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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B06B 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B06B |
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管理番号 | 1225848 |
審判番号 | 不服2008-6589 |
総通号数 | 132 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-17 |
確定日 | 2010-11-04 |
事件の表示 | 特願2005- 56554「振動発生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月17日出願公開、特開2006-212608〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成17年2月2日の出願であって、平成20年2月5日付けで平成19年10月22日付け手続補正書による補正が却下されると共に、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年3月17日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同年4月11日付けで手続補正書が提出されたものである。 2.平成20年4月11日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正1」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正1を却下する。 [理由] (1)本件補正1について 本件補正1による補正内容は、特許請求の範囲の記載を、 「 【請求項1】 胴体部の両側にシャフトを突出させた振動モーターの両端に偏重心の分銅を備え付け、前記分銅は、前記胴体部の中心点を中心としてその両側の前記シャフトに略対称に取り付けた振動発生装置において、前記胴体部と前記分銅の間隔を変えると前記装置が発生する振動幅の大きさが変わるという特性を利用し、前記間隔を、所望の大きさの振動幅が得られる間隔に対応する間隔に調節して成ることを特徴とする振動発生装置。 【請求項2】 前記胴体部と前記各分銅との間の間隔は、前記各分銅の前記シャフトの軸方向の幅の略3分の2以上である、請求項1に記載の振動発生装置。 【請求項3】 前記分銅は断面半円形状で、その両端角部に丸みを持たせた形状である、請求項1又は2に記載の振動発生装置。」 とする補正内容を含むものである。 (2)請求項数の増加についての検討 上記のように平成20年2月5日付けで平成19年10月22日付け手続補正書による補正が却下されたため、本件補正1がなされる前の特許請求の範囲は平成19年6月25日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正2」という。)によるものであって、本件補正2による特許請求の範囲においては、請求項数が1つであったものに対し、本件補正1は請求項数を3つに増加させるものであるから、上記補正事項を含む本件補正1の目的は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項各号のいずれの事項にも該当しない。 なお、本件補正2により補正された特許請求の範囲は、次のとおりである。 「 【請求項1】 胴体部の両側にシャフトを突出した振動モーターの両端に偏重心の分銅を備え、該分銅は振動モーター胴体部の中心点を中心とし、その両側のシャフトに略対称に取り付けた振動発生器において、発生する振動幅の設定は、該胴体部と分銅間の該間隔を変えて、発生する振動の大きさを決めて、該分銅の取り付け位置を設定し、又、その間隔は軸方向の幅の二分の一以上とする事を特徴とする振動発生装置。」 (3)むすび 以上のとおりであるから、本件補正1は、改正前の特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。 3.原査定の理由 一方、原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 [理由1] 本件補正2により補正された請求項1に係る発明は「その間隔は軸方向の幅の二分の一以上とする」という構成を有している。 しかしながら、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲には「間隔は軸方向の幅の二分の一以上とする」旨は何ら記載されていない。 加えて、願書に最初に添付した図面においても、「間隔は軸方向の幅の二分の一以上とする」ことが理解できる図は何ら記載されていない。 したがって、本件補正2は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 [理由3] 本件補正2により補正された請求項1に係る発明は「該分銅の取り付け位置を設定し、又、その間隔は軸方向の幅の二分の一以上とする」という構成を有している。 しかしながら、軸方向の幅が何の軸方向の幅を意味しているのかがわからず結果として発明の構成が不明確である。 また、発明の詳細な説明には該構成については何ら記載されていない。 したがって、本件補正2は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 4.当審の判断 [理由1]について 本件補正2の請求項1に係る補正事項のうち、「その間隔(審決注:胴体部と分銅間の間隔)は軸方向の幅の二分の一以上とする」点に関して、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には次のような記載がある。 「【0010】 請求項3の記載の発明によれば、図1(c1,2)に示すように、モーター本体2とシャフト4の両端に固定された二個の該分銅3の位置との間に一定の間隔を持たせることである。 【0011】 この間隔を大きくすればするほど、小型モーター2の回転時に発生する二個の該分銅3による遠心力がモーター2の軸受けに加わる力は非常に大きくなり、非常に効率的に大きな振動幅を得ることができる。」 また、図1(c1)、(c2)には、モーター本体2(モーター胴体部)と分銅3との間に間隔5を設けた態様が示されている。 しかし、上記補正事項において、「軸方向の幅」とは何の軸方向の幅を意味するのかが特定されておらず、例えばモーター胴体部の軸方向幅と解することも排除していないところ、当初明細書等に胴体部と分銅間の間隔を胴体部の軸方向の幅の二分の一以上とすることについて記載も示唆もない。 また、当初明細書等の記載から、上記補正事項が、当業者に自明であるとも、当初明細書等に記載されていたに等しい事項であるともいえず,さらに,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるともいえない。 したがって、上記補正事項を含む本件補正2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 [理由3]について 本件補正2における請求項1に係る補正事項のうち、「該分銅の取り付け位置を設定し、又、その間隔は軸方向の幅の二分の一以上とする」という記載において、「軸方向の幅」が何の「軸方向の幅」を意味しているのか不明であり、結果として発明が不明確である。 また、発明の詳細な説明には当該記載については何ら記載されていない。 したがって、本件補正2は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない。 なお、請求人は平成19年10月22日付けの意見書において、上記[理由1]に関して、「つまり、「該間隔を大きくすればする程、大きな振動が得られる」と明細書に記載している範囲です。該範囲内で該間隔を特定する事が何故、明細書に明記した範囲と認められないのか理解出来ませんので、もし広範囲を意味しないと言うのであれば、その根拠を示して頂きたいと思います)。その範囲内での下限の該間隔を特定する補正であり、これは明細書に記載した範囲を超えるものではありません。加えて、この補正は振動モーター胴体部と該分銅の該間隔が該分銅の略二分の一以上である事を示している図面、つまり、最初の出願に添付してある図面1(c1)、(c2)に記載されている事項に基づくものであり、上記の補正は新規事項の追加ではありません。」と主張している。 しかしながら、該範囲内で該間隔(下限)を特定する事の技術思想が当初明細書等にはなんら開示されていない。つまり、出願当初の図面の図1(c1)、(c2)に記載されている事項が仮に振動モーター胴体部と分銅間の間隔が該分銅の軸方向の幅の略二分の一以上であることを示していたとしても、その値が下限であることは当初明細書等には何ら開示されていない。 したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願は、特許法第49条第1項第1号及び第4号に該当するから、同法第49条第1項本文の規定により拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-12-14 |
結審通知日 | 2009-12-15 |
審決日 | 2010-01-04 |
出願番号 | 特願2005-56554(P2005-56554) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(B06B)
P 1 8・ 537- Z (B06B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 梶本 直樹 |
特許庁審判長 |
大河原 裕 |
特許庁審判官 |
槙原 進 神山 茂樹 |
発明の名称 | 振動発生装置 |
代理人 | 齋藤 晴男 |