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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 F02D
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 F02D
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 F02D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1224596
審判番号 不服2009-19483  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-13 
確定日 2010-10-07 
事件の表示 特願2000-274599「車両用内燃機関の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月27日出願公開、特開2002- 89341〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年9月11日に特許出願されたものであって、平成21年6月2日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し、同年8月4日付けで明細書を補正する手続補正書及び意見書がそれぞれ提出されたが、同年8月21日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し、同年10月13日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同時に明細書を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成22年2月16日付けで書面による審尋がなされ、これに対し、同年4月6日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成21年10月13日付けの手続補正の却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年10月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成21年10月13日付けの明細書を補正する手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲については、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、平成21年8月4日付けで提出された手続補正書により補正された)請求項1ないし10を、下記(2)に示す請求項1ないし10へと補正するものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし10
「【請求項1】 吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ、連続的に拡大、縮小制御可能なリフト・作動角可変機構と、吸気弁のリフトの中心角の位相を遅進させる位相可変機構と、内燃機関の機関回転数及び負荷を検出する手段と、内燃機関の負荷の変化率を検出する手段と、機関吸気系への排気還流量を制御する排気還流制御手段とを有し、
内燃機関の負荷の変化率に応じて上記吸気弁のリフト・作動角、中心角及び排気還流量のうち少なくとも1つを選択して制御することを特徴とする車両用内燃機関の制御装置。
【請求項2】 内燃機関の無負荷運転条件においては、吸気弁の閉時期が下死点近傍または下死点よりも早い小作動角に制御すると共に、無負荷運転からの急加速の場合には、主として吸気弁の作動角の拡大を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項3】 内燃機関の無負荷運転条件においては、吸気弁の閉時期が下死点近傍または下死点よりも早い小作動角に制御すると共に、無負荷運転からの中程度の加速の場合には、主として吸気弁の作動角の拡大を行うと共に、上記排気還流制御手段により機関吸気系に排気を還流させることを特徴とする請求項1に記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項4】 内燃機関の無負荷運転条件においては、吸気弁の閉時期が下死点近傍または下死点よりも早い小作動角に制御すると共に、無負荷運転からの緩加速の場合には、主として吸気弁の中心角を進角させることを特徴とする請求項1に記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項5】 平坦路の一定速運転条件においては、吸気弁の閉時期が下死点よりも早い小作動角に制御すると共に、一定速運転からの急加速の場合には、吸気弁の作動角の拡大と、吸気弁の中心角の遅角を併行して行うことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項6】 平坦路の一定速運転条件においては、吸気弁の閉時期が下死点よりも早い小作動角に制御すると共に、一定速運転からの中程度の加速の場合には、吸気弁の作動角の拡大と、吸気弁の中心角の遅角を併行して行うと共に、上記排気還流制御手段により機関吸気系に排気を還流させることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項7】 平坦路の一定速運転条件においては、吸気弁の閉時期が下死点よりも早い小作動角に制御すると共に、一定速運転からの緩加速の場合には、主に吸気弁の中心角の進角を行うことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項8】 上記リフト・作動角可変機構は、駆動軸により回転駆動される偏心カムと、この偏心カムの外周に相対回転可能に嵌合したリンクアームと,上記駆動軸と平行に設けられ、かつ偏心カム部を備えた回動可能な制御軸と、この制御軸の偏心カム部に回転可能に装着され、かつ上記リンクアームにより揺動されるロッカアームと、上記駆動軸に回転可能に支持されるとともに、上記ロッカアームにリンクを介して連結され、該ロッカアームに伴って揺動することにより吸気弁のタペットを押圧する揺動カムと、を備えており、上記制御軸の偏心カム部の回動位置を変化させることにより吸気弁のリフト・作動角が同時に増減変化するように構成されていることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項9】 上記位相可変機構は、上記駆動軸と同心に回転可能に配置され、かつチエーンもしくはタイミングベルトを介してクランクシャフトに従動するスプロケットと、このスプロケットと上記駆動軸との間に装着され、両者の相対的な位相を変化させる手段と、を備えていることを特徴とする請求項8に記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項10】 上記排気還流制御手段は、排気系からスロットル弁下流の吸気系に排気を導く排気還流通路と、該排気還流通路に介装され、内燃機関の運転条件に応じて開度が制御される排気還流制御弁と、を備えていることを特徴とする請求項1、3及び6のいずれかに記載の車両用内燃機関の制御装置。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし10
「【請求項1】 吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ、連続的に拡大、縮小制御可能なリフト・作動角可変機構と、吸気弁のリフトの中心角の位相を遅進させる位相可変機構と、内燃機関の機関回転数及び負荷を検出する手段と、内燃機関の負荷の変化率を検出する手段と、機関吸気系への排気還流量を制御する排気還流制御手段とを有し、
内燃機関の負荷の変化率の大きさに応じて上記吸気弁のリフト・作動角、中心角及び排気還流量のうち少なくとも1つの制御対象を選択して制御するとともに、上記負荷の変化率の大きさが異なる場合、選択する制御対象もしくは選択する制御対象の組み合わせを異ならせることを特徴とする車両用内燃機関の制御装置。
【請求項2】 内燃機関の無負荷運転条件においては、吸気弁の閉時期が下死点近傍または下死点よりも早い小作動角に制御すると共に、無負荷運転からの急加速の場合には、主として吸気弁の作動角の拡大を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項3】 内燃機関の無負荷運転条件においては、吸気弁の閉時期が下死点近傍または下死点よりも早い小作動角に制御すると共に、無負荷運転からの中程度の加速の場合には、主として吸気弁の作動角の拡大を行うと共に、上記排気還流制御手段により機関吸気系に排気を還流させることを特徴とする請求項1に記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項4】 内燃機関の無負荷運転条件においては、吸気弁の閉時期が下死点近傍または下死点よりも早い小作動角に制御すると共に、無負荷運転からの緩加速の場合には、主として吸気弁の中心角を進角させることを特徴とする請求項1に記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項5】 平坦路の一定速運転条件においては、吸気弁の閉時期が下死点よりも早い小作動角に制御すると共に、一定速運転からの急加速の場合には、吸気弁の作動角の拡大と、吸気弁の中心角の遅角を併行して行うことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項6】 平坦路の一定速運転条件においては、吸気弁の閉時期が下死点よりも早い小作動角に制御すると共に、一定速運転からの中程度の加速の場合には、吸気弁の作動角の拡大と、吸気弁の中心角の遅角を併行して行うと共に、上記排気還流制御手段により機関吸気系に排気を還流させることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項7】 平坦路の一定速運転条件においては、吸気弁の閉時期が下死点よりも早い小作動角に制御すると共に、一定速運転からの緩加速の場合には、主に吸気弁の中心角の進角を行うことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項8】 上記リフト・作動角可変機構は、駆動軸により回転駆動される偏心カムと、この偏心カムの外周に相対回転可能に嵌合したリンクアームと,上記駆動軸と平行に設けられ、かつ偏心カム部を備えた回動可能な制御軸と、この制御軸の偏心カム部に回転可能に装着され、かつ上記リンクアームにより揺動されるロッカアームと、上記駆動軸に回転可能に支持されるとともに、上記ロッカアームにリンクを介して連結され、該ロッカアームに伴って揺動することにより吸気弁のタペットを押圧する揺動カムと、を備えており、上記制御軸の偏心カム部の回動位置を変化させることにより吸気弁のリフト・作動角が同時に増減変化するように構成されていることを特徴とする請求項1?7のいずれかに記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項9】 上記位相可変機構は、上記駆動軸と同心に回転可能に配置され、かつチエーンもしくはタイミングベルトを介してクランクシャフトに従動するスプロケットと、このスプロケットと上記駆動軸との間に装着され、両者の相対的な位相を変化させる手段と、を備えていることを特徴とする請求項8に記載の車両用内燃機関の制御装置。
【請求項10】 上記排気還流制御手段は、排気系からスロットル弁下流の吸気系に排気を導く排気還流通路と、該排気還流通路に介装され、内燃機関の運転条件に応じて開度が制御される排気還流制御弁と、を備えていることを特徴とする請求項1、3及び6のいずれかに記載の車両用内燃機関の制御装置。」(なお、下線部は補正個所を示す。)

2 本件補正の適否(本件補正の目的要件について)
特許請求の範囲の請求項1に関する本件補正は、本件補正前の請求項1における「内燃機関の負荷の変化率に応じて上記吸気弁のリフト・作動角、中心角及び排気還流量のうち少なくとも1つを選択して制御する」点を「内燃機関の負荷の変化率の大きさに応じて上記吸気弁のリフト・作動角、中心角及び排気還流量のうち少なくとも1つの制御対象を選択して制御する」と補正するものに加え、「上記負荷の変化率の大きさが異なる場合、選択する制御対象もしくは選択する制御対象の組み合わせを異ならせる」点を追加する補正を含むものであるが、当該「上記負荷の変化率の大きさが異なる場合、選択する制御対象もしくは選択する制御対象の組み合わせを異ならせる」点を追加する補正は、本件補正前の請求項1に係る発明のいずれの発明特定事項を限定するものとは認められず、新たな技術的事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」とは認められない。
また、「請求項の削除」、「誤記の訂正」、「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」のいずれにも該当しないことは明らかである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するもの(以下、「目的要件違反」という。)である。

3 本件補正の適否(本願補正発明の独立特許要件について)
上記2で検討したように、請求項1についての本件補正は目的要件違反であるが、仮に本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とする補正と解される場合について、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、検討する。

A 特許法第36条第6項第1号について
本願補正発明が解決しようとする課題は、本願の発明の詳細な説明の例えば段落【0006】ないし【0008】に「リフト・作動角、中心角、及びEGRの制御が運転条件によって錯綜し、また可変動弁装置の制御装置の制御アクチュエータの応答速度にも限界があることから、急加速の場合などは、それを先取りした迅速で包括的な制御ロジックが必要となる。…(中略)…運転性を損ねることなく、常用の緩加速から中加速時の燃費効果を最大限に確保するために、可変動弁機構とEGRとを総合的に制御し、両者を効率的に併用させることを目的としている。」と記載されており、その課題を解決するための具体的な制御手法として、例えば段落【0068】ないし【0090】及び図16に記載されるように、「機関回転数、スロットル開度等の運転条件から、アイドル運転状態であるか、R/L走行中であるかを判別する」点、「アクセルペダルの変化速度に基づいて、緩加速、中程度の加速、急加速の加速の度合いを判別する」点、「緩加速、中程度の加速、急加速の判別結果に対応して、吸気弁のリフト・作動角、中心角又は排気還流量をそれぞれ制御する」(例えば、「アイドル運転」からの「緩加速」であれば「吸気弁の中心角を進角させる」)点が記載されているのみである。
一方、本願補正発明においては、単に「内燃機関の負荷の変化率の大きさに応じて上記吸気弁のリフト・作動角、中心角及び排気還流量のうち少なくとも1つの制御対象を選択して制御するとともに、上記負荷の変化率の大きさが異なる場合、選択する制御対象もしくは選択する制御対象の組み合わせを異ならせる」と特定されるのみであって、「負荷の変化率」がどのように検知されるのか、また、「負荷の変化率の大きさ」をどのように分別するのか、さらには、各「負荷の変化率の大きさ」に対応して、制御対象がどのように選択され、もしくは、どのような制御対象の組み合わせが選ばれるのか、それぞれ明確には特定されておらず、結果として、本願補正発明は発明の詳細な説明に記載された技術的範囲を超えて、特許を請求するものである。
したがって、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないことから、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

B 特許法第36条第4項について
本願補正発明における「内燃機関の負荷の変化率を検出する手段」との発明特定事項について、発明の詳細な説明の段落【0071】及び【0081】には、「内燃機関の負荷の変化率」として「アクセルペダルの変化速度」が挙げられ、また、本願補正発明における「内燃機関の負荷の変化率の大きさに応じて…制御する」との発明特定事項に対応して、段落【0072】及び【0082】には「アクセルペダルの変化速度」に基づいて「緩加速、中程度の加速、急加速等の加速の度合いを判別」し、各判別された加速の度合いに基づいて制御が行われる旨の記載が認められるが、「緩加速」、「中程度の加速」、「急加速」をどのように「アクセルペダルの変化速度」から判別するのか、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本願補正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。
また、「アクセルペダルの変化速度」に基づいて「緩加速、中程度の加速、急加速等の加速の度合いを判別」するというものの、例えば段落【0054】ないし【0057】において説明する図6には、横軸に「エンジン回転数」、縦軸に「トルク」言い換えれば「負荷そのもの」に基づいて、「緩加速時、中加速時、低速の全開時、高速の全開時」が区分された図が示されるのみであって、「負荷の変化率」に基づいて定められたものであるとは言い難い。
さらに、図8ないし14において、「アクセルペダルの変化量」の時間経過については図示されていないが、仮に「アクセルペダルの変化量」の時間経過が「スロットル開度」の時間経過に対応するとみなした場合、「アクセルペダルの変化速度」とは、各図における「スロットル開度」が急変する際(横軸の「時間経過」に対して左側の点線付近を参照のこと。)の「スロットル開度の変化量の傾き」に対応するのか、「スロットル開度が急変する前の開度と急変した後の開度との差」に対応するのか不明確である。一般的に「アクセルペダルの変化速度」とは「アクセルペダルの変化量」の時間微分値であって、前者を意味すると解されるが、上述の図6に基づいた発明の詳細な説明によれば、後者を意味するとも解される。その結果、例えば、図10における「アイドリングからの急加速」と同様の「スロットル開度の変化量の傾き」を伴うアクセルペダルの変化速度にて図8における「アイドリングからの緩加速時」のような「スロットル開度の差」を生じさせる場合、本願補正発明の発明特定事項のとおりに解釈すれば、「負荷の変化率」から当該アクセル操作は「急加速」に判別されることから「急加速」に対応した制御がなされるべきであるが、発明の詳細な説明の例えば段落【0054】及び図6を参照すると、アクセル操作後の最終的なスロットル開度が「緩加速」に属する場合には「緩加速」に対応した制御がなされると解される。したがって、本願補正発明の発明特定事項に基づく制御は具体的にどのように実施されるものであるのか、発明の詳細な説明には、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、本願補正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいい難い。
よって、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないことから、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

C 特許法第29条第2項について
(1)本願補正発明の認定
本願補正発明は、本件補正及び平成21年8月4日付けの手続補正により補正された明細書の記載、並びに、願書に最初に添付した図面の記載からみて、本件補正後の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される上記1(2)の【請求項1】に記載されたとおりのものと認める。

(2)刊行物1に記載された発明
(A)本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-9005号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の(ア)ないし(ウ)の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 スロットル開度と車速を検知し、
前記検知されたスロットル開度と車速とに基づいて内燃機関の過渡運転状態を判定し、
前記判定された過渡運転状態に応じて、バルブタイミング可変手段、圧縮比可変手段、及び吸気管内圧力可変手段の少なくとも1つを用いて、吸入空気量を制御する、という工程を備える、過渡時吸入空気量制御方法。
【請求項2】 前記判定により加速時と判定された場合は、前記吸気管内圧力可変手段により吸入空気量を増大させると共に、前記バルブタイミング可変手段により吸気弁閉じ時期を制御して吸入空気量を増大させ、
前記判定により緩加速時と判定された場合は、前記バルブタイミング可変手段により吸気弁閉じ時期を制御して吸入空気量を増大させ、
前記判定により減速時と判定された場合は、前記バルブタイミング可変手段により吸気弁開閉時期を制御し吸気抵抗を増加させ、前記圧縮比可変手段によりピストンをロングストロークとし、且つ前記吸気管内圧力可変手段によりポンピングロスを増大させ、
前記判定により緩減速時と判定された場合は、前記バルブタイミング可変手段により吸気弁開閉時期を制御し吸気抵抗を増加させるようにする、請求項1に記載の過渡時吸入空気量制御方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】及び【請求項2】)

(イ)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の吸入空気量制御システムでは、ドライバが加速を必要とするとき、スロットル開のみでは十分な出力が得られず、また、過給機を用いても吸入空気の応答遅れによる加速直後のもたつき等が生じるという問題点があった。また、バルブタイミング可変手段、圧縮比可変手段、吸気管内圧力可変手段の3つを用いた場合にはその手段をどのように制御すればよいか知られていない。逆に、減速を必要とするときには、スロットルのみでは十分なエンジンブレーキ(ポンピングロスの増加)が得られず、バルブタイミング可変機構を備えたシステムでも燃費向上のためポンピングロスを低減させる制御しか行われていない。また、圧縮比可変機構においても、圧縮行程を短くして、圧縮比<膨張比として高効率を狙う場合が多く、圧縮比を高めポンピングロスを増加させる制御は行っていない。
【0006】本発明の目的は、上記従来技術における問題に鑑み、加速時や減速時等の過渡運転時において、バルブタイミング可変手段、圧縮比可変手段及び吸気管内圧力可変手段を組み合わせて最適な吸入空気量を制御する方法を提供することである。」(段落【0005】及び【0006】)

(ウ)「【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する。図1は本発明の実施例による過渡時吸入空気量制御方法を説明するフローチャートであり、図2は過渡運転判定用のマップである。図1において、ステップ11で車速及びスロットルの開度をコンピュータ(図示せず)に入力する。ステップ12ではコンピュータは図2に示したマップに基づいて車両の運転状態が、「急加速」状態21か、「緩加速」状態22か、「急減速」状態23か、「緩減速」状態24か、を判定する。
【0011】ステップ12で「急加速」と判定されると、コンピュータはステップ13にて過給機71(吸気管圧力可変手段)(図7)を作動させて吸入空気量を増大させ、さらに、過給機71のみでは吸入空気の応答遅れがあるので、ステップ14にてバルブタイミング可変手段により吸気弁を閉じる時期を制御して吸入空気量の増大を図る。
【0012】ここで、図7に示した過給機71は、ターボチャージャ又はスーパーシャージャでよい。また、バルブタイミング可変手段は図3及び図4に示すように吸気弁を閉じるタイミング31及び41を制御できるものであればよい。これらの制御により、加速直後から十分な吸入空気量を確保することで、迅速且つ力強い加速を得ることが可能となる。
【0013】ステップ12で「緩加速」と判定されると、コンピュータはステップ15にてバルブタイミング可変手段による吸気弁閉じ時期制御のみを行い、ゆるやかな加速を実現する。減速の場合も同様に、急減速か、緩減速かを判定する。ステップ12で「急減速」と判定された場合は、コンピュータはステップ16にて、吸気管内に設けられたバキュームポンプ72(図7)により吸気管内の負圧を高め、ステップ17にてバルブタイミング可変手段により例えば、図5及び図6に矢印で示すようなポンピングロスが増大する制御を行い、次いでステップ18にて圧縮比可変手段により圧縮比を高める(ピストンをロングストロークとする)。これにより、ポンピングロスを増加させエンジンブレーキを最大とする。」(段落【0010】ないし【0013】)

(B)上記(A)(ア)ないし(ウ)及び図面の記載から、刊行物1には次の(カ)ないし(ケ)の事項が記載されていることがわかる。
(カ)上記(A)(ウ)及び図面の記載から、刊行物1に記載された過渡時給入空気量制御方法は、コンピュータ等の「制御装置」によって制御されることがわかる。

(キ)上記(A)(ウ)の段落【0012】並びに図3及び4の記載から、刊行物1に記載された制御装置における「バルブタイミング可変手段」は、「吸気弁のリフト・作動角を同時に拡大、縮小制御可能な機構」(図4を参照。以下、「機構A」という。)と、「吸気弁のリフトの中心角の位相を遅進させる機構」(図3を参照。以下、「機構B」という。)と、を有していることがわかる。

(ク)上記(A)(ア)及び(ウ)並びに図面の記載から、刊行物1に記載された制御装置は、スロットル開度と車速を検知する手段と、検知されたスロットル開度と車速とに基づいて、車両の運転状態が、「急加速」状態21か、「緩加速」状態22か、「急減速」状態23か、「緩減速」状態24か、を判定する「内燃機関の過渡運転状態を判定する手段」と、を有していることがわかる。

(ケ)上記(A)(ア)及び(ウ)、上記(キ)及び(ク)並びに図面の記載から、刊行物1に記載された制御装置は、「バルブタイミング可変手段」のほか、「圧縮比可変手段」及び「吸気管内圧力可変手段」を有しており、判定された過渡運転状態に応じて、「バルブタイミング可変手段」による吸気弁のリフト・作動角及び中心角、「圧縮比可変手段」による圧縮比、並びに「吸気管内圧力可変手段」による過給圧のうち少なくとも1つの制御対象を選択して制御するとともに、判定された過渡運転状態が異なる場合、選択する制御対象もしくは選択する制御対象の組み合わせを異ならせることがわかる。

(C)刊行物1に記載された発明
上記(A)及び(B)並びに図面の記載から、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されているといえる。
「吸気弁のリフト・作動角を同時に拡大、縮小制御可能な機構Aと、吸気弁のリフトの中心角の位相を遅進させる機構Bと、スロットル開度と車速を検知する手段と、内燃機関の過渡運転状態を判定する手段と、圧縮比可変手段及び吸気管内圧力可変手段とを有し、
判定された内燃機関の過渡運転状態に応じて、上記吸気弁のリフト・作動角、中心角、圧縮比、及び過給圧のうち少なくとも1つの制御手段を選択して制御するとともに、上記判定された過渡運転状態が異なる場合、選択する制御対象もしくは選択する制御対象の組み合わせを異ならせる制御装置。」

(3)対比
本願補正発明と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1に記載された発明における「機構B」は、その技術的意義からみて、本願補正発明における「位相可変機構」に相当し、以下同様に、「スロットル開度と車速」は「負荷」に、「検知」は「検出」に、「制御装置」は「車両用内燃機関の制御装置」に、それぞれ相当する。
また、本願補正発明における「内燃機関の負荷の変化率の大きさ」とは、段落【0071】及び【0072】の記載から「緩加速、中程度の加速、急加速等の加速の度合い」と同義であると認められることから、上記(2)(A)(ウ)の段落【0010】の記載からみて、刊行物1に記載された発明における「内燃機関の過渡運転状態を判定する手段」は本願補正発明における「内燃機関の負荷の変化率を検出する手段」に、また同様に、「判定された内燃機関の過渡運転状態」は「内燃機関の負荷の変化率の大きさ」に、それぞれ相当するといえる。
また、刊行物1に記載された発明における「機構A」は、「吸気弁のリフト・作動角を同時に拡大、縮小制御可能なリフト・作動角可変機構」であるという限りにおいて、本願補正発明における「リフト・作動角可変機構」に相当する。
さらに、刊行物1に記載された発明における「圧縮比可変手段及び吸気管内圧力可変手段」は、吸気弁のリフト・作動角、中心角を制御する手段とは異なる「他の吸入空気量を制御する手段」であるという限りにおいて、本願補正発明における「機関吸気系への排気還流量を制御する排気還流制御手段」に相当し、同様に、刊行物1に記載された発明における「圧縮比及び過給圧」は、吸気弁のリフト・作動角、中心角とは異なる「他の吸入空気量に影響を与える制御対象」であるという限りにおいて、本願補正発明における「排気還流量」に相当するといえる。
してみると、本願補正発明と刊行物1に記載された発明とは、次の<一致点>の点で一致し、次の<相違点>の(A)ないし(C)の点で相違する。
<一致点>
「吸気弁のリフト・作動角を同時に拡大、縮小制御可能なリフト・作動角可変機構と、吸気弁のリフトの中心角の位相を遅進させる位相可変機構と、負荷を検出する手段と、内燃機関の負荷の変化率を検出する手段と、他の吸入空気量を制御する手段とを有し、
内燃機関の負荷の変化率の大きさに応じて上記吸気弁のリフト・作動角、中心角、他の吸入空気量に影響を与える制御対象のうち少なくとも1つの制御対象を選択して制御するとともに、上記負荷の変化率の大きさが異なる場合、選択する制御対象もしくは選択する制御対象の組み合わせを異ならせる車両用内燃機関の制御装置。」

<相違点>
(A)本願補正発明における「リフト・作動角可変機構」は吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ、「連続的に」拡大、縮小制御可能であるのに対し、刊行物1に記載された発明における「機構A」は吸気弁のリフト・作動角を「連続的に」拡大、縮小制御可能であるか不明である点(以下、「相違点A」という。)。

(B)本願補正発明においては「内燃機関の機関回転数を検出する手段」を有しているのに対し、刊行物1に記載された発明においては当該手段に相当するものを有しているのか不明である点(以下、「相違点B」という。)。

(C)本願補正発明においては、吸気弁のリフト・作動角、中心角を制御する手段とは異なる「他の吸入空気量を制御する手段」として「機関吸気系への排気還流量を制御する排気還流制御手段」を有し、選択して制御される制御対象として「排気還流量」を含んでいるのに対し、刊行物1に記載された発明においては「圧縮比可変手段及び吸気管内圧力可変手段」を有し、選択して制御される制御対象として「圧縮比及び過給圧」を含んでいるものの、「排気還流制御手段」を有するのか不明であって、「排気還流量」が制御対象として含まれるのか不明である点(以下、「相違点C」という。)。

(4)判断
上記相違点AないしCについて検討する。
(A)相違点Aについて
「吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ、連続的に拡大、縮小制御可能なリフト・作動角可変機構」は、本願出願前、当業者においてよく知られた周知の技術(必要であれば、特開2000-234533号公報(公開日:平成12年8月29日、例えば図6を参照。)、本願の発明の詳細な説明の段落【0034】において示された特開平11-107725号公報を参照のこと。以下、「周知技術1」という。)であって、刊行物1に記載された発明に当該周知技術1を採用し、吸気弁のリフト・作動角を連続的に特性を拡大、縮小制御可能にすることで上記相違点Aに係る本願補正発明のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(B)相違点Bについて
一般的に、車両用内燃機関の制御装置が「内燃機関の機関回転数を検出する手段」を有することは、例示するまでもなく技術常識であって、刊行物1において明記されていなくとも、刊行物1に記載された発明においても「内燃機関の機関回転数を検出する手段」を有していると解するのが妥当である。なお仮に、刊行物1に記載された発明が当該手段を有していないとしても、本願補正発明において当該検出された機関回転数をどのように利用するか特定されていない以上、刊行物1に記載された発明においても、技術常識である「内燃機関の機関回転数を検出する手段」を備えることは、当業者であれば適宜なし得ることである。
したがって、刊行物1に記載された発明に基いて上記相違点Bに係る本願補正発明のようにすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

(C)相違点Cについて
吸気弁のリフト・作動角可変機構又は位相可変機構と、機関吸気系への排気還流量を制御する排気還流制御手段とを共に備えた内燃機関は、本願出願前において、周知の技術(必要であれば、特開昭60-116842号公報(例えば、第12図に記載のテーブルで制御される排気還流率及び第17図に記載のテーブルで制御される吸気弁リフト、吸気弁開閉時期を参照のこと。)、特公平5-35256号公報(例えば、第2図、第4図、第6図を参照のこと。)を参照のこと。以下、「周知技術2」という。)であって、刊行物1に記載された発明に当該周知技術2である排気還流制御手段を付加することの困難性は認められず、また、排気還流制御手段を備えた内燃機関において、内燃機関の負荷の変化率の大きさに応じて、排気環流量を制御対象とすることも、本願出願前、当業者において周知の技術(必要であれば、平成22年2月16日付けの審尋において示された特開昭54-144521号公報(例えば、第2ページ第5欄第15行ないし同ページ第6欄第9行に記載された、急加速時と緩加速時の排気還流量の制御を参照のこと。以下、「周知技術3」という。)であるから、刊行物1に記載された発明に周知技術2に基いて排気還流制御手段を付加し、さらに、周知技術3に基いて排気還流量を制御することで、上記相違点Cに係る本願補正発明のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

また、本願補正発明を全体としてみても、その作用効果は、刊行物1に記載された発明及び周知技術1ないし3から当業者が予測できる範囲のものである。

(5)小括
したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
上記2のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、上記3のAないしCのとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成21年10月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年8月4日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(1)の【請求項1】に記載のとおりのものである。

2 刊行物に記載された発明
(1)引用文献1に記載された発明
(A)本願出願前に頒布された刊行物であって原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-3113号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の(ア)ないし(キ)の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「2.特許請求の範囲
1気筒について2つの吸気弁を備えた多気筒内燃機関において、これらの2つの吸気弁のそれぞれの弁開閉時期及び弁リフト量を機関の運転条件に応じて段階的に可変とする可変動弁機構を備え、これらの2つの吸気弁のリフト中心角に位相差を設けたことを特徴とする多気筒内燃機関。」(特許請求の範囲)

(イ)「これらの主、副両吸気ポート25、26及び排気ポート27をそれぞれ開閉する主、副両吸気弁29、30及び排気弁31は、それぞれロッカアーム32、33、22を介して駆動カム34により駆動される。第1図に示すように、主吸気弁29のロッカアーム32には可変動弁機構が装着されており、また、副吸気弁30にも図示していないが同様の可変動弁機構が装着され、両吸気弁29、30はその弁開閉時期及び弁リフト量が可変とされる。」(第2ページ右下欄第9ないし17行)

(ウ)「第7図及び第8図はそれぞれ主吸気弁29及び副吸気弁30のリフト制御カム37、50のカムプロフィ-ルを示している。同図に示すように、リフト制御カム37は、主吸気弁29の弁リフト量及び弁開閉時期を異ならせる5個のカム面37a、37b、37c 37d、37eを有しており、リフト制御カム50は副吸気弁30の弁リフト量及び弁開閉時期を異ならせる5個のカム面50a、50b、50c、50d、50eを有している。 …(中略)… また、第2図に示すように、これらのリフト制御カム37、50を支持するカム制御軸45の一端には減速機構51を介してステッピングモータ52が連結されている。なお、このステッピングモータ52は図外の制御手段(例えば車載のマイクロコンピュータ)により駆動されるもので、この制御手段は、回転数センサ、水温センサ等から入力された各種の検出信号に基づいて機関の運転条件を判別し、この運転条件に応じて上記モータ52を駆動するものである。」(第3ページ右上欄第13行ないし同ページ左下欄第20行)

(エ)「まず、機関のアイドリング時及び始動時にはステッピングモータ52によりカム制御軸45を駆動回転して各リフト制御カム37及び50をカム面37a、50aがそれぞれ主・副両吸気弁29、30の各レバー36に当接するように回動する。 …(中略)… 。従って、主吸気弁29及び副吸気弁30は、第10図に示すように(実線Xが主吸気弁29のリフト特性を、破線Yが副吸気弁30のそれを、実線Zが排気弁31のそれを、それぞれ示す)、それぞれ最小の弁リフト量で、主吸気弁29のリフト中心角が進み側に(上死点側に)、副吸気弁30のリフト中心角が遅れ側に(下死点側に)移行する。このため、吸・排気弁間のバルブオーバラップはなくなり、燃焼室24内の残留ガスが減少し、燃焼状態が安定化(アイドリングが安定化)する。また、主・副両吸気弁29、30の閉弁時期が共に下死点前となる結果、第16図にこの場合のP-V線図を示すように、機関のポンピング損失も大幅に低減される。」(第3ページ右下欄第2行ないし第4ページ左上欄第3行)

(オ)「次に、機関の低速低負荷運転時は、カム制御軸45を回転してリフト制御カム37、50のカム面37b、50bでレバー36の一端部を押し下げる。この結果、ロッカアーム32の支点接触点が駆動カム34側に移行し、主吸気弁29及び副吸気弁30は、第11図に示すように、小さな弁リフト量で異なるリフト中心角で駆動される。 …(中略)… 。
次に、機関の低速全開時は、リフト制御カム37、50のカム面37c、50cでレバー36の一端部をさらに押し下げる。この結果、ロッカアーム32の支点接触点はさらに第1図中左方に移行し、主・副両吸気弁29、30のリフト特性は、第12図に示すように、弁リフト量が増加する。 …(中略)… 。
また、機関速度がさらに上昇すると、カム面37d、50dでレバー36をさらに押し下げることとなり、主吸気弁29のリフト量、開閉時期は変化しないが、副吸気弁30はその弁リフト量が増し、閉弁時期は下死点よりさらに遅れる。第13図はこの場合のリフト特性を示している。 …(中略)… 。
さらに、機関回転速度が高められると、カム面37e、50eでレバー36をさらに押し下げることになり、副吸気弁30の弁リフト量が増し、その閉弁時期が主吸気弁29のそれと同一となる。第14図はこの場合のリフト特性を示している。」(第4ページ左上欄第4行ないし同ページ右上欄第16行)

(カ)「また、第15図は、機関回転速度(横軸)と機関負荷(アクセル開度、縦軸)との関係におけるリフト制御カム37、50のカム面の変化を示している。すなわち、図中点Pで示すアイドル時はカム面37a、50aに、図中領域Qの低速低負荷時はカム面37b、50bに、領域Rの低速全開時はカム37c、50cに、領域Sの中速時はカム面37d、50dに、領域Tの高速時はカム面37e、50eに、それぞれ対応している。」(第4ページ左下欄第6ないし14行)

(キ)「なお、上記実施例にあってはリフト制御カムにより5段階の制御を行ったが、これに限られないことはもちろんである。」(第4ページ左下欄第19行ないし同ページ右下欄第1行)

(B)上記(A)(ア)ないし(キ)及び図面の記載から、引用文献1には次の(サ)ないし(セ)の事項が記載されていることがわかる。
(サ)上記(A)(ウ)の記載から、引用文献1に記載された多気筒内燃機関は、車載のマイクロコンピュータのような「制御手段」によって制御されることがわかる。

(シ)上記(A)(ア)ないし(オ)及び第9ないし14図の記載から、引用文献1に記載された多気筒内燃機関における「可変動弁機構35」は、「主吸気弁29及び副吸気弁30の弁リフト量・弁開閉時期を同時にかつ、段階的に拡大、縮小制御可能」であることがわかる。

(ス)上記(A)(ウ)ないし(カ)及び第15図の記載から、引用文献1に記載された多気筒内燃機関における「制御手段」は、「内燃機関の機関回転数及び負荷を検出する手段」を有していることがわかる。

(セ)上記(A)(ウ)ないし(カ)及び第10ないし15図の記載から、引用文献1に記載された多気筒内燃機関における「制御手段」は、「内燃機関の負荷に応じて上記主吸気弁29及び副吸気弁30の弁リフト量・弁開閉時期を制御する」ことがわかる。

(C)引用文献1に記載された発明
上記(A)及び(B)並びに図面の記載から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1に記載された発明」という。)が記載されているといえる。
「主吸気弁29及び副吸気弁30の弁リフト量・弁開閉時期を同時にかつ、段階的に拡大、縮小制御可能な可変動弁機構35と、
内燃機関の機関回転数及び負荷を検出する手段とを有し、
内燃機関の負荷に応じて上記主吸気弁29及び副吸気弁30の弁リフト量・弁開閉時期を制御する多気筒内燃機関の制御手段。」

3 対比
本願発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、引用文献1に記載された発明における「主吸気弁29及び副吸気弁30」は、その技術的意義からみて、本願発明における「吸気弁」に相当し、以下同様に、「弁リフト量」は「リフト」に、「弁開閉時期」は「作動角」に、「多気筒内燃機関の制御手段」は「車両用内燃機関の制御装置」に、それぞれ相当する。
また、引用文献1に記載された発明における「可変動弁機構35」は、「吸気弁のリフト・作動角を同時に拡大、縮小制御可能なリフト・作動角可変機構」であるという限りにおいて、本願発明における「リフト・作動角可変機構」に相当する。
さらに、引用文献1に記載された発明における「内燃機関の負荷」は、「内燃機関の負荷の状態」である限りにおいて、本願発明における「内燃機関の負荷の変化率」に相当し、また、引用文献1に記載された発明における「主吸気弁29及び副吸気弁30の弁リフト量・弁開閉時期を制御する」点は、「吸気弁のリフト・作動角を制御対象として制御する」限りにおいて、本願発明における「上記吸気弁のリフト・作動角、中心角及び排気還流量のうち少なくとも1つを選択して制御する」点に相当する。
よって、本願発明と引用文献1に記載された発明とは、次の<一致点>の点で一致し、次の<相違点>の(1)ないし(3)の点で相違する。

<一致点>
「吸気弁のリフト・作動角を同時に拡大、縮小制御可能なリフト・作動角可変機構と、内燃機関の機関回転数及び負荷を検出する手段とを有し、
内燃機関の負荷の状態に応じて上記吸気弁のリフト・作動角を制御対象として制御する車両用内燃機関の制御装置。」

<相違点>
(1)本願発明における「リフト・作動角可変機構」は吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ、「連続的に」拡大、縮小制御可能であるのに対し、引用文献1に記載された発明における「可変動弁機構35」は吸気弁のリフト・作動角を「段階的に」拡大、縮小制御可能である点(以下、「相違点1」という。)。

(2)本願発明においては「リフト・作動角可変機構」のほか「吸気弁のリフトの中心角の位相を遅進させる位相可変機構」と「機関吸気系への排気還流量を制御する排気還流制御手段」とを有し、「吸気弁のリフト・作動角、中心角及び排気還流量のうち少なくとも1つを選択して制御する」のに対し、引用文献1に記載された発明においては「可変動弁機構35」を有するものの「位相可変機構」に相当する機構及び「排気還流制御手段」に相当する手段を有するか否かは不明である点(以下、「相違点2」という。)。

(3)本願発明においては「内燃機関の負荷の変化率を検出する手段」を有し、「内燃機関の負荷の変化率に応じて」制御を行うのに対し、引用文献1に記載された発明においては「内燃機関の負荷」を検出し、「内燃機関の負荷に応じて」制御を行うものの、負荷の変化率を検出し、当該負荷の変化率に応じて制御するのか不明である点(以下、「相違点3」という。)。

4 判断
上記相違点1ないし3について検討する。
(1)相違点1について
「吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ、連続的に拡大、縮小制御可能なリフト・作動角可変機構」は、上記第2[理由]3 C(4)(A)において「周知技術1」として示したように、本願出願前、当業者においてよく知られた周知の技術であって、上記2(1)(A)(キ)に摘記した引用文献1の記載からみて、引用文献1に記載された発明に当該周知技術1を採用し、吸気弁のリフト・作動角を連続的に特性を拡大、縮小制御可能にすることで上記相違点1に係る本願補正発明のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
吸気弁のリフト・作動角可変機構と位相可変機構とを備えた内燃機関は、本願出願前において、周知の技術(必要であれば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-247815号公報の例えば図1に記載された「バルブリフト制御機構A」及び「バルブタイミング制御機構B」、特開平5-1575号公報の例えば図1に記載された「バルブリフト制御機構A」及び「バルブタイミング制御機構B」、特許第2890214号公報の例えば図1に記載された「リフト量制御手段12」及び「位相制御手段10」をそれぞれ参照のこと。以下、「周知技術4」という。)であって、また、吸気弁のリフト・作動角可変機構又は位相可変機構と、機関吸気系への排気還流量を制御する排気還流制御手段とを備えた内燃機関も、上記第2[理由]3 C(4)(C)において「周知技術2」として示したように、周知の技術である。そして、引用文献1に記載された発明において当該周知技術2及び4を付加することは当業者が適宜なし得ることであって、当該周知技術2及び4を付加した引用文献1に記載された発明においても、内燃機関の負荷の状態に応じて「可変動弁機構35」を選択して制御することにより、上記相違点2に係る本願発明のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(3)相違点3について
「内燃機関の負荷の変化率を検出する手段」を有し「内燃機関の負荷の変化率に応じて」制御を行う内燃機関は、本願出願前において周知の技術(必要であれば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-253744号公報の例えば特許請求の範囲及び第3ページ右下欄第4ないし20行に記載された吸気管圧力の増分ΔPMを算出し所定のΔPMOより大か否かを判定する「加速状態判定手段16」及び「EGRオン手段20」、同特開平8-170550号公報の例えば段落【0041】ないし【0043】に記載された「負荷変化率ΔQ/Nを算出する」点及び「負荷変化率ΔQ/Nと図4に示すマップに基づいて進角補正値θaを算出する」点、また、上記刊行物1(特開平10-9005号公報)に記載された過渡運転状態を判定する手段を参照のこと。以下、「周知技術5」という。)である。そして、引用文献1に記載された発明に当該周知技術5を適用することで、上記相違点3に係る本願発明のようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
なお、本願発明における「内燃機関の負荷の変化率に応じて」制御を行う技術が、上記第2[理由]3 Bにおいて示したように、ある負荷状態から他の負荷状態への移行を検出するものも含むのであれば、引用文献1に記載された発明においても、例えば第15図のマップに基づいて制御を行っており、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項と同様の制御がなされているともいえる。

また、本願発明を全体としてみても、その作用効果は、引用文献1に記載された発明並びに周知技術1、2、4及び5から当業者が予測できる範囲のものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明並びに周知技術1、2、4及び5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

第4 付言
1 平成22年4月6日付け回答書における補正案について
本件請求人は、平成22年4月6日付けで提出された回答書において、明細書の特許請求の範囲を次のとおり補正することを希望している。
「[請求項1]
吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ、連続的に拡大、縮小制御可能なリフト・作動角可変機構と、吸気弁のリフトの中心角の位相を遅進させる位相可変機構と、内燃機関の機関回転数及び負荷を検出する手段と、内燃機関の負荷の変化率を急加速、中程度の加速、緩加速に分けて検出する手段と、機関吸気系への排気還流量を制御する排気還流制御手段と、を有し、
内燃機関の無負荷運転条件においては、吸気弁の閉時期が下死点近傍または下死点よりも早い小作動角に制御すると共に、
無負荷運転からの急加速の場合には、主として吸気弁の作動角の拡大を行い、
無負荷運転からの中程度の加速の場合には、主として吸気弁の作動角の拡大を行うと共に、上記排気還流制御手段により機関吸気系に排気を還流させ、
無負荷運転からの緩加速の場合には、主として吸気弁の中心角を進角させることを特徴とする車両用内燃機関の制御装置。
[請求項2]
吸気弁のリフト・作動角を同時にかつ、連続的に拡大、縮小制御可能なリフト・作動角可変機構と、吸気弁のリフトの中心角の位相を遅進させる位相可変機構と、内燃機関の機関回転数及び負荷を検出する手段と、内燃機関の負荷の変化率を急加速、中程度の加速、緩加速に分けて検出する手段と、機関吸気系への排気還流量を制御する排気還流制御手段と、を有し、
平坦路の一定速運転条件においては、吸気弁の閉時期が下死点よりも早い小作動角に制御すると共に、
一定速運転からの急加速の場合には、吸気弁の作動角の拡大と、吸気弁の中心角の遅角を併行して行い、
一定速運転からの中程度の加速の場合には、吸気弁の作動角の拡大と、吸気弁の中心角の遅角を併行して行うと共に、上記排気還流制御手段により機関吸気系に排気を還流させ、
一定速運転からの緩加速の場合には、主に吸気弁の中心角の進角を行うことを特徴とする車両用内燃機関の制御装置。
[請求項3] 上記リフト・作動角可変機構は、駆動軸により回転駆動される偏心カムと、この偏心カムの外周に相対回転可能に嵌合したリンクアームと,上記駆動軸と平行に設けられ、かつ偏心カム部を備えた回動可能な制御軸と、この制御軸の偏心カム部に回転可能に装着され、かつ上記リンクアームにより揺動されるロッカアームと、上記駆動軸に回転可能に支持されるとともに、上記ロッカアームにリンクを介して連結され、該ロッカアームに伴って揺動することにより吸気弁のタペットを押圧する揺動カムと、を備えており、上記制御軸の偏心カム部の回動位置を変化させることにより吸気弁のリフト・作動角が同時に増減変化するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用内燃機関の制御装置。
[請求項4] 上記位相可変機構は、上記駆動軸と同心に回転可能に配置され、かつチエーンもしくはタイミングベルトを介してクランクシャフトに従動するスプロケットと、このスプロケットと上記駆動軸との間に装着され、両者の相対的な位相を変化させる手段と、を備えていることを特徴とする請求項3に記載の車両用内燃機関の制御装置。
[請求項5] 上記排気還流制御手段は、排気系からスロットル弁下流の吸気系に排気を導く排気還流通路と、該排気還流通路に介装され、内燃機関の運転条件に応じて開度が制御される排気還流制御弁と、を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用内燃機関の制御装置。」
そこで、上記[請求項1]に記載された事項により特定される発明(以下、「希望する請求項1に係る発明」という。)が特許を受けることができるかについて、検討する。

2 希望する請求項1に係る発明の特許性について
A 特許法第36条第4項について
希望する請求項1に係る発明において、「内燃機関の負荷の変化率を急加速、中程度の加速、緩加速に分けて検出する手段」との発明特定事項が認められるが、上記第2[理由]3 Bにおいて示したように、具体的に内燃機関の負荷の変化率からどのように急加速、中程度の加速、緩加速に分けて検出するのか、発明の詳細な説明には、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が、希望する請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいい難い。
よって、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

B 特許法第29条第2項について
(1)刊行物1に記載された発明について
上記の刊行物1(特開平10-9005号公報)の記載事項は、上記第2[理由]3 C(2)に記載したとおりである。

(2)対比
希望する請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、上記相違点AないしCのほか、次の<相違点>の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点>
希望する請求項1に係る発明においては、「内燃機関の負荷の変化率を急加速、中程度の加速、緩加速に分けて検出する手段」を有し、「内燃機関の無負荷運転条件においては、吸気弁の閉時期が下死点近傍または下死点よりも早い小作動角に制御する」と共に、「無負荷運転からの急加速の場合には、主として吸気弁の作動角の拡大を行い」、「無負荷運転からの中程度の加速の場合には、主として吸気弁の作動角の拡大を行うと共に、排気還流制御手段により機関吸気系に排気を還流させ」、「無負荷運転からの緩加速の場合には、主として吸気弁の中心角を進角させる」のに対し、刊行物1に記載された発明においては、「内燃機関の負荷の変化率を急加速、緩加速に分けて検出する手段」を有し、「急加速」及び「緩加速」に応じて「バルブタイミング可変手段」等を制御するものの、「中程度の加速」を検出する点、並びに、「無負荷運転条件」、「無負荷運転からの急加速」、「無負荷運転からの中程度の加速」及び「無負荷運転からの緩加速」の場合に行う制御については不明である点。

(3)判断
上記の引用文献1(特開昭62-3113号公報)には、上記第3 2(1)(A)(エ)に摘記したように、「機関のアイドリング時」に「主・副両吸気弁29、30の閉弁時期」を共に「下死点前」となるようにした技術が記載され、また、上記第3 2(1)(A)(オ)及び(カ)に摘記したように、機関の負荷が大きくなるにしたがって「主・副両吸気弁29、30の弁リフト量及び弁開閉時期の拡大を行う」技術が記載されているといえる(以下、両技術を併せて「引用文献1に記載された技術」という。)。
また、無負荷運転よりも負荷が大きくなる運転領域にて吸気弁の中心角を進角させることは、例えば、原査定の拒絶の理由で引用された特開平7-247815号公報の例えば段落【0045】ないし【0048】及び図9のX3(破線)、及び、今回新たに提示する特開平11-82074号公報の段落【0025】及び図5に記載されているように、本願出願前において周知の技術(以下、「周知技術6」という。)である。
さらに、中程度の加速の場合に、排気還流制御手段により機関吸気系に排気を還流させることは、例えば、特開平5-321680号公報の図2、特開平1-208550号公報の第10図、特公昭62-11178号公報の第8図に記載されているように、本願出願前において周知の技術(以下、「周知技術7」という。)である。
そして、刊行物1に記載された発明に、引用文献1に記載された技術並びに周知技術1ないし3、6及び7に適用することは、当業者であれば適宜なし得ることである。
また、希望する請求項1に係る発明を全体としてみても、その作用効果は、刊行物1に記載された発明、引用文献1に記載された技術、並びに、周知技術1ないし3、6及び7から当業者が予測できる範囲のものである。

(4)小括
よって、希望する請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明、引用文献1に記載された技術、並びに、周知技術1ないし3、6及び7に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 まとめ
したがって、上記2 A及びBの点で、補正の機会があるとしても、希望する請求項1に係る発明は特許を受けることができないことから、補正の機会を設けることなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-06 
結審通知日 2010-08-10 
審決日 2010-08-24 
出願番号 特願2000-274599(P2000-274599)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F02D)
P 1 8・ 121- Z (F02D)
P 1 8・ 537- Z (F02D)
P 1 8・ 57- Z (F02D)
P 1 8・ 536- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畔津 圭介  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 鈴木 貴雄
金澤 俊郎
発明の名称 車両用内燃機関の制御装置  
代理人 小林 博通  
代理人 橋本 剛  
代理人 富岡 潔  

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