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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) H04N
管理番号 1224803
判定請求番号 判定2010-600017  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2010-11-26 
種別 判定 
判定請求日 2010-04-21 
確定日 2010-10-12 
事件の表示 上記当事者間の特許第3965462号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す東芝製HDDレコーダーは、特許第3965462号発明(請求項1乃至10に係る発明)の技術的範囲に属しない。 
理由 1 請求の趣旨
本件の請求の趣旨は、
イ号図面及びその説明書に示す東芝製HDDレコーダーは、特許第3965462号の請求項1乃至10に記載された各特許発明の技術的範囲に属しない、
との判定を求めるものである。

2 本件特許発明
本件特許発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求人が判定を求める請求項1乃至10に係る発明(以下それぞれ請求項の番号を用いて「本件特許発明1」等という。)は、下記のとおりのものである。
なお、本件特許発明1については、便宜上、構成要件に分説して符号A?Eを付した。

記(本件特許発明1?本件特許発明10)
【請求項1】
A ソフトウエアの更新情報をダウンロード可能なテレビジョン・システムにおいて、
B 複数の受信装置であって、各々が、テレビジョン受信機と、セットトップ・ボックスと、ビデオ・レコーダと、テレビジョン及びビデオ・レコーダの結合体とのいずれか1つからなる、複数の受信装置と、
C 前記複数の受信装置の各々に対応して設けられた受信機であって、前記ソフトウエアの更新情報に関連しかつ前記複数の受信装置の少なくとも1つを識別する識別子を含んでいるデータを受信する受信機と、
D 前記複数の受信機それぞれに対応して設けられ、前記ソフトウエアの更新情報に関連するデータを記憶するメモリであって、前記識別子が対応する受信装置を表している場合にのみ、当該データが記憶される、ところのメモリと、
E 前記受信装置のそれぞれに対応して設けられたプロセッサであって、それぞれが、前記メモリと前記受信機の少なくとも1つとに結合しており、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを実装すべき旨のユーザ指示に応答して、前記データを用いて、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つを、前記受信装置の少なくとも1つにおいて実装するプロセッサと
A を備えていることを特徴とするテレビジョン・システム。

【請求項2】
請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、該システムはさらに、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つに関係する情報を表示するスクリーンを有するデバイスを少なくとも1つ備えていることを特徴とするテレビジョン・システム。

【請求項3】
請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、該システムはさらに、前記ソフトウエアの更新情報を注文するための少なくとも1つの電話を購えており、前記ソフトウエアの更新情報の実装に必要なデータは、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つが前記電話を用いて注文された後に、前記受信装置にダウンロードされることを特徴とするテレビジョン・システム。

【請求項4】
請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、該システムはさらに、セットトップ・ボックスを介して前記ソフトウエアの更新情報を注文する少なくとも1つの遠隔制御装置を備えており、前記ソフトウエアの更新情報の実装に必要なデータは、前記ソフトウエアの更新情報の少なくとも1つが前記遠隔制御装置を用いて注文された後に、前記受信装置にダウンロードされることを特徴とするテレビジョン・システム。

【請求項5】
請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、前記ソフトウエアの更新情報は、ソフトウエアの修理に関する情報を含むことを特徴とするテレビジョン・システム。

【請求項6】
請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、前記ソフトウエアの更新情報は、赤外線(IR)コードを指定することを特徴とするテレビジョン・システム。

【請求項7】
請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、前記ソフトウエアの更新情報は、ピクチャ・イン・ピクチャの拡張、ピクチャ・イン・ピクチャ画面のチャネル識別子、表示されたチャネル識別子を有するグラフィック・ネットワークのロゴ及びアイコン、拡張されたデータ・サービス、株相場サービス、バーチャル・チャネル・サービス、ニュース・サービス、気象情報サービス、及びスポーツ・スコア・サービスの少なくとも1つに関する情報であることを特徴とするテレビジョン・システム。

【請求項8】
請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、前記受信装置の各々は、テレビジョンと、セットトップ・ボックスと、ビデオ・レコーダとのいずれか1つからなることを特徴とするテレビジョン・システム。

【請求項9】
請求項1記載のテレビジョン・システムにおいて、前記プロセッサは各々、ダウンロード可能な新規のソフトウエアの更新情報が利用可能となったときに、該ソフトウエアの更新情報を広告するためのアイコンを表示するように構成されていることを特徴とするテレビジョン・システム。

【請求項10】
請求項9記載のテレビジョン・システムにおいて、前記プロセッサは、ユーザによる新規のダウンロード可能なソフトウエアの更新情報に関連するデータの要求に応答して、該情報を受信するよう構成されていることを特徴とするテレビジョン・システム。

3 イ号物品
請求人が判定を求めているイ号物品は、判定請求書の記載(6頁23行?7頁5行)、判定請求書に添付して提出した「イ号図面および説明書」及び同じく提出した「東芝製HDDレコーダRD-E160取扱説明書」(甲第4号証)からみて、下記のとおりのものである。
なお、イ号物品の構成については、便宜上、上記構成要件A?Eに対応して符号A’?E’を付した。

記(イ号物品)
A’ 更新ソフトウェアをダウンロード可能なHDDレコーダーである。
B’ 単一のHDDレコーダーである。
C’ このHDDレコーダーは、地上波デジタルチューナ、BSチューナ、CSチューナを備える。このうち地上波デジタルチューナおよびBSチューナは、更新ソフトウェアを受信する。さらに、このHDDレコーダーは、LANインターフェイスを備え、インサーネット通信を使って、東芝サーバーから更新ソフトウエアを受信する。
D’ このHDDレコーダーは、DRAMもしくはフラッシュメモリを備えている。
地上波チューナまたはBSチューナで受信されたデータは、OFDM復調部において、復調処理および誤り訂正処理を施されて、TSパケット情報に変換される。このTSパケット情報は、多重分離部において、映像信号・音声信号・データ放送用信号・EPG信号等に分離される。分離されたデータのうち、更新ソフトウェアは、DRAMに一時的に記憶される。その後、CPUを介してフラッシュメモリに更新ソフトウェアが上書きされることで、ソフトウェアの更新が完了する。
また、東芝サーバーから受信した更新ソフトウエアも、同様に、DRAMに一時的に記憶され、その後、CPUを介してフラッシュメモリに更新ソフトウェアが上書きされることで、ソフトウェアの更新が完了する。
E’ このHDDレコーダーは、CPUを備えている。このCPUは、DRAM、フラッシュメモリ、地上波デジタルチューナならびにBSチューナと間接的に接続されている。また、このCPUはLANインターフェイスと間接的に接続されている。

請求人は、イ号物品として、東芝サーバーからLAN接続を使用したインサーネット通信でソフトウエアをダウンロードすることによりバージョンアップをすることを認定していないが、「イ号図面および説明書」の2頁の「RD-E160 取扱説明書 応用編72頁」によると、ソフトウエアのバージョンアップには、【放送からの自動ダウンロード】及び【サーバからのダウンロード開始】があることが認められるから、上記のように認定した。

なお、被請求人は、イ号物品が単一のHDDレコーダー(RD-E160)であるとした場合には、この判定は意義がないから、イ号物品が複数のHDDレコーダー(RD-E160)であるとして考察されるべきであると主張するが、本件判定におけるイ号物品は、上記のとおりの単一のHDDレコーダーであり、被請求人の主張は採用できない。

4 対比
そこで、本件特許発明1の構成要件とイ号物品の構成要件とを対比検討する。
本件特許発明1の「テレビジョン・システム」は、 上記【請求項1】記載からみて、
「複数の受信装置であって、各々が、テレビジョン受信機と、セットトップ・ボックスと、ビデオ・レコーダと、テレビジョン及びビデオ・レコーダの結合体とのいずれか1つからなる、複数の受信装置」
を備えている。
また、本件特許明細書には、次の記載がある。
「本発明は、好適な実施例においては、ダウンロード可能な機能を提供することを意図しており、より詳細には、このような機能をテレビジョン・システムの識別特定された受信装置に提供することを意図している。機能は製造業者に所望のものであり、(1)ソフトウエアの障害を訂正すること、(2)ソフトウエアを追加又は更新すること、(3)汎用性の要求を満足するためのものである。機能はまた、テレビジョン・システムの広告に応答して、これらの機能に関する勧誘、広告に応答する顧客が、注文できるものである。例えば、広告は、特定の顧客のテレビジョン(又は、他の電子的プロダクト)にネットワークを介して、プロダクトの電子的シリアル番号に基づいて、電子的に供給される。これらのソフトウエアの更新情報は、テレビジョン・システムに機能的に追加可能である。これらのソフトウエアの更新情報に関連するデータは、コンパイルされてメイン装置(中央装置)から多数の受信装置に配置される顧客の電子的プロダクト(例えば、テレビジョン)に対して送信される。」(甲第2号証、5頁31?42行)
この記載からも、本件特許発明1の「テレビジョン・システム」は、複数の受信装置を備えていることが理解できる。
一方、イ号物品は、更新ソフトウエアをダウンロード可能である単一のHDDレコーダーであり、また、イ号物品は、更新ソフトウエアを受信するから、受信装置といえる。そうすると、イ号のHDDレコーダーは、単一の受信装置といえる。
したがって、イ号のHDDレコーダーは、単一の受信装置であって、複数の受信装置を備えたテレビジョン・システムでないから、本件特許発明1の構成要件A及びBを充足しない。
構成要件Cは、「前記複数の受信装置の各々に対応して設けられた受信機であって、・・・」であり、構成要件Dは、「前記複数の受信機それぞれに対応して設けられ、前記ソフトウエアの更新情報に関連するデータを記憶するメモリであって、・・・」であり、構成要件Eは、「前記受信装置のそれぞれに対応して設けられたプロセッサであって、・・・」であり、複数の受信装置の各々に設けられた構成(「受信機」、「メモリ」、「プロセッサ」)であるから、構成要件C、D及びEも複数の受信装置を備えることを前提とするものである。したがって、単一の受信装置であるイ号物品は、本件特許発明1の構成要件C、D及びEを充足しない。

以上のとおり、イ号物品は、本件特許発明1の構成要件A?Eを充足しないから、イ号物品は、本件特許発明1の技術的範囲に属しない。

本件特許発明2乃至10は、本件特許発明1を引用する発明であるので、同様に、イ号物品は、本件特許発明2乃至10の構成要件(構成要件A?E)を充足しないから、イ号物品は、本件特許発明2乃至10の技術的範囲に属しない。

さらに、請求人は、均等の判断についての主張をしているので、検討する。
上記のとおり、イ号物品は単一の受信装置といえ、単一の受信装置以外の受信装置は存在しないのであるから、複数の受信装置を備えている本件特許発明1の1つの受信装置にイ号物品を対応させると、本件特許発明1のそれ以外の受信装置に対応するものは、イ号物品には存在しない。
そうすると、イ号物品は本件特許発明1の構成を欠くものであり、構成の異なる部分を置き換えることを前提とする均等なものにはなり得ない。
本件特許発明2乃至10は、本件特許発明1を引用する発明であるので、同様に、イ号物品は本件特許発明2乃至10の構成(本件特許発明1の構成)を欠くものであり、構成の異なる部分を置き換えることを前提とする均等なものにはなり得ない。

5 むすび
以上のとおりであるから、イ号図面及びその説明書に示す東芝製HDDレコーダーは、本件特許発明(請求項1乃至10に係る特許発明)の技術的範囲に属しない。

よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2010-09-30 
出願番号 特願平9-501931
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 古川 哲也  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 小池 正彦
梅本 達雄
登録日 2007-06-08 
登録番号 特許第3965462号(P3965462)
発明の名称 ダウンロード可能なソフトウエアの更新情報を有するテレビジョン・システム  
復代理人 大塩 竹志  
代理人 村井 賢郎  
代理人 堀口 浩  
代理人 森下 夏樹  
代理人 玉城 健  
代理人 山本 秀策  
代理人 安村 高明  

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