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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1223438 |
審判番号 | 不服2008-6492 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-17 |
確定日 | 2010-09-09 |
事件の表示 | 特願2005-178888「符号化装置、復号装置、符号化方法および復号方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月 2日出願公開、特開2005-333662〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【第1】経緯 [1]手続 本願は、平成8年10月24日に出願した特願平08-282609号(以下、「原出願」という)の一部を、拒絶理由通知の日から明細書について補正ができる期間内である平成17年6月20日に新たな特許出願(特願2005-178888号)としたものであり、手続きの概要は以下の通りである。 原出願:特願平08-282609号 出願 :平成 8年10月24日 拒絶理由通知 :平成17年 4月15日(起案日) 進歩性違反(特許法第29条第2項)の基礎とする刊行物として、 ・特開昭63-263982号公報 ・特開平6-284414号公報 が挙げられている。 以下、略 --------------------------- 本件(分割)出願:特願2005-178888号 出願 :平成17年 6月20日 手続補正(明細書、 特許請求の範囲の補正) :平成17年 7月14日 拒絶理由通知 :平成19年 5月 2日(起案日) 意見書 :平成19年 7月 9日 手続補正(明細書、 特許請求の範囲の補正) :平成19年 7月 9日 拒絶査定 :平成20年 2月12日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成20年 3月17日 [2]査定 〈査定の理由〉 原査定の理由は、概略、以下のとおりである。 本願の請求項1?請求項10(平成19年7月9日付補正後)までに係る各発明は、下記の引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 記(引用例) 引用例1:特開昭63-263982号公報 引用例2:特開平6-284414号公報 以上(原査定の理由)。 〈上記引用例1、2についての付言(当審決)〉 なお、上記引用例1,2は、共に、本件明細書の段落【0005】【0006】中に、先行特許文献1,2として挙げられているものと同じ文献である(下記参照)が、 原出願の出願当初明細書には、先行特許文献についての記載は全くなく(上記先行特許文献1,2は挙げられていない。)、かつ、これらの文献は、原出願に対する拒絶理由通知(平成17年4月15日(起案日))中で拒絶の理由に引用された刊行物である。 すなわち、原査定で引用された上記引用例1、2が本願発明の先行技術文献であるとの認識は、本件(分割)出願が出願されたとみなされる平成8年10月24日(原出願の出願日)に認識されていたものではなく、同認識を示す段落【0005】【0006】は、本件(分割)出願において導入された記載である。 記(本件明細書、先行技術文献) 【0005】なお、以上の説明に関連するものとして、以下の先行技術文献が挙げられる(特許文献1?2)。 【0006】 【特許文献1】特開昭63-263982号公報 【特許文献2】特開平6-284414号公報 【第2】本願発明 本願の請求項1から請求項10までに係る発明は、本願明細書、特許請求の範囲及び図面(平成17年7月14日付け及び平成19年7月9日付けの手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1から請求項10までに記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、下記のとおりのものである。 記(本願発明) 画像データを符号化処理する符号化装置であって、 前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域と復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域とを一致させる領域情報を生成する領域情報生成手段と、 前記画像データを符号化処理して符号化ストリームを生成する符号化手段と、 前記符号化ストリームに対して復号処理が行われる際に、前記領域情報生成手段により生成された領域情報を利用して前記符号化領域と前記割り当て領域とを一致させて復号処理が行われるように、前記領域情報と前記符号化ストリームとを伝送する伝送手段と を有することを特徴とする符号化装置。 【第3】当審の判断 [1]引用刊行物の記載 原査定の拒絶理由に引用された特開昭63-263982号公報(以下、「刊行物1」という。上記引用例1に同じ。)には、図面と共に、次に掲げる事項が記載されている。 〈特許請求の範囲〉 (K1)「テレビジョン信号で表わされる画像を記憶し、符号化して伝送する装置において、伝送する画像の画面における水平方向および垂直方向の位置の情報並びに水平方向および垂直方向の大きさの情報を伝送する手段と、当該位置の情報および大きさの情報で指定される画面領域の当該画像のデータを伝送する手段とを有する静止画像伝送装置。」 〈産業上の利用分野〉 (K2)「本発明は、画像を伝送する装置に関し、特に量子化された静止画像を、伝送する装置に関する。」(1頁左下欄下から4行?5行) 〈従来の技術〉 (K3)「従来の静止画像伝送装置では、画面の一部分を伝送する手段として、固定分割法が用いられてきた。固定分割法では、画面をどのように分割するかを予め決めておき、分割された画面のそれぞれに番号を付けておく、そして、送信側では、分割画面を伝送するに先だって、分割画面番号を送る。 他方、受信側では、その番号から、次に送られて来る画像の画面における水平方向位置、垂直方向位置および大きさを知り、画面の所定の位置へ受信画像を表示する。」(1頁左下欄最下行?同頁右下欄9行) 〈目的、解決しようとする問題点、問題点を解決するための手段〉 (K4)「(発明が解決しようとする問題点) 上述したように、従来の静止画像伝送装置に用いられていた固定分割法では、画面の中の予め決められた部分の画像伝送は可能だが、画面の中の任意の部分の画像を伝送することは不可能である。 このように、従来の静止画像伝送装置には、伝送する部分画像の選択に融通性が少ないという問題がある。 (問題点を解決するための手段) 前述の問題点を解決するために本発明が提供する手段は、テレビジョン信号で表わされる画像を記憶し、符号化して伝送する装置であって、伝送する画像の画面における水平方向および垂直方向の位置の情報並びに水平方向および垂直方向の大きさの情報を伝送する手段と、当該位置の情報および大きさの情報で指定される画面領域の当該画像のデータを伝送する手段とを有してなる。」(1頁右下欄11行?2頁左上欄6行) 〈実施例〉 《構成》 (K5)「次に、図面を参照して本発明を一層詳しく説明する。 第1図は本発明の一実施例である静止画像伝送装置の回路構成を示すブロック図である。第1図において、11は送信装置であり、12は受信装置である。送信装置11はアナログ-ディジタル変換器1,位置指定器2,メモリ3,符号化器4で構成される。受信装置12は、復号器51位置指定器6,メモリ7,ディジタル-アナログ変換器8で構成される。」(2頁左上欄8行?17行) 《動作》 (K6)「送信装置11において、映像入力21がアナログ-ディジタル変換器1でディジタルデータに変換されて、メモリ3へ書き込まれる。メモリ3へ書き込まれた映像を画面で表すと、第2図の101で示す領域を占めるとする。この101のうち、201で示す領域の映像を伝送する場合、送信装置11は201の左上隅の画面上での位置座標(X,Y)と、201の水平方向の大きさLHと垂直方向の大きさLVとを画像データを送るに先立って、受信装置12へ送る。第1図において、位置指定器2が(X,Y),LH,LVのデータを符号化器4へ送る。符号化器4は(X,Y),LH,LVのデータを符号化して回線22へ送出する。受信装置12では復号器5が送られてきたデータを復号し、そのデータが位置情報であれば位置指定器6へ通知し、次に送られてくる画像データの書き込み位置をセットする。送信装置11では次に、位置指定器2により指定された領域の画像データをメモリ3から順次読み出し、符号化器4でその画像データを符号化して回線22へ出力する。受信装置12では、回線22からのデータを復号器5で復号し、メモリ7の位置指定器6で指定される範囲へ順次書き込んでいく。メモリ7の画像データはディジタル-アナログ変換器8で映像信号に変換されて映像出力23となる。」(2頁左上欄18行?2頁左下欄2行) 〈発明の効果〉 (K7)「この様に、本発明では、画像データを送信するに先だって、送信する画像の位置情報と水平方向の大きさのデータ、垂直方向の大きさのデータを送り、受信側での画像データの書き込み位置を指定することにより、画面中の任意の一部分の画像を送ることが可能となる。従って、本発明を採用することにより、不必要な部分の画像を送ることが無くなるから、伝送効率を向上できる。」(2頁左下欄4行?11行) [2]刊行物1に記載された発明(引用発明) 刊行物1には、前掲(K2)を産業上の利用分野、前掲(K3)を従来技術、前掲(K4)(K7)を目的・解決しようとする課題・効果とするものであって、 概要が前掲(K1)(特許請求の範囲)で、構成・動作を前掲(K5)(K6)とする静止画像伝送装置が、図面第1図、第2図と共に記載されており、 前掲(K1)?(K7)、特に、前掲(K1)の「テレビジョン信号で表わされる画像を記憶し、符号化して伝送する装置」であって、前掲(K5)(K6)の第1図の送信装置11と受信装置12とからなる静止画像伝送装置を対象に、引用発明を認定することとする。 前掲(K1)?(K7)によれば、本願発明と対比する刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)として、下記の発明を認めることができる。 なお、前掲(K6)の「映像入力21」は、前掲(K1)の「テレビジョン信号」をいうものと認め得ることは明らかである。 記(引用発明) 〈構成〉 テレビジョン信号で表わされる画像を符号化して伝送する静止画像伝送装置であって、 アナログ-ディジタル変換器1,位置指定器2,メモリ3,符号化器4で構成される送信装置11と、 復号器51,位置指定器6,メモリ7,ディジタル-アナログ変換器8で構成される受信装置12と、 からなり、 〈動作〉 (a)送信装置11に、テレビジョン信号である映像入力21が入力され、 送信装置11のアナログ-ディジタル変換器1で映像入力21はディジタルデータに変換されて、メモリ3へ書き込まれ、メモリ3へ書き込まれた映像を画面で表すと、第2図の101で示す領域を占める。 (b)送信装置11の位置指定器2が、この画面領域101のうち、201で示す領域の映像を伝送する場合、201の左上隅の画面上での位置座標(X,Y)と、201の水平方向の大きさLHと垂直方向の大きさLVとを、画像データを送るに先立って、符号化器4へ送る。 (c)送信装置11の符号化器4は、これら(X,Y),LH,LVのデータを符号化して回線22へ送出する。 (d)受信装置12の復号器5は、送られてきたデータを復号し、そのデータが位置情報であれば位置指定器6へ通知する。画像データに先だって送られてきたデータは、符号化された(X,Y),LH,LVのデータでありこれを復号したデータ{(X,Y),LH,LVのデータ}が位置情報であることから、これら(X,Y),LH,LVのデータを、位置指定器6へ通知し、次に送られてくる画像データの書き込み位置をセットする。 (e)送信装置11では、位置指定器2により指定された領域201の画像データをメモリ3から順次読み出し、符号化器4でその画像データを符号化して回線22へ出力する。 (f)受信装置12では、回線22からのデータを復号器5で復号する。復号したデータが画像データであることから、復号した画像データ、すなわち、201で示す領域の画像データを、受信装置12のメモリ7の、位置指定器6で指定される範囲へ順次書き込んでいく。 (g)メモリ7の画像データはディジタル-アナログ変換器8で映像信号に変換されて映像出力23となる。 [3]本願発明と引用発明との対比(対応関係) (1)本願発明(構成要件の分説等) ア 構成要件の分説 本願発明は、以下のように要件A?Dに分説することができる。 本願発明(分説) A:画像データを符号化処理する符号化装置であって、 B:前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域と復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域とを一致させる領域情報を生成する領域情報生成手段と、 C:前記画像データを符号化処理して符号化ストリームを生成する符号化手段と、 D:前記符号化ストリームに対して復号処理が行われる際に、前記領域情報生成手段により生成された領域情報を利用して前記符号化領域と前記割り当て領域とを一致させて復号処理が行われるように、前記領域情報と前記符号化ストリームとを伝送する伝送手段と A:を有することを特徴とする符号化装置。 イ 実施の形態との対応、解釈 イ1 本願発明は、明細書の段落【0036】記載の「符号化装置」に対応するものであることは明らかである。 その、段落【0036】記載の「符号化装置」は、段落【0024】?【0035】記載の実施の形態(図1、図2)の「符号化装置」を前提に、その「割り当て領域表示情報検出器」を「符号化領域表示情報発生器」に置き換えたものである。 イ2 要件Cの「前記画像データ」について 要件Aの「画像データ」、要件Bの「前記画像データ」は、「有効画像領域を含む画像データ」と解され、したがって、要件Cの「前記画像データ」も、文言上は、「有効画像領域を含む画像データ」を意味することになる。 しかしながら、要件Cの「前記画像データを符号化処理して符号化ストリームを生成する符号化手段」とは、明細書記載の上記実施形態(図1)に照らせば、「スイッチ13を介して与えられる画像信号を圧縮符号化する符号化器14」(段落【0025】、図1)をいうものと理解されること、 要件Dで「前記領域情報と前記符号化ストリームとを伝送する伝送手段」としていて、「領域情報」と「符号化手段」が生成する「符号化ストリーム」とは別のものとしていること、 からすれば、 要件Cの「前記画像データ」は、「前記」とはいうものの、「有効画像領域のうち符合化処理される領域の画像データ」を意味するものと解される。 イ3 「復号処理」について 要件Bの「復号処理された画像データ」における「復号処理」、及び、 要件Dの「前記符号化ストリームに対して復号処理が行われる際に」における「復号処理」とは、 明細書記載の上記実施形態(図2)に照らせば、同実施の形態における復号化器23での復号処理をいうものといえ、要件Cの「有効画像領域の画像データ」を符号化処理することに対応する逆処理としての「復号処理」をいうものと解される。 これに対して、要件Dの「・・行われる際に、前記領域情報生成手段により生成された領域情報を利用して前記符号化領域と前記割り当て領域とを一致させて復号処理が行われるように、前記領域情報と前記符号化ストリームとを伝送する伝送手段」の「復号処理」とは、 「割り当て」る処理をも含んでいう処理であることは明らかであるから、上記要件Bの「復号処理」とは異なり、この「復号処理」だけでなく「割り当て」る処理をも含む処理、つまり「復号側で行われる処理」をいうもの理解すべきである。 すなわち、要件Dの「前記符号化領域と前記割り当て領域とを一致させて復号処理が行われるように」の「復号処理」とは、「復号側で行われる処理」をいうものと解される。 (2)対応関係 ア 「画像データ」、「画像データの有効画像領域」 ア1「画像データ」 《本願発明》 「画像データ」は、「データ」と称することからディジタルデータであることは明らかである。 また、一般に、「画像データ」とは、「静止画像データ」も「動画像データ」も含めていう用語であるから、これら両画像を含むものと解されるところ、 本願発明でいう「画像データ」についてみるに、 請求項1の記載の全体をみても、「画像データ」が「静止画像データ」とか「動画像データ」とかに限定する記載はない。 そして、明細書の記載をみるに、段落【0023】?【0066】に記載された実施の形態の、段落【0033】(「MPEG2規格に従って復号化する。」)、段落【0040】?【0066】には、「画像データ」が「動画像データ」であるものが記載されているものの、 本願発明の技術的意義、すなわち、 「符号化された画像(符号化領域の画像)の位置が符号化前と復号化後とでずれてしまう。」(段落【0009】)という課題を解決し、「その目的は、符号化・復号化システム内における符号化領域と割当て領域とを一致させることができるとともに、前段の符号化・復号化システムの割当て領域と後段の符号化・復号化システムの符号化領域とを一致させることができる符号化装置、復号化装置および符号化・復号化システムならびに符号化方法、復号化方法および符号化・復号化方法を提供することにある。」(段落【0015】) という技術的意義についてみるに、 かかる技術的意義は、「画像データ」が、「動画像データ」か「静止画像データ」に関わらないものである。 以上からすれば、本願発明は、対象とする「画像データ」が「静止画像データ」であるとか「動画像データ」であるとかの限定をしない発明と把握すべきというべきであり、 したがって、本願発明の「画像データ」は、「静止画像データ」を含んでいうものと認められる。 《引用発明との対応》 引用発明の「テレビジョン信号で表わされる画像を符号化して伝送する装置」における「テレビジョン信号で表わされる画像」又は、 上記(a)において、送信装置11に入力された『テレビジョン信号である映像入力21』がアナログ-ディジタル変換器1でディジタルデータに変換されたものは、 ディジタルデータの「静止画像データ」といえるものである。 また、ア2で後記するように「有効画像領域を含む画像データ」といえるものでもある。 したがって、本願発明でいう上記「画像データ」と相違しない。 ア2「画像データの有効画像領域」 引用発明では、「(a)送信装置11に『テレビジョン信号である映像入力21』が入力され、送信装置11のアナログ-ディジタル変換器1で映像入力21はディジタルデータに変換されて、メモリ3へ書き込まれ、メモリ3へ書き込まれた映像を画面で表すと、第2図の101で示す領域を占める。」 一般に、上記『テレビジョン信号である映像入力』は、一般に、同期信号を含む垂直・水平帰線消去期間を含んでいるものであり、これらの期間には有効な画像情報はなく、通常、画面に表示されない部分であって、メモリにも書き込まないのが普通であるところ、 上記「メモリ3へ書き込まれた映像を画面で表すと、第2図の101で示す領域」は、 メモリに書き込まれた領域であり、画面に表示される領域と普通に想定されるから、有効な画像情報部分といえ、したがって、本願発明でいう上記「画像データの有効画像領域」ということができる。 そうすると、『テレビジョン信号である映像入力21』がアナログ-ディジタル変換器1でディジタルデータに変換されたものは、「画像データの有効画像領域」を含んでいるといえる。 イ 要件A:「画像データを符号化処理する符号化装置であって」 、「を有することを特徴とする符号化装置。」について 引用発明は、「テレビジョン信号で表わされる画像を符号化して伝送する装置であって、 アナログ-ディジタル変換器1,位置指定器2,メモリ3,符号化器4で構成される送信装置11と、 復号器51,位置指定器6,メモリ7,ディジタル-アナログ変換器8で構成される受信装置」を備えていて、 上記アを踏まえれば、その「符号化器4で構成される送信装置11」が、 (有効画像領域を含む)「画像データを符号化処理する符号化装置」と言い得ることは明らかである。 したがって、引用発明は、上記要件Aにおいて、本願発明と相違しない。 ウ 要件B:「前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域と復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域とを一致させる領域情報を生成する領域情報生成手段と」について 《本願発明》 ウ1 要件Bについて 上記要件Bは、さらに、以下の要件B1と要件B2、すなわち、 B1:領域情報を生成する領域情報生成手段と B2:領域情報は、前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域と復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域とを一致させる領域情報であること に分けることができる。 《B2の解釈》 要件Bで特定する「領域情報生成手段」は、「符号化装置」が有する(に含まれる)ものであるところ、 上記B2の「前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域と復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域とを一致させる」ことは、復号側でなし得ることであって、「符合化装置」でなし得ることでないことは明らかである。 したがって、上記B2の「前記画像データの・・・割り当て領域とを一致させる領域情報」とは、 『復号側において、』「前記画像データの・・・割り当て領域とを一致させる」『ように利用することが予定されている』「領域情報」を意味するものと解釈される。 すなわち、本願発明の要件Bは、 『復号側において、前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域と復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域とを一致させるように利用することが予定されている領域情報を生成する領域情報生成手段と』と解される。 《引用発明との対応》 ウ2 引用発明では、 「(b)送信装置11の位置指定器2が、この画面領域101のうち、201で示す領域の映像を伝送する場合、201の左上隅の画面上での位置座標(X,Y)と、201の水平方向の大きさLHと垂直方向の大きさLVとを、画像データを送るに先立って、符号化器4へ送る。 (e)送信装置11では、位置指定器2により指定された領域201の画像データをメモリ3から順次読み出し、符号化器4でその画像データを符号化して回線22へ出力する。」ところ、 位置指定器2が符号化器4へ送る「201の左上隅の画面上での位置座標(X,Y)と、201の水平方向の大きさLHと垂直方向の大きさLV」{(X,Y),LH,LVのデータ}は、「位置指定器2により指定された領域201」を特定する情報と言えるから「領域を特定する領域情報」と言え、位置指定器2が生成するものと言える。 また、「位置指定器2により指定された領域201」は、「符号化処理される領域を示す符号化領域」と言えるところ、「画面領域101」が、「画像データの有効画像領域」と言い得ることは前記アのとおりであるから、 「位置指定器2により指定された領域201」は、本願発明でいう「前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域」と言える。 したがって、「位置指定器2」は、 本願発明でいう「前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域」を特定する「領域情報を生成する領域情報生成手段」と言うことができる。 ウ3 また、引用発明では、 「(f)受信装置12では、回線22からのデータを復号器5で復号する。復号したデータが画像データであることから、復号した画像データ、すなわち、201で示す領域の画像データを、受信装置12のメモリ7の、位置指定器6で指定される範囲へ順次書き込んでいく。」ところ、 復号した画像データを、メモリ7の、位置指定器6で指定される範囲へ順次書き込んでいくのであるから、この書き込む態様は、「位置指定器6で指定される範囲へ」「復号処理された画像データを割り当てる」態様と言うことができる。 そして、その「復号処理された画像データを割り当てる範囲」は、「復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域」と言え、「位置指定器6で指定される」のであるから、 「位置指定器6」には、その「復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域」を「特定する領域情報」が記憶されていることは明らかである。 ウ4 そして、引用発明は、 「(c)送信装置11の符号化器4は、これら(X,Y),LH,LVのデータを符号化して回線22へ送出する。 (d)受信装置12の復号器5は、送られてきたデータを復号し、そのデータが位置情報であれば位置指定器6へ通知する。画像データに先だって送られてきたデータは、符合化された(X,Y),LH,LVのデータでありこれを復号したデータ{(X,Y),LH,LVのデータ}が位置情報であることから、これら(X,Y),LH,LVのデータを、位置指定器6へ通知し、次に送られてくる画像データの書き込み位置をセットする。」のであるから、 ウ3で上述した、受信装置12の「位置指定器6」に記憶される「復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域」を「特定する領域情報」として、 ウ2で上述した、送信装置11の「位置指定器2」が生成する「前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域」を特定する「領域情報」{(X,Y),LH,LVのデータ}が用いられる。 このことにより、送信装置11の「位置指定器2」が生成する「前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域」(201で示す領域)と、受信装置12の「位置指定器6」に記憶される「復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域」とは一致することは明らかである。 そうすると、ウ2で上述した、送信装置11の「位置指定器2」が生成する「前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域」を特定する「領域情報」{(X,Y),LH,LVのデータ}は、 復号側において、「復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域」として利用することが予定されているものといえ、 このことは、 『復号側において、「前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域と復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域とを一致させる」ように利用することが予定されている「領域情報」』とも言うこともできるものである。 ウ4 まとめ 以上によれば、引用発明の「位置指定器2」は、 『復号側において、「前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域と復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域とを一致させる」ように利用することが予定されている「領域情報」』を生成する領域情報生成手段、と言え、 すなわち、本願発明でいう、要件B「前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域と復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域とを一致させる領域情報を生成する領域情報生成手段」と言うことができる。 したがって、引用発明は、要件Bにおいて、本願発明と相違しない。 エ 要件C:「前記画像データを符号化処理して符号化ストリームを生成する符号化手段と、」について 《本願発明》 エ1 「ストリーム」について 上記の(符合化)「ストリーム」は、本願の明細書の、 「符号化器14は、入力信号を・・・圧縮符号化する。その結果、画像信号は、有効領域のうち割当て領域だけ圧縮符号化される。」(段落【0030】)、 「この圧縮符号化により得られたビットストリーム信号は、加算器15に供給される。加算器15は、このビットストリーム信号に対して、割当て領域表示情報検出器12で検出された割当て領域表示情報を符号化領域表示情報として挿入する。ここで、符号化領域表示情報とは、画像信号の有効領域のうち符号化された領域を示す情報である。符号化領域表示情報が挿入されたビットストリーム信号は出力端子16に供給される。」(段落【0031】)に照らせば、 (符号化された)「ビットストリーム信号」をいうものであるところ、 「ビットストリーム信号」とは、 「(パラレルで伝送される信号ではなく)“0か1”の1ビットがシリアル列で伝送される信号」のことをいうものである。 エ2 「前記画像データ」が、「有効画像領域のうち符合化処理される領域の画像データ」と解されることは前記のとおりである。 《引用発明との対応》 エ3 引用発明では、 「(e)送信装置11では、位置指定器2により指定された領域201の画像データをメモリ3から順次読み出し、符号化器4でその画像データを符号化して回線22へ出力する。」ところ、 「領域201の画像データ」は、上記(ウ2)での検討から、「前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域」の画像データといえるから、 引用発明の「符号化器4」も、本願発明でいう「前記画像データ」、「を符号化処理する符号化手段」と言える。 また、「符号化器4でその画像データを符号化したもの」は、符号化されたデータ信号、すなわち、「符号化データ信号」と言えるから、 引用発明の「符号化器4」は、「符号化データ信号を生成する」ものと認め得るものである。 もっとも、生成すると認められる「符号化データ信号」が、本願発明の「符号化ストリーム」、すなわち、「(パラレルで伝送される信号ではなく)“0か1”の1ビットがシリアル列で伝送される信号」とはしていない。 本願発明の「符号化手段」が生成するとする、上記「符号化ストリーム」、すなわち、符合化された「(パラレルで伝送される信号ではなく)“0か1”の1ビットがシリアル列で伝送される信号」も、「符号化データ信号」とは言い得るから、 「符号化データ信号」を生成する、と言い得る限りにおいては、引用発明と本願発明は相違しない。 以上によれば、要件Cについては、 本願発明と引用発明は、 前記画像データを符号化処理して符号化データ信号を生成する符号化手段である点では相違せず、 符号化データ信号が 本願発明では、「ストリーム」とするのに対して、 引用発明では、「ストリーム」とはしていない点 で相違する。 オ 要件D:「前記符号化ストリームに対して復号処理が行われる際に、前記領域情報生成手段により生成された領域情報を利用して前記符号化領域と前記割り当て領域とを一致させて復号処理が行われるように、前記領域情報と前記符号化ストリームとを伝送する伝送手段と」について 《本願発明》 オ1 要件Dについて 上記要件Dは、さらに、以下の要件D1と要件D2、すなわち、 D1:前記符号化ストリームに対して復号処理が行われる際に、前記領域情報生成手段により生成された領域情報を利用して前記符号化領域と前記割り当て領域とを一致させて復号処理が行われるように、 D2:前記領域情報と前記符号化ストリームとを伝送する伝送手段と に分けることができる。 そして、要件D2の「復号処理が行われるように」の「復号処理」は、『復号側で行われる処理』をいうものと解されることは前記の通りである。 《D1の解釈》 上記B2の解釈と同様、 要件Dで特定する「伝送手段」は、「符号化装置」が有する(に含まれる)ものであるところ、 上記D1は、復号側でなし得ることであって、「符合化装置」でなし得ることでないことは明らかであるから、 上記D1は、「前記符号化ストリームに対して復号処理が行われる際に、前記領域情報生成手段により生成された領域情報を利用して前記符号化領域と前記割り当て領域とを一致させて『復号側で行われる処理』が行われることを予定していること、を特定するものと解される。 《引用発明との対応》 オ2 引用発明では、 「(c)送信装置11の符号化器4は、これら(X,Y),LH,LVのデータを符号化して回線22へ送出する。」、 「(e)送信装置11では、位置指定器2により指定された領域201の画像データをメモリ3から順次読み出し、符号化器4でその画像データを符号化して回線22へ出力する。」、 「(f)受信装置12では、回線22からのデータを復号器5で復号する。復号したデータが画像データであることから、復号した画像データ、すなわち、201で示す領域の画像データを、受信装置12のメモリ7の、位置指定器6で指定される範囲へ順次書き込んでいく。」ところ、 ・前記「符号化データ信号」(上記エ)と、符号化した「(X,Y),LH,LVのデータ」(これが、「前記領域情報」と言い得るものであることはウで前記した通りである。)を伝送することは明らかであり、したがって、これらを伝送する伝送手段の存在も明らかである。 すなわち、引用発明は、前記「符号化データ信号」と、符号化した「前記領域情報」を伝送する伝送手段を有している。 もっとも、本願発明の伝送手段は、「前記領域情報」を伝送するとしていて、符号化した「前記領域情報」を伝送するとはしていないから、 本願発明と引用発明の伝送手段は、「前記領域情報」の情報を伝送する点においては相違はないと言い得るものの、 伝送する「前記領域情報」の情報が、 引用発明では符号化した「前記領域情報」であるのに対して、 本願発明では、「前記領域情報」である点 では相違が認められる。 ・また、引用発明が有すると言える伝送手段は、前記「符号化データ信号」を伝送するものであって、前記「符号化ストリーム」を伝送するとする本願発明の伝送手段とは相違する。 ・また、伝送された前記「符号化データ信号」に対して復号処理が行われること、「(X,Y),LH,LVのデータ」は、上記ウで検討したことから、「前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域と復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域とを一致させる領域情報」と言え、 前記「符号化データ信号」に対して復号処理が行われる際に、前記領域情報生成手段により生成された領域情報を利用して前記符号化領域と前記割り当て領域とを一致させて『復号側で行われる処理』が行われることを予定していると言えること、も明らかである。 そうすると、要件Dについては、 本願発明と引用発明は、 前記符号化データ信号に対して復号処理が行われる際に、前記領域情報生成手段により生成された領域情報を利用して前記符号化領域と前記割り当て領域とを一致させて復号処理が行われるように、前記領域情報の情報と前記符号化データ信号とを伝送する伝送手段と (を有する)とする点は相違せず、 伝送手段が伝送する符号化データ信号が、 本願発明では、「ストリーム」とするのに対して、 引用発明では、「ストリーム」とはしていない点、 伝送手段が伝送する前記領域情報の情報が、 本願発明では、「前記領域情報」であるのに対して、 引用発明では符号化した「前記領域情報」である点、 では相違が認められる。 [4]一致点・相違点 上記[3]での対比結果によれば、 本願発明と引用発明は、 [一致点] A 画像データを符号化処理する符号化装置であって、 B 前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域と復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域とを一致させる領域情報を生成する領域情報生成手段と、 C’前記画像データを符号化処理して符号化データ信号を生成する符号化手段と、 D’前記符号化データ信号に対して復号処理が行われる際に、前記領域情報生成手段により生成された領域情報を利用して前記符号化領域と前記割り当て領域とを一致させて復号処理が行われるように、前記領域情報の情報と前記符号化データ信号とを伝送する伝送手段と A:を有することを特徴とする符号化装置。 である点で一致し、 [相違点] [相違点1] C’の符号化手段が生成するとする符号化データ信号が、 本願発明では、「ストリーム」とするのに対して、 引用発明では、「ストリーム」とはしていない点 [相違点2] D’の伝送手段が伝送するとする、符号化データ信号が、 本願発明では、「ストリーム」とするのに対して、 引用発明では、「ストリーム」とはしていない点 D’の伝送手段が伝送する前記領域情報の情報が、 本願発明では、「前記領域情報」であるのに対して、 引用発明では符号化した「前記領域情報」である点、 で相違するものと認められる。 [5]相違点の判断(容易想到性の判断) (1)相違点の克服 [相違点1の克服] 引用発明の、符号化データ信号を生成する符号化手段(符号化器4)を、符号化ストリームを生成する手段とすることで[相違点1]は克服され、 [相違点2の克服] 引用発明の、符号化した「前記領域情報」と前記符号化データ信号とを伝送する伝送手段を、前記領域情報と前記符号化ストリームとを伝送する伝送手段とすること、 すなわち、符号化した「前記領域情報」を伝送するのに代えて、「前記領域情報」を伝送するとし、 符号化データ信号を伝送するのに代えて、符号化ストリームを伝送するとすることで、[相違点2]は克服され、 本願発明に到達する。 (2)相違点の克服の容易性 (2.1)[相違点1の克服]の容易性 本願発明でいう、「ストリーム」とは、(パラレルで伝送される信号ではなく)“0か1”の1ビットがシリアル列で伝送される信号のことをいうものと解されることは前記「[3](3)エ」のとおりである。 《周知技術》 一般に、ディジタル信号を回線に送出するのに、(パラレルで伝送される信号ではなく)“0か1”の1ビットがシリアル列で伝送される信号としておいて(これを変調する等して)送出することは常であり、 また、テレビジョン信号で表わされる画像等の画像を符号化して伝送する静止画伝送装置においても、画像を符号化し、(パラレルで伝送される信号ではなく)“0か1”の1ビットがシリアル列で伝送される信号としておき、これを回線に送出して伝送することは周知技術のことにすぎない。 これには、例えば、下記周知例1?3等が参照される。 記(周知例) 周知例1:特開昭61-172493号公報 (請求項1,2頁左上欄等。第1図の3; 帯域圧縮機、並-直列変換器4) 周知例2:特公平4-7634号公報 (請求項1、2頁左欄下から6行?右欄5行等、第3図; DPCM42,P/S43)、 周知例3:特開昭57-150289号公報 (1頁左下欄下から2行?右上欄6行、2頁左下欄10行? 右下欄9行、第2図等) 《容易想到性》 引用発明の、符号化手段(符号化器4)で生成された「符号化データ信号」は、その後、回線22へ出力されるものであり、この点上記周知技術と同じであることに鑑みれば、 引用発明の、符号化データ信号を生成する符号化手段(符号化器4)において、(パラレルで伝送される信号ではなく)“0か1”の1ビットがシリアル列で伝送される信号にしておくこと、すなわち、本願発明の「符号化ストリーム」を生成するようにしておくことは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、上記[相違点1の克服]をすることは、周知技術に基づいて当業者が容易になし得ることである。 (2.2)[相違点2の克服]の容易性 ア 符号化データ信号→符号化ストリームの点 上記[相違点1の克服]をすることで、引用発明の符号化手段(符号化器4)は、符号化ストリームを生成する手段となるから、 上記[相違点1の克服]をするとき、前記符号化データ信号を伝送する伝送手段も、符号化ストリームを伝送する伝送手段とすることは、ごく自然なことにすぎない。 イ 符号化した「前記領域情報」→「前記領域情報」 刊行物1の前掲(K1)(特許請求の範囲)、及び前掲(K4)(問題点を解決するための手段)には、「伝送する画像の画面における水平方向および垂直方向の位置の情報並びに水平方向および垂直方向の大きさの情報を伝送する手段」と記載されており、 また、前掲(K7)(発明の効果)には、「送信する画像の位置情報と水平方向の大きさのデータ、垂直方向の大きさのデータを送り、受信側での画像データの書き込み位置を指定することにより、画面中の任意の一部分の画像を送ることが可能となる。」と記載されていて、 いずれも、本願発明でいう「領域情報」を伝送するとしている。 これは、「符号化された領域情報」を伝送する技術思想と捉えているのではなく、「領域情報」を伝送する技術思想とであると認識していることを示すものであることは明らかであり、 当業者であれば、引用発明の「符号化された前記領域情報」を伝送することに代えて、「前記領域情報」を伝送するとすることは、当業者が容易になし得ることである。 すなわち、引用発明の、符号化した「前記領域情報」を伝送する伝送手段を、「前記領域情報」を伝送する伝送手段とすることは、当業者が容易になし得ることである。 なお、この点に関し、上記[2]では、引用発明を、前掲(K6)から「(c)送信装置11の符号化器4は、これら(X,Y),LH,LVのデータを符号化して回線22へ送出する。」ものと認定したが、 上述したように、「領域情報」を伝送する技術思想と認識しているといえることからすれば、引用発明をそのように認定するのではなく、 引用発明を、前掲(K1)(K4)(K7)に基づいて、「伝送する画像の画面における水平方向および垂直方向の位置の情報並びに水平方向および垂直方向の大きさの情報を伝送する」{または「(c)送信装置11は、これら(X,Y),LH,LVのデータを回線22へ送出する。」}と認定することも可能であり、その場合、 D’の伝送手段が伝送する前記領域情報の情報が、 本願発明では、「前記領域情報」であるのに対して、 引用発明では符号化した「前記領域情報」である点 との相違点はもはや存在しなくなるものである。 ウ まとめ 以上のことから、上記[相違点2の克服]、すなわち、 引用発明の、符号化した「前記領域情報」と前記符号化データ信号とを伝送する伝送手段を、領域情報と前記符号化ストリームとを伝送する伝送手段とすること、 は、当業者が容易になし得ることである。 (2.3)まとめ 以上にように、[相違点1の克服]も[相違点2の克服]も当業者が容易になし得ることであるところ、これらを合わせて克服することも、当業者が容易になし得ることである。 (3)まとめ(相違点の判断) 本願発明は、刊行物1記載の発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 [6]本願発明の容易想到性についての追加の検討 本願発明の「画像データ」は、「静止画像データ」を含んでいうものと認められることは、前記([3](2))の通りであり、 上記[3]?[5]では、本願発明の「画像データ」が、「静止画像データ」である場合の発明について、本願発明は刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者容易想到であると判断したところであるが、 本願発明の「画像データ」が「動画像データ」である場合についても、本願発明は、刊行物記載発明及び周知技術に基づいて当業者容易想到であるといえるものであり、以下に、その理由を示す。 (1)本願発明(「画像データ」が「動画像データ」である場合) 「画像データ」が「動画像データ」である場合についても、前記[3]と同様に分説でき、「画像データ」が「動画像データ」に代わるほかは、前記[3](1)でした本願発明の分説と同じである。 (2)刊行物1に記載された発明(引用発明) 前記[2]で認定した引用発明と同じである。 (3)対比、一致点・相違点 本願発明と引用発明の対比については、「画像データ」が本願発明では「動画像データ」であるのに対して、引用発明では「静止画像データ」である点である点が、前記「[3]対比」と異なる他は同じであり、 本願発明と引用発明の相違点として、前記[4]の相違点(相違点1と2)に、「画像データ」が本願発明では「動画像データ」であるのに対して、引用発明では「静止画像データ」である点が追加される。 本願発明と引用発明との一致点・相違点は、次のとおりとなる。 ([一致点]は、前記[4]の一致点と同じであり、[相違点2]は前記[4]の相違点1と同じであり、[相違点3]は前記[4]の相違点2と同じであって、新たに、[相違点1]が追加する点のみ異なる。) 本願発明と引用発明は、 [一致点] A’画像データを符号化処理する符号化装置であって、 B’前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域と復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域とを一致させる領域情報を生成する領域情報生成手段と、 C’前記画像データを符号化処理して符号化データ信号を生成する符号化手段と、 D’前記符号化データ信号に対して復号処理が行われる際に、前記領域情報生成手段により生成された領域情報を利用して前記符号化領域と前記割り当て領域とを一致させて復号処理が行われるように、前記領域情報の情報と前記符号化データ信号とを伝送する伝送手段と A:を有することを特徴とする符号化装置。 である点で一致し、 「相違点] [相違点1] A’B’C’の「画像データ」が、 本願発明では「動画像データ」であるのに対して、 引用発明では、「静止画像データ」である点、 [相違点2](前記[4]の[相違点1]に同じ) C’の符号化手段が生成するとする符号化データ信号が、 本願発明では、「ストリーム」とするのに対して、 引用発明では、「ストリーム」とはしていない点 [相違点3](前記[4]の[相違点2]に同じ) D’の伝送手段が伝送するとする、符号化データ信号が、 本願発明では、「ストリーム」とするのに対して、 引用発明では、「ストリーム」とはしていない点 D’の伝送手段が伝送する前記領域情報の情報が、 本願発明では、「前記領域情報」であるのに対して、 引用発明では符号化した「前記領域情報」である点、 (4)相違点の判断(容易想到性の判断) (4.1)相違点の克服 [相違点1及び2の克服] 引用発明を、MPEG-1又は2の符号化技術を用いて動画像の伝送に適用すること、すなわち、 引用発明の、符号化器4・復号器5を、MPEG-1又は2の符号化器・復号器とし、「テレビジョン信号で表わされる画像を符号化して伝送する静止画像伝送装置」を、「テレビジョン信号で表わされる画像を符号化して伝送する動画像伝送装置」とすることで、上記[相違点1]は克服される。 また、MPEG-1や2では、符号化ストリームに符号化することから、同時に、[相違点2]も克服される。 すなわち、 A’画像データを符号化処理する符号化装置(テレビジョン信号で表わされる画像を符号化して伝送する静止画像伝送装置)は、 動画像データを符号化処理する符号化装置(テレビジョン信号で表わされる画像を符号化して伝送する動画像伝送装置)となり、 B’前記画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域と復号処理された画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域とを一致させる領域情報を生成する領域情報生成手段(位置指定器2)は、 前記動画像データの有効画像領域のうち符号化処理される領域を示す符号化領域と復号処理された動画像データを割り当てる領域を示す割り当て領域とを一致させる領域情報を生成する領域情報生成手段となり、 C’前記画像データを符号化処理して符号化データ信号を生成する符号化手段(符号化器4)は、 前記動画像データを符号化処理して符号化ストリームを生成する符号化手段となって、 上記[相違点1及び2]は克服され、 [相違点3の克服] 引用発明の、符号化した「前記領域情報」と前記符号化データ信号とを伝送する伝送手段を、前記領域情報と前記符号化ストリームとを伝送する伝送手段とすることで、[相違点3]は克服され、 本願発明に到達する。 (4.2)相違点の克服の容易性 ア [相違点1及び2の克服]の容易性 《周知技術》 ○一般に、本願出願前、 テレビジョン映像である動画像を符号化して伝送する技術、特に、当該技術の代表的な規格としてMPEG-1やMPEG-2(MPEG-2は、本願明細書に、従来技術としても、また、本願発明の符号化の実施形態としても記載されている)が存在し周知であることは、当業者の技術常識であって、 テレビジョン映像である動画像を符号化して伝送する技術、とりわけ、その代表的技術として、MPEG-1やMPEG-2は周知技術である。 {査定時の引用例2(特開平6-284414号公報)のほか、例えば、下記周知例4,5等が挙げられる。} ○また、MPEG-1やMPEG-2規格においては、 (i)動画像を符号化ストリームに符号化すること、 (ii)符号化ストリームの最上位層であるシーケンス(層)のシーケンスヘッダにおいて、画像のサイズ(水平及び垂直画素数)等の情報が記述でき伝送できるようになっていること、 (iii)符号化ストリームの最上位のシーケンス層等に、ユーザが任意に使用でき記述できるユーザデータ(領域)が準備され用意されていること、 は、周知かつ技術常識である。 これには、例えば、下記周知例4,5の特記したページ等が挙げられる。(MPEG-1については周知例5,MPEG-2については周知例4及び5) 記(周知例) 周知例4:中島,尾高,田原,「3-2 ビデオ圧縮」テレビジョン学会誌 画像情報工学と放送技術 特集MPEG,1995年4月,Vol.49 No.4,特に、p.435-p.443 周知例5:藤原洋監修、マルチメディア通信研究会編、「ポイント図解式最新MPEG教科書」,アスキー出版局,1995年6月1日第1版第4刷発行,特に、p.110?p.116,p.152?p.161 《容易想到性》 引用発明を認定した刊行物1の発行(昭和63年10月31)当時においては、テレビジョン映像である動画像をディジタル情報として符号化して伝送することは技術的に容易ではなかったものの、本願出願前においては、上記のように既に技術常識であり周知であったのであるから、 刊行物1に接した当業者であれば、「テレビジョン信号で表される画像を符号化して伝送する静止画像伝送装置」である刊行物1記載の引用発明の技術を、動画像伝送にも適用することに容易に想い至ると言うべきであり、 このとき、動画像の符号化伝送規格として代表的で周知であるMPEG-1や2規格を用いることをまず考えるものといえる。 そして、MPEG-1やMPEG-2規格における上記技術常識・周知事項(ii)(iii)を参酌すれば、引用発明の領域情報は、同規格を採用すれば、同規格のシーケンスヘッダやユーザデータ領域等を用いて簡単に伝送し得ることも、当業者が普通に認識することである。 そうすると、引用発明を、MPEG-1又はMPEG-2の符号化伝送技術を用いて動画像の伝送に適用すること、すなわち、 引用発明の、符号化器4・復号器5を、MPEG-第1又は2の符号化器・復号器とし、「テレビジョン信号で表わされる画像を符号化して伝送する静止画像伝送装置」を、「テレビジョン信号で表わされる画像を符号化して伝送する動画像伝送装置」とすることは、 技術常識・周知技術から当業者が容易に想到し得るというべきである。 そして、そのようにすれば、[相違点1][相違点2]は克服されるのであるから、上記[相違点1及び2の克服]は、技術常識・周知技術に基づいて当業者が容易になし得ることである。 イ [相違点3の克服]の容易性 イ-1 符号化データ信号→符号化ストリームの点 上記[相違点1及び2の克服]をすることで、引用発明の符号化手段(符号化器4)は、符号化ストリームを生成する手段となるから、 上記[相違点1及び2の克服]をするとき、前記符号化データ信号を伝送する伝送手段も、符号化ストリームを伝送する伝送手段とすることは、ごく自然なことに過ぎない。 イ-2 符号化した「前記領域情報」→「前記領域情報」 前記「[5](2.2)イ」と同様であり、 引用発明の、符号化した「前記領域情報」を伝送する伝送手段を、「前記領域情報」を伝送する伝送手段とすることは、当業者が容易になし得ることである。 ウ まとめ(相違点の克服の容易性) 以上にように、[相違点1及び2の克服]も[相違点3の克服]も当業者が容易になし得ることであるところ、これらを合わせて克服することも、当業者が容易になし得ることである。 (4.3)まとめ(相違点の判断) 本願発明は、「画像データ」が動画像データである場合についてみても、刊行物1記載の発明および技術常識・周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 【第4】むすび 以上、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び技術常識・周知技術基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-07-13 |
結審通知日 | 2010-07-14 |
審決日 | 2010-07-27 |
出願番号 | 特願2005-178888(P2005-178888) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂東 大五郎 |
特許庁審判長 |
乾 雅浩 |
特許庁審判官 |
奥村 元宏 小池 正彦 |
発明の名称 | 符号化装置、復号装置、符号化方法および復号方法 |
代理人 | 藤島 洋一郎 |