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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B23K
管理番号 1223199
審判番号 無効2009-800107  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-06-24 
確定日 2010-08-02 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3160745号発明「鋼管矢板継手の溶接装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3160745号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3160745号に係る手続の経緯は以下のとおりである。
平成 7年 3月17日 本件出願(特願平7-84571号)
平成13年 2月23日 設定登録(特許第3160745号)
平成21年 4月17日 新日本製鐵株式会社より訂正審判請求
(訂正2009-390052号)
平成21年 5月25日 株式会社クボタより無効審判請求
(無効2009-800107号)
平成21年 6月30日 訂正2009-390052号に関して、訂正を
認める審決(平成21年7月10日確定)
平成21年 8月28日 新日本製鐵株式会社より答弁書提出
平成21年10月 2日 株式会社クボタより弁駁書提出
平成21年11月 5日 新日本製鐵株式会社より審判請求人の平成21年
10月2日付け審判事件弁駁書における請求の理
由の補正について、特許法第131条の2第2項
第2号に規定する同意回答書の提出
平成21年11月13日 補正の許可の決定
平成21年12月18日 新日本製鐵株式会社より答弁書(2)提出
平成22年 2月16日 新日本製鐵株式会社より口頭審理陳述要領書提出
平成22年 3月 2日 株式会社クボタより口頭審理陳述要領書提出
平成22年 3月 2日 第1回口頭審理
平成22年 3月12日 無効理由通知
平成22年 4月15日 株式会社クボタより意見書提出
平成22年 4月15日 新日本製鐵株式会社より意見書及び訂正請求書提

平成22年 5月25日 株式会社クボタより弁駁書提出


第2 訂正の適否について

1. 訂正請求の内容
本件特許につき、平成21年4月17日に訂正審判が請求され(訂正2009-390052号)、当該訂正審判に対する審決は平成21年6月30日付けでなされ、当該審決は平成21年7月10日に確定している。
平成22年4月15日付けの訂正請求(以下、「本件訂正」という。)の内容は、平成21年4月17日付けの訂正審判によって確定した訂正後の本件特許の明細書をさらに訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。すなわち、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明を、下記の通り訂正することを求めるものである。(なお、下線は、訂正審判訂正後の明細書に対する訂正請求による訂正箇所を示すために、当審において付したものである。)


<訂正事項a>
特許請求の範囲の請求項1における「ウイービング又は回転方式による運棒機能を有する溶接トーチ」から、「ウイービング又は回転方式による運棒機能と、前記シールドガスを溶接チップ位置の横方向から供給するサイドノズルとを有する溶接トーチ」に訂正する。

<訂正事項b>
特許請求の範囲の請求項1における「前記個々の溶接装置を個別の溶接速度で、」から、「前記個々の溶接装置を、継手タイプに応じた溶接トーチの突込角、傾斜角、溶接電流、溶接電圧及び個別の溶接速度に自動的に設定させて、」に訂正する。

<訂正事項c>
明細書段落【0043】を、「本発明は、芯線径2.4mm以下の細径芯線を使用し、且つCO_(2),Ar,He又はこれらの混合ガスをシールドガスとして使用し、ウイービング又は回転方式による運棒機能と、前記シールドガスを溶接チップ位置の横方向から供給するサイドノズルとを有する溶接トーチを具備し、鋼管矢板管軸方向への移動機能を有し、鋼管矢板継手長さに応じて適正な間隔になる如く自動的に配置可能な溶接装置を、前記鋼管矢板の管軸を挟む両継手側にそれぞれ複数台設置してなり、複数台の前記溶接装置のそれぞれに、前記溶接トーチに電圧を負荷するタッチングセンシング方式による継手シーム位置のセンシング機能と、前記運棒機能を用いたアークセンシングによる継手シームの自動追従機能とを備え、前記個々の溶接装置を、継手タイプに応じた溶接トーチの突込角、傾斜角、溶接電流、溶接電圧及び個別の溶接速度に自動的に設定させて、完全自動運転させることを特徴とする鋼管矢板継手の溶接装置である。」に訂正する。

なお、訂正審判による訂正後、すなわち本件訂正による訂正前の特許請求の範囲の請求項1、及び本件訂正による訂正後の特許請求の範囲の請求項1を示すと以下の通りである。
<本件訂正による訂正前の請求項1>
「芯線径2.4mm以下の細径芯線を使用し、且つCO_(2),Ar,He又はこれらの混合ガスをシールドガスとして使用し、ウイービング又は回転方式による運棒機能を有する溶接トーチを具備し、鋼管矢板管軸方向への移動機能を有し、鋼管矢板継手長さに応じて適正な間隔になる如く自動的に配置可能な溶接装置を、前記鋼管矢板の管軸を挟む両継手側にそれぞれ複数台設置してなり、複数台の前記溶接装置のそれぞれに、前記溶接トーチに電圧を負荷するタッチングセンシング方式による継手シーム位置のセンシング機能と、前記運棒機能を用いたアークセンシングによる継手シームの自動追従機能とを備え、前記個々の溶接装置を個別の溶接速度で、完全自動運転させることを特徴とする鋼管矢板継手の溶接装置。」
<本件訂正による訂正後の請求項1>
「芯線径2.4mm以下の細径芯線を使用し、且つCO_(2),Ar,He又はこれらの混合ガスをシールドガスとして使用し、ウイービング又は回転方式による運棒機能と、前記シールドガスを溶接チップ位置の横方向から供給するサイドノズルとを有する溶接トーチを具備し、鋼管矢板管軸方向への移動機能を有し、鋼管矢板継手長さに応じて適正な間隔になる如く自動的に配置可能な溶接装置を、前記鋼管矢板の管軸を挟む両継手側にそれぞれ複数台設置してなり、複数台の前記溶接装置のそれぞれに、前記溶接トーチに電圧を負荷するタッチングセンシング方式による継手シーム位置のセンシング機能と、前記運棒機能を用いたアークセンシングによる継手シームの自動追従機能とを備え、前記個々の溶接装置を、継手タイプに応じた溶接トーチの突込角、傾斜角、溶接電流、溶接電圧及び個別の溶接速度に自動的に設定させて、完全自動運転させることを特徴とする鋼管矢板継手の溶接装置。」

2. 訂正の可否の判断
2.1 <訂正事項a>について
(1)新規事項の有無についての検討
訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1における「ウイービング又は回転方式による運棒機能を有する溶接トーチ」を、「ウイービング又は回転方式による運棒機能と、前記シールドガスを溶接チップ位置の横方向から供給するサイドノズルとを有する溶接トーチ」と訂正するものである。
ここで、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の段落【0068】には、「図10-(2)の如く、T継手の水平隅肉溶接に当該法を適用する場合、シールドガスの供給方法としては、一般的に使用される溶接チップ位置に同芯状にセットするガスシールドノズルの方式では該ノズルの外径のみで約30mmφを必要とし、該継手の溶接部に挿入不可能であるため、図10-(3)の如く溶接チップの横方向から供給するサイドノズル方式を採用した。」と記載されていることから、溶接トーチにおけるシールドガスの供給を溶接チップ位置の横方向から供給するサイドノズル方式とすることは、当初明細書に記載されたものである。
したがって、上記訂正事項aは、平成6年改正前特許法(以下、「改正前特許法」という。)第134条第2項の規定を満たす。
(2)訂正の目的、及び実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否についての検討
上記訂正事項aは、「溶接トーチ」に関して、「シールドガスの供給を溶接チップ位置の横方向から供給するサイドノズル」方式と特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、上記訂正事項aは、改正前特許法第134条第2項ただし書きの規定に適合し、同法第134条の2第5項において準用する同法第126条第2項の規定を満たす。

2.2 <訂正事項b>について
(1)新規事項の有無についての検討
訂正事項bは、特許請求の範囲の請求項1における「前記個々の溶接装置を個別の溶接速度で、」を、「前記個々の溶接装置を、継手タイプに応じた溶接トーチの突込角、傾斜角、溶接電流、溶接電圧及び個別の溶接速度に自動的に設定させて、」と訂正するものである。
ここで、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の段落【0100】には、「これら展開終了後は、各溶接装置の溶接マニプレータ4-1は、図11に示す手順に基づき溶接開始位置の継手シームのセンシシングをし、溶接芯線を継手シーム位置にセットすると同時に、それぞれ図1矢印の方向に溶接を開始する。この場合溶接トーチ4-2は、予めインプットした継手タイプ情報に基づく突込角,傾斜角,溶接電流,電圧及び個別溶接速度に自動的にセットされる。」と記載されていることから、溶接装置を、継手タイプに応じた突込角、傾斜角、溶接電流、溶接電圧及び個別溶接速度に自動的に設定させることは、当初明細書に記載されたものである。
したがって、上記訂正事項bは、改正前特許法第134条第2項の規定を満たす。
(2)訂正の目的、及び実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否についての検討
上記訂正事項bは、「溶接装置」の自動運転に関して、個別の溶接速度に加えて「継手タイプに応じた溶接トーチの突込角、傾斜角、溶接電流、溶接電圧に自動的に設定させる」ものであると特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、上記訂正事項bは、改正前特許法第134条第2項ただし書きの規定に適合し、同法第134条の2第5項において準用する同法第126条第2項の規定を満たす。

2.3 <訂正事項c>について
訂正事項cは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載の整合を図るために発明の詳細な説明を訂正するものである。そして、2.1ないし2.2で言及したとおり、特許請求の範囲の訂正が当初明細書等に記載されたものであることから、訂正事項cも同様に当初明細書等に記載されたものであって、かつ、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものであることは明らかである。
したがって、上記訂正事項cは、改正前特許法第134条第2項ただし書きの規定に適合し、同法第134条の2第5項において準用する同法第126条第2項の規定を満たす。

2.4 まとめ
以上のとおり、上記訂正事項aないしcは、いずれも、改正前特許法第134条第2項ただし書きの規定に適合し、同法第134条の2第5項において準用する改正前特許法第126条第2項の規定を満たすため、当該訂正を認める。


第3 本件訂正による訂正後の本件特許の請求項1に係る発明
本件特許の本件訂正による訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明」という。)は、本件訂正による訂正された訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「芯線径2.4mm以下の細径芯線を使用し、且つCO_(2),Ar,He又はこれらの混合ガスをシールドガスとして使用し、ウイービング又は回転方式による運棒機能と、前記シールドガスを溶接チップ位置の横方向から供給するサイドノズルとを有する溶接トーチを具備し、鋼管矢板管軸方向への移動機能を有し、鋼管矢板継手長さに応じて適正な間隔になる如く自動的に配置可能な溶接装置を、前記鋼管矢板の管軸を挟む両継手側にそれぞれ複数台設置してなり、複数台の前記溶接装置のそれぞれに、前記溶接トーチに電圧を負荷するタッチングセンシング方式による継手シーム位置のセンシング機能と、前記運棒機能を用いたアークセンシングによる継手シームの自動追従機能とを備え、前記個々の溶接装置を、継手タイプに応じた溶接トーチの突込角、傾斜角、溶接電流、溶接電圧及び個別の溶接速度に自動的に設定させて、完全自動運転させることを特徴とする鋼管矢板継手の溶接装置。」


第4 請求人の主張

請求人株式会社クボタは、審判請求書において、証拠方法として甲第1号証乃至第13号証を提出し、本件特許の請求項1に係る発明については、甲第1号証乃至第10号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものであるから、本件特許を無効とする、との審決を求める旨の主張した。
その後、請求人株式会社クボタは、平成21年10月2日付け審判事件弁駁書において、甲第14号証乃至第18号証を追加し、本件特許の訂正後の請求項1に係る発明については、甲第1号証乃至第10号証、甲第14号証乃至第17号証に記載された発明から当業者が容易に想到できたものであるから、本件特許を無効とする、との審決を求める旨の主張した。
そして、証拠方法として以下の甲第1号証乃至第28号証が提出されている。
なお、甲第14号証乃至第18号証は、平成21年10月2日付けの弁駁書において追加されたものであるが、本件無効審判請求後の平成21年6月30日付けの審決(訂正2009-390052号における審決、平成21年7月10日確定。)によって特許請求の範囲の訂正がなされたことに起因して必要となったものであって、当該甲第14号証乃至第18号証については、平成21年11月13日付けで補正の許可の決定を行っている。
また、甲第19号証は、平成22年3月2日付けの口頭審理陳述要領書において、甲第20号証は、平成22年4月15日付けの意見書において、甲21号証乃至第28号証は、平成22年5月25日付けの弁駁書において提出された。

甲第 1号証 実公昭61-38779号公報
甲第 2号証 特公昭61-46235号公報
甲第 3号証 「ウィービングCO_(2)半自動溶接による厚板溶接法
(ミディアム・ギャップ溶接法)」溶接技術1970年8月
号、第73頁?80頁の写し
甲第 4号証 「鋼床版の現場における炭酸ガス片面自動溶接
(S&W・CO_(2)法)」溶接技術1973年12月号、第6
5頁?69頁の写し
甲第 5号証 「高速回転アーク溶接ロボットの開発」
NKK技法No.127(1989年)第138頁?144
頁の写し
甲第 6号証 「圧力容器用知能溶接ロボットの開発」溶接技術1988年
12月号、第79頁?84頁の写し
甲第 7号証 特開平4-238668号公報
甲第 8号証 実願昭59-29028号(実開昭60-141990号)
のマイクロフィルム
甲第 9号証 特開平1-101277号公報
甲第10号証 特開平5-200550号公報
甲第11号証 特願平7-84571号における平成12年10月26日付
けの拒絶理由通知書の写し
甲第12号証 特願平7-84571号における平成12年12月20日付
けの意見書の写し
甲第13号証 特開平6-198443号公報
甲第14号証 「最近のアーク溶接ロボット用アークセンサ」
溶接技術1990年1月号、第120頁?126頁の写し
甲第15号証 「CAD/CAMが多数の溶接ロボットを制御する」
溶接技術1993年5月号、第66頁?73頁の写し
甲第16号証 特公平3-54032号公報
甲第17号証 特開昭60-255280号公報
甲第18号証 應和俊雄、上田敬三郎共著「図解溶接の技術読本」第1版、
昭和57年7月20日発行、東京電機大学出版局、
第80頁?85頁の写し
甲第19号証 機械用語辞典編集委員会編「機械工学全書第40巻機械用語
辞典」1982年7月1日発行、コロナ社、第676頁?
677頁の写し
甲第20号証 特公昭62-58836号公報
甲第21号証 実願昭61-161208号(実開昭63-66570号)
のマイクロフィルム
甲第22号証 特開平6-182551号公報
甲第23号証 特開平5-212540号公報
甲第24号証 溶接学会編「改訂3版溶接便覧」
昭和52年3月31日発行、丸善、第336頁?339頁の
写し
甲第25号証 実公平2-2554号公報
甲第26号証 実願平5-12344号(実開平6-66874号)
のCD-ROM
甲第27号証 特開平7-16745号公報
甲第28号証 特開平6-55269号公報


第5 無効理由通知による無効理由
当審における平成22年3月12日付けの無効理由通知の概要は、本件特許における請求項1に係る発明は、甲第16号証である特公平3-54032号公報に記載された発明、及び甲第1号証である実公昭61-38779号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。


第6 被請求人の主張
被請求人新日本製鐵株式会社は、本件訂正による訂正後の本件訂正発明は、特公平3-54032号公報に記載された発明、及び実公昭61-38779号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない旨、また、請求人の提示した甲各号証に記載された発明によってでも、当業者が容易に発明をすることができたものではない旨、主張している。
そして、証拠方法として平成21年8月28日付けの答弁書提出時に乙第1、第2号証を、また、平成21年12月18日付けの答弁書(2)提出時に乙第3号証乃至第6号証を提出している。

乙第 1号証 訂正審判2009-390052号の訂正審決書の写し
乙第 2号証 訂正審判2009-390052号による訂正後の訂正明細
書の写し
乙第 3号証 「鋼管矢板の飛び爪について」平成9年5月29日、
鋼管杭協会発行、の写し
乙第 4号証 「鋼管杭・鋼管矢板製品Q&A」平成13年3月、
鋼管杭協会発行、Q7、Q8、の写し
乙第 5号証 「鋼管杭・鋼管矢板の附属品の標準化」平成2年4月、
鋼管杭協会発行、の写し
乙第 6号証 酒井芳也・渡辺俊彦共著「<溶接の入門シリーズ>8
マグ・ミグ溶接入門」1992年2月20日発行、
産報出版、第128頁?129頁、132頁?133頁、
140頁?143頁、148頁の写し


第7 当審の無効理由通知における無効理由についての検討

1 甲各号証の記載事項
(1) 特公平3-54032号公報(以下「引用刊行物1」という。)
ア 第2欄第14行?第16行
「この発明は、道路橋、鉄道橋、人道橋等の大形構造物の自動溶接に適したすみ肉溶接用ロボツト装置に関する。」
イ 第4欄第15行?第21行
「第1図は、本発明を実施したツイン形ガスシールド溶接ロボツト装置を一部省略して斜視図で示したものである。同図において、1,1Aはガイドレールであつて、ワーク取付用定盤Aの前後方向にレール敷設用架台B上に敷設され、所定間隔を隔てて平行に伸びており、該ガイドレール1,1A上を溶接ロボツトが走行する。」
ウ 第6欄第19行?第22行
「上記V状スライダ34Aからは垂直軸36Aが垂下しており、該垂直軸36Aの下端部にNo.1トーチ支持機構37Aが設けられている。このトーチ支持機構37Aはウイービング装置であつて、、」
エ 第6欄第38行?第7欄第17行
「上記揺動軸部材39Aの下端部には、始端検知装置44aが設けられている。この始端検知装置は、第6図に示すように、ロツド端に光電式の始端検知器45aを取着したシリンダ46aを有し、該シリンダ46aは、ロツド下端を下向きにして、トーチ支持機構37A下端に設けられてNo.1トーチ41A側に突出するブロツク47Aのトーチ側面に固着された台枠48Aに、前後揺動可能に軸支されており、常時は、弾性装置49aにより後方に付勢されて、始端検知器45aがNo.1トーチ41A高さより所定高さ上方に位置する退避傾斜姿勢にあり、ロツド伸張時、始端検知器45aがNo.1トーチ41Aの先端部高さにほぼ近い位置まで降下しNo.1トーチ41Aに対して所定距離Lxだけ後行する。
また、本実施例の溶接ロボツトはツイントーチ形であるので、上記した電動前後倣いスライダ装置、電動上下倣いスライダ装置、電動左右倣いスライダ装置、ウイービング装置がNo.2トーチ41B用にもう1台づつ設けられており、No.2トーチ41B用のものには数字符号に添字Bを付して示してあるNo.2トーチ41BはZ軸を含む平面内で該Z軸の延長線をはさんでNo.1トーチ41Aと対向している。」
オ 第7欄第25行?第31行
「No.1トーチ41AとNo.2トーチ41Bに導かれるワイヤは、一方のサドル4上に載置されたパツクワイヤ51A,51Bから、プツシユ側ワイヤ送給装置52A,52B、コンジツトケーブル50A,50B、プル側ワイヤ送給装置53A,53B、コンジツトケーブル54A,54Bを通して導かれる。」
カ 第8欄第12行?第40行
「100A,100Bは、それぞれNo.1トーチ用、No.2トーチ用の自動倣い制御装置62A,62Bのコンピユータ(以下、副コンピユータという)である。これら副コンピユータ100Aによる主たる制御動作は下記の通りであり、これらの制御動作は所定のシーケンスに従い実行される。
(1)ワイヤセンシング動作を指令し、U軸駆動モータ32A,32Bを制御するU軸サーボユニツト、V軸駆動モータ35A,35Bを制御するV軸サーボユニツトに位置修正量を与えて、電極即ちワイヤ先端が溶接線に対して最適垂直距離、最適水平距離を確保するようにNo.1トーチ及びNo.2トーチ位置を制御する。
(2)始端検知装置44aに検知動作指令を与え、始端検知器45aの検知信号を受けとつて、T軸駆動モータ29A,29Bを制御するT軸サーボユニツトに後進指令を与え、始端角巻き溶接開始位置へNo.1トーチ41A,No.2トーチ41Bを位置制御する。
(3)アークセンシング動作を指令し、アークセンシングユニツト104A,104Bが送出する検出値(溶接電流)を取込み、これを駆動してU軸駆動モータ32A,32Bを制御するU軸サーボユニツト及びV軸駆動モータ35A,35Bを制御するV軸サーボユニツトに位置指令を与え、No.1トーチ41A、No.2トーチ41Bの揺動中心において該No.1トーチ41A、No.2トーチ41Bが実際の溶接線に指向する姿勢となるように制御する。」
キ 第9欄第8行?第15行
「(6)NCデータDに格納されている脚長データに基づきウイービング条件(ウイービング巾、ウイービング回数、)を主コンピユータ100を通して受け、ウイービング装置37A,37Bの駆動モータ40a,40a、ウイービング巾調整モータ40b,40bを制御するサーボユニツトにウイービング指令(開始、停止、ウイービング巾、ウイービング回数)を与える。」
ク 第10欄第31行?第11欄第19行
「III 溶接始端の位置決め(補助軸制御)
(a)ワイヤセンシングによるトーチ位置修正
オフラインテイーチングによる始点座標Psへの主軸による位置制御が終了すると、ワイヤセンシング法によるトーチ位置修正動作が開始される。このワイヤセンシングは、例えば、特開昭54-128450号公報に記載されている技術が応用される。即ち、No.1トーチ41Aにおいて、U軸スライダ31Aが下降し、ワイヤ先端がI型桁200に接触する位置まで下降した後規定垂直距離Lzだけ上昇する動作を行い、次に、V軸スライダ34Aが第1横補強材211に向つて移動しワイヤ先端が該第1補強部材211に接触する位置まで移動した後規定距離Lyだけ後退する動作を行う。この規定距離Lz及びLyはワイヤ先端が溶接線に対して確保すべき最適垂直距離及び最適水平距離である。No.2トーチ41Bについても同様の修正制御が実行される。
(b)始端検知によるトーチ溶接開始位置へ修正
上記ワイヤセンシングによる位置修正が終了すると、T軸サーボユニツトにT軸スライダ28A,28B後進指令が与えると共に始端検出装置44aに動作開始指令が与えられ、T軸スライダ28A,28BがT軸駆動機構により後進駆動されるとともに始端検知装置46aのシリンダ44aのロツドが下降し、始端検知器45aが第1横補強材211の前端側へ移動しながら該横補強材211の下縁部分を走査する。始端検知器45aが第1横補強材211の前端を検出すると、始端検知装置44aは退避指令を受けて始端検知器45aを退避位置に戻す。」
ケ 第11欄第35行?第12欄第16行
「V 溶接作業-すみ肉溶接
No.1トーチ41Aが上記一定距離だけ移動して上記始端の角巻き溶接が終了すると、X軸サーボユニツトが主コンピユータ100からの指令によりX軸駆動モータ7を駆動し、溶接ロボツトはガイドレール上を溶接方向前方(第1補強部材211の後方側)へ向つて走行を開始する。同時に、ウイービング装置37Aが作動開始してNo.1トーチ41Aが揺動を開始し、アークセンシング法によるトーチ位置修正動作が始まる。このアークセンシングには、例えば、特開昭58-53375号公報に記載されている技術を応用する。アークセンシングユニツト104A,104BによりNo.1トーチ41A、No.2トーチ41Bが対応する実際の溶接線を指向した時の左右揺動角時の溶接電流を演算し、その演算結果に基づき副コンピユータ100A,100Bがトーチ位置修正をU軸サーボユニツト、V軸サーボユニツトに指令する。
従つて、No.1トーチ41A、No.2トーチ41Bは、テイーチング溶接線に基づく移動経路に対して、リアルタイムで検知される実溶接線に基づく位置修正を受けながら、X軸方向に所定速度で移動し、溶接ロボツトは第1横補強材211の両側に、倣い溶接によるすみ肉溶接を施しながら走行する。」
コ ここで、摘記事項イの「ツイン形ガスシールド溶接ロボツト装置」の記載から、すみ肉溶接用ロボット装置は、溶接に際してシールドガスを使用していることは明らかである。
また、図面の第1図を参照すると、溶接ロボットは、ガイドレール1、1Aに沿って、すなわち、I型桁200の長手方向に沿って移動するものであることが理解できる。
上記記載事項アないしケ、認定事項コ、及び図面から見て、引用刊行物1には、
「ワイヤを使用し、且つシールドガスを使用し、ウイービング装置により揺動するNo.1トーチ41A、No.2トーチ41Bを具備し、I型桁200の長手方向に沿って移動するものであるすみ肉溶接用ロボット装置を設置してなり、当該溶接用ロボット装置には、ワイヤ先端の接触を用いたワイヤセンシングによるトーチ位置修正機能と、ウイービング中におけるアークセンシングによるトーチ位置修正機能を備え、No.1トーチ41A、No.2トーチ41Bが、テイーチング溶接線に基づく移動経路に対して、リアルタイムで検知される実溶接線に基づく位置修正を受けながら、所定速度で移動し、第1横補強材211の両側に、倣い溶接によるすみ肉溶接を施しながら走行するI型桁200と第1横補強材211のすみ肉溶接用ロボット装置。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
(2) 実公昭61-38779号公報(以下「引用刊行物2」という。)
ア 第1欄第12行?第13行
「本考案は溶接装置に係り、殊に被溶接物の比較的長い溶接を行なう溶接装置に関する。」
イ 第2欄第13行?第3欄第36行
「第1図は本考案の一実施例を示す平面図、第2図はその側面図である。1は長尺の鋼管杭からなる被溶接物Aを載置するための台座であり、台座1,1間には長手方向に二本のローラ2,2が掛け渡されており、被溶接物Aはこのローラ2,2上に安定的に載置される。この被溶接物Aの両側には小径の被溶接物(継手)B,Bが仮付されており、溶接トーチはこれらの被溶接物を長手方向に溶接すべく、その先端が被溶接物の接触面に望んでいる。又、ローラ2,2が掛け渡された前記台座1の両側には台座1と一定の間隔を保つてレール3,3が被溶接物Aと平行となるように長手方向に敷設されており、本実施例の溶接装置はこのレール3,3上に設けられる。
すなわち、本実施例の溶接装置は車輪4a,4aがレール3,3に載架する自走台車4,4と、この自走台車4,4と同様にレール3上に適宜の間隔で設けられた補助台車5,5…と、これらの台車4,4,5,5…間に掛け渡されて取り付けられる長尺のI形鋼、H形鋼からなるビーム体6,6と、このビーム体6,6に適宜の間隔で取り付けられる複数のスタンド部材10,10…とからなるものである。
自走台車4,4は左右のレール3,3上に一基づつ設けられ、内部にモータ等(図示せず)が内蔵されてレール3,3上を所定の速度で自力で走行可能となつており、又、補助台車5,5…はこの自走台車4,4とはビーム体6,6を介して連結されているため自走台車4,4の走行に追随して自走台車4,4と共に走行可能となつている。これらの台車4,4,5,5…上には方形枠状の取付部材8,8…がそれぞれ固定されており、第3図に示すように前記ビーム体6,6はこの取付部材8,8…内に挿入されて台車4,4,5,5…間に掛け渡された状態で台車4,4,5,5…に着脱自在に取り付けられる。すなわち、第4図及び第5図に示すように、台車4又は5に固定された取付部材8内には棒体8aが溶接等の手段で固着しており、ビーム体6の下側片6aがこの棒体8a上に載置するように取付部材8内に挿入し、このビーム体6のウエブ6bに取付部材8の側壁8b,8bを挿通した押圧材9の先端の鍔片9a,9aが両側から当接して挟圧しており、ナツト9bの回動で台車4又は5に取り付け、あるいは取り外し可能となるものである。このように取り付けられて取付部材8の側壁8bが両側からビーム体6に押圧することから、ビーム体6は不用意に彎曲することがない。」
ウ 第3欄第37行?第4欄第42行
「前記スタンド部材10,10…はこのようなビーム体6に適宜の間隔を有して複数個取り付けられる。このスタンド部材10は、ビーム体6の上側片6cに載置される基体11と、この基体11上に固着される支管12と、この支管12内に下端部が嵌入して立設する支柱13と、支柱13の上端部に係合して水平方向に進退可能な水平杆14及びこの水平杆14の先端部に係合し鉛直方向に上下動可能な縦杆15とからなり、縦杆15の下部には溶接トーチ20が螺着等の手段で取り付けられている。前記基体11はビーム体6の上側片6c上に載置されるが、このビーム体6の上側片6cの下面には、第6図に示すように、挟圧板16が当接しており、この挟圧板16と基体11とはネジ18が螺合することにより相互にビーム体6の上側片6cに対して上下方向から挟圧している。従つて、このネジ18の回動により、スタンド部材10はビーム体6に取り付け、あるいは取り外しが可能となつている。又、この基体11上に固着される支管12の側壁には水平方向に適宜幅のスリツト12aが穿設され、かつこのスリツト12a内には第7図に示すように支柱13から水平方向に突設するネジ杆13aが挿入し、このネジ杆13aに蝶ネジ19が螺合している。これにより、支柱13は支管12に対して回動可能となつており、又、定位置に固定も可能となつている。この支柱13の回動により水平杆14、縦杆15を介して支柱13に連結する溶接トーチ20が回動するから、第2図に示す溶接位置から紙面上方向に回動し、溶接終了後の逃げが可能となる。この溶接終了後の逃げは被溶接物の大きさにもよるが、前記スリツト12aの幅を支管12の全周の4分の1程度(回動角度は90゜)にすれば、あらゆる被溶接物に対しても可能である。前記水平杆14は支柱13に対して水平方向に進退可能となつており、又、前記縦杆15も鉛直方向に上下動可能となつているため、この支柱13の回動と相俟つて、溶接トーチ20の位置決めが容易に可能である。このように、水平方向、上下方向の移動の調節及び回動によつて溶接トーチ20の位置決めが可能となるように溶接トーチ20を支承するスタンド部材10は、ビーム体6に適宜の間隔を有して配設、取り付けられるが、その設置数及び間隔は溶接線の全長を等分化し、等間隔で設置されるように設定される。これは各スタンド部材10に支承される溶接トーチ20が等間隔分だけ移動すれば溶接線の全長の溶接が終了するようにするためである。このように設定して取り付けることによつて、溶接トーチの開先線傲いが不要となり溶接時間の短縮が可能となる。」
エ 第4欄第43行?第5欄第2行
「なお、第1図において、30は溶接ワイヤ供給機構であり、各溶接トーチ20に対して一個づつ配設され、溶接トーチ20先端に溶接ワイヤ30aを供給している。」
オ 第5欄第3行?第11行
「以上のように構成された本実施例の装置により、長尺の溶接線を有する被溶接物AとBを溶接するには、等分、等間隔で配設されたスタンド部材10にその先端が溶接個所に望むように溶接トーチ20を位置決めして取り付け、先端からアークを発生させながら自走台車4のモータを作動せしめて第1図矢印方向へ台車4を前段に位置する溶接トーチの位置にまで走行せしめることにより全溶接長の片面の溶接が終了する。」
カ 第5欄第15行?第26行
「従つて、本実施例によれば、溶接トーチ20を位置決め可能に支承するスタンド部材10が被溶接物の溶接線の全長を等分するように複数設け、かつ、このスタンド部材10はビーム体6に取り付けられているため、各溶接トーチ20の溶接長が短かくなり溶接トーチの開先倣いが不要となり溶接時間も短縮される。又、被溶接物の溶接長が変化してもスタンド部材10がビーム体6に対して着脱自在となつているため、スタンド部材10相互の間隔を調整すれば不使用の溶接トーチの発生を防止でき、汎用性に富むばかりでなく、効率的に使用ができる。」
キ 第6欄第6行?第8行
「なお、上記実施例では台車を自走台車と補助台車としたが、すべてを自走台車あるいは補助台車としてもよい。」
ク ここで、スタンド部材10,10…は、ビーム体6,6に取り付けられているものであるから、自走台車4,4を走行させることにより、各ビーム体6,6に取り付けられた複数のスタンド部材10,10…は、それぞれ等速度で移動可能なものであることは明らかである。
上記アないしキの記載事項、及びクの認定事項から、引用刊行物2には、次の事項からなる発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
「溶接ワイヤ30aを使用し、溶接トーチ20を具備し、長尺の鋼管杭からなる被溶接物Aの長手方向へ移動可能となっており、自走台車4,4と補助台車5,5…を連結しているビーム体6,6に等分、等間隔で取り付けられたスタンド部材10,10…を、前記被溶接物Aを挟む両被溶接物(継手)B,B側にそれぞれ複数台設置してなり、自走台車4を走行させることにより各ビーム体6,6にそれぞれ取り付けられたスタンド部材10,10…を等速度で移動させる溶接トーチ20を具備するスタンド部材10,10…。」

2 対比
本件訂正発明と引用発明1とを比較する。
ア 引用発明1の「ワイヤ」、「ウイービング装置により揺動する」こと、「No.1トーチ41A、No.2トーチ41B」、「すみ肉溶接用ロボット装置」は、本件訂正発明の「芯線」、「ウイービングによる運棒機能を有する」こと、「溶接トーチ」、「溶接装置」に、それぞれ相当する。
イ 引用発明1の「I型桁200と第1横補強部材211」は、「被溶接部材」という限りで、本件訂正発明の「鋼管矢板継手」に共通する。したがって、引用発明1の「I型桁200の長手方向に沿って移動するものである」は、「被溶接部材の長手方向への移動機能を有」するという限りで、本件訂正発明の「鋼管矢板管軸方向への移動機能を有」することと共通する。
ウ 引用発明1の「ワイヤ先端の接触を用いたワイヤセンシングによるトーチ位置修正機能」は、「タッチングセンシング方式による継手シーム位置のセンシング機能」という限りで、本件訂正発明の「溶接トーチに電圧を負荷するタッチングセンシング方式による継手シーム位置のセンシング機能」と共通する。
エ 引用発明1の「ウイービング中におけるアークセンシングによるトーチ位置修正機能」は、本件訂正発明の「ウイービングによる運棒機能を用いたアークセンシングによる継手シームの自動追従機能」に相当する。
オ 引用発明1の「No.1トーチ41A、No.2トーチ41Bが、テイーチング溶接線に基づく移動経路に対して、リアルタイムで検知される実溶接線に基づく位置修正を受けながら、所定速度で移動し、第1横補強材211の両側に、倣い溶接によるすみ肉溶接を施しながら走行する」ことは、本件訂正発明の「自動運転させる」ことに相当する。
したがって、本件訂正発明と引用発明1の両者は、
「芯線を使用し、且つシールドガスを使用し、ウイービングによる運棒機能を有する溶接トーチを具備し、被溶接部材の長手方向への移動機能を有する溶接装置に、タッチングセンシング方式による継手シーム位置のセンシング機能と、前記運棒機能を用いたアークセンシングによる継手シームの自動追従機能とを備え、自動運転させる被溶接部材の溶接装置。」の点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
溶接に使用する芯線の径及びシールドガスに関して、本件訂正発明では、「芯線径2.4mm以下の細径芯線を使用し、且つCO_(2),Ar,He又はこれらの混合ガスをシールドガスとして使用し」と特定しているのに対して、引用発明1では、芯線の径及びシールドガスの種類について不明な点。
<相違点2>
溶接トーチにシールドガスを流す手段に関して、本件訂正発明では、「シールドガスを溶接チップ位置の横方向から供給するサイドノズルとを有する」と特定しているのに対して、引用発明1では、シールドガスを流す手段について不明な点。
<相違点3>
被溶接部材に関して、本件訂正発明では、「鋼管矢板及び継手」とし、そのため、被溶接部材の長手方向を、本件訂正発明では、「鋼管矢板の管軸方向」としているのに対して、引用発明1では、被溶接部材がI型桁200と第1横補強部材211であり、そのため、被溶接部材の長手方向がI型桁200の長手方向である点。
<相違点4>
溶接装置の配置及び台数に関して、本件訂正発明では、「鋼管矢板継手長さに応じて適正な間隔になる如く自動的に配置可能」であると特定し、かつ、「鋼管矢板の管軸を挟む両継手側にそれぞれ複数台設置してなる」と特定しているのに対して、引用発明1では、溶接トーチは2つあるもののすみ肉溶接用ロボット装置自体を複数台用いているものではない点。
<相違点5>
タッチングセンシング方式による継手シーム位置のセンシング機能に関して、本件訂正発明では、「溶接トーチに電圧を負荷する」ものと特定しているのに対して、引用発明1では、溶接トーチに電圧を負荷するものであるのかどうか不明な点。
<相違点6>
本件訂正発明では、溶接装置を複数台設置するものであって、「個々の溶接装置を、継手タイプに応じた溶接トーチの突込角、傾斜角、溶接電流、溶接電圧及び個別の溶接速度に自動的に設定させ」て運転させるとしているのに対して、引用発明1では、溶接装置に相当するすみ肉溶接用ロボット装置は複数台用いるものではなく、No.1トーチ41A、No.2トーチ41Bが所定速度で移動するものではあるものの、溶接トーチの突込角、傾斜角、溶接電流、溶接電圧に自動的に設定されるものかどうか不明な点。
<相違点7>
自動運転に関して、本件訂正発明では、「完全」自動運転させるとしているのに対して、引用発明1では、完全であるのかどうか、不明な点。

3 当審の判断
(1) <相違点1>について
アーク溶接において、芯線径が2.4mm以下の細径芯線を用い、シールドガスとしてCO_(2)を用いることは、甲第2号証である特公昭61-46235号公報(第2欄第3行?第13行参照。)や甲第3号証である「『ウィービングCO_(2)半自動溶接による厚板溶接法(ミディアム・ギャップ溶接法)』、溶接技術、1970年8月号、第76頁」(3・4 装置仕様の概要、4・1溶接条件)に記載されているように従来周知の事項であって、引用発明1において、溶接の芯線の径を2.4mm以下とすることやシールドガスにCO_(2)を用いることを妨げる特段の事情は存在しないことからすれば、引用発明1において、芯線であるワイヤの径を2.4mm以下とし、シールドガスにCO_(2)を用いるようにすることは、当業者が容易になし得たものである。
相違点1につき、被請求人は、平成22年4月15日付けの意見書において、「甲第2号証は鋼管同士を接合する突き合わせ溶接に関するものである。また甲第3号証は厚板の突き合わせ溶接に関するものである。したがって、いずれの技術も、そもそもすみ肉溶接についての従来周知技術ではないし、特殊な溶接である鋼管矢板の継手溶接に直ちに適用できるものではない。」(第8頁第5行?第8行。)と主張している。
しかしながら、アーク溶接として、芯線径が2.4mm以下の細径芯線を用い、シールドガスとしてCO_(2)を用いることは、上記甲第2号証や甲第3号証を例示するまでもなく従来周知の事項であって、この従来周知の事項を引用発明1に適用できないとする阻害要因も格別見当たらないことからすれば、引用発明1において、芯線であるワイヤの径を2.4mm以下とし、シールドガスにCO_(2)を用いるようにすることは、当業者が容易になし得たものであるとせざるを得ない。
したがって、被請求人の上記主張は採用できない。
(2) <相違点2>について
シールドガスの供給手段として、溶接チップ位置の横方向から供給するサイドノズル方式は、例えば、甲第25号証である実公平2-2554号公報(第1欄第11行?第18行参照。)、甲第26号証である実願平5-12344号(実開平6-66874号)のCD-ROM(段落【0002】参照。)、甲第27号証である特開平7-16745号公報(段落【0024】参照。)に記載されているように従来周知の事項であることからすれば、引用発明1においてシールドガスを供給する場合にも、溶接チップ位置の横方向から供給するサイドノズル方式とすることは、当業者が容易になし得たものである。
(3) <相違点3>について
引用発明2は、「溶接ワイヤ30aを使用し、溶接トーチ20を具備し、長尺の鋼管杭からなる被溶接物Aの長手方向へ移動可能となっており、自走台車4,4と補助台車5,5…を連結しているビーム体6,6に等分、等間隔で取り付けられたスタンド部材10,10…を、前記被溶接物Aを挟む両被溶接物(継手)B,B側にそれぞれ複数台設置してなり、自走台車4を走行させることにより各ビーム体6,6にそれぞれ取り付けられたスタンド部材10,10…を等速度で移動させる溶接トーチ20を具備するスタンド部材10,10…。」である。
ここで、引用発明2における「長尺の鋼管杭からなる被溶接物A」、「被溶接物(継手)B,B」はそれぞれ本件訂正発明の「鋼管矢板」、「継手」に相当し、引用発明2の「被溶接物Aの長手方向」は本件訂正発明の「鋼管矢板管軸方向」に相当する。
また、引用発明2の「溶接ワイヤ30a」は本件訂正発明の「芯線」に相当し、引用発明2の「溶接トーチ20」は本件発明の「溶接トーチ」に相当する。
さらに、引用発明2の「等分、等間隔で取り付けられた」ことは、溶接線の長さが被溶接物(継手)B,Bの長さとほぼ一致するものであるところ、溶接線の長さを等分、等間隔になるようにスタンド部材10,10…を配置することを意味するものであることは明らかであって、しかも、各スタンド部材10,10…のそれぞれが溶接トーチ20を具備しているので、本件訂正発明の「鋼管矢板継手長さに応じて適正な間隔になる如く配置可能な」ことに相当する。
そして、引用発明2の「溶接トーチ20を有するスタンド部材10,10…」が、本件訂正発明の「溶接装置」に相当する。
したがって、引用発明2は、本件訂正発明に従って言い換えると、「芯線を使用し、溶接トーチを具備し、鋼管矢板管軸方向への移動機能を有し、鋼管矢板継手長さに応じて適正な間隔になる如く配置可能な溶接装置を、前記鋼管矢板の管軸を挟む両継手側にそれぞれ複数台設置してなり、前記個々の溶接装置をそれぞれ、等速度で移動させる鋼管矢板継手の溶接装置。」である。
そして、引用発明1も引用発明2も、長尺の被溶接物を長手方向に沿って移動する溶接装置であることから、引用発明1において被溶接物を鋼管矢板と継手とし、溶接装置であるすみ肉溶接用ロボット装置の移動方向を、鋼管矢板の管軸方向とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。
相違点3につき、被請求人は、平成22年4月15日付けの意見書において、「ア 引用発明1は一般的なすみ肉溶接を、自動倣い制御機能を備えた溶接装置によって自動化したものに過ぎない。一方、引用発明2は、対象物が鋼管矢板継手のような複雑な形状であって溶接の自動化がそもそも極めて困難であるから、ビーム体6で複数の溶接トーチを連結させて各溶接トーチの溶接長さを短縮させることで開先倣いを不要とした技術であり、自動化を目的とした技術ではない。したがって、両者を組み合わせる動機付けは存在しない。」(第8頁第23行?第9頁第1行。)と、また、「イ 引用発明1を引用発明2に適用することで本件訂正発明2(当審注:「本件訂正発明」のこと。)が容易に想到可能とするには、少なくとも引用発明2におけるビーム体6を取り除く動機づけが必要である。しかし、ビーム体6は引用発明2においてその課題を解決するために不可欠な構成要素であるから、このような動機付けは引用刊行物2には存在し得ない。」(第9頁第2行?第6行。)と、さらに、「ウ 引用発明1は、1台の溶接装置によって1本の連続した溶接線を溶接することを前提とする発明である。従って、引用発明1が記載された引用刊行物1には、引用発明2のように複数の溶接装置が1本の溶接線を分担して溶接するといった技術思想が何ら開示されていない。よって、引用刊行物1には、引用発明1に係る溶接装置を引用発明2に適用する動機付けは、何ら存在しないのである。」(第9頁第26行?第10頁第2行。)と主張している。
しかしながら、前記主張のうち、アの点については、一般的なすみ肉溶接に比べて鋼管矢板継手の溶接が、特に複雑であるとする根拠は格別見当たらない。
また、前記主張のうち、イ及びウの点については、1本の溶接線を分担して溶接するという引用発明2の技術事項を、引用発明1に適用したものであって、引用発明1及び引用発明2も共に溶接技術に関するものであるから、それを組み合わせることに格別の困難性がないことは前記したとおりである。
したがって、被請求人の上記主張は採用できない。
(4) <相違点4>について
上記(3)で言及しているように、引用発明2は、「芯線を使用し、溶接トーチを具備し、鋼管矢板管軸方向への移動機能を有し、鋼管矢板継手長さに応じて適正な間隔になる如く配置可能な溶接装置を、前記鋼管矢板の管軸を挟む両継手側にそれぞれ複数台設置してなり、前記個々の溶接装置をそれぞれ、等速度で移動させる鋼管矢板継手の溶接装置。」である。してみると、引用発明2を引用発明1に適用し、引用発明1により鋼管矢板と継手を溶接することとした場合に、溶接装置であるすみ肉溶接用ロボット装置を鋼管矢板の管軸を挟む両継手側にそれぞれ複数台設置し、鋼管矢板継手長さに応じて適正な間隔になる如く配置可能なものとすることは、当業者にとって格別の困難性を有するものではない。
なお、本件訂正発明における相違点4では、複数台の溶接装置の配置可能な構成を、さらに、「自動的」に行われるものであると特定している。
しかしながら、一般に複数の移動可能な装置の移動を自動的に行うようにすることは、例えば、特公平2-49186号公報(第4欄第7行?第5欄第31行、及び図面の第3図及び第4図参照。走行台車22は、NC駆動情報に基づき、溶接開始位置に位置決めされている。)、特開平5-42394号公報(段落【0006】?【0007】参照、及び図面の図1参照。台車1は、ホストコンピュータからの指示により位置決めされている。)に記載されているように従来周知の事項であり、また、自動走行する溶接装置自体も、引用発明1に見られるように従来周知の事項であることからすれば、引用発明1においてすみ肉溶接用ロボット装置を鋼管矢板の管軸を挟む両継手側にそれぞれ複数台設置した場合には、それぞれの溶接用ロボット装置の配置を自動的に行われるものとすることは、格別の困難性を有するものではない。
相違点4につき、被請求人は、平成22年4月15日付けの意見書において、「引用発明2において溶接装置(スタンド部材)を適正な間隔になる如く配置可能とするためには、手動で成さねばならないことは明白であり、・・・引用発明2を引用発明1に適用して得られる構成は、『各部材を分解する限りにおいて、鋼管矢板継手長さに応じて適正な間隔になる如く手動で配置可能な溶接装置(スタンド部材)を、鋼管矢板の管軸を挟む両継手側にそれぞれ複数台設置する』構成であって、・・・一般に複数の移動可能な装置の移動を自動的に行うようにすることが例示するまでもなく従来周知技術であると認定するが、溶接技術分野において複数の溶接装置を自動で配置するようにされた従来周知技術は何ら示されていない。(第11頁第8行?第22行。)と主張している。
しかしながら、引用発明2の引用発明1への適用にあたっては、引用発明2における「溶接トーチを具備する溶接装置を、鋼管矢板の両継手側にそれぞれ複数台設置する」構成を引用発明1に適用することにより、複数台の溶接装置を用いて被溶接部材を分担して溶接することは容易になし得たとしたものであって、引用発明2におけるビーム体6,6にスタンド部材10,10…を取り付けている構造を適用しているものではない。
また、複数の移動可能な装置の移動を自動的に行うことは、前記したように従来周知の事項であり、また、溶接装置において、自動走行するものも、引用発明1に見られるように従来周知の事項であったことから、引用発明1における移動可能な装置であるすみ肉溶接用ロボット装置においても、それを複数台用いた場合、それらの配置を自動的に行うことは当業者にとって格別の困難性を有するものではない。
したがって、被請求人の上記主張は採用できない。
(5) <相違点5>について
タッチングセンシング方式による継手シーム位置のセンシング機能において、溶接トーチに電圧を負荷することは、甲第14号証である「『最近のアーク溶接ロボット用アークセンサ』、溶接技術(1990年1月号)第124頁表2 タッチセンサの仕様」中の検出方式に「高電圧印加によるワイヤタッチ」とあるように従来周知の事項であることからすれば、引用発明1においても、タッチングセンシング方式による継手シーム位置のセンシング機能において、溶接トーチに電圧を負荷することは、当業者にとって格別困難なことではない。
(6) <相違点6>について
一般に溶接装置を複数台設けた場合、個々の溶接装置を個別の溶接速度で運転させることは、溶接作業自体が作業環境や溶接部における溶接量の増減によって溶接速度が異なるものであることを考え合わせると、当然の事項であることから、上記(3)、(4)で検討したごとく、引用発明1を鋼管矢板継手の溶接に適用し、溶接装置であるすみ肉溶接用ロボット装置を複数台用いた場合には、すみ肉溶接用ロボット装置のそれぞれの移動を個別に、すなわち、各溶接装置の溶接速度に合わせて行うべきことは当然の事項である。
また、溶接において、溶接される対象物の形状に応じて、溶接トーチの突込角、傾斜角、溶接電流、溶接電圧を自動的に変えることは、例えば、甲第21号証である実願昭61-161208号(実開昭63-66570号)のマイクロフィルム(第5頁第13行?第6頁第4行参照。ここで、「溶接姿勢」が溶接トーチの突込角と傾斜角に相当する。)、甲第22号証である特開平6-182551号公報(段落【0022】、【0034】参照。ここで、「トーチ姿勢データ(後退角、倒れ角)」が溶接トーチの傾斜角と突込角に相当する。)、甲第23号証である特開平5-212540号公報(段落【0022】参照。ここで、「トーチ前進角」がトーチ傾斜角に、「トーチ倒れ角」がトーチ突込角に相当。)に見られるように周知の事項である。してみると、引用発明1においても、溶接される対象物に応じて溶接トーチの突込角、傾斜角、溶接電流、溶接電圧を自動的に変えて設定することは、当業者が容易になし得たものである。
(7) <相違点7>について
引用発明1のすみ肉溶接用ロボット装置も自動運転するものであって、それを本件訂正発明の如く「完全」と称することは、通常の自動運転と比べて具体的に何が完全になっているのか、その根拠がないことから、自動運転を「完全」と特定することは、単なる設計的事項にすぎないものである。
(8) <作用・効果>について
本件訂正発明によってもたらされる効果は、引用発明1、引用発明2、及び従来周知の事項から当業者が予測し得る程度のものであって、それ以上の格別なものではない。
(9) まとめ
したがって、本件訂正発明は、引用刊行物1に記載された発明、引用刊行物2に記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第8 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正による訂正後の特許発明1は、引用刊行物1に記載された発明、引用刊行物2に記載された発明、及び周知の事項から当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
鋼管矢板継手の溶接装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】芯線径2.4mm以下の細径芯線を使用し、且つCO_(2),Ar,He又はこれらの混合ガスをシールドガスとして使用し、ウイービング又は回転方式による運棒機能と、前記シールドガスを溶接チップ位置の横方向から供給するサイドノズルとを有する溶接トーチを具備し、鋼管矢板管軸方向への移動機能を有し、鋼管矢板継手長さに応じて適正な間隔になる如く自動的に配置可能な溶接装置を、前記鋼管矢板の管軸を挟む両継手側にそれぞれ複数台設置してなり、複数台の前記溶接装置のそれぞれに、前記溶接トーチに電圧を負荷するタッチングセンシング方式による継手シーム位置のセンシング機能と、前記運棒機能を用いたアークセンシングによる継手シームの自動追従機能とを備え、前記個々の溶接装置を、継手タイプに応じた溶接トーチの突込角、傾斜角、溶接電流、溶接電圧及び個別の溶接速度に自動的に設定させて、完全自動運転させることを特徴とする鋼管矢板継手の溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、母管となる鋼管に継手材を溶接してなる鋼管矢板の製造において、継手材を母管に溶接するための溶接装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常の鋼管矢板は、外径400mm?2500mm,長さ10m?50mの大径鋼管を母管とし、母管の管軸方向に溶接された長さ6m?45mの継手材で構成される。
【0003】
また鋼管矢板は、継手材の形態により図3の(1)?(3)に示す3種類のタイプに分類される。(1)はC-Cタイプであり、外径165mmφ又は216mmφの鋼管継手材1-2を母管1-1に溶接し、後工程でスリット加工を加えて製造する。(2)はC-Tタイプで、前述の鋼管継手材1-2とT形鋼継手材の溶接によって形成される。(3)はL-Tタイプで2本のL形鋼継手材1-2と一本のT形鋼継手材の溶接で形成される。
【0004】
これら鋼管矢板を供給する製造工場では、上述の如く大径,長尺の母管に前記母管同様長尺の各種タイプの継手材を溶接する必要があり、当該溶接の能率確保及び品質確保が受注及びコスト競争上必須要件となっている。
【0005】
本出願人等は、特公平2-23269号公報に示す「スタビリティーバー使用による鋼管矢板製造方法」によって、鋼管矢板の溶接方法について登録済みであるが、以下に一般的な鋼管矢板の溶接法について図4?図6で説明する。
【0006】
継手材1-2は、予め溶接工程前の仮付工程において、母管1-1の円周方向及び管軸方向の所定の位置に仮溶接した状態で溶接工程に供給される。仮溶接は図4の如く継手両端面を含み大略500mm間隔でCO_(2)溶接機等を用い手溶接でスポット的に溶接する。この場合、母管及び継手材の変形,曲がりに起因する隙間Gが発生する。
【0007】
以上の素材を溶接する溶接工程の構成例を潜弧溶接法(以下SAW法と称する)を例にとり、図5,図6に示す。鋼管矢板1はターニングロールを具備する2台の溶接走行台車2,3にて両端部を支持される。この溶接走行台車2,3は同時に管軸方向への走行機能も有する。
【0008】
4は基礎上に固定された溶接装置で、鋼管矢板の軸芯を挟む2台の溶接マニプレータ4-1を具備し、該マニプレータは2本の溶接トーチ4-2,フラックス供給端4-3,フラックス回収端4-4を有し、鋼管矢板母管径に合わせ溶接トーチ等を適正位置に設定すると同時に、継手シームの上下,左右変動に対し追従する目的で、上下,左右の移動機能を有する。該溶接装置4は上部にフラックス供給ホッパー4-5,溶接電源4-6,芯線リール4-7,フラックス回収ホッパ4-8等が設置される。
【0009】
次にこの構成例の溶接動作について説明する。鋼管矢板1を例えば移載装置で溶接走行台車2,3のターニングロール上に移載した後、ターニングロールを回転し2本の継手材が水平位置になるようセットする。次に台車2,3は管軸方向に走行し、継手材先端を溶接トーチ4-2直下の位置に合わせる。
【0010】
この位置で両側の溶接マニプレータ4-1をそれぞれ下降及び継手側に前進させ、溶接トーチを継手シームの狙い位置に厳密にセットする。セット後溶接開始指令により溶接走行台車は、予め設定された溶接速度で管軸方向に走行し、同時に溶接を開始する。継手後端位置までの溶接終了後溶接走行台車を停止し、溶接マニプレータを動作させ、溶接トーチを待機位置に退避させる。
【0011】
この状態で溶接走行台車を高速で後退させ、再度継手材先端を溶接トーチの直下位置に停止させる。次にターニングロールを起動し、鋼管矢板継手材を反転、継手材裏面を水平位置にセットし、再度溶接トーチを継手シームの狙い位置に厳密にセットし、継手裏面を後端位置まで溶接する。溶接終了後、溶接トーチの退避と同時に溶接走行台車を鋼管矢板の移載位置まで高速で後退させ、一連の溶接を終了する。
【0012】
次に該溶接装置に適用される溶接法について、図7(1),(2)により詳述する。
【0013】
溶接トーチ4-2でαは突込角,β(β_(1),β_(2))は傾斜角と称し、この角度は継手タイプで異なる最適な値になるようセット後、溶接中の瞬間的な短絡等に対し設定値が変化しないよう溶接マニプレータ本体に強固に固定しておく必要がある。
【0014】
5は溶接芯線を示し、上述の溶接法においては通常2電極法が用いられ、4.0?4.8mmφの太径の芯線が適用される。この溶接芯線5の母管及び継手材に対する接触位置,所謂狙い位置は、溶接時に狙いとするアーク移行点となるものであり、α,β,狙い位置の設定は、溶接電流,溶接電圧の設定同様、鋼管矢板継手材をこの方法で溶接する場合、L及びT継手材の水平隅肉溶接においては脚長の確保及びアンダーカットの防止、C継手材においてはビード形成とアンダーカット等の外観品質確保上重要な因子となる。
【0015】
なおこの溶接トーチ4-2は、前述の鋼管矢板の溶接走行時、長大スパンでの支持形態及び母管曲りに起因する約100mmの垂直方向撓み,鋼管矢板母管の曲り,真円度変形及び溶接中の熱変形に起因する±約50mmの水平方向の変形がもたらす非常に大きな溶接線変化に対し、溶接芯線の狙い位置が変動しない様厳密に追従させる必要があり、上下水平の追従機能,所謂上下水平倣い機能が必須である。
【0016】
SAW法においては、狙い位置精度を±1.0mm程度に確保することが溶接品質上必須となるが、3次元的に変化している溶接線を直接検出し精度良く自動追従可能な実用的検出技術がなく、左右2台の溶接ヘッドにそれぞれ要員を配置し目視監視に頼っているのが実情である。
【0017】
4-3はフラックス供給端であり、溶接トーチに先行しシーム部にフラックスの散布を行う。4-4はフラックス回収端で溶接後スラグ化せず残留したフラックス6をこの回収端を通じフラックス回収ホッパーに回収するものである。
【0018】
なお7は、別に設置した装置又は人手によってフラックス散布の前にシーム上に散布されたカットワイヤで、C継手溶接に使用され、この溶接法においては、溶融量を増加させ高速でビード余盛量を確保すると同時に、溶接アークが鋼管矢板継手溶接特有の隙間の多いシーム部に直接作用し、溶落ちが発生する事を防止する目的で使用される。このカットワイヤは、L及びT継手溶接にも散布する場合もある。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
ここで従来法による鋼管矢板継手溶接の特性を説明する。
【0020】
図8に、鋼管矢板継手の種々の溶接部断面詳細を示す。尚C継手では、(1)図の如く母管と継手材の中間に充填材8を挿入し溶接する場合と、(2)図の如く母管と継手材とを直接溶接する場合があり、この充填材は仮付工程で継手材仮付と同時に取り付けられる。又いずれの場合も、溶融補助材としてカットワイヤを使用する。
【0021】
第1の特徴は、鋼管矢板製品の継手強度の保証要件として所謂アンダーカット,ブローホール,割れ等の欠陥がないことは当然ながら、一般的に下に示すビード幅及び脚長の如き余盛量、即ちビード寸法の保証が求められ、大溶着量溶接が必要となる。
【0022】
C継手: ビード幅9mm以上,
L継手: 脚長 8mm以上,
T継手: 脚長 9mm以上
【0023】
第2の特徴は、母管と継手材の仮付け形態にあり、母管と継手材は前述の図4に示す如く約500mm間隔で仮溶接された状態で溶接工程に搬入されるが、母管は通常スパイラル溶接鋼管が使用され、継手材がスパイラルビードと交錯する結果、このビード近傍の継手シームは、スパイラル溶接鋼管特有のピーキングに起因する母管と継手材間の隙間G及び溶接中の熱変形による隙間が発生し、最大2.5mm規模の隙間に対応する必要がある。
【0024】
第3の特徴は、L及びT継手の形態と溶接姿勢にあり、両側の継手の同時溶接が必要となる結果、継手材水平状態,即ち母管側の壁面がほぼ垂直状態での溶接で縦方向脚長確保が求められる所謂水平隅肉溶接が必須となる。特にT継手では、溝形をなす該継手フランジ高さに対し、ウエブ寸法が30mmしかなく、溶接トーチに十分な突込角が設定できない制約が加わる。
【0025】
第4の特徴は、C継手の形態にあり、母管と継手材が小角度で突合わされた所謂フレア開先状態を呈していることにあり、この開先溶接の欠点である凝固ワレや母管及び継手側の予熱作用が不足し、溶鋼との濡れ性悪化によるビード形成が難しい。
【0026】
第5の特徴は、極めて長大な溶接長に対し、母管のターニングロールのみによる両端支持の溶接で、母管及び継手材の曲りによる約100mmの垂直方向撓みと、母管の真円度変形及び熱変形による±約50mmの水平方向変位がもたらす溶接線変化に安定して対応する必要がある。
【0027】
このような特性を有する鋼管矢板の継手溶接に対し従来法の特徴は、1台の溶接装置で全長に渡り溶接することを前提にし、高速下で所定の脚長,ビード幅を達成する必要から、太径の芯線を使い大電流且つ多電極の溶接により大溶着量を確保する溶接法を採用していることにある。
【0028】
これら方式は、継手シーム条件が安定し大電流溶接に耐え、且つ基本的に溶込深さの確保に重点を置き、余盛量は極力抑えて平滑なビード外観が要求される一般的な溶接,例えば平板の突合わせ溶接等においては効果を発揮するが、溶接継手の形態が隙間が多く極めて不安定で、C継手の如くフレア開先の特異な形態があり、又溶込深さより余盛量の確保が要求される。
【0029】
更に溶接姿勢もTタイプの如く姿勢制約下の水平隅肉溶接での対応が必要となる鋼管矢板の継手溶接においては、さらに下記の如き欠点があり、溶接速度の向上が望めないばかりでなく、従来レベルの溶接速度においても品質的な問題があった。
【0030】
(イ)1.0m/minを越える高速下で、大脚長,大ビード幅達成が必要となる結果、800A規模の大電流で且つ2電極または3電極の複数電極溶接が必なる結果、品質,能率問題として下記のような課題がある。
【0031】
(1)隙間の多い継手シーム部に強大な溶接アークと大量の溶鋼が集中的に作用する結果、溶着量に対する溶込効果が過大となり、溶落ちが発生し易く、C継手ではカットワイヤに加え充填材を使用しても溶落ちが発生し易い。
【0032】
(2)深溶込みとなる結果、C継手においては溶接ビードの凝固形態から凝固ワレを誘発し易く、更に全継手共通問題として、継手シーム隙間から巻き込まれた空気及び母管,継手材の錆による水素が浮上しにくくなり、ブローホール,ピット等の欠陥が多発する。
【0033】
(3)複数電極の大電流溶接のため、溶着鋼の凝固距離,所謂溶融プール長が長くなり、L及びT継手の如き水平隅肉溶接では湯流れにより外観品質悪化と縦脚長確保が難しく、特殊な湯流れ抑制用フラックスを使用する必要がある。また例えフラックスを使用しても、溶接速度は1.5m/minを越えると品質確保が難しい。さらに溶接開始時及び終了時,継手材端部からの溶着鋼の流れ落ちを防止するため、溶接開始及び終了位置を継手端部から十分離す必要があり、結果的に継手材両端の未溶接長が長くなり、補修溶接長が増大する。
【0034】
(4)高速溶接のため、母管,継手のアークガウジング溝周辺のアークによる予熱作用が低下し、特にC継手の如きフレア開先溶接では母管及び継手と溶着鋼の濡れ性が悪化し、ビード外観品質保持には特殊なフラックスの使用が必要となるが、該フラックスを使用しても溶接速度は1.5m/minが限界である。また継手全体としてアークガウジング溝への溶着鋼の充足が不安定となり、アンダーカット等の欠陥が多発する。また上記理由から、この溶接方法においては、継手シームに対する芯線狙い位置の極めて厳格な監視が必要となる。
【0035】
(5)この溶接方法でのC継手溶接は、カットワイヤの散布が必須となるが、一方ではカットワイヤ散布が均質に実施されない場合、過大時は融合不良、過少時はビード幅不足等重大な欠陥発生につながる。また散布自体も機械散布の場合はトーチ回りの複雑化,人手散布の場合は散布要員が必要となり、また散布により溶材コストも悪化する。
【0036】
(6)この溶接方法で溶接速度の向上を指向する場合、必然的に各電極の溶接電流を増加するか電極数の増加が必要となり、以上の欠点が更に助長される結果、溶接速度が1.5m/minを越えると品質の悪化が大きく、実用的ではない。その結果、従来方式の鋼管矢板継手の溶接工程における作業時間は長時間を要し、製造工場の能率低下をきたし、生産性を悪化させている。
【0037】
(ロ)太径芯線による大電流且つ多電極溶接が前提となり、溶接トーチ外径の増大とトーチ保持機構の強度確保、芯線供給機構の大型化、給電ケーブルの太径化等により溶接マニプレータが大型化すると共に多電極化により該マニプレータが複雑化する結果、作業及び環境面として下記のような課題がある。
【0038】
(1)突込角,傾斜角等、3次元的設定が必要となる鋼管矢板継手溶接に対し、これら溶接品質に影響を及ぼすトーチ設定機構の機械化が基本的に困難で、角度ゲージ等による人力セットが必要となる。そのためC-T及びL-Tタイプの如き左右の継手タイプが異なる場合、反転毎に角度等の緊急な設定替えが必要となり、能率低下及び精度不良につながる。
【0039】
(2)カットワイヤの厳格な散布及び管理技術、3次元的に微妙に変化する継手シームに対し、この溶接方法にマッチする厳格なシーム検出技術と追従技術の不足、SAW法においてはフラックスの散布と回収等の機械化問題から、この溶接方法においては自動化の実現が困難で、機側作業,監視が前提となり、作業者は左右両側の溶接ヘッドに配置が必要となる。
【0040】
(3)上記結果SAW法の場合、作業者はフラックス粉塵下での作業となり、衛生的にも問題が多い。
【0041】
(4)また溶接後工程においても、SAW法の場合は付着したスラグの剥離作業が必要となり、要員増を招くとともに環境も悪化する。
【0042】
【課題を解決するための手段】
本発明は、鋼管矢板継手溶接に対する従来技術の欠点を改良し、高能率で且つ高品質の溶接を実現する鋼管矢板継手の溶接装置を提供する。
【0043】
本発明は、芯線径2.4mm以下の細径芯線を使用し、且つCO_(2),Ar,He又はこれらの混合ガスをシールドガスとして使用し、ウイービング又は回転方式による運棒機能と、前記シールドガスを溶接チップ位置の横方向から供給するサイドノズルとを有する溶接トーチを具備し、鋼管矢板管軸方向への移動機能を有し、鋼管矢板継手長さに応じて適正な間隔になる如く自動的に配置可能な溶接装置を、前記鋼管矢板の管軸を挟む両継手側にそれぞれ複数台設置してなり、複数台の前記溶接装置のそれぞれに、前記溶接トーチに電圧を負荷するタッチングセンシング方式による継手シーム位置のセンシング機能と、前記運棒機能を用いたアークセンシングによる継手シームの自動追従機能とを備え、前記個々の溶接装置を、継手タイプに応じた溶接トーチの突込角、傾斜角、溶接電流、溶接電圧及び個別の溶接速度に自動的に設定させて、完全自動運転させることを特徴とする鋼管矢板継手の溶接装置である。
【0044】
即ち、鋼管矢板継手の溶接工程で採用されている従来型の太径芯線,多電極,大電流溶接機を前提とした重装備,単一配置型溶接方法では、基本的に高能率、且つ高品質の継手溶接は達成出来ず、その理由が、溶接継手の形態として極めて特異な鋼管矢板継手を高品質で溶接するには、溶込深さ,溶融プール長を抑える必要があり、溶接電流,溶接電極数を制約すべきであるが、単一配置型溶接方法では、規定のビード寸法を高速度で達成する必要から、結果的に溶接電流,溶接電極数が増加することにあった。
【0045】
このように本発明の特徴とするところは、小電流溶接機を前提とした軽装備,複数配置型溶接方法、即ち継手材長手方向の溶接長が概略均等になる如く複数の溶接装置を配置し、個々の溶接装置は品質上最適となる溶接条件に基づく、個別溶接速度での溶接を可能とし、この個別溶接速度と台数によって決定される複合溶接速度で高能率溶接を実現するもので、実現上の技術課題を克服すると共に、最適な溶接条件,機器構成を実験により確認し実現を可能にしたものである。
【0046】
本発明の特徴である軽装備,複数配置型溶接機による鋼管矢板の継手溶接法は、これまで実用化が困難なため実機化例は皆無であった。その理由は、複数台配置され且つ管軸方向に任意に移動可能な溶接装置を必要とすることから、従来方式の如く各溶接装置毎に操作要員を配置する事は、労務コストの面で本発明による方式採用が無意味となり、また安全面の問題もあるからである。
【0047】
その解決のためには、溶接開始時の継手シームへの溶接芯線のセット、継手シームの3次元的変形に対する溶接開始後の芯線追従、C-T及びL-Tタイプ等左右の継手タイプが異なる場合の、継手反転毎のトーチ角設定替え、左右継手長さが異なる場合の継手反転毎の各溶接装置間隔の設定替え等、完全自動化技術の確立及びこれら条件を満足し、1層で所定のビード幅及び脚長を確保可能な溶接法の選定と溶接条件確立が必要である。
【0048】
この場合、自動化の障害となるフラックス使用の省略、及び均一性を要求されるカットワイヤ散布作業の省略をも実現しなければならない。
【0049】
発明者等は、これら課題に対し公知の回転アーク又はウイービング方式の運棒機能を有する1.0mm?2.4mmの細径芯線を前提としたガス溶接法に着目し、実験によって溶接及び操業上の課題を解決し実用化したものであり、以下にその内容について説明する。
【0050】
細径芯線溶接法に着目した理由は、この方式が溶接電源及び溶接ヘッドが小型化し完全自動化に有利な事によるが、芯線細径化は相対的溶着量の低下と熱源線状化を招き、ビード幅及び脚長確保が困難となる。その問題解決即ち溶接電流条件を確立することが第1の課題であり、T継手及びC継手の溶接試験結果を下に記す。
【0051】
溶接電流450A→達成溶接速度0.5m/min,
溶接電流500A→達成溶接速度0.6m/min,
溶接電流600A→達成溶接速度0.7m/min
【0052】
この結果から、目標とする総合溶接速度と設置台数の関係は表1の如く整理され、例えば450A規模の実効電流を達成出来る細径芯線溶接としては、大電流の溶接電源を適用すれば、片側4台で2.0m/minの総合溶接速度の達成が可能となる。
【0053】
【表1】

【0054】
また現在実用的に最大規模の600A電源であれば、更に高能率溶接を実現することができる。但しこれら高電流電源を鋼管矢板の継手溶接に適用する場合、以下の条件が必要である。
【0055】
▲1▼細径芯線を使う結果熱源が線状化し、電流密度の高いアークが集中し、溶込深さは深くなり、隙間の多いこれら鋼管矢板継手では溶落ち発生につながり、且つこれら個別速度ではビード幅が狭くかつ中高ビードとなって、規定の余盛寸法を達成できない。
【0056】
その改善のためには、少なく共ウイービング又は回転アークによる運棒を実施し、熱源の拡散を図る事が必須である。その場合該継手溶接は、一本毎の溶接長が非常に長く且つ生産本数も多いことから、揺動が前提となるウイービング方式は機構的に不利であり、回転アーク方式が望ましい。
【0057】
実験では、最適条件として芯線先端での回転径3?4mm,回転数50?100rev/secを採用した。また回転方向については、常に溶融金属を母管側にかきあげる如く回転するほうが、L及びT爪溶接時の縦方向脚長確保に有利である。これら機能を具備することは、後述の完全自動化実現のための有力な手段ともなる。
【0058】
次に芯線径の適正範囲について説明する。
【0059】
鋼管矢板継手溶接は細径芯線溶接として高電流,高溶着量溶接を必要とする結果、必然的に芯線送給速度が増大する。芯線送給速度が大きくなると送給モータの負荷が増加し、更に送給量制御特性も悪化することから実用的に30m/min以下が望ましく、450A規模電源においては1.0mmφが限界となる。
【0060】
加えて更に細径化は、熱源線状化を更に助長し好ましくない。一方芯線径が増加すると送給速度からの制約は緩和されるが、芯線送給負荷が増加するばかりでなく、所定の溶着量を確保するための溶接電流が増加し、溶接トーチの大型化が必要となり、その結果トーチ運棒機能導入制約及び個別に配置する溶接装置の自動セット機能が制約され、芯線径が2.4mmを越えると、本発明への適用は困難である。実験結果によれば、1.2?1.6mmの芯線径が送給性,アーク安定性から最適である。
【0061】
▲2▼C継手は従来カットワイヤ散布が必須であったが、カットワイヤ散布は前述の如く機械化が極めて難しく自動化例がなく、特に本発明の如く複数台の溶接装置を前提とする場合、トーチ設定等必須機能の自動化のためには極力軽装備化が必要であり、フラックス散布,回収と共にその省略が重要な要素となる。
【0062】
省略を前提とする場合、深いV形の溝形状をなすシーム部全体を芯線の溶融のみにより満たし、所定のビード幅を確保することは困難である。
【0063】
この解決のため図8-(1)の充填材方式において、前記特公平2-223269号で開示したビード幅確保の為の底上げ機能と溶落ち軽減を主目的としていた充填材幅を最適化し、充填材自身の溶融によってカットワイヤ同様の溶融補助材としての機能を持たせることでカットワイヤ散布の省略を実現した。
【0064】
一方シーム間隙による溶落ちは、細径芯線溶接の特徴として溶融プール長が約30mmと従来方式に比し大幅に短く、従って溶融金属の凝固が早く、また前述の芯線運棒機能との組合せで溶込み深さが緩和され、試験結果によれば、2.6mmのギャップまで許容可能である。
【0065】
実験においては、図9に示す如き充填材8を使用したが、寸法Lについては165mmφタイプでは、55?65mm,216mmφタイプでは60?70mmが望ましく、これは例えば165mmφタイプで寸法Lを55mm以下とした場合、溶込みが所謂梨型ビードとなり、凝固割れにつながりカットワイヤ省略は難しいからである。
【0066】
一方寸法Lの拡大は凝固割れ軽減には有利であるが、過大になると爪又は母管との融合不良につながる。実験においては、最適値として165mmφタイプで60mm,216mmφタイプで63mmを採用した。
【0067】
なお上記寸法Lの適正値は平行部板厚t_(1)との相関で決まり、例えばt_(1)が5mmより薄い場合、L寸法は増大すべきである。上記の結果、図10-(1),(3)の如く、C継手においてフラックス,カットワイヤ散布なしにこの溶接法の採用を可能とした。
【0068】
▲3▼図10-(2)の如く、T継手の水平隅肉溶接に当該法を適用する場合、シールドガスの供給方法としては、一般的に使用される溶接チップ位置に同芯状にセットするガスシールドノズルの方式では該ノズルの外径のみで約30mmφを必要とし、該継手の溶接部に挿入不可能であるため、図10-(3)の如く溶接チップの横方向から供給するサイドノズル方式を採用した。
【0069】
一方このサイドノズル方式を採用しても、溶接トーチの突込角αは最大15°までしか許容不可能であるが、前述の電流,芯線径,運棒方式の導入により、フラックス等の湯流れ抑制手段を使用することなく、1層で規定の脚長達成を可能とした。
【0070】
次に完全自動化を実現した手段について説明する。
【0071】
▲1▼C-T,L-Tタイプの如く、継手タイプ毎または反転する毎に設定変更の必要なトーチ角度は、細径芯線溶接法の採用により自動化は全く問題無く実現可能で、実験では一般的な多関節型ロボットを採用した。また溶接終了毎の芯線先端の切断も、公知のエアーニッパを採用した。
【0072】
▲2▼鋼管矢板は、ターニングロールの両端支持で母管を支える結果、撓み防止用の中間支持装置等を考慮しても約100mmの下方向撓み、及び母管の真円度変形による±約50mmの水平方向変位が発生する。従ってこれら矢板の長手方向に複数台配置する溶接装置は、溶接スタート時それぞれの位置の変位に応じて正確に該矢板の継手シームに溶接トーチをセットする必要がある。
【0073】
しかしながらこの変位は、鋼管矢板1本毎及び継手反転毎に異なるため、一般的なティーチングプレイバックによる教示方式では対応不可能であり、それぞれの位置において継手シーム位置を確実にセンシングする機能が必須となる。
【0074】
このセンシング法としては、例えばレーザ光を使い継手シームを直接検出する方法も採用不可能ではないが、溶接装置とは別に、光源,受光器を狭隘なこれら継手部に溶接トーチと近接して設置する必要があり、溶接装置の他の自動機能実現の障害となり、また画像処理器等を各溶接装置毎に必要とする結果、設備費,軽量化ニーズから好ましくない。
【0075】
このような問題に対し、前述のロボットと公知の溶接トーチに高電圧を付加するタッチセンシング方式を活用し、図11-(1),(2)に例示の如く、4点の検出動作で、それぞれの溶接装置位置の継手シーム(5)に正確に芯線をセット可能であることを確認し採用した。
【0076】
即ち継手上面及び側面を溶接トーチ本体の接触による粗センシングで検出し、この位置を基準にして、継手シームを溶接芯線先端による精密センシングで検出するものである。粗センシングによる継手材位置認識後、直接シーム位置に芯線をセットする方法も考えられるが、継手材は一般的に±2mmの圧延時の断面寸法誤差に加え仮付時の形状変形があり、全体で約±5mmの誤差が発生し、精密センシング省略は困難である。
【0077】
実験では、粗センシング後母管側及び爪側の2点を検出すれば、継手シームに正確に芯線をセット可能なことを確認し採用した。精密センシング位置は、極力シーム位置に近接することが望ましく、実験は高さ方向約20mm位置で実施した。またセンシング点数の増加は、検出精度の向上につながるが時間ロス増を考慮する必要がある。
【0078】
実験では粗センシングを側面接触から行ったが、上面側を先にしても差し支えなく、精密センシングの順序を変えても問題はない。又応用例として、継手の上面及び側面のみの粗センシングを溶接トーチと別置きの検出装置で認識し、精密センシングのみを溶接トーチで行う方法もあるが、装置がやや複雑化する。
【0079】
実験におけるセンシング動作の進行は、予め溶接マニプレータのCPUに母管外径と継手タイプ別に教示した(1)?(5)の基準動作を、実際の接触点で補正しつつ順次動作を進めていく方式を採用した。この方式の場合、鋼管矢板の図面上の継手位置と実際の継手材の誤差が非常に大きいことから、少なくとも継手材の粗センシングエリアの設定が重要である。
【0080】
粗センシングエリアを過小にすると、待機位置からの高速動作時,継手端部が近かった場合は溶接トーチの衝突と破損が生じ、遠かった場合は検出不能による次動作停止となる。過大の場合は、粗センシング開始から継手端部接触までの時間ロスが増大する。実施例では、図面寸法位置に対し水平方向では±100mm、垂直方向では-50?+150範囲に設定した。この結果、溶接トーチ待機位置から芯線セットまで約40secで終了可能である。
【0081】
▲3▼溶接開始後、それぞれの溶接装置は鋼管矢板継手シームの前述の初期変位に加え、溶接入熱による変動に合わせ正確にシーム上を追従し走行する必要がある。このセンシング法としては、前述の光学的な方法もあるが、光学的方法には前述の問題以外に、溶接中のアーク光,スパッタ,及び溶接ヒューム等の問題もあり、長期の信頼性に欠ける。
【0082】
これら課題に対する対策として、下記条件によって芯線運棒機能を活用した公知のアークセンシング方式の採用により解決した。C継手の溶接で充填材を使用するタイプ図10-(1)では、充填材と継手側にVで示す浅いV溝をなすギャップが発生し、それは継手材曲り等により3.5?6mmにも達する。
【0083】
アークセンシング方式でのテスト結果、このギャップが4mm以上になると、ギャップと継手表面及び充填材エッジ部での突出した周期的な電流又は電圧変動が発生する。そのため芯線の狙い位置が母管側寄りとなるような制御指令を挿入しても、芯線は実質的にこれらギャップのV溝を開先と認識し移動する。その結果継手材側はアークが直接作用し確実に融合されるが、母管側はアークはまず充填材エッジ部に作用し、エッジ部及び上面部を溶融した後に母管壁を溶融する現象が生じる。
【0084】
従って実施例に示すタイプの充填材では、板厚t_(1)が過大になると母管側の融合不良につながる。従って板厚t_(1)の上限は7mmが限界であり、4?5mmが最適である。
【0085】
なお充填材8を図12の如き形状とし、充填材と継手間ギャップを0もしくは4mm以下にすれば、芯線は母管及び継手材の中間位置を移動し、上記の問題,ひいては板厚t_(1)の上限制約は拡大するが、充填材の製作が難しくなりコスト増を招く。但しこの場合もアークの広がりの限界から、充填材上面の幅過大は母管又は継手材側の融合不良発生につながり、9mmが限界である。
【0086】
【実施例】
以下に本発明の実施例を、図1に従って説明する。
【0087】
図において、符号2,3は2台の走行台車であり、上部に設置したターニングロールで鋼管矢板1の両端を支持する。この走行台車2,3は、鋼管矢板1を受入位置から溶接位置に高速=30m/minで移動し、且つ鋼管矢板継手端部を基準位置aに正確に位置決めする低速=2m/minの走行機能を有する。
【0088】
符号4は、本発明にかかる複数台の溶接装置であり、本実施例では片側4台を設置し、個別溶接速度0.7m/minに対応し、複合溶接速度で最大2.8m/minの達成が可能である。
【0089】
該溶接装置4は鋼管矢板1の管軸方向に平行に敷設したレール上を走行する。また溶接装置は、10m?45mの任意の継手材の長さに対し予めインプットした長さ情報に基づき溶接長が原則4等分になるように自動的に配置可能である。この配置動作は25m/minの高速走行で行う。また本装置は、インプット区間の溶接走行のため個別溶接速度範囲で任意の速度で走行可能である。
【0090】
本装置の溶接前の自動配置及び溶接開始後の溶接長の位置認識は、全て基準位置aを起点にした距離認識機能により行う。なお本装置の自動配置後の溶接動作を、鋼管矢板側、即ち走行台車2,3を移動して達成することも可能であるが、40tに及ぶ大重量の鋼管矢板1を個別溶接長に合わせ精度よく移動するには解決すべき課題が増加する。
【0091】
次に溶接装置に積載する主要機器について記述する。
【0092】
符号4-1は溶接マニプレータであり、公知の6軸多関節ロボットを使用したが、直行タイプでも差し支えない。4-6はいわゆるMAG溶接電源で、600A電源を採用した。4-2は回転アーク機能を有する溶接トーチで、T継手に対応するため図10に示す如きサイドシールド方式を採用した。
【0093】
4-7は溶接芯線カセット、4-10は溶接毎に芯線先端を切断するエアーニッパ、4-9は溶接毎に溶接チップ及びサイドノズル先端に付着したスパッタ除去を目的としたワイヤブラシ、4-11は溶接マニプレータと溶接関連の制御装置である。
【0094】
溶接マニプレータ4-11及び溶接トーチ4-2以外の機器は、本溶接装置を極力小型化するうえで地上配置することが望まれるが、継手長に対応して最大で45mの走行範囲を必要とする当該装置においては、これらは溶接装置上配置が必須となる。なおMAGガスのみは、地上の集合装置からホースにより溶接位置に供給した。
【0095】
次に本溶接装置による動作および作用を、図1,図2により説明する。
【0096】
鋼管矢板1は、例えば移載装置等で、2台の走行台車2,3のターニングロールに両管端を支持する如く移載される。移載完了後ターニングロールを駆動し、両側の継手を水平位置に合わせ、更に該走行台車は溶接装置側に高速で走行後、図1に示す継手基準端位置が基準位置aに正確に一致する如く停止する。
【0097】
一方溶接装置4は、この受入れ動作と併行して、予めインプットされた鋼管矢板の継手タイプ,左右の継手の長さ,母管端面からの位置等の情報に基づき、原則として溶接長が均等に4等分される如く、基準位置aを起点にそれぞれ溶接装置の溶接開始位置に高速で配置走行する。
【0098】
なお左右の継手の長さが異なる場合、左右の溶接装置の配置位置はそれぞれ非対称としても良いが、表面溶接から裏面溶接の反転毎に左右の溶接装置全ての配置位置を変更する煩わしさが発生する。
【0099】
本実施例では、図1に示す如く長尺側継手で決定される配置位置で左右対称配置に展開する方式を採用した。これは鋼管矢板の溶接時間が長尺側継手の溶接長によって決定されることから採用したもので、この方式では、反転毎の溶接スタート位置配置は、反基準位置の最少台のみの移動で可能となる。
【0100】
これら展開終了後は、各溶接装置の溶接マニプレータ4-1は、図11に示す手順に基づき溶接開始位置の継手シームのセンシシングをし、溶接芯線を継手シーム位置にセットすると同時に、それぞれ図1矢印の方向に溶接を開始する。この場合溶接トーチ4-2は、予めインプットした継手タイプ情報に基づく突込角,傾斜角,溶接電流,電圧及び個別溶接速度に自動的にセットされる。
【0101】
左右の継手タイプが異なる場合、左右の溶接装置はそれぞれの継手タイプの条件にセットされる。下記に代表的なCタイプ継手の溶接条件を例示する。
【0102】
芯線径 :1.4mm,
溶接電流:600A,
溶接電圧:43V,
スピン径:3mm,
回転数 :100Hz,
溶接速度:0.7m/min,
突込み角:5°,
傾斜角 :0°,
【0103】
溶接中は、継手シームの水平及び垂直方向の変形に対し、溶接トーチはアークセンシングで自動的に追従する。継手両端部を除き各溶接装置の溶接継ぎ目は未溶接が発生しない様ラップさせる必要があるが、本溶接法の特徴として、溶融プール長が非常に短いことから、ラップ長さは約20mmあれば良い。このラップ長さは、溶接装置の距離認識機能で調整可能である。
【0104】
各溶接装置は、図示矢印の規定の個別溶接長の溶接を終了すると自動的に停止し、溶接トーチを退避させた後、裏面側溶接に備え各トーチをスパッタ除去装置4-9位置に移動し、溶接チップ及びサイドノズル下面に付着したスパッタを除去する。またエアーニッパ4-10位置でこれらチップからの芯線突き出し長さが一定となる如く芯線を切除する。
【0105】
左右の継手長が異なる場合は、これら動作と同時に反基準側の溶接装置は裏面溶接のための溶接開始位置に移動し、図2に示す如く裏面側溶接開始位置に展開する。一方一連の溶接装置のこれら動作と併行し、走行台車のターニングロールを駆動し、鋼管矢板を反転後裏面側継手を水平位置に正確にセットする。
【0106】
再度継手シームのセンシング後、裏面側溶接を図2矢印の如く開始するが、左右の継手タイプが異なる場合、左右の溶接装置のセシング動作及び溶接姿勢は自動的に切替えられる。裏面溶接の方向は実施例では前述の表面側溶接と対向方向に移動する方式とし、溶接装置の反転毎の展開を最少としたが、表面溶接開始位置に復帰後同方向に溶接しても問題はない。
【0107】
裏面溶接終了後、溶接装置は次の鋼管矢板の溶接準備に移り、同時に走行台車は高速で後退し、移載装置等で溶接の終わった鋼管矢板を搬出し、一連の溶接作業を終了する。
【0108】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の鋼管矢板継手の溶接装置は、溶接継手の形態が隙間が多く極めて不安定で、C継手の如くフレア開先の特異な形態にあり、又溶込深さより余盛量の確保が要求され、更に溶接姿勢もTタイプの如く姿勢制約下の水平隅肉溶接での対応が必要となる鋼管矢板の継手溶接に最適な方式として適用できる装置であり、従来方式の品質問題の改善ばかりでなく、溶接能率の大幅な向上と作業環境の改善も同時に達成可能である。
【0109】
1.複数の溶接装置で、低電流かつ回転アーク等の運棒機能により、入熱を分散しつつ適正な個別溶接速度での溶接が可能となった結果、大脚長,大ビード幅要求に対し、下記の品質および能率向上の効果を得た。
【0110】
(1)隙間の多い鋼管矢板継手シーム部に対し、溶接アークの作用が分散する結果溶着量に対する溶込効果が抑制され、2.6mmまでの隙間に対し溶落ち発生が皆無であり、C継手ではカットワイヤ散布省略が可能となった。
【0111】
(2)上記の効果の結果、C継手においては充填材寸法の適正化で凝固ワレ抑止が可能となり、更に全継手で継手シーム隙間から巻き込まれた空気および母管,継手材の錆による水素の浮上が容易になり、ブローホール,ピット等の発生が大幅に減少した。
【0112】
(3)単一電極の小電流溶接のため、溶着鋼の凝固距離,所謂溶融プール長が約30mmと短く、運棒効果も作用してL及びT継手の如き水平隅肉溶接では、フラックスを使用することなく高品質の外観が得られ、縦脚長の確保が可能となった。また溶接開始及び終了位置は継手端部約10mmを残せば良く、継手材両端の未溶接長が短く、補修溶接長の短縮が可能となった。
【0113】
(4)水平隅肉,フレア開先条件に対し適正な個別溶接速度での溶接が可能となり、母管,継手のアークガウジング溝周辺のアークによる予熱作用が向上し、特にC継手の如きフレア開先溶接では、溶着鋼の濡れ性が改善し、特殊なフラックスを使用することなく高品質のビード形成が可能となった。また継手全体としてもアークガウジング溝への溶着鋼の充足が安定し、アンダーカット等の欠陥が大幅に減少した。またこれら効果及び運棒効果から、これら溶接方法においては、継手シームに対する芯線狙い位置は一般的アークセンシング倣いの範囲で十分であり、機側監視が不要となった。
【0114】
(5)本発明装置による溶接方法でのC継手溶接は、カットワイヤの散布が省略可能となった結果、カットワイヤ過大時の融合不良,過少時のビード幅不足等重大な欠陥発生の恐れがなく、又溶材コストも低減できた。
【0115】
(6)本発明装置による溶接方法による溶接能率は、例えば実施例の個別溶接速度0.7m/min,溶接装置片側4台では、複合溶接速度2.8m/minの達成が可能であり、鋼管矢板製造工場の生産性の大幅向上が可能となった。
【0116】
2.継手タイプ別の突込角,傾斜角等溶接トーチの設定替え、溶接開始時の継手シームへの溶接芯線セット、溶接中の継手シームへの該芯線の追従、フラックス及びカットワイヤ散布等従来の手動及び機側監視作業が不要で溶接工程の完全自動化が実現した結果、下記の作業環境の改善等の効果を得た。
【0117】
(1)継手タイプ別の溶接トーチの角度設定,溶接電流,電圧等溶接条件は、基本的にCPUへのプリセット値を鋼管矢板仕様によって呼び出し、自動的に設定される結果、溶接品質の作業者による個人差が解消され、且つ溶接に関する熟練技能を不要とした。
【0118】
(2)フラックス粉塵又は強烈なアーク光とスパッタ等に晒されることなく、運転室での遠隔操作及び集中監視のみで作業可能であり、所謂3K作業の改善効果につながった。
【0119】
(3)従来法でのスラグ剥離作業又は大粒で強固に付着したスパッタの除去作業が不要となり、溶接後工程の作業負荷及び作業環境の改善も可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鋼管矢板継手溶接装置の構成例を示す平面図である。
【図2】図1に示す継手溶接装置の作動を説明する平面図である。
【図3】鋼管矢板の継手形態の各種の態様を示し、(1)はC-Cタイプ,(2)はC-Tタイプ,(3)はL-Tタイプの断面図である。
【図4】従来の継手材と母管を仮溶接した状態を説明する斜視図である。
【図5】従来のターニングロール設備を具備する鋼管矢板溶接装置の一例を示す側面図である。
【図6】図5に示す溶接装置の正面図である。
【図7】2電極法による潜弧溶接法を説明する図面であり、(1)は正面図,(2)は側断面図である。
【図8】鋼管矢板継手の溶接部のビード仕様を示し、(1),(2)はC継手,(3)はT継手,(4)はL継手の場合の詳細断面図である。
【図9】充填材形状の一例を示す図面である。
【図10】シールドガス溶接を説明する図面であり、(1),(3)はC継手,(2)はT継手の場合の溶接法を示す。
【図11】(1),(2)は、4点の検出動作で継手シーム正確に芯線をセットするタッチセンシングを説明する図面である。
【図12】継手間とのギャップを小さくする充填材を例示する図面である。
【符号の説明】
1,1-1 鋼管矢板
1-2 継手材
2,3 溶接走行台車
4 溶接装置
4-1 溶接マニプレータ
4-2 溶接トーチ
4-3 フラックス供給端
4-4 フラックス回収端
4-5 フラックス供給ホッパー
4-6 溶接電源
4-7 芯線リール
4-8 フラックス回収ホッパ
4-9 ワイヤブラシ
4-10 エアニッパ
4-11 制御装置
5 溶接芯線
6 残留したフラックス
7 カットワイヤ
8 充填材
a 走行台車の基準位置
g 継手材の隙間
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2010-06-07 
結審通知日 2010-06-09 
審決日 2010-06-24 
出願番号 特願平7-84571
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (B23K)
最終処分 成立  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 佐々木 一浩
豊原 邦雄
登録日 2001-02-23 
登録番号 特許第3160745号(P3160745)
発明の名称 鋼管矢板継手の溶接装置  
代理人 速見 禎祥  
代理人 志賀 正武  
代理人 高橋 詔男  
代理人 細川 文広  
代理人 勝俣 智夫  
代理人 細川 文広  
代理人 岩坪 哲  
代理人 高橋 詔男  
代理人 勝俣 智夫  
代理人 山崎 哲男  
代理人 山崎 哲男  
代理人 志賀 正武  
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