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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1224224
審判番号 不服2008-2313  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-04 
確定日 2010-09-30 
事件の表示 特願2002-159871「無線ネットワークにおける無線通信システム、並びに無線通信方法、無線通信装置、帯域割当方法、並びにコンピュータプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月28日出願公開、特開2003- 60564〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年5月31日(国内優先権主張 特願2001-212856号 平成13年6月8日)の出願であって、平成19年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成20年2月4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成20年3月3日付けで手続補正がなされたものである。


第2.平成20年3月3日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年3月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容
平成20年3月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、同日付けの、審判請求書の「請求の理由」を補正した手続補正書の中で、審判請求人も説明しているように、補正前の請求項7-17を、補正後の請求項6-16に補正することを含むものである。具体的には、補正前の請求項9

「 【請求項9】
ネットワーク同報情報によって定められる周期のフレームを用いて無線通信を行う無線通信装置において、
あらかじめ終了時間を設定して帯域予約要求を送信し、制御局から帯域割当情報を受信するための無線通信部と、
該無線通信部を制御して、その帯域割当情報に基づいて前記フレーム周期の一部分で情報送信を行わせることを特徴とする制御部とを有し、
前記帯域予約要求は、1回の帯域予約要求により複数のフレームにわたる帯域予約が行なわれる、
ことを特徴とする無線通信装置。」を、

「 【請求項8】
ネットワーク同報情報によって定められる周期のフレームを用いて無線通信を行なう無線通信装置において、
あらかじめ終了時間を設定して、終了時間に関する情報を含んだ帯域予約要求を送信し、制御局から帯域割当情報を受信するための無線通信部と、
該無線通信部を制御して、その帯域割当情報に基づいて前記フレーム周期の一部分で情報送信を行なわせる制御部とを有し、
前記帯域予約要求は、1回の帯域予約要求により複数のフレーム周期にわたる帯域予約が行なわれる、
ことを特徴とする無線通信装置。」

と補正している。なお、下線は当審が付加したものである。

したがって、本件補正は、補正前の請求項9に対して、

(a)「行う」を「行なう」と補正し、

(b)「帯域予約要求」に対して「終了時間に関する情報を含んだ」という限定を付加し、

(c)「ことを特徴とする」という文言を削除し、

(d)「複数のフレームにわたる帯域予約」を「複数のフレーム周期にわたる帯域予約」と補正して、

請求項8とすることを含むものである。


2.補正の目的
上記補正事項(a)、(c)及び(d)によって、意味は変わらない。
上記補正事項(b)は、「帯域予約要求」を「終了時間に関する情報を含んだ」という文言によって限定するものである。したがって、本件補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものである。

そこで、本件補正後の前記請求項8に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。


3.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1(特開2001-111599号公報 平成13年4月20日公開)には、以下の事項が記載されている。

(a)段落番号【0041】
「以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態の具体例を詳細に説明する。先ず、図1を参照して具体例の無線ネットワークシステムを説明する。図1において、WNTは無線ネットワークを示し、これは、例えば、制御局としての無線伝送装置104と、端末通信局としての無線伝送装置101?103とから構成される。無線伝送装置101?104は、それぞれ送受信アンテナを備えている。」

(b)段落番号【0051】-【0056】
「図2には、本例のネットワークシステム内で各通信局(無線伝送装置101?104)の間で伝送される信号の構成を示したもので、本例においてはフレーム周期を規定してデータの伝送を行なう構成としてある。
即ち、図2に示すように、所定の期間で1フレーム期間を規定し、その1フレーム期間の先頭部分の所定区間を制御情報伝送領域とし、その制御情報伝送領域内に、下り制御領域DCと上り制御領域UCとが設定してある。
この下り制御領域DCでは、該当無線ネットワークの構成状況や、情報伝送領域のスロット割当て情報など、無線伝送路の利用方法に掛かる情報等が伝送される。
上り制御領域UCでは、全ての無線伝送装置が時分割で情報を送受しあうことで、ネットワークを構成している装置の状況を、お互いに把握することができる。
また、各フレームの制御情報伝送領域以外の区間を、メディア情報伝送領域MITとしてあり、このメディア情報伝送領域MITで各種データが、制御局からのアクセス制御により伝送される。さらに、メディア情報伝送領域MITは一定の単位でスロットS1?S16が規定されて、このスロットをアイソクロナス無線伝送のために、制御局が任意に割当てて帯域予約伝送が実施される。
なお、このメディア情報伝送領域MITでは、帯域予約伝送のためのスロット割当てが行なわれていない場合には、アイソクロナス伝送以外に、アシンクロナス(非同期)情報が適宜無線伝送される構成を取っても良い。」

(c)段落番号【0100】-【0102】
「図14に、無線区間の帯域予約要求の処理フローチャートを示す。まず、ステップST-1で、有線側より送られてきた帯域予約伝送の要求を、無線伝送装置のインターフェースにて受信する(受理する)。さらに、ステップST-2で、この帯域予約伝送について無線伝送する必要があるか否かを判断する。ここで、伝送する必要がなければ処理を抜けるが、無線伝送する必要がある場合には、ステップST-3で、有線側より送られてきた帯域予約伝送の要求より、無線伝送での最大伝送量となる初期伝送予約量を算出する。
その後、ステップST-4で、該当する無線伝送システムの下り制御情報のスロット利用状況などから、該当する無線伝送の帯域予約が可能であるか否かを判断をする。ここで帯域予約が不可能であった場合には、ステップST-5で、帯域予約伝送が可能な部分だけを確保することとする。
さらに、ステップST-4で該当する無線伝送の帯域予約が可能であった場合は、ステップST-6で、該当する無線ネットワークの制御局に対して、帯域予約要求として伝送スロット新規要求を送信する。そして、ステップST-7で、一定時間内に制御局から無線伝送の帯域予約通知(図15における、ステップST-5)が届いたか否かを判断する。届いた場合には、YES の分岐より、ステップST-8にて、制御局に対して、無線伝送の帯域予約確認を返送して一連の処理を終了する。ステップST-7判断で、一定時間内に無線伝送の帯域予約通知が届かなかった場合には、Noの分岐からステップST-9で、一定の再送回数の超過を判断する。」

(d)段落番号【0104】
「図15に、無線伝送の帯域予約割当て処理フローチャートを示す。まず、ステップST-1で、無線の帯域予約伝送を行なう通信局より送られてきた、帯域予約要求(図14における、ステップST-6)を受信する。さらに、ステップST-2にて、この帯域予約要求の予約が可能であるか否かに付いて判断する。予約が不可能であれば、ステップST-10に移行して、帯域予約要求をしてきた通信局に対して無線伝送帯域割当て不可能通知を送付し処理を抜ける。予約が可能であるならば、ステップST-3で、該当する伝送スロットの割当てを登録し、次いで、ステップST-4で、該当する帯域予約番号の登録を行なう。さらに、ステップST-5で、帯域予約伝送を送受信する通信局あてに、伝送スロット割当て通知をそれぞれ送付する。」

(e)段落番号【0108】-【0111】
「図17に、帯域予約伝送の送信局において、平均情報伝送量を監視する処理の動作フローを示す。まず、ステップST-1で、帯域予約送信中であるか否か判断し、送信中でない場合には処理を抜ける。送信中である場合には、ステップST-2で、無線伝送フレームにおける情報伝送量の確認を行なう。
さらに、ステップST-3で、事前に帯域予約されている予約量が、この情報伝送量に対して著しく超過しているか否かを判断する。ここで、帯域予約量が情報伝送量を著しく超過している場合には、ステップST-4で、送信スロットの減少要求を制御局あてに送付し、予約帯域の削減を求める。逆に、帯域予約量が情報伝送量に対して不足している場合には、ステップST-5に移行して、慢性的に帯域予約量が不足しているか否かの判断を行なう。
ステップST-5で、一過性の帯域予約量の不足に対しては、次のフレームにおける情報伝送で収束する可能性があるので、Noの分岐より、そのまま処理を抜ける。複数フレームに亘って、慢性的に帯域予約量が不足している場合には、Yes の分岐より、ステップST-6に移行し、予約伝送帯域の追加予約が可能か否か判断する。
ステップST-6で、予約伝送帯域の追加予約が可能と判断した場合には、ステップST-7で、送信スロットの追加要求を制御局あてに送付し、予約帯域の追加を求める。また、追加予約が不可能と判断した場合には、ステップST-8で、現在の状態で継続して情報伝送が行なえるか否かを判断する。これは、将来的に追加予約が可能となる可能性や、現在の伝送帯域の不足量などから判断して、継続して情報伝送が行なえる場合には、Noの分岐より処理を抜ける。逆に、継続して情報伝送が行なえない場合には、ステップST-9で、帯域獲得伝送が不可能になった旨を、有線側に通知すると共に、ステップST-10で、制御局あてにスロット削除要求を送付して、帯域予約伝送を終了する。」

したがって、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 制御局としての無線伝送装置104と、端末通信局としての無線伝送装置101?103とから構成される無線ネットワークWNTであって、
無線伝送装置101?104は、それぞれ送受信アンテナを備えており、
ネットワークシステム内で各通信局(無線伝送装置101?104)の間で伝送される信号は、フレーム周期を規定してデータの伝送を行なう構成としてあり、
所定の期間で1フレーム期間を規定し、その1フレーム期間の先頭部分の所定区間を制御情報伝送領域とし、その制御情報伝送領域内に、下り制御領域DCと上り制御領域UCとが設定してあり、
下り制御領域DCでは、該当無線ネットワークの構成状況や、情報伝送領域のスロット割当て情報など、無線伝送路の利用方法に掛かる情報等が伝送され、
上り制御領域UCでは、全ての無線伝送装置が時分割で情報を送受しあうことで、ネットワークを構成している装置の状況を、お互いに把握することができ、
また、各フレームの制御情報伝送領域以外の区間を、メディア情報伝送領域MITとしてあり、このメディア情報伝送領域MITで各種データが、制御局からのアクセス制御により伝送され、さらに、メディア情報伝送領域MITは一定の単位でスロットS1?S16が規定されて、このスロットをアイソクロナス無線伝送のために、制御局が任意に割当てて帯域予約伝送が実施され、
図14に、無線区間の帯域予約要求の処理フローチャートを示しており、図14のステップST-4で、該当する無線伝送システムの下り制御情報のスロット利用状況などから、該当する無線伝送の帯域予約が可能であるか否かを判断をし、ここで帯域予約が不可能であった場合には、ステップST-5で、帯域予約伝送が可能な部分だけを確保することとし、さらに、ステップST-4で該当する無線伝送の帯域予約が可能であった場合は、ステップST-6で、該当する無線ネットワークの制御局に対して、帯域予約要求として伝送スロット新規要求を送信し、そして、ステップST-7で、一定時間内に制御局から無線伝送の帯域予約通知(図15における、ステップST-5)が届いたか否かを判断するようにしており、
図15に、無線伝送の帯域予約割当て処理フローチャートを示しており、まず、図15のステップST-1で、無線の帯域予約伝送を行なう通信局より送られてきた、帯域予約要求(図14における、ステップST-6)を受信し、さらに、ステップST-2にて、この帯域予約要求の予約が可能であるか否かに付いて判断し、予約が可能であるならば、ステップST-3で、該当する伝送スロットの割当てを登録し、次いで、ステップST-4で、該当する帯域予約番号の登録を行ないさらに、ステップST-5で、帯域予約伝送を送受信する通信局あてに、伝送スロット割当て通知をそれぞれ送付するようにしており、
図17に、帯域予約伝送の送信局において、平均情報伝送量を監視する処理の動作フローを示しており、まず、図17のステップST-1で、帯域予約送信中であるか否か判断し、送信中である場合には、ステップST-2で、無線伝送フレームにおける情報伝送量の確認を行ない、
さらに、ステップST-3で、事前に帯域予約されている予約量が、この情報伝送量に対して著しく超過しているか否かを判断しここで、帯域予約量が情報伝送量に対して不足している場合には、ステップST-5に移行して、慢性的に帯域予約量が不足しているか否かの判断を行ない、
ステップST-5で、一過性の帯域予約量の不足に対しては、次のフレームにおける情報伝送で収束する可能性があるので、Noの分岐より、そのまま処理を抜け、複数フレームに亘って、慢性的に帯域予約量が不足している場合には、Yes の分岐より、ステップST-6に移行し、予約伝送帯域の追加予約が可能か否か判断し、
ステップST-6で、追加予約が不可能と判断した場合には、ステップST-8で、現在の状態で継続して情報伝送が行なえるか否かを判断し、ここで、将来的に追加予約が可能となる可能性や、現在の伝送帯域の不足量などから判断して、継続して情報伝送が行なえる場合には、Noの分岐より処理を抜ける動作を行う、
無線ネットワークWNT。」


4.本願補正発明と引用発明の一致点・相違点
引用発明の制御局としての無線伝送装置104、端末通信局としての無線伝送装置101?103は、それぞれ、本願補正発明の制御局、無線通信装置に相当する。
引用発明の「1フレーム期間の先頭部分の所定区間を制御情報伝送領域とし、その制御情報伝送領域内に設定されている下り制御領域DC」は、本願補正発明のネットワーク同報情報に相当する。

引用発明の無線伝送装置101?104は、それぞれ送受信アンテナを備えているから、引用発明の無線伝送装置101?104が、それぞれ無線通信部を有していることは、明らかである。
引用発明の図14のステップST-6で、該当する無線ネットワークの制御局に対して、帯域予約要求として伝送スロット新規要求を送信しており、この「帯域予約要求」が、本願補正発明の帯域予約要求に相当する。
引用発明の図14のステップST-7で、一定時間内に制御局から無線伝送の帯域予約通知(図15における、ステップST-5)が届いたか否かを判断するようにしており、この「帯域予約通知」が、本願補正発明の「制御局からの帯域割当情報」に相当する。
したがって、引用発明の無線伝送装置101?103の無線通信部は、本願補正発明の無線通信部と、「帯域予約要求を送信し、制御局から帯域割当情報を受信する」点において、一致している。

引用発明では、メディア情報伝送領域MITで各種データが、制御局からのアクセス制御により伝送され、さらに、メディア情報伝送領域MITは一定の単位でスロットS1?S16が規定されて、このスロットをアイソクロナス無線伝送のために、制御局が任意に割当てて帯域予約伝送が実施されるから、引用発明の無線伝送装置101?103が、本願補正発明の「該無線通信部を制御して、その帯域割当情報に基づいて前記フレーム周期の一部分で情報送信を行なわせる制御部」を有していることは明らかである。

引用発明の図17に、帯域予約伝送の送信局において、平均情報伝送量を監視する処理の動作フローを示されており、引用発明の図17のステップST-5では、慢性的に帯域予約量が不足しているか否かの判断を行っており、該ステップST-5では、一過性の帯域予約量の不足に対しては、次のフレームにおける情報伝送で収束する可能性があるので、Noの分岐より、そのまま処理を抜け、複数フレームに亘って、慢性的に帯域予約量が不足している場合には、Yes の分岐より、ステップST-6に移行するようにしているから、引用発明のステップST-5では、過去の複数のフレームに亘る帯域予約量の過不足に基づいて判断している。そして、ステップST-8で、現在の状態で継続して情報伝送が行なえるか否かを判断し、ここで、継続して情報伝送が行なえる場合には、Noの分岐より処理を抜けており、「次のフレームにおける情報伝送のために、新たな帯域予約要求を行う。」ということをしていない。したがって、図14のステップST-6の帯域予約要求により、図17のステップST-5で参照している複数のフレームに亘る情報伝送が行われたと解される。
したがって、引用発明の無線伝送装置101?103は、本願補正発明の
無線通信装置と、「前記帯域予約要求は、1回の帯域予約要求により複数のフレーム周期にわたる帯域予約が行なわれる」点において、一致している。
したがって、引用発明の無線伝送装置101?103と、本願補正発明の一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「 ネットワーク同報情報によって定められる周期のフレームを用いて無線通信を行なう無線通信装置において、
帯域予約要求を送信し、制御局から帯域割当情報を受信するための無線通信部と、
該無線通信部を制御して、その帯域割当情報に基づいて前記フレーム周期の一部分で情報送信を行なわせる制御部とを有し、
前記帯域予約要求は、1回の帯域予約要求により複数のフレーム周期にわたる帯域予約が行なわれる、
ことを特徴とする無線通信装置。」である点。

[相違点]
本願補正発明では、あらかじめ無線通信部で終了時間を設定して、帯域予約要求が終了時間に関する情報を含んでいるのに対して、引用発明の帯域予約要求は終了時間に関する情報を含んでいない点。


5.相違点に対する検討
刊行物2(特開2000-4244号公報)の段落番号【0016】-【18】に、
「 資源の使用者は、資源予約管理装置101に対して、資源予約要求を行う。資源予約要求には、何時から何時までどれだけの帯域を要求するかという要求帯域と要求時間の情報が含まれる。
資源予約管理装置101では、まず、ネットワークインタフェース1205でこの要求を受ける。次に制御部104が、帯域予約管理テーブル102を参照して、要求時間に要求帯域が割当可能であるかを判定する。帯域予約管理テーブル102には、一定時間先までの時間管理された帯域予約情報が記憶されている。帯域の割当が可能である場合には、さらにチャネル予約管理テーブル103を参照して、要求時間にチャネルの割当が可能であるかを判定する。チャネル予約管理テーブル103には、一定時間先までの時間管理されたチャネル予約情報が記憶されており、要求時間に空きチャネルが確保できる場合には、制御部104はチャネル予約管理テーブル103を書き換えてチャネルを予約する。さらに帯域予約管理テーブル102を書き換えて、帯域の予約も同時に行う。
予約に成功すると、資源予約管理装置101は、資源予約許可をネットワーク1206を経由して使用者に返す。資源予約許可には、通常、使用チャネルの情報が含まれるが、この時点で使用チャネルの決定ができない場合は、後で通知する。資源予約管理装置101は、タイマー装置106で時刻を管理し、予約時刻になると、使用者にその旨を通知する。使用者は、その通知を受けて、許可された時間に、許可された帯域内で、指定されたチャネルを使用してAVデータストリームの転送を行う。」
と記載されている。
したがって、刊行物2には、チャネルの予約要求に、「何時から何時までどれだけの帯域を要求するかという要求帯域と要求時間の情報」が含まれることが開示されている。

引用発明の図14のステップT-6における帯域予約要求も、チャネルの予約要求であると解されるから、引用発明の図14のステップST-6における帯域予約要求に「何時から何時まで要求するかという要求時間の情報」を含ませることは、刊行物2の開示内容から当業者が容易に想到できたことである。

本願補正発明の効果も、刊行物1、2に記載された発明から当業者が予測可能なものである
したがって、本願補正発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


6.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について

1.本願発明
上記のとおり平成20年3月3日付けの手続補正は却下されたので、本願の請求項12に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年8月13日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項12】
ネットワーク同報情報によって定められる周期のフレームを用いて無線通信を行う無線通信装置において、
複数の無線通信装置により形成される無線ネットワークを、制御局として管理する手段と、
前記ネットワークに属する無線通信装置からの帯域予約要求を受信する手段と、
前記フレーム周期の一部分を前記帯域予約要求を送信した無線通信端末に割当てる手段と
を備え、
前記帯域予約要求は、1回の帯域予約要求により複数のフレームにわたる帯域予約が行なわれ、
帯域予約を行なっていた無線通信装置が無線ネットワークから消滅したことに応じて、当該予約帯域を解放する、
ことを特徴とする無線通信装置。」


2.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及び引用発明は、前記「第2.3.」に記載したとおりである。


3.本願発明と引用発明の一致点・相違点
前記「第2.4.」における検討結果を考慮すれば、引用発明の制御局としての無線伝送装置104と本願発明との一致点・相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「 ネットワーク同報情報によって定められる周期のフレームを用いて無線通信を行う無線通信装置において、
複数の無線通信装置により形成される無線ネットワークを、制御局として管理する手段と、
前記ネットワークに属する無線通信装置からの帯域予約要求を受信する手段と、
前記フレーム周期の一部分を前記帯域予約要求を送信した無線通信端末に割当てる手段と
を備え、
前記帯域予約要求は、1回の帯域予約要求により複数のフレームにわたる帯域予約が行なわれる、
ことを特徴とする無線通信装置。」である点。

[相違点]
本願発明では、帯域予約を行なっていた無線通信装置が無線ネットワークから消滅したことに応じて、当該予約帯域を解放するのに対して、引用発明では、端末通信局としての無線伝送装置101?103が、無線ネットワークWNTから消滅した場合の動作について明記されていない点。


4.相違点についての検討
無線通信システムにおいてハンドオーバーなどにより無線通信装置が圏内からいなくなった場合、該無線通信装置に割り当てたリソースを解放することは、周知例を示すまでもなく常套的に行われている事項であるから、引用発明において、圏内からいなくなった、すなわち消滅したことに応じて予約帯域を解放することは、当業者であれば容易になし得る事項である。

本願発明の効果も、刊行物1に記載された発明及び周知技術から当業者が予測可能なものである


5.むすび
以上のとおり、本願の請求項12に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-30 
結審通知日 2010-08-03 
審決日 2010-08-16 
出願番号 特願2002-159871(P2002-159871)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 聡史  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 清水 稔
青木 健
発明の名称 無線ネットワークにおける無線通信システム、並びに無線通信方法、無線通信装置、帯域割当方法、並びにコンピュータプログラム  
代理人 宮田 正昭  
代理人 澤田 俊夫  
代理人 佐々木 榮二  
代理人 山田 英治  

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