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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65B 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65B |
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管理番号 | 1223712 |
審判番号 | 不服2008-21580 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-08-22 |
確定日 | 2010-09-16 |
事件の表示 | 特願2007- 9982「包装機保守管理装置及び包装機保守管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 7月31日出願公開、特開2008-174277〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は平成19年1月19日の出願であって,平成20年7月16日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年8月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同年9月19日付けで特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされた。その後,当審において,平成22年4月23日付けで上記手続補正の却下の決定を行うとともに拒絶理由を通知したところ,平成22年6月23日付けで特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされるとともに意見書が提出された。 第2.当審で通知した拒絶理由の概要 平成22年4月23日付けで通知した拒絶理由の概要は,以下のとおりである。 1.記載要件 下記の点(イ)及び(ロ)で,特許請求の範囲の記載は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,また,明細書の記載は,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 (イ)請求項1,請求項2,請求項5及び請求項6に「前記押圧面間の複数の面間距離の値同士を乗ずる」と記載されているが,そのような演算をする技術的意義は,明細書に記載されておらず,また自明な事項でもない。したがって,該構成要件を備えた各請求項に係る発明がいかなる技術思想であるのか把握することができない。 (ロ)請求項1,請求項2,請求項5及び請求項6に「前記押圧面間の複数の面間距離の値同士を加える」と記載されているが,明細書には,その技術的意義が合理的に記載されていない。すなわち,段落【0042】には「図6における電圧値の波形において矢示m1?m5及びn1?n5で示される底部の値は,袋詰製品Hのエンドシール部ESを形成する度に大きく変動し,袋詰製品ごとの計測値が安定していない。また,図6の(a)と(b)とを比較すると,ある任意の袋詰製品のエンドシール部ESを形成する場合において,一方のセンサーの出力値が小さく,他方のセンサーの出力値が大きくなっている(例えば,図6(a)のm3及び(b)のn3参照)。このような波形が生じる場合,押圧部71を構成する上部押圧部材711や下部押圧部材712にガタツキが発生していると推測することができる。」と記載されており,押圧部71のガタツキが原因となって図6に示される計測結果が得られる場合は,一方のセンサーの出力値が正常時よりも小さく,他方のセンサーの出力値が正常時よりも大きいのであるから,二つの出力値を加えると,むしろ正常時に近い値となってしまう。一方,段落【0034】には「シール状況値は,各センサー部111,112により計測した2つの面間距離D1,D2を加えて求めているため,上部押圧部材711と下部押圧部材712との押圧面間の面間距離の変化を強調することができる。この結果,エンドシール機構7における押圧部71に機械的なガタツキが発生した場合や,上部押圧部材711を上下方向に駆動させる駆動装置に損傷が発生した場合,あるいは,いわゆるフィルム蛇行が発生した場合等における押圧面間の面間距離の変化を精度よく検出することが可能になる。」と記載されているが,押圧部71に機械的なガタツキが発生した場合は,上記のとおり,2つの面間距離D1,D2を加えたのでは,押圧面間の面間距離の変化は消滅する。したがって,段落【0034】の記載は,その技術的な意味が不明であり,各請求項に係る発明の構成要件である「押圧面間の複数の面間距離の値同士を加える」技術的意義は,不明というべきである。 2.進歩性 本願の請求項1?6に係る発明は,その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物a?dに記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 a.特開平7-96922号公報 b.特開2005-88947号公報 c.特開2003-112714号公報 d.特開2005-33559号公報 第3.平成22年6月23日付け手続補正及び意見書 1.手続補正の概要 平成22年6月23日付けでなされた手続補正には,特許請求の範囲を次のとおりに補正する事項が含まれる。 「【請求項1】センターシール部が形成されており,内部に被包装物が収容された包装袋を互いに対向する押圧面により挟んで押圧加熱することにより袋詰製品のエンドシール部を形成する包装機のメンテナンス時期を管理する包装機保守管理装置において,前記押圧面間の面間距離を複数箇所で計測する計測手段と,前記押圧面間の複数の面間距離の値同士を加えることにより,あるいは,前記押圧面間の複数の面間距離の値同士を乗ずることによりシール状況値を算出すると共に,複数の袋詰製品のシール部に対して算出される前記シール状況値についての標準偏差を前記包装機の駆動状況値として算出する駆動状況値算出手段と,前記駆動状況値と予め設定されるしきい値とを比較して前記包装機のメンテナンスの必要性を判定する判定手段とを備える包装機保守管理装置。 【請求項2】センターシール部が形成されており,内部に被包装物が収容された包装袋を互いに対向する押圧面により挟んで押圧加熱することにより袋詰製品のエンドシール部を形成する包装機のメンテナンス時期を管理する包装機保守管理装置において,前記押圧面間の面間距離を複数箇所で計測する計測手段と,前記押圧面間の複数の面間距離の値同士を加えることにより,あるいは,前記押圧面間の複数の面間距離の値同士を乗ずることによりシール状況値を算出すると共に,複数の袋詰製品のシール部に対して算出される前記シール状況値についての分散を前記包装機の駆動状況値として算出する駆動状況値算出手段と,前記駆動状況値と予め設定されるしきい値とを比較して前記包装機のメンテナンスの必要性を判定する判定手段とを備える包装機保守管理装置。 【請求項3】前記計測手段は,前記シール部の両端部近傍における前記押圧面間の面間距離をそれぞれ計測する請求項1または2に記載の包装機保守管理装置。 【請求項4】前記計測手段により計測した前記押圧面間における各面間距離の経時変化を表示するように構成されている請求項1から3のいずれかに記載の包装機保守管理装置。 【請求項5】センターシール部が形成されており,内部に被包装物が収容された包装袋を互いに対向する押圧面により挟んで押圧加熱することにより袋詰製品のエンドシール部を形成する包装機のメンテナンス時期を管理する包装機保守管理方法において,前記押圧面間の面間距離を複数箇所で計測する計測ステップと,前記押圧面間の複数の面間距離の値同士を加えることにより,あるいは,前記押圧面間の複数の面間距離の値同士を乗ずることによりシール状況値を算出すると共に,複数の袋詰製品のシール部に対して算出される前記シール状況値についての標準偏差を前記包装機の駆動状況値として算出する駆動状況値算出ステップと,前記駆動状況値と予め設定されるしきい値とを比較して前記包装機のメンテナンスの必要性を判定する判定ステップとを備える包装機保守管理方法。 【請求項6】センターシール部が形成されており,内部に被包装物が収容された包装袋を互いに対向する押圧面により挟んで押圧加熱することにより袋詰製品のエンドシール部を形成する包装機のメンテナンス時期を管理する包装機保守管理方法において,前記押圧面間の面間距離を複数箇所で計測する計測ステップと,前記押圧面間の複数の面間距離の値同士を加えることにより,あるいは,前記押圧面間の複数の面間距離の値同士を乗ずることによりシール状況値を算出すると共に,複数の袋詰製品のシール部に対して算出される前記シール状況値についての分散を前記包装機の駆動状況値として算出する駆動状況値算出ステップと,前記駆動状況値と予め設定されるしきい値とを比較して前記包装機のメンテナンスの必要性を判定する判定ステップとを備える包装機保守管理方法。」 上記補正後の請求項1ないし請求項6に係る発明を,以下,「本願発明1」ないし「本願発明6」という。 2.意見書の概要 請求人は,平成22年6月23日付け意見書において,記載要件に関する拒絶理由に対して次のように反論している。 (1)拒絶理由通知の(ロ)に対して 『本願の当初明細書の段落[0042]には,「このような波形(一方のセンサーの出力値が小さく,他方のセンサーの出力値が大きくなるような形状)が生じる場合,押圧部71を構成する上部押圧部材711や下部押圧部材712にガタツキが発生していると推測することができる。」としか記載されておらず,何もガタツキが発生している場合には,全てこのような波形になるとは記載されていない。本願の当初明細書の段落[0042]では,波形をモニタリングすることで,押圧部71のガタツキを発見する構成であるので(段落[0040]を参照),一番ガタツキを顕著に発見できるこの波形を,ガタツキの例として例示しているに過ぎない。 また,実際,ガタツキが発生している図6の波形と,メンテナンスされた図7の波形とを比較すると,ガタツキが発生している図6では,矢示m3(n3)やm4(n4)のように,一方のセンサーの出力値が正常値よりも小さく,他方のセンサーの出力値が正常値よりも大きくなる場合もあれば,矢示m1(n1)やm2(n2),m5(n5)のように,一方のセンサーの出力値が正常値に近く,他方のセンサーの出力値が正常値よりも大きくなる場合も存在している。そうすると,この場合,1つのセンサーによる,1箇所における押圧面間の面間距離の検出であれば,押圧面間の面間距離の経時変化について,例えば,図6(a)のような波形が検出されれば,各包装袋ごとの押圧面間の面間距離がほとんど変化しないために,押圧部材のガタツキの発生を検知することが困難である。 これに対し,本願発明のように,複数(2つ)のセンサーにより,複数箇所(2箇所)で押圧面間の面間距離を計測し,この計測した各面間距離を加えることで,押圧部材のガタツキを検知するように構成すれば,一方のセンサーによる押圧面間の面間距離の経時変化が,図6(a)のような波形で検出されても,他方のセンサーにより計測した押圧面間の面間距離を加えた,押圧面間の面間距離の和については,各包装袋ごとにその変化が明確に現れるので,押圧部材のガタツキの発生を容易に検知することができるのである。 このように,本願発明では,上記した「押圧面間の複数の面間距離の値同士を加える」という構成要件を採用することで,押圧部材(上部および下部)の押圧面間の面間距離の変化状況を精度よく検出することができ,その結果,押圧部材のガタツキを容易にかつ精度よく把握可能となっている。』 (2)拒絶理由通知の(イ)に対して 『複数の面間距離を乗ずる場合も,上記した複数の面間距離を加算する場合と同じく,あるいは,それ以上に,各包装袋ごとのシール状況値(押圧面間の面間距離)の変化を明確に現すことが可能であることは,当業者であれば容易に想像がつくと思われる。 そうすると,「押圧面間の複数の面間距離の値同士を乗ずる」という構成要件を採用することによっても,上部押圧部材と下部押圧部材との押圧面間の面間距離の変化状況を精度よく検出することができ,その結果,押圧部材のガタツキを容易にかつ精度よく把握可能であることは,明細書の記載から自明である。』 第4.当審の判断 1.記載要件について 本願発明1ないし本願発明6は,「押圧面間の複数の面間距離の値同士を加えることにより,あるいは,押圧面間の複数の面間距離の値同士を乗ずることによりシール状況値を算出する」ものであるが,以下に述べるように,本願明細書には,「押圧面間の複数の面間距離の値同士を加える」ことの技術的意義が合理的に記載されておらず,また,「押圧面間の複数の面間距離の値同士を乗ずる」ことの技術的意義が記載されていない。 本願明細書の段落【0034】に「シール状況値は,各センサー部111,112により計測した2つの面間距離D1,D2を加えて求めているため,上部押圧部材711と下部押圧部材712との押圧面間の面間距離の変化を強調することができる。」と記載されているが,2つの面間距離を加えると,何故,押圧面間の面間距離の変化を強調することができるのか,その理由は明らかでない。同段落には,上記記載に続いて,「この結果,エンドシール機構7における押圧部71に機械的なガタツキが発生した場合や,上部押圧部材711を上下方向に駆動させる駆動装置に損傷が発生した場合,あるいは,いわゆるフィルム蛇行が発生した場合等における押圧面間の面間距離の変化を精度よく検出することが可能になる。」と記載されており,2つの面間距離D1,D2を加えると,エンドシール機構7における押圧部71に機械的なガタツキが発生した場合などを精度よく検出できることが理解される。その一方で,段落【0042】には「図6における電圧値の波形において矢示m1?m5及びn1?n5で示される底部の値は,袋詰製品Hのエンドシール部ESを形成する度に大きく変動し,袋詰製品ごとの計測値が安定していない。また,図6の(a)と(b)とを比較すると,ある任意の袋詰製品のエンドシール部ESを形成する場合において,一方のセンサーの出力値が小さく,他方のセンサーの出力値が大きくなっている(例えば,図6(a)のm3及び(b)のn3参照)。このような波形が生じる場合,押圧部71を構成する上部押圧部材711や下部押圧部材712にガタツキが発生していると推測することができる。」と記載されており,押圧部にガタツキが発生していることを判定するのは,一方のセンサーの出力値が小さく,他方のセンサーの出力値が大きい場合であることが理解されるから,二つのセンサーの出力値を加えたのでは,かえって正常値に近くなり,ガタツキを判定し難くなってしまう。段落【0042】の記載内容は,段落【0034】の記載内容と矛盾する。 請求人は,「ガタツキが発生している図6の波形と,メンテナンスされた図7の波形とを比較すると,ガタツキが発生している図6では,矢示m3(n3)やm4(n4)のように,一方のセンサーの出力値が正常値よりも小さく,他方のセンサーの出力値が正常値よりも大きくなる場合もあれば,矢示m1(n1)やm2(n2),m5(n5)のように,一方のセンサーの出力値が正常値に近く,他方のセンサーの出力値が正常値よりも大きくなる場合も存在している。そうすると,この場合,1つのセンサーによる,1箇所における押圧面間の面間距離の検出であれば,押圧面間の面間距離の経時変化について,例えば,図6(a)のような波形が検出されれば,各包装袋ごとの押圧面間の面間距離がほとんど変化しないために,押圧部材のガタツキの発生を検知することが困難である。」と主張する。しかし,図7によれば正常値は1.000の近傍の値であると考えられるところ,図6において,m1,m2,m5におけるセンサーの出力値は正常値よりも小さく,m1,m2,m5におけるセンサーの出力値とn1,n2,n5におけるセンサーの出力値に着目したとしても,一方のセンサーの出力値が正常値よりも小さく,他方のセンサーの出力値が正常値よりも大きいことに変わりはない。請求人の主張は,2箇所に設けたセンサーの出力値のうち一方だけが正常値から外れるときもメンテナンスが必要であると判定することを前提とした上で(ただし,そのような前提は本願明細書に記載されていない),センサーが2箇所に設けられる場合はセンサーが1箇所にしか設けられない場合に比べて有利であることを意図したものとも受け取れるが,それは,押圧面間の面間距離を複数箇所で計測することの技術的意義に止まるものであって,「押圧面間の複数の面間距離の値同士を加える」ことの技術的意義ではない。 以上のことから,本願発明1ないし本願発明6における「押圧面間の複数の面間距離の値同士を加える」ことの技術的意義は明らかではなく,「押圧面間の複数の面間距離の値同士を加える」ことにより算出されるシール状況値に基づいてメンテナンスの必要性を判定する意味は不明というべきであるから,本願発明1ないし本願発明6は,明確ではなく,また,明細書(発明の詳細な説明)は,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 次に,「押圧面間の複数の面間距離の値同士を乗ずる」ことの技術的意義については,本願明細書に何らの記載もなく,また,それが自明であるとする理由も見いだせない。したがって,この点からみても,本願発明1ないし本願発明6は,明確ではなく,また,明細書(発明の詳細な説明)は,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 2.進歩性について (1)刊行物記載事項 当審で通知した拒絶理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である,特開平7-96922号公報(以下,「引用例」という)には,図面とともに,次の事項が記載されている。 イ)「【0002】 【従来の技術】従来,牛乳,清涼飲料等の液体食品を収容する包装容器を製造する場合,可撓(かとう)性の積層材料から成るウェブ状の包材を充填(じゅうてん)機に供給し,該充填機において前記包材をチューブ状とし,該チューブ状の包材内に液体食品を充填しながら各包装容器ごとに切断して,ブリック状の包装容器を形成するようにしている。」 ロ)「【0004】図2は従来のシール装置の概略図である。図の(a)は成形ユニットの概略図,(b)は係合部材の係合状態図,(c)は係合部材の解放状態図である。図において,11は可撓性の積層材料から成る包材であり,ウェブ状のものが縦方向にシールされてチューブ状にされる。前記包材11は例えば,包装容器を形成した時に内側から順にシーラント層としてのポリエチレン層,接着剤層,アルミ箔(はく)層,紙及びポリエチレン層が配列されるように積層される。 【0005】前記包材11は連続的に下方に搬送され,所定の間隔ごとに二つの密封・切断ユニット14,15によって挟持され横方向にシールされて帯状のシール部分Sが形成される。その間,包材11内には上方から液体食品12が充填される。その後前記シール部分Sが切断され,一定量の液体食品12を収容する矩形容器23が形成される。そのため,前記密封・切断ユニット14,15はいずれもカウンタジョー14a,15a及びヒートシールジョー14b,15bを有する。 【0006】そして,前記カウンタジョー14a,15aの先端にはカウンタバー18が,ヒートシールジョー14b,15bの先端にはシールバーとしてのインダクタ19が設けられ,前記カウンタジョー14a,15a及びヒートシールジョー14b,15bを前進させ,包材11を両側から挟持してシーラント層同士を互いに接触させて横方向にシールする。」 ハ)「【0012】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら,前記従来のシール装置においては,カウンタバー18と包材11の間に,又はインダクタ19と包材11の間に異物が進入した場合や,シール装置の要素,例えば,カウンタバー18,インダクタ19,シリンダ22,27,係合フック25,26等に不良や不具合などが生じた場合に,シール不良が発生することがあるが,該シール不良をリアルタイムで検出することができない。 【0013】本発明は,前記従来のシール装置の問題点を解決して,異物の進入やシール装置の要素の不良や不具合などによって発生するシール不良をリアルタイムで検出することができるシール状態監視装置を提供することを目的とする。」 ニ)「【0021】また,30はカウンタジョー14a,15aの先端に配設された鋼製のカウンタバー,19はヒートシールジョー14b,15bの先端に前記カウンタバー30と対向して配設されたシールバーとしてのインダクタである。」 ホ)「【0024】前記電源回路34は・・・電圧値を制御する。また,前記カウンタバー30の表面に面状圧力センサ38が配設される。該面状圧力センサ38は,シール部分Sに対応した検出領域Aにおいて包材11に加わる押圧力を検出する。しかも,面状圧力センサ38は,前記検出領域Aの微小な検出点の座標(x,y)ごとの押圧力P(x,y)を独立的に検出する。 【0025】この場合,検出された押圧力P(x,y)のデータは前記コントローラ36に送信される。該コントローラ36には,良好なシール状態が得られる場合の押圧力P(x,y)に対応させてあらかじめ設定されたマスターデータがマスターパターンとして記憶されていて,受信した押圧力P(x,y)のデータと前記マスターデータとを比較する。そして,両者間の相違が著しい場合にアラームを鳴らしたり,シール装置を停止させたりする。なお,前記押圧力P(x,y)のデータのパターン及びマスターパターンは,常にディスプレイ39に表示され,モニターすることができる。」 ヘ)「【0027】図4は本発明の実施例におけるシール状態監視装置のマスターパターンを示す図,図5は本発明の実施例におけるシール状態監視装置の第1の表示例を示す図,図6は本発明の実施例におけるシール状態監視装置の第2の表示例を示す図である。図に示すように,ディスプレイ39(図1)においては,押圧力P(x,y)が検出点の座標(x,y)ごとに三次元で表示される。図4は包材11に加えられる押圧力P(x,y)が一様なマスターパターンを示す。また,図5は前記カウンタバー30とインダクタ19の間に異物が進入した場合の例を示す。この場合,異物が存在する領域Bの座標を(x,y1 )とすると押圧力P(x,y1 )が高くなり,隣接する領域Cの座標を(x,y2 )とすると押圧力P(x,y2)が低くなる。 【0028】さらに,図6はシール装置の各部が経年変化によって摩耗し,カウンタバー30又はインダクタ19が平行度を失った場合の例を示す。」 上記各記載事項及び図面の記載によれば,引用例には,次の発明が記載されているといえる(以下,「引用発明」という)。 「縦方向にシールされたチューブ状の包材11を下方に搬送し,所定の間隔ごとに二つの密封切断ユニット14,15によって包材11を挟持し横方向にシールするとともに,包材11内に上方から液体食品12を充填し,その後,シール部分を切断して矩形容器23を形成する充填機におけるシール状態監視装置であって,密封切断ユニット14,15は,カウンタバー30を先端に設けたカウンタジョー14a,15a及びカウンタバー30との間で包材11を挟持するインダクタ19を先端に設けたヒートシールジョー14b,15bを備え,カウンタバー30の表面に面状圧力センサ38を設けて,シール部分に対応した領域において包材11に加わる押圧力Pを複数の座標点(x,y)ごとに検出し,検出した押圧力P(x,y)を良好なシール状態が得られるときのマスターパターンと比較して,両者の相違が著しい場合にアラームを鳴らしたり,シール装置を停止させたりするもので,押圧力P(x,y)のパターンがディスプレイに表示され,カウンタバー30とインダクタ19の間に異物が侵入した場合と,シール装置の各部が経年変化によって摩耗してカウンタバー30とインダクタ19の平行度が失われた場合とで表示されるパターンが異なる,シール状態監視装置。」 (2)対比・判断 本願発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「縦方向にシール」,「チューブ状の包材11」,「横方向にシール」及び「充填機」は,それぞれ本願発明1の「センターシール」,「包装袋」,「エンドシール」及び「包装機」に相当する。 引用発明の密封切断ユニット14,15は,カウンタバー30を先端に設けたカウンタジョー14a,15a及びカウンタバー30との間で包材11を挟持するインダクタ19を先端に設けたヒートシールジョー14b,15bを備えるものであり,また,引用発明は,少なくとも,液体食品12を充填した後の包材11の搬送方向下流側をエンドシールするものといえるから,本願発明1における「内部に被包装物が収容された包装袋を互いに対向する押圧面により挟んで押圧加熱することにより袋詰製品のエンドシール部を形成する」との要件を備える。 引用発明は,シール装置の各部が経年変化によって摩耗してカウンタバー30とインダクタ19の平行度が失われたことを検出することができるものであるから,シール装置のメンテナンス時期を管理することができるものといえる。 したがって,本願発明1と引用発明は,本願発明1の表記にしたがえば, 「センターシール部が形成されており,内部に被包装物が収容された包装袋を互いに対向する押圧面により挟んで押圧加熱することにより袋詰製品のエンドシール部を形成する包装機のメンテナンス時期を管理する包装機保守管理装置。」の点で実質的に一致し,次の点で相違する。 [相違点] 本願発明1は,押圧面間の面間距離を複数箇所で計測する計測手段と,前記押圧面間の複数の面間距離の値同士を加えることにより,あるいは,前記押圧面間の複数の面間距離の値同士を乗ずることによりシール状況値を算出すると共に,複数の袋詰製品のシール部に対して算出される前記シール状況値についての標準偏差を包装機の駆動状況値として算出する駆動状況値算出手段と,前記駆動状況値と予め設定されるしきい値とを比較して包装機のメンテナンスの必要性を判定する判定手段とを備えるのに対して,引用発明は,包装機のメンテナンスの必要性を,押圧面間の圧力に基づいて判定することができるものであって,押圧面間の距離に基づいて判定するものではなく,上記のような各手段を備えない点。 上記相違点について検討する。包装袋のヒートシール部におけるシール不良を検査するために,ヒートシーラーの変位を検出することは,当審で通知した拒絶理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である,特開2005-88947号公報や特開2003-112714号公報に示されるように,従来からよく知られている。また,各種機械の駆動機構について,経年変化による故障の発生を早期に判断することを含め,故障や動作不良を診断することを目的として,駆動機構の動作状態信号を検出してその標準偏差を算出し,これを正常範囲を表す標準偏差と比較することは,同じく当審で通知した拒絶理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である,特開2005-33559号公報に示されるように,従来からよく知られている。そうしてみると,シール装置のメンテナンス時期を管理する具体的な方法として,押圧面間の距離を計測して,その標準偏差を算出し,これを予め設定されるしきい値と比較することは,これらの周知技術を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。また,引用発明では,押圧面間の圧力を複数箇所で計測しているのであるから,押圧面間の距離を複数箇所で計測することも,当業者が容易に想到し得たことである。本願発明1は,複数箇所で計測した押圧面間の距離を加えたり乗じたりするものであるが,その技術的意義は不明であるから,この点に格別の創意工夫を要したということはできない。以上のことから,上記相違点は,周知技術を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たというべきである。 したがって,本願発明1は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第5.むすび 以上のとおりであるから,本願は,特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。また,少なくとも本願発明1は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-07-20 |
結審通知日 | 2010-07-21 |
審決日 | 2010-08-03 |
出願番号 | 特願2007-9982(P2007-9982) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(B65B)
P 1 8・ 536- WZ (B65B) P 1 8・ 121- WZ (B65B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 武内 大志 |
特許庁審判長 |
千馬 隆之 |
特許庁審判官 |
谷治 和文 栗林 敏彦 |
発明の名称 | 包装機保守管理装置及び包装機保守管理方法 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |