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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1223586
審判番号 不服2009-4914  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-05 
確定日 2010-09-17 
事件の表示 特願2002-542867「蛋白質のプロファイリング方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月23日国際公開、WO02/40990〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成13年11月14日(国内優先権主張日 平成12年11月15日,平成12年12月27日)を国際出願日とする出願であって,平成20年12月17日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成21年3月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。そして,平成22年4月13日付けで期間を指定して審尋がなされたが,当該期間内に請求人より回答書の提出はなされなかった。

第2 平成21年3月5日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正後の請求項1に記載された発明
本件補正は,特許請求の範囲を補正するものであって,そのうち請求項1についてする補正は,補正前の特許請求の範囲(平成20年3月17日付けで補正されたもの。以下,同様。)の
「【請求項1】
標的蛋白質に基づくプローブ手段を生物材料又は動物に適用することにより挙動が確認できた生物学的機能未知の観測分子に対する生物学的機能の実験的解析,及び,前記生物材料及び前記動物そのものの実験的解析を行うことなく,前記観測分子の挙動を生体分子ネットワーク情報を用いて解析することにより,該標的蛋白質の関連する生物学的機能及び/又は疾患を推定する方法。」
を,
「【請求項1】
標的蛋白質に基づくプローブ手段を生物材料又は動物に適用し,生物学的機能未知の観測分子の挙動を測定し,前記観測分子の挙動を生体分子と生体イベントとの関係の情報を含む生体分子ネットワーク情報を用いて解析することにより,該標的蛋白質の関連する生物学的機能及び/又は疾患を推定する方法。」
と補正するものである。

上記補正は,平成20年8月13日付け拒絶理由通知書の2頁下から3行?3頁1行において,「『生物学的機能の実験的解析,及び,前記生物材料及び前記動物そのものの実験的解析を行うことなく』と『標的蛋白質に基づくプローブ手段を生物材料又は動物に適用することにより挙動が確認』することの関係が不明である」と指摘されたことに対応して,明りょうでない記載である「挙動が確認できた生物学的機能未知の観測分子に対する生物学的機能の実験的解析,及び,前記生物材料及び前記動物そのものの実験的解析を行うことなく,」を削除し,「観測分子の挙動」が,「標的蛋白質に基づくプローブ手段を生物材料又は動物に適用し,生物学的機能未知の観測分子の挙動を測定」することによって得られることを明確にするとともに,補正前の発明特定事項である「生体分子ネットワーク情報」について,「生体分子と生体イベントとの関係の情報を含む生体分子ネットワーク情報」と限定したものである。
してみると,上記補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮および同第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当するものである。

そこで,補正後の請求項1に係る発明(以下,「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について,以下検討する。

2 独立特許要件
(1)特許法第36条第6項第2号の要件について
補正発明における「前記観測分子の挙動を生体分子と生体イベントとの関係の情報を含む生体分子ネットワーク情報を用いて解析することにより,該標的蛋白質の関連する生物学的機能及び/又は疾患を推定する」は,「生物学的機能未知の観測分子の挙動」を「生体分子と生体イベントとの関係の情報を含む生体分子ネットワーク情報を用いて解析することにより,該標的蛋白質の関連する生物学的機能及び/又は疾患を推定する」というものである。
これに対し,本願明細書(対応する国際公開第02/40990号。以下同様。)4頁3?8行に「この際,観測分子としては,生物学的機能が既に明らかで,生体分子ネットワーク情報に含まれる分子であることが望ましい。観測分子が生体分子ネットワーク情報に含まれる場合には,得られた実験データを生体分子ネットワーク情報における各観測分子の意味付けと時間的変動を関連づけて解析することにより,該標的蛋白質の関連する生物学的機能若しくは疾患を推定することができる。」と記載されているが,生物学的機能未知の観測分子については,同明細書4頁15?19行に「観測分子が生体分子ネットワーク情報に含まれない,或いは生体分子ネットワークを利用しない場合には,生体分子ネットワークを利用した場合に比して得られる情報は少ない」と記載され,同明細書6頁13?16行に「発現が大きく変動する上記蛋白質の1つが生体分子ネットワーク情報中のいずれかの分子と一致するまで上記工程を繰り返すことにより,標的蛋白質と生体分子ネットワーク情報上の分子との関係を推定する方法」と記載され,同明細書22頁15?16行に「生物学的機能が未知の蛋白質の機能を知るには,生物学的機能や疾患を既知の蛋白質と関連づけるしかない。」と記載されていることから,「生物学的機能未知の観測分子」については,機能が未知であるが故に,生体分子と生体イベントとの関係の情報を含む生体分子ネットワーク情報を直接利用することはできないことが明らかである。よって,生物学的機能未知の観測分子の挙動を測定しても「生体分子と生体イベントとの関係の情報を含む生体分子ネットワーク情報」を用いて解析することはできない。
以上のように,「生物学的機能未知の観測分子」の挙動は,「生体分子と生体イベントとの関係の情報を含む生体分子ネットワーク情報を用いて解析する」ことができないものであるにもかかわらず,特許請求の範囲には,「前記観測分子の挙動を生体分子と生体イベントとの関係の情報を含む生体分子ネットワーク情報を用いて解析する」と特定されており,補正発明は明確であるとはいえず,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから,特許出願に際して独立して特許を受けることができない。

(2)特許法第36条第6項第1号の要件について
補正発明は,標的蛋白質も観測分子も生物学的機能が未知である場合に,前記観測分子の挙動を生体分子と生体イベントとの関係の情報を含む生体分子ネットワーク情報を用いて解析することにより,該標的蛋白質の関連する生物学的機能及び/又は疾患を推定するものである。これに対し,本願明細書には,生体分子ネットワーク情報を用いて,生物学的機能未知の観測分子の挙動を解析することについて,記載も示唆もされていない。
してみると,補正発明は,本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえず,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから,特許出願に際して独立して特許を受けることができない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により,却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明
以上のとおり,本件補正は,却下されることとなったから,本願は,平成20年3月17日付けの手続補正(以下,「本件補正2」という。)によって補正された「蛋白質のプロファイリング方法」に関するものと認められる。

2 原査定の理由
原査定の拒絶の理由の概要は,以下のとおりである。
(1)理由1
本件補正2は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

請求項1,2,17の補正について
・・・
しかしながら,本願発明の明細書の詳細な説明中,「発明の開示」の項には,「生物学的機能解明のために定型的な簡単な実験に基づいた推定方法を提供する」,「該標的蛋白質群に対するプローブ手段(リガンド,アンチセンス,モノクロナール抗体等の投与,又は対応する遺伝子のノックアウト又はトランスジェニック操作等)を,生物材料又は動物に適用した際に引き起こされる該標的蛋白質群以外の分子群(観測分子)の挙動を測定し,解析し」の記載があることから,実際に実験を行い,測定し,解析するものであると認められる。本願明細書の詳細な説明中には,「実験的解析を行うことなく」標的蛋白質の関連する生物的機能等を推定することについては記載されていない。
よって,上記補正は新規事項を追加するものである。

(2)理由2
この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

請求項1,2,17について
・・・
「生物学的機能未知の観測分子」は「標的蛋白質に基づくプローブ手段を生物材料又は動物に適用することにより挙動が確認できた」ものである。そうすると「生物学的機能の実験的解析,及び,前記生物材料及び前記動物そのものの実験的解析」はすでに行われているものであると認められる。「生物学的機能の実験的解析,及び,前記生物材料及び前記動物そのものの実験的解析を行うことなく」と「標的蛋白質に基づくプローブ手段を生物材料又は動物に適用することにより挙動が確認」することの関係が不明であるため,発明を特定するための事項に矛盾が生じ,発明が不明確となっている。
請求項2及び17についても同様である。

3.当審の判断
(1)理由1について
本件補正2により補正された請求項2(以下,「補正2による請求項2」という。)は,「前記生物材料及び前記動物そのものの実験的解析を行うことなく,2以上の観測分子の挙動を測定」するものである。
これに対し,本願の願書に最初に添付された明細書(以下,「当初明細書」という。)の2頁19?20行には「生物学的機能解明のために定型的な簡単な実験に基づいた推定方法を提供する」と記載され,当初明細書3頁1?5行には「該標的蛋白質群に対するプローブ手段(リガンド,アンチセンス,モノクロナール抗体等の投与,又は対応する遺伝子のノックアウト又はトランスジェニック操作等)を,生物材料又は動物に適用した際に引き起こされる該標的蛋白質群以外の分子群(観測分子)の挙動を測定し」と記載されているから,当初明細書には,生物材料又は動物そのものの実験的解析を行うことにより,観測分子の挙動を測定することが記載されているといえる。他方,当初明細書には,生物材料又は動物に対する実験的解析以外の方法で観測分子の挙動を測定すること,すなわち,生物材料又は動物に対する実験的解析を行うことなく観測分子の挙動を測定することについては何ら記載されていない。また,実験的解析を行うことなく観測分子の挙動を測定することが,当初明細書から自明な事項であるともいえない。
してみると,本件補正2は,当初明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものではないというべきであり,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(2)理由2について
「標的蛋白質に基づくプローブ手段を生物材料又は動物に適用」することは,実験的に行われる事項であるといえる。そうすると,補正2による請求項2の「標的蛋白質に基づくプローブ手段を生物材料又は動物に適用し」,「2以上の観測分子の挙動を測定」することは,前記生物材料及び前記動物そのものの実験的解析を行うことであるといえるから,補正2による請求項2の「前記生物材料及び前記動物そのものの実験的解析を行うことなく」とは明らかに矛盾する。
以上のことから,補正2による請求項2は,矛盾した事項を含むものであるから,発明が明確であるとはいえず,本願の特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

4 むすび
したがって,本件補正2は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず,また,本願の特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-09 
結審通知日 2010-07-13 
審決日 2010-08-06 
出願番号 特願2002-542867(P2002-542867)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 537- Z (G01N)
P 1 8・ 561- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白形 由美子  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 郡山 順
石川 太郎
発明の名称 蛋白質のプロファイリング方法  

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