ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
---|---|
管理番号 | 1225504 |
審判番号 | 不服2006-17832 |
総通号数 | 132 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-08-15 |
確定日 | 2010-10-14 |
事件の表示 | 特願2003-125648「キャラクター画像を含んだ画面を送信するシステムおよび方法、コンピュータプログラム、プログラム記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月25日出願公開、特開2004-334318〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成15年4月30日の出願であって,平成17年12月8日付けで拒絶理由が通知され,平成18年2月10日付けで手続補正がなされたが,同年7月10日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年8月15日に拒絶査定に対する審判請求書が提出され,同年9月13日付けで手続補正書が提出され,平成21年5月29日付けで審尋がなされ,同年7月27日に回答書が提出されたものである。 第2 平成18年9月13日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年9月13日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正後の本願発明 上記手続補正(以下,「本件補正」という。)は,補正前の平成18年2月10付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された, 「【請求項1】 ユーザが登録したアバターを含んだ画面をネットワーク経由で送信するシステムであって, 前記アバターの構成要素となり得る各アイテムの画像データが登録されたアイテムデータベースと, 前記アイテムのうち,経時的に変化し得る成長アイテムについて,その変化を規定する変化規則が登録された変化規則データベースと, ユーザ毎に,各ユーザのアバターを構成するアイテムに関するアイテム情報が登録されたアバターデータベースと, 前記アバターデータベースに登録されたアイテム情報に該当するアイテムの画像データに基づいてアバターを生成し,その際,前記成長アイテムについては前記変化規則データベースに登録された変化規則に応じた画像を用いる手段と, 該生成したアバターを含んだ画面データをネットワーク経由で送信する手段と,を備えることを特徴とするシステム。」 という発明を, 「【請求項1】 ユーザが登録したアバターを含んだ画面をネットワーク経由で送信するシステムであって, 前記アバターの構成要素となり得る各アイテムの画像データが登録されたアイテムデータベースと, 前記アイテムのうち,経時的に変化し得る成長アイテムについて,その変化を規定する変化規則が登録された変化規則データベースと, ユーザ毎に,各ユーザのアバターを構成するアイテムに関するアイテム情報が登録されたアバターデータベースと, 前記アバターデータベースに登録されたアイテム情報に該当するアイテムの画像データに基づいてアバターを生成し,その際,前記成長アイテムについては前記変化規則データベースに登録された変化規則に応じた画像を用いる手段と, 該生成したアバターを含んだ画面データをネットワーク経由で送信する手段と,を備え, 前記成長アイテムは,人の顔を表す顔アイテム又は人の頭髪を表す頭髪アイテムを含み,前記顔アイテムの変化は髭が伸びることであり,前記頭髪アイテムの変化は頭髪が伸びることであり, 前記変化規則は,過去一定期間における前記画面データの送信回数が所定回数以下の場合に前記成長アイテムの画像を変化させること,又は,前記成長アイテムが現在の画像となってからの経過期間が所定期間以上の場合に前記成長アイテムの画像を変化させることを含むことを特徴とするシステム。」 という発明に補正することを含むものである。 すると,本件補正は,補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「成長アイテム」に,「前記成長アイテムは,人の顔を表す顔アイテム又は人の頭髪を表す頭髪アイテムを含み,前記顔アイテムの変化は髭が伸びることであり,前記頭髪アイテムの変化は頭髪が伸びることであり」との限定を付加し,また,「変化規則」に,「過去一定期間における前記画面データの送信回数が所定回数以下の場合に前記成長アイテムの画像を変化させること,又は,前記成長アイテムが現在の画像となってからの経過期間が所定期間以上の場合に前記成長アイテムの画像を変化させることを含む」との限定を付加するものであるから,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-78974号公報(以下,「引用例」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。 (a)「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,情報処理装置および方法,並びに記録媒体に関し,特に,所定のキャラクタを,複数のコンピュータゲームで利用することができるようにした情報処理装置および方法,並びに記録媒体に関する。 【0002】 【従来の技術】いわゆるコンピュータゲーム(以下,ゲームと略称する)の中には,特徴的なキャラクタが登場するゲームが存在する。 【0003】しかしながら,このキャラクタは,通常,そのゲーム(1つのゲームまたは同じシリーズのゲーム)に限って利用することができるようになされており,それを他のゲームで利用することはできない。 【0004】また,ゲームに登場するキャラクタは,プレイを通して,新しい形状,能力(例えば,格闘ゲームである場合は,所定の技を実行する能力),またはアイテム(例えば,キャラクタが装着できる服)などを取得することができるようになされている場合がある。このように,キャラクタが変化(成長)することで,ユーザは,その変化(成長)を楽しむことができるとともに,キャラクタに対して感情移入をすることができる。 【0005】しかしながら,通常,プレイ(例えば,1プレイ)が終了すると,キャラクタが取得した形状や能力等は,リセットされるので,再度,プレイをするときには,初期状態のキャラクタが登場することになり,キャラクタの成長を継続して楽しむことができない。 【0006】そこで,取得した形状や能力等を記録媒体に記録させておくことで,それらを,次のプレイ,または,同じシリーズのゲームにおいて登場するキャラクタに適用することができるゲームも開発されているが,この場合においても,キャラクタ自身を,他のゲーム(シリーズが異なるゲーム)で利用することができない以上,他のゲームにおいて,取得した形状や能力等を適用することはできない。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】すなわち,従来においては,ユーザが,取得した形状や能力等を保持したキャラクタを,複数のゲームで利用することができない課題があった。 【0008】本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり,取得した形状や能力等を保持したキャラクタを,複数のゲームで利用することができるようにするものである。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明の情報処理装置は,端末における複数のゲームに登場させることができるキャラクタに関連する情報を保持する保持手段と,端末からの要求に応じて,キャラクタに関連する情報を,端末に送信する送信手段とを備えることを特徴とする。 【0010】キャラクタに関する情報は,キャラクタの外観に関する情報,属性に関する情報,またはアイテムを示す情報とすることができる。 【0011】外観に関する情報は,キャラクタの画像上の形状,材質,またはテクスチャを示す情報とすることができる。 【0012】属性に関する情報は,キャラクタが,ゲーム上において,所定の処理を実行することができる能力の程度,キャラクタの特性,またはキャラクタが取ることができる動作を示す情報とすることができる。 【0013】アイテムは,音楽,または映像を含むことができる。」(公報第2?3頁) (b)「【0020】 【発明の実施の形態】図1は,本発明を適用したゲームキャラクタシステムの利用例を示している。 【0021】このシステムに登録された各ユーザが使用する家庭用ゲーム機1-1,アーケードゲーム機1-2,携帯ゲーム機1-3,ネットワークコンピュータ1-4,ネットワーク携帯端末1-5(以下,個々に区別する必要がない場合,単に,ゲーム機1と記載する)は,ネットワーク2を介して,キャラクタサーバ3に接続されている。 【0022】ゲーム機1は,ネットワーク2を介して,キャラクタサーバ3から,キャラクタサーバ3が格納している,ゲーム機1のユーザが保有するキャラクタに関する情報(以下,キャラクタ情報と称する)をダウンロードする。すなわち,ユーザは,ゲーム機1に行われる複数のゲームにおいて,ダウンロードされたキャラクタ情報に基づくキャラクタを利用することができる。 【0023】ゲーム機1はまた,ゲームをプレイすることにより成長したキャラクタまたは編集されたキャラクタのキャラクタ情報を,ネットワーク2を介して,キャラクタサーバ3にアップロードする。すなわち,ゲーム機1に,アップロードされたキャラクタ情報を再度ダウンロードすることにより,ユーザは,ゲーム機1において行われる複数のゲームにおいて,成長したキャラクタを利用することができる。 【0024】キャラクタサーバ3は,キャラクタ情報を,ユーザ毎に格納している。キャラクタサーバ3は,ゲーム機1からの要求により,そのユーザのために格納しているキャラクタ情報を供給する。キャラクタサーバ3はまた,ゲーム機1から供給されたキャラクタ情報に基づいて,そのユーザのために格納しているキャラクタ情報を更新する。 【0025】なお,この例の場合,キャラクタとしては,ゲームプレイヤー(ユーザ)である自分自身としてのキャラクタ,またはペットキャラクタが想定される。プレイヤー自身としてのキャラクタは,ゲーム上で,プレイヤーの代わりを務めるキャラクタである。ペットキャラクタは,例えば,ロールプレイングゲームで,プレイヤー自身としてのキャラクタにお供するモンスターや,競馬ゲームに登場する馬などのキャラクタである。」(公報第3頁) (c)「【0035】図4は,記憶部31の記憶内容を示している。このように記憶部31は,キャラクタ情報と顧客情報が記憶されている。 【0036】顧客情報には,ユーザの氏名,住所,決済情報,E-mailアドレス等が含まれている。 【0037】キャラクタ情報は,この例の場合,ユーザが保有するキャラクタのそれぞれにおいて特有の情報(以下,キャラクタ特有情報と称する)と,ユーザが保有する全てのキャラクタに,共通して適用される情報(以下,共通情報と称する)から構成されている。 【0038】キャラクタ特有情報には,”3次元情報”,”属性”,および”アイテム装着状況”が含まれている。 【0039】”3次元情報”は,キャラクタの外観を特定するものであり,それには,例えば,図5に示すように,キャラクタの体の部分毎の,形状,材質,およびテクスチャが含まれている。材質としては,拡散,反射光,または屈折を示すデータが含まれている。 【0040】”属性”には,例えば,図6に示すように,特性,能力/能力値,および動きを特定するデータが含まれている。特性としては,キャラクタの性別,年齢,生年月日,趣味,好きな食べ物などを示すデータが含まれている。 【0041】能力/能力値としては,キャラクタの,例えば,サッカー,野球,ボクシング,カーレース,およびつりなどをするための能力を示すデータが含まれている。図6の例では,このキャラクタのサッカーをする能力は,持久力がレベル10であり,瞬発力はレベル5であり,ドリブル力はレベル1であるとされている。 【0042】また,このように,登録/能力値を,キャラクタ特有情報として記憶しておくことより,例えば,このキャラクタが,ボクシングゲームに登場したときに,ボクシングをする能力について所定のレベル(キャラクタ情報)を取得した場合,今度は,例えば,異種格闘ゲームに登場したときに,ボクシングゲームで取得した能力を発揮することができるようになる。すなわち,ボクシングの技を使うことができる。 【0043】動きとしては,キャラクタの,歩き方,ガッツポーズ,笑い方などの,キャラクタの動きを特定するデータが含まれている。図6の例では,例えば,このキャラクタの歩き方は,歩き方aおよび歩き方bの2通りとされている。 【0044】”アイテム装着情報”には,例えば,図7に示すように,キャラクタの体の部分毎の,このキャラクタが装着することができるアイテムと,その装着状況を示すデータが含まれている。 【0045】図7の例によれば,このキャラクタは,頭部に,サングラスaとヘッドホンbを装着するようになっている(帽子とピアスは装着されない)。また,このキャラクタは,胴部に,Tシャツbを装着するようになっている(コートとジャンバーは装着されない)。 【0046】例えば,レーシングゲームを最後までクリアして手に入れた,そのゲームのエンブレムの入った特製のTシャツ(例えば,Tシャツb)をそのキャラクタに装着させることにより,そのTシャツを装着したキャラクタを,他のゲームに登場させることができる。これにより,例えば,アーケードゲームなどの観客がいるときや,または友達とゲームをプレイするときなどには,この特製Tシャツのことを話題にすることができ,他の面でゲームを楽しむことができる。 【0047】図4に戻り,共通情報には,”アイテム”,”社会情報”,”履歴情報”,および”セキュリティ情報”が含まれている。 【0048】”アイテム”には,図8に示すように,身に付けることができるものと身に付けることができないもの毎の,ユーザが所有するキャラクタの全てに装着することができるアイテムと,現在それがどのキャラクタに装着されているかまたは装着されていないかを示すデータが含まれている。 【0049】身に付けることができるアイテムは,図8の例の場合,Tシャツa,Tシャツb,ジーンズa,靴a,帽子a,メガネa,サングラスa,音楽a,音楽b,および映像aなどであり,このうち,Tシャツaは,キャラクタ1に装着され,ジーンズaは,キャラクタ2に装着され,メガネaは,キャラクタ1に装着され,そして音楽bは,キャラクタ1に装着されている。一方,Tシャツb,靴a,帽子a,サングラスa,音楽a,および映像aは,いずれのキャラクタにも装着されていない。 【0050】なお,音楽や映像をキャラクタに装着させることで,それを装着したキャラクタが登場したとき,その音楽が流れるようにしたり,その映像が,表示されるようにすることができる。 【0051】身に付けることができないアイテムは,図8の例では,家,車,家具,トロフィー,またはロールマネーなどである。例えば,ロールマネーを装着することで,キャラクタは,複数のゲームにおいて,そのロールマネーを使って所定の物を取得することができる。 【0052】”社会情報”には,例えば,図9に示すように,E-mailアドレスやホームページのURLなどの対社会的に利用される情報が含まれている。 【0053】”履歴情報”には,例えば,図10に示すように,ゲームの利用時間や,ゲーム毎のキャラクタが登場した時間などの利用履歴や,アイテムの売買履歴が含まれている。例えば,利用履歴に従って,キャラクタが歳を取るようにすることができる。」(公報第4?5頁) (d)「【0076】ステップS6において,キャラクタサーバ3のデータ制御部32は,ステップS3で受信されたユーザIDとパスワードを含む”セキュリティ情報”が記憶されている記憶部31に記憶されているキャラクタ特有情報に対応するキャラクタのリストを,インタフェース部34を介して,ゲーム機1に送信する。ゲーム機1のインタフェース部23は,それを受信する。 【0077】次に,ステップS7において,ゲーム機1のゲームプログラム部21は,インタフェース部23により受信された,キャラクタサーバ3からのキャラクタリストを,キャラクタ情報送受信部22を介して取得し,それを表示部13に表示させる。 【0078】図16は,キャラクタリストの表示例が示されている。この例の場合,3つのキャラクタ1,キャラクタ2,およびキャラクタ3に対応する画像が示されている。 【0079】次に,ステップS8において,ユーザは,ゲーム機1の入力部12を操作して,所望のキャラクタを選択して,そのキャラクタ情報のダウンロードを指令する。図16の例では,所望のキャラクタが選択された後,ボタンAが操作される。」(公報第6頁) (e)「【0101】次に,キャラクタ情報をアップロードする場合の処理手順を,図18のフローチャートを参照して説明する。なお,セキュリティ情報はすでに暗号化されてキャラクタ情報送受信部22に記憶されているものとする。 【0102】ステップS61において,ゲーム機1のゲームプログラム部21は,カウンタiに値0を初期設定する。次に,ステップS62において,キャラクタ情報送受信部22は,暗号化されたセキュリティ情報とともに,キャラクタ情報(例えば,変更された項目IDとそのパラメータ)を,インタフェース部23を介して,キャラクタサーバ3に送信する。キャラクタサーバ3は,それを受信する。 【0103】なお,キャラクタを編集するにあたって,ユーザ自身ではじめからキャラクタを作成することもできる。この場合,例えば,米Newtek社のLightwave3D(商標)やDiscreetLogic社の3D Studio Max(商標)などを利用することができる。またより簡単に3Dモデルを作成する場合,Teddyのようなものを利用することもできる。なお,Teddyについては,Takeo IgarashiTeddy:A Sketching Interface for 3D Freeform Design(SIGGRAPH99 Conference Proceedings pp409-416)に示されている。 【0104】本出願人が出願した特願平10-272733には,3次元デジタイザを用いて,個人の身体の3次元形状情報およびテクスチャ情報を取得し,その情報に基づいて,キャラクタを作成する方法が示されている。この方法を用いることより,個人の身体的特徴を備えたキャラクタを生成することができる。 【0105】また,キャラクタサーバ3からダウンロードされたキャラクタや,予めゲーム内に設けられたキャラクタに手を加えることもできる。例えば,目,鼻,口,または髪型などのパーツを,所定のパーツリストから選択して編集したり,手足の長さや身長を調整するようにして,キャラクタを編集することができる。」(公報第7?8頁) これらの記載によれば引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ゲーム機1のユーザが保有するキャラクタに関する情報(キャラクタ情報)をネットワークを介して送信するゲームキャラクタシステムにおいて, 前記キャラクタ情報をユーザ毎に格納する記憶部を備え, 前記キャラクタ情報は,キャラクタ特有情報と,共通情報から構成されており, 前記キャラクタ特有情報には,“3次元情報”,“属性”,及び“アイテム装着情報”が含まれており, 前記“3次元情報”は,キャラクタの外観を特定するものであり,それには,キャラクタの体の部位毎の,形状,材質,及びテクスチャが含まれており, 前記“アイテム装着情報”には,キャラクタの体の部分毎の,このキャラクタが装着することができるアイテムと,その装着状況を示すデータが含まれており, 前記“アイテム装着情報”に応じて,キャラクタは,頭部に,サングラスaとヘッドホンbを装着したり,胴部に,Tシャツbを装着するようになっており, 前記共通情報には,“アイテム”,“社会情報”,“履歴情報”,および“セキュリティ情報”が含まれており, 前記“履歴情報”には,ゲームの利用時間や,ゲーム毎のキャラクタが登場した時間などの利用履歴や,アイテムの売買履歴が含まれており,利用履歴に従って,キャラクタが歳を取るようにすることができ, ユーザは,目,鼻,口,または髪型などのパーツを,所定のパーツリストから選択して編集したり,手足の長さや身長を調整するようにして,キャラクタを編集することができる,ゲームキャラクタシステム。」 3.対比 本件補正発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「キャラクタ」は,ユーザが編集してキャラクタサーバに登録したものといえ,引用発明の「キャラクタ」と本件補正発明における「アバター」はともに,各ユーザが登録したキャラクタである点で共通である。 引用発明のキャラクタサーバが送信するキャラクタ情報は,キャラクタを表示するための情報を含むから,引用発明と本件補正発明はともに,キャラクタの表示情報をネットワーク経由で送信するシステムである点で共通である。 引用発明の「キャラクタ」は,パーツ及びアイテムを構成要素としており,引用発明のパーツ及びアイテムは,本件補正発明における「アイテム」に相当する。 引用発明におけるキャラクタの体の部分毎の形状などが含まれる“3次元情報”,及びキャラクタが装着するアイテムに関する“アイテム装着情報”は,本件補正発明における「アイテムに関するアイテム情報」に相当し,引用発明と本件補正発明はともに,各ユーザのキャラクタを構成するアイテムに関するアイテム情報が登録された記憶部を備えた点で共通である。 引用発明は,利用履歴に従って,キャラクタが歳を取るようにすることができるから,キャラクタについて所定の変化を規定する変化規則が登録されていることは明白である。 また,引用発明における利用履歴は,ゲームの利用時間や,ゲーム毎のキャラクタが登場した時間などであるから,引用発明は,キャラクタについて,時間の経過に従って(すなわち経時的に)変化し得る,所定の変化を規定しているといえる。 したがって,引用発明と本件補正発明はともに,キャラクタについて,経時的に変化し得る,所定の変化を規定する変化規則が登録された点で共通である。 引用発明の「キャラクタ」は,例えば,記憶部に格納された“アイテム装着情報”に応じて,キャラクタの頭部にサングラスとヘッドホンを装着したり,胴部にTシャツを装着したりするから,引用発明が,記憶部に登録されたアイテム情報に該当するアイテムの画像データに基づいてキャラクタを生成する手段を有していることは明白であり, 引用発明と本件補正発明はともに,記憶部に登録されたアイテム情報に該当するアイテムの画像データに基づいてキャラクタを生成する手段を有する点で共通である。 したがって,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。 [一致点] ユーザが登録したキャラクタの表示情報をネットワーク経由で送信するシステムであって, ユーザ毎に,各ユーザのキャラクタを構成するアイテムに関するアイテム情報が登録された記憶部と, 前記記憶部に登録されたアイテム情報に該当するアイテムの画像データに基づいてキャラクタを生成する手段と, を備え, 上記キャラクタについて,経時的に変化し得る,所定の変化を規定する変化規則が登録されたシステム。 [相違点1] アイテムから構成され,経時的に変化し得る,キャラクタに関して,本件補正発明におけるキャラクタはアバターであって,本件補正発明のシステムは,アバターを含んだ画面を送信するシステムであり,生成したアバターを含んだ画面をネットワーク経由で送信する手段を備えているのに対して, 引用発明におけるキャラクタは,ゲーム機1で行われるゲーム上で利用されるキャラクタであって,引用発明のシステムは,ネットワークを介してキャラクタ情報を送信するゲームキャラクタシステムである点。 [相違点2] 本件補正発明は,アバターの構成要素となり得る各アイテムの画像データが登録されたアイテムデータベースを備えているのに対して, 引用発明は,そのような各アイテムの画像データが登録されたデータベースについて明示されていない点。 [相違点3] 本件補正発明は,アイテムのうち,経時的に変化し得る成長アイテムについて,その変化を規定する変化規則が登録された変化規則データベースを備え, 前記成長アイテムは,人の顔を表す顔アイテム又は人の頭髪を表す頭髪アイテムを含み,前記顔アイテムの変化は髭が伸びることであり,前記頭髪アイテムの変化は頭髪が伸びることであり, さらに,アバターを生成する際,前記成長アイテムについては前記変化規則データベースに登録された変化規則に応じた画像を用いるのに対して, 引用発明は,そのような変化規則データベースについて記載がなく,また,キャラクタが歳を取るときに,キャラクタの外観がどのように変化するのかも明確でない点。 [相違点4] 本件補正発明は,ユーザ毎に,各ユーザのアバターを構成するアイテムに関するアイテム情報が登録されたアバターデータベースを備えているのに対して, 引用発明は,ユーザ毎に,キャラクタの体の部分毎の形状などが含まれる“3次元情報”,及びキャラクタが装着するアイテムに関する“アイテム装着情報”を記憶部に格納している点。 [相違点5] 変化規則に関して,本件補正発明の変化規則は,過去一定期間における前記画面データの送信回数が所定回数以下の場合に前記成長アイテムの画像を変化させること,又は,前記成長アイテムが現在の画像となってからの経過期間が所定期間以上の場合に前記成長アイテムの画像を変化させることを含むのに対して, 引用発明は,利用履歴に従って,キャラクタが歳を取るようにすることができるとしか記載されていない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]について 特開2002-8062号公報の段落【0015】?【0016】,【0022】,及び関連する図面,加治貴,他2名,“身近なデジタル機器で自在につくる 意外にハマった!”,日経ゼロワン,日経ホーム出版社,2002年11月1日,第77巻,p.72-73の第73頁右上欄の「分身を使い会話を楽しむ」以下に記載があるように,アバターについて,髪型など外観を部分的に変えられるようにすることは,本願出願前に周知(以下,「周知技術1」という。)である。 引用発明と周知技術1とは,ともにユーザの分身として仮想空間上に表示されるキャラクタに関するものであって,キャラクタの外観を部分的に変えられる点においても共通しているのであるから,引用発明のアイテムから構成され,経時的に変化し得るキャラクタに周知技術1のアバターを適用し,アバターについて,アイテムから構成され,経時的に変化し得るようにすることは当業者が容易に想到し得ることである。 また,アバターはWeb上のコミュニティで用いられ,アバターを含む画面データを送信することは普通に行われているから,生成したアバターを含む画面データを送信する手段を設けて,上記相違点1のごとく構成することにも格別の困難性はない。 [相違点2]について 特開2002-94675号公報の段落【0017】?【0018】,及び関連する図面,特開2002-8062号公報の段落【0012】,及び関連する図面に記載があるように,仮想空間上に表示されるキャラクタの構成要素(パーツ)となる画像データを登録したデータベースは,本願出願前に周知(以下,「周知技術2」という。)である。 そうすると,上記引用発明に周知技術1を適用する際に,周知技術2を併せて適用し,アバターの構成要素となり得る各アイテムの画像データが登録されたデータベースを設けて,当該画像データを利用することに格別の困難性はない。 [相違点3]について 引用発明は,ユーザが登録したキャラクタについて,経時的に変化し得る,所定の変化を規定する変化規則が登録されていることは自明であるから,変化規則を登録したデータベースを設けることに格別の困難性はない。 また,特開平11-120375号公報の段落【0161】,特開平9-116791号公報の段落【0042】に記載があるように,仮想空間上のキャラクタにおける外観の変化として,キャラクタの髭や頭髪を伸ばすことは,本願出願前に周知(以下,「周知技術3」という。)である。 そうすると,上記引用発明に周知技術1を適用して,アバターについて,アイテムから構成され,経時的に変化し得るようにする際に,周知技術3を参酌し,人の顔を表し,髭が伸びるように変化する顔アイテム,又は人の頭髪を表し,頭髪が伸びるように変化する頭髪アイテムを,経時的に変化し得るアイテム(成長アイテム)として設けて,その変化を変化規則に規定し,アバターを生成する際に,上記変化規則に応じた成長アイテムの画像を用いるようにすることで,上記相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは,当業者が適宜設計し得ることである。 [相違点4]について 関連するデータをデータベースに登録して管理することは普通に行われており,引用発明において,ユーザ毎に“3次元情報”及び“アイテム装着情報”が格納される記憶部として,データベースを用いることに格別の困難性を見出せない。 [相違点5]について 特開2003-76846号公報の段落【0046】?【0047】,及び関連する図面,特開2002-221891号公報の段落【0027】,及び関連する図面に記載があるように,仮想空間上のキャラクタの画像を,ユーザによるアクセス頻度が少ない場合に変化させることは,本願出願前に周知(以下,「周知技術4」という。)である。 また,特開10-271559号公報の段落【0040】?【0043】,及び関連する図面,登録実用新案第3043561号公報の段落【0013】,及び関連する図面に記載があるように,仮想空間上のキャラクタが現在の画像となってからの経過期間が所定期間以上の場合に,当該キャラクタの画像を変化させることは,本願出願前に周知技術(以下,「周知技術5」という。)である。 そうすると,上記「[相違点3]について」で検討した成長アイテムについて,周知技術4,5を参酌し,過去一定期間における画面データの送信回数が所定回数以下の場合に成長アイテムの画像を変化させること,又は,成長アイテムが現在の画像となってからの経過期間が所定期間以上の場合に前記成長アイテムの画像を変化させるようにすることは,当業者が適宜設計し得ることである。 そして,本件補正発明のように構成したことによる効果も引用発明,及び周知技術から予測できる程度のものであって,格別のものではない。 したがって,本件補正発明は,引用発明,及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.まとめ 上記のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願出願について 平成18年9月13日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は平成18年2月10日付けの手続補正書によって補正された明細書の記載からみて,次のとおりのものである(以下,「本願発明」という。)。 「【請求項1】 ユーザが登録したアバターを含んだ画面をネットワーク経由で送信するシステムであって, 前記アバターの構成要素となり得る各アイテムの画像データが登録されたアイテムデータベースと, 前記アイテムのうち,経時的に変化し得る成長アイテムについて,その変化を規定する変化規則が登録された変化規則データベースと, ユーザ毎に,各ユーザのアバターを構成するアイテムに関するアイテム情報が登録されたアバターデータベースと, 前記アバターデータベースに登録されたアイテム情報に該当するアイテムの画像データに基づいてアバターを生成し,その際,前記成長アイテムについては前記変化規則データベースに登録された変化規則に応じた画像を用いる手段と, 該生成したアバターを含んだ画面データをネットワーク経由で送信する手段と,を備えることを特徴とするシステム。」 第4 引用刊行物に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及び引用発明は,上記第2の2に記載したとおりである。 第5 対比・判断 本願発明は,上記第2の1で検討した本件補正発明から,「成長アイテム」について,「前記成長アイテムは,人の顔を表す顔アイテム又は人の頭髪を表す頭髪アイテムを含み,前記顔アイテムの変化は髭が伸びることであり,前記頭髪アイテムの変化は頭髪が伸びることであり」との限定を除くとともに,「変化規則」について,「過去一定期間における前記画面データの送信回数が所定回数以下の場合に前記成長アイテムの画像を変化させること,又は,前記成長アイテムが現在の画像となってからの経過期間が所定期間以上の場合に前記成長アイテムの画像を変化させることを含む」との限定を省いたものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が,上記第2の3及び4で検討したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり,本願発明(本願の請求項1に係る発明)は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり,審決する。 |
審理終結日 | 2009-10-16 |
結審通知日 | 2009-10-20 |
審決日 | 2009-11-10 |
出願番号 | 特願2003-125648(P2003-125648) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 慎太郎 |
特許庁審判長 |
江口 能弘 |
特許庁審判官 |
五十嵐 努 近藤 聡 |
発明の名称 | キャラクター画像を含んだ画面を送信するシステムおよび方法、コンピュータプログラム、プログラム記録媒体 |
代理人 | 一色国際特許業務法人 |