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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F |
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管理番号 | 1222153 |
審判番号 | 不服2007-34641 |
総通号数 | 130 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-12-25 |
確定日 | 2010-08-18 |
事件の表示 | 特願2001-362324「ディスプレイパネル製作用マスク」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 9日出願公開、特開2002-221912〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成13年11月28日(パリ条約による優先権主張、平成12年11月28、韓国)になされた特許出願であるところ、出願後の手続の概要は、次のとおりである。 平成16年 7月23日 拒絶理由通知(8月3日発送) 平成16年11月 4日 意見書 平成17年 1月24日 拒絶理由通知(2月1日発送) 平成17年 5月 2日 意見書・手続補正書 平成17年 6月22日 拒絶理由通知(最後)(6月28日発送) 平成17年12月27日 意見書・手続補正書 平成19年 9月14日 補正の却下の決定(平成17年12月27日付け手続補正書)・拒絶査定(9月25日発送) 平成19年12月25日 本件審判請求・手続補正書 平成20年 2月19日 前置報告書 平成21年10月 2日 審尋(10月6日発送) 平成22年 2月 5日 回答書 第2 平成19年12月25日付け手続補正についての補正の却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成19年12月25日付け手続補正を却下する。 〔理由〕 1.本件補正の目的 (1)本件補正後の特許請求の範囲 平成19年12月25日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前(平成17年5月2日付け手続補正によって補正した。以下、同じ。)の特許請求の範囲の記載を次のとおり補正するものである(下線は請求項1についての補正箇所を示す。)。 <本件補正後の特許請求の範囲> 「 【請求項1】 少なくとも一つのパターンを有する多数のサブマスクと、 前記サブマスクを支持するように多数の開口を有するメインフレームとから構成され、 ここで、前記各サブマスクは前記該当開口部分に位置し、その開口内で上下左右に移動可能であり、 前記サブマスクの4辺はファイバを介してサブフレームで固定され、 前記ファイバは、その一端および他端がそれぞれ接着剤を用いて前記サブマスクのエッジ領域および前記サブフレームのエッジ領域に取り付けられて、かつテンションを加えられる ことを特徴とするディスプレイパネル作製用マスク。 【請求項2】 前記サブフレーム及び前記メインフレームの材質は金属、高分子、無機物のうち何れか一つであることを特徴とする請求項1記載のディスプレイパネル製作用マスク。 【請求項3】 前記金属はアルミニウム、ニッケル、タングステン、チタン、鉄、銅、これらの合金のうち何れか一つであり、前記高分子はプラスチックであり、前記無機物はガラス又はウエハであることを特徴とする請求項2記載のディスプレイパネル製作用マスク。 【請求項4】 前記メインフレームの大きさは物質を堆積しようとするパネルの大きさより同じか大きいことを特徴とする請求項1記載のディスプレイパネル製作用マスク。 【請求項5】 第1電極帯と第2電極帯とが互いに垂直に交差する位置にそれぞれ発光領域を有する有機ELディスプレイパネル製作用マスクにおいて、 少なくとも一つのパターンを有する多数のサブマスクと、 前記サブマスクのエッジ領域に取り付けられ、前記サブマスクを固定させるサブフレームと、 前記サブフレームに固定されたサブマスクを支持するように多数の開口を有するメインフレームとから構成され、 前記各サブマスクはそれぞれ該当する開口部分に位置し、その開口内で上下左右に移動可能であり、 前記サブマスクの4辺は、ファイバを介して前記サブフレームに固定され、 前記ファイバは、その一端および他端がそれぞれ接着剤を用いて前記サブマスクのエッジ領域および前記サブフレームのエッジ領域に取り付けられて、かつテンションを加えられる ことを特徴とするディスプレイパネル製作用マスク。 【請求項6】 前記サブフレーム及び前記メインフレームの材質は金属、高分子、無機物のうち何れか一つであることを特徴とする請求項5記載のディスプレイパネル製作用マスク。 【請求項7】 前記金属はアルミニウム、ニッケル、タングステン、チタン、鉄、銅、これらの合金のうち何れか一つであり、前記高分子はプラスチックであり、前記無機物はガラス又はウエハであることを特徴とする請求項6記載のディスプレイパネル製作用マスク。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の特許請求の範囲は、平成17年5月2日付けの手続補正により、次のとおりのものとなっていた(下線は当審による。)。 <本件補正前の特許請求の範囲> 「 【請求項1】 少なくとも一つのパターンを有する多数のサブマスクと、 前記サブマスクを支持するように多数の開口を有するメインフレームとから構成され、 ここで、前記各サブマスクは前記該当開口部分に位置し、その開口内で上下左右に移動可能であり、 前記サブマスクの4辺はサブフレームで固定され、 前記サブマスクは、ファイバを介して前記サブフレームに固定される ことを特徴とするディスプレイパネル製作用マスク。 【請求項2】 前記サブフレーム及び前記メインフレームの材質は金属、高分子、無機物のうち何れか一つであることを特徴とする請求項1記載のディスプレイパネル製作用マスク。 【請求項3】 前記金属はアルミニウム、ニッケル、タングステン、チタン、鉄、銅、これらの合金のうち何れか一つであり、前記高分子はプラスチックであり、前記無機物はガラス又はウエハであることを特徴とする請求項2記載のディスプレイパネル製作用マスク。 【請求項4】 前記メインフレームの開口の数は前記サブマスクの数より同じか多いことを特徴とする請求項1記載のディスプレイパネル製作用マスク。 【請求項5】 前記メインフレームの開口の数は製作しようとするデバイスの数によって決定されることを特徴とする請求項1記載のディスプレイパネル製作用マスク。 【請求項6】 前記メインフレームの大きさは物質を堆積しようとするパネルの大きさより同じか大きいことを特徴とする請求項1記載のディスプレイパネル製作用マスク。 【請求項7】 第1電極帯と第2電極帯とが互いに垂直に交差する位置にそれぞれ発光領域を有する有機ELディスプレイパネル製作用マスクにおいて、 少なくとも一つのパターンを有する多数のサブマスクと、 前記サブマスクのエッジ領域に取り付けられ、前記サブマスクを固定させるサブフレームと、 前記サブフレームに固定されたサブマスクを支持するように多数の開口を有するメインフレームとから構成され、 前記各サブマスクはそれぞれ該当する開口部分に位置し、その開口内で上下左右に移動可能であり、 前記サブマスクは、ファイバを介して前記サブフレームに固定される ことを特徴とするディスプレイパネル製作用マスク。 【請求項8】 前記サブフレーム及び前記メインフレームの材質は金属、高分子、無機物のうち何れか一つであることを特徴とする請求項7記載のディスプレイパネル製作用マスク。 【請求項9】 前記金属はアルミニウム、ニッケル、タングステン、チタン、鉄、銅、これらの合金のうち何れか一つであり、前記高分子はプラスチックであり、前記無機物はガラス又はウエハであることを特徴とする請求項8記載のディスプレイパネル製作用マスク。」 (3)本件補正の目的について 請求項1に係る補正は、補正前の 「前記サブマスクの4辺はサブフレームで固定され、 前記サブマスクは、ファイバを介して前記サブフレームに固定される」 という記載を 「前記サブマスクの4辺はファイバを介してサブフレームで固定され、 前記ファイバは、その一端および他端がそれぞれ接着剤を用いて前記サブマスクのエッジ領域および前記サブフレームのエッジ領域に取り付けられて、かつテンションを加えられる」 と補正するものであり、サブマスクがファイバを介してサブフレームに固定される態様を限定する補正を内容とするものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下、単に「特許法第17条の2」という。)第4項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。 そこで、本件補正後の請求項1に記載されている発明特定事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否かについて、以下に検討する。 2.本願補正発明 本願補正発明は、次のとおりのものである。 <本願補正発明> 「 少なくとも一つのパターンを有する多数のサブマスクと、 前記サブマスクを支持するように多数の開口を有するメインフレームとから構成され、 ここで、前記各サブマスクは前記該当開口部分に位置し、その開口内で上下左右に移動可能であり、 前記サブマスクの4辺はファイバを介してサブフレームで固定され、 前記ファイバは、その一端および他端がそれぞれ接着剤を用いて前記サブマスクのエッジ領域および前記サブフレームのエッジ領域に取り付けられて、かつテンションを加えられる ことを特徴とするディスプレイパネル作製用マスク。」 3.刊行物及び各刊行物の記載事項 (1)引用例1 原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である、特開2000-113978号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項の記載がある(下記「(9)引用発明の認定」において特に関連する部分に下線を付した。)。 (1-a)【特許請求の範囲】の欄 「【請求項1】基板上に形成された第一電極上に少なくとも有機化合物からなる発光層を含む薄膜層を形成する工程と、前記薄膜層上に第二電極を形成する工程とを含む有機電界発光素子の製造方法であって、1枚の基板上にn面(nは2以上の整数)の薄膜層および第二電極を形成する工程と、前記第二電極形成工程後に前記基板をn個に切断する工程とを含むことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。 【請求項2】少なくとも一部分が薄膜層の厚さを上回る高さをもつスペーサーを基板上に形成する工程を含むことを特徴とする請求項1記載の有機電界発光素子の製造方法。 【請求項3】発光層もしくは第二電極の少なくとも一方をマスク蒸着法によりパターニングすることを特徴とする請求項1記載の有機電界発光素子の製造方法。 【請求項4】1枚の基板に対してn個のシャドーマスクを配置させた状態で発光層もしくは第二電極の少なくとも一方をパターニングすることを特徴とする請求項3記載の有機電界発光素子の製造方法。」 (1-b)段落【0001】?【0009】 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、表示素子、フラットパネルディスプレイ、バックライト、照明、インテリア、標識、看板、電子写真機などの分野に利用可能な、電気エネルギーを光に変換できる有機電界発光素子の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが、両極に挟まれた有機蛍光体内で再結合して発光するという有機電界発光素子の研究が近年活発に行われるようになってきた。この素子は、薄型、低駆動電圧下での高輝度発光、蛍光材料を選ぶことによる多色発光が特徴であり注目を集めている。 ……(中略)…… 【0005】このような理由から従来は、蒸着法に代表されるドライプロセスによって有機電界発光素子を製造し、パターン加工にはマスク蒸着法を利用し、実現することが多かった。つまり、素子の基板前方にシャドーマスクを配置して、シャドーマスク開口部のみに有機層あるいは電極を蒸着するものである。 ……(中略)…… 【0007】 【発明が解決しようとする課題】発光層を含む薄膜層やその上に形成する第二電極は、マスク蒸着法を用いる場合にも、隔壁法を用いる場合にも真空装置内の作業工程を経ることが不可欠であり、これらの工程が発光素子の生産性を決める要素となり、素子の生産コストに重要な影響を与える。 【0008】本発明はかかる問題を解決し、素子生産性を向上し、コストダウンが可能な有機電界発光素子の製造方法を提供する。 【0009】 【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明の有機電界発光素子の製造方法は次のことを特徴とする。すなわち、基板上に形成された第一電極上に少なくとも有機化合物からなる発光層を含む薄膜層を形成する工程と、この薄膜層上に第二電極を形成する工程を含む有機電界発光素子の製造方法であって、1枚の基板上にn面(nは2以上の整数)の薄膜層および第二電極を形成する工程と、前記第二電極形成工程後に基板をn個に切断する工程を含むことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法である。」 (1-c)段落【0010】?【0018】 「【0010】 【発明の実施の形態】本発明における有機電界発光素子とは、陽極と陰極との間に少なくとも有機化合物からなる発光層が存在し、電気エネルギーにより発光する素子である。 【0011】本発明の有機電界発光素子の製造方法は、1枚の基板上にn面(nは2以上の整数)の発光素子を同時に形成するものであり、基板上に形成された第一電極上に、少なくとも有機化合物からなる発光層を含む薄膜層を形成する工程と、第二電極を前記薄膜層上に形成する工程とを含むものであり、第二電極形成工程後、または第二電極形成工程後に保護層を形成した後に基板をn個に切断することを特徴とする。この製造方法は、単一発光素子、セグメント型、単純マトリクス型、アクティブマトリクス型などの発光装置の形式や、カラー、モノクロなどの発光色数を問わず任意の構造の有機電界発光素子に適用することが可能である。 【0012】第一電極として酸化錫インジウム(以下ITO)透明電極膜を形成したガラス基板を用い、必要に応じてフォトリソグラフィ法で第一電極をパターニングすることができる。第一電極のパターニングは形成する発光素子の仕様により異なる。モノクロの単一素子の場合から画素数の多いカラーディスプレイまで各種の有機電界発光素子の製造に対応することが可能である。作製しようとする発光素子のサイズと基板のサイズから配置できる面数が決まってくるが、本発明の目的は1枚の基板上にn面(nは2以上の整数)の有機電界発光素子を同時に形成することにあり、最低でも2面の発光素子を1枚の基板上に製造し、第二電極形成工程後に基板を切断してn個の有機電界発光素子を得る。 【0013】第一電極のパターニング後に、少なくとも一部分が薄膜層の厚さを上回る高さをもつスペーサーを基板上に形成することもできる。このスペーサーは隔壁法における隔壁として機能させたり、マスク蒸着法においてシャドーマスクが薄膜層を傷つけることを防止する層として機能させたり、発光領域を規定したり第一電極のエッジ部分を覆うための絶縁層として機能させることができる。 【0014】第一電極に対応して、少なくとも有機化合物からなる発光層を含む薄膜層および第二電極を形成して有機電界発光素子を形成する。発光層および第二電極のパターニング法は限定されるものではなく、隔壁法を用いることもできるが、少なくとも一方をマスク蒸着法によってパターニングすることが好ましい。マスク蒸着法を用いる工程の選択は、形成しようとする発光素子の機能に対応して行うことができる。例えば、モノクロ発光素子においては第二電極の形成工程が適当である。また、カラーディスプレイにおいては、いずれか一方の工程でマスク蒸着を行い、他方は隔壁法を用いることもできるし、両方のパターニング工程をマスク蒸着法で実施することもできる。また、第二電極のパターニングを隔壁法で行う場合でも、蒸着エリアを規制するためにシャドーマスクを併用することが多い。 【0015】マスク蒸着法でパターニングを行う場合、1枚の基板に対してn個のシャドーマスクを配置させた状態で発光層もしくは第二電極の少なくとも一方のパターニングを実施する。マスク蒸着法では、目的するパターニングに対応した開口部とマスク部を形成したシャドーマスクを基板の前面に配置してそれぞれの材料を蒸着するが、n面の発光素子を同時にマスク蒸着法で形成するためには、n面の発光素子に対応したそれぞれのシャドーマスクが配置されることが必要である。この際、n面の発光素子が同一のものであればシャドーマスクも同一の仕様のものを用いる。また、第一電極のパターニング仕様が異なるものが混在する場合においては、異なる仕様のシャドーマスクを対応させて用いることになる。 【0016】シャドーマスク自体は剛直性や機械的強度が十分でない場合が多いので、機械的強度の十分な材料でできたフレームに取り付けて用いられる。本発明の1枚の基板上にn面(nは以上の整数)の有機電界発光素子を同時に形成する方法では、n個のフレームにそれぞれシャドーマスクを取り付けたものを同時に配置して用いる。これを「分割タイプ」と呼称する。この場合、それぞれ独立したn個のシャドーマスクを用いるので、マスクの取り替えの自由度が大きく、またマスクはそれぞれ個別に位置合わせすることができるので精度の高いパターニングが可能になる。 【0017】もう一つの好ましい方法は「障子タイプ」と呼称することができるものである。すなわち、n個の開口部を有するフレームに1枚のシャドーマスクを取り付けたものであり、n面の相対的な位置合わせはマスクの作製時点で行われているので、n面個々についての位置合わせを行う必要がないこと、マスク全体の強度が向上するという利点がある。 【0018】「分割タイプ」を用いるか、「障子タイプ」を用いるかの選別は、作製する有機電界発光素子のサイズ、同時形成する素子の数、それぞれの素子の精細度、素子のタイプなどを考慮して決められる。それぞれが前記のような特徴を有するので、それらの特徴を生かすような選択が好ましい。」 (1-d)段落【0045】?【0060】 「【0045】 【実施例】以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。 【0046】実施例1 発光層パターニング用として、図3に示したようにマスク部分と補強線とが同一平面内に形成された同一のシャドーマスク12枚を作製した。1枚のシャドーマスクの外形は120×84mm、マスク部分31の厚さは25μmであり、長さ64mm、幅100μmのストライプ状開口部32がピッチ300μmで272本配置されている。各ストライプ状開口部には、開口部と直交する幅20μm、厚さ25μmの補強線33が1.8mm間隔に形成されている。それぞれのシャドーマスクは外形が等しい幅4mmのステンレス鋼製フレーム34に固定されている。このように作製した12枚のシャドーマスクを4枚づつ3組に分けて用いる。本実施例はn=4で「分割タイプ」による有機電界発光素子の作製を行う。本実施例では4枚のシャドーマスクを基板上に上下左右2枚づつ配置して用いた。 【0047】第二電極パターニング用として、図4および図5に示すようにマスク部分31の一方の面35と補強線33との間に隙間36が存在する構造の同一のシャドーマスクを4枚用意した。シャドーマスクの外形は120×84mm、マスク部分の厚さは100μmであり、長さ100mm、幅250μmのストライプ状開口部32がピッチ300μmで200本配置されている。マスク部分の上には、幅40μm、厚さ35μm、対向する二辺の間隔が200μmの正六角形構造からなるメッシュ状の補強線が形成されている。隙間の高さはマスク部分の厚さと等しく100μmである。各々のシャドーマスクは発光層用シャドーマスクと同様のステンレス鋼製のフレームに固定して用いられる。 【0048】第一電極は以下の通りパターニングした。厚さ1.1mmの無アルカリガラス基板表面にスパッタリング蒸着法によって厚さ130nmのITO透明電極が形成されたITOガラス基板(ジオマテック社製)を240×200mmの大きさに切断した。ITO基板上にフォトレジストを塗布して、通常のフォトリソグラフィ法による露光、現像によってフォトレジストをパターニングした。本実施例では4面の有機電界発光素子を形成することを目的としているので、それに対応する配置で第一電極のパターニングを行う必要があり、パターン露光に用いるフォトマスクは4面の第一電極パターンがまとめられたものを用いた。また、4面のそれぞれについて、パターン形成位置をマスク蒸着用のシャドーマスクの配置に対応させて、パターン露光を繰り返してパターニングすることもできる。ITOの不要部分をエッチングして除去した後、フォトレジストを除去することで、4面の有機電界発光素子に対応してITOを長さ90mm、幅70μmのストライプ形状にパターニングした。1面当たりのストライプ状第一電極は100μmピッチで816本配置されている。 【0049】スペーサーは以下のように形成した。ポリイミド系の感光性コーティング剤(東レ社製、UR-3100)をスピンコート法により前記ITO基板上に塗布して、クリーンオーブンによる窒素雰囲気下で80℃、1時間プリベーキングした。この塗布膜にフォトマスクを介してパターン露光を行うが、この場合も前記の第一電極パターニングと同様に4面の有機電界発光素子に対応する位置合わせを行って、1枚のフォトマスクを用いるか、個別にパターン露光を行って感光性コーティング剤のパターニングを行う。現像には東レ社製DV-505を用い、その後、クリーンオーブン中で180℃、30分間、さらに250℃、30分間ベーキングして、第一電極に直交するスペーサーを形成した。この半透明なスペーサーは、長さ90mm、幅50μm、高さ4μmであり、300μmピッチで201本配置されている。このスペーサーの電気絶縁性は良好であった。 【0050】前記スペーサーを形成したITO基板を洗浄した後、真空蒸着機内にセットした。本蒸着機では、真空中においてそれぞれ10μm程度の精度で基板とマスクの位置合わせができ、マスクを交換することが可能である。 【0051】発光層を含む薄膜層は、抵抗線加熱方式による真空蒸着法によって以下のように形成した。なお、蒸着時の真空度は2×10^(-4)Pa以下であり、蒸着中は蒸着源に対して基板を回転させた。 【0052】まず、図6に示すような配置において、水晶振動子による膜厚モニター表示値で銅フタロシアニンを30nm、ビス(N-エチルカルバゾール)を120nm基板全面に蒸着して正孔輸送層5を形成した。 【0053】次に、第一の発光層用シャドーマスク4面を取り付けた発光層用マスクを基板前方に配置して両者を密着させ、基板後方にはフェライト系板磁石(日立金属社製、YBM-1B)を配置した。この際、図7および図8に示したように、ストライプ状第一電極2がシャドーマスクのストライプ状開口部32の中心に位置し、補強線33がスペーサー4の位置と一致し、かつ補強線とスペーサーが接触するように、配置される。4面のシャドーマスクは個々に精度高く位置合わせを行う。この状態で、0.3wt%の1,3,5,7,8-ペンタメチル-4,4-ジフロロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン(PM546)をドーピングした8-ヒドロキシキノリン-アルミニウム錯体(Alq_(3))を43nm蒸着し、G発光層をパターニングした。 【0054】次に、前記G発光層のパターニングと同様にして、シャドーマスクを交換して、第二の発光層用シャドーマスク4面を取り付け、1ピッチ分ずらした位置の第一電極パターンに位置合わせして、1wt%の4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(ジュロリジルスチリル)-ピラン(DCJT)をドーピングしたAlq_(3)を30nm蒸着して、R発光層をパターニングした。前記R発光層のパターニングと同様にしてシャドーマスクを交換し、第三の発光層用シャドーマスク4面を取り付け、さらに1ピッチ分ずらした位置の第一電極パターンに位置合わせして、4,4’-ビス(2,2’-ジフェニルビニル)ジフェニル(DPVBi)を40nm蒸着して、B発光層をパターニングした。RGBそれぞれの発光層は、ストライプ状第一電極の3本ごとに配置され、第一電極の露出部分を完全に覆っている。 【0055】次に、図9に示したような配置において、DPVBiを70nm、Alq_(3)を20nm基板全面に蒸着した。この後に、薄膜層をリチウム蒸気に曝してドーピング(膜厚換算量0.5nm)した。 【0056】第二電極は抵抗線加熱方式による真空蒸着法によって以下のように形成した。なお、蒸着時の真空度は3×10^(-4)Pa以下であり、蒸着中は2つの蒸着源に対して基板を回転させた。 【0057】前記発光層のパターニングと同様に、第二電極用シャドーマスク4面を基板前方に配置して両者を密着させ、基板後方には磁石を配置した。この際、図10および図11に示すように、スペーサー4がマスク部分31の位置と一致するように両者は配置される。4面のシャドーマスクは個々に位置合わせをチェックして精度を向上させた。この状態でアルミニウムを400nmの厚さに蒸着して第二電極8をパターニングした。 【0058】最後に、図9に示したような配置において、一酸化珪素を200nm電子ビーム蒸着法によって基板全面に蒸着して、保護層を形成した。 【0059】真空蒸着機から取り出した4面の発光素子の形成された基板を切断して、4個の発光素子に分割した。幅70μm、ピッチ100μm、本数816本のITOストライプ状第一電極上に、パターニングされたRGBそれぞれの発光層を含む薄膜層が形成され、第一電極と直交するように幅250μm、ピッチ300μmのストライプ状第二電極が200本配置された単純マトリクス型カラー有機電界発光素子が作製できた。R、G、Bの3つの発光領域が1画素を形成するので、本発光素子は300μmピッチで272×200画素を有する。 【0060】本実施例により明らかなように、それぞれのパターニングに必要な蒸着工程を4個の有機電界発光素子に対して同時に行うことができ、第二電極形成後に切断することにより、効率的な有機電界発光素子の製造が可能になった。」 (1-e)【図3】及び【図4】 【図3】には、発光層パターニング用シャドーマスクの一例を示す平面図が、【図4】には、第二電極パターニング用シャドーマスクの一例を示す平面図が、それぞれ、図示されている。 (2)引用例2 原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である、特開昭62-270959号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項の記載がある(下線は当審による。)。 (2-a)第2頁左上欄第2行?同頁右上欄第13行 「[発明の分野] 本発明は半導体製造プロセスまたは液晶装置製造プロセス等で用いる露光装置に関し、特にパターン焼付け用マスクフレームに関する。 [発明の背景] 半導体リソグラフィ工程においては、パターンを形成したマスクまたはレチクル等の原版(以下本明細書中において単にマスクという)を介してウエハ等の基板を露光しパターン転写を行なっている。露光装置としてはコンタクト露光方式、プロキシミティ露光方式、反射型または縮小投影露光方式等が用いられる。縮小投影露光装置においては光学系を用いてマスクを縮小投影するための倍率に応じた大型のマスクが用いられる。また、大画面の液晶表示基板のパターニングを一括投影露光で行なう場合等にも大型のマスクが用いられる。マスクはマスクフレームに取付けられ露光装置に装着される。 [従来の技術] 従来のマスクは取扱時の傷や汚れを防止するためおよびパターン形成面積を有効に広げるために1つのマスクを1つのマスクフレームに取付けていた。したがって、大型マスクを使用する投影露光装置において、小さなマスクを使用することができず、汎用性が小さかった。 [発明の目的] 本発明は、前記従来技術の欠点に鑑みなされたものであって、小さなマスクを大画面一括投影露光装置に装着可能とし、また複数のマスクを同時に投影露光装置に装着可能としパターンの分割露光を可能とするマスクフレームの提供を目的とする。」 (2-b)第2頁右上欄第14行?第2頁右下欄第20行 「[実施例] 第1図は本発明に係るマスクフレームの平面図である。転写すべきパターン(図示しない)が形成された4つのマスク1が枠板4に取付けられマスクフレーム20を構成する。枠板4は金属またはセラミックにより形成される。第2図は別の実施例の平面図であり、異る形状のマスク1,2,3が同一の枠板4に取付けられている。第3図は小さなマスク1を大きな枠板4に取付けた例であり、大画面露光用の露光装置に小さな形状のマスクを使用できる。第4図は、複数のマスク1を取付けたマスクフレーム20において、使用するマスク以外のマスクを遮光板12で覆った例を示す。各遮光板12はねじ7で枠板4に固定される。 マスクの枠板4への取付構造の例を第5図から第7図までに示す。枠板4のマスク取付位置には開口部14が形成されている。第5図の例では、開口部14の下側からマスク1が装着され、マスク1の下面側に押え板5を設けて、マスク1の周縁部を開口部14の上部突縁部14aと下部の押え板5との間に挟持している。押え板5はねじ7により枠板4の下面に固定される。開口部14の上部突縁部14aおよび側面部にはマスク1の位置調整用押しねじ6が設けられる。マスク1のパターン形成面(下面)aは枠板4の下面のステージ取付用基準面bと同一面となるようにマスク1が枠板4に取付けられる。枠板4の基準面bがマスクステージ8上に搭載され、図示しない真空吸着装置によりマスクフレーム20はマスクステージ8上に固定保持される。これによりマスク1のパターン形成面aは所定位置に位置合せされる。 第6図はマスク1の別の取付構造例である。この例ではマスク1は枠板4の開口部14の側面に接着剤15により接合されている。この例においても第5図の例と同様にマスク1のパターン形成面aは枠板4のステージ取付用基準面bと同一面である。 第7図はマスク1のさらに別の取付構造例である。この例ではマスク1は枠板4の開口部14の上面周縁部に搭載支持され取付具9によりねじ7を用いて枠板4上に固定保持される。この例では、マスク1のパターン形成面aは枠板4の上面dと同一面であり、この上面dはステージ取付用基準面bから所定距離だけ隔たるように枠板4の板厚が定められている。これにより、マスクフレーム20をマスクステージ上に装着すればマスクのパターン形成面積aは所定位置に位置合せされる。」 (2-c)第3頁右上欄第7-19行 「[発明の効果] 以上説明したように、本発明に係るマスクフレームは、1つまたは複数のマスクを各マスクに比べ充分大きな形状の1枚の枠板に取付けて1枚のマスクフレームとして一体化しているため、大画面のマスクを使用する一括投影露光装置に対し小さなマスクを使用することが可能となり露光装置の汎用性が増大する。また、複数のマスクを同時に1枚のウェハ上に焼付けることができる。また、複数のマスクを順次露光することにより、大きなパターンを合成して形成することができ、大型パターンの分割マスクによる形成が容易に行なわれる。」 (2-d)第1図?第7図 第1図?第4図にはマスクフレームの各別の実施例の平面図が、第5図?第7図にはマスクの取付構造の各別の例を示すマスクフレーム断面図が、それぞれ図示されている。 (3)引用例3 原査定の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である、特開昭63-249851号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下の事項の記載がある(下線は当審による。)。 (3-a)第3頁左下欄第4行?第4頁右下欄第3行 「 以下実施例につき本発明を詳説する。 第1図には本発明のレテイクルフレームが示されている。レテイクルフレームは4つのサイドを持つ矩形フレーム10から成つている。フレーム10の隣接した2つのサイドに沿つて調節ねじ12と調節ねじ16とが取付けられている。2つの調節ねじ12はフレーム10内に置かれたレテイクルを、第1図に示された矩形の座標系に関してY軸に沿つて位置決めする。2つの調節ねじ12はフレーム10のサイドを貫通して延び、フレーム10内に置かれた矩形のレテイクル(図示せず)に接触している。 各調節ねじ12を調節することによつて、レテイクルをY軸に沿つて調節し、同様に角度θを調節するためにZ-軸を中心にして回転させることができる。調節ねじ12はロツクねじ36を用いて所定位置でロツクすることができる。ロツクねじ36は、調節ねじ12に当付いて、レテイクルが1度位置決めされた後はどのような運動も阻止するようにある角度でフレーム10のサイド内に突入している。フレーム10の隣りのサイドには別の調節ねじ16が取付けられている。調節ねじ16はフレーム10のサイドを貫通して延び、フレーム内のレテイクルに接触し、かつレテイクルをX軸に沿つて位置決めする。調節ねじ16もロツクねじ36によつて所定位置でロツクすることができる。調節ねじ12と16に対向したサイド内には横断方向に追従するばね28が取付けられている。ばね28はフレーム10を貫通して延びていて、しかもスペーサ30と、ねじ34によつてフレーム10に取付けられたプレート14とによつて所定位置で保持されている。配置された状態では、ばね28はフレーム10の縁を越えて延び、そのために所定位置にあるレテイクルと接触する。ばね28は横断方向で追従し、かつ主として縦軸線に沿つた軸方向の力を伝達する。ばね28は縦軸線に対して横の方向では自由に運動することができる。この軸方向の力のみがレテイクルへ伝達されることが曲げモメントを減少させ、その結果レテイクル内で生じるゆがみがより小さくなる。レテイクルはリツプ38によつてフレーム内に保持されている。リツプ38はフレーム10の対向する2つのサイドのそれぞれに設けられている。レテイクルの1つの表面はリツプ38によつて所定位置に保持され、かつレテイクルの他方の表面は3個のばねクリツプ20によつて所定位置に保持されている。ばねクリツプ20はねじ34によりフレーム10のサイド上に取付けられている。より良好な結合が行なわれるようにワツシヤ32がばねクリツプ20とねじ34との間に配置されている。フレーム10の底部分に沿つて1つのサイドの各端部に基準ブロツク22,24が配置されている。1端にはV字-ブロツク24が配置され、かつ他端には扁平なブロツク22が配置されている。これらのブロツクはレテイクルのフレーム10内でのアライメントのための基準点として働く。 第2図ではフレーム10の対向するサイド上の2つのリツプ38がより判り易く示されている。各ばねクリツプ20の背後のリツプ38上には精密ボールが取付けられている。精密ボールはリツプ38上の3点に取付けられていて、1つの平面を規定している。レテイクルは取付けられるときにリツプ38とばねクリツプ20とによつて所定位置に保持される。ばねクリツプ20はレテイクルに十分な圧力を適用して、レテイクルのガタつきを回避する。ばねクリツプはゆがみを生ぜしめる程大きな力を及ぼしてはならない。各ばねクリップ20上にも精密ボールが取付けられている。調節ねじ12はフレーム10の下方の、すなわち底部部分に配置されて、レテイクルフレームの重量を支えている。これは横断方向で追従するはね28がレテイクルの重量を支えなくてもいいので有利である。これは比較的弱いばねの使用を可能にし、これはレテイクルヘ伝達されるおそれのあるばね軸線に対して横断方向の力を減少させる。 ……(中略)…… 第4図には横断方向で追従するばね28が示されている。横断方向で追従するこのばね28は縦軸線に対して横断する方向の運動に対して小さな抵抗しか持たない。したがつてレテイクルは位置決めされるときに自由に横方向に動くことができ、これはレテイクルへの曲げ応力を減少せしめ、そのためにゆがみはより僅かである。コイルばねが示されているが、ばねの用語が、変形された後に解放されたときにその当初の形状もしくは当初の形状に近い形状に復帰する任意の弾性体または弾性的なデバイスを包含する他のタイプのばねにも該当することは理解されよう。」 (3-b)第1図、第2図及び第4図 第1図にはレテイクルフレームの展開斜視図が、第2図にはレテイクルフレームの正面図が、第4図には第2図の4-4線に沿った断面図が、それぞれ図示されている。 (4)引用例4 本願優先日前に頒布された刊行物である、特開平11-15143号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに、以下の事項の記載がある(下線は当審による。)。 (4-a)【特許請求の範囲】 「【請求項1】プロキシミティ露光に用いられるフォトマスク装置において、フォトマスクフォルダーに複数の開口部を形成し、これら開口部に複数のフォトマスを装着したことを特徴とするフォトマスク装置。 【請求項2】上記各開口部に調整ネジを設け、該調整ネジによりフォトマスクを移動可能且つ露光時に固定可能にしたことを特徴とする請求項1記載のフォトマスク装置。 【請求項3】上記開口部下縁に係止片を形成し、上記フォトマスクの膜面側外周に係止段部を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のフォトマスク装置。」 (4-b)段落【0001】?【0003】 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイの製造に用いるフォトマスクの技術分野に属する。 【0002】 【従来の技術】例えば、液晶ディスプレイに用いるカラーフィルタの製造工程においては、ガラス基板上に着色層を形成し、この着色層上にフォトレジスト膜を塗布、乾燥した後、フォトマスクを配置してフォトレジスト膜上に所定のパターンを照射するプロキシミティ露光工程がある。このプロキシミティ露光は、マスクフォルダーに1枚のフォトマスクをセットし、ガラス基板との間に100μm程度のギャップを設けて露光するようにしている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところで、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイの製造工程においては、塗布、乾燥、露光、現像、スパッタ等の多くの工程を有し、一度の処理で多数のパターンを得るため、通常、一枚の基板に複数のパターンを形成し、パターンの完成後に切断するようにして、処理の簡素化、コストの低減を図るようにしていが、近年、画面の大型化に伴い基板の大型化が要望され、プロキシミティ露光におけるフォトマスクについても大型化が要望されている。しかしながら、フォトマスクが大型化するとフォトマスクのたわみによりプロキシミティ露光時における基板とのギャップ量を一定に保持するのが困難になり、また、このたわみを防止するために物理的強度を増大させフォトマスクを厚くするとフォトマスク重量が増大し、フォトマスクの製造コストが高くなるとともに、フォトマスクの洗浄、取り扱いが困難になるという問題がある。」 (4-c)段落【0010】?【0013】 「【0010】図2は、本発明のフォトマスク装置の他の実施形態を示す模式図であり、図2(A)はフォトマスクフォルダーの平面図、図2(B)はフォトマスクをセットした状態を示す拡大断面図である。 【0011】図2(A)において、本実施形態のフォトマスク装置1は、複数の開口部2を有するフォトマスクフォルダー3を備え、開口部2の下縁周囲にはフォトマスクを係止するための係止片2aが形成されている。フォトマスクフォルダー3の外周には、マイクロメータ等の微調整に用いられる調整ネジ5が開口部2に向けて螺合されている。この調整ネジ5は、フォトマスクフォルダー3の外周に1つの開口部2の2辺に少なくとも2つ設けられ、この調整ネジ5に対向する2辺にそれぞれ板バネ6が設けられている。 【0012】図2(B)において、上記構成からなるフォトマスクフォルダー3の開口部2に複数のフォトマスク4をセットし、調整ネジ5により各フォトマスク4をx方向、y方向、θ方向に移動させることにより、ガラス基板との相対的位置関係を調整した後、フォトマスク4をフォトマスクフォルダー3に固定することができる。図1の実施形態では複数のフォトマスク間の相対的位置関係を保持するために、フォトマスクフォルダー3の開口部2を高精度で作成する必要があるが、本実施形態によれば、フォトマスクが移動可能であるので開口部2の精度は要求されない。」 (4-d)【0014】?【0016】 「【0014】 【発明の効果】以上の説明から明らかなように請求項1記載の発明によれば、フォトマスクフォルダーに複数の開口部を形成し、これら開口部に複数のフォトマスを装着したので、フォトマスクが大型化してもフォトマスクがたわむことなく、簡単な構成で大型基板に対応することができる。 【0015】また、請求項2記載の発明によれば、各開口部に調整ネジを設け、該調整ネジによりフォトマスクを移動可能且つ露光時に固定可能にしたので、フォトマスク間の相対的位置関係を保つことができる。 【0016】また、請求項3記載の発明によれば、上記開口部下縁に係止片を形成し、上記フォトマスクの膜面側外周に係止段部を形成したので、フォトマスクを水平に装着すると共にフォトマスクの落下を防止することができる。」 (4-e)【図2】 【図2】には、(A)フォトマスクフォルダーの平面図、及び、(B)フォトマスクをセットした状態を示す拡大断面図が図示されている。 (5)引用例5 本願優先日前に頒布された刊行物である、特開平10-50478号公報(以下、「引用例5」という。)には、以下の事項の記載がある(下線は当審による。)。 (5-a)段落【0038】 「【0038】有機電界発光素子に用いられる基板の表面が平面である場合には、マスクと基板との均一な密着性を実現するために、高い平面性を有するマスクを使用する方が有利である。しかしながら、微細なパターンに対応するためにマスクの板厚を薄くすると、マスクの作製工程の途中で変形を受けやすくなり、マスクにうねりが生ずるなどして平面性が損なわれることがある。このような場合には、焼き鈍しなどの方法を利用してマスクの平面性を向上させてもよい。さらに、マスクは適当な形状のフレームに固定された状態で使用されることが多いが、その際も、マスクにテンションを掛けながらフレームに固定するなどして、マスクの平面性を理想状態に近づけるようにすべきである。」 (6)引用例6 原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である、特開平6-231684号公報(以下、「引用例6」という。)には、図面とともに、以下の事項の記載がある(下線は当審による。)。 (6-a)【0049】-【0053】の欄 「【0049】実施例6.この発明のさらに他の実施例を図8(i)?(iii )について説明する。図8(i)において17は一般に厚膜印刷に用いられる厚膜印刷用スクリーン版(メッシュ)である。この厚膜印刷用スクリーン版に、ライン,ドットなどの模様を施せば、ガス放電表示装置のリブや陰極,プリント基板の配線などの印刷を行うことができる。18は厚膜印刷用スクリーン版17用のフレーム、19は厚膜印刷用スクリーン版17用に張られたスクリーンである。図8(ii)において5は、フルアディティブ製法を用いた金属メッキ法により作製されたパターン、7はパターン5に形成されたドットの1つである。パターン5は、スクリーン19の上面に張り付けられる。最後に図8(iii )に示すようにパターン5の下のスクリーン9の不要部をカッターで取り除いてマスク8となる。パターン5はフレーム18近傍に残ったスクリーン9によって、露光時の障害なしに支持される。 【0050】次に動作について説明する。フルアディティブ製法を用いた金属メッキ法によって作製したパターン5は、厚さが10?100μmなので、皺やうねりが生じやすく、露光マスク8としては、使いにくい。そこで、本実施例においてはこのパターン5を、数kgf/cm^(2)のテンション(引張力)で張られたスクリーン19に固定する。こうすると、スクリーン19にかけられたテンションが、パターン5にかけられ、皺やうねりを生じることなく、マスク8として使用することができる。一例を示すと、スクリーン19のメッシュには、350メッシュのステンレスメッシュを用い、これにつける乳剤(レジスト)は水性のものを用いて、パターン5を張った。スクリーン19には、7kgf/cm^(2) のテンションをかけた。フレーム18は、600×500mmのアルミニウム製のものを用いた。パターン5の大きさは、480×370mmで、厚さは50μmである。こうして製作したマスク8のパターン5の1部(ドット7)の平面を図9に示す。 【0051】実施例7.図8(i)の厚膜印刷用スクリーン版17のスクリーン19に、325メッシュのテフロンメッシュで、7.5kgf/cm^(2) のテンションをかけたものを用いても実施例6と同様に良好なマスク8が得られた。スクリーン19のテンションは経験的には、7?8kgf/cm^(2)が良いようであるが、パターン5の大きさにもよるのでこの限りではない。 【0052】実施例8.図8(iii)に示したマスク8は、図8(i)の厚膜印刷用スクリーン版17のスクリーン19に固定されるので、スクリーン19にかけられた数kgf/cm^(2)のテンションにより、パターン5が引っ張られ全長が長くなる。そこで、図2(i)?(iv)に示した工程でパターン5を作製する際に、20?100μmだけ予め全長を短くしておく。こうしておくと、パターン5をスクリーン19に固定した際に、パターン5が伸びて所定の寸法の公差内に納めることができる。一例を示すと、スクリーン19にかけるテンションが7?8kgf/cm^(2) の時、40?80μmだけ予め全長を短くしておくとよい。 【0053】このような実施例8のマスク8の製作の一例を再度先の図8(i)?(iii )を参照して説明する。まず、所定の寸法がより20?100μmの範囲内で短いパターン5を作製する。また、図8(i)に示すように、アルミニウムや鋳物などでできたフレーム18に数kgf/cm^(2) (ここでは7.5kgf/cm^(2) )のテンションでスクリーン19が張られた厚膜印刷用スクリーン版17を用意する。この時、スクリーン19の面積は、パターン5の面積よりも充分大きくなければならない。次に、図8(ii)に示すように、スクリーン19の中央部にくるように、パターン5を置き、パターン5の周囲(ドット7のない部分)を瞬間接着材や粘着テープなどで、しっかり固定する。最後に図8(iii)に示すように、パターン5のドット7のある部分の下にあるスクリーン9の不要部をきれいにカッターで取り除く。こうして、できたマスク8は比較的軽量で作業しやすく、全長の寸法も適当なものである。」 (6-b)【図8】 【図8】には、露光用金属マスクの形成プロセスを示す断面工程図が図示されている。 (7)引用例7 本願優先日前に頒布された刊行物である、特開平10-329303号公報(以下、「引用例7」という。)には、図面とともに、以下の事項の記載がある。 (7-a)段落【0003】 「【0003】図4の(a),(b)に示すように、メタルマスク1は、メタルマスク1を保持するための枠形状のフレーム2に高弾性のメッシュ材料3を介して取り付けられており、通常、この固定方法はコンビネーションと呼ばれている。即ち、フレーム2に接着固定されているメッシュ材料3と、メタルマスク1とを接合部4で接着固定(以下、コンビネーションと記す)することで、メタルマスク1がフレーム2に保持されている。」 (7-b)【図4】 【図4】には、(a)従来のクリーム半田印刷装置を示す平面図、及び、(b)IV-IV線矢視正面断面図が図示されている。 (8)引用例8 本願優先日前に頒布された刊行物である、特開平7-314935号公報(以下、「引用例8」という。)には、図面とともに、以下の事項の記載がある。 (8-a)段落【0002】 「【0002】 【従来の技術】図9乃至図15に基いて従来のスクリーン印刷用コンビネーションマスクについて説明する。矩形状の外側フレーム101にポリエステルやナイロンその他の材質の外側スクリーン102をストレッチャーで所定の張力で引っ張って接着剤で前記外側フレーム101に固定し、接着剤乾燥後ストレッチャーを離し外側フレーム101よりはみ出た余分なスクリーンを図9の如くカットする。103はステンレススクリーンやアモルファススクリーンやエレクトロホーミングスクリーン等の所定の大きさの矩形状に切断した内側スクリーンである。104は平滑な板又は定盤等の台で、この上に接着剤に対して剥離効果のあるフイルムや紙等の剥離紙105を載置し、その上に前記内側スクリーン103を載置する。この内側スクリーン103の上に薄いフイルムや紙等のカッテイング緩衝材106を載置する。その上に図9の外側フレーム101をスキージー面102aを上にして図12の如くセットし、セットしたものが動かないように外側フレーム101を万力107等により図12の如く固定する。内側スクリーン103周辺の接着部をはさんでその外側及び内側に接着剤がはみ出さないようにテープ108で図12の如く目止めする。このテープ108間に接着剤109を塗布し、外側スクリーン102とカッテイング緩衝材106と内側スクリーン103周辺接着部を一体に接着する。次いで、目止めテープを剥がし、外側スクリーン102の接着部内側をカッター110によりカッテイング緩衝材106に切り込みを入れ、図13の如くカットし、図14、図15に示すようなスクリーン印刷用ダブルフレームコンビネーションマスク111を形成する。」 (8-b)【図9】?【図15】 【図9】?【図15】には、それぞれ、下記のことが図示されている。 【図9】従来成形方法のスクリーンを固着した外側フレーム正断面図。 【図10】内側スクリーン平面図。 【図11】基台上に剥離紙、緩衝材、内側スクリーンを重合載置した正断面図。 【図12】図11の上に図9の外側フレームをセットした時の正断面図。 【図13】図12の外側フレームに張った外側スクリーンをカットする時の部分正断面図。 【図14】従来マスクの平面図。 【図15】図14のA-A正断面図。 (9)引用発明の認定 引用例1の段落【0016】の「シャドーマスク自体は剛直性や機械的強度が十分でない場合が多いので、機械的強度の十分な材料でできたフレームに取り付けて用いられる。本発明の1枚の基板上にn面(nは以上の整数)の有機電界発光素子を同時に形成する方法では、n個のフレームにそれぞれシャドーマスクを取り付けたものを同時に配置して用いる。これを『分割タイプ』と呼称する。この場合、それぞれ独立したn個のシャドーマスクを用いるので、マスクの取り替えの自由度が大きく、またマスクはそれぞれ個別に位置合わせすることができるので精度の高いパターニングが可能になる。」との記載、段落【0046】の「発光層パターニング用として、図3に示したようにマスク部分と補強線とが同一平面内に形成された同一のシャドーマスク12枚を作製した。1枚のシャドーマスクの外形は120×84mm、マスク部分31の厚さは25μmであり、長さ64mm、幅100μmのストライプ状開口部32がピッチ300μmで272本配置されている。各ストライプ状開口部には、開口部と直交する幅20μm、厚さ25μmの補強線33が1.8mm間隔に形成されている。それぞれのシャドーマスクは外形が等しい幅4mmのステンレス鋼製フレーム34に固定されている。このように作製した12枚のシャドーマスクを4枚づつ3組に分けて用いる。本実施例はn=4で『分割タイプ』による有機電界発光素子の作製を行う。本実施例では4枚のシャドーマスクを基板上に上下左右2枚づつ配置して用いた。」との記載及び図3を参酌すると、図3から、四角形のシャドーマスクが取り付けられた四角形のフレームが見て取れる。また、前記段落【0016】に記載されたようにフレームの目的が機械的強度の確保にあることからして、四角形のフレームに対して四角形のシャドーマスクがその4辺を固定されて取り付けられていることは当然のことである。そして、段落【0046】では、このようなフレームを4個用いることが把握でき、この場合、前記段落【0016】に記載されたように、マスクはそれぞれ個別に位置合わせすることができることが理解される。したがって、前記記載箇所を総合すると、引用例1には、「それぞれ四角形のシャドーマスクがその4辺で固定されて取り付けられた4個の四角形のフレームからなり、それぞれ個別に位置合わせすることができるシャドーマスクの集合体」が記載されていると認められる。 また、引用例1の段落【0001】の「【発明の属する技術分野】本発明は、表示素子、フラットパネルディスプレイ、バックライト、照明、インテリア、標識、看板、電子写真機などの分野に利用可能な、電気エネルギーを光に変換できる有機電界発光素子の製造方法に関する。」との記載や【特許請求の範囲】の【請求項1】の「基板上に形成された第一電極上に少なくとも有機化合物からなる発光層を含む薄膜層を形成する工程と、前記薄膜層上に第二電極を形成する工程とを含む有機電界発光素子の製造方法であって、1枚の基板上にn面(nは2以上の整数)の薄膜層および第二電極を形成する工程と、前記第二電極形成工程後に前記基板をn個に切断する工程とを含むことを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。」及び【請求項4】の「1枚の基板に対してn個のシャドーマスクを配置させた状態で発光層もしくは第二電極の少なくとも一方をパターニングすることを特徴とする請求項3記載の有機電界発光素子の製造方法。」との記載を参酌すると、引用例1の「シャドーマスク」は、「フラットパネルディスプレイに利用可能な有機電界発光素子の製造用」であることが理解される。 以上を総合すると引用例1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明> 「それぞれ四角形のシャドーマスクがその4辺で固定されて取り付けられた4個の四角形のフレームからなり、それぞれ個別に位置合わせすることができる、フラットパネルディスプレイに利用可能な有機電界発光素子の製造用のシャドーマスクの集合体。」 4.本願補正発明と引用発明との対比 本願補正発明と引用発明を対比する。 引用発明の4つある「四角形のシャドーマスク」が本願補正発明の「少なくとも一つのパターンを有する多数のサブマスク」に相当することは当業者には自明である。したがって、本願補正発明と引用発明は「少なくとも一つのパターンを有する多数のサブマスク」を備える点で一致する。 引用発明の「フレーム」が本願補正発明の「サブフレーム」に相当することは当業者には自明である。引用発明の「それぞれ四角形のシャドーマスクがその4辺で固定されて取り付けられた4個の四角形のフレームからなり」と本願補正発明の「前記サブマスクの4辺はファイバを介してサブフレームで固定され」とを比較すると、本願補正発明と引用発明は「前記サブマスクの4辺はサブフレームで固定され」ている点で一致する。 引用発明は「それぞれ四角形のシャドーマスクがその4辺で固定されて取り付けられた4個の四角形のフレーム」が「それぞれ個別に位置合わせすることができる」ところ、技術常識からして四角形のフレームに取り付けられたシャドーマスク自体も上下左右に移動できることは自明である。ここで、本願補正発明は「前記各サブマスクは前記該当開口部分に位置し、その開口内で上下左右に移動可能であ」るから、本願補正発明と引用発明は「前記各サブマスクは上下左右に移動可能である」点で一致している。 引用発明の「フラットパネルディスプレイに利用可能な有機電界発光素子の製造用のシャドーマスクの集合体」と本願補正発明の「ディスプレイパネル作製用マスク」が「ディスプレイパネル作製用マスク」の点で一致することは当業者には自明である。 以上より、本願補正発明と引用発明は、 「少なくとも一つのパターンを有する多数のサブマスクを備え、前記各サブマスクは上下左右に移動可能であり、前記サブマスクの4辺はサブフレームで固定されたディスプレイパネル作製用マスク」 の点で一致し、以下の相違点1及び相違点2の点で相違する。 〈相違点1〉 各サブマスクは上下左右に移動可能であることについて、本願補正発明においては、更に「前記サブマスクを支持するように多数の開口を有するメインフレーム」を有し、「前記各サブマスクは前記該当開口部分に位置し、その開口内で上下左右に移動可能であ」るとの特定がなされているのに対して、引用発明においてはこのような発明特定事項を有するのか否か不明である点。 〈相違点2〉 前記サブマスクの4辺はサブフレームで固定されたことについて、本願補正発明においては、「前記サブマスクの4辺はファイバを介してサブフレームで固定され、前記ファイバは、その一端および他端がそれぞれ接着剤を用いて前記サブマスクのエッジ領域および前記サブフレームのエッジ領域に取り付けられて、かつテンションを加えられる」のに対して、引用発明においては、このような発明特定事項を有していない点。 5.相違点についての検討・判断 上記各相違点について以下検討する。 (1)相違点1について 引用発明に係る4つのシャドーマスクを有するマスクの集合体は、四角形のフレームに取り付けられた上でシャドーマスクがそれぞれ個別に位置合わせされるところ、全くばらばらでは不便であり、略一体的に取り扱いできるようにして(例えば、各シャドーマスクの平面と垂直な方向(上下左右方向とは垂直な方向)に位置合わせされていたり、各シャドーマスクの面間の位置合わせについて大まかな位置が決まっているなど)、取り扱いのしやすさを向上すべきことは、当業者には自明な課題である。 引用例2には、露光用の4つのマスクを4つの開口部を有する枠板に位置調整できるように取り付けることが記載されている(特に前記摘記事項(2-b)の下線部を参照。)。そして、このようにすることにより、複数のマスクを同時に1枚のウェハ上に焼付けることができるという技術効果を奏することが記載されている(前記摘記事項(2-c)の下線部参照。)。 引用例2に記載の技術事項と引用発明は、マスクを使ったパターン加工技術の分野に属するという意味で技術的に共通する部分があり、かつ、露光用マスクはよく知られた技術分野であるから、前記自明な課題を認識する当業者が、当該課題解決のために引用発明と隣接する技術分野である露光用マスクの技術分野の技術を照会することは、期待されることである。なお、引用例2には、位置調整として上下左右の2方向に移動できることの明示の記載はないものの、露光用マスクを開口部を有する部材に対して2方向に位置調整できるようにすることは、例えば引用例3及び引用例4に記載されているように技術常識である。 してみれば、引用発明において、引用例2に記載された、露光用の4つのマスクを4つの開口部を有する枠板に位置調整できるように取り付けるという技術手段を採用することは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。すなわち、引用発明において、シャドーマスクを取り付けるための開口部を有する枠板を設け、シャドーマスクが開口部内で上下左右に位置調整できるようにして、相違点2に相当する発明特定事項を備えるようにすることは、引用発明、引用例2に記載された技術事項及び技術常識に基いて当業者が容易に想到し得たものと認められる。 なお、相違点1に基づく技術効果は、引用発明、引用例2に記載された事項及び技術常識から予想される程度のものである。 したがって、上記相違点1は格別なものとは認められず、上記相違点1をもって進歩性を見いだすことはできない。 (2)相違点2について 引用発明においては、シャドーマスクはフレームに取り付けられているところ、引用例5に「マスクは適当な形状のフレームに固定された状態で使用されることが多いが、その際も、マスクにテンションを掛けながらフレームに固定するなどして、マスクの平面性を理想状態に近づけるようにすべきである。」と記載されているように、シャドーマスクがフレームにテンションを加えられて取り付けられるべきことは、当業者には技術常識である。したがって、引用発明において、技術常識にしたがってシャドーマスクがフレームにテンションを加えられて取り付けられるようにするに際して、このための具体的手段を適宜採用又は変更することは、当業者が適宜なし得る設計事項であると認められる。 ここで、引用例6には、マスクをフレームにスクリーン版(メッシュ)を介してテンションがかけられた状態で固定すること、及び、スクリーン版(メッシュ)とマスクを接着剤で固定することが記載されている(特に前記摘記事項(6-a)の下線部を参照。)。なお、引用例6には、フレームとスクリーン版(メッシュ)とが接着剤で固定されていることの明示の記載はないが、これらが接着剤で固定されていることは技術常識である(例えば、引用例7及び引用例8を参照。)。 してみれば、引用発明において、引用例6に記載された、マスクをフレームにスクリーン版(メッシュ)を介してテンションがかけられた状態で固定すること及びスクリーン版(メッシュ)とマスクを接着剤で固定することを採用し、その際、技術常識にしたがってフレームとスクリーン版(メッシュ)とを接着剤で固定するようにすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。すなわち、引用発明において、シャドーマスクの4辺はスクリーン版(メッシュ)を介してフレームで固定され、前記スクリーン版(メッシュ)は、その一端および他端がそれぞれ接着剤を用いて前記シャドーマスクのエッジ領域および前記フレームのエッジ領域に取り付けられて、かつテンションを加えられるようになすことは、引用発明、引用例6に記載された事項及び技術常識に基いて当業者が容易に想到し得たことであると認められる。ここで、相違点2に係る「ファイバ」について、本願明細書の関係箇所である段落【0020】の「第二は、図5bに示すように、サブマスク11の周囲に網のようなファイバ14をエポキシなどの接着剤で取り付けた後、そのファイバ14にテンションを加えてサブフレーム12に固定させることである。ここで、ファイバ14はサブマスク11とサブフレーム12に接着剤で付着される。」(下線は当審による。)との記載も参照すると、引用例6に記載された事項である「スクリーン版(メッシュ)」は相違点6に係る「ファイバ」に相当することが理解される。したがって、引用発明において相違点2に係る事項を付加することは、引用発明、引用例6に記載された事項及び技術常識に基いて当業者が容易に想到し得たことと認められる。 なお、相違点2に基づく技術効果として、引用発明、引用例1又は引用例6に記載された事項及び技術常識から予想される範囲を超えるものを、明細書の記載から認識することはできない。 したがって、上記相違点2は格別なものとは認められず、上記相違点2をもって進歩性を見いだすことはできない。 (3)相違点についての検討・判断のまとめ 以上、相違点1及び相違点2は格別なものとは認められない。 そして、本願補正発明が奏する作用効果も、引用発明、引用例2、6に記載された事項及び技術常識から、当業者が予測できる範囲のものである。 よって、本願補正発明は、引用発明、引用例2、6に記載された事項及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.本件補正についての結び 以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成19年12月25日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1から9に係る発明は、本件補正前の、平成17年5月2日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1から9に記載された事項(上記「第2」の「1.」の「(2)本件補正前の特許請求の範囲」を参照。)により特定されるものである(請求項1に係る発明を、以下、「本願発明」という。)。 2.刊行物及び各刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、前記「第2」の「3.刊行物及び各刊行物の記載事項」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「第2」の「2.本願補正発明」の「5.相違点についての検討・判断」において検討した本願補正発明の発明特定事項である 「前記サブマスクの4辺はファイバを介してサブフレームで固定され、 前記ファイバは、その一端および他端がそれぞれ接着剤を用いて前記サブマスクのエッジ領域および前記サブフレームのエッジ領域に取り付けられて、かつテンションを加えられる」 から限定を省いて 「前記サブマスクの4辺はサブフレームで固定され、 前記サブマスクは、ファイバを介して前記サブフレームに固定される」 としたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」の「5.相違点についての検討・判断」に記載したとおり、引用発明、引用例2、6に記載された事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用例2、6に記載された事項及び技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2、6に記載された事項及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-03-16 |
結審通知日 | 2010-03-23 |
審決日 | 2010-04-05 |
出願番号 | 特願2001-362324(P2001-362324) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加藤 隆夫、河原 英雄 |
特許庁審判長 |
北川 清伸 |
特許庁審判官 |
岡田 吉美 村田 尚英 |
発明の名称 | ディスプレイパネル製作用マスク |
代理人 | 大宅 一宏 |
代理人 | 曾我 道治 |
代理人 | 上田 俊一 |
代理人 | 梶並 順 |
代理人 | 鈴木 憲七 |
代理人 | 古川 秀利 |