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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1221322
審判番号 不服2008-17678  
総通号数 129 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-10 
確定日 2010-08-03 
事件の表示 特願2005- 33618「変動する走査速度に対する感度を低下させる被変調リソグラフィビーム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月28日出願公開、特開2005-203802〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は平成17年1月13日(パリ条約による優先権主張 平成16年1月13日、米国)の特許出願であって、平成20年1月25日付けで拒絶理由が通知され、同年3月24日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月9日付けで拒絶査定がなされたため、これを不服として同年7月10日に本件審判請求がなされるとともに、同年7月24日付けで特許請求の範囲について手続補正がなされ、同日付けで同年7月10日付けの審判請求書の請求の理由について手続補正がなされたものである。

第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成20年7月24日付けの特許請求の範囲についての手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、平成20年3月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲についての

「【請求項1】
リソグラフィ装置であって、
放射線のビームを供給するように構成された照明システムと、
パターニングデバイスを支持するように構成された支持構造とを有し、前記パターニングデバイスがビームの断面にパターンを与え、さらに、
基板を保持するように構成された基板ホルダと、
パターン形成したビームを前記基板の目標部分に投影するように構成された投影システムと、
パターン形成したビームと前記基板とを相互に対して移動するように構成された走査機構と、
走査速度信号に基づいてパターン形成ビームの属性を変調するように構成された変調器とを有し、前記走査速度信号が、前記基板に対するパターン形成ビームの走査速度を示し、
前記変調器が、前記投影システムと前記照明システムとの少なくとも一方のスリットの幅を変調して、パターン形成したビームの幅を変調するように構成され、
さらに、
第一制限要素と、
第二制限要素と、
前記第一および第二制限要素を駆動するように構成された駆動機構とを有し、
前記スリットが、前記第一制限要素と第二制限要素との間に形成され、
前記駆動機構が前記第一制限要素を駆動し、前記第一制限要素を加速して、前記スリット幅を変調し、遅延後に、前記第一制限要素の加速とほぼ同様の方法で前記第二制限要素を駆動し、前記第二制限要素を加速して、前記スリット幅を変調し、
駆動機構が、前記走査速度信号に基づいて前記第一制限要素の加速、前記第二制限要素、および前記遅延を決定するリソグラフィ装置。
【請求項2】
前記被変調属性が、パターン形成ビームの有効パワーを含む、請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項3】
前記被変調属性が、前記照明システムに付随する光源の有効パワーを含む、請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項4】
前記変調器が、前記照明システムに伴う光源の繰返し率を変調する、請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項5】
前記変調器が、パターン形成したビームを減衰する可変減衰器を駆動するように構成される、請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項6】
前記変調器が、走査速度にほぼ比例して、パターン形成したビームの単位時間当たりの総露光エネルギを変調するように構成される、請求項5に記載のリソグラフィ装置。
【請求項7】
前記変調器がさらに、減速または加速中に前記基板の前記目標部分へのパターン形成ビームの投影を開始するように構成される、請求項6に記載のリソグラフィ装置。
【請求項8】
デバイス製造方法であって、
基板を設けることと、
放射線のビームを設けることと、
前記放射線ビームの断面にパターンを与えることと、
パターンを形成した放射線のビームを前記基板の目標部分に投影することと、
パターン形成したビームと前記基板を相互に対して移動することと、
前記基板に対するパターン形成ビームの走査速度に基づいて、パターン形成ビームの属性を変調することとを含み、
さらに、
第一制限要素と第二制限要素との間にスリットを形成することと、
投影システムと照明システムとの少なくとも一方のスリットの幅を変調して、パターン形成したビームの幅を変調することを含み、
前記ビームの幅を変調する際には、駆動機構が前記第一制限要素を駆動し、前記第一制限要素を加速して、前記スリット幅を変調し、遅延後に、前記第一制限要素の加速とほぼ同様の方法で前記第二制限要素を駆動し、前記第二制限要素を加速して、前記スリット幅を変調し、駆動機構が、前記走査速度信号に基づいて前記第一制限要素の加速、前記第二制限要素、および前記遅延を決定することを含むデバイス製造方法。
【請求項9】
前記被変調属性が、パターン形成ビームの有効パワーを含む、請求項8に記載のデバイス製造方法。
【請求項10】
前記被変調属性が、前記照明システムに付随する光源の有効パワーを含む、請求項8に記載のデバイス製造方法。
【請求項11】
前記被変調属性が、前記照明システムに伴う光源の繰返し率を含む、請求項8に記載のデバイス製造方法。
【請求項12】
前記被変調属性が、パターン形成ビームの減衰を含む、請求項8に記載のデバイス製造方法。
【請求項13】
前記被変調属性が、走査速度にほぼ比例した、パターン形成したビームの単位時間当たりの総露光エネルギを含む、請求項8に記載のデバイス製造方法。
【請求項14】
リソグラフィ装置で、
放射線のビームを供給する手段と、
パターニング手段を支持する手段とを有し、前記パターニング手段が投影ビームの断面にパターンを与え、さらに、
基板を保持する手段と、
パターンを形成したビームを前記基板の目標部分に投影する手段と、
パターンを形成したビームと基板とを相互に移動させる手段と、
走査速度の変動に対する感度を低下させるために、パターンを形成したビームと前記基板とが相互に対して移動するにつれて、走査速度を示す走査速度信号に基いてパターン形成ビームの属性を変調する手段とを有し、
前記変調する手段が、前記投影システムと前記放射線手段との少なくとも一方のスリットの幅を変調して、パターン形成したビームの幅を変調するように構成され、
さらに、
第一制限手段と、
第二制限手段と、
前記第一および第二制限手段を駆動する駆動手段とを有し、
前記スリットは、前記第一と第二制御手段との間で画成され、
前記駆動手段が前記第一制限手段を駆動し、前記第一制限手段を加速して、前記スリット幅を変調し、遅延後に、前記第一制限手段の加速とほぼ同様の方法で前記第二制限手段を駆動し、前記第二制限手段を加速して、前記スリット幅を変調し、
駆動手段が、前記走査速度信号に基づいて前記第一制限手段および、前記第二制限手段の加速、および前記遅延を決定するリソグラフィ装置。
【請求項15】
前記被変調属性が、パターン形成ビームの有効パワーを含む、請求項14に記載のリソグラフィ装置。
【請求項16】
前記被変調属性が、前記放射線手段に付随する光源の有効パワーを含む、請求項14に記載のリソグラフィ装置。
【請求項17】
前記変調器が、前記放射線手段に伴う前記照明システムの光源の繰返し率を変調する、請求項14に記載のリソグラフィ装置。
【請求項18】
前記変調する手段が、パターンを形成したビームを減衰させる可変減衰器を駆動するように構成される、請求項14に記載のリソグラフィ装置。
【請求項19】
前記変調手段が、前記走査速度にほぼ比例して、パターン形成したビームの単位時間当たりの総露光エネルギを変調するように構成される、請求項14に記載のリソグラフィ装置。
【請求項20】
前記変調する手段がさらに、減速または加速中に前記基板の前記目標部分へのパターン形
成ビームの投影を開始するように構成される、請求項19に記載のリソグラフィ装置。
【請求項21】
リソグラフィ装置であって、
放射線のビームを供給するように構成された照明システムと、
パターニングデバイスを支持するように構成された支持構造とを有し、前記パターニングデバイスがビームの断面にパターンを与え、さらに、
基板を保持するように構成された基板ホルダと、
パターン形成したビームを前記基板の目標部分に投影するように構成された投影システムと、
パターン形成したビームと前記基板とを相互に対して移動するように構成された走査機構と、
走査速度信号に基づいてパターン形成ビームの属性を変調するように構成された変調器とを有し、前記走査速度信号が、前記基板に対するパターン形成ビームの走査速度を示し、さらに、
第一制限要素と、
第一制限要素と自身との間にスリットが形成されるように、第一制限要素に対して配置された第二制限要素とを有し、前記スリットが、パターンを形成したビームに対応するように開口を画定する幅を有し、さらに、
第一および第二制限要素を駆動する駆動手段とを有し、
変調器が、第一制限要素を加速し、遅延の後に第二制限要素を加速するように駆動機構に指示することによって、スリット幅を変調し、第一および第二制限要素の加速および遅延は、走査速度信号に基づき、
変調器が、走査速度信号に基づいて、照明システムに付随する光源の輝度も変調するリソグラフィ装置。
【請求項22】
リソグラフィ装置であって、
放射線のビームを供給するように構成された照明システムと、
パターニングデバイスを支持するように構成された支持構造とを有し、前記パターニングデバイスがビームの断面にパターンを与え、さらに、
基板を保持するように構成された基板ホルダと、
パターン形成したビームを前記基板の目標部分に投影するように構成された投影システムと、
パターン形成したビームと前記基板とを相互に対して移動するように構成された走査機構と、
走査速度信号に基づいてパターン形成ビームの属性を変調するように構成された変調器とを有し、前記走査速度信号が、前記基板に対するパターン形成ビームの走査速度を示し、さらに、
第一制限要素と、
第一制限要素と自身との間にスリットが形成されるように、第一制限要素に対して配置された第二制限要素とを有し、前記スリットが、パターンを形成したビームに対応するように開口を画定する幅を有し、さらに、
第一および第二制限要素を駆動する駆動手段とを有し、
変調器が、第一制限要素を加速し、遅延の後に第二制限要素を加速するように駆動機構に指示することによって、スリット幅を変調し、第一および第二制限要素の加速および遅延は、走査速度信号に基づき、
変調器が、走査速度信号に基づいて、照明システムに付随する光源の繰返し率も変調するリソグラフィ装置。」

の記載を、

「【請求項1】
リソグラフィ装置であって、
放射線のビームを供給するように構成された照明システムと、
パターニングデバイスを支持するように構成された支持構造とを有し、前記パターニングデバイスがビームの断面にパターンを与え、さらに、
基板を保持するように構成された基板ホルダと、
パターン形成したビームを前記基板の目標部分に投影するように構成された投影システムと、
パターン形成したビームと前記基板とを相互に対して移動するように構成された走査機構と、
走査速度信号に基づいてパターン形成ビームの属性を変調するように構成された変調器とを有し、前記走査速度信号が、前記基板に対するパターン形成ビームの走査速度を示し、
前記変調器が、パルス当たりのビームのエネルギーを制御するとともに前記投影システムと前記照明システムとの少なくとも一方のスリットの幅を変調して、パターン形成したビームの幅を変調するように構成され、
さらに、
第一制限要素と、
第二制限要素と、
前記第一および第二制限要素を駆動するように構成された駆動機構とを有し、
前記スリットが、前記第一制限要素と第二制限要素との間に形成され、
前記駆動機構が前記第一制限要素を駆動し、前記第一制限要素を加速して、前記スリット幅を変調し、遅延後に、前記第一制限要素の加速とほぼ同様の方法で前記第二制限要素を駆動し、前記第二制限要素を加速して、前記スリット幅を変調し、
駆動機構が、前記走査速度信号に基づいて前記第一制限要素の加速、前記第二制限要素、および前記遅延を決定するリソグラフィ装置。
【請求項2】
前記被変調属性が、パターン形成ビームの有効パワーを含む、請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項3】
前記被変調属性が、前記照明システムに付随する光源の有効パワーを含む、請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項4】
前記変調器が、前記照明システムに伴う光源の繰返し率を変調する、請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項5】
前記変調器が、パターン形成したビームを減衰する可変減衰器を駆動するように構成される、請求項1に記載のリソグラフィ装置。
【請求項6】
前記変調器が、走査速度にほぼ比例して、パターン形成したビームの単位時間当たりの総露光エネルギを変調するように構成される、請求項5に記載のリソグラフィ装置。
【請求項7】
前記変調器がさらに、減速または加速中に前記基板の前記目標部分へのパターン形成ビームの投影を開始するように構成される、請求項6に記載のリソグラフィ装置。
【請求項8】
デバイス製造方法であって、
基板を設けることと、
放射線のビームを設けることと、
前記放射線ビームの断面にパターンを与えることと、
パターンを形成した放射線のビームを前記基板の目標部分に投影することと、
パターン形成したビームと前記基板を相互に対して移動することと、
前記基板に対するパターン形成ビームの走査速度に基づいて、パターン形成ビームの属性を変調することとを含み、
さらに、
第一制限要素と第二制限要素との間にスリットを形成することと、
パルス当たりのビームのエネルギーを制御するとともに投影システムと照明システムとの少なくとも一方のスリットの幅を変調して、パターン形成したビームの幅を変調することを含み、
前記ビームの幅を変調する際には、駆動機構が前記第一制限要素を駆動し、前記第一制限要素を加速して、前記スリット幅を変調し、遅延後に、前記第一制限要素の加速とほぼ同様の方法で前記第二制限要素を駆動し、前記第二制限要素を加速して、前記スリット幅を変調し、駆動機構が、前記走査速度信号に基づいて前記第一制限要素の加速、前記第二制限要素、および前記遅延を決定することを含むデバイス製造方法。
【請求項9】
前記被変調属性が、パターン形成ビームの有効パワーを含む、請求項8に記載のデバイス製造方法。
【請求項10】
前記被変調属性が、前記照明システムに付随する光源の有効パワーを含む、請求項8に記載のデバイス製造方法。
【請求項11】
前記被変調属性が、前記照明システムに伴う光源の繰返し率を含む、請求項8に記載のデバイス製造方法。
【請求項12】
前記被変調属性が、パターン形成ビームの減衰を含む、請求項8に記載のデバイス製造方法。
【請求項13】
前記被変調属性が、走査速度にほぼ比例した、パターン形成したビームの単位時間当たりの総露光エネルギを含む、請求項8に記載のデバイス製造方法。
【請求項14】
リソグラフィ装置で、
放射線のビームを供給する手段と、
パターニング手段を支持する手段とを有し、前記パターニング手段が投影ビームの断面にパターンを与え、さらに、
基板を保持する手段と、
パターンを形成したビームを前記基板の目標部分に投影する手段と、
パターンを形成したビームと基板とを相互に移動させる手段と、
走査速度の変動に対する感度を低下させるために、パターンを形成したビームと前記基板とが相互に対して移動するにつれて、走査速度を示す走査速度信号に基いてパターン形成ビームの属性を変調する手段とを有し、
前記変調する手段が、パルス当たりのビームのエネルギーを制御するとともに前記投影システムと前記放射線手段との少なくとも一方のスリットの幅を変調して、パターン形成したビームの幅を変調するように構成され、
さらに、
第一制限手段と、
第二制限手段と、
前記第一および第二制限手段を駆動する駆動手段とを有し、
前記スリットは、前記第一と第二制御手段との間で画成され、
前記駆動手段が前記第一制限手段を駆動し、前記第一制限手段を加速して、前記スリット幅を変調し、遅延後に、前記第一制限手段の加速とほぼ同様の方法で前記第二制限手段を駆動し、前記第二制限手段を加速して、前記スリット幅を変調し、
駆動手段が、前記走査速度信号に基づいて前記第一制限手段および、前記第二制限手段の加速、および前記遅延を決定するリソグラフィ装置。
【請求項15】
前記被変調属性が、パターン形成ビームの有効パワーを含む、請求項14に記載のリソグラフィ装置。
【請求項16】
前記被変調属性が、前記放射線手段に付随する光源の有効パワーを含む、請求項14に記載のリソグラフィ装置。
【請求項17】
前記変調器が、前記放射線手段に伴う前記照明システムの光源の繰返し率を変調する、請求項14に記載のリソグラフィ装置。
【請求項18】
前記変調する手段が、パターンを形成したビームを減衰させる可変減衰器を駆動するように構成される、請求項14に記載のリソグラフィ装置。
【請求項19】
前記変調手段が、前記走査速度にほぼ比例して、パターン形成したビームの単位時間当たりの総露光エネルギを変調するように構成される、請求項14に記載のリソグラフィ装置。
【請求項20】
前記変調する手段がさらに、減速または加速中に前記基板の前記目標部分へのパターン形成ビームの投影を開始するように構成される、請求項19に記載のリソグラフィ装置。
【請求項21】
リソグラフィ装置であって、
放射線のビームを供給するように構成された照明システムと、
パターニングデバイスを支持するように構成された支持構造とを有し、前記パターニングデバイスがビームの断面にパターンを与え、さらに、
基板を保持するように構成された基板ホルダと、
パターン形成したビームを前記基板の目標部分に投影するように構成された投影システムと、
パターン形成したビームと前記基板とを相互に対して移動するように構成された走査機構と、
走査速度信号に基づいてパターン形成ビームの属性を変調するように構成された変調器とを有し、前記走査速度信号が、前記基板に対するパターン形成ビームの走査速度を示し、さらに、
第一制限要素と、
第一制限要素と自身との間にスリットが形成されるように、第一制限要素に対して配置された第二制限要素とを有し、前記スリットが、パターンを形成したビームに対応するように開口を画定する幅を有し、さらに、
第一および第二制限要素を駆動する駆動手段とを有し、
変調器が、第一制限要素を加速し、遅延の後に第二制限要素を加速するように駆動機構に指示することによって、スリット幅を変調し、第一および第二制限要素の加速および遅延は、走査速度信号に基づき、
変調器が、走査速度信号に基づいて、パルス当たりのビームのエネルギーを制御するとともに照明システムに付随する光源の輝度も変調するリソグラフィ装置。
【請求項22】
リソグラフィ装置であって、
放射線のビームを供給するように構成された照明システムと、
パターニングデバイスを支持するように構成された支持構造とを有し、前記パターニングデバイスがビームの断面にパターンを与え、さらに、
基板を保持するように構成された基板ホルダと、
パターン形成したビームを前記基板の目標部分に投影するように構成された投影システムと、
パターン形成したビームと前記基板とを相互に対して移動するように構成された走査機構と、
走査速度信号に基づいてパターン形成ビームの属性を変調するように構成された変調器とを有し、前記走査速度信号が、前記基板に対するパターン形成ビームの走査速度を示し、さらに、
第一制限要素と、
第一制限要素と自身との間にスリットが形成されるように、第一制限要素に対して配置された第二制限要素とを有し、前記スリットが、パターンを形成したビームに対応するように開口を画定する幅を有し、さらに、
第一および第二制限要素を駆動する駆動手段とを有し、
変調器が、第一制限要素を加速し、遅延の後に第二制限要素を加速するように駆動機構に指示することによって、スリット幅を変調し、第一および第二制限要素の加速および遅延は、走査速度信号に基づき、
変調器が、走査速度信号に基づいて、パルス当たりのビームのエネルギーを制御するとともに照明システムに付随する光源の繰返し率も変調するリソグラフィ装置。」

と補正するものである。

2 本件補正の適否の検討
(1)目的要件についての検討
本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下単に「特許法という。)第17条の2第4項に規定する要件を満たすか否かを検討する。
本件補正は、本件補正前の請求項1?7,21?22の「変調器」について、「変調器」が「パルス当たりのビームのエネルギーを制御する」ものでもあると限定し、本件補正前の請求項8?13の「ビーム」を「変調する」態様について、「パルス当たりのビームのエネルギーを制御する」という態様でも「ビーム」を「変調する」と限定し、本件補正前の請求項14?20の「変調する手段」について、「変調する手段」が「パルス当たりのビームのエネルギーを制御する」ものでもあると限定する補正であるから、本件補正の補正の目的は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合する。

(2)独立特許要件についての検討
上記(1)で検討したとおり、本件補正のうち本件補正前の請求項1を本件補正後の請求項1とする補正の目的は特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」であるから、本件補正が特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否か、すなわち、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かを検討する。

ア 本件補正発明の認定
本件補正後の請求項1には、「駆動機構が、前記走査速度信号に基づいて・・・、前記第二制限要素、・・・を決定する」ことが記載されているが、本件補正後の請求項1に「前記第一制限要素の加速とほぼ同様の方法で前記第二制限要素を駆動し、前記第二制限要素を加速」すると記載されていること、本件補正後の請求項1に「前記第一制限要素の加速」と記載されていること、及び、本件出願の明細書(以下図面を含めて「本件明細書等」という。)に「第一および第二制限要素の加速または速度」(段落【0062】)と記載されていることに照らし、本件補正後の請求項1の「駆動機構が、前記走査速度信号に基づいて・・・、前記第二制限要素、・・・を決定する」ことは、「駆動機構が、前記走査速度信号に基づいて・・・、前記第二制限要素の加速、・・・を決定する」の誤記と認める。
すると、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載に照らし、次のとおりのものと認める。

「リソグラフィ装置であって、
放射線のビームを供給するように構成された照明システムと、
パターニングデバイスを支持するように構成された支持構造とを有し、前記パターニングデバイスがビームの断面にパターンを与え、さらに、
基板を保持するように構成された基板ホルダと、
パターン形成したビームを前記基板の目標部分に投影するように構成された投影システムと、
パターン形成したビームと前記基板とを相互に対して移動するように構成された走査機構と、
走査速度信号に基づいてパターン形成ビームの属性を変調するように構成された変調器とを有し、前記走査速度信号が、前記基板に対するパターン形成ビームの走査速度を示し、
前記変調器が、パルス当たりのビームのエネルギーを制御するとともに前記投影システムと前記照明システムとの少なくとも一方のスリットの幅を変調して、パターン形成したビームの幅を変調するように構成され、
さらに、
第一制限要素と、
第二制限要素と、
前記第一および第二制限要素を駆動するように構成された駆動機構とを有し、
前記スリットが、前記第一制限要素と第二制限要素との間に形成され、
前記駆動機構が前記第一制限要素を駆動し、前記第一制限要素を加速して、前記スリット幅を変調し、遅延後に、前記第一制限要素の加速とほぼ同様の方法で前記第二制限要素を駆動し、前記第二制限要素を加速して、前記スリット幅を変調し、
駆動機構が、前記走査速度信号に基づいて前記第一制限要素の加速、前記第二制限要素の加速、および前記遅延を決定するリソグラフィ装置。」

イ 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶理由に引用され、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平7-135158号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の(ア)?(エ)の記載が図面とともにある。

(ア)「【請求項2】 露光光で原板と基板を走査することにより前記原板のパターンを介して前記基板を露光する装置において、前記走査の加速時/または減速時に前記原板のパターンを介して前記基板を露光する露光手段を有し、前記露光手段が、前記加速時及び/または減速時の前記基板に対する露光量がほぼ一定になるよう前記走査の速度に応じて前記露光光の強度を変える強度変調手段を有することを特徴とする走査型露光装置。」

(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は走査型露光装置及び該走査型露光装置を用いるデバイス製造方法に関し、特にIC、LSI等の半導体チップ、液晶素子、磁気ヘッド及びCCD(撮像素子)等のデバイスを製造するための走査型露光装置及び該走査型露光装置を用いる各種デバイスの製造方法に関する。」

(ウ)「【0002】
【従来の技術】図6は従来の半導体デバイス製造用の走査型露光装置を示しており、この装置は、スリット状露光光71によりレチクル10上を照明し、投影レンズ系15によりレチクル10の回路パターン70をウエハ14上に縮小投影し、レチクル10及びウエハ14を、各々露光光71と投影レンズ系15に対し、投影レンス系15の縮小倍率と同じ速度比で図示されている様に各々逆方向に走査することにより、レチクル10全面のパターンをウエハ14上の領域72に転写する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この露光装置は、主に露光の均一性を確保するためにレチクル10とウエハ14の各々が一定速度に到達してから露光を開始する。
【0004】この様子をレチクル10側を例にし、図7を用いて以下に説明する。
【0005】図7から解る様に、パターン70上を完全にスリット状露光光71が走査するためには、パターン70の幅Lにスリット状の露光光71の幅l1を加えた距離だけ走査すればよい。
【0006】しかし、この露光装置では、走査速度が一定になってから露光を開始するようになっていたため、加速及び減速のための余計なストロークl2,l3を必要とし、従って露光に余計な時間を費やしていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は露光時間が短い走査型露光装置と該走査型露光装置を用いるデバイス製造方法を提供することにある。」

(エ)「【0012】
【実施例】図1は本発明の一実施例であるデバイス製造用走査型露光装置の概略図を示しており、図1において、1は露光光を発生する水銀灯ランプ、2は水銀灯ランプ1からの光を集光する楕円ミラー、3はコンデンサレンズ、4はコンデンサレンズ3により集光された光を長方形に整形する光学系、5は回転方向に透過率が連続的に変化しているNDフィルター回転板、6はNDフィルター回転板5を回転させるモータ、7は光路を90°曲げる為の平面ミラー、8はレチクル面の照度を検出するホトセンサー、9はコンデンサレンズ、10はレチクル、11はレチクル10を保持しているレチクルステージ、12はレチクルステージ11を図示してある方向にスキャン駆動をさせるリニアモータ、13はレチクルステージ11に固定されているバーミラー、14はミラー13にレーザ光を当ててレチクルステージ11の速度を検出するレーザ干渉計、15はレチクル10上のデバイスパターンをウエハ16上に縮小投影するための投影レンズ系、16はウエハ、17はウエハ16を保持しているウエハチャック、18はウエハチャック17を保持しているウエハステージ、19はウエハステージ18を図示してある方向にスキャン駆動をさせるリニアモータ、20はウエハステージ18に固定されているバーミラー、21はミラー20にレーザ光を当ててウエハステージ18の速度を検出するレーザ干渉計、30はレチクルステージ11と、ウエハステージ18の制御を行なうためのCPU、31はCPU30により実行されるプログラムコードを記憶しているROM、32はCPU30がデータの書き込み、読み出しに使用しているRAM,33はCPU30から野(当審注:「野」は「の」の誤記と認める。)レチクルステージ11のスキャン速度指令値を保持するためのメモリー34はメモリー33からのデジタルデータをアナログデータに変換するADコンバータ、35はADコンバータ34からのアナログ値をリニアモータ12を駆動するために増幅するドライバー、36はCPU30からのウエハステージ18のスキャン速度指令値を保持するためのメモリー、37はメモリー36からのデジタルデータをアナログデータに変換するADコンバータ、38はADコンバータ37からのアナログ値をリニアモータ19を駆動するために増幅するドライバー、39はレチクルステージ11側のレーザ干渉計14から出力されるスキャン速度に比例したパルス列を積分カウントして位置情報にする為のカウンタ、40はウエハステージ18側のレーザ干渉計21から出力されるスキャン速度に比例したパルス列を積分カウントして位置情報にする為のカウンタ、41はレチクル面照度を検出するホトセンサー8からの光電流信号を電圧信号に変換する為の電流電圧変換器、42は電流電圧変換器41の電圧出力信号をデジタルデータに変換するADコンバータ、44はCPU30からのNDフィルター回転板5の位置(角度)指令値を保持するためのメモリー、45はメモリー44からのデジタルデータである位置指令値をアナログデータに変換するDAコンバータ、46はDAコンバータ45からのアナログデータである位置指令値を受け取り、その位置にNDフィルター回転板を駆動するドライバ、47はCPU30からの水銀灯ランプへの投入電力指令値を保持するためのメモリー、48はメモリー47からのデジタルデータである水銀灯ランプへの投入電力指令値をアナログデータに変換するDAコンバータ、49はDAコンバータ48からのアナログデータである投入電力指令値を受け取り、水銀灯ランプ1をドライブする点灯装置電源である。
【0013】本実施例の露光装置は、レチクルステージ11とウエハステージ18の位置が各々、レーザ干渉計14、21からの各々速度に比例したパルス信号を位置カウンタ39、40で積算カウントすることによりリアルタイムに計測可能なようになっている。走査露光時には、CPU30はROM31に予め書き込まれているプログラムにより、レチクル10とウエハ16が予め決められた位置関係を保ちつつ投影レンズ系15の倍率と同一の速度比で互いに逆方向に駆動される。
【0014】又、本露光装置では、走査露光中のレチクル面の照度をセンサ8により検出可能になっており、レチクル10とウエハ16のスキャンスピードが一定速度の領域においては、常にレチクル面の照度が一定になる様に、CPU30がROM31に予め書き込まれているプログラムにより、水銀灯1に対する投入電力を、点灯装置電源49への投入電力指令値を制御することにより制御する様にしている。
【0015】露光装置で特徴的なことは、回転方向に透過率が連続的に変化しているようなNDフィルター回転板5を照明系内に持っていることであり、このNDフィルター回転板5は、レチクルステージ11、ウエハステージ18のスキャン速度指令値を保持するためのメモリー33、36に書き込まれるスキャン速度指令値に比例したレチクル面の照度を達成する為、CPU30からレチクルステージ11、ウエハステージ18の位置に依存したスキャン速度指令値がメモリー33、36に書き込まれるのに同期して、CPU30からNDフィルター回転板5の位置指令値がメモリー44に書き込まれ、制御される。この位置指令値はDAコンバータ45によりアナログデータに変換されて、NDフィルター回転板5を駆動するドライバ46に入力され、ドライバ46は、NDフィルター回転板5を、回転可能に支持しているモータ6により指令位置に駆動し、走査における加速時及び/又は減速時にもウエハ16に対する露光量がほぼ一定になるようにしている。
【0016】露光装置では、まず走査露光の前に、NDフィルター回転5(当審注:「NDフィルター回転5」は「NDフィルター回転板5」の誤記と認める。)を回転させて、透過率ほぼ100%の完全透光状態にし、センサ8でレチクル面の照度を検出し、照度が所定の値になるように水銀灯ランプ1に対する投入電力を制御する。
【0017】次に、レチクル10上のアライメントマークと、ウエハ16上の複数のチップ上にあるアライメントマークの相対位置を走査露光時と同様の走査動作を実行しながら、不図示のアライメントマーク検出系にて検出する。この動作により、レチクル10のパターンとウエハ16上の各チップとの位置関係がわかり、レチクルステージ11、ウエハステージ18の走査露光時の相対位置をどの様に制御すべきかが決まる。
【0018】上記動作の後、レチクルステージ11、ウエハステージ18は上記動作により決めた相対位置関係を保ちつつ、スキャン走査露光動作に入る。この際、従来露光装置では、図7に示す様な加速ストローク12が必要であったものが、本発明のスキャンタイプの半導体露光装置では、レチクル11のパターン70の直前から走査露光を開始する。露光を開始する直前は、NDフィルター回転板5が完全遮光の状態になっており、露光がパターン70に領域にかかると、その時のレチクル11側のスキャンスピードに比例したレチクル面照度が達成される様に、NDフィルター回転板5を制御する。走査露光の間、特に、加速時間、減速時間の間、レチクル面照度を常時センサー8により検出しており、この検出されたレチクル面照度が目標とするレチクル面照度と一致しない場合には、NDフィルター回転板5のさらなる補正駆動を行なう。このレチクル面照度の制御は減速時にも加速時と同様に行なわれ、1チップの走査露光が完了する。さらに、この様な動作がウエハ16上の全てのチップについて行なわれ、1枚のウエハの処理が完了することになる。
【0019】本実施例では、レチクル面の照度を制御する為に、露光光の強度を変調する手段としてNDフィルター回転多5(当審注:「NDフィルター回転多5」は「NDフィルター回転板5」の誤記と認める。)を用いていたが、これ以外に図2に示すような光軸に対する角度を変化させることにより透過率が連続的に可変な干渉フィルター70や図3に示すような光軸に対して開口部の大きさが連続的に可変な絞り、又、上記レチクル面照度を制御する機構が露光量制御のためのシャター機能を併用する様な構成も実施可能である。」

原査定の拒絶理由に引用され、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平7-57985号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の(オ)?(ク)の記載が図面とともにある。

(オ)「【請求項1】光束を射出する照明光学系と、該照明光学系中に配置され、前記光束の原板に対する照明領域を設定する照明領域設定手段と、前記光束の照射中に前記照明領域と前記原板とを相対移動する駆動手段とを備え、前記原板の像を、前記原板と同期して移動する感光基板上に転写する走査型露光装置において、
前記駆動手段による前記相対移動の加減速中に前記照明領域設定手段を駆動して前記照明領域を変更する照明領域変更手段を備え、
前記加減速中に、前記原板の像を前記感光基板上に転写することを特徴とする走査型露光装置。
【請求項2】前記照明領域変更手段による変更量を前記駆動手段による駆動量に応じて制御する変更量設定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の走査型露光装置。」

(カ)「【0002】
【産業上の利用分野】本発明は走査型露光装置に関し、例えば大型液晶表示素子を製造するものに適用して好適なものである。
【0003】
【従来の技術】従来、この種の走査型露光装置として図7に示すような構造のものが使用されている。この走査型露光装置1は超高圧水銀ランプ等を光源2とするもので、光源2から射出された露光光を楕円鏡3によつて集光し、その後、集光された露光光をダイクロイツクミラー4によつて反射して波長選択フイルタ5に導くようになされている。波長選択フイルタ5は露光に必要な波長の光のみを取り出すようになされ、透過した光をフライアイインテグレータ6によつて均一な照度分布をもつ光束に変換している。
【0004】この光束はスリツト形状の開口を有するブラインド7によつてスリツト状に整形され、開口を通過したスリツト状の光束のみが反射ミラー8を介してコンデンサレンズ9の方向に反射されるようになされている。コンデンサレンズ9はこのスリツト状の光束をレチクル10上に結像し、レチクル上のパターン像を投影レンズ11を介してガラスプレート12上に結像するようになされている。この際、ガラスプレート12上に結像されるのはスリツト状のパターン像であり、レチクル10上に形成されているレチクルパターンの一部の像である。そこで走査型露光装置1はレチクル10を保持するレチクルステージ13とガラスプレート12を保持するプレートステージ14を同期をとつてスリツト状の光束に対して走査させ、レチクル10上に形成されているレチクルパターンの全てをガラスプレート12上に転写するようになされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところでこの走査型露光装置1は、レチクル10及びガラスプレート12が静止状態から加速されて等速運動に移つた後(同期制御状態に移つた後)の期間を露光に用いている。すなわち一定速度で移動しているレチクル10とガラスプレート12がスリツト状の照明領域の下を通過するようにレチクルステージ13及びプレートステージ14を制御していた。そしてレチクル10の全領域が照明領域の下部を通過してレチクルパターンの全てがガラスプレート12へ転写された後、レチクルステージ13及びプレートステージ14を一定速度から減速して静止させていた。
【0006】このように静止状態から一定速度に達するまでの加速期間と一定速度から静止状態まで減速するまでの減速期間とは従来露光に使用されておらず、露光に要する全時間にとつて無駄な時間となつている。従つて作業効率が悪くスループツトが低い問題があつた。またレチクルステージ13及びプレートステージ14が照明領域を通過するのに要する距離に加えて加減速に要する距離を制御ストロークに加えて確保する必要があるためステージの移動ストロークが長くなる問題があつた。
【0007】本発明は以上の点を考慮してなされたもので、従来に比してスループツトが高く、かつステージが必要な移動ストロークの短い走査型露光装置を提案しようとするものである。」

(キ)「【0008】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するため本発明においては、光束を射出する照明光学系2?6、8?10と、該照明光学系中に配置され、光束の原板10に対する照明領域ARを設定する照明領域設定手段21と、光束の照射中に照明領域ARと原板13とを相対移動する駆動手段23とを備え、原板10の像を、原板10と同期して移動する感光基板12上に転写する走査型露光装置において、駆動手段23による相対移動の加減速中に照明領域設定手段21を駆動して照明領域ARを変更する照明領域変更手段22を備え、加減速中に、原板10の像を感光基板12上に転写するようにする。
【0009】
【作用】原板10と感光基板12を同期させて加減速している期間に照明領域ARを設定する照明領域設定手段21を駆動して照明領域ARの大きさを変更することにより、感光基板12に転写される原板10の像の露光量を加減速中も感光基板12の位置によらず同じに設定することができる。これにより原板10と感光基板12が等速移動する期間の前後の期間である加減速期間も露光に使用することができ、露光に要する時間を全体として短縮することができる。」

(ク)「【0010】
【実施例】以下図面について、本発明の一実施例を詳述する。
【0011】図7との対応部分に同一符号を付して示す図1において、20は全体として走査型露光装置を示し、ブラインド21の開口の大きさをレチクルステージ13及びプレートステージ14と同期させて可動し得るようにしたことを除いて同様の構成を有している。これにより走査型露光装置20は、従来使用されていなかつた加速期間と減速期間を露光期間として使用できるようになされている。この例の場合、光源2、楕円鏡3、ダイクイツクミラー4、波長選択フイルタ5、フライアイインテグレータ6、反射ミラー8、コンデンサレンズ9、投影レンズ10は全体として正立等倍の光学系を形成している。
【0012】ブラインド21はブラインド制御部22によつて駆動制御されるようになされている。ここでブラインド制御部22は位置計測用デイジタルマイクロメータ、モータ及び駆動機構の他、駆動回路及びマイクロコンピユータでなる制御回路によつて構成されている。このブラインド制御部22によつてブラインド21の開口幅は0?全開幅(この実施例の場合、走査方向に対して10〔mm〕)の範囲で可変される。この開口を透過した光束によつて照明される領域が照明領域ARとなる。
【0013】レチクルステージ13はレチクルステージ計測制御部23によつて駆動制御されるようになされている。ここでレチクルステージ計測制御部23は位置計測手段を位置計測用レーザ干渉計とすることを除いてブラインド制御部22と同様の構成でなる。またプレートステージ14はプレートステージ計測制御部24によつて駆動制御されるようになされている。このプレートステージ計測制御部24はレチクルステージ計測制御部23と同様の構成でなる。
【0014】これら3つの制御部、すなわちブラインド制御部22、レチクルステージ計測制御部23及びプレートステージ計測制御部24は、例えばマイクロコンピユータからなる制御回路によつて構成される同期制御部25によつてそれぞれ同期駆動されるようになされている。
【0015】以上の構成において、走査型露光装置20による露光動作について説明する。ここで走査型露光装置20は、静止状態にあるレチクルステージ13及びプレートステージ14の加速開始と同時に露光を開始し、この際、ブラインド21をレチクルステージ13およびプレートステージ14の加速度に対応した一定加速度で走査方向に駆動して開口を開く。この様子を図2?図4を用いて説明する。
【0016】ここで図2はレチクルステージ13及びプレートステージ14と同時に加速を開始したブラインド21が全開幅に達して停止し、その後レチクル10およびプレート12の各点が露光されるまでの期間における位置関係を模式的に表したものである。また図3はそのときのレチクル10およびガラスプレート12上の点P_(0) の速度および位置と、ブラインド21上の点b_(0) の速度および位置を表すと共に、レチクル10およびガラスプレート12上の点P_(0) ?P_(3) における各部の露光時間等を表したものである。
【0017】ただし露光条件は、1回の露光動作によつて露光されるガラスプレート12の各点の露光量が場所によらず照射時間が 0.1〔秒〕となるように制御されている。また初期状態におけるブラインド21、レチクル10及びガラスプレート12はそれぞれ図2(A)に示す位置関係に配置されている。すなわちブラインド21は開口を閉じた状態であり、レチクル13及びガラスプレート14の一端が閉状態にある開口直下に一致する位置に配置されているものとする。
【0018】まず同期制御部25がブラインド制御部22、レチクルステージ計測制御部23及びプレートステージ計測制御部24に対し、同時に露光開始命令を与える。ただしブラインド21、レチクル10およびガラスプレート12の同期ずれのため点P_(0) が露光されない危険を防ぐため、誤差が生じない範囲でレチクルステージ13およびプレートステージ14の駆動開始タイミングをブラインド21に対して若干遅らせる必要がある。
【0019】この命令を受けたブラインド制御部22は図3(C)に示すように、ブラインド21をレチクル10及びガラスプレート12と同じ一定加速度で加速し、開口を閉じた状態から走査方向に開くように移動させる。ここで図3(C)はブラインド21のうち可動ブラインドの開口側端点b_(0) の移動速度を時間軸を横軸にとつて表したものである。図からも分かるように、この例の場合、端点b_(0) は1000〔mm/s^(2)〕の加速度によつて加速される。このように駆動されるブラインド21の端点b_(0) の初期位置からの距離を縦軸にとつて表すと図3(D)に示すような軌跡を描く。
【0020】またレチクルステージ計測制御部23及びプレートステージ計測制御部24は図3に示すように、レチクル10及びガラスプレート12をそれぞれ同じく1000〔mm/s^(2)〕によつて同期制御状態を保ちながら加速し、照明領域AR中を通過させる。このときレチクル10及びガラスプレート12上の点P_(0) における初期位置からの距離を縦軸にとつて表すと、図3(B)に示すような軌跡を描く。
【0021】このように露光が開始されてから 0.1〔秒〕が経過したとき、ブラインド21、レチクル10及びガラスプレート12は最高速 100〔mm/s 〕に達する。このときブラインドの開口幅は全開幅の丁度半分にあたる 5〔mm〕である(図2(B))。この時点以後、レチクル10及びガラスプレート12は一定速度のまま走行し、一定速度による同期制御状態に移行する。これに対してブラインド21は0.1〔秒〕を経過した後は加速期間( 0〔秒〕? 0.1〔秒〕)と逆の加速特性-1000〔mm/s^(2)〕で減速される。そして露光開始から 0.2〔秒〕経過したとき静止する。この時点でブラインド21の開口幅は全開幅になる(図2(C))。
【0022】ところでこれらの期間における各領域の露光量はレチクル10及びガラスプレート12の位置によらず一定である(図3(E)?図3(H))。ここで図3(E)の斜線部分はレチクル10及びガラスプレート12の右端の点P_(0) が照明光に照射され、露光されている時間を示している。この図からも分かるように右端の点P_(0) はレチクル10とガラスプレート12が 0.1〔秒〕まではブラインド21と同じ加速度で移動するため照明光が照射されているのに対し、その後はブラインド21が減速し始めるため点P_(0) がブラインド21の開口部分を追い越すことになり照明光が当たらなくなることが分かる。従つて照明光によつて照明されている時間は 0.1〔秒〕である。
【0023】また図3(F)、図3(G)、図3(H)の斜線部分はレチクル10及びガラスプレート12の右端からそれぞれ 2〔mm〕、 3〔mm〕及び 6〔mm〕内側に位置する点P1、P2及びP3の各点における領域が照明光によつて照射されている時間を表している。各点の露光は各点が固定側プラインドの端部に達した時点により開始され、各点が可動側ブラインドの端部を追い越したとき終了するが、図からも分かるようにいずれにしても 0.1〔秒〕後に露光光が当たらなくなる。また各点P1、P2及びP3間の全ての点についても露光量は同じになることが確かめられている。
【0024】因にガラスプレート12の右端からの距離をx〔mm〕とすると、各点が露光を開始される時刻t_(0) 〔秒〕は、次式
【数1】

及び
【数2】

によつて求めることができる。従つてこの例の場合、各点P0、P1、P2及びP3の照明開始時刻は2式より 0〔秒〕、 0.063〔秒〕、 0.077〔秒〕及び0.11〔秒〕であることが分かる。
【0025】このようにブラインド21の開口幅が全開幅(10〔mm〕)に達した後はブラインド21の開口幅は全開幅に維持される。このときレチクル10及びガラスプレート12は既に 100〔mm/s 〕の等速移動に移つているため、走査型露光装置20はレチクル10及びガラスプレート12の右端から5〔mm〕以上内側に位置するレチクル10及びガラスプレート12の各点は5〔mm〕以内の各点の時と同様いずれも照明領域ARを 0.1〔秒〕かけて通過し、この間、露光光の照射を受けることになる。
【0026】やがて等速移動を続けるレチクル13及びガラスプレート14の左端から15〔mm〕の点が照明領域の端部に達すると、走査型露光装置20はレチクル10及びガラスプレート12の等速移動を維持する一方、ブラインド21を閉じる方向(等速移動方向に対して反対の方向)に加速し始める(図4(C))。ここで図4(A)?図4(D)はそれぞれ図3(A)?図3(D)に対応し、図4(A)はレチクル10及びガラスプレート12上の点b_(0) の移動速度を示し、図4(B)は点b_(0) の通過位置を表している。同じく図4(C)はブラインド21上の点P_(0) の移動速度を示し、図4(D)は点P_(0) の通過位置を表している。
【0027】その後、レチクル10及びガラスプレート12の左端から 5〔mm〕の点が照明領域の端部に達すると、走査型露光装置20はレチクル10及びガラスプレート12の等速移動を中止して一定加速度による減速制御に移行する(図4(A))。一方、先の期間の加速によつて最高速(- 100〔mm/s 〕)に達したブラインド21は、この時点を境に一定加速度による減速を開始する。この際の加速度の大きさはブラインド21、レチクル10及びガラスプレート12について同じである。そしてレチクル10及びガラスプレート12の左端が照明領域ARの端部に達して静止したとき、ブラインド21はその開口が閉じられる。
【0028】このようにブラインド21が閉じ始めた後に、照明領域ARを通過するレチクル10及びガラスプレート12の各点と露光量との関係は、図3(E)?図3(H)の時間軸を逆方向に見た関係と同じと考えることができ、各点の露光量はそれぞれ 0.1〔秒〕になる。このように加速期間及び減速期間についてもガラスプレート12を等速移動中における露光量と同じ露光量によつて露光することができる。
【0029】以上の構成によれば、ブラインド21をレチクル10及びガラスプレート12に同期させて開閉駆動させ、露光中にブラインド21の開口の大きさが変わるように制御したことにより、レチクル10及びガラスプレート12の等速移動中だけでなく加減速中も含めてレチクル10上のパターンをガラスプレート12上に転写させることができる。これにより1回の露光動作に要する時間を従来に比して短縮することができ、スループツトを一段と向上させることができる。またこれによりレチクル10及びガラスプレート12のストロークに要する距離も一段と短縮することができる。」

ウ 引用例1に記載された発明の認定
引用例1の上記記載事項(ア)?(エ)から、引用例1には次の発明が記載されていると認めることができる。

「露光光を発生する水銀灯ランプ、前記水銀灯ランプからの光を集光する楕円ミラー、コンデンサレンズ、前記コンデンサレンズにより集光された光を長方形に整形する光学系、前記露光光の強度を変える強度変調手段、レチクル、前記レチクルを保持しているレチクルステージ、ウエハ、前記ウエハを保持しているウエハステージ、前記レチクル上のデバイスパターンを前記ウエハ上に縮小投影するための投影レンズ系、前記レチクルステージをスキャン駆動をさせるリニアモータ、前記ウエハステージをスキャン駆動をさせるリニアモータを備え、前記露光光で前記レチクルと前記ウエハを走査することにより前記レチクルのデバイスパターンを介して前記ウエハを露光する走査型露光装置において、
前記レチクルと前記ウエハのスキャンスピードが一定速度の領域においては、常にレチクル面の照度が一定になり、
前記レチクル及び前記ウエハの走査における加速時及び減速時にも前記ウエハに対する露光量がほぼ一定になるように、前記レチクル及び前記ウエハの走査速度に応じて前記強度変調手段によって前記露光光の強度を変える、
走査型露光装置。」(以下「引用発明1」という。)

エ 本件補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
(ア)引用発明1の「走査型露光装置」は、本件補正発明の「リソグラフィ装置」に相当する。

(イ)本件補正発明の「放射線のビームを供給するように構成された照明システム」について、本件明細書等には、「照明システムは、放射線の投影ビームの誘導、成形、あるいは制御を行う屈折、反射、および反射屈折光学構成要素などの様々なタイプの光学構成要素も含むことができ」る(段落【0033】)、「放射線・・・の投影ビームPBを供給するように構成された照明システムSO、ILを有し、この特定の例では、放射線システムは放射線ソースSOも有」する(段落【0037】)、「照明装置ILは放射線ソースSOから放射線のビームを受け取る。ソースとリソグラフィ装置とは、例えばソースがプラズマ放電ソースである場合に、別個の存在でよい。このような場合、ソースはリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射線ビームは、例えば適切な集光ミラーおよび/またはスペクトル純度フィルタなどを有する放射線集光器の助けにより、ソースSOから照明装置ILへと渡される。他の場合、例えばソースが水銀ランプの場合は、ソースが装置の一体部品でもよい。ソースSOおよび照明装置ILは、放射線システムと呼ぶことができる。」(段落【0039】)と記載されているから、本件補正発明の「放射線のビームを供給するように構成された照明システム」は、「放射線ソースSO」及び前記「放射線ソースSO」から放射線のビームを受け取り放射線の投影ビームの誘導、成形、あるいは制御を行う光学構成要素からなるものであると認めることができる。
したがって、引用発明1の「露光光を発生する水銀灯ランプ」、「前記水銀灯ランプからの光を集光する楕円ミラー」、「コンデンサレンズ」及び「前記コンデンサレンズにより集光された光を長方形に整形する光学系」は、本件補正発明の「放射線のビームを供給するように構成された照明システム」に相当する。

(ウ)引用発明1の「レチクル」、「前記レチクルを保持しているレチクルステージ」は、それぞれ、本件補正発明の「パターニングデバイス」、「パターニングデバイスを支持するように構成された支持構造」に相当する。
また、引用発明1では「レチクル上のデバイスパターンを前記ウエハ上に縮小投影する」から、引用発明1の「レチクル」が「露光光」の断面に「デバイスパターン」を与えていることは明らかである。したがって、引用発明1の「レチクル」が「露光光」の断面に「デバイスパターン」を与えることは、本件補正発明の「前記パターニングデバイスがビームの断面にパターンを与え」ることに相当する。

(エ)引用発明1の「ウエハ」、「前記ウエハを保持しているウエハステージ」は、それぞれ、本件補正発明の「基板」、「基板を保持するように構成された基板ホルダ」に相当する。

(オ)引用発明1の「前記レチクル上のデバイスパターンを前記ウエハ上に縮小投影するための投影レンズ系」は、本件補正発明の「パターン形成したビームを前記基板の目標部分に投影するように構成された投影システム」に相当する。

(カ)引用発明1の「走査型露光装置」では、「露光光を発生する水銀灯ランプ」を走査駆動する手段を備えず、「前記レチクルステージをスキャン駆動をさせるリニアモータ、前記ウエハステージをスキャン駆動をさせるリニアモータを備え、前記露光光で前記レチクルと前記ウエハを走査することにより前記レチクルのデバイスパターンを介して前記ウエハを露光する」から、引用発明1の「走査型露光装置」では、「レチクル上のデバイスパターン」が与えられた「露光光」の位置は固定されており、「前記ウエハステージをスキャン駆動をさせるリニアモータ」によって、「レチクル上のデバイスパターン」が与えられた「露光光で」「前記ウエハを走査」しているということができる。
したがって、引用発明1の「レチクル上のデバイスパターン」が与えられた「露光光で」「前記ウエハを走査する」「前記ウエハステージをスキャン駆動をさせるリニアモータ」は、本件補正発明の「パターン形成したビームと前記基板とを相互に対して移動するように構成された走査機構」に相当する。

(キ)引用発明1の「走査型露光装置」では、「露光光を発生する水銀灯ランプ」を走査駆動する手段を備えず、「前記レチクルステージをスキャン駆動をさせるリニアモータ、前記ウエハステージをスキャン駆動をさせるリニアモータを備え、前記露光光で前記レチクルと前記ウエハを走査することにより前記レチクルのデバイスパターンを介して前記ウエハを露光する」から、引用発明1の「走査型露光装置」では、「露光光」の位置は固定されており、引用発明1の「ウエハの走査速度」は、「ウエハ」に対する「露光光」の走査速度であるということができる。
また、引用発明1の「走査型露光装置」では、「前記レチクルと前記ウエハのスキャンスピードが一定速度の領域においては、常にレチクル面の照度が一定になり」、「前記レチクル及び前記ウエハの走査における加速時及び減速時にも前記ウエハに対する露光量がほぼ一定になるように、前記レチクル及び前記ウエハの走査速度に応じて前記強度変調手段によって前記露光光の強度を変える」から、引用発明1の「強度変調手段」は「ウエハの走査速度」を示す信号に基づいて「露光光の強度を変え」ていることは明らかである。
さらに、本件補正発明の「パターン形成ビームの属性を変調するように構成された変調器」について、本件明細書等には、「図2のリソグラフィ装置は、さらにパターン形成されたビームの属性またはパラメータを変調する変調器MODを有する。図1(当審注:「図1」は「図2」の誤記と認める。)で示した実施形態では、変調器MODは、投影ビームの輝度またはそのビーム幅のような照明システムILの属性またはパラメータを変調する。」(段落【0047】)と記載されるとともに図2が示されているから、本件補正発明の「パターン形成ビームの属性を変調するように構成された変調器」には、「パターニングデバイス」の光源側(上流側)に配置されて「パターン形成ビームの属性を変調するように構成された変調器」も含まれると認めることができる。
したがって、引用発明1の「前記レチクル及び前記ウエハの走査における加速時及び減速時にも前記ウエハに対する露光量がほぼ一定になるように、前記レチクル及び前記ウエハの走査速度に応じて」「露光光の強度を変える」「強度変調手段」と、本件補正発明の「前記基板に対するパターン形成ビームの走査速度を示」す「走査速度信号に基づいてパターン形成ビームの属性を変調するように構成された変調器」であって、「前記変調器が、パルス当たりのビームのエネルギーを制御するとともに前記投影システムと前記照明システムとの少なくとも一方のスリットの幅を変調して、パターン形成したビームの幅を変調するように構成され」ることとは、「前記基板に対するパターン形成ビームの走査速度を示」す「走査速度信号に基づいてパターン形成ビームの属性を変調するように構成された変調器」であって、「前記変調器が、ビームのエネルギーを制御するように構成され」る点で一致する。

(ク)以上から、本件補正発明と引用発明1とは、

「リソグラフィ装置であって、
放射線のビームを供給するように構成された照明システムと、
パターニングデバイスを支持するように構成された支持構造とを有し、前記パターニングデバイスがビームの断面にパターンを与え、さらに、
基板を保持するように構成された基板ホルダと、
パターン形成したビームを前記基板の目標部分に投影するように構成された投影システムと、
パターン形成したビームと前記基板とを相互に対して移動するように構成された走査機構と、
走査速度信号に基づいてパターン形成ビームの属性を変調するように構成された変調器とを有し、前記走査速度信号が、前記基板に対するパターン形成ビームの走査速度を示し、
前記変調器が、ビームのエネルギーを制御するように構成されるリソグラフィ装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点1〉
本件補正発明の「放射線のビーム」は「パルス」状であり、「変調器」が「パルス当たりのビームのエネルギーを制御する」ものであるのに対し、引用発明1の「露光光」及び「光強度変調手段」にはそのような限定がなされていない点。

〈相違点2〉
本件補正発明の「変調器」は「前記投影システムと前記照明システムとの少なくとも一方のスリットの幅を変調して、パターン形成したビームの幅を変調するように構成され」、「さらに」、「第一制限要素と」、「第二制限要素と」、「前記第一および第二制限要素を駆動するように構成された駆動機構とを有し」、「前記スリットが、前記第一制限要素と第二制限要素との間に形成され」、「前記駆動機構が前記第一制限要素を駆動し、前記第一制限要素を加速して、前記スリット幅を変調し、遅延後に、前記第一制限要素の加速とほぼ同様の方法で前記第二制限要素を駆動し、前記第二制限要素を加速して、前記スリット幅を変調し」、「駆動機構が、前記走査速度信号に基づいて前記第一制限要素の加速、前記第二制限要素の加速、および前記遅延を決定する」ものでもあるのに対し、引用発明1の「強度変調手段」にはこのような限定がない点。

オ 相違点についての判断
(ア)相違点1について
走査型露光装置の技術分野において、光源としてパルス状の光源を用いることは、本件出願の優先日当時において当業者に周知の技術的事項である(例えば、原査定の拒絶理由に引用された特開平9-115825号公報(請求項3、段落【0013】、【0029】等)、特開2003-133216号公報(請求項3、段落【0013】、【0026】等)を参照。)。
したがって、引用発明1の「露光光を発生する」手段として、上記周知のパルス状の光源を採用し、それに伴って、前記パルス状の光源から発生する「露光光」を引用発明1の「露光光の強度を変える強度変調手段」に通過させることより、パルス当たりの「露光光」のエネルギーを制御することは、当業者にとって容易に想到し得る。
したがって、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(イ)相違点2について
a 引用例2の上記記載事項(オ)?(ク)及び図面に照らし、引用例2には、光束を射出する照明光学系と、該照明光学系中に配置され、前記光束のレチクルに対する照明領域を設定する2枚の遮光部材からなるブラインドと、前記光束の照射中に前記照明領域と前記レチクル及び感光基板とを相対移動する駆動手段とを備え、前記レチクルの像を前記感光基板上に転写する走査型露光装置において、前記駆動手段による前記相対移動の加減速中に前記2枚の遮光部材からなるブラインドのうち可動ブラインドを駆動して前記ブラインドの開口幅を変更して前記照明領域を変更する照明領域変更手段を備え、前記レチクル及び前記感光基板の加速期間及び減速期間についても前記レチクル及び前記感光基板の等速移動中における露光量と同じ露光量で前記感光基板を露光することができるように、前記照明領域変更手段による前記ブラインドの開口幅の変更量を前記駆動手段による駆動量に応じて制御する変更量設定手段を備え、これにより前記レチクル及び前記感光基板が等速移動する期間の前後の期間である前記レチクル及び前記感光基板の加減速期間も露光に使用することができる走査型露光装置が記載されている(なお、引用例2の上記記載事項(オ)?(ク)及び図面並びに本件出願の優先日当時の技術常識から、「ブラインド」が2枚の遮光部材からなることは明らかである。)。また、引用例2には、前記レチクル及び前記感光基板の加速期間及び減速期間についても前記レチクル及び前記感光基板の等速移動中における露光量と同じ露光量で前記感光基板を露光することができるように、前記照明領域変更手段による前記ブラインドの開口幅の変更量を前記駆動手段による駆動量に応じて制御するに当たり、前記レチクル及び前記感光基板が、停止状態から、加速移動、等速移動、減速移動、停止の順に運動するのに合わせて、前記ブラインドの開口が閉じた状態から、前記2枚の遮光部材からなるブラインドのうち可動ブラインドを走査方向に加速して前記ブラインドの開口幅を大きくし、前記ブラインドの開口幅が全開幅に達した後は前記ブラインドの開口幅を全開幅に維持し、その後、前記ブラインドの開口幅を大きくしたときの時間軸を逆方向から見た関係と同じとなるように前記可動ブラインドを反対の方向に加速して前記ブラインドの開口幅を小さくし、前記ブラインドの開口を閉じることも記載されている(引用例2の上記記載事項(ク)の段落【0015】?【0028】及び図2?4を参照。)。

b そして、引用発明1と引用例2に記載された発明とは、走査型露光装置の技術分野において、従来、レチクル及び前記レチクルのパターンが転写される基板の走査速度が一定になってから露光を開始していたものを、前記レチクル及び前記基板の走査速度が一定になる前後の加速時及び減速時にも露光できるように、前記レチクル及び前記基板の加速時、前記レチクル及び前記基板の走査速度が一定の時及び前記レチクル及び前記基板の減速時において前記基板への露光量が一定となるように前記露光量を制御する点で共通するから、引用発明1が解決しようとする課題と引用例2に記載された発明が解決しようとする課題は、走査型露光装置において、前記レチクル及び前記基板の走査速度が一定になる前後の加速時及び減速時にも露光できるようにする点で同じであるということができる。
また、一般に、同じ技術課題を解決するために2通りの解決手段が存在する場合に、2つの解決手段を併用することは、本件出願の優先日当時において当業者に周知の技術的事項である。加えて、露光装置の分野では、露光光の光路中に光量を変化させる部材を2つ配置して、前記光量を変化させる2つの部材を併用して前記露光光の光量を調整することは、本件出願の優先日当時において当業者に周知の技術的事項であり(例えば、特開平10-83953号公報(段落【0047】?【0049】、【0138】等を参照。「減光板23」及び「光量絞り10」が、露光光の光量を変化させる2つの部材に相当する。)、特開平10-229038号公報(段落【0027】等を参照。「2組のNDフィルタ」が、露光光の光量を変化させる2つの部材に相当する。)を参照。)、このように光量を変化させる2つの部材を併用することによって露光光の光量を調整すると透過率がより細かく調整できることも、本件出願の優先日当時において当業者に周知の技術的事項である(例えば、特開平10-229038号公報(段落【0027】等)を参照。)。
すると、引用発明1と引用例2に記載された発明との間で共通する前記課題を解決するべく、前記レチクル及び前記基板の加速時、前記レチクル及び前記基板の走査速度が一定の時及び前記レチクル及び前記基板の減速時において前記基板への露光量が一定となるように前記露光量を制御するとともに、前記露光量の制御をより細かく行うために、引用発明1の「レチクル」の前または後ろに引用例2に記載された発明の2枚の遮光部材からなる「ブラインド」を設け、引用発明1の「強度変調手段」と引用例2に記載された発明の2枚の遮光部材からなる「ブラインド」とを併用して「露光光の強度を変える」ようにすることは、当業者にとって容易に想到し得る。

b また、2枚の遮光部材からなるブラインドにより、スリット状の開口が閉じた状態から、スリット状の開口を全開幅とし、その後、再び、スリット状の開口が閉じた状態とする際、引用例2に記載された発明のように、前記2枚の遮光部材からなる「ブラインド」のうち「可動ブラインド」のみ一方向に動かし、その後、前記「可動ブラインド」を逆方向に動かすようにするか、前記2枚の遮光部材からなるブラインドの一方の遮光部材を一方向に動かした後、前記2枚の遮光部材からなるブラインドの他方の遮光部材を前記一方向と同方向に動かすようにするかは、当業者が適宜なし得る設計的事項であるうえ、2枚の遮光部材からなるブラインドにおいて後者のような遮光部材の動かし方は、本件出願の優先日当時において当業者に周知の技術的事項である(例えば、特開平4-196513号公報(公報第4頁左上欄第19行?左下欄第5行、第6頁右上欄第5行?第7頁左上欄第17行、第1,2,4図)を参照。)。
したがって、引用例2に記載された発明の2枚の遮光部材からなる「ブラインド」により、スリット状の開口が閉じた状態から、スリット状の開口を全開幅とし、その後、再び、スリット状の開口が閉じた状態とする際、一方の遮光部材を一方向に動かした後、他方の遮光部材を前記一方向と同方向に動かすようにすることは、当業者にとって容易に想到し得る。

c 以上検討したとおりであるから、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

カ 本件補正発明の独立特許要件の判断
(ア)以上のとおり、引用発明1に上記相違点1?2に係る本件補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(イ)また、本件補正発明の効果も、引用例1,2に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。
なお、請求人は、平成20年3月24日付けの意見書において、本件補正発明では、「スリット幅を変調する際、第一の制限要素を加速してスリット幅を変調し、遅延後に、ほぼ同様の方法で第二制限要素を加速してスリット幅を変調するため、“一方の制限要素のみを駆動してスリット幅を変調する場合”と比較して精度良くスリット幅を調整等することが可能とな」るのに対し、引用例2に記載された発明は、「あくまで“一方を固定側ブラインドとし、他方を可動側ブラインドとしてスリット幅を調整する”ものであります。かかる構成では、本願発明1の如く精度良くスリット幅を調整等することは極めて困難にな」ると主張している。しかし、スリット幅の調整の精度に関する請求人の上記主張は、実験結果等に裏付けられた主張ではなく、また、本件出願の優先日当時の技術常識であるとも認めることができないから、請求人の上記主張は採用できない。
また、請求人は、平成20年7月24日付けの手続補正により補正された同年7月10日付けの審判請求書の請求の理由において、本件補正発明によれば、「単にスリット幅を変調してビームの幅を変調する構成と比較して、基板の目標部分に対する露光量を精度良く、かつ、広い範囲でコントロールすることが可能となる(例えば、段落番号0022)。」「ここで、スリット幅を変調してビームの幅を変調する構成においては、スリット幅(開口)を調整するために各制限要素を移動させる必要があるが(例えば、段落番号0060?0062)、各制限要素の走査速度や移動距離などを正確にコントロールするのは難しく、また、各制限要素の駆動機構の能力によっては、制限要素の走査速度を上限値や下限値を小さな値に設定する必要があり、走査速度の変化を補償する期間(図3bに示す期間Tscan2参照)を短く設定せざるを得ない場合も生じる。」「一方、本願発明によれば、ビームの幅を変調するだけでなく、パルス当たりのビームエネルギーを制御することで、たとえ制限要素の走査速度の上限値や下限値が小さな値に設定されたとしても、パターン形成したビームの単位時間当たりの総露光量を正確かつ広い範囲で調整することができ、上記走査速度の変化を補償する期間を長く設定することが可能となる。」と主張している。しかし、本件明細書等の段落【0022】には、「単にスリット幅を変調してビームの幅を変調する構成と比較して、基板の目標部分に対する露光量を精度良く、かつ、広い範囲でコントロールすることが可能となる」ことは記載されていないから、請求人の上記主張のうち、本件明細書等の段落【0022】を例示しながら、「単にスリット幅を変調してビームの幅を変調する構成と比較して、基板の目標部分に対する露光量を精度良く、かつ、広い範囲でコントロールすることが可能となる」と主張する点は採用できない。また、請求人が主張する上記効果は、引用例1,2に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度の効果である。

(ウ)したがって、本件補正発明は引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3)むすび
以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1 本件発明の認定
本件補正が却下されたから、平成20年3月24日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面に基づいて審理する。
上記第2の2(2)アに記載した理由と同様の理由により、平成20年3月24日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の「駆動機構が、前記走査速度信号に基づいて・・・、前記第二制限要素、・・・を決定する」ことは、「駆動機構が、前記走査速度信号に基づいて・・・、前記第二制限要素の加速、・・・を決定する」の誤記と認める。
したがって、本件出願の請求項1に係る発明は、平成20年3月24日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1の記載に照らし、次のとおりのものと認める。

「リソグラフィ装置であって、
放射線のビームを供給するように構成された照明システムと、
パターニングデバイスを支持するように構成された支持構造とを有し、前記パターニングデバイスがビームの断面にパターンを与え、さらに、
基板を保持するように構成された基板ホルダと、
パターン形成したビームを前記基板の目標部分に投影するように構成された投影システムと、
パターン形成したビームと前記基板とを相互に対して移動するように構成された走査機構と、
走査速度信号に基づいてパターン形成ビームの属性を変調するように構成された変調器とを有し、前記走査速度信号が、前記基板に対するパターン形成ビームの走査速度を示し、
前記変調器が、前記投影システムと前記照明システムとの少なくとも一方のスリットの幅を変調して、パターン形成したビームの幅を変調するように構成され、
さらに、
第一制限要素と、
第二制限要素と、
前記第一および第二制限要素を駆動するように構成された駆動機構とを有し、
前記スリットが、前記第一制限要素と第二制限要素との間に形成され、
前記駆動機構が前記第一制限要素を駆動し、前記第一制限要素を加速して、前記スリット幅を変調し、遅延後に、前記第一制限要素の加速とほぼ同様の方法で前記第二制限要素を駆動し、前記第二制限要素を加速して、前記スリット幅を変調し、
駆動機構が、前記走査速度信号に基づいて前記第一制限要素の加速、前記第二制限要素の加速、および前記遅延を決定するリソグラフィ装置。」(以下「本件発明」という。)

2 引用刊行物の記載事項及び引用例1記載の発明の認定
原査定の拒絶理由に引用され、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である引用例1?2には、上記第2の2(2)イに摘記したとおりの事項が記載されており、引用例1に記載された発明は、上記第2の2(2)ウに記載したとおりである。

3 対比・判断
本件発明は、本件補正発明の発明特定事項から、上記第2の2(1)で述べた限定事項を省いたものである。
そして、本件発明の発明特定事項をすべて含み、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の2(2)に記載したとおり、引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、上記第2の2(2)で示した理由と同様の理由により、引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本件発明は引用例1,2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本件発明が特許を受けることができない以上、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-11 
結審通知日 2010-03-12 
審決日 2010-03-24 
出願番号 特願2005-33618(P2005-33618)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 村田 尚英
日夏 貴史
発明の名称 変動する走査速度に対する感度を低下させる被変調リソグラフィビーム  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大賀 眞司  

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