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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1222824 |
審判番号 | 不服2007-10666 |
総通号数 | 130 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-10-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-04-12 |
確定日 | 2010-09-02 |
事件の表示 | 平成11年特許願第257777号「電子メール送信装置、電子メール送信方法、及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月 6日出願公開、特開2000-155722〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年9月10日(国内優先権主張 特願平10-283459号 平成10年9月18日)の出願であって、平成18年10月17日付けで拒絶理由が通知され、同年12月25日付けで手続補正がなされると共に意見書が提出されたが、平成19年3月7日付けで拒絶査定がなされ、同年4月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正書が提出され、平成21年11月16日付けで審尋がなされ、平成22年1月15日付けで回答書が提出され、同年2月24日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年4月30日付けで手続補正がなされると共に意見書が提出されたものである。 2.本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年4月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「文書データを電子メールにより送信する電子メール送信装置であって、 アプリケーションプログラムの印刷指示により起動されるプリンタドライバを備え、 該プリンタドライバは、コンピュータを、供給された文書データを相互通信可能に接続されたプリンタで印刷するか、又はコンピュータネットワークを介して電子メールで送信するかを指示可能な指示手段として機能させるプログラムと、電子メールによる送信が指示されると、前記文書データを所定のデータ形式に変換して電子メールにより送信する送信手段として機能させるプログラムを含み、 前記プリンタドライバは、電子メール送付先に関する情報管理機能をコンピュータに実行させるプログラムを備え、且つ、コンピュータに、宛先入力画面で入力した送付先に前記所定のデータ形式の前記文書データを電子メールにより送信させるプログラムを備える ことを特徴とする電子メール送信装置。」 3.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-187370号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 (a)「【0009】 【発明の実施の形態】この発明のネットワーク・プリンタシステムについて、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。最初に、全ての実施の形態に共通する構成と動作について説明する。端末においてアプリケーションで作成した文書を印刷すると、プリンタドライバが印刷データを例えばポストスクリプト形式のデータに変換する。このデータをこの発明のデータ変換部において電子メールのメッセージ本体に挿入し、ヘッダ部分のMIME記述にこのメッセージ本体はポストスクリプト形式のデータであることを示し、電子メールとしてネットワーク・プリンタへ送信する。この電子メールを受信したネットワーク・プリンタは、ヘッダ部分のMIME記述からこのメッセージ本体はポストスクリプト形式のデータであることを判断し、ネットワーク・プリンタ内のデータ変換部においてメッセージ本体を取り出し、ポストスクリプト形式のデータとして印刷処理を行う。 」(段落【0009】) (b)「【0017】ユーザは、まず、図1のネットワーク・プリンタシステムで、端末1のアプリケーション部11により、あるアプリケーション、例えばワープロソフトなどを利用して印刷データを作成する。その後、端末1から印刷要求を行う。図2の端末1では、作成された印刷データを、データ変換部12において電子メールのメッセージに挿入し、ヘッダ部分の宛先にネットワーク(図1の4)上の第1のネットワーク・プリンタ2を指定して印刷データを電子メール形式のデータに変換する。この電子メール形式に変換された印刷データを端末1から第1のネットワーク・プリンタ2に対して電子メール形式で送信する。」(段落【0017】) (c)「【0024】第2の実施の形態 この第2の実施の形態も、請求項1の発明に対応している。先の第1の実施の形態では、1つのローカルエリア・ネットワーク上に、1つの端末1と1つのネットワーク・プリンタ、例えば第1のネットワーク・プリンタ2とが接続されており、端末1で作成した印刷データを電子メールとして第1のネットワーク・プリンタ2に対して送信し、第1のネットワーク・プリンタ2で印刷する場合について説明した。この第2の実施の形態は、2つの異なるローカルエリア・ネットワーク(例えばA,B)が存在し、これらが例えばルータや公衆回線などで接続されている場合である。そして、一方のローカルエリア・ネットワーク上に、1つの端末1とメールサーバがと接続され、他方のローカルエリア・ネットワーク上に接続されているネットワーク・プリンタに対して電子メールによる送信を行って、印刷する場合である。 【0025】図6は、この発明のネットワーク・プリンタシステムについて、その要部構成の第2の実施の形態の一例を示すシステムの概念図である。図における符号は図1と同様であり、5はメールサーバ、6は公衆回線、7は第3のネットワーク・プリンタ、Aは第1のローカルエリア・ネットワーク、Bは第2のローカルエリア・ネットワークを示す。 【0026】この第2の実施の形態では、設定ファイルによる判断を、端末1が接続されているローカルエリア・ネットワークを管理するメールサーバ5が行う点に特徴を有している。図6に示すように、第1と第2のローカルエリア・ネットワークA,B(以下には、第1と第2のネットワークA,Bのように略称する)があり、一方の第1のネットワークA上には、端末1と、この端末1を管理するメールサーバ5とが接続されており、他方の第2のネットワークB上には、第3のネットワーク・プリンタ7が接続されている。そして、第1のネットワークAと第2のネットワークBとが、公衆回線6を介して相互に接続されている。この図6のネットワーク・プリンタシステムにおいて、第1のネットワークA上の端末1から、ネットワークである第2のネットワークB上の第3のネットワーク・プリンタ7で印刷を行う場合の動作を説明する。なお、第3のネットワーク・プリンタ7は、第1のネットワーク・プリンタ2や第2のネットワーク・プリンタ3と同様の構成で、同等の機能を有しているとする。 【0027】この図6の場合には、先の図4に関連して説明したSMTPによる通信手順によって、端末1から電子メールを送信すると、印刷データが電子メール形式に変換されたデータ、すなわち、電子メールは、端末1が接続されている第1のネットワークAを管理するメールサーバ5が受信する。そして、このメールサーバ5内の設定ファイルから、第2のネットワークB上の第3のネットワーク・プリンタ7宛の電子メールと判断し、SMTPを使用して第1のネットワークA上のメールサーバ5から、第2のネットワークB上の第3のネットワーク・プリンタ7へ端末1からの電子メールを転送する。このようにして、端末1から送信された電子メールを、第3のネットワーク・プリンタ7が受信して、先の第1の実施の形態で説明した方法と同様の方法により印刷処理を行う。 【0028】図7は、この発明のネットワーク・プリンタシステムについて、第2の実施の形態における印刷時の主要な処理の流れを示すフローチャートである。図において、左側は端末1、中央はメールサーバ5、右側は第3のネットワーク・プリンタ7を示す。 【0029】この図7と先の図4とを対比すれば明らかなように、左側に示した端末1の動作については、図7と図4とは同じであり、印刷データの作成、データ変換、SMTPによる電子メールの送信が、順次行われる。しかし、図7では、中央に示したように、送信された電子メールを、第1のネットワークAを管理するメールサーバ5が受信し、設定ファイルによる判断を行い、第2のネットワークB上の第3のネットワーク・プリンタ7宛の電子メールと判断すると、第3のネットワーク・プリンタ7に対してSMTPによる電子メールの送信を行う。第3のネットワーク・プリンタ7では、電子メールを受信すると、先の図4と同様に、データをスプールした後、受信した電子メール形式のデータを印刷データに変換して印刷処理を実行する。」(段落【0024】?【0029】) よって、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「端末においてアプリケーションで作成した文書を印刷すると、プリンタドライバが印刷データを例えばポストスクリプト形式のデータに変換し、このデータを前記端末のデータ変換部において電子メールのメッセージ本体に挿入し、ヘッダ部分の宛先にネットワーク上のネットワーク・プリンタを指定して、印刷データを電子メール形式のデータに変換し、電子メールによる送信を行って、印刷するネットワーク・プリンタシステム。」 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-222330号公報(段落【0036】?【0046】)には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 「電子メールシステムを利用して印刷データを処理するデータ処理システムであって、クライアントPCの印刷指示画面においてクライアントPCから印刷データをローカル・プリンタで印刷するか、又は異なるLANに接続されたリモート・プリンタに電子メールで送信するかを指示可能なデータ処理システム。」 原査定の拒絶の理由に引用された“HITACHI Windows3.1 Groupmax Fax Version2.0 ユーザーズガイド”、第1版、株式会社日立製作所、1996年6月1日、p.14-21(以下、「引用例3」という。)には、以下の技術が記載されている。 「通常の印刷の手順でプリンタドライバを指定した後に、ダイアログボックスにおいてメール送信を含む出力先種別を指定可能なファイルの出力方法。」(第16頁第18行?第18頁第12行) 原査定の拒絶の理由に引用された田中雄二、“ネットワークで共有ファクス・システムを作る”、日経MAC、日経BP社、1998年6月18日、第63号、p.250-255(以下、「引用例4」という。)には、以下の技術が記載されている。 「クライアントからプリンターへ印刷するのと同様の操作で実行できるファクス送信方法であって、セレクタでプリンターの代わりにファクス送信用のドライバーを選択し、印刷と同様の手順で各種設定を実行し、印刷と異なるのは、相手先の電話番号を指定したり、ファクスの1枚目に使う表紙(カバーシート)の種類を選択するなどであるファクスの送信方法。」(第251頁右欄第7行?第252頁右欄第6行) 原査定の拒絶の理由に引用された、安井嗣了、“電子メール技術を応用してFAXを電送する「FAXfree」”、コンピュータ&ネットワークLAN、株式会社オーム社、1997年7月1日、第15巻、第7号、p.93-96(以下、「引用例5」という。)には、以下の技術が記載されている。 「電子メール技術を応用したインターネットFAXであって、FAXfreeプリント・ドライバを内蔵し、任意のアプリケーションから印刷という単純な操作でドキュメントをFAXとして伝送することが可能であり、FAXドキュメントは電子メールに添付ファイルとして添付されてインターネット上で伝送され、そのドキュメントは通常の電子メールソフトウェアでも受信可能であり、また書式が整ったビットマップイメージとして送られるため、受信側にイメージビューアがあれば参照可能で、送信側と同じアプリケーションを用意する必要がない、電子メール技術を応用したインターネットFAX。」(第93頁中欄第8行?第96頁中欄第18行) 4.対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「印刷データ」はアプリケーションで作成した文書の印刷データであるから、本願発明の「文書データ」に相当し、引用発明1の「端末」は、文書データ(印刷データ)を電子メールでネットワーク・プリンタへ送信するから、本願発明の「電子メール送信装置」に相当する。 引用発明1と本願発明とはともに、電子メール送信装置がプリンタドライバを備える点で共通である。 引用発明1において文書データを印刷することは、文書データをネットワークプリンタに電子メールで送信することを指示するといえるから、引用発明1の電子メール送信装置は文書データを電子メールで送信することを指示可能な指示手段を有するといえ、引用発明1と本願発明はともに、供給された文書データを電子メールで送信することを指示可能な指示手段と、電子メールによる送信が指示されると、前記文書データを所定のデータ形式に変換して電子メールにより送信する送信手段を有する点で共通である。 引用発明1の電子メール送信装置では、出力したいネットワーク・プリンタを指定できるから、当該ネットワーク・プリンタに対応する電子メール送付先を情報管理していることは明白であり、引用発明1の電子メール送信装置は本願発明の「電子メール送付先に関する情報管理機能」に相当する機能を有する。 引用発明1においてネットワーク・プリンタを指定することは電子メール送付先を入力するといえ、引用発明1と本願発明はともに、入力した送付先に前記所定のデータ形式の前記文書データを電子メールにより送信する点で共通である。 したがって、本願発明と引用発明1とは、 「文書データを電子メールにより送信する電子メール送信装置であって、 プリンタドライバを備え、 供給された文書データを電子メールで送信することを指示可能な指示手段と、電子メールによる送信が指示されると、前記文書データを所定のデータ形式に変換して電子メールにより送信する送信手段とを有し、 電子メール送付先に関する情報管理機能を備え、入力した送付先に前記所定のデータ形式の前記文書データを電子メールにより送信する ことを特徴とする電子メール送信装置。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) 本願発明では、プリンタドライバがアプリケーションプログラムの印刷指示により起動されるのに対して、引用発明1では、プリンタドライバの起動に関して記載がない点。 (相違点2) 本願発明では、プリンタドライバが「供給された文書データをプリンタで印刷するか、又は電子メールで送信するかを指示可能な指示手段」を有するのに対して、引用発明1では、端末において文書データをネットワーク・プリンタに電子メールで送信することを指示するが、プリンタドライバが「供給された文書データをプリンタで印刷するか、又は電子メールで送信するかを指示可能な指示手段」を有することに関して記載がない点。 (相違点3) 本願発明では、プリンタドライバが「電子メールによる送信が指示されると、前記文書データを所定のデータ形式に変換して電子メールにより送信する送信手段」を有するのに対して、引用発明1では、プリンタドライバによって例えばポストスクリプト形式に変換された文書データを、「データ変換部」が電子メールとして送信する点。 (相違点4) 本願発明では、プリンタドライバが「電子メール送付先に関する情報管理機能を備え、宛先入力画面で入力した送付先に前記所定のデータ形式の前記文書データを電子メールにより送信する」のに対して、引用発明1では、どのようにネットワーク・プリンタを指定できるのか明示されていない点。 5.当審の判断 上記相違点について検討する。 (a)相違点1について アプリケーションプログラムからの印刷指示によりプリンタドライバを起動させることは通常に行われており、格別なものではない。 (b)相違点2について 引用発明2には、電子メールシステムを利用して印刷データを処理するデータ処理システムであって、クライアントPCの印刷指示画面において印刷データをプリンタで印刷するか、又は電子メールで送信するかを指示可能なデータ処理システムが記載されており、引用発明1と引用発明2とは、印刷データを電子メールで送信するシステムである点で共通するから、引用発明1の端末に引用発明2を適用して、供給された文書データをプリンタで印刷するか、又は電子メールで送信するかを指示可能な指示手段を設けることに格別の困難性はなく、 引用例3(第16頁第18行?第18頁第12行、及び関連する図面)、引用例4(第251頁右欄第7行?第252頁右欄第6行、及び関連する図面)に記載があるように、プリンタドライバが各種設定を行うための手段(ダイアログボックスなどの設定画面)を機能させることは周知(以下、「周知技術1」という。)であるから、引用発明1の端末に引用発明2を適用して上記指示手段を設ける際に、当該指示手段が周知技術1のようにプリンタドライバによって機能させられることで、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。 (c)相違点3について 引用例3(第16頁第18行?第18頁第12行、及び関連する図面)、引用例5(第93頁中欄第8行?第96頁中欄第18行、及び関連する図面)に記載があるように、プリンタドライバによって電子メールを送信する送信手段が機能させられることは本願出願前に周知(以下、「周知技術2」という。)である。 そして、所定の機能を有するプログラムをプリンタドライバに組み込んだり、プリンタドライバとは別のプログラムとすることはソフトウェアを設計する際の設計的事項であり、常とう手段(特開平8-44511号公報段落【0044】、【0047】、特開平10-243215号公報段落【0015】、特開平10-217548号公報段落【0030】、図2、図5、特開平7-152522号公報段落【0029】、図7)である。 したがって、引用発明1においてポストスクリプト形式に変換されたデータの電子メールによる送信を、プリンタドライバがおこなうように構成することで上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。 (d)相違点4について 引用発明1の端末は、印刷データを電子メールで送信する宛先のネットワーク・プリンタを指定できるから、電子メール送付先に関する情報管理機能を備えていることは明らかである。また電子メールシステムにおいて、宛先入力画面を設けて送付先を入力させることも通常に行われている。 そうすると引用発明1の端末が「電子メール送付先に関する情報管理機能を備え、宛先入力画面で入力した送付先に前記所定のデータ形式の前記文書データを電子メールにより送信する」ことに格別の困難性はなく、当該情報管理機能及び宛先入力画面が周知技術1のようにプリンタドライバによって機能させられ、また宛先入力画面で入力した送付先に前記所定のデータ形式の前記文書データを電子メールにより送信することが周知技術2のようにプリンタドライバによって機能させられることで上記相違点4に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。 そして、本願発明が奏する効果は当業者が引用発明1、2及び周知技術から予想できる範囲内のものである。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明1、2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-06-30 |
結審通知日 | 2010-07-06 |
審決日 | 2010-07-20 |
出願番号 | 特願平11-257777 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤井 浩、千本 潤介 |
特許庁審判長 |
江口 能弘 |
特許庁審判官 |
佐藤 匡 近藤 聡 |
発明の名称 | 電子メール送信装置、電子メール送信方法、及び記録媒体 |
代理人 | 伊東 忠彦 |