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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02C
管理番号 1226835
審判番号 不服2009-792  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-08 
確定日 2010-11-08 
事件の表示 平成11年特許願第 40180号「色覚補正コンタクトレンズ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月18日出願公開、特開2000- 47146〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年2月18日の出願(特許法第41条に基づく優先権主張、平成10年2月26日及び平成10年5月22日)であって、平成20年7月9日付の拒絶理由の通知に対し、同年9月12日付で手続補正がなされたが、同年12月4日付で拒絶査定がなされ、これに対して平成21年1月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月9日付で手続補正がされたものである。
その後、該手続補正に基づいて審査官による前置審査に付され、それを受けて、当審において平成22年3月23日付で審尋を行ったところ、審判請求人から同年5月17日付に回答書が提出されたものである。

2.平成21年2月9日付手続補正について
平成21年2月9日付の手続補正は、補正前の請求項1を削除するとともに、補正前の請求項2に係る発明と同一内容の発明を請求項1に係る発明とし、補正前の請求項3?5を、請求項2?4に順次繰り上げたものであるから、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものと認める。

3.本願発明
したがって、本願の請求項1?4に係る発明は、平成21年2月9日付手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】 角膜に装着するコンタクトレンズであって、色覚異常者の網膜の3種の錐状体視細胞のそれぞれの刺激値比例を変換して色覚正常者の3種の錐状体視細胞のそれぞれの刺激値比例に近づけるような色覚矯正スペクトル特性を備える部位を有し、前記色覚矯正スペクトル特性を備える部位が、コンタクトレンズを装用したときに、眼球の虹彩の中に収まる大きさのスポット状色覚補正部位であり、そのスポット状色覚補正部位が、直径又は長軸が0.5mm?4.2mmの範囲の円形ないし楕円形であることを特徴とする色覚補正コンタクトレンズ。」

4.引用例の記載
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物である引用例1:特表平9-503402号公報(以下、引用例1という。)には、図面とともに以下の記載がある。(なお、引用例における下線は、当審で付与した。)

(1a)「4.色フィルターを含んで成るヒトの眼の色覚を改善し又は変更するための光学手段であって、その色フィルターが、それが、正常な色覚をもつヒトの眼の第一色素、第二色素及び第三色素レセプターのスペクトル感度曲線の最大値付近の3つの波長レンジ内において、変更されるべき色覚をもつ眼の対応レセプターの、測定されるような、スペクトル感度と、正常な又は所望の色覚をもつヒトの眼の対応レセプターのスペクトル感度との間の差異を補償するようなスペクトル透過をもつことを特徴とする光学手段。」(【特許請求の範囲】)

(1b)「11.光学手段が、光屈折又はゼロ光屈折のコンタクト・レンズ(5)であって、それ自体の材料中に添加物を含み、そして/又はその表面上に塗装され、そして/又は2以上の異なって着色された層から成り、そして/又はその表面上に1セットの光学的薄層(20)を有して干渉フィルターを形成するようなものであることを特徴とする、請求項4に記載の光学手段。」(【特許請求の範囲】)

(1c)「ヒトの眼は、約 380nm?780nmにわたる可視光の波長レンジ内の電磁放射を検出することができる。波長に依存するヒトの視覚の光の効率は、いわゆる可視曲線(visibility curve)により定められる。ヒトの眼の中には、色覚を保証する3つの整色性の(ortho chromatic)レセプター(色素)、赤に対して感受性のある第一色素(protos)、緑に対して感受性のある第二色素(deuteros)、及び紫に対して感受性のある第三色素(tritos)が存在する。」(第7頁第7-12行)

(1d)「ヒトは正確には同一の色覚をもっていないことはよく知られている。従って、例えばいわゆる色盲のヒトは、3つの代わりに2つの基本的な色だけを見ている。第一色素レセプターを欠く場合、その色盲のヒトは第一色盲・赤色盲(protanop)といわれ、第二色素を欠く場合には、我々は第二色盲・緑色盲(deuteranop)患者といい、そして第三色素レセプターが欠如している場合、そのヒトは第三色盲・青色盲(tritanop)といわれる。さらに異常色覚をもつヒトも知られており、そして彼(彼女)らは上記の3つのレセプターの全てをもつけれども、彼らは正常なヒトとは違った方法で色を見ている。」(第8頁第13-21行)

(1e)「本発明の創作により、色素異常を矯正するための解決策を発見することが意図された。従って、我々の発明の第一の目的は、それにより異常色覚が矯正されることができるであろう方法を作り上げることである。第二の目的は、それぞれ、色覚を改善し、そしてそれを変更するのに好適な手段を創作することである。
ほとんどの場合、色素異常は、異常色覚をもつ眼のレセプターのスペクトル感度曲線が正常な色覚をもつ眼の対応感度と異なるという事実により生じる。色素異常に関して、我々は、このような眼の感度曲線が、正常な色覚をもつ眼の対応感度曲線と比較して、その波長に添って互いに独立して、そして両方向において置き換えられることできること、そしてその感度曲線の形状においていくつかの差異も存在することができ、そしてそれ故、所定の眼について、その第一色素、第二色素及び第三色素レセプターのスペクトル感度曲線が、色覚を改良するために色素異常のタイプ及び程度の測定について別々に分析されなければならないということ、を認識した。
我々は、レセプターの感度曲線における異常が適当に選択された色フィルターにより矯正されることができることを認識した。なぜなら、色素異常のほとんどのケースにおいては、波長に沿ってのいずれかの感度曲線の置換が、色フィルターにより引き起こされる光強度における減少がヒトの眼の適応により各々のレセプターについて広く補償されることができるような程度の内にあるからである。例えば、10%の透過(transmission)をもつ色フィルターの適用は、その眼の対数感知特性による光の知覚(perception)におけるひじょうに小さな減少を引き起こす。」(第10頁第4行-25行)

(1f)「図6?8は、異常色覚のさらなるケースにおける適用のための本発明に係る色フィルターの特徴を有するスペクトル透過を示すダイアグラムであり、」

(1g)「図15は、コンタクト・レンズとして作られた本発明に係る光学手段の1態様の断面略図であり、」(第13頁第10-11行)

(1h)「実施例3
所定のヒトの眼をテストすることにより、第一色素の感度曲線がより小さな波長に向って12.5nm変位し、第二色素の感度曲線がより大きな波長に向って 7.5nm程変異し、そしてその第三色素レセプターが正常な眼のものに一致する感度を有することを測定した。感度曲線P*(λ)とD*(λ)の最大値は正常な色覚の場合におけるよりも互いに20nm近い。これは、ΔλP=-12.5nm,ΔλD=7.5nmそしてΔλT=0であることを意味する。第一色素の矯正のために、図8に示すような透過特性τP(λ)の色フィルターが必要であろうし、一方、第二色素の矯正のためには、同じく図示された透過特性τD(λ)の色フィルターも必要であろう。第三色素のためには、矯正は全く必要ないであろうし、そしてこれは、水平の透過特性τT(λ)に一致する。実施例1に記載したように、これらの3つの透過特性の結果を作成することにより、行われるべき色フィルターの透過特性τ(λ)を図8中の点線により示されるように得る。この色フィルターは、いずれかの薄層技術により担体上に特定の材料及び厚さの光学層を適用することにより具体化されることができる。図示するような透過特性τ(λ)を得るために、以下の8の薄層をガラス担体上に順番に適用する:
層 1 0.46 μm ZrO2
層 2 0.05 μm SiO2
層 3 0.05 μm ZrO2
層 4 0.18 μm SiO2
層 5 0.26 μm ZrO2
層 6 0.28 μm SiO2
層 7 1.74 μm ZrO2
層 8 0.25 μm MgF2
9番目の層として、それ自体公知のUV保護性の層を適用することができる。担体として、例えば、ハード+5Dコンタクト・レンズを、その薄層が2つのプラスチックの半-レンズの間に密閉シールされるようなやり方で使用される。これらの薄層は、上記半-レンズの一方の上に適用され、そして次に2つの半-レンズが一緒にされ、そしてそれらの端に沿って溶融される(図15)。」(第22頁第23行-第23頁23行)

(1i)「図15は、必要な光屈折を保証する硬質材料の2つの半-レンズ(18)と(19)、並びにそれらの間の、本発明に係る干渉色フィルターを調製するための光学薄層(20)を含んで成るコンタクト・レンズとして実施される光学手段を示す。この薄層(20)は上記半-レンズの中の1の上、例えば半-レンズ(18)の上に適用され、そして次にこの2つの半-レンズ(18)と(19)が一緒にされ、そしてそれらの端(21)に沿って溶融される。半-レンズ(18)と(19)の生体適合性材料はこの薄層(20)を密閉シールし、そうしてそれらは、コンタクト・レンズ(5)を装着したときにいずれの問題をも引き起こすことができない。いくつかの場合には、このコンタクト・レンズ(5)は、適当な透過特性の着色プラスチック材料から作られることもでき、これらのコンタクト・レンズ(5)は、柔軟材料から作られることもできる。」(第25頁第7-18行)

(1j)「 【図15】



これらの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載に則って整理すると、引用例1には次の発明(以下、引用例発明という。)が記載されている。

「コンタクト・レンズであって、正常な色覚をもつヒトの眼の第一色素、第二色素及び第三色素レセプターのスペクトル感度曲線の最大値付近の3つの波長レンジ内において、異常色覚をもつ眼の対応レセプターの、測定されるようなスペクトル感度と、正常な色覚をもつヒトの眼の対応レセプターのスペクトル感度との間の差異を補償するようなスペクトル透過をもつ色フィルターを含んで成り、色フィルターはコンタクトレンズの端を除く半レンズの上に適用される、ヒトの眼の色覚を改善し又は変更するためのコンタクト・レンズ。」

5.対比
本願発明と引用例発明とを対比する。
引用例発明の「コンタクト・レンズ」は、本願発明の「角膜に装着するコンタクトレンズ」に相当する。
引用例発明の「ヒトの眼の色覚を改善し又は変更する」ことは、本願発明において「色覚補正」することに相当する。
引用例発明の「第一色素、第二色素及び第三色素レセプター」は、「色覚を保証する3つの整色性の(ortho chromatic)レセプター」である旨記載(1c参照)され、網膜の視細胞のうち、錐状体が色覚を司る受容器であることから、本願発明の「網膜の3種の錐状体視細胞」に相当する。

ここで、引用例発明の「スペクトル感度曲線の最大値付近の3つの波長レンジ内」における「スペクトル感度」とは、視細胞が光を受容するその度合いを、光を受容する能力の側面から表現しているのに対し、本願発明の「それぞれの刺激値比例」とは、視細胞が光を受容するその度合いを、光を受容した視細胞の興奮度の側面から表現しているものであるから、両者は視細胞が光を受容する度合いを表す点で共通している。
そして、引用例発明の「色フィルター」が、「スペクトル感度」の「差異を補償する」ことは、「正常な色覚をもつヒトの眼」と「異常色覚をもつ眼」との間で、光を受容する能力の差を小さくすることを意味するから、本願発明の「色覚矯正スペクトル特性を備える部位」が、「色覚異常者」と「色覚正常者」との間で、光を受容した視細胞の興奮度の差を小さくする、すなわち、両者の間で「刺激値比例」を「近づける」ことと同じ作用を有する。
してみると、引用例発明の「色フィルター」は、本願発明の「色覚矯正スペクトル特性を備える部位」と同一の機能を有する「スペクトル透過をもつ」から、引用例発明の「正常な色覚をもつヒトの眼の第一色素、第二色素及び第三色素レセプターのスペクトル感度曲線の最大値付近の3つの波長レンジ内において、異常色覚をもつ眼の対応レセプターの、測定されるような、スペクトル感度と、正常な色覚をもつヒトの眼の対応レセプターのスペクトル感度との間の差異を補償するようなスペクトル透過をもつ色フィルター」は、本願発明の「色覚異常者の網膜の3種の錐状体視細胞のそれぞれの刺激値比例を変換して色覚正常者の3種の錐状体視細胞のそれぞれの刺激値比例に近づけるような色覚矯正スペクトル特性を備える部位」に相当する。

また、引用例発明の「色フィルターはコンタクトレンズの端を除く半レンズの上に適用される」ことは、本願発明の「色覚矯正スペクトル特性を備える部位が、コンタクトレンズを装用したときに、スポット状色覚補正部位である」ことに相当する。

以上のことから、両者は
「角膜に装着するコンタクトレンズであって、色覚異常者の網膜の3種の錐状体視細胞のそれぞれの刺激値比例を変換して色覚正常者の3種の錐状体視細胞のそれぞれの刺激値比例に近づけるような色覚矯正スペクトル特性を備える部位を有し、色覚矯正スペクトル特性を備える部位が、コンタクトレンズを装用したときに、スポット状色覚補正部位である、色覚補正コンタクトレンズ。」で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
本願発明では、「色覚矯正スペクトル特性を備える部位のスポット状色覚補正部位が、直径又は長軸が0.5mm?4.2mmの範囲の円形ないし楕円形である」のに対して、引用例発明では上記のような限定がない点。

6.検討
6-1.相違点の判断
ヒトの眼に検出される可視光は、虹彩に囲まれた瞳孔を通過するのであるから、色覚補正部位には、少なくとも瞳孔の直径程度の大きさが必要なことは、明らかである。
してみると、引用例発明において色覚補正部位を瞳孔を囲む虹彩の中に収まる程度のスポット状にすることは、当業者が適宜なし得たことである。

また、錘状体が働く明所視の時点における瞳孔の直径は、2.3mm?2.8mm程度である(従来周知の文献である、日本眼鏡専門学校 編 金原出版株式会社 昭和51年7月20日発行 「眼鏡光学ハンドブック」 33頁末行及び54頁の表2-5参照。)から、色覚補正部位の直径又は長軸を、上記の直径と同程度の0.5mm?4.2mmの範囲の円形ないし楕円形とすることに、格別の困難性はない。

6-2.請求人の主張
請求人は、平成21年2月9日付手続補正書の請求の理由において、本願発明の効果について、以下のように主張している。
『本願発明の発明者は、平成20年9月12日付の意見書でも述べたように、本件出願当時、色覚補正コンタクトレンズの分野において、コンタクトレンズの色覚矯正スペクトル特性を備える部位を、コンタクトレンズ本体とは別の機能部位として独立して把握する技術概念が存在しない中、人の眼球構造や瞳孔の動き、人の視野への意識集中の傾向まで考慮することで、「色覚矯正スペクトル特性を備える部位が、コンタクトレンズを装用したときに、眼球の虹彩の中に収まる大きさのスポット状色覚補正部位であり、そのスポット状色覚補正部位が、直径又は長軸が0.5mm?4.2mmの範囲の円形ないし楕円形である」という独自の構成を導き出しました。
各引用文献には、「色覚矯正スペクトル特性を備える部位を、コンタクトレンズ本体とは別の機能部位として独立して把握すること」、「人の眼球構造や瞳孔の動き、更には人の視野への意識集中の傾向まで考慮して色覚補正部位の大きさを導き出すべきこと」、また、「その結果導き出された具体的な数値」について、開示も示唆もありません。
そして、本願発明は、上述の独自の構成を備えることにより、必要な色覚矯正スペクトル特性を得ながら、その特性を備える部位を目立たなくすることができ、眼球の虹彩部分の色合いが不自然になって相手に大きな違和感を与えてしまうことがなく、色覚異常の矯正機能を有するコンタクトレンズを気軽に使用できるようになるという顕著な効果を奏するものであります。よって、本願発明は十分に進歩性を備えたものであります。』
また、請求人は、平成22年5月17日付回答書においても、
『しかしながら、問題は、「所望の部分」とは何か、どのように決定するかであります。引用文献のいずれにも、人の目の構造を考慮して、「色覚矯正スペクトル特性を備える部位が、コンタクトレンズを装用したときに、眼球の虹彩の中に収まる大きさのスポット状色覚補正部位」とすること、「そのスポット状色覚補正部位が、直径又は長軸が0.5mm?4.2mmの範囲の円形ないし楕円形である」点を示唆する記載はありません。』と主張している。

確かに、本願発明により、本願明細書【0013】?【0015】にもあるように「必要な色覚矯正スペクトル特性を得ながら、その特性を備える部位を目立たなくすることができ、眼球の虹彩部分の色合いが不自然になって相手に大きな違和感を与えてしまうことがなく、色覚異常の矯正機能を有するコンタクトレンズを気軽に使用できるようになる」という一応の効果が認められる。
しかしながら、美容上の観点からコンタクトレンズが使用されることは、たとえば、「美容上の適用という言葉がコンタクトレンズに対して使われているが、伊達メガネのように,おしゃれの目的だけにコンタクトレンズを掛けることはあり得ない。屈折異常の矯正にめがねをかけたくないから,コンタクトレンズとするという意味の美容であって,屈折異常の矯正があくまでも前提となる。」(小瀬輝次監修、大頭仁(他5名)著,“めがね光学”,初版,共立出版株式会社 昭和63年発行 第150頁第24-27行)、「近点、コンタクトレンズの高性能化のため、および美容上の観点から、特に若い女性の間でコンタクトレンズが多用されるようになってきた。」(特開平01-2792222号公報 第1頁右下欄第7-9行)、「光学コンタクトレンズが視覚障害のため、又は美容上の目的のために使用されることはよく知られている。」(特開平02-008218号公報 第8頁左上欄第13-15行)と記載されているように、当該技術分野における当業者の技術常識である。
してみると、引用例発明において、「色覚矯正スペクトル特性を備える部位」の直径若しくは長軸を、美容上の観点及び色覚矯正の性能を考慮しつつ瞳孔の直径と同程度に調整することは、格別困難なことではない。

また、「色覚矯正スペクトル特性を備える部位」の直径若しくは長軸を、瞳孔の直径と同程度に調整することにより、美容上の観点から見ても大きな違和感がないことは明らかであるとともに、瞳孔を通過して錘状体に進入する光に対して十分に色覚補正をすることができることも明らかである。したがって、本願発明による効果は、色覚矯正スペクトル特性を備える部位の位置、形状及び寸法から当業者が期待し得るものであって、格別のものとはいえない。

6-3.まとめ
以上のことから、本願発明は、引用例発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
したがって、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この特許出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-27 
結審通知日 2010-08-31 
審決日 2010-09-27 
出願番号 特願平11-40180
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀井 康司  
特許庁審判長 柏崎 康司
特許庁審判官 木村 史郎
伊藤 裕美
発明の名称 色覚補正コンタクトレンズ  
代理人 特許業務法人暁合同特許事務所  

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