• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1222018
審判番号 不服2009-23256  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-27 
確定日 2010-08-12 
事件の表示 特願2009- 2738「パチンコ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 1月14日出願公開、特開2010- 5372〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成21年1月8日の出願(国内優先権主張 平成20年3月6日)であって、平成21年8月25日付け(発送:9月1日)で拒絶査定され、これに対し、同年11月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成22年4月5日付けで審査官の前置報告書に基づく審尋がなされ、平成22年5月24日付けで回答書が提出された。

2.平成21年11月27日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年11月27日付の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、補正前の請求項1に記載された
「【請求項1】始動条件の成立に伴って乱数値の抽選を行い、該抽選結果に基づいて大入賞口を開閉動作させる特別遊技を実行する制御手段を備え、前記制御手段が、前記乱数値の抽選結果に基づいて、前記大入賞口の開閉扉の開閉回数が所定回数で前記大入賞口の一回あたりの最大開成時間が第1の時間とされる第1の特別遊技と、前記大入賞口の開閉扉の開閉回数が前記第1の特別遊技と同一回数で、前記大入賞口の一回あたりの最大開成時間として、少なくとも1回、前記第1の時間より短い第2の時間を含む第2の特別遊技と、前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間が全て前記第2の時間であり、前記所定回数の大入賞口の開閉扉の開閉動作の前後で遊技状態が変化しない第3の特別遊技を実行可能なパチンコ遊技機であって、
前記制御手段は、前記第2の特別遊技として、前記大入賞口の開閉動作開始から第1の回数までの前記大入賞口の一回あたりの最大開成時間を前記第1の時間とし、前記第1の回数以降から所定回数までの前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間を前記第2の時間とした特別遊技と、
前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間を全て前記第2の時間とした特別遊
技と、を実行可能であることを特徴とするパチンコ遊技機。」
という発明を、
「【請求項1】始動条件の成立に伴って乱数値の抽選を行い、該抽選結果に基づいて大入賞口を開閉動作させる特別遊技を実行する制御手段を備え、前記制御手段が、前記乱数値の抽選結果に基づいて、前記大入賞口の開閉扉の開閉回数が一回とされるラウンド遊技のラウンド数が所定回数で、前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間が第1の時間であり、前記大入賞口の開閉扉の開閉動作の前後で遊技状態を変化させることが可能な第1の特別遊技と、前記大入賞口の開閉扉の開閉回数が一回とされるラウンド遊技のラウンド数が前記第1の特別遊技と同一回数で、前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間として、少なくとも一回、前記第1の時間より短い第2の時間を含み、前記大入賞口の開閉扉の開閉動作の前後で遊技状態を変化させることが可能な第2の特別遊技と、前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間が全て前記第2の時間で、且つ、前記大入賞口の開閉扉の開閉回数が前記第2の特別遊技と同一回数であり、大入賞口の開閉扉の開閉動作の前後で遊技状態が変化しない第3の特別遊技と、を実行可能なパチンコ遊技機であって、
前記第1及び第2の特別遊技のラウンド数を報知するラウンド報知手段を設けないようにしたうえで、
前記制御手段は、前記第2の特別遊技として、前記大入賞口の開閉動作開始から第1の回数までの前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間を前記第1の時間とし、前記第1の回数以降から所定回数までの前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間を前記第2の時間とした特別遊技と、前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間を全て前記第2の時間とした特別遊技と、を実行可能であることを特徴とするパチンコ遊技機。」
という発明に変更することを含むものである。

なお、請求項1の「前記第1及び第2の特別遊技のラウンド数を報知するラウンド報知手段を設けないようにしたうえで、」における「ラウンド数」は、第1及び第2の特別遊技におけるそれぞれの合計ラウンド数であるのか第1及び第2の特別遊技における途中経過におけるラウンド数(何ラウンド目のラウンド)であるのかが、必ずしも明確ではないが、明細書の段落0032、段落0036、段落0038の記載を参酌して合計ラウンド数であると認めて以下検討を行う。

(2)補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1における、「前記大入賞口の開閉扉の開閉回数が所定回数で前記大入賞口の一回あたりの最大開成時間が第1の時間とされる第1の特別遊技」を「前記大入賞口の開閉扉の開閉回数が一回とされるラウンド遊技のラウンド数が所定回数で、前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間が第1の時間であり、前記大入賞口の開閉扉の開閉動作の前後で遊技状態を変化させることが可能な第1の特別遊技」と変更することで第1の特別遊技を限定し、以下同様に「前記大入賞口の一回あたりの最大開成時間として、少なくとも1回、前記第1の時間より短い第2の時間を含む第2の特別遊技」を「前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間として、少なくとも一回、前記第1の時間より短い第2の時間を含み、前記大入賞口の開閉扉の開閉動作の前後で遊技状態を変化させることが可能な第2の特別遊技」に変更することで第2の特別遊技を限定し、「前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間が全て前記第2の時間であり、前記所定回数の大入賞口の開閉扉の開閉動作の前後で遊技状態が変化しない第3の特別遊技」を「前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間が全て前記第2の時間で、且つ、前記大入賞口の開閉扉の開閉回数が前記第2の特別遊技と同一回数であり、大入賞口の開閉扉の開閉動作の前後で遊技状態が変化しない第3の特別遊技」に変更することで第3の特別遊技を限定し、「前記大入賞口の一回あたりの最大開成時間」を「前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間」に変更することで最大開成時間を限定したものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
なお、請求項1に「前記第1及び第2の特別遊技のラウンド数を報知するラウンド報知手段を設けないようにしたうえで」を追加する補正は、特許法第17条の2第5項各号の特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正または明りょうでない記載の釈明の何れにも該当せず、厳密にいうと違法であるが、特許請求の範囲が拡張されたわけでも、不明確になったわけでもないから、この点は不問に付す。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

(3)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由(平成21年4月6日付け拒絶理由通知)において引用文献1として引用された特開2007-111402号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0159】可変入賞装置32は、略板状の可動プレート32bを備えている。可動プレート32bは遊技盤30の背面側に設けられたソレノイド32cに連結されている。なお、可動プレート32b及びソレノイド32cにより電動役物が構成されている。ソレノイド32cが励磁されていない場合、可動プレート32bはその前面がパチンコ機10前方を向くように起立し、可変入賞装置32の開口を塞ぐ。これにより、可変入賞装置32は、遊技球の入賞できない又は入賞しにくい閉鎖状態となっている。一方、ソレノイド32cが励磁されることにより、可動プレート32bはその下端を軸線として手前側に回動し、遊技領域YSに対して略垂直方向に起立した状態となる。すなわち、可変入賞装置32が遊技球の入球が可能な開放状態となる。可変入賞装置32(電動役物)の開放態様としては、所定時間(例えば30sec)の経過又は所定個数(例えば10個)の入賞を1ラウンドとし、複数ラウンド(例えば15ラウンド)を上限として繰り返し開放されるものが一般的である。」

(イ)「【0208】本実施の形態では、主制御基板271aのCPU501は、遊技に際し各種カウンタ情報を用いて、大当たり抽選、特定ランプ45の発光色の設定、図柄表示装置41の図柄表示の設定や可変入賞装置32の開閉態様の設定などを行うこととしており、具体的には、図12に示すように、リーチの抽選に使用するリーチ乱数カウンタC1と、リーチ種別を判定する際に使用するリーチ種別カウンタC2と、可変入賞装置32の開閉態様を設定する際に使用する開閉態様カウンタC3と、リーチ乱数カウンタC1の初期値設定に使用する乱数初期値カウンタCINIと、図柄表示装置41の変動パターン選択に使用する第1変動種別カウンタCS1と、特定ランプ45に表示される色の切り替えを行う期間を決定する第2変動種別カウンタCS2と、左列、中列及び右列の各外れ図柄の設定に使用する左・中・右の各外れ図柄カウンタCL,CM,CRとを用いることとしている。
【0209】このうち、カウンタC1?C3,CINI,CS1,CS2は、その更新の都度前回値に1が加算され、最大値に達した後0に戻るループカウンタとなっている。また、外れ図柄カウンタCL,CRは、CPU501内のRレジスタ(リフレッシュレジスタ)を用いてレジスタ値が加算され、結果的に数値がランダムに変化する構成となっている。各カウンタは短時間間隔で更新され、その更新値がRAM503の所定領域に設定されたカウンタ用バッファに適宜格納される。RAM503には、1つの実行エリアと4つの保留エリア(保留第1?第4エリア)とからなる保留球格納エリアが設けられており、これらの各エリアには、スルーゲート33における遊技球の通過履歴に合わせて、リーチ乱数カウンタC1及びリーチ種別カウンタC2の各値が時系列的に格納されるようになっている。
【0210】各カウンタについて詳しくは、リーチ乱数カウンタC1は、例えば0?69の範囲内で順に1ずつ加算され、最大値(つまり69)に達した後0に戻る構成となっている。特にリーチ乱数カウンタC1が1周した場合、その時点の乱数初期値カウンタCINIの値が当該リーチ乱数カウンタC1の初期値として読み込まれる。なお、乱数初期値カウンタCINIは、リーチ乱数カウンタC1と同様のループカウンタであり(値=0?69)、タイマ割込み毎に1回更新されると共に通常処理の残余時間内で繰り返し更新される。リーチ乱数カウンタC1は定期的に(本実施の形態ではタイマ割込み毎に1回)更新され、遊技球がスルーゲート33を通過したタイミングでRAM503の保留球格納エリアに格納される。リーチとなる乱数の値の数は、低確率時と高確率時とで2種類設定されており、低確率時にリーチとなる乱数の値の数は7で、その値は「3,15,23,35,43,55,63」であり、高確率時にリーチとなる乱数の値の数は21で、その値は「3,5,7,13,15,17,23,25,27,33,35,37,43,45,47,53,55,57,63,65,67」である。すなわち、低確率時には1/10の確率でリーチとなり、高確率時には3/10の確率でリーチとなる。
【0211】リーチ種別カウンタC2は、0?49の範囲内で順に1ずつ加算され、最大値(つまり49)に達した後0に戻る構成となっている。そして、本実施の形態では、リーチ種別カウンタC2によって、大当たり状態の終了後に高確率状態に移行させるか否かを決定することとしており、例えば、C2=0?24が大当たり状態終了後に高確率状態に移行する確変リーチに該当し、C2=25?49が大当たり状態終了後に通常状態に移行する通常リーチに該当する。なお、リーチ種別カウンタC2により、リーチ時における図柄の組合せ及び当該図柄の組合せを停止させる位置も決定される。即ち、本実施の形態では、図柄表示装置41において有効ラインが5ラインであり、主図柄が10通り設定されていることから、50個のカウンタ値によって全てのパターンが設定されていることとなる。そして、C2=0?24のとき、即ち、確変リーチのときには、奇数番号の図柄の組合せと当該図柄の組合わせを停止させる位置が決定される。一方、C2=25?49のとき、即ち、通常リーチのときには、偶数番号の図柄の組合せと当該図柄の組合わせを停止させる位置が決定される。リーチ種別カウンタC2は定期的に(本実施の形態ではタイマ割込み毎に1回)更新され、遊技球がスルーゲート33を通過したタイミングでRAM503の保留球格納エリアに格納される。
【0212】開閉態様カウンタC3は、例えば0?104の範囲内で順に1ずつ加算され、最大値(つまり104)に達した後0に戻る構成となっている。詳細は後述するが、本実施形態では、可変入賞装置32の開放時間として3秒と29.5秒の2通りが予め記憶されている。そして、開閉態様カウンタC3によって、15ラウンドのうち3秒開放を何ラウンド行うかを決定することとしている。これは、大当たり状態下で払い出される賞球数に変化を持たせるための工夫であり、リーチ図柄の組合せ(大当たり図柄の組合せ)と大当たり状態下で払い出される遊技球数とを一義的に関連付けないための工夫である。開閉態様カウンタC3は定期的に(本実施の形態ではタイマ割込み毎に1回)更新され、遊技球がスルーゲート33を通過したタイミングでRAM503の保留球格納エリアに格納される。」

(ウ)「【0226】なお、遊技球がスルーゲート33を通過した場合、それに伴い図柄表示装置41による図柄の変動表示が開始されることとなるが、始動入賞後、図柄が変動し図柄停止に至るまでには所定時間(例えば5秒)が経過していなければならないという制約がある。そこで、上記始動入賞処理では、始動入賞が確認された場合、各カウンタ値の格納処理(ステップS404)の後に、始動入賞後の経過時間を計るためのタイマをセットすることとしている。具体的には、上記始動入賞処理は2msec周期で実行されるため、例えば5秒の経過時間を計測するにはタイマに数値「2500」をセットし、始動入賞処理の都度、タ-イマ値を1ずつ減算する。このタイマ値は、その時々の各カウンタC1,C2の値と共に、RAM503の保留球格納エリアに格納され管理される。そして、後述する図柄の変動パターン設定に際しては、上記タイマ値が参照され、残り時間に応じて(所定時間経過後に図柄変動が停止されるよう)変動パターンが設定されるようになっている。」

(エ)「【0251】一方、切替表示時間が経過していた場合には、ステップS810において切替終了処理を実行する。この切替終了処理は、特定ランプ45に表示される色の切り替えを最終的にどの色で停止させるかを判別し、判別された色の光源をオン制御するための処理である。具体的には、まず現在オンとなっている光源のスイッチをオフ制御する。その後、RAM503のカウンタ用バッファに格納されているリーチ乱数カウンタC1の値及びリーチ種別カウンタC2の値を再度確認し、確変リーチが発生する場合には赤色光源のスイッチをオン制御し、通常リーチが発生する場合には緑色光源のスイッチをオン制御し、リーチが発生しない場合には青色光源のスイッチをオン制御する。これにより、それぞれの遊技結果に応じた色が特定ランプ45に表示されることとなる。なお。ここで設定された表示色は、次回の切替開始処理まで維持される。また、当該切替終了処理において赤色光源又は緑色光源のスイッチをオン制御する場合には、RAM503に設けられたリーチ変動フラグ格納エリアにリーチ変動フラグをセットする。
【0252】次に、ステップS606の電動式チューリップ開閉処理を、図22のフローチャートを用いて説明する。
【0253】ステップS1001では、電動式チューリップ34の可動翼片34bが作動状態であるか否かを確認することにより、電動式チューリップ34が開放中か否かを判別する。電動式チューリップ34が開放中でない場合には、ステップS1002にてRAM503に設けられた作動カウンタSCが0か否かを判別する。作動カウンタSCが0の場合には、ステップS1003にてRAM503に設けられたリーチ変動フラグ格納エリアにリーチ変動フラグがセットされているか否かを判別する。当該リーチ変動フラグは、上述した特定ランプ部制御処理(図20)におけるステップS810の切替終了処理にてセットされるフラグである。リーチ変動フラグがセットされていない場合には、そのまま本処理を終了する。一方、リーチ変動フラグがセットされている場合には、ステップS1004にて作動カウンタSCを6にセットする。この際、リーチ変動フラグをクリアする。その後、ステップS1005にて可動翼片34bを作動状態とする開処理を実行する。これにより、電動式チューリップ34が開放状態となる。そして、ステップS1006にて可動翼片34bの開閉タイミングを計るための第1タイマT1に500(すなわち1秒)をセットした後に本処理を終了する。この第1タイマT1にセットされたタイマ値は、タイマ割込み処理の都度、すなわち2msec周期で1つずつ減算される。
【0254】電動式チューリップ34が開放される(可動翼片34bが作動状態となる)ことにより、次回の電動式チューリップ開閉処理ではステップS1001にて肯定判別をする。ステップS1001にて肯定判別をした場合、ステップS1007にて第1タイマT1が0となったか否かを判別する。すなわち、可動翼片34bが作動状態となってから1秒経過したか否かを判別する。第1タイマT1が0となっていない場合には、そのまま本処理を終了する。一方、第1タイマT1が0となっている場合には、ステップS1008にて可動翼片34bを非作動状態とする閉処理を実行する。これにより、電動式チューリップ34が閉鎖状態となる。その後、ステップS1009にて作動カウンタSCを1減算し、ステップS1010にて第1タイマT1に2500(すなわち5秒)をセットし、さらにステップS1011にて外れ決定コマンド設定処理を実行した後に、本処理を終了する。外れ決定コマンド設定処理については後に説明する。
【0255】また、ステップS1001にて否定判別をし、さらにステップS1002にて作動カウンタSCが0でないと判別した場合には、ステップS1012にて第1タイマT1が0となったか否かを判別する。すなわち、可動翼片34bが非作動状態となってから5秒が経過したか否かを判別する。第1タイマT1が0となっていない場合には、そのまま本処理を終了する。一方、第1タイマT1が0となっている場合には、ステップS1005にて開処理を実行し、さらにステップS1006にて第1タイマT1に500をセットする。
【0256】すなわち、本実施の形態では、特定ランプ45において赤色又は緑色が停止表示されることで、電動式チューリップ34が特定周期開放状態となる。この特定周期開放状態では、1秒間の開放状態が5秒周期で6回発生する。
【0257】次に、ステップS607の入賞役物装置開閉処理を、図23のフローチャートを用いて説明する。
【0258】ステップS1101では、RAM503に設けられた開放フラグ格納エリアに開放フラグがセットされているか否かを判別する。開放フラグがセットされていない場合には、ステップS1102にて入賞フラグがセットされているか否かを判別する。当該入賞フラグは、上述したように、電動式チューリップ34に遊技球が入り作動センサ34aがONとなることでセットされるフラグである。なお、電動式チューリップ34の1回の開放で複数の遊技球が入り得るが、入賞フラグがセットされている状況下で作動センサ34aがONとなってもそれは無効化される。ただし、上述した払出制御用の入賞フラグはセットされるため、賞球は発生する。
【0259】入賞フラグがセットされていない場合には、そのまま本処理を終了する。一方、入賞フラグがセットされていた場合には、ステップS1103にて現在の遊技状態が大当たり状態か否かを判別する。大当たり状態でない場合には、ステップS1104にて転動カウンタMCが0か否かを判別する。転動カウンタMCは、入賞役物装置150の入口センサ179により遊技球が検出されることにより1加算され、外れ用センサ193により遊技球が検出されることにより1減算されるカウンタである。転動カウンタMCが0の場合には、ステップS1105にて開処理を実行する。開処理では、入賞役物装置150に設けられた電磁式ソレノイド173を励磁することで可動翼片168を作動状態とする。これにより、入賞役物装置150が開放状態となる。その後、ステップS1106にて可動翼片168の閉タイミングを計るための第2タイマT2に900(すなわち1.8秒)をセットする。この第2タイマT2にセットされたタイマ値は、タイマ割込み処理の都度、すなわち2msec周期で1ずつ減算される。
【0260】一方、ステップS1103にて遊技状態が大当たり状態である場合には、ステップS1107にて入賞フラグをクリアして本処理を終了する。すなわち、大当たり状態では、電動式チューリップ34に遊技球が入ったとしても入賞役物装置150は開放されない。また、ステップS1104にて転動カウンタMCが0でない場合にも、ステップS1106にて入賞フラグをクリアして本処理を終了する。すなわち、入賞役物装置150内に遊技球がある場合には、電動式チューリップ34に遊技球が入ったとしても入賞役物装置150は開放されない。
【0261】開放フラグがセットされており、ステップS1101にて肯定判別をした場合には、ステップS1108にて第2タイマT2が0となったか否かを判別する。すなわち、可動翼片168が作動状態となってから1.8秒経過したか否かを判別する。第2タイマT2が0となっていない場合には、そのまま本処理を終了する。一方、第2タイマT2が0となっていた場合には、ステップS1109にて閉処理を実行する。閉処理では、電磁式ソレノイド173の励磁を終了する。これにより、可動翼片168が非作動状態となり、入賞役物装置150は閉鎖状態となる。また、閉処理では、開放フラグをクリアする。その後、ステップS1110にて外れ決定コマンド設定処理を実行し、本処理を終了する。
【0262】ここで、外れ決定コマンド設定処理について図24のフローチャートを用いて説明する。
【0263】当該処理では、ステップS1201にて作動カウンタSCが0か否かを判別する。また、ステップS1202にて転動カウンタMCが0か否かを判別する。また、ステップS1203にて開放フラグがセットされているか否かを判別する。そして、作動カウンタSCが0であり(ステップS1201にて肯定判別をし)、転動カウンタMCが0であり(ステップS1202にて肯定判別をし)、開放フラグがセットされていない(ステップS1203にて否定判別をした)場合に、ステップS1204にて外れ決定コマンドをセットする。一方、上記判別のうちいずれか1つでも異なる場合には、ステップS1204にて外れ決定コマンドをセットすることなく本処理を終了する。すなわち、電動式チューリップ34にて一旦、特定周期開放状態が発生した後に、大当たり状態が発生することなく当該特定周期開放状態が完全に終了することにより、外れ決定コマンドがセットされる。この場合に、外れ決定コマンド設定処理を、電動式チューリップ開閉処理及び入賞役物装置開閉処理の両方の閉処理の後に実行することで、外れが決定した際には確実に外れ決定コマンドがセットされる。外れ決定コマンドは、通常処理(図18)のステップS601における外部出力処理にて表示制御基板214aに出力される。表示制御基板214aは、当該コマンドに基づいて、図柄表示装置41における図柄の変動態様を所定のものとする。これについては、後に説明する。
【0264】なお、電動式チューリップ開閉処理にて実行される外れ決定コマンド設定処理では、ステップS1204の処理を行う前に遊技状態が大当たり状態か否かを判別し、大当たり状態の場合には外れ決定コマンドがセットされない構成となっている。これにより、大当たり状態において外れ決定コマンドがセットされることが防止されている。
【0265】次に、ステップS608の遊技状態移行処理を、図25のフローチャートを用いて説明する。
【0266】ステップS1301では、遊技状態が大当たり状態か否かを判別する。大当たり状態でない場合には、ステップS1302にてRAM503に設けられたV入賞フラグ格納エリアにV入賞フラグがセットされているか否かを判別する。当該V入賞フラグは、上述したように、入賞役物装置150のV入賞口182aに遊技球が入りV入賞センサ192がONとなることでセットされるフラグである。
【0267】V入賞フラグがセットされていない場合には、ステップS1303にてRAM503に設けられた入球フラグ格納エリアに入球フラグがセットされているか否かを判別する。当該入球フラグは、上述したように、入賞役物装置150に遊技球が入り入口センサ179がONとなることでセットされるフラグである。入球フラグがセットされている場合には、入賞役物装置150内に遊技球が入ったこととなるので、ステップS1304にて転動カウンタMCを1加算し、さらにステップS1305にて入球コマンドをセットした後に、本処理を終了する。入球コマンドは、通常処理(図18)のステップS601における外部出力処理にて表示制御基板214aに出力される。表示制御基板214aは、当該コマンドに基づいて、図柄表示装置41における図柄の変動態様を所定のものとする。これについては、後に説明する。なお、ステップS1304おいて入球フラグをクリアする。
【0268】 一方、ステップS1303にて入球フラグがセットされていない場合には、ステップS1306にてRAM503に設けられた外れフラグ格納エリアに外れフラグがセットされているか否かを判別する。外れフラグがセットされていない場合には、そのまま本処理を終了する。外れフラグがセットされている場合には、ステップS1307にて転動カウンタMCを1減算する。この際、外れフラグをクリアする。その後、ステップS1308にて転動カウンタMCが0か否かを判別する。転動カウンタMCが0でない場合には、そのまま本処理を終了する。転動カウンタMCが0の場合には、入賞役物装置150内を転動していた遊技球がすべて外部に排出されたこととなるので、ステップS1309にて転動終了コマンドをセットした後に、本処理を終了する。転動終了コマンドは、通常処理(図18)のステップS601における外部出力処理にて表示制御基板214aに出力される。表示制御基板214aは、当該コマンドに基づいて、図柄表示装置41における図柄の変動態様を所定のものとする。これについては、後に説明する。
【0269】入賞役物装置150内を転動する遊技球がV入賞口182aに入りV入賞センサ192により検出された場合にはV入賞フラグがセットされるため、ステップS1302にて肯定判別をする。かかる場合、ステップS1310に進み、大当たり状態設定処理を実行する。
【0270】大当たり状態設定処理では、図26に示すように、ステップS1401にて、タイマ割込み処理(図14)のステップS203で更新した開閉態様カウンタC3の値を、RAM503に設けられた当該カウンタ用の格納エリアに格納する。その後、ステップS1402に進み、保留球格納エリアの実行エリアに格納されているリーチ種別カウンタC2の値が24以下か否かを判定する。リーチ種別カウンタC2の値が24以下である場合には確変リーチ後の大当たり(以下、確変大当たり)が発生したことを意味する。そこで、ステップS1403では確変大当たりテーブルを参照し、ステップS1401にて格納した開閉態様カウンタC3の値と対応する可変入賞装置32の開閉態様を求める。
【0271】ここで、確変大当たりテーブルとは、図27(a)に示すように、開閉態様カウンタC3の値と、大当たり状態下での可変入賞装置32の開閉態様との対応関係を表すテーブルである。
【0272】本実施形態では、可変入賞装置32の開放時間として3秒と29.5秒の2通りが予め記憶されており、大当たり状態下における可変入賞装置32(以下、「大入賞口」という)の開放パターンが5パターン設定されている。より具体的には、大入賞口の開放パターンとして、15ラウンド全ての開放時間が29.5秒と設定される開放パターン1と、1?3ラウンドの開放時間が3秒と設定されると共に4?15ラウンドの開放時間が29.5秒と設定される開放パターン2と、1?6ラウンドの開放時間が3秒と設定されると共に7?15ラウンドの開放時間が29.5秒と設定される開放パターン3と、1?9ラウンドの開放時間が3秒と設定されると共に10?15ラウンドの開放時間が29.5秒と設定される開放パターン4と、1?12ラウンドの開放時間が3秒と設定されると共に13?15ラウンドの開放時間が29.5秒と設定される開放パターン5とが設定されている。そして、C3=0?53が開放パターン1に該当し、C3=54?83が開放パターン2に該当し、C3=84?95が開放パターン3に該当し、C3=96?101が開放パターン4に該当し、C3=102?104が開放パターン5に該当する。つまり、確変大当たりが発生する場合、開放パターン1が選択される割合は約51.4パーセントであり、開放パターン2が選択される割合は約28.6パーセントであり、開放パターン3が選択される割合は約11.4パーセントであり、開放パターン4が選択される割合は約5.7パーセントであり、開放パターン5が選択される割合は約2.9パーセントである。従って、確変大当たりが発生する場合には、開放パターン1が最も選択されやすい。
【0273】続くステップS1404では、確変大当たりテーブルから求めた3秒開放を行うラウンド数を短時間開放カウンタSOCにセットする。例えば、開閉態様カウンタC3の値が77である場合、確変大当たりテーブルの対応する内容は開放パターン2である。開放パターン2では3秒開放が3ラウンド行われるため、短時間開放カウンタSOCに3をセットする。その後、ステップS1405にてRAM503に設けられた確変フラグ格納エリアに確変フラグをセットした後に、本処理を終了する。
【0274】一方、ステップS1402においてリーチ種別カウンタC2の値が24より大きい場合には、通常リーチ後の大当たり(以下、通常大当たり)が発生したことを意味する。かかる場合にはステップS1406に進み、通常大当たりテーブルを参照し、ステップS1401にて格納した開閉態様カウンタC3の値と対応する可変入賞装置32の開閉態様を求める。通常大当たりテーブルとは、確変大当たりテーブルと同様、開閉態様カウンタC3の値と、大当たり状態下での可変入賞装置32の開閉態様との対応関係を表すテーブルである。図27(b)に示すように、通常大当たりテーブルでは、C3=0?13が開放パターン1に該当し、C3=14?27が開放パターン2に該当し、C3=28?41が開放パターン3に該当し、C3=42?55が開放パターン4に該当し、C3=56?104が開放パターン5に該当する。つまり、通常大当たりが発生する場合、開放パターン1?開放パターン4が約13.3パーセントの割合で均等に選択され、約46.7パーセントの割合で開放パターン5が選択される。従って、通常大当たりが発生する場合には、確変大当たりが発生する場合と異なり、開放パターン5が最も選択されやすい。
【0275】続くステップS1407では、通常大当たりテーブルから求めた3秒開放を行うラウンド数を短時間開放カウンタSOCにセットし、本処理を終了する。例えば、開閉態様カウンタC3の値が77である場合、通常大当たりテーブルの対応する内容は開放パターン5である。開放パターン5では3秒開放が12ラウンド行われるため、短時間開放カウンタSOCに12をセットする。
【0276】遊技状態移行処理(図25)の説明に戻り、大当たり状態設定処理を実行した後は、ステップS1311?ステップS1311に示す大当たり状態開始処理を実行する。大当たり状態開始処理では、ステップS1311において、RAM503に設けられたラウンドカウンタRCに15をセットする。ラウンドカウンタRCは、可変入賞装置32の大入賞口を開放する回数をカウントするためのカウンタである。その後、ステップS1312では可変入賞装置32の開閉タイミングを計るための第3タイマT3に4500(すなわち9秒)をセットする。ここで、第3タイマT3に4500をセットするのは、図柄表示装置41において大当たり発生表示と、開放表示とが行われた後に大入賞口を開放するためである。なお、この第3タイマT3にセットされたタイマ値は、タイマ割込み処理の都度、すなわち2msec周期で1ずつ減算される。ステップS1312にてタイマ値をセットした後は、ステップS1313では状態移行コマンドをセットして本処理を終了する。状態移行コマンドは、通常処理(図18)のステップS601における外部出力処理にて表示制御基板214aに出力される。表示制御基板214aは、当該コマンドを入力することにより、遊技状態が大当たり状態に移行したことを認識し、図柄表示装置41における図柄の変動態様を所定のものとする。これについては、後に説明する。
【0277】以上の処理により遊技状態が大当たり状態となった場合、ステップS1301では肯定判別をし、ステップS1314に進む。ステップS1314では、大入賞口開閉処理を実行する。」

(オ)「【0364】開放時間を複数備える構成において大当たり状態に移行した際に15ラウンド行う構成とすることにより、大当たり状態下における遊技が単調化することを好適に抑制することが可能となる。大入賞口が開放されるという大当たり状態下における遊技性を15回分担保することが可能となると共に、15回のうち何回29.5秒開放が行われるのかに遊技者の関心を向けさせることが可能となるからである。確かに、大入賞口の開放回数が異なる大当たり状態を複数備える構成にあっても、大当たり状態下における遊技が単調化することを抑制することが可能である。しかしながら、かかる構成にあっては、遊技者の遊技意欲を著しく低下させてしまう可能性が懸念される。より多くの賞球を獲得したい遊技者であれば最も多く開放される大当たり状態を基準として各大当たり状態を判断することが想定され、開放回数が少ない大当たり状態に移行した場合、遊技者はあたかも不利益を被ったかのような印象を抱いてしまう可能性があるからである。一方、本パチンコ機10の場合、大入賞口の開放回数は固定であって開放時間が変化するものであり、少なくとも3秒間は大入賞口が開放されるため、少しでも多くの遊技球を入賞させようと遊技者の遊技意欲を駆り立たせることが可能となる。
【0365】大当たり状態に移行した際に、大入賞口開放が15回行われることを報知する構成とすることにより、大当たり状態下における遊技が単調化することを抑制することが可能となる。仮に1ラウンド目に3秒開放が行われたとしても、大入賞口があと14回開放されることを認識できているため、2ラウンド目以降に29.5秒開放が行われることを期待させることが可能となるからである。また、29.5秒開放が何回行われるかを大当たり状態移行時に報知しない構成とすることにより、大入賞口が開放される毎に29.5秒開放を期待させながら遊技を行わせることが可能となり、大当たり状態下における遊技が単調化することを抑制することが可能となる。」

(カ)「【0367】大入賞口開閉処理において、3秒開放を短時間開放カウンタSOCに設定された回数だけ行った後に29.5秒開放を行う構成とすることにより、主制御基板271aの処理負荷が増大化することを抑制しつつ、大当たり状態下における遊技が単調化することを抑制することが可能となる。大当たり状態下でいずれの開放時間を設定するかを決定する構成とした場合、大当たり状態下における主制御基板271aの処理負荷が多大なものとなってしまうからである。また、最初に3秒開放を行う構成とすることにより、何ラウンド目から29.5秒開放となるかを期待させながら各ラウンドの遊技を行わせることが可能となり、大当たり状態における遊技が単調化することを好適に抑制することが可能となる。さらにいうと、29.5秒開放を最初に行った後に3秒開放を行う構成とした場合、29.5秒開放から3秒開放に変わったことに対して、遊技者はあたかも不利益を被ったかのような印象を抱いてしまう可能性がある。しかしながら、最初に3秒開放を行う本構成においては、かかる印象を抱かせることを抑制しつつ大当たり状態における遊技を行わせることが可能となる。」

(キ)「【0400】(19)上記実施の形態では、大当たり状態に移行すると大入賞口が15回開閉される構成について説明したが、15回に限定されるものではなく、複数開閉されるのであれば回数は任意である。また、大入賞口の開閉回数を複数備える構成に種々の開放時間を設定する構成であってもよい。但し、かかる構成にあっては、大入賞口が何回開放されるのかを大当たり状態移行時に教示することが望ましい。」

以上、上記(ア)乃至(キ)の記載及び図面の記載を総合すると、引用例1には、
「遊技球がスルーゲート33を通過したタイミングで、リーチ乱数カウンタC1、リーチ種別カウンタC2及び開閉態様カウンタC3をRAM503の保留球格納エリアに格納し、リーチ発生の場合、電動式チューリップ34の可動翼片34bを作動状態とし、電動式チューリップ34に遊技球が入ると入賞役物装置150の可動翼片168を作動状態とし、入賞役物装置150に遊技球が入り、入賞役物装置150内を転動する遊技球がV入賞口182aに入ると開閉態様カウンタC3の値と対応する可変入賞装置32の開閉態様で可変入賞装置32の可動プレート32bを開放する大当たり状態を実行する主制御基板271aのCPU501を備え、大当たり状態下における可変入賞装置32の開放パターンは所定時間の経過又は所定個数の入賞を1ラウンドとし15ラウンド全ての開放時間が29.5秒と設定される開放パターン1と、1?3ラウンドの開放時間が3秒と設定されると共に4?15ラウンドの開放時間が29.5秒と設定される開放パターン2と、1?6ラウンドの開放時間が3秒と設定されると共に7?15ラウンドの開放時間が29.5秒と設定される開放パターン3と、1?9ラウンドの開放時間が3秒と設定されると共に10?15ラウンドの開放時間が29.5秒と設定される開放パターン4と、1?12ラウンドの開放時間が3秒と設定されると共に13?15ラウンドの開放時間が29.5秒と設定される開放パターン5を備え、大当たり状態に移行した際に、大入賞口開放が15回行われることを報知する構成とし、リーチ種別カウンタC2によって、大当たり状態の終了後に高確率状態に移行させるか否かを決定するパチンコ機10」
の発明が開示されていると認めることができる(以下、この発明を「引用発明1」という。)。

(4)対比
引用発明1の「遊技球がスルーゲート33を通過したタイミングでリーチ乱数カウンタC1、リーチ種別カウンタC2及び開閉態様カウンタC3をRAM503の保留球格納エリアに格納し」は、本願補正発明の「始動条件の成立に伴って乱数値の抽選を行い」に相当する。以下同様に、
「リーチ発生の場合、電動式チューリップ34の可動翼片34bを作動状態とし、電動式チューリップ34に遊技球が入ると入賞役物装置150の可動翼片168を作動状態とし、入賞役物装置150に遊技球が入り、入賞役物装置150内を転動する遊技球がV入賞口182aに入ると開閉態様カウンタC3の値と対応する可変入賞装置32の開閉態様で可変入賞装置32の可動プレート32bを開放する大当たり状態」は「該抽選結果に基づいて大入賞口を開閉動作させる特別遊技」に、
「可動プレート32b」は「開閉扉」に、
「主制御基板271aのCPU501」は「制御手段」に、
「15ラウンド」は「所定回数」に、
「所定時間」は「最大開成時間」に、
「29.5秒」は「第1の時間」に、
「大当たり状態の終了後に高確率状態に移行させる」は「大入賞口の開閉扉の開閉動作の前後で遊技状態を変化させる」に、
「開放パターン1」の「大当たり状態」は「第1の特別遊技」に、
「3秒」は「第2の時間」に、
「開放パターン2」乃至「開放パターン4」の「大当たり状態」は「第2の特別遊技」に、
「パチンコ機10」は「パチンコ遊技機」に、それぞれ相当する。

以上のことから、両者は、
<一致点>
「始動条件の成立に伴って乱数値の抽選を行い、該抽選結果に基づいて大入賞口を開閉動作させる特別遊技を実行する制御手段を備え、前記制御手段が、前記乱数値の抽選結果に基づいて、前記大入賞口の開閉扉の開閉回数が一回とされるラウンド遊技のラウンド数が所定回数で、前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間が第1の時間であり、前記大入賞口の開閉扉の開閉動作の前後で遊技状態を変化させることが可能な第1の特別遊技と、前記大入賞口の開閉扉の開閉回数が一回とされるラウンド遊技のラウンド数が前記第1の特別遊技と同一回数で、前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間として、少なくとも一回、前記第1の時間より短い第2の時間を含み、前記大入賞口の開閉扉の開閉動作の前後で遊技状態を変化させることが可能な第2の特別遊技と、前記大入賞口の開閉扉の開閉回数が前記第2の特別遊技と同一回数であり、大入賞口の開閉扉の開閉動作の前後で遊技状態が変化しない第3の特別遊技と、を実行可能なパチンコ遊技機であって、
前記制御手段は、前記第2の特別遊技として、前記大入賞口の開閉動作開始から第1の回数までの前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間と、前記第1の回数以降から所定回数までの前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間を異ならせた特別遊技、を実行可能であることを特徴とするパチンコ遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願補正発明では、大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間が全て第2の時間である第3の特別遊技を備えているものの、引用発明1では、そのような大当たり状態を備えていない点。

<相違点2>
本願補正発明では、第1及び第2の特別遊技のラウンド数を報知するラウンド報知手段を設けないことを特定しているものの、引用発明1では、大入賞口開放が15回行われること(すなわち、本願補正発明における特別遊技のラウンド数)を報知する構成としている点。

<相違点3>
本願補正発明では、第2の特別遊技として、前記大入賞口の開閉動作開始から第1の回数までの前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間を前記第1の時間とし、前記第1の回数以降から所定回数までの前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間を前記第2の時間とした特別遊技を実行可能であるのに対し、引用発明1では、1?3ラウンドの開放時間が3秒と設定されると共に4?15ラウンドの開放時間が29.5秒と設定される開放パターン2と、1?6ラウンドの開放時間が3秒と設定されると共に7?15ラウンドの開放時間が29.5秒と設定される開放パターン3と、1?9ラウンドの開放時間が3秒と設定されると共に10?15ラウンドの開放時間が29.5秒と設定される開放パターン4と、1?12ラウンドの開放時間が3秒と設定されると共に13?15ラウンドの開放時間が29.5秒と設定される開放パターン5とを備え、第1の回数までの開放時間とそれ以降の開放時間との長短の関係が逆である点。

<相違点4>
本願補正発明では、第2の特別遊技として、前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間を全て前記第2の時間とした特別遊技を実行可能であるのに対し、引用発明1では、そのような大当たり状態を備えていない点。

(5)判断
<相違点1>及び<相違点4>について
相違点1と相違点4は類似した相違点であるため、ここで合わせて検討する。
引用発明1では、29.5秒の開放ラウンドと3秒の開放ラウンドとを、全て29.5秒とするものから、3ラウンドだけを29.5秒とするものまで適宜の配分にて割り振ることが開示されており、また、遊技機の分野において、大入賞口のラウンド数を同一として、最大開放時間を異ならせた複数の特別遊技を備えることは、例えば、特開2007-75449号公報(特に、段落0288を参照)、特開2000-317061号公報(特に、段落0065、段落0070、段落0071を参照)、特開2000-5391号公報(特に、段落0091を参照)に記載されているように周知技術(以下、「周知技術1」という。)であることや、遊技者に対して利益をどの程度与えるかは当業者が適宜決定し得る事項であることから、引用発明1において、全て29.5秒とした開放ラウンドに加えて、前記周知技術1のように全てを29.5秒よりも短くした開放ラウンド、すなわち、全てを3秒とした開放ラウンドを設けて本願補正発明の相違点1及び4に係る発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

<相違点2>について
引用例1の段落0400に「(19)上記実施の形態では、大当たり状態に移行すると大入賞口が15回開閉される構成について説明したが、15回に限定されるものではなく、複数開閉されるのであれば回数は任意である。また、大入賞口の開閉回数を複数備える構成に種々の開放時間を設定する構成であってもよい。但し、かかる構成にあっては、大入賞口が何回開放されるのかを大当たり状態移行時に教示することが望ましい。」と記載されているとおり、段落0400には、大入賞口の開閉回数を1種類ではなく複数種類備える場合には、大入賞口が何回開放されるのかは大当たり状態移行時に教示することが望ましいことが記載されていることから、大入賞口の開放回数が1種類の場合はそれを教示しないことが示唆されていると言える。また、大当たり状態移行時に大入賞口が何回開放されるかについては、教示するか教示しないか、の2種類の選択肢が存在し、大入賞口の開放回数が1種類の場合には、常に同じ開放回数であることから、それを遊技者に対して教示することに何ら技術的意義が存在しないので、大入賞口の開放回数が1種類の引用発明1において、大入賞口開放が15回行われることを報知する構成としていたものを、教示するか教示しないかの選択肢のうち、教示しない、すなわち、ラウンド数を報知する報知手段を設けないようにし、本願補正発明の相違点2に係る発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

<相違点3>について
引用例1の段落0367には「【0367】大入賞口開閉処理において、3秒開放を短時間開放カウンタSOCに設定された回数だけ行った後に29.5秒開放を行う構成とすることにより、主制御基板271aの処理負荷が増大化することを抑制しつつ、大当たり状態下における遊技が単調化することを抑制することが可能となる。大当たり状態下でいずれの開放時間を設定するかを決定する構成とした場合、大当たり状態下における主制御基板271aの処理負荷が多大なものとなってしまうからである。また、最初に3秒開放を行う構成とすることにより、何ラウンド目から29.5秒開放となるかを期待させながら各ラウンドの遊技を行わせることが可能となり、大当たり状態における遊技が単調化することを好適に抑制することが可能となる。さらにいうと、29.5秒開放を最初に行った後に3秒開放を行う構成とした場合、29.5秒開放から3秒開放に変わったことに対して、遊技者はあたかも不利益を被ったかのような印象を抱いてしまう可能性がある。しかしながら、最初に3秒開放を行う本構成においては、かかる印象を抱かせることを抑制しつつ大当たり状態における遊技を行わせることが可能となる。」と記載されており、29.5秒の開放と3秒の開放の順序を逆にすることが示唆されていると言え、その順番については、遊技者が受ける印象によって選択されることが記載されているとおり、当業者が遊技者が受ける印象を考慮して適宜決定し得る事項であり、また、大当たり遊技における大入賞口の開放パターンとして、大当たり遊技開始から所定ラウンドまで所定の開放時間で開放させ、所定ラウンド以降は所定の開放時間より短い開放時間で開放させることは原査定の拒絶の理由(平成21年4月6日付け拒絶理由通知)で引用文献2として引用された特開2004-167289号公報(特に、段落0079、0080を参照)に記載されているように周知技術(以下、「周知技術2」という。)であることから、引用発明1において、29.5秒の開放を最初に行った後に3秒開放を行うようにし、本願補正発明の相違点3に係る発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明1、周知技術1及び周知技術2から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のように、本願補正発明は、引用発明1、周知技術1及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(6)本願補正発明についてのまとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成21年11月27日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項1に係る発明は、平成21年6月11日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。
そして、その請求項1により特定される発明は次のとおりである
「【請求項1】始動条件の成立に伴って乱数値の抽選を行い、該抽選結果に基づいて大入賞口を開閉動作させる特別遊技を実行する制御手段を備え、前記制御手段が、前記乱数値の抽選結果に基づいて、前記大入賞口の開閉扉の開閉回数が所定回数で前記大入賞口の一回あたりの最大開成時間が第1の時間とされる第1の特別遊技と、前記大入賞口の開閉扉の開閉回数が前記第1の特別遊技と同一回数で、前記大入賞口の一回あたりの最大開成時間として、少なくとも1回、前記第1の時間より短い第2の時間を含む第2の特別遊技と、前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間が全て前記第2の時間であり、前記所定回数の大入賞口の開閉扉の開閉動作の前後で遊技状態が変化しない第3の特別遊技を実行可能なパチンコ遊技機であって、
前記制御手段は、前記第2の特別遊技として、前記大入賞口の開閉動作開始から第1の回数までの前記大入賞口の一回あたりの最大開成時間を前記第1の時間とし、前記第1の回数以降から所定回数までの前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間を前記第2の時間とした特別遊技と、
前記大入賞口の開閉扉の一回あたりの最大開成時間を全て前記第2の時間とした特別遊技と、
を実行可能であることを特徴とするパチンコ遊技機。」(この発明を「本願発明」という。)

一方、原査定の拒絶の理由に引用された特開2007-111402号公報(引用例1)に記載された発明は、前記「2.(3)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.(2)で検討したとおり本願補正発明から、第1の特別遊技、第2の特別遊技、第3の特別遊技、最大開成時間を限定した技術事項、及び、「前記第1及び第2の特別遊技のラウンド数を報知するラウンド報知手段を設けないようにした」という発明特定事項を除いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(5)に記載したとおり、引用発明1、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-10 
結審通知日 2010-06-15 
審決日 2010-06-29 
出願番号 特願2009-2738(P2009-2738)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤脇 昌也土屋 保光  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 吉村 尚
澤田 真治
発明の名称 パチンコ遊技機  
代理人 鈴木 均  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ