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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1218637
審判番号 不服2008-12189  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-14 
確定日 2010-06-17 
事件の表示 特願2007-133629「データベース管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月16日出願公開、特開2007-207280〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、平成19年5月21日の出願であって、平成8年8月28日の出願である特願平8-226406号の一部を新たな特許出願とした特願2005-283258号の一部を、更に新たな特許出願としたものである。
そして、平成19年9月13日付けで拒絶理由通知がなされ、同年11月15日付けで手続補正がなされ、同年12月20日付けで最後の拒絶理由通知がなされ、平成20年2月21日付けで手続補正がなされ、同年4月4日付けで、上記平成20年2月21日付けの手続補正について補正却下の決定がなされると共に、拒絶査定がなされ、同年5月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年6月12日付けで手続補正がなされたものである。


第2.平成20年6月12日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成20年6月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)を却下する。

[理由]

1.補正内容

本件補正は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、請求項1を、

「【請求項1】
データベースへの問合せを解析し、前記問合せの解析結果に基づくデータ操作を行うデータベース管理装置において、
階層構造データ検索時に、取り出し指定された階層データの部分データに対して、識別情報と部分データの位置情報の対応付けをする手段と、
前記識別情報と操作要求による前記階層データの部分データに対する操作要求を受付ける手段と、
前記識別情報と識別情報に対応した部分データの位置情報により、データを特定し、要求された操作を実行する手段とを有する
ことを特徴とするデータベース管理装置。」

から、

「【請求項1】
データベースへの問合せを解析し、前記問合せの解析結果に基づくデータ操作を行うデータベース管理装置において、
複数のサブデータを有し複数の階層を有する階層構造のデータと、
階層構造のデータ内のデータ構造情報を格納する階層構造データ定義情報を有し、
階層構造データ検索時に、
前記階層構造データ定義情報より、要求された検索要求に合致する、前記階層構造のデータ内のデータ構造情報を取得し、
格納された前記階層構造のデータより要求された検索要求に合致する、前記階層構造のデータの位置を特定するための識別情報を取得する手段と、
前記識別情報と前記階層データのサブデータに対する操作要求を受け付ける手段と、
前記識別情報と前記階層構造のデータ内のデータ構造情報より、サブデータを特定し、要求された操作を実行する手段とを有する
ことを特徴とするデータベース管理装置。」

に変更する補正事項を含むものである。

2.補正の目的の適否について

本件補正の目的が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合するか否かを検討するに、当審は、以下の理由で、本件補正の目的は、同改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合するものではないと判断する。
すなわち、上記補正事項は、
「階層構造データ検索時に、取り出し指定された階層データの部分データに対して、識別情報と部分データの位置情報の対応付けをする手段と、」
なる記載を削除する補正事項(以下、「本件補正事項1」と呼ぶ。)と、
「階層構造データ検索時に、
前記階層構造データ定義情報より、要求された検索要求に合致する、前記階層構造のデータ内のデータ構造情報を取得し、
格納された前記階層構造のデータより要求された検索要求に合致する、前記階層構造のデータの位置を特定するための識別情報を取得する手段と、」
なる記載を追加する補正事項(以下、「本件補正事項2」と呼ぶ。)とを含むものであるが、以下に説明するように、本件補正事項1、2は、その両者を別個の補正事項とみても、本件補正事項1により削除された記載を本件補正事項2により追加された記載に修正するものとみても、上記特許法第17条の2第4項各号に掲げられるいずれの事項を目的とするものとも認められない。

(1)本件補正事項1、2を別個の補正事項とみた場合

ア.本件補正事項1について
本件補正事項1が、上記改正前の特許法第17条の2第4項でいう「請求項の削除」(第1号)、「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決使用とする課題が同一であるものに限る。)」(第2号)、「誤記の訂正」(第3号)、「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」(第4号)、のいずれを目的とするものでもないことは明らかである。

イ.本件補正事項2について
(ア)本件補正事項2が、上記改正前の特許法第17条の2第4項でいう「請求項の削除」(第1号)、「誤記の訂正」(第3号)、「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」(第4号)、のいずれを目的とするものでもないことは明らかである。
(イ)本件補正事項2が、「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決使用とする課題が同一であるものに限る。)」(第2号)を目的とするものといえるか否かについて検討するに、該補正事項2は、補正前の発明に新たな要件を追加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものということはできる。 しかしながら、本件補正事項2により追加された発明特定事項は、補正前の請求項1のいずれの発明特定事項を概念的に下位の発明特定事項としたものでもないから、「第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの」ということはできない。
したがって、本件補正事項2は、「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決使用とする課題が同一であるものに限る。)」(第2号)を目的とするものでもない。

(2)本件補正事項1、2を、本件補正事項1により削除された記載を本件補正事項2により追加された記載に修正するものとみた場合。

ア.本件補正事項1、2を、本件補正事項1により削除された記載を本件補正事項2により追加された記載に修正するものとみた場合であっても、本件補正事項1、2が、上記改正前の特許法第17条の2第4項でいう「請求項の削除」(第1号)、「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決使用とする課題が同一であるものに限る。)」(第2号)、「誤記の訂正」(第3号)、のいずれを目的とするものでもないことは明らかである。

イ.本件補正事項1、2が、「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」(第4号)を目的とするものといえるか否かについて検討するに、本件補正事項1により削除された記載により規定される「手段」と、本件補正事項2により追加された記載により規定される「手段」とは、その内容が相互に全く相違し、後者が前者を明りょう化したものでないことは明らかである。
したがって、本件補正事項1、2は、「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」(第4号)を目的とするものでもない。

3.新規事項の追加について

上述したように、本件補正は、上記改正前の特許法第17条の2第4項の規定に適合しないものであるから、それだけで、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものであるが、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」と呼ぶ。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでもある。したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するという理由によっても、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
以下説明する。

上記補正事項2により追加された
「階層構造データ検索時に、
前記階層構造データ定義情報より、要求された検索要求に合致する、前記階層構造のデータ内のデータ構造情報を取得し、
格納された前記階層構造のデータより要求された検索要求に合致する、前記階層構造のデータの位置を特定するための識別情報を取得する手段と、」
なる記載により規定される技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項ではない。
なぜならば、当初明細書等のいずれの箇所にも、「『階層構造データ検索時に、前記階層構造データ定義情報より、要求された検索要求に合致する、前記階層構造のデータ内のデータ構造情報を取得し』という機能と、『格納された前記階層構造のデータより要求された検索要求に合致する、前記階層構造のデータの位置を特定するための識別情報を取得する』という機能の両方の機能を有する手段」は記載されておらず、また、そのような両方の機能を有する手段が当業者に自明なものとも認められないからである。
審判請求人は、平成20年6月12日付けの手続補正書(方式)において、「階層構造データ検索時に、前記階層構造データ定義情報より、要求された検索要求に合致する、前記階層構造のデータ内のデータ構造情報を取得し、」は、段落番号[0028]に記載があり、段落番号[0028]における「サブデータを取り出すためのオフセット情報124をディクショナリ14から取得する。」に対応し、また、「格納された前記階層構造のデータより要求された検索要求に合致する、前記階層構造のデータの位置を特定するための識別情報を取得する手段と、」は、段落番号[0027]に記載があり、段落番号[0027]における「複数のサブデータからなるデータの検索に対しては、データベース操作サーバの識別子I Dとデータのアドレスを取得する112。」に対応する旨主張しているが、段落番号[0028]における「サブデータを取り出すためのオフセット情報124をディクショナリ14から取得する。」の記載は、「フロントエンドサーバ12」における処理の説明であるのに対し、段落番号[0027]における「複数のサブデータからなるデータの検索に対しては、データベース操作サーバの識別子I Dとデータのアドレスを取得する112。」の記載は、「データベース操作サーバ13」における処理の説明であり、それらの記載をもって、上記「『階層構造データ検索時に、前記階層構造データ定義情報より、要求された検索要求に合致する、前記階層構造のデータ内のデータ構造情報を取得し』という機能と、『格納された前記階層構造のデータより要求された検索要求に合致する、前記階層構造のデータの位置を特定するための識別情報を取得する』という機能の両方の機能を有する手段」の記載があるということはできない。

4.むすび

以上のとおりであるから、本件補正は、上記改正前の特許法第17条の2第4項及び同第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 上記補正却下の決定を前提とした、本願の拒絶理由について

1.本願特許請求の範囲の記載
上記のとおり、本件補正は却下され、平成20年2月21日付けの手続補正書による補正も平成20年4月4日付けで却下されているので、本願特許請求の範囲の記載は、平成19年11月15日に提出された手続補正書の【特許請求の範囲】の欄に記載されたとおりであり、以下のとおりである。
「 【請求項1】
データベースへの問合せを解析し、前記問合せの解析結果に基づくデータ操作を行うデータベース管理装置において、
階層構造データ検索時に、取り出し指定された階層データの部分データに対して、識別情報と部分データの位置情報の対応付けをする手段と、
前記識別情報と操作要求による前記階層データの部分データに対する操作要求を受付ける手段と、
前記識別情報と識別情報に対応した部分データの位置情報により、データを特定し、要求された操作を実行する手段とを有する
ことを特徴とするデータベース管理装置。
【請求項2】
請求項1項に記載のデータベース管理装置であって、
前記問い合わせは、関数の指定を含むことを特徴とするデータベース管理装置。
【請求項3】
データベースへの問合せを解析し、前記問合せの解析結果に基づくデータ操作を行うデータベース管理方法において、
階層構造データ検索時に、取り出し指定された階層データの部分データに対して、識別情報と部分データの位置情報の対応付けをし、
前記識別情報と操作要求による前記階層データの部分データに対する操作要求を受付け、
前記識別情報と識別情報に対応した部分データの位置情報により、データを特定し、要求された操作を実行する
ことを特徴とするデータベース管理方法。
【請求項4】
請求項3項に記載のデータベース管理方法であって、
前記問い合わせは、関数の指定を含むことを特徴とするデータベース管理方法。」

2.特許法第36条第6項第2号の要件について

(1)原査定の理由
原査定の拒絶の理由のうち、特許法第36条第6項第2号の要件に関する部分は、以下のとおりである。

「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)請求項1に記載の「識別情報」は、何の識別情報であるのかが不明である。請求項3についても同様。
(2)請求項1には「取り出し指定された階層データの部分データに対して、識別情報と部分データの位置情報の対応付けをする」と記載されているが、「取り出し指定された階層データの部分データ」と「識別情報」との関係、「識別情報」と「部分データの位置情報」との関係が不明であるため、それらがどのように対応付けられるのかが明確でない。請求項3についても同様。
(3)請求項1には「対応付けをする」と記載されているが、どのような処理であるのか技術的範囲が明確でない。請求項3についても同様。
(4)請求項1には「階層構造データ検索時に、取り出し指定された階層データの部分データに対して、識別情報と部分データの位置情報の対応付けをする手段」と記載されているが、「階層構造データ検索」処理と「対応付け」処理との関係が不明であるから、当該手段を発明特定事項として明確に把握することができない。請求項3についても同様。
(5)請求項1には「前記識別情報と操作要求による前記階層データの部分データに対する操作要求」と記載されているが、「操作要求による…操作要求」の意味を明確に把握することができない。請求項3についても同様。
(6)請求項1には「前記識別情報と操作要求による前記階層データの部分データに対する操作要求を受付ける手段」と記載されているが、「識別情報」と「操作要求」との関係、「操作要求」における「識別情報」の意義が不明であるから、当該手段を発明特定事項として明確に把握することができない。請求項3についても同様。
(7)請求項1には「前記識別情報と識別情報に対応した部分データの位置情報により、データを特定し」と記載されているが、「部分データ」と「データ」との関係が不明である。請求項3についても同様。
(8)請求項1には「前記識別情報と識別情報に対応した部分データの位置情報により、データを特定し」と記載されているが、「識別情報」と「部分データの位置情報」とがどのように対応付けられているのかが明確でないから、識別情報と識別情報に対応した部分データの位置情報により、どのようにデータを特定するのかが不明である。請求項3についても同様。
(9)請求項1には「前記識別情報と識別情報に対応した部分データの位置情報により、データを特定し、要求された操作を実行する手段」と記載されているが、「データを特定」することと、「要求された操作を実行する」こととの関係が不明であるから、当該手段を発明特定事項として明確に把握することができない。請求項3についても同様。
(10)請求項2には「前記問い合わせは、関数の指定を含む」と記載されているが、「関数」の技術的範囲が不明である。請求項4についても同様。
(11)請求項3,4に記載の「データベース管理方法」は、処理実行の行為主体が明確でない。」

(2)当審の判断
当審は、以下に示すように、上記「(1)原査定の理由」の「記」に指摘された各問題はいずれも解消しておらず、それらに起因し、請求項1?4に係る発明は、いずれも明確でないと判断する。

ア.上記「(1)原査定の理由」の「記」の「(1)」で指摘された点について
請求項1、3には、「識別情報」が何の識別情報であるのかについて何ら記載されておらず、意見書においてもその点についての釈明はないから、該「識別情報」が何の識別情報であるのかは不明なままである。
イ.上記「(1)原査定の理由」の「記」の「(2)」で指摘された点について
請求項1、3には、「取り出し指定された階層データの部分データに対して、識別情報と部分データの位置情報の対応付けをする」と記載されているが、「取り出し指定された階層データの部分データ」と「識別情報」との関係、「識別情報」と「部分データの位置情報」との関係については、何ら記載されていないし、意見書においてもその点についての釈明はない。したがって、それらがどのように対応付けられるのかは不明確なままである。
ウ.上記「(1)原査定の理由」の「記」の「(3)」で指摘された点について
請求項1、3には、「対応付けをする」と記載されているが、それがどのような処理であるのかは何ら記載されておらず、意見書においてもその点についての釈明はないから、該「対応付けをする」の技術的範囲は不明確なままである。
エ.上記「(1)原査定の理由」の「記」の「(4)」で指摘された点について
請求項1、3には、「階層構造データ検索時に、取り出し指定された階層データの部分データに対して、識別情報と部分データの位置情報の対応付けをする手段」と記載されているが、「階層構造データ検索」処理と「対応付け」処理との関係については何ら記載されておらず、意見書においてもその点についての釈明はないから、当該手段は発明特定事項として不明確なままである。
オ.上記「(1)原査定の理由」の「記」の「(5)」で指摘された点について
請求項1、3には、「前記識別情報と操作要求による前記階層データの部分データに対する操作要求」と記載されているが、「操作要求による…操作要求」の意味は不明確で、意見書においてもその点についての釈明はないから、当該記載は不明確なままである。
カ.上記「(1)原査定の理由」の「記」の「(6)」で指摘された点について
請求項1、3には、「前記識別情報と操作要求による前記階層データの部分データに対する操作要求を受付ける手段」と記載されているが、「識別情報」と「操作要求」との関係、「操作要求」における「識別情報」の意義が不明で、意見書においてもその点についての釈明はないから、当該手段は不明確なままである。
キ.上記「(1)原査定の理由」の「記」の「(7)」で指摘された点について
請求項1、3には、「前記識別情報と識別情報に対応した部分データの位置情報により、データを特定し」と記載されているが、「部分データ」と「データ」との関係についての記載はなく、意見書においてもその点についての釈明はないから、その関係は不明なままである。
ク.上記「(1)原査定の理由」の「記」の「(8)」で指摘された点について
請求項1、3には、「前記識別情報と識別情報に対応した部分データの位置情報により、データを特定し」と記載されているが、「識別情報」と「部分データの位置情報」とがどのように対応付けられているのかが明確でなく、意見書においてもその点についての釈明はないから、識別情報と識別情報に対応した部分データの位置情報により、どのようにデータを特定するのかは不明なままである。
ケ.上記「(1)原査定の理由」の「記」の「(9)」で指摘された点について
請求項1、3には、「前記識別情報と識別情報に対応した部分データの位置情報により、データを特定し、要求された操作を実行する手段」と記載されているが、「データを特定」することと、「要求された操作を実行する」こととの関係が不明であり、意見書においてもその点についての釈明はないから、当該手段は発明特定事項として不明確なままである。
コ.上記「(1)原査定の理由」の「記」の「(10)」で指摘された点について
請求項2、4には、「前記問い合わせは、関数の指定を含む」と記載されているが、「関数」についてのの具体的記載はなく、意見書においてもその点についての釈明はないから、当該「関数」の技術的範囲は不明なままである。
サ.上記「(1)原査定の理由」の「記」の「(11)」で指摘された点について
請求項3、4には、各処理実行の行為主体についての記載がなく、意見書においてもその点についての釈明はないから、請求項3、4に記載の「データベース管理方法」は、処理実行の行為主体が不明確なままである。

3.特許法第17条の2第3項の要件について

(1)原査定の理由
原査定の拒絶の理由のうち、特許法第17条の2第3項の要件に関する部分は、以下のとおりである。

「平成19年11月15日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。



請求項1,3について、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面には、「複数のサブデータからなるデータの検索に対しては、データベース操作サーバの識別子IDとデータのアドレスを取得する」(明細書[0027]参照)ことは記載されているが、「階層構造データ検索時に、取り出し指定された階層データの部分データに対して、識別情報と部分データの位置情報の対応付け」をすることは記載されていない。」

(2)当審の判断
当審は、請求項1の「階層構造データ検索時に、取り出し指定された階層データの部分データに対して、識別情報と部分データの位置情報の対応付けをする手段」という技術的事項(以下、「技術的事項1」と呼ぶ。)と、請求項3の「階層構造データ検索時に、取り出し指定された階層データの部分データに対して、識別情報と部分データの位置情報の対応付けをし」という技術的事項(以下、技術的事項2」と呼ぶ。)は、いずれも、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項ではないから、それらの技術的事項を導入した、平成19年11月15日付けの補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないと判断する。
理由は以下のとおりである。
すなわち、当初明細書等を精査しても、上記技術的事項1、2に対応する技術的事項自体を示す記載や、当該技術的事項1、2に対応する技術的事項が記載されていると同然と評価し得るような記載は見当たらないし、意見書においても、当該技術的事項が当初明細書等に記載されていたといえることについての釈明はない。

4.特許法第29条第1項柱書の要件について

(1)原査定の理由
原査定の拒絶の理由のうち、特許法第29条第1項柱書の要件に関する部分は、以下のとおりである。

「この出願の下記の請求項に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。



請求項3,4に記載された「データベース管理方法」は、操作者によるコンピュータの操作手順(人為的な取決め)であると解釈しうるから、自然法則を利用した技術的思想の創作ではなく、「発明」に該当しない。」

(2)当審の判断
当審は、請求項3、4に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないと判断する。
理由は以下のとおりである。
すなわち、請求項3、4には、各処理実行の行為主体が特定されていないから、請求項3、4は、「データベースへの問合せを解析」、「問合せの解析結果に基づくデータ操作」、「階層構造データ検索時に、取り出し指定された階層データの部分データに対して、識別情報と部分データの位置情報の対応付け」、「前記識別情報と操作要求による前記階層データの部分データに対する操作要求を受付け」、「前記識別情報と識別情報に対応した部分データの位置情報により、データを特定し、要求された操作を実行」といった各処理を、人が主体となって実行する方法を含んでいるが、そのような方法は、人為的な取決めの域を出るものではなく、自然法則を利用した技術的思想の創作であるとはいえない。
また、意見書においても、請求項3、4に記載されたものが自然法則を利用した技術的思想の創作であるといえることについての釈明はない。

5.むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第6項第2号の要件と特許法第29条第1項柱書の要件を満たさないものであるとともに、本願について平成19年11月15日付けでした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさないものである。
したがって、本願は、他の拒絶の理由について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-14 
結審通知日 2010-04-20 
審決日 2010-05-06 
出願番号 特願2007-133629(P2007-133629)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G06F)
P 1 8・ 1- Z (G06F)
P 1 8・ 55- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 57- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上嶋 裕樹  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 久保 正典
長島 孝志
発明の名称 データベース管理方法  
代理人 井上 学  

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