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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1222371
審判番号 不服2007-26246  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-25 
確定日 2010-08-23 
事件の表示 特願2005-359122「情報処理装置、情報処理装置の制御方法およびそのプログラム、記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月 3日出願公開、特開2006-202269〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年12月13日(国内優先権主張:平成16年12月22日)の出願であって、平成18年3月28日付けで手続補正がなされ、平成19年5月29日付けの拒絶の理由の通知に対して、同年7月31日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、同年8月20日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し同年9月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年10月25日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年10月25日付けの手続補正についての却下の決定
[結論]
平成19年10月25日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正
平成19年10月25日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成19年7月31日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項(以下「補正前の請求項」という。)1?14並びに明細書【0008】及び【0015】を、平成19年10月25日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項(以下「補正後の請求項」という。)1?7並びに明細書【0008】及び【0015】に補正したものである。補正後の請求項1は、以下のとおりである。

「【請求項1】
通信媒体を介して印刷装置に接続された情報処理装置であって、
ドキュメントデータに基づく印刷データを生成して前記印刷装置に出力する出力手段と、
複数の印刷ポリシーファイルから選択可能、又は編集可能であって、それぞれが異なる印刷ポリシーファイルである外部の印刷ポリシーファイルを参照する印刷ポリシー参照手段と、
前記印刷ポリシー参照手段により参照した前記外部の印刷ポリシーファイルを基に、前記ドキュメントデータ内に前記外部の印刷ポリシーファイルで規定された所定の記述の有無を検査する検査手段と、
前記検査手段の検査の結果に応じて前記出力手段による印刷データの生成を制御する印刷データ制御手段と、を有し、
前記印刷ポリシーファイルは印刷禁止項目を所定の記述で定義し、
前記所定の記述は、前記印刷ポリシーファイル内に直接収納した記述と外部参照が必要な記述で構成され、
前記直接収納した記述とは、テキスト形式の印刷禁止キーワードであり、
前記外部参照が必要な記述とは印刷禁止のイメージを外部参照する記述、若しくは、印刷禁止であるユーザリストまたは印刷装置名リストを少なくとも含む外部のファイルリストを参照する記述であり、
前記検査手段による検査の結果、前記ドキュメントデータ内に前記印刷ポリシーファイルで規定された所定の記述が有ると判断された場合には、前記印刷データ制御手段は前記出力手段による印刷データの生成を中止することを特徴とする情報処理装置。」

本件補正による請求項1は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「印刷ポリシーファイル」について「それぞれが異なる」との限定を付加する補正、「直接収納した記述」について「テキスト形式の印刷禁止キーワードであり」との限定を付加する補正、「外部参照が必要な記述」について「印刷禁止のイメージを外部参照する記述、若しくは、印刷禁止であるユーザリストまたは印刷装置名リストを少なくとも含む外部のファイルリストを参照する記述であり」との限定を付加する補正をしたものであり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例の記載
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である「特開2000-253241号公報」(平成12年9月14日公開。以下「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

A.「【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】(第1の実施の形態)まず、本発明の第1の実施の形態で、パーソナルコンピュータにおける不正な複製を禁止するデータ監視方法を組み込む一実施例を図1、図2、図3、図4を用いて説明する。 図2はパーソナルコンピュータの使用環境の構成図を示したものである。パーソナルコンピュータ1(以下、パーソナルコンピュータ1をPC1と記述する。)には、様々なアプリケーション・ソフトウェアが搭載され、簡易な印刷システムを構成した場合には編集処理、加工処理、画像処理(色処理)を行う。スキャナ3は画像をPC1に入力するのに使われる。複製手段としてのプリンタ2はPC1の印刷データに従って用紙、OHP用紙等に印字イメージの像形成を行う。PC1はネットワーク100に接続されると、ネットワーク100上のネットワークスキャナ5(以下、NS5と記述する。)から画像を取り込んだり、ネットワークプリンタ4(以下NP4と記述する。)に印刷データを転送して印刷もできる。
【0020】DTPシステムは、色処理、加工を行うPC1、印刷するプリンタ2があれば構成できる。更に、原稿を読み取るのにスキャナ3を接続する。
【0021】次に、図1を用いて、PC1が特定の印刷データ11を印刷する場合の動作を説明する。
【0022】図1はパーソナルコンピュータ1のブロック図である。PC1にインストールされたアプリケーションで印刷イメージが確定すると印刷指定が行われ、印刷データ11が生成される。さらに、印刷データ11はプリンタドライバ12に渡される。プリンタドライバ12は、PC1からプリンタ2にデータの橋渡しを行う制御プログラムとして、予めインストールされているものである。このプリンタドライバ12はアプリケーションより印刷指定された印刷データ11をプリンタ2に転送する。
【0023】データ監視手段としての印刷情報解析回路15は、プリンタ2に転送される印刷データ11を常にモニターし、対象データとしてのページ記述言語などで記載された文字列情報、画像パターン情報、コード情報、電子透かし技術で埋め込まれた暗号情報などを確認メモリ16の中で最終的な展開像に事前に形成し、複製禁止情報14からの情報と照合および解析を行なう。もし、この印刷データ11の印刷情報が予め複製禁止情報14に登録されているものと判定した場合は、プリンタドライバ12に対して印刷データの転送を停止させる停止命令151を出力する。プリンタドライバ12は、停止命令151によって、印刷データの転送を停止する。これによって、不正な印刷をPC1レベルで防止できる。 複製禁止情報14の内容は、印刷を禁止したい内容に対し、常に対応して更新できるようにする。これによって、日々変更される機密管理レベル、機密情報、日新月歩で技術開発が進歩する偽造防止技術、暗号化技術に迅速に対応できる。
【0024】この更新方法について説明する。更新手段および取得手段としての情報更新回路13は、ICカード200が挿入されると、ICカード200の認証を行う。更新権利があると判定した場合のみ、ICカード200に保存された更新データを取得する。次に、情報更新回路13は、取得した更新データに基づいて、複製禁止情報14の内容を更新する。また、更新データはネットワーク100を経由して入手しても良い。この更新機能を持つことで、禁止印刷情報の更新が簡単に行え、日常的に更新される最新情報に内容を維持することができる。機器に内蔵したメモリ交換が不要なので、更新を迅速に行え、不正印刷の広がりの拡大を防止できる。
【0025】また、認証確認を行うことで、情報の改ざん、不正な印刷を行う者に対する改造防止ができる。また、管理レベルを持たせることもでき、機密情報の管理を様々な階層レベルで実現できる。
【0026】次に、図3を用いて、複製禁止情報14の格納情報について説明する。図3は複製禁止情報14の格納情報を示した図である。
【0027】複製禁止情報14としては、文書データの文字情報141、画像パターン情報142、コード情報143、画像中に電子透かし技術で挿入された暗号情報144など、文書を特定できる情報が保存されている。
【0028】文書データの文字列情報141には、文書中のタイトル、文書中の特定文字列(例えば、機密文書の主要なキーワードなど)を保存する。画像パターン情報142には、印刷情報を特定できる固有のパターン情報が保存される。コード情報143には、原稿データに文書管理コードが付与される場合に対応するコードの解析情報が保存される。暗号情報144には、著作権で保護された写真画像データに埋め込まれた電子透かし解読情報や、スキャナ3で読み込む原稿に予め所定の暗号化(セキュリティー印刷等)によって印刷されている暗号パターンの解読アルゴリズム、コードの種別情報などが保存される。複製禁止情報14は、文書、紙幣、証券、金券などあらゆる印刷物を対象に、印刷情報を特定できるものであれば何でも良い。
【0029】次に、図4を用いて、印刷情報解析回路15の動作を説明する。図4は印刷情報解析回路15のブロック図である。印刷情報解析回路15は、プリンタドライバ12を常にモニターし、印刷を開始する際に必ず所定の動作を行うようにする。まず、動作を開始すると描画エンジン154は、プリンタドライバ12から印刷データ11の描画情報を入手し、確認メモリ16に描画情報に従って描画動作を行う。描画された描画画像データ161は、各種の解析エンジンによって、内容が解析される。描画画像データ161の中のタイトル領域はタイトル解析エンジン155が領域を特定し、その内容の解析結果を照合回路159に転送する。照合回路159は複製禁止情報14の中から、照合情報として使える文字情報141を選び出し、タイトル解析エンジン155が転送してきた解析結果と照合する。照合の結果、一致する情報が発見されると不正印刷の印字と見なし、信号151によってプリンタドライバ12の印刷動作を停止させる。
【0030】同様に、文書解析エンジン156はテキスト領域を検出し内容を解析し、イメージ解析エンジン157は写真領域を検出し内容を解析し、コード解析エンジン158はコード領域を検出し内容を解析する。解析結果は、それぞれ照合回路159に転送される。照合回路159は複製禁止情報14の中から、照合情報として使える文字情報141、画像パターン情報142、コード情報143、暗号情報144をそれぞれ選択し、各種解析エンジンから転送されてくる解析結果と照合する。照合の結果、いずれかの一致検出が発見されると不正印刷の印字と見なし、信号151によってプリンタドライバ12の印刷動作を停止させる。また、コード解析エンジン158は解読に必要なデコードアルゴリズムを照合回路159に問い合わせて最新の解読アルゴリズムを入手できるようにする。これによって、日新月歩する暗号技術に常に対応できる。照合回路159は、各解析エンジンからの問合わせに応じ、複製禁止情報14の中から必要な情報を入手して各解析エンジンに返答する。
【0031】このように、複数の解析エンジンを有することで、文書特徴の異なる様々な印刷原稿に対応できる。
【0032】以上、第1の実施の形態によれば、PC1からプリンタに印刷を行う際に印刷内容を解析し、不正印刷を防止する機能を持たせることで、社内の機密文書の不正印刷、紙幣、金権の偽造などを未然に防ぐことができる。さらに、不正印刷情報を簡単に更新できる仕組みを持つことで、日々変更される機密管理レベル、機密情報、日新月歩で技術開発が進歩する偽造防止技術、暗号化技術に迅速に対応できる。結果、不正印刷の広がりの拡大を防止できる。
【0033】また、認証確認を行うことで、情報の改ざん、不正な印刷を行う者に対する改造防止ができる。また、管理レベルを持たせることもでき、機密情報の管理を様々な階層レベルで実現できる。
【0034】また、パーソナルコンピュータに不正印刷防機能を持たせる場合は、特別なハードウェアはいらなく、ソストウェアのみをインストールすれば良く、低コストで実現できる。」(第4ページ第5欄第3行?第5ページ第7欄第45行)

B.「【0064】(第5の実施の形態)第1から第4の実施の形態ではデータ監視機能を組み込んだ装置について説明したが、ここではデータ監視機能を組み込んだ装置に対して、複製禁止情報を迅速に配信できる方法の一実施例を説明する。
【0065】図10、図11を用いて、印刷を禁止したい情報の登録機能について説明する。図10はネットワーク上に接続された機器への登録機能説明図である。図11は複製禁止情報登録装置6のブロック図である。
【0066】不正な複製を防止するためには、いかに迅速に目的とする複製物を検出し、複製を防止するかが重要である。図10に図示する複製禁止情報登録装置6はネットワーク100上に接続されたネットワークスキャナ5,ネットワークプリンタ4、パーソナルコンピュータ1、第nのネットワークプリンタ7に対して、複製禁止情報をネットワーク経由で配信する装置である。各装置に組み込まれた不正印刷防止機能は、個々に組み込まれた更新手段によって、複製禁止情報登録装置6からの更新データを取得し、複製禁止情報の内容を最新のものに更新する。これによって、ユーザに負担をかけることなく、迅速に不正印刷の情報を各機器に伝達でき、不正な複製を未然に防止できる。
【0067】次に、図11を用いて、複製禁止情報登録装置6の詳細を説明する。図11は複製禁止情報登録装置6のブロック図である。
【0068】図11において、情報設定手段66は、記録媒体150により複製禁止情報を取得する。
【0069】記録媒体は、FD(フロッピー(登録商標)ディスク)、MO、CD-R等複製禁止情報を記録出きるものであれば良い。また、別な情報取得方法として、キーボードからの入力、スキャナなどによる画像パターンの読み取りなどがある。情報設定手段66は、新規な情報が入力されると、禁止印刷登録情報65を更新する。禁止印刷登録情報65を更新する別な方法としてネットワーク61を経由する方法もある。この場合は、登録情報自動更新手段64に、予め決められたデータベースを指定して更新データを入手するように設定しておく。更新記録は、更新履歴情報63として保存する。履歴情報を保存することで、登録情報自動更新手段64が履歴情報63から禁止印刷登録情報65を更新する必要が「ある」、「ない」を判定できる。更新周期は所定の時間間隔でも良いし、予め決められたデータベースからの通知によってでも良い。情報開示/配信手段62は、ネットワーク100を経由した問合わせに対し、禁止印刷登録情報65を開示する。また、管理下に置かれたプリンタ、スキャナ、パーソナルコンピュータに対して禁止印刷登録情報65の配信、または更新情報の配信を行う。
【0070】機器側の実施例として、ネットワークプリンタ4の場合を説明する。ネットワークプリンタ4では、禁止印刷登録情報65の配信が複製禁止情報登録装置6より行われると、更新回路31が更新情報を取得し、複製禁止情報49を書き換える。
【0071】また、ネットワークプリンタ4には登録情報問合わせ回路33があり、印刷情報解析回路48の指示により情報開示/配信手段62から直接に禁止印刷登録情報65を取得することもできる。
【0072】これによって、装置側は複製禁止情報49の保存メモリが不要になり、コストを削減できる。また、禁止印刷登録情報65を更新すれば、ネットワークプリンタ4も更新されるので、管理がしやすく、迅速な対応ができる。
【0073】更新記録は、更新履歴情報32として保存する。履歴情報を保存することで、登録情報問合わせ回路33は無効な問い合わせを防止できる。
【0074】以上、第5の実施の形態によれば、複製禁止情報登録装置6からネットワークに接続された各機器に対し禁止印刷登録情報65を開示/配信できるので、機器管理、機器メンテナンス、機密情報レベルの変更が行いやすい。
【0075】また、一カ所の情報変更で、ネットワーク上の管理された機器を一斉に更新することができるので、迅速に不正な複製を防止できる。」(第7ページ第12欄第44行?第8ページ第14欄第16行)

以上の記載によれば、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「パーソナルコンピュータ1には、様々なアプリケーション・ソフトウェアが搭載され、簡易な印刷システムを構成した場合には編集処理、加工処理、画像処理を行うものであり、
パーソナルコンピュータ1にインストールされたアプリケーションで印刷イメージが確定すると印刷指定が行われ、印刷データ11が生成され、印刷データ11はプリンタドライバ12に渡され、
プリンタドライバ12は、パーソナルコンピュータ1からプリンタ2にデータの橋渡しを行う制御プログラムで、このプリンタドライバ12はアプリケーションより印刷指定された印刷データ11をプリンタ2に転送し、
印刷情報解析回路15は、プリンタドライバ12を常にモニターし、印刷を開始する際に必ず所定の動作を行い、
印刷データ11の印刷情報が予め複製禁止情報14に登録されているものと判定した場合は、プリンタドライバ12に対して印刷データの転送を停止させる停止命令151を出力するもので、
動作を開始すると描画エンジン154は、プリンタドライバ12から印刷データ11の描画情報を入手し、確認メモリ16に描画情報に従って描画動作を行い、
描画された描画画像データ161は、各種の解析エンジンによって、内容が解析され、
文書解析エンジン156はテキスト領域を検出し内容を解析し、イメージ解析エンジン157は写真領域を検出し内容を解析し、コード解析エンジン158はコード領域を検出し内容を解析し、解析結果は、それぞれ照合回路159に転送され、
照合回路159は複製禁止情報14の中から、照合情報として使える文字情報141、画像パターン情報142、コード情報143、暗号情報144をそれぞれ選択し、各種解析エンジンから転送されてくる解析結果と照合し、照合の結果、いずれかの一致検出が発見されると不正印刷の印字と見なし、信号151によってプリンタドライバ12の印刷動作を停止させるもので、
複製禁止情報登録装置6はネットワーク100上に接続されたネットワークスキャナ5、ネットワークプリンタ4、パーソナルコンピュータ1、第nのネットワークプリンタ7に対して、複製禁止情報をネットワーク経由で配信する装置であって、
各装置に組み込まれた更新手段によって、複製禁止情報登録装置6からの更新データを取得し、複製禁止情報の内容を最新のものに更新し、
複製禁止情報14としては、文書データの文字情報141、画像パターン情報142、コード情報143など、文書を特定できる情報が保存されており、
文書データの文字列情報141には、文書中のタイトル、文書中の特定文字列(例えば、機密文書の主要なキーワードなど)を、画像パターン情報142には、印刷情報を特定できる固有のパターン情報が、コード情報143には、原稿データに文書管理コードが付与される場合に対応するコードの解析情報が保存される、パーソナルコンピュータ1。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。

引用発明は、パーソナルコンピュータ1にインストールされたアプリケーションで印刷イメージが確定すると印刷指定が行われ、印刷データ11が生成され、印刷データ11はプリンタドライバ12に渡され、プリンタドライバ12は、パーソナルコンピュータ1からプリンタ2にデータの橋渡しを行う制御プログラムで、このプリンタドライバ12はアプリケーションより印刷指定された印刷データ11をプリンタ2に転送するので、パーソナルコンピュータ1とプリンタ2は通信媒体を介して接続されていることは明らかである。そのため、引用発明の「パーソナルコンピュータ1」と「プリンタ2」は、本願補正発明の「情報処理装置」と「印刷装置」に相当するものであり、また、引用発明は本願補正発明の「通信媒体」に相当するものを有しているものと認められる。
引用発明は、プリンタドライバ12がパーソナルコンピュータ1のアプリケーションより印刷指定された印刷データ11をプリンタ2に転送するものであり、本願補正発明は、出力手段がドキュメントデータに基づいて印刷データを生成し、印刷装置に出力するものであるので、引用発明の「プリンタドライバ12」と本願補正発明の「出力手段」は、渡されたデータを印刷装置に出力するという点で共通する。また、引用発明のプリンタドライバ12に渡される「印刷データ11」は、本願補正発明の「ドキュメントデータ」に対応する。
引用発明は、描画エンジン154がプリンタドライバ12から印刷データ11の描画情報を入手し、確認メモリ16に描画情報に従って描画動作を行い、描画された描画画像データ161は、各種の解析エンジンによって、内容が解析され、文書解析エンジン156がテキスト領域を検出し内容を解析し、イメージ解析エンジン157は写真領域を検出し内容を解析し、コード解析エンジン158はコード領域を検出し内容を解析し、解析結果は、それぞれ照合回路159に転送され、照合回路159は複製禁止情報14の中から、照合情報として使える文字情報141、画像パターン情報142、コード情報143、暗号情報144をそれぞれ選択し、各種解析エンジンから転送されてくる解析結果と照合し、照合の結果、いずれかの一致検出が発見されると不正印刷の印字と見なすので、引用発明は、各種の解析エンジンの解析結果と複製禁止情報を照合し一致を検出することになる。そのため、引用発明の「複製禁止情報14」は、本願補正発明の「印刷ポリシーファイルで規定された所定の記述」に対応するものである。以上のことから、引用発明の「文書解析エンジン156」と「イメージ解析エンジン157」と「コード解析エンジン158」と「照合回路159」により実行される機能は、本願補正発明の「検査手段」が実行する「印刷ポリシー参照手段により参照した前記外部の印刷ポリシーファイルを基に、前記ドキュメントデータ内に前記外部の印刷ポリシーファイルで規定された所定の記述の有無を検査する」機能と一致する。
さらに、引用発明の照合回路159は、複製禁止情報14の中から、照合情報として使える文字情報141、画像パターン情報142、コード情報143、暗号情報144をそれぞれ選択し、各種解析エンジンから転送されてくる解析結果と照合し、照合の結果、いずれかの一致検出が発見されると不正印刷の印字と見なし、信号151によってプリンタドライバ12の印刷動作を停止させるので、引用発明の照合回路159は、本願補正発明の「検査手段の検査の結果に応じて前記出力手段による印刷」「を制御する印刷データ制御手段」、及び、「検査手段による検査の結果、前記ドキュメントデータ内に前記印刷ポリシーファイルで規定された所定の記述が有ると判断された場合には、前記印刷データ制御手段は前記出力手段による印刷」「を中止する」という機能を有していることになる。
引用発明の複製禁止情報14の構成としては、文書データの文字情報141、画像パターン情報142、コード情報143など、文書を特定できる情報が保存されており、文書データの文字列情報141には、文書中のタイトル、文書中の特定文字列(例えば、機密文書の主要なキーワードなど)が保存されているので、引用発明の「複製禁止情報14」の構成は、本願補正発明の「前記印刷ポリシーファイルは印刷禁止項目を所定の記述で定義し、前記所定の記述は、前記印刷ポリシーファイル内に直接収納した記述」「で構成され、前記直接収納した記述とは、テキスト形式の印刷禁止キーワードであり」という点で一致する。

すると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。

一致点
「通信媒体を介して印刷装置に接続された情報処理装置であって、
ドキュメントデータに基づくデータを前記印刷装置に出力する出力手段と、
印刷ポリシーファイルを参照する印刷ポリシー参照手段と、
前記印刷ポリシー参照手段により参照した印刷ポリシーファイルを基に、前記ドキュメントデータ内に前記外部の印刷ポリシーファイルで規定された所定の記述の有無を検査する検査手段と、
前記検査手段の検査の結果に応じて前記出力手段による印刷を制御する印刷データ制御手段と、を有し、
前記印刷ポリシーファイルは印刷禁止項目を所定の記述で定義し、
前記所定の記述は、前記印刷ポリシーファイル内に直接収納した記述で構成され、
前記直接収納した記述とは、テキスト形式の印刷禁止キーワードであり、
前記検査手段による検査の結果、前記ドキュメントデータ内に前記印刷ポリシーファイルで規定された所定の記述が有ると判断された場合には、前記印刷データ制御手段は前記出力手段による印刷を中止することを特徴とする情報処理装置。」

一方、両者は次の点で相違する。

相違点1
本願補正発明は、参照されるポリシーファイルが、複数の印刷ポリシーファイルから選択可能、又は編集可能であって、それぞれが異なる外部の印刷ポリシーファイルであるのに対し、引用発明は、これらの特徴を有していない点。

相違点2
本願補正発明は、所定の記述として、印刷禁止のイメージを外部参照する記述、若しくは、印刷禁止であるユーザリストまたは印刷装置名リストを少なくとも含む外部のファイルリストを参照する記述である外部参照が必要な記述も有するのに対し、引用発明は外部参照する記述を有していない点。

相違点3
本願補正発明は、出力手段が印刷データを生成するもので、ドキュメントデータ内に印刷ポリシーファイルで規定された所定の記述が有ると判断された場合に、印刷データ制御手段が、出力手段による印刷データの生成を中止するのに対し、引用発明では、出力手段が印刷データを生成する点について明確な特定はなく、また、出力手段において印刷データの転送を停止させ、印刷動作を停止させている点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。

(相違点1についての検討)
一般的なセキュリティー保持のためのポリシーファイルの内容を、編集可能な書式であるXML形式により構成することは周知の技術である(原査定の拒絶査定時に周知例として示された特開2004-152263号公報:段落【0019】-【0029】には、プリンタの印刷要件を決めるセキュリティポリシーをXML形式で記述することが、特開2004-94401号公報:段落【0061】-【0062】には、複数の異なるタイプのシステムでのキュリティポリシーをXML形式で記述することが記載されている。)。
また、引用発明の、複製禁止情報登録装置の複製禁止情報をパーソナルコンピュータに更新する構成を、複製禁止情報登録装置の複製禁止情報をパーソナルコンピュータから直接参照する構成として、ポリシーファイルに相当する外部の複製禁止情報を参照するようにすることは、周知の技術を適用することで当業者が容易に成し得ることである(上記の特開2004-152263号公報:段落【0035】にも、サーバに配置されたセキュリティポリシーを参照するものが記載されている。)。
さらに、複数のポリシーファイルを作成しておくことは、当業者であれば適宜選択して設定できる事項である。したがって、引用発明において、参照されるポリシーファイルが編集可能であって、それぞれが異なる外部の印刷ポリシーファイルからなる構成とすることは、当業者であれば容易に成し得ることである。

(相違点2についての検討)
上記相違点1についての検討で示した編集可能な書式であるXML形式は、外部のデータの参照機能である外部エンティティの書式が標準で規定されており、XML形式として直接記述できないイメージデータについての記述を行う場合には、通常は外部エンティティの書式を用いる(「標準XML完全解説」、XML/SGMLサロン著、技術評論社、平成10年5月15日発行、p.141?149。)。
そのため、引用発明の画像パターン情報を含んでいる複製禁止情報をXML形式で記述する場合、画像パターン情報について外部エンティティによる外部参照を行う記述とすることは、当業者であれば当然行い得ることである。よって、引用発明の複製禁止情報を周知の技術である編集可能なXML形式による記述として、印刷禁止のイメージデータについては外部参照する記述とすることは、当業者であれば容易に成し得ることである。

(相違点3についての検討)
引用発明におけるプリンタドライバは印刷データを印刷装置へ転送することが特定されているが、一般に、プリンタドライバは印刷装置へのデータの転送以外に、印刷装置で印刷可能なデータへの加工・生成処理も行うものである。そのため、引用発明におけるプリンタドライバにおいても印刷可能なデータへの加工・生成処理を含めることは当業者であれば当然成し得ることである。よって、引用発明における印刷動作を停止する方法として、印刷装置へのデータの転送を停止する時に、印刷装置で印刷可能なデータの生成も中止とする構成とすることに格別の困難性は認められない。

また、本願補正発明の構成によって生じる効果も、引用発明、及び、周知技術から当業者が予測できるものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
平成19年10月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、同年7月31日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
通信媒体を介して印刷装置に接続された情報処理装置であって、
ドキュメントデータに基づく印刷データを生成して前記印刷装置に出力する出力手段と、
複数の印刷ポリシーファイルから選択可能、又は編集可能な印刷ポリシーファイルである外部の印刷ポリシーファイルを参照する印刷ポリシー参照手段と、
前記印刷ポリシー参照手段により参照した前記外部の印刷ポリシーファイルを基に、前記ドキュメントデータ内に前記外部の印刷ポリシーファイルで規定された所定の記述の有無を検査する検査手段と、
前記検査手段の検査の結果に応じて前記出力手段による印刷データの生成を制御する印刷データ制御手段と、を有し、
前記印刷ポリシーファイルは印刷禁止項目を所定の記述で定義し、
前記所定の記述は、前記印刷ポリシーファイル内に直接収納した記述と外部参照が必要な記述で構成され、
前記検査手段による検査の結果、前記ドキュメントデータ内に前記印刷ポリシーファイルで規定された所定の記述が有ると判断された場合には、前記印刷データ制御手段は前記出力手段による印刷データの生成を中止することを特徴とする情報処理装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(2)当審の判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「印刷ポリシーファイル」の限定事項である「それぞれが異なる」との構成、「直接収納した記述」の限定事項である「テキスト形式の印刷禁止キーワードであり」との構成、「外部参照が必要な記述」の限定事項である「印刷禁止のイメージを外部参照する記述、若しくは、印刷禁止であるユーザリストまたは印刷装置名リストを少なくとも含む外部のファイルリストを参照する記述であり」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-22 
結審通知日 2010-06-25 
審決日 2010-07-08 
出願番号 特願2005-359122(P2005-359122)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 正和  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 安久 司郎
篠塚 隆
発明の名称 情報処理装置、情報処理装置の制御方法およびそのプログラム、記憶媒体  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康弘  
代理人 大塚 康徳  
代理人 下山 治  
代理人 高柳 司郎  
代理人 永川 行光  

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