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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60Q
管理番号 1225434
審判番号 不服2009-12316  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-06 
確定日 2010-10-15 
事件の表示 平成11年特許願第229337号「回転式警光灯」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月27日出願公開、特開2001- 55086号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】手続の経緯

本願は、平成11年 8月13日の特許出願であって、平成21年 4月 3日付けで拒絶査定がなされ、この拒絶査定を不服として、平成21年 7月 6日に本件審判請求がなされるとともに手続補正(前置補正)がなされたものである。

【第2】平成21年 7月 6日付け(審判請求時)の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年 7月 6日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明

本件補正により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】光源ランプと、その周囲を回転するリフレクタと、これらの周囲を覆うレンズとを備え、車両に装備される回転式警光灯において、前記レンズを赤色かつ透明に着色するとともに、乗員の視点とリフレクタを結ぶ線により区切られるレンズ内面に不透明又は半透明のマスク部を設け、このマスク部をレンズと同色又は近似色の塗装により形成したことを特徴とする回転式警光灯。」
と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「レンズ」について、「前記レンズを赤色かつ透明に着色するとともに」との構成に限定し、同じく「マスク部」について、「このマスク部をレンズと同色又は近似色の塗装により形成した」との構成に限定するものであり、この限定した事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されており、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないから、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号でいう特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、上記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(同法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下で検討する。

2.引用例等及びその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願平3-13704号(実開平4-101307号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加)。

ア:「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、自動二輪車に搭載し、点滅又は連続点灯して使用する自動二輪車用警告灯の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より交通警察の巡回用として「白バイ」と称される自動二輪車が使用されており、この種の車両には緊急時に点滅又は連続点灯して使用する警告灯が取り付けられている。」

イ:「【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、上記警告灯は一般に点灯用のバルブの周りをグローブ形状のレンズによって覆った構造になっているため、遮光構造がなく車両の運転者の方向にも光束が照射され非常に眩しく運転しづらいものであった。従って、取り付け車種ごとに灯具自体の反射鏡を調整する方法を採っており、大変面倒であるという問題を有していた。
【0004】
本考案は、上記問題に鑑みて創案されたものであり、運転者方向への光束の照射を遮断し、妨眩作用により自動二輪車の安全運転を確保することが出来る自動二輪車用警告灯を提供することを目的とするものである。」

ウ:「【0007】
【作用】
上記構成によれば、点灯用の光源を覆っているグローブのレンズ部に遮光性塗装膜又は遮光シールからなる遮光部を構成したことによって、レンズ部を透過する自動二輪車の運転者方向への光束を遮断することができる。これによって、自動二輪車の安全運転を確保することができる。
【0008】
【実施例】
以下、本考案に係る自動二輪車用警告灯の好ましい実施例を図面に従って説明する。
図1乃至図3は、遮光塗装膜を使用した本考案の第一の実施例を示すものである。
1は、底面に自動二輪車のバンパー等(図示せず)に固設するための適宜取付構造2を構成したベース部材であり、上面中央に固設したバルブソケット3に点灯用のバルブ4を交換可能に取り付けてある。該点灯用のバルブ4の外周には旋回自在に軸設したリフレクタが枢設してあり、上記ベース部材1の上面に構成した回転駆動機構6によって点灯用のバルブ4の周りを周回するようになる。
【0009】
上記ベース部材1には点灯用のバルブ等4を覆うように、例えばポリカーボネイト樹脂等の透光性合成樹脂からなる釣鐘型のレンズグローブ7を被設し、灯室8を構成すると共に、灯室8を気密的に保持してなる。
【0010】
9は、使用時に運転者方向に向かう光軸と対応する上記レンズグローブ7の表面側域(矢印A)に遮光性塗料を塗着した遮光性塗装膜10からなる遮光部を囲繞するように形成した見切りリブであり、遮光性塗料は該見切りリブ9によって液垂れを阻止され、遮光性塗装膜10の輪郭を明確にしている。
【0011】
上記構成になる自動二輪車用警告灯は、自動二輪車のバンパー等に固設して使用するもので、回転駆動機構6によってリフレクタ5を旋回させ、点灯用のバルブ4からの光束を旋回するものであるが、このとき遮光性塗装膜10によって運転者に向かう光束は遮断されるようになり、該光束による眩しさを解消することができる。」

エ:「【0013】
【考案の効果】
本考案に係る自動二輪車用警告灯は、以上のように構成したから、点灯時に運転者方向に向かう光軸と対応するレンズグローブの表面側域に遮光構造を構成したことにより、運転者に向かう光束を遮断し、該灯具からの光束による眩しさを解消することができ、安全性を確保することができる。」

オ:上記摘記事項ウと図1からは、レンズグローブ7が点灯用のバルブ4とリフレクタ5の周囲を覆っていることが看取される。

図1?3と共に、上記摘記事項ア?オを総合すると、上記引用例1には、
「点灯用のバルブ4と、該点灯用のバルブ4の周りを周回するリフレクタ5と、点灯用のバルブ4及びリフレクタ5を覆うように被設されたレンズグローブ7とを備え、回転駆動機構6によってリフレクタ5を旋回させ、点灯用のバルブ4からの光束を旋回する、自動二輪車に固設された警告灯において、
前記レンズグローブ7は、透光性合成樹脂からなるとともに、使用時に運転者方向に向かう光軸と対応する前記レンズグローブ7の表面側域に遮光性塗料を塗着した遮光性塗装膜10からなる遮光部を設けた警告灯。」
に関する発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.発明の対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「警告灯」は、回転駆動機構6によってリフレクタ5を旋回させ、点灯用のバルブ4からの光束を旋回するように機能するのであるから、その機能構造からみて、本願補正発明の「回転式警光灯」に相当する。さらに、自動二輪車に固設されているから「車両に装備される」ものである点で一致している。
また、引用発明における「点灯用のバルブ4」は、本願補正発明の「光源ランプ」に相当し、以下同様に、「該点灯用のバルブ4の周りを周回するリフレクタ5」は「その周囲を回転するリフレクタ」に、「点灯用バルブ4及びリフレクタ5を覆うように被設されたレンズグローブ7」は「これらの周囲を覆うレンズ」にそれぞれ相当する。
そして、本願補正発明における「レンズを赤色かつ透明に着色する」ことと、引用発明における「レンズグローブ7は透光性合成樹脂からなる」こととは、「レンズを透明にする」ことである限りにおいて一致する。
次いで、引用発明における「遮光性塗装膜10からなる遮光部」は、リフレクタ5を旋回させ点灯用のバルブ4からの光束を旋回するものにおいて、使用時に運転者方向に向かう光軸と対応するレンズグローブ7の表面側域を遮光しているのであるから、その機能構造からみて、本願補正発明の「マスク部」に相当する。該「マスク部」は、さらに、使用時に運転者方向に向かう光束を遮光するという機能を有しているのであるから、少なくともレンズグローブ7の「乗員の視点とリフレクタを結ぶ線により区切られる」領域を覆っているものであり、「不透明又は半透明」である限りにおいて一致する。また、遮光部は「遮光性塗装膜10」からなるから、「塗装により形成した」ものである点で一致する。
よって、本願補正発明の「乗員の視点とリフレクタを結ぶ線により区切られるレンズ内面に不透明又は半透明のマスク部を設け、このマスク部をレンズと同色又は近似色の塗装により形成したこと」と、引用発明の「使用時に運転者方向に向かう光軸と対応する前記レンズグローブ7の表面側域に遮光性塗料を塗着した遮光性塗装膜10からなる遮光部を設けた」こととは、「乗員の視点とリフレクタを結ぶ線により区切られるレンズ面に不透明又は半透明のマスク部を設け、このマスク部を塗装により形成した」ことである限りにおいて一致する。

そうすると、本願補正発明と引用発明の一致点、相違点は以下のとおりであると認められる。

<一致点>
「光源ランプと、その周囲を回転するリフレクタと、これらの周囲を覆うレンズとを備え、車両に装備される回転式警光灯において、前記レンズを透明にするとともに、乗員の視点とリフレクタを結ぶ線により区切られるレンズ面に不透明又は半透明のマスク部を設け、このマスク部を塗装により形成した、回転式警光灯。」

<相違点1>
本願補正発明では、レンズを「赤色かつ透明に着色するとともに」、マスク部を「レンズと同色又は近似色の塗装により形成した」ものであるのに対して、引用発明では、レンズ(レンズグローブ7)及びマスク部(遮光部)がそれぞれどのような色とされているのか不明な点。

<相違点2>
本願補正発明では、マスク部を「レンズ内面」に設けた構成としているのに対して、引用発明では、マスク部(遮光性塗装膜10からなる遮光部)をレンズ(レンズグローブ7)の表面側域すなわち外面に設けている点。

4.当審の判断(相違点の検討)

上記各相違点について検討する。
<相違点1>について
引用例1においては、レンズの色について記載がなされていないが、緊急自動車が赤色の警光灯を付けることは通常行われていることである(昭和35年12月20日施行の道路交通法施行令第14条)から、警光灯においてレンズを赤色かつ透明に着色することは、当業者が容易になし得たことである。
警光灯のレンズに設けるマスク部を当該レンズの色に合わせて赤色とし外観性を良好なものにすることは、例えば、実願平1-118859号(実開平3-57807号)のマイクロフィルム(明細書第6ページ第17行?第7ページ第9行及び第3図)に記載されているように当業者にとって周知であり、引用発明においてレンズを赤色かつ透明に着色するとともにマスク部をレンズと同色又は近似色の塗装により形成することは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。

<相違点2>について
警光灯のレンズにマスク部を設ける際に、外面と内面のいずれを選択してマスク部を設けるかは、実願昭59-3814号(実開昭60-115406号)のマイクロフィルム(明細書第2ページ第4行?第3ページ第3行及び第4?5図)に記載のように、当業者が適宜選択し得る事項であり、引用発明においてマスク部をレンズの内面に設けることは当業者が適宜なし得ることにすぎない。

そして、上記相違点1、2を併せ備える本願補正発明の作用・効果について検討しても、引用発明及び上記各周知文献に記載の事項から当業者が予測し得る範囲を超えるものではない。

したがって、本願補正発明は引用発明及び上記各周知文献に記載の事項に基づいて、当業者が容易に推考することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび

以上によれば、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

【第3】本願の発明について

1.本願発明
平成21年 7月 6日付け手続補正は上記のとおり却下されたから、本願の各請求項に係る発明は、平成20年10月20日付けの手続補正に係る特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項によって特定されるものと認められるが、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

【請求項1】
「光源ランプと、その周囲を回転するリフレクタと、これらの周囲を覆うレンズとを備え、車両に装備される回転式警光灯において、前記レンズのうち乗員の視点とリフレクタを結ぶ線により区切られるレンズ内面に不透明又は半透明のマスク部を設けたことを特徴とする回転式警光灯。」

2.引用例及びその記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、前記「【第2】の2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明の構成を全て含むとともに、本願発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明が、上記【第2】で検討した如く、引用発明及び上記各周知文献に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明を上位概念化した本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、引用発明及び上記各周知文献に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび

以上によれば、本願発明(請求項1に係る発明)は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-17 
結審通知日 2010-08-18 
審決日 2010-09-01 
出願番号 特願平11-229337
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60Q)
P 1 8・ 121- Z (B60Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 光治  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 植前 津子
藤井 昇
発明の名称 回転式警光灯  
代理人 小松 清光  

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