• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  F04B
審判 全部無効 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正  F04B
審判 全部無効 4号2号請求項の限定的減縮  F04B
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F04B
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  F04B
管理番号 1221648
審判番号 無効2009-800173  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-08-10 
確定日 2010-07-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2786214号発明「スクリュー圧縮機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)特許第2786214号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、昭和63年12月12日に出願されたものであって、平成10年5月29日にその発明について特許権の設定登録が特許第2786214号としてなされたものである。
(2)これに対し、審判請求人は、平成21年8月10日に甲第1号証から甲第16号証を提出し、特許第2786214号発明の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明についての特許を無効とすることを求める無効審判を請求した。
(3)被請求人は、平成21年10月30日付け訂正請求書にて訂正(以下、「本件訂正」という。)を求めている。
(4)本件訂正の内容は、本件特許の明細書を訂正請求書に添付された全文訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。本件訂正に係る請求項1ないし2に係る発明を、以下、「本件訂正発明1」及び「本件訂正発明2」といい、これらを一括して「本件訂正発明」という。
(5)被請求人は、訂正請求書に添付した全文訂正明細書は、公報編纂時の誤植の修正を含むものであるため、公報編纂時の誤植の修正を除いたうえで、先行技術文献の表示(特開昭54-176109号)について明らかな誤記を修正した全文訂正明細書(以下、「全文訂正明細書」という。)を平成22年4月1日付けの上申書により提出している。
(6)これに対し、審判請求人は平成21年12月4日付けの第1回弁駁書を提出している。
(7)審判請求人は、第1回口頭審理陳述要領書と第2回口頭審理陳述要領書を平成22年3月1日付けで提出し、被請求人は、口頭審理陳述要領書を同日付けで提出している。
(8)審判請求人は、第1回口頭審理調書の「無効の理由について」に記載されているように、「訂正の違法性、要旨変更、及び、自然法則の利用性については、主張を取り下げ、記載不備及び進歩性については争う」ものである。
(9)被請求人は、平成22年4月1日付けで上申書(2)を提出し、第1回口頭審理調書の「6.主張の最重要点」の被請求人の欄の「甲第2、4、5、12ないし14」は「甲第3、4、5、12ないし14」の誤記であると主張しているので、以下の検討においては、この点を踏まえて検討を行う。
(10)審判請求人は平成22年4月1日付けで上申書を提出しており、これに対して、被請求人は、平成22年4月19日付けで上申書を提出している。さらに、被請求人は、平成22年4月23日付けで上申書を提出し、審判請求人が平成22年4月1日付けで上申書の第21頁の「請求項2について」で主張する進歩性に係る「請求項2に係る無効理由を取り下げる」との主張に同意しない旨の主張を行っていることから、以下の検討では、進歩性の検討においては、請求項1及び2について検討することとする。
(11)なお、審判請求人は、第1回弁駁書において甲第17号証及び甲第18号証を提出し、第1回口頭審理陳述要領書において甲第19号証及び甲第20号証を提出し、さらに、被請求人は、第2回口頭審理陳述要領書において甲第21号証及び参考資料を2通提出している。第1回口頭審理調書の「1.書類等の確認」に記載されているように、甲第17号証ないし甲第21号証は参考資料1ないし5として扱い、第2回口頭審理陳述要領書において提出された2通の参考資料は参考資料6及び7とする。
(12)審判請求人は、平成22年4月1日付けの上申書の第28頁から同書第35頁の「職権無効理由通知について」において、無効理由通知の発行を再考することを求めているが、被請求人が平成22年4月19日付けで提出した上申書において同意しないとの主張がなされていることから、以降の検討においては、審判請求書に記載された無効の理由について検討を行うこととし、参考資料7(第2回口頭審理陳述要領書において提出された参考資料2)は、平成22年4月1日付けの上申書の第13頁の「ウ」に記載されたとおりに、『甲第14号証に記載された「故障木」に関する技術常識の参酌に供するためのもの』として以下の検討において使用することとする。

2.訂正の可否に対する判断
(1)訂正の内容
被請求人が求めた訂正の内容は、下記(ア)ないし(ウ)のとおり訂正することを求めるものである。

(ア) 訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1における、
トラブルシューティング時には記憶手段に記憶した故障データと操作手順フローとが表示された表示手段の出力に基づいて入力手段から対話形式で「操作信号を入力する」ことを特徴とするスクリュー圧縮機
を、
「制御装置は、」トラブルシューティング時には記憶手段に記憶した故障データと操作手順「の」フローとが表示された表示手段の出力に基づいて入力手段から対話形式で「入力された操作信号により制御を進める」ことを特徴とするスクリュー圧縮機
と訂正する。
(なお、操作手順「の」フローは訂正請求書には記載がないが、明らかな誤記であり参考のために追加)

(イ) 訂正事項b
明細書の[課題を解決するための手段]の
トラブルシューティング時には前記記憶手段に記憶した故障データと操作手順フローとが表示された表示手段の出力に基づいて前記入力手段から対話形式で「操作信号を入力す」ることにより達成される
を、
「前記制御装置は、」トラブルシューティング時には前記記憶手段に記憶した故障データと操作手順フローとが表示された表示手段の出力に基づいて前記入力手段から対話形式で「入力された操作信号により制御を進め」ることにより達成される
と訂正する。

(ウ) 訂正事項c
【発明の詳細な説明】の
特開昭54-176109(全文訂正明細書の第1頁第27行)、
モートル時動盤16(同書の第3頁第13行から同頁第14行)、
以上無く(同書の第4頁第2行)、
操作表示 17(同書の第4頁第15行)
を、それぞれ、
「実」開昭54-176109、
モートル「始」動盤16、
「異常」無く、
操作表示「部」 17
に訂正する。

(2)訂正の適否の当審の判断
(ア) 訂正事項aについて
上記訂正事項aは、請求項1に記載の「制御装置」について、限定事項を加えるものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項aは平成22年4月1日付けで被請求人が提出した上申書の第4頁第21行から第5頁第23行に示す本件出願に係る特許公報の第2頁右欄第41行から第44行、第3頁右欄第1行から同欄第5行、同欄第13行から同欄第16行、同欄第22行から同欄第26行、同欄第26行から同欄第29行、及び第2図に基づくものであるので、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(イ) 訂正事項bについて
上記訂正事項bは上記訂正事項aの「制御装置」についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるための訂正であり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、この訂正は、上記訂正事項a、と同様に、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(ウ) 訂正事項cについて
上記訂正事項cは、訂正前のそれぞれの記載では意味が理解できず、また、別の箇所で適切に使用されている用語であることが明確なものである(例えば、「モートル始動盤16」、及び、「操作表示部 17」は全文訂正明細書の第3頁第6行に「モートル始動盤16と、操作表示部 17」と記載されている。)ので、明らかな誤記の訂正を目的とするものといえる。
なお、特開昭54-176109を「実」開昭54-176109に訂正する訂正事項は、訂正請求書には記載がないが、第1回口頭審理調書の「先行技術文献の表示(特開昭54-176109号)について」に「先行技術として記載された「特開昭54-176109号」は「実開昭54-176109号公報」の誤記である」とあるように、明らかな誤記の訂正に相当するといえるものである。
そして、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項、第4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。

3.本件訂正発明
本件訂正発明1及び2は、本件訂正に係る全文訂正明細書、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものと認める。

【請求項1】
「圧縮室内に収納されたスクリューをモータで回転駆動して圧縮空気を発生するスクリュー圧縮機において、
エアフィルタの目詰まりを検出するエアフィルタ検出手段と、
吐出空気温度を検出する吐出温度検出手段と、
吐出空気圧力を検出する吐出圧力検出手段と、
オイルフィルタの目詰まりを検出するオイルフィルタ検出手段と、
モータ電流を検出する電流検出手段と、
このスクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する記憶装置と、
圧縮機の運転を制御する制御装置と、
この制御装置に操作信号を入力する入力手段と、
この制御装置の出力を表示する表示手段とを備え、
前記記憶装置は圧縮機の操作手順フローを記憶しており、
前記制御装置は、トラブルシューティング時には前記記憶手段に記憶した故障データと操作手順のフローとが表示された表示手段の出力に基づいて前記入力手段から対話形式で入力された操作信号により制御を進めることを特徴とするスクリュー圧縮機。」

【請求項2】
「前記表示手段は、他のモニタ手段に音声信号とビデオ信号を出力する外部出力端子を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスクリュー圧縮機。」

4.審判請求人の主張
審判請求人は、『1.手続の経緯」で示すように「訂正の違法性、要旨変更、及び、自然法則の利用性については、主張を取り下げ、記載不備及び進歩性については争う」ものである』から、以下の記載不備に係る無効理由1及び進歩性に係る無効理由3を主張していることになる。

無効理由1
本件明細書の特許請求の範囲の記載は、その請求項1及び2に係る発明が発明の詳細な説明に記載された発明でなく、また、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものでないから、昭和62年法律第27号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前特許法」という。)第36条第4項第1号または同項第2号に規定する要件を満たしていない。また、本件明細書の記載は、その発明の詳細な説明に、当該請求項1及び2に係る発明について、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載していないから、同条第3項に規定する要件も満たしていないので、特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきものである。

無効理由3
本件の請求項1及び2に係る発明は、甲第3号証ないし甲第14号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである。

審判請求人が提出している証拠方法
甲第1号証:特許庁編「工業所有権法逐条解説第8版」より抜粋
甲第2号証:特開平2-157486号公報(本件特許出願に係る公開特許公報)
甲第3号証:特開昭57-93695号公報
甲第4号証:特開昭56-104170号公報
甲第5号証:特開昭63-239595号公報
甲第6号証:特開昭59-138791号公報
甲第7号証:特開昭63-17327号公報
甲第8号証:特開昭63-270518号公報
甲第9号証:株式会社神戸製鋼所「パッケージ形オイルフリースクリュコンプレッサ」カタログ
甲第10号証:特開昭50-135451号公報
甲第11号証:特開昭59-85493号公報
甲第12号証:特開昭62-171009号公報
甲第13号証:特開昭63-300306号公報
甲第14号証:特開昭63-57885号公報
甲第15号証:本件特許出願に係る平成9年11月14日付提出の手続補正書
甲第16号証:本件特許出願に係る平成9年11月14日付提出の意見書

参考資料1:マグローヒル科学技術用語大辞典編集委員会「マグローヒル科学技術用語大辞典(第1版) 第1005頁及び第1422頁(甲第17号証として提出)
参考資料2:財団法人日本規格協会発行「JIS 工業用語大辞典(第5版) 第1627頁」(甲第18号証として提出)
参考資料3:証明書 (カタログの発行年月を立証するための資料) (甲第19号証として提出)
参考資料4:神戸製鋼技報第35巻第1号 (カタログの発行年月を立証するための資料) (甲第20号証として提出)
参考資料5:電子情報通信ハンドブック第2分冊 (用語の意味を立証するための資料) (甲第21号証として提出)
参考資料6:東京高裁平成13年(行ケ)第332号同庁15年4月8日判決 (記載不備に関する判例を説明するための資料) (第2回口頭審理陳述要領書に参考資料1として提出)
参考資料7:第4回ヒューマン・インターフェース・シンポジウム(1988年11月4日、5日開催)論文集抄録(「故障木」についての技術常識を説明するための資料) (第2回口頭審理陳述要領書に参考資料2として提出)

5.被請求人の主張
審判請求人の主張する無効理由1及び3には根拠がなく、本件特許権は有効に存続するべきものである。

6.無効理由1についての検討
(1)本件訂正発明1が根拠とする全文訂正明細書の箇所について
審判請求人が主張する無効理由1に係る記載不備は、本件訂正発明1のみを対象とし、本件訂正発明2は対象とはしていないことから、以下の検討では、本件訂正発明1のみについて検討する(第1回口頭審理調書の「4.無効理由1について」を参照)。そこで、まず、本件訂正発明1が根拠とする全文訂正明細書の箇所を列挙すると以下のようになるといえる。(なお、本件訂正発明1の分節は審判請求書の第3頁に沿ったものであり、「→」で示される全文訂正明細書の箇所は、被請求人が平成22年4月1日付けで提出した上申書に添付された全文訂正明細書の対応箇所を示すものである。さらに、本件訂正発明1と全文訂正明細書とで対応する用語にアンダーラインを付している。)

A.「圧縮室内に収納されたスクリューをモータで回転駆動して圧縮空気を発生するスクリュー圧縮機において」
→「本発明は、スクリュー圧縮機に係り」(第1頁第19行)
→「この圧縮機の圧縮室1内に収納されたスクリューは、ベルト2を介しモートル3にて回転駆動される・・・スクリューの回転により圧縮された空気は、・・・。」(第2頁第24行から同頁第29行)
全文訂正明細書の「モートル」が、本件訂正発明1の「モータ」に相当することは技術常識にすぎない。
B.「エアフィルタの目詰まりを検出するエアフィルタ検出手段と」
→「センサl0aが圧縮室1の空気吸入側に取り付けられたエアフィルタ4の目詰まりを検出」(第2頁第35行から第36行)
全文訂正明細書の「センサ」が、本件訂正発明1の「検出手段」に相当することは技術常識にすぎない。
C.「吐出空気温度を検出する吐出温度検出手段と」
→「センサ10bが圧縮室1から吐出される圧縮空気の温度を検出」(第2頁第36行から第3頁第1行。なお、全文訂正明細書の「音」は、本件に係る公開公報である甲第2号証の第2頁左下欄第9行の「圧縮空気の温度」なる記載からみて、「温度」の誤記であることは明らかである。)
D.「吐出空気圧力を検出する吐出圧力検出手段と」
→「センサ10cが油分離器6から吐出される圧縮空気の圧力を検出」(第3頁第1行)
E.「オイルフィルタの目詰まりを検出するオイルフィルタ検出手段と」
→「センサ10dがオイルフィルタ5の目詰まりを検出」(第3頁第1行から同頁第2行)
F.「モータ電流を検出する電流検出手段と」
→「センサ10eをモートル3の電流を検出」(第3頁第2行)
G.「このスクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する記憶装置と」
→「本発明はスクリュー圧縮機に係り」(第1頁第19行)
→「制御装置11は各センサ10a?10eからのデータにより故障が発生したと判断した場合には、モートル始動盤16に対し停止信号を送出してモートル3を緊急停止させると共に、操作者に対し故障発生を知らせるべく図示しない警報装置を作動させ、更に、故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する。」(第4頁第3行から同頁第7行)
「故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する」なる記載からみて、全文訂正明細書の「停止させた理由」が、本件訂正発明1の「故障原因」に相当することは技術常識にすぎない。

H.「圧縮機の運転を制御する制御装置と」
→「圧縮機の運転中は、・・・、各センナ10a?10eからのデータに応じて圧縮機の運転を自動制御する。」(第4頁第1行から同頁第3行)
→「制御装置11は各センサ10a?10eからのデータにより故障が発生したと判断した場合には、モートル始動盤16に対し停止信号を送出してモートル8を緊急停止させると共に、操作者に対し故障発生を知らせるべく図示しない警報装置を作動させ、更に、故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する。」(第4頁第3行から同頁第7行)
I.「この制御装置に操作信号を入力する入力手段と」
→「入力回路13は、操作部18からの操作入力信号と各センサ10a?10eからの検出信号を取り込んでこれをディジタル信号に変換して制御装置11に送出する。」(第3頁第10行から同頁第12行)
全文訂正明細書の「入力回路」が、本件訂正発明1の「入力手段」に相当することは技術常識にすぎない。
J.「この制御装置の出力を表示する表示手段とを備え」
→「CRT出力回路14からのCRT信号はCRT19に送出され、CRT19の表示画面には制御装置11の制御信号に応じた各種データが表示される。」(第3頁第14行から同頁第15行)
全文訂正明細書の「CRT」が、本件訂正発明1の「表示手段」に相当することは技術常識にすぎない。
K.「前記記憶装置は圧縮機の操作手順フローを記憶しており」
→「記憶装置12には、取扱説明書に記載されている運転手順を操作手順のデータや、各操作の詳細説明文、グラフ、図面等のデータ、トラブルシューティングの手順データ等が、夫々対応して格納されている。」(第3頁第8行から同頁第10行)
→「故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する。」(第4頁第6行から同頁第7行)
全文訂正明細書の「圧縮機の操作手順フローチャート」が、本件訂正発明1の「操作手順フロー」に相当することは技術常識にすぎない。
L.「前記制御装置は、トラブルシューティング時には前記記憶手段に記憶した故障データと操作手順のフローとが表示された表示手段の出力に基づいて前記入力手段から対話形式で入力された操作信号により制御を進めることを特徴とするスクリュー圧縮機」
→「本発明はスクリュー圧縮機に係り」(第1頁第19行)
→「操作者は、このメニュー画面を見て、次に何をするかを、選択キースイッチ21を操作しカーソルを動かして選択し、承認キースイッチ22を押下して表示画面と制御とを次の段階に進める。ここでは、試運転を例に説明する。試運転を選択した場合、制御装置11は、CRT19に「運転前に何をすべきか」、「いままで何を実施したか」のデータを操作手順を進めるに従いその都度表示する。この表示の都度、操作者は承認キースイッチ22を押下し、対話形式で制御を進める。」(第3頁第27行から同頁第33行)
→「制御装置11は各センサ10a?10eからのデータにより故障が発生したと判断した場合には、モートル始動盤16に対し停止信号を送出してモートル8を緊急停止させると共に、操作者に対し故障発生を知らせるべく図示しない警報装置を作動させ、更に、故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する。操作者は、選択及び承認中-スイッチ21.22の操作によりトラブルシューティングの手順に入り、制御装置11との間で前述したと同様に対話形式で故障の最終的原因を追求し、対策を講じる。」(第4頁第3行から同頁第9行)
全文訂正明細書のCRT19に表示する内容は、故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートであり、本件訂正発明1の表示する内容である「故障データと操作手順のフロー」とを対応させれば、全文訂正明細書の「各センサ10a?10eからのデータ」である「故障発生時の各種データ」と「停止させた理由」が、本件訂正発明1の「故障データ」に相当することは技術常識にすぎない。
→「入力回路13は、操作部18からの操作入力信号と各センサ10a?10eからの検出信号を取り込んでこれをディジタル信号に変換して制御装置11に送出する。」(第3頁第10行から同頁第12行)

(2)審判請求書に記載された具体的な記載不備の理由
これに対し、審判請求人は、審判請求書の「(4)本件特許を無効にすべきである理由」の「[2]本件明細書が改正前特許法第36条の要件を満たしていない理由」において、請求項1に記載の「故障原因」、「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する」、「故障データ」、「対話形式で操作信号を入力する」、及び、「操作手順のフロー」について記載不備があると主張しているので、以下順に検討する。(なお、丸数字を[2]で表現している。以下、同じ。)

(3)「故障原因」及び「故障データ」について
(3-1)審判請求書での主張の概要
審判請求書の第7頁第13行から同頁第21行において、「故障原因」について、
『本件明細書では、本件請求項1において「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する記憶装置」(構成要件G)が発明特定事項として記載されているにもかかわらず、その「故障原因」について発明の詳細な説明には何ら記載がなく、また、その「故障原因」が如何なるものを意味するのかも不明である。従って、本件請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載された発明ではないから、本件明細書の記載は改正前特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また少なくとも同条第3項に規定する要件(実施可能要件)を満たさないものである。』と主張している。

また、審判請求書の第10頁第7行から同頁第23行において、「故障データ」について、
『(ア)前記の構成要件Gに付随して、構成要件Lにおける「トラブルシューティング時には前記記憶手段に記憶した故障データと…」の「故障データ」が何を意味するものかについても全く不明である。構成要件Gによれば、記憶装置が記憶するのは「データ」と「故障原因」であり、構成要件Lにいう「故障データ」が前記の「データ」及び「故障原因」のうちのいずれを意味するものであるのか、あるいはこれらとは別のものを意味するのかは、本件明細書の発明の詳細な説明を参酌しても不明である。
本件明細書には「制御装置は、CRTに『運転前に何をすべきか』、『今まで何を実施したか』のデータを操作手順を進めるに従いその都度表示する」との記載が存在するが(本件特許公報第5欄22?24行)、CRTに表示される該メッセージが「故障」に関する「データ」ではないこと(前者に至っては日常のメンテナンス事項の指示を示唆するにすぎない)も明白であり、該記載もまた「故障データ」という構成をサポートする記載ではない。
(イ) 従って、この点においても、本件明細書における特許請求の範囲の記載は改正前特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしておらず、また少なくとも同条第3項に規定する要件を満たしていない。』と主張している。

(3-2)審判請求人の具体的な主張
被請求人が提出している答弁書、訂正請求書を踏まえ、審判請求人は第1回口頭審理陳述要領書において、以下の主張を行っている。
『(3-1) 「故障原因」について
[1] 請求人の基礎的主張
本件明細書の発明の詳細な説明には、「故障原因」について何ら記載がなく、その意味すら不明であり、ましてや本件請求項1の構成要件Gのようにその「故障原因」が「記憶装置」に記憶されることを示す記載は全く存しない。
[2] 「停止させた理由」について
ア 被請求人は、本件特許公報の次の記載
「制御装置11は各センサ10a?10eからのデータにより故障が発生したと判断した場合には、モートル始動盤16に対し停止信号を送出してモートル3を緊急停止させると共に、操作者に対し故障発生を知らせるべく図示しない警報装置を作動させ、更に、故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する。」(第3頁左欄下から10行?同頁右欄第1行)
における「停止させた理由」が「故障原因」に対応すると主張するが(答弁書第9頁第10?19行)、両者の関係は発明の詳細な説明の記載を参酌しても全く不明である。その理由は下記のとおりである。
(ア) 被請求人は、「故障が発生したと判断した場合に、停止し、「停止させた理由」を読み出して表示する」ことを理由に「停止させた理由」が「故障原因」に対応すると主張するが(答弁書第9頁第17?19行)、その「停止させた理由」の具体的な内容は明細書に全く記載されていない。
(イ) 同公報第3頁右欄第1?5行の、操作者が制御装置11との間で故障の「最終的原因」(本件公報では「最終適原因」と表記)を追求する旨の記載は、「故障原因」は「停止させた理由」が記憶装置12から読み出された時点においては未だ特定できていないことを示すものであって、「停止させた理由」が「故障原因」に相当するものではなく、当該「故障原因」は最終的に操作者により特定されるものであることを示している。もし、本件請求項1にいう「故障原因」が前記の記載の「最終的原因」に相当するものではないとするならば、その「最終的原因」の特定時点よりも前の段階で当該「最終的原因」とは別の故障原因すなわち仮の故障原因が特定されることになるが、このような事項については、発明の詳細な説明に一切記載されていない。このように、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「故障原因」と「停止させた理由」との対応関係は不明であり、少なくとも「故障原因」という用語が本件明細書に十分に開示されていない事実は明白である。
(ウ) なお、「故障原因」と「停止させた理由」とが一対一で対応する等価の概念でないことは、当業者の技術常識からも明らかである。例えば、被請求人自らの出願による甲第3号証の第6図には、「故障原因」(本件における技術的意味は不明であるが一般的な故障の原因と認識され得るもの)を重故障と軽故障とに区別し、重故障の場合のみ原動機を停止させることが記載されている。この点を以ってしても、「故障原因」と「停止させた理由」との関係が一義的でないことは明らかである。停止させるまでもない故障原因を、本件特許の「故障原因」が含むか否か明らかでないし、もし含むものとすればそれが記憶装置に記憶されているものか否か全く不明である。
イ さらに、発明の詳細な説明の記載が改正前特許法第36条第3項に規定される実施可能要件を満たすと認められるためには、特許請求の範囲に記載された用語に対応する用語が単に発明の詳細な説明に記載されているというだけで不十分であることが、考慮されるべきである。発明の詳細な説明には、いわゆる当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載しなければならない(実施可能要件)。仮に、「停止させた理由」が「故障原因」に相当するものであったとしても、本件明細書において「故障原因」について当業者が容易に実施をすることができる程度に開示されていないという事実は明白である。
(3-2) 「故障データ」について
[1]「故障データ」の意味について
本件明細書には、「故障データ」という用語の意味について何ら記載されておらず、当業者の技術常識を参酌しても不明である。
[2]「故障原因」の意味について
ア 前記の「故障原因」と、「トラブルシューティング時には前記記憶手段に記憶した故障データと…」の「故障データ」との関係も全く不明である。
イ 被請求人は、「故障データ」が構成要件Gの「データ」および「故障原因」を含むものであって、本件特許明細書においては「故障発生時の各種データ」と「停止させた理由」とが該当する旨、主張する(答弁書第13頁第27行?第14頁第3行)が、この主張にも根拠がない。被請求人が指摘する本件特許公報第3頁左欄下から10行?同頁右欄1行の記載、すなわち、
「制御装置11は各センサ10a?10eからのデータにより故障が発生したと判断した場合には、…故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する。」
という記載にも「故障データ」という用語は全く触れられておらず、また、明細書に記載されているどの用語が「故障データ」に相当するのかも一義的に特定することができない。
ウ 例えば「圧力」や「沸点」のようにそれ自身の意味が確立された技術用語ならともかく、「故障データ」や「故障原因」は確立された技術用語ではないのだから、その技術的意義について何ら特定されていない本件明細書の記載が違法であるという事実は明白である。』と主張している。(第1回口頭審理陳述要領書の第5頁第7行から第8頁第6行)

(3-3)当審の判断
最初に、「故障原因」についての記載が改正前特許法第36条第3項に規定する要件を満たしているか、すなわち、発明の詳細な説明において、「故障原因」が当業者が容易に実施をすることができる程度に記載されているか否かについて検討する。発明の詳細な説明には、「故障原因」は使用されていないが、上記の「(1)G」に示したように、「故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する」なる記載からみて、全文訂正明細書の「停止させた理由」が、本件訂正発明1の「故障原因」に相当することは技術常識にすぎない。そこで、発明の詳細な説明に「停止させた理由」が当業者が容易に実施をすることができる程度に記載されているか否かを検討する。
上記の「(1)G」に示した全文訂正明細書の「制御装置11は各センサ1Oa?10eからのデータにより故障が発生したと判断した場合には、モートル始動盤16に対し停止信号を送出してモートル8を緊急停止させると共に、操作者に対し故障発生を知らせるべく図示しない警報装置を作動させ、更に、故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する。」(第4頁第3行から同頁第7行)からみて、停止させた理由は、圧縮機を停止させる前提として、故障が発生したと判断した場合であることは明らかであるので、本件訂正発明1の「故障原因」が全文訂正明細書の「停止させた理由」に相当することは明らかである。そして、そのような判断は、各センサ10a?10eからのデータにより判断されることが記載されている。なお、審判請求人が提出している甲第3号証の第2頁左下欄第8行から同欄第11行に例示されるように、「上述したスクリュー圧縮機の運転状態及び機器の良否を診断するには、圧縮空気、油圧、冷却水の状態量、即ち温度や圧力の値を使って判断する方法が基本的かつ容易な方法である。」と記載され、同じく甲第3号証の第3頁左上欄第7行から第4頁右上欄第19行及び第7図に例示されるように、判定値(「故障原因」に相当)を記憶することも技術常識であるといえることを踏まえると、上記の全文訂正明細書の第4頁第3行から同頁第7行の記載から、「故障原因」が当業者にとって容易に実施をすることができないということはできない。
なお、審判請求人は、第1回口頭審理陳述要領書の『(3-1) 「故障原因」について』の『[2] 「停止させた理由」について』において、「停止させた理由」の具体的な内容は明細書に全く記載されていない」と主張する。しかしながら、全文訂正明細書には、「制御装置11は各センサ10a?10eからのデータにより故障が発生したと判断した場合」とあるように各センサのデータにより故障を判断して停止することが明記されており、センサの値を使用して圧縮機の状態を判断することは技術常識といえることも上述のように明らかであることから、「停止させた理由」の具体的な内容は明細書に全く記載されていない」との主張を採用することができない。
同じく、『本件請求項1にいう「故障原因」が前記の記載の「最終的原因」に相当するものではないとするならば、その「最終的原因」の特定時点よりも前の段階で当該「最終的原因」とは別の故障原因すなわち仮の故障原因が特定されることになるが、このような事項については、発明の詳細な説明に一切記載されていない。』とも主張する。しかしながら、全文訂正明細書には、「制御装置11は各センサ10a?10eからのデータにより故障が発生したと判断した場合には、モートル始動盤16に対し停止信号を送出してモートル3を緊急停止させると共に、操作者に対し故障発生を知らせるべく図示しない警報装置を作動させ、更に、故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する。操作者は、選択及び承認キースイッチ21,22の操作によりトラブルシューティングの手順に入り、制御装置11との間で前述したと同様に対話形式で故障の最終的原因を追求し、対策を講じる。」(第3頁第7行から同頁第9行)とあるように、操作者は、CRT19に表示された「停止させた理由」(「故障原因」に相当)を参考にして、「故障の最終的原因を追求し、対策を講じる」のであり、「故障原因」が「最終的原因」と異なるものであることは全文訂正明細書から明らかであり、さらに、通常、監視装置で表示される故障等の表示が最終的な故障の原因及び対策と異なることは審判請求人も認めるように技術常識にすぎないことは明らかであるから、審判請求人の前記主張を採用することができない。
さらに、同じく「停止させるまでもない故障原因を、本件特許の「故障原因」が含むか否か明らかでないし、もし含むものとすればそれが記憶装置に記憶されているものか否か全く不明である。」とも主張している。しかしながら、「停止させるまでもない故障原因」の場合にどのように制御するのかは、本件訂正発明1には何ら特定されていないことであるので、審判請求人の前記主張を採用することができない。
してみると、発明の詳細な説明に「停止させた理由」がどのようなものであるのかは当業者が容易に実施することができる程度に記載されていることは明らかであることから、「故障原因」についての記載が改正前特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていないということはできない。
次に、改正前特許法第36条第4項第1号に規定する「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものである」か否かを検討する。上記の「(1)G」に示したように、「全文訂正明細書の「停止させた理由」が、本件訂正発明1の「故障原因」に相当することは技術常識にすぎない」のであり、発明の詳細な説明に「停止させた理由」がどのようなものであるのかは当業者が容易に実施することができる程度に記載されていることは明らかである。してみると、本件訂正発明1に特定された「故障原因」が発明の詳細な説明に記載したものであることは明らかであるので、「故障原因」についての記載が改正前特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないということはできない。

また、「故障データ」についての記載が改正前特許法第36条第3項に規定する要件を満たしているか、すなわち、発明の詳細な説明において、「故障データ」が当業者が容易に実施をすることができる程度に記載されているか否かについて検討する。発明の詳細な説明には、「故障データ」は使用されていないが、上記の「(1)L」に示したように、全文訂正明細書の「各センサ10a?10eからのデータ」である「故障発生時の各種データ」と「停止させた理由」が、本件訂正発明1の「故障データ」に相当することは技術常識にすぎない。そこで、発明の詳細な説明に「各センサ10a?10eからのデータ」である「故障発生時の各種データ」と「停止させた理由」が当業者が容易に実施をすることができる程度に記載されているか否かを検討する。
上記の「(1)L」に示した全文訂正明細書の「制御装置11は各センサ10a?10eからのデータにより故障が発生したと判断した場合には、モートル始動盤16に対し停止信号を送出してモートル8を緊急停止させると共に、操作者に対し故障発生を知らせるべく図示しない警報装置を作動させ、更に、故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する。操作者は、選択及び承認中-スイッチ21.22の操作によりトラブルシューティングの手順に入り、制御装置11との間で前述したと同様に対話形式で故障の最終的原因を追求し、対策を講じる。」(第4頁第3行から同頁第9行)からみて、停止させた理由とは、上述のように圧縮機を停止させる前提として、故障が発生したと判断した場合であり、また、その際に各種データを表示することは明らかであるといえる。一方、機器の運転状態を表示するために各種のセンサの値から故障の判定を行うこと、及び、各種のセンサの値を監視のために表示することは技術常識といえる程度のものであることを踏まえると、上記の全文訂正明細書の第4頁第3行から同頁第9行の記載から、「故障データ」が当業者にとって容易に実施をすることができないということはできない。
審判請求人は、「(3-2) 「故障データ」について」の「[2「「故障原因」の意味について」において、
『ア 前記の「故障原因」と、「トラブルシューティング時には前記記憶手段に記憶した故障データと…」の「故障データ」との関係も全く不明である。』と主張するが、上記のように、「停止させた理由とは、上述のように圧縮機が停止させる前提として、故障が発生したと判断した場合であり、また、その際に各種データを表示することは明らかであるといえる」のであり、その際の停止させた理由(「故障原因」が相当)に対応して各種データ(「故障データ」が相当)が表示されることを意味するのは全文訂正明細書の記載からみて明らかである。
してみると、発明の詳細な説明に「停止させた理由」を「読み出してCRT19に表示する」ことができる「各センサ10a?10eからのデータ」がどのようなものであるのかは当業者が容易に実施することができる程度に記載されていることは明らかであることから、「故障データ」についての記載が改正前特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていないということはできない。
次に、改正前特許法第36条第4項第2号に規定する「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものである」か否かを検討する。全文訂正明細書の〔作用〕には、「圧縮機の操作時や故障発生時に、メンテナンス装置の表示画面には操作情報や故障情報等が、文章やグラフィックスで表示される。これにより、操作者が一般作業者であっても、表示されたデータに従って操作すれば、熟練者と同様に圧縮機を操作することが可能となる。」と記載されており、故障発生時に、メンテナンス装置の表示画面には操作情報や故障情報等が、文章やグラフィックスで表示されることが本件訂正発明の課題であることが明記されており、これに対応して本件訂正発明1には、「停止させた理由」を「読み出してCRT19に表示する」ことができる「各センサ10a?10eからのデータ」であるところの、「記憶手段に記憶した故障データと操作手順のフローとが表示された表示手段」が特定されているものであるといえることから、「故障データ」についての記載が改正前特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしていないということはできない。
なお、上記の「(3-1)」において、審判請求人の『「故障データ」という構成をサポートする記載ではない』なる主張からみて、「故障原因」と同様に改正前特許法第36条第4項第2号ではなく改正前特許法第36条第4項第1号についての主張であると解することもできるが、発明の詳細な説明に「停止させた理由」を「読み出してCRT19に表示する」ことができる「各センサ10a?10eからのデータ」がどのようなものであるのかは当業者が容易に実施することができる程度に記載されていることは明らかである。してみると、本件訂正発明1に特定された「故障データ」が発明の詳細な説明に記載したものであることは明らかであるので、「故障データ」についての記載が改正前特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないということはできない。

したがって、「故障原因」に関し、本件明細書の記載は改正前特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとも、また同条第3項に規定する要件を満たさないともいえない。さらに、「故障データ」に関し、本件明細書における特許請求の範囲の記載は改正前特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしていないとも、また、同条第3項に規定する要件を満たしていないともいえない。

(4)「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する」について
(4-1)審判請求書での主張の概要
審判請求書の第9頁第3行から第10頁第5行において、「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する」について、
『(ア)本件請求項1には、「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する記憶装置」という要件(構成要件G)が含まれているが、この構成要件の技術的意義は、本件明細書の記載を参酌しても一義的に解釈することはできないから、本件明細書における特許請求の範囲の記載は改正前特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしておらず、また少なくとも同条第3項に規定する要件(実施可能要件)を満たさないといわなければならない。
(イ) 具体的に、前記の語句の技術的意義については、「故障が発生したときに」の修飾対象について次の3通りの解釈が成立する。
a.「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに、前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する」
b.「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと、故障原因とを記憶する。」
c.「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを、記憶する。」
(ウ) これらの解釈a?cのうちのいずれが妥当であるかは、当業者の技術常識からみても不明である。「故障が発生したときにデータを記憶する」装置と、「故障が発生したときに検出手段がデータを検出する」装置、「データと故障原因を検出」する装置とでは、発明の内容が全く異なり、本件クレームによっては当業者が特許権の及ぶ範囲を把握できないのである。また、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、当該記載においては上述のとおり「故障原因」の技術的意義すら不明であるのだから、「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する記憶装置」を一義的に解釈することは到底できない。
(エ) 従って、本件請求項1は「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項」が適正に記載されたものではなく、その結果、「特許請求の範囲の外延を明瞭に示すものではない」(甲第1号証:工業所有権法逐条解説第8版第111頁)ものとなっているから、改正前特許法第36条第4項第2号に規定された要件を満たしていない。また発明の詳細な説明の記載についても、改正前特許法第36条第3項に規定された要件を満たしていない。』と主張している。

(4-2)審判請求人の具体的な主張
被請求人が提出している答弁書、訂正請求書を踏まえ、審判請求人は第1回口頭審理陳述要領書において、以下の主張を行っている。
『(3-6)「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する」について
ア 被請求人は、本件請求項1に記載される、「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する記憶装置」という要件(構成要件G)が、「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと、故障原因とを記憶する。」ことを意味すると主張するが(答弁書第10頁第7行?第11頁第14行)、その理由は全く不明である。
イ 仮に被請求人の主張のように「故障原因」が「停止させた理由」に該当するものであったとしても、その停止させた理由については、「故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する」ことしか発明の詳細な説明に記載されていないのであるから(本件特許公報第3頁左欄下から2行?右欄第1行)、この「停止させた理由」が、a.故障発生時に記憶装置に記憶されるものであるのか、c.故障発生時に検出手段が検出するものであるのか、あるいは被請求人主張のようにb.記憶時点が全く特定されていないのかは、発明の詳細な説明の記載及び当業者の技術常識をもってしても判別することはできない。
ウ 被請求人は、b.の解釈を肯定する理由として、「本件特許発明の課題を踏まえ、トラブルシューティングを行なうに当たり故障が発生したときに検出したデータと故障原因とが必要であることを考慮すれば、自然な解釈」であることを指摘するが(答弁書第11頁第8?10行)、aやcの解釈に基づく構成であるとするとトラブルシューティングの実行が出来ないとする主張には全く根拠がなく、bの解釈のみが自然であるとの主張に根拠はない。例えば、同じ請求項1における「前記記憶装置は圧縮機の操作手順フローを記憶しており」との記載を考慮すると、aの解釈のように「停止させた理由」については故障発生時に記憶されるという解釈も十分成立し得るのであり、どれが最も自然な解釈かを特定することは不可能である。この点について被請求人は、「故障原因」は故障が発生する前から(例えば工場出荷時から)予め記憶されていると主張するが(答弁書第10頁第1?4行)、この主張は本件明細書に何ら根拠をもたない。
エ また、被請求人は解釈a及びcを否定する理由として「各検出手段が検出するのはデータであって、故障原因ではない」との主張(答弁書第10頁末行)もしているが、かかる主張も本件明細書の記載と矛盾する。もし被請求人の主張のとおり「各検出手段が検出するのはデータであって、故障原因ではない」のであるとするならば、本件特許公報第4欄21?28行に記載されるセンサ10aの検出対象である「エアフィルタ4の目詰まり」やセンサ10dの検出対象である「オイルフィルタ5の目詰まり」が如何なるデータを意味するのか全く不明であり、また、この「目詰まり」という項目が被請求人のいう「故障原因」とどう異なるのかも理解できない。』(第1回口頭審理陳述要領書第17頁第13行から第18頁第27行)

(4-3)当審の判断
最初に、「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する」についての記載が改正前特許法第36条第3項に規定する要件を満たしているか、すなわち、発明の詳細な説明において、上記の点が当業者が容易に実施をすることができる程度に記載されているか否かについて検討する。
上記の「(1)G」に示した全文訂正明細書の「制御装置11は各センサ10a?10eからのデータにより故障が発生したと判断した場合には、モートル始動盤16に対し停止信号を送出してモートル3を緊急停止させると共に、操作者に対し故障発生を知らせるべく図示しない警報装置を作動させ、更に、故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する。」(第4頁第3行から同頁第7行)と記載されていることから、記憶装置に故障発生の理由を記憶させていることは明らかであるので、「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する」ことが発明の詳細な説明に記載されているといえる。ただし、どの時点において記憶するのかは明記されていない。しかしながら、甲第3号証の第2頁右下欄第12行から同欄第14行に「この状態量の現在値と、後述するような方法によって予め作成しておいた判定値とを比較することによって故障の程度を診断する」とあるように、状態量の現在値(本件訂正発明1の「各検出手段が検出したデータ」が相当)は現在値、すなわち故障が発生した場合であり、判定値(本件訂正発明1の「故障原因」が相当)は予め作成しておいたものであることは技術常識といえる程度のものであるといえることを踏まえると、上記の全文訂正明細書の第4頁第3行から同頁第7行の記載から、「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する」が当業者にとって容易に実施をすることができないということはできない。
してみると、「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する」についての記載が改正前特許法第36条第3項に規定する要件を満たしていないということはできない。
次に、改正前特許法第36条第4項第2号に規定する「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものである」か否かを検討する。全文訂正明細書の〔作用〕には、「圧縮機の操作時や故障発生時に、メンテナンス装置の表示画面には操作情報や故障情報等が、文章やグラフィックスで表示される。これにより、操作者が一般作業者であっても、表示されたデータに従って操作すれば、熟練者と同様に圧縮機を操作することが可能となる。」と記載されており、故障発生時に、メンテナンス装置の表示画面には操作情報や故障情報等が、文章やグラフィックスで表示されることが本件発明の課題であることが明記されており、これに対応して本件訂正発明1には、「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する」」が特定されているものであるといえることから、「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する」についての記載が改正前特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしていないということはできない。
なお、審判請求人は、『これらの解釈a?cのうちのいずれが妥当であるかは、当業者の技術常識からみても不明である。「故障が発生したときにデータを記憶する」装置と、「故障が発生したときに検出手段がデータを検出する」装置、「データと故障原因を検出」する装置とでは、発明の内容が全く異なり、本件クレームによっては当業者が特許権の及ぶ範囲を把握できないのである。また、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、当該記載においては上述のとおり「故障原因」の技術的意義すら不明であるのだから、「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する記憶装置」を一義的に解釈することは到底できない。
(エ) したがって、本件請求項1は「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項」が適正に記載されたものではなく、その結果、「特許請求の範囲の外延を明瞭に示すものではない』と主張する。しかしながら、上述のとおり、状態量の現在値(本件訂正発明1の「各検出手段が検出したデータ」が相当)は現在値、すなわち故障が発生した場合のものであり、判定値(本件訂正発明1の「故障原因」が相当)は予め作成しておいたものであることは技術常識であることを踏まえれば、上記(b)であることは明らかであり、一義的に解釈が可能といえるので、改正前特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしていないという、審判請求人の上記の主張を採用することができない。

したがって、「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する」に関し、本件明細書の記載は改正前特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしていないとも、また、同条第3項に規定する要件を満たさないともいえない。

(5)「対話形式で操作信号を入力する」について
(5-1)審判請求書での主張の概要
審判請求書の第10頁第25行から第11頁第14行において、「対話形式で操作信号を入力する」について、
『(ア)本件請求項1には、「トラブルシューティング時には前記記憶手段に記憶した故障データと操作手順のフローとが表示された表示手段の出力に基づいて前記入力手段から対話形式で操作信号を入力する」こと(構成要件L)が記載されているが、その操作信号を表示手段の出力に基いて入力手段から対話形式で入力する主体は操作者である。すなわち、本件請求項1に係る発明は「スクリュー圧縮機」を対象とする物の発明であるにもかかわらず、当該請求項1には当該スクリュー圧縮機を操作する者の動作が記載されているのであり、且つ、かかる人間の動作が不可欠の構成要素となっているものであって、かかる記載は「発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した」ものではない。換言すれば、本件請求項1に係る発明が物の発明である以上、本件請求項1には、当該発明の構成に欠くことができない事項として本来、前記対話形式での入力を実現するための具体的構成が記載されなければならないところ、かかる事項について本件請求項1には一切記載がされていない。
(イ) 従って、本件請求項1は、「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した」ものではなく、「特許請求の範囲の外延を明瞭に示すものではない」から、改正前特許法第36条第4項第2号に規定された要件を満たしていない。』と主張している。

(5-2)審判請求人の具体的な主張
被請求人が提出している答弁書、訂正請求書を踏まえ、審判請求人は第1回口頭審理陳述要領書において、以下の主張を行っている。
『(3-4)「対話形式で操作信号を入力する」について
[1] 「対話形式」の意味について
「対話形式で操作信号を入力する」ことの具体的内容について、本件請求項1に特定されていないことは勿論のこと、発明の詳細な説明にもその具体的内容について何ら開示が認められない。従って、「対話形式」の意味はごく一般的な本件出願時点の技術常識を踏まえて解釈する他ない。かかる技術常識に鑑みれば、「対話形式で操作信号を入力する」とは、せいぜい、入力手段及び表示手段を含む装置の画面表示に従って操作者が当該入力手段を用いて当該装置に操作信号を入力するものと、解するほかなく、それ以上の技術的意義を本件明細書の記載から読み取ることはできない。
[2] 「対話形式で操作信号を入力する」主体について
ア 「対話形式で操作信号を入力する」主体は、明らかに「操作者」すなわち人間である。かかる事実は、前記の技術常識のみならず、請求項1の記載そのものからも明らかである。さらに、下記のとおり、本件明細書の発明の詳細な説明を参酌しても明白である(下線は請求人による)。
・特許公報第3頁左欄22-26行
『制御装置11は、CRT19に「運転前に何をすべきか」、「いままで何を実施したか」のデータを操作手順を進めるのに従いその都度表示する。この表示の都度、操作者は承認キースイッチ22を押下し、対話形式で制御を進める。』
・同頁右欄1-5行
「操作者は、選択及び承認キースイッチ21,22の操作によりトラブルシューティングの手順に入り、制御装置11との間で前述したと同様に対話形式で故障の最終適原因を追求し、対策を講じる。」
イ このように(人間である)操作者を動作の主体とする「対話形式で操作信号を入力する」という事項は、本件発明を不明確にするものであって改正前特許法第36条第4項第2号の要件に反するものである。・・・。
[3] 「対話形式で操作信号を入力する」ことの明細書の開示について
ア 前記の記載以外で、本件明細書において「対話形式」に関し記載されている箇所は次の箇所のみである。
「尚、外部モニタ20として、操作表示17と同じものを使用すれば、遠隔地にて圧縮機の操作,故障対策を対話形式でできることはいうまでもない。」(本件特許公報第6欄第13?16行)
「従来は取扱説明書等に記載されている操作手順や故障対策手順、トラブルシューティングの流れ図のデータ等を制御装置の記憶装置に格納しておき、操作時や故障発生時にこれらのデータを操作者との間で対話形式で表示画面上に文章やグラフィックス等で表示するので、…」(同欄第24?29行)
イ 以上の記載を考慮しても、(操作者が)「対話形式で操作信号を入力する」ことについての具体的な内容は全く認められない。せいぜい、制御装置に故障対策手順、トラブルシューティングの流れ図のデータ等を表示させるための指令信号を入力することが読み取り得る程度であり、少なくとも、「圧縮機について専門知識を持たない一般作業者でも、圧縮機の操作が可能となる」(本件特許公報第6欄第31?33行)という本件発明の効果を得るために具体的にどのような表示をすればよいかについて何ら開示は認められない。
ウ 被請求人は、
『「対話形式」での入力とは「表示画面と制御とを次の段階に進める」ための入力であり、例えば「選択キースイッチ21を操作しカーソルを動かして選択し、承認キースイッチ22を押下」するものであること、また、当該入力を促すためにどのような表示をするのかについては、「操作手順フロー」を表示すること、より具体的には『試運転を選択した場合、制御装置11は、CRT19に「運転前に何をすべきか」、「いままで何を実施したか」のデータを操作手順を進めるのに従いその都度表示する』
と主張するが(答弁書第16頁第9?21行)、この程度の記載のみでは、「対話形式での入力」が如何にして故障原因の解明及び対策の支援に寄与し得るのか、全くわからない。
エ 答弁書第7頁第2?10行での被請求人の主張のように、
i)本件発明の課題が「故障状態が表示された後、どの様な操作をすればよいかが分からないという問題」に着目し、「圧縮機の非熟練者・一般作業者でも圧縮機の操作や故障対策を行うことができるスクリュー圧縮機を提供すること」にあり、
ii)その課題を解決するため、「前記制御装置は、トラブルシューティング時には前記記憶手段に記憶した故障データと操作手順のフローとが表示された表示手段の出力に基づいて前記入力手段から対話形式で入力された操作信号により制御を進める」ことが本件発明の特徴点である
とするならば、その課題を解決すべく、非熟練者や一般作業者をどのような操作手順のフローによって適正な圧縮機の操作や故障対策に導き得るのか、また、そのときに「故障データ」なるものがどのように圧縮機の操作や故障対策に寄与し得るのかは当然に開示されるべきであるところ、かかる点について本件明細書には全く記載がない。』(第1回口頭審理陳述要領書第9頁第9行から第12頁第11行)

(5-3)当審の判断
本件訂正により、「対話形式で操作信号を入力する」は「対話形式で入力された操作信号により制御を進める」と訂正されているので、以下の検討は訂正後の「対話形式で入力された操作信号により制御を進める」について検討する。
最初に、「対話形式で入力された操作信号により制御を進める」についての記載が改正前特許法第36条第4項第2号に規定する「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものである」か否かを検討する。全文訂正明細書の〔作用〕には、「圧縮機の操作時や故障発生時に、メンテナンス装置の表示画面には操作情報や故障情報等が、文章やグラフィックスで表示される。これにより、操作者が一般作業者であっても、表示されたデータに従って操作すれば、熟練者と同様に圧縮機を操作することが可能となる。」と記載されており、故障発生時に、メンテナンス装置の表示画面には操作情報や故障情報等が、文章やグラフィックスで表示されることが本件発明の課題であることが明記されており、これに対応して本件訂正発明1には、「対話形式で入力された操作信号により制御を進める」が特定されているものであるといえることから、「対話形式で入力された操作信号により制御を進める」についての記載が改正前特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしていないということはできない。
なお、審判請求人は、審判請求書において、上記『(5)「対話形式で入力された操作信号により制御を進める」について』の『(5-1)審判請求書での主張の概要』において、
『前記対話形式での入力を実現するための具体的構成が記載されなければならないところ、かかる事項について本件請求項1には一切記載がされていない。
(イ) 従って、本件請求項1は、「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した」ものではなく、「特許請求の範囲の外延を明瞭に示すものではない」から、改正前特許法第36条第4項第2号に規定された要件を満たしていない。』と主張している。
しかしながら、 上記の「(1)L」に示した全文訂正明細書の「操作者は、このメニュー画面を見て、次に何をするかを、選択キースイッチ21を操作しカーソルを動かして選択し、承認キースイッチ22を押下して表示画面と制御とを次の段階に進める。ここでは、試運転を例に説明する。試運転を選択した場合、制御装置11は、CRT19に「運転前に何をすべきか」、「いままで何を実施したか」のデータを操作手順を進めるに従いその都度表示する。この表示の都度、操作者は承認キースイッチ22を押下し、対話形式で制御を進める。」(第3頁第27行から同頁第33行)のように、表示画面と制御とを次の段階に進めることが、「対話形式で入力された操作信号により制御を進める」ことであることを具体的に説明しており、具体的構成が何ら記載されていないとの上記の審判請求人の主張を採用することができない。
したがって、「対話形式で入力された操作信号により制御を進める」に関し、本件明細書の記載は改正前特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。

(6)「操作手順のフロー」について
(6-1)審判請求書での主張の概要
審判請求書の第13頁第2行から同頁第13行において、「操作手順のフロー」について、
『(ア)さらに、本件請求項1の構成要件K,Lには、記憶装置が「操作手順フロー」を記憶することが特定されているが、この「操作手順フロー」が意味するところも不明である。発明の詳細な説明には、「操作手順のデータ」及び「トラブルシューティングの手順データ」が記憶装置12に格納されること(本件特許公報4欄35?38行)、並びに、制御装置11が記憶装置12から「操作手順フローチャート」を読み出すこと(同公報5欄末行?6欄1行)が記載されているが、結局のところ、請求項1の「操作手順フロー」が何を意味するのかは前記記載を以ってしても不明である。
(イ) 従って、この点においても、本件明細書における特許請求の範囲の記載は改正前特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしておらず、また少なくとも同条第3項に規定する要件を満たしていない。』と主張している。

(6-2)審判請求人の具体的な主張
被請求人が提出している答弁書、訂正請求書を踏まえ、審判請求人は第1回口頭審理陳述要領書において、以下の主張を行っている。
『(3-3)「操作手順のフロー」について
ア 本件請求項1に記載される「操作手順フロー」が何を意味するのかも不明である。少なくとも、当業者が容易に発明を実施することができる程度に開示されているとは認められない。
イ この「操作手順フロー」について、被請求人は、i)「表示画面と制御とを次の段階に進める」ための表示の意味であり、また、ii)実施例においては「圧縮機の操作手順フローチャート」が対応すると主張するが(答弁書第17頁第2?7行)、かかる主張も、本件明細書の記載が改正前特許法第36条に規定する要件を満たすことの根拠となっていない。理由は下記のとおりである。
(ア) 当業者の技術常識からみて、「操作手順フロー」という語句は文字通り「操作者が操作をする手順の流れ」を意味すると解するのが妥当である。少なくとも、被請求人主張のように「表示画面と制御とを次の段階に進めるための表示」の意味であると解する根拠はない。
(イ) 仮に、「操作手順フロー」に対応する実施例の用語が、本件特許公報第3頁左欄最終行に記載されている「圧縮機の操作手順フローチャート」であるとしても、本件発明の課題が「故障状態が表示された後、どの様な操作をすればよいかが分からないという問題」に着目し、「圧縮機の非熟練者・一般作業者でも圧縮機の操作や故障対策を行うことができるスクリュー圧縮機を提供すること」にあることに鑑みれば、その非熟練者・一般作業者が圧縮機の操作や故障対策を行うことを可能にするために、「操作手順フロー」として具体的にどのようなものが表示されなければならないのかは、本件明細書に記載されて然るべきである。かかる記載がない以上、単に「圧縮機の操作手順フローチャート」という用語の記載のみをもって本件発明が明細書にサポートされているとは到底認められず、少なくとも発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たしていないことは明らかである。』(第1回口頭審理陳述要領書第8頁第7行から第9頁第8行)

(6-3)当審の判断
最初に、「操作手順のフロー」についての記載が特許法第36条第3項に規定する要件を満たしているか、すなわち、発明の詳細な説明において、「操作手順のフロー」が当業者が容易に実施をすることができる程度に記載されているか否かについて検討する。
上記の「(1)K」に示したように、全文訂正明細書の「故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する。」(第4頁第6行から同頁第7行)の記載を踏まえれば、「フローチャート」が「フロー」と略称され、また、故障発生時において故障毎にどのような操作をどのような手順で行うのかは当業者にとってその具体的なフローチャートは技術常識といえる程度のものであり、さらに、その具体的なフローチャートが特定されなければ全文訂正明細書の「〔発明の効果〕」に記載された、「以上述べたように、従来は取扱説明書等に記載されている操作手順や故障対策手順、トラブルシューティングの流れ図のデータ等を制御装置の記憶装置に格納しておき、操作時や故障発生時にこれらのデータを操作者との間で対話形式で表示画面上に文章やグラフィックス等で表示するので、操作者は、圧縮機の操作時や故障発生時に、表示データを見て次にどの様な操作をしたらよいかを知ることができる。従って、圧縮機について専門知識を持たない一般作業者でも、圧縮機の操作が可能となる。」という課題が解決されないとはいえないことを踏まえると、上記の全文訂正明細書の第4頁第6行から同頁第7行の記載から、「操作手順のフロー」が当業者にとって容易に実施をすることができないということはできない。
次に、特許法第36条第4項第2号に規定する「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものである」か否かを検討する。全文訂正明細書の〔作用〕には、「圧縮機の操作時や故障発生時に、メンテナンス装置の表示画面には操作情報や故障情報等が、文章やグラフィックスで表示される。これにより、操作者が一般作業者であっても、表示されたデータに従って操作すれば、熟練者と同様に圧縮機を操作することが可能となる。」と記載されており、故障発生時に、メンテナンス装置の表示画面には操作情報や故障情報等が、文章やグラフィックスで表示されることが本件発明の課題であることが明記されており、これに対応して本件訂正発明1には、「操作手順のフロー」が特定されているものであるといえることから、「操作手順のフロー」についての記載が改正前特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしていないということはできない。
なお、審判請求人は、「操作手順フロー」として具体的にどのようなものが表示されなければならないのかは、本件明細書に記載されて然るべきである」と主張する。しかしながら、故障が生じた場合に具体的にどのような操作を行うのかは故障の原因に応じて当業者にとっては明らかである(必要があれば、審判請求人が提出している甲第4号証の第4頁の第1表に「入口ガイドベーンの制御動作や主電動機の状態も点検せよ」と例示されている。)ことを踏まえれば、審判請求人の上記の主張を採用することができない。

したがって、「操作手順のフロー」に関し、本件明細書の記載は改正前特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしていないとも、また、同条第3項に規定する要件を満たさないともいえない。

(7)無効理由1のまとめ
以上検討したところによれば、無効理由1には理由がない。

7.甲各号証
(1)甲第3号証
甲第3号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(ア)「本発明は、圧縮機における運転状態の良否、機器の故障等を診断する診断装置に関するものである。」(第1頁左下欄第15行から同欄第17行)

(イ)「したがって、吸込温度の上昇程度によってフィルタや吸込絞り弁の故障を診断する場合には、この影響を受けないようにする必要がある。」(第1頁右下欄第2行から同欄第4行)

(ウ)「本発明は、上述した従来の欠点に着目してなされたものであり、圧縮機の運転状態に影響を与える状態量の変化に適応して、常に詳細かつ正確に診断ができるような診断装置を提供することを目的とする。
本発明の特徴とするところは、圧縮機の状態量の検出信号を判定値と比較することによって圧縮機の診断を行う圧縮機の診断装置において、圧縮機の状態量の検出信号を入力する入力部と、あらかじめ定められた状態量が予め決められた値に達した時点で、一定時間運転した時の状態量をもとにして予め定められた状態量と判定値との関数関係にもとづいて運転状態の良否を診断する診断部と、その結果を表示する表示部とからなることを特徴とする圧縮機の診断装置にある。」(第2頁左上欄第11行から同頁右上欄第6行)

(エ)「第4図は、本発明の対象となるスクリュー圧縮機の全体構成を示す図である。この図において空気の圧縮系統に沿って構成を説明すると、吸込み口から吸込まれた空気は、吸気絞り弁4を経て、原動機6によって駆動される圧縮機1によって圧縮され、吐出口から機器に送出される。この吐出空気の流量、圧力を調整するために吸込口を開閉する吸気絞り弁4と、放風口を開閉する放風弁5とを使用する。この吐出空気の圧力を検出するために圧力検出器7を設けている。8は圧力検出器7の検出信号によって吸込絞り弁4と放風弁5とを開閉するための容量制御器である。9は制御器8に吐出圧力の上限値と下限値とを設定するための設定器である。10は制御器8の出力信号によって吸込絞り弁4と放風弁5とを開閉する駆動器である。
上述したスクリュー圧縮機の運転状態及び機器の良否を診断するには、圧縮空気、油圧、冷却水の状態量、即ち温度や圧力の値を使って判定する方法が基本的かつ容易な方法である。このため、第1図に示すように、圧力検出器11、温度検出器12を配置する。これらの検出器11,12の取付位置や個数は、圧縮機の運転状態および機器の良否を診断する要求仕様に応じて必要充分なものを選択する。
第5図は、本発明の装置の一実施例の構成を示すブロックダイヤグラムである。この図において第4図と同符号のものは同一部分である。13は検出器11,12の検出信号の入力装置である。14は本発明の主たる診断機能を有する診断装置である。15は診断の結果を出力する出力装置である。これらの各装置13?15は制御器8の制御信号を取り込み、それぞれの運転状態に対応した診断処理を行う。」(第2頁左上欄第11行から同頁右下欄第5行)

(オ)「第6図および第7図は本発明の診断装置14における基本的な診断機能を示す説明図である。第6図のフローチャートに沿って説明すると、始めに診断用に設けた検出器11,12の信号の入力を行なう。この状態量の現在値と、後述するような方法によって予め作成しておいた判定値とを比較することによって故障の程度を診断する。この判定結果に応じて、重故障、軽故障および正常表示の出力、重故障時には原動機停止の出力、あるいは故障内容表示の出力を行なう。」(第2頁右下欄第8行から同欄第17行)

(カ)「第12図で示した例では、それぞれの判定値を状態量から直線的な関係式で表しており、一般的には次のように表すことができる。
h_(1)=a_(1)x+b_(1) ・・・(1)
h_(2)=a_(2)x+b_(2) ・・・(2)
h_(3)=a_(3)x+b_(3) ・・・(3)
h_(4)=a_(4)x+b_(4) ・・・(4)
ここで、
h:判定値
x:状態量
a,b:係数
したがって、この係数を予め決定記憶しておく必要がある。」(第3頁右下欄第15行から第4頁左上欄第6行)

(キ)「以上の説明において述べた実施例は、全て診断装置14が具備するものであるが、その機能を実施するための構成は問わない。一つの実施例においてはこれらを電子回路によって構成することも可能であるし、他の実施例においてはこれらをコンピュータによって行うことも可能である。」(第4頁右上欄第20行から同頁左下欄第5行)

・第4図には、圧縮機1の吐出側の直後に圧力検出器11及び温度検出器12を設けているので、吐出空気圧力及び吐出空気温度を測定していることが示されているといえる。

上記の記載事項及び図示内容を総合すると、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。

「スクリュー圧縮機1を原動機6で駆動して圧縮空気を発生するスクリュー圧縮機において、
フィルタの故障を診断する手段と、吐出空気温度を検出する温度検出器12と、吐出空気の圧力を検出する圧力検出器11と、状態量の現在値と予め作成しておいた判定値を比較することにより故障の程度を診断するために、状態量から直線的な関係式で判定値を表した際の係数を予め決定記憶しておく手段と、圧縮機の運転状態を診断する診断装置14と、この診断装置14に圧力検出器11と温度検出器12からの検出信号を入力する入力装置13と、この診断装置14の出力を表示する出力装置15とを備え、診断装置14により診断された判定結果は、出力装置15により出力されるスクリュー圧縮機。」

(2)甲第4号証
甲第4号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(ア)「圧縮機、送風機等の風水力機械において、風水力機械の空気状態量を検出する検出器と、この検出器からの空気状態量値によって実際の効率を演算し、この実際の効率とその基準値とを比較することによって風水力機械の運転状態の良否を判定するとともに、この運転状態に応じた対策内容を摘出する制御装置と、この制御装置からの判定結果および対策内容を表示する表示装置とを備えたことを特徴とする風水力機械の運転効率監視装置。」(第1頁特許請求の範囲第1項)

(イ)「入口ガイドベーン11?14およびデフューザーベーン15?18の角度は、それぞれ駆動装置19によって任意の値に制御される。この遠心圧縮機全体もしくは各段の圧縮機の運転状態として、空気流量、温度、圧力等の状態量は、流量検出器20、温度検出器21、圧力検出器22などによって検出される。また、電動機2から圧縮機に供給される動力は動力検出器23によって検出される。これらの検出手段20?23と駆動装置19との間には制御装置24が設けられている。また、この制御装置24の判定結果を運転者に表示するための表示装置25を備えている。」(第3頁左上欄第7行から同欄第18行)。

(ウ)「基準値テーブル手段28は運転状態の良否の判定のもとになる全効率の基準値および許容値を、その時点までの全効率にもとづいて予め決定し記憶するものである。指示手段29は判定手段27によって求められた判定結果にもとづいて、その運転状態に対する全効率の基準値と実際の全効率値との差の大きさに応じて決定される圧縮機の運転状態の良否の程度に応じた対策内容を指示するものである。指示テーブル30は対策内容をその時点までの全効率にもとづいて予め決定し記憶するものである。表示装置25は以上の判定結果および対策内容を表示するものである。」(第3頁右上欄14行から第4頁左下欄5行)

(エ)「次に、指示手段29においては、上記のような判定手段27の判定結果にもとづいて圧縮機の運転状態の良否の程度に応じた対策内容を指示する。このため指示手段29は第1表に示すような対策内容を指示テーブルとして記憶している。この対策内容は第4図に関して示した判定方法に関連するものである。(注:第1表は省略)
上述の対策内容は適切な表示内容に変換されて表示装置25に表示される。この対策内容の表示の内容としては、現在の圧縮機の運転状態、例えば吸込流量と全効率との関係、全効率の基準値と実際の全効率値との差、判定結果および上記のような故障要因、点検箇所、対策などである。」(第4頁左上欄19行から同頁左下欄第3行)

(オ)「基準値と比較してどの程度の運転状態であるかが判定される。この判定結果にもとづいて、指示テーブル手段30に記憶されている対策内容のうちから、対応する対策内容を選択する。この対策内容および判定結果は表示装置25に表示される。」(第4頁左下欄12行から同欄17行)

(カ)「さらに、制御装置24をマイクロコンピュータで構成することも可能である。」(第5頁右上欄4行から同欄第5行)

(3)甲第5号証
甲第5号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(ア)「本発明は警報等の表示管理方法にかかり、詳しくは計算機を用いて水処理等の各種プロセスを監視するプロセス監視システムにおいて、プロセスを構成する機器、装置等の異常発生および復旧状況等を示す警報履歴の表示管理方式に関する。」(第1頁左下欄末行から同頁右下欄第4行)

(イ)「本発明によれば、プロセスの異常発生によりその日時や異常項目からなる警報が表示され、これらのデータが機器状態記憶メモリに記憶される。この際、復旧のための何らかの対策が講じられた場合には、運転員の入力によってその対策内容が機器状態記憶メモリに追加して記憶される。そして、引継等を行った他の運転員からの警報履歴の出力要求により、前記対策情報が警報と共に機器状態記憶メモリから読み出され、同一の表示画面内に表示される。」(第2頁左下欄第6行から同欄第16行)。

(ウ)「この状態で、異常発生に対して運転員または対策者が復旧のために何らかの対策を講じた場合、予め用意された以下の第1表および第2表を参照して、当該対策内容及び対策者氏名に対応する対策番号及び対策者番号を入力装置7から入力する。(注:第1表及び、第2表は省略)
ここで、対策内容や対策者の氏名にかかるデータは対策情報記憶メモリ11に予め格納されているものであるが、これらの事項に対応する対策番号及び対策者番号もテーブルとして対策情報記憶メモリ11に格納しておき、上記第1表及び第2表を入力装置7からの指令に応じて表示装置6に表示できるようにしておけば入力操作上、好適である。」(第3頁左下欄末行から同頁右下欄第18行)

(エ)「このようにして、対策内容および対策者氏名が追記された表示項目12A,12B……は、常に機器状態記憶メモリ3内に記憶されていることとなるため、例えば交替した他の運転員による入力装置7からの指令により、警報履歴として表示または印刷出力することができ、引継の際に口頭や引継日誌等を用いて機器状態を連絡する必要がなくなるものである。例えば、第5図の表示項目12Aからは、1号ポンプの故障により作業員「高橋」が修理を依頼済みであるが、未だ修理が完了していない旨を引継後の運転員が容易に(注:「用意」は誤記)認識できることとなる。」(第4頁右上欄第12行から同頁左下欄第3行)

(オ)「その後の警報履歴の出力要求によってこれらを一見して認識することができるため、従来のような口頭もしくは引継日誌等による情報伝達の煩雑さが解消され、運転員の負担が大幅に軽減されるという効果がある。」(第4頁左下欄第14行から同欄第18行)

(4)甲第6号証
甲第6号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(ア)「本発明は圧縮機、特に吸込弁を閉状態で使用する頻度の高いスクリュー圧縮機における空気吸込部の故障検出装置に関するものである。」(第1頁左欄第16行から同欄第18行)

(イ)「第1段圧縮機5の吸込側に接続する空気吸込路Aには、空気中の塵あいおよび異物を除去するフィルタ2を内蔵し、かつ吸込空気を消音するサイレンサ1、前記フィルタ2の目詰りを検知するフィルタメンテナンスシグナル計3…が順次設けられている。」(第1頁右欄第4行から同欄第10行)
(ウ)「本発明は…、圧縮機の空気吸込側にフィルタと吸込弁を順次に設けた圧縮機において、前記吸込弁の下流側にマイコンに接続する圧力センサを設け、この圧力センサによるオンロード時およびアンロード時のそれぞれの空気圧力検出値が、前記フィルタの目詰りおよび吸込弁の閉塞時のそれぞれの空気圧力制御値以下になったときに警告するように構成したことを特徴とするものである。」(第2頁左下欄第4行から同欄第12行)

(エ)「本発明は上記のような構成からなるので、圧縮機5,7を長期間にわたつて運転している間に、フィルタ2が目詰り状態を生じた場合には、そのフィルタ2の下流側の空気圧力は低下する。したがつて、吸込弁4が全開しているオンロード時に、圧力センサ14で検出されてマイコンに入力された空気圧力検出値が前記制御値PSF以下であると、警報が発せられるからフィルタ2の目詰りを容易に認知し、その対策を事前に施すことができる。」(第2頁右下欄第11行から同欄第19行)

(5)甲第7号証
甲第7号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(ア)「そこで従来から、空気調和機内にフィルタ目詰まりの自動検知装置を組み込むことが試みられている。具体的には、フィルタの入側と出側の差圧をセンサで測定したり、機内の空気通路における風速をセンサで測定し、これに係数を乗じて得た風量の変化からフィルタの目詰まりを検知するものである(実公昭45-15330号公報および実開昭50-14135号公報参照)。」(第1頁右欄末行から第2頁左上欄7行)

(イ)「風速低下許容率Qmはフィルタ8が使用限界まで目詰まりした場合の風速低下率を示すものであるから、風速比U/Uoがこの風速低下許容率Qmに一致した時点で圧縮機2の運転が停止されることにより、フィルタ8の使用限界を超えて運転が続行されることはなくなり、その結果、フィルタ8の目詰まりに起因する、圧縮機2への液戻り等の危険事態が未然に防止される。
圧縮機2の運転が停止され、そのことが表示ランプ(図示せず)により表示されると、フィルタ8を取り外し、フィルタ8の交換または清掃を行い、リセットスイッチ20を押す。これにより、マイクロコンピュータ17からの発信が停止して電位接触器15への通電が止まり、電磁接触器15の常開接点15bが消勢されて圧縮機2の運転が再開される。」(第4頁左欄第12行から同頁右上欄第8行)

(6)甲第8号証
甲第8号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(ア)「[従来の技術]
一般に空冷用ファンを使用し、かつ塵埃の多い場所で使用する装置には、その内部への塵埃の流入を防ぐため空気取入口にエアフィルタが取付けられている。このフィルタには塵埃が蓄積するため時がたつと目詰りを起こす。この状態になると冷却効果が低下し、装置内部の温度が規格以上に上昇してしまう。従ってこの目詰り状態を検出する機器が必要である。
従来、この種のフィルタ目詰検出器は、装置内部に温度センサを設置し、該温度センサによりエアフィルタの目詰りに起因する装置内部温度の上昇を検出する構造となっていた。」(第1頁右欄第3行から同欄第15行)

(イ)「エアフィルタ13に目詰りが生じた場合には、装置1内の風量は少なくなり、磁気センサ9により一定値以下の回転数信号が警報制御回路部3に送信され、警報制御回路部3により警報ランプ11が点灯される。」(第2頁右下欄第14行から第3頁左上欄第1行)

(7)甲第9号証
甲第9号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(ア)「オイルフリースクリュコンプレッサ」(第1頁第3行)

(イ)「●オイルフィルタ
10ミクロンフィルタを採用。目詰りは防音カバー表面のインジケータでチェックできます。」(第4頁第1行から同頁第3行)
(ウ)「[7]オイルフィルタインジケータ(潤滑油フィルタの目詰りを知らせる」(第6頁左欄中段に掲載される「計器類の配置(AL形)」を示す写真の下、注:○内の数字7を「[7]」で表している。)

(エ)第4図には、モータが増速機を介してコンプレッサを回転駆動することが図示されている。

(8)甲第10号証
甲第10号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(ア)「図において1は図示しないエンジンにより回転される潤滑油ポンプで、吸入側はオイルパン2に、吐出側はフィルタ3を介してエンジンの各部に配管された潤滑油系4に夫々接続されている。…フィルタ3の入口および出口にはパイロット配管6を介して圧力スイッチ7が接続されている。この圧力スイッチ7にはフィルタ3前後の差圧により作動する可動接片7aが設けられており、この可動接片7aは、フィルタ3前後の差圧が予じめ設定した適正値より低い時には接点71に、適正値に一致する時には接点72に、そして適正値より高い時には接点73に夫々接続されるようになっており、可動接片7aには電源8の陽極側が接続されている。」(第1頁右欄第15行から第2頁左上欄第9行)

(イ)「これら警告灯141ないし149のうち、…その他の警告灯141、142、143、146、148及び149は夫々橙色に着色されて、141の近傍には『フィルタ目詰まり』…などの表示が夫々なされている。」(第2頁右上欄第7行から同欄第17行)

(9)甲第11号証
甲第11号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(ア)「図において、1,2,3は圧縮機、4,5,6は圧縮機の制御部、7,8,9,10は上記圧縮機1,2,3の保護装置として設けられた高圧圧力スイッチ、低圧圧力スイッチ、焼損防止サーモおよび過電流継電器(何れも図示せず)などの保護装置からの信号を導出する接続端子で、上記各保護装置に対応して設けられている。」(第2頁左上欄第4行から同欄第10行)

(イ)「一方上記圧縮機制御部4の接続端子に異常箇所表示装置11を接続すると、上記接続端子7と接続した上記異常箇所表示装置7における表示ランプ16が点灯するのである。」(第2頁右上欄第7行から同欄第11行)

(10)甲第12号証
甲第12号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(ア)「このため、異常事態が発生した場合には、運転員はCRTを参照するほか、各種計測器等のプロセス量検知部の設置状況およびバルブ、ポンプの位置関係を詳細に示した配管計装線図、ならびに異常に対処する手順を詳細に記述した運転手順等を一々取り出し、きわめて作業が煩雑となってプラントの監視能率が低下し、異常事態に対する対処が不十分となる欠点がある。
〔発明の目的〕
本発明は、このような従来の欠点を解消するためになされたものであり、プラントに異常が発生した場合に異常部分の詳細な情報すなわち配管計装線図、ならびに異常に対処するための運転手順書等を自動的に表示することが可能である効率の高い異常監視装置の提供を目的とする。」(第2頁左上欄第20行から同頁右上欄第15行)

(イ)「情報検索部5では、診断処理部3から入力された異常なプロセス量および異常な動作状態を示す機器に関連する詳細情報を、情報記録部4を参照して検索し、その結果を検索結果記録部6へ出力する。ここで、情報記録部4は、例えば光ディスク画像情報ファイル装置であり、ここには、プラントの配置図、配管計装線図、運転手順書、保安規定等のプラントの運転にとって必要な詳細情報が記録されている。」(第2頁右下欄第16行から第3頁左上欄第4行)

(ウ)「なお、表示部7に付属するキーボードから表示制御信号および検索制御信号を入力し、この信号を表示制御部8および情報検索部5にフィードバックすることにすれば、任意の詳細情報を表示することが可能である。」(第3頁左下欄第6行から同欄第10行)

(11)甲第13号証
甲第13号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(ア) 「(従来の技術)
従来より、プラントに異常が発生した場合、その原因などを診断するために、診断に関する問題を解くための断片的知識を記憶装置に集積しておき、その断片的知識を基にCRT表示器とキーボード等からなる対話装置を用いて運転員と質疑応答を行ないながら診断結果を推論していく対話型診断装置が知られている。」(第1頁右欄第10行から同欄第17行)

(イ)「以上の構成で、プラントの異常診断は以下のようにして行なう。先ず、プラントを大分けした広いエリアから、異常発生時の各部プラントの状態変化を推論の根拠として、順次そのエリアを細分化した狭いエリアに異常発生原因を絞り込んでいく。その過程で運転員の診断が必要になった場合は、対話装置8を通して質疑応答が行なわれる。」(第3頁右上欄第4行から同欄第10行)

(ウ) 「運転員は画面表示装置6あるいは音声出力装置7に何らかの表示出力がある場合には、それを参考にしながら、対話装置8に表示された質問に回答を入力する。」(第3頁左下欄第7行から同欄第10行)

(エ)「以上説明したように本発明によれば、推論の実行と共に、運転員が質問に答えるための補助情報を提供するようにしたので、専門的知識の豊富な運転員にとっては参考にすればよいので診断の妨げにはならず、また、経験の浅い運転員にとっては質問に答えるために必要な補助的な情報が自動的に得られ、診断を容易かつ正確に行なうことができ、異常原因究明の迅速化および適確化を図ることかできる。」(第5頁右上欄第8行から同欄第16行)

(12)甲第14号証
甲第14号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(ア) 「故障発見の対象となるポンプ設備の故障木のデータをあらかじめコンピュータに入力しておき該ポンプ設備の故障を発見する際コンピュータに入力された故障木によって故障個所を発見する方法と、故障機器の場所、位置等をビデオ映像、文字、図形を用いて表示する表示装置とを備えたことを特徴とするポンプ設備の故障発見装置。」(第1頁特許請求の範囲)

(イ)「ポンプ設備の故障(機械・電気)を、設備に附帯する操作盤上の故障表示灯にて確認する。その後本発明による故障発見装置を用い、専門家の知識を、ビデオ映像と文字・図形をテレビ画面上に表現し、操作員が特別な知識を必要とせず対話形式にて早期に設備(機械・電気)の故障を発見する。」(第1頁左下欄第10行から同欄第16行)

(ウ)「第1図において、ビデオ・ディスク(4)内にあらかじめ蓄積されている設備(機械・電気)の故障発見用の映像(8)とコンピュータ(3)で作り出される故障発見操作の指示文(7)が、スーパーインポーザ(5)を通して、テレビ(1)の画面上に、同時に表示される。この表示画面に対し、操作員はテレビ(1)に装着されているタッチ・パネル(2)を介してコンピュータ(3)に入力信号(10)を送る、コンピュータ(3)では、あらかじめ入力されている専門家の排水ポンプ場における故障発見の知識データを基に、操作員からの入力信号(10)に応じて必要な、ビデオ映像を制御信号(6)でビデオディスク(4)へ伝える。ここでテレビ(1)のビデオ画面にては、ポンプ設備の故障内容に応じた診断メニューを選択し、原因究明のための知識データベースによる故障発見の調査方法と故障機器の場所、位置等が表示され、操作員は、テレビ画面と対話を行いながら故障個所の発見と、普段の訓練を行う。」(第2頁左上欄第9行から同頁右上欄第7行)

8.無効理由3についての検討
(1)本件訂正発明1について
本件訂正発明1と甲3発明とを対比する。
(ア)「スクリュー圧縮機」が「圧縮室内に収納されたスクリュー」を有する点、及び、スクリュー圧縮機を駆動する原動機として「モータ」が採用されることは技術常識といえることから、
前者の「スクリュー圧縮機1を原動機6で駆動して圧縮空気を発生するスクリュー圧縮機」は、
後者の「圧縮室内に収納されたスクリューをモータで回転駆動して圧縮空気を発生するスクリュー圧縮機」に相当する。

(イ)後者の「吐出空気温度を検出する温度検出器12」が前者の「吐出空気温度を検出する吐出温度検出手段」に相当し、同様に、
「吐出空気の圧力を検出する圧力検出器11」が「吐出空気圧力を検出する吐出圧力検出手段」に、それぞれ相当することから、
後者の「フィルタの故障を診断する手段と、吐出空気温度を検出する温度検出器12と、吐出空気の圧力を検出する圧力検出器11」と
前者の「エアフィルタの目詰まりを検出するエアフィルタ検出手段と、吐出空気温度を検出する吐出温度検出手段と、吐出空気圧力を検出する吐出圧力検出手段」とは、
「エアフィルタの目詰まりを診断する手段と、吐出空気温度を検出する吐出温度検出手段と、吐出空気圧力を検出する吐出圧力検出手段」なる概念で共通する。

(ウ)後者の「状態量の現在値と予め作成しておいた判定値を比較することにより故障の程度を診断するために、状態量から直線的な関係式で」表された「判定値」が前者の「故障原因」に相当するといえることから、
後者の「状態量の現在値と予め作成しておいた判定値を比較することにより故障の程度を診断するために、状態量から直線的な関係式で判定値を表した際の係数を予め決定記憶しておく手段」と
前者の「このスクリュー圧縮機に故障が発生したときに各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する記憶装置」とは、
「故障原因を記憶する記憶装置」なる概念で共通する。

(エ)後者の「診断装置」と前者の「制御装置」とは上位概念でみれば共にスクリュー圧縮機を管理するためのものであるから、「管理装置」なる概念で共通するといえるので、
後者の「入力装置13」が前者の「入力手段」に相当し、同様に、
「出力装置15」が「表示手段」に、相当し、したがって、
後者の「圧縮機の運転状態を診断する診断装置14と、この診断装置14に圧力検出器11と温度検出器12からの検出信号を入力する入力装置13と、この診断装置14の出力を表示する出力装置15」と
前者の「圧縮機の運転を制御する制御装置と、この制御装置に操作信号を入力する入力手段と、この制御装置の出力を表示する表示手段」とは、
「圧縮機の運転を管理する管理装置と、この管理装置に入力信号を入力する入力手段と、この管理装置の出力を表示する表示手段」なる概念で共通する。

(オ)後者の「診断装置14により診断された判定結果」と前者の「トラブルシューティング時には記憶手段に記憶した故障データと操作手順のフロー」とは、「判定結果」なる概念で共通するといえるので、
後者の「診断装置14により診断された判定結果は、出力装置15により出力されるスクリュー圧縮機」と
前者の「制御装置は、トラブルシューティング時には記憶手段に記憶した故障データと操作手順のフローとが表示された表示手段の出力に基づいて入力手段から対話形式で入力された操作信号により制御を進めるスクリュー圧縮機」とは、
「判定結果が表示された表示手段の出力に基づいて管理を進めるスクリュー圧縮機」なる概念で共通する。

したがって、両者は、
「圧縮室内に収納されたスクリューをモータで回転駆動して圧縮空気を発生するスクリュー圧縮機において、
エアフィルタの目詰まりを診断する手段と、吐出空気温度を検出する吐出温度検出手段と、吐出空気圧力を検出する吐出圧力検出手段と、故障原因を記憶する記憶装置と、圧縮機の運転を管理する管理装置と、この管理装置に入力信号を入力する入力手段と、この管理装置の出力を表示する表示手段とを備え、判定結果が表示された表示手段の出力に基づいて管理を進めるスクリュー圧縮機。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
検出手段に関し、本件訂正発明1ではエアフィルタの目詰まりを「検出するエアフィルタ検出」手段と、「オイルフィルタの目詰まりを検出するオイルフィルタ検出手段と、モータ電流を検出する電流検出手段と」を更に設ける点を特定しているのに対し、甲3発明では「フィルタの故障を診断する」ことのみが特定されているが、検出手段を設ける点は特定されていないし、さらに、オイルフィルタの目詰まりを検出するオイルフィルタ検出手段及びモータ電流を検出する電流検出手段を設ける点は特定されていない点。

[相違点2]
記憶装置に関し、本件訂正発明1では「このスクリュー圧縮機に故障が発生したときに各検出手段が検出したデータ」も記憶する点を特定しているのに対し、甲3発明ではそのような特定はなされていない点。

[相違点3]
圧縮機の運転を「管理する管理装置」に関し、本件訂正発明1では圧縮機の運転を「制御する制御装置」であり、そのために、この「制御装置」に「操作」信号を入力する入力手段を設けているのに対し、甲3発明ではそのような特定はなされていない点。

[相違点4]
記憶装置に関し、本件訂正発明1では「圧縮機の操作手順フロー」も記憶する点を特定しているのに対し、甲3発明ではそのような特定はなされていない点。

[相違点5]
「管理」の内容に関し、本件訂正発明1では「制御装置は、トラブルシューティング時には」記憶手段に記憶した故障データ「と操作手順のフローと」が表示された表示手段の出力に基づいて「入力手段から対話形式で入力された操作信号により制御」を進めるのに対し、甲3発明では診断装置14により診断された診断結果は、出力装置15により出力されるものである点。

以下、上記相違点について検討する。
[相違点1]について
流体機器の故障を検出するための検出手段として、エアフィルタの目詰まりを検出するエアフィルタ検出手段、オイルフィルタの目詰まりを検出するオイルフィルタ検出手段、又は、モータ電流を検出する電流検出手段は、それぞれ周知の技術といえる程度のことである。(エアフィルタ検出手段は、甲第6号証の「フィルタ2の目詰まりを検知するフィルタメンテナンスシグナル計3」に例示されており、他にも甲第7号証の「フィルタの入側と出側の差圧をセンサで測定」、及び、甲第8号証の「フィルタ目詰検出器」として例示されているので参照されたい。また、オイルフィルタの目詰まりを検出するオイルフィルタ検出手段は、甲第9号証の「インジケータ」に例示され、他にも甲第10号証の「圧力スイッチ7」として例示されている。さらに、モータ電流を検出する電流検出手段は甲第11号証の「過電流継電器」に例示されている。)
そして、故障検出において多くの種類の検出器を採用すれば検出精度は向上するが、コストが増加するので、コストと検出精度を考慮してどの検出手段を備えるのかを決定することが技術常識といえ、さらに、全文訂正明細書を参照しても、本件訂正発明1に特定された種類の検出器の組み合わせとすることによる作用効果は記載されておらず、それぞれの個別の検出器が有する特定の故障検出の機能を単に寄せ集めたものにすぎないといえることから、上記周知の検出器からどの検出器を採用するのかは任意に選択可能な設計事項にすぎない。現に、甲第3号証の第2頁左下欄第8行から同欄第16行には、「上述したスクリュー圧縮機の運転状態及び機器の良否を診断するには、圧縮空気、油圧、冷却水の状態量、即ち温度や圧力の値を使って判定する方法が基本的かつ容易な方法である。このため、第1図に示すように、圧力検出器11、温度検出器12を配置する。これらの検出器11,12の取付位置や個数は、圧縮機の運転状態および機器の良否を診断する要求仕様に応じて必要充分なものを選択する。」と記載されており、必要に応じて選択するものであることが記載されている。
従って、上記の検出器を選択する場合にコストと検出精度を考慮してどの検出手段を備えるのかを決定するという技術常識を踏まえて、上記の周知の技術から相違点1に係る検出手段を採用することは当業者にとって容易になし得ることである。

[相違点2、及び、4]について
例えば、甲第4号証に「対策内容の表示の内容としては、現在の圧縮機の運転状態、例えば吸込流量と全効率との関係、全効率の基準値と実際の全効率値との差、判定結果および上記のような故障要因、点検箇所、対策などである」(第4頁左上欄19行から同頁左下欄第3行)と記載されているように、故障が発生したとき(「故障要因」が表示されることから、故障が発生したときであることは明らかである)の検出手段により検出したデータ(「吸込流量」が相当)等の運転状態(「現在の圧縮機の運転状態」が相当)を表示すること、及び、圧縮機の操作手順フロー(「点検箇所、対策」が相当)を表示することは常套手段であるといえる。
さらに、判定結果を表示する際に、診断に使用する判定値を記憶する甲3発明において、検出したデータ及び操作手順フローを表示しようとすれば、表示に必要なデータを記憶することとなるのは自明のことにすぎない。
そうすると、甲3発明において、故障要因を含む運転状態及び対策を表示するという一般的な課題を解決するために、甲3発明に上記常套手段の検出手段が検出したデータと操作手順フローを記憶するという手段を採用することにより相違点2、及び、4に係る本件訂正発明1の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

[相違点3、及び、5]について
相違点5において、故障データ「と操作手順のフローと」が表示される点については、上記の「[相違点2,及び、4]について」で示すように当業者にとって容易であることから、それ以外の相違点について、以下検討する。
本件訂正発明1において、「トラブルシューティング時には記憶手段に記憶した故障データと操作手順のフローとが表示された表示手段の出力に基づいて入力手段から対話形式で入力された操作信号により制御を進める」ことによる技術的な意義は、トラブルシューティング時には表示手段の出力に基づいて承認キースイッチ22を押下して表示画面と制御とを次の段階に進めることであるものと解することができる。
しかしながら、「相違点3」及び「相違点5に」で相違点として抽出した事項に関し、甲3発明には、以下の点が特定されていないといえる。
(a)「トラブルシューティング時」である点。
(b)表示手段の出力に基づいて「入力手段から対話形式で入力された操作信号により制御」を進める点。
(c)圧縮機の運転を「制御する制御装置」であり、そのために、この「制御装置」に「操作」信号を入力する入力手段を設けている点。
上記の(a)ないし(c)の技術的意義は、全文訂正明細書の第3頁第27行から同頁第29行の「操作者は、このメニュー画面を見て、次に何をするかを、選択キースイッチ21を操作しカーソルを動かして選択し、承認キースイッチ22を押下して表示画面と制御とを次の段階に進める。」を踏まえると、「トラブルシューティング時」が対策まで含むことはあきらかである。そして、そのために(c)に特定されるように、圧縮機の運転を「制御する制御装置」であることが特定されているといえる。また、「入力手段から対話形式で入力された操作信号により制御」を進めるとは、「承認キースイッチを押下して表示画面と制御とを次の段階に進める」ことであるといえる。してみると、上記の(a)ないし(c)は一連の処理を特定しているので、個別に検討することが出来るとはいえない。
さらに、全文訂正明細書の「〔発明の効果〕」に、「以上述べたように、従来は取扱説明書等に記載されている操作手順や故障対策手順、トラブルシューティングの流れ図のデータ等を制御装置の記憶装置に格納しておき、操作時や故障発生時にこれらのデータを操作者との間で対話形式で表示画面上に文章やグラフィックス等で表示するので、操作者は、圧縮機の操作時や故障発生時に、表示データを見て次にどの様な操作をしたらよいかを知ることができる。従って、圧縮機について専門知識を持たない一般作業者でも、圧縮機の操作が可能となる。」と記載されていることを踏まえれば、上記の(a)ないし(c)は任意に寄せ集めることができるものではなく、上記の((a)ないし(c)が同時に存在することにより上記の効果を奏するものであるといえることは明らかであるといえる。
そこで、審判請求人が提出している甲第4号証ないし甲第14号証、参考資料1ないし参考資料5のそれぞれの文献に上記の(a)ないし(c)の組み合わせが記載もしくは示唆されているのかを検討する。なお、以下の検討における(a)」等は、上記の「7.甲各号証」において対応する摘記箇所を示すものである。

(甲第4号証について)
「(ア)」に、「制御装置からの判定結果および対策内容を表示する表示装置とを備えたことを特徴とする風水力機械の運転効率監視装置」とあるように、甲3発明と同様な監視装置であり、トラブルシューティング時に対策を行うために風水力機械を制御することは記載も示唆もなされていない。さらに、表示することで処理は終了していることから、本件訂正発明1のように表示手段の出力に基づいて「承認キースイッチを押下して表示画面と制御とを次の段階に進める」ことも記載も示唆もなされていないといえる。

(甲第5号証について)
「(ア)」に、「プロセスを構成する機器、装置等の異常発生および復旧状況等を示す警報履歴の表示管理方式に関する」とあるように、甲3発明と同様な警報履歴の表示管理方式であり、トラブルシューティング時に対策を行うために各種プロセスを制御することは記載も示唆もなされていない。さらに、表示することで処理は終了していることから、本件訂正発明1のように表示手段の出力に基づいて「承認キースイッチを押下して表示画面と制御とを次の段階に進める」ことも記載も示唆もなされていないといえる。

(甲第6号証について)
「(ア)」に「スクリュー圧縮機における空気吸込部の故障検出装置に関する」とあり、「(ウ)」に、「圧力センサによるオンロード時およびアンロード時のそれぞれの空気圧力検出値が、前記フィルタの目詰りおよび吸込弁の閉塞時のそれぞれの空気圧力制御値以下になったときに警告するように構成した」とあるように、空気吸込部の故障検出装置であり、トラブルシューティング時に対策を行うために圧縮機を制御することは記載も示唆もなされていない。さらに、空気吸込部の故障検出装置のみが開示されていることから、本件訂正発明1のように表示手段の出力に基づいて「承認キースイッチを押下して表示画面と制御とを次の段階に進める」ことも記載も示唆もなされていないといえる。

(甲第7号証について)
「(イ)」に「風速比U/Uoがこの風速低下許容率Qmに一致した時点で圧縮機2の運転が停止される」及び「圧縮機2の運転が停止され、そのことが表示ランプ(図示せず)により表示される」と記載されているように、故障を検知すると圧縮機を停止させ、さらに、その停止させたことを表示ランプで表示するものであり、表示ランプによる表示は停止後であり、本件訂正発明1のように表示手段の出力に基づいて「承認キースイッチを押下して表示画面と制御とを次の段階に進める」ことは記載も示唆もなされていないといえる。

(甲第8号証について)
「(イ)」に「エアフィルタ13に目詰りが生じた場合には、装置1内の風量は少なくなり、磁気センサ9により一定値以下の回転数信号が警報制御回路部3に送信され、警報制御回路部3により警報ランプ11が点灯される。」とあるように、エアフィルタの目詰りが生じた場合の警報制御回路であり、トラブルシューティング時に対策を行うために圧縮機を制御することは記載も示唆もなされていない。さらに、警報制御のみが開示されていることから、本件訂正発明1のように表示手段の出力に基づいて「承認キースイッチを押下して表示画面と制御とを次の段階に進める」ことも記載も示唆もなされていないといえる。

(甲第9号証について)
「(イ)」に「オイルフィルタ・・・目詰りは防音カバー表面のインジケータでチェックできます」とあるように、オイルフィルタの目詰りが生じた場合のインジケータであり、トラブルシューティング時に対策を行うために圧縮機を制御することは記載も示唆もなされていない。さらに、警報制御のみが開示されていることから、本件訂正発明1のように表示手段の出力に基づいて「承認キースイッチを押下して表示画面と制御とを次の段階に進める」ことも記載も示唆もなされていないといえる。

(甲第10号証について)
「(イ)」に「これら警告灯141ないし149のうち、…その他の警告灯141、142、143、146、148及び149は夫々橙色に着色されて、141の近傍には『フィルタ目詰まり』…などの表示が夫々なされている。」とあるように、フィルタ目詰まりの警告灯であり、トラブルシューティング時に対策を行うためにエンジンを制御することは記載も示唆もなされていない。さらに、警告を行うことのみが開示されていることから、本件訂正発明1のように表示手段の出力に基づいて「承認キースイッチを押下して表示画面と制御とを次の段階に進める」ことも記載も示唆もなされていないといえる。

(甲第11号証について)
「(イ)」に「一方上記圧縮機制御部4の接続端子に異常箇所表示装置11を接続すると、上記接続端子7と接続した上記異常箇所表示装置7における表示ランプ16が点灯するのである」とあるように、停止した圧縮機が停止した理由を表示ランプで表示するものであり、トラブルシューティング時に対策を行うために圧縮機を制御することは記載も示唆もなされていない。さらに、停止した理由を表示ランプで表示することのみが開示されていることから、本件訂正発明1のように表示手段の出力に基づいて「承認キースイッチを押下して表示画面と制御とを次の段階に進める」ことも記載も示唆もなされていないといえる。

(甲第12号証について)
「(ア)」に「プラントに異常が発生した場合に異常部分の詳細な情報すなわち配管計装線図、ならびに異常に対処するための運転手順書等を自動的に表示する」と記載されており、また、「(ウ)」に「表示部7に付属するキーボードから表示制御信号および検索制御信号を入力し、この信号を表示制御部8および情報検索部5にフィードバックすることにすれば、任意の詳細情報を表示することが可能である」とあるように、異常に対処するための運転手順書等をキーボードから任意に指定して表示するものであり、トラブルシューティング時に対策を行うためにプラントを制御することは記載も示唆もなされていない。さらに、運転手順書等をで表示することのみが開示されていることから、本件訂正発明1のように表示手段の出力に基づいて「承認キースイッチを押下して表示画面と制御とを次の段階に進める」ことも記載も示唆もなされていないといえる。

(甲第13号証について)
「(エ)」に「経験の浅い運転員にとっては質問に答えるために必要な補助的な情報が自動的に得られ、診断を容易かつ正確に行なうことができ、異常原因究明の迅速化および適確化を図ることかできる」とあるように、質問に答えるために必要な補助的な情報が自動的に得られ、診断を容易かつ正確に行なうものであり、トラブルシューティング時に対策を行うためにプラントを制御することは記載も示唆もなされていない。さらに、診断のみが開示されていることから、本件訂正発明1のように表示手段の出力に基づいて「承認キースイッチを押下して表示画面と制御とを次の段階に進める」ことも記載も示唆もなされていないといえる。

(甲第14号証について)
「(エ)」に「テレビ(1)のビデオ画面にては、ポンプ設備の故障内容に応じた診断メニューを選択し、原因究明のための知識データベースによる故障発見の調査方法と故障機器の場所、位置等が表示され、操作員は、テレビ画面と対話を行いながら故障個所の発見と、普段の訓練を行う」とあるように、普段の訓練も可能な故障個所の発見を行なうものであり、トラブルシューティング時に対策を行うためにポンプ設備を制御することは記載も示唆もなされていない。さらに、故障個所の発見のみが開示されていることから、本件訂正発明1のように表示手段の出力に基づいて「承認キースイッチを押下して表示画面と制御とを次の段階に進める」ことも記載も示唆もなされていないといえる。

(参考資料1、2、及び、6について)
参考資料1の第1422頁の第2欄に「問題解決」の説明がなされ、参考資料1の第1627頁の第2欄に「トラブルシューティング」の説明がなされており、さらに、参考資料6の第302頁に「トラブル・シューティング」の説明が記載されているが、いずれにも、トラブルシューティング時に対策を行うために制御対象を制御することは記載も示唆もなされていない。さらに、本件訂正発明1のように表示手段の出力に基づいて「承認キースイッチを押下して表示画面と制御とを次の段階に進める」ことも記載も示唆もなされていないといえる。

(参考資料3,及び、4について)
いずれもパンフレットの公知日を立証するためのものであり、トラブルシューティング時に対策を行うために制御対象を制御することや、本件訂正発明1のように表示手段の出力に基づいて「承認キースイッチを押下して表示画面と制御とを次の段階に進める」ことを立証するための資料ではないことは明らかである。

(参考資料4について)
審判請求人は、平成21年4月1日提出の上申書の第17頁から第18頁の「甲第14号証及び参考資料2における「故障木」の記載」の「操作手順フロー」の記憶及び表示」において、
『(イ) ここで、「故障木のデータをあらかじめコンピュータに入力」しておくこと、及び、「コンピュータに入力された故障木によって故障箇所を発見する」ことは、「故障木」についての技術常識を参酌すれば、まさしく「操作手順フロー」の記憶及び表示にほかならない。
(ウ) 事実、参考資料4には、「操作手順フロー」の記憶および表示について、次の記載がある。
「○ 診断の経過を故障木、系統図で可視化する。
○ 診断の結果を故障木、系統図、テレビフォト、棒グラフで表示する。」(245頁左欄4?6行)
この記載にかかる「診断」とは、「先頭事象を引き起こしている基本事象(故障原因)」を同定すること」であり(同資料2の246頁左欄3?4行)、よって、故障木は故障原因の解明経過及び結果を表示するものである。
さらに、同資料4の245頁左欄最終行には、「故障の対策方法を自動的に表示する」ことが記載されている。
(ェ) さらに、参考資料4では、「故障木」に基づく画面表示として、「Fig.4 警報画面」、「Fig.5 自動入力、診断結果画面」、「Fig.6 系統図画面(その1)」、「Fig.7 質問画面Fig.8 診断結果画面」、「Fig.9 系統図画面(その2)」、「Fig.10 故障箇所表示画面」、「Fig.11 保守画面」、「Fig.12 故障木画面(全体図)」、及び「Fig.13 故障木画面(部分図)」が順に表示されることが記載されている。これらの各図の標題から、故障原因を究明してその回復に至るための操作手順が順番に表示されることは、明らかである。』と主張している。
しかしながら、参考資料4には、上記の審判請求人が主張するように、故障原因を究明してその回復に至るための操作手順が順番に表示されるするものであり、トラブルシューティング時に対策を行うためにポンプを制御することは記載も示唆もなされていない。さらに、故障原因を究明してその回復に至るための操作手順を表示することのみが開示されていることから、本件訂正発明1のように表示手段の出力に基づいて「承認キースイッチを押下して表示画面と制御とを次の段階に進める」ことも記載も示唆もなされていないといえる。
以上の検討のように、審判請求人が提出している甲第4号証ないし甲第14号証、参考資料1ないし参考資料5のそれぞれの文献に上記の(a)ないし(c)の組み合わせが記載されているともいえないし、さらに、示唆されているともいえない。
そうすると、相違点3、及び、5に係る本件訂正発明1の構成とすることが容易であるとはいえない。

したがって、本件訂正発明1が、甲3発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2と甲3発明とを対比すると、上記「(1)」で検討した相違点にさらに「前記表示手段は、他のモニタ手段に音声信号とビデオ信号を出力する外部出力端子を備えた」態様を特定したものといえる。
そして、本件訂正発明1が甲3発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないものであるから、さらに構成を付加した本件訂正発明2が、甲3発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)無効理由3のまとめ
以上検討したところによれば、無効理由3には理由がない。

9.審判請求人の反論について
(1)審判請求人は、弁駁書の第10頁第3行から同頁第10行において、『工場出荷前から故障原因が記憶されているということは、本件明細書に一切記載されていないどころか、その示唆すらない。さらに、「停止させた理由」は停止しなければ分からないものであり、それが工場出荷時から記憶してあるとの被請求人の主張は、主張自体に矛盾があるものである。』と主張している。
しかしながら、甲第3号証の第2頁右下欄第12行から同欄第14行に「この状態量の現在値と、後述するような方法によって予め作成しておいた判定値とを比較することによって故障の程度を診断する」とあるように、状態量の現在値(本件訂正発明1の「各検出手段が検出したデータ」が相当)は現在値、すなわち故障が発生した場合であり、判定値(本件訂正発明1の「故障原因」及び「停止させた理由」が相当)は予め作成しておいたものであることは技術常識であるといえることを踏まえると、「故障原因」及び「停止させた理由」を使用する前に予め作成しておけば足りることは明らかであり、その一例として「工場出荷時」を例示したものにすぎないことは明らかである。また、「予め作成しておいた判定値とを比較することによって故障の程度を診断する」ことが上記の甲第3号証の第2頁右下欄第12行から同欄第14行に例示されるように、故障を診断する判定値(本件訂正発明1の「故障原因」及び「停止させた理由」が相当)は予め作成しておいたものであり、「停止しなければ分からないもので」あるとはいえないことは明らかである。
したがって、審判請求人の前記主張を採用することができない。

(2)審判請求人は、弁駁書の第13頁第20行から同頁第22行において、『本件明細書の記載をみても、「各検出手段が検出するのはデータであって、故障原因ではない」とする被請求人の主張の根拠は全く認められない。』と主張している。
しかしながら、甲第3号証の第2頁右下欄第12行から同欄第14行に「この状態量の現在値と、後述するような方法によって予め作成しておいた判定値とを比較することによって故障の程度を診断する」とあるように、状態量の現在値(本件訂正発明1の「各検出手段が検出したデータ」が相当)は現在値、すなわち故障が発生した場合であり、判定値(本件訂正発明1の「故障原因」及び「停止させた理由」が相当)は予め作成しておいたものであることは技術常識であるといえることを踏まえると、被請求人が主張するように「各検出手段が検出するのはデータであって、故障原因ではない」といえることは明らかである。
したがって、審判請求人の前記主張を採用することができない。

(3)審判請求人は、弁駁書の第17頁第6行から同頁第25行において、
『カ 答弁書第7頁第2?10行で被請求人自らが主張するごとく、
i)本件発明の課題が「故障状態が表示された後、どの様な操作をすればよいかが分からないという問題」に着目し、「圧縮機の非熟練者・一般作業者でも圧縮機の操作や故障対策を行うことができるスクリュー圧縮機を提供すること」にあり、
ii)その課題を解決するため、「前記制御装置は、トラブルシューティング時には前記記憶手段に記憶した故障データと操作手順のフローとが表示された表示手段の出力に基づいて前記入力手段から対話形式で入力された操作信号により制御を進める」ことが本件発明の特徴点である
とするならば、
その課題が具体的にどのようにして解決され得るのか、すなわち、「故障状態が表示された後、どの様な操作をすればよいかが分からない」非熟練者や一般作業者をどのような操作手順のフローによって適正な圧縮機の操作や故障対策に導き得るのか、また、そのときに「故障データ」なるものがどのように圧縮機の操作や故障対策に寄与し得るのかは当然に開示されるべきであり、かかる点について何ら開示のない本件明細書の記載が当時特許法第36条第4項第1号若しくは第2号または同条第3項の規定に反するものであることは明白である。』と主張している。
しかしながら、全文訂正明細書の第3頁第27行から同頁第33行に記載されているように、『操作者は、このメニュー画面を見て、次に何をするかを、選択キースイッチ21を操作しカーソルを動かして選択し、承認キースイッチ22を押下して表示画面と制御とを次の段階に進める。ここでは、試運転を例に説明する。試運転を選択した場合、制御装置11は、CRT19に「運転前に何をすべきか」、「いままで何を実施したか」のデータを操作手順を進めるに従いその都度表示する。この表示の都度、操作者は承認キースイッチ22を押下し、対話形式で制御を進める。」、「このメニュー画面を見て、次に何をするかを、選択キースイッチ21を操作しカーソルを動かして選択し、承認キースイッチ22を押下して表示画面と制御とを次の段階に進める』点により、全文訂正明細書の「〔発明の効果〕」に記載された、「以上述べたように、従来は取扱説明書等に記載されている操作手順や故障対策手順、トラブルシューティングの流れ図のデータ等を制御装置の記憶装置に格納しておき、操作時や故障発生時にこれらのデータを操作者との間で対話形式で表示画面上に文章やグラフィックス等で表示するので、操作者は、圧縮機の操作時や故障発生時に、表示データを見て次にどの様な操作をしたらよいかを知ることができる。従って、圧縮機について専門知識を持たない一般作業者でも、圧縮機の操作が可能となる。」という効果を奏することは明らかであるので、本件明細書の記載が改正前特許法第36条第4項第1号若しくは第2号または同条第3項の規定に反するということはできない。
したがって、審判請求人の前記主張を採用することができない。

(4)審判請求人は、弁駁書の第18頁第11行から同頁第18行において、
『イ 前記の主張i)について、「操作手順フロー」という語句を字義どおり忠実に解釈するならば、「操作者が操作する手順の流れ」を意味すると解するのが妥当であり、少なくとも、被請求人が主張するように「表示画面と制御とを次の段階に進めるための表示」の意味であると解する根拠は全く存在しない。この被請求人の無理な主張は、本件訂正によって構成要件Lの主体を「操作者」から「制御装置」に違法に変更したことに伴って止むを得ず行われたものであって、まさしく本件訂正が違法であるという事実の証左に他ならない。』と主張している。
しかしながら、本件訂正発明1に特定された「前記制御装置は、トラブルシューティング時には前記記憶手段に記憶した故障データと操作手順のフローとが表示された表示手段の出力に基づいて前記入力手段から対話形式で入力された操作信号により制御を進める」という構成により、操作手順フローを表示することにより、全文訂正明細書の第3頁第27行から同頁第33行の『操作者は、このメニュー画面を見て、次に何をするかを、選択キースイッチ21を操作しカーソルを動かして選択し、承認キースイッチ22を押下して表示画面と制御とを次の段階に進める。』という「表示画面と制御とを次の段階に進めるための表示」であることを説明したにすぎないことは明らかである。
したがって、審判請求人の前記主張を採用することができない。

(5)審判請求人は、第2回口頭審理陳述要領書の第2頁第13行から第3頁第17行において、
『<依頼事項a>(「操作手順のフロー」)
(1) 定義は不明。「操作をする順序又はだんどりを表現したもの」と解したとしても、具体的にどのようなものが該当するのか、その外延は不明。仮に明細書の記載から推認するならば、下記二重下線部分のものまたはこれに均等なもののいずれかと定義され得る。(注:二重下線をアンダーラインで表示している。)
「記憶装置12には、取扱説明書に記載されている運転手順を操作手順のデータや、各操作の詳細説明文,グラフ,図面等のデータ、トラブルシューティングの手順データ等が、夫々対応して格納されている。」(本件公報4欄35?38行)
「従来は取扱説明書等に記載されている操作手順や故障対策手順、トラブルシューティングの流れ図のデータ等を制御装置の記憶装置に格納しておき、操作時や故障発生時にこれらのデータを操作者との間で対話形式で表示画面上に文章やグラフィックス等で表示するので、」(同公報6欄24?29行)
(2) 実施可能要件違反:発明の課題解決は「操作手順のフロー」の具体的内容に依拠する。「圧縮機の専門知識を持たない非熟練者・一般作業者に対し圧縮機の操作手順や故障対策手順を分かり易く知らせる」ことが可能な「操作手順のフロー」は、特定のものに限られるのに、明細書または図面に具体的記載がない。単に「操作をする順序又はだんどり」というだけ、あるいは、前記の「取扱説明書…」程度の例示では、課題解決手段が不明(参考資料1:東京高裁平成13年(行ケ)第332号同庁15年4月8日判決。ドア用電気錠の「ドアロックを開閉するアクチュエータ」につき発明の本質的構成要素である「ソレノイド」の具体例について考案の詳細な説明における記載不十分を理由に無効審判請求不成立審決を取り消す(同時に技術常識を参酌した場合における進歩性欠如を示唆)。)。
(3) 本件明細書の「試運転を選択した場合、…その都度表示する」との記載は「試運転」での表示に関する。肝心のトラブルシューティング時に表示される操作手順フローの内容は不明。
訂正後の明細書には「…前述したと同様に対話形式で故障の最終的原因…」(乙第1号証第4頁46?47行)としか記載がなく、肝心のトラブルシューティング時の具体的構成は全く不明。』と主張している。
しかしながら、審判請求人は『発明の課題解決は「操作手順のフロー」の具体的内容に依拠する』と主張するが、全文訂正明細書の「〔発明の効果〕」に記載された、「以上述べたように、従来は取扱説明書等に記載されている操作手順や故障対策手順、トラブルシューティングの流れ図のデータ等を制御装置の記憶装置に格納しておき、操作時や故障発生時にこれらのデータを操作者との間で対話形式で表示画面上に文章やグラフィックス等で表示するので、操作者は、圧縮機の操作時や故障発生時に、表示データを見て次にどの様な操作をしたらよいかを知ることができる。従って、圧縮機について専門知識を持たない一般作業者でも、圧縮機の操作が可能となる。」という効果は、本件訂正発明1の「前記制御装置は、トラブルシューティング時には前記記憶手段に記憶した故障データと操作手順のフローとが表示された表示手段の出力に基づいて前記入力手段から対話形式で入力された操作信号により制御を進める」ことにより達成されることは明らかであり、具体的な操作手順のフローがどのようなものであるのかに依存するものではないことは明らかであるので、『発明の課題解決は「操作手順のフロー」の具体的内容に依拠する』との主張を採用することができない。また、東京高裁平成13年(行ケ)第332号同庁15年4月8日判決は審判請求人も示すように「ソレノイド」の具体例につき考案の詳細な説明における記載要件について判断したものであり、本件訂正発明1に特定されるようなソフトウエアの記載と、具体的なソレノイドの構造に関するものとではその記載要件について当業者が容易に実施することができるといえるために具体的な記載がどこまで必要なのかは異なることは明らかであり、一律に論じることができない。
したがって、審判請求人の前記主張を採用することができない。

(6)審判請求人は、第2回口頭審理陳述要領書の第3頁第13行から同頁第25行において、
『<依頼事項c>(その他の記載不備)
(1)「対話形式」についても同様に明細書に具体的な開示なし(前掲参考資料1:東京高裁平成15年4月8日判決参照)。
(2)「このスクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する記憶装置」とは、「故障原因」が、a.故障発生時に記憶装置に記憶されるものであるのか、c.故障発生時に検出手段が検出するものであるのか、あるいは被請求人主張のようにb.記憶時点が全く特定されていないのか相変わらず不明。』と主張している。また、審判請求人は、平成22年4月1日付けの上申書の第26頁第19行から第27頁第19行においても同様な主張を行っている。
しかしながら、上記「(1)」は、「6.(5)「対話形式で操作信号を入力する」について」の「(5-3)当審の判断」に示した理由により、その主張を採用することができない。また、上記「(2)」についても、「6.(4)「スクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する」について」の「(4-3)当審の判断」に示した理由によりその主張を採用することができない。

(7)審判請求人は、平成22年4月1日付けの上申書の第7頁第12行から第8頁第9行において、
『[3] 上述した一般的な「トラブルシューティング」の定義、すなわち故障の発見そのものも含まれるとする定義は、下記のとおり本件明細書の記載とも矛盾しない。
ア 被請求人は、本件発明に係る「トラブルシューティング」が限定的に解釈される根拠として、本件明細書における
「操作者は、選択及び承認キースイッチ21,22の操作によりトラブルシューティングの手順に入り、制御装置11との間で前述したと同様に対話形式で故障の最終的原因を追求し、対策を講じる。」
との記載を指摘するが、この記載のうち「トラブルシューティング」に該当する操作が「故障の最終的原因を追求」するまでであるのか、あるいは「対策を講じる。」まで含まれるのかは、その曖昧な記載では判別できない。むしろ、前記の技術常識に鑑みれば、本件発明に係る「トラブルシューティング」には『原因の追求』、すなわち『故障の原因の追求・発見』そのものも該当すると解するのが相当である。
イ さらに、その「対策を講じる」の記載も前記の箇所に唯一存在するのみで、もとより請求項1にも記載がない。斯かる脆弱な明細書の記載では、「トラブルシューティング時には…対話形式で操作信号により制御を進める」との請求項の発明特定事項が「対策」に限定されると解釈する根拠となり得ないことは明らかである。もしそのような「対策」に発明の特徴部分があるとするならば、本件明細書はサポート要件乃至は実施可能要件を欠くものといわなければならない。』と主張している。
しかしながら、全文訂正明細書の第4頁第3行から同頁第9行には、「制御装置11は各センサ10a?10eからのデータにより故障が発生したと判断した場合には、モートル始動盤16に対し停止信号を送出してモートル3を緊急停止させると共に、操作者に対し故障発生を知らせるべく図示しない警報装置を作動させ、更に、故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する。操作者は、選択及び承認中-スイッチ21.22の操作によりトラブルシューティングの手順に入り、制御装置11との間で前述したと同様に対話形式で故障の最終的原因を追求し、対策を講じる。」と記載されているように、「トラブルシューティングの手順に入り、・・・、対策を講じる」なる記載があることを踏まえれば、「トラブルシューティング」が故障の原因の追求・発見のみではなく、「対策」を含むことが明らかであるといえる。
したがって、審判請求人の前記主張を採用することができない。

(8)審判請求人は、平成22年4月1日付けの上申書の第10頁第26行から第11頁第8行において、
『イ そして、貴合議体のご見解によれば、「制御対象」が、「CRT19」と「外部モニタ20」といった表示装置ではなく、また、本件発明における「トラブルシューティング」は「原因の追求」のみならず、「故障対策」も必須的に含むものであると認定され、そのように判断できる十分な開示が本件明細書にあり、具体的な「制御対象」もその「制御対象」の制御の内容も本件明細書に当業者が容易に実施できる程度に開示されていると判断されているものと推察される。
ウ しかしながら、その判断の根拠となる本件明細書の記載がどこであるのか全く不明なのであり、請求人は、今後の審理にあたって今一度、この点を確認されることを強く希求する。』と主張しているが、「6.(1)本件訂正発明1が根拠とする全文訂正明細書の箇所について」に示したように、本件訂正発明1は全文訂正明細書の記載に基づいて記載不備があるとはいえないことから、上記の主張を採用することができない。

(9)審判請求人は、平成22年4月1日付けの上申書の第11頁第10行から同頁第18行において、
『[1] 知財高裁平成22年1月29日判決(平成20年(行ケ)第10276号)は、請求項中の「ルイス酸製剤」という文言が明細書に十分に開示がないことを理由に、明細書記載不備を否定した特許庁審決を取り消した。また、知財高裁平成22年3月30日判決(平成21年(行ケ)第10158号)は、請求項中の「補助エステル」について明細書に明確かつ十分な記載がないとして拒絶査定維持審決を妥当と判断した。
[2] 請求人は、本件こそ、上記した近時の知財高裁における、明細書に対して発明の十分な開示を求める判断基準に照らしても、明らかに開示不十分と認められるべきケースと確信する。』
と主張しているが、上記の(5)と同様に、判決は「ルイス酸製剤」という材料の特定が重要な分野に特有のものであり、本件訂正発明1の分野とは異なることは明らかであり、一律に論じることができない。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することができない。

10.むすび
以上のとおり、無効理由1及び3には理由がなく、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1及び2に係る発明の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、審判請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
スクリュー圧縮機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】圧縮室内に収納されたスクリューをモータで回転駆動して圧縮空気を発生するスクリュー圧縮機において、エアフィルタの目詰まりを検出するエアフィルタ検出手段と、吐出空気温度を検出する吐出温度検出手段と、吐出空気圧力を検出する吐出圧力検出手段と、オイルフィルタの目詰まりを検出するオイルフィルタ検出手段と、モータ電流を検出する電流検出手段と、このスクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する記憶装置と、圧縮機の運転を制御する制御装置と、この制御装置に操作信号を入力する入力手段と、この制御装置の出力を表示する表示手段とを備え、前記記憶装置は圧縮機の操作手順フローを記憶しており、前記制御装置は、トラブルシューティング時には前記記憶手段に記憶した故障データと操作手順のフローとが表示された表示手段の出力に基づいて前記入力手段から対話形式で入力された操作信号により制御を進めることを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項2】前記表示手段は、他のモニタ手段に音声信号とビデオ信号を出力する外部出力端子を備えたことを特徴とする請求項1に記載のスクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、スクリュー圧縮機に係り、特に非熟練者や一般作業員が操作するのに好適なスクリュー圧縮機に関する。
〔従来の技術〕
従来の圧縮機用メンテナンス装置では、例えば圧縮機に故障が発生した場合、故障検出センサからの検出信号を制御装置が判断し、故障か警報かを判定して計器パネル上の該当ランプを点灯するようにしている。また、必要な操作手順や故障時の対処方法等のデータを記憶しておき、圧縮機の操作時や故障発生時に、音声合成ICで必要なデータを音声データに変換して操作者に知らせる従来技術もある。
尚、従来技術に関連するものとして、実開昭54-176109号がある。
〔発明が解決しようとする課題〕
圧縮空気を使用する工場などでは、圧縮機は重要な動力源である。このため、その操作や点検で手間取る工場での生産ライン等に影響が及ぶことになる。しかし一方で、省力化や自動化が進み、圧縮機の操作を専門に行う担当者を置くことは稀になってきている。従って、圧縮機用メンテナンス装置として、圧縮機の専門知識を持たない非熟練者・一般作業者に対し圧縮機の操作手順や故障対策手順を分かり易く知らせることができるものが要望されてきている。
しかし、上記従来技術に係るメンテナンス装置は、圧縮機の専門知識をもつ熟練者の負担を軽減することを主眼としているため、一般作業者や非熟練者が取り扱った場合、音声やランプである運転状態や故障状態が表示された後、どの様な操作をすればよいかが分からないという問題がある。
本発明の目的は、圧縮機の非熟練者・一般作業者でも圧縮機の操作や故障対策を行うことができるスクリュー圧縮機を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的は、圧縮室内に収納されたスクリューをモータで回転駆動して圧縮空気を発生するスクリュー圧縮機において、エアフィルタの目詰まりを検出するエアフィルタ検出手段と、吐出空気温度を検出する吐出温度検出手段と、吐出空気圧力を検出する吐出圧力検出手段と、オイルフィルタの目詰まり検出するオイルフィルタ検出手段と、モータ電流を検出する電流検出手段と、このスクリュー圧縮機に故障が発生したときに前記各検出手段が検出したデータと故障原因とを記憶する記憶装置と、圧縮機の運転を制御する制御装置と、この制御装置に操作信号を入力する入力手段と、この制御装置の出力を表示する表示手段とを備え、前記記憶装置は圧縮機の操作手順フローを記憶しており、前記制御装置は、トラブルシューティング時には前記記憶手段に記憶した故障データと操作手順フローとが表示された表示手段の出力に基づいて前記入力手段から対話形式で入力された操作信号により制御を進めることにより達成される。
〔作用〕
圧縮機の操作時や故障発生時に、メンテナンス装置の表示画面には操作情報や故障情報等が、文章やグラフィックスで表示される。これにより、操作者が一般作業者であっても、表示されたデータに従って操作すれば、熟練者と同様に圧縮機を操作することが可能となる。
〔実施例〕
以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
第1図は、本発明の一実施例に係る油冷式スクリュー圧縮機の模式図である。この圧縮機の圧縮室1内に収納されたスクリューは、ベルト2を介しモートル3にて回転駆動される。圧縮室1には、エアフィルタ4でフィルタリングされた空気と、オイルフィルタ5でフィルタリングされた潤滑油(シール用,冷却用としても働く。)が供給される。スクリューの回転により圧縮された空気は、その圧縮工程において潤滑油と共に油分離器6に吐出される。この油分離器6で油分を除かれた圧縮空気は、アフタークーラ7で冷却された後、この圧縮機の外部に吐出される。一方、油分離器6で分離された潤滑油は油分離器6底部に溜り、その後オイルクーラ8にて冷却され、オイルフィルタ5を通って再び圧縮室1に供給される。
この圧縮機の運転・停止は、モートル3への電力の供給・停止により行われる。運転装置9は、圧縮機の各所要部に取り付けられたセンサからの信号により、モートル3への電力供給を自動制御する。第1図に示す例では、センサ10aが圧縮室1の空気吸入側に取り付けられたエアフィルタ4の目詰まりを検出し、センサ10bが圧縮室1から吐出される圧縮空気の音を検出し、センサ10cが油分離器6から吐出される圧縮空気の圧力を検出し、センサ10dがオイルフィルタ5の目詰まりを検出し、センサ10eをモートル3の電流を検出し、これらの検出信号が運転装置9に常時送られる。
運転装置9は、本発明の一実施例に係るメンテナンス装置を内蔵している。第2図は、運転装置9の構成図である。運転装置9は、制御装置11と、記憶装置12と、入力回路13と、CRT出力回路14と、ビデオ信号出力回路15と、モートル始動盤16と、操作表示部17から成り、操作表示部17は操作部18とCRT19とを備えている。
記憶装置12には、取扱説明書に記載されている運転手順を操作手順のデータや、各操作の詳細説明文,グラフ,図面等のデータ、トラブルシューティングの手順データ等が、夫々対応して格納されている。入力回路13は、操作部18からの操作入力信号と各センサ10a?10eからの検出信号を取り込んでこれをディジタル信号に変換して制御装置11に送出する。制御装置11は、入力回路13から受け取った信号を記憶装置12に格納すると共に、これらの信号に応じて各種の制御信号をCRT出力回路14、ビデオ信号出力回路15、モートル始動盤16に出力する。CRT出力回路14からのCRT信号はCRT19に送出され、CRT19の表示画面には制御装置11の制御信号に応じた各種データが表示される。また、この運転装置9と離れた所でCRT19の表示と同じデータをモニタする場合には、ビデオ信号出力回路15の出力端子にテレビ等の外部モニタ装置20を接続する。この様に、ビデオ信号出力回路15を備えることで、家庭用テレビを外部モニタ20として使用できる。
第3図は、操作表示部17の正面図である。操作表示部17の正面にはCRT19の表示画面と操作部18と操作信号を入力する各種キースイッチが設けられている。第3図に示す例では、CRT表示画面上のカーソルを動かす選択キースイッチ21と、CRT表示画面に表示された選択メニューのうちカーソル移動で選択したメニューを承認する承認キースイッチ22と、スタートスイッチ23と、ストップスイッチ24等が設けられている。
次に、上述した圧縮機の運転動作を説明する。
操作者が電源を投入すると、制御装置11はタイトル画面データを記憶装置12から読み出し、これをCRT19に表示する。次に操作者がスタートスイッチ23を押下すると、制御装置11はメニュー画面データを記憶装置12から読み出しこれをCRT19に表示する。操作者は、このメニュー画面を見て、次に何をするかを、選択キースイッチ21を操作しカーソルを動かして選択し、承認キースイッチ22を押下して表示画面と制御とを次の段階に進める。ここでは、試運転を例に説明する。試運転を選択した場合、制御装置11は、CRT19に「運転前に何をすべきか」、「いままで何を実施したか」のデータを操作手順を進めるに従いその都度表示する。この表示の都度、操作者は承認キースイッチ22を押下し、対話形式で制御を進める。もし、圧縮機の運転中に圧縮機を停止する場合、操作者はストップスイッチ24を押下する。これにより、制御装置11はモートル始動盤16へ停止信号を送出し、モートル3への電力供給が遮断される。このとき、制御装置11は、記憶装置12からタイトル画面データを読み出し、これをCRT19に表示する。
圧縮機の運転中は、制御装置11は各センサ10a?10eから送られてくるデータをCRT19に表示して異常無く運転中であることを知らせると共に、各センサ10a?10eからのデータに応じて圧縮機の運転を自動制御する。制御装置11は各センサ10a?10eからのデータにより故障が発生したと判断した場合には、モートル始動盤16に対し停止信号を送出してモートル3を緊急停止させると共に、操作者に対し故障発生を知らせるべく図示しない警報装置を作動させ、更に、故障発生時の各種データと停止させた理由及び圧縮機の操作手順フローチャートを記憶装置12から読み出してCRT19に表示する。操作者は、選択及び承認キースイッチ21,22の操作によりトラブルシューティングの手順に入り、制御装置11との間で前述したと同様に対話形式で故障の最終的原因を追求し、対策を講じる。
操作者が運転装置9の近くにいない場合には、外部モニタ20を運転装置9に接続してCRT19の表示データと同じデータをそのモニタ20で見る。この様に、運転装置9に外部モニタ接続用端子を設けることで、簡単な電気工事で外部モニタ20を接続でき、遠方監視が容易になる。尚、第2図には図示を省略したが、CRT19や外部モニタ20に表示するデータを音声でも出力できる様に、運転装置9に音声出力回路を設けることもできる。尚、外部モニタ20として、操作表示部17と同じものを使用すれば、遠隔地にて圧縮機の操作,故障対策を対話形式でできることはいうまでもない。
尚、実施例では、表示装置をCRT19として説明したが、文章やグラフィックスを明確に表示できるものであれば、液晶等の表示器も請求項にいうCRT装置に含まれるものである。また、グラフィックスをCRTの様にカラーで表示できるものであればより一層表示が分かり易くなるので好ましい。
〔発明の効果〕
以上述べたように、従来は取扱説明書等に記載されている操作手順や故障対策手順、トラブルシューティングの流れ図のデータ等を制御装置の記憶装置に格納しておき、操作時や故障発生時にこれらのデータを操作者との間で対話形式で表示画面上に文章やグラフィックス等で表示するので、操作者は、圧縮機の操作時や故障発生時に、表示データを見て次にどの様な操作をしたらよいかを知ることができる。従って、圧縮機について専門知識を持たない一般作業者でも、圧縮機の操作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例に係る圧縮機の模式図、第2図は第1図に示す運転装置の詳細構成図、第3図は第2図に示す操作表示部である。
1……圧縮室、3……モートル、9……運転装置、11……制御装置、12……記憶装置、15……ビデオ信号出力回路、17……操作表示部、19……CRT、20……外部モニタ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2010-04-26 
結審通知日 2010-04-30 
審決日 2010-06-02 
出願番号 特願昭63-312028
審決分類 P 1 113・ 536- YA (F04B)
P 1 113・ 537- YA (F04B)
P 1 113・ 121- YA (F04B)
P 1 113・ 573- YA (F04B)
P 1 113・ 572- YA (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩崎 晋  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 田良島 潔
片岡 弘之
登録日 1998-05-29 
登録番号 特許第2786214号(P2786214)
発明の名称 スクリュー圧縮機  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  
代理人 村松 敏郎  
代理人 速見 禎祥  
代理人 岩坪 哲  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  
代理人 小谷 悦司  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ