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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1220714
審判番号 不服2008-26708  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-16 
確定日 2010-07-26 
事件の表示 特願2005-515572「トナー、二成分現像剤及びトナーの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 2日国際公開、WO2005/050328〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.経緯
本願は、2004年11月2日(国際出願番号PCT/JP2004/016261、国内優先権 平成15年11月20日 特願2003-390552号)の出願であって、平成20年9月11日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月16日に審判請求がなされるとともに、同年11月17日付で手続補正がなされたものである。その後、当審において平成21年11月16日付で拒絶理由が通知され、これに対して平成22年1月15日付で意見書とともに手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の発明は、平成22年1月15日付手続補正書によって補正された本願の明細書及び図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次の通りである。

「【請求項1】
水系媒体中において少なくとも、樹脂粒子を分散させた樹脂粒子分散液と、着色剤粒子を分散させた着色剤粒子分散液及びワックス粒子を分散させたワックス粒子分散液とを混合凝集し、加熱処理により凝集会合粒子を形成することにより得られるトナーであって、
前記凝集会合粒子が、平均粒子径1μmよりも大きく凝集したワックスが樹脂中に内包した状態で存在しているカプセル構造をした第一の粒子と、
樹脂と平均粒子径1μm以下で凝集したワックスの層と、その外に樹脂が融合した第二の粒子とからなり、
前記第二の粒子の存在割合が50個数%以上であることを特徴とするトナー。」

3.引用例の記載
当審において、平成21年11月16日付で通知した拒絶理由で引用した本願優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である引用例1:特開2003-15358号公報には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与。)

(1a)「【請求項4】重合体一次粒子、着色剤粒子、個数平均粒径30?300nmのワックス微粒子、及び個数平均粒径450?3000nmのワックス微粒子を凝集して粒子凝集体とする工程を経て得られる静電荷像現像用トナー。」

(1b)「【0033】
○混合工程
本発明の製造法の凝集工程においては、上述の、重合体一次粒子、着色剤粒子、必要に応じて帯電制御剤、ワックスなどの配合成分の粒子は、同時にあるいは逐次に混合して分散するが、予めそれぞれの成分の分散液、即ち、重合体一次粒子分散液、着色剤粒子分散液、必要に応じ帯電制御剤分散液、ワックス微粒子分散液を作製しておき、これらを混合して混合分散液を得ることが好ましい。また、ワックスは、重合体一次粒子に内包化されたもの、すなわち、ワックスをシードとして乳化重合した重合体一次粒子を用いることにより、トナーに含有させることが好ましく、この場合は、重合体一次粒子に内包化されたワックスと、内包化されていないワックス微粒子を併用して用いることができる。
【0034】○凝集工程
上記の各粒子の混合分散液を凝集工程で凝集して粒子凝集体を作成するが、この凝集処理には、攪拌槽内で、1)加熱する方法と、2)電解質を加える方法、とがある。
【0035】加熱して凝集を行う場合に、凝集温度としては具体的には、5℃?Tgの温度範囲(但し、Tgは重合体一次粒子のガラス転移温度)であり、Tg-10℃?Tg-5℃の範囲が好ましい。上記温度範囲であれば、電解質を用いることなく好ましいトナー粒径に凝集させることができる。また、加温して凝集を行う場合、凝集工程に引き続いて熟成工程を行う場合には、凝集工程と熟成工程が連続的に行われ、その境界が曖昧となる場合があるが、Tg-20℃?Tgの温度範囲に少なくとも30分間保持する工程があれば、これを凝集工程とみなす。
【0036】凝集温度は所定の温度ですくなくとも30分保持することにより所望の粒径のトナー粒子とすることが好ましい。所定のの温度までは一定速度で昇温しても良いし、ステップワイズに昇温しても良い。保持時間は、Tg-20℃?Tgの範囲で30分以上8時間以下が好ましく、1時間以上4時間以下が更に好ましい。このようにすることによって、小粒径であり、粒度分布のシャープなトナーを得ることができる。
【0037】また、混合分散液に電解質を添加して凝集を行う場合の電解質としては、有機の塩、無機塩のいずれでも良いが、1価あるいは2価以上の多価の金属塩が好ましく用いられる。具体的には、NaCl、KCl、LiCl、Na_(2)SO_(4)、K_(2)SO_(4)、Li_(2)SO_(4)、MgCl_(2)、CaCl_(2)、MgSO_(4)、CaSO_(4)、ZnSO_(4)、Al_(2)(SO_(4))_(3)、Fe_(2)(SO_(4))_(3)、CH_(3)COONa、C_(6)H_(5)SO_(3)Na等が挙げられる。
【0038】電解質の添加量は、電解質の種類によっても異なるが、通常は混合分散液の固形成分100重量部に対して、0.05?25重量部が用いられる。好ましくは0.1?15重量部、更に好ましくは0.1?10重量部である。電解質添加量が上記範囲より著しく少ない場合には、凝集反応の進行が遅くなり凝集反応後も1μm以下の微粉が残ったり、得られた粒子凝集体の平均粒径が3μm以下となるなどの問題を生じる傾向にある。また、電解質添加量が上記範囲より著しく多い場合には、急速で制御の困難な凝集となりやすく、得られた粒子凝集体の中に25μm以上の粗粉が混じったり、凝集体の形状がいびつで不定形の物になるなどの問題を生じる傾向にある。また、電解質を加えて凝集を行う場合には、凝集温度は5℃?Tgの温度範囲が好ましい。
【0039】○その他の配合成分
次に、本発明においては、上述の凝集処理後の粒子凝集体表面に、必要に応じて樹脂微粒子を被覆(付着又は固着)してトナー粒子を形成するのが好ましい。なお、上述した帯電制御剤を凝集処理後に加える場合には、粒子凝集体を含む分散液に帯電制御剤を加えた後、樹脂微粒子を加えるのが好ましい。
【0040】この樹脂微粒子は、乳化剤(前述の界面活性剤)により水または水を主体とする液中に分散してエマルションとして用いるが、トナーの最外層に用いる樹脂微粒子は、ワックスを含まないものが好ましい。樹脂微粒子としては、好ましくは体積平均粒径が0.02?3μm、更に好ましくは0.05?1.5μmであって、前述の重合体一次粒子に用いられるモノマーと同様なモノマーを重合して得られたもの等を用いることができる。粒子凝集体に樹脂微粒子を被覆してトナーを形成する場合、樹脂微粒子に用いられる樹脂は、架橋されているものが好ましい。
【0041】○熟成工程
乳化重合/凝集法においては、凝集で得られた粒子凝集体(トナー粒子)の安定性を増すためにTg+20℃?Tg+80℃(但し、Tgは重合体一次粒子のガラス転移温度)の範囲で凝集した粒子間の融着を起こす熟成工程を加えることが好ましい。また、この熟成工程では上記の温度範囲に1時間以上保持するのが好ましい。熟成工程を加えることにより、トナー粒子の形状も球状に近いものとすることができ、形状制御も可能になる。この熟成工程は、通常1時間から24時間であり、好ましくは1時間から10時間である。熟成工程前の粒子凝集体は、一次粒子の静電的あるいはその他の物理凝集による集合体であると考えられるが、熟成工程後は、粒子凝集体を構成する重合体一次粒子は、互いに融着しており、好ましくはほぼ球形となっている。なお、この様なトナーの製造方法によれば、一次粒子が凝集した状態の葡萄型、融着が半ばまで進んだジャガイモ型、更に融着が進んだ球状等、目的に応じて様々な形状のトナーを製造することができる。
【0042】○洗浄・乾燥工程
上記の各工程を経ることにより得た粒子凝集体は、公知の方法に従って固液分離し、粒子凝集体を回収し、次いで、これを必要に応じて、洗浄した後、乾燥することにより目的とするトナー粒子を得ることができる。このようにして、体積平均粒径が3?8μmと比較的小粒径のトナーを製造することができる。しかもこうして得られたトナーは、粒度分布がシャープで、高画質及び高速化を達成するための静電荷像現像用トナーとして適したものである。
【0043】本発明に用いられるトナーには、流動性や現像性を制御する為に公知の外添剤を添加しても良い。外添剤としては、シリカ、アルミナ、チタニア、等の各種無機酸化粒子(必要に応じて疎水化処理する)、ビニル系重合体粒子等が使用できる。外添剤の添加量は、トナー粒子に対して0.05?5重量部の範囲が好ましい。
【0044】本発明に用いられるトナーは、2成分現像剤、マグネタイト含有トナー等の磁性1成分現像剤、非磁性1成分現像剤に適用することができる。2成分現像剤として用いる場合には、トナーと混合して現像剤を形成するキャリアとしては、公知の鉄粉系、フェライト系、マグネタイト系キャリア等の磁性物質または、それらの表面に樹脂コーティングを施したものや磁性樹脂キャリアを用いる事ができる。
【0045】キャリアの被覆樹脂としては、一般的に知られているスチレン系樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が利用できるが、これらに限定されるものではない。キャリアの平均粒径は、特に制限はないが10?200μmの平均粒径を有するものが好ましい。これらのキャリアは、トナー1重量部に対して5?100重量部使用する事が好ましい。」

(1c)「【0051】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[ワックス粒子の調整例-1]ワックス成分であるペンタエリスリトールステアリン酸4置換体(ユニスターH-476日本油脂社製)30部、アニオン界面活性剤(ネオゲンSC第一工業製薬社製)0.3部、水70部を90℃に加熱しディスパーで10分攪拌した(waxA)。
【0052】次いで、この分散液をホモジナイザー(15-M-8PA型ゴーリン社製)を用い100℃50kg/cm2の条件で乳化を開始し、粒度分布計で平均粒度を測定しながら以下の粒度を示す乳液を都度サンプリングして試験トナー製造用ワックスを調整した。
waxA;平均粒径3.2μm
waxB;平均粒径1.8μm
waxC;平均粒径0.4μm
waxD;平均粒径0.2μm
waxE;平均粒径0.08μm

(1d)「【0053】・・・
[樹脂の製造例]アニオン界面活性剤(ネオゲンSC第一工業製薬社製)0.5部、及び過硫酸アンモニウム0.5部を溶解した水100部にスチレン16部アクリル酸ブチル4部、アクリル酸0.6部を加え、80℃で8時間乳化重合し、試験用トナー製造用樹脂を調整した。」

(1e)「【0054】実施例1
樹脂の製造例で得た乳化液500部、カーボンブラック(リーガル330Rキャボット社製)5部、waxE30部、waxB10部を混合しデェスパーで攪拌しながらpHを4に調整し2時間分散したところコールターカウンターで測定して体積平均粒径が1μの会合粒子が得られた。次いで攪拌をカイ型翼に変え、攪拌下60℃まで加熱し、これをアンモニアでpH7に調整した。さらに攪拌下90℃まで加熱し2時間この温度を保った処、7.3μmの凝集体を得た。この凝集体を冷却、分離水洗した後乾燥させて得られた。粒子に疎水性シリカ(アエロジルR972日本アエロジル社製)1.0%をヘンシェルミキサーを用い添加し、試験用トナーを得た。このトナーを市販のプリンター(レーザージェット4500ヒューレットパッカード社製)に入れ連続プリント試験を行った処、2万枚の試験においても、カブリの少ない鮮明な画像が得られた。又、フィルミングやブレードにトナーが固着して起こる画像の欠陥は発生せず、指で強く擦っても定着トナーの剥離しない良好な定着画像がえられた。又、試験トナーを透過電子顕微鏡を用い切断断面を観察した処、トナー製造前のワックス粒径がほぼそのままの大きさで分散されていることが解った。」

以上のことから、引用例1には以下の発明(以下「引用例発明」という。)が記載されていると認められる。

「重合体一次粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、ワックス微粒子分散液とを混合凝集し、Tg-20℃?Tgの温度範囲に少なくとも30分間保って凝集会合体を得ることにより得られるトナー」

4.対比
本願発明と引用例発明とを対比する。

引用例発明の「重合体一次粒子分散液」は、本願発明の「樹脂粒子分散液」に相当する。
引用例発明の「Tg-20℃?Tgの温度範囲に少なくとも30分間保って凝集会合体を得ること」は、本願発明の「加熱処理により凝集会合粒子を形成すること」に相当する。

してみると、両者は、
「水系媒体中において少なくとも、樹脂粒子を分散させた樹脂粒子分散液と、着色剤粒子を分散させた着色剤粒子分散液及びワックス粒子を分散させたワックス粒子分散液とを混合凝集し、加熱処理により凝集会合粒子を形成することにより得られるトナー」
で一致し、
以下の点で相違する。

(相違点)
本願発明では、「凝集会合粒子が、平均粒子径1μmよりも大きく凝集したワックスが樹脂中に内包した状態で存在しているカプセル構造をした第一の粒子と、樹脂と平均粒子径1μm以下で凝集したワックスの層と、その外に樹脂が融合した第二の粒子とからなり、前記第二の粒子の存在割合が50個数%以上である」のに対して、引用例発明ではこれらの点が記載されていない点。

5.相違点についての判断
引用例1の実施例1には、平均粒子径1μmよりも大きいワックス粒子(waxB)の分散液と、平均粒子径1μmより小さいワックス粒子(waxE)の分散液(1c)とを、10対30の重量比で混合してトナーを作成したこと(上記1e参照)、できあがったトナー粒子中において、それらワックス粒子のトナー製造前の粒径が保存されたままの大きさで分散されていたこと(上記1e参照)が記載されている。
ここで、平均粒径0.08μmのwaxEを含んで得られた会合粒子が形成されるが、会合粒子には樹脂と平均粒子径1μm以下で凝集したワックスの層が形成されるとともに、最外層には樹脂の層が形成されることは明らかである。また、同時に、平均粒径1.8μmのwaxBを含んで得られた会合粒子も同様に形成される。したがって、「樹脂と平均粒子径1μm以下で凝集したワックスの層と、その外に樹脂が融合した第二の粒子」と「平均粒子径1μmよりも大きく凝集したワックスが樹脂中に内包した状態で存在しているカプセル構造をした第一の粒子」とが形成されることは明らかである。
さらに、waxBとwaxEの混合した重量比は「10対30」なのであるから、waxBとwaxEの寸法比が「1.8対0.08≒20対1」であることを考慮してwaxBとwaxEの個数比(≒waxB重量比/[waxB粒径]^(3)対waxE重量比/[waxE粒径]^(3))に換算すると、「10/20^(3)対30/1^(3)=1対24000」となる。したがって、waxBの個数は圧倒的に少なく、waxBを含む会合粒子の個数は圧倒的に少ないことになるから、当然、本願発明のように「第2の粒子の存在割合が50個数%以上である」ということになる。
そして、waxBとwaxEを混合した際の重量比や個数比、すなわちwaxBを含む会合粒子とwaxEを含む会合粒子の比率は、凝集会合粒子を得る混合の際に当業者が適宜制御し得た事項であるから、本願発明のごとく「第二の粒子の存在割合が50個数%以上である]ように構成することは、当業者にとって格別困難なことではない。

審判請求人は、実施例1について以下のように主張している。
『ここで、引用文献1には、「waxE30部、waxB10部を混合し、・・・2時間分散したところ、・・・体積平均粒径が1μの会合粒子が得られた。」(下線部分を追加しました)と記載されているように、引用文献1において、平均粒径1.8μmのwaxBを含む会合粒子が1μに会合されています。つまり、引用文献1において、会合粒子(粒径1μ)は、waxBの平均粒径(1.8μm)よりも半分程度に小さく生成されており、「トナー製造前のワックス粒径がほぼそのままの大きさで分散されている」との第0054段落における記載と矛盾します。また、引用文献1における「さらに攪拌下90℃まで加熱し2時間この温度を保った処、7.3μmの凝集体を得た。」との記載は、段落[0041]に記載の熟成工程を示すものと推測できます。
そうしますと、引用文献1には、「平均粒子径1μmよりも大きいワックス粒子の分散液(waxB)と、それより小さいワックス粒子の分散液(waxE)(1c)とを、10対30の比で併用してトナーを作成」すること、および、「ワックス粒子よりも小さい会合粒子が形成されている実施例」が開示されています。すなわち、引用文献1においては、「製造されたトナー粒子中において、それらワックスの粒径が保存されている」との記載とは、その実施例における記載と矛盾しています。』

しかしながら、会合粒子は審判請求人の言うように「1μに会合」した「粒径1μ」の会合粒子なのではなく、あくまで「体積平均粒径が1μの会合粒子」(上記1e参照)であって、しかも「体積平均粒径が3?8μm・・・のトナーを製造することができ」(上記1b参照)、「トナー製造前のワックス粒径がほぼそのままの大きさで分散されている」(上記1e参照)ようにwaxBも含む会合粒子が形成されたはずなのであるから、会合粒子にはwaxBよりも粒径の大きい会合粒子が存在することは明らかであり、該会合粒子は大きいワックス粒子を含むと解するのが相当である。またその場合、体積平均粒子径が1μmである場合、個数平均粒子径が1μmである場合よりも、1μmを越える大粒径会合粒子の個数が少なくなると言える。このとき、waxBのような「平均粒子径1μmよりも大きい」ワックス粒子を含みうる大粒径会合粒子の個数が少なく、waxEのような平均粒子径が1μmより小さい粒子の比率が多いと言うことになり、本願発明のように「第二の粒子の存在割合が50個数%以上であること」と、符合する。

また、審判請求人は、以下のように主張する。
『また、引用文献1では、トナーの凝集生成において、トナー製造前のワックス粒径がほぼそのままの大きさでトナー中に分散されていることを技術思想としています。つまり、凝集熟成過程において、ワックス粒子同士は一切凝集されていないことも引用文献1の特徴です。
一方、本発明においては、トナー生成の過程において、ワックスが凝集し、一定の大きさに成長することを特徴とします。このことは、補正後の本請求項1において、「凝集会合粒子が、平均粒子径1μmよりも大きく凝集したワックス」との記載から明確に理解できると存じます。』
しかしながら、本願発明のワックス粒子は凝集して形成されたものではあるが、同一材料が凝集した場合には、引用例発明のワックス粒子の均一性とは差があるものの、凝集状態を残していても一定程度均一状態になっているといえる。しかも、本願の出願当初の第7図?第11図でも、ある程度一様な粒子であることが認められる。
他方、引用例1ではワックス粒子は水中でワックス成分を分散させて形成させたものであるから、水中で凝集したものも多少含まれると言える。
してみると、凝集して形成された本願発明のワックス粒子と、引用例1のワックス粒子とに、構造的に大きな差異はないと言える。

以上のことから、本願発明1は、引用例発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この特許出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-05-24 
結審通知日 2010-05-25 
審決日 2010-06-14 
出願番号 特願2005-515572(P2005-515572)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川村 大輔川口 真隆  
特許庁審判長 柏崎 康司
特許庁審判官 伏見 隆夫
木村 史郎
発明の名称 トナー、二成分現像剤及びトナーの製造方法  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  

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