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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) C02F
管理番号 1218124
判定請求番号 判定2010-600011  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2010-07-30 
種別 判定 
判定請求日 2010-03-31 
確定日 2010-06-24 
事件の表示 上記当事者間の特許第4253351号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「浄水器」は、特許第4253351号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨・手続の経緯
本件判定の請求は、平成22年3月31日になされ、その請求の趣旨は、イ号の説明及びイ号図面に示す型式AS-650の浄水器は、特許第4253351号発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属するとの判定を求めるものである。
これに対して、同年4月27日付け(発送日は同年同月30日)で被請求人に判定請求書副本を送達するとともに、期間を指定して、答弁書を提出する機会を与えたところ、 平成22年5月27日に答弁書が提出された。

2.本件特許発明
本件特許発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであり、このうち、請求人が上記判定を求める請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ、「本件第1、2発明」という。)は、それぞれ、その構成要件を符号をつけて分説して記載すると次のとおりのものである。

「【請求項1】
(ア)水道水の流入側配管が接続されたケーシングと、
(イ)前記ケーシング内に配設され前記流入側配管から流入した水道水の全部又は一部の塩素を除去する筒状の塩素除去フィルタと、
(ウ)前記ケーシングに接続され水道水が流出する流出側配管と、
(エ)前記ケーシングの端部に被装されたヘッドキャップと、
(オ)一端部が前記ヘッドキャップに固定され他端部が前記塩素除去フィルタの中空部の一端側に挿入された筒体と、
(カ)前記筒体の側面に開口した筒体通水部と、
(キ)前記筒体の内側又は外側に配設され手動又は電動で回動又は上下動する弁体と、を備え、
(ク)前記弁体は、前記筒体通水部と前記中空部とを連通するバイパス路の開閉度を変え、前記バイパス路の閉時に前記流入側配管から流入した水道水の全部が前記塩素除去フィルタを通過し、開時に水道水の一部が前記塩素除去フィルタを通過しないで前記バイパス路を通過して前記塩素除去フィルタを通過した水道水とともに前記流出側配管から流出するものであることを特徴とする
(ケ)浄水器。

【請求項2】
(コ)前記弁体が前記筒体の内側を回動可能な筒状に形成され、
(サ)前記弁体の側面に前記筒体通水部と連通する弁体通水部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の浄水器。」

3.本件判定の対象となる物件
請求人は、上記「1.」のとおり、「イ号の説明及びイ号図面に示す型式AS-650の浄水器」について判定を求め、判定請求書において、「エース技研株式会社(被請求人)がイ号の説明及びイ号図面で示す型式AS-650の浄水器を製造し、株式会社クリエイト(被請求人)がイ号カタログ及びイ号ホームページの写しで示す型式番号CS-650のセントラル浄活水器『創粋香房』(イ号物件)として販売していることをエース技研株式会社(被請求人)からの電話連絡で知った。」(第1頁下から4行?第2頁2行)と述べるとともに、甲第3?6号証を、それぞれ「イ号図面」、「イ号動作説明図」、「イ号カタログ」、「イ号ホームページの写し」として提出している。なお、甲第1、2号証は本件特許発明に係る特許公報及び特許登録原簿謄本である。
そうすると、本件判定の対象となる物件は、「請求の趣旨」の項に記載された「イ号の説明及びイ号図面に示」されるものであるから、「イ号図面」(甲第3号証)および「イ号動作説明図」(甲第4号証)に記載される「型式AS-650」の製品といえる。ただし、この「型式AS-650」の製品を請求人は「浄水器」としているが、「型式AS-650」に係る「イ号図面」及び「イ号動作説明図」には、「浄水器」あるいは「浄水」という記載はなく、「イ号図面」には、「図面名称」として「活水器材質証明書用図面」と記載されていることから、判定請求書において、本件判定の対象として「イ号の説明及びイ号図面に示す浄水器」と記載される物件は、「型式AS-650の活水器」であると認められる。
ところで、請求人は、上記のとおり、「型式AS-650の活水器」は、「株式会社クリエイト(被請求人)がイ号カタログ及びイ号ホームページの写しで示す型式番号CS-650のセントラル浄活水器『創粋香房』(イ号物件)として販売している」と述べているが、「型式AS-650の活水器」が「型式番号CS-650のセントラル浄活水器『創粋香房』」として販売されていることを示す証拠は提出されていない。一方、被請求人は、答弁書において、「型式AS-650の活水器」と「型式番号CS-650のセントラル浄活水器『創粋香房』」について、両者は「構造の異なる二種類の製品」であり、「イ号物件はいずれかの製品に特定されなければならない」と主張する(第2頁1?6行)。
そこで、「型式AS-650の活水器」に係る甲第3、4号証と「型式番号CS-650のセントラル浄活水器『創粋香房』」に係る甲第5、6号証を参照して、両者を比較してみると、前者に係る甲第3、4号証には、「浄水器」に関する記載が見当たらないのに対して、後者に係る甲第5号証には「浄活水器」と記載され、その「浄水能力」が「650.000l/残留塩素濃度1ppm/水道水」であることが記載されていることから、両者の図面も含め甲第3、4号証と、甲第5、6号証とを対比してみても、両者が同一の製品であるのか否か判然としない。そして、両者は、それぞれ「エース技研株式会社」、「株式会社クリエイト」という異なる会社の製品であり、「AS-650」と「CS-650」という型式も異なり、型式の異なる工業製品では構造が異なることが一般的であることも併せて考えると、甲第3?6号証からは、両者が同一の製品であるとまで認めることはできない。なお、「型式AS-650の活水器」に係る甲第3、4号証には、図面番号として、「CS-650-002H」との記載があり、この図面番号の一部の「CS-650」という記号は、「型式番号CS-650のセントラル浄活水器『創粋香房』」の型式番号と同じ記号であるが、甲第3、4号証の「図面番号」の記号が如何なる意味で用いられているのか明確でなく、請求人もこの図面番号について何ら説明をしていないから、この図面番号の記載だけから、「型式AS-650の活水器」を直ちに「型式番号CS-650のセントラル浄活水器『創粋香房』」と結びつけることはできない。
以上のとおり、本件判定の対象となる「型式AS-650の活水器」(以下、「イ号活水器」という。)は、「型式番号CS-650のセントラル浄活水器『創粋香房』」と同一の製品であるとまではいうことはできないから、「型式番号CS-650のセントラル浄活水器『創粋香房』」に係る「イ号カタログ」(甲第5号証)、「イ号ホームページの写し」(甲第6号証)は、イ号活水器の認定において参酌することはできない。
したがって、イ号活水器は、イ号図面(甲第3号証)及びイ号動作説明図(甲第4号証)に記載されるとおりの「型式AS-650の活水器」と認められ、イ号活水器は、その構成を符号をつけて分説して記載すると次のとおりのものである。なお、数字は、イ号図面における丸付き数字を示す。

「(ア’)流入側配管が接続される本体ボディー5と、
(イ’)前記本体ボディー5内に配設されたフィルターエレメント7と、
(ウ’)前記本体ボディー5に接続される流出側配管と、
(エ’)前記本体ボディー5の端部に被装されたヘッド1と、
(オ’)前記ヘッド1に設けられ、前記フィルターエレメント7の上部にシールプレート(小)6を介して接続されたダイヤル式バルブボディー(筒体)と、
(カ’)前記ダイヤル式バルブボディーの側面の開口部(筒体通水部)と、
(キ’)前記ダイヤル式バルブボディーの内側に配設されたバルブと、を備え、
(ク’)前記バルブは、通常の使用時はバイパス部を閉状態とし、フィルターカートリッジの目詰まり等の際、バルブの上部つまみを回転させバイパス部を開状態にし通水させるものである、
(ケ’)活水器。」

4.対比・判断
イ号活水器の構成が、本件第1発明の構成要件を充足するか否かについて検討する。
イ号活水器の構成(イ’)の「フィルターエレメント7」は、本件第1発明の構成要件(イ)の「塩素除去フィルタ」に対応しているといえるから、まず、イ号活水器の構成(イ’)の「フィルターエレメント7」が、本件第1発明の構成要件(イ)の「塩素除去フィルタ」を充足するか否かについて検討する。
イ号図面及びイ号動作説明図をみると、イ号図面には、「フィルターエレメント7」の「材質」が「POLYPROPYLENE」であること及びその「材質証明番号」が「HYA0220701」であることが記載され、イ号動作説明図には、「バイバス部開状態」として「※通常の使用時は閉であるがフィルターカートリッジの目詰まり等の際、上部つまみを回転させ開状態にし通水させる機構です」と記載されている。これらの記載から、「フィルターエレメント7」は、「ポリプロピレン(POLYPROPYLENE)」からなり、通常使用時にバイパス部を閉状態として活水器に通水された水がこの「フィルターエレメント7」により処理され、かかる処理を続けると「フィルターエレメント7」に目詰まりが生じるものといえるが、イ号図面及びイ号動作説明図には、「フィルターエレメント7」が水中の何を除去対象とするのか何ら記載がなく、通水される水の中には、塩素以外にもフィルターによる除去対象となる物質や目詰まりの原因となる物質があることから、イ号活水器の「フィルターエレメント7」が除去対象とする物質は特定できず、この「フィルターエレメント7」が塩素を除去するものとまではいうことはできない。
請求人は、判定請求書において、イ号図面の「フィルターエレメント7」について、「型式番号CS-650のセントラル浄活水器『創粋香房』」に係る甲第5号証には、「浄水能力として『残留塩素濃度1ppm/水道水』との記載があり、カートリッジ性能として『繊維状オリジナルカートリッジで、気になる残留塩素・遊離残留塩素はもちろん、下記有害物質を除去致します。』との記載があ」り、また、同「創粋香房」に係る甲第6号証には、「水質検査結果として、イ号物件(注:同「創粋香房」を指す。)の設置前と設置後の水道水に含まれる残留塩素測定の結果が掲載されて」いることから、イ号活水器の「フィルターエレメント7が本件特許発明の塩素除去フィルタに相当することは明らかである」旨を主張している(第5頁bの説明の項)。しかし、上記「3.」で検討したとおり、本件判定の対象となるイ号活水器(型式AS-650の活水器)は、「型式番号CS-650のセントラル浄活水器『創粋香房』」と同一の製品であるということは明らかではないから、「型式番号CS-650のセントラル浄活水器『創粋香房』」に係る甲第5、6号証は、本件判定の対象となるイ号活水器の認定において参酌することはできず、この主張は採用できない。
そうすると、イ号活水器の「フィルターエレメント7」なる構成から、「前記ケーシング内に配設され前記流入側配管から流入した水道水の全部又は一部の塩素を除去する筒状の塩素除去フィルタ」なる構成要件を導出できず、イ号活水器は、本件第1発明の構成要件(イ)を充足していないといえる。また、本件第1発明の構成要件(オ)及び(ク)は、構成要件(イ)の「塩素除去フィルタ」を構成要件として含むものであるから、構成要件(イ)を充足しないイ号活水器は、構成要件(オ)及び(ク)についても充足していないといえる。
以上のとおり、イ号活水器は、本件第1発明の構成要件(イ)、(オ)及び(ク)を充足しないから、他の構成要件(ア)、(ウ)、(エ)、(カ)、(キ)及び(ケ)を検討するまでもなく、イ号活水器は本件第1発明の技術的範囲に属するということはできない。

また、本件第2発明は、本件第1発明を引用しさらに構成要件(コ)、(サ)を付加するものであるから、本件第1発明の技術的範囲に属しないイ号活水器が、本件第2発明の技術的範囲に属しないことは明らかである。

なお、本件明細書には、
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
本発明は上記従来の課題を解決するもので、残留塩素濃度の調整を精度良く行うことができるとともに、部品点数を削減して生産性を高めることができ、また一定期間使用した塩素除去フィルタの交換作業が容易で交換作業性に優れ、また塩素除去フィルタに目詰まりが生じて水量が減ったときでも、新しい塩素除去フィルタに交換するまでの間、別途のバイパス機器を配置することなく末端の水道機器に必要な水量を確保する応急措置が可能で、さらに目詰まりした塩素除去フィルタに加わる動水圧を抑制でき、塩素除去フィルタの変形や破損を防止できる浄水器を提供することを目的とする。」(【0003】?【0004】)と記載されている。
そうすると、本件第1、2発明は、浄水器で塩素除去を行う上での課題解決を図るものであるから、構成要件(イ)の「塩素除去フィルタ」は、本件第1、2発明の本質的な構成要件といえ、上記のとおり、構成要件(イ)を充足していないイ号活水器は、本件第1、2発明の本質的な構成要件の一つを欠くものといえる。

ところで、判定請求書には、「株式会社クリエイト(被請求人)がイ号カタログ及びイ号ホームページの写しで示す型式番号CS-650のセントラル浄活水器『創粋香房』(イ号物件)」(第1頁下から1?3行)との記載があることから、念のため、株式会社クリエイトの「型式番号CS-650のセントラル浄活水器『創粋香房』」(以下、「イ’号浄活水器」という。)を本件判定の対象となる物件とし、イ’号浄活水器の構成が、本件第1発明の構成要件を充足するか否かについて以下検討する。
上記「3.」で検討したとおり、イ’号浄活水器は「型式AS-650の活水器」と同一の製品であるということは明らかではないから、イ’号浄活水器を本件判定の対象となる物件とした場合も、「型式AS-650の活水器」に係るイ号図面(甲第3号証)及びイ号動作説明図(甲第4号証)は、イ’号浄活水器の認定において参酌することができない。
そして、イ号カタログには、イ’号浄活水器の「ダイヤル式浄水・原水切替弁」について記載されているが、この「ダイヤル式浄水・原水切替弁」の構造について、イ号カタログには具体的な記載はなく、本件第1発明の構成要件(キ)及び(ク)の「弁体」、すなわち、「前記筒体の内側又は外側に配設され手動又は電動で回動又は上下動」し、「前記筒体通水部と前記中空部とを連通するバイパス路の開閉度を変え」る「弁体」を導出することはできない。また、イ号カタログ及びイ号ホームページの写しの他の記載をみても、上記構成要件(キ)及び(ク)の「弁体」に対応する構造は見当たらない。
よって、イ’号浄活水器は、本件第1発明の構成要件(キ)及び(ク)を充足するとはいえないから、他の構成要件(ア)?(カ)及び(ケ)を検討するまでもなく、イ’号浄活水器は本件第1発明の技術的範囲に属するということはできない。
また、本件第2発明は、本件第1発明を引用しさらに構成要件(コ)、(サ)を付加するものであるから、本件第1発明の技術的範囲に属しないイ’号浄活水器が、本件第2発明の技術的範囲に属しないことは明らかである。
したがって、本件判定の対象となる「イ号の説明及びイ号図面に示す浄水器」が、「型式番号CS-650のセントラル浄活水器『創粋香房』」であったとしても、本件第1、2発明の構成要件を全て充足するものではない。

5.むすび

以上のとおりであるから、イ号図面及びその説明書に示す浄水器は、本件特許発明(請求項1、2に係る発明)の技術的範囲に属しない。

よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2010-06-14 
出願番号 特願2007-297012(P2007-297012)
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 光子  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 安齋 美佐子
小川 慶子
登録日 2009-01-30 
登録番号 特許第4253351号(P4253351)
発明の名称 浄水器  
代理人 高木 福一  
代理人 高木 福一  
代理人 榎本 一郎  

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