンネルにアクセスし、ファームウェアを受け、不揮発性ファームウェアRAM60に送る」ものである。 「コンバータ40」は、「受信装置」といえる「加入者機器12」に備えられるものであり、「コンバータ40」は「プロセッサ50」を備えているから、「プロセッサ50」は、受信装置のそれぞれに対応して設けられているといえる。また、「プロセッサ50」は、メモリである「不揮発性ファームウェアRAM60」に接続、すなわち結合されている。「ファームウエアを受け、不揮発性ファームウェアRAM60に送る」ことは、ファームウエアが不揮発性ファームウェアRAM60に記憶されることになるから、実装されるといえる。 したがって、甲第1発明の「プロセッサ50」は、「前記受信装置のそれぞれに対応して設けられたプロセッサであって、それぞれが、前記メモリと前記受信機の少なくとも1つとに結合しており、前記データを用いて、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを、前記受信装置の少なくとも1つにおいて実装するプロセッサ」といえる。 もっとも、本件特許発明1においては、プロセッサが「前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装すべき旨のユーザ指示に応答して」前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装するのに対し、甲第1発明においては、プロセッサが「前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装すべき旨のユーザ指示に応答して」前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装するものではない点で相違する。 1F 「テレビジョン・システム」 甲第1発明は、「ケーブルテレビジョンシステム」であるから、「テレビジョン・システム」といえる。 以上より、本件特許発明1と甲第1発明との一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] ソフトウエアの更新情報をダウンロード可能なテレビジョン・システムにおいて、 複数の受信装置であって、各々が、テレビジョン受信機と、セットトップ・ボックスと、ビデオ・レコーダと、テレビジョン及びビデオ・レコーダの結合体とのいずれか1つからなる、複数の受信装置と 前記複数の受信装置の各々に対応して設けられた受信機であって、前記ソフトウェアの更新情報に関連するデータ及び前記複数の受信装置の少なくとも1つを識別する識別子を含んでいるデータを受信する受信機と、 前記複数の受信機それぞれに対応して設けられ、前記ソフトウエアの更新情報に関連するデータを記憶するメモリであって、前記識別子が対応する受信装置を表している場合にのみ、当該データが記憶される、ところのメモリと、 前記受信装置のそれぞれに対応して設けられたプロセッサであって、それぞれが、前記メモリと前記受信機の少なくとも1つとに結合しており、前記データを用いて、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを、前記受信装置の少なくとも1つにおいて実装するプロセッサとを備えていることを特徴とするテレビジョン・システム。 [相違点1] 本件特許発明1が受信するデータが「前記ソフトウェアの更新情報に関連しかつ前記複数の受信装置の少なくとも1つを識別する識別子を含んでいるデータ」であるのに対し、甲第1発明が受信するデータは、そのようなデータではない点 [相違点2] 本件特許発明1においては、プロセッサが「前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装すべき旨のユーザ指示に応答して」前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装するのに対し、甲第1発明においては、プロセッサが「前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装すべき旨のユーザ指示に応答して」前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装するものではない点 (4)判断 ア [相違点1]について 甲第2号証には、次の記載がある。 「 【0001】 【産業上の利用分野】 この発明はテレビゲームデータの送受信システムに関し、さらに詳しく言えば、子局(各家庭)などにおいて居ながらにして所望とするテレビゲームソフトを選択して使用できるようにしたテレビゲームデータの送受信システムに関するものである。」 「 【0012】 【実施例】 まず、図1を参照しながらこの送受信システムの概略を説明する。この実施例では基地局1は有線テレビジョン網のCATV局として示されており、子局2には同基地局1と同軸ケーブルを介して接続される各家庭が想定されている。」 「 【0024】 図6にはデータフレームDFのフォーマットが例示されている。このデータフレームDFもアドレス部、制御部および情報部を備え、情報部には同情報部の全容量、データフレームの番号およびゲームデータが書き込まれる。この場合、1フレーム最大4102バイトであるため、ゲームデータは任意の数に分割して伝送される。例えば、1Mbitのゲームは32フレームを必要とし、8Mbitのゲームは256フレームに分割して伝送される。 【0025】 この実施例によると、データ信号はHDLC(ハイレベルデータリンク制御手順)によって伝送される。このHDLC処理時に上記の各フレームCF,GFおよびDFの先頭と後尾にフラグが立てられる。また、このフラグとともにFCS(フレームチェックシーケンス)が付加される。なお、アドレス部に関して、本来のHDLCにおいては同アドレス部には受信する端末を指定するためのデータが書き込まれるのであるが、このシステムでは送信データをフレームごとに識別すめためのコードとして用いている。」 甲第2号証には、受信するデータに、受信する端末を指定するためのデータを含めることが記載されている。甲第2号証に記載されている技術は、基地局から子局にデータを伝送する技術、すなわちダウンロードする技術であるから、甲第1発明と同じ技術分野の技術であり、甲第1発明に甲第2号証に記載された技術を適用して、甲第1発明が受信するデータを「前記ソフトウェアの更新情報に関連しかつ前記複数の受信装置の少なくとも1つを識別する識別子を含んでいるデータ」とすることは、当業者が容易になし得ることである。 イ [相違点2]について 甲第1号証には、 「ヘッドエンドの位置から端末の変更が自動的に行える効果により、この様な方法およびシステムは、機能変更のため加入者の端末装置の改良または置き替えに技術者が加入者宅に出張する必要がなくなることになる。 本発明はケーブルテレビジョンコンバータまたはその他の端末装置の機能を、遠隔操作で変更するための方法とシステムを提供するものである。」(第6頁左下欄下から4行?右下欄4行、上記(あ)) と記載されており、甲第1発明は、「ヘッドエンドの位置から端末の変更が自動的に行える」ものであり、「ケーブルテレビジョンコンバータまたはその他の端末装置の機能を、遠隔操作で変更する」ものである。 また、甲第1発明は、ファームウエアをダウンロードするものであり、ファームウエアは、「ハードウエアの基本的制御のために機器に組み込まれたソフトウエア」(広辞苑第六版、甲第7号証)である。 しかしながら、甲第1号証には、「ソフトウエアの更新情報」といえる「ファームウエア」を「実装すべき旨のユーザ指示に応答して」実装することについての記載はなく、示唆もない。 また、甲第1号証には、スクランブル解除について 「コンバータ40にはまたケーブルテレビ網で受信した特別プログラムのスクランブル解除装置70が含まれている。種々のスクタンブル解除法が周知であり、また相異なる技法がコンバータに夫々異なるファームウェアをダウンロードさせることで適用出来る。」(第11頁左下欄第2行?第7行、上記(け)) との記載があるが、この記載は、種々のスクランブル解除法が、ファームウエアをダウンロードすることで適用できることを意味しているのであって、この記載が「ソフトウエアの更新情報」といえる「ファームウエア」を「実装すべき旨のユーザ指示に応答して」実装することを示唆しているものとは、認められない。 また、甲第1号証には、 「ケーブルテレビジョンシステムにおいて、ケーブル局のヘッドエンドからユーザーのコンバータにコントロールプログラムを送り、遠隔操作でコンバータの機能を変更するシステムである。送出されたプログラムが完全に受信されたか、もし不完全に受信されたときはそれを取り繕い、またコンバータに記憶された後も、常時その完全さを確認する手段が整っている。このためヘッドエンド側にとっては、ユーザーの希望でコンバータの機能を変更するに当り、装置の改善及び置替え等のため、ユーザー宅に出張する手間がはぶけ、また盗視聴を実質的に不可能にする様プログラムが組込まれているメリットがある。」(第16頁左下欄下から4行?右下欄第9行、上記(し))と記載され、「ヘッドエンド側にとっては、ユーザーの希望でコンバータの機能を変更するに当り」との記載から、ヘッドエンド側がユーザーの希望でコンバータの機能を変更することが記載されているといえる。 しかしながら、この記載は、ヘッドエンド側がユーザーの希望でコンバータの機能を変更することがあることを開示しているにすぎないものであり、また、甲第1号証には「ユーザーの希望」がどのような希望であるのかの記載や示唆もないことから、「ユーザーの希望で」が、「ソフトウエアの更新情報」といえる「ファームウエア」を「実装すべき旨のユーザ指示に応答して」を示唆しているものとは認められない。 すなわち、上記「ユーザーの希望で」の記載が、 「前記受信装置のそれぞれに対応して設けられたプロセッサであって、それぞれが、前記メモリと前記受信機の少なくとも1つとに結合しており、前記データを用いて、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを、前記受信装置の少なくとも1つにおいて実装するプロセッサ」において、 前記プロセッサが『前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装すべき旨のユーザ指示に応答して、』「前記データを用いて、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを、前記受信装置の少なくとも1つにおいて実装する」 ことを示唆するものとは認められない。 甲第2号証には、以下の記載がある。 「 【0001】 【産業上の利用分野】 この発明はテレビゲームデータの送受信システムに関し、さらに詳しく言えば、子局(各家庭)などにおいて居ながらにして所望とするテレビゲームソフトを選択して使用できるようにしたテレビゲームデータの送受信システムに関するものである。」 「 【0012】 【実施例】 まず、図1を参照しながらこの送受信システムの概略を説明する。この実施例では基地局1は有線テレビジョン網のCATV局として示されており、子局2には同基地局1と同軸ケーブルを介して接続される各家庭が想定されている。 【0013】 この送受信システムにおいては、基地局1からテレビゲームソフトのデータ信号が所定の周波数をもって各子局2に伝送され、これに関連して各子局2側にはゲーム機本体(ファミリーコンピュータ)3に接続される受信用のアダプタ4が用意される。」 「 【0030】 ここで、図7に例示されているゲームメニュー画面において、ユーザーにより操作部3aの例えばキーパッドなどにてゲームが選択されると、制御回路44はそのゲームデータをDRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)45に書き込む。これにより、ユーザーはゲーム機本体3にそのゲームデータを読み出しながら、それを楽しむことができる。 【0031】 DRAM45に書き込めるゲーム数などはそのメモリ容量などに依存し、任意に設定することができる。また、消去なども制御回路44を介して任意に行なうことが可能である。」 「 【0033】 参考までに、図8に開始手順のフローチャートを示す。まず、アダプター4をゲーム機本体3にセットする。そして、電源をONにする。ディスプレイ5にゲームメニューが表示される(図7参照)。キーパッドなどにてゲームを選択する。これにより、そのゲームが同アダプター4のDRAM45に取り込まれ、ゲーム開始状態となる。」 以上より、甲第2号証には、CATVの送受信システムにおいて、ユーザの選択によりゲームをダウンロードすることが開示されている。 しかしながら、ダウンロードされるゲームは、「ファームウエア」ではないので、「ソフトウエアの更新情報」といえる「ファームウエア」を「実装すべき旨のユーザ指示に応答して」実装することについての記載や示唆があるとはいえない。 そうすると、甲第1号証及び甲第2号証には、「ソフトウエアの更新情報」といえる「ファームウエア」を「実装すべき旨のユーザ指示に応答して」実装することについての記載や示唆があるとはいえないのであるから、本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとは認められない。 (5)請求人の主張について 請求人は、平成21年10月8日付け手続補正書第13頁第1行?第14行において、上記相違点2の容易想到性について次のように主張している。 「甲第2号証には、ユーザーの選択によりソフトウエア(ここではゲーム)のダウンロードを行う技術が記載されている。 甲1発明と甲第2号証記載の技術はいずれも、ユーザー宅のテレビシステムをオンラインで通信をしてソフトウエアをインストールするものである点で技術分野を共通する。 そして、甲1発明では、ファームウエアというユーザーがその内容に対する関心が低いソフトウエアをダウンロードの対象としていたのに対して、甲第2号証記載の技術では、ゲームというユーザがその内容に対する関心が高いソフトウエアをダウンロードの対象としている。 そうであれば、甲1発明のケーブルテレビジョンシステムにおいても、ユーザがその内容に対する関心が高いソフトウエアをダウンロードするシステムを構築しようとすれば、当然に、ユーザーによる選択の処理を組み合わせるはずであり、この程度の周知技術を組み合わせることは、当業者であれば極めて容易に想到できたものである。」 上記主張における「甲1発明のケーブルテレビジョンシステムにおいても、ユーザがその内容に対する関心が高いソフトウエアをダウンロードするシステムを構築しようとすれば」の部分は、甲1発明と甲第2号証の技術を組み合わせるための前提であるが、このようにする理由は何ら示されておらず、甲1発明に甲第2号証の技術を組み合わせて本件特許発明1の上記相違点2に係る発明特定事項が容易に想到されるとは認められない。 また、請求人は、陳述要領書において、甲1発明を改変する動機付けとして甲第1号証第11頁左下欄第2行?第7行を挙げる。 「コンバータ40にはまたケーブルテレビ側で受信した特別プログラムのスクランブル解除装置70が含まれている。個々のスクランブル解除法が周知であり、また相異なる技法がコンバータに夫々異なるファームウエアをダウンロードさせることで適用できる。」 この記載が「ソフトウエアの更新情報」といえる「ファームウエア」を「実装すべき旨のユーザ指示に応答して」実装することを示唆しているものとは、認められないことは上記のとおりである。 また、甲1発明に甲第2号証の技術をどのように結びつけて本件特許発明1を導くかについては、何ら示されておらず、上記記載があるからといって、甲1発明に甲第2号証の技術を組み合わせて本件特許発明1の上記相違点2に係る発明特定事項が容易に想到されるとは認められない。 さらに、請求人は、陳述要領書において、次のように主張している。 「なお、ファームウェアは、ハードウェアの基本的制御のために機器に組み込まれるソフトウエアであるため、ファームウエアの実装中(更新中)は、機器の使用が不可能になることは、広く知られた事実である。 このため、機器の使い勝手を向上させるために機器の使用が不可能になるタイミングをユーザに委ねるようにすること、つまり、ファームウェアの実装(更新)をユーザの指示により行うように設計すること、の動機付けは当業者に当然に存在するものである。」(陳述要領書3頁2?8行) しかしながら、甲第1号証には、「ソフトウエアの更新情報」といえる「ファームウエア」を「実装すべき旨のユーザ指示に応答して」実装することについての記載はなく、示唆もないことは上記のとおりであり、甲1発明のようなケーブルテレビジョンシステムのコンバータのファームウエアの実装をユーザ指示によって行うことが周知の技術とも認められないので、「ファームウエアの実装中(更新中)は、機器の使用が不可能になる」からといって、甲1発明のファームウエアの実装をユーザ指示により行うようにする動機付けがあるとは認められない。 そして、請求人は、甲第8号証を挙げ、「ダウンロードしたファームウェアをユーザの指示に基づいて更新する技術は既に本件特許出願当時から周知であったのであるから、甲1発明に甲2号証記載の技術を組み合わせることは後知恵であるといえるはずがなく、容易に想到し得たものである。」(陳述要領書第5頁第18行?第21行)と主張し、また、「甲第9号証及び甲第10号証によって示されるように、ファームウェアをユーザの指示に基づいて更新すること自体は、本件特許発明以前より周知の事実である」から「甲1発明に甲第2号証記載の技術を組み合わせることは本件特許出願時の当業者にとって容易であ」る(陳述要領書第6頁下から4行?第7頁第1行)と主張している。 しかしながら、上記のとおり甲1発明に甲第2号証の技術を組み合わせて本件特許発明1の上記相違点2に係る発明特定事項が容易に想到される理由がないのであるから、この動機付けを採用して甲1発明に甲第2号証記載の技術を組み合わせたとしても、本件特許発明1の上記相違点2に係る発明特定事項が容易に想到されるとは認められない。 (6)まとめ 以上のとおり、本件特許発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとは認められない。 2 本件特許発明2 (1)分説 本件特許発明2を分説すると次のとおりである。 2A 請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、該システムはさらに、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つに関係する情報を表示するスクリーンを有するデバイスを少なくとも1つ備えていることを特徴とするテレビジョン・システム。 (2)甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、 「コンバータ40により、ユーザーのテレビセットに情報をディスプレイすることが出来る」(第11頁左下欄第8行?第10行、上記(こ)) と記載されているから、コンバータ40は、ユーザーのテレビセットに情報をディスプレイするものである。 そうすると、上記1(2)イ(カ)で認定した甲第1発明のコンバータ40がさらに、ユーザーのテレビセットに情報をディスプレイする以下の発明(以下「甲第1発明2」という。)を認定することができる。 「加入者機器12に、ヘッドエンド機器10のアドレス表示コントローラ14から特定のファームウエアをダウンロードするケーブルテレビジョンシステムにおいて、 複数の加入者機器12を備え、複数の加入者機器12はコンバータ40とビデオレコーダからなり、 コンバータ40は、ユーザーのテレビセットに情報をディスプレイするものであり、 コンバータ40は、コンバータアドレス、ファームウエアを受信するものであり、 コンバータ40は、プロセッサ50を備えており、 プロセッサ50には不揮発性ファームウェアRAM60が接続され、 プロセッサ50は、アドレス表示コントローラ14からコンバータアドレスを含む適切な指令を受けると、ダウンロードされた指定するファームウェアパッケージを受けるため適当するデータチャンネルにアクセスし、ファームウェアを受け、不揮発性ファームウェアRAM60に送る ことを特徴とするケーブルテレビジョンシステム。」 (3)対比 甲第1発明2は、甲第1発明と「コンバータ40は、ユーザーのテレビセットに情報をディスプレイするものであり、」以外の部分は同じであり、本件特許発明2は、「請求項1記載のテレビジョンシステムにおいて」として、本件特許発明1を引用しているから、上記1(3)を援用する。 2A 「該システムはさらに、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つに関係する情報を表示するスクリーンを有するデバイスを少なくとも1つ備えていること」 甲第1発明2のコンバータ40は、「ユーザーのテレビセットに情報をディスプレイするものであ(り)」るから、甲第1発明2は、「情報を表示するスクリーンを有するデバイスを少なくとも1つ備えている」といえる。 甲第1号証には、 「その他の特徴として、コンバータ40により、ユーザーのテレビセットに情報をディスプレイすることが出来ることである。オンスクリーンディスプレイ装置がこの目的に備えられている。通常このディスプレイの例としてはチャンネル番号又は時刻等であるが、加えてケーブル局からのメッセージ、例えば“貴下は料金切れになっています。恐れ入りますが御ご送金下さい。”という様な文が表示出来る。電子メール即ち“Eメール”の特徴も備わっていてケーブルシステムを通じてテレビセット(又はその他のディスプレイ装置)にメッセージを送信出来る。オンスクリーンディスプレイの実行および(または)変更はコンバータにタウンロードされたファームウェアにより行われる。」(第11頁左下欄第8行?右下欄第2行、上記(こ)) と記載されている。 この記載からは、 「コンバータ40により、ユーザーのテレビセットに情報をディスプレイすることが出来ること」、 「オンスクリーンディスプレイ装置がこの目的に備えられている」こと、 「“貴下は料金切れになっています。恐れ入りますが御ご送金下さい。”という様な文が表示出来る」こと、 「オンスクリーンディスプレイの実行および(または)変更はコンバータにタウンロードされたファームウェアにより行われる」こと が理解できる。 「“貴下は料金切れになっています。恐れ入りますが御ご送金下さい。”」は、メッセージそのものであり、ソフトウエアの更新情報といえるファームウエアに関係する情報とはいえない。 そうすると、甲第1発明2は、「情報を表示するスクリーンを有するデバイスを少なくとも1つ備えている」といえるものの、本件特許発明2においては、表示する「情報」が「前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つに関係する情報」であるのに対し、甲第1発明2においては、表示する「情報」が「前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つに関係する情報」でない点で相違する。 以上より、本件特許発明2と甲第1発明2との相違点は、上記1(3)の[相違点1]、[相違点2]に加え、次の[相違点3]である。 [相違点3] 表示する「情報」が、本件特許発明2においては「前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つに関係する情報」であるのに対し、甲第1発明2においては「情報」が「前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つに関係する情報」でない点 (4)判断 [相違点1]、[相違点2]は、本件特許発明1の[相違点1]、[相違点2]と同じであるので、上記1(4)の判断を援用する。 [相違点3]に関し、甲第2号証には、「前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つに関係する情報」を表示することの記載や示唆はない。 そうすると、甲第1発明2において、表示する「情報」を「前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つに関係する情報」とすることは、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明に基づいて容易になし得たこととは認められない。 また、本件特許発明2は、「請求項1記載のテレビジョンシステムにおいて」として、本件特許発明1を引用しているところ、本件特許発明1は、上記1(4)のとおり、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものでないから、本件特許発明2も同じ理由で甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものでない。 (5)まとめ 以上のとおり、本件特許発明2は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとは認められない。 第五 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1及び2に係る発明を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定においてさらに準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-13 |
結審通知日 | 2010-04-15 |
審決日 | 2010-04-27 |
出願番号 | 特願平9-501931 |
審決分類 |
P
1
123・
121-
Y
(H04N)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 古川 哲也 |
特許庁審判長 |
藤内 光武 |
特許庁審判官 |
志摩 兆一郎 小池 正彦 |
登録日 | 2007-06-08 |
登録番号 | 特許第3965462号(P3965462) |
発明の名称 | ダウンロード可能なソフトウエアの更新情報を有するテレビジョン・システム |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 山本 秀策 |
復代理人 | 大塩 竹志 |
代理人 | 安村 高明 |