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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1220600 |
審判番号 | 不服2008-239 |
総通号数 | 129 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-01-04 |
確定日 | 2010-07-22 |
事件の表示 | 特願2002-135344「生体情報登録装置及び生体情報登録方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月21日出願公開、特開2003-330895〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成14年5月10日の出願であって、平成19年4月9日付けで拒絶理由通知がなされ、同年6月18日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年11月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年1月4日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年2月4日付けで手続補正がなされ、同年4月7日付けで審査官により前置報告がなされ、平成21年12月11日付けで当審より審尋がなされ、平成22年2月15日付けで回答書が提出されたものである。 第2.平成20年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年2月4日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正 平成20年2月4日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成19年6月18日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載、 「【請求項1】 被登録者と対面機会のある業者を登録作業者として生体情報の登録を行うにあたって、まず登録作業者の認証を行い、当該登録作業者の認証が完了したときに被登録者の生体情報の登録作業を行う生体情報登録装置であって、 登録作業者の生体情報を検出する第1の生体情報検出手段と、 登録作業者の生体情報が記録された第1の生体情報記録媒体から当該登録作業者の生体情報を読み出すための第1のインタフェースと、 前記第1の生体情報検出手段により検出された登録作業者の生体情報と、前記第1のインタフェースを用いて読み出された登録作業者の生体情報とを照合する生体情報照合手段と、 前記生体情報照合手段により両情報が一致することが確認された場合に、被登録者の生体情報を検出する第2の生体情報検出手段と、 この第2の生体情報検出手段により検出された被登録者の生体情報を第2の生体情報記録媒体に記録するための第2のインタフェースと、 を具備することを特徴とする生体情報登録装置。 【請求項2】 被登録者と対面機会のある業者を登録作業者として生体情報の登録を行うにあたって、まず登録作業者の認証を行い、当該登録作業者の認証が完了したときに被登録者の生体情報の登録作業を行う生体情報登録装置であって、 登録作業者の生体情報を検出する生体情報検出手段と、 登録作業者の生体情報が記録された第1の生体情報記録媒体から当該登録作業者の生体情報を読み出すためのインタフェースと、 前記生体情報検出手段により検出された登録作業者の生体情報と、前記インタフェースを用いて読み出された登録作業者の生体情報とを照合する生体情報照合手段と、 を具備し、 前記生体情報照合手段による照合結果に基づいて、前記生体情報検出手段により被登録者の生体情報を検出し、検出した生体情報を前記インタフェースを用いて第2の生体情報記録媒体に記録することを特徴とする生体情報登録装置。 【請求項3】 被登録者と対面機会のある業者を登録作業者として生体情報の登録を行うにあたって、まず登録作業者の認証を行い、当該登録作業者の認証が完了したときに被登録者の生体情報の登録作業を行う生体情報登録方法であって、 登録作業者の生体情報を第1の生体情報検出手段によって検出するステップと、 登録作業者の生体情報が記録された第1の生体情報記録媒体から第1のインタフェースを用いて当該登録作業者の生体情報を読み出すステップと、 前記第1の生体情報検出手段により検出された登録作業者の生体情報と、前記第1のインタフェースを用いて読み出された登録作業者の生体情報とを照合するステップと、 この照合ステップにおいて両情報が一致することが確認された場合に、被登録者の生体情報を第2の生体情報検出手段によって検出するステップと、 検出された被登録者の生体情報を第2のインタフェースを用いて第2の生体情報記録媒体に記録するステップと、 を具備することを特徴とする生体情報登録方法。 【請求項4】 被登録者と対面機会のある業者を登録作業者として生体情報の登録を行うにあたって、まず登録作業者の認証を行い、当該登録作業者の認証が完了したときに被登録者の生体情報の登録作業を行う生体情報登録方法であって、 登録作業者の生体情報を第1の生体情報検出手段によって検出するステップと、 登録作業者の生体情報が記録された第1の生体情報記録媒体から第1のインタフェースを用いて当該登録作業者の生体情報を読み出すステップと、 前記第1の生体情報検出手段により検出された登録作業者の生体情報と、前記第1のインタフェースを用いて読み出された登録作業者の生体情報とを照合するステップと、 この照合ステップにおいて両情報が一致することが確認された場合に、被登録者の生体情報を第2の生体情報検出手段によって検出するステップと、 検出された被登録者の生体情報を第2のインタフェースを用いて第2の生体情報記録媒体に記録するステップと、 前記被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミングで、前記登録作業者と前記被登録者の生体反応チェックを行なうステップと、 を具備することを特徴とする生体情報登録方法。 【請求項5】 被登録者と対面機会のある業者を登録作業者として生体情報の登録を行うにあたって、まず登録作業者の認証を行い、当該登録作業者の認証が完了したときに被登録者の生体情報の登録作業を行う生体情報登録方法であって、 登録作業者の認証が終了した後に、装置に入力された個人識別情報と、生体情報記録媒体に記録された個人識別情報との照合を行なうために前記個人識別情報を当該生体情報記録媒体に送信するステップと、 前記生体情報記録媒体からの照合結果を受け取り、当該照合結果が両情報が一致していることを示している場合に、被登録者の生体情報を生体情報検出手段によって検出するステップと、 検出された被登録者の生体情報を所定のインタフェースを用いて前記生体情報記録媒体に記録するステップと、 を具備することを特徴とする生体情報登録方法。 【請求項6】 被登録者と対面機会のある業者を登録作業者として生体情報の登録を行うにあたって、まず登録作業者の認証を行い、当該登録作業者の認証が完了したときに被登録者の生体情報の登録作業を行う生体情報登録方法であって、 登録作業者の認証が終了した後に、装置に入力された個人識別情報と、生体情報記録媒体に記録された個人識別情報との照合を行なうために前記個人識別情報を当該生体情報記録媒体に送信するステップと、 前記生体情報記録媒体からの照合結果を受け取り、当該照合結果が両情報が一致していることを示している場合に、被登録者の生体情報を生体情報検出手段によって検出するステップと、 検出された被登録者の生体情報を所定のインタフェースを用いて前記生体情報記録媒体に記録するステップと、 前記被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミングで、前記登録作業者と前記被登録者の生体反応チェックを行なうステップと、 を具備することを特徴とする生体情報登録方法。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という) を、 「【請求項1】 被登録者と対面機会のある業者を登録作業者として生体情報の登録を行うにあたって、まず登録作業者に関して第1回目の生体反応チェックを含む認証を行い、当該登録作業者の認証が完了したときに、前記登録作業者に関して第2回目の生体反応チェックを行いながら被登録者の生体情報の登録作業を行う生体情報登録装置であって、 登録作業者の生体情報を検出する第1の生体情報検出手段と、 登録作業者の生体情報が前記生体情報登録装置とは独立して暗号化されて記録された第1の生体情報記録媒体から前記登録作業者の生体情報を読み出す際に、当該第1の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする第1のインタフェースと、 前記第1の生体情報検出手段により検出された登録作業者の生体情報と、前記第1のインタフェースを用いて読み出された登録作業者の生体情報とを照合する生体情報照合手段と、 前記生体情報照合手段により両情報が一致することが確認された場合に、被登録者の生体情報を検出する第2の生体情報検出手段と、 前記第2の生体情報検出手段により検出された被登録者の生体情報を第2の生体情報記録媒体に記録する際に、当該第2の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする第2のインタフェースと、 を具備することを特徴とする生体情報登録装置。 【請求項2】 被登録者と対面機会のある業者を登録作業者として生体情報の登録を行うにあたって、まず登録作業者に関して第1回目の生体反応チェックを含む認証を行い、当該登録作業者の認証が完了したときに、前記登録作業者に関して第2回目の生体反応チェックを行いながら被登録者の生体情報の登録作業を行う生体情報登録装置であって、 登録作業者の生体情報を検出する生体情報検出手段と、 登録作業者の生体情報が前記生体情報登録装置とは独立して暗号化されて記録された第1の生体情報記録媒体から前記登録作業者の生体情報を読み出す際に、当該第1の生体情報記録媒体との間の通信を可能にするインタフェースと、 前記生体情報検出手段により検出された登録作業者の生体情報と、前記インタフェースを用いて読み出された登録作業者の生体情報とを照合する生体情報照合手段と、 を具備し、 前記生体情報照合手段による照合結果に基づいて、前記生体情報検出手段により被登録者の生体情報を検出し、前記検出した被登録者の生体情報を前記インタフェースを用いて第2の生体情報記録媒体に記録することを特徴とする生体情報登録装置。 【請求項3】 被登録者と対面機会のある業者を登録作業者として生体情報の登録を行うにあたって、まず登録作業者の認証を行い、当該登録作業者の認証が完了したときに被登録者の生体情報の登録作業を行う生体情報登録方法であって、 登録作業者の認証を行うにあたって、登録作業者の生体情報を第1の生体情報検出手段によって検出するステップと、 第1の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする第1のインタフェースを用いて、前記生体情報登録装置とは独立して暗号化されて記録された前記登録作業者の生体情報を当該第1の生体情報記録媒体から読み出すステップと、 前記第1の生体情報検出手段により検出された登録作業者の生体情報と、前記第1のインタフェースを用いて読み出された登録作業者の生体情報とを照合するステップと、 前記照合ステップにおいて両情報が一致することが確認された場合に、被登録者の生体情報の登録作業を行うために、被登録者の生体情報を第2の生体情報検出手段によって検出するステップと、 第2の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする第2のインタフェースを用いて、前記生体情報登録装置とは独立して検出されて暗号化された被登録者の生体情報を前記第2の生体情報記録媒体に記録するステップと、 登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップと、 を具備することを特徴とする生体情報登録方法。 【請求項4】 前記登録作業者の認証生体反応チェックは、登録作業者の個人情報の照合と、該登録作業者の生体情報の検出との間のタイミングで行われるものであり、前記登録作業者の登録生体反応チェックは、被登録者の個人情報の照合と被登録者の生体情報の検出の間のタイミングと、被登録者の生体情報の検出と当該生体情報の記録の間のタイミングとで行われることを特徴とする請求項3記載の生体情報登録方法。 【請求項5】 被登録者と対面機会のある業者を登録作業者として生体情報の登録を行うにあたって、まず登録作業者の認証を行い、当該登録作業者の認証が完了したときに被登録者の生体情報の登録作業を行う生体情報登録方法であって、 登録作業者の認証が終了した後に、装置に入力された被登録者の個人識別情報と、前記生体情報登録装置とは独立して生体情報記録媒体に記録された被登録者の個人識別情報との照合を行なうために前記個人識別情報を当該生体情報記録媒体に送信するステップと、 前記生体情報記録媒体からの照合結果を受け取り、当該照合結果は両情報が一致していることを示している場合に、被登録者の生体情報を生体情報検出手段によって検出するステップと、 前記生体情報記録媒体との間の通信を可能にするインタフェースを用いて被登録者の生体情報を前記生体情報記録媒体に記録するステップと、 登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップと、 を具備することを特徴とする生体情報登録方法。 【請求項6】 前記登録作業者の認証生体反応チェックは、登録作業者の個人情報の照合と、該登録作業者の生体情報の検出との間のタイミングで行われるものであり、前記登録作業者の登録生体反応チェックは、被登録者の個人情報の照合と被登録者の生体情報の検出の間のタイミングと、被登録者の生体情報の検出と当該生体情報の記録の間のタイミングとで行われることを特徴とする請求項5記載の生体情報登録方法。」(以下、この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という) に補正するものである。 2.補正の適否 請求項3乃至請求項6についてした本件補正が、特許法第17条の2の規定に適合するかについて、以下、検討する。 (1)本件補正前後の各請求項の対応について 補正前の請求項3乃至請求項6は、いずれも独立請求項であった。そして、補正前の請求項4は、補正前の請求項3の発明特定事項に「前記被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミングで、前記登録作業者と前記被登録者の生体反応チェックを行なうステップ」を追加した請求項であり、補正前の請求項6は、補正前の請求項5の発明特定事項に前記「前記被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミングで、前記登録作業者と前記被登録者の生体反応チェックを行なうステップ」を追加した請求項であった。 これに対して、補正後の請求項3及び同請求項5が独立請求項であるが、補正後の請求項4及び同請求項6は、それぞれ、補正後の請求項3及び同請求項5を引用する従属請求項である。そして、補正後の請求項4及び同請求項6は、ともに「前記登録作業者の認証生体反応チェックは、登録作業者の個人情報の照合と、該登録作業者の生体情報の検出との間のタイミングで行われるものであり、前記登録作業者の登録生体反応チェックは、被登録者の個人情報の照合と被登録者の生体情報の検出の間のタイミングと、被登録者の生体情報の検出と当該生体情報の記録の間のタイミングとで行われること」を「特徴」としている。 したがって、請求項3乃至請求項6についてした本件補正は、以下のAあるいはBの、どちらかの補正の形態を取るものであり、補正前の請求項と補正後の請求項の対応関係は以下のAあるいはBのいずれかである、と認められる。 A.請求項3乃至請求項6についてした本件補正は、 補正前の請求項3において、 「登録作業者の生体情報を……検出するステップ」が「登録作業者の認証を行うにあたって」のものであることを限定し、「第1のインタフェース」が「第1の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする」ことを限定し、「第1の生体情報記録媒体」が「生体情報登録装置とは独立して暗号化されて記録され」るものであることを限定し、「被登録者の生体情報を……検出するステップ」が「被登録者の生体情報の登録作業を行うため」のものであることを限定し、そして、「第2のインタフェース」が「第2の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする」ことを限定するとともに「第2の生体情報記録媒体」が「生体情報登録装置とは独立して検出されて暗号化された被登録者の生体情報」を「記録する」ものであることを限定するとともに、 新たに「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」を追加することで、 補正後の請求項3とする。 そして、補正前の請求項4における「登録作業者」の「生体反応チェック」を行うについての「被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミング」を、「前記登録作業者の認証生体反応チェックは、登録作業者の個人情報の照合と、該登録作業者の生体情報の検出との間のタイミングで行われるものであり、前記登録作業者の登録生体反応チェックは、被登録者の個人情報の照合と被登録者の生体情報の検出の間のタイミングと、被登録者の生体情報の検出と当該生体情報の記録の間のタイミングとで行われる」というタイミングに限定して、補正後の請求項4とする。 請求項5及び請求項6についても、上記と同趣旨の補正をする。 このとき、補正前の請求項と補正後の請求項の、それぞれの対応関係は次のとおりである。 補正前の請求項 補正後の請求項 1 → 1 2 → 2 3 → 3 4 → 4 5 → 5 6 → 6 B.請求項3乃至請求項6についてした本件補正は、 補正前の請求項3を削除する。 そして、補正前の請求項4において、 「登録作業者の生体情報を……検出するステップ」が「登録作業者の認証を行うにあたって」のものであることを限定し、「第1のインタフェース」が「第1の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする」ことを限定し、「第1の生体情報記録媒体」が「生体情報登録装置とは独立して暗号化されて記録され」るものであることを限定し、「被登録者の生体情報を……検出するステップ」が「被登録者の生体情報の登録作業を行うため」のものであることを限定し、そして、「第2のインタフェース」が「第2の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする」ことを限定するとともに「第2の生体情報記録媒体」が「生体情報登録装置とは独立して検出されて暗号化された被登録者の生体情報」を「記録する」ものであることを限定するとともに、 前記「前記被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミングで、前記登録作業者と前記被登録者の生体反応チェックを行なうステップ」を、「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」に補正することで、 補正後の請求項3とする。 さらに、新たに補正後の請求項4を追加する。 請求項5及び請求項6についても、上記と同趣旨の補正をする。 という補正であると認められる。 このとき、補正前の請求項と補正後の請求項の、それぞれの対応関係は次のとおりである。 補正前の請求項 補正後の請求項 1 → 1 2 → 2 3 → (削除) 4 → 3 → 4 5 → (削除) 6 → 5 → 6 (2)特許法第17条の2第3項の規定に適合するかについての検討 補正前の請求項4及び同請求項6には、「前記被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミングで、前記登録作業者と前記被登録者の生体反応チェックを行なうステップ」の記載があった。 してみれば、前記Bの場合の、補正前の請求項4において「前記被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミングで、前記登録作業者と前記被登録者の生体反応チェックを行なうステップ」を「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」に補正する本件補正は当然ながら、前記Aの、補正前の請求項3において「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」を追加する本件補正も、願書に最初に添付した明細書(すなわち、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明)又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであると認められる。 そして、請求項3乃至請求項6についてした本件補正における他の補正については、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであることは、明らかである。 よって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項の規定に適合する。 (3)特許法第17条の2第4項の規定に適合するかについての検討 次に、本件補正が、特許法第17条の2第4項各号の規定に適合するかについて検討する。 C.請求項3乃至請求項6についてした本件補正が、前記Aで指摘した補正の形態を取るとき a.補正後の請求項3及び同請求項5において、新たに、「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」との発明特定事項が追加されている。 しかしながら、対応する請求項である、補正前の請求項3及び請求項5は、「登録作業者」ないしは「被登録者」の「生体反応チェック」に関する発明特定事項は、何ら有していない。 そして、補正後の請求項3及び同請求項5についてした本件補正は、補正前の請求項3及び同請求項5に係る「生体情報登録方法」が有していた各「ステップ」とは別に、新たに、独立したステップとして、前記「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」を設ける、というものである。 したがって、補正後の請求項3及び同請求項5における、前記「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」との発明特定事項を追加する補正は、補正前の請求項3及び同請求項5における発明特定事項のいずれかを概念的により下位のものとしたものである、とは認められない。 よって、補正後の請求項3及び同請求項5における、前記「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」との発明特定事項を追加する本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野および解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするものとは認められない。 また、当該補正が、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除にも、特許法第17条の2第4項第3号の誤記の訂正にも該当しないことは明らかである。 さらに、当該補正が、特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当するものとも認められない。 b.補正前の請求項4及び同請求項6においては、「被登録者の生体反応チェック」についても「被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミング」で「行なう」ものであった。 これに対して、補正後の請求項4及び同請求項6において、補正前の「登録作業者」の「生体反応チェック」を行うについての「被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミング」が、「前記登録作業者の認証生体反応チェックは、登録作業者の個人情報の照合と、該登録作業者の生体情報の検出との間のタイミングで行われるものであり、前記登録作業者の登録生体反応チェックは、被登録者の個人情報の照合と被登録者の生体情報の検出の間のタイミングと、被登録者の生体情報の検出と当該生体情報の記録の間のタイミングとで行われる」というタイミングに限定されている。 しかしながら、補正後の請求項4及び同請求項6においては、「被登録者の生体反応チェック」を行うタイミングは何ら限定されておらず、前記各請求項が引用する補正後の請求項3及び同請求項5においても、「かつ前記被登録者の生体反応チェックを行う」と記載するだけで、当該「被登録者の生体反応チェック」を行うタイミングは何ら限定されていない。 したがって、補正後の請求項4及び同請求項6における、「登録作業者」の「生体反応チェック」を行うタイミングを「前記登録作業者の認証生体反応チェックは、登録作業者の個人情報の照合と、該登録作業者の生体情報の検出との間のタイミングで行われるものであり、前記登録作業者の登録生体反応チェックは、被登録者の個人情報の照合と被登録者の生体情報の検出の間のタイミングと、被登録者の生体情報の検出と当該生体情報の記録の間のタイミングとで行われる」というタイミングに限定する本件補正は、「被登録者の生体反応チェック」については「被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミング」で「行なう」という、補正前の請求項4及び同請求項6が有していた発明特定事項を削除する補正である。 そして、補正後の請求項4及び同請求項6における、前記「被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミング」で「行なう」という補正前の請求項4及び同請求項6が有していた発明特定事項を削除する前記補正は、特許法第17条の2第4項各号のいずれの規定にも適合しないことは明らかである。 D.請求項3乃至請求項6についてした本件補正が、前記Bで指摘した補正の形態を取るとき c.補正後の請求項3及び同請求項5において、補正前の請求項4及び同請求項6における「前記被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミングで、前記登録作業者と前記被登録者の生体反応チェックを行なうステップ」が、「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」に補正されている。 前記補正によって、補正前の請求項3及び同請求項5には存在した、「被登録者の生体反応チェック」についても「前記被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミング」で「行なう」という発明特定事項が削除されている。 そして、前記「前記被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミング」で「行なう」という補正前の請求項4及び同請求項6が有していた発明特定事項を削除するという前記補正は、特許法第17条の2第4項各号のいずれの規定にも適合しないことは明らかである。 d.本件補正により、新たに、「前記登録作業者の認証生体反応チェックは、登録作業者の個人情報の照合と、該登録作業者の生体情報の検出との間のタイミングで行われるものであり、前記登録作業者の登録生体反応チェックは、被登録者の個人情報の照合と被登録者の生体情報の検出の間のタイミングと、被登録者の生体情報の検出と当該生体情報の記録の間のタイミングとで行われる」ことを発明特定事項として有する補正後の請求項4及び同請求項6が追加された。 そして、前記追加された補正後の請求項4及び同請求項6に対応する補正前の請求項は存在しないから、これら補正後の請求項4及び同請求項6を追加する前記補正は、特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除を目的とするものとは認められないし、同項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも認められない。また、同項第3号に規定する誤記の訂正や同項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものでないことは明らかである。 E.特許法第17条の2第4項の規定に適合するかについての検討のまとめ 請求項3乃至請求項6についてした本件補正は、前記AあるいはBの、どちらかの補正の形態を取るものであることは、「(1)本件補正前後の各請求項の対応について」の項で述べたとおりである。 そして、前記C及びDで述べたとおり、請求項3乃至請求項6についてした本件補正が前記AあるいはBのいずれの補正の形態を取るとしても、当該請求項3乃至請求項6についてした本件補正は、特許法第17条の2第4項各号のいずれの規定にも適合しない補正を含むものである。 よって、請求項3乃至請求項6についてした本件補正は、特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない。 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれかの事項を目的とするものでないから、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。 (4)特許法第17条の2第5項の規定に適合するかについての検討 本件補正は、前記(3)で述べた理由により、却下すべきものである。 しかしながら、仮に、請求項3乃至請求項6についてした本件補正が特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれかの事項を目的とするとした場合、補正後の請求項3乃至請求項6に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 F.本件補正後の明細書の記載要件について 1)補正後の請求項3乃至請求項6に係る発明が、本件補正後の明細書の発明の詳細な説明に記載した発明であるかについて 補正後の請求項3及び同請求項5には、 「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」、 というステップが記載されている。 これにより、補正後の請求項3に係る「生体情報登録方法」は、「……登録作業者の生体情報を……検出するステップ」、「……読み出すステップ」、「……照合するステップ」、「……被登録者の生体情報を……検出するステップ」及び「……記録するステップ」とは別に、独立したステップとして、前記「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」を有することとなった。 また、補正後の請求項5に係る「生体情報登録方法」は、「……送信するステップ」、「……検出するステップ」及び「……記録するステップ」とは別に、独立したステップとして、前記「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」を有している。 上記した補正後の請求項3及び同請求項5の記載を文理解釈すれば、前記「登録作業者の認証に関連」する「登録作業者の認証生体反応チェック」、前記「被登録者の登録に関連」する「登録作業者の登録生体反応チェック」、及び、前記「被登録者の生体反応チェック」を、補正後の請求項3においては、前記「……登録作業者の生体情報を……検出するステップ」?「……記録するステップ」で構成される一連のステップとは別に、補正後の請求項5においては、前記「……送信するステップ」?「……記録するステップ」で構成される一連のステップとは別に、独立した一つの「ステップ」において「行う」ものである。 これに対して、明細書の、たとえば、段落【0044】には、 「本実施形態では、生体反応チェックを、登録作業者については登録作業者の認証フローにおけるPIN照合の直後、被登録者の認証フローにおけるPIN照合の直後及び指紋データの暗号化の際と暗号化された指紋データを送信する間に行ない、被登録者については被登録者の認証フローにおける指紋データの暗号化の際と暗号化された指紋データを送信する間に行なうようにしたが、生体反応チェックはこのようなタイミングに限定されることはなく、登録フローの任意のタイミングで任意の回数の生体反応チェックを行なうことができる。」、 と記載されている。 すなわち、本件補正後の明細書の発明の詳細な説明には、前記「登録作業者の認証に関連」する「登録作業者の認証生体反応チェック」、前記「被登録者の登録に関連」する「登録作業者の登録生体反応チェック」、及び、前記「被登録者の生体反応チェック」を、「任意のタイミング」ではあるが、被登録者の指紋データを登録するための登録作業者及び被登録者について行われる一連の「登録フロー」の中で、それぞれ分散して、前記「登録フロー」の各ステップの中の一手順として行うことしか記載されていない。 したがって、補正後の請求項3及び同請求項5に記載されるように、前記「登録作業者の認証に関連」する「登録作業者の認証生体反応チェック」、前記「被登録者の登録に関連」する「登録作業者の登録生体反応チェック」、及び、前記「被登録者の生体反応チェック」を、独立した一つの「ステップ」において「行う」ことは、本願明細書の発明の詳細な説明には記載されていない。 また、前記「登録作業者の認証に関連」する「登録作業者の認証生体反応チェック」、前記「被登録者の登録に関連」する「登録作業者の登録生体反応チェック」、及び、前記「被登録者の生体反応チェック」を、独立した一つの「ステップ」において「行う」ことが、技術常識を参酌しても、本願明細書の発明の詳細な説明の記載から自明な事項であるとも認められない。 以上から、補正後の請求項3及び同請求項5に係る発明は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。上記各請求項をそれぞれ引用する補正後の請求項4及び同請求項6に係る発明についても、本願明細書の発明の詳細な説明に記載した発明であるとは認められない。 2)補正後の請求項3乃至請求項6に係る発明が明確であるかについて 補正後の請求項3及び同請求項5には、「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い……ステップ」と記載されている。 すなわち、補正後の請求項3にあっては「登録作業者の認証を行うにあたって……検出するステップ」、「……読み出すステップ」、「……照合するステップ」、「……被登録者の生体情報を……検出するステップ」及び「被登録者の生体情報を……記録するステップ」とは別の「ステップ」において、補正後の請求項5にあっては「登録作業者の認証が終了した後に……送信するステップ」、「……検出するステップ」及び「被登録者の生体情報を……記録するステップ」とは別の「ステップ」において、前記「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行」うというものである。 補正後の請求項3において、「登録作業者の認証」は、「登録作業者の認証を行うにあたって、登録作業者の生体情報を第1の生体情報検出手段によって検出するステップと、 第1の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする第1のインタフェースを用いて、前記生体情報登録装置とは独立して暗号化されて記録された前記登録作業者の生体情報を当該第1の生体情報記録媒体から読み出すステップと、 前記第1の生体情報検出手段により検出された登録作業者の生体情報と、前記第1のインタフェースを用いて読み出された登録作業者の生体情報とを照合するステップ」とにより「前記照合ステップにおいて両情報が一致することが確認された」ことによりなされるものである。してみれば、これら3つの「ステップ」によりなされる「登録作業者の認証」に「関連して」、前記別の「ステップ」において、「登録作業者の認証生体反応チェックを行う」とは、具体的に如何なる態様で「登録作業者の認証生体反応チェックを行う」ことを意味するのか、本願明細書の発明の詳細な説明を参酌しても不明である。 同様に、補正後の請求項3において、「被登録者の生体情報の登録作業を行うために、被登録者の生体情報を第2の生体情報検出手段によって検出するステップと、 第2の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする第2のインタフェースを用いて、前記生体情報登録装置とは独立して検出されて暗号化された被登録者の生体情報を前記第2の生体情報記録媒体に記録するステップ」とによりなされる「被登録者の登録」に「関連して」、前記別の「ステップ」において、「登録作業者の登録生体反応チェックを行う」とは、具体的に如何なる態様で「登録作業者の認証生体反応チェックを行う」ことを意味するのか、本願明細書の発明の詳細な説明を参酌しても不明である。 また、補正後の請求項5において、「登録作業者の認証が終了した後に、装置に入力された被登録者の個人識別情報と、前記生体情報登録装置とは独立して生体情報記録媒体に記録された被登録者の個人識別情報との照合を行なうために前記個人識別情報を当該生体情報記録媒体に送信するステップと、 前記生体情報記録媒体からの照合結果を受け取り、当該照合結果は両情報が一致していることを示している場合に、被登録者の生体情報を生体情報検出手段によって検出するステップと、 前記生体情報記録媒体との間の通信を可能にするインタフェースを用いて被登録者の生体情報を前記生体情報記録媒体に記録するステップ」とによりなされる「被登録者の登録」に「関連して」、前記別の「ステップ」において、「登録作業者の登録生体反応チェックを行う」とは、具体的に如何なる態様で「登録作業者の認証生体反応チェックを行う」ことを意味するのか、本願明細書の発明の詳細な説明を参酌しても不明である。 以上から、補正後の請求項3及び同請求項5に係る発明は明確でない。上記各請求項をそれぞれ引用する補正後の請求項4及び同請求項6に係る発明についても、明確であるとは認められない。 3)本件補正後の明細書の発明の詳細な説明の記載要件について 前記1)で述べたとおり、補正後の請求項3においては前記「……登録作業者の生体情報を……検出するステップ」?「……記録するステップ」で構成される一連のステップとは別の、補正後の請求項5においては前記「……送信するステップ」?「……記録するステップ」で構成される一連のステップとは別の、独立した一つの「ステップ」としての、「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」を具備するものである。 これに対し、本件補正後の明細書の発明の詳細な説明には、前記1)で述べたとおり、前記「登録作業者の認証に関連」する「登録作業者の認証生体反応チェック」、前記「被登録者の登録に関連」する「登録作業者の登録生体反応チェック」、及び、前記「被登録者の生体反応チェック」を、「任意のタイミング」ではあるが、被登録者の指紋データを登録するための登録作業者及び被登録者について行われる一連の「登録フロー」の中で、それぞれ分散して、前記「登録フロー」の各ステップの中の一手順として行うことしか記載されていない。 したがって、本件補正後の請求項3乃至請求項6に記載されるように、独立した一つの「ステップ」において、具体的に如何にして、「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行う」のか、不明である。 よって、本件補正後の明細書の発明の詳細な説明は、補正後の請求項3乃至請求項6に係る発明を、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 4)本件補正後の明細書の記載要件についてのまとめ 以上、1)及び2)から、本件補正後の特許請求の範囲の請求項3乃至請求項6の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 また、3)から、本件補正後の明細書の発明の詳細な説明は、補正後の請求項3乃至請求項6に係る発明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 したがって、補正後の請求項3乃至請求項6に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 G.補正後の請求項3に係る発明の進歩性について 1)補正後の発明 本件補正により、補正後の請求項3に係る発明(以下、「補正後の発明」という。)は、前記「1.本件補正」の補正後の請求項3に記載されたとおりのものと認められる。 なお、前記Fで述べたとおり、前記「登録作業者の認証に関連」する「登録作業者の認証生体反応チェック」、前記「被登録者の登録に関連」する「登録作業者の登録生体反応チェック」、及び、前記「被登録者の生体反応チェック」を、独立した一つの「ステップ」において「行う」ことは、明細書の発明の詳細な説明には記載されていない。また、前記独立した一つの「ステップ」において、前記「被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行」うとは、前記「登録作業者の登録生体反応チェック」と前記「被登録者の登録」の処理とを、具体的にどのように「関連」付けることを意味するのか、本願明細書の発明の詳細な説明を参酌しても不明である。 そこで、補正後の発明における「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行う」との記載を、仮に、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されるとおりの、前記「登録作業者の認証に関連」する「登録作業者の認証生体反応チェック」、前記「被登録者の登録に関連」する「登録作業者の登録生体反応チェック」、及び、前記「被登録者の生体反応チェック」を、被登録者の指紋データを登録するための登録作業者及び被登録者について行われる一連の「登録フロー」の中で、それぞれ分散して、前記「登録フロー」の各ステップの中の一手順として行うことを意味する、として以下に検討する。 2)引用発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-222123号公報(以下、「引用文献」という)には、図面とともに次の事項が記載されている。(備考:下線は便宜上当審で付したものである。) e.「【0006】そこで本発明は、前記従来の技術に鑑みて成されたものであって、個人の同定、すなわち個人の判別又は識別方法として確立している指紋を利用してコンピュータシステムのセキュリティ機能の向上を図るものである。すなわち、指紋検出手段を外部入力装置であるマウスに設けることにより、一定時間毎に前記マウスの指紋検出手段から指紋の画像を読み取り、この読み取った指紋データと登録された指紋データとの照合を行い、利用者の同定を行うことが可能な指紋による個人識別機能付きマウスを用いたコンピュータシステム及び該コンピュータシステムにおける個人識別方法を提供することを目的とするものである。」 f.「【0016】図1に示すように、本発明による指紋による個人識別機能付きマウスを用いたコンピュータシステムは、演算制御手段としての演算制御機1と、表示手段としての表示器2と、外部入力装置(外部入力手段)としてのキーボード3及びマウス4とからなっている。 ……(中略)…… 【0035】指紋検出装置12で読み取った前記指紋の画像データは、マウス4の内部のインターフェース回路19により演算制御機1の外部入出力制御装置の入出力ポート(例えば、シリアルポートであるRS-232C、USBポート)より演算制御機1の記憶手段としての記憶装置(メモリ)に取り込まれる。 【0036】前記演算制御機1は、指紋検出装置12から前記外部入出力制御装置の入出力ポートを経て入力された指紋情報(指紋の画像データ)の登録と、前記指紋検出装置12から一定時間毎に読み出した指紋情報と登録済み指紋情報との照合と、照合結果により前記コンピュータシステムへのアクセクの許可又は不許可の判断を行う。また、前記演算制御機1の記憶手段としての記憶装置には、前記指紋情報の登録、指紋情報の照合、コンピュータシステムへのアクセスの許可又は不許可の判断処理を行う管理プログラムが格納されている。」 g.「【0048】以下に、本発明によるコンピュータシステムにおける個人識別方法について図4及び図5に示すフローチャートを参照して説明する。 【0049】図4は、指紋の新規登録、置換及び削除についてのフローチャートを示す図である。 【0050】図4に示す、フローチャートを参照して、コンピュータシステムの管理者及び一般ユーザの指紋情報の登録及び削除方法について説明する。 【0051】まず、コンピュータシステムの管理者の指紋の登録が完了しているかをチェックする(ステップS1)。前記管理者は、このコンピュータシステムの全ての管理を司る者であり、いわゆる責任者としての立場の者である。従って、後述する一般ユーザの新規登録などは、前記管理者が前記コンピュータシステムを操作するか若しくは前記管理者が立ち会いのもとで操作することが前提となる。 【0052】前記指紋登録が完了していない場合には、前記マウス4の指紋検出装置12から演算制御機1の記憶装置に管理者の指紋の画像データを読み取る(ステップS2)。読み取られた管理者の指紋の画像データは、前記2値化処理、前記細線化処理及び前記指紋の特徴点の抽出処理が行われ、抽出した特徴点のデータを指紋の登録データとして演算制御機1の記憶装置に格納して(ステップS3)、管理者の指紋登録を終了する。この管理者の指紋の登録は、既に述べたように、最初に行うのみであり、管理者以外の第三者が指紋を登録したり、変更したりすることができないようになっている。」 h.「【0053】また、前記ステップS1で管理者の指紋登録が完了している場合には、前記マウス4の指紋検出装置12からコンピュータシステムの管理者の指紋を読み取る(ステップS4)。読み取られたコンピュータシステムの管理者の指紋の画像データは、前記2値化処理、前記細線化処理及び前記指紋の特徴点の抽出処理が行われ、抽出された特徴点のデータと前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行う(ステップS5)。 【0054】なお、読み取られた指紋の画像データと、前もって登録されている指紋の登録データとの照合は、前述した指紋照合手段によって行われる。 【0055】指紋の照合を行った結果、読み取られた指紋の画像データと、前もって登録されている指紋の登録データが一致しているか否かを判断する(ステップS6)。照合した結果、一致していないときには、コンピュータシステムの管理者ではないと判断し、処理を終了する。 【0056】前記ステップS6において、指紋の照合を行った結果、読み取られた指紋の画像データと、前もって登録されている指紋の登録データが一致したときには、コンピュータシステムの管理者とみなし、以下の、一般ユーザの指紋の新規登録、置換登録又は登録指紋の削除を行う。」 j.【0057】前記コンピュータシステムは、登録管理者の指紋がステップS6において一致するものと判断した場合には、登録管理者が前記コンピュータシステムを利用することが可能な一般ユーザを複数選定することができるようになっている。従って、登録管理者が一般ユーザの登録が必要ない場合にはステップS7乃至ステップS9のフローは省略され、ステップS11の指紋の置換登録、ステップS10の指紋の新規登録の工程に移行する。 【0058】まず、前記マウス4の指紋検出装置12は、一般ユーザの指紋を読み取り(ステップS7)、読み取った指紋の画像データの前記2値化処理、前記細線化処理及び前記指紋の特徴点の抽出処理行い、指紋の抽出された特徴点のデータと、前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行う(ステップS8)。 【0059】前記ステップS8において、照合した結果が登録指紋と一致しているか否かを判断する(ステップS9)。登録指紋と一致しないときには、新規指紋登録を行う(ステップS10)。この新規指紋登録は、一般ユーザの新規指紋登録であって、前記管理者が操作するか若しくは管理者の立ち会いのもとでの操作が行われることとなる。」 gの「コンピュータシステムの管理者及び一般ユーザの指紋情報の登録及び削除方法」及び「前記管理者は、このコンピュータシステムの全ての管理を司る者であり、いわゆる責任者としての立場の者である。従って、後述する一般ユーザの新規登録などは、前記管理者が前記コンピュータシステムを操作するか若しくは前記管理者が立ち会いのもとで操作することが前提となる。」から、引用文献には、 コンピュータシステムの全ての管理を司る管理者の立ち会いのもとで行われる、一般ユーザの指紋情報の新規登録方法、 が記載されている。 hの「管理者の指紋登録が完了している場合には、前記マウス4の指紋検出装置12からコンピュータシステムの管理者の指紋を読み取る(ステップS4)。」から、引用文献には、 コンピュータシステムの管理者の指紋登録が完了している場合には、マウスの指紋検出装置から前記管理者の指紋を読み取るステップ、 が記載されている。 gの「管理者の指紋の画像データは……指紋の登録データとして演算制御機1の記憶装置に格納」、「この管理者の指紋の登録は、既に述べたように、最初に行うのみであり、管理者以外の第三者が指紋を登録したり、変更したりすることができないようになっている。」、及び、hの「読み取られたコンピュータシステムの管理者の指紋の画像データは、前記2値化処理、前記細線化処理及び前記指紋の特徴点の抽出処理が行われ、抽出された特徴点のデータと前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行う(ステップS5)」、「読み取られた指紋の画像データと、前もって登録されている指紋の登録データとの照合は、前述した指紋照合手段によって行われる」から、引用文献には、 管理者以外の第三者が指紋を変更することができないように演算制御機の記憶装置に前もって登録されている前記管理者の指紋の登録データと、読み取られた前記管理者の指紋の画像データとを指紋照合手段によって照合するステップ、 が記載されている。 ここで、fの「演算制御機1は、指紋検出装置12から前記外部入出力制御装置の入出力ポートを経て入力された指紋情報(指紋の画像データ)の登録と、前記指紋検出装置12から一定時間毎に読み出した指紋情報と登録済み指紋情報との照合と、照合結果により前記コンピュータシステムへのアクセクの許可又は不許可の判断を行う。また、前記演算制御機1の記憶手段としての記憶装置には、前記指紋情報の登録、指紋情報の照合、コンピュータシステムへのアクセスの許可又は不許可の判断処理を行う管理プログラムが格納されている」から、前記指紋照合手段は演算制御機が有していると認められる。 hの「指紋の照合を行った結果、読み取られた指紋の画像データと、前もって登録されている指紋の登録データが一致したときには、コンピュータシステムの管理者とみなし、以下の、一般ユーザの指紋の新規登録、置換登録又は登録指紋の削除を行う。」、jの「まず、前記マウス4の指紋検出装置12は、一般ユーザの指紋を読み取り(ステップS7)」から、引用文献には、 指紋の照合を行った結果、読み取られた管理者の指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データが一致したときには、一般ユーザの指紋の新規登録を行うために、前記一般ユーザの指紋をマウスの指紋検出装置によって読み取るステップ、 が記載されている。 jの「読み取った指紋の画像データ…(中略)…と、前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行う」、「照合した結果が登録指紋と一致しているか否かを判断する(ステップS9)。登録指紋と一致しないときには、新規指紋登録を行う(ステップS10)。」において、「新規指紋」をどこに「登録」するのか、不明である。しかしながら、gに「指紋の登録データとして演算制御機1の記憶装置に格納して(ステップS3)、管理者の指紋登録を終了する。」と記載されるように、引用文献において、「指紋」の「登録」とは「演算制御機1の記憶装置に格納」することを指していると解される。 してみれば、前記「新規指紋登録」とは、「読み取った指紋の画像データ」を演算制御機の記憶装置に格納することを云うと解される。 以上から、引用文献には、 読み取った一般ユーザの指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行い、一致しないときに、前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データを演算制御機の記憶装置に格納するステップ、 が記載されていると解される。 以上から、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されているものと認められる。 「コンピュータシステムの全ての管理を司る管理者の立ち会いのもとで行われる、一般ユーザの指紋情報の新規登録方法であって、 前記管理者の指紋登録が完了している場合には、マウスの指紋検出装置から前記管理者の指紋を読み取るステップと、 前記管理者以外の第三者が指紋を変更することができないように演算制御機の記憶装置に前もって登録されている前記管理者の指紋の登録データと、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データとを、前記演算制御機が有する指紋照合手段によって照合するステップと、 前記指紋の照合を行った結果、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データが一致したときには、一般ユーザの指紋の新規登録を行うために、前記一般ユーザの指紋を前記マウスの指紋検出装置によって読み取るステップと、 前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行い、一致しないときに、前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データを演算制御機の記憶装置に格納するステップと、 を具備することを特徴とする一般ユーザの指紋情報の新規登録方法。」 3)対比 補正後の発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「一般ユーザ」は、引用発明の「一般ユーザの指紋情報の新規登録方法」により「指紋」が「登録」される者であるから、補正後の発明における「被登録者」に相当する。また、引用発明の「指紋情報」、「指紋の登録データ」及び「指紋の画像データ」は、いずれも、補正後の発明の「生体情報」に相当する。 引用発明における「コンピュータシステムの全ての管理を司る管理者」は、「コンピュータシステムの全ての管理を司る」者であり、そして、「一般ユーザの指紋情報の新規登録」に「立ち会」う者である。 「コンピュータシステムの全ての管理を司る」ということは、「コンピュータシステムの全ての管理」を役目として該「管理」の作業を担当するということである。そして、引用発明の「コンピュータシステムの全ての管理」には「一般ユーザの指紋情報の新規登録」についてのコンピュータシステムの管理が含まれるから、引用発明における「コンピュータシステムの全ての管理を司る管理者」は、「一般ユーザの指紋情報の新規登録」についての「管理」作業を担当する者、すなわち、前記「一般ユーザの指紋情報の新規登録」の「管理」作業者といい得る者である。 また、前記「管理者」は「一般ユーザの指紋情報の新規登録」に際して「立ち会」う以上、「一般ユーザの指紋情報の新規登録」に際して「指紋」を読み取られる「一般ユーザ」と、当然に、対面する機会があると認められる。 してみれば、引用発明における「コンピュータシステムの全ての管理を司る管理者」とは、「一般ユーザ」と対面する機会がある「コンピュータシステムの全ての管理」の作業を行う者であって、「一般ユーザの指紋情報の新規登録の「管理」作業者である。 ここで、補正後の発明の「被登録者と対面機会のある業者」の文言に関し、本願明細書の段落【0043】には、「生体認証情報の登録作業を、被登録者と対面機会のある業者(第3者)に委託することが可能になる。」と記載されている。一般に、「第三者」とは「当事者以外の者」という意味である(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)。したがって、補正後の発明における「被登録者と対面機会のある業者」とは、被登録者と対面機会のある第3者、すなわち、被登録者と対面機会のある当該被登録者以外の者、を意味すると解される。 そして、引用発明の「コンピュータシステムの全ての管理を司る管理者」は、その「指紋情報」を「新規登録」する「一般ユーザ」以外の者であり、該「新規登録」に際して「立ち会」う、「一般ユーザの指紋情報の新規登録」の「管理」作業者である。 以上から、引用発明における「コンピュータシステムの全ての管理を司る管理者」は、補正後の発明における「登録作業者として」の「被登録者と対面機会のある業者」に相当する。 なお、前記段落【0043】の前記記載に引き続く「登録作業の委託先としては、例えば、本人訪問の形式として、ホームセキュリティ警備員、郵便や宅配便の配達員、保険外交員その他が考えられる。」の記載から、補正後の発明の「被登録者と対面機会のある業者」とは、被登録者と対面機会のある第3者であって、生体認証情報の登録作業を委託される業者(「登録作業」を“業として”行う者)であるとも解される。しかしながら、コンピュータシステムの運営管理作業を“業として”、すなわち、報酬を得る目的で行うことは、一般的に行われている経済活動であって、技術的な意義を持つとは認められない。したがって、仮に、補正後の発明の「被登録者と対面機会のある業者」としての「登録作業者」が、「登録作業」を“業として”行う者であったとしても、当該“業として”報酬を得ることを目的とすることに技術的な意義は認められないから、やはり、引用発明における「コンピュータシステムの全ての管理を司る管理者」は、補正後の発明における「登録作業者として」の「被登録者と対面機会のある業者」に相当する。 ところで、補正後の発明の「被登録者と対面機会のある業者を登録作業者として生体情報の登録を行うにあたって」の記載における「生体情報の登録を行う」とは、前記記載に引き続く「被登録者の生体情報の登録作業を行う」との記載からも、「被登録者の」との記載を省略した記載であることは明らかである。したがって、引用発明において「一般ユーザの指紋の新規登録を行う」ことは、補正後の発明における「生体情報の登録を行う」こと、及び、「被登録者の生体情報の登録作業を行う」ことに相当する。 そして、引用発明は、「前記管理者の指紋の登録データと、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データとを、前記演算制御機が有する指紋照合手段によって照合」を「行った結果、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データが一致したときには、一般ユーザの指紋の新規登録を行う」ものである。ここで、「前記管理者の指紋の登録データと、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データとを、前記演算制御機が有する指紋照合手段によって照合」を「行った結果、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データが一致した」とは、「前記管理者」の認証が完了したことに他ならない。よって、前記「前記管理者の指紋の登録データと、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データとを、前記演算制御機が有する指紋照合手段によって照合」を「行った結果、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データが一致したときには、一般ユーザの指紋の新規登録を行う」とは、まず、「前記管理者の指紋の登録データと、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データとを、前記演算制御機が有する指紋照合手段によって照合」、すなわち、「管理者」の認証を行い、その結果、該「管理者」の認証が完了したときに「一般ユーザの指紋の新規登録を行う」ことを意味するものである。 以上から、 引用発明の「コンピュータシステムの全ての管理を司る管理者の立ち会いのもとで行われる、一般ユーザの指紋情報の新規登録方法」は、補正後の発明の「被登録者と対面機会のある業者を登録作業者として生体情報の登録を行うにあたって、まず登録作業者の認証を行い、当該登録作業者の認証が完了したときに被登録者の生体情報の登録作業を行う生体情報登録方法」に相当する。 引用発明の「マウスの指紋検出装置」と補正後の発明の「第1の生体情報検出手段」とは、生体情報検出手段である点で共通する。 そして、引用発明の「前記管理者の指紋登録が完了している場合には、マウスの指紋検出装置から前記管理者の指紋を読み取るステップ」は、「前記管理者の指紋登録が完了している場合」には、前記の「管理者」の認証のために行う最初の「ステップ」である。 したがって、 引用発明の「前記管理者の指紋登録が完了している場合には、マウスの指紋検出装置から前記管理者の指紋を読み取るステップ」と、補正後の発明の「登録作業者の認証を行うにあたって、登録作業者の生体情報を第1の生体情報検出手段によって検出するステップ」とは、いずれも、登録作業者の認証を行うにあたって、登録作業者の生体情報を生体情報検出手段によって検出するステップ、である点で一致する。 引用発明は、「前記管理者以外の第三者が指紋を変更することができないように演算制御機の記憶装置に前もって登録されている前記管理者の指紋の登録データと、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データとを、前記演算制御機が有する指紋照合手段によって照合するステップ」を具備するものである。ここで、「前もって登録されている前記管理者の指紋の登録データ」と「読み取られた前記管理者の指紋の画像データ」とが「照合」されるためには、引用発明は、前記「照合するステップ」の前に、「前記管理者以外の第三者が指紋を変更することができないように演算制御機の記憶装置に前もって登録されている前記管理者の指紋の登録データ」を前記「演算制御機の記憶装置」から読み出して、前記「演算制御機が有する指紋照合手段」に供給する手順を有していることは、明らかである。 そして、引用発明の「コンピュータシステム」は、「マウスの指紋検出装置」と「演算制御機の記憶装置」と「演算制御機が有する指紋照合手段」とを備え、「一般ユーザの指紋情報の新規登録」を行う装置である。したがって、引用発明の「コンピュータシステム」は、補正後の発明の「生体情報登録装置」に相当する。 してみれば、引用発明の「管理者の指紋の登録データ」が「前もって登録」されており、前記「コンピュータシステム」が備える「演算制御機」の「記憶装置」と、補正後の発明の「登録作業者の生体情報」が「記録」されており、「生体情報登録装置とは独立して」いる「第1の生体情報記録媒体」とは、登録作業者の生体情報が記録されている生体情報記録媒体、である点で共通する。 また、引用発明が、「前記管理者の指紋の登録データ」を前記「演算制御機の記憶装置」から読み出して、前記「演算制御機が有する指紋照合手段」に供給していることが明らかであるから、前記「演算制御機の記憶装置」と前記「演算制御機が有する指紋照合手段」との間に、両者の通信を可能にするインタフェースが存在することも、明らかである。 以上から、 前記「照合するステップ」の前の「前記管理者以外の第三者が指紋を変更することができないように演算制御機の記憶装置に前もって登録されている前記管理者の指紋の登録データ」を前記「演算制御機の記憶装置」から読み出して、前記「演算制御機が有する指紋照合手段」に供給する手順と、補正後の発明の「第1の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする第1のインタフェースを用いて、前記生体情報登録装置とは独立して暗号化されて記録された前記登録作業者の生体情報を当該第1の生体情報記録媒体から読み出すステップ」とは、生体情報記録媒体との間の通信を可能にするインタフェースを用いて、記録された前記登録作業者の生体情報を当該生体情報記録媒体から読み出すステップ、である点で共通する。 引用発明の「前記管理者以外の第三者が指紋を変更することができないように演算制御機の記憶装置に登録されている前記管理者の指紋の登録データと、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データとを、前記演算制御機が有する指紋照合手段によって照合するステップ」と、補正後の発明の「前記第1の生体情報検出手段により検出された登録作業者の生体情報と、前記第1のインタフェースを用いて読み出された登録作業者の生体情報とを照合するステップ」とは、生体情報検出手段により検出された登録作業者の生体情報と、インタフェースを用いて読み出された登録作業者の生体情報とを照合するステップ、である点で一致する。 また、引用発明の「前記指紋の照合を行った結果、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データが一致したときには、一般ユーザの指紋の新規登録を行うために、前記一般ユーザの指紋を前記マウスの指紋検出装置によって読み取るステップ」と、補正後の発明の「前記照合ステップにおいて両情報が一致することが確認された場合に、被登録者の生体情報の登録作業を行うために、被登録者の生体情報を第2の生体情報検出手段によって検出するステップ」とは、前記照合するステップにおいて両情報が一致することが確認された場合に、被登録者の生体情報の登録作業を行うために、被登録者の生体情報を生体情報検出手段によって検出するステップ、である点で一致する。 そして、引用発明の「前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行い、一致しないときに、前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データを演算制御機の記憶装置に格納するステップ」は、前述のとおり、前記「演算制御機の記憶装置」と前記「演算制御機が有する指紋照合手段」との間の通信を可能にするインタフェースを用いて実現されることは、明らかである。 また、引用発明の「前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データ」が「格納」され、前記「コンピュータシステム」が備える「演算制御機の記憶装置」と、補正後の発明の「被登録者の生体情報」が「記録」され、「生体情報登録装置とは独立して」いる「第2の生体情報記録媒体」とは、被登録者の生体情報を記録する生体情報記録媒体、である点で共通する。 したがって、 引用発明の「前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行い、一致しないときに、前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データを演算制御機の記憶装置に格納するステップ」と、補正後の発明の「第2の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする第2のインタフェースを用いて、前記生体情報登録装置とは独立して検出されて暗号化された被登録者の生体情報を前記第2の生体情報記録媒体に記録するステップ」とは、生体情報記録媒体との間の通信を可能にするインタフェースを用いて、被登録者の生体情報を前記生体情報記録媒体に記録するステップ、である点で共通する。 以上から、補正後の発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。 (一致点) 被登録者と対面機会のある業者を登録作業者として生体情報の登録を行うにあたって、まず登録作業者の認証を行い、当該登録作業者の認証が完了したときに被登録者の生体情報の登録作業を行う生体情報登録方法であって、 登録作業者の認証を行うにあたって、登録作業者の生体情報を生体情報検出手段によって検出するステップと、 生体情報記録媒体との間の通信を可能にするインタフェースを用いて、記録された前記登録作業者の生体情報を当該生体情報記録媒体から読み出すステップと、 生体情報検出手段により検出された登録作業者の生体情報と、インタフェースを用いて読み出された登録作業者の生体情報とを照合するステップと、 前記照合するステップにおいて両情報が一致することが確認された場合に、被登録者の生体情報の登録作業を行うために、被登録者の生体情報を生体情報検出手段によって検出するステップと、 生体情報記録媒体との間の通信を可能にするインタフェースを用いて、被登録者の生体情報を前記生体情報記録媒体に記録するステップと、 を具備することを特徴とする生体情報登録方法。 (相違点1) 補正後の発明は、「登録作業者の生体情報」を検出する「第1の生体情報検出手段」と、「被登録者の生体情報」を検出する「第2の生体情報検出手段」を有するのに対して、引用発明は、「前記管理者の指紋」と「一般ユーザの指紋」を、同じ「マウスの指紋検出装置」で読み取る点。 (相違点2) 補正後の発明は、「登録作業者の生体情報」は「第1の生体情報記録媒体」に「記録」し、「被登録者の生体情報を前記第2の生体情報記録媒体に記録する」のに対して、引用発明は、「管理者の指紋の登録データ」と「一般ユーザの指紋の画像データ」を、同じ「演算制御機の記憶装置に格納する」点。 (相違点3) 補正後の発明においては、「暗号化され」た「登録作業者の生体情報」を「記録」する「第1の生体情報記録媒体」及び「検出されて暗号化された被登録者の生体情報」を「記録」する「第2の生体情報記録媒体」が、ともに、「生体情報登録装置とは独立して」いるのに対して、引用発明は、「前記管理者の指紋の登録データ」が「前記管理者以外の第三者が指紋を変更することができないように演算制御機の記憶装置に前もって登録されている」点。 (相違点4) 補正後の発明は、「第1の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする第1のインタフェース」及び「第2の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする第2のインタフェース」を有しているのに呈して、引用発明は、「3)対比」の項で述べたとおり、「演算制御機の記憶装置」と「演算制御機が有する指紋照合手段」との間に両者の通信を可能にするインタフェースを有することが明らかである点。 (相違点5) 補正後の発明は、「被登録者の生体情報を第2の生体情報検出手段によって検出するステップ」の次のステップで「被登録者の生体情報を前記第2の生体情報記録媒体に記録する」のに対して、引用発明においては、「前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行い、一致しないときに、前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データを演算制御機の記憶装置に格納する」点。 (相違点6) 補正後の発明は「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」を「具備する」のに対して、引用発明は、そのように何らかの生体反応チェックを行うステップを具備していない点。 4)判断 前記の各相違点について検討する。 (相違点1について) 引用発明は、「前記管理者の指紋」と「一般ユーザの指紋」を、同じ「マウスの指紋検出装置」で読み取るものである。 しかしながら、引用発明において、「管理者の指紋」と「一般ユーザの指紋」とを、それぞれ読み取る「指紋検出装置」を、「管理者」と「一般ユーザ」とで共用するか、「管理者」と「一般ユーザ」毎に個別に設けるかは、該「指紋検出装置」を設ける「マウス」の形状や大きさ、「一般ユーザの指紋情報の新規登録方法」を円滑に遂行する上での利便性、引用発明が課題とする「コンピュータシステムのセキュリティ機能の向上」(前記「2)引用発明」の項における「e」の記載参照)におけるセキュリティ上の要請、等に応じて、当業者が適宜選択し得た事項であると認められる。 なお、この点は、本願明細書の段落【0051】に、「本実施形態では、登録作業者と被登録者とで別個の指紋認証センサーを用いたが、1つの指紋認証センサーを登録作業者と被登録者が共用するようにしてもよい。」と記載されるとおりである。 よって、相違点1は格別なものではない。 (相違点2乃至相違点5について) 引用発明は、「管理者の指紋の登録データ」と「一般ユーザの指紋の画像データ」を、同じ「演算制御機の記憶装置に格納する」が、指紋データを「管理者」と「一般ユーザ」とで異なる「記憶装置」に「格納する」ことは、該「記憶装置」を設ける「演算制御機」の大きさ、「一般ユーザの指紋情報の新規登録方法」を円滑に遂行する上での利便性、引用発明が課題とする「コンピュータシステムのセキュリティ機能の向上」(前記「2)引用発明」の項における「e」の記載参照)におけるセキュリティ上の要請、等に応じて、当業者が適宜選択し得た事項であると認められる。 この点は、本願明細書の段落【0051】に、「同様にして、登録作業者と被登録者とで別個のICカードスロット(カードI/Fデバイス)を用いたが、登録作業者のICカードと被登録者のICカードを挿入できる共通のICカードインタフェースを設けるようにしてもよい。…(中略)…ICカードスロットのみを共用にして…(中略)…も良い。」と記載されるとおりである。 また、引用発明が「前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行い、一致しないときに、前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データを演算制御機の記憶装置に格納する」という手順を採用しているのは、前記「2)引用発明」の項における「g」?「j」の記載から、「一般ユーザ」の「指紋の新規登録、置換及び削除」を一つの「フローチャート」で記述される方法によって実現しようとしているためであることは、明らかである。 そして、前記「2)引用発明」の「j」には、「登録管理者が一般ユーザの登録が必要ない場合にはステップS7乃至ステップS9のフローは省略され、ステップS11の指紋の置換登録、ステップS10の指紋の新規登録の工程に移行する。」と、前記「指紋の新規登録、置換及び削除」の手順を、必要に応じて変更することが記載されている。 してみれば、引用発明を「一般ユーザ」の「指紋の新規登録」のみを目的とするように変更することも、当業者が必要に応じてなし得たことであると認められる。このとき、「指紋」の「置換及び削除」のための手順である「前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行」う手順は不要となるから、「一般ユーザの指紋」を読み取ったときに、直ちに、「前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データを演算制御機の記憶装置に格納する」ことは明らかである。 ところで、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-255005号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。(備考:下線は便宜上当審で付したものである。以下、他の文献についても同様である。) ア.「【0012】図1(a)に掲載しているとおり、IDカード1は、暗号化指紋記憶部2、データ送受信部3、ID番号登録部4から構成され、また図1(b)に掲載しているとおり、IDカードリーダ5は、指紋読み取り部6、IDカード挿入部7、暗証番号・暗号番号入力装置8、照合部9、暗号化機構10から構成されている。 【0013】図1(a)において、暗号化指紋記憶部2には、本人の指紋が予め暗号化されて記憶されている。ここで、暗号化の種類はシステムで複数用意されており、そのうちの1つで暗号化した後は、本人はその暗号化番号を、暗証番号とともに記憶しておく必要がある。また、指紋の暗号化技術は、周知であるため、ここでは記述していない。データ送受信部3は、IDカード1がIDカードリーダ5に入力されると、ID番号登録部4に登録されているID番号と、暗号化指紋記憶部2に記憶されている暗号化されている指紋情報を、IDカードリーダ5へ送信する。」 イ.「【0020】 【発明の効果】以上説明したように、本発明は、入力された利用者の個人情報を該利用者によって指定された暗号化方法により暗号化し、暗号化された該個人情報とIDカードに予め格納されている個人情報とを比較して利用者を認証するようにしたことにより、IDカード内の固有情報の改ざんを防止し、IDカード利用による認証システムのセキュリティを向上させる効果がある。」 同様に、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-143833号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ウ.「【0114】本発明の実施の形態に係る生体データによるユーザ確認システムは、個人が所有する演算(例えばデジタル署名)機能付きICカード3cに本人の生体データを保持し、暗号化された生体データを特定の場所に常置されたセンサモジュール1cに送って当該センサモジュール1cにて照合計算を行うようにし、さらにセンサモジュール1c及びICカード3cに高い耐タンパー性を持たせたので、生体データが漏洩したりICカードが他人に不正に使用されたりすることなく、安全に演算(例えばデジタル署名)を行うことができる。 【0115】また、生体データは暗号化されてICカード3cのみに格納されているので、生体データの漏洩危険性を低減させることができるとともに、生体データを高い安全性でもってユーザ手元の管理範囲(ICカード)に置いて守ることができ、自己の生体データを情報機器を格納することに対するユーザの抵抗感を大幅に低減させることができる。 【0116】さらに、本実施形態のシステムは、多くのバイオメトリクスセンサ(掌型、網膜など)はその大きさや仕組みからICカード上に実装できないことや、照合計算をICカードの中で行うには比較的負荷が大きいことを考え合わせると、様々な組み合わせの中でも作り易くバランスの良いシステムとなっている。 【0117】しかしながら、照合を行う度に毎回ICカードから個人の生体データをセンサモジュールの照合計算部13へ送る必要があるため、セキュリティ保持のために上記した暗号化処理が行われている。図5は、なるべく簡素でありながら十分なセキュリティを保つことのできる例として、センサ側に保持された復号鍵によって暗号化された生体データをICカードに保持するシステムとなっている。ICカード3cに生体データがあり、高いセキュリティが保持される。」 さらに、本願出願前に頒布された刊行物である特開2000-020727号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。 エ.「【0017】第1発明の指紋照合システム及び第6発明のメモリカードでは、照合用の指紋情報が暗号化された状態でメモリカードに登録されている。よって、利用者の指紋情報のセキュリティが飛躍的に向上する。」 オ.「【0024】図1は、本発明の指紋照合システムの構成図である。図1において、1は利用者の指紋情報が暗号化された状態で登録されているメモリカードであって、各利用者は自身のメモリカード1を携帯する。このメモリカード1に登録されている指紋情報は、指紋の特徴点(端点,分岐点等)のデータである。この指紋情報は、例えば電磁力を介して非接触にて、読出手段としてのカードリーダ2にて読み出される。カードリーダ2は読み出した指紋情報(特徴点データ)を復号した後、判定手段としての照合判定部3へ出力する。」 上記ア?オから、 指紋情報等の生体情報を用いて個人の認証を行う技術において、認証のための照合に利用される前記指紋情報等の生体情報を、暗号化して、前記認証の処理を実行する装置とは独立しているICカード等の情報記録媒体に格納することで、前記指紋情報等の生体情報及び前記認証の処理を実行するシステムのセキュリティを向上させる、 ことは、本願出願時において、既に常套手段であった。 さて、引用発明において、「管理者の指紋の登録データ」は「前記管理者以外の第三者が指紋を変更することができないように演算制御機の記憶装置に前もって登録されている」。そして、「読み取った一般ユーザの指紋の画像データ」は「演算制御器の記憶装置に格納」され、すなわち、「登録」されることで、該「読み取った一般ユーザの指紋の画像データ」は、「2)引用発明」の項の「g」に記載の「コンピュータシステムにおける個人識別方法」に利用される。 したがって、前記「読み取った一般ユーザの指紋の画像データ」を、「管理者の指紋の登録データ」と同様に、「前記管理者以外の第三者が指紋を変更することができない」ように、「演算制御機」とは独立している「記憶装置」に「登録」することは、当業者であれば当然になした事項であると認められる。 以上から、「2)引用発明」の項の「e」に「そこで本発明は、前記従来の技術に鑑みて成されたものであって、個人の同定、すなわち個人の判別又は識別方法として確立している指紋を利用してコンピュータシステムのセキュリティ機能の向上を図るものである。」と記載されるように、コンピュータシステムのセキュリティ機能の向上を図ることを目的とする引用発明において、「管理者の指紋の登録データ」を読み取る「記憶装置」とは異なる「記憶装置」に「一般ユーザの指紋の画像データ」を「格納」するに際して、各「記憶装置」は「演算制御機」とは独立したものとするとともに、前記「管理者の指紋の登録データ」については、暗号化された格納された「登録データ」を読み出し、前記「一般ユーザの指紋の画像データ」については、「一般ユーザの指紋」を読み取ったときに、直ちに、当該画像データを暗号化して前記異なる「記憶装置」に格納することは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。 このとき、引用発明の「演算制御機が有する指紋照合手段」と、前記「演算制御機」とは独立している「管理者」と「一般ユーザ」とで異なる「記憶装置」との間には、それぞれ異なる、通信を可能にするインタフェースが設けられることは、明らかである。 よって、相違点2乃至相違点5は格別なものではない。 (相違点6について) 引用発明は、「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」を具備するものではない。 しかしながら、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-184490号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。 カ.「【0029】本発明に従えば、撮像素子によって個人を識別可能な指紋等の人体表面部分の2次元的情報を撮像し、生態認証手段によって被検出用の人体表面部分またはその近傍で人体の生態認証を行い、制御手段によって、人体の生態認証が有効なときのみ、撮像素子によって撮像される画像に基づく人体表面の2次元的情報の検出を有効に行うように制御し、義指等のなりすまし防止を図って有効に指紋等の検出を行うことができる。」 キ.「【0038】本実施形態の指紋検出装置1には、指2の脈拍を検出する脈拍センサ10も設けられる。脈拍センサ10は、指2の脈拍を光学的に検出し、生態の認証を行う。制御手段11は、脈拍センサ10によって指2が生態であることの認証があるときにのみ、指紋の検出が有効となるようにする制御を行う。」 すなわち、特開平2001-184490号公報には、指紋情報の検出に際して、該指紋情報を検出しようとする者の生体反応をチェックし、前記生体反応を検出したときに前記指紋情報の検出を有効とすることで、該指紋情報を検出しようとする者になりすますことを防止する、という技術が記載されている。 同様に、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平06-187430号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ク.「【0011】次に、この実施例の動作を図2を参照して説明する。ステップ(11)で画像入力部(2)からの指紋データ(2a)を解析する。ステップ(12)でそのデータが指が置かれた画像であるかを判定し、指置きでないと判定するとステップ(11)へ戻る。指置きと判定したときは、ステップ(13)で圧力センサ(3)からの圧力データ(3a)を一定時間計測する。ステップ(14)(生体判別手段に相当)ではその計測データに基づいて脈拍パターンを判定し、例えば50?100回/分でなければ偽造指紋と判定し、ステップ(15)で偽造として記録し偽造フラグをオンにする。条件に合致すればステップ(16)で生体と判断して記録し偽造フラグをオフにする。 【0012】ステップ(17)では指紋データ(2a)を取り込み、指紋データとして解析する。ステップ(18)でその指紋データ(2a)と登録データを照合し、合致しないときはステップ(11)へ戻り、ステップ(11)?(18)を繰り返す。合致したときは、ステップ(11)へ進み、ステップ(15)(16)の偽造フラグを情認し、偽造フラグがオンであれば、ステップ(20)(指紋偽造信号出力手段に相当)で接点(6)を一定時間オンし、指紋偽造信号(6a)を出力する。偽造フラグがオフであれば、ステップ(21)で接点(5)を一定時間オンし、指紋合致信号(5a)を出力する。 【0013】実施例2.実施例1では、生体か偽造かを脈拍により判定するものとしたが、血圧パターンを測定するようにしてもよい。また、脈拍と血圧の両方を測定するようにしてもよい。」 本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-105704号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。 ケ.「【0072】かくしてステップSP22において、肯定結果が得られると、システム制御回路3は、ステップSP23に移り、脈波検出部22より生体反応が検出されるか否か判断する。ここで否定結果が得られると、システム制御回路3は、ステップSP24に移ってこの処理手順を終了するのに対し、ステップSP23において肯定結果が得られると、ステップSP25に移って実際の登録処理でなる実登録処理を実行する。これによりシステム制御回路3は、指の生体反応が検出されたときだけ指紋データを登録し、その分セキュリティを向上するようになされている。」 コ.「【0148】このステップSP155において、システム制御回路3は、指紋データ入力部4より出力される検査対象の指紋データD2を検査指紋メモリ6に入力する。これによりシステム制御回路3は、指の生体反応が検出されたときだけ指紋照合して、セキュリティを向上するようになされている。」 サ.「【0202】続いて指の側方に配置された圧力センサ23(図2)により、指の生体反応が検出され、生体反応が検出されない場合は、指紋登録の処理が中止される。これにより指紋登録の面より、セキュリティの向上が図られる。」 さらに、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-312225号公報には、図面とともに以下の事項が記載されている。 シ.「【0007】角度検知センサ31は、図3(a)に示すように、指紋スキャンパッドに対する指の角度θを検出して指の置き方の癖を収集し、また、圧力検知センサ32は、図3(b)に示すように、指の指紋スキャンパッドに対する接触面積を求めて指を置く場合の力の入れ具合の癖を読み取るためのものである。なお、指紋スキャンパッド3は、光学的、触圧的に指紋情報を読み取るだけでなく、電気的、感熱的、化学反応的に入力できる機能、生態反応の確認機能等を付加するようにしても良く、また入力されたデータを数値化する機能を有している。」 ス.「【0009】図5はICカード内の電源で動作して指紋照合を行う場合の処理フローを示す図である。まず、指紋スキャンパッド上に指を載せ、指紋読取を行う(ステップS1,S2)。次いで、読み取った指紋情報と登録されている指紋情報とを照合する(ステップS3)。この照合は、単に指紋情報の比較だけでなく、指を置いた角度、指の接触面積も照合される。照合の結果、指紋、角度、接触面積が一致した場合は指紋データの蓄積更新を行い(ステップS4、S5)…(以下、省略)…」 ク?スから、 指紋照合を行う際の一手順として指の生体反応を検出することで、あるいは、指紋情報を登録する際の一手順として指の生体反応を検出することで、セキュリティを向上させる、 ことが記載されている。 以上、カ?スから、 指紋情報を検出しようとする者の生体反応をチェックし、前記生体反応を検出したときに前記指紋情報の検出を有効とすることでなりすましを防止すること、 指紋情報の照合を行う際の一手順として、当該指紋情報の照合をしようとする者の生体反応をチェックすること、 指紋情報の登録・蓄積を行う際の一手順として、当該指紋情報を登録・蓄積しようとする者の生体反応をチェックすること、 は、本願出願時において、既に周知技術であった。 さて、引用発明の「一般ユーザの指紋情報の新規登録方法」は、「前記管理者の指紋の登録データと、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データ」との「照合」を、すなわち、前記「管理者」の認証を行うものである。 そして、上記のように、指紋情報を検出しようとする者の生体反応をチェックし、前記生体反応を検出したときに前記指紋情報の検出を有効とすることでなりすましを防止すること、及び、指紋情報の照合を行う際の一手順として当該指紋情報の照合をしようとする者の生体反応をチェックすること、は周知技術であった。したがって、引用発明において、前記認証の対象者すなわち「管理者」になりすます行為を防止するために、前記「管理者」の認証を行う際の一手順として、前記「管理者」の生体反応をチェックすることは、当業者であれば適宜なし得た事項であると認められる。 引用発明は、前記の「照合」を「行った結果、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データが一致したとき」には、以後、「一般ユーザの指紋を前記マウスの指紋検出装置によって読み取る」、及び、「前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行」う、という「一般ユーザ」側の作業が行われる。 そして、前記「管理者」になりすます行為はいつでもなされる可能性があるので、前記「一般ユーザ」側の作業が行われる際の前記「管理者」のなりすましを防止するため、「一般ユーザ」側の作業、すなわち、「一般ユーザの指紋の画像データを演算制御機の記憶装置」への「格納」を行う際にも、その際の一手順として前記「管理者」の生体反応をチェックすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。 また、引用発明の「コンピュータシステムの全ての管理を司る管理者の立ち会いのもとで行われる、一般ユーザの指紋情報の新規登録方法」は「管理者」と「一般ユーザ」が関与する「一般ユーザの指紋情報の新規登録方法」である。してみれば、コンピュータシステムのセキュリティ機能の向上を図ることを目的とし、「前記管理者の指紋の登録データと、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データ」との「照合」を行うとともに、「読み取った一般ユーザの指紋の画像データを演算制御機の記憶装置に格納する」ことで、前記「一般ユーザの指紋情報の新規登録」を行う引用発明において、前記「一般ユーザ」になりすます行為も防止する必要があることは、当業者においては自明な事項である。 したがって、引用発明において、前記周知技術のように、「指紋情報の新規登録」を行おうとする「一般ユーザ」の生体反応をチェックすることで、該「一般ユーザ」のなりすましも防止しようとすることは、当業者が適宜なし得たものと認められる。 よって、相違点6は格別なものではない。 5)補正後の請求項3に係る発明の進歩性についてのまとめ 以上のとおり、各相違点はいずれも格別のものではなく、そして、補正後の発明の効果も、引用発明、前記常套手段及び前記周知技術から、当業者が予測し得る範囲のものである。 したがって、補正後の発明は、引用発明、前記常套手段及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 H.特許法第17条の2第5項の規定に適合するかについてのまとめ 以上、仮に、請求項3乃至請求項6についてした本件補正が特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれかの事項を目的とするとしても、Fから、補正後の請求項3乃至同請求項6に係る発明は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。また、本件補正後の本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、補正後の請求項3乃至請求項6に係る発明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 さらに、仮に、請求項3乃至請求項4についてした本件補正が特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれかの事項を目的とするとしても、Gから、補正後の請求項3に係る発明は、特許法第29条第2項に規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 以上から、本件補正は、仮に、特許法第17条の2第4項各号に掲げるいずれかの事項を目的とするとしても、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。 3.小括 以上、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 そして、仮に、本件補正が前記特許法第17条の2第4項の規定に適合するとしても、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成20年2月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3及び請求項4に係る発明(以下、「本願発明3」乃至「本願発明4」という。)は、平成19年6月18日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、補正前の請求項3及び同請求項4に記載されたとおりのものと認める。 2.引用発明 引用発明は、前記「第2.平成20年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」の「(4)特許法第17条の2第5項の規定に適合するかについての検討」の「G.補正後の請求項3及び補正後の請求項5に係る発明の進歩性について」の「2)引用発明」の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 (1)本願発明3について 1)対比 本願発明3は、 a.補正後の発明の「登録作業者の認証を行うにあたって、登録作業者の生体情報を……検出するステップ」における「登録作業者の認証を行うにあたって、」という限定を省略し、 b.補正後の発明の「第1の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする第1のインタフェースを用いて、前記生体情報登録装置とは独立して暗号化されて記録された前記登録作業者の生体情報を当該第1の生体情報記録媒体から読み出すステップ」において、「第1のインタフェース」についての「第1の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする」という限定を省略するとともに、「第1の生体情報記録媒体」についての「生体情報登録装置とは独立して暗号化されて記録され」という限定を省略し、 c.補正後の発明の「前記照合ステップにおいて両情報が一致することが確認された場合に、被登録者の生体情報の登録作業を行うために、被登録者の生体情報を第2の生体情報検出手段によって検出するステップ」における「被登録者の生体情報の登録作業を行うために、」という限定を省略し、 d.補正後の発明の「第2の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする第2のインタフェースを用いて、前記生体情報登録装置とは独立して検出されて暗号化された被登録者の生体情報を前記第2の生体情報記録媒体に記録するステップ」において、「第2のインタフェース」についての「第2の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする」という限定を省略するとともに、「第2の生体情報記録媒体」についての「前記生体情報登録装置とは独立して検出されて暗号化された被登録者の生体情報を」という限定を省略し、 そして、 e.補正後の発明の「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」を省略した、 ものである。 そうすると、前記「第2.平成20年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」の「(4)特許法第17条の2第5項の規定に適合するかについての検討」の「G.補正後の請求項3に係る発明の進歩性について」の「3)対比」の項で検討したとおりの理由から、本願発明3と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。 (一致点) 被登録者と対面機会のある業者を登録作業者として生体情報の登録を行うにあたって、まず登録作業者の認証を行い、当該登録作業者の認証が完了したときに被登録者の生体情報の登録作業を行う生体情報登録方法であって、 登録作業者の生体情報を生体情報検出手段によって検出するステップと、 登録作業者の生体情報が記録された生体情報記録媒体からインタフェースを用いて当該登録作業者の生体情報を読み出すステップと、 前記生体情報検出手段により検出された登録作業者の生体情報と、前記インタフェースを用いて読み出された登録作業者の生体情報とを照合するステップと、 この照合するステップにおいて両情報が一致することが確認された場合に、被登録者の生体情報を生体情報検出手段によって検出するステップと、 検出された被登録者の生体情報をインタフェースを用いて生体情報記録媒体に記録するステップと、 を具備することを特徴とする生体情報登録方法。 (相違点イ) 本願発明3は、「登録作業者の生体情報」を検出する「第1の生体情報検出手段」と、「被登録者の生体情報」を検出する「第2の生体情報検出手段」を有するのに対して、引用発明は、「前記管理者の指紋」と「一般ユーザの指紋」を、同じ「マウスの指紋検出装置」で読み取る点。 (相違点ロ) 本願発明3は、「登録作業者の生体情報」は「第1の生体情報記録媒体」に「記録」し、「被登録者の生体情報」を「第2の生体情報記録媒体に記録する」のに対して、引用発明は、「管理者の指紋の登録データ」と「一般ユーザの指紋の画像データ」を、同じ「演算制御機の記憶装置に格納する」点。 (相違点ハ) 本願発明3は、「第1の生体情報記録媒体」から「登録作業者の生体情報を読み出す」ために用いる「第1のインタフェース」、及び、「被登録者の生体情報」を「記録する」ために用いる「第2のインタフェース」を有しているのに対して、引用発明は、「演算制御機の記憶装置」と「演算制御機が有する指紋照合手段」との間に両者の通信を可能にするインタフェースを有することが明らかである点。 (相違点ニ) 本願発明3は、「被登録者の生体情報を第2の生体情報検出手段によって検出するステップ」の次のステップで「検出された被登録者の生体情報を第2のインタフェースを用いて第2の生体情報記録媒体に記録する」のに対して、引用発明においては、「前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行い、一致しないときに、前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データを演算制御機の記憶装置に格納する」点。 2)判断 各相違点について判断する。 (相違点イについて) 相違点イの内容は、前記「第2.平成20年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」の「(4)特許法第17条の2第5項の規定に適合するかについての検討」の「G.補正後の請求項3に係る発明の進歩性について」の「3)対比」の項で挙げた「相違点1」の内容と同じである。 したがって、前記「第2.平成20年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」の「(4)特許法第17条の2第5項の規定に適合するかについての検討」の「G.補正後の請求項3に係る発明の進歩性について」の「4)判断」の「(相違点1について)」の項で検討したとおりの理由によって、相違点イは格別のものでない。 (相違点ロ乃至相違点ニについて) 引用発明は、「管理者の指紋の登録データ」と「一般ユーザの指紋の画像データ」を、同じ「演算制御機の記憶装置に格納する」が、指紋データを「管理者」と「一般ユーザ」とで異なる「記憶装置」に「格納する」ことは、該「記憶装置」を設ける「演算制御機」の大きさ、「一般ユーザの指紋情報の新規登録方法」を円滑に遂行する上での利便性、引用発明が課題とする「コンピュータシステムのセキュリティ機能の向上」(前記「第2.平成20年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」の「(4)特許法第17条の2第5項の規定に適合するかについての検討」の「G.補正後の請求項3に係る発明の進歩性について」の「2)引用発明」の項における「e」の記載参照)におけるセキュリティ上の要請、等に応じて、当業者が適宜選択し得た事項であると認められる。 この点は、本願明細書の段落【0051】に、「同様にして、登録作業者と被登録者とで別個のICカードスロット(カードI/Fデバイス)を用いたが、登録作業者のICカードと被登録者のICカードを挿入できる共通のICカードインタフェースを設けるようにしてもよい。…(中略)…ICカードスロットのみを共用にして…(中略)…も良い。」と記載されるとおりである。 また、引用発明が「前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行い、一致しないときに、前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データを演算制御機の記憶装置に格納する」という手順を採用しているのは、前記「2)引用発明」の項における「g」?「j」の記載から、「一般ユーザ」の「指紋の新規登録、置換及び削除」を一つの「フローチャート」で記述される方法によって実現しようとしているためであることは、明らかである。 そして、前記「2)引用発明」の「j」には、「登録管理者が一般ユーザの登録が必要ない場合にはステップS7乃至ステップS9のフローは省略され、ステップS11の指紋の置換登録、ステップS10の指紋の新規登録の工程に移行する。」と、前記「指紋の新規登録、置換及び削除」の手順を、必要に応じて変更することが記載されている。 してみれば、引用発明を「一般ユーザ」の「指紋の新規登録」のみを目的とするように変更することも、当業者が必要に応じてなし得たことであると認められる。このとき、「指紋」の「置換及び削除」のための手順である「前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行」う手順は不要となるから、「一般ユーザの指紋」を読み取ったときに、直ちに、「前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データを演算制御機の記憶装置に格納する」ことは明らかである。 したがって、引用発明において、「管理者の指紋の登録データ」を読み取る「記憶装置」とは異なる「記憶装置」に、「一般ユーザの指紋の画像データ」を「格納」すること、そして、前記「格納」を、「一般ユーザの指紋を前記マウスの指紋検出装置によって読み取る」と直ちに行うことは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。 このとき、「管理者の指紋の登録データ」を読み取る「記憶装置」と、「一般ユーザの指紋の画像データ」を「格納」する「記憶装置」とが異なるのであるから、各「記憶装置」は異なるインタフェースを有し、この異なるインタフェースを用いて、前記読み取りないしは「格納」を行うこととなるのは、当然である。 よって、相違点ロ、相違点ハ及び相違点ニは、いずれも格別なものではない。 3)小括 以上のとおり、各相違点はいずれも格別のものではなく、そして、本願発明3の効果も、引用発明から当業者が予測し得る範囲のものである。 以上のとおりであるから、本願発明3は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 (2)本願発明4について 1)対比 本願発明4は、 a.補正後の発明の「登録作業者の認証を行うにあたって、登録作業者の生体情報を……検出するステップ」における「登録作業者の認証を行うにあたって、」という限定を省略し、 b.補正後の発明の「第1の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする第1のインタフェースを用いて、前記生体情報登録装置とは独立して暗号化されて記録された前記登録作業者の生体情報を当該第1の生体情報記録媒体から読み出すステップ」において、「第1のインタフェース」についての「第1の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする」という限定を省略するとともに、「第1の生体情報記録媒体」についての「生体情報登録装置とは独立して暗号化されて記録され」という限定を省略し、 c.補正後の発明の「前記照合ステップにおいて両情報が一致することが確認された場合に、被登録者の生体情報の登録作業を行うために、被登録者の生体情報を第2の生体情報検出手段によって検出するステップ」における「被登録者の生体情報の登録作業を行うために、」という限定を省略し、 d.補正後の発明の「第2の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする第2のインタフェースを用いて、前記生体情報登録装置とは独立して検出されて暗号化された被登録者の生体情報を前記第2の生体情報記録媒体に記録するステップ」において、「第2のインタフェース」についての「第2の生体情報記録媒体との間の通信を可能にする」という限定を省略するとともに、「第2の生体情報記録媒体」についての「前記生体情報登録装置とは独立して検出されて暗号化された被登録者の生体情報を」という限定を省略し、 そして、 e.補正後の発明の「登録作業者の認証に関連して登録作業者の認証生体反応チェックを行うとともに、被登録者の登録に関連して登録作業者の登録生体反応チェックを行い、かつ前記被登録者の生体反応チェックを行うステップ」を「前記被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミングで、前記登録作業者と前記被登録者の生体反応チェックを行なうステップ」に置換した、 ものである。 そうすると、前記「第2.平成20年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」の「(4)特許法第17条の2第5項の規定に適合するかについての検討」の「G.補正後の請求項3に係る発明の進歩性について」の「3)対比」の項で検討したとおりの理由から、本願発明3と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。 (一致点) 被登録者と対面機会のある業者を登録作業者として生体情報の登録を行うにあたって、まず登録作業者の認証を行い、当該登録作業者の認証が完了したときに被登録者の生体情報の登録作業を行う生体情報登録方法であって、 登録作業者の生体情報を生体情報検出手段によって検出するステップと、 登録作業者の生体情報が記録された生体情報記録媒体からインタフェースを用いて当該登録作業者の生体情報を読み出すステップと、 前記生体情報検出手段により検出された登録作業者の生体情報と、前記インタフェースを用いて読み出された登録作業者の生体情報とを照合するステップと、 この照合するステップにおいて両情報が一致することが確認された場合に、被登録者の生体情報を生体情報検出手段によって検出するステップと、 検出された被登録者の生体情報をインタフェースを用いて生体情報記録媒体に記録するステップと、 を具備することを特徴とする生体情報登録方法。 (相違点イ) 本願発明4は、「登録作業者の生体情報」を検出する「第1の生体情報検出手段」と、「被登録者の生体情報」を検出する「第2の生体情報検出手段」を有するのに対して、引用発明は、「前記管理者の指紋」と「一般ユーザの指紋」を、同じ「マウスの指紋検出装置」で読み取る点。 (相違点ロ) 本願発明4は、「登録作業者の生体情報」は「第1の生体情報記録媒体」に「記録」し、「被登録者の生体情報」を「第2の生体情報記録媒体に記録する」のに対して、引用発明は、「管理者の指紋の登録データ」と「一般ユーザの指紋の画像データ」を、同じ「演算制御機の記憶装置に格納する」点。 (相違点ハ) 本願発明4は、「第1の生体情報記録媒体」から「登録作業者の生体情報を読み出す」ために用いる「第1のインタフェース」、及び、「被登録者の生体情報」を「記録する」ために用いる「第2のインタフェース」を有しているのに対して、引用発明は、「演算制御機の記憶装置」と「演算制御機が有する指紋照合手段」との間に両者の通信を可能にするインタフェースを有することが明らかである点。 (相違点ニ) 本願発明4は、「被登録者の生体情報を第2の生体情報検出手段によって検出するステップ」の次のステップで「検出された被登録者の生体情報を第2のインタフェースを用いて第2の生体情報記録媒体に記録する」のに対して、引用発明においては、「前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データと前もって登録されている指紋の登録データとの照合を行い、一致しないときに、前記読み取った一般ユーザの指紋の画像データを演算制御機の記憶装置に格納する」点。 (相違点ホ) 本願発明4は「前記被登録者の生体情報を登録するに先立つ任意のタイミングで、前記登録作業者と前記被登録者の生体反応チェックを行なうステップ」を有しているのに対して、引用発明は、何らかの生体反応チェックを行うステップを具備していない点。 2)判断 各相違点について判断する。 (相違点イ乃至相違点ニについて) 本願発明4は、本願発明3と同一の、一致点、相違点イ乃至相違点ニを有している。 したがって、本願発明3について述べたと同じ理由によって、本願発明4についての相違点イ、相違点ロ、相違点ハ及び相違点ニは、いずれも、格別のものではない。 (相違点ホについて) 前記「第2.平成20年2月4日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」の「(4)特許法第17条の2第5項の規定に適合するかについての検討」の「G.補正後の請求項3に係る発明の進歩性について」の「4)判断」の「(相違点6について)」の項で指摘したとおり、 指紋情報を検出しようとする者の生体反応をチェックし、前記生体反応を検出したときに前記指紋情報の検出を有効とすることでなりすましを防止すること、 指紋情報の照合を行う際の一手順として、当該指紋情報の照合をしようとする者の生体反応をチェックすること、 指紋情報の登録・蓄積を行う際の一手順として、当該指紋情報を登録・蓄積しようとする者の生体反応をチェックすること、 は、本願出願時において、既に周知技術であった。 さて、引用発明の「一般ユーザの指紋情報の新規登録方法」は、「前記管理者の指紋の登録データと、前記読み取られた前記管理者の指紋の画像データ」との「照合」を行い、「一般ユーザの指紋の画像データを演算制御機の記憶装置に格納する」ものである。 してみれば、引用発明において、前記「照合」を行う際の一手順として当該「照合」をしようとする前記「管理者」の生体反応チェックを、「指紋の画像データを演算制御機の記憶装置に格納する」すなわち当該「指紋の画像データ」を蓄積・登録しようとする際の一手順として前記「一般ユーザ」の生体反応チェックを、引用発明の「一般ユーザの指紋情報の新規登録方法」の実施が完了する時点である「指紋の画像データを演算制御機の記憶装置に格納する」までに行うことは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。 よって、相違点ホは格別なものではない。 3)小括 以上のとおり、各相違点はいずれも格別のものではなく、そして、本願発明4の効果も、引用発明及び前記周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。 以上のとおりであるから、本願発明4は、引用発明及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 4.むすび 以上のとおり、本願発明3及び本願発明4は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-05-20 |
結審通知日 | 2010-05-25 |
審決日 | 2010-06-07 |
出願番号 | 特願2002-135344(P2002-135344) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) P 1 8・ 57- Z (G06F) P 1 8・ 537- Z (G06F) P 1 8・ 536- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岸野 徹 |
特許庁審判長 |
鈴木 匡明 |
特許庁審判官 |
石井 茂和 山崎 達也 |
発明の名称 | 生体情報登録装置及び生体情報登録方法 |
代理人 | 砂川 克 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 風間 鉄也 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 堀内 美保子 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 幸長 保次郎 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 野河 信久 |
代理人 | 佐藤 立志 |
代理人 | 河井 将次 |
代理人 | 勝村 紘 |
代理人 | 市原 卓三 |
代理人 | 河野 直樹 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 橋本 良郎 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 白根 俊郎 |
代理人 | 竹内 将訓 |
代理人 | 山下 元 |