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審決分類 |
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G02B 審判 一部無効 2項進歩性 G02B |
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管理番号 | 1220069 |
審判番号 | 無効2009-800157 |
総通号数 | 129 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-09-24 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2009-07-17 |
確定日 | 2010-06-10 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3806828号発明「対物レンズと試料との位置関係を逆にして拡大像を得る方法とその応用」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1 本件特許第3806828号(以下、単に「本件特許」という。)は、平成10年6月22日に出願された特願平10-213411号に係り、平成18年5月26日にその請求項1ないし7に係る発明についての特許権の設定登録がなされたものである。 2 これに対して、平成21年7月17日に請求人より本件特許の請求項5及び6に係る発明についての特許を無効とすることを請求の趣旨として本件無効審判の請求がなされ、同年10月19日付けで被請求人より答弁書が提出され、同年12月11日に特許庁審判廷において口頭審理を行った。 3 その後、当審において、平成21年12月25日付けで無効理由(以下、「当審無効理由」という。)の通知をした。 4 被請求人は、平成22年1月21日に訂正請求書を提出して、本件特許明細書について訂正を求めた。なお、当該訂正請求に対して請求人に期間を指定して意見を求めたところ、請求人から弁駁書は提出されなかった。 第2 訂正請求について 1 訂正請求の内容 被請求人が平成22年1月21日付けで行った訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、次の事項をその訂正の内容とするものである。 [訂正事項] 本件特許の請求項6において「その他のシート」とあるのを、「絞りを設けたシート」と訂正するものである。 2 訂正の可否に対する当審の判断 ア 上記訂正事項は、訂正前の請求項6に係る発明の発明特定事項である「その他のシート」を、「絞り」を設けたシートと訂正して下位概念に限定するものである。 よって、上記訂正事項は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 請求項6に係る発明に対応する記載であると認められる、本件特許明細書の段落【0012】には、 「【0012】 図11は顕微鏡を屋外で使用する場合、太陽光を使う時、観察しやすくするため、絞りを付けてコントラストを良くした実施例の説明図である。これらの中で説明するシートはポリプロピレンの厚さが0.75mmの物である。そして、(a)は20×40mmの長方形であり、(c)も同じである。(a)の(81)と(c)の(83)は同じ4mmΦの穴である。又、(a)の穴(84)は5mmΦの穴で、(c)の(85)は凸部の高さが約0.4mmで外径5mmのエンボスで、これらが組合わさる時に(84)に(85)の凸部が入って位置を固定するためのものである(b)は図の様に左側に5mmΦの穴(82)を中心に半径10mmの円を描いた外形、即ちダルマ型をしている。 (a)の(80)はピンホールである。以上の様な各パーツを(c)の上に(b)の物をのせ、さらに、(a)の物を重ねハトメの玉でカシメる。すると(d)の様な断面になる、これを上から見ると、(e)のようになる。 使い方は(e)のハトメ部(86)を中心にして各々のパーツを扇子を開く様に広げると図12(a)の様に、そして、穴(4)から透明フイルム(5)に試料を着けて、液体の場合に試料がこぼれるのを防ぐためにはセロテープで穴(4)をふさげば良い。このようにしたら、各パーツを閉じて(e)の様にして、レンズ(2)に眼を近ずけて、屋外で明るい方を見れば、光はピンホール(80)で絞られて、コントラストが良くなり、はっきり試料の拡大像を見ることが出来る。この時、指で(a)の(84)と(c)のエンボス(85)の部分を押す様にすると、レンズとピンホールの軸芯が合うと同時に、透明フイルム(5)がレンズの方におされるので、焦点が定まり良く見える様になるわけである。尚、X、Y方向の移動は(B)の穴(82)がハトメの玉の外形より1mm大きくなっているのでそのクリアランスの範囲だけ移動ができる。 又、図12の(b)の様に開いて試料をいれることもポリプロピレンのシートならできる。尚、逆視顕微鏡として見る場合でも絞りがあるとよく見える。 以上が本発明の方法が使える簡易顕微鏡の実施形態の説明であるが、レンズの事に関して説明しておく。」(下線は、当審にて付与した。) と記載されている。また、図11?図12から、上記下線を付した「(a)」がピンホール80を設けたシートであることが見て取れる。 よって、これら記載内容からして、上記訂正事項は、本件特許の願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する事項を目的とするものであり、また、同条第5項において準用する同法第126条第3項、4項の規定に適合する。 以上のとおりであるので、本件訂正を認める。 第3 請求人の主張及び当審無効理由の概要 1 請求人の主張の概要 (1)請求の趣旨 請求人は、後述の証拠及び理由から、「特許第3806828号の請求項5及び6に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張している。 (2)証拠方法 甲第1号証:特開平1-287524号公報 甲第2号証:実公昭25-9062号公報 甲第3号証:実公昭36-19567号公報 甲第4号証:特開平7-71901号公報 甲第5号証:特開昭63-186208号公報 甲第6号証:実開平5-36415号公報 甲第7号証:実用新案登録3010319号公報(当審注;「実用新案登録」は、「登録実用新案」の誤記と認める。) 甲第8号証:実開平1-137261号公報 (3)理由 請求人の主張する理由の概要は、次のとおりである。 ア 無効理由1 当業者であれば、甲第1号証の簡易顕微鏡に対し、甲第2号証や甲第3号証の観察ポイントを移動させるために、シートの保持に切り込みを利用するという甲第4号証の考え方を適用することは容易である。 よって、請求項5に係る発明は、甲第1号証、並びに甲第2号証あるいは甲第3号証、及び項第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当し、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。 イ 無効理由2 (ア)請求項5の「切れ目にもう一方のシートをはめ込むように各シートを重ね合わせ」という記載では、一方のシートを単に支持することをも含むことになるから、請求項5に記載の「X、Y方向の移動が自由に出来るようにした」を達成するためには、前記「切れ目にもう一方のシートをはめ込むように各シートを重ね合わせ」という記載では特許を受けようとする発明が不明確である。 (イ)また、請求項5に係る発明が、観察ポイントを移動させるための発明であることを明確にするために、レンズ保持シートと試料保持シートとを移動させるとき、試料保持シートが保持する試料の観察状態を変えることがないという条件を加えるべきである。 よって、請求項5に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反し、同法123条第1項第4号の規定により無効とすべきである。 ウ 無効理由3 当業者であれば、甲第1号証が示す複数のシートについてハトメを利用して回転可能にまとめることは容易である。 よって、請求項6に係る発明は、甲第1号証、並びに甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証あるいは甲第8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当し、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。 エ 無効理由4 請求項6に記載の「その他のシート」が、簡易顕微鏡の中でどのような機能を果たすのかが不明である。 よって、請求項6に係る発明は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反し、同法123条第1項第4号の規定により無効とすべきである。 2 当審無効理由の概要 本件特許の請求項6の「その他のシート」との記載は、その構造、機能、特性について何ら限定を付されたものではないため、発明の詳細な説明に記載したものであるとは認められず、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていない。 第4 記載要件に関する当審の判断 上記「第2」で検討したように本件訂正は認められるので、以下、本件訂正明細書の記載に基づいて検討する。 1 無効理由2について (1)無効理由2(ア)について 請求項5における「前記レンズ保持シートと前記試料保持シートのどちらか一方のシートに切れ目を設け、前記切れ目にもう一方のシートをはめ込むように各シートを重ね合わせ、各シートの面と平行な2つの直交する方向をX、Y方向としたとき、X、Y方向の移動が自由に出来るようにした」との記載は、「前記レンズ保持シートと前記試料保持シートのどちらか一方のシートに切れ目を設け、前記切れ目にもう一方のシートをはめ込むように各シートを重ね合わせ」たものに、「各シートの面と平行な2つの直交する方向をX、Y方向としたとき、X、Y方向の移動が自由に出来る」との限定が付加されたもの、と解するのが相当であることは、当業者にとって明らかである。 請求人は、審判請求書において、請求項5の「切れ目にもう一方のシートをはめ込むように各シートを重ね合わせ」という記載では、一方のシートを単に支持することをも含むことになるから、請求項5に記載の「X、Y方向の移動が自由に出来るようにした」を達成するためには、前記「切れ目にもう一方のシートをはめ込むように各シートを重ね合わせ」という記載では特許を受けようとする発明が不明確である旨の主張をしているが、請求項5の記載を総合的に勘案すれば、本件発明5が、一方のシートを単に支持するだけのものを含まないことは明らかである。 してみれば、請求項5の上記記載に不明確な点はない。 (2)無効理由2(イ)について 請求人は、審判請求書において、「請求項5の発明を明確にするために、レンズ保持シートと試料保持シートとを移動させるとき、試料保持シートが保持する試料の観察状態を変えることがないという条件を加えるべきである。」と主張する。 しかしながら、本件発明5は「簡易顕微鏡」という物の発明である。そして、レンズ保持シートと試料保持シートとを移動させる時に試料の状態を変えることがないかどうかは、簡易顕微鏡の使用方法に関する事項であり、請求人の上記主張を参酌しても、物の発明を特定する発明特定事項との関連性が見あたらない。 そして、請求項5の記載は、簡易顕微鏡という物の発明を当業者が明確に把握し得る記載であるから、請求人の上記主張は採用できない。 (3)無効理由2についてのまとめ 以上のとおり、請求項5に係る発明は明確であるから、特許法第36条第6項第2号の要件の規定を満たしていないとはいえず、請求人の主張する無効理由2には理由がない。 2 無効理由4、及び当審無効理由について 本件特許明細書における請求項6の「その他のシート」との記載は、本件訂正によって「絞りを設けたシート」と訂正されたから、請求人の主張する記載不備、及び当審無効理由により通知された記載不備は解消された。 したがって、請求人の主張する無効理由4及び当審無効理由は、理由がない。 第5 進歩性要件に関する当審の判断 1 本件発明 以上のように、本件訂正は認められ、その本件訂正明細書の特許請求の範囲の記載に基づく請求項5及び6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明5」及び「本件発明6」という。)は明確であるから、本件発明5及び6は、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項5及び6に記載された次のとおりのものである。 「【請求項5】 レンズが取り付けられたレンズ保持シートと、透明部を有する試料保持シートとを備え、前記レンズ保持シートと前記試料保持シートのどちらか一方のシートに切れ目を設け、前記切れ目にもう一方のシートをはめ込むように各シートを重ね合わせ、各シートの面と平行な2つの直交する方向をX、Y方向としたとき、X、Y方向の移動が自由に出来るようにした簡易顕微鏡。 【請求項6】 レンズが取り付けられたレンズ保持シートと、透明部を有する試料保持シートと、絞りを設けたシートを備え、前記各シートに各々穴を設け、前記穴を支点中心に各シートを互いに回転できるようにハトメ玉様部材で止めて重ね合わせた簡易顕微鏡。」 2 各甲号証の記載内容 (1)甲第1号証 本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開平1-287524号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (1a)「1.拡大素子は小径の透明球から構成し、該透明球の直径を所望倍率に応じて設定するとともに該透明球を適当な支持体に装着し、該透明球を介して所定の焦点距離に配置された対象物を観察可能としたことを特徴とする簡易顕微鏡。」(第1ページ左下欄第5?9行) (1b)「(発明の構成) 本発明は、その直径を小さくすればする程、非常に大きな倍率が得られる、小型透明球の倍率を利用することを原理的な特徴事項とするものである。 この小型球は幅狭な矩形支持シート内に設けられた対応キャビティ内に配置されかつ該支持シートの両側部に接着された透明シートを介して保護されている。 所定の直径を有する球により所望の倍率を得るため、焦点距離が一定かつ曲率に応じたものとされる。観察しようとする対象物を両透明保護シートの一方と接触させて配置するとともに所定の焦点距離とするために適当な厚さのシートとし、このようにして顕微鏡の構成部品点数が低減されかつその構成が簡単なものとされる。」(第2ページ左上欄第5?19行) (1c)「図面に表示される数字符号を見れば、本発明の簡易顕微鏡は、全体的に符号lを付して示すように、いかに好ましい矩形の幅狭シートに縮小化したかが分かる。該シート1に穴2が設けられ、該穴2はそこに挿入される透明球3よりも小さい直径を有する。該球3はシート1の両面と共通平面を成す2つの透明シート4により保護されるとともに第1図に示すように隙間のない位置に固定される。 観察しようとする対象物5は一方の透明シート4の外面に直接載せられ、もう一方の透明シート4から外部光点6に向って穴2を介して透視することにより観察が行われる。 対象物5は当該アッセンブリに使用されている球3の直径に対するシート1および4の厚みにより画定される正確な焦点距離をもって配置されるので、驚くべく拡大されるとともに鮮明に観察することが出来る。」(第2ページ右上欄第11行?左下欄第8行) (1d)上記記載事項(1c)及びFIG.1から、幅狭な矩形支持シート1に透明球3が取り付けられていることが見て取れる。 (2)甲第2号証 本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証(実公昭25-9062号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (2a)「本考案は学童教育用の簡易顕微鏡に係り・・・」(第1ページ左欄第4行) (2b)「1は倍率比較的に大なる微小球形レンズにして3は顕微鏡本体なる板5に微小球形レンズ1を固定するレンズ抑へにして、2は倍率比較的に小なる扁平の普通レンズにしてレンズ抑へ4にて板5に固定さる。6及7は夫々、板5に穿ちたる孔にして各々レンズ1及2を固定装着しレンズに封する光線を通過せしむるものとす。8及9は夫々レンズ抑へ3及4の中心の孔にしてレンズを抑へ且レンズに封する光線を通過せしむるものなり。 10は倍率大なるレンズ1に封する被検物用スライドにしてセルロイド、合成樹脂等の透明なる薄板よりなり其の両縁に摺動溝12を設け矩形液レンズ枠5に嵌入せしめて枠上を左右に摺動自在ならしめたるものなり。而して検鏡に際しては被検物を右の透明薄板スライド10の外面即ちレンズ1と接触せざる面に被検物を附着せしめ光線を射入せしむることにより極めて簡単に高倍率の検鏡をなし得るものなり。」(第1ページ左欄第8行?右欄第1行) (3)甲第3号証 本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第3号証(実公昭36-19567号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (3a)「本実用新案は低学年用の理科実験等に好適であ且簡易に鉱山の鉱石、植物の花粉、混虫類のはね、動物の毛、鳥類の羽、その他血液等の形態を視知し得る簡易顕微鏡に係るもので・・・」(第1ページ左欄第5?8行) (3b)「然るに本実用新案は従来のこのような欠点を除去するため上述のように中央に拡大レンズ1を嵌着した蓋体2を螺着し且底壁中央に採光孔8を空設せる筺筒体4の周壁直径方向対象位置に扁平通孔5を形成しこれに二ツ折となした透明フイルム板6を抜き差し自在に設けたので被見物を二ツ折となした透明フイルム板6の間に挟着した後これを筺筒体4に設けた扁平通孔5より挿入して採光孔3及び拡大レバズ1部に位置せしめて観察することが出来而も被見物はフイルム板6に挟着されるため筺筒体4をどのように扱つても移動することなく又この透明フイルム板6に数種の被見物を順次挟着すれば順次フイルム板6の移動により観察出来る・・・」(第1ページ左欄下から2行目?右欄第12行) (4)甲第4号証 本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証(特開平7-71901号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (4a)「【0046】図3は、本発明によるゲージ付きシートの第1の実施例の構成を示す斜視図(図中(a))と、ゲージの第2の実施例(図中(b))を示す平面図である。 【0047】図3(a)に示すように、ゲージ付きシート50は、支持部材30と、これに剥離可能に支持された複数のゲージ10Aとから構成されている。これらのゲージ10Aは、透明または半透明である。また、図3(b)に示すように、ゲージ10Aには、ミクロン,サブミクロン単位の微細な目盛り12bが形成されている。 【0048】図4は、図3(a)のA-A断面を示す図である。図4に示すように、ゲージ10Aは、基材11Aと、基材11A上に設けられ、目盛り12bが形成されたゲージパターン形成層12Aと、その上部に設けられた反射層13Aと、少なくとも目盛り12bが形成された領域を覆うように設けられた保護層16と、支持部材30に粘着された粘着層15とから構成されている。」 (4b)「【0064】図11は、本発明によるゲージの使用方法の第2の実施例を示す図であり、ゲージ付きシート50とそのゲージ10A(図3,図4)の使用方法の一実施例を示したものである。ゲージ10Aは、ゲージ付きシート50の支持部材30から剥離され、さらにその保護層16が剥離され、粘着層15により、ガラス板等からなるスライドガラス61に貼付される。次に、ゲージ10A上には、物体62が置かれ、さらに、その上部には、カバーガラス63が載せられる。以上のようにゲージ10Aと物体62とを配置し、その上方から顕微鏡等64で観察することにより、物体62とゲージ10Aの目盛り12bとを同時に拡大して見ることができる。これにより、物体62の所定の寸法を測定することができる。」 (4c)「【0072】図16,17は、それぞれ、ゲージ付きシートの第3,第4の実施例の構成を示す図である。図16のゲージ付きシート50Bにおいては、ゲージ10Cの基材11Cと支持部材30Bとは、同一の部材から一体で形成されている。さらに、支持部材30Bのゲージ10Cの外周部に相当する部分には、一部に連結部31を残してスリット32が形成されている。使用者は、この連結部31を切断することによりゲージ10Cを支持部材30Bから分離して使用する。このように形成すれば、ゲージ10Cを支持部材30Bに支持させる粘着層等を設ける必要がなくなり、製造コストを低減することができる。図17のゲージ付きシート50Cにおいては、支持部材30Cに複数のスリット33が形成されている(図中(a))。ゲージ10Dは、その外縁部がこのスリット33に挟み込まれることにより、支持部材30Cに支持されている(図中(b))。このように形成すれば、粘着層等を設けなくても、何度も繰り返してゲージ10Dを支持部材30Cから着脱することができる。」 (5)甲第5号証 本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第5号証(特開昭63-186208号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (5a)「(産業上の利用分野) 本発明は、書類の文字等を拡大して見るために使用される拡大鏡に関する。」(第1ページ左下欄第17?19行) (5b)「第21図乃至第23図は他の実施例を示し、第1基板2と第2基板3との対向端部を、嵌合溝36と嵌合凸部37とを介して嵌脱自在に嵌合させると共に、基板2,3の対向端部の幅方向一端側を枢支軸38により基板2,3が開閉するように枢支し、基板2,3の開閉によって凸レンズ4,6の間隔が調整自在になるようにしたものである。」(第3ページ左上欄第8?14行) (6)甲第6号証 本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第6号証(実開平5-36415号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (6a)「【請求項2】フレネルレンズに、定形書を保持する保持部を対設するとともに、 上記フレネルレンズと保持部とを脚部を介して連結した書見ケース。 ・・・・ 【請求項4】前記フレネルレンズに、該フレネルレンズを回転しそのレンズ面方向を前記保持部以外に変更する回転手段を形成した請求項2、または3記載の書見ケース。」 (6b)図2から、フレネルレンズ2がハトメ(回転手段)6で回動自在に取り付けられている点が、見て取れる。 (7)甲第7号証 本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第7号証(登録実用新案3010319号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (7a)「【請求項3】 フレネルレンズはケースからの回動引出し式であって、ポケットはケースの片面又は両面に設けてなる携帯用フレネルレンズ。」 (7b)「【0012】 図2(a)(b)は本考案の第2実施例である。(a)は正面図、(b)は側面図である。フレネルレンズ1はケース2からの回動引出し式であって、そのためにケース2へフレネルレンズ1が係止部としてのハトメ8によって回動可能に取付けられている。この例でもポケット4はケースの片面に設けられていてもよいし、ケースの両面に設けてもよい。このハトメ8の取付位置を図5の(a)(b)に示すように、ケース外郭から突出させて、バインダー形式の手帳等のバインダー金具へ係止するようにすると便利である。」 (8)甲第8号証 本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第8号証(実開平1-137261号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (8a)「必要情報を記入した複数のカードを、鳩目によつて開閉可能に連結したことを特徴とする情報カード帳。」(第1ページ左欄第2?4行) 3 当審の判断 (1)無効理由1について ア 引用発明 上記記載事項(1a)?(1d)からして、甲第1号証には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「直径を小さくすればする程、非常に大きな倍率が得られる、小型の透明球3の倍率を利用することを原理的な特徴事項とする簡易顕微鏡であって、前記小型の透明球3は幅狭な矩形支持シート1内に設けられた穴2内に配置されかつ該矩形支持シート1の両側部に接着された透明シート4により保護されるとともに隙間のない位置に固定され、観察しようとする対象物5は一方の透明シート4の外面に直接載せられ、もう一方の透明シート4から外部光点6に向って穴2を介して透視することにより観察が行われる簡易顕微鏡。」 イ 対比 本件発明5と引用発明とを、対比する。 引用発明の簡易顕微鏡は、「直径を小さくすればする程、非常に大きな倍率が得られる、小型の透明球3の倍率を利用することを原理的な特徴事項とする」のであるから、引用発明の「小型の透明球3」は、本件発明5の「レンズ」に相当する。 よって、引用発明の、「小型の透明球3」が「設けられた穴2内に配置され」る「幅狭な矩形支持シート1」は、本件発明5の「レンズが取り付けられたレンズ保持シート」に相当する。 また、引用発明において、「観察しようとする対象物5は一方の透明シート4の外面に直接載せられ」ているのであるから、当該引用発明の「一方の透明シート4」は、本件発明5の「透明部を有する試料保持シート」に相当する。 してみれば、本件発明5と引用発明とは、 「レンズが取り付けられたレンズ保持シートと、透明部を有する試料保持シートとを備えた簡易顕微鏡。」 の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 本件発明5では、「前記レンズ保持シートと前記試料保持シートのどちらか一方のシートに切れ目を設け、前記切れ目にもう一方のシートをはめ込むように各シートを重ね合わせ、各シートの面と平行な2つの直交する方向をX、Y方向としたとき、X、Y方向の移動が自由に出来るようにし」ているのに対し、引用発明は、このような発明特定事項を有していない点。 ウ 判断 上記相違点について、検討する。 (ア)甲第2?3号証(上記記載事項(2a)?(3b)を参照)に記載されているように、簡易顕微鏡において、観察しようとする試料を保持する部材をレンズを保持する部材に対して相対的に移動させる技術は、当業者に周知の技術である。 しかしながら、引用発明において、観察しようとする対象物5を保持する一方の透明シート4は、もう一方の透明シート4と共に矩形支持シート1の両側部に接着されて、レンズに相当する小型の透明球3を保護する機能と隙間のない位置に固定する機能とを有している部材であるから、引用発明は、そもそも小型の透明球3に隣接して配置された透明シート4を、小型の透明球3に対して相対的に移動可能に設置する構造を有するものではない。 よって、引用発明における一方の透明シート4の機能を考慮すると、引用発明に上記周知の技術を適用すること、すなわち、引用発明の一方の透明シート4を小型の透明球3を保持する矩形支持シート1に対して相対的に移動させようとすることは、当業者が容易になし得たことということはできない。 (イ)さらに、甲第4号証には、支持部材30Cに複数のスリット33を形成し、ゲージ10Dの外縁部をこのスリット33に挟み込んで着脱可能に支持する技術が記載されているが(上記記載事項(4c)の図17に関連する記載を参照)、当該着脱可能な支持構造が、「X、Y方向の移動が自由に出来る」かどうかについての記載はない。 また、甲第4号証の各実施例において、ゲージは、顕微鏡等で観察する時には支持部材から取り外して使用するものであるから(上記記載事項(4a)?(4b)及び(4c)の図16に関連する記載を参照)、スリット33がゲージ10Dを挟み込んで支持しているのはゲージ10Dの不使用時(顕微鏡等で観察していない時)であるといえる。 してみれば、甲第4号証に記載されたスリットを用いた支持構造は、観察しようとする試料を保持する部材とレンズを保持する部材との支持とは技術的な関連性がなく、また、2つの部材を、「X、Y方向の移動が自由に出来るように」支持しようとする技術的思想も開示されていない。 よって、仮に、上記周知の技術を引用発明に適用し得たとしても、そこから更に、引用発明の一方の透明シート4を「X、Y方向の移動が自由に出来るように」する具体的構造として、甲第4号証に記載されたスリットを用いた支持構造を採用しようとすることまでは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 なお、その余の各甲号証を精査しても、前記相違点に係る事項が記載、若しくは示唆されていないことは明らかである。 エ 無効理由1についてのまとめ 以上のとおり、本件発明5は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項及び甲第2?3号証に記載された周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたもの、とすることはできないのみならず、請求人の提示したすべての証拠方法をもってしても、同様である。 よって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とすることはできない。 したがって、請求人の主張する無効理由1には理由がない。 (2)無効理由3について ア 引用発明 上記「(1)無効理由1について」の「ア 引用発明」に記載したとおりである。 イ 対比 本件発明6と引用発明とを、対比する。 引用発明の簡易顕微鏡は、「直径を小さくすればする程、非常に大きな倍率が得られる、小型の透明球3の倍率を利用することを原理的な特徴事項とする」のであるから、引用発明の「小型の透明球3」は、本件発明6の「レンズ」に相当する。 よって、引用発明の、「小型の透明球3」が「設けられた穴2内に配置され」る「幅狭な矩形支持シート1」は、本件発明6の「レンズが取り付けられたレンズ保持シート」に相当する。 また、引用発明において、「観察しようとする対象物5は一方の透明シート4の外面に直接載せられ」ているのであるから、当該引用発明の「一方の透明シート4」は、本件発明6の「透明部を有する試料保持シート」に相当する。 そして、引用発明において「もう一方の透明シート4」を備える点と、本件発明6の「絞りを設けたシートを備え」る点とは、「第3のシートを備える」点で一致する。 してみれば、本件発明6と引用発明とは、 「レンズが取り付けられたレンズ保持シートと、透明部を有する試料保持シートと、第3のシートを備えた簡易顕微鏡。」 の発明である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 第3のシートが、本件発明6では「絞りを設けたシート」であるのに対し、引用発明は、このような発明特定事項を有していない点。 [相違点2] 本件発明6では、「前記各シートに各々穴を設け、前記穴を支点中心に各シートを互いに回転できるようにハトメ玉様部材で止めて重ね合わせ」ているのに対し、引用発明は、このような発明特定事項を有していない点。 ウ 判断 上記相違点1?2について、検討する。 (ア)甲第5?8号証から、複数枚のカード状やシート状部材を互いに回転できるようにハトメ部材で止めて重ね合わせる技術は、一般的に周知の技術であり、特に、甲第5?7号証から、拡大鏡や携帯用レンズといった簡易光学部材の技術分野において、カード状又はシート状のレンズを保持する部材を、ハトメを用いて回転可能に配置する技術も周知の技術であるといえる。 (イ)しかしながら、引用発明において、観察しようとする対象物5を保持する一方の透明シート4と、もう一方のシート4は、それぞれ矩形支持シート1の両側部に接着されて、レンズに相当する小型の透明球3を保護する機能と隙間のない位置に固定する機能とを有している部材であるから、引用発明は、そもそも小型の透明球3に隣接して配置された透明シート4を、小型の透明球3に対して相対的に移動可能に設置する構造を有するものではない。 よって、引用発明における両透明シート4の機能を考慮すると、引用発明に、前記一方の透明シート4、もう一方の透明シート4、及び矩形支持シート1の各シートを互いに回転できるようにする、という上記相違点2の技術的事項を適用することはできない。 (ウ)加えて、観察しようとする試料を保持するシート、及びレンズを保持するシートに加えて、「絞りを設けたシート」を配置する技術は、甲第5?8号証に記載されていない。 なお、その余の各甲号証を精査しても、前記相違点に係る事項が記載、若しくは示唆されていないことは明らかである。 エ 無効理由3についてのまとめ 以上のとおり、本件発明6は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第5?8号証に記載された周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたもの、とすることはできないのみならず、請求人の提示したすべての証拠方法をもってしても、同様である。 よって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とすることはできない。 したがって、請求人の主張する無効理由3には理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法、並びに当審無効理由によっては、本件発明5?6の特許を無効とすることはできない。 また、本件発明5?6について、他に無効とすべき理由も発見しない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 対物レンズと試料との位置関係を逆にして拡大像を得る方法とその応用 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ピンホール中あるいはその近傍にレンズを設け、前記レンズの眼側に観察する試料を置き、前記レンズの眼側と反対側から光を入射し、前記試料を透かしてレンズを覗くことにより試料の拡大像を観察する試料の拡大像を観察する方法。 【請求項2】 レンズが取り付けられたレンズ保持シートと、観察する試料の試料受けとなる透明部を有する試料保持シートとを備え、前記レンズに前記観察する試料を直接接触させつつ前記レンズと前記透明部の間に前記観察する試料を挟んで、前記レンズ保持シートと前記試料保持シートを重ね合わせた簡易顕微鏡。 【請求項3】 レンズが取り付けられたレンズ保持シートと、観察する試料の試料受けとなる透明部を有する試料保持シートとを備え、前記レンズに前記観察する試料を直接接触させつつ前記レンズと前記透明部の間に前記観察する試料を挟んで、前記レンズ保持シートと前記試料保持シートを重ね合わせた簡易顕微鏡を用いた試料観察方法において、前記各シートを指で挟んで、すり合わせする事で観察ポイントを移動するようにした簡易顕微鏡を用いた試料観察方法。 【請求項4】 レンズが取り付けられたレンズ保持部材と、透明部を有する試料保持部材とを備え、前記レンズ保持部材は磁石又は磁石がつく部材を有し、前記試料保持部材は磁石がつく部材又は磁石を有し、前記磁石による磁力により前記レンズ保持部材と試料保持部材とをその間隔を一定にしつつ重ね合わせ、各部材の面と平行な2つの直交する方向をX、Y方向としたとき、X、Y方向の移動が自由に出来るようにした簡易顕微鏡。 【請求項5】 レンズが取り付けられたレンズ保持シートと、透明部を有する試料保持シートとを備え、前記レンズ保持シートと前記試料保持シートのどちらか一方のシートに切れ目を設け、前記切れ目にもう一方のシートをはめ込むように各シートを重ね合わせ、各シートの面と平行な2つの直交する方向をX、Y方向としたとき、X、Y方向の移動が自由に出来るようにした簡易顕微鏡。 【請求項6】 レンズが取り付けられたレンズ保持シートと、透明部を有する試料保持シートと、絞りを設けたシートを備え、前記各シートに各々穴を設け、前記穴を支点中心に各シートを互いに回転できるようにハトメ玉様部材で止めて重ね合わせた簡易顕微鏡。 【請求項7】 前記レンズは、直径が0.25mm以上1.4mm以下の球形レンズからなる請求項2、4、5、6いずれか1項記載の簡易顕微鏡。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 この発明は、レンズを用いた光学器械に関するもので、微小なものを拡大して見る一つの方法とその応用に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来、レンズを使って、試料を拡大して見る場合は図1の(b)に示す様に、光の進行方向から言って、試料(1),レンズ(2)、目(3)の順序であり、ルーペしかり、顕微鏡しかりである。本発明は図1の(a)の様にレンズ(2)試料(1)目(3)の順序で試料を拡大するのである。 今後、従来の拡大方法を正視顕微鏡的方法と呼び、本発明の方法を逆視顕微鏡的方法と呼ぶことにする。以下、本発明に似たものについて述べてみる。 フライング・スポット顕微鏡と呼ばれる方式の場合は接眼レンズから対物レンズに向けて小さな光のスポットを送り、対物レンズでさらにスポットを小さくして、試料を照射して、通過した光の強弱を電気信号に変換してCRT上にその試料の拡大像を表示する、勿論、スポットはスキャンさせる事は当然である。この場合も光の進行方向からすれば、本発明と同じくレンズの後に試料が来て、その後に観察する機器が来る。 しかし、本発明のように、拡大像をレンズ上に見ることはなく、また、倒立像と言うこともなく、単に試料を一種の投影機のフイルムとみなしたもので、根本的に本発明とは異なる。 又、光顕暗視野法における、試料とコンデンサーレンズの関係が本発明の試料とレンズの関係と同じであるが、本発明では試料にレンズを通過した光を直接に当てて観察するのに対し、光顕暗視野法に於いてはある角度で試料に当てて、それによって生じるエバネツセント光を対物レンズで拡大し観察するわけでコンデンサーレンズのほかに、本命の拡大用のレンズがあるが、本発明に於いては一個で兼用していて、根本的に異なっている。 この様に観察する試料がレンズの後にきて、しかも、拡大率がそのレンズの倍率に関係して、しかも、像が倒立する様な像の拡大法は今までなかった。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は最近の環境ホルモンによる精子の数の減少や奇形を医者に調べてもらわなくても自分で調べることが出来る、低価格でしかも高倍率の顕微鏡 を作ろうとすることにあつた。 【0004】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、レーウエン・フック型の顕微鏡を制作した、レンズ径が0.5mmの球形で、約500倍で精子の存在は確認できることが解ったが、一個の精子の奇形を識別できるまでにはいたらなかった。倍率を二倍に上げても識別する迄にはいたらないため、従来の方法でない像の拡大方法を探すことにした、その結果が本発明の方法となった訳であるが、精子の奇形を見るまでには至らなかった。レーウエン・フック型の顕微鏡は図2のようなもので、今から約300年前にオランダ人のレーウエン・フックによって制作され、しんちゅう板(13、14)に小さな穴を開け微小なレンズ(12)を挟みこんで、さらに、試料取り付け針(11)を微調整できるようにして、手に持って目をレンズ(12)に近ずけて観察するものであり、断面の略図が図3である。そして本発明の概念を説明するために、レンズと試料と目の関係を抽象化したのが図1であり、レーウエン・フック型でも図1(b)の様に、光の進行方向の順序からは試料(1)レンズ(2)そして観察者の目(3)の関係で試料を拡大して見る事になる。一方、一度述べたが本発明の方法では図1の(a)に示すように、レンズ(2)、試料(1)観察者の目(3)の順序になって試料の拡大像を得るようになる。 【0005】 この、拡大像がどうして得られるのか、理論的な説明は現在は出来ないが、実際に製作してみると、上下・左右が反転した拡大像をレンズ上に見ることが出来る。しかも、同じレンズなのに(a)の方法即ち本発明の方法では(b)の方法より約4倍大きく見える、作動距離も大きくとれるし、透明体の凹凸がリアルな感じでみえる。しかし、制約条件もある、それは試料を透かして見る関係上、試料全体が不透明であってはだめな事、少なくても、試料の一部分からレンズを見る事が出来なければならない。 【0006】 【発明の実施の形態】 本発明の応用として簡易顕微鏡からその実施の形態について図面を参照して説明する。 図4(a)のシート(41)は厚さ0.75mmのポリプロピレンシートを直径40mmの円形にカットして、その中心に0.4mmの穴を開け、そこに0.5mmのガラスの球形レンズ(2)を圧入して、表面より0.1mm出るようにしたものである。これが本簡易顕微鏡の本体であり、倍率は明視距離250mmとして、レンズの焦点距離、約0.5mmで割って角倍率で500倍になり、この倍率で精子の運動などは観察できる。図4の(b)は現在市販されている、複式顕微鏡のプレパラートに相当する試料受け部分で厚さ0.75mmのポリプロピレンシートを本体と同じ直径40mmの円形にカットして、中心に4mmの丸い穴を開けて、その片側に透明な厚さ0.05mmのフィルム(5)を装着(粘着テープで貼りつける)したものである。 使用方法は(a)と(b)のものを(c)の断面になるように、外形をそろえて重ね合わせてレンズ(2)を覗けば良い。観察するポイントを移動するときは親指と人差し指とでシート(41)と(43)を挟んですり合わせるようにして、ずらせれば良い。観測する時は照明は太陽光直接よりも室内の窓からの光か、蛍光灯のほうがよいし、光源の角度を少し、ずらすようにすると、暗視野照明法のようになって、コントラストがついて、はっきり見える。 このレンズ側からの観測は従来の方法であるが、透明フイルム(5)側に目を近ずけて覗くとフイルムにつけてある試料が拡大して見える、図3の様なレーウエン・フック型の試料取り付け針(11)がないために目をレンズ(2)に近ずけられるから、このことが可能になつた訳である。又、複式顕微鏡の様なものでは試料側からは覗くこともできないが、本簡易顕微鏡では簡単に本発明の逆視顕微鏡的方法と正視顕微鏡的な方法の二つで観察ができる。 尚、逆視及び正視のどちらの場合でも、試料を透明フイルム(5)の左でも右でも、即ち、中でも外でも、どちらにでも着けて良い。 【0007】 図5は図4(b)のシート(43)の外径を(a)のシート(41)より小さくして、さらに、透明フイルム(5)を貼りつける両面粘着テープ(46)を透明フイルム(5)より大きくして、シート(43)を図4の顕微鏡本体のシート(41)に直接に貼りつけたものであり、完全に使い捨てを意識したものである。この場合、シート(41、43)は紙で充分である。又、(46)の粘着剤で(41、43)が半固定されているので、観察の時のポイントの移動は前記の方法と同じく指でシートをずらせば良い、少々、力を要するがミクロン単位の移動でも、それが拡大されるので充分である、又、動かさなくても、微小な物は全体が観察できる。この形式の場合は正視顕微鏡的な方法か逆視顕微鏡的な方法かによつて、レンズ(2)と透明フイルム(5)とのギャップが違うので、あらかじめ作る前にどちらにするか決めておく必要がある。 【0008】 図6は磁石を利用した場合の説明図である。(a)は図4(a)に対応した顕微鏡本体を、(b)は図4(b)に対応した試料受けを図示したものである。図6の(b)の(49)はゴム板状磁石で(24、25)は穴(4)と同じ直径4mmの穴である。又、図6(a)の(22、23)は厚さ0.1mmのSUS430ステンレス板(21)に付けた直径が1mmほどのバーリングで高さ約1mm程度のものである。このステンレス板(21)はシート(1)に粘着剤で貼りつけてある。そして、この(a)と(b)は(c)に示す様にゴム板状磁石(49)の吸い付く側とステンレス板(21)とを穴(24、25)にバーリング(22、23)をそれぞれ対応させて入れて合わせる。 こうすれば、(c)は図4の(c)と同じになる。この磁石を利用した場合はレンズと試料との距離をあらかじめ計算して制作しておくことによって、磁石の吸引力によって一定に保たれるので焦点合わせが楽になる利点がある。 又、バーリングと穴とは観察ポイントを移動させた時、試料を入れる穴(4)以上にX、Y方向が移動するのを防ぎ、レンズ(2)に傷がつかない様にするためのもので、特に磁石を使用しているので砂鉄などの微小な粉が付きやすいからである。 【0009】 図7は紙などを掲示板に貼るときに使う、ヨーク付きのリング型の磁石を用いた、実施例である。図に示すように、真ん中に穴の開いた鉄製の丸いヨーク(31)の中に図4(a)に示した顕微鏡本体のシート(41)をヨークの中に入るように小さくして貼りつける。次に試料受けの方はリング型の磁石(32)に透明フイルム(5)を図のように貼りつけて、反対側にヨーク(31)より大きな径の厚さ1mm程度の鉄板の中心に5mm程の径の穴を開けた物を貼りつける(33)、これで本簡易顕微鏡が出来上がる。この場合も前述と同じく焦点合わせが楽になる。又、移動範囲はヨーク内径と磁石の外径との差だけになり、レンズに傷を付けないようになる。 【0010】 図8は磁石を使用しないで、焦点が一定になるようにした実施例である。 (a)はポリプロピレンの厚さ0.75mmのシート(51)をテレホンカード状にして、切れ目(52、53)を二箇所設けて、中心にレンズ(2)をいれる、これを顕微鏡の本体とする。 (b)は(a)と同じ材質のシート(54)をクロス型にして、真ん中に穴(4)を開け透明フイルム(5)を貼りつけたものである、これを試料受けとする。 (c)は(a)の物に(b)の物を切れ目(52、53)を開いて、はめ込んだ物であり、これが完成品である。 この(c)の物は切れ目(52、53)の力で(b)の試料受けをレンズ(2)の方へ押しつける様になるために指で押えなくても焦点が一定になるため、観察する時に楽になるし、磁石を使わないので、レンズに傷を付けることがなくなるし、安く作る事ができるといった利点がある。 【0011】 図9は図4における、シート(41)をテレホンカード状にして、中に、倍率の異なるレンズ二個を取り付けたところをしめしている。 そして裏側に透明フイルム(5)を貼りつけたところを図示したもので、断面は図10の(a)の様になる。又、レンズの径が大きくなって、焦点距離が長くなった場合は(b)の様にレンズの付近をフイルム(5)と離すために、へこませる。又、(c)の様に焦点距離を合わすために、シート(1)をへこますかわりに、セパレータ(63)を付けても良いし(d)の様に透明な樹脂(65)でレンズ(2)をモールドしてもかまわないし、熱可塑性樹脂でしかも透明度の高いシート状のものを熱をかけながらレンズに圧接しても良い。このような場合屈折率の変化のため、倍率に変化が生じるが、さほどでないので、顕微鏡として充分に使用が可能である。又、製作の関係上レンズをあらかじめ透明体で両面を挟んでおくこともある。 【0012】 図11は顕微鏡を屋外で使用する場合、太陽光を使う時、観察しやすくするため、絞りを付けてコントラストを良くした実施例の説明図である。これらの中で説明するシートはポリプロピレンの厚さが0.75mmの物である。そして、(a)は20×40mmの長方形であり、(c)も同じである。(a)の(81)と(c)の(83)は同じ4mmΦの穴である。又、(a)の穴(84)は5mmΦの穴で、(c)の(85)は凸部の高さが約0.4mmで外径5mmのエンボスで、これらが組合わさる時に(84)に(85)の凸部が入って位置を固定するためのものである(b)は図の様に左側に5mmΦの穴(82)を中心に半径10mmの円を描いた外形、即ちダルマ型をしている。 (a)の(80)はピンホールである。以上の様な各パーツを(c)の上に(b)の物をのせ、さらに、(a)の物を重ねハトメの玉でカシメる。すると(d)の様な断面になる、これを上から見ると、(e)のようになる。 使い方は(e)のハトメ部(86)を中心にして各々のパーツを扇子を開く様に広げると図12(a)の様に、そして、穴(4)から透明フイルム(5)に試料を着けて、液体の場合に試料がこぼれるのを防ぐためにはセロテープで穴(4)をふさげば良い。このようにしたら、各パーツを閉じて(e)の様にして、レンズ(2)に眼を近ずけて、屋外で明るい方を見れば、光はピンホール(80)で絞られて、コントラストが良くなり、はっきり試料の拡大像を見ることが出来る。この時、指で(a)の(84)と(c)のエンボス(85)の部分を押す様にすると、レンズとピンホールの軸芯が合うと同時に、透明フイルム(5)がレンズの方におされるので、焦点が定まり良く見える様になるわけである。尚、X、Y方向の移動は(B)の穴(82)がハトメの玉の外形より1mm大きくなっているのでそのクリアランスの範囲だけ移動ができる。 又、図12の(b)の様に開いて試料をいれることもポリプロピレンのシートならできる。尚、逆視顕微鏡として見る場合でも絞りがあるとよく見える。 以上が本発明の方法が使える簡易顕微鏡の実施形態の説明であるが、レンズの事に関して説明しておく。 【0013】 本発明で使用したレンズは直径が0.25mmから1.4mmの球形である。だから、正視顕微鏡的には約1000倍のものが作れる。又、球形レンズは球面収差や色収差が激しくて、使い物にならないなどと書いてあるのをみうけるが、これは完全な間違いである。又、最近のGRINレンズの技術が進んで、マイクロレンズの精度があがり、安く出来る様になると本発明のレンズとして使用できると思われる。 【0014】 次に本発明に付随した実施の形態について説明する。 発明の課題の一つが精子を見ることであつたが、たんに、見るだけでなく、精子密度を知る事ができれば最近の環境ホルモンなどとの関係も個人的に理解出来るのではないだろうか。 そのために、本考案の試料受けの透明フイルムなどに、始めから面積の解ったマークを細い針先で描くか、針先の断面そのものをコイニングして置けば、その中に存在する精子数を数えれば、あとは計算で精子密度を求める事が出来る。 この場合のマークは円や四角といった単純なパターンであるが、肉眼では容易に見えない微小な絵なども圧電素子を利用して描くこともできるし、写真の縮小技術で絵や写真をフィルムに焼き付ける事もできる。これを一種の情報の圧縮と見て、これを、本発明の簡易顕微鏡と結びつけた実施例を以下にのべる。 図13の(a)のシート(71)は紙でレンズ用の穴を必要なだけ開けてレンズ(2)を取り付けた物で、図では4箇所である。(b)のシート(72)も(a)と同じ形と大きさにして、写真や絵や宣伝文句などを書いておく。さらに(a)のレンズに対応する箇所に穴(4)を開け、そこに、前記した肉眼では見えない絵や写真をフイルム(75)にして貼る。貼る側はシート(72)の裏か表かはレンズの焦点による。 (b)の外観を風景写真やまじめな絵カードや宣伝文句にして、フイルム(75)を、ある国の大統領でさえほんの少しだけ好きな、また、或る国の役人の理性さえ、負ける、ほのかに色づいた絵や写真にしたら、色ずき加減にもよるが、無料贈呈の宣伝媒体として役立つ可能性がある。尚、(a)の顕微鏡本体は一枚あれば良く、(b)は一種のプレパラートであり何枚あっても良いし落としたりした場合でも(a)がなければ見ることが出来ないので秘密保持になる又、(a)と(b)とを張り合わせて一枚のカードとして(a)の方を写真や絵カードしても良い。この場合は図9の透明フイルム(5)が写真フイルムや絵を描いたフイルムになったものと考えられる。 此の図13のものは正視顕微鏡的にでも逆視顕微鏡的にでも見ることが出来るが、製作に際しては倍率が異なるのであらかじめ、どちらにするかきめておかねばならない。尚、量産に際しては穴を開ける代わりに縮小した絵や写真の部分も同時に透明なシートに焼き付けても良い。 【0015】 この実施例の物は産業上の価値が少ない様に思われるかもしれないが、そうではない。それは前記した情報の圧縮といった観点に立つと、本発明の簡易顕微鏡は圧縮した情報の再生機器であり、その方法は情報の新しい再生方法を提供しているからである。 【0016】 図13(b)のシート(72)を光デスクと考えて全体をフイルム(75)と見なして、電子線、X線、レーザ光線でも、はたまた、可視光線でも良いが、縮小した像を記録しておく、ここでの像とは1、0の二位値のパターンをも意味している。従って材料に立体的な凹凸をつけても、光を通せば、明暗のパターンが生ずればそれを像とみなす、現在のコンピュターの記録媒体は像をダイレクトに記録はしていないが、本方法ではダイレクトに記録したものを再生出来る。記録に際しては大がかりな設備を要するだろうが、それの、複製は安価になる。再生においては本発明の逆視顕微鏡的方法を使えばコンパクトに納まる。以下に再生について図14を参照して説明する。 図14の(a)の光デスク(94)の断面(イ)を拡大した図を(b)にしめしてあるが、その断面をV字やU字形にして三次元的にして記録密度を上げる様にしてある。針の先のような点にしてデスクリートにしても、連続のスパイラル状にしてもかまわない。こうした、凹部に(97)の様な記録する情報に対応した凹凸の印をつける。印の幅は20ナノメートルにする。ここでの、印の意味は光が屈折や乱反射する、原子や分子レベルでの欠損や不規則性をさしている。V字の肩幅を1マイクロメートルにし、深さを0.5マイクロメートルにして25段の三次元記録媒体とする。こうした、デスクを(a)に示すターンテーブル(96)に入れ回転させてレンズ(2)とイメージスキャナ(95)のあいだを通過させてレンズ(2)に適当な角度で光をあてると、情報を記録した像を(95)が受け取る、又、印として蛍光物質を使うと、図14の(c)に示す様な正視顕微鏡的な方法、即ち、レンズ(2)の前に光デスク(94)が来る様にしても20ナノメートルの印をはつきりと識別できる。又、単なる映像ならV字の断面にしなくても良いが、V字にすれば、山肌に木を植える様に情報を記録できるので、記録密度が高くなる。今後この記録方式は記録密度を極端に上げる可能性を秘めている。 【0017】 【発明の効果】 本発明は逆視顕微鏡的な方法によって微小な物を大きく拡大出来ることを見付けた事に、その発端があるが、これの、理論的な事が不明であるが、像の拡大率が大きい事、倒立像をていすること、透明体でも立体感のある像が見える事、作動距離が大きくとれる事、観察するポイントを見付け安い事。など、多くの利点がある。 又、簡易顕微鏡は、微小な球形レンズを使用するだけで、正視顕微鏡的な方法と逆視顕微鏡的な方法とで高倍率で試料を観察でき、とても安い価格で製造出来て、小型で持運びが楽で子供などの理科の学習に役立つと思われる。 光デスクに関しては三次元的に記録されている情報を顕微鏡的な検出で読み取り、記録密度を高める一つの方式と考えられる。又、山肌に木を植えるがごとく情報を記録するといつた考えは一考に値するのではないだろうか。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の概念図である。 【図2】レーウエン・フック型の顕微鏡の説明図である。 【図3】同上の断面略図である。 【図4】本発明の方法が使える簡易顕微鏡の基本的な実施例である。 【図5】簡易顕微鏡の実施例。 【図6】簡易顕微鏡の実施例。 【図7】簡易顕微鏡の実施例。 【図8】簡易顕微鏡の実施例。 【図9】簡易顕微鏡の実施例。 【図10】レンズと透明フイルムの関係の説明図である。 【図11】絞り付きの簡易顕微鏡の説明図。 【図12】同上の使用の説明図である。 【図13】特殊な簡易顕微鏡の説明図である。 【図14】三次元的に記録する光デスクの説明図である。 【符号の説明図】 1 試料 2 レンズ 3 目 4 穴 5 透明フイルム 11 試料取り付け針 12 レンズ 13、14 しんちゅう板 15 微調整ネジ 21 ステンレス板 22、23 バーリング 24、25 穴 31 ヨーク 32 リング型磁石 33 鉄板 41 シート 43 シート 46 粘着テープ 49 ゴム板状磁石 51 シート 52、53 切れ目 54 シート 61 シート 71、72 シート 75 写真フイルム 80 ピンポール 81,82 穴 83,84 穴 85 エンボス 86 ハトメ 87,88 シート 89 シート 94 光デスク 95 イメージセンサー 96 ターンテーブル 97 凹凸の印 98 保護マク |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2010-04-08 |
結審通知日 | 2010-04-15 |
審決日 | 2010-04-27 |
出願番号 | 特願平10-213411 |
審決分類 |
P
1
123・
537-
YA
(G02B)
P 1 123・ 121- YA (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森内 正明 |
特許庁審判長 |
北川 清伸 |
特許庁審判官 |
今関 雅子 村田 尚英 |
登録日 | 2006-05-26 |
登録番号 | 特許第3806828号(P3806828) |
発明の名称 | 対物レンズと試料との位置関係を逆にして拡大像を得る方法とその応用 |
代理人 | 保科 敏夫 |
代理人 | 保科 敏夫 |
代理人 | 寒河江 孝允 |
代理人 | 寒河江 孝允 |