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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C |
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管理番号 | 1220592 |
審判番号 | 不服2007-28480 |
総通号数 | 129 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-10-18 |
確定日 | 2010-07-22 |
事件の表示 | 特願2005-169546「表示装置、表示方法及びコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月21日出願公開、特開2006-341501〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯の概要 本願は、平成17年6月9日の出願であって、平成19年9月11日(起案日)付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年10月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成19年11月13日付けで明細書及び特許請求の範囲について手続補正がなされたものである。 【2】平成19年11月13日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年11月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲は、 「【請求項1】 樹脂を成形する金型に力を加える型締め部と、前記樹脂を熔かしスクリュを移動させることで前記樹脂を前記金型へ射出する前記射出部とを備えた電動式射出成形機が計測する計測データを、前記電動式射出成形機から受信して表示部に表示する表示装置であって、 前記射出部による射出が完了した時点でのスクリュの位置を零点とした前記射出部により計測される計測データに基づく前記スクリュの位置を示す位置軸及び前記スクリュの位置の表示から切り替わる時点を零点とし保圧時間を示す時間軸を横軸とし、前記型締め部によって計測される前記金型内の型内圧力値と型締め力値と型開き量と型締め軸トルク値の少なくとも1つの項目を縦軸として前記縦軸で選択された項目の計測データを前記横軸に対する連続した波形で描画したグラフを前記表示部に表示する ことを特徴とする表示装置。 【請求項2】 前記射出部によって計測され前記電動式射出成形機から受信する射出速度値、射出圧力値、及び射出軸トルク値と、予め内部に記憶される射出速度設定値及び射出圧力設定値と、前記射出部によって計測され前記電動式射出成形機から受信する樹脂圧力値と、前記型内圧力値、前記型締め力値、前記型開き量、及び前記型締め軸トルク値のそれぞれの項目の最大値及び最小値に基づいて、1つのグラフに表示できるようにそれぞれの縦軸スケールを算出し、算出した縦軸スケールのうち、予め定められる数の縦軸スケールをグラフに沿って表示することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。 【請求項3】 前記電動式射出成形機は、前記型締め部によって樹脂の注入前に固定盤に取り付けられた金型と可動盤に取り付けられた金型との間にわずかな隙間をあけると共に樹脂の注入後に前記金型を締め、 前記型締め部に前記固定盤に取り付けられた金型と前記可動盤に取り付けられた金型との間の隙間の距離を測定する型開き量センサが設けられ、 該型開き量センサによって前記金型と金型の間に前記隙間を設定した状態で前記射出部から樹脂を注入させるようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の表示装置。 【請求項4】 樹脂を成形する金型に力を加える型締め部と、前記樹脂を熔かしスクリュを移動させることで前記樹脂を前記金型へ射出する前記射出部とを備えた電動式射出成形機が計測する計測データを、前記電動式射出成形機から受信して表示部に表示する表示装置における表示方法であって、 前記射出部による射出が完了した時点でのスクリュの位置を零点とした前記射出部により計測される計測データに基づく前記スクリュの位置を示す位置軸及び前記スクリュの位置の表示から切り替わる時点を零点とし保圧時間を示す時間軸を横軸とし、前記型締め部によって計測される前記金型内の型内圧力値と型締め力値と型開き量と型締め軸トルク値の少なくとも1つの項目を縦軸として前記縦軸で選択された項目の計測データを前記横軸に対する連続した波形で描画したグラフを前記表示部に表示するステップ、 を含むことを特徴とする表示方法。 【請求項5】 樹脂を成形する金型に力を加える型締め部と、前記樹脂を熔かしスクリュを移動させることで前記樹脂を前記金型へ射出する前記射出部とを備えた電動式射出成形機が計測する計測データを、前記電動式射出成形機から受信して表示部に表示する表示装置のコンピュータに、 前記射出部による射出が完了した時点でのスクリュの位置を零点とした前記射出部により計測される計測データに基づく前記スクリュの位置を示す位置軸及び前記スクリュの位置の表示から切り替わる時点を零点とし保圧時間を示す時間軸を横軸とし、前記型締め部によって計測される前記金型内の型内圧力値と型締め力値と型開き量と型締め軸トルク値の少なくとも1つの項目を縦軸として前記縦軸で選択された項目の計測データを前記横軸に対する連続した波形で描画したグラフを前記表示部に表示するステップ、 を実行させるためのコンピュータプログラム。」 に補正された。なお、下線は、審判請求人が付した補正箇所である。 上記補正は、請求項1についてみると、実質的にみて、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「射出部により計測される計測データに基づく前記スクリュの位置を横軸とし」を「射出部による射出が完了した時点でのスクリュの位置を零点とした前記射出部により計測される計測データに基づく前記スクリュの位置を示す位置軸及び前記スクリュの位置の表示から切り替わる時点を零点とし保圧時間を示す時間軸を横軸とし」とし、「グラフ」について「縦軸で選択された項目の計測データを前記横軸に対する連続した波形で描画した」と、構成を限定するものであるから、新規事項を追加するものではなく、発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更することのない範囲で、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 したがって、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する補正の目的に合致する。 以上のとおり、上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか (平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用刊行物とその記載事項 (刊行物1) 本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-106187号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「射出成形機用製品判別装置及び方法」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、射出成形機用製品判別装置及び方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 射出成形機は、各部の動作状態及び樹脂の状態等を検出するために、複数の検出器を備えている。これら検出器の出力(ショットデータ)は、射出成形時に各部をサーボ制御するために用いられるだけでなく、成形条件の決定や、連続射出成形時の動作確認、さらには、製品の良否判定にも利用される。 【0003】 成形条件の決定は、射出成形及びその時のショットデータの収集と、成形条件の変更とを繰り返すことにより行われる。成形条件の決定を短時間で終了するためには、成形条件の変更による影響が、ショットデータにどのように表れるのかを容易に認識できるようにする必要がある。また、射出成形機による安定した連続成形を実現するには、ショットデータが所定の範囲内に収まっていることを容易に確認できるようにする必要がある。これらの要求を満たすため、射出成形機の制御装置は、ショットデータを、表示器に波形(グラフ)表示させるための機能を備えている。 【0004】 射出成形機の制御装置は、ショットデータを記憶するとともに、設定に基づきあるいは入力に応じてショットデータを表示器に波形表示させる。このとき、最新のショットデータと、前回又はそれ以前のショットデータあるいは良品成形時のショットデータを重ねて表示させることにより、最新のショットデータについての成形条件の適否判断や成形動作状態確認を一目で行うことが可能になる。」 (イ)「【0014】 また、本発明によれば、射出成形機によって成形された製品の良否を判別するための射出成形機用製品判別方法において、射出成形機の複数の検出値を表示器にグラフ表示し、設定器を用いて、表示器に表示されたグラフ上で任意の領域を指定し、指定された領域における前記検出値の積分値を求め、求めた積分値を前記製品の良否判定を行うための評価項目として採用することを特徴とする射出成形機用製品判別方法が得られる。」 (ウ)「【0016】 図1に本発明の第1の実施の形態に係る射出成形機用製品判別装置を示す。本実施の形態に係る製品判別装置10は、射出成形機20の制御装置によって実現され、設定器11と表示器12、及びこれらに接続される制御部13とを有している。 【0017】 設定器11は、射出成形機20を制御するために必要とされるパラメータの入力や、射出成形機20の操作、表示器12に表示させる情報の設定・変更などの指示を受け付ける。 【0018】 表示器12は、制御部13の制御のもと、射出成形機に関する種々の情報を表示する。 【0019】 制御部13は、射出成形機20の各駆動部(図示せず)を制御し、射出成形機20に射出成形動作を実行させる。このとき、制御部13は、射出成形機20に設けられている各種検出器(図示せず)からの検出出力を受けて、各駆動部のサーボ制御や、樹脂の圧力制御・温度制御等を行う。また、制御部13は、各種検出器からの検出出力を時間情報に関連付けてショットデータ(検出データ)とし、内蔵する記憶部又は図示しない外部記憶装置に記憶させる。さらに、制御部13は、生成したショットデータ及び/又は記憶部に記憶されているショットデータを、設定器11からの設定に基づいてまたは指示に応じて表示器12に表示させる。」 (エ)「【0023】 図2に示す画面は、8個のチャネルCH1?8に対応する8つのグラフを同時に表示することができる。表示するグラフとしては、例えば、射出工程(充填・保圧工程)における射出圧、射出速度、スクリュー位置、ノズル内圧力、型内圧、射出トルク、及び型締トルク等の設定値及び検出値や、計量工程における背圧、スクリュ回転トルク、スクリュ回転速度、シリンダ温度、及び樹脂温度等の設定値及び検出値がある。ここでは、射出工程における射出速度の設定値及び検出値と、射出圧(保圧)の設定値及び検出値の時間変化を表す4つ(CH1?4に対応)のグラフを表示している。 【0024】 表示器12に表示される波形表示画面のグラフは、通常、最新のショットデータに対応するものが表示される。しかし、記憶部に記憶されているそれ以前のショットデータに対応するグラフを表示させることも可能である。 【0025】 表示器12に図2に示す画面が表示されている状態で、設定器11を用いて画面上の“チャネル”ボタン21のいずれかを押すと、そのチャネルに対応するグラフを非表示とすることできる。更に同じ“チャネル”ボタン21を押せば、再び対応するグラフを表示させることができる。これにより、画面上に表示させたいグラフのY軸項目を選択・変更することができる。」 (オ)図2から、時間変化をグラフの横軸とし、波形は横軸に対して連続している点が看取できる。 以上の記載事項及び図面の記載からみて、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 [刊行物1記載の発明] 「射出成形機が収集するショットデータを、画面に表示する表示器12であって、 時間変化を横軸とし、型内圧、型締トルク等をY軸として前記Y軸で選択されたショットデータを横軸に対する連続した波形で表示したグラフを画面に表示する表示器。」 (刊行物2) 本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-216215号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「射出成形機のモニター表示方法」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。 (カ)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、射出成形機のモニター表示方法に係り、詳しくは射出圧縮機能を有する射出成形機または磁場射出成形機のモニター表示方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】通常、射出工程は充填工程と保圧工程とからなり、充填工程ではスクリュ位置を基準として射出速度を制御し、保圧工程では時間を基準として射出圧力を制御している。そこで、射出工程のモニター表示方法では、充填工程では位置基準軸、保圧工程では時間基準軸を横軸とし、射出速度、射出圧力などの射出成形条件を縦軸として、前記射出成形条件を充填工程から保圧工程へと連続的に表示している。なお、充填工程から保圧工程への切り換えは、通常、位置基準で行われている。 【0003】特公平2ー49893号公報に記載されている射出工程のモニター表示方法では、図3に示すように、射出速度(v)、充填力(F)などの射出成形条件を、充填工程ではストローク(位置)基準軸、充填工程から保圧工程への切替点より時間基準軸で表わすと共に、この時間基準軸で表される前記成形条件を射出スクリュの機械的な極限位置0を起点として合成表示させている。」 (キ)「【0008】本発明は、以上のような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、射出工程と同時に進行している型締工程、励磁工程などの別工程の制御の様子を、同一モニター画面で表示し、両者の関連性を明らかにし、前記別工程の制御の誤りを未然に防止して、良好な成形品を成形することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明による射出成形機のモニター表示方法は、射出圧縮機能を有する射出成形機の射出工程における充填工程ではスクリュ位置基準軸、保圧工程では時間基準軸を横軸とし、射出工程の射出成形条件軸および型締工程の型締条件軸を縦軸として、射出成形条件および型締条件の波形の変化の様子を同一の射出プロセスモニター画面で表示することを特徴とする。 【0010】さらに詳細には、前記型締条件が型締め力であることを特徴とする。」 (ク)「【0018】図1において、横軸は、射出工程の充填工程におけるスクリュ位置をスクリュ最前進位置を0として示すスクリュ位置基準軸1と、スクリュ最前進位置0から同一線上に保圧工程(冷却工程も含む。)以降の時間経過を示す時間基準軸2とからなる。なお、スクリュ最前進位置0および保圧切り換え位置9は縦軸で示されている。 【0019】一方、縦軸は、射出工程の射出成形条件であるスクリュ速度を示すスクリュ速度軸3、射出シリンダー圧力を示す射出シリンダー圧力軸4および型締条件である型締め力を示す型締め力軸5などの複数軸とされている。なお、射出成形条件としては、上記以外に、射出加速度、成形材料温度などがある。また、型締条件としては、上記以外に、型締めシリンダー圧力などがある。なお、時間基準軸を冷却工程中まで表示することで、冷却中の型締め力などの変化も表示することもできる。」 3.対比・判断 本願補正発明と刊行物1記載の発明を対比すると、その機能からみて、刊行物1記載の発明の「射出成形機」は本願補正発明の「電動式射出成形機」に相当し、以下同様に、「収集する」は「計測する」に、「ショットデータ」は「計測データ」に、「画面」は「表示部」に、「表示器12」は「表示装置」に、「型内圧、型締トルク等」は「型締め部によって計測される金型内の型内圧力値と型締め力値と型開き量と型締め軸トルク値の少なくとも1つの項目」に、「Y軸」は「縦軸」に、「表示」は「描画」に、それぞれ相当する。 また、刊行物1記載の発明は射出成形機の表示器である以上、射出成形機が「樹脂を成形する金型に力を加える型締め部と、前記樹脂を熔かしスクリュを移動させることで前記樹脂を前記金型へ射出する前記射出部」を備えていることは明らかであり、ショットデータを射出成形機から受信していることも明らかである。 したがって、本願補正発明の用語を使用して記載すると、両者は、 「樹脂を成形する金型に力を加える型締め部と、前記樹脂を熔かしスクリュを移動させることで前記樹脂を前記金型へ射出する前記射出部とを備えた電動式射出成形機が計測する計測データを、前記電動式射出成形機から受信して表示部に表示する表示装置であって、 前記型締め部によって計測される前記金型内の型内圧力値と型締め力値と型開き量と型締め軸トルク値の少なくとも1つの項目を縦軸として前記縦軸で選択された項目の計測データを横軸に対する連続した波形で描画したグラフを前記表示部に表示する表示装置。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明は、横軸が「射出部による射出が完了した時点でのスクリュの位置を零点とした射出部により計測される計測データに基づくスクリュの位置を示す位置軸及びスクリュの位置の表示から切り替わる時点を零点とし保圧時間を示す時間軸」であり、計測データが「横軸に対する連続した」波形であるのに対し、刊行物1記載の発明は、横軸は単に「時間軸」であり、ショットデータは時間軸に対して連続した波形で表示されている点。 上記相違点1について以下に検討する。 刊行物2には、射出成形機のモニター表示において、射出成形条件及び型締条件の波形の変化の様子を同一の射出プロセスモニター画面で表示し、そのグラフの横軸を、射出工程の充填工程においてスクリュ位置基準軸1とし、保圧工程以降は時間経過を示す時間軸2とした発明が記載されている(上記記載事項(キ)、(ク)参照)。 そして、刊行物1及び2記載の発明は、共に射出成形機のショットデータ(射出成形条件及び型締条件)の表示に関する技術であることから、刊行物1記載の発明のグラフの横軸として、刊行物2記載の上記発明を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。 また、刊行物2記載のスクリュ位置基準軸1の0点は、スクリュ最前進位置であるが(上記記載事項(ク)参照。)、これを射出が完了した時点でのスクリュの位置とすることは、当業者が適宜なし得る程度の設計上の微差にすぎない。 さらに、刊行物2記載の図1から判断するに、縦軸のデータが横軸に対する連続した波形であるかは明らかでないが、これを連続した波形として表示することも、当業者が適宜なし得る程度の設計上の微差にすぎない。 そうすると、刊行物1記載の発明において、上記刊行物2記載の発明を適用するに際し、適宜設計変更を行うことにより、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。 また、本願補正発明の奏する効果について検討しても、刊行物1及び2に記載された発明から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとは認められない。 したがって、本願補正発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、審判請求人は、当審における前置審尋に対する平成22年4月5日付けの回答書において、補正案を提示し、該補正案で示される新請求項1に係る発明は進歩性等を有する旨の主張をしているが、該新請求項1に係る発明において限定される事項は、原審における平成19年4月9日(起案日)付けの拒絶理由通知書において示されたとおり、従来周知の事項(特開平9-85793号公報参照)にすぎず、上記判断を左右するものではない。 よって、審判請求人の主張は採用できない。 4.むすび 本願補正発明について以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 【3】本願発明 平成19年11月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明5」という。)は、平成19年1月23日付け、及び平成19年6月14日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、本願発明1(本願の請求項1に係る発明)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 樹脂を成形する金型に力を加える型締め部と、前記樹脂を熔かしスクリュを移動させることで前記樹脂を前記金型へ射出する前記射出部とを備えた電動式射出成形機が計測する計測データを、前記電動式射出成形機から受信して表示部に表示する表示装置であって、 前記射出部により計測される計測データに基づく前記スクリュの位置を横軸とし、前記型締め部によって計測される前記金型内の型内圧力値と型締め力値と型開き量と型締め軸トルク値の少なくとも1つを縦軸としたグラフを前記表示部に表示することを特徴とする表示装置。」 1.本願発明1について (1)本願発明1 上記のとおりである。 (2)引用刊行物とその記載事項 (刊行物1) 上記【2】2.に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明1と刊行物1記載の発明を対比すると、 「樹脂を成形する金型に力を加える型締め部と、前記樹脂を熔かしスクリュを移動させることで前記樹脂を前記金型へ射出する前記射出部とを備えた電動式射出成形機が計測する計測データを、前記電動式射出成形機から受信して表示部に表示する表示装置であって、 前記型締め部によって計測される前記金型内の型内圧力値と型締め力値と型開き量と型締め軸トルク値の少なくとも1つを縦軸としたグラフを前記表示部に表示する表示装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する(両発明の相当関係は、上記【2】3.を参照)。 [相違点2] 本願発明1は、横軸が「射出部により計測される計測データに基づくスクリュの位置」であるのに対し、刊行物1記載の発明は、横軸は「時間軸」である点。 上記相違点2について検討する。 射出成形機の波形表示において、横軸を射出部により計測される計測データに基づくスクリュの位置とすることは、従来周知の事項である(例えば、特開2004-155105号公報の段落【0017】には、射出速度Vの実測値を波形表示する際、横軸をスクリュ位置とすることが記載されており、これは実質的に、「射出部により計測される計測データに基づくスクリュの位置」であるといえる)。 そうすると、刊行物1記載の発明において、上記従来周知の事項を採用し、グラフの横軸をスクリュ位置として、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 また、本願発明1の奏する効果について検討しても、刊行物1に記載された発明及び上記周知の事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとは認められない。 2.むすび 以上のとおり、本願発明1は、刊行物1に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本願発明1が特許を受けることができないものである以上、本願発明2ないし5について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-05-18 |
結審通知日 | 2010-05-25 |
審決日 | 2010-06-07 |
出願番号 | 特願2005-169546(P2005-169546) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B29C)
P 1 8・ 575- Z (B29C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 一宮 里枝 |
特許庁審判長 |
川本 真裕 |
特許庁審判官 |
藤村 聖子 山岸 利治 |
発明の名称 | 表示装置、表示方法及びコンピュータプログラム |
代理人 | 渡邊 隆 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 西 和哉 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 村山 靖彦 |