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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A63F
審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  A63F
審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A63F
管理番号 1226798
審判番号 無効2009-800072  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-03-31 
確定日 2010-10-18 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2781929号発明「遊技機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第2781929号の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)についての主な手続は、以下のとおりである。

平成 1年12月26日 特許出願(特願平1-339230号)
平成10年 5月22日 特許権の設定登録
平成21年 3月31日 無効審判請求
平成21年 7月 7日 被請求人より答弁書と訂正請求書提出
平成21年 8月11日 請求人より弁駁書提出
平成22年 5月18日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成22年 5月18日 請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成22年 6月 1日 口頭審理

第2.訂正請求について
1.訂正事項
訂正請求書による訂正の請求(以下「訂正請求」という。)は、本件特許明細書を、本件訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであって、次の訂正事項1?4を含んでいる。

訂正事項1:本件特許明細書、請求項1記載の
「所定条件が成立するまで前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容に従ったものになるように表示制御することを遅延させる遅延手段と、」を、
「該記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶があり、かつ前記可変表示装置の可変表示を開始する段階で所定条件が成立しているか否か判定し、成立していないと判定したときには、前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容以外の価値内容に従ったものになるように表示制御することにより、前記所定条件が成立するまで前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容に従ったものになるように表示制御することを遅延させる遅延手段と、」と訂正する(下線部が訂正により追加された箇所)。

訂正事項2:本件特許明細書、請求項1記載の
「遊技価値付与手段とを含み、」を、
「遊技価値付与手段と、
前記記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶がありかつ未だ前記所定条件が成立していないことを条件として、前記所定の遊技価値が付与され得る状態の到来を遊技者に報知する前兆報知を行なう前兆報知手段とを含み、」と訂正する(下線部が訂正により追加された箇所)。

訂正事項3:本件特許明細書、[課題を解決するための手段]の項に記載の
「所定条件が成立するまで前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容に従ったものになるように表示制御することを遅延させる遅延手段と、」を、
「該記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶があり、かつ前記可変表示装置の可変表示を開始する段階で所定条件が成立しているか否か判定し、成立していないと判定したときには、前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容以外の価値内容に従ったものになるように表示制御することにより、前記所定条件が成立するまで前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容に従ったものになるように表示制御することを遅延させる遅延手段と、」と訂正し、
「遊技価値付与手段とを含み、」を、
「遊技価値付与手段と、
前記記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶がありかつ未だ前記所定条件が成立していないことを条件として、前記所定の遊技価値が付与され得る状態の到来を遊技者に報知する前兆報知を行なう前兆報知手段とを含み、」と訂正する(下線部が訂正により追加された箇所)。

訂正事項4:本件特許明細書、[作用]の項に記載の
「さらに、所定条件が成立するまで遅延手段の働きにより可変表示制御手段が特定の価値内容に従ったものになるように表示制御することが遅延される。」を、
「さらに、遅延手段の働きにより、記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶があり、かつ可変表示装置の可変表示を開始する段階で所定条件が成立しているか否か判定され、成立していないと判定されたときには、可変表示制御手段が特定の価値内容以外の価値内容に従ったものになるように表示制御することにより、所定条件が成立するまで可変表示制御手段が特定の価値内容に従ったものになるように表示制御することが遅延される。」と訂正し、
「また、記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶がありかつ所定条件が成立したことに基づいて可変表示装置の停止後において所定の遊技価値が付与される。また、記憶手段に含まれる有効記憶手段の働きにより、」を、
「また、記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶がありかつ所定条件が成立したことに基づいて可変表示装置の停止後において所定の遊技価値が付与される。前兆報知手段の働きにより、記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶がありかつ未だ所定条件が成立していないことを条件として、所定の遊技価値が付与され得る状態の到来を遊技者に報知する前兆報知が行なわれる。また、記憶手段に含まれる有効記憶手段の働きにより、」と訂正する(下線部が訂正により追加された箇所)。

2.訂正請求に関する請求人の主張
平成21年8月11日付け弁駁書における、請求人の訂正請求についての主張は次のとおりである。
(1)訂正事項1について(第2?3頁)
訂正事項1における「遅延手段」として、記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶があるかどうかを判定し、かつ、可変表示装置の可変表示を開始する段階で所定条件が成立しているか否か判定する機能を備えている旨の記載は、訂正の基準となる本件特許明細書において一切なく、訂正事項1は新規事項の追加に該当する。

(2)訂正事項2について(第3?6頁)
訂正事項2により付加された「前兆報知手段」は、所定の遊技価値がいずれ付与されることを事前に前兆報知するというものであって、かかる前兆報知によって遊技者の期待感を高めるという新たな課題を設定しその解決をもたらすものであるから、実質上特許請求の範囲を変更するものに該当する。

3.訂正の適否に関する当審の判断
(1)訂正事項1について
特許第2781929号公報(以下「本件公報」という。)の第5E図とその説明(第12欄第42行?第14欄第41行)によれば、「当り記憶カウンタ」及び「当り表示決定用カウンタ=0」が、それぞれ訂正明細書の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明」という。)における「記憶手段」及び「所定条件」に対応することが明らかであるから、S51 において「当り記憶カウンタ=0」がYかNかを判定し、NならばS52 において「当り表示決定用カウンタ=0」がYかNかを判定することは、本件訂正発明における「該記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶があり、かつ前記可変表示装置の可変表示を開始する段階で所定条件が成立しているか否か判定」することであるということができる。
また、本件公報の第14欄第35?37行に「S52 において、当り表示決定用カウンタが0でない場合には、その回の可変表示においては大当りが発生しないようにしてもよい。」と記載されていることから、本件訂正発明における「成立していないと判定したときには、前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容以外の価値内容に従ったものになるように表示制御する」に対応する制御も示されているといえる。
そして、本件公報の第13欄第35?39行に「当り表示決定用カウンタ「0」である場合は、S53 に進み、S50 により呼出された図柄表示用カウンタの現在値のうち中および右の値を左の値に合わせて左=中=右にした値を今回の予定停止図柄として記憶し」という記載から「当り表示決定用カウンタ=0」がYならば大当り表示がされる、すなわち所定条件が成立すれば特定の価値内容に従ったものになるように表示制御されることも示されているといえるから、訂正事項1は本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
よって、訂正事項1は本件特許発明の一構成要素である遅延手段について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としており、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。
なお、本件公報の第17欄第4?8行には「本実施例では、大当りが決定されてから大当りが発生するまでの期間(遅延回数)を不定にしたが、一定回数遅延させるようにしてもよくまた所定回数ではなく所定時間遅延させるようにしてもよい。」と記載されているから、「所定条件」を実施例における「当り表示決定用カウンタ=0」と限定する必要もない。

(2)訂正事項2について
本件公報、第14欄第11?17行には「S54 において、偶数と判断された場合は、S55 に進み、図柄表示用カウンタの呼出値のうち中の値を左の値に合わせて左=中をした値を今回の予定停止図柄として記憶し、S59 の処理の後サブルーチンプログラムが終了する。このS55 の処理の具体例としては、たとえば呼出値が「372」である場合には、リーチ目である「332」が予定停止図柄として記憶される。」と記載され、同欄第35?39行には「S52 において、当り表示決定用カウンタが0でない場合には、その回の可変表示においては大当りが発生しないようにしてもよい。また、0でない場合すべてにおいて前兆報知(リーチ目変換)を行なうようにしてもよい。」と記載されている。
そして、上記(1)で検討したように、第5E図のS51 において「当り記憶カウンタ=0」がYかNかを判定し、NならばS52 において「当り表示決定用カウンタ=0」がYかNかを判定することは、本件訂正発明における「前記記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶があり、前記所定条件が成立して」いるか否か判定することであるということができ、また、S52 において、当り表示決定用カウンタが0でない場合すべてにおいて前兆報知を行なうことは、本件訂正発明における「未だ前記所定条件が成立していないことを条件として、前記所定の遊技価値が付与され得る状態の到来を遊技者に報知する前兆報知を行なう」ことを示しているから、訂正事項2は本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
また、訂正事項2は、「前兆報知手段」に関する構成を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としていることは明らかである。
さらに、本件公報の[発明が解決しようとする課題](第3欄第24?50行)には、特定の識別情報を表示する以前に特定の識別情報が表示されることを遊技者に報知するなどの遊技制御を盛りこんで前記既に決定された価値内容を有効利用して遊技性を向上させる遊技機における課題を解決するためになされた発明である旨記載されているから、本件特許発明は、むしろ特定の識別情報が表示されることについて何らかの報知を行う構成を備えるべき発明であったということができる。
したがって、訂正事項2の「前兆報知手段」に関する構成を追加することは、本件特許発明の目的を逸脱し、新たな課題を追加するものには当たらず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものということはできない。

(3)訂正事項3及び4について
訂正事項3及び4は、訂正後の特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載が整合するように、本件特許明細書の[課題を解決するための手段]の項及び[作用]の項の記載を訂正するものであって、全て上記訂正事項1及び2に対応するものとなっている。
よって、訂正事項3及び4は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

以上のとおりであるから、上記訂正事項1?4は、特許請求の範囲の減縮又は明りょうでない記載の釈明を目的としており、かつ、本件特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。
したがって、上記訂正事項1?4は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第134条第2項ただし書に適合し、同法第134条第5項において準用する同法第126条第2項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3.無効理由に関する請求人の主張
1.概要
審判請求書において、請求人「日本電動式遊技機特許株式会社」は、本件特許は、旧特許法第36条第3項及び第4項(「第4項及び第5項」と記載されているが誤記と認める。)に規定する要件を満たしていないものであるから、同法第123条第1項第4号(「第1項」と記載されているが「第1項第4号」を意図したものと認める。)により無効とすべきものであると主張するとともに(審判請求書第3頁第3?5行)、本件特許発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第123条第1項第2号により無効とすべきものである旨主張し(審判請求書第3頁第6、7行)、証拠方法として甲第1?3号証(以下「甲1?3」という。)を提出している。
また、弁駁書においては、訂正が認められたとしても、発明の詳細な説明には本件訂正発明を当業者が容易に実施できる程度にその具体的な構成が記載されておらず、依然として記載不備は解消されていないと主張するとともに(第8頁第1行?第10頁第2行)、本件訂正発明は甲2に記載の発明(以下「引用発明」という。)、甲3に記載の発明及び従来周知の事項に基づき当業者が容易に可能である旨主張し(第10頁第3行?第16頁第3行)、参考例1を追加提出している。
さらに、口頭審理陳述要領書においても、本件訂正発明の遊技機に、請求人のいうパチスロが含まれない場合でも記載不備はあると主張し(第3頁第11行?第4頁第23行)、本件訂正発明と引用発明との相違点が被請求人の挙げた相違点1?4であると認めるとともに、相違点3及び4について補足説明を行っている(第5頁第15行?第8頁第2行)。

2.証拠方法
甲1:「特許庁編 特許・実用新案審査基準」の抜粋、社団法人発明協会発行
甲2:特開平1-259884号公報
甲3:特開昭59-186580号公報
参考例1:「マル秘パチスロ必勝攻略本PART2」、1988年5月20日、株式会社双葉社発行、第62?65頁

3.記載不備について
(1)可変開始条件(審判請求書第16頁第18行?第18頁第14行)
本件特許発明の「予め定められた可変開始条件の成立に基づいて前記可変表示装置を可変表示させる」における、「予め定められた可変開始条件」は、本件特許明細書の実施例であるパチンコ遊技機に当てはめて考えると、遊技球が始動入賞口に入るということであり、遊技の進行中に、ある確率をもって成立し得る「条件」である。
しかし、パチスロの場合には、遊技を成立させるためには「予め定められた可変開始条件」を常に成立させる必要があるのであるから、本件特許明細書の「可変開始条件」の意味が、特にパチスロの場合に不明確である。

(2)遅延手段(審判請求書第18頁第15行?第21頁第21行)
本件特許発明の「遅延手段」における「所定条件」は、「遅延手段」による遅延期間を確保できれば、タイマによる一定時間の計時であってもよいことになる。
一方、パチスロでは、リール毎に設けられたストップスイッチを押圧操作すれば直ちに停止するように構成されているから、ストップスイッチの操作があるにも拘らずリールの停止が遅延されたり、停止されずに回転し続けたりすることはあり得ない。
すなわちパチスロの場合における「所定条件の成立」が何であるのか不明確であるから、「遅延手段」に関して発明の詳細な説明には当業者が容易に実施できる程度に記載されていない。

(3)遊技価値付与手段(審判請求書第21頁第22行?第22頁末行)
本件特許発明の「可変表示制御手段」は、文言通り解釈すると、予め定められた停止条件の成立に基づいて、停止時の識別情報が100%の確率で事前に決定された価値内容に従ったものとなるが、一般的なパチスロでは抽選により大当りが当選したとしても、ストップスイッチの操作タイミングによっては大当りの表示態様にならないこともあるので、「遊技価値付与手段」はパチスロの場合不明確である。
そして、パチスロの場合にどのようにして「所定の遊技価値を付与する」のか不明であるから、「遊技価値付与手段」に関して発明の詳細な説明には当業者が容易に実施できる程度に記載されていない。

(4)有効記憶手段(審判請求書第23頁第1行?同頁第26行)
本件特許発明の「有効記憶手段」は、遅延期間中に「価値内容事前決定手段によって決定された価値内容が予め定められた特定の価値内容である場合に該特定の価値内容を有効なものとして記憶する」ものとあるが、上記(2)で述べたように、パチスロでは停止を遅延させることは不可能であるから、「有効記憶手段」に関しても当業者が容易に実施できる程度に記載されていない。

(5)再び前記遊技価値付与手段を作動できるようにしたこと(審判請求書第23頁第27行?第24頁第22行)
本件特許発明の「該有効記憶手段によって前記遅延期間中に前記特定の価値内容が記憶されていることに基づいて、前記遅延期間が終了し前記遊技価値付与手段によって前記所定の遊技価値が付与された後において再び前記遊技価値付与手段を作動できるようにした」の意味が不明確である。
また、この点について発明の詳細な説明には当業者が容易に実施できる程度に記載されていない。

(6)弁駁書の主張(第8頁第1行?第10頁第2行)
訂正請求が認められたとしても、本件特許は依然として、旧特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていない。

(7)口頭審理陳述要領書の主張(第3頁第11行?第4頁第23行)
訂正請求が認められたとしても、上記(5)については依然として構成が不明であり、本件特許は旧特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。

4.進歩性について
請求人は、口頭審理において、「本件訂正発明と甲第2号証記載の発明の違いは答弁書に記載した相違点1から4である。」と認めたので、審判請求書の進歩性に関する主張については省略し、答弁書の本件訂正発明(構成の分節)と相違点1?4及び弁駁書における相違点1?4に関する主張の概略を以下に記載する。

(1)本件訂正発明(答弁書第3頁第12行?第4頁第12行)
a. 複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置と、
b. 該可変表示装置の停止時の価値内容を該可変表示装置の可変表示が停止する以前において予め決定しておくための価値内容事前決定手段と、
c. 予め定められた可変開始条件の成立に基づいて前記可変表示装置を可変表示させるとともに、予め定められた停止条件の成立に基づいて前記可変表示を停止制御し、停止時の識別情報が前記価値内容事前決定手段により決定された価値内容に従ったものとなるように表示制御する可変表示制御手段と、
d. 前記価値内容事前決定手段によって決定された価値内容が予め定められた特定の価値内容である場合に該特定の価値内容を記憶する記憶手段と、
e. 該記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶があり、かつ前記可変表示装置の可変表示を開始する段階で所定条件が成立しているか否か判定し、成立していないと判定したときには、前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容以外の価値内容に従ったものになるように表示制御することにより、前記所定条件が成立するまで前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容に従ったものになるように表示制御することを遅延させる遅延手段と、
f. 前記記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶がありかつ前記所定条件が成立したことに基づいて、前記可変表示装置の停止後において所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段と、
j. 前記記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶がありかつ未だ前記所定条件が成立していないことを条件として、前記所定の遊技価値が付与され得る状態の到来を遊技者に報知する前兆報知を行なう前兆報知手段とを含み、
g. 前記記憶手段は、前記遅延手段によって前記特定の価値内容に従った表示制御が遅延している遅延期間中に、前記価値内容事前決定手段によって価値内容が決定された場合であって該決定された価値内容が前記特定の価値内容の場合に、該特定の価値内容を有効なものとして記憶する有効記憶手段を含み、
h. 該有効記憶手段によって前記遅延期間中に前記特定の価値内容が記憶されていることに基づいて、前記遅延期間が終了し前記遊技価値付与手段によって前記所定の遊技価値が付与された後において再び前記遊技価値付与手段を作動できるようにした
i. ことを特徴とする、遊技機。

(2)相違点1?4(答弁書第19頁第17行?第20頁第27行)
(相違点1)
本件訂正発明は「価値内容事前決定手段により、可変表示装置の停止時の価値内容を該可変表示装置の可変表示が停止する以前において予め決定しておき、可変開始条件の成立に基づいて可変表示装置を可変表示させるとともに、停止条件の成立に基づいて可変表示装置を停止制御する可変表示制御手段により、停止時の識別情報が価値内容事前決定手段により決定された価値内容に従ったものとなるように表示制御する」(構成b、c)。
これに対して、引用発明は「可変表示制御手段が、停止条件の成立に基づいて可変表示装置を停止制御し、停止した後にその停止時の可変表示装置の価値内容を判定するという事後判定方式を採用している」ものである。
(相違点2)
本件訂正発明は「価値内容事前決定手段により決定された価値内容が特定の価値内容である場合に該特定の価値内容を記憶手段が記憶し、その特定の価値内容である旨の記憶があり、かつ可変表示装置の可変表示を開始する段階で所定条件が成立しているか否か判定し、成立していないと判定したときには、可変表示制御手段が特定の価値内容以外の価値内容に従ったものになるように(「ものとなるよに」と記載されているが、誤記と認める。)表示制御することにより、所定条件が成立するまで可変表示制御手段が特定の価値内容に従ったものになるように表示制御することを遅延させる遅延手段」を含んでいる(構成d、e)。
これに対し、引用発明は、そもそも「価値内容事前決定手段が存在しないために、その事前決定された価値内容を記憶する記憶手段も存在せず、その記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶があることを条件として遅延させる遅延手段」も存在しない。
(相違点3)
本件訂正発明は「記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶がありかつ未だ所定条件が成立していないことを条件として、所定の遊技価値が付与され得る状態の到来を遊技者に報知する前兆報知を行なう前兆報知手段」を含んでいる(構成j)。
これに対して、引用発明は、「特定の価値内容である旨を記憶する記憶手段自体が存在しないために、前兆報知手段も採用されていないもの」である。
(相違点4)
本件訂正発明は「記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶がありかつ所定条件が成立したことに基づいて、遊技価値付与手段が、可変表示装置の停止後において所定の遊技価値を付与し、遅延手段によって特定の価値内容に従った表示制御が遅延している遅延期間中に、価値内容事前決定手段によって決定された価値内容が特定の価値内容の場合に、該特定の価値内容を有効なものとして記憶し、遅延期間中に有効なものとして特定の価値内容が記憶されていることに基づいて、遅延期間が終了して遊技価値付与手段によって所定の遊技価値が付与された後において再び遊技価値付与手段を作動できる」ようにしている(構成f、g、h)。
これに対して、引用発明は、そのような構成を採用していない。

(3)相違点1について(弁駁書第11頁第21行?第12頁第5行)
審判請求書第34?35頁で述べたように、甲3のB-3の「サンプリングされる乱数値と、ROMに記憶された入賞確率テーブルの大ヒット、中ヒット、小ヒットそれぞれに対応する数値とを照合して入賞かどうかをリールの停止前に決定する決定手段」は、相違点1における構成bの「価値内容事前決定手段」に相当する。
そして、審判請求書第35?36頁で述べたように、引用発明の「表示制御手段」に、甲3のC-3の「監視制御手段」を組み合わせることにより、相違点1における構成cの「可変表示制御手段」を容易に想到可能である。

(4)相違点2、3について(弁駁書第12頁第6行?第14頁第24行)
構成eの「遅延手段」に関する「所定条件」とは、審判請求書第18?21頁で述べたように、何を意味するのかわからない。特許請求の範囲には「所定条件が成立」することに関して何等の定義もなく、どのような条件であっても「所定条件」に相当すると言わざるを得ず、例えばパチスロの場合に、回転中のリールを停止させるための操作がなされることや、メダルの投入がなされること、あるいはスタートスイッチの操作がなされることなども、「所定条件が成立」したと解することもできる。
さらに、甲3の第9頁右下欄第10行?第10頁左上欄第1行の記載における「ヒツトリクエストが発生しながらも入賞なしとなった場合」を「所定条件が成立していない場合」と解することもでき、甲3には、所定条件が成立していない場合には、そのヒットリクエストを次回のゲームまで保存することが記載されているといえる。
そうすると、甲3には、ヒットリクエストを保存(記憶)しておき、この保存(記憶)を前提として、その後のゲームでストップスイッチの操作がなされて「所定条件」が成立し、大ヒットの入賞が得られたときには、この大ヒットの入賞がなされるまでの間は大ヒット以外の価値内容の表示制御が行われて大ヒットの価値内容の表示制御が遅延されることとなり、構成eの「遅延手段」と同様の動作が記載されているのである。
そして、甲3に基づけば、「所定条件が成立しているか否か」をどの段階で判定するかは当業者の単なる選択的な設計的事項である。
よって、本件訂正発明の構成eの「遅延手段」は、甲3に基づき容易に想到可能である。
さらに、本件訂正発明の構成jの「前兆報知手段」は、参考例1にあるように、本件特許の出願日以前において周知である。
してみると、相違点2は、当業者であれば甲2、甲3に基づき容易に想到可能であり、相違点3は本件特許の出願日以前の周知事項に過ぎない。

(5)相違点4について(弁駁書第14頁第25行?第15頁第29行)
本件訂正発明の構成fの「遊技価値付与手段」は、審判請求書第27?28頁で述べたように、甲3の「ヒットリクエストに対応するシンボルマークの組み合わせが得られるように各リールを停止して遊技者に有利な状態に制御する制御手段」に基づき当業者が容易に想到可能である。
また、本件訂正発明の構成gの「有効記憶手段」は、審判請求書第28?31頁で述べたように、甲3の「発生したヒットリクエストがヒットしない場合にRAM上にストアされているカウント値を減算することなくそのまま保存されるリクエストカウンタ」から容易に想到可能である。
さらに、本件訂正発明の構成hは、技術的手段として記載されたものであるとしても、単に「作用」あるいは「効果」を記載しているに過ぎず、遊技性向上のために人為的取り決めである「遊技機」における遊技(ゲーム)の約束事、遊技(ゲーム)方法の設定・取り決めを述べているのであって、進歩性を判断する上での相違点とは言えない。

第4.無効理由に関する被請求人の主張
1.概要
被請求人「株式会社三共」は、訂正請求書を提出するとともに、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求め」(答弁の趣旨)、答弁書において、本件訂正明細書は、サポート要件および実施可能要件をともに満たし、旧特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしている(第5頁第10行?第15頁第25行)。また、本件訂正発明と引用発明とは、少なくとも相違点1?4で相違し、このうち少なくとも相違点2及び3は想到困難性を有するから、請求人の主張は理由がないと主張している(第15頁第26行?第23頁第27行)。
そして、平成22年5月18日付けの口頭審理陳述要領書においては、弁駁書における請求人の無効理由に関する主張についても反論している。
そこで、口頭審理陳述要領書における被請求人の主張の概略を以下に記載する。

2.記載不備について(第9頁末行?第12頁第17行)
(1)請求人は「遊技機」をパチスロとした場合、本件訂正発明の各構成がパチスロのどこの何に該当するか明確でなく、当業者が容易に実施できる程度にその構成が記載されていない旨主張する(弁駁書第8頁第13行?第25行)。
しかし、請求項に記載された発明のあらゆる形態の実施例を発明の詳細な説明に記載することまでは、特許法は要求しておらず、パチンコ遊技機についての詳細な実施例が記載されている以上パチスロの実施例まで記載する必要はない。さらに本件明細書の発明の詳細な説明に詳述されたパチンコ遊技機の開示内容及びスロットマシンについての開示内容からして、スロットマシンについても本件発明の内容は容易に実施できる。

(2)請求人は、特に「所定条件」を含む「遅延手段」が、「遊技機」をパチスロとした場合に、当業者が容易に実施できる程度にその構成が記載されていない旨主張する(弁駁書第8頁第26行?第9頁第14行)。
しかし、この「所定条件」を含む「遅延手段」は発明のポイントの構成であるため、発明の詳細な説明に詳しい実施例の開示がなされている(本件公報第10欄第11行?第20行、第13欄第31行?第14欄第23行、第5A図、第5E図参照)。
このように、遊技者の操作に応じてマイクロコンピュータにより制御が行われるパチンコ遊技機に関して詳しい記載がなされている以上、同様に遊技者の操作に応じてマイクロコンピュータにより制御が行われるパチスロにおいても、当業者であれば同様の制御内容を適用して容易に実施できることは明白である。

(3)請求人は、構成hについて、その内容が不明確であるために、甲1における「(2)発明の詳細な説明に記載された発明の目的を達成するための技術的手段に関する記載内容が不明瞭であるとき。」若しくは「(3)発明の詳細な説明に記載した発明の目的を達成するための個々の技術的手段相互の関係が不明瞭である場合。」に該当する旨主張する(弁駁書第9頁第15行?第28行)。
しかし、構成hは、本件発明の目的のうちの「遅延期間中に生じた特定の価値内容が無効とならないようにする点」を達成するための手段に相当する構成であり、この目的を達成する手段として、
a 遅延期間中に特定の価値内容が価値内容事前決定手段により決定された場合にその特定の価値内容を有効なものとして有効記憶手段が記憶し、
b 遅延期間が終了し遊技価値付与手段によって所定の遊技価値が付与された後において、有効記憶手段に特定の価値内容が記憶されていることに基づいて、再び遊技価値付与手段を作動できるようにした、
という一連の技術的手段を採用している。
また、これら一連の技術的手段の具体的内容は、本件明細書に詳細に記載されている(本件公報第18欄第8行?第13行及び第5C図、第5E図に基づいた実施例の説明箇所参照)。
よって、構成hは、発明の目的を達成するための技術的手段が明確であり、かつ、発明の目的を達成するための個々の技術的手段相互の関係が明確であるから、実施可能要件を満足している。

3.進歩性について(第17頁第5行?第20頁第24行)
(1)請求人は、本件訂正発明と引用発明との間に相違点1?4が存在することを前提として、各相違点が想到容易であり、本件訂正発明が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張する(弁駁書第10頁第3行?第16頁第3行)。
要するに請求人は、遅延手段の構成についての「所定条件の成立」に関し、
a パチスロにおける当該ゲームで回転中のリールを停止させるためのストップスイッチの操作がなされること
b メダルの投入がなされること
c スタートスイッチの操作がなされること
も含まれ、また、「所定条件が成立していない場合」として、
d ヒットリクエストが発生しながらも入賞なしとなった場合
が含まれるから、「遅延手段」は想到容易である旨主張する(弁駁書第12頁第16行?第14頁第8行)。
しかし、本件訂正発明の場合には、「遅延手段」の構成における「所定条件」が成立しているか否かの判定が、可変表示装置の可変表示を開始する段階で行われることが、特許請求の範囲において限定されているので、前述のaストップスイッチの操作時やbメダルの投入時が含まれないことは明らかである。
また、cスタートスイッチの操作時に関しては、スタートスイッチが操作されないことには可変表示が開始されない、すなわち可変表示を開始する段階にはならないのであるから、所定条件の成立とは無関係の内容である。
次にdヒットリクエストが発生しながらも入賞なしとなった場合に関しても、この入賞なしと判定される時期が、リールの停止直前であり、可変表示装置の可変表示を開始する段階で判断されるものではないために、無関係の内容である。
しかも、このヒットリクエストが発生しながらも入賞なしとなった場合とは、具体的には、遊技者によるストップ操作時すなわちリールの停止直前に、ヒットリクエストに対応したシンボルが4コマずれの範囲内に存在するか否かをマイクロコンピュータが判定し、存在しない場合(いわゆる目押し失敗時)にヒットリクエストに従った表示結果にすることを諦めて、ヒットリクエストに従わない表示結果になることを消極的に容認するという内容である。つまり、特定の価値内容にすることが事前決定されているときには、あくまでその特定の価値内容に従った表示結果となるように表示制御しているものである。
ところが、本件訂正発明の遅延手段の場合には、可変表示装置の可変表示を開始する段階で所定条件が成立しているか否か判定し、成立していないと判定したときに、可変表示装置の停止時の識別情報が特定の価値内容以外の価値内容に従ったものとなるように表示制御するという、外れ価値内容への積極的な制御を行うものである。この点、ヒットリクエストに従った表示結果となるように表示制御しつつも、目押し失敗時にはヒットリクエストに従わない表示結果になるということを消極的に容認するという、甲3の開示内容とは全く異なるものである。

(2)請求人は、本件訂正発明の「前兆報知手段」の構成について、参考例1にあるように、所定の遊技価値が付与され得る状態の到来を報知するという事項が本件特許の出願日以前において周知である旨主張する(弁駁書第14頁第9行?第24行)。
しかし、この参考例1には、前兆報知手段の構成である、「前記記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶がありかつ未だ前記所定条件が成立していないことを条件として、前記所定の遊技価値が付与され得る状態の到来を遊技者に報知する前兆報知を行なうこと」は、何ら開示されておらず、参考例1は周知を立証する証拠にはなり得ない。
参考例1の62頁の略図では、前兆報知しているか否か自体明らかでなく、仮に前兆報知していると仮定したとしても、何を前兆報知しているのか不明である。たとえば、レギュラーボーナスやビッグボーナスが内部当選したことあるいは目押しに失敗してその内部当選が持ち越された状態であることを、前兆報知しているとも解釈できる。
また、参考例1全体の記載を参酌しても、具体的な制御方法の記載がほとんどない。よって、「前兆報知手段」の制御内容である、
a 記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶があり
b かつ未だ前記所定条件が成立していないことを条件として、
c 所定の遊技価値が付与され得る状態の到来を遊技者に報知すること
の開示が、全く存在しない。
本件訂正発明では、「遅延手段」が特定の価値内容が事前決定されておりながら、特定の価値内容以外の価値内容に従ったものになるように表示制御するという、積極的な遅延制御を行うものであり(目押しの失敗で仕方なく遅延を許容しているものではない)、その積極的遅延制御の下に所定の遊技価値が付与され得る状態の到来を遊技者に前兆報知する点が、最大の特徴である。
このような、特定の価値内容の事前決定下における積極的遅延制御と、前兆報知との組合せという特徴部分は、どの甲号証および参考例を組合せたとしても導き出せない。
このような特徴部分と、有効記憶手段の構成および相違点4の構成とが相俟って、
「所定の遊技価値の事前決定下における積極的遅延制御によって、遊技者の遊技の巧拙に依存することなく遊技機の内部制御によって積極的に所定の遊技価値の付与の連続発生の可能性を作り出し、そのような制御下において前兆報知をすることにより、所定の遊技価値の連続発生が生じるかもしれないという大きな期待を遊技者に抱かせることができる」
という、特有の顕著な効果が奏される。
よって、本件訂正発明は、特許法第29条第2項に規定するいわゆる進歩性を有するものである。

第5.本件訂正発明
訂正請求は、上記第2.3.に記載したとおり適法なものであるので、本件訂正発明は本件訂正明細書及び図面の記載からみて、その訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
なお、第3.4.(1)に記載した分節記号(a?j)は記載していないが、説明の都合上、その分節記号を用いる場合もある。
「 複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置と、
該可変表示装置の停止時の価値内容を該可変表示装置の可変表示が停止する以前において予め決定しておくための価値内容事前決定手段と、
予め定められた可変開始条件の成立に基づいて前記可変表示装置を可変表示させるとともに、予め定められた停止条件の成立に基づいて前記可変表示を停止制御し、停止時の識別情報が前記価値内容事前決定手段により決定された価値内容に従ったものとなるように表示制御する可変表示制御手段と、
前記価値内容事前決定手段によって決定された価値内容が予め定められた特定の価値内容である場合に該特定の価値内容を記憶する記憶手段と、
該記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶があり、かつ前記可変表示装置の可変表示を開始する段階で所定条件が成立しているか否か判定し、成立していないと判定したときには、前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容以外の価値内容に従ったものになるように表示制御することにより、前記所定条件が成立するまで前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容に従ったものになるように表示制御することを遅延させる遅延手段と、
前記記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶がありかつ前記所定条件が成立したことに基づいて、前記可変表示装置の停止後において所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段と、
前記記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶がありかつ未だ前記所定条件が成立していないことを条件として、前記所定の遊技価値が付与され得る状態の到来を遊技者に報知する前兆報知を行なう前兆報知手段とを含み、
前記記憶手段は、前記遅延手段によって前記特定の価値内容に従った表示制御が遅延している遅延期間中に、前記価値内容事前決定手段によって価値内容が決定された場合であって該決定された価値内容が前記特定の価値内容の場合に、該特定の価値内容を有効なものとして記憶する有効記憶手段を含み、
該有効記憶手段によって前記遅延期間中に前記特定の価値内容が記憶されていることに基づいて、前記遅延期間が終了し前記遊技価値付与手段によって前記所定の遊技価値が付与された後において再び前記遊技価値付与手段を作動できるようにしたことを特徴とする、遊技機。」

第6.記載不備に関する当審の判断
請求人は「遊技機」をパチスロとした場合、本件訂正発明の各構成がパチスロのどこの何に該当するか明確でなく、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に実施できる程度にその構成が記載されていない旨主張しているが(弁駁書第8頁第13行?第25行)、本件訂正発明の構成fの遊技価値付与手段は、「前記記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶がありかつ前記所定条件が成立したことに基づいて、前記可変表示装置の停止後において所定の遊技価値を付与する」ものであるとともに、発明の詳細な説明(特に、本件公報第14欄第35行?第37行の「なお、S52 において、当り表示決定用カウンタが0でない場合には、その回の可変表示においては大当りが発生しないようにしてもよい。」)を参酌すれば、当り表示決定用カウンタが0である場合には、その回の可変表示において大当りが発生するものと認められるから、「特定の価値内容である旨の記憶」があり、かつ、「所定条件が成立」した場合に、その回の可変表示において「可変表示装置」が停止すれば「所定の遊技価値を付与する」ものを前提としていることが分かる。
そうしてみると、本件訂正発明の「遊技機」には、構成eに記載されている「前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容に従ったものになるように表示制御」したときに、所定の遊技価値を付与しない可能性のある遊技機は含まれないと解され、請求人のいう、いわゆる「パチスロ」は通常包含されない。
もっとも、パチスロの場合であっても、「前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容に従ったものになるように表示制御」したときに、必ず所定の遊技価値を付与するための図柄が引き込まれるケースも有り得るので、パチスロが完全に排除されるものではない。
そして、本件訂正発明の「遊技機」を「特定の価値内容である旨の記憶」があり、かつ、「所定条件が成立」した場合に、その回の可変表示において「可変表示装置」が停止すれば「所定の遊技価値を付与する」ものとしてみると、「スロットマシン」の場合には、「予め定められた可変開始条件」は通常「スタートレバーの操作」に、「予め定められた停止条件」は通常「ストップボタンの操作」又は「スタートレバーの操作から所定時間の経過」、「遊技価値付与手段」は通常「メダル支払いのための装置」に、それぞれ対応することが明らかであり、「可変表示装置」、「価値内容事前決定手段」、「可変表示制御手段」、「記憶手段」、「所定条件」、「遅延手段」、「前兆報知手段」及び「有効記憶手段」については、パチンコ遊技機と格別異なるものとする必要はない。
そして、「再び遊技価値付与手段を作動できるようにした」点についても、「メダル支払いのための装置」を再び作動できればよいのであるから、その作動タイミングは、本件公報第16欄第29行?35行のように可変表示装置の停止制御を行って大当り表示した時点でも良いし、本件公報第18欄第8行?13行のように遅延期間経過後即座の時点でも良いことがわかり、どちらの時点であっても、当業者であれば発明の詳細な説明に基づいて容易に本件訂正発明を実施でき、かつ、本件訂正発明は発明の詳細な説明に記載したものであるということができる。
よって、本件特許は、平成2年法律第30号による改正前の特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしている。

第7.甲1?3及び参考例1
請求人が証拠方法として提出した甲1?3及び参考例1は、上記第3.2.に記載したとおりである。
1.甲1:「特許庁編 特許・実用新案審査基準」の抜粋
甲1は「特許庁編 特許・実用新案審査基準」の、特に「第1部明細書、第1章明細書の記載要件」に関する部分を抜粋したものである。

2.甲2(特開平1-259884号公報)
甲2には、図面とともに次の記載がある。
「〈産業上の利用分野〉
本発明は、複数種類の識別記号を可変表示する可変表示装置を備え、球が特定入賞口に入ると可変表示装置の可変表示を作動、停止して識別記号の組合せが賞態様を形成するか否かを競う別遊技を行うことが可能なパチンコ機に関するものである。」(第1頁右下欄第1行?第7行)
「 第16図はプログラムの構造を示すフローチャートであり、プログラムを起動すると、各スイッチの状態を読み込みチャタリングを除去し、RAM領域を初期化し、不正処理を行ない、各スイッチの状態に対応したゲーム動作処理、出力編集を行ない、編集データをポートに出力し、音の出力制御、乱数の更新等を行なう。」(第3頁右下欄末行?第4頁左上欄第6行)
「 上記したように各特定入賞口10、11、12に入賞すると、回転フラグを立て、継続回数表示器48に継続回数を表示する。そして、可変表示装置8が可変表示を開始し、タイマに設定してある一定時間が経過するか変動時間短縮ボタンが押されると可変表示装置8が停止し始める。可変表示装置8の停止は3個並設された可変表示部材である7セグメント44が左から順に表示を停止することにより行なわれる。」(第4頁左下欄第8行?第16行)
「そこでまず、左端の7セグメントA44a の表示が停止し、つぎにタイマに設定してある所定時間(ウェイトタイム1)が経過すると、ウェイトタイム1をリセットした後、中央の7セグメントB44b が表示を停止する。このとき、7セグメントA44a と7セグメントB44b の数字が等しく、かつ同色の場合、すなわち大当りの可能性がある場合には、ウェイトタイム1より長い所定時間(ウェイトタイム2)がタイマにより設定され、所定時間(ウェイトタイム2)終了後、ウェイトタイム2をリセットし、右端の7セグメントC44c が停止する。一方、7セグメントA44a と7セグメントB44b の数字が等しくても表示色が異なる場合、または7セグメントA44a と7セグメントB44b の数字が異なる場合には、ウェイトタイムは以前と同様にウェイトタイム1であり、ウェイトタイム1が経過すると、ウェイトタイム1をリセットした後、右端の7セグメントC44c が停止する。このように大当りの可能性がある場合には、7セグメントA44a 、7セグメントB44b がテンポよく停止してきた後、7セグメントC44c が停止するまでに一呼吸おかれることとなり、遊技者の大当りに対する期待感を一層高めることができる。」(第4頁左下欄末行?第5頁左上欄第3行)
「 次に大当り処理について説明する。大当りの賞態様が発生すると、継続回数カウンタ2に継続回数カウンタ1と同じ数値を読み込み、入賞個数カウンタ、継続条件成立フラグを初期化し、タイマで設定した所定時間経過後、継続回数表示器48に継続回数カウンタ2の数値を表示し、駆動源A51、B59を作動させ変動入賞装置9の玉受片54、および玉受扉52を開くとともに大当りランプ18を点灯させる。」(第5頁右上欄第5行?第13行)

これらの記載及び図面等からみて、甲2には、
「 複数種類の識別記号を可変表示する可変表示装置8と、
特定入賞口10、11、12に入賞すると、前記可変表示装置8が可変表示を開始し、タイマに設定してある一定時間が経過するか変動時間短縮ボタンが押されると前記可変表示装置8が停止し始め、
該可変表示装置8の停止は、まず、3個並設された可変表示部材である7セグメント44の左端の7セグメントA44a の表示が停止し、つぎにウェイトタイム1が経過すると、中央の7セグメントB44b が表示を停止し、その後ウェイトタイム1又は2が経過すると右端の7セグメントC44c が停止するものであり、
大当りの賞態様が発生すると、変動入賞装置9の玉受片54、および玉受扉52を開くパチンコ機。」
の発明(以下「甲2発明」という。)が開示されていると認められる。

3.甲3(特開昭59-186580号公報)
甲3には、図面とともに次の記載がある。
「本発明はマイクロコンピユータの利用により、電子的に統括制御されたスロツトマシンに関するものである。」(第2頁左上欄第7行?第9行)
「スタートレバー操作により、3つのリールが回転され、所定時間の経過後、後述するヒツトリクエストの設定(入賞の有無を照合)を行なつてリールストツプのためのストツプボタンの操作の有効化およびその表示のためのストツプランブ(第1図中27に対応)を点灯させる。」(第3頁左下欄第4行?第10行)
「ストツプボタンに対応したリールが回転中、かつストツプボタンが操作された場合に、そのリールをストツプさせることになる。」(第3頁左下欄第13行?第15行)
「ヒツトリクエストの発生は、前述のようにゲーム開始時にサンプリングされる乱数値と、ROM上の入賞テーブルにストアされた入賞を与えるべき数値群との照合の結果得られることになる。」(第4頁右下欄第1行?第5行)
「こうして任意時点でのゲーム開始後に特定の乱数値がサンプリングされ、前述の入賞確率テーブルと照合されてヒツトリクエストが得られることになるが、さらにペイアウト率を一定にする意味でリクエストカウンタを設けておいてもよい。すなわち、前述した入賞確率テーブル中の数値それぞれに相当する数値をRAM上にストアしておき、該当したヒツトリクエストが発生した際に、その数値に-1の減算処理を行なう。こうして特定のリクエストカウンタが“0”になると、それ以後の該当するヒツトリクエストが発生してもこれが無効化され、ペイアウト率は一定に保たれることになる。」(第5頁左下欄第14行?右下欄第6行)
「1リールに21個のシンボルマークがあるとすれば」(第6頁左上欄第9行?第10行)
「またヒツトリクエストなしの場合でも第1、第2リールが大あるいは中ヒツトを構成するシンボルの並びになつていることもあり得るのでやはりチエツクが必要で、これは第24図のフローチヤートによつて処理されることになる。例えばヒツトリクエストなしの場合で第1、第2リールがそれぞれコードナンバー17、19でストツプしていたとすれば(第21図参照)、第3リールのストツプ操作が、第3リールのコードナンバー3と4との間で行なわれるとコマずれなしのコードナンバー4から4コマずれのコードナンバー8までの間でチエツクが行なわれる。そしてコマずれなしであると中ヒツトとなるので、第3リールは例えば1コマずれのコードナンバー5でストツプされることになる。」(第9頁右上欄第9行?左下欄第4行)
「第3リールの停止により、窓に現れている全てのリールのシンボルマークが確定し、これで第14図に示した各RAMエリアが全てのデータをもつことになり、この時点で再度第22図の入賞判定処理が実行される。そして入賞の場合にはそのゲーム開始時に得られていたヒットリクエストを減算し、メダル支払いのためのホツパーモータがONされる。」(第9頁左下欄第11行?第18行)
「このような場合にはヒツトリクエストを満足しない結果となってしまい、設定された入賞確率が低下することになり、特に大ヒツトでその影響が大きくなる。これを適正化するためには、ヒツトリクエストが発生されながらも入賞なしとなつた場合にはヒツトリクエストを次回のゲームまで保存するようにすればよい。」(第9頁右下欄第15行?第10頁左上欄第1行)

これらの記載及び図面等からみて、甲3には、
「 1リールに21個のシンボルマークがある3つのリールと、
ゲーム開始時にサンプリングされる乱数値と、入賞を与えるべき数値群との照合の結果得られるヒツトリクエストの発生手段と、
スタートレバー操作により、前記3つのリールが回転され、ストツプボタンが操作された時点から限られた時間内にリールを停止させ、しかも可能な限り得られたヒツトリクエストに応じたシンボルマークの組み合わせで前記3つのリールを停止させるようにする手段と、ヒツトリクエストなしの場合、入賞なしとなるシンボルマークの組み合わせで前記3つのリールを停止させるようにする手段と、
ヒツトリクエストを次回のゲームまで保存するリクエストカウンタと、
ヒツトリクエストが発生され、全てのリールのシンボルマークが確定し、入賞判定処理が実行され入賞の場合に、メダル支払いのためONされるホツパーモータとを含み、
前記リクエストカウンタは、ヒツトリクエストが発生されながらも入賞なしとなつた場合に、そのヒツトリクエストを保存し、
前記リクエストカウンタが0になるまで発生したヒツトリクエストが有効であるスロツトマシン。」
の発明(以下「甲3発明」という。)が開示されていると認められる。

4.参考例1(マル秘パチスロ必勝攻略本PART2)
参考例1には次の記載がある。
「「XX」では、ビッグチャンスやレギュラーボーナスの前兆に入ると、スタートレバーを叩いたとき、1回だけ、リールが一瞬遅れてスタートするという特性があった」(第64頁第9行?第13行)

第8.本件訂正発明と甲2発明との対比
そこで、本件訂正発明と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「複数種類の識別記号を可変表示する可変表示装置8」は、本件訂正発明の「複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置」に相当し、以下同様に、
「特定入賞口10、11、12に入賞すると」は「予め定められた可変開始条件の成立に基づいて」に、
「可変表示装置8が可変表示を開始し」は「可変表示装置を可変表示させるとともに」に、
「大当りの賞態様が発生すると」は「可変表示装置の停止後において」に、
「変動入賞装置9の玉受片54、および玉受扉52を開く」は「所定の遊技価値を付与する」に、
「パチンコ機」は「遊技機」に、それぞれ相当する。
また、甲2の記載全体から見て、次のことがいえる。
a.甲2発明は「タイマに設定してある一定時間が経過するか変動時間短縮ボタンが押されると前記可変表示装置8が停止し始め」るものであって、甲2発明の「タイマに設定してある一定時間が経過するか変動時間短縮ボタンが押される」ことは、本件訂正発明の「予め定められた停止条件の成立」に相当するから、甲2発明は、本件訂正発明の「予め定められた停止条件の成立に基づいて前記可変表示を停止制御」する可変表示制御手段に相当する手段を含むものといえる。

b.甲2発明の「ウェイトタイム1又は2が経過する」ことは、本件訂正発明の「所定条件が成立している」状態に相当するものと捉えることができ、甲2発明はウェイトタイム1又は2が経過すると右端の7セグメントC44c が停止するものであるから、甲2発明と本件訂正発明は“所定条件が成立しているか否か判定し、成立していないと判定したときには、前記所定条件が成立するまで表示制御することを遅延させる遅延手段”を含んでいる点では共通しているといえる。

以上を総合すると、両者は、
「 複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置と、
予め定められた可変開始条件の成立に基づいて前記可変表示装置を可変表示させるとともに、予め定められた停止条件の成立に基づいて前記可変表示を停止制御する可変表示制御手段と、
所定条件が成立しているか否か判定し、成立していないと判定したときには、前記所定条件が成立するまで表示制御することを遅延させる遅延手段と、
前記可変表示装置の停止後において所定の遊技価値を付与する手段を含む遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本件訂正発明は、「価値内容事前決定手段」により、「可変表示装置の停止時の価値内容を該可変表示装置の可変表示が停止する以前において予め決定」しておき、「可変表示制御手段」により、「予め定められた可変開始条件の成立に基づいて可変表示装置を可変表示させるとともに、予め定められた停止条件の成立に基づいて前記可変表示を停止制御し、停止時の識別情報が前記価値内容事前決定手段により決定された価値内容に従ったものとなるように表示制御する」ものであるのに対して、甲2発明は、「価値内容事前決定手段」を有しておらず、可変表示制御手段に相当する手段が、予め定められた停止条件の成立に相当する「タイマに設定してある一定時間が経過するか変動時間短縮ボタンが押される」ことに基づいて可変表示装置を停止制御し、停止した後にその価値内容を判定するという事後判定方式を採用している」ものである点。
[相違点2]本件訂正発明は、「価値内容事前決定手段によって決定された価値内容が予め定められた特定の価値内容である場合に該特定の価値内容を記憶する記憶手段」を含んでいるのに対し、甲2発明は、価値内容事前決定手段を有していないため、「特定の価値内容を記憶する記憶手段」も有していない点。
[相違点3]本件訂正発明は「記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶があり、かつ可変表示装置の可変表示を開始する段階で所定条件が成立しているか否か判定し、成立していないと判定したときには、可変表示制御手段が前記特定の価値内容以外の価値内容に従ったものになるように表示制御することにより、前記所定条件が成立するまで前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容に従ったものになるように表示制御することを遅延させる遅延手段」を含んでいるのに対して、甲2発明は、事前決定された特定の価値内容を記憶する記憶手段を有していないため、その記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶があることを条件として表示制御することを遅延させるものではなく、ウェイトタイム1又は2が経過しているか否かの判定、すなわち所定条件が成立しているか否かの判定は、中央の7セグメントB44b の表示が停止した後に行っており、さらに、ウェイトタイム1又は2が経過すると、右端の7セグメントC44c が停止する、すなわち所定条件が成立していないと判定したときには、停止表示制御を行わないものである点。
[相違点4]本件訂正発明は、「記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶がありかつ未だ所定条件が成立していないことを条件として、所定の遊技価値が付与され得る状態の到来を遊技者に報知する前兆報知を行なう前兆報知手段」を含んでいるのに対して、甲2発明は、「特定の価値内容である旨を記憶する記憶手段」が存在しないために、前兆報知手段も採用されていないもの」である点。
[相違点5]本件訂正発明は、「記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶がありかつ所定条件が成立したことに基づいて、」「遊技価値付与手段」が、「可変表示装置の停止後において所定の遊技価値を付与」するとともに、「遅延手段によって特定の価値内容に従った表示制御が遅延している遅延期間中に、価値内容事前決定手段によって」「決定された価値内容が特定の価値内容の場合に、該特定の価値内容を有効なものとして記憶」し、「前記遅延期間中に有効なものとして前記特定の価値内容が記憶されていることに基づいて、前記遅延期間が終了し前記遊技価値付与手段によって前記所定の遊技価値が付与された後において再び前記遊技価値付与手段を作動できるようにした」ものであるのに対して、甲2発明は、そのような構成を採用していない点。
なお、第3.4.(2)に記載した相違点1?4は、争いのないものであるが、当審は検討の都合上、その相違点2を相違点2と相違点3に分割するとともに、分割後の相違点3を甲2発明に沿って修正した。

第9.進歩性に関する当審の判断
[相違点1]及び[相違点2]について
相違点1と2は、密接に関連しているので合わせて検討する。
甲3発明は第7.3.に記載したとおり、
「 1リールに21個のシンボルマークがある3つのリールと、
ゲーム開始時にサンプリングされる乱数値と、入賞を与えるべき数値群との照合の結果得られるヒツトリクエストの発生手段と、
スタートレバー操作により、前記3つのリールが回転され、ストツプボタンが操作された時点から限られた時間内にリールを停止させ、しかも可能な限り得られたヒツトリクエストに応じたシンボルマークの組み合わせで前記3つのリールを停止させるようにする手段と、ヒツトリクエストなしの場合、入賞なしとなるシンボルマークの組み合わせで前記3つのリールを停止させるようにする手段と、
ヒツトリクエストを次回のゲームまで保存するリクエストカウンタと、
ヒツトリクエストが発生され、全てのリールのシンボルマークが確定し、入賞判定処理が実行され入賞の場合に、メダル支払いのためONされるホツパーモータとを含み、
前記リクエストカウンタは、ヒツトリクエストが発生されながらも入賞なしとなつた場合に、そのヒツトリクエストを保存し、
前記リクエストカウンタが0になるまで発生したヒツトリクエストが有効であるスロツトマシン。」
である。
そして、甲3発明の「ヒツトリクエストの発生手段」、「可能な限り得られたヒツトリクエストに応じたシンボルマークの組み合わせでリールを停止させるようにする手段」及び「リクエストカウンタ」は、それぞれ本件訂正発明の「価値内容事前決定手段」、「停止時の識別情報が前記価値内容事前決定手段により決定された価値内容に従ったものとなるように表示制御する」「可変表示制御手段」及び「特定の価値内容を記憶する記憶手段」に相当している。
また、甲2発明及び甲3発明ともに遊技機の可変表示を制御する構成を有している点では共通しているから、甲2発明の事後判定方式に代えて、甲3発明の「ヒツトリクエストの発生手段」、「可能な限り得られたヒツトリクエストに応じたシンボルマークの組み合わせでリールを停止させるようにする手段」及び「リクエストカウンタ」を適用して、上記相違点1及び2に係る本件訂正発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。

[相違点3]について
甲2発明は、[相違点1]に記載したように、事後判定方式を採用しているため、可変表示装置8の停止時における3個並設された可変表示部材の表示を大当りの賞態様とするか否かを、可変表示装置8が可変表示を開始する段階で決定することは不可能である。
また、甲3発明は、ゲーム開始時にヒツトリクエストを発生し可能な限り得られたヒツトリクエストに応じたシンボルマークの組み合わせで3つのリールを停止させるものであり、逆にヒツトリクエストなしの場合、入賞なしとなるように3つのリールを停止させるものであるから、3つのリールが回転を開始する段階で、入賞有りとするかなしとするかを決定することが可能ではある。
しかし、甲3発明はリクエストカウンタにヒツトリクエストが保存されているにもかかわらず、3つのリールが回転を開始する段階で、他の何らかの条件が成立しているか否かにより、そのヒツトリクエストに応じたシンボルマークの組み合わせで前記3つのリールを停止させるか否かを決定するものではなく、そのような条件及び決定手段を追加することが、遊技機の分野において従来周知の技術であるということもできない。
請求人は上記第3.4.(4)に記載したとおり、パチスロの場合に、回転中のリールを停止させるための操作がなされることや、メダルの投入、あるいはスタートスイッチの操作がなされることなども、「所定条件が成立」したと解することもでき(弁駁書第12頁第25行?第28行)、甲3の第9頁右下欄第10行?第10頁左上欄第1行の記載における「ヒツトリクエストが発生しながらも入賞なしとなった場合」を「所定条件が成立していない場合」と解することもできる(弁駁書第13頁第4行?第10行)と主張している。
しかし、本件訂正発明がスロットマシンであるとしても、本件訂正発明は「可変表示装置の可変表示を開始する段階で所定条件が成立しているか否か判定」するものであるから、以下a?dの理由により、請求人の上記主張は採用できないか、該主張を考慮しても本件訂正発明が当業者により容易に想到し得たものということはできない。
a.「回転中のリールを停止させるための操作」はリールの回転が開始してから所定の時間が経過してから可能となるのが通常であるから、一般にリールの回転を開始する段階で判定できるものではない。
また、たとえリールの回転開始直後にリールを停止させるための操作が可能であったとしても、特定の価値内容である旨の記憶がある場合に、操作がされていれば特定の価値内容に従ったものになるように表示制御し、操作がされていなければ特定の価値内容以外の価値内容に従ったものになるように表示制御することが従来公知又は周知であるとはいえない。
b.「メダルの投入」はリールの回転を開始する段階で判定できるものであるとはいえ、メダルの投入があればリールの回転を開始し、なければリールの回転を開始しないのが通常であるから、「メダルの投入」を本件訂正発明における所定条件とするのは一般的でない。
また、たとえメダル投入なしでリールの回転を開始可能な、いわゆるリプレイを考慮しても、特定の価値内容である旨の記憶がある場合に、メダルの投入があれば特定の価値内容に従ったものになるように表示制御し、メダルの投入がなければ特定の価値内容以外の価値内容に従ったものになるように表示制御することが、従来公知又は周知であるとはいえない。
c.「スタートスイッチの操作」はリールの回転を開始する段階で判定できるものであるとはいえ、スタートスイッチの操作がなされればリールの回転を開始し、なされなければリールの回転を開始しないのが通常であるから、「メダルの投入」を本件訂正発明における所定条件とするのは一般的でない。
また、たとえスタートスイッチの操作がなされなくてもリールの回転が開始可能なスロットマシンを考慮しても、特定の価値内容である旨の記憶がある場合に、スタートスイッチの操作がなされれば特定の価値内容に従ったものになるように表示制御し、スタートスイッチの操作がなされなければ特定の価値内容以外の価値内容に従ったものになるように表示制御することが、従来公知又は周知であるとはいえない。
d.請求人は甲3発明において「ヒツトリクエストが発生しながらも入賞なしとなった場合」を「所定条件が成立していない場合」と解することもできると主張しているが(弁駁書第13頁第7行?第10行)、甲3発明において「ヒツトリクエストが発生しながらも入賞なし」と判定される時期は、早くても第1リールの停止直前であって、3つのリールの回転を開始する段階で判定できるものではないので、請求人の上記主張は失当である。
よって、上記相違点3に係る本件訂正発明の構成は、請求人が提出した証拠である甲2、3に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。

[相違点4]について
甲2発明は[相違点1]に記載したように、事後判定方式を採用しているため、前兆報知手段を採用し得ないものであるとともに、甲3発明も前兆報知手段を備えていない。
参考例1には、請求人の主張のほか、「「XX」では、ビッグチャンスやレギュラーボーナスの前兆に入ると、スタートレバーを叩いたとき、1回だけ、リールが一瞬遅れてスタートするという特性があった」(第64頁第9行?第13行)という記載があり、ビッグチャンスやレギュラーボーナスの前兆を報知することがうかがえる。
また、特開昭62-127086号公報には、「この段階で、前記の抽選が実施されて、抽選が当たると、ステップ4が“YES”となり、抽選結果表示ランプ30が点灯すると共に、音声発生部23が所定の効果音を発して、遊戯者に抽選の当ったことが報知される。」(第3頁左下欄第14行?第18行)と記載され、実願昭60-74971号(実開昭61-191081号)のマイクロフィルムには、「入賞リクエスト信号が発生されたことを報知するようにしたことを特徴とするスロツトマシン。」と記載されていることからみて、遊技機に前兆報知手段を備えることは、従来周知の技術であると認められる。
しかるに、本件訂正発明の「前兆報知手段」は「前記記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶がありかつ未だ前記所定条件が成立していないことを条件として、前記所定の遊技価値を付与され得る状態の到来を遊技者に報知する前兆報知を行なう」ものであるところ、上記従来周知の前兆報知手段は、本件訂正発明の該構成に照らせば「前記記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶があることを条件として、前記所定の遊技価値を付与され得る状態の到来を遊技者に報知する前兆報知を行なう」ものにすぎない。
すなわち、本件訂正発明の前兆報知手段が前兆報知を行なう条件は、記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶があることのみならず、未だ所定条件が成立していないことを要件としている。
そして、この要件と本件訂正発明の上記相違点3の構成(特に「所定条件が成立するまで前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容に従ったものになるように表示制御することを遅延させる遅延手段」)により、本件特許明細書の[発明が解決しようとする課題]の項(本件公報第3欄第32行?第37行)に記載されるように「可変表示装置の停止時の価値内容を予め決定しておき、その決定された価値内容が予め定められた特定の識別情報である場合にその特定の識別情報を表示する以前に特定の識別情報が表示されることを遊技者に報知するなどの遊技制御を盛り混んで前記既に決定された価値内容を有効利用して遊技性を向上させる」ことができるという、甲2発明、甲3発明及び従来周知の技術からは得られない格別の効果を奏するものである。
よって、上記相違点4に係る本件訂正発明の構成は、甲2発明、甲3発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。

[相違点5]について
甲3発明は上記第7.3.に記載したとおりのものであり、該発明の「リクエストカウンタ」は「ヒツトリクエストが発生されながらも入賞なしとなつた場合に、そのヒツトリクエストを保存」するものであり、そのカウント値が「0になるまで発生したヒツトリクエストが有効」とするためのものである。
そして、甲3発明においては最初にヒツトリクエストを保存してカウント値が1になっている時、さらにヒツトリクエストが発生すればカウント値は2となり、最初に発生したヒツトリクエストに基づくメダル支払いがあった後、次に発生したヒツトリクエストに基づくメダル支払いが可能となることが明らかであるから、甲3発明の「ヒツトリクエストを保存」すること及びそのカウント値が「0になるまで発生したヒツトリクエストが有効」とすることは、それぞれ本件訂正発明の「特定の価値内容を記憶」すること及び「所定の遊技価値が付与された後において再び前記遊技価値付与手段を作動できるようにした」ことに相当する。
ところで、特定の価値内容に従った表示制御が遅延する原因は、本件訂正発明では「遅延手段」によるのに対し、甲3発明では「ヒツトリクエストが発生されながらも入賞なしとなつた場合」である点で異なるが、その点は上記相違点3に起因する相違にすぎないから相違点5の検討からは除くこととする。
そうすると、本件訂正発明の「有効記憶手段」と甲3発明の「リクエストカウンタ」は、いずれも遅延期間中に決定された特定の価値内容を記憶又は発生したヒツトリクエストを保存するものとなるから、両者の機能は実質的に同一であるといえる。
そして、甲2発明及び甲3発明ともに何らかの遊技価値(甲2発明では「変動入賞装置9の玉受片54、および玉受扉52を開く」こと、甲3発明では「メダル支払い」)を付与する点で共通しているから、甲2発明に甲3発明の「リクエストカウンタ」及びその機能を適用して、上記相違点5に係る本件訂正発明のような構成とすることは当業者が容易に想到し得る。

第10.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件訂正発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊技機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置と、
該可変表示装置の停止時の価値内容を該可変表示装置の可変表示が停止する以前において予め決定しておくための価値内容事前決定手段と、
予め定められた可変開始条件の成立に基づいて前記可変表示装置を可変表示させるとともに、予め定められた停止条件の成立に基づいて前記可変表示を停止制御し、停止時の識別情報が前記価値内容事前決定手段により決定された価値内容に従ったものとなるように表示制御する可変表示制御手段と、
前記価値内容事前決定手段によって決定された価値内容が予め定められた特定の価値内容である場合に該特定の価値内容を記憶する記憶手段と、
該記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶があり、かつ前記可変表示装置の可変表示を開始する段階で所定条件が成立しているか否か判定し、成立していないと判定したときには、前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容以外の価値内容に従ったものになるように表示制御することにより、前記所定条件が成立するまで前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容に従ったものになるように表示制御することを遅延させる遅延手段と、
前記記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶がありかつ前記所定条件が成立したことに基づいて、前記可変表示装置の停止後において所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段と、
前記記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶がありかつ未だ前記所定条件が成立していないことを条件として、前記所定の遊技価値が付与され得る状態の到来を遊技者に報知する前兆報知を行なう前兆報知手段とを含み、
前記記憶手段は、前記遅延手段によって前記特定の価値内容に従った表示制御が遅延している遅延期間中に、前記価値内容事前決定手段によって価値内容が決定された場合であって該決定された価値内容が前記特定の価値内容の場合に、該特定の価値内容を有効なものとして記憶する有効記憶手段を含み、
該有効記憶手段によって前記遅延期間中に前記特定の価値内容が記憶されていることに基づいて、前記遅延期間が終了し前記遊技価値付与手段によって前記所定の遊技価値が付与された後において再び前記遊技価値付与手段を作動できるようにしたことを特徴とする、遊技機。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この発明は、パチンコ遊技機やスロットマシンなどで代表される遊技機に関し、特に、複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置の表示結果に基づいて所定の遊技価値を付与する遊技機に関する。
[従来の技術]
この種の遊技機において、従来から一般的に知られているものに、たとえば、打玉が始動入賞領域に入賞するなどの所定の条件が成立することに基づいて可変表示装置が可変表示され、所定時間の経過または所定時間の経過以前におけるストップスイッチの押圧操作などの予め定められた停止条件が成立したことに基づいて可変表示装置が停止制御され、その停止した可変表示装置の表示結果が予め定められた識別情報になっていることに基づいて所定個数の賞品玉の払出しなどの所定の遊技価値を遊技者に与えるように構成したものがあった。そしてこの可変表示装置により停止時の表示結果がいかなる識別情報になるかという期待感を遊技者に与えんとしていた。
[発明が解決しようとする課題]
しかし、この種従来の遊技機においては、可変表示による予め定められた特定の識別情報が何の前兆もなく表示されるため、可変表示装置の可変表示の停止以前から遊技者の期待感を盛り上げることがあまりできず、せっかく可変表示装置を設けたにもかかわらずその可変表示装置の面白さを十分に演出できないという遊技性に欠ける欠点を有していた。
そこで、可変表示装置の停止時の価値内容を予め決定しておき、その決定された価値内容が予め定められた特定の識別情報である場合にその特定の識別情報を表示する以前に特定の識別情報が表示されることを遊技者に報知するなどの遊技制御を盛り混んで前記既に決定された価値内容を有効利用して遊技性を向上させることが考えられる。しかし、このような遊技性を向上させるべく価値内容を事前に決定する遊技機では、価値内容が決定されてからその価値内容に従った可変表示がなされるまでの間に特定の識別情報となる特定の価値内容が再び決定された場合には、その決定された特定の識別情報となる価値内容が無効とされてしまい遊技者に不利益を与えるという問題点があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、遊技性を向上させるために価値内容を事前に決定しその決定された価値内容に従った可変表示の停止を行なった場合にもその遅延期間中に生じた前記特定の価値内容が無効となることのない遊技機を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段]
本発明は、複数種類の識別情報を可変表示可能な可変表示装置と、
該可変表示装置の停止時の価値内容を該可変表示装置の可変表示が停止する以前において予め決定しておくための価値内容事前決定手段と、
予め定められた可変開始条件の成立に基づいて前記可変表示装置を可変表示させるとともに、予め定められた停止条件の成立に基づいて前記可変表示を停止制御し、停止時の識別情報が前記価値内容事前決定手段により決定された価値内容に従ったものとなるように表示制御する可変表示制御手段と、
前記価値内容事前決定手段によって決定された価値内容が予め定められた特定の価値内容である場合に該特定の価値内容を記憶する記憶手段と、
該記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶があり、かつ前記可変表示装置の可変表示を開始する段階で所定条件が成立しているか否か判定し、成立していないと判定したときには、前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容以外の価値内容に従ったものになるように表示制御することにより、前記所定条件が成立するまで前記可変表示制御手段が前記特定の価値内容に従ったものになるように表示制御することを遅延させる遅延手段と、
前記記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶がありかつ前記所定条件が成立したことに基づいて、前記可変表示装置の停止後において所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段と、
前記記憶手段に前記特定の価値内容である旨の記憶がありかつ未だ前記所定条件が成立していないことを条件として、前記所定の遊技価値が付与され得る状態の到来を遊技者に報知する前兆報知を行なう前兆報知手段とを含み、
前記記憶手段は、前記遅延手段によって前記特定の価値内容に従った表示制御が遅延している遅延期間中に、前記価値内容事前決定手段によって価値内容が決定された場合であって該決定された価値内容が前記特定の価値内容の場合に、該特定の価値内容を有効なものとして記憶する有効記憶手段を含み、
該有効記憶手段によって前記遅延期間中に前記特定の価値内容が記憶されていることに基づいて、前記遅延期間が終了し前記遊技価値付与手段によって前記所定の遊技価値が付与された後において再び前記遊技価値付与手段を作動できるようにしたことを特徴とする。
[作用]
本発明によれば、価値内容事前決定手段の働きにより、可変表示装置の停止時の価値内容を該可変表示装置の可変表示が停止する以前において予め決定しておくことができる。また、予め定められた停止条件が成立したことに基づいて可変表示装置の可変表示が停止制御され、その停止時の識別情報が前記予め決定された価値内容に従ったものになるように表示制御される。また、記憶手段の働きにより、価値内容事前決定手段によって決定された価値内容が少なくとも定められた特定の価値内容である場合に少なくとも特定の価値内容が記憶される。さらに、遅延手段の働きにより、記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶があり、かつ可変表示装置の可変表示を開始する段階で所定条件が成立しているか否か判定され、成立していないと判定されたときには、可変表示制御手段が特定の価値内容以外の価値内容に従ったものになるように表示制御することにより、所定条件が成立するまで可変表示制御手段が特定の価値内容に従ったものになるように表示制御することが遅延される。また、記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶がありかつ所定条件が成立したことに基づいて可変表示装置の停止後において所定の遊技価値が付与される。前兆報知手段の働きにより、記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶がありかつ未だ所定条件が成立していないことを条件として、所定の遊技価値が付与され得る状態の到来を遊技者に報知する前兆報知が行なわれる。また、記憶手段に含まれる有効記憶手段の働きにより、遅延手段によって特定の価値内容に従った制御が遅延している遅延期間中に少なくとも価値内容事前決定手段によって価値内容が決定された場合であって決定された価値内容が特定の価値内容の場合に少なくとも特定の価値内容が有効なものとして記憶され、その有効記憶手段によって遅延期間中に特定の価値内容が記憶されていることに基づいて遅延期間が終了し遊技価値付与手段によって所定の遊技価値が付与された後において再び遊技価値付与手段が作動される。
つまり、前記遅延期間中に再び前記特定の価値内容が決定された場合に、遅延期間が終了し所定の遊技価値が付与された後において再び遊技価値が付与されるので、遅延期間中に決定された価値内容のすべてが無効になることはない。
[発明の実施例]
次に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
第1図は、遊技機の一例としてのパチンコ遊技機を示す全体正面図であり、第2図は第1図に示した可変表示装置の詳細を示した正面図である。第1図および第2図を参照して、パチンコ遊技機1の前面枠2には、扉保持枠3が設けられている。そして、パチンコ遊技機1の遊技盤11によって形成されている遊技領域13を開閉するガラス扉枠4と前面板5とが前記扉保持枠3に対し開閉自在に設けられている。パチンコ遊技機1の図示右下隅には、打球操作ハンドル9が設けられており、この打球操作ハンドル9を遊技者が操作することにより打球発射装置44(第3図参照)が作動し、パチンコ玉を1つずつ打球誘導レール12aと遊技領域形成レール12bとの間を通して前記遊技領域13に打込むように構成されている。
遊技領域13には、そのほぼ中央に可変表示装置14が設けられているとともに、その下方に可変入賞球装置19が並設されている。そして、遊技領域13に形成されている始動入賞口26a,26b,26cのいずれかにパチンコ玉が入賞することにより最大4個まで始動入賞記憶が行なわれ、始動入賞記憶のあることに基づいて、第2図に示す識別情報表示器15a,15b,15cが可変表示を開始し、所定時間の経過または、所定時間の経過以前における遊技者による停止操作ボタン8の押圧操作に基づいて前記識別情報表示器15a,15b,15cが順次停止制御されるように構成されている。また、可変表示が1回行なわれるごとに前記始動入賞記憶が1つずつ減算される。そして停止したときの可変表示装置14による表示が予め定める特定の識別情報(たとえば各図柄のゾロ目)になれば、大当りとなり可変入賞球装置19の開閉板20を開成して遊技者にとって有利となる第1の状態に駆動制御される。この可変入賞球装置19により、後述する記憶手段に特定の価値内容である旨の記憶があり、かつ、所定条件が成立したことに基づいて、前記可変表示装置の停止後において所定の遊技価値を付与する遊技価値付与手段が構成されている。
なお、この遊技価値付与手段は、可変表示装置14の表示結果が予め定められた特定の識別情報になったことに基づいて所定数の賞品球や得点を直接遊技者に与えるものであってもよい。また、前記可変表示装置14は、常時可変表示されパチンコ玉の始動入賞を条件として改めて可変開始しその後所定時間の経過または遊技者の停止操作ボタン8の押圧操作に基づいて停止制御されるものであってもよい。この場合には、始動入賞に伴って可変表示の速さや明るさなどを切換えて可変表示態様を切換えて可変開始報知することが望ましい。また、常時可変表示されたパチンコ玉の始動入賞を条件として停止制御されるものであってもよい。なお、大当り以外に中当りや小当りを設けてもよい。また、停止操作ボタンを設けなくてもよい。可変表示装置14には、第2図に示すように可変入賞球装置19の開閉板20の開閉回数を表示するための開成回数表示器16,パチンコ玉の始動入賞の記憶値を表示するための始動入賞記憶表示器17a?17d,複数種類の識別情報(たとえば0?9,A,C,E,F,Hの15種類)を可変表示できる識別情報表示器15a,15b,15cならびに入賞口18が設けられている。
可変入賞球装置19の前記第1の状態は、所定期間(たとえば30秒)が経過することまたは可変入賞球装置19内へ入賞したパチンコ玉が所定個数(たとえば10個)に達することのうちいずれか早い方の条件が成立することに基づいて終了し、開閉板20が開成される。前記開閉板20の開成状態で開放される入賞空間21には、特定入賞口22が形成されており、可変入賞球装置19の第1の状態の期間中にパチンコ玉がその特定入賞口22に入賞すれば、前記第1の状態が更新されて繰返し継続制御される。その繰返し継続制御は、その回の第1の状態が終了するまで待って行なわれる。
なお、パチンコ玉が特定入賞口22が入賞して繰返し継続条件が成立した時点で即座に前記繰返し継続制御を行なってもよい。この繰返し継続回数の上限は10回に設定されている。また、前記入賞空間21に形成された特定入賞口22の左右両側には通常入賞口23a,23bが形成されている。可変入賞球装置19には、さらに可変入賞球装置19に入賞した入賞玉の個数を表示するための入賞個数表示器24が設けられている。なお、本発明においては、前記可変入賞球装置19の開成時間(30秒)や入賞個数(10)ならびに繰返し継続回数(10)は前記実施例に限定されるものではない。さらに前記可変入賞球装置19は、開閉板20が前方に開成するものを示したが、本発明はこれに限らず、1対の開閉翼片が左右に開閉するものや1対の摺動片が左右に摺動するものであってもよく、また、駆動源としてソレノイドの代わりにモータを用いてもよい。
前記遊技領域13には、さらに通常の入賞口27a,27b,28a,28b,特定入賞口22に入賞したときに点灯または点滅する遊技効果ランプ25,大当りの発生時などに点灯または点滅する遊技効果ランプ30a,30bが設けられている。また、遊技領域13に打込まれたパチンコ玉がいずれの入賞口にも入賞しなかった場合には、アウト玉としてアウト口29から回収される。図中、31は大当り時に点灯または点滅する遊技効果ランプである。
パチンコ玉の入賞に伴ってその入賞ごとに所定個数(たとえば13個)の賞品玉が打球供給皿6内に払出される。そしてこの打球供給皿6内のパチンコ玉が遊技者の打玉操作ハンドル9の操作に基づいて1つずつ打球発射位置に供給されて遊技領域13内に弾発発射される。この打球供給皿6の下方には余剰球受皿10が設けられており、前記打玉供給皿6内のパチンコ玉が満杯となり貯留できなくなった余剰球がこの余剰球受皿10内に放出される。図中、7はスピーカであり、大当り発生時などの効果音を発生したり異常事態発生時に警報音を発生したりするものである。
以上説明した可変表示装置14は、本実施例ではセグメントLED式のものを示したが、本発明はこれに限らず、ドラム式や液晶などを用いたデジタル表示のものであってもよく、また、リーフ式あるいはエレクトロルミネッセンスによる表示であってもよい。さらに、複数のランプやLEDを配設し、ランプLEDを循環させて走行点灯させながら可変表示を行なういわゆるルーレット式のものであってもよい。また、円板型の複数のディスクにそれぞれ複数種類の識別情報を書込みそれぞれのディスクの1カ所の識別情報を表示するようにしたディスク式のものであってもよい。さらに、ドラム式やディジタル式を組合わせるなど、前記種々の可変表示部材を2つ以上組合わせたものであってもよい。また、ベルト式やドットマトリクスでもよい。なお、本実施例では、表示部の数を3個としたが、1個または2個もしくは4個以上であってもよい。
第3図は、パチンコ遊技機の一部内部構造を示す全体背面図である。パチンコ遊技機1の下方一方側には、打球発射装置44が設けられている。そして、前記第1図に示した打球操作ハンドル9を遊技者が操作することにより、この打球発射装置44が作動してパチンコ玉が1つずつ遊技領域13内に弾発発射されるように構成されている。遊技盤取付枠32に対し遊技盤11が遊技盤固定部材33により着脱自在に取付けられている。この遊技盤11裏面には入賞玉集合カバー体34が取付けられている。この入賞玉集合カバー体34は、遊技盤11前面側に形成されている各種入賞口から入賞した入賞玉を所定コースに誘導して集合させるためのものである。この入賞玉集合カバー体34には中継端子板35が設けられている。この中継端子板35は、ゲーム制御に関する電気的装置と制御基板との接続を中継するものである。また、図中43は制御基板ボックスであり、遊技制御に関する電気的装置と制御基板との接続を中継するものである。前記入賞玉集合カバー体34によって集合された入賞玉が、入賞玉集合樋40によって入賞玉処理器41に誘導される。そして入賞玉処理器41により入賞玉を1つずつ処理し、その入賞玉ごとに賞品玉払出器42を作動させ、入賞玉1個につき所定個数(たとえば13個)の賞品玉を打球供給皿6(第1図参照)内に払出す。
図中、39a,39b,39cは、始動入賞口26a,26b,26c(第1図参照)にそれぞれ入賞した入賞玉を検出するための始動入賞玉検出器である。また、36は可変入賞球装置19の開閉板20(第1図参照)を開閉させるためのソレノイドである。さらに、37は特定入賞玉検出器であり、特定入賞口22(第1図参照)に入賞した入賞玉を検出するためのものである。38は可変入賞球装置19の入賞空間21(第1図参照)に入賞した入賞玉を検出するための入賞個数検出器である。
第4図は、パチンコ遊技機に使用される制御回路を示すブロック図である。
マイクロコンピュータ45は以下に述べるような各種機器の動作を制御する機能を有する。このため、マイクロコンピュータ45は、たとえば数チップのLSIで構成されており、その中には制御動作を所定の手順で実行することのできるMPU46と、MPU46の動作プログラムデータを格納するROM47と、必要なデータの書込みおよび読出しができるRAM48とを含む。
さらに、マイクロコンピュータ45は入力信号を受けてMPU46に入力データを与えるとともにMPU46からの出力データを受けて外部に出力する入出力回路49と、MPU46から音データを受けるサウンドジェネレータ50と、電源投入時にMPU46にリセットパルスを与えるパワーオンリセット回路51と、MPU46にクロック信号を与えるクロック発生回路52と、クロック発生回路52からのクロック信号を分周してリセットパルスを定期的に(たとえば2msecごと)にMPU46に与えるパルス分周回路(定期リセット回路)53と、MPU46からのアドレスデータをデコードするアドレスデコード回路54とを含む。
アドレスデコード回路54はMPU46からのアドレスデータをデコードし、ROM47,RAM48,入出力回路49,サウンドジェネレータ50にそれぞれチップセレクト信号を与える。
なお、本実施例では、ROM47は、その内容の書き換え、すなわち、必要が生じた場合には、その中に格納されたMPU46のためのプログラムデータを変更することができるようにプログラマブルROMが用いられる。そして、MPU46がこのROM47内に格納されたプログラムデータに従って、かつ以下に述べる各制御信号の出力に応答して、種々の機器に対して制御信号を与える。
マイクロコンピュータ45は、入力信号として、次のような信号が与えられる。
まず、遊技者の停止操作ボタン8(第1図参照)の押圧操作に伴って停止操作検出器8aがONになり、それに応答して検出回路55から停止操作信号がマイクロコンピュータ45に与えられる。パチンコ玉の始動入賞に伴って始動入賞玉検出器39a?39cがONしたことに応答して、検出回路56から始動入賞玉検出信号がマイクロコンピュータ45に与えられる。パチンコ玉が特定入賞口22(第1図参照)に入賞したことに伴って特定入賞玉検出器37がONになり、それに応答して検出回路57から特定入賞玉検出信号がマイクロコンピュータ45に与えられる。パチンコ玉が可変入賞玉装置19の入賞空間21内に入賞したことに伴って入賞個数検出器38がONになり、それに応答して検出回路58から入賞個数検出信号がマイクロコンピュータ45に与えられる。
次に、マイクロコンピュータ45は以下の回路および装置に制御信号を与える。ソレノイド駆動回路59を介してソレノイド36にソレノイド励磁用制御信号を与える。ランプ駆動回路62を介してそれぞれのランプ25,30a,30b,31にランプ点灯用制御信号を与える。LED駆動回路61を介して、始動入賞記憶表示器17a?17dに始動入賞記憶表示用制御信号を与える。7セグLED駆動回路60を介して、識別情報表示器15a?15cに識別情報表示用制御信号,入賞個数表示器24に入賞個数表示用制御信号を与えるとともに、開成回数表示器16に開成回数表示用制御信号を与える。この7セグLED駆動回路60とマイクロコンピュータ45とにより、予め定められた可変開始条件の成立に基づいて前記可変表示装置を可変表示させるとともに、予め定められた停止条件の成立に基づいて前記可変表示を停止制御し、停止時の識別情報が後述する価値内容事前決定手段により決定された価値内容に従ったものになるように表示制御する可変表示制御手段が構成されている。さらに、アンプ63を介してスピーカ7に音発生用制御信号を与える。なお、前記各種機器および制御回路には電源回路64から所定の直流電源が供給される。第5A図ないし第5I図は、第4図に示した制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。
第5A図は、メインルーチンを示し、前記パルス分周回路からたとえば2msecごとに発振されるリセットパルスが与えられるごとに1回実行される第5A図に示したスイッチチェック処理S3,S4の処理内容は後述する第5B図ないし第5D図に示し、7セグLEDコントロール処理S7の処理内容は後述する第5E図なしい第5I図に示すが、スイッチチェック処理S3,S4および7セグLEDコントロール処理S7以外のコントロール処理の詳細は省略する。S7の処理の後S8によりデータが出力される。次に、S9に進み、当り外れ決定用カウンタが「1」加算された後、S10に進み、当り外れ決定用カウンタの値が「235」であるか否かの判断がなされ、「235」である場合はS11により当り外れ決定用カウンタがクリアされ、「235」でない場合はS12に進む。この当り外れ決定用カウンタはこのプログラムが実行されるごとに「1」ずつ加算されるものであり、その最大値はたとえば「235」であり「235」に達すればクリアされ再度「0」からカウントアップされるものである。そして、「0」の場合は、後述するS33,S34により大当りとなる特定の価値内容が事前決定されて記憶される。S12?S19の処理はリセット待ち時間(S1?S8までのメイン処理およびS9?S11までの処理が済んでからリセットパルスが再び入力されるまでの時間)の間繰返し行なわれる。なお、メイン処理(S1?S8)1回の処理時間が遊技状態によって変化するため、S12?S19の処理回数は一定ではない。そして、S12?S19の処理が1回なされるごとに当り表示決定用カウンタが「+1」ずつカウントアップされる。この当り表示決定用カウンタの最大値はたとえば「15」であり、たとえば原則として「0」の場合に大当り表示になるように表示制御する。また、S12?S18の処理は、図柄表示用カウンタの乱数発生的処理である。この図柄表示用カウンタは、たとえば、15進カウンタ(0?9およびA,C,E,F,H)であり、カウント値が「B」の場合は「C」の図柄が表示され、カウント値が「C」の場合は「E」の図柄が表示され、カウント値が「D」の場合は「F」の図柄が表示され、カウント値が「E」の場合は「H」の図柄が表示されるように構成され、「000」?「HHH」までの3375通りすべての図柄の組合わせを表示する。そして、たとえば、各図柄のゾロ目の場合に大当りが発生するように構成される。したがって、見かけ上の確率は1/225である。しかし、後述するようにソフト上の確率は1/235である。なお、このメインプログラムでは、電源投入時における当り外れ決定用カウンタ,図柄表示用カウンタ,当り表示決定用カウンタの値(つまり初期データ値)はすべて0であり、また、当り外れ決定用カウンタが大当りを決定する値を0とし、当り表示決定用カウンタが大当り発生を決定する値を0としているため、スタートスイッチをONさせたまま電源投入を行なうことにより大当りが発生することになる。このように構成することにより、動作チェックのための大当り発生用の回路を特別に設けることなく、あるいは、動作チェックのための大当り発生用基板を用いることなく、製造ラインの検査工程において大当りの動作チェックを容易に行なうことができる。
第5B図は、前記S3およびS4により定義されたサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。まず、S20によりカウントSWチェック処理が行なわれ、S21によりVSWチェック処理が行なわれるが、ここでは詳細を省略する。次に、S22に進み、スタートSWAチェック処理が行なわれた後S23,S24により同様にスタートSWBチェック処理,スタートSWCチェック処理が行なわれるが、このS23,S24の処理はS22の処理内容と同様である。なお、S22の処理内容の詳述は後述する。S24の処理の後S25に進みストップSWチェック処理が行なわれてサブルーチンプログラムが終了する。このS24のストップSWチェック処理の詳細については後述する。
第5C図は、前記S3,S4で定義されたスイッチチェック処理のうちのスタートSWAチェック処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。S26により、スタートSWA(始動入賞玉検出器39a)がONになっているか否かの判断がなされる。そして、パチンコ玉が始動入賞口26a?26c(第1図参照)のいずれかに入賞すれば、S26によりYESの判断がなされS28に進み、スタートスイッチチェックカウンタが最大か否かの判断がなされる。このスタートスイッチチェックカウンタは、このスタートスイッチチェックサブルーチンプログラムが実行されるごとにS29により「1」ずつ加算されるものであり、その最大値はたとえば「255」である。そして未だに最大に達していない場合にはS29に進み、スタートスイッチチェックカウンタが1インクリメントされ、S30に進み、スタートスイッチチェックカウンタ=「2」であるか否かの判断がなされる。そして未だに「2」に達していない場合には、そのままサブルーチンプログラムが終了するが、「2」に達した場合にはS31に進み、始動記録カウンタ=「4」であるか否かの判断がなされる。始動記憶カウンタの上限値は「4」であるため、既にその上限値である「4」に達している場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するのであるが、未だに「4」に達していない場合にはS32に進み、始動入賞が発生したことに伴う始動入賞カウンタの「1」の加算処理がなされる。次に、S33では、当りはずれ決定用カウンタが「0」であるか否かの判断がなされ、「0」であると判断された場合には、S30に進み当り記憶カウンタの「1」の加算処理がなされる。当りはずれ決定用カウンタが「0」でない場合には、そのままサブルーチンプログラムが終了する。このS34の当りはずれ決定用カウンタの値に基づいて後述するS52以降の大当り制御が行なわれる。このS34により、価値内容事前決定手段によって決定された価値内容が予め定められた特定の価値内容である場合に特定の価値内容を記憶する記憶手段が構成されている。また、S9?S11,S33により、可変表示装置の停止時の価値内容を可変表示装置の可変表示が停止する以前において予め決定をしておくための価値内容事前決定手段が構成されている。
第5D図は、前記S3,S4により定義されたスイッチチェック処理のうちのストップスイッチチェック処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。遊技者が停止操作ボタン8(第1図参照)を押圧操作すれば、ストップスイッチがONになりステップS35によりYESの判断がなされてS37に進み、ストップスイッチカウンタが最大になっているか否かの判断がなされる。このストップスイッチカウンタは、このストップスイッチチェックサブルーチンプログラムが実行されるごとにS38により「1」ずつ加算されるものであり、その最大値はたとえば「255」である。そして、ストップスイッチチェックカウンタが未だに最大になっていない場合にはS38に進み、ストップスイッチチェックカウンタを「1」インクリメントし、S39に進む。S39では、ストップスイッチチェックカウンタ=「2」であるか否かの判断がなされ、未だに「2」になっていない場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するが、「2」になっている場合には、S40に進み、7セグ回転フラグがセットされているか否かの判断がなされる。この7セグ回転フラグは、後述するS59によりセットされS63によりクリアされるものである。そして7セグ回転フラグセットされていない場合にはそのままサブルーチンプログラムが終了するが、7セグ回転フラグセットされている場合にはS41に進み、ストップフラグをセットしてサブルーチンプログラムが終了する。7セグ回転フラグがセットされていない場合すなわち既に7セグの回転が減速段階に入っている場合にストップフラグがセットされない理由は、既に7セグの回転が減速段階に入っているために遊技者が停止操作ボタン8を押圧操作したとしても遅すぎるためである。このS41によりセットされたストップフラグに基づいて後述のS61によりYESの判断がなされて以降の可変表示装置の停止制御に移行する。一方、S35においてストップスイッチがONでない場合にはS36に進み、ストップスイッチチェックカウンタをクリアしてサブルーチンプログラムが終了する。なお前記S39によりストップスイッチチェックカウンタが「2」に達して初めて以降のストップフラグがセットされるように制御される理由は、遊技場に発生したノイズなどによりストップスイッチが瞬間的にONになる場合があり、そのようなノイズによる誤動作に基づいてストップフラグをセットしないようにするために、ストップスイッチチェックサブルーチンプログラムが第5E図に示すS3,S4の処理に基づいて2回実行されて2回ともストップスイッチがONになっている場合にのみストップフラグをセットするように制御したのである。第5C図に示したS30の処理においてもS39と同様にノイズによる誤動作を防止するように制御されている。
第5E図ならびに第5I図は、第5A図に示したS7で定義された7セグLEDコントロール処理のサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。ここで、第5E図ないし第5I図は、図柄表示用7セグについてのみ説明し、開成回数表示および入賞個数表示用7セグについては詳細を省略する。まず、S42により右7セグ停止フラグがセットされているか否かの判断がなされる。遊技開始時には通常右7セグ停止フラグがセットされていないのでS43に進む。この右7セグ停止フラグは後述するS69でセットされるものである。S43においてもS42に同様にNOの判断がなされS44に進みS44においても同様にNOの判断がなされてS45に進む。このS43で判断される7セグ停止フラグは後述するS66でセットされるものであり、S44で判断される左7セグ停止フラグはS63でセットされるものである。S45では、7セグ回転フラグがセットされているか否かの判断がなされる。遊技開始時には通常7セグ回転フラグがセットされていないためS46に進み大当りフラグがセットされているか否かの判断がなされる。大当りフラグも遊技開始時ではセットされていないので、S47に進む。この7セグ回転フラグは後述するS59でセットされるものであり、大当りフラグは後述するS76でセットされるものである。S47では、始動記憶カウンタが「0」であるか否かの判断がなされ、「0」である場合にはサブルーチンプログラムがそのまま終了する。この始動記憶カウンタは前記S32により「1」ずつ加算されるものでありS32において加算されている場合にはS47においてNOの判断がなされS48に進みはずれインターバルタイマが終了しているか否かの判断がなされる。このはずれインターバルタイマは可変表示装置の停止時の識別情報がはずれの場合にそれを遊技者に確認させるために必要となる1秒程度の時間を計時するものであり、後述するS77によりセットされるものである。そして、このはずれインターバルタイマが未だに終了していない場合には、そのままサブルーチンプログラムが終了する。そして、このはずれインターバルタイマが終了しない間はこのサブルーチンプログラムが実行されるごとにS48によりNOの判断がなされるが、はずれインターバルタイマが終了した段階でS48によりYESの判断がなされてS49に進み、始動記憶カウンタの「1」の減算処理がなされる。次に、S50に進み、図柄表示用カウンタの現在値を呼出し、S51に進み、当り記憶カウンタが「0」であるか否かの判明がなされる。当り記憶カウンタが「0」でない場合には、S52に進み、当り表示決定用カウンタが「0」であるか否かの判断がなされる。当り表示決定用カウンタ「0」である場合は、S53に進み、S50により呼出された図柄表示用カウンタの現在値のうち中および右の値を左の値に合わせて左=中=右にした値を今回の予定停止図柄として記憶し、S59に進み基本タイマをセットし、7セグ回転フラグをセットし、7セグLEDの回転を開始する。このS53の処理の具体例としてはたとえば、呼出値「372」である場合に予定停止図柄として「333」の大当りが記憶される。S51において当り記憶カウンタの値が「0」でない場合にS53において大当りが記憶される確率は1/16である。この基本タイマは、可変表示装置の自動停止の場合の基本時間を計時するためのものであり、たとえば、5.0秒程度の時間を計時するものである。また、S52において当り表示カウンタが「0」でないと判断された場合は、S54に進み、当り表示決定用カウンタが奇数であるか否かの判断がなされ、奇数と判断された場合は、S57に進み、図柄表示用カウンタの呼出値をそのまま今回の予定停止図柄として記憶し、S59の処理の後、サブルーチンプログラムが終了する。S57の処理の具体例としては、たとえば、呼出値が「372」である場合には、そのまま「372」が予定停止図柄として記憶される。但し、S54からS57の流れにおいて、呼出値が「333」である場合にもそのまま「333」の大当りが予定停止図柄として記憶される。S51において当り記憶カウンタの値が「0」でないと判断された場合にこのS54からS57の流れで大当りが記憶される確率は8/16×15/153である。S54において、偶数と判断された場合は、S55に進み、図柄表示用カウンタの呼出値のうち中の値を左の値に合わせて左=中をした値を今回の予定停止図柄として記憶し、S59の処理の後サブルーチンプログラムが終了する。このS55の処理の具体例としては、たとえば呼出値が「372」である場合には、リーチ目である「332」が予定停止図柄として記憶される。但し、呼出値が「373」である場合は、「333」が予定停止図柄となるので、大当りが記憶される。この大当りが記憶される確率は7/16×15/152である。前記S19,S52により所定条件が成立するまで可変表示制御手段が特定の価値内容に従ったものになるように表示制御することを遅延させる遅延手段が構成されている。また、S51において、当り記憶カウンタが「0」であると判断された場合には、S56に進み、図柄表示用カウンタの呼出値が左=中=右であるか否かの判断がなされ、左=中=右でない場合には、S54でYESで判断された場合と同様の処理がなされ、左=中=右と判断された場合は、S58を進み呼出値の右の値を「+3」した値を今回の予定停止図柄として記憶し、S59の処理の後、サブルーチンプログラムは終了する。このようにして、S53,S55,S57,S58によって予定停止図柄が決定されるが、本実施例において当り記憶カウンタに当りが記憶されている状態において大当り表示となる確率は1/16+8/16×15/153+7/16×15/152=1/10.65である。なお、S52において、当り表示決定用カウンタが0でない場合には、その回の可変表示においては大当りが発生しないようにしてもよい。また、0でない場合すべてにおいて前兆報知(リーチ目変換)を行なうようにしてもよい。具体的には、0でない場合には直ちにS55の処理を行ない、かつ、その結果が左=中=右になる場合には、S58に相当する処理を行なうようにしてもよい。
上記のようにS59によって7セグ回転フラグがセットされた後にサブルーチンプログラムが再び実行されると、S45においてYESの判断がなされ、第5F図に示すプログラムが実行される。すなわち、S60に進み、基本タイマが終了しているか否かの判断がなされ、終了していると判断された場合はS63に進み、7セグ回転フラグをクリアし、左7セグ停止フラグをセットした後サブルーチンプログラムを終了する。S60において基本タイマが終了していないと判断された場合は、S61に進み、ストップフラグがセットされているか否かの判断がなされ、ストップフラグがセットされていないと判断された場合には、そのままサブルーチンプログラムが終了しストップフラグがセットされていると判断された場合にはS62に進み、ストップフラグをクリアした後S63に進み、7セグ回転フラグをクリアし左7セグ停止フラグをセットしてサブルーチンプログラムが終了する。前記S35ないしS41ならびに前記S60ないしS63により、前記可変表示装置の可変表示を停止するため予め定められた停止条件が成立したことに基づいて停止指令信号を発生する停止指令信号発生手段が構成されている。
この第5F図に示した処理後、再び第5E図に示すサブルーチンプログラムが実行されると第5F図の処理のS63により左7セグ停止フラグがセットされているので、S44においてYESの判断がなされ、第5G図に示すプログラムが実行される。すなわち、S64に進み、図柄表示用7セグの左の現在の図柄が予定停止図柄であるか否かの判断がなされ、予定停止図柄でないと判断された場合には、そのままサブルーチンプログラムが終了する。左現在図柄が予定停止図柄になるまで上記動作が繰返される。ここで、現在図柄とは、S64および後述するS67,S73の処理が行なわれる段階で、可変表示装置の中央表示ラインに位置する図柄であり、予定停止図柄とは前記S53,S55,S57,S58により記憶されている停止図柄データに従った停止図柄である。左現在図柄が予定停止図柄になった場合には、S64において、YESの判断がなされ、S65に進み、左7セグを停止した後S66に進み、左7セグ停止フラグをクリアし、中7セグ停止フラグをセットした後、サブルーチンプログラムが終了する。
この第5G図に示した処理の後再び第5E図に示すサブルーチンプログラムが実行されると、第5G図の処理のS66により中セグ停止フラグがセットされているので、S43においてYESの判断がなされて第5H図に示すプログラムが実行される。すなわち、S67に進み、図柄表示用7セグの中現在図柄が予定停止図柄であるか否かの判断がなされ、所定停止図柄でないと判断された場合は、そのままサブルーチンプログラムが終了する。中現在図柄が予定停止図柄になるまで上記動作が繰返される。中現在図柄が予定停止図柄になった場合には、S67においてYESの判断がなされ、S68に進み中7セグを停止した後、S69に進み、中7セグ停止フラグをクリアして、右7セグ停止フラグをセットする。そして、S70に進み、左予定停止図柄と中予定停止図柄が一致しているか否かの判断がなされ、一致していない場合は、そのままサブルーチンプログラムが終了するが、一致している場合には、S71に進み右7セグ停止タイマをセット、右7セグ回転を減速させた後サブルーチンプログラムが終了する。この右7セグ停止タイマは、見かけ上大当り発生の可能性がある場合に右7セグの停止時間を遅延させて遊技性を向上させるものであり、たとえば3秒にセットされている。
この第5H図に示した処理の後、再び第5E図に示すサブルーチンプログラムが実行されると、第5H図の処理のS69により右7セグ停止フラグがセットされているので、S42においてYESの判断がなされて第5I図に示すプログラムが実行される。すなわち、S72に進み、前記S71でセットされた右7セグ停止タイマが終了しているか否かの判断がなされ、終了していないと判断された場合はそのままサブルーチンプログラムを終了する。右7セグ停止タイマが終了するまで上記動作が繰返される。右7セグ停止タイマが終了した場合にはS72においてYESの判断がなされ、S73に進み、図柄表示用7セグの右現在図柄が予定停止図柄であるか否かの判断がなされ予定停止図柄でない場合は、そのままサブルーチンプログラムが終了し、予定停止図柄になるまでこの動作が繰返される。右現在図柄が予定停止図柄になった場合に、S73においてYESの判断がなされS74に進み、右7セグを停止する。そして、S75に進み、予定停止図柄の左および中ならびに右が一致しているか否かの判断がなされ一致していない場合はS77に進み、はずれインターバルタイマをセットし、S78に進み、右7セグ停止フラグをクリアしてサブルーチンプログラムが終了する。S75において停止図柄の左および中ならびに右が一致している場合は、S76に進み、当り記憶カウンタを「-1」し、大当りのフラグをセットし、大当りインターバルタイマをセットした後S78に進み、右7セグ停止フラグをクリアしてサブルーチンプログラムが終了する。この大当りインターバルタイマは、可変表示の停止時の識別情報が大当りの場合にそれを遊技者に認識させるためにたとえば4秒程度の時間を計時するものである。なお、当り表示決定用カウンタのカウント値が「0」でなく前記S52によりNOの判断がなされる遅延期間中に、大当りの表示内容となる特定の価値内容が前記価値内容事前決定手段により決定された場合には、S34によりその特定の価値内容の決定情報が記憶されてその記憶情報に基づいて可変表示装置の停止制御がなされる。前記S34により、遅延手段によって特定の価値内容に従った表示制御が遅延している遅延期間中に価値内容事前決定手段によって価値内容が決定された場合であって、その決定された価値内容が特定の価値内容である場合にその特定の価値内容を有効なものとして記憶する有効記憶手段が兼用構成されている。この有効記憶手段は、前記遅延期間中に複数特定の価値内容が決定された場合にそのうちの少なくとも1つを記憶するものであればよい。
本実施例のパチンコ遊技機において、見かけ上の大当りの確率は15/153=1/225であるが、ソフト上では、約1/235である。すなわち、本実施例の場合遅延させる回数が不定なので始動入賞1個あたりの大当り発生確率を正確に出すことはできないが、始動入賞時のデータが大当りの場合には結局大当りが発生するように制御し、はずれの場合には結局大当りが発生しないように制御しているので、長期的には始動入賞時のデータが大当りとなる確率にほぼ等しくなる。なお、可変表示装置の停止順序としては実施例以外でもよく、また、同時あるいはほぼ同時に停止させてもよい。また、本実施例では、大当りが決定されてから大当りが発生するまでの期間(遅延回数)を不定にしたが、一定回数遅延させるようにしてもよくまた所定回数ではなく所定時間遅延させるようにしてもよい。さらに、遅延期間中に決定された特定の価値内容については、遅延制御させないようにしてもよい。また、本実施例では、始動入賞時に価値内容を決定し可変開始時に所定条件の成立不成立を決定するようにしたが、始動入賞時あるいは可変開始時に同時に価値内容と所定条件の成立,不成立を決定するようにしてもよい。なお、本実施例では、記憶手段,有効記憶手段により、特定の価値内容のみ記憶するようにしたが、本発明はこれに限らず、記憶手段,有効記憶手段が特定の価値内容だけでなく決定された価値内容すべてを記憶するようにしてもよい。また、有効記憶手段に記憶される特定の価値内容の数(すなわち記憶カウンタ)に上限を設けてもよい。また、本実施例では大当り確率を見かけ上とソフト上とで異ならせるようにしたが、同じにしてもよい。また大当り確率は実施例に限定されない。なお、本実施例では、パチンコ機を例に挙げて説明したが、可変表示装置を備えたアレンジボール(アレパチを含む)であってもよい。またスロットマシンであってもよい。なお、上記の場合における価値内容と所定の条件の成立・不成立の決定時期としては、可変表示装置を備えたアレンジボールにおいては、始動口が設けられている場合には本実地例と同様にすることが考えられ、始動口を設けずに1ゲーム中に1回ないし数回必ず可変表示が行なわれる場合には、1ゲームの開始時に決定されあるいは前のゲームの終了時に次のゲームにおける価値内容と所定条件の成立・不成立を決定することが考えられる。また、スロットマシンにおいては、1ゲームにおける1枚目のコイン投入時あるいはそれに相当するクレジットボタン操作時またはスタート操作時に決定することが考えられる。また、大当りの前兆を表示結果によって報知することに代えてあるいはそれに加えて音や光によって報知するようにしてもよい。さらに、パチンコ玉の代わりにカードを使用してのそのカードに記憶された得点の範囲内でパチンコ遊技を行なうカード式遊技機であってもよい。なお、本実施例では、前記有効記憶手段の記憶に基づいて遅延期間経過後に、可変表示装置を表示制御するものを示したが、本発明は、これに限らず、前記遅延期間経過後、可変表示装置を表示制御することなく即座に所定個数の賞品玉の払出しや所定の得点の付与等の遊技価値を付与してもよい。
[発明の効果]
以上のように、この発明によれば、予め定められた価値内容の表示の遅延期間中に決定された特定の価値内容が無効にされないので、遊技性を向上させるために事前決定された価値内容に従った可変表示の停止制御が遅延された場合にも遊技者に不利益を与えることのない遊技機を提供し得るに至った。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例を示した遊技機の一例としてのパチンコ遊技機を示す全体正面図、第2図は第1図に示した可変表示装置の詳細を示した正面図、第3図は第1図に示したパチンコ遊技機の一部内部構造を示す全体背面図、第4図は第1図に示したパチンコ遊技機に使用される制御回路を示したブロック図、第5A図ないし第5I図は第4図に示した制御回路の動作を説明するためのフローチャートである。
図において、14は可変表示装置、8は停止操作ボタン、19は可変入賞球装置、45はマイクロコンピュータである。
なお、図中、同一符号は同一、または相当部分を示す。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2010-09-06 
出願番号 特願平1-339230
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A63F)
P 1 113・ 531- YA (A63F)
P 1 113・ 532- YA (A63F)
P 1 113・ 851- YA (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 井上 昌宏
川島 陵司
登録日 1998-05-22 
登録番号 特許第2781929号(P2781929)
発明の名称 遊技機  
代理人 中田 雅彦  
代理人 中田 雅彦  
代理人 森田 俊雄  
代理人 梁瀬 右司  
代理人 池垣 彰彦  
代理人 深見 久郎  
代理人 深見 久郎  
代理人 振角 正一  
代理人 川下 清  
代理人 森田 俊雄  
代理人 塚本 豊  
代理人 塚本 豊  
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