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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B01D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01D
管理番号 1226973
審判番号 不服2007-26472  
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-27 
確定日 2010-11-11 
事件の表示 特願2002- 95524「木質樹皮からのポリフラボノイド回収方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月14日出願公開、特開2003-290603〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年3月29日の出願であって、平成19年5月30日付けで拒絶理由が通知され、同年6月26日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで明細書の記載に係る手続補正がなされたが、同年8月21日付けで拒絶査定がなされ、同年9月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年10月3日付けで審判請求書に係る手続補正がなされるとともに、同日付けで明細書の記載に係る手続補正がなされ、平成22年3月1日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋が通知され、同年4月30日に回答書が提出されたものである。なお、本願は、特許法第30条第1項の適用の申請がなされた出願である。

2.平成19年10月3日付けの手続補正について
[補正却下の決定の結論]
平成19年10月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)本件補正により、平成19年6月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲
「【請求項1】加圧容器中で、木質樹皮を炭素数1?4の低級アルコールと接触させた状態で4?30気圧の圧力下で100?250℃に保持することを特徴とする木質樹皮からポリフラボノイドを抽出回収する方法。」
が、次のように補正された。
「【請求項1】加圧容器中で、ラジアータパイン樹皮を炭素数1?4の低級アルコールと接触させた状態で4?30気圧の圧力下で100?250℃に保持することを特徴とするラジアータパイン樹皮からポリフラボノイドを抽出回収する方法。」

(2)そして、本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1において、「木質樹皮」を「ラジアータパイン樹皮」に限定する補正を加えるものであるから、本件補正前に請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものに該当し、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものかについて、以下に検討する。

(2.1)引用例
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-86686号公報(平成22年3月1日付け審尋に引用された報告における刊行物1。以下、「引用例1」という。)には次の事項が記載されている。
(ア)「樹皮粉砕物を、水性媒体の存在下において、初期反応圧を少なくとも1気圧及び反応温度を少なくとも100℃に保持して、該樹皮中のタンニンを該水性媒体中に溶出させることを特徴とする樹皮からのタンニンの抽出方法。」(【請求項1】)
(イ)「【発明の実施の形態】本発明で用いる樹皮としては、タンニンを10重量%以上、特に、20重量%以上含有するものが好ましく用いられる。本発明で用いる樹皮としては、特に、オーストラリアや日本で植林されているラジアータパインのような松、ひのき、杉、ユーカリ等の樹種の樹皮が好ましい。」(【0005】)
(ウ)「本発明では、前記樹皮粉砕物は、これを密閉容器内に入れ、水性媒体の存在下で加温加圧の条件に保持する。水性媒体としては、水又は水と有機溶剤(アルコール等)との混合物が用いられるが、この水性媒体には、塩基触媒としてアルカリ性物質の添加が有利である。・・・本発明の反応は加温加圧下で実施されるが、この場合反応圧力は、一般には、初期反応圧で少なくとも1気圧、好ましくは4?20気圧、好ましくは5?10気圧であり、反応温度は少なくとも100℃、好ましくは100?200℃、より好ましくは120?140℃である。さらにその反応温度で0?30分間保持する。本発明において圧力は、水性媒体による自己発生圧を利用することができるが、必要に応じ不活性ガス、アルゴン等を用いて加圧することもできる。この反応により、樹皮中のタンニンは水性媒体に溶出(抽出)される。」(【0006】)
(エ)「【発明の効果】本発明は、前記のような構成であり、短時間の反応でかつ少量の溶媒で効率よくタンニンを回収することができた。」(【0014】)

(2.2)対比・判断
引用例1には、記載事項(ア)に、「樹皮粉砕物を、水性媒体の存在下において、初期反応圧を少なくとも1気圧及び反応温度を少なくとも100℃に保持して、該樹皮中のタンニンを該水性媒体中に溶出させる・・・樹皮からのタンニンの抽出方法。」と記載されている。この「抽出方法」について、記載事項(イ)に「樹皮」として、「ラジアータパイン」等の樹皮が好ましいことが記載され、記載事項(ウ)に「水性媒体」として「水と有機溶剤(アルコール等)との混合物」を用いることが記載されている。また、同(ウ)に、上記「抽出方法」は、樹皮粉砕物を「密閉容器内」に入れ、水性媒体の存在下で「加温加圧の条件に保持」するものであり、「反応圧力」は、「初期反応圧」で、好ましくは「4?20気圧」であり、「反応温度」は、好ましくは「100?200℃」とし、その反応温度で「保持」することが記載されている。さらに、記載事項(エ)に、上記抽出方法により「タンニン」を「回収」することが記載されているといえる。

よって、これらの記載事項(ア)?(エ)を本願補正発明の記載ぶりに則して整理すると、引用例1には、
「密閉容器内で、ラジアータパイン樹皮を水と有機溶剤(アルコール等)との混合物からなる水性媒体の存在下において、初期反応圧で4?20気圧の反応圧力及び100?200℃の反応温度として加温加圧下に保持し、ラジアータパイン樹皮からタンニンを抽出回収する方法。」
の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

そこで、本願補正発明と引用発明1を対比する。
(a)引用発明1の「密閉容器」は、内部のラジアータパイン樹皮を「加圧下」に保持するから、本願補正発明の「加圧容器」に相当するということができる。
(b)引用発明1の「水性媒体」は、「水」と「アルコール」等の混合物であるから、「アルコール」を含有する「媒体」といえる。一方、本願補正発明の「炭素数1?4の低級アルコール」は、「アルコール」を含有し、「抽出」に用いる「媒体」とみることができる。よって、引用発明1の「水性媒体」と、本願補正発明の「炭素数1?4の低級アルコール」とは、「アルコールを含有する媒体」である点で共通する。
(c)引用発明1は、「ラジアータパイン樹皮」を「水性媒体の存在下」において、「初期反応圧で4?20気圧の反応圧力及び100?200℃の反応温度として加温加圧下に保持」するから、「ラジアータパイン樹皮」を「水性媒体」と「接触させた状態」で、「4?20気圧」および「100?200℃」に保持するものといえる。また、引用発明1の「4?20気圧」および「100?200℃」は、本願補正発明の、「4?30気圧」及び「100?250℃」と、「4?20気圧」及び「100?200℃」で一致する。
(d)本願補正発明の「ポリフラボノイド」について、本願明細書には、「本発明において樹皮から回収されるポリフラボノイドには、タンニンや、カテキン等が包含される。」(【0010】)と記載されているから、引用発明1の「タンニン」は、本願補正発明の「ポリフラボノイド」に相当するということができる。

上記(a)?(d)の検討を踏まえると、本願補正発明と引用発明1とは、
「加圧容器中で、ラジアータパイン樹皮をアルコールを含有する媒体と接触させた状態で4?20気圧の圧力下で100?200℃に保持するラジアータパイン樹皮からポリフラボノイドを抽出回収する方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点A)アルコールを含有する媒体につき、本願補正発明は「炭素数1?4の低級アルコール」であるのに対して、引用発明1は、「水と有機溶剤(アルコール等)との混合物からなる水性媒体」である点。

そこで、上記(相違点A)について検討する。
タンニン等のポリフラボノイドは、水だけでなく、メタノール、エタノール等の低級アルコールに溶解し、かかる低級アルコールを溶媒として抽出できることは周知の事項であり(特開2000-69938号公報の【0010】?【0017】、特開平11-75770号公報の【0009】?【0016】、化学大辞典編集委員会編,「化学大辞典5」,共立出版株式会社、1997年9月20日縮刷版第36刷発行、第763頁、タンニンの項、以下それぞれ「周知例1?3」という。)、また、かかる低級アルコールは、親水性の溶媒として一般的に用いられている。
引用発明1において、上記周知の事項を踏まえて、「水と有機溶剤(アルコール等)との混合物からなる水性媒体」に替えて、「炭素数1?4の低級アルコール」をポリフラボノイドの抽出用の溶媒として採用することは、当業者が困難なくなし得ることである。
そして、本願補正発明の効果について検討すると、本願明細書に記載される「樹皮中に含まれているポリフラボノイドを高純度で、しかも短時間により抽出することができる。」(【0011】)という効果は、樹皮から効率よくポリフラボノイドを抽出できることといえるから、引用例1の記載事項(エ)の「短時間の反応でかつ少量の溶媒で効率よくタンニンを回収することができた」という効果と同様のものである。また、本願補正発明の抽出率や純度(抽出物中のポリフラボノイド含有率)について、本願明細書に具体的に記載されたものは、「メタノール」を抽出溶媒とし、「10気圧」まで加圧し、その後、「140℃」にまで加温し、抽出温度到達後に直ちに冷却した実施例1の場合だけであり、溶媒の炭素数による親水性の違い、温度や圧力条件、保持時間等によって抽出率や純度は変動し得るから、かかる実施例1の記載から、メタノール以外の低級アルコールを用いた場合や、本願補正発明の他の温度や圧力の場合の効果が、実施例1と同程度であるとまではいうことはできない。さらに、本願の「新規性の喪失の例外証明書提出書」として提出された「第52回日本木材学会大会研究発表要旨集、平成14年3月10日、日本木材学会発行、第362頁」には、ラジアータパイン樹皮からのメタノール溶媒によるポリフラボノイドの抽出について、本願補正発明に含まれる(i)「180℃、10atm、保持時間0.5h」で抽出したものは、本願補正発明に含まれない「常圧下で水を溶媒」として抽出したものより、ポリフラボノイドの含有量に対応するタンニン性物質の含有量(Stiasny value)が低く、本願補正発明に含まれる(ii)「180℃、4atm、保持時間0.5h」で抽出したものについても、上記「常圧下で水を溶媒」としたものより抽出率が低いことが示され、「180℃の温度で抽出を行った場合には、収率・Stiasny valueともに減少した。これは、温度によりタンニンの構造が変化し不溶性になったためと考えられる。」と記載されている(Table.1、【結果および考察】)。これらのことに照らせば、本願補正発明の効果が格別顕著なものと認めることはできない。

なお、請求人は、平成22年4月30日付け回答書において、以下の(a)、(b)のとおり主張する。
(a)「刊行物1(注:審決の「引用例1」を指す。)に記載された発明では、ラジアータパイン樹皮と接触させる媒体は、前述の水性媒体であって、「水」を必須とするものでありますから、該刊行物に記載された発明からでは、「水」又は「水との混合物」に代えて、「炭素数1?4の低級アルコール」を用いることを想到しうるものではありません。
本願発明(注:審決の「本願補正発明」を指す。)では、本願明細書に記載した比較例3の記載から明らかなように、炭素数1?4の低級アルコールを用いることにより、水を用いた場合に比較して、抽出物が高い収率で得ることができ、しかも、抽出物中のフラボノイドの含有率も向上するという作用効果を有しています。
このような本願発明の作用効果については、水性媒体の使用を必須とする刊行物1に記載の発明からでは、当業者といえども到底予期しうるものではありません。」(第3頁13?23行)
(b)「刊行物4、5(注:審決の「周知例1、2」を指す。)・・・においても、実施例では、刊行物1に記載された発明と同様、溶媒には、水又は含水エタノールを用いたことが記載されているだけで、「炭素数1?4の低級アルコール」を用いた実施例は記載されていません。
さらに、いずれの実施例においても、水又は含水エタノールを、120℃まで加熱した後で釜内の圧力を高めており、刊行物1に記載の発明及び本願発明のように、加圧下で100?250℃に保持する、すなわち、加圧下で加熱するものとは異なります。
すなわち、刊行物4,5に記載の発明は、原料がグアバ葉であって、ラジアータパイン樹皮のような樹皮に関する記載がなく、水に代えて、炭素数1?4の低級アルコールを用いることを示唆する記載もなく、抽出方法も異なるものですから、このような刊行物4、5の記載からでは、上記相違点に係る構成である、水性媒体に代えて、「炭素数1?4の低級アルコール」を用いることについては、当業者といえども想定導き出すことはできませんし、又、相違点による上記作用効果についても予期できるものではありません。」(第5頁2?25行)

上記(a)、(b)の主張について検討すると、周知例1,2(上記刊行物4,5)の記載は、実施例に限定されるものではなく、周知例1,2には、タンニン等のポリフラボノイドがメタノール、エタノール等の低級アルコールに溶解し、抽出できることが示されており、周知例3からみても、引用発明1の水性媒体に替えて、かかる低級アルコールを用いることに格別の困難性は認められない。また、引用発明1において、かかる低級アルコールを用いることを妨げる格別の事由も見いだせない。そして、本願補正発明の効果についても、上記のとおり、本願補正発明の全ての範囲において、水を用いた場合と比較して格別顕著な効果があるとはいえない。
よって、請求人の上記(a)、(b)の主張は採用できない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。そうすると、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に違反してなされたものである。

(3)まとめ
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成19年10月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年6月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】加圧容器中で、木質樹皮を炭素数1?4の低級アルコールと接触させた状態で4?30気圧の圧力下で100?250℃に保持することを特徴とする木質樹皮からポリフラボノイドを抽出回収する方法。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に刊行物2として引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-319154号公報(以下、「引用例2」という。)には次の事項が記載されている。
(ア)「フラボノイド、クマリン類、フェニルプロパノイド、タンニン類から選ばれる1種以上の物質を含有する植物抽出物を配合することを特徴とする光毒性抑制剤。」(【請求項5】)
(イ)「本発明で使用する「フラボノイド」とは、フラボノイドの骨格は、2個のベンゼン環が炭素3個で連結されたC_(6)-C_(3)-C_(6)化合物であるフェニルクロマンを基本骨格にしており、その酸化又は還元体を含む化合物で、例えば、バイカリン、クリシン、ミリセチン、ジヒドロミリセチン、モリン、ナリンジン、クエルセチン、クエルシトリン、ルチン、オウゴニン、フラボン、フラボノール、カルコン、フラバノン、ジヒドロフラボノール、イソフラボン、アントシアニン、マルチフロリン、ダイズゼイン、クワノン、シリマリン、アピゲニン、スエルチシン、ルテオリン、バイカレイン、プランタギニン、ケンフェロール、アルピノン、カルコン、ブテイン、カルタミン、フェロレチン、ブラジリン、ヘマトキシリン、モルシン、イカリイン、リコリコンなどが挙げられる。
・・・
・・・本発明で使用する「タンニン類」とは、植物に含まれる多数のフェノール性水酸基をもつ複雑な芳香族化合物で、例えば、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、没食子酸、タンニン、アセルタンニン、ハマメリタンニン、ゲラニイン、コリラジン、チェブラジック酸、テルチェビン、イソテルチェビン、テルリマグランジン、C-グリコシディック エラギタンニン、グアビンA、アグリモニインなどが挙げられる。」(【0014】?【0017】)
(ウ)「タンニン(Tannin)」は、例えば、ウルシ科のヌルデやツバキ科の茶類、フウロソウ科のゲンノショウコ、アカネ科のアセンヤク、モクセイ科の秦皮などに多く含まれる物質で、広く植物界などに分布するフェノール性水酸基を持つ芳香族化合物で、没食子酸と糖がエステル結合した可溶性(ピロガロール)タンニンと、カテキンなどフラボノイド化合物が縮合したカテコールタンニンに分けられるものである。」(【0064】)
(エ)「本発明のフラボノイド、クマリン類、フェニルプロパノイド、タンニン類から選ばれる1種以上の物質を含有する植物抽出物としては、例えば、アオイ科のワタ、アカネ科のコーヒー、阿仙薬、ウルシ科のヌルデ、エゴノキ科のアンソッコウ、オオバコ科のオオバコ、カエデ科のチョウセンカラコギカエデ、カキノキ科の柿、キク科のフジバカマ、セイヨウタンポポ、ヨモギ、カワラヨモギ、ベニバナ、キブシ科のキブシ、クスノキ科のクスノキ、クロメモドキ科のクロメモドキ、クワ科のイチジク、クワ、ゴマノハグサ科のジギタリス、キンギョソウ、サクラソウ科ユキワリソウ、シクンシ科の詞子、シソ科のコガネバナ、紫蘇、ローズマリー、ヒキオコシ、ショウガ科のハナミョウガ、スイカズラカ科のスイカズラ、セリ科のパセリ、アギ、アンモニアクム、ガルバヌム、アンゲリカ、シシウド、ニゾニウ、アシタバ、アニス、ウイキョウ、ダテ科の大黄、ツバキ科の緑茶、紅茶、ウーロン茶などの茶類、ドクダミ科のドクダミ、トチノキ科のセイヨウトチノキ、ナス科のハシリドコロ、ベラドンナ、ニクズク科のニクズク、バラ科のサクラ、モモ、キンミズヒキ、フウロソウ科のゲンノショウコ、ブドウ科のブドウ、白茶、フトモモ科のチョウジ、マツ科のピヌス・モンティコーラ(Pinusmonticola)、マメ科のクズ、エンジュ、シナガワハギ、大豆、ペルーバルサム、蘇木、オランダビユ、セイヨウエビラハギ、ムラサキウマゴヤシ、マンサク科のアメリカマンサク、ミカン科のトウヒ、ナツミカン、ハッサク、ダイダイ、ウンシュウミカン、マンダリン、ザボン、ハクセン、ジンチョウゲ、マツカゼソウ、ミズキ科のサンシュユ、モクセイ科のトネリコ、秦皮、モクセイソウ科のモクセイソウ、モクマオウ科のモクマオウ、ヤマモモ科のヤマモモ、ヤナギ科のオノエヤナギ、ユキノシタ科のユキノシタ、アマチャ、リンドウ科のセンブリなどが挙げられ、植物抽出物として、各々の植物体の各種部位(全草、花、頭花、花穂、蕾、萼、果実、果皮、果穂、葉、茎、枝、幹、樹皮、根皮、根茎、根、塊根、種子など)をそのまま或いは粉砕後、搾取したもの、又は、そのまま或いは粉砕後、溶媒で抽出したものである。」(【0067】)
(オ)「植物抽出物の抽出溶媒としては、水、アルコール類(例えば、メタノール、無水エタノール、エタノールなどの低級アルコール、或いはプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール)、アセトンなどのケトン類、エチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステルなどのエステル類、キシレン、ベンゼン、クロロホルムなどの有機溶媒を、単独或いは2種類以上を任意に組み合わせて使用することができ、又、各々の溶媒抽出物が組み合わされた状態でも使用できる。
又、植物抽出物の製造方法は特に制限されるものではないが、通常、常温、常圧下での溶媒の沸点の範囲であれば良く、・・・。」(【0068】?【0069】)

5.対比・判断
引用例2には、記載事項(ア)に、「フラボノイド、・・・タンニン類から選ばれる1種以上の物質を含有する植物抽出物」が記載され、記載事項(エ)に、この抽出物は、「植物体の各種部位(・・・樹皮・・・など)」を、「溶媒で抽出」して得られることが記載されているから、「フラボノイド、タンニン類から選ばれる1種以上の物質」を「抽出」する「方法」が記載されているといえる。

よって、これらの記載事項(ア)及び(エ)を本願発明の記載ぶりに則して整理すると、引用例2には、
「樹皮などの植物体の各種部位を溶媒で抽出し、樹皮などの植物体の各種部位からフラボノイド、タンニン類から選ばれる1種以上の物質を抽出する方法。」
の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

そこで、本願発明と引用発明2を対比する。
(a)引用発明2の「樹皮などの植物体の各種部位」は、「樹皮」を含み、「樹皮」が「木質」であることは明らかであるから、本願発明の「木質樹皮」に相当する。
(b)本願発明の「炭素数1?4の低級アルコール」は、「抽出」に用いる「溶媒」とみることができる。よって、引用発明2の「溶媒」と本願発明の「炭素数1?4の低級アルコール」とは、「溶媒」である点で共通する。そして、引用発明2の「樹皮などの植物体の各種部位」が、「溶媒」で「抽出」される際に、「溶媒」と「接触させた状態で保持」されることは明らかである。
(c)引用発明2の「フラボノイド、タンニン類から選ばれる1種以上の物質」について、記載事項(イ)には、「『フラボノイド』とは、フラボノイドの骨格は、2個のベンゼン環が炭素3個で連結されたC_(6)-C_(3)-C_(6)化合物であるフェニルクロマンを基本骨格にしており、その酸化又は還元体を含む化合物」であり、「『タンニン類』とは、植物に含まれる多数のフェノール性水酸基をもつ複雑な芳香族化合物」であることが記載され、記載事項(ウ)には、「タンニン」として、「カテキンなどフラボノイド化合物が縮合したカテコールタンニン」が記載されている。これらの記載事項と、本願明細書には、「本発明において樹皮から回収されるポリフラボノイドには、タンニンや、カテキン等が包含される。」(【0010】)と記載されていることから、引用発明2の「フラボノイド、タンニン類から選ばれる1種以上の物質」は、本願発明の「ポリフラボノイド」に相当するということができる。
(d)引用発明2の「フラボノイド、タンニン類から選ばれる1種以上の物質」は、記載事項(ア)によれば、光毒性抑制剤に配合するために抽出するものであるから、抽出して、光毒性抑制剤に配合するために「回収」するものということができる。

上記(a)?(d)の検討を踏まえると、本願発明と引用発明2とは、
「木質樹皮を溶媒と接触させた状態で保持する木質樹皮からポリフラボノイドを抽出回収する方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点B)溶媒につき、本願発明は、「炭素数1?4の低級アルコール」であるのに対して、引用発明2は、特定されていない点。
(相違点C)本願発明は、「加圧容器中」で、「4?30気圧の圧力下で100?250℃」に保持するのに対して、引用発明2は、かかる事項を特定していない点。

そこで上記(相違点B)、(相違点C)について順に検討する。
(相違点B)について
引用例2には、記載事項(オ)に、「抽出溶媒」として、「メタノール、無水エタノール、エタノールなどの低級アルコール」が例示されており、(相違点A)の検討でも述べたとおり、タンニン等のポリフラボノイドは、かかる低級アルコールに溶解し、かかる低級アルコールを溶媒として抽出できることは周知の事項である(周知例1?3)。
そうすると、引用発明2において、ポリフラボノイドを抽出するための溶媒として、引用例2に例示された溶媒から、メタノール、無水エタノール、エタノールなどの低級アルコールを特定することは当業者が格別困難なくなし得ることである。
(相違点C)について
植物部位を加圧容器内で加圧加温してタンニン等を溶媒抽出することは周知技術であるから(周知例1、2)、引用発明2において、(相違点B)で検討した「メタノール、無水エタノール、エタノールなどの低級アルコール」を抽出溶媒とするに当たり、加圧容器内で加圧加温し、その圧力、温度として「4?30気圧」および「100?250℃」程度に定めることは、ポリフラボノイドの収率や抽出効率等を考慮して当業者が困難なくなし得ることである。

また、本願発明の効果について検討しても、本願明細書の記載および「新規性の喪失の例外証明書提出書」として提出された「第52回日本木材学会大会研究発表講演要旨集、平成14年3月10日、日本木材学会発行、第362頁」の記載からみて、上記(2.2)で検討した本願補正発明についての効果と同様に、格別顕著なものは見出せない。

なお、請求人は、平成19年10月3日付けで補正された審判請求書において、以下のとおり主張する。
「引用文献2(注:審決の「引用例2」を指す。)・・・・には、ラジアータパイン樹皮を原料とすることについては記載も示唆もされておりません。また、同文献の植物抽出物は、常温、常圧下で抽出されるものであります。
すなわち、同文献には、「ラジアータパイン樹皮を原料として、炭素数1?4の低級アルコールを用いて加圧、加熱下にポリフラボノイドを抽出回収する」という本願発明(注:審決の「本願補正発明」を指す。)の必須の構成要件、並びに該構成要件に基づく顕著な効果については全く記載されておらず、また示唆もされておりません。してみれば、本願発明が同文献の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである、ということはできません。」(第3頁9?33行)

上記主張について検討すると、引用例2には、記載事項(オ)に、「常温、常圧下」の抽出について記載されているが、同(オ)に、抽出方法について「特に制限されるものではない」とも記載されており、引用発明2において、加温加圧を利用した周知の抽出方法を採用することを妨げる事由はない。また、炭素数1?4の低級アルコールを用いることや、効果についても、(相違点B)や「本願発明の効果」の検討として、既に述べたとおりである。なお、「ラジアータパイン」については、本願補正発明に係る本件補正は上記のとおり却下されたから、引用例2の記載に基づく引用発明2と対比される本願発明は、そもそもラジアータパインに限定されるものではないが、引用例2には、記載事項(エ)に、ラジアータパインと同様のマツ科の植物から抽出することが示されており、タンニン等のポリフラボノイドはラジアータパインだけでなく各種植物に広く含まれることは周知であるから、ラジアータパインに特定することに格別の困難性があるともいえない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

したがって、本願発明は、引用発明2および周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に記載された発明は、引用例2に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-10 
結審通知日 2010-09-14 
審決日 2010-09-28 
出願番号 特願2002-95524(P2002-95524)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01D)
P 1 8・ 575- Z (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金 公彦  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 斉藤 信人
安齋 美佐子
発明の名称 木質樹皮からのポリフラボノイド回収方法  
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