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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C03C
管理番号 1224068
審判番号 不服2008-1742  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-22 
確定日 2010-09-21 
事件の表示 平成7年特許願第353571号「ソーラリゼーションのない光学ガラス」拒絶査定不服審判事件〔平成9年7月22日出願公開,特開平9-188540〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成7年12月29日の出願であって,平成18年4月25日付けで拒絶理由が通知され(発送日は同年5月23日),同年7月13日付けで意見書と明細書の記載に係る手続補正書が提出され,平成19年12月18日付けで拒絶査定が通知され(発送日は同年同月25日),平成20年1月22日付けで拒絶査定不服審判が請求され,同年3月28日付けで上記審判に係る請求書の補正書の提出がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1?3に係る発明は,平成18年7月13日付け手続補正書により補正された本願明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。

「【請求項1】 P_(2)O_(5)-Nb_(2)O_(5)系光学ガラスにおいて,重量で,MoO_(3)の含有量が30ppm以下であることを特徴とする光学ガラス。」

3.引用例の記載事項
(1)本願出願前に頒布された刊行物である,特開平6-345481号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1,以下,「引用例」という。)には,以下の事項が記載されている。
(ア)「つぎに,本発明の実施例をガラス組成,ガラスの屈折率(Nd),アッベ数(νd),熱処理温度およびその保持時間,熱処理前後の70%分光透過率を与える波長(T_(70)(nm))および従来の光学ガラスの比較組成例(No.AおよびNo.B)と共に表1に示す。ここで,T_(70)は両面研磨した厚さ10mmのガラス試料について測定した結果を示したものである。表1から明らかなように,熱処理することにより,いずれも透過波長(T_(70))が短波長側へシフトしており,着色が少なく,光線透過性が一段と優れており,ガラスの熱処理前にみられる紫色の着色がなく,光学ガラスとして好適である。また,従来の比較例に含有している有害成分を含まない環境汚染問題を改善したガラスである。さらに,屈折率が1.8以上のガラスでは,上記改善効果が顕著である。」(段落【0009】)
(イ)【表1】の「実施例 No14」には,「単位;重量%」,「P_(2)O_(5) 25」,「TiO_(2) 11.995」,「SiO_(2) 1.5」,「B_(2)O_(3) 1.5」,「Nb_(2)O_(5) 40」,「Na_(2)O 10」,「Sb_(2)O_(3) 0.005」,「Ta_(2)O_(5) 10」と記載されている。(段落【0010】)
(ウ)【表1】の「実施例 No7」には,「単位;重量%」,「P_(2)O_(5) 22.5」,「TiO_(2) 10」,「B_(2)O_(3) 2.5」,「Nb_(2)O_(5) 54.99」,「K_(2)O 10」,「Sb_(2)O_(3) 0.01」と記載されている。(段落【0010】)
(エ)「本発明の上記実施例のガラスは,いずれも炭酸塩,硝酸塩,燐酸塩酸化物および弗化物等の通常の光学ガラス原料を用いて秤量,混合し,これを石英坩堝または白金坩堝等を用いて,約1000?1300℃で約2?10時間で溶融し,脱泡後,攪拌により均質化した後,金型に鋳込み徐冷する。」(段落【0011】)

4.対比・判断
引用例の記載事項(イ)には,「P_(2)O_(5)25重量%,TiO_(2)11.995重量%,SiO_(2)1.5重量%,B_(2)O_(3)1.5重量%,Nb_(2)O_(5)40重量%,Na_(2)O10重量%,Sb_(2)O_(3)0.005重量%,Ta_(2)O_(5)10重量%」の組成が記載されているといえ,当該組成は同記載事項(ア)によれば,「光学ガラス」の「ガラス組成」であるといえる。
これら引用例の記載事項(ア),(イ)の記載を,本願発明の記載振りに則して整理すると,引用例には,
「P_(2)O_(5)25重量%,TiO_(2)11.995重量%,SiO_(2)1.5重量%,B_(2)O_(3)1.5重量%,Nb_(2)O_(5)40重量%,Na_(2)O10重量%,Sb_(2)O_(3)0.005重量%,Ta_(2)O_(5)10重量%のガラス組成の光学ガラス。」の発明(以下,「引用例発明」という。)が記載されているといえる。

そこで,本願発明と引用例発明を対比すると,引用例発明の「P_(2)O_(5)25重量%,TiO_(2)11.995重量%,SiO_(2)1.5重量%,B_(2)O_(3)1.5重量%,Nb_(2)O_(5)40重量%,Na_(2)O10重量%,Sb_(2)O_(3)0.005重量%,Ta_(2)O_(5)10重量%のガラス組成の光学ガラス」は,その組成からみてP_(2)O_(5)-Nb_(2)O_(5)系光学ガラスといえることは明らかであるから,両者は「P_(2)O_(5)-Nb_(2)O_(5)系光学ガラス」である点で一致する。
そして,本願発明は,「重量で,MoO_(3)の含有量が30ppm以下である」と特定がなされているのに対し,引用例発明には,そのような特定がない点で,一応相違している(以下,「一応の相違点」という。)。

上記一応の相違点について検討する。
引用例には,引用例発明に関し,MoO_(3)を添加するとの記載や示唆は全くみられない。
そして,引用例発明において,ガラス組成は重量%で小数点以下第三位の精度で表されるものであって,その和は100.000重量%(=25+11.995+1.5+1.5+40+10+0.005+10)であることに照らせば,MoO_(3)が添加されているとしても,重量%で小数点以下第三位で0となる量,すなわち,0.001重量%(ppm単位に換算すると10ppm)未満であることは明らかである。
以上のことを踏まえると,本願発明と引用例発明が,上記一応の相違点において実質的に相違するということはできず,本願発明と引用例発明は同一である。

5.請求人の主張
請求人は,平成20年3月28日付けの審判請求書の補正書において,以下の主張をしている。
(主張1)「確かに引用文献1?4にはP_(2)O_(5)およびNb_(2)O_(5)を含有する多種多様の光学ガラスが記載されており,その中には不純物として含有されMoO_(3)の含有量が30ppmを超えるものもあるであろうし,30ppm以下のものも存在すると思われる。・・・そしてこの引用文献1?4に開示されたとみなされる光学ガラスは,MoO_(3)含有量が30ppm以下の狭い範囲に限定された本願請求項1記載の発明に対して上位概念の発明ということができる。
・・・・・・
また,引用文献1には不純物として含まれるMoO_(3)の含有量を30ppm以下に抑えることによりソーラリゼーションを少なくすることができることについてなんらの記載もない。したがって,本願発明の効果は引用文献1の発明の効果とは異質の顕著な効果である。したがって本願発明は引用文献1の発明に対して選択発明の地位に立つものであり,新規性を否定されるものではなく,また当業者が引用文献1の記載に基いて本願発明の効果を予測することはまったく不可能であるから,引用文献1の発明に対して進歩性を有するものである。」
(主張2)「工業製品として製造されるガラスの原料には,通常,多数種の微量不純物成分が混入している。本願出願時において,主原料となる酸化ニオブ粉体(汎用品)については,400ppm以下のTa,3ppm以下のFe,50ppm以下のSi,3ppm以下のNi,Cr,Cu,Co,Mn,Al,Tiおよび170ppm以下のMoの混入が認識されていた。・・・したがって,開発者の意思にかかわらず,最終製品である光学ガラスには,これら多数種の微量不純物成分が数ppm?数百ppmのオーダーで存在し,開発者はそれを無視できないという現実がある。
もちろん,実験室レベルで使用される試薬と工業生産に使用される粉体原料とではその含有量も異なるであろうが,工業生産を意図していることが明らかな引用文献1?4の出願人の発明であれば,原料として後者を使用することを当然に意図していると解することができる。すなわち,かかる微量成分を意図的に使用する旨の記載がないからといって,それらが含有されていないということにはならず,現実の状況にかんがみれば所定量の前記微量成分を含んでいると考えること自然である。」

上記主張について,検討する。
(主張1について)請求人は,(a)引用例には,不純物として含まれるMoO_(3)の含有量を30ppm以下に抑えることによりソーラリゼーションを少なくすることができることについてなんらの記載もない,(b)本願発明は選択発明である,との理由により,本願発明は新規性を否定されない旨の主張をしているが,以下のとおり採用することができない。
まず,(a)の点についてみると,請求人の主張するように,本願発明が,不純物として含まれるMoO_(3)の含有量を30ppm以下に抑えることによりソーラリゼーションを少なくすることができるとの新たな知見に基づいたものである,ということは理解できる。しかしながら,上記4に述べたとおり,本願発明の「重量で,MoO_(3)の含有量が30ppm以下である」との発明特定事項は,引用例においてソーラリゼーションに関する課題認識があったか否かに拘わらず,本願出願時における技術常識を参酌することにより,当業者が引用例の記載より導き出せる事項から把握できるものであるから,本願発明は引用例発明から新規性を有しないと結論づけられる。
そして,新規性を有しない発明は,その発明が選択発明であるか否か,すなわち進歩性を有するか否かを問うまでもなく,特許法第29条第1項第3号に該当し,拒絶されるべきものである。そうすると,(b)の点についても,首肯することができない。
なお,上記主張1における「確かに引用文献1?4にはP_(2)O_(5)およびNb_(2)O_(5)を含有する多種多様の光学ガラスが記載されており,その中には不純物として含有されMoO_(3)の含有量が30ppmを超えるものもあるであろうし,30ppm以下のものも存在すると思われる。」との記載からは,請求人自身,本願発明が新規性を有しない可能性があることについて否定するものではないことが窺える。
(主張2について)
請求人は,ガラスの原料となる酸化ニオブ粉体に,170ppm以下のMoの混入が認識されていた旨主張するが,請求人の当該主張は,酸化ニオブ粉体に対するMoの混入は170ppm以下,すなわち0?170ppmの範囲にあるというものであって,酸化ニオブ粉体にMoの混入が少ない(0ppmに近い)場合を否定しているわけではない。
そして,上記4で述べたとおり,引用例発明の光学ガラスは,MoO_(3)を重量%で小数点以下第三位で記載される程度以上に含有するものということはできないから,酸化ニオブ粉体に対するMoの混入が常に170ppm程度であるということもできない。この判断は,次の(c)?(e)のことからも妥当といえる。
(c)引用例の記載事項(ウ)には,「P_(2)O_(5)22.5重量%,TiO_(2)10重量%,B_(2)O_(3)2.5重量%,Nb_(2)O_(5)54.99重量%,K_(2)O10重量%,Sb_(2)O_(3)0.01重量%」のガラス組成の光学ガラスが記載されているといえる。
(d)一方,引用例の記載事項(イ)の「Sb_(2)O_(3) 0.005」との記載から,0.005重量%以上の組成はガラス組成として意識されることが明らかである。ここで,上記(c)に示す光学ガラスは,MoO_(3)について一切記載がなく,MoO_(3)がガラス組成として意識されていないといえるから,たとえ0.001重量%を超えるMoO_(3)を含むと仮定しても,その最大値はガラス組成として意識されない0.005重量%(=50ppm)未満であるということができる。そして,上記(c)に示す光学ガラスに含まれるMoO_(3)が50ppmであって,その全てがNb_(2)O_(5)原料に起因するとして,Nb_(2)O_(5)原料に対するMo量を計算すると,91ppm(=50ppm×100/54.99)である。そうすると,酸化ニオブ粉体に対するMoの混入が常に170ppmであるとする根拠はない,といわざるを得ない。
(e)また,引用例の記載事項(エ)より,上記(c)に示す光学ガラスのNb_(2)O_(5)原料は,引用例発明の光学ガラスのNb_(2)O_(5)原料と同様であると理解するのが通常であるところ,仮想の最大値としてのMo量91ppmを含むNb_(2)O_(3)原料を用いて引用例発明の光学ガラスを得たとしても,光学ガラス中のMoO_(3)含有量は36ppm(=91ppm×40/100)にとどまる。そうすると,たとえ請求人の主張するような現実の状況があるとしても,引用例発明の光学ガラスに関していえば,そのMoO_(3)含有量は30ppm以下である蓋然性が高いと理解するのが妥当である。
さらに,引用例の記載事項(エ)には「本発明の上記実施例のガラスはいずれも・・・通常の光学ガラス原料を用いて秤量,混合し」と記載され,本願明細書の「本発明の上記実施例のガラスは,いずれも・・・通常の光学ガラス原料を用いて,秤量,混合し」(段落【0023】)との記載と何ら変わるものではないところ,例えば,引用例の記載事項(エ)に,石英坩堝または白金坩堝等を用いて溶融した旨の記載があることからも分かるように,光学ガラスは,他のガラスに比べて高純度の原料を用い,不純物の混入に注意しながら製造することが技術常識であるから(必要であれば,作花済夫,境野照雄,高橋克明,「ガラスハンドブック」,1981年8月1日,初版第4刷,第72頁を参照。),引用例発明の原料が本願発明のそれに比してMoを相当多く含むと理解することが自然であるともいえない。
以上のことを踏まえると,主張2をもって本願発明が新規性を有するということはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明は,本願出願前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
そして,本願は,その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-19 
結審通知日 2010-03-23 
審決日 2010-08-09 
出願番号 特願平7-353571
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 淺見 節子藤代 佳  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 深草 祐一
木村 孔一
発明の名称 ソーラリゼーションのない光学ガラス  
代理人 原田 卓治  
代理人 坂本 徹  
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