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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て成立) H04N |
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管理番号 | 1228197 |
判定請求番号 | 判定2010-600020 |
総通号数 | 133 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2011-01-28 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2010-04-26 |
確定日 | 2010-11-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4362130号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びその説明書に示す「東芝製テレビ」は、特許第4362130号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
【第1】請求の趣旨 本件判定の請求の趣旨は、イ号図面並びにその説明書に示す東芝製テレビは、特許第4362130号の各請求項に記載された特許発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。 【第2】本件特許発明 本件特許の請求項1及び12に係る発明(以下、それぞれを「本件特許発明1」、「本件特許発明2」という。)は、本件の特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び12に記載された事項により特定されるとおりのものであり、これらを構成要件に分説すると次のとおりである。 【第2-1】本件特許発明1 A:ユーザ機器装置において用いられる方法であって、該ユーザ機器装置は、第1の伝送方式を用いて、第1の伝送源としての第1のソース装置から伝送される複数の第1のテレビジョン番組を受信する第1のチューナと、該第1の伝送方式とは異なる第2の伝送方式を用いて、第2の伝送源としての第2のソース装置から伝送される複数の第2のテレビジョン番組を受信する第2のチューナとを有し、 該方法は、 B:該第1のソース装置から該第1の伝送方式を用いて伝送される第1の番組スケジュール情報と、該第2のソース装置から該第2の伝送方式を用いて伝送される第2の番組スケジュール情報とを受信することであって、該第1の番組スケジュール情報は、該複数の第1のテレビジョン番組のうちの1つに対応し、該第2の番組スケジュール情報は、該複数の第2のテレビジョン番組のうちの1つに対応する、ことと、 C:該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有するチャンネルガイドを提供することと、 D:該チャンネルガイドに含まれる複数の番組スケジュール情報のうちの少なくともいくつかを表示することと、 E:該チャンネルガイドに含まれる該複数の番組スケジュール情報のうちユーザによって選択された1つの番組スケジュール情報を指定するユーザ選択を示す信号を受信したことに応答して、該ユーザ機器装置上に表示を出力するために、該第1のチューナおよび該第2のチューナのうちの1つを選択することであって、該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第1の番組スケジュール情報である場合には、該第1のチューナが選択され、該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第2の番組スケジュール情報である場合には、該第2のチューナが選択される、ことと、 F:該選択されたチューナによって受信され、該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報に対応するテレビジョン番組を提供することと を包含する、方法。 【第2-2】本件特許発明2 G:ユーザ機器装置において用いられるシステムであって、該ユーザ機器装置は、第1の伝送方式を用いて、第1の伝送源としての第1のソース装置から伝送される複数の第1のテレビジョン番組を受信する第1のチューナと、該第1の伝送方式とは異なる第2の伝送方式を用いて、第2の伝送源としての第2のソース装置から伝送される複数の第2のテレビジョン番組を受信する第2のチューナとを有し、 該システムは、 H:該第1のソース装置から該第1の伝送方式を用いて伝送される第1の番組スケジュール情報と、該第2のソース装置から該第2の伝送方式を用いて伝送される第2の番組スケジュール情報とを受信する手段であって、該第1の番組スケジュール情報は、該複数の第1のテレビジョン番組のうちの1つに対応し、該第2の番組スケジュール情報は、該複数の第2のテレビジョン番組のうちの1つに対応する、手段と、 I:該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有するチャンネルガイドを提供する手段と、 J:該チャンネルガイドに含まれる複数の番組スケジュール情報のうちの少なくともいくつかを表示する手段と、 K:該チャンネルガイドに含まれる該複数の番組スケジュール情報のうちユーザによって選択された1つの番組スケジュール情報を指定するユーザ選択を示す信号を受信したことに応答して、該ユーザ機器装置上に表示を出力するために、該第1のチューナおよび該第2のチューナのうちの1つを選択する手段であって、該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第1の番組スケジュール情報である場合には、該第1のチューナが選択され、該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第2の番組スケジュール情報である場合には、該第2のチューナが選択される、手段と、 L:該選択されたチューナによって受信され、該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報に対応するテレビジョン番組を提供する手段と を含む、システム。 【第2-3】本件特許発明の課題・目的・作用効果 本件の特許明細書及び図面(甲第2号証)の記載、特に、段落【0001】?【0006】、段落【0042】によれば、 本件特許発明1、2は、 DBS(直接放送衛星システム)のIRDボックスでは、不都合なことにローカル・ネットワーク即ち地方の独立系チャンネルを受信せず、利用者は、手動または遠隔制御によりローカル・チャンネルを選択する。 また、利用者のテレビジョンが多数テレビジョン入力ポートを備えている場合は、ケーブル及びローカル・アンテナ・ソースをテレビジョン入力ポートに結合したり、 利用者のテレビジョンが多数の入力を備えていなかった場合には、手動スイッチ・ボックスを利用して、利用者がケーブルからローカル・アンテナへ手動で切換えを行わなければならず、 IRDボックス、多数のテレビジョン入力ポート、手動切換え装置等では、自動的切換えができないという課題を解決し、 利用者は、テレビ番組ソースを手動で選択することも、手動で所望のチャンネルまたは番組への同調を行うことを不要にし、更に、システム10が可能とする自動受信、格子状ガイドの生成、切換え及び同調により、最終の利用者または消費者が手動操作をしなければならない部分が存在するとしても、最小の操作に止められる、ようにすることを、 課題・目的・効果とするものと認められる。 また、【課題を解決するための手段】として、 「【0007】 本発明の好適な実施例では、本発明は、入力信号及び番組情報の調整(コーディネート)に関しており、より詳細には(1)多数のソースから受信するテレビジョン・スケジュールガイド情報の調整、(2)所望の信号ソースへの自動切換え、及び(3)所望のテレビ番組への同調に関する。従って、本発明は、テレビジョン・スケジュール・ガイド情報を調整する同調方式を提供する。この情報は数多くのソースから受信することができる。これらのソースは、入力ケーブル線(例えば、同軸ケーブル)、衛星放送、専用電話回線(例えば、ツイストペア)及び信号を伝送することができるその他の任意の媒体を含んでいる。 【0008】 本発明は、テレビジョン・システムのチャンネル・ガイド情報を組合せる(マージする)方法を提供する。この方法は、チャンネル・ガイド情報の受信及び記憶を含む。チャンネル・ガイド情報は、多数のテレビジョン信号ソースから受信される。このチャンネル・ガイド情報を受信した後で、システムが該情報を混合分類して所望の順序に並べる。最後に、このチャンネル・ガイド情報の表示が生成されて、所望の順序でテレビジョンに表示される。」 と記載されている。 【第3】イ号物件の構成 【第3-1】請求人のイ号物件の説明 請求人は、請求人が判定を求めるイ号物件を、イ号方法、およびイ号物品として、以下のように説明している。(判定請求書の第6?7頁) (1)イ号方法の説明 「イ号物品(東芝製液晶テレビZH7000)における視聴又は録画を実行する方法(イ号方法)は、イ号図面並びにその説明書、甲第3号証に示すとおり、以下の構成を有する。 「液晶テレビにおいてユーザにより番組表を使用する方法であって、液晶テレビは地上波デジタル放送の放送局(設備)から放送される番組1つを受信する地上波デジタル・チューナーと、BS放送の放送局(設備)から放送される番組の1つを受信するBSデジタル・チューナーとを有し、 地上波デジタル・チューナー並びにBSデジタル・チューナーにより受信された情報から、地上波番組データ並びにBS放送番組データを抽出し、 地上波番組データは複数の地上波番組のうちの1つに対応し、BS放送番組データはBS放送の番組のうちの1つに対応しており、 地上波放送番組の番組表若しくはBS放送番組の番組表の何れか1つを選択して表示し、 番組表は、地上波番組表若しくはBS番組表のうちの少なく一部を表示するものであり、 番組表に含まれる複数の番組情報のうちユーザによる番組選択、及び選択番組に対して「見る」、「録画する」、「連ドラ予約」の何れかのモード選択に基づき、選択された番組情報が将来の番組であった場合「見る」、「録画する」、「連ドラ予約」の何れかの予約情報として選択された番組の情報を記録し、 選択された番組の情報から当該番組が現在放送中の番組であった場合、該当するチューナーに対して選択番組のチャンネルヘのチューニングを行わせて番組の視聴又は録画を実行する 方法。」 (2)イ号物品の説明 「イ号物品(東芝製液晶テレビZH7000)は、イ号図面並びにその説明書、甲第3号証に示すとおり、以下の構成を有する。 ユーザにより用いられる液晶テレビであって、地上波デジタル放送の放送局(設備)から放送される番組の1つを受信する地上波デジタル・チューナーと、BS放送の放送局(設備)から放送される番組の1つを受信するBSデジタル・チューナーとを有し、 地上波デジタル・チューナー並びにBSデジタル・チューナーにより受信された情報から、地上波番組データ並びにBS放送番組データを抽出する多重分離部を有し、 地上波番組データは複数の地上波番組のうちの1つに対応し、BS放送番組データはBS放送の番組のうちの1つに対応しており、 地上波放送番組の番組表若しくはBS放送番組の番組表の何れか1つを選択して表示するCPUと、 CPUは地上波番組表若しくはBS番組表のうちの少なく一部を表示する液晶表示装置と、 CPUは、番組表に含まれる複数の番組情報のうちユーザによる番組選択、及び選択番組に対して「見る」、「録画する」、「連ドラ予約」の何れかのモード選択に基づき、選択された番組情報が将来の番組であった場合「見る」、「録画する」、「連ドラ予約」の何れかの予約情報として選択された番組の情報をフラッシュメモリに記録し、 CPUは、選択された番組の情報から当該番組が現在放送中の番組であった場合、該当するチューナーに対して選択番組のチャンネルヘのチューニングを行わせて番組の視聴又は録画を実行する液晶テレビ。」 【第3-2】イ号構成(イ号方法、イ号物品) 判定請求書(全文補正書)に添付された「イ号図面および説明書」及び甲3号証(液晶テレビ ZH7000 取扱説明書(操作編 抜粋))は、イ号を示すものと認め、これらに基づき、かつ、請求人が説明する上記イ号物件を参考にしつつ、本件特許発明1,2の充足性が判断できるように、本件特許発明1,2と対比するイ号構成(イ号方法、イ号物品)を認定する。 「イ号図面および説明書」及び甲3号証は、液晶テレビ(東芝製液晶テレビ;ZH7000)について説明するもので、 そこに示される液晶テレビにおいて用いられる装置をイ号物品の構成として認定し、そこに示される液晶テレビにおいて用いられる方法をイ号方法の構成として認定する。 (1)イ号方法(イ号方法の構成) ア チューナによる番組受信 「液晶テレビは、地上波デジタル放送で放送される複数の番組(地上波番組)から1つを選択的に受信する地上波デジタル・チューナーと、BS放送で放送される複数の番組(BS番組)から1つを選択的に受信するBSデジタル・チューナーとを有し」ている。(→a、g) そのように認定できる根拠を以下に示す。 《イ号図面および説明書》 ・1頁;「東芝製液晶テレビ;ZH7000(イ号物品)は、地上波デジタル放送の放送局(設備)から放送される番組の1つを受信する地上波デジタル・チューナーと、BS放送の放送局(設備)から放送される番組の1つを受信するBSデジタル・チューナーと、・・・とを有する。」(1頁)、 ・4頁「番組を選択した後に、「見る」、「録画する」、「連ドラ予約」の何れかを選択する。当該番組の番組データに基づき、選択された番組が現在放送されている番組の場合、CPUは、選択された番組の情報から当該番組が現在放送中の番組であった場合、該当するチューナーに対して選択番組のチャンネルヘのチューニングを行わせて番組の視聴又は録画を実行する。」 ・4頁図中 「2 ▲・▼・“←▲”・“→▲”で現在放送中の番組を選ぶ」、 「3 “○決定”を押す」、 「4 ▲・▼・“←▲”・“→▲”で「見る」を選び、○決定を押す ●選んだ番組の放送画面になります。」等 〈当判定注〉 なお、当判定においては、「○」の中に文字「X」が入ったものを、“○X”などと表すこととする。上記“○決定”は、「○」の中に「決定」が入ったものを表す。また、“←▲”は左向きの黒三角、“→▲”は右向きの黒三角を表すこととする。以下、同様。 《甲3号証》 ・8頁「地上デジタル放送を見る」の説明、9頁の「BSデジタルや110度CSデジタル放送を見る」の説明 ・12頁「テレビを見る つづき」の「番組表で選んで見る」の説明 イ 番組情報の受信 液晶テレビは、 「地上波デジタル・チューナーにて、地上波デジタル放送で放送される地上波番組(各放送局の番組)を受信している間、地上波番組の番組情報(番組表のデータ)を取得して、地上波番組の番組表データとして記憶し、 BSデジタル・チューナーにて、BS放送を受信している間、BS番組の番組情報(番組表のデータ)を取得して、BS番組の番組表データとして記憶」する。(→b、h) そのように認定できる根拠を以下に示す。 《イ号図面および説明書》 ・2頁「番組表のデータ取得 番組表のデータは、放送電波で送られてくる。地上波デジタル放送の番組表のデータは地上波デジタル・チューナーにて各放送局の番組を受信している間、多重分離部で分離されてフラッシュメモリに記憶される。又、BSデジタル・チューナーにてBS放送を受信している間、BSの番組表のデータは多重分離部で分離されてフラッシュメモリに記憶される。・・・ 地上波デジタル・チューナーから取得された番組表のデータは地上波番組の番組表データ、BSデジタル・チューナーから取得された番組表のデータはBS番組の番組表データ、・・・としてフラッシュメモリに記憶される。(取扱説明書 操作編12頁)」、「●デジタル放送の番組表は、放送電波で送られてくる情報で表示されます。」 ・3頁「番組情報取得設定 ・取得する・・・電源が「切」・・・ ディジタル放送の番組情報を取得します。 ・取得しない・・番組情報を取得しません。そのため、番組表 の内容が表示されない場合があります。」 ウ 番組表表示 液晶テレビは、 「記憶した番組表データ(EPGデータ)に基づいて、最大8日間の番組情報のうち、リモコン操作で特定した日・時間帯の数チャンネル分の番組情報を、地デジ放送、BS放送の種類毎に、時間軸とチャンネル軸をもつ格子状番組表形式(「イ号図面および説明書」2頁の図)で表示し、 地上波番組の格子状番組表表示とBS放送番組の格子状番組表表示は、ユーザのボタン操作により切り替えて選択的に表示」する。(→cd、ij) そのように認定できる根拠を以下に示す。 《イ号図面および説明書》 ・2頁「フラッシュメモリに記憶しているEPGデータに基づいて、番組表を液晶表示装置に表示する機能を有する(取扱説明書 操作編12頁)」、 ・2頁の[番組表画面:7チャンネル表示の例]の図には、 番組表の一日の数チャンネル分の番組情報を、時間軸とチャンネル軸をもつ格子状の番組表形式で表示すること、 「≪≫“↑≪”“↓≪”頁切換 “□青”今の時間へ “□赤”日時切換・・・」のリモコン操作で表示ページ・時間帯等を変更できることが示されている。 〈当判定注〉 なお、当判定においては、「□」の中に文字「X」が入ったものを、“□X”などと表すこととする。上記“□青”は、「□」の中に「青」が入ったものを表す。また、“↑≪”は、上向きの「≪」、“↓≪”は下向きの「≪」を表すこととする。以下、同様。 ・4頁「番組の選択 番組表の表示は、地デジ、BS、CSの放送の種類毎に表示される。放送の種類を変える場合には、地デジ、BS、CSのボタンを操作して切り替える。(取扱説明書 操作編12頁)」 ・4頁図中 「1“□番組表”を押す ●番組表が表示されます。 ●放送の種類を変えるときは、“□BS-CS”、または“□地デジ-地アナ”を押します。」、 「2 ▲・▼・“←▲”・“→▲”で現在放送中の番組を選ぶ ●≪・≫・“↑≪”・“↓≪”で番組表のページを切り換えること ができます。」 《甲3号証》 ・12頁の「テレビを見る つづき」の「番組表で選んで見る」の説明、[番組表画面:7チャンネル表示の例]の図、(お知らせ)の「●番組表に表示できる番組情報は最大8日間です。」 エ 番組表からの番組選択・視聴 液晶テレビは、 「ユーザのボタン操作により選択的に表示された、地上波番組の番組表表示、又はBS放送番組の番組表表示をしているとき、 ユーザ操作でカーソルにより1つの番組が選択され“○決定”が押された場合であって、選択され“○決定”が押された当該番組が現在放送されている番組の場合には、「見る」、「録画する」、「連ドラ予約」の何れかを選択する「番組指定録画」画面(「イ号図面および説明書」4頁)を表示し、 このときユーザが「見る」を選び“○決定”が押されると、 選択された番組(現在放送中の番組)の番組情報から、該当するチューナー(地上波番組の番組表表示をしていたときは地上波デジタル・チューナー、BS放送番組の番組表表示をしていたときはBSデジタル・チューナー)に対して選択された番組のチャンネルヘのチューニングを行わせて選択された番組の放送画面を表示する」。(→ef、kl) そのように認定できる根拠を以下に示す。 《イ号図面および説明書》 ・2頁「表示された番組表のカーソルを移動させて番組を選択し、録画予約を実行することができる。以下の表示例は地上波番組の番組表を表示している場合である。」 ・4頁「番組の選択 番組表の表示は、地デジ、BS、CSの放送の種類毎に表示される。放送の種類を変える場合には、地デジ、BS、CSのボタンを操作して切り替える。(取扱説明書 操作編12頁)」、「番組を選択した後に、「見る」、「録画する」、「連ドラ予約」の何れかを選択する。当該番組の番組データに基づき、選択された番組が現在放送されている番組の場合、CPUは、選択された番組の情報から当該番組が現在放送中の番組であった場合、該当するチューナーに対して選択番組のチャンネルヘのチューニングを行わせて番組の視聴又は録画を実行する。」 ・4頁の図 「1“□番組表”を押す ●番組表が表示されます。 ●放送の種類を変えるときは、“□BS-CS”、または“□地デジ-地アナ”を押します。」、 「2 ▲・▼・“←▲”・“→▲”で現在放送中の番組を選ぶ ●≪・≫・“↑≪”・“↓≪”で番組表のページを切り換えること ができます。」、 「3 “○決定”を押す ●「番組指定録画」画面が表示されます。 ●これから放送される番組を選んだときは、「番組指定予約」 の画面になります。(32頁参照)」、 「4 ▲・▼・“←▲”・“→▲”で「見る」を選び、“○決定”を押す ●選んだ番組の放送画面になります。」等 オ まとめ 以上によれば、イ号方法の構成として、下記のものを認めることができる。本件特許発明1の分説(A?F)に対応させて、a、b、cd、efに分説した。 記(イ号方法の構成) a:液晶テレビにおいて用いられる方法であって、該液晶テレビは、地上波デジタル放送で放送される複数の番組(地上波番組)から1つを選択的に受信する地上波デジタル・チューナーと、BS放送で放送される複数の番組(BS番組)から1つを選択的に受信するBSデジタル・チューナーとを有し、 該方法は、 b:地上波デジタル・チューナーにて、地上波デジタル放送で放送される地上波番組(各放送局の番組)を受信している間、地上波番組の番組情報(番組表のデータ)を取得して、地上波番組の番組表データとして記憶し、 BSデジタル・チューナーにて、BS放送を受信している間、BS番組の番組情報(番組表のデータ)を取得して、BS番組の番組表データとして記憶し、 cd:記憶した番組表データ(EPGデータ)に基づいて、最大8日間の番組情報のうち、リモコン操作で特定した日・時間帯の数チャンネル分の番組情報を、地デジ放送、BS放送の種類毎に、時間軸とチャンネル軸をもつ格子状番組表形式(「イ号図面および説明書」2頁の図)で表示し、 地上波番組の格子状番組表表示とBS放送番組の格子状番組表表示は、ユーザのボタン操作により切り替えて選択的に表示し、 ef:ユーザのボタン操作により選択的に表示された、地上波番組の番組表表示、又はBS放送番組の番組表表示をしているとき、 ユーザ操作でカーソルにより1つの番組が選択され“○決定”が押された場合であって、選択され“○決定”が押された当該番組が現在放送されている番組の場合には、「見る」、「録画する」、「連ドラ予約」の何れかを選択する「番組指定録画」画面(「イ号図面および説明書」4頁)を表示し、 このときユーザが「見る」を選び“○決定”が押されると、 選択された番組(現在放送中の番組)の番組情報から、該当するチューナー(地上波番組の番組表表示をしていたときは地上波デジタル・チューナー、BS放送番組の番組表表示をしていたときはBSデジタル・チューナー)に対して選択された番組のチャンネルヘのチューニングを行わせて選択された番組の放送画面を表示する、方法。 (2)イ号物品の構成 上記(1)での検討結果を踏まえれば、イ号物品の構成として、下記のものを認めることができる。本件特許発明2の分説(G?L)に対応させて、g、h、ij、klに分説した。 記(イ号物品の構成) g:液晶テレビにおいて用いられる装置であって、該液晶テレビは、地上波デジタル放送で放送される複数の番組(地上波番組)から1つを選択的に受信する地上波デジタル・チューナーと、BS放送で放送される複数の番組(BS番組)から1つを選択的に受信するBSデジタル・チューナーとを有し、 該装置は、 h:地上波デジタル・チューナーにて、地上波デジタル放送で放送される地上波番組(各放送局の番組)を受信している間、地上波番組の番組情報(番組表のデータ)を取得して、地上波番組の番組表データとして記憶し、 BSデジタル・チューナーにて、BS放送を受信している間、BS番組の番組情報(番組表のデータ)を取得して、BS番組の番組表データとして記憶する、手段と、 ij:記憶した番組表データ(EPGデータ)に基づいて、最大8日間の番組情報のうち、リモコン操作で特定した日・時間帯の数チャンネル分の番組情報を、地デジ放送、BS放送の種類毎に、時間軸とチャンネル軸をもつ格子状番組表形式(「イ号図面および説明書」2頁の図)で表示し、 地上波番組の格子状番組表表示とBS放送番組の格子状番組表表示は、ユーザのボタン操作により切り替えて選択的に表示する、手段と、 kl:ユーザのボタン操作により選択的に表示された、地上波番組の番組表表示、又はBS放送番組の番組表表示しているとき、 ユーザ操作でカーソルにより1つの番組が選択され“○決定”が押された場合であって、選択され“○決定”が押された当該番組が現在放送されている番組の場合には、「見る」、「録画する」、「連ドラ予約」の何れかを選択する「番組指定録画」画面(「イ号図面および説明書」4頁)を表示し、 このときユーザが「見る」を選び“○決定”が押されると、 選択された番組(現在放送中の番組)の番組情報から、該当するチューナー(地上波番組の番組表表示をしていたときは地上波デジタル・チューナー、BS放送番組の番組表表示をしていたときはBSデジタル・チューナー)に対して選択された番組のチャンネルヘのチューニングを行わせて選択さ れた番組の放送画面を表示する、手段と を有する、装置。 【第4】当事者の主張 【第4-1】請求人の主張 (1)イ号方法は本件特許発明1の技術的範囲に属しない。 ア 構成要件Aについて イ号方法においても、地上波デジタル・チューナーとBSデジタル・チューナーとが利用されるが、受信して出力される番組は1つの番組であり、複数番組を同時に受信して出力するような機能は有していない(相違点1)。従って、イ号方法は構成要件Aを実施しないものである。 イ 構成要件C イ号方法においては、地上波放送番組の番組表若しくはBS放送番組の番組表の何れか1つを選択して表示するものであり、異なるソースからの番組情報を同時に提供するものでないから(相違点2)、構成要件Cを実施しない。 ウ 構成要件E イ号方法においてはユーザーが番組を選択しても何のアクションも行われない。即ち、ユーザによる番組選択に続いて、ユーザーは選択した番組に対して「見る」、「録画する」、「連ドラ予約」の何れかのモード選択を行う必要がある。 構成要件Eは、「・・・応答して、該ユーザ機器装置上に表示を出力するために・チューナが選択される、」というものであるため、ユーザ選択に応答して、選択された番組を表示するためにチューナ選択が行われる必要がある。イ号方法においては、番組を表示するため番組を表示するために該当するのは、「見る」というモードであるが、「見る」、「録画する」、「連ドラ予約」のいずれのモードとするかは、ユーザーが選択するものであって、ユーザの番組選択に応答して自動的に番組を表示するためのチューナ選択が行われるものでは無い(相違点3)。 従って、イ号方法においては「ユーザによって選択された1つの番組スケジュール情報を指定するユーザ選択を示す信号を受信したことに応答して、」を実施しないものである。 (2)イ号物品の製造販売行為に関し、本件発明1の間接侵害は成立しない。 (3)イ号物品は本件特許発明2の技術的範囲に属しない。 イ号物品は、構成要件G、I、Kに該当しない。 その理由として、上記(1)ア?ウと同様な主張をしている。 (4)イ号物品の製造販売行為に関し、本件発明2の間接侵害は成立しない。 (5)イ号方法、イ号物品は、本件発明1、本件発明2と均等なものではない。 本件発明特有の作用効果は、本件特許明細書によれば、「視聴者がテレビヘの入力ポートヘ結合されているアンテナソースの切り換え作業を要することなく、自動的にアンテナソースの切り換えを行って、所望の番組へ同調することができる」というものである。 このような作用効果を生じるためには、異なるソースからの番組情報を同時に提供することが必須であることが明らかである。 即ち、本件発明1の構成要件C「該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有するチャンネルガイドを提供することと、」、並びに、本件発明2の構成要件I「該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有するチャンネルガイドを提供する手段と、」という構成は、本件発明の特徴的部分、すなわち、本質的部分ということができる。 そして、イ号方法は本件発明1と少なくとも上記本質的部分において相違し、イ号物品は本件発明2と少なくとも上記本質的部分において相違する以上、イ号方法、イ号物品が本件発明1、本件発明2と均等なものであるということはできない。 【第4-2】被請求人の主張 (1)イ号方法は本件特許発明1の技術的範囲に属する。 ア 構成要件Aについて 請求人の主張は、構成要件Aが「複数の番組を同時に受信して出力することを必要とする」という誤った解釈に基づくものであるから失当である。構成要件Aの文言に「同時に」という文言が存在しないことから明らかなように、構成要件Aは、複数の番組を「同時」に取り扱うことを何ら必要としていない。むしろ、チューナーが時間帯T1において番組1を受信し、そのチューナーが時間帯T1とは異なる時間帯T2において番組2を受信することは普通であり、この意味で、イ号方法においても、各チューナーは、複数の番組(例えば、番組1および番組2)を受信するように構成されている。以上の理由から、イ号方法は、構成要件Aを充足するというべきである。 イ 構成要件B、D、Fについて 請求人は、イ号方法と、構成要件B、D、Fとの相違点については何も言及していない。従って、請求人は、イ号方法が、構成要件B、D、Fを充足することを自認しているというべきである。 ウ 構成要件Cについて 請求人の主張は、構成要件Cが「異なるソースからの複数の番組情報を同時に提供することを必要とする」という誤った解釈に基づくものであるから失当である。構成要件Cの文言に「同時に」という文言が存在しないことから明らかなように、構成要件Cは、複数の番組情報を「同時」に取り扱うことを何ら必要としていない。 むしろ、構成要件Cは、異なるタイミングで受信された第1の番組スケジュール情報および第2の番組スケジュール情報とを有するチャンネルガイドを提供する場合を含むというべきである。さらに、請求人は、「イ号方法においては、地上波放送番組の番組表若しくはBS放送番組の番組表の何れか1つを選択して表示するもの」であることをイ号方法が構成要件Cを充足しないことの根拠として挙げている。しかし、請求人によるこの説明もまったく論理的でない。なぜなら、番組表をどのように表示するかということは、構成要件Cよりもむしろ構成要件Dに関係することであるからである。このことは、構成要件Cが、チャンネルガイドを提供することに関する要件であり、構成要件Dが、チャンネルガイドに含まれる複数の番組スケジュール情報を表示することに関する要件であることから、明らかである。それ故、請求人による「イ号方法は、構成要件Cを実施しない」という主張は失当である。むしろ、イ号方法は、「地上波放送番組の番組表」および「BS放送番組の番組表」の両方を提供することが明らかであるから、イ号方法は、「該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有するチャンネルガイドを提供すること」を必要とする構成要件Cを充足するというべきである。以上の理由から、イ号方法は、構成要件Cを充足するというべきである。 (2)イ号物品は本件特許発明2の技術的範囲に属する。 その理由は、上記(1)ア?ウと同様であるとしている。 なお、被請求人は、文言充足を主張するだけで、均等に基づく充足性については何ら主張していない。 【第5】対比、判断 【第5-1】本件特許発明1とイ号方法の構成(以下「イ号方法」という)との対比、判断 イ号方法が、本件特許発明1の各構成要件A?Fを充足するかについて、各構成要件とイ号方法とを対比して判断する。 (1)構成要件Aの充足性について A「ユーザ機器装置において用いられる方法であって、該ユーザ機器装置は、第1の伝送方式を用いて、第1の伝送源としての第1のソース装置から伝送される複数の第1のテレビジョン番組を受信する第1のチューナと、該第1の伝送方式とは異なる第2の伝送方式を用いて、第2の伝送源としての第2のソース装置から伝送される複数の第2のテレビジョン番組を受信する第2のチューナとを有し、 該方法は、」 ア 構成要件Aの「複数の・・・受信する」について、 構成要件Aの「複数の・・・受信する」の解釈について検討するに、 「第1のチューナ」は、「第1の伝送源としての第1のソース装置から伝送される複数の第1のテレビジョン番組を受信する」としているが、「複数の第1のテレビジョン番組を同時に受信する」の意味ではなく、「複数の第1のテレビジョン番組から1つを選択的に受信する」の意味であることは、 構成要件E及びF、本件特許明細書の全趣旨、技術常識のいずれからみても明白である。 イ イ号a「液晶テレビにおいて用いられる方法であって、該液晶テレビは、地上波デジタル放送で放送される複数の番組(地上波番組)から1つを選択的に受信する地上波デジタル・チューナーと、BS放送で放送される複数の番組(BS番組)から1つ選択的に受信するBSデジタル・チューナーとを有し、 該方法は、」についてみるに、 地上波番組を放送する地上波デジタル放送とBS番組を放送するBS放送とが、(異なるアンテナ等)異なる伝送源としてのソース装置から、異なる伝送方式を用いて伝送される2つの放送といえる。 したがって、イ号aの「地上波デジタル・チューナー」、「BSデジタル・チューナー」は、構成要件Aでいう「第1のチューナー」「第2のチューナー」を充足する。 ウ 以上によれば、イ号方法は、構成要件Aを充足する。 (2)構成要件Bの充足性について B「該第1のソース装置から該第1の伝送方式を用いて伝送される第1の番組スケジュール情報と、該第2のソース装置から該第2の伝送方式を用いて伝送される第2の番組スケジュール情報とを受信することであって、該第1の番組スケジュール情報は、該複数の第1のテレビジョン番組のうちの1つに対応し、該第2の番組スケジュール情報は、該複数の第2のテレビジョン番組のうちの1つに対応する、ことと、」 イ号b「地上波デジタル・チューナーにて、地上波デジタル放送で放送される地上波番組(各放送局の番組)を受信している間、地上波番組の番組情報(番組表のデータ)を取得して、地上波番組の番組表データとして記憶し、 BSデジタル・チューナーにて、BS放送を受信している間、BS番組の番組情報(番組表のデータ)を取得して、BS番組の番組表データとして記憶し、」についてみるに、 「地上波デジタル・チューナーにて、地上波デジタル放送で放送される地上波番組(各放送局の番組)を受信している間、地上波番組の番組情報(番組表のデータ)を取得して、地上波番組の番組表データとして記憶」し、「BSデジタル・チューナーにて、BS放送を受信している間、BS番組の番組情報(番組表のデータ)を取得して、BS番組の番組表データとして記憶」するところ、 上記「地上波番組の番組情報(番組表のデータ)」は、本件特許発明でいう「番組のスケジュール情報」に該当するといえ、 {なぜなら、「地上波番組の番組情報(番組表のデータ)」に基づいて時間軸とチャンネル軸をもつ格子状番組表形式(「イ号図面および説明書」2頁の図)で各番組(タイトル等)を表示する以上、これらの番組情報が放送されるチャンネルや時間等の「番組のスケジュール情報」を含んでいることは明らかであるからである。} したがって、構成要件Bの「該第1のソース装置から該第1の伝送方式を用いて伝送される第1の番組スケジュール情報」といえ、 また、aの「地上波デジタル放送で放送される複数の番組(地上波番組)」のうちの1つに対応することも明らかである。 同様に、上記「BS番組の番組情報(番組表のデータ)」も、 構成要件Bの「該第2のソース装置から該第2の伝送方式を用いて伝送される第2の番組スケジュール情報」といえ、 かつ、aの「BS放送で放送される複数の番組(BS番組)」のうちの1つに対応する、といい得る。 したがって、イ号方法は、構成要件Bを充足する。 (3)構成要件Cの充足性について C「該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有するチャンネルガイドを提供することと、」 〈構成要件Cの解釈について〉 ア 「チャンネルガイド」について、 ア1 構成要件Cの「チャンネルガイド」について検討するに、 本件特許明細書の段落【0028】に「図2は、テレビジョン・ガイド情報から組み立てられた格子状のスケジュール・ガイドの画面表示の例である。本発明の格子状ガイドはまた、テーマ・ガイド、チャンネル・ガイド及び番組情報を表示するその他のガイドを含んでる。・・・(中略)・・・テーマ毎、チャンネル毎、又はランダムのリストを、図2に示した格子状ガイドに代えて使用することも可能である。」とあること、 また、構成要件Dで「該チャンネルガイドに含まれる複数の番組スケジュール情報」とすること、 「チャンネルガイド」と称することから、 構成要件Cの「チャンネルガイド」とは、 図2の格子状のスケジュール・ガイドに限らないが、これに含まれるもので、“各チャンネルに対応してそのチャンネルで放送される番組のスケジュール情報を少なくとも1つ配した番組ガイド”と理解される。 ア2 そして、構成要件Cで「該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有するチャンネルガイド」とするところ、 構成要件A・B・E・Fからみて、該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とは(ソース、受信するチューナーが異なり)異なるチャンネルの番組スケジュール情報であることは明らかであるから、 複数のチャンネルについてのガイドと理解される。 そうすると、構成要件Cの「チャンネルガイド」とは、 『複数のチャンネルについて、各チャンネルに対応してそのチャンネルで放送される番組のスケジュール情報を少なくとも1つ配した番組ガイド』と解される。 ア3 「該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有する」について 構成要件Cの「該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有する」については、その文言通りに解される。 したがって、ア1,ア2を踏まえれば、 構成要件Cの「該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有するチャンネルガイドチャンネルガイド」とは、 『複数のチャンネルについて、各チャンネルに対応してそのチャンネルで放送される番組のスケジュール情報を少なくとも1つ配した番組ガイドであって、該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有するガイド』と解される。 さらに、「とを有する」の意義について、詳しく検討するに、 構成要件Eにおいて「該チャンネルガイドに含まれる該複数の番組スケジュール情報のうちユーザによって選択された1つの番組スケジュール情報を指定するユーザ選択を示す信号を受信したことに応答して、該ユーザ機器装置上に表示を出力するために、該第1のチューナおよび該第2のチューナのうちの1つを選択することであって、該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第1の番組スケジュール情報である場合には、該第1のチューナが選択され、該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第2の番組スケジュール情報である場合には、該第2のチューナが選択される、ことと、」としていることから、 「該チャンネルガイドに含まれる該複数の番組スケジュール情報のうちユーザによって選択され」「該ユーザ選択によって指定される」「1つの番組スケジュール情報」は、 「該第1の番組スケジュール情報である場合」も「該第2の番組スケジュール情報である場合」も等しくあり得なければならず {そうでなければ、前記(【第2】3)した本件特許発明の課題を解決できず、作用効果(利用者は、テレビ番組ソースを手動で選択することも、手動で所望のチャンネルまたは番組への同調を行うことを不要にし)も奏し得なくなる}、 したがって、「チャンネルガイド」は、「該第1の番組スケジュール情報」も「該第2の番組スケジュール情報」も、ユーザーによって等しく選択可能なように含まれている、そのような「チャンネルガイド」である必要がある。 つまり、「チャンネルガイド」は、「該第1の番組スケジュール情報」も「該第2の番組スケジュール情報」も、ユーザーによって等しく選択可能なように含んでいる「チャンネルガイド」でなければならない。 ア4 まとめ(「チャンネルガイド」) 以上によれば、 構成要件Cの「該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有するチャンネルガイド」とは、 『複数のチャンネルについて、各チャンネルに対応してそのチャンネルで放送される番組のスケジュール情報を少なくとも1つ配した番組ガイドであって、 該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有し、そのいずれの情報もユーザーによって等しく選択可能なように含んでいるチャンネルガイド』と解される。 イ 構成要件Cの「チャンネルガイドを提供する」について 「チャンネルガイドを提供する」ためには、チャンネルガイドを用意しておかねばならないことは明らかである。 また、「提供する」とは、 ・構成要件Fでいう「提供」が「表示による提供」と理解されること(構成要件Eに「該ユーザ機器装置上に表示を出力するために」とあることから、構成要件Fでいう「テレビジョン番組を提供」とは、「表示によるテレビジョン番組の提供」と理解される。)、 ・本件特許明細書の上記段落【0008】の記載「チャンネル・ガイド情報は、多数のテレビジョン信号ソースから受信される。このチャンネル・ガイド情報を受信した後で、システムが該情報を混合分類して所望の順序に並べる。最後に、このチャンネル・ガイド情報の表示が生成されて、所望の順序でテレビジョンに表示される。」、 ・本件特許明細書の上記段落【0028】の記載「図2は、テレビジョン・ガイド情報から組み立てられた格子状のスケジュール・ガイドの画面表示の例である。」、 ・「画面表示」以外に、他の提供手法が何ら示されていないし想定もし得ないこと、 からすれば、上記「提供する」とは、「画面表示により提供する」ことと普通に理解される。 ウ まとめ(構成要件C) 以上によれば、構成要件Cは、 「『複数のチャンネルについて、各チャンネルに対応してそのチャンネルで放送される番組のスケジュール情報を少なくとも1つ配した番組ガイドであって、 該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有し、そのいずれの情報もユーザーによって等しく選択可能なように含んでいるチャンネルガイド』を用意し画面表示により提供することと、」 を意味するものと解される。 〈構成要件Cの充足性について〉 エ イ号cd「記憶した番組表データ(EPGデータ)に基づいて、最大8日間の番組情報のうち、リモコン操作で特定した日・時間帯の数チャンネル分の番組情報を、地デジ放送、BS放送の種類毎に、時間軸とチャンネル軸をもつ格子状番組表形式(「イ号図面および説明書」2頁の図)で表示し、 地上波番組の格子状番組表表示とBS放送番組の格子状番組表表示は、ユーザのボタン操作により切り替えて選択的に表示し、」についてみるに、 上記「地上波番組の格子状番組表表示」と「BS放送番組の格子状番組表表示」の、それぞれは、 上記構成要件Cの前段部分「複数のチャンネルについて、チャンネル毎にそのチャンネルで放送される番組のスケジュール情報を並べた番組ガイドであって」を充足するといえる。 しかしながら、上記「地上波番組の格子状番組表表示」は、地上波番組の番組情報(番組のスケジュール情報)のみを有し、BS放送番の番組情報(番組のスケジュール情報)を有しないものであり、 また、上記「BS放送番組の格子状番組表表示」は、BS放送番組の番組情報(番組のスケジュール情報)のみを有し、地上波番組の番組情報(番組のスケジュール情報)を有しないものである。 すなわち、いずれも、「該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有するガイド」ではない。 そして、「地上波番組の格子状番組表表示」と「BS放送番組の格子状番組表表示」とは、ユーザのボタン操作により切り替えて選択的に表示するものであり、 「地上波番組の格子状番組表表示」をしているときには、BS放送番組の番組情報(番組のスケジュール情報)は表示されず、選択不可能であり、 「BS放送番組の格子状番組表表示」をしているときには、地上波番組の番組情報(番組のスケジュール情報)は表示されず、選択不可能なものである。 すなわち、いずれも、「該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報のいずれの情報もユーザーによって等しく選択可能なように含んでいるチャンネルガイド」ではない。 そして、イ号方法では、 地上波番組の番組情報(番組のスケジュール情報)とBS放送番組の番組情報(番組のスケジュール情報)とを有するガイドについては、これを用意することもしないし、画面表示により提供することもしない。 以上によれば、イ号方法は、構成要件Cを充足しない。 なお、構成要件D,Eについては(4)以降において詳細に検討するが、ここでも触れておく。 構成要件D、Eは、少なくとも、「該チャンネルガイド」、すなわち、構成要件Cの「チャンネルガイド」を含んでいて、共に構成要件Cを前提とする構成要件であるから、 構成要件Cの「チャンネルガイド」を充足しないイ号方法は、当然に、構構成要件Dも構成要件Eも充足しない、と言うことができる。 (4)構成要件Dの充足性について D「該チャンネルガイドに含まれる複数の番組スケジュール情報のうちの少なくともいくつかを表示することと、」 〈構成要件Dの解釈について〉 構成要件Dは、その文言通り、「該チャンネルガイドに含まれる複数の番組スケジュール情報のうちの少なくともいくつかを表示することと、」と理解されるところ、 この構成要件Dを踏まえて構成要件Cをみれば、構成要件Cにおいて「ガイド」については「表示する」とはせず「提供する」とするのは、 ガイド全体を一度に表示する、すなわち、チャンネルガイドに含まれるすべてのチャンネルと、すべてのチャンネルで放送されるすべての番組のスケジュール情報番組を一度に表示するものではなく、 一度に表示するのはチャンネルガイドの一部であるためと合理的に理解される。 〈構成要件Dの充足性について〉 イ号cdの「地上波番組の格子状番組表表示」、「BS放送番組の格子状番組表表示」も、共に、「チャンネルガイドに含まれる複数の番組スケジュール情報のうちの少なくともいくつかを表示する」ものではあるから、構成要件Dの「該」を除いた部分を充足する。 しかしながら、構成要件Dは「該チャンネルガイドに含まれる・・・」とするものであって、構成要件Cの「該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有するチャンネルガイド」を前提とする構成要件であり、 イ号方法が、かかる構成要件Cの「該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有するチャンネルガイド」を充足しないことは前記のとおりである以上、イ号方法は、構成要件Dも充足しない。 (5)構成要件Eの充足性について E「該チャンネルガイドに含まれる該複数の番組スケジュール情報のうちユーザによって選択された1つの番組スケジュール情報を指定するユーザ選択を示す信号を受信したことに応答して、該ユーザ機器装置上に表示を出力するために、該第1のチューナおよび該第2のチューナのうちの1つを選択することであって、該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第1の番組スケジュール情報である場合には、該第1のチューナが選択され、該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第2の番組スケジュール情報である場合には、該第2のチューナが選択される、ことと、」 (5.1)その1 前記のとおり、イ号方法が、構成要件Cの「チャンネルガイド」を充足しないことから、構成要件Eも充足しない。 構成要件Eは「該チャンネルガイドに含まれる・・・」とするものであって、構成要件Cの「該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有するチャンネルガイド」を前提とする構成要件であり、 イ号方法が、かかる構成要件Cの「該第1の番組スケジュール情報と該第2の番組スケジュール情報とを有するチャンネルガイド」を充足しないことは前記のとおりである以上、イ号方法は、構成要件Eも充足しない。 、 (5.2)その2 ア 構成要件Eについて -特に「ユーザ選択を示す信号」について 構成要件Eの骨子は、特定の信号(以下信号Sという)「を受信したことに応答して」、特定の場合(以下、場合T1という)には「該第1のチューナが選択され」、他の特定の場合(以下、場合T2という)には「該第2のチューナが選択される」ことであり、 特定の信号Sを受信したことに応答して、特定の場合T1と他の特定の場合T2とで、「該第1のチューナが選択され」るか、若しくは、「該第2のチューナが選択される」かの2つの異なる事象を生じるものであることから、 特定の信号Sは、特定の場合T1に対応する信号S1と、他の特定の場合T2に対応する信号S2の、異なる2種類の信号S1とS2とが等しくあり得る信号であることが担保されていなければならない。 ここに、 特定の信号Sとは、 少なくとも「ユーザによって選択された1つの番組スケジュール情報を指定するユーザ選択を示す信号」であり、 特定の場合T1とは、 「該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第1の番組スケジュール情報である場合」であり、 他の特定の場合T2とは、 「該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第2の番組スケジュール情報である場合」である。 したがって、構成要件Eでいう「ユーザによって選択された1つの番組スケジュール情報を指定するユーザ選択を示す信号」(S)とは、 「該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第1の番組スケジュール情報である場合」に対応する信号(S1)と、 該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第2の番組スケジュール情報である場合」に対応する信号(S2)の、 異なる2種類の信号(S1とS2)が等しくあり得る信号」、 と解釈される。 そして、このような解釈は、前記(【第2-3】)した本件特許発明の目的・作用効果にも符合する解釈であり、「ユーザによって選択された1つの番組スケジュール情報を指定するユーザ選択を示す信号」が上記に解釈される信号でなければ、「利用者は、テレビ番組ソースを手動で選択することも、手動で所望のチャンネルまたは番組への同調を行うことを不要にし」という本件特許発明の作用効果を奏し得ないのである。 以上によれば、構成要件Eは、 「ユーザによって選択された1つの番組スケジュール情報を指定するユーザ選択を示す信号」が、 「該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第1の番組スケジュール情報である場合」に対応する信号(S1)と、 該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第2の番組スケジュール情報である場合」に対応する信号(S2)の、 異なる2種類の信号(S1とS2)が等しくあり得る信号」 であることを要求するものと言うことができる。 イ 構成要件Eの充足性について イ号ef「ユーザのボタン操作により選択的に表示された、地上波番組の番組表表示、又はBS放送番組の番組表表示をしているとき、 ユーザ操作でカーソルにより1つの番組が選択され“○決定”が押された場合であって、選択され“○決定”が押された当該番組が現在放送されている番組の場合には、「見る」、「録画する」、「連ドラ予約」の何れかを選択する「番組指定録画」画面(「イ号図面および説明書」4頁)を表示し、 このときユーザが「見る」を選び“○決定”が押されると、 選択された番組(現在放送中の番組)の番組情報から、該当するチューナー(地上波番組の番組表表示をしていたときは地上波デジタル・チューナー、BS放送番組の番組表表示をしていたときはBSデジタル・チューナー)に対して選択された番組のチャンネルヘのチューニングを行わせて選択された番組の放送画面を表示する、方法。」が構成要件Eを充足するかについて、上記アの観点から検討する。 イ号方法で「ユーザのボタン操作により選択的に表示された、地上波番組の番組表表示、又はBS放送番組の番組表表示をしているとき、 ユーザ操作でカーソルにより1つの番組が選択され“○決定”が押された場合」に発せられる信号(そのような信号が発生することは明らかである。以下、信号sという)についてみるに、同信号sは、 「地上波番組の番組表表示」をしているときは、必ず、地上波番組の番組情報(番組スケジュール)である場合に対応する信号s1であり、 「BS放送番組の番組表表示」をしているときは、必ず、BS放送番組の番組情報(番組スケジュール)である場合に対応する信号s2であって、 「該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第1の番組スケジュール情報である場合の信号S1である場合も、 該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第2の番組スケジュール情報である場合の信号S2である場合も、等しくあり得る信号」ではなく、構成要件Eが要求する上記事項を満たす信号ではない。 次に、「・・・選択され“○決定”が押された当該番組が現在放送されている番組の場合には、「見る」、「録画する」、「連ドラ予約」の何れかを選択する「番組指定録画」画面(「イ号図面および説明書」4頁)を表示し、 このときユーザが「見る」を選び“○決定”が押される」ときに、発せられる信号(そのような信号が発生することは明らかである。以下、信号uという)についてみるに、同信号uは、 同信号uが発せられる直前の画面{すなわち、「番組指定録画」画面を(「見る」、「録画する」、「連ドラ予約」の何れかを選択する「番組指定録画」画面}が表出される前の、 「ユーザのボタン操作により選択的に表示された、地上波番組の番組表表示、又はBS放送番組の番組表表示をしているとき、 ユーザ操作でカーソルにより1つの番組が選択され“○決定”が押された場合」に発せられる上記信号sに依存して、 信号sが ・「地上波番組の番組表表示」をしているときの信号であった場合は、必ず、地上波番組の番組情報(番組スケジュール)である場合に対応する信号s1に応じた信号(s1と「見る」を示す信号)となり、 ・「BS放送番組の番組表表示」をしているときの信号であった場合は、必ず、BS放送番組の番組情報(番組スケジュール)である場合に対応する信号s2に応じた信号(s2と「見る」を示す信号)となるものであって、 「該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第1の番組スケジュール情報である場合の信号S1である場合も、 該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第2の番組スケジュール情報である場合の信号S2である場合も、等しくあり得る信号」とはならない。 すなわち、イ号方法の上記信号uも、構成要件Eが要求する上記事項を満たす信号ではない。 イ号方法において、他に、構成要件Eが要求する上記事項を満たす信号はない。 以上によれば、イ号方法は、そもそも、構成要件E全体から把握されるところの「ユーザによって選択された1つの番組スケジュール情報を指定するユーザ選択を示す信号」を用いないものであって、 構成要件Eを充足しないものである。 (5.3)その3 また、イ号方法では、構成要件Eの「ユーザによって選択された1つの番組スケジュール情報を指定するユーザ選択」もなされないものであり、この点からみても、イ号方法は、構成要件Eを充足しないものである。 なぜなら、構成要件Eの「ユーザによって選択された1つの番組スケジュール情報を指定するユーザ選択」は、(5.2)で上述した「ユーザによって選択された1つの番組スケジュール情報を指定するユーザ選択を示す信号」を発生させる選択でなければならないところ、 イ号方法が、そのような信号を発生しないことは前記のとおりであることから、構成要件E全体から把握されるところの「ユーザによって選択された1つの番組スケジュール情報を指定するユーザ選択」もなされないものである。 (5.4)まとめ(構成要件Eについて) 上記(5.1)?(5.3)の何れの点からみても、イ号方法は、構成要件Eを充足しない。 (6)構成要件Fの充足性について F「該選択されたチューナによって受信され、該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報に対応するテレビジョン番組を提供することと を包含する、方法。」 イ号efの「選択された番組(現在放送中の番組)の番組情報から、該当するチューナー(地上波番組の番組表表示をしていたときは地上波デジタル・チューナー、BS放送番組の番組表表示をしていたときはBSデジタル・チューナー)に対して選択された番組のチャンネルヘのチューニングを行わせて選択された番組の放送画面を表示する、方法。」は、 「チューナによって受信され、」「ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報に対応するテレビジョン番組を提供する」方法、と言うことはできる。 しかしながら、構成要件Fは、「該選択されたチューナによって・・・」、「該ユーザ選択によって・・・」としていて、共に「該ユーザ選択」を前提とするものであるところ、 {「該選択されたチューナ」とは、構成要件Eで「該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第1の番組スケジュール情報である場合には、該第1のチューナが選択され、該ユーザ選択によって指定された番組スケジュール情報が該第2の番組スケジュール情報である場合には、該第2のチューナが選択される」とする「チューナ」を意味するものであるから、 「該選択されたチューナ」も、「該ユーザ選択」を前提とするものである。} 「該ユーザ選択」とは、 同じく構成要件Eの「該チャンネルガイドに含まれる該複数の番組スケジュール情報のうちユーザによって選択された1つの番組スケジュール情報を指定するユーザ選択」を意味することであり、 イ号方法では、そのような「ユーザ選択」がなされないことは前記(5.3)のとおりであるし、 イ号方法が「該チャンネルガイド」を充足しないことも前記(3)のとおりであるから、 イ号方法は、構成要件Fを充足しないものである。 (7)まとめ 以上のとおり、イ号方法の構成は、本件特許発明1の構成要件C、D、E,Fを充足しないので、イ号方法は、文言上、本件特許発明1の技術的範囲に属しない。 (8)均等の主張について 請求人は、イ号方法は、本件特許発明1の構成を文言充足しないだけでなく、本件特許発明1と均等なものでもない旨主張しているので、これについても検討しておく。 ア 判示事項 最高裁判決平成6年(オ)第1083号(平成10年2月24日判決言渡)では、次のように判示している。 特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、 (i)異なる部分が、特許発明の本質的な部分でなく、 (ii)異なる部分を対象製品の対応部分と置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、 (iii)対象製品等の製造時に、異なる部分を置換することを、当業者が容易に想到することができたものであり、 (iv)対象製品等が、出願時に於ける公知技術と同一又は当業者が容易に推考することができたものではなく、かつ、 (v)対象製品等が特許発明の出願手続に於いて、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情がない ときは、対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属すると解するのが相当である。 イ 請求人、被請求人の立証責任 上記均等の各要件(i)?(v)のうち、(i)?(iii)は、特許請求の範囲に記載囲に記載された発明と実質的に同一であるというための要件であるのに対し、(iv)及び(v)これを否定するための要件であるから、 これらの要件を基礎付ける事実の証明責任という意味においては、 (i)?(iii)については、均等であるから技術範囲に属すると主張する者、すなわち、本件においては被請求人が担うのが相当と言うべきであり、 これに対抗して、(iv)(v)については(同一又は当業者容易推考であるから(iv)を満たさない、意識的に除外したものであるから(v)を満たさない、との主張については)、均等ではないと主張する者、すなわち、本件においては請求人が担うのが相当と言うべきであるところ、 被請求人は、均等であるとの主張を全くしておらず、上記(i)?(iii)の主張もしていない。 請求人は、(i)を満たさないから均等ではない、との主張をしている。 ウ 判断(均等か否か) 〈異なる部分〉 本件特許発明1の構成中、イ号方法と異なる部分は、上記(1)?(7)で論じたように、構成要件C・D・E・Fである。 〈本質的な部分か否か〉 要件(i)について 構成要件C・D・E・Fは本件特許発明1の本質的な部分であるから、要件(i)を満たさない。 《理由》 特許発明の本質的部分とは、特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうちで、当該特許発明特有の作用効果を生じるための部分、 すなわち、公知・周知技術との関係で、公知・周知技術では達成し得なかった目的・作用効果を達成させる技術的思想の中核をなす特徴部分といえるところ、 構成要件C・D・E・Fは、本件明細書の記載(特に、段落【0001】?【0006】、段落【0042】)によれば、従来公知の、IRDボックス、多数のテレビジョン入力ポート、手動切換え装置等では、自動的切換えができないという課題を解決するための特徴部分といえる。 そして、構成要件C・D・E・Fが示す技術思想中、公知・周知の技術思想部分があると認めるに足りる証拠はない以上、 構成要件C・D・E・Fが、本件特許発明1の本質的な部分ではないということはできない。 〈置換可能性があるか〉 要件(ii)について 異なる部分である、構成要件CDEFを、イ号方法(cdef)に置換すると、 例えば、地上波番組の格子状番組表表示をしているときに、BS放送番組を視聴しようとするとき、ユーザは、以下のステップ1?ステップ3を踏むことになる。 ・ステップ1:まず、ボタン操作により、地上波番組の格子状番組表表示からBS放送番組の格子状番組表表示に切り換える。 ・ステップ2:BS放送番組の格子状番組表表示上で、カーソルにより1つの番組を選択して“○決定”を押す。 ・ステップ3:「見る」、「録画する」、「連ドラ予約」から「見る」を選択して“○決定”を押す。 ユーザが行う上記ステップ1は、実質上、手動でテレビ番組ソースを切換える操作に相当する操作といえ、手動でテレビ番組ソースを切換える操作を排除して自動切換できるという本件特許発明1の目的を達成できなくなり、自動切換できるという作用効果を奏することができなくなることは明らかである。 すなわち、異なる部分を対象製品の対応部分と置き換えると、特許発明の目的を達することも、同一の作用効果を奏することもできなくなる。 したがって、上記要件(ii)を満たさない。 以上によれば、上記他の要件について検討するまでもなく、イ号方法は、本件特許発明1と均等なものとはいえない。 【第5-2】本件特許発明2とイ号物品の構成(以下「イ号物品」という)との対比、判断 (1)本件特許発明1と本件特許発明2とは、前者が「ユーザ機器装置において用いられる方法」、後者が「ユーザ機器装置において用いられるシステム」である違いはあるものの、技術思想は同じで、かつ、前者の構成要件A,B,C,D,E,Fと、後者の構成要件G,H,I,J,Kとは、それぞれ、「・・すること」と「・・・する手段」との表現上の違いがあるだけで実質上同一である。 また、イ号方法とイ号物品も、本件特許発明1と本件特許発明2との関係と同じ関係にあり、 前者が「液晶テレビにおいて用いられる方法」、後者が「液晶テレビにおいて用いられる装置」である違いがあるだけであり、かつ、前者のa,b,c,d,e,fと、後者のg,h,i,j,kとは、それぞれ、「・・・し、」と「・・・する手段」との違いがあるだけであるから、 本件特許発明2とイ号物品との対比、判断については、上記「【第5-1】本件特許発明1とイ号方法との対比、判断」の(1)?(7)で示したと同じ理由により、上記【第5-1】でしたと同様に判断することができ、 したがって、イ号物品は、構成要件G、Hを充足するものの、構成要件I?Lの何れも充足しない。 (2)均等の主張について 均等についても、上記「【第5-1】本件特許発明1とイ号方法との対比、判断」(8)で示したと同じ理由により、上記【第5-1】でしたと同様に判断することができるから、 イ号物品は、本件特許発明2と均等なものとはいえない。 【第5-3】まとめ 上記【第5-1】のとおり、イ号方法の構成は、文言上、本件特許発明1(請求項1に係る発明)の構成を充足しない。 また、本件特許発明1の構成と均等なものともいえない。 上記【第5-2】のとおり、イ号物品の構成は、文言上、本件特許発明2(請求項12に係る発明)の構成を充足しない。 また、本件特許発明2の構成と均等なものともいえない。 そして、本件特許の請求項2?11に係る各発明は、イ号方法が充足しない本件特許発明1の構成要件C?Fを含むものであるから、イ号方法が、請求項2?11に係る各発明の構成要件を充足しないことは明らかである。 また、本件特許の請求項13?22に係る各発明は、イ号物品が充足しない本件特許発明2の構成要件I?Lを含むものであるから、イ号物品が、請求項2?11に係る各発明の構成要件を充足しないことは明らかである。 よって、イ号物件(イ号方法、イ号物品)は、本件特許の請求項1?22に係る発明のいずれの技術的範囲にも属しない。 〈付記〉 なお、請求人は間接侵害についても主張しているが、判定は、技術的範囲についての属否を判断するものであり、間接侵害か否かを判断するものではないから、上記請求人の主張については判断しない。 【第6】むすび 以上のとおり、イ号物件は、本件特許の請求項1?22に係る発明のいずれの技術的範囲にも属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2010-11-08 |
出願番号 | 特願2006-211507(P2006-211507) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZA
(H04N)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 川崎 優 |
特許庁審判長 |
乾 雅浩 |
特許庁審判官 |
渡邊 聡 梅本 達雄 |
登録日 | 2009-08-21 |
登録番号 | 特許第4362130号(P4362130) |
発明の名称 | テレビジョン・システムにおけるマルチ・ソース情報の組合せ |
代理人 | 山本 秀策 |
復代理人 | 大塩 竹志 |
代理人 | 村井 賢郎 |
代理人 | 安村 高明 |
代理人 | 堀口 浩 |
代理人 | 玉城 健 |
代理人 | 森下 夏樹 |