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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 C04B |
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管理番号 | 1226801 |
審判番号 | 無効2008-800120 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2008-06-27 |
確定日 | 2010-10-27 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3121980号「磁気ヘッド用基板」の特許無効審判事件についてされた平成21年 1月27日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成21年行ケ第10050号平成21年6月19日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3121980号の請求項1?2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3121980号は、平成6年3月3日に出願され、平成12年10月20日に特許権の設定登録がなされたものである。 これに対して、平成20年6月27日に請求人日立金属株式会社よりその請求項1?3に係る発明について特許無効審判が請求され、これに対して、同年9月24日に被請求人(京セラ株式会社)より答弁書が提出された。 その後、平成21年1月27日付けで「特許第3121980号の請求項に係る発明を無効とする。」との審決(以下、「第1次審決」という。)がなされた。これに対し、同年3月3日に被請求人より審決取消訴訟(平成21年(行ケ)第10050号)が提起された。 その後、被請求人は平成21年4月28日に訂正審判(訂正2009-390060号)を請求し、同年6月19日に知的財産高等裁判所において、事件を審判官に差し戻すために、第1次審決を取り消すとの決定がなされた。 差戻後の特許無効審判において、被請求人より平成21年7月6日に訂正請求がなされ、請求人より同年8月10日に弁駁書が提出された。 なお、訂正審判(訂正2009-390060号)は取り下げられたものとみなされる。 2.訂正請求について 被請求人が行った平成21年7月6日付けの訂正請求は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正すること(以下「本件訂正」という。)を求めるものであり、その内容は以下のとおりである。 2-1.訂正の請求の内容 2-1-1.訂正事項a 請求項1に関して、 訂正前:「Al_(2)O_(3)を主成分とし、TiCを20?40重量%の割合で含有するAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体から成る磁気ヘッド用基板であって、該焼結体中のAl_(2)O_(3)結晶粒の平均結晶粒径が、TiC結晶粒の平均結晶粒径より5?50%大きく、該基板の磁気記録面と対向する面の一部にイオンの照射により加工された加工部を有することを特徴とする磁気ヘッド用基板。」 訂正後:「Al_(2)O_(3)を主成分とし、TiCを20?40重量%の割合で含有するAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体から成る磁気ヘッド用基板であって、 該焼結体中のAl_(2)O_(3)結晶粒の平均結晶粒径が、TiC結晶粒の平均結晶粒径より5?50%大きく、 該基板の磁気記録面と対向する鏡面加工された面の一部にイオンの照射によりエッチング処理加工された加工部を有し、 前記結晶粒全体の平均結晶粒径が1μm以下、前記TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以下である磁気ヘッド用基板。」 と訂正する。 2-1-2.訂正事項b 請求項2に関して、 訂正前:「前記結晶粒全体の平均結晶粒径が1μm以下、前記TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以下である請求項1記載の磁気ヘッド用基板。」 訂正後:「前記結晶粒の粒界相の含有量が1.0重量%以下である請求項1記載の磁気ヘッド用基板。」 と訂正すると共に、訂正前の請求項3を削除する。 2-1-3.訂正事項c 明細書段落【0010】に関して、 訂正前:「即ち、本発明の磁気ヘッド用基板は、Al_(2)O_(3)を主成分とし、TiCを20?40重量%の割合で含有するAl_(2)O_(3)焼結体から成り、該焼結体中のAl_(2)O_(3)の平均結晶粒径が、TiCの平均結晶粒径より5?50%大きく、該基板の磁気記録面と対向する面の一部にイオンの照射により加工された加工部を有することを特徴とするものであり、さらには焼結体全体の平均結晶粒径が1μm以下、TiCの平均結晶粒径が0.9μm以下であり上記結晶粒の粒界相の含有量が1.0重量%以下であることを特徴とするものである。」 訂正後:「即ち、本発明の磁気ヘッド用基板は、Al_(2)O_(3)を主成分とし、TiCを20?40重量%の割合で含有するAl_(2)O_(3)-TiC焼結体から成り、該焼結体中のAl_(2)O_(3)結晶粒の平均結晶粒径が、TiC結晶粒の平均結晶粒径より5?50%大きく、該基板の磁気記録面と対向する鏡面加工された面の一部にイオンの照射によりエッチング処理加工された加工部を有し、前記全体の平均結晶粒径が1μm以下、TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以下であることを特徴とするものであり、さらには上記結晶粒の粒界相の含有量が1.0重量%以下であることを特徴とするものである。」 と訂正する。 2-1-4.訂正事項d 明細書段落【0023】に関して、 訂正前:「そして、このAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体を磁気ヘッド用基板として使用し、磁気記録面と対向する面の一部にイオン照射により加工した本発明の磁気ヘッド用基板は、加工後の表面品位を高めることができ、磁気ヘッドとして信頼性を高めることができる。」 訂正後:「そして、このAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体を磁気ヘッド用基板として使用し、磁気記録面と対向する鏡面加工された面の一部にイオン照射によりエッチング処理加工した本発明の磁気ヘッド用基板は、加工後の表面品位を高めることができ、磁気ヘッドとして信頼性を高めることができる。」 と訂正する。 2-1-5.訂正事項e 明細書段落【0039】に関して、 訂正前:「【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、磁気ヘッド用基板を構成するAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体におけるAl_(2)O_(3)結晶粒をTiC結晶粒より大きく設定するとともに、該基板の磁気記録面と対向する面の一部にイオンの照射により加工された加工部を有することから、イオンミリング加工やRIE加工などのイオンの照射による加工において表面品位が優れ、また、加工速度を高めることができる。これにより、薄膜磁気ヘッドなどのスライダーにおける浮上面の超精密加工を優れた精度で行うことができ、磁気ヘッドの信頼性を高めることができる。」 訂正後:「【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、磁気ヘッド用基板を構成するAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体におけるAl_(2)O_(3)結晶粒をTiC結晶粒より大きく設定するとともに、該基板の磁気記録面と対向する鏡面加工された面の一部にイオンの照射によりエッチング処理加工された加工部を有し、さらに、結晶粒全体の平均結晶粒径が1μm以下、前記TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以下であることから、イオンミリング加工やRIE加工などのイオンの照射によるエッチング処理加工において表面品位が優れ、また、加工速度を高めることができる。これにより、薄膜磁気ヘッドなどのスライダーにおける浮上面の超精密加工を優れた精度で行うことができ、磁気ヘッドの信頼性を高めることができる。」 と訂正する。 2-1-6.訂正事項f 明細書段落【0028】の【表1】に関して、 訂正前:「試料No.9」 訂正後:「*試料No.9」 と訂正する。 2-1-7.訂正事項g 明細書段落【0034】に関して、 訂正前:「表2から明らかなように、TiC量が40重量%を越えると、エッチング速度が低下した。また、TiC量が20重量%より少ない試料No.18,19では、耐チッピング性が劣化した。これら以外の本発明品はいずれも加工速度が135Å/min以上であったが、これらの中でも特に25?35重量%では耐チッピング性も良好であった。」 訂正後:「表2から明らかなように、TiC量が40重量%を越えると、エッチング速度が低下した。また、TiC量が20重量%より少ない試料No.18,19では、耐チッピング性が劣化した。これらの中でも特に25?35重量%では耐チッピング性も良好であった。」 2-2.訂正の適否 2-2-1.訂正事項aについて (1)「鏡面加工された」は、登録時明細書の「得られた焼結体に対してその表面を鏡面加工後・・・・・・この焼結体を5.2×10^(-4)torrの真空中に保持し、焼結体の被加工面に800V、200mAのアルゴンビームにより、1.5μmの深さまでエッチング加工した。」(段落【0025】?【0026】)の記載に基づくものであって、アルゴンビームによる加工、すなわち、イオン照射による加工の前に鏡面加工を付け加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (2)「エッチング処理」は、上記(1)に摘示した登録時明細書において、イオン照射による加工によりエッチング加工がなされていることに基づき、登録時明細書の範囲内おいて、イオン照射による加工をエッチング加工に限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (3)「結晶粒全体の平均結晶粒径が1μm以下、前記TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以下である」ことは、登録時明細書の請求項2の特定事項を請求項1の新たな特定事項として付け加えたものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 (4)「加工部を有する」を「加工部を有し、」とする訂正、及び、「ことを特徴とする磁気ヘッド用基板」を「である磁気ヘッド用基板」とする訂正は、上記(3)の訂正に伴って記載を整えるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 2-2-2.訂正事項bについて (1)請求項2を「前記結晶粒の粒界相の含有量が1.0重量%以下である請求項1記載の磁気ヘッド用基板。」とすることは、登録時明細書の請求項3を請求項2に繰り上げ、また、この繰り上げによる記載上の不備を正すものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (2)請求項3を削除することは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 2-2-3.訂正事項c?fについて 訂正事項c?fは、特許請求の範囲の訂正によって、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との記載の齟齬を解消するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 2-2-4.訂正事項gについて この訂正は、【表2】の試料No.14の加工速度の数値と、段落【0034】の記載の齟齬を解消するためのものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。 2-3.訂正の可否についてのまとめ したがって、本件訂正は、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とし、いずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 以上のとおりであるから、本件訂正は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書に適合し、特許法134条の2第5項において準用する平成6年改正前第126条第2項の規定に適合するので、本件訂正を認める。 3.本件特許訂正発明 上記のとおり本件訂正を容認することができるから、訂正後の本件特許の請求項1?2に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下「本件特許訂正発明1」?「本件特許訂正発明2」といい、全体を表すときは「本件特許訂正発明」という。)。 【請求項1】 Al_(2)O_(3)を主成分とし、TiCを20?40重量%の割合で含有するAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体から成る磁気ヘッド用基板であって、 該焼結体中のAl_(2)O_(3)結晶粒の平均結晶粒径が、TiC結晶粒の平均結晶粒径より5?50%大きく、 該基板の磁気記録面と対向する鏡面加工された面の一部にイオンの照射によりエッチング処理加工された加工部を有し、 前記結晶粒全体の平均結晶粒径が1μm以下、前記TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以下である磁気ヘッド用基板。 【請求項2】 前記結晶粒の粒界相の含有量が1.0重量%以下である請求項1記載の磁気ヘッド用基板。 4.請求人の主張 請求人は、本件特許訂正発明1?2についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、審判請求書、口頭審理陳述要領書、及び、弁駁書における主張を整理すると、本件特許訂正発明1?2は甲第1?2号証に記載された発明及び甲第3?9号証に記載の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許訂正発明1?2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきであると主張している。 甲第1号証:社団法人日本電子材料工業会編、「電子回路用 高機能セラミック基板」、日本工業出版株式会社、1994年2月28日、223?252頁 甲第2号証:特開平4-321556号公報 甲第3号証の1:化学大辞典編集委員会編、「化学大辞典3」、共立出版株式会社、昭和44年8月5日、893頁 甲第3号証の2:化学大辞典編集委員会編、「化学大辞典5」、共立出版株式会社、昭和44年8月15日、699頁 甲第4号証:小野京右、「日本の磁気記録のトライボロジー50年の歩み」、トライボロジスト、第50巻、第12号(2005年)、870?876頁 甲第5号証:中西卓二他、「浮動式薄膜磁気ヘッド」、研究実用化報告、第31巻、第2号(1982)、457?468頁 甲第6号証:特開平4-364217号公報 甲第7号証:特開平4-34783号公報 甲第8号証:Webster's Third New International Dictionary OF THE ENGLISH LANGUAGE UNABRIDGED (1986)、1271頁 甲第9号証:「マグローヒル 科学技術用語大辞典 第2版」、株式会社日刊工業新聞社、1992年11月10日、371及び1710頁 参考資料1:「特許第3121980号無効審判 請求人 日立金属株式会社」と題した資料 5.被請求人の主張 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め請求人の主張する上記無効理由に対して、本件特許訂正発明1?2についての特許は上記無効理由によっては無効とすることができないと主張し、資料1?7を提出している。 資料1:社団法人日本セラミックス協会編、「セラミックス辞典 第2版」、丸善株式会社、平成9年3月25日、668頁 資料2:粉体工学会編、「粉体工学便覧」、日刊工業新聞社、昭和61年2月28日、目次及び1?23頁 資料3:2009年3月3日付けの「問い合わせの件」と題する書簡 資料4:平成21年3月4日付けの「書類送付のご案内」と題する書簡 資料5:窯業協会編集委員会講座小委員会編、「セラミックスのキャラクタリゼーション技術」、社団法人窯業協会、昭和62年7月25日、5?10頁 資料6:「本件明細書と甲第2号証の比較」と題する書面 資料7:「画像解析処理装置」と題した書面(印刷日:2009年6月30日) 6.請求人が提出した甲第1号証ないし甲第9号証、及び参考資料1の記載事項 6-1.甲第1号証(社団法人 日本電子材料工業会編、「電子回路用 高機能セラミック基板」、日本工業出版株式会社、1994年2月28日、223?252頁) (1-1)「7.2薄膜磁気ヘッド用基板の概要 薄膜磁気ヘッド基板に共通して要求される材料特性は・・・・・・高精度イオンミリング特性・・・・・などであり・・・・・・この観点からA1_(2)O_(3)系、SiC系、ZrO2系、Fe_(2)O_(3)系の材料を検討し、最適材料を選定した。これらの基板や下地膜の表面はダイヤモンドポリッシングの後、メカノケミカルポリッシングによって5nm程度の表面粗さに仕上げられ、フォトリソグラフィ工程をへて薄膜磁気ヘッドとなる。」(226頁1?14行) (1-2)「7.3.2 Al_(2)O_(3)-TiC系基板 ・・・・・・ 薄膜磁気ヘッド用基板に共通して要求される材料特性の中に高精度イオンミリング特性がある。イオンビームミリング加工は、・・・・・・ドライエッチング法であり、・・・・・・セラミックスライダの浮上面に精密形状加工する場合にも用いられている。」(228頁1行?232頁4行) 6-2.甲第2号証(特開平4-321556号公報) (2-1)「【発明が解決しようとする課題】本発明は、・・・・・・、耐チッピング性、鏡面加工性及び緻密性に優れ、特に薄膜磁気ヘッド用セラミックス基板として好適なセラミックス材料・・・・・・を提供すことを目的とする。」(段落【0006】) (2-2)「本発明のセラミックス材料は以下の方法によって好ましく製造することができる。すなわち、原料としては、・・・・・・Al_(2)O_(3)・・・・・・と・・・・・・TiC・・・・・・の混合粉末を用い、それを焼成する。」(段落【0013】) (2-3)「さらに、Al_(2)O_(3)とTiCの混合粉末100重量部に対し、0.5?3.0重量部の焼結助剤・・・・・・を添加することが好ましい。」(段落【0015】) (2-4)「焼結助剤としてはMgO・・・・・・等・・・・・・を用いることができる」(段落【0016】) (2-5)「【実施例】・・・・・・実施例1?3・・・・・・TiCと・・・・・・バイヤー法Al_(2)O_(3)の所定量を混合し、・・・・・・混合粉末を調製した。・・・・・・これらを、焼成温度1500?1700℃、圧力200?400kg/cm^(2)の範囲内でホットプレス条件を変えて焼結し、表1に示すAl_(2)O_(3)-TiC系セラミックス焼結体を作製した。得られた焼結体のAl2O_(3)とTiCの結晶粒径の大きさとその切断面における占有率、・・・・・・を測定した。その結果を表1に示す。」(段落【0019】?【0020】) (2-6)「物性は以下の方法により測定した。 (1)焼結体中のAl_(2)O_(3)とTiCの結晶粒の大きさとその占有率:・・・・・・平均結晶径を算出し、その断面積に対する占有率を求めた。 ・・・・・・ (4)研磨面の表面粗さ(鏡面加工性):・・・・・・研磨面の表面粗さを非接触式の表面粗さ測定器を用いて測定した。」(段落【0021】) (2-7)「実施例4?6・・・・・・球状単分散Al_(2)O_(3)を用いたこと以外は実施例1?3と同様にして焼結体を作製し試験した。その結果を表2に示す。」(段落【0024】) (2-8)【表1】の実施例1、2及び【表2】の実施例4、5には、 と記載されている。 6-3-1.甲第3号証の1(化学大辞典編集委員会編、「化学大辞典3」、共立出版株式会社、昭和44年8月5日、893頁) (3-1)「αアルミナの比重が4.0であること」が記載されている(「酸化アルミニウムの変態」と題する表を参照)。 6-3-2.甲第3号証の2(化学大辞典編集委員会編、「化学大辞典5」、共立出版株式会社、昭和44年8月15日、699頁) (3-2)「TiCの比重が4.93であること」が記載されている(699頁右欄24行参照)。 6-4.甲第4号証(小野京右、「日本の磁気記録のトライボロジー50年の歩み」、トライボロジスト、第50巻、第12号(2005年)、870?876頁) (4-1)「3.6エッチング加工による軸受面の自由設計と負圧スライダ(1987-) ・・・・・・1987年のMini-sliderからエッチング加工により自由な形状の軸受面(・・・・・・)が用いられるようになり、スライダ軸受特性の改善が図られた。・・・・・・スライダ中央部にリセスを設けて負圧発生領域を形成し、高速時に負圧による押付け力が加わるようにする各種の負圧スライダが採用された。」(874頁左欄20行?同頁右欄16行) (4-2)「Progress of flying head slider designs」と題したFig.5の「Micro slider」は、ステップ部の形状がはっきりしないものの、本件訂正明細書において、「本発明の磁気ヘッド基板を用いた磁気ヘッドにおけるTPCスライダーの1例を示す図である」と説明されている図1に記載のものとほぼ同じものと視認される。 6-5.甲第5号証(中西卓二他、「浮動式薄膜磁気ヘッド」、研究実用化報告、第31巻、第2号(1982)、457?468頁) (5-1)「4.1イオンエッチング法によるスライダ形成 図9に示すように本方法は次の工程よりなる。 (1)スライダ長に等しい厚さの基板の上に章3で述べた方法で電磁変換部を形成、 (2)それをスライダ厚さに等しい長方ブロックに切断し、スライダ相当面を研摩、 (3)スライダ面にCr膜をスパッタで付着し、スライダ形状のパターニング、 (4)イオンエッチングを行い残留Cr膜除去、 (5)切断」(463頁右欄下から4行?464頁左欄7行) (5-2) 「薄膜電磁変換部形成 ↓ 切断・ラッピング ↓ マスクパタン形成 ↓ イオンエッチング 残留マスク除去 ↓ 切断」(第9図右側) 6-6.甲第6号証(特開平4-364217号公報) (6-1)「薄膜磁気ヘッド・・・・・・が制作されると、基板は切断されて1列のヘッドが並べて形成される。なお列の形を成している間に、薄膜磁気ヘッドが所定のスロート高さの寸法になるようにラップ仕上げされるが、これはヘッドの性能にとって非常に重要である。一旦所要のラップ仕上げされたスロート高さ寸法に達すると、これはヘッドの以降の処理に影響されてはならない。 ヘッドの処理の以降の工程の一つは、ラップ仕上げされた面にレールのパターンを作って空気支持面(ABS)を形成することである。ABS上のレールの所要パターンは、その形状が漸次一層複雑になってきているので、エッチングプロセスのような乾式処理技法が一般に使用されている。」(段落【0002】?【0003】:途中の段落記号の記載は省略した。) 6-7.甲第7号証(特開平4-34783号公報) (7-1)「まず、第10図(a)に示すように、直方体状のチタン酸カリウムなどの負圧スライダーの素材101の表面102を鏡面に研磨する。 次に、第10図(b)に示すように、負圧スライダーの素材101の鏡面に研磨した前記表面102にマスク103を付け、2?10μm深さにイオンエッチングして負圧発生部108を設ける。ここで、マスク103としてはCr、Tiのスパッタ膜を用いる。マスク103は所要のパターンに写真製版で形成する。 次に、第10図(c)に示すように、マスク103を取り除く。」(1頁右欄10?20行) 6-8.甲第8号証(Webster's Third New International Dictionary OF THE ENGLISH LANGUAGE UNABRIDGED (1983)、1271頁) (8-1)「lap・・・・・・5a:to dimension, smooth, or polish (as a metal surface or body) to a high degree of refinement or accuracy with a lap or loose abrasive material ・・・・・・ (当審訳:ラップ・・・・・・5a:みがき具またはばらばらの研磨剤で、高度に精密にまたは高い精度まで(金属表面または金属体として)形作り、平滑にし、磨き上げること。・・・・・・<ベアリングの表面は、精密な鏡面仕上げにとなるように削られ、磨かれ、砥石にかけられている-ジョセフ・ヘイトナー>) 6-9.甲第9号証(マグローヒル「科学技術用語大辞典 第2版」、株式会社日刊工業新聞社、1992年11月10日、371及び1710頁) (9-1)「鏡面研削 mirror grinding [機械]研削加工で、ラッピングや超仕上げのような光沢のある鏡面に仕上げる方法」(371頁右欄2?3行) (9-2)「ラップ仕上げ lapping [エレク]石英、半導体その他の結晶板を、液に分散した研磨剤が注がれている平面上で動かすこと。平らな研磨された表面をえたり、ある量だけその粗さを減少させたりするときに使用される。」(1710頁右欄19?22行) 6-10.参考資料1(「特許第3121980号無効審判 請求人日立金属株式会社」と題した資料) (10-1)甲第1?4号証において、請求人の主張する無効理由の要約が記載されている。 7.被請求人が提出した資料の記載事項 7-1.資料1(社団法人日本セラミックス協会編、「セラミックス辞典 第2版」、丸善株式会社、平成9年3月25日、668頁) (1-1)「平均粒径・・・・・・大きさが異なる粒子群の粒径の平均値。同じ粒子群でも粒子径の定義の仕方により値が異なる。算術平均径、平均面積径、平均体積径、長さ平均径など目的に応じて使い分ける必要がある。」(668頁右欄33?39行) 7-2.資料2(粉体工学会編、「粉体工学便覧」、日刊工業新聞社、昭和61年2月28日、目次及び1?23頁) (2-1)「1.1粒子径の定義 ・・・・・・ 1.1.2 投影径(・・・・・・) ・・・・・・ <1>Feret径:粒子投影像を一定方向の2本の平行線ではさみ、その平行線間の距離を粒子径とする(・・・・・・)。・・・・・・ <2>Martin径:定方向に粒子の投影面積を2等分する線分の長さで粒子径を表示する(・・・・・・)。 <3>定方向最大径:定方向に各粒子の最大幅を測定する。Krumbein径とも呼ばれる(・・・・・・)。 <4>投影面積円相当径:粒子の投影面積と同じ面積を持つ円の直径を用いる(・・・・・)。この粒子径の定義はHeywoodがはじめて提案したものでHeywood径と呼ぶことがある。 ・・・・・・ 1.2粒子径の物理的意味 ・・・・・・ 1.2.1Feret径、Martin径、投影面積円相当径 Heywoodは、・・・・・・Feret径>投影面積円相当径>Martin径の関係があり・・・・・・と述べている。」(1頁11行?3頁下から8行。なお、○付きアラビア数字を表すために、アラビア数字を<>で囲んだ。) 7-3.資料3(2009年3月3日付けの「問い合わせの件」と題する書簡) (3-1)日本アビオニクス株式会社またはその関連会社は、画像解析装置「SPICOA-2」を一切取り扱ったことがなく、「SPICCA-II」、「SPICCA-ACE」、「SPICCA」を取り扱ったことがある旨。 7-4.資料4(平成21年3月4日付けの「書類送付のご案内」と題する書簡) (4-1)「SPICCA:II、ACEともにカタログ、取扱説明書等はありません。10年以上前に終息した製品です。」 7-5.資料5(窯業協会編集委員会講座小委員会、「セラミックスのキャラクタリゼーション技術」、社団法人窯業協会、昭和62年7月25日、5?10頁) (5-1)「3.2.2 粒の大きさと分布 ・・・・・・ 比較的簡便な方法にインタセプト法がある.これは図8に示すように任意に引いた直線の単位長さ当たりの粒界との交点N_(L)を求め,これから平均のコードの長さを求めて平均粒径とする(コード法).」(7頁左欄14行?同頁右欄下から15行) 7-6.資料6(「本件明細書と甲第2号証の比較」と題する書面) (6-1)「 (1)投影面積円相当径(・・・・・・) 粒子の投影面積と同じ面積を持つ円の直径を用いる(・・・・・・)。この粒子径の定義はHeywoodが始めて提案したものでHeywood径と呼ぶことがある。 (2)コード法(・・・・・・) 比較的簡便な方法にインタセプト法がある。これは図8に示すように任意に引いた直線の単位長さ当たりの粒界との交点N_(L)を求め、これから平均のコードの長さを求めて平均粒径とする(コード法)。 (3)Al_(2)O_(3)結晶粒径算出法 全体の平均粒径と、TiC結晶粒径と、TiC結晶粒の体積比率と、Al_(2)O_(3)結晶粒の体積比率とは分かっているから、Al_(2)O_(3)結晶粒径は下記関係式から算出することができる。 全体の平均粒径=TiC結晶粒径×TiC結晶粒の体積比率+Al_(2)O_(3)結晶粒径×Al_(2)O_(3)結晶粒の体積比率」(1頁) (4)「L/(n-1) L:単位長さ、n:直線と粒界の交点数」(2頁の「表1 本件明細書と甲第2号証明細書の比較」の「全体の平均粒径」の欄) 7-7.資料7(「画像解析処理装置」と題した書面(印刷日:2009年6月30日)) (7-1)「ビデオ画像を画像解析装置「SPICCA」により画像解析・処理することができます。本SPICCAシステムとしては以下のような機能があります。 ・・・・・・ ・・・・・・60.円相当径」(1頁2行?下から3行) 8.当審の判断 8-1.引用発明の認定(甲第2号証に記載された発明) (あ)甲第2号証の上記(2-8)に記載のAl_(2)O_(3)-TiC系セラミックス焼結体である実施例1、2、4及び5のAl_(2)O_(3)とTiCの「断面積の占有率」をもとにして、Al_(2)O_(3)とTiCの重量%を求めると以下のようになる。 断面積の占有率の比はAl_(2)O_(3)とTiCの体積の比に等しいから、断面積の占有率に比重を乗じた値の比がAl_(2)O_(3)とTiCの重量の比になるといえる。 Al_(2)O_(3)とTiCの比重は、技術常識に照らし、それぞれ、4.0、4.93であるから(甲第2号証の上記(2-5)には、バイヤー法Al_(2)O_(3)を用いたことや、上記(2-5)、(2-7)には、焼成温度が1500?1700℃である旨の記載があることから、甲第2号証のAl_(2)O_(3)はαアルミナといえる。これをもとに、甲第3号証1の(3-1)及び甲第3号証2の(3-2)の記載を参照しても、上記2成分の比重の値は導出される。)、以下の計算により、 上記実施例1と4では、 Al_(2)O_(3)の重量%=70×4.0/(70×4.0+30×4.93) =65.4重量% TiCの重量%=30×4.93/(70×4.0+30×4.93) =34.6重量% 上記実施例2と5では、 Al_(2)O_(3)の重量%=80×4.0/(80×4.0+20×4.93) =76.4重量% TiCの重量%=20×4.93/(80×4.0+20×4.93) =23.6重量% となる。 (い)甲第2号証の上記(2-8)に記載の実施例1、2、4及び5におけるAl_(2)O_(3)とTiCの結晶粒径は、共に平均結晶粒径であることは、甲第2号証の(2-6)の記載から明らかであって、Al_(2)O_(3)の結晶粒径値をTiCの結晶粒径値で除した値を求めてみると、 上記実施例1と2では、 Al_(2)O_(3)の結晶粒径値/TiCの結晶粒径値=1.0/0.7=1.43 上記実施例4と5では、 Al_(2)O_(3)の結晶粒径値/TiCの結晶粒径値=0.8/0.6=1.33 となるから、 Al_(2)O_(3)の平均結晶粒径はTiCの平均結晶粒径より、43%(実施例1及び2)または33%(実施例4及び5)大きいといえる。 (う)上記(2-8)の記載をもとに、実施例1、2、4及び5のAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体の結晶粒全体の平均結晶粒径を計算すると、 実施例1:1×(70/100)+0.7×(30/100)=0.91μm 実施例2:1×(80/100)+0.7×(20/100)=0.94μm 実施例4:0.8×(70/100)+0.6×(30/100)=0.74μm 実施例5:0.8×(80/100)+0.6×(20/100)=0.76μm である。 また、TiC結晶粒の平均結晶粒径は、実施例1及び2では0.7μm、実施例4及び5では0.6μmである。 (え)甲第2号証の上記(2-1)及び(2-2)の記載をみると、上記(2-8)のAl_(2)O_(3)-TiC系セラミックス焼結体は、薄膜磁気ヘッド用セラミックス基板材料といえるから、甲第2号証の上記セラミック焼結体は事実上、薄膜磁気ヘッド用基板とみることができる。 そこで、甲第2号証の上記(2-1)?(2-8)の記載を上記(あ)?(え)の検討を踏まえ、本件特許訂正発明1の記載ぶりに則して整理すると、甲第2号証には、 「Al_(2)O_(3)を65.4重量%、TiCを34.6重量%の割合で含有するAl_(2)O_(3)-TiC系セラミックス焼結体から成る薄膜磁気ヘッド用基板であって、該焼結体中のAl_(2)O_(3)の平均結晶粒径が、TiCの平均結晶粒径よりも43%大きく、前記結晶粒全体の平均結晶粒径が0.91μmであり、前記TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.7μmである薄膜磁気ヘッド用基板、 Al_(2)O_(3)を76.4重量%、TiCを23.6重量%の割合で含有するAl_(2)O_(3)-TiC系セラミックス焼結体から成る薄膜磁気ヘッド用基板であって、該焼結体中のAl_(2)O_(3)の平均結晶粒径が、TiCの平均結晶粒径よりも43%大きく、前記結晶粒全体の平均結晶粒径が0.94μmであり、前記TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.7μmである薄膜磁気ヘッド用基板、 Al_(2)O_(3)を65.4重量%、TiCを34.6重量%の割合で含有するAl_(2)O_(3)-TiC系セラミックス焼結体から成る薄膜磁気ヘッド用基板であって、該焼結体中のAl_(2)O_(3)の平均結晶粒径が、TiCの平均結晶粒径よりも33%大きく、前記結晶粒全体の平均結晶粒径が0.74μmであり、前記TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.6μmである薄膜磁気ヘッド用基板、及び、 Al_(2)O_(3)を76.4重量%、TiCを23.6重量%の割合で含有するAl_(2)O_(3)-TiC系セラミックス焼結体から成る薄膜磁気ヘッド用基板であって、該焼結体中のAl_(2)O_(3)の平均結晶粒径が、TiCの平均結晶粒径よりも33%大きく、前記結晶粒全体の平均結晶粒径が0.76μmであり、前記TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.6μmである薄膜磁気ヘッド用基板」の発明(以下、「甲第2号証発明」という。)が記載されているということができる。 8-2.本件特許訂正発明1について そこで、本件特許訂正発明1と甲第2号証発明とを対比する。 (か)甲第2号証発明において、「Al_(2)O_(3)を65.4重量%、TiCを34.6重量%」または「Al_(2)O_(3)を76.4重量%、TiCを23.6重量%の割合で含有する」ことは、共に、Al_(2)O_(3)の含有割合が50重量%を超えているから、「Al_(2)O_(3)を主成分」としているといえる。 (き)甲第2号証発明において、TiCを「34.6重量%」または「23.6重量%」の割合で含有することは、本件特許訂正発明1のTiCを「20?40重量%」の割合で含有することの数値範囲20?40重量%と34.6重量%、23.6重量%において重複・一致している。 (く)甲第2号証発明におけるAl_(2)O_(3)-TiC系セラミックス焼結体中の「Al_(2)O_(3)の平均結晶粒径」及び「TiCの平均結晶粒径」は、それぞれ、本件特許訂正発明1のAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体中の「Al_(2)O_(3)結晶粒の平均結晶粒径」及び「TiC結晶粒の平均結晶粒径」に他ならず、甲第2号証発明の焼結体中のAl_(2)O_(3)の平均結晶粒径が、TiCの平均結晶粒径よりもそれぞれ「43%」または「33%」大きいことは、本件特許訂正発明1の「焼結体中のAl_(2)O_(3)結晶粒の平均結晶粒径が、TiC結晶粒の平均結晶粒径より5?50%大き」いことの数値範囲5?50%と43%、33%において重複・一致している。 (け)甲第2号証発明の結晶粒全体の平均結晶粒径が「0.91μm」、「0.94μm」、「0.74μm」、「0.76μm」であることは、本件特許訂正発明1の「結晶粒全体の平均結晶粒径が1μm以下」と数値範囲0.91μm、0.94μm、0.74μm、0.76μmにおいて重複・一致している。 (こ)甲第2号証発明のTiC結晶粒の平均結晶粒径が「0.7μm」または「0.6μm」であることは、本件特許訂正発明1の「TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以下」と数値範囲0.7、0.6μmにおいて重複・一致している。 そうすると、両者は、 「Al_(2)O_(3)を主成分とし、TiCを23.6または34.6重量%の割合で含有するAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体から成る磁気ヘッド用基板であって、該焼結体中のAl_(2)O_(3)結晶粒の平均結晶粒径が、TiC結晶粒の平均結晶粒径より33または43%大きく、前記結晶粒全体の平均結晶粒径が0.74、0.76、0.91、または0.94μmであり、前記TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.6、または0.7μmである磁気ヘッド用基板」である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点a)本件特許訂正発明1が磁気ヘッド用基板であるのに対し、甲第2号証発明は薄膜磁気ヘッド用基板である点、 (相違点b)本件特許訂正発明1が基板の磁気記録面と対向する鏡面加工された面の一部にイオンの照射によりエッチング処理加工された加工部を有するのに対して、甲第2号証発明はかかる事項を有していない点 これら相違点について検討する。 ・(相違点a)について 本件訂正明細書段落【0039】には、「本発明によれば、・・・・・・できる。これにより、薄膜磁気ヘッドなどのスライダーにおける浮上面の超精密加工を優れた精度で行うことができ、磁気ヘッドの信頼性を高めることができる。」との記載がなされているから、本件特許訂正発明1の「磁気ヘッド用基板」は「薄膜磁気ヘッド用基板」とみることができる。 そうすると、この相違点aは単に表現上のものであって、実質的なものではない。 仮に、単に表現上のものではなく、実質的なものであるとしても、薄膜磁気ヘッド基板は磁気ヘッド基板の一つであるから、甲第2号証発明の「薄膜磁気ヘッド用基板」を「磁気ヘッド用基板」とすることは当業者であれば困難なくなし得たことである。 なお、甲第4号証には、上記したように本件特許訂正発明1に係る「磁気ヘッド用基板」が本件特許に係る特許出願前に公知であることを窺わせる記載があるが、甲第4号証が本件特許に係る特許出願の日より後に公知になったものであるから、甲第4号証に記載の記載事項をもって相違点aに係る本件特許訂正発明1の特定事項を導き出す根拠とはしない。 ・(相違点b)について (さ)甲第1号証の上記(1-1)の記載によれば、Al_(2)O_(3)系基板はメカノケミカルポリッシングによって5nm程度の表面粗さに仕上げられ、フォトリソグラフィ工程をへて薄膜磁気ヘッドとなるといえる。 (し)甲第1号証の上記(1-2)の記載によれば、Al_(2)O_(3)-TiC系基板、すなわち、Al_(2)O_(3)-TiC系焼結体の薄膜磁気ヘッド用基板にはイオンミリング性が要求され、イオンミリング加工はスライダの浮上面に対してなされるものといる。 (す)技術常識に照らし、フォトリソグラフィ工程には、エッチング工程(すなわち、イオンミリング加工)が含まれているから、甲第1号証には、イオンミリング加工に先立ってメカノケミカルポリッシングがなされることが記載されていると判断される。 ここで、メカノケミカルポリッシングによって5nm程度の表面粗さに仕上げられとは、鏡面研磨をいうことは明らかである(要すれば、特開平3-139593号公報、特開平3-68137号公報を参照)。 そして、このことは、以下の(1)?(3)からも裏付けられる。 (1)甲第5号証の記載 <1>甲第5号証おいて、上記(5-1)に「図9に示すように」との記載があるから、上記(5-1)の記載は上記(5-2)の記載に対応しているとみることができ、上記(5-1)の「(2)それをスライダ厚さに等しい長方ブロックに切断し、スライダ相当面を研摩」、及び「(4)イオンエッチングを行い残留Cr膜除去」は、それぞれ、「切断・ラッピング」、及び「イオンエッチング 残留マスク除去」に対応しているといえる。 <2>すると、イオンエッチングに先立って、薄膜磁気ヘッドの「スライダ相当面を研摩」、「ラッピング」がなされているといえ、このラッピングは、甲第8号証の上記(8-1)及び甲第9号証の上記(9-1)?(9-2)の記載からみて、鏡面加工といえ、イオンエッチングはイオンミリング加工を含むものだから、結局、甲第5号証には、鏡面加工後にイオンミリング加工がなされることが記載されているとみることができる。 (2)甲第6号証の記載 <1>甲第6号証の上記(6-1)の記載によれば、薄膜磁気ヘッドの「ラップ仕上げ」の後「ラップ仕上げされた面」に「エッチングプロセスのような乾式処理」で「レールのパターンを作って空気支持面(ABS)を形成」しているといえる。 <2>「ラップ仕上げ」は、上述のとおり甲第8?9号証によれば鏡面加工といえ、「エッチングプロセスのような乾式処理」で「レールのパターンを作って空気支持面(ABS)を形成」することは、イオンミリング加工を含む加工によるものであることは明らかであるから、甲第6号証には、鏡面加工後にイオンミリング加工がなされることが記載されているとみることができる。 (3)甲第7号証の記載 <1>甲第7号証の上記(7-1)の記載によれば、「負圧スライダーの素材101の表面102を鏡面に研磨する。・・・・・・鏡面に研磨した前記表面102にマスク103を付け、2?10μm深さにイオンエッチングして」との記載からみて、負圧スライダー、すなわち、磁気ヘッドのスライダーを鏡面に研磨した後イオンエッチング(イオンミリング加工)を行うことが記載されているとみることができる。 (せ)また、甲第2号証の上記(2-6)の記載によれば、甲第2号証において鏡面加工性が評価されていることからみて、甲第2号証発明は鏡面加工されるものとみることが自然である。 (そ)一方、本件訂正明細書には、「上記Al_(2)O_(3) -TiC系焼結体をイオンミリング・・・・・・などのイオンの照射により加工する・・・・・・上記の加工によれば、例えば薄膜磁気ヘッドにおける磁気記録面と対向する面となるスライダー浮上面に対して超精密加工を施すことができる。」(段落【0016】?【0017】)との記載がなされており、本件特許訂正発明1でいう「イオンの照射によりエッチング処理加工」は「イオンミリング加工」を含み、また、本件特許訂正発明1の「基板の磁気記録面と対向する面の一部」には、「スライダー浮上面」が含まれるものといえる。 (た)そうすると、甲第2号証発明のAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体は、薄膜磁気ヘッド用基板とするに当たり、上記(さ)?(せ)から明らかなように、「イオンミリング」加工を鏡面加工したスライダ浮上面に対してなすものといえ、この浮上面への加工は上記(そ)で述べたとおり、上記相違点bに係る本件特許訂正発明1の発明特定事項に含まれるから、甲第2号証発明において、基板の磁気記録面と対向する鏡面加工された面の一部にイオン照射により加工された加工部を有するようにすることは、当業者であれば困難なくなしえたものである。 よって、上記(相違点a)及び(相違点b)の検討結果より本件特許訂正発明1は甲第2号証発明及び甲第1、3の1、3の2、5?9号証に記載された周知技術から、当業者であれば困難なくなしえたものである。 8-3.本件特許訂正発明2について 本件特許訂正発明2は、本件特許訂正発明1に対して、さらに、「結晶粒の粒界相の含有量が1.0重量%以下である」という発明特定事項を付け加えたものである。 (な)粒界相が存在しない(0重量%)場合について 甲第2号証の上記(2-8)の記載をみると、実施例1、2、4及び5のAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体のAl_(2)O_(3)とTiCそれぞれの断面積の占有率を加えると、全て100%になるから、断面には粒界相が存在していないといえ、甲第2号証発明において、結晶粒の粒界相の含有量は0重量%といえる。 そうすると、さらに付け加えられた上記発明特定事項は、本件特許訂正発明2と甲第2号証発明とを対比したときに新たな相違点とはなり得ない。 よって、本件特許訂正発明2は本件特許訂正発明1の検討のところで述べたように当業者であれば困難なくなしえたものである。 (に)粒界相が存在し、1重量%以下の場合について 本件訂正明細書の表3(段落【0037】)を参照すると、粒界相量が1重量%以下である0.9重量%の試料No.22、0.3重量%の試料No.23の焼結助剤であるMgOの重量%は、それぞれ、0.5重量%、0.1重量%であるから、粒界相量を1重量%以下とするために、焼結助剤であるMgOの添加を0.5重量%以下としているといえる。 一方、甲第2号証の上記(2-3)及び(2-4)の記載によれば、甲第2号証発明において焼結助剤としてMgOを用いることができ、その添加量はAl_(2)O_(3)とTiCの混合粉末100重量部に対して0.5?3重量部、すなわち、MgOの添加量を重量%に換算すると、 0.5(=0.5×100/(100+0.5))重量%?2.9(=3×100/(100+3))重量%となる。 ここで、焼結助剤の添加量について、本件特許訂正発明2と甲第2号証発明とを対比すると、0.5重量%でほぼ一致している。 (ぬ)そうすると、さらに付け加えられた上記発明特定事項は、本件特許訂正発明2と甲第2号証発明とを対比したときに新たな相違点にはならないし、仮に相違点になるにしても、当業者であれば焼結助剤の添加量は適宜決定しうるものといえるから、本件特許訂正発明2は甲第2号証発明、甲第1、3の1、3の2、5?9号証に記載された周知技術に基づいて当業者であれば困難なくなしえたものである。 8-4.本件特許訂正発明1?本件特許訂正発明2の奏する作用・効果について 被請求人が提出した口頭審理陳述要領書には、「以下、本件明細書の表1?表3を結合したものを示す。この表(当審注:以下、「総合表」という。)から明らかなように、「耐チッピング性」、「加工速度」及び「表面品位」の3つの評価項目のうち、「△」が2つ以上又は「×」が1つ以上ある試料は、総合評価を「×」にしている。このように本件発明の作用効果は一義的に確認できないわけではない。」(11頁3?7行)と記載され、同11頁に記載された総合表を見ると、実施例に相当する試料(試料No.に「*」印のついていないもの)の総合評価は「○」印となっており、上記記載が裏付けられている(なお、上述の本件訂正により試料No.9に「*」が付与されたことについては後述する。)。 (は)まず、チッピングについてみてみると、本件訂正明細書には「チッピング幅の最も大きい5ポイントを選びそのチッピング幅の平均をとり、その平均値が25μm未満を○、25?30μmを△、30μmを越えるものを×として示した。」(【0027】)と記載されているが、25μm及び30μmを評価長さとした理由については何等記載されていない。 一方、チッピングの評価方法は、例えば甲第2号証の【0021】に記載されているように他の方法もあり、さらには、チッピングの評価長さである上記チッピング幅は切断に用いるホイールの表面粗さ等にも依存することは明らかである。 そうすると、上記評価長さとして25μm及び30μmとすることに、一般化できる技術的意義があるとはいえず、本件特許訂正発明の耐チップ性は格別なものであるとは直ちにいえない。 (ひ)次に、加工速度と表面品位について、総合表の「△」印、「○」印と、本件訂正明細書の表1?3の数値を比較すると、総合表において、加工速度については、135Å/min以下の試料について「△」印が、その他のものについては「○」印が付与され、表面品位については、0.3μm以下の試料に「○」印が、その他のものについては「△」印が付与されているとみることができる。 そこで、この加工速度の135Å/min、表面品位の0.3μmという値の持つ技術的意義についてみてみることにする。 加工速度は生産性の点からみて大きい方が、また、表面品位は磁気ヘッド用という用途からみて滑らかな方が、それぞれ、望ましいことは技術常識に照らして明らかであるが、これら数値自体にどのような技術的意義があるのかは訂正明細書には何等記載されていない。 表1?3及び総合表から、加工速度の「△」印の最大値が135Å/min、「○」印の最小値が138Å/min、表面品位の「△」印の最小値が0.35μm、「○」印の最大値が0.30μmであり、加工速度、表面品位とも「○」印と「△」印のものとの数値差は必ずしも大きいものとはいえない。 ところで、例えば、加工速度は、イオンビームの入射角度や加速電圧によって変化するものであり(要すれば、甲第1号証233頁、図7.13を参照)、上記加工速度の差はこれら入射角度や加速電圧の調整によって十分に補えるものといえる。 そうであれば、上記加工速度の135Å/min、表面品位の0.3μmという値に技術的意義を見いだすことはできない。 (ふ)そうすると、耐チップ性、加工速度、表面品位をみたときの作用・効果に関し、「×」印が一つある試料、「△」印が二つある試料、これ以外の試料との間に格別の差があるとみることができず、本件特許訂正発明の奏する作用・効果は顕著なものとはいえない。 (へ)そして、上述の本件訂正により「試料No.9」に「*」印がつくことになった。試料No.9の加工速度は130Å/minであって「△」印が付与されるべきものであり、耐チッピング性は「○」印であるところ、この試料No.9が本件訂正により本件訂正発明1及び2以外のものとなったのであるから、表面品位にも「△」印が付与されなければ、総合評価に関し実施例と齟齬が生じる。そうであれば、表面品位が0.3μmは「△」印が付与となるから、試料No.17の表面品位にも「△」印が付与されることになる。すると、試料No.17は、本件訂正発明1の特定事項を満足するにもかかわらず、総合評価は「×」印となり、本件特許訂正発明1の中には、所定の作用・効果を奏しないものが存在することになる。 また、訂正後の試料No.9の総合評価を「○」印のままとすれば、実施例でないものと実施例であるものが同様の作用・効果を奏することになるから、このことからも本件特許訂正発明の奏する作用・効果は格別なものとはいえない。 9.請求人の主張について 請求人は訂正請求書において、 (1)「審決(当審注:第1次審決)では、・・・・・・甲第2号証には、・・・・・・TiCの平均結晶粒径と重量%は記載されているものの、TiCの平均結晶粒径の数値範囲、TiCの重量割合の数値範囲、TiCとAl_(2)O_(3)の結晶粒子の粒径割合の数値範囲については、本件発明と同一の数値範囲が記載されている訳ではない。」(10頁20?26行) (2)「結晶粒の粒径に関し、本件特許発明ではTiC結晶粒の平均粒径は、画像処理によって円相当径を算出し、全体の平均結晶粒径は、コード法により測定したと記載されており、全体の平均結晶粒径と体積比率とから、Al_(2)O_(3)結晶粒径を算出している。 しかし、甲第2号証では、2値化処理を行い、形状及び寸法解析を行って粒径を求めたと記載されているが、これは本件明細書の方法とは異なっている。 資料1及び2を参照すると、粒径の定義毎に測定方法が異なり、同じ粒子群であっても測定方法の違いにより測定値が異なることが知られているから、甲第2号証に記載のAl_(2)O_(3)粒子径とTiC粒子径との比率が本件特許発明の数値範囲に入っていたとしても、実際には、本件特許発明の数値範囲外の比率範囲である場合もあるといえるところ、資料3によれば、甲第2号証に記載のSPICOA-2はSPICCA-IIの誤記といえるが、SPICCA-IIのカタログ・取扱説明書が入手できなかったので(資料4)、甲第2号証の粒径と本件特許発明の粒径との差を定量的に示すことはできていない」旨(11頁3行?12頁21行) を主張している。 そこで、これらの主張について検討する。 (ま)上記(1)について、 本件特許訂正発明の進歩性を判断するに当たり、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明、すなわち、同請求項に含まれる発明が容易になされたものであるかどうかを判断すれば十分であって、同請求項に特定する範囲のすべてにわたって容易になされたものであるか否かまでの判断をする必要はないし、上記8で述べたように本件特許訂正発明の奏する作用・効果は格別なものとはいえないから、同請求項に特定される各数値範囲の特定を行うことも格別困難なこととはいえない。 。 (み)上記(2)について 本件訂正明細書には、コード法により全体の平均結晶粒径を測定した旨の記載(【0025】)はあるものの、コード法自体について説明する記載は見当たらない。被請求人はコード法とは、資料5及び6に基づいて、 L/(n-1) L:単位長さ、n:直線と粒界の交点数 なる式(以下、「本件式」という。)を以て、粒径が求められるものと説明している。 そこで、コード法についてみてみると、コード法(インタセプト法)による粒径を求める式には、 D=1.5×n/L L:測定長さ、n:長さL当たりの結晶の数(特開平6-15191号公報の【0014】)、 単位長さ/単位長さを結晶粒界が横切る数に1.56を乗じる(特開平5-196770号公報の【0031】)、 線分長(μm)÷粒界数÷(0.79)^(2)(特開平4-89359号公報の4頁右上欄15?19行)、 粒子形状を球形と近似し、任意の直線が粒子によって切り取られる切片の平均長さの1.5倍(特開平1-119559号公報の6頁右下欄4?10行) 等、種々のものがあり、コード法に使用される数式は本件式に限られないといえ、本件訂正明細書でいうコード法は本件式以外の式を用いている可能性も否定出来ない。 また、本件式を含む上記各式を用いるに当たり、直線の引き方(引く方向や本数)は規定されておらず、この規定に関して言及する文献は未見であるから、コード法を用いるに当たり、直線の引き方は任意であり、コード法によって測定された粒径は一義的なものでないとみることができる。 ところで、本件特許訂正発明においては、Al_(2)O_(3)結晶粒径をコード法で求めた全体の平均結晶粒径とTiCの円相当径を基に求めていることからみて、コード法で求めた径を円相当径で求めた径と事実上同じものと扱えるような前提の基でコード法による測定を行っていると推認される。そうであれば、粒の形状を仮定したり、直線の引く方向や本数を適宜決定して、コード法で求めた粒径と円相当径が近接してくるように測定しているといえ、結局、Al_(2)O_(3)もTiCと同じく事実上円相当径を求めているといえる。 そして、資料7によれば、SPICCAという画像解析装置は、円相当径を求めるものといえるから、資料4及び5から同系列の装置を使用したといえる甲第2号証において、Al_(2)O_(3)及びTiCの平均結晶粒径は円相当径と推認され、粒径測定方法の違いによる粒径の違いは実質的にないとみることが自然である。 さらに、甲第2号証発明には、 Al_(2)O_(3)結晶粒の平均結晶粒径が、TiC結晶粒の平均結晶粒径より33%大きく、 結晶粒全体の平均結晶粒径は0.76μm、または0.74μm TiC結晶粒の平均結晶粒径は0.6μm、 のものが含まれている。 これは、本件特許訂正発明で特定する「Al_(2)O_(3)結晶粒の平均結晶粒径が、TiC結晶粒の平均結晶粒径より5?50%大き」いという数値範囲のほぼ中央値を満足し、「結晶粒全体の平均結晶粒径が1μm以下」、及び「TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以下」という上限値よりもかなり小さい値であることを考慮すると、仮に測定方法の違いによる平均結晶粒径の違いが多少あるにしても甲第2号証発明は本件特許訂正発明1の数値範囲を満たしているとみることができる。 加えて、被請求人は甲第2号証発明の粒径と本件特許訂正発明の粒径との差を定量的に示していない。 (む)よって、上記(1)及び(2)の被請求人の主張は採用できない。 10.むすび 以上のとおりであるから、本件特許訂正発明1?2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 磁気ヘッド用基板 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 Al_(2)O_(3)を主成分とし、TiCを20?40重量%の割合で含有するAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体から成る磁気ヘッド用基板であって、 該焼結体中のAl_(2)O_(3)結晶粒の平均結晶粒径が、TiC結晶粒の平均結晶粒径より5?50%大きく、 該基板の磁気記録面と対向する鏡面加工された面の一部にイオンの照射によりエッチング処理加工された加工部を有し、 前記結晶粒全体の平均結晶粒径が1μm以下、前記TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以下である磁気ヘッド用基板。 【請求項2】 前記結晶粒の粒界相の含有量が1.0重量%以下である請求項1記載の磁気ヘッド用基板。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、イオンミリング法または反応性イオンエッチング法(Reactive IonEtching法=RIE法)などのイオンの照射によって磁気記録面と対向する面の一部にイオンの照射により加工された加工部を有する磁気ヘッド用基板に関するもので、特に、Al_(2)O_(3)-TiC系焼結体からなる磁気ヘッド用基板に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、磁気ヘッドの中でも薄膜磁気ヘッドは、所定の基板の表面にスパッタリングなどの薄膜手法により磁気ヘッド回路を形成するもので、磁気ギャップが小さく制御できるために高密度記録が可能であることから開発がさかんに行われている。この薄膜磁気ヘッドにおいて用いられる基板は、磁気記録媒体と対面する表面がスライダー浮上面として機能することから、その基板表面には溝やステップ部などの種々の加工が施される。 【0003】従来からこの基板表面の加工のほとんどが機械加工で行われるために、基板としては、耐摩耗性が優れる、鏡面加工性に優れる、スライシング加工時の耐チッピング性および機械加工性に優れるなどの特性が要求されている。 【0004】これらの要求に満足しえる材料の1つとして、Al_(2)O_(3)に対してTiCを含有するAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体が多用されている。このAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体は、上記の特性を満足させるためにMgOやY_(2)O_(3)などの焼結助剤を添加し、完全に緻密焼結体とすることにより鏡面加工性を向上させたり、焼結体の結晶粒をおよそ1.5?3μm程度に粒成長させることによりスライシング時の耐チッピング性や機械加工性を向上させていた。 【0005】一方、最近では磁気記録の高密度化に伴い、磁気ヘッドの磁気記録面からの浮上量がさらに小さくなりつつあり、これに伴い、スライダー浮上面には平面度、面粗さ、クラウン、キャンバー、ブレンディング等の高い寸法精度が要求される加工が施され、その代表的なものに、TPC(Transverse Pressurization Contour)またはMRスライダーがある。従来の機械加工ではこれらの要求に対しては十分に満足すべき加工ができないためにAr、CF_(4)、CCl_(4)、BCl_(3)などのイオンを加工鏡面に照射しながら加工を行う、いわゆるイオンミリング法またはRIE法による加工が検討されている。 【0006】 【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、従来のAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体は、結晶粒径が比較的大きく、全体の平均粒径で1.5?3μm程度であるために、加工速度(エッチング速度、またはミリング速度)が遅く、また、Al_(2)O_(3)とTiCとでは加工速度が異なるために加工後の表面品位も満足できるものは得られていないのが現状である。 【0007】また、従来の焼結体は、完全な緻密体を作製することを目的として焼結助剤を数%含むために、焼結体中のAl_(2)O_(3)やTiCの結晶粒界に焼結助剤や、焼結助剤とAl_(2)O_(3)との化合物相やガラス相が多く存在する。そのため、前述したイオンミリングまたはRIE加工を行うと、粒界に存在する化合物相やガラス相がTiCやAl_(2)O_(3)と比べエッチング速度が著しく大きいため粒界相が優先的にエッチングされたり、化合物相やガラス相の分散が悪い場合には大きなくぼみとなり、加工後の表面品位が劣化するという問題があった。 【0008】従って、本発明の目的は、イオンミリングまたはRIE加工等により超精密加工が施されたTPCまたはMRスライダーなどに好適な表面品位に優れる磁気ヘッド用基板を提供することを目的とするものである。 【0009】 【問題を解決するための手段】本発明者らは上記問題点に対して検討を重ねた結果、Al_(2)O_(3)とTiCの焼結体中における結晶粒径をTiCよりAl_(2)O_(3)の粒径が相対的に大きくなるように組織を制御し、さらに全体としての結晶粒径を小さく制御することにより、イオンミリングまたはRIE加工した場合の加工速度が大きく、また加工後の表面品位を従来の焼結体に比較して大幅に改善できることを知見し、本発明に至った。 【0010】即ち、本発明の磁気ヘッド用基板は、Al_(2)O_(3)を主成分とし、TiCを20?40重量%の割合で含有するAl_(2)O_(3)-TiC焼結体から成り、該焼結体中のAl_(2)O_(3)結晶粒の平均結晶粒径が、TiC結晶粒の平均結晶粒径より5?50%大きく、該基板の磁気記録面と対向する鏡面加工された面の一部にイオンの照射によりエッチング処理加工された加工部を有し、前記全体の平均結晶粒径が1μm以下、TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以下であることを特徴とするものであり、さらには上記結晶粒の粒界相の含有量が1.0重量%以下であることを特徴とするものである。 【0011】以下、本発明を詳述する。本発明におけるAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体は、Al_(2)O_(3)を主成分とするものであり、TiCを20?40重量%の割合で含有するものである。TiC量を上記の範囲に限定したのは、TiCが20重量%より少ないと耐チッピング性が低下し、40重量%を越えると表面品位は向上するもののイオン照射による加工時の加工速度が遅くなり不経済となるためである。なお、TiC量は特に25?35重量%、さらには27?33重量%が望ましい。 【0012】上記組成からなる焼結体は、組織上はAl_(2)O_(3)結晶粒とTiC結晶粒および粒界相により構成されるが、本発明によれば、Al_(2)O_(3)結晶粒の平均結晶粒径が、TiC結晶粒の平均結晶粒径よりも大きく、Al_(2)O_(3)平均結晶粒径が、TiCの平均結晶粒径より5?50%、特に20?40%大きいことが重要である。この相対的な粒径の相違は、焼結体のイオン照射により加工性に対して大きな影響を及ぼし、Al_(2)O_(3)結晶粒の大きさがTiC結晶粒と同レベルかそれより小さい場合、あるいはAl_(2)O_(3)結晶粒がTiC結晶粒より大きくても5%未満の粒径差である場合には、いずれもイオンによる加工後の加工面の平滑性が低下したり、加工速度が小さくなったりする。逆にAl_(2)O_(3)結晶粒がTiC結晶粒より50%を越えて大きい場合には、TiCの加工速度がAl_(2)O_(3)より大きくなる結果、加工速度は大きくなるものの平滑性が低下する。 【0013】また、焼結体のAl_(2)O_(3)結晶粒とTiC結晶粒との全体的な平均結晶粒径は1.0μm以下、特に0.76μm以下であることが望ましく、TiC結晶粒の平均粒径は0.9μm以下、特に0.65μm以下であることが望ましい。これは、結晶粒径が上記範囲より大きいと加工速度が遅くなり加工に長時間要するとともに、表面品位も低下する。 【0014】さらに、Al_(2)O_(3)-TiC系焼結体では、その焼結性を高めるために、各種の金属酸化物を焼結助剤として添加することが行われているが、添加される焼結助剤は、Al_(2)O_(3)と焼結過程で反応しAl_(2)O_(3)結晶粒やTiC結晶粒とは別に化合物相が形成されたり、あるいはガラス相として粒界相を形成する。例えば、MgOを添加した場合にはAl_(2)O_(3)とスピネルなどの化合物を形成する。このような化合物相やガラス相は加工速度が非常に速いために、加工後の表面品位が低下する恐れがある。そのため、焼結助剤を添加する場合には、これらの焼結助剤成分を添加することにより生じる化合物相またはガラス相の粒界相の総量が全量に対して1重量%以下、特に0.7重量%以下、さらには0.3重量%以下であることが望ましい。焼結助剤としては、MgO、Y_(2)O_(3)、CaO、Yb_(2)O_(3)、SiO_(2)などが用いられるが、これらの中でもMgOが最も悪い影響を与える。 【0015】上記Al_(2)O_(3)-TiC系焼結体は、例えば、Al_(2)O_(3)粉末とTiC粉末を、さらには所定の焼結助剤を前述したような所定の比率で添加した後、これをボールミルなどの任意の混合方法により成形した後、その成形体を1500?1650℃の温度範囲でホットプレス法、熱間静水圧焼成法(HIP法)などにより焼成すればよい。前述したようにAl_(2)O_(3)結晶粒とTiC結晶粒の粒径を前述したように制御するには、出発原料としていずれも粒径の小さい原料を用い、特に原料のAl_(2)O_(3)粉末がTiC粉末より大きい原料を選択し、また焼成温度をできるだけ低く設定することが望ましい。 【0016】また、上記Al_(2)O_(3)-TiC系焼結体をイオンミリングやRIE法などのイオンの照射により加工するには、被加工品となる前記焼結体を例えば、スパッタ装置内で10^(-5)torr以下の真空中にて被加工品を陰極として、Ar^(+)イオンなどの不活性ガスなどのイオンや、CF_(4)、CCl_(4)、BCl_(4)等の反応性ガスのイオンを600?1000Vのビーム電圧で加速して照射することにより、イオンを衝突させて被加工品の表面をエッチング処理されて加工を行うことができる。 【0017】上記の加工によれば、例えば薄膜磁気ヘッドにおける磁気記録面と対向する面となるスライダー浮上面に対して超精密加工を施すことができる。例えば、TPCスライダーの1種としては、図1に示すように、基板1のスライダー浮上面2に一対のレール3と溝4を有し、さらにレール3の外側にステップ部5を有するもので、ステップ部の深さは0.5?1μm、特に0.7?0.9μmに調整される。 【0018】このような浮上面におけるステップ部5は、上記Al_(2)O_(3)-TiC系焼結体からなる素基板の表面に加工すべき箇所以外を樹脂などのレジストパターンでフォトマスクを施し、そこにイオンを照射することによりレジストを施さない箇所をエッチングにより加工することができる。その後、そのレジストを除去することにより形成することができる。 【0019】このイオンミリングやRIE法により加工は、上記のTPCスライダーのステップ部の加工の他、精密治具、測定用具、各種精密部品などの加工にも有用である。 【0020】 【作用】本発明によれば、Al_(2)O_(3)-TiC系焼結体を構成するAl_(2)O_(3)結晶粒とTiC結晶粒では、イオンの照射により加工(ミリングまたはエッチング)する場合、その加工速度はAl_(2)O_(3)結晶粒の方が速い。そのため、従来のようにAl_(2)O_(3)結晶粒とTiC結晶粒がほぼ同程度の粒子径である場合、Al_(2)O_(3)結晶粒の方が過剰にエッチングされ、結果として加工後の表面品位は低下してしまう。 【0021】これに対して、本発明におけるAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体は、Al_(2)O_(3)結晶粒をTiC結晶粒より5%?50%大きくなるように制御することにより、Al_(2)O_(3)結晶粒とTiC結晶粒との加工速度を整合させることができる。従って、ミリング加工後の表面において加工速度の相違による凹凸がなく、平滑性に優れた加工面を形成することができる。 【0022】また、上記焼結体は焼結助剤として混合するAl_(2)O_(3)やTiC以外の金属化合物量を低減することにより、粒界成分のエッチングによる加工表面の凹凸の発生を抑制し高品位の表面を得ることができる。 【0023】そして、このAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体を磁気ヘッド用基板として使用し、磁気記録面と対向する鏡面加工された面の一部にイオン照射によりエッチング処理加工した本発明の磁気ヘッド用基板は、加工後の表面品位を高めることができ、磁気ヘッドとして信頼性を高めることができる。 【0024】 【実施例】実施例1 Al_(2)O_(3)原料(純度99.9%以上)、TiC原料(純度99.5%以上)を使用し、これらをAl_(2)O_(3)70重量%、TiC30重量%となるように秤量し、その中にTiCに対して約10重量%のTiO_(2)を添加後、Al_(2)O_(3)ボールにて混合した。次いで、混合粉末を成形し、1600℃、250kg/cm^(2)の圧力で1時間ホットプレス焼成した。なお、実験ではAl_(2)O_(3)原料粉末として平均粒径が0.4?2.7μm、TiC粉末として平均粒径が0.3?3.0μmの種々の原料を用い、最終的な焼結体中のAl_(2)O_(3)結晶粒およびTiC結晶粒が異なる数種の焼結体を作製した。 【0025】得られた焼結体に対してその表面を鏡面加工後、各結晶の粒径、化合物相やガラス相からなる粒界相量を測定した。TiC結晶粒の平均粒径はルーゼックス500により画像処理して円相当径を算出した。また全体の平均結晶粒径は、ファイヤーエッチング後にコード法により測定した。また、Al_(2)O_(3)の平均結晶粒径は、TiCおよび全体の平均粒径とTiCおよびAl_(2)O_(3)の体積比より算出した。さらに、化合物相はX線回折定量法により求め、ガラス相量は添加物の調合量と化合物量より算出し、それらの合量を粒界相量として求めた。その結果は、表1に示す通りであり、化合物相およびガラス相からなる粒界相量は、いずれの焼結体も0.1重量%以下であった。 【0026】さらに、この焼結体を5.2×10^(-4)torrの真空中に保持し、焼結体の被加工面に800V、200mAのアルゴンビームにより、1.5μmの深さまでエッチング加工した。そして、加工後の表面に対して表面粗さ(Rmax)を測定した。なお、この時のエッチング速度も加工時間から算出した。 【0027】また、焼結体の耐チッピング性についてはダイヤモンドホイル(レジン#325,110mmφ×厚み1mm)を回転数5500rpm、送り40mm/minに設定して焼結体を切断し、その切断面よりチッピングの評価を得た。評価では、切断面における距離が500μmの任意の2点をとり、その間でチッピング幅の最も大きい5ポイントを選びそのチッピング幅の平均をとり、その平均値が25μm未満を○、25?30μmを△、30μmを越えるものを×として示した。 【0028】 【表1】 【0029】表1によれば、Al_(2)O_(3)結晶粒がTiC結晶粒に比較して、小さいか、同程度か、あるいはAl_(2)O_(3)結晶粒がTiC結晶粒に比較して5%未満大きい試料No.1?4では、いずれも表面粗さが大きく、表面品位が低レベルであった。これに対して、Al_(2)O_(3)結晶粒がTiC結晶粒より5?50%大きい試料No.5?11はいずれも加工後の表面粗さが0.3μm以下であり、表面品位の高いものであった。 【0030】また、結晶粒径が大きくなるほど加工速度が小さくなる傾向にあることがわかるが、TiCの結晶粒径が0.9μm以下において、加工速度が130Å/min以上となることがわかる。 【0031】実施例2 平均粒径が0.6μmのAl_(2)O_(3)原料(純度99.9%以上)と、平均粒径が0.65μmのTiC原料(純度99.5%以上)を使用し、これらを表2の配合組成で秤量混合した後、実施例1と同様な方法で焼結体を作製した。 【0032】得られた焼結体に対して実施例1と同様な方法で、粒界相量、各平均結晶粒径、加工後の表面品位、加工速度、耐チッピング性を測定した。その結果、粒界相量はいずれも0.1重量%であった。なお、その他の特性は表2に示した。 【0033】 【表2】 【0034】表2から明らかなように、TiC量が40重量%を越えると、エッチング速度が低下した。また、TiC量が20重量%より少ない試料No.18,19では、耐チッピング性が劣化した。これらの中でも特に25?35重量%では耐チッピング性も良好であった。 【0035】実施例3 平均粒径が0.6μmのAl_(2)O_(3)原料(純度99.9%以上)と、平均粒径が0.65μmのTiC原料(純度99.5%以上)およびMgO(純度99.9%以上)を使用し、これらを表3の配合組成で秤量混合した後、実施例1と同様な方法で焼結体を作製した。 【0036】得られた焼結体に対して実施例1と同様な方法で、粒界相量、各平均粒径、加工後の表面品位、エッチング速度、耐チッピング性を測定し、表3に示した。 【0037】 【表3】 【0038】表3によれば、助剤量を増やした結果、表面品位が低下する傾向にあり、粒界相量が1.0重量%を越える試料No.20,21では、やや表面品位が低下したが、1.0重量%以下の本発明品では、表面品位が向上した。これらの中でも特に実施例1、2の結果も合わせ、0.3重量%以下では表面粗さが0.25μm以下の表面品位の優れたものであった。 【0039】 【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、磁気ヘッド用基板を構成するAl_(2)O_(3)-TiC系焼結体におけるAl_(2)O_(3)結晶粒をTiC結晶粒より大きく設定するとともに、該基板の磁気記録面と対向する鏡面加工された面の一部にイオンの照射によりエッチング処理加工された加工部を有し、さらに、結晶粒全体の平均結晶粒径が1μm以下、前記TiC結晶粒の平均結晶粒径が0.9μm以下であることから、イオンミリング加工やRIE加工などのイオンの照射によるエッチング処理加工において表面品位が優れ、また、加工速度を高めることができる。これにより、薄膜磁気ヘッドなどのスライダーにおける浮上面の超精密加工を優れた精度で行うことができ、磁気ヘッドの信頼性を高めることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の磁気ヘッド用基板を用いた磁気ヘッドにおけるTPCスライダーの1例を示す図である。 【符号の説明】 1 基板 2 スライダー浮上面 3 レール 4 溝 5 ステップ部 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2009-01-14 |
結審通知日 | 2009-01-16 |
審決日 | 2009-01-27 |
出願番号 | 特願平6-33512 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
ZA
(C04B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 深草 祐一 |
特許庁審判長 |
大黒 浩之 |
特許庁審判官 |
木村 孔一 安齋 美佐子 |
登録日 | 2000-10-20 |
登録番号 | 特許第3121980号(P3121980) |
発明の名称 | 磁気ヘッド用基板 |
代理人 | 田原 勝彦 |
代理人 | 阿部 英樹 |
代理人 | 藤巻 文雄 |
代理人 | 増井 和夫 |
代理人 | 阿部 英樹 |
代理人 | 橋口 尚幸 |
代理人 | 藤巻 文雄 |
代理人 | 田原 勝彦 |
代理人 | 石島 茂男 |
代理人 | 齋藤 誠二郎 |
代理人 | 石島 茂男 |