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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1229118
審判番号 不服2006-11082  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-27 
確定日 2010-12-27 
事件の表示 平成 8年特許願第278573号「電子データ置換法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月24日出願公開、特開平10-107788〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・概要


1.手続の経緯
本願は、
平成8年10月1日の出願であって、
平成15年9月30日付け(同年10月1日受付)で審査請求がなされ、
平成17年11月11日付け(同年11月22日発送)で拒絶理由通知がなされ、
平成18年1月23日付け(同年1月24日受付)で意見書が提出され、
同年3月16日付け(同年3月28日発送)で拒絶査定がなされ、
同年4月28日付け(同年4月27日差出)で審判請求がなされ、
平成21年5月18日付け(同年5月26日発送)で拒絶理由通知がなされ、
同年7月27日付け(同年7月29日受付)で意見書が提出されたものである。
なお、平成21年10月6日の面接において、請求人より当審合議体に対しての技術説明並びに補正案の説明がなされた。


2.拒絶理由通知の概要・請求人の主張

(1)当審拒絶理由通知
当審における上記21年5月18日付け(同年5月26日発送)拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」と記す。)の内容は以下の通りである。
「この審判事件に関する出願は、合議の結果、以下の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください 。

理 由

1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明ですから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができません。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請 求 項 1?5、8、25
・引用文献等 1
・備 考
上記各請求項に係る発明の新規性欠如の理由の詳細は、下記理由2.の備考で、進歩性欠如の理由の説明と合わせて説明します。

・請 求 項 1?4、8、14、15、18
・引用文献等 2
・備 考
上記各請求項に係る発明の新規性欠如の理由の詳細も、下記理由2.の備考で、進歩性欠如の理由の説明と合わせて説明します。


2.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものですから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができません。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請 求 項 1?25
・引用文献等 1?19
・備 考
[請求項1について]
引用文献1では、第13頁下から第1行目から第16頁第17行に、「画像深層暗号」の「先駆的研究」として以下の記載があります。
「さらに,1986年になると鈴木らは,暗号と情報セキュリティシンポジュウムに発表した論文の冒頭で,この特殊な暗号系をつぎのように説明している.「盗聴者が通信系に割り込んで入手した通信文が意味不明な記号列ならば,暗号文であることに気付き解読しようとするだろう.ところが通信文が意味のある記号列ならば,それが通信内容そのものであると確信するに違いない.そこで,表面上は意味のある記号列の体裁をなすが,実はその陰にもっと重要な情報を隠しもつ,といった形態の暗号文を生成できれば,盗聴者から解読のきっかけをほとんど完全に奪うことができる.このような暗号を,通信文の深層部に情報が隠されるというニュアンスで深層暗号とよぶ.
深層暗号は,秘密伝送したい本来の情報を,あらかじめ準備した攪乱用情報の中へ紛れ込ませる.その際,前者の情報量に比べ後者の情報量を十分大きくとることによって,後者が暗号文の統計的構造を支配するように仕向ける.それゆえ,深層暗号を実現するためには十分量の攪乱用情報を準備しなければならない.われわれは,ディジタル画像が膨大な情報を有する事実に着目し,画像データを攪乱用情報として利用する深層暗号の一方式,すなわち画像深層暗号を考案した」.
おそらく,これが本邦において画像深層暗号という用語を使用した最初の論文と思われる.彼らはその中でつぎのような暗号化法を提案した.まず,図1.6に示すような暗号通信系を考える.ここで,あらかじめ1画面当りn画素からなる白黒画像データを攪乱用画像として,絶対に安全な通信路で受信者に伝送可能であると仮定する.暗号文の作成では,
(1) 攪乱用画像データを0,1,…,n-1の座標をもつ1次元座標軸上に並べる.
(2) 情報伝送率(=日本語データ数/画像データ数)と画質を左右する整数パラメータmを1≦m≦nの範囲で選ぶ.
(3) m個の座標u_(1),u_(2),…,u_(m)をランダムに選ぶ.
(4) 各u_(i)上の画像データと第i番目の日本語データとの排他的論理和をとり,その結果をu_(i)へ記録する.
(5) 座標軸上の要素の並びを暗号文として伝送する.
この方法で埋め込まれた暗号文を復号するには,
(1) 攪乱用画像データとu_(i)(i=1,2,…,m)を受け取る.
(2) 受信文を1次元座標軸上に並べる.
(3) 各iに対し,u_(i)上の要素と第i番目の攪乱用画像データとの排他的論理和をつくり,その結果を第i番目の日本語データとする.」

ここで照会されている鈴木らの暗号化法と、本願請求項1に係る発明とを比較しますと、
本願請求項1に記載の「原始データ」は、引用文献1の記載のものにおける「日本語データ」(図1.6中の「伝送したい日本語データ」および「復元された日本語データ」)に、
本願請求項1に記載の「主部」は、引用文献1記のものにおける「攪乱用画像」に、
本願請求項1に記載の「副部」は、引用文献1記載のものにおける「暗号文」(図1.6中の「暗号化処理画像」)に
それぞれ対応付けられます。
また、本願請求項1に記載の「分割する」と言う事は、引用文献1記載のものにおける「排他的論理和」をとる事(図1.6中の「暗号器」)に対応付けられます。
そこで、これらの対応関係に従って、さらに詳細に比較します。
まず、本願請求項1の記載によれば「原始データ」は「任意の電子データ」であるとの限定がなされています。引用文献1記載のものにおける「日本語データ」は、送信者側が「伝送したい」データなので「任意の電子データ」に他ならないものと認められます。従いまして、両者は同じものです。
次に、本願請求項1の記載によれば「主部」は「有意性のある」との限定がなされています。引用文献1記載のものにおける「攪乱用画像」は、「意味のある記号列」のひとつでなのですから「有意性のある」ものと言えるものです。従いまして、両者は同じものです。
次に、本願請求項1の記載によれば「副部」は「前記主部と連係して前記原始データに復元可能な」との限定がなされています。引用文献1記載のものにおける「暗号文」は、「攪乱用画像データとの排他的論理和」によって「日本語データ」に復号されるものなので、「前記主部と連係して前記原始データに復元可能な」ものと言えます。従いまして、両者は同じものです。
次に、本願請求項1の記載によれば「原始データ」を「主部」と「副部」に「分割する」と記載されています。この記載について本願発明の詳細な説明を参酌すると、「原始データ」と「主部」を排他的論理和などの二項演算によって「副部」を得ており、本願明細書においてはこのような二項演算も「分割」に含まれるものとして説明していることが分かります。一方、引用文献1記載のものにおいても「日本語データ」を「攪乱用画像」で「排他的論理和」演算をして「暗号文」を得ているのですから、これも本願請求項1に係る発明と同様に「分割する」とも言えるものです。
そして、本願請求項1に係る発明は「電子データ置換法」ですが、引用文献1記載のものも「日本語データ」を「攪乱用画像」と「暗号文」に置き換えている「暗号化法」なので、「電子データ置換法」とも言えるものです。
従いまして、本願請求項1に係る発明は引用文献1記載の発明と同じものと認められます。

引用文献2には以下の記載が有ります。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像をビット列に変換する画像読取手段と、該画像読取手段の出力を画像処理し暗号化鍵または復号鍵を出力する手段を有することを特徴とする暗号化鍵または復号鍵の入力装置。
【請求項2】 画像をビット列に変換する第1画像読取手段と該第1画像読取手段の出力を画像処理し暗号化鍵を出力する手段を有する暗号化鍵入力手段と、該暗号化鍵により平文を暗号文に変換する暗号化手段と、前記画像に対応する画像をビット列に変換する第2画像読取手段と該第2画像読取手段の出力を画像処理し復号鍵を出力する手段を有する復号鍵入力手段と、該復号鍵により暗号文を平文に変換する復号手段とを有することを特徴とする共通鍵暗号通信装置。
【請求項3】 画像をビット列に変換する第1画像読取手段と該第1画像読取手段の出力を画像処理し公開暗号化鍵を出力する手段を有する公開暗号化鍵入力手段と、該公開暗号化鍵により平文を暗号文に変換する暗号化手段と、前記画像とは異なる画像をビット列に変換する第2画像読取手段と該第2画像読取手段の出力を画像処理し復号鍵を出力する手段を有する復号鍵入力手段と、該復号鍵により暗号文を平文に変換する復号手段とを有することを特徴とする公開鍵暗号通信装置。」
「【0017】次に、暗号化鍵または復号鍵の元となる画像について説明する。図3は、暗号化鍵または復号鍵の入力装置に入力する画像の一例を示す図である。図中、40は原稿、41は基準パターン、42は黒の領域、43は白の領域、44は暗号化鍵または復号鍵の元となる画像部分であり、45は白の領域、46は黒の領域、47はモザイクパターンが画像処理されて生成されたデータ列である。原稿40は、1ラインが全て白から始まるようにしている。この説明用の例では、原稿40には、8×9のマトリクス上にモザイク状のパターンが描かれ、マトリクスの最小単位を10mm×10mmとしたが、マトリクスの最小単位の寸法および個数を増減することによって、任意のビット数が得られる。このモザイク状のパターンは、あらかじめ印刷されたものをユーザーに供給してもよいが、一般ユーザが筆記具を用いて手書きしてもよい。一般ユーザが、既存の印刷物や指紋のコピー、印鑑の印影などをこのような画像として採用すれば、特徴を記憶しやすく他人には気づかれない画像となる。なお、手書き入力を考慮して、原稿には、CCD28によって感知されないような方眼状の目盛り線を印刷しておいてもよい。」
「【0024】まず、送信側の動作を説明する。S50において、暗号化鍵の元となる画像の原稿を読み取り、S51において、画像処理を行ない暗号化鍵を抽出して、メモリに記憶する。S52において、公衆電話網にダイヤル発信する。呼設定が完了すると、S53において、ハンドシェイクにより相手側のファクシミリ装置とバイナリ手順の信号シーケンスが実行され、S54において、送信すべき画像の原稿を読み取り、暗号化鍵により暗号化して蓄積する。S55において、蓄積が終了した暗号化データが送信され、S56において、送信すべきデータがなくなったかどうかを判別し、まだデータが残っているときはS53に戻り、なくなったときは、S57に進み、S57において、回線断が行われ送信動作が終了する。なお、S54において、暗号化データを蓄積することなく、送信すべき画像の暗号化が全て完了する前に、暗号化されたデータを逐次送信するようにしてもよい。また、S52において、暗号化通信の可否を問うプロトコルを挿入してもよい。」

ここに記載されている通信装置の行う通信方法と、本願請求項1に係る発明とを比較しますと、
本願請求項1に記載の「原始データ」は、引用文献2記載のものにおける「平文」に、
本願請求項1に記載の「主部」は、引用文献2記載のものにおける「共通鍵画像」に、
本願請求項1に記載の「副部」は、引用文献2記載のものにおける「暗号文」にそれぞれ対応付けられます。
また、本願請求項1に記載の「分割する」と言う事は、引用文献2記載のものにおける「暗号化鍵入力手段」が行う「第1画像読取手段の出力を画像処理」すると言う処理と、「暗号化手段」が行う「該暗号化鍵により平文を暗号文に変換する」という処理に対応付けられます。
そこで、これらの対応関係に従って、さらに詳細に比較します。
引用文献2記載のものにおける「平文」は、「ファクシミリ」の「送信すべき画像」を想定しているものなので、本願請求項1の「原始データ」と同様に、「任意の電子データ」と言えるものです。従いまして、両者は同じものです。
引用文献2記載のものにおける「共通鍵画像」は、「一般ユーザが筆記具を用いて手書きしてもよい。一般ユーザが、既存の印刷物や指紋のコピー、印鑑の印影などをこのような画像として採用すれば、特徴を記憶しやすく他人には気づかれない画像となる。」等の記載から見て、本願請求項1の「主部」と同様に、「有意性のある」ものと言えるものです。従いまして、両者は同じものです。
引用文献2記載のものにおける「復号手段」は「復号鍵により暗号文を平文に変換する」ものですので、引用文献2記載のものにおける「暗号文」は、本願請求項1の「副部」と同様に、「前記主部と連係して前記原始データに復元可能な」ものと言えます。従いまして、両者は同じものです。
また、引用文献2記載のものにおいては「平文」と「共通鍵画像」を基に「暗号化鍵入力手段」と「暗号化手段」と言う処理をして「暗号文」を得ているのですから、この処理も本願請求項1に係る発明と同様に「分割する」とも言えるものです。
そして、本願請求項1に係る発明は「電子データ置換法」ですが、引用文献2記載のものも「平文」を「共通鍵画像」と「暗号文」に置き換えている「暗号化法」なので、「電子データ置換法」とも言えるものです。
従いまして、本願請求項1に係る発明は引用文献2記載の発明とも同じものと認められます。

[請求項2について]
本願請求項2で使われている「観念」と言う用語はその意味が明確なものでは有りませんが、本願発明の詳細な説明を参酌すると、段落【0002】に「前記有意性あるデータとは、典型的には観念を表した画像データまたは音声データである。」、段落【0031】に「第七の要素は、有意性あるデータの元となる平面的または立体的な物(例えば写真または積木)あるいは観念を表した文章、図形、色、音などの有意原始対象物(13)である。」との記載があることから類推すると、引用文献1の「攪乱用画像」も「観念を有する画像データ」と言えると認められます。また、引用文献2の「共通鍵画像」も、「一般ユーザが筆記具を用いて手書きしてもよい。一般ユーザが、既存の印刷物や指紋のコピー、印鑑の印影などをこのような画像として採用すれば、特徴を記憶しやすく他人には気づかれない画像となる。」等の記載から見て「観念を有する画像データ」と認められます。従いまして、本願請求項2に係る発明も引用文献1、2記載の発明とも同じものと認められます。

[請求項3について]
本願請求項3における「集合的に配置された画像データ」の意味は明確なものでは有りませんが、本願発明の詳細な説明を参酌すれば、一般的な複数の画素によって構成される画像データがこれに含まれることは明らかです。
してみると、引用文献1の「攪乱用画像」も「暗号化処理画像」も「値を有する画素が集合的に配置された画像データ」と言えるものであることは明らかです。従いまして、本願請求項3に係る発明も引用文献1記載のものと同じものと認められます。

引用文献2記載の「共通鍵画像」は「値を有する画素が集合的に配置された画像データ」であることは明らかです。また引用文献2の段落【0016】の記載から明らかな様に「平文」も「CCDにより電気信号に変換され」「圧縮符号化された」「圧縮画像データ」ですから「値を有する画素が集合的に配置された画像データ」と言えますが、「暗号文」が「値を有する画素が集合的に配置された画像データ」と言えるものであるか否かは記載がなく、この点で本願請求項3に係る発明と引用文献2記載のものは一応相違すると言えます。
しかしながら、引用文献3、4、5等に示されるように、画像の暗号化においては暗号化後の画像もまた画像と称するのが普通ですから、引用文献2記載のものにおける「暗号文」も「値を有する画素が集合的に配置された画像データ」と言えるものです。
従いまして、本願請求項3に係る発明は引用文献2記載のものとも実質的には同じものと認められます。

[請求項4について]
引用文献1記載のものでは、「攪乱用画像」と「暗号文」との間で演算を行うことにより「日本語データ」を復元しています。
引用文献2記載のものでは、「共通鍵画像」と「暗号文」との間で演算を行うことにより「平文」を復元しています。
従いまして、本願請求項4に係る発明も引用文献1、2記載のものとも同じものと認められます。

[請求項5について]
引用文献1記載の「暗号器」では、「排他的論理和」を行っています。
従いまして、本願請求項5に係る発明も引用文献1記載のものとも同じものと認められます。

引用文献2には「暗号化手段」で排他的論理和を行う旨の記載はありませんが、排他的論理和を行うことで暗号化を行うことは引用文献3、4、5等に示されるように、周知慣用技術です。
従いまして、引用文献2記載のものにおける「暗号化手段」として「排他的論理和」を採用することで、本願請求項5に係る発明をすることも、この分野における通常の知識を有する者が容易にできることです。

[請求項6、7について]
引用文献1、2には「改竄有無検出符号」や「誤り訂正符号」についての言及はありませんが、改竄の有無を検出するための符号や誤りを訂正するための符号を信号に付加することは、例えば引用文献6、7、8記載のように、この分野における通常の知識を有する者が慣用している技術ですから、本願請求項6、7に係る発明は、この分野における通常の知識を有する者であれば、引用文献1、2記載の発明から容易に発明することができるものです。

[請求項8について]
引用文献1、2においても「主部」は画像データで構成されており、画像データは媒体の表面に印刷されているのが普通なので、本願請求項8に係る発明も引用文献1、2記載のものとも同じものと認められます。
また、暗号化等のなされた情報の媒体として印刷物を採用することも、引用文献6、7や引用文献9(特に第25頁第1行?第26頁第38行(対応公表公報の第11頁第22行?第13頁第15行に対応)参照)記載のように周知の技術なので、本願請求項8に係る発明のうち「副部」を「媒体の表面に印刷され」た「画像データで構成」しているものも、この分野における通常の知識を有する者であれば、引用文献1、2記載の発明から容易に発明することが出来るものです。

[請求項9について]
「名刺」、「シール」、「有価証券」、「プリペイドカード」、「キャッシュカード」、「クレジットカード」、「個人、法人、地方自治体、国等に関する事実が記載された書面」等を情報の記録媒体とすることも周知慣用技術です。
例えば、引用文献7には「ラベル」が、引用文献10には「名刺」「シール」が、引用文献11(特に段落【0001】参照)には「プリペイドカード」「有価証券」が、引用文献12(特に明細書の第2頁第2行?第8行、第9頁第17行?第20行参照)には「従業員証」「会員証」「入門許可証」「パスポート」「クレジットカード」「自動車運転免許証」「危険物取扱主任者免許証」「労働安全衛生免許証」が、引用文献13(特に明細書の第1頁第11行?第16行参照)には「住民票」「戸籍抄本」「戸籍謄本」「印鑑証明」等が、引用文献14には「クレジットカード」「キャッシュカード」が、引用文献15には「クレジットカード」「IDカード」が、引用文献16には「顔写真」や「個人情報」を記録した「IDカード」が、引用文献18には「プリペイドカード」が例示されています。
従いまして、本願請求項9?13に係る発明も、この分野における通常の知識を有する者であれば、引用文献1、2記載の発明から容易に発明することが出来るものです。

[請求項14、15について]
引用文献2の段落【0011】には「このような共通鍵暗号化通信装置では、暗号化鍵と復号鍵とが同一であるから、暗号化鍵を表す画像と復号鍵を表す画像とは同じものである。この画像は、あらかじめ、複写して相手方に郵送しておくか、あるいはファクシミリ装置等によって送付しておく。」とあります。
従いまして、本願請求項14,15に係る発明も引用文献2記載の発明と同じものです。

また、ファクシミリで受信印刷される出力用紙、プリンタ、プロッタまたは複写機等により印刷された書面を情報の記録媒体とすることは、引用文献2、6、9等に示されるように周知慣用技術と言えるものですから、本願請求項14、15に係る発明は、この分野における通常の知識を有する者であれば、引用文献1記載の発明から容易に発明することが出来るものです。

[請求項16、17について]
本願請求項16、17「陰極線管表示装置」、「液晶表示装置」、「プラズマ表示装置」は、例えば引用文献17に示されるように情報表示手段として周知慣用のものです。「ホログラム」を利用した表示器も引用文献15に示されるように情報表示手段として周知慣用のものです。また、「陰極線管表示装置」の表示面は通常ガラスで構成されています。また、「液晶表示装置」、や「プラズマ表示装置」の表示面に「ガラス」を用いることも適宜採用されている構成です。従いまして「ガラス」を表示面とした情報表示手段も周知慣用のものと言えます。
従いまして、本願請求項16、17に係る発明も、この分野における通常の知識を有する者であれば、引用文献1、2記載の発明から容易に発明することが出来るものです。

[請求項18について]
引用文献2の段落【0021】には「例えば、画像をバーコードパターンとして、これをCCD28で読み取り、バーコードパターンを認識して復号し、暗号化鍵または復号鍵となるビット列を得ることもできる。」と記載されています。従いまして、本願請求項18に係る発明も引用文献2記載のものと同じものと認められます。

また、情報をバーコードで表現することは、引用文献2の他にも引用文献6(段落【0037】)、引用文献7(【請求項6】)、引用文献9?18等にも記載されているように周知慣用技術ですので、本願請求項18に係る発明も、この分野における通常の知識を有する者であれば、引用文献1記載の発明から容易に発明することが出来るものです。

[請求項19、20について]
音声情報とデータ情報を一緒に伝送することは、引用文献1の第9頁下から5行目?第13頁下から2行目に「先駆的研究」の1つとして紹介されているように、従来から周知の技術思想であったものと認められますので、本願請求項19、20に係る発明も、この分野における通常の知識を有する者であれば、引用文献1、2記載の発明から容易に発明することが出来るものです。

[請求項21、22について]
本願請求項21、22における「観念を有する物体」とはその技術的意味が明確ではないものの、本願発明の詳細な説明の段落【0003】の「有意性あるデータとして物体を採用した場合は、元の電子データを接触可能にする効果を持つ。」との記載を参酌すると、「観念を有する物体」とはデータを触覚で知覚可能に表現したものと推測されますが、「点字」、「文字」、「記号」等を触覚で知覚可能な情報として表現することは、例えば引用文献18、19等に示されるように周知慣用技術です。
従いまして、本願請求項19、20に係る発明も、この分野における通常の知識を有する者であれば、引用文献1、2記載の発明から容易に発明することが出来るものです。

[請求項23について]
主情報と副情報への分割(すなわち二項演算)を複数回行うことも、例えば引用文献5(特に第4頁上右欄第19行?同頁下右欄第11行参照)等に記載されているように、従来から適宜採用されている事項です。従いまして、本願請求項23に係る発明も、この分野における通常の知識を有する者であれば、引用文献1、2記載の発明から容易に発明することが出来るものです。

[請求項24について]
2以上のデータ片を、見かけ上1のデータ片とすることも、引用文献6(図6)、引用文献14(第4図)、引用文献15(図2)、引用文献16(図4)等に示される如く周知慣用の設計事項です。従いまして、本願請求項24に係る発明も、この分野における通常の知識を有する者であれば、引用文献1、2記載の発明から容易に発明することが出来るものです。

[請求項25について]
引用文献1記載の「暗号器」でも「復号器」でも、「排他的論理和」と言う同じ演算を行っています。
従いまして、本願請求項25に係る発明も引用文献1記載のものとも同じものと認められます。

また、暗号と復号とに同じ演算を行うことは引用文献1、3、4、5等に示されるように、周知慣用技術です。
従いまして、引用文献2記載のものにおける「暗号化手段」「復号手段」として同じ演算を採用することで、本願請求項25に係る発明をすることも、この分野における通常の知識を有する者であれば容易になし得ることです。


3.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第4項および第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていません。


(1)本願請求項1に「分割」とありますが、本願発明の詳細な説明を参酌すると、「原始データ」と「主部」とを排他的論理和などの二項演算によって「副部」を得ています。この技術分野においては通常は、このような二項演算を「分割」とは表現しません。そして、本願明細書において「分割」と言う用語を通常とは異なる別の意味のものに定義する記載はありません。
従いまして、本願請求項1に係る発明は明確ではありません。また、本願請求項2?25は本願請求項1に従属する請求項なので、本願請求項1と同様の理由で明確でないものです。

また、この記載は、本願発明の詳細な説明に開示された排他的論理和などの二項演算を、一般的な意味での「分割」にまで拡張・一般化して特許を請求していることになりますが、一般的な意味での「分割」でも従来技術の問題点を解決でき、所望の作用効果を奏することができることが、本願発明の詳細な説明で説明されているわけでははありません。
従いまして、本願請求項1に係る発明は、本願発明の詳細な説明で裏付けられていない(サポートされていない)発明であるとも解釈でき、本願発明の詳細な説明に記載したものではないと言えるものです。本願請求項2、3、6?25も同様の理由で、本願発明の詳細な説明に記載したものではないと言えるものです。

(2)本願請求項1に「有意性のある」との用語が用いられていますが、この「有意性のある」とは技術的にどの様なことを意味するのかが明確では有りません。
例えば、「抽象画」などはこれを見る人によって有意性のあるものととらえられたり、有意性のないものととらえられたりするように、「有意性のある」ものと「有意性のない」ものとの境界は極めて曖昧なものなので、発明の範囲が不明確となってしまいます。また、本願発明の詳細な説明中で「有意性」と言う用語を明確に定義する記載もありません。従いまして、本願請求項1に係る発明は明確でないものです。
また、本願請求項2?25も本願請求項1に従属する請求項なので、本願請求項1と同様に明確でないものです。

(3)本願請求項2、本願請求項19?22には、「観念を有する」との用語が用いられていますが、この「観念を有する」と言う記載も本願特許請求の範囲の記載からはその意味は明確でありません。本願発明の詳細な説明には、段落【0002】に「前記有意性あるデータとは、典型的には観念を表した画像データまたは音声データである。」、段落【0031】に「第七の要素は、有意性あるデータの元となる平面的または立体的な物(例えば写真または積木)あるいは観念を表した文章、図形、色、音などの有意原始対象物(13)である。」との記載がありますが、「観念を有する」という記載の意味を明確に定義する記載は見あたりません。
従いまして、本願請求項2、本願請求項19?22に係る発明は明確でないものです。

(4)本願請求項3に「集合的に配置された」とありますが、これも通常用いられる技術用語ではなく、その意味が明確ではありません。本願発明の詳細な説明を参酌すると、通常の形式の画像データが例示されてはいますが、「集合的に配置された」なる記載の意味を明確に定義する記載は見あたりません。
従いまして、本願請求項3に係る発明は明確でないものです。

(5)本願請求項4では「前記主部の画素の値とこれに対応する副部の画素の値との間で」と、あたかも「主部」「副部」が画素の値を有する画像データであることが前提であるような記載がされていますが、本願請求項4は末尾の「請求項1記載の電子データ置換法」と言う記載から見て本願請求項1の従属請求項であると認められます。しかしながら、本願請求項1では「主部」「副部」が画像データである旨の限定はされていません。このため、本願請求項4で限定される事項が本願請求項1のどの事項を限定しているのかを明確に把握することができません。
従いまして、本願請求項4に係る発明は明確でないものです。

(6)本願請求項5には「前記演算は」との記載がありますが、本願請求項5は末尾の「請求項1記載の電子データ置換法」と言う記載から見て本願請求項1の従属請求項であると認められます。しかしながら、本願請求項1では「演算」と言う用語は用いられていません。このため、本願請求項5で限定される事項が本願請求項1のどの事項を限定 しているのかを明確に把握することできません。
従いまして、本願請求項5に係る発明は明確でないものです。

(7)本願請求項10には「前記媒体は有価証券である」との記載がありますが、このようなことは本願発明の詳細な説明には記載されていません。
従いまして、本願請求項10に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではありません。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項10に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものです。

(8)本願請求項11には「前記媒体はプリペイドカード、キャッシュカードまたはクレジットカードである」との記載がありますが、このようなことは本願発明の詳細な説明には記載されていません。
従いまして、本願請求項11に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではありません。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項11に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものです。

(9)本願請求項12には「前記媒体は社員証またはメンバーズカードなどの、組織に属する個人またはグループであることを示すカード類である」との記載がありますが、このようなことは本願発明の詳細な説明には記載されていません。
従いまして、本願請求項12に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではありません。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項12に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものです。

(10)本願請求項13には「前記媒体は個人、法人、地方自治体、国等に関する事実が記載された書面である」との記載がありますが、このようなことは本願発明の詳細な説明には記載されていません。
従いまして、本願請求項13に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではありません。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項13に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものです。

(11)本願請求項14には「前記媒体はファクシミリで受信印刷される出力用紙である」との記載がありますが、このようなことは本願発明の詳細な説明には記載されていません。
従いまして、本願請求項14に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではありません。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項14に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものです。

(12)本願請求項15には「前記媒体はプリンタ、プロッタまたは複写機等により印刷された書面である」との記載がありますが、「プロッタ」「複写機」は本願発明の詳細な説明には記載されていません。
従いまして、本願請求項15に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではありません。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項15に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものです。

(13)本願請求項17には「前記表示面は陰極線管表示装置、液晶表示装置、プラズマ表示装置、ホログラムまたはガラスである」との記載がありますが、このようなことは本願発明の詳細な説明には記載されていません。
従いまして、本願請求項17に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではありません。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項17に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものです。

また、「表示面」とは表示装置の表示がなされている面のことを意味しますので、「表示面」は「陰極線管表示装置、液晶表示装置、プラズマ表示装置」であるという表現は、技術的に合理的な解釈ができない記載です。
従いまして、本願請求項17に係る発明は明確ではありません。

(14)本願請求項18には「前記原始データ、前記主部または前記副部の少なくとも1は画像データで構成されており、当該画像データがバーコード類を構成していることを特徴とする本願請求項1記載の電子データ置換法。」とあり、また、本願発明の詳細な説明の段落【0172】以降にその説明がなされていますが、バーコード類は本願発明の詳細な説明の冒頭で説明されている従来技術と同様に「文字、数字、図形、あるいは記号などを用いて有意性ある情報として表記されたものとは異なり、特殊技能を備えた技術者以外の者にとっては可読なものではない」もの「つまり、そのバイナリデータを見ても意味を理解することができないか、少なくとも時間的あるいは思考上の相当の困難を伴う;と言える」ものに他なりません。すなわち、「画像データ」(すなわち「有意性のある主部」)を「バーコード類」としてしまっては、従来技術と同じ問題点を抱えるものに戻ってしまうことになり、本願特許請求の範囲記載の事項と本願発明の詳細な説明記載の課題とが矛盾したものになってしまいます。
そして本願請求項1は本願請求項18の上位請求項ですから、本願請求項1の「有意性のある主部」も「バーコード類」を含むようなものと解釈せざるを得ません。
このような理由から、本願発明の詳細な説明は、本願請求項1?25に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていないものと解することができえるものです。
また、本願請求項1?25は、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、その結果、本願発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになっているものとも解することができ、本願発明の詳細な説明に記載されていない(サポートされていない)ものとも言えます。

(15)本願請求項20には「前記観念を有する音声データは自然人の声または楽曲を構成している」との記載がありますが、このようなことは本願発明の詳細な説明には記載されていません。
従いまして、本願請求項20に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではありません。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項10に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものです。

また「前記観念を有する音声データは」との記載がありますが、本願請求項20は末尾の「請求項1記載の電子データ置換法」と言う記載から見て本願請求項1の従属請求項であると認められます。しかしながら、本願請求項1では「観念を有する音声データ」と言う語は用いられていません。このため、本願請求項20で限定される事項が本願請求項1のどの事項を限定しているのかを明確に把握することできません。
従いまして、本願請求項20に係る発明は明確でないものです。

(16)本願請求項21には「前記有意性のある主部は、観念を有する物体で構成されていることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法」とありますが、本願請求項1の記載によれば「有意性のある主部」とは「データ」を「分割する」ことで得られるものなので、本願請求項21の「物体」を通常の意味での「物体」と解釈してしまっては、技術的な矛盾を生じてしまいます。また、本願発明の詳細な説明では段落【0003】に「有意性あるデータとして物体を採用した場合は、元の電子データを接触可能にする効果を持つ。」との記載はありますが、「物体」なる用語を通常とは異なる特別な意味の用語として明確に定義する記載は見あたりません。
従いまして、本願請求項21に係る発明は明確でないものです。

(17)本願請求項22には「前記観念を有する物体は点字、文字または記号を構成している」とありますが「前記観念を有する物体」が「文字または記号を構成している」ことは本願発明の詳細な説明には記載されていません。
従いまして、本願請求項22に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではありません。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項22に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものです。

また「物体」が「文字」や「記号」を「構成する」とはどのようなことを表現しているのかを明確に把握できず、具体的な事物を想定することもできません。
本願発明の詳細な説明には、段落【0003】に「有意性あるデータとして物体を採用した場合は、元の電子データを接触可能にする効果を持つ。」と、【0068】に「あるいは触覚を利用して、点字を意味するピンの列びを構成するするように変換するというのでも良い。」との記載がありますが、この記載も「物体」が「文字」や「記号」を「構成する」という事項の明確な定義をする記載ではありません。
従いまして、本願請求項22に係る発明は明確でないものです。

また、本願請求項22は末尾の「請求項1記載の電子データ置換法」と言う記載から見て本願請求項1の従属請求項であると認められますが、本願請求項1では「観念を有する物体」と言う用語は用いられていません。このため、本願請求項22の「前記観念を有する物体は・・・」と言う限定が本願請求項1のどの事項を限定しているのかを明確に把握することできません。
従いまして、この点から見ても、本願請求項22に係る発明は明確でないものです。

(18)本願請求項24に「前記原始データ、前記主部、前記副部、前記二次原始データ、前記二次主部まはた前記二次副部のうちの2以上のデータ片を、」との記載がありますが、本願請求項24は末尾の「請求項1記載の電子データ置換法」と言う記載から見て本願請求項1の従属請求項であると認められます。しかしながら、本願請求項1では「二次原始データ」、「二次主部」と言う用語は用いられていません。このため、本願請求項24で限定される事項が本願請求項1のどの事項を限定しているのかを明確に把握することできません。
従いまして、本願請求項24に係る発明は明確でないものです。


(19)本願請求項24に「見かけ上1のデータ片として扱うことが可能である」とありますが、あるデータ片を1のデータ片と見るか複数のデータ片とみるかは、これを見る人によって異なった解釈がなされてしまうもので、「見かけ上1のデータ片として扱うことが可能である」ものとそうで無いものとの境界は極めて曖昧なものです。また、本願発明の詳細な説明中で「見かけ上1のデータ片として扱うことが可能である」とはデータ片どのような構造であるのかを明確に定義しているわけでもありません。
従いまして、本願請求項24に係る発明は明確でないものです。

(20)以上の通りなので、この出願の明細書は以下の通り特許法第36条で規定される記載要件を満たしていないものです。
・この出願の発明の詳細な説明は、本願請求項1?25に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載がされていません。
・本願請求項1?25に係る発明は、この出願の発明の詳細な説明に記載したものではないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていません。
・本願請求項1?25に係る発明は明確でないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていません。


引 用 文 献 等 一 覧
1.松井甲子雄「画像深層暗号 -手法と応用-」第1版第1刷,森北出版株式会社,平成5年6月15日,p.1-17
2.特開平08-069250号公報

3.特開昭48-074106号公報
4.特開平03-153291号公報
5.特開平04-073790号公報
6.特開平06-305200号公報
7.特開平07-005809号公報
8.特開平03-266544号公報
9.国際公開第95/04428号(対応公表公報:特表平09-504660号公報)
10.実願昭61-154337号(実開昭63-060669号公報)のマイクロフィルム
11.特開平5-262079号公報
12.実願昭62-093183号(実開昭63-201780号公報)のマイクロフィルム
13.実願昭55-113405号(実開昭57-038267号公報)のマイクロフィルム
14.特開昭60-019279号公報
15.特開平08-029607号公報
16.特開平06-155971号公報
17.特開平04-031983号公報
18.特開平07-314964号公報
19.特開昭63-038977号公報

---------------------------------
<補正等の示唆>
特許に関する諸手続には極めて専門的な知識が要求されます。専門家(弁理士)に委任することを検討されてはいかがでしょうか。(審判請求書によれば、弁理士の方が「関与」されたとの事ですが、本件の代理人として弁理士の方への正式な「委任」がなされているわけではありません。)

以下に明細書等の補正に付いての簡単な説明を付記します。
特許法第17条の2第1項では以下のように規定されています。
「特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書又は図面について補正をすることができる。ただし、第50条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
1 第50条(第159条第2項(第174条第2項において準用する場合を含む。)及び第163条第2項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による通知(以下この条において「拒絶理由通知」という。)を最初に受けた場合において、第50条の規定により指定された期間内にするとき。
2 拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において、最後に受けた拒絶理由通知に係る第50条の規定により指定された期間内にするとき。
3 第121条第1項の審判を請求する場合において、その審判の請求の日から30日以内にするとき。」
ここでの「第50条の規定により指定された期間」とは、特許法第50条の「審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。」との規定中の「相当の期間」(「指定期間」と言われています。)のことなので、拒絶理由通知書に「この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください」とあった場合には、この「発送の日から60日以内」の事を意味します。(本件についていえば、原審での拒絶理由通知書の発送の日(平成17年11月22日)から60日の間がこの「指定期間」に相当します。また、本件審判請求の日(平成19年1月19日)から30日の間にも補正をすることができました。)
明細書等の補正は、拒絶理由通知書等に「補正をして下さい」との記載がなくとも、上記の補正の出来る期間内であれば、特許法施行規則に定められた所定の様式で、手続補正書を特許庁に提出することでできます。(意見書や審判請求書で補正の意志があることを主張するだけでは、補正はできません。また、明細書を補正するか否かはあくまでも出願人が決定すべきもので、審査官や審判合議体が出願人に対して明細書の補正を命令することはできません。)
本拒絶理由通知は第159条第2項において準用する場合の拒絶理由通知に該当しますので、審査での拒絶理由通知と同様に、発送の日から60日以内に補正をすることができます。

補正は、この出願の出願当初の明細書又は図面に記載した事項のほか、出願当初の明細書又は図面に記載した事項から自明な事項の範囲内で行わなければなりません。また補正の際には、意見書で、各補正事項について補正が適法なものである理由を、根拠となる出願当初の明細書等の記載箇所を明確に示したうえで主張してください。

なお、上記の補正等の示唆は法律的効果を生じさせるものではありません。明細書及び図面を補正するか否か、あるいは、どのように補正するかは、あくまでも出願人が決定すべきもので、審査官や審判合議体が決定すべきものではありません。」


(2)平成21年7月27日付け意見書
上記平成21年7月27日付け(同年7月29日受付)の意見書による出願人の意見の内容は以下の通りである。
「【意見の内容】
まず、本題に先立ち、本願を分割することの意思をここに表示します。当該分割に係る手続は別の書面で行います。
審判請求人は、拒絶理由通知書(起案日:平成21年5月18日)記載の拒絶理由について、次のとおり考えます。
請求項1の「分割」の語は、<発明の詳細な説明>で裏付けられている範囲に限定するように補正いたします。
請求項1は、引用文献1に対して、特許法第29条に規定に該当しないと存じます。請求項1は、引用文献1とは異なり、「情報伝送率」なる概念を導入する必要がないものです。請求項1の従属項も同様です。
請求項1は、引用文献2に対して、特許法第29条に規定に該当しないと存じます。請求項1は、引用文献2とは異なり、「画像読取手段」は必須ではありません。請求項1の従属項(<発明の詳細な説明>の0032項または0033項適用関係を除く。)も同様です。また、当該「画像読取手段」に相当するものを用いる場合でも、引用文献2で開示されている内容とは異なり、「該画像読取手段の出力を画像処理」するという概念を導入する必要がないものです(図4の電子化入力装置(14)付近、図5、および図7参照)。
請求項5の「前記演算」は請求項4の「演算」を指すものです。請求項5の従属先を訂正(補正)いたします。
「有意性」、「観念を有する」、および「見かけ上1のデータ片」なる用語については別途説明いたします。不鮮明な点は解消したいと存じます。
請求項10、11、12、13、14、15、および17は、請求項8の「媒体」について限定したものであり、これをもって各請求項が不明確になるものではないものと存じます。
複数の請求項に関し従属関係等(「技術的な矛盾」なる指摘を含む。)が不鮮明になっている点は別途説明いたします。不鮮明な点は解消したいと存じます。
請求項24の「二次原始データ」および「二次主部」なる用語については、<発明の詳細な説明>の0021項および0075項に記載しております。不鮮明な点は別途説明して解消したいと存じます。
以上について説明等すべく、面接の機会を賜りたく存じます。」

(3)補正案の内容
なお、平成21年10月6日の面接において提示された補正案は以下の通りのものである。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の電子データを原始データとし、これを、
別の任意の電子データ(本発明の利用者が取扱を所望する任意の内容とする。前記原始データとの一致を排除しない。)たる主部と
前記主部と連係して前記原始データに復元可能な副部
とに
増量の変換処理をする情報処理方法であって、
前記主部および前記副部から
前記原始データへ逆変換処理する際に二項演算を用いること
を特徴とする電子データ置換法。

【請求項2】
前記二項演算は排他的論理和
であることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。

【請求項3】
請求項1記載の電子データ置換法の
第N(ここでNは1以上の整数。本請求項において以下同様。)回目の実施に関係する
前記原始データ、前記主部、および前記副部をそれぞれ
第N原始データ、第N主部、および第N副部と用語定義した場合において、
請求項1記載の電子データ置換法の
第N+1回目の実施において、
第N+1原始データは
前記第N主部または前記第N副部
であることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法

【請求項4】
前記原始データ、前記主部または前記副部のうちの2以上のデータ片を、
外観上1のデータ片として扱うことが可能
であることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。

補足: 「外観上1のデータ片として扱う」に関する明細書の記載:
【0079】
【0099】?【0103】

【請求項5】
前記変換処理と
前記逆変換処理とが
同一の方法または同一の装置により処理可能
であることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。

【請求項6】
前記主部または前記副部には
各自を基に生成された改竄有無検出符号または誤り訂正符号
が付加されていること
を特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。

【請求項7】
前記主部および前記副部が画像データ
(値を有する画素が集合的に配置されたもの)
であることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。

【請求項8】
前記主部と前記副部の少なくとも1は画像データであり、
当該画像データは媒体の表面に印刷されていること
を特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。

【請求項9(必要に応じて複数項に分解)】
前記媒体は、
(1)名刺またはシール、
(2)有価証券、
(3)プリペイドカ-ド、キャッシュカードまたはクレジットカード、
(4)社員証またはメンバーズカードなどの、組職に属する個人またはグループであることを示すカード類、
(5)個人、法人、地方自治体、国等に関する事実が記載された書面、
(6)ファクシミリで受信印刷される出力用紙、もしくは、
(7)プリンタ、プロッタまたは複写機等により印刷された書面
であることを特徴とする請求項8記載の電子データ置換法。

【請求項10】
前記主部と前記副部の少なくとも1は画像データであり、
当該画像データは表示面上に表示されていること
を特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。

【請求項11】
前記表示面は陰極線管表示装置の表示面、液晶表示装置の表示面、プラズマ表示装置の表示面、ホログラムまたはガラス
であることを特徴とする請求項10記載の電子データ置換法。

【請求項12】
前記原始データと前記主部と前記副部の少なくとも1は画像データであり、
当該画像データがバーコード類を構成していること
を特徴とする請求項1記載の電子データ置換法

補足:JANコード、QRコード、PDF417などのバーコード類は、複数の長方形(多くは黒色か白色)が集合的に配置されたものですので、有意で、主部に適格です。引用文献2の図3の中のシンボルも主部に適格です。これらのバーコード類をバーコード読取装置で読み取った際に出力される値については本請求項の範囲外です。

【請求項13】
前記主部が音声データ(本発明の利用者が取扱を所望する任意の内容とする。)であること
を特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。

【請求項14】
前記音声データは
自然人の声または楽曲を構成していること
を特徴とする請求項13記載の電子データ置換法。

【請求項15】
前記主部が立体デ-タ(物体に表す電子データであって、本発明の利用者が取扱を所望する任意の内容とする。)であること
を特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。

【請求項16】
前記物体は
点字、文字、または記号を表す触覚ピン構成もしくは点字自体
であること
を特徴とする請求項15記載の電子データ置換法。」



第2.本願発明の認定
本願請求項1?25に係る発明は、本願の願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1?25に記載される通りのものと認められるところ、該本願特許請求の範囲には以下の通り記載されている。

「【特許請求の範囲】
【請求項1】 任意の電子データを原始データとし、これを有意性のある主部と、前記主部と連係して前記原始データに復元可能な副部とに分割することを特徴とする電子データ置換法。
【請求項2】 前記有意性のある主部は、観念を有する画像データで構成されていることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。
【請求項3】 前記主部と前記副部はいずれも値を有する画素が集合的に配置された画像データであることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。
【請求項4】 前記主部の画素の値とこれに対応する副部の画素の値との間で演算を行うことにより前記原始データへの復元が可能であることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。
【請求項5】 前記演算は排他的論理和を用いた論理演算であることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。
【請求項6】 前記主部または前記副部には前記主部または前記副部の構成データより生成された改竄有無検出符号が付加されていることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。
【請求項7】 前記主部または前記副部には前記主部または前記副部の構成データより生成された誤り訂正符号が付加されていることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。
【請求項8】 前記主部または前記副部の少なくとも一方は画像データで構成されており、当該画像データは媒体の表面に印刷されていることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。
【請求項9】 前記媒体は名刺またはシールであることを特徴とする請求項8記載の電子データ置換法。
【請求項10】 前記媒体は有価証券であることを特徴とする請求項8記載の電子データ置換法。
【請求項11】 前記媒体はプリペイドカード、キャッシュカードまたはクレジットカードであることを特徴とする請求項8記載の電子データ置換法。
【請求項12】 前記媒体は社員証またはメンバーズカードなどの、組織に属する個人またはグループであることを示すカード類であることを特徴とする請求項8記載の電子データ置換法。
【請求項13】 前記媒体は個人、法人、地方自治体、国等に関する事実が記載された書面であることを特徴とする請求項8記載の電子データ置換法。
【請求項14】 前記媒体はファクシミリで受信印刷される出力用紙であることを特徴とする請求項8記載の電子データ置換法。
【請求項15】 前記媒体はプリンタ、プロッタまたは複写機等により印刷された書面であることを特徴とする請求項8記載の電子データ置換法。
【請求項16】 前記主部または前記副部はいずれも画像データで構成されており、当該画像データは表示面上に表示されていることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。
【請求項17】 前記表示面は陰極線管表示装置、液晶表示装置、プラズマ表示装置、ホログラムまたはガラスであることを特徴とする請求項16記載の電子データ置換法。
【請求項18】 前記原始データ、前記主部または前記副部の少なくとも1は画像データで構成されており、当該画像データがバーコード類を構成していることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。
【請求項19】 前記有意性のある主部は、観念を有する音声データで構成されていることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。
【請求項20】 前記観念を有する音声データは自然人の声または楽曲を構成していることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。
【請求項21】 前記有意性のある主部は、観念を有する物体で構成されていることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。
【請求項22】 前記観念を有する物体は点字、文字または記号を構成していることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。
【請求項23】 前記主部または前記副部を二次原始データとして、当該二次原始データを有意性のある二次主部と、前記二次主部と連係して前記二次原始データに復元可能な二次副部とに分割することを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。
【請求項24】 前記原始データ、前記主部、前記副部、前記二次原始データ、前記二次主部まはた前記二次副部のうちの2以上のデータ片を、見かけ上1のデータ片として扱うことが可能であることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。
【請求項25】 前記原始データを前記主部と前記副部とに分割する際に用いる演算と、前記主部と前記副部とから原始データを復元する際に用いる演算とが、同一の方法または装置により実行可能であることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法」



第3.引用文献の記載内容・引用発明の認定

1.上記当審拒絶理由通知において引用された下記引用文献1?19には、それぞれ、下記引用文献記載事項が記載されている。

<引用文献1>
松井甲子雄「画像深層暗号 -手法と応用-」第1版第1刷,森北出版株式会社,平成5年6月15日,p.1-17

<引用文献記載事項1-1>
「1.4 先駆的研究
1980年代のはじめのころ,音声情報とデータ情報を一緒に伝送する方法が発表された.一般に,電話の音声信号を秘匿伝送するときにスクランブラ(scrambler)を用いるが,この論文ではそれに着目してスクランブル信号に秘密データの1ビットをのせて伝送しようと試みたものである.その原理は単純で,伝送されるデータのビット系列で音声ブロックにスクランブルをかける方式になっている.このスクランブルは,本来の音声信号の秘匿に重点をおくのではなく,データの秘密伝送に主眼をおき,スクランブルは一種の触媒の役割を果たしている.伝送信号を一見したところでは,通常の音声信号伝送と変わりなく,ただ伝送信号の帯域幅がわずか増加しているにすぎない.
・・・<中略>・・・
この方法も人間の明瞭な言葉にならない声(ノイズ状態)の部分を巧みに使って,音声通話をstructureとし,文字データをnoiseにみせかけながら,実は秘密データを受信側に届けようと意図したものである.これは,電話に雑音はあたりまえという既成概念を逆手にとった意外性のある秘密伝送法である.」(第9頁下から5行目?第13頁下から2行目)

<引用文献記載事項1-2>
「さらに,1986年になると鈴木らは,暗号と情報セキュリティシンポジュウムに発表した論文の冒頭で,この特殊な暗号系をつぎのように説明している.「盗聴者が通信系に割り込んで入手した通信文が意味不明な記号列ならば,暗号文であることに気付き解読しようとするだろう.ところが通信文が意味のある記号列ならば,それが通信内容そのものであると確信するに違いない.そこで,表面上は意味のある記号列の体裁をなすが,実はその陰にもっと重要な情報を隠しもつ,といった形態の暗号文を生成できれば,盗聴者から解読のきっかけをほとんど完全に奪うことができる.このような暗号を,通信文の深層部に情報が隠されるというニュアンスで深層暗号とよぶ.
深層暗号は,秘密伝送したい本来の情報を,あらかじめ準備した攪乱用情報の中へ紛れ込ませる.その際,前者の情報量に比べ後者の情報量を十分大きくとることによって,後者が暗号文の統計的構造を支配するように仕向ける.それゆえ,深層暗号を実現するためには十分量の攪乱用情報を準備しなければならない.われわれは,ディジタル画像が膨大な情報を有する事実に着目し,画像データを攪乱用情報として利用する深層暗号の一方式,すなわち画像深層暗号を考案した」.
おそらく,これが本邦において画像深層暗号という用語を使用した最初の論文と思われる.彼らはその中でつぎのような暗号化法を提案した.まず,図1.6に示すような暗号通信系を考える.ここで,あらかじめ1画面当りn画素からなる白黒画像データを攪乱用画像として,絶対に安全な通信路で受信者に伝送可能であると仮定する.暗号文の作成では,
(1) 攪乱用画像データを0,1,…,n-1の座標をもつ1次元座標軸上に並べる.
(2) 情報伝送率(=日本語データ数/画像データ数)と画質を左右する整数パラメータmを1≦m≦nの範囲で選ぶ.
(3) m個の座標u_(1),u_(2),…,u_(m)をランダムに選ぶ.
(4) 各u_(i)上の画像データと第i番目の日本語データとの排他的論理和をとり,その結果をu_(i)へ記録する.
(5) 座標軸上の要素の並びを暗号文として伝送する.
この方法で埋め込まれた暗号文を復号するには,
(1) 攪乱用画像データとu_(i)(i=1,2,…,m)を受け取る.
(2) 受信文を1次元座標軸上に並べる.
(3) 各iに対し,u_(i)上の要素と第i番目の攪乱用画像データとの排他的論理和をつくり,その結果を第i番目の日本語データとする.」(第13頁下から第1行目から第16頁第17行)


<引用文献2>
特開平08-069250号公報(平成8年3月12日出願公開)

<引用文献記載事項2-1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像をビット列に変換する画像読取手段と、該画像読取手段の出力を画像処理し暗号化鍵または復号鍵を出力する手段を有することを特徴とする暗号化鍵または復号鍵の入力装置。
【請求項2】 画像をビット列に変換する第1画像読取手段と該第1画像読取手段の出力を画像処理し暗号化鍵を出力する手段を有する暗号化鍵入力手段と、該暗号化鍵により平文を暗号文に変換する暗号化手段と、前記画像に対応する画像をビット列に変換する第2画像読取手段と該第2画像読取手段の出力を画像処理し復号鍵を出力する手段を有する復号鍵入力手段と、該復号鍵により暗号文を平文に変換する復号手段とを有することを特徴とする共通鍵暗号通信装置。
【請求項3】 画像をビット列に変換する第1画像読取手段と該第1画像読取手段の出力を画像処理し公開暗号化鍵を出力する手段を有する公開暗号化鍵入力手段と、該公開暗号化鍵により平文を暗号文に変換する暗号化手段と、前記画像とは異なる画像をビット列に変換する第2画像読取手段と該第2画像読取手段の出力を画像処理し復号鍵を出力する手段を有する復号鍵入力手段と、該復号鍵により暗号文を平文に変換する復号手段とを有することを特徴とする公開鍵暗号通信装置。」


<引用文献記載事項2-2>
「【0011】第1共通鍵入力装置1は、第1画像読取手段2と第1画像処理手段7を有しており、暗号化鍵を表す画像の原稿を第1画像読取手段2で読み取り、第1画像処理手段7において暗号化鍵を生成して出力する。暗号化手段4は、暗号化鍵により、平文を暗号化して送信する。第2共通鍵入力装置5は、第2画像読取手段6と第2画像処理手段7を有しており、復号鍵を表す画像の原稿を第2画像読取手段6で読み取り、第2画像処理手段7において復号鍵を生成して出力する。復号手段8は、受信した暗号文を復号鍵により復号して平文に戻す。このような共通鍵暗号化通信装置では、暗号化鍵と復号鍵とが同一であるから、暗号化鍵を表す画像と復号鍵を表す画像とは同じものである。この画像は、あらかじめ、複写して相手方に郵送しておくか、あるいはファクシミリ装置等によって送付しておく。一旦入力された暗号化鍵および復号鍵は、メモリに記憶しておくことができる。また、1つの装置の中に送信部と受信部とがある場合には、第1共通鍵入力装置と第2共通鍵入力装置とは、共通にすることができる。」

<引用文献記載事項2-3>
「【0016】CCD28からサーマルヘッド31までは、画像信号のための入出力インターフェースおよび信号処理ブロックを構成する。送信時に、原稿は、CCD28により電気信号に変換され、画像処理回路29に入力され、2値化され画像データとなる。画像データは、MH方式、MR方式等に基づいて圧縮符号化され、これが平文として取り扱われる。圧縮符号化された2値データは、暗号化鍵を用いてCPU20により暗号化され、モデム26を介して送信される。受信側においては、暗号化データは、復号鍵を用いてCPU20により復号され、平文に戻った圧縮画像データは、画像処理回路29により元の画像データに復号され、プリンタドライバ30を経てサーマルヘッド31により印刷される。なお、圧縮符号化および復号は、画像処理回路29内で全て処理するのではなく、CPU20によって一部実行してもよい。CCD28は、暗号化鍵または復号鍵を入力する際の画像読取手段を兼用する。G3ファクシミリの場合、CCD28は、走査線1本(215mm)当たり1728個の画素を基本単位とした2値化信号を出力する。走査線の本数は、3.85本/mmである。この2値化信号は、画像処理回路29に入力されるが、圧縮符号化をする前の段階で、CPU20の制御下に移され、暗号化鍵または復号鍵を得るために必要な画像処理がなされる。ただし、画像処理手段29とCPU20との機能分担は適宜決められるべきものである。」

<引用文献記載事項2-4>
「【0017】次に、暗号化鍵または復号鍵の元となる画像について説明する。図3は、暗号化鍵または復号鍵の入力装置に入力する画像の一例を示す図である。図中、40は原稿、41は基準パターン、42は黒の領域、43は白の領域、44は暗号化鍵または復号鍵の元となる画像部分であり、45は白の領域、46は黒の領域、47はモザイクパターンが画像処理されて生成されたデータ列である。原稿40は、1ラインが全て白から始まるようにしている。この説明用の例では、原稿40には、8×9のマトリクス上にモザイク状のパターンが描かれ、マトリクスの最小単位を10mm×10mmとしたが、マトリクスの最小単位の寸法および個数を増減することによって、任意のビット数が得られる。このモザイク状のパターンは、あらかじめ印刷されたものをユーザーに供給してもよいが、一般ユーザが筆記具を用いて手書きしてもよい。一般ユーザが、既存の印刷物や指紋のコピー、印鑑の印影などをこのような画像として採用すれば、特徴を記憶しやすく他人には気づかれない画像となる。なお、手書き入力を考慮して、原稿には、CCD28によって感知されないような方眼状の目盛り線を印刷しておいてもよい。」

<引用文献記載事項2-5>
「【0021】以上の実例では、暗号化鍵または復号鍵の元となる画像は、ビットマップデータに変換するものであったが、変換は、これに限られるものではない。例えば、画像をバーコードパターンとして、これをCCD28で読み取り、バーコードパターンを認識して復号し、暗号化鍵または復号鍵となるビット列を得ることもできる。CCD28の代わりに、専用のバーコード読み取り装置を用いることもできる。あるいは、画像をパターン認識し、その特徴を数値化したビット列を暗号化鍵または復号鍵とすることもできる。」

<引用文献記載事項2-6>
「【0024】まず、送信側の動作を説明する。S50において、暗号化鍵の元となる画像の原稿を読み取り、S51において、画像処理を行ない暗号化鍵を抽出して、メモリに記憶する。S52において、公衆電話網にダイヤル発信する。呼設定が完了すると、S53において、ハンドシェイクにより相手側のファクシミリ装置とバイナリ手順の信号シーケンスが実行され、S54において、送信すべき画像の原稿を読み取り、暗号化鍵により暗号化して蓄積する。S55において、蓄積が終了した暗号化データが送信され、S56において、送信すべきデータがなくなったかどうかを判別し、まだデータが残っているときはS53に戻り、なくなったときは、S57に進み、S57において、回線断が行われ送信動作が終了する。なお、S54において、暗号化データを蓄積することなく、送信すべき画像の暗号化が全て完了する前に、暗号化されたデータを逐次送信するようにしてもよい。また、S52において、暗号化通信の可否を問うプロトコルを挿入してもよい。」

<引用文献記載事項2-7>
暗号化鍵または復号鍵の入力装置を用いた共通鍵暗号通信装置の概略構成図であって「第1画像読み取り装置」及び「第2画像読み取り装置」に「共通鍵画像」が入力されていることを示す図


<引用文献3>
特開昭48-074106号公報 (昭和48年10月5日出願公開)

<引用文献記載事項3-1>
「そこで原画の情報信号のない白の部分は画素単位毎の白と黒の交互点線とし、原画の信号のある部分は、その点線の白と黒を反転した点線に対応させると第3図(B)のような受信画が得られる。これが盗受傍聴者の得た受信画で正規な受信者は復調受信して、第3図(A)の原画と同一の受信画を得られるようになっていることは勿論である。」(第2頁上右欄第12行?第18行)


<引用文献4>
特開平03-153291号公報 (平成3年7月1日出願公開)

<引用文献記載事項4-1>
「2.特許請求の範囲
(1)少なくとも一方のシートが透明または半透明のシートで作られた鍵シートと暗号シートとの組み合わせから成り、
前記鍵シートには、二次元平面を縦横に細かく区切ったときにできる多数の微小な区画の中から無作為に選び出した複数の区画のみに塗りつぶし図形を描いた鍵用二値画像が記録されており、前記暗号シートには、塗りつぶし領域および非塗りつぶし領域の拡がりが前記区画のサイズに比べて十分に大きい暗号化対象二値画像と前記鍵用二値画像との排他的論理和画像が記録されている画像記録シート。
(2)少なくとも一方のシートが透明または半透明のシートで作られた鍵シートと暗号シートとの組み合わせから成り、
前記鍵シートには、二次元平面を縦横に細かく区切ったときにできる多数の微小な区画の中から無作為に選び出した複数の区画に第1の塗りつぶし図形を描き、残りの区画に前記第1の塗りつぶし図形と区画内での描画位置の異なる第2の塗りつぶし図形を描いた鍵用二値画像が記録されており、
前記暗号シートには、塗りつぶし領域および非塗りつぶし領域の拡がりが前記区画のサイズに比べて十分に大きい暗号化対象二値画像と前記鍵用二値画像との排他的論理和画像が記録されている画像記録シート。
(3)少なくとも一方のシートが透明または半透明のシートで作られた複数枚の鍵シートと暗号シートとの組み合わせから成り、
前記各鍵シートには、二次元平面を縦横に細かく区切ったときにできる多数の微小な区画の中から無作為に選び出した複数の区画に第1の塗りつぶし図形を描き、残りの区画に前記第1の塗りつぶし図形と区画内での描画位置の異なる第2の塗りつぶし図形を描いたそれぞれ異なる鍵用二値画像が記録されており、
前記暗号シートには、塗りつぶし領域および非塗りつぶし領域の拡がりが前記区画のサイズに比べて十分に大きい複数の暗号化対象二値画像の各々と前記複数の鍵用二値画像の内の対応する鍵用二値画像との間で求めた各排他的論理和画像との論理和画像が記録されている画像記録シート。
(4)少なくとも一方のシートが透明または半透明のシートで作られた鍵シートと暗号シートとの組み合わせから成り、
前記鍵シートには、二次元平面を縦横に細かく区切ったときにできる多数の微小な区画の中から無作為に選び出した複数の区画に第1の塗りつぶし図形を描き、残りの区画に前記第1の塗りつぶし図形と区画内での描画位置の異なる第2の塗りつぶし図形を描いた鍵用二値画像が記録されており、
前記暗号シートには、塗りつぶし領域および非塗りつぶし領域の拡がりが前記区画のサイズに比べて十分に大きい複数の暗号化対象二値画像の各々と前記鍵用二値画像であって且つそれぞれ暗号化対象二値画像との対向位置関係を相違させた鍵用二値画像との間で求めた各排他的論理和画像の論理和画像が記録されている画像記録シート。」(特許請求の範囲)

<引用文献記載事項4-2>
「〔産業上の利用分野〕
本発明は、文字2図形等の二値画像をハードコピー状態で暗号化し、またその反対に復号化する技術に関し、具体的には二値画像を暗号化した暗号化二値画像を記録する暗号シートと、その暗号化二値画像を復号化するための鍵用二値画像を記録する鍵シートとの組み合わせから成る画像記録シートに関する。」


<引用文献5>
特開平04-073790号公報 (平成4年3月9日出願公開)

<引用文献記載事項5-1>
「1.特許請求の範囲
(1)原配列データに予め定められた鍵配列データと排他的論理和の演算を行ない、それによって得られた結果を暗号配列データとし、復号化は暗号配列データに前記予め定められた鍵配列データと排他的論理和の演算を行なうことにより前記原配列データを再生することを特徴とする暗号化方法。
(2)第1の制御部からの信号に応じ、第1の配列データに対応して直線偏光の読み出し光の偏光状態を変化させて出力する第1の空間光変調器と、該第1の空間光変調器の出力光を第2の読み出し光として入射させ、第2の制御部からの信号に応じ第2の配列データに対応して偏光状態を変化させて出力する第2の空間光変調器と、前記第1の配列データに原配列データを、前記第2の配列データに鍵配列データを入力させ、暗号配列データが得られるようにした暗号化部と、前記第1の配列データに前記暗号配列データを、前記第2の配列データに前記鍵配列データを入力させ、前記原配列データが得られるようにした復号化部とを具備し、請求項1に記載の暗号化方法を実現できることを特徴とする暗号化装置。
(3)前記請求項2に記載の暗号化装置において、第1から第2までの1つ以上の空間光変調器が電気入力型であり、配列データが電気信号の形で入力されることを特徴とする暗号化装置。
(4)前記請求項2に記載の暗号化装置において、第1から第2までの1つ以上の空間光変調器が光入力型であり、配列データが画像信号の形で入力されることを特徴とする暗号化装置。
(5)前記請求項2乃至請求項4の各項に記載の暗号化装置において、第1から第2までの1つ以上の空間光変調器が強誘電性液晶を用いた構造のものであることを特徴とする暗号化装置。
(6)前記請求項1乃至請求項5の各項に記載の暗号化方法又は暗号化装置において、前記暗号配列データを1回以上入力配列データとして前記暗号化方法又は暗号化装置で暗号化を繰り返し、複号化も同様の処理を複数回繰り返すことを特徴とする暗号化方法又は暗号化装置。」

<引用文献記載事項5-2>
「[実施例2]
前記実施例1では、鍵配列データとして1画面のみを使った例を示したが、鍵配列データを複数画面準備しておき、その複数画面を用い前記実施例1で示した暗号化装置により暗号化し、その暗号化出力画像データを入力画像にして再び戻すことによって、暗号化を重ねることができる。復号化は、実施例1の暗号化装置を用いて、同様に複数枚の鍵画像で同様の処理を繰り返すことによって行なうことができる。・・・<中略>・・・
第4図は、本発明の実施例2暗号化方法の動作を説明するための説明図である。
原画像Aに第1の鍵画像、第2の鍵画像Lをこの順番で排他的論理和の演算を施すことにより、暗号化を行なう、復号化のときは、暗号画像に、第2の鍵画像L、第1の鍵画像Kをこの順番で排他的論理和の演算を施すことにより、原画像を得ることができる。
装置構成は第2図で示したものを用い、アレイセンサ232の出力をフレームメモリに戻すことにより、また、その動作に同期して、フレームメモリ26の鍵画像データを逐次変えることにより、実現される。ここでは、鍵画像が2枚の場合を示したが、3枚以上の鍵画像を使った場合も同様の効果が得られることは言うまでもない。」


<引用文献6>
特開平06-305200号公報(平成6年11月1日出願公開)

<引用文献記載事項6-1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子情報に電子検印を施す電子承認情報の印刷装置において、
検印者の秘密情報から公開情報を生成する公開情報生成手段と、
前記公開情報を予めデータベースに登録する登録手段と、
電子情報に対して秘密情報を用いて検印情報を生成する検印情報生成手段と、
前記検印情報生成手段により生成された検印情報を印刷形式に変換する検印情報変換手段と、
前記検印情報変換手段により変換された検印情報を印刷する検印情報印刷手段と、
を備えることを特徴とする電子承認情報の印刷装置。
【請求項2】 電子情報が印刷された印刷物の情報を読み取る電子情報入力手段と、
前記電子情報入力手段により読み取った情報を電子情報に変換する電子情報逆変換手段と、
検印情報が印刷された印刷物の情報を読み取る検印情報入力手段と、
前記検印情報入力手段により読み取った情報を検印情報に変換する検印情報逆変換手段と、
データベースから公開情報を取り出す検索手段と、
電子情報に対して検印情報と前記データベース中の公開情報を用いて検証を行う検印検証手段と、
を備えることを特徴とする電子承認情報の印刷検証装置。
【請求項3】 印刷物の情報を読み取る情報入力手段と、
前記情報入力手段により読み取った情報を被検印対象情報に変換する情報変換手段と、
検印者の秘密情報から公開情報を生成する公開情報生成手段と、
前記公開情報を予めデータベースに登録する登録手段と、
前記被検印対象情報に対して秘密情報を用いて検印情報を生成する検印情報生成手段と、
前記検印情報生成手段により生成された検印情報を印刷形式に変換する検印情報変換手段と、
前記検印情報変換手段により変換された検印情報を印刷する検印情報印刷手段と、
を備えることを特徴とする電子承認情報の印刷装置。
【請求項4】 印刷物の情報を読み取る情報入力手段と、
前記情報入力手段により読み取った情報を被検印対象情報に変換する情報変換手段と、
前記情報入力手段により読み取った情報を検印情報に変換する検印情報逆変換手段と、
データベースから公開情報を取り出す検索手段と、
前記被検印対象情報に対して検印情報とデータベースから公開情報を用いて検証を行う検印検証手段と、
を備えることを特徴とする電子承認情報の印刷検証装置。」

<引用文献記載事項6-2>
「【請求項5】 文章や図面等の電子情報を印刷する電子情報印刷手段と、
前記電子情報に依存する依存情報を作成する依存情報作成手段と、
前記依存情報作成手段により生成された依存情報を印刷可能な形式に変換する依存情報変換手段と、
前記依存情報変換手段により変換された依存情報を印刷する依存情報印刷手段と、
を備え、前記電子情報印刷手段と依存情報印刷手段とを用いて電子情報と依存情報とを印刷することを特徴とする電子承認情報の印刷装置。
【請求項6】 印刷物の情報を読み取る情報入力手段と、
前記情報入力手段により読み取った情報を電子情報に変換する電子情報逆変換手段と、
依存情報が印刷された印刷物の情報を読み取る依存情報入力手段と、
前記依存情報入力手段により読み取った情報を依存情報に変換する依存情報変換手段と、
前記電子情報に対して依存情報を用いて検証を行う検証手段と、
を備えることを特徴とする電子承認情報の印刷検証装置。」

<引用文献記載事項6-3>
「【0037】なお、印刷形式としては、図5に示すバーコードや、図6に示すような従来の印章のイメージを重視したバーコード付き印鑑の形態などがある。また、図6に示すように、図面等では、記述欄にバーコード(検印情報103a)を印刷してもよい。」

<引用文献記載事項6-4>
「【0060】なお、電子情報102に依存する依存情報106は、電子情報102の誤り検出情報、例えば垂直冗長検査、水平冗長検査、周期冗長検査などのパリティ検査やブロック検査情報などで実現できる。また、依存情報106は、電子情報102をハッシュ関数などを用いて圧縮した情報でも実現できる。」


<引用文献7>
特開平07-005809号公報(平成7年1月10日出願公開)

<引用文献記載事項7-1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】a)文書を走査して、その文書の少なくとも一部の画像を表す第1の信号を発生する過程と、
b)前記画像の表現を含み、前記第1の信号から少なくとも部分的に得られる第2の信号を暗号化する過程と、
c)前記暗号化された第2の信号の符号化された表現を前記文書に組み込む過程と、
d)前記第2の信号の前記符号化された表現を前記文書から読出す過程と、
e)前記第2の信号を復号する過程と、
f)前記復号された第2の信号を解読する過程と、
g)前記画像の前記表現を表示するために前記解読された第2の信号を表示装置へ入力する過程と、
h)前記文書を前記表示された画像と比較して前記文書を認証する過程とを有する、安全な文書を作成し、かつ認証する方法。
【請求項2】請求項1記載の方法において、前記第2の信号は圧縮された態様の前記第1の信号を含む方法。
【請求項3】請求項2記載の方法において、公開鍵暗号方式に対する暗号化鍵Eiを用いて前記第2の信号を暗号化する方法。
【請求項4】請求項3記載の方法において、前記暗号化鍵Eiに対応する解読鍵Diを、前記公開鍵暗号方式に対する第2の暗号化鍵E1で暗号化する方法。
【請求項5】請求項4記載の方法において、前記暗号化された解読鍵E1[Di]を、前記文書に組み込む前に、前記暗号化された第2の信号へ付す方法。
【請求項6】請求項5記載の方法において、前記暗号化された第2の信号の前記表現を二次元バーコードとして前記文書に組み込む方法。
【請求項7】請求項5記載の方法において、前記暗号化された第2の信号の解読は、解読鍵D1を用いて前記暗号化された鍵E1[Di]を解読する過程を更に備える方法。
【請求項8】請求項2記載の方法において、前記暗号化された第2の信号の前記表現を二次元バーコードとして前記文書に組み込む方法。
【請求項9】請求項1記載の方法において、前記符号化された表現をラベルに組み込み、そのラベルを前記文書に添付する方法。
【請求項10】文書の少なくとも一部の画像の表現を含む暗号化された信号の符号化された表現を有する前記文書を認証する方法であって、
a)前記信号の前記符号化された表現を前記文書から読出す過程と、
b)前記信号を復号する過程と、
c)前記復号された信号を解読する過程と、
d)前記画像の前記表現を表示するために前記解読された信号を表示装置へ入力する過程とを備え、それにより、
e)前記文書を前記画像の前記表示された表現と比較することにより前記文書を認証できる、文書を認証する方法。
【請求項11】請求項10記載の方法において、公開鍵暗号方式に対する暗号化鍵Eiを用いて前記第2の信号を暗号化する方法。
【請求項12】請求項10記載の方法において、前記鍵Eiに対応する解読鍵Diを、前記公開鍵暗号化方式に対する第2の暗号化鍵E1で暗号化し、前記暗号化された解読鍵E1[Di]を前記暗号化された信号に付し、前記解読過程は、
a)前記暗号化された解読鍵E1[Di]を対応する解読鍵D1で解読して前記解読鍵Diを回復する過程と、
b)前記暗号化された信号を前記鍵Diで解読する過程とを備える方法。
【請求項13】文書の少なくとも一部の画像の表現を含む暗号化された信号の符号化された表現を有する前記文書を認証する装置であって、
a)前記信号の前記符号化された表現を前記文書から読出す手段と、
b)この読出し手段に応答して、前記信号の前記符号化された表現を復号する復号手段と、
c)この復号手段に応答して、前記信号の前記復号された表現を解読する解読手段と、
d)この解読手段に応答して、前記画像の前記表現を表示する表示手段と、を備え、それにより、
e)前記文書の前記第1の部分における前記画像を、前記画像の表示された表現と比較することにより前記文書の有効性を認証できる、文書の有効性を認証する装置。
【請求項14】請求項13記載の装置において、公開鍵暗号化方式に対する暗号化鍵Eiを用いて前記暗号化された信号が暗号化される装置。
【請求項15】請求項14記載の装置において、前記鍵Eiに対応する解読鍵Diは、前記公開鍵暗号化方式に対する第2の暗号化鍵E1で暗号化され、前記暗号化された解読鍵E1[Di]を前記暗号化された信号に付され、前記解読手段は、
a)前記暗号化された解読鍵E1[Di]を対応する解読鍵D1で解読して前記解読鍵Diを回復する手段と、
b)前記暗号化された信号を前記鍵Diで解読する手段と、を備える装置。
【請求項16】文書カ-ドであって、この文書の少なくとも一部の画像の表現を含む暗号化された信号の符号化された表現を備えた文書。
【請求項17】請求項16記載の文書において、公開鍵暗号化方式に対する暗号化鍵Eiを用いて前記デジタル信号が暗号化されている識別カ-ド。
【請求項18】請求項17記載の文書において、前記暗号化鍵Eiに対応する解読鍵Diが前記公開鍵暗号化方式に対する暗号化鍵E1で暗号化されて、暗号化された解読鍵E1[Di]を形成し、前記暗号化された解読鍵E1[Di]は、前記文書に組み込む前に、前記デジタル信号に付されている文書。
【請求項19】請求項16記載の文書において、前記暗号化されたデジタル信号の前記表現は二次元バーコードとして前記文書部分に組み込まれている文書。
【請求項20】文書の画像の表現を含む暗号化された信号の符号化された表現を組み込む、関連する前記文書の安全を確保するためのラベル。」

<引用文献記載事項7-2>
「【0023】符号化された信号が二次元バーコードとして符号化される好適な実施例においては、バーコードをラベルLにプリントすることが好ましい。」


<引用文献8>
特開平03-266544号公報(平成3年11月27日出願公開)

<引用文献記載事項8-1>
「原情報に対して署名者が認証のための秘密鍵として、署名者特有の誤り検査符号の生成多項式を用いて生成した認証子を付加し、同時にその原情報を前記生成多項式により暗号化したメッセージを作成し、前記メッセージを受信した受信者が受信した前記メッセージに対して、署名者特有の秘密鍵である誤り検査符号の前記生成多項式を適用して復元し、正しい誤り検査符号であった場合にのみ、前記メッセージを正しいメッセージであると認証して復元した原情報を提供することを特徴とするメッセージの暗号化および認証方式。」(特許請求の範囲)

<引用文献9>
国際公開第95/04428号(1995年2月9日国際公開)

<引用文献記載事項9-1>
「 Reference is now made to FIG. 1, which is a generalized illustration of apparatus for creating and transmitting scrambled documents constructed and operative in accordance with a preferred embodiment of the present invention. Ordinary, conventional office machines, such as a computer printer 10 and a typewriter 12 may provide a hard copy document, which alternatively may be handwritten. The document is readable by any person without required authorization and is normally human-readable.
In accordance with a preferred embodiment of the present invention, the hard copy document is provided to a scrambling copier 15, preferably a modified version of a digital copying machine such as a Canon 8580, which is capable of scanning hard copy documents into its memory and then printing them to make copies. In accordance with a preferred embodiment of the present invention, the digital copying machine is modified to scramble the contents of the hard copy document which is stored in its memory in accordance with a predetermined scrambling protocol, an example of which is described hereinbelow.
Additionally in accordance with a preferred embodiment of the present invention, the scrambling copier is also operative to distribute a system of mutually location coordinated reference marks, hereinafter targets in the scrambled image to assist in later reconstruction of a scrambled image which has undergone distortion.
Alternatively, a computer generated document may be transmitted directly from a computer 16 via an electronic fax machine 18, such as a fax modem, which generates a readable document which is supplied to the scrambling copier 15.
As will be described hereinbelow, the scrambling copier 15 provides a scrambled hard copy document, which can be handled in any conventional office procedure, such as copying, filing, mailing and faxing, without having the information contained therein disclosed to an unauthorized reader.
An authorized reader can, at any time, take the scrambled document, or a copy thereof and copy it on an unscrambling copier 20 and thus turn it into an ordinarily, human readable document.
Unscrambling copier 20 is preferably a digital copying machine such as a Canon 8580, which is capable of scanning scrambled hard copy documents into its memory and then printing them to make unscrambled, preferably human readable, copies. In accordance with a preferred embodiment of the present invention, the digital copying machine is modified to unscramble the contents of the hard copy document which is stored in its memory in accordance with a predetermined unscrambling protocol, an example of which will be described hereinbelow, and which is the inverse of the scrambling protocol used to scramble the document.
Additionally in accordance with a preferred embodiment of the present invention, the unscrambling copier is also operative to identify the mutually location coordinated targets in the scrambled image and to use them in reconstruction of a scrambled image which has undergone distortion.
It will be appreciated that preferably the scrambling copier 15 and the unscrambling copier 20 are respectively capable of scrambling and unscrambling a document in a multiplicity of different ways, which are selected by the input of a given code to the copier. The scrambling and unscrambling codes may need to be known to both the transmitter or recipient and may be configured in accordance with any suitable known scrambling and encryption technique. Alternatively, if a public key or any other infomation which identifies akey to selected parties is used, the recipient need not memorize the scrambling code.」(第25頁第1行?第26頁第38行)
なお、引用文献9に対応する日本語文献である特表平09-504660号公報の対応箇所の記載は次の通りである。
「さて、本発明の好ましい態様として構成され動作するスクランブルされた書類を表す信号を作成し送信するための装置の概念図である図1を参照する。通常、コンピュータのプリンタ10およびタイプライタ12のような従来の事務機器は、場合によっては手書きのハードコピー書類を供給することができる。この書類は、必要な許可なしでいかなる人でも読むことができ、普通に人が読むことができるものである。
本発明の好適な実施例では、このハードコピー書類は、スクランブルコピア15に、好ましくは、ハードコピー書類をそのメモリ内へスキャンすることができ、その後コピーを作成するためそれらをプリントすることができるキャノン8580のようなデジタルコピー装置の変更バージョンに備えられる。本発明の好適な実施例では、デジタルコピー装置は、予め定められたスクランブル用のプロトコルに従ってそのメモリ内に記憶されたハードコピー書類の内容をスクランブルできるよう変更される。スクランブル用のプロトコルの一例は以下に記載される。
また、本発明の好適な実施例では、このスクランブルコピアは、ゆがみを受けたスクランブルされた画像の後の再構成で役に立つ、相互の位置が同じである参照マーク、以下スクランブルされた画像中の「ターゲット」と呼ぶ、のシステムとしても動作する。
場合によって、コンピュータで作成した書類を、スクランブルコピアに備えられた読み取り可能な書類を作成するファックスモデムのような電子的ファックス装置18を介してコンピュータ16から直接送信することもできる。
以下に記載するように、スクランブルコピア15はスクランブルされたハードコピー書類を供給し、このスクランブルされたハードコピー書類は、その中に含まれている情報を許可されていない読者に対して開示することなく、コピー、ファイル、メイルおよびファックスのような通常の事務処理において取り扱うことができる。
許可された読者は、いつでも、スクランブルされた書類またはそのコピーを手に入れ、それをアンスクランブルコピア20で「コピー」し、それを通常の人が読み取れる書類にすることができる。
アンスクランブルコピア20は、好ましくは、スクランブルされたハードコピー書類をそのメモリ内へスキャンすることができ、その後アンスクランブルされた好ましくは人が読み取ることができるコピーを作成するためそれらをプリントすることができるキャノン8580のようなデジタルコピー装置である。本発明の好適な実施例では、予め定められたアンスクランブル用のプロトコルに従ってそのメモリ内に記憶されたハードコピー書類の内容をアンスクランブルできるよう変更される。アンスクランブル用のプロトコルの一例は以下に記載され、これは書類をスクランブルするのに使用されるスクランブル用のプロトコルの逆である。
また、本発明の好適な実施例では、このアンスクランブルコピアは、スクランブルされた画像中の相互の位置が同じであるターゲットを識別し、それらをゆがみを受けたスクランブルされた画像の再構成に使用するよう動作する。
スクランブルコピア15およびアンスクランブルコピア20は、与えられたコードをコピアに入力することによって選択される多数の異なる方法で、各別に書類をスクランブルおよびアンスクランブルできるよう構成されることが好ましい。スクランブル用のコードおよびアンスクランブル用のコードは、送信者と受信者の両者に知られていることが必要であり、すでに知られているいかなるスクランブル技術および暗号化技術に従っても構成することができる。場合によって、もし公衆に知られているキーを使用しているか所定のパーティーにとってキーを特定できる他の情報を使用しているならば、受信者はスクランブル用のコードを記憶しておく必要がない。」)


<引用文献10>
実願昭61-154337号(実開昭63-060669号公報)のマイクロフィルム(昭和63年4月22日出願公開)

<引用文献記載事項10-1>
「(1)表面に、バーコード印刷、あるいは磁気印刷等によりデータ記録部を形成し、このデータ記録部には名刺に文字印刷されている会社名、個人名、あるいは電話番号等の必要事項をデータとして記録するとともに、裏面に、粘着剤を塗布して名刺へ貼り付けるように形成されたデータ記録シールを台紙に複数枚剥離可能に配列して設けたことを特徴とする名刺用データ記録シール・シート。
(2)バーコードにより形成されるデータ記録部は、台紙に配列して設けられた白紙のシールを剥離し、名刺に貼り付けた後に施されるバーコード印刷によりデータを記録するように構成されたものであることを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載の名刺用データ記録シール・シート。
(3)磁気印刷により形成されたデータ記録部を有する各データ記録シートは、台紙に配列された状態で、同一のデータを一括記録されたものであることを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載の名刺用データ記録シール・シート。
(4)台紙を、平面台紙またはロール台紙としたことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載の名刺用データ記録シール・シート。」(実用新案登録請求の範囲)


<引用文献11>
特開平5-262079号公報(平成5年10月12日出願公開)

<引用文献記載事項11-1>
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プリペイドカードや有価証券等に表示してなる情報データ記録媒体であって、前記情報データ記録媒体における墨インキによる黒線と、磁性インキによる黒線乃至螢光を発する黒線のいずれか一方又は両方の黒線とによって、構成された情報データ記録媒体に関するものである。」

<引用文献12>
実願昭62-093183号(実開昭63-201780号公報)のマイクロフィルム(昭和63年12月26日出願公開)

<引用文献記載事項12-1>
「本考案は、従業員証,会員証,入門許可証,パスポート,クレジットカード等のような身分証明書、自動車運転免許証,危険物取扱主任者免許証,労働安全衛生免許証等の各種免許証を含む認証識別カードに関し、特に、認証識別カードの偽造,変造,改ざん等を防止するとともに、外観品位を向上した認証識別カードの構成に関する。」(明細書第2頁第2行?第8行)


<引用文献13>
実願昭55-113405号(実開昭57-038267号公報)のマイクロフィルム(昭和57年3月1日出願公開)

<引用文献記載事項13-1>
「本考案はコンピューター要読取り紙票に関し、会計伝票、住民票、戸籍抄本または謄本、印鑑証明、医療用レセプト、カルテ、文献、その他あらゆる種類の情報の照合や検索ならびにこれらのコピー作成用の原稿として便利よく使用できるように改良したものである。」(明細書第1頁第11行?第16行)


<引用文献14>
特開昭60-019279号公報(昭和60年1月31日出願公開)

<引用文献記載事項14-1>
「クレジット・カードを用いて信用取引(金銭の授受をしないで商品の購入をすること等)をしたり、キャッシュ・カードを用いて銀行の口座から金銭の出し入れをする等、カードを用いたいわゆるクレジット・システムが広く活用されている。
・・・<中略>・・・
このようなクレジット・システムにおいて、本人確認の精度を向上させるとともに、本人確認の基礎であるカード自体の偽造防止を図ることが、クレジット・システムをより信頼性のあるシステムとするのに欠かせぬことである。」(第1頁下右欄第12行?第2頁上左欄第12行)」

<引用文献記載事項14-2>
「第4図は、バーコードで記録されたデータの一例である。バーコードには、口座番号(真偽判別番号)と電話番号とが記録されている。」(第2頁下右欄第7行?第9行)


<引用文献15>
特開平08-029607号公報(平成8年2月2日出願公開)

<引用文献記載事項15-1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定のモチーフを視覚的に認識可能な態様で回折格子を用いて記録するとともに、所定のデジタル情報を光学的読取装置によって読取可能な態様で回折格子を用いて記録した回折格子記録媒体において、
記録媒体上に、前記モチーフと前記デジタル情報とを記録するための情報記録対象領域を定義し、
前記情報記録対象領域内に所定の走査線を定義し、
前記情報記録対象領域内の前記走査線上に、第1属性の領域を複数定義し、
前記情報記録対象領域内の前記第1属性の領域以外の領域に、第2属性の領域を複数定義し、
前記第1属性の領域と前記第2属性の領域とに、それぞれ所定の条件で回折格子を形成し、前記光学的読取装置によって前記第1属性の領域を前記第2属性の領域と区別して読取ることができるように、前記回折格子の形成条件を設定し、前記第1属性の個々の領域により、前記デジタル情報を記録し、少なくとも前記第2属性の個々の領域により、前記モチーフを記録したことを特徴とする回折格子記録媒体。」

<引用文献記載事項15-2>
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は回折格子記録媒体、特に、クレジットカードなどに偽造防止を目的として付される回折格子記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】クレジットカードやIDカードには、偽造防止を目的として、通常の印刷方法では生成することが困難な回折格子記録媒体あるいはホログラム記録媒体が付されるようになってきている。また、ビデオテープやビデオディスクなどの著作物媒体にも、海賊版の蔓延を防止する目的で、このような回折格子記録媒体やホログラム記録媒体が利用されている。」

<引用文献記載事項15-3>
「【0019】§1. 従来提案されている例
はじめに、参考の意味で、これまでに提案されている回折格子記録媒体の一例を簡単に述べておく。図1は、カード100に付された偽造防止用の回折格子記録媒体の一例を示す図であり、この例では、回折格子記録媒体はモチーフ記録部110とバーコード記録部120との2つの領域により構成されている。図2の部分拡大図に示されているように、この例では、モチーフ記録部110には、花柄のモチーフが回折格子により記録されており、バーコード記録部120には、5本のバー121?125がそれぞれ回折格子により記録されている。」


<引用文献16>
特開平06-155971号公報(平成6年6月3日出願公開)

<引用文献記載事項16-1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 所有者本人を特定するための顔写真情報と、所有者本人を特定するための文字情報とをデータとして持つ2次元バーコードを有することを特徴とするIDカード。
【請求項2】 所有者本人を特定するための顔写真情報と、所有者本人を特定するための文字情報とをデータとして持つ2次元バーコードを有するIDカードと、
前記顔写真情報と文字情報とをIDカードから読み取る読み取り手段と、
この読み取り手段によって読み取られた前記顔写真情報と文字情報とを記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された前記顔写真情報と文字情報とを分離して表示する表示手段とを具備することを特徴とする個人認証システム。
【請求項3】 所有者本人を特定するための顔写真情報と、所有者本人を特定するための文字情報とをデータとして持つ2次元バーコードをIDカード上に設ける工程と、
前記顔写真情報と文字情報とをIDカードから読み取る工程と、
読み取られた前記顔写真情報と文字情報とを記憶する工程と、
記憶された前記顔写真情報と文字情報とを分離して表示する工程とを具備することを特徴とする個人認証方法。」

<引用文献記載事項16-2>
「【0007】本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、顔写真、個人情報等を2次元バーコードで表現することによって、簡易なカード構成で偽造防止を行うとともに、その場での個人認証が可能なIDカード及び個人認証システム及びその方法を提供することにある。」

<引用文献記載事項16-3>
「【0019】以下に、図4を参照して第2の実施例を説明する。この実施例においても第1の実施例と同様に、第1の実施例において述べたIDカード作成方法を用いて作成した2次元バーコード23を、IDカードの裏面22に貼りつけているが、異なる点は、所有者の肉筆サイン24を2次元バーコード23の上に記入したことである。この実施例においても第1の実施例と同様の個人認証方法によって認証を行うことができるが、偽造防止効果がより向上する。」


<引用文献17>
特開平04-031983号公報(平成4年2月4日出願公開)

<引用文献記載事項17-1>
「2.特許請求の範囲
1. 入力信号に対応するバーコードを表示するディスプレイ装置と、このディスプレイ装置に表示されたバーコードを読取るバーコードスキャナとを具備することを特徴とするバーコード表示読取り装置。
2. 入力信号は任意に変更可能であることを特徴とする請求項1に記載のバーコード表示読取り装置。
3. ディスプレイ装置は液晶ディスプレイ装置であることを特徴とする請求項1に記載のバーコード表示読取り装置。
4、ディスプレイ装置は蛍光表示管装置であることを特徴とする請求項1に記載のバーコード表示読取り装置。」

<引用文献記載事項17-2>
「バーコードJANシンボルは、全体がモジュルと呼ばれる1つの単位(幅)に分割され、1モジユールの幅は0.33mmと決められ、1文字を構成する1キヤラクタは7モジユールで、2.31mmの幅が必要とされている。
したがって、バーコード表示器5,15,21,33は、最小幅の0.33mmが表現できるものである必要があり、この点からディスプレイ装置としては、液晶ディスプレイ装置(LCD)あるいは蛍光表示管装置(VFD)が好適である。
例えば、液晶ディスプレイ装置の場合は、STN型白黒LCD-層のSTNパネルによる着色を、二層目のSTNパネルで打ち消して白黒表示を可能にしているが、そのドツトピッチは約0.3mm視野角は左右各30度であり、コントラスト比も1000:1程度で大きい。したがって、バーコード表示器としての機能を充分に有している。蛍光表示管装置も同様である。
なお、標準タイプのバーコードの大きさは、0.8?2.0倍の範囲内で自由に拡大、縮小することが許されている。したがって、JIS規格の場合には、幅が最も小さいもので2.14cm、最も大きいもので7.46cmとなる。そして、この点を考慮すれば、ディスプレイ装置として、液晶ディスプレイ装置や蛍光表示管装置に限らず、例えば、CRT、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンス(EL)あるいは発光ダイオード(LED)等も用いることができる。」(第3頁下右欄第12行?第4頁上左欄第19行)


<引用文献18>
特開平07-314964号公報(平成7年12月5日出願公開)

<引用文献記載事項18-1>
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 未使用残額の目安がパンチ穴によって表示されるプリペイドカードにおいて、該カードは、
前記パンチ穴が穿設される位置に対応して設けられた複数個の凹凸部を有し、
穿設された前記パンチ穴および前記凹凸部により、視覚障害者が未使用残額の目安を認識できることを特徴とするプリペイドカード。
【請求項2】 請求項1に記載のプリペイドカードにおいて、前記凹凸部は前記カードの長辺付近に該長辺に垂直に設けられた複数個の凸状のバーであることを特徴とするプリペイドカード。
【請求項3】 請求項1または2に記載のプリペイドカードにおいて、該カードはさらに該カードの短辺付近に設けられ点字を構成する凸部を有し、該凸部により視覚障害者が前記カードの発行者を識別できることを特徴とするプリペイドカード。
【請求項4】 未使用残額の目安が穿設されるパンチ穴によって表示されるプリペイドカードの製造方法において、該方法は、
基材フイルム上に全面磁気コーティングする工程と、
前記全面磁気コーティングされた基材フイルム上にバーコードをシルクスクリーン印刷によって形成する工程と、
前記全面磁気コーティングされた基材フイルム上に、前記パンチ穴が穿設される位置に対応して設けられる複数個の凸状のバーを形成する工程とを有し、
穿設された前記パンチ穴および前記複数個の凸状のバーにより視覚障害者が未使用残額の目安を認識できるプリペイドカードを得ることを特徴とするプリペイドカードの製造方法。
【請求項5】 請求項4に記載の方法において、
前記複数個の凸状のバーを形成する工程は、前記カードの短辺付近に設けられ点字を構成する凸部を同時に形成することを特徴とするプリペイドカードの製造方法。」


<引用文献19>
特開昭63-038977号公報(昭和63年2月19日出願公開)

<引用文献記載事項19-1>
「2.特許請求の範囲
1)a)文字・記号などの光学的画像情報を読み取り、該情報の形状に応じた2次元パターン信号に変換する画像読取手段と、
b)外部装置から文字コードを含むデータ信号および2次元パターン信号を入力する信号入力手段と、
c)該信号入力手段から入力した前記データ信号をモード指定手段で指定されたモード種類の2次元パターン信号に変換する信号変換手段と、
d)前記画像読取手段、前記信号入力手段、または前記信号変換手段から出力された前記2次元パターン信号を外部へ送出する信号出力手段と、
e)前記画像読取手段、前記信号入力手段、または前記信号変換手段から出力された前記2次元パターン信号に応じて一定配列の振動子群を振動させる触知表示手段と、
f)前記モード指定手段で指定されたモード種類に応じて前記画像読取手段、前記信号入力手段および前記信号変換手段を駆動制御する制御手段と
を具備したことを特徴とする画像変換装置。」


2.引用発明1の認定

(1)引用文献1記載の「鈴木ら」が提案した「暗号化法」は上記引用文献記載事項1-2のとおり「秘密伝送したい本来の情報を,あらかじめ準備した攪乱用情報の中へ紛れ込ませる」ものであり、該「本来の情報」としては「日本語データ」を、該「攪乱用情報」としては「ディジタル画像」すなわち「攪乱用画像」を用いるものが記載されている。
上記引用文献記載事項1-2の「ところが通信文が意味のある記号列ならば,それが通信内容そのものであると確信するに違いない.」等の記載から見て「該攪乱用情報」は「意味のある記号列」の1つとして採用されたものである。
すなわち、引用文献1には
「秘密伝送したい本来の情報である日本語データを,あらかじめ準備した意味のある記号列である攪乱用画像の中へ紛れ込ませる暗号化法」が記載されている。

(2)そして、この「暗号化法」は、上記引用文献記載事項1-2のとおり「あらかじめ1画面当りn画素からなる白黒画像データを攪乱用画像として,絶対に安全な通信路で受信者に伝送可能である」との前提でなされるものであり、「あらかじめ1画面当りn画素からなる白黒画像データを攪乱用画像として,絶対に安全な通信路で受信者に伝送」しておく段階を有することは明らかである。

(3)また、該「暗号化法」は、上記引用文献記載事項1-2のとおり「(1) 攪乱用画像データを0,1,…,n-1の座標をもつ1次元座標軸上に並べる.」「(2) 情報伝送率(=日本語データ数/画像データ数)と画質を左右する整数パラメータmを1≦m≦nの範囲で選ぶ.」「(3) m個の座標u_(1),u_(2),…,u_(m)をランダムに選ぶ.」「(4) 各u_(i)上の画像データと第i番目の日本語データとの排他的論理和をとり,その結果をu_(i)へ記録する.」「(5) 座標軸上の要素の並びを暗号文として伝送する.」の手順で行われるものである。

(4)そして、上記引用文献記載事項1-2のとおり「この方法で埋め込まれた暗号文を復号するには」「(1) 攪乱用画像データとu_(i)(i=1,2,…,m)を受け取る.」「(2) 受信文を1次元座標軸上に並べる.」「(3) 各iに対し,u_(i)上の要素と第i番目の攪乱用画像データとの排他的論理和をつくり,その結果を第i番目の日本語データとする.」との手順でなされるものである。

よって、引用文献1には下記引用発明1が記載されていると認められる。

<引用発明1>
「秘密伝送したい本来の情報である日本語データを,あらかじめ準備した意味のある記号列である攪乱用画像の中へ紛れ込ませる暗号化法であって、
あらかじめ1画面当りn画素からなる白黒画像データを攪乱用画像として,絶対に安全な通信路で受信者に伝送しておき、
攪乱用画像データを0,1,…,n-1の座標をもつ1次元座標軸上に並べ、
情報伝送率(=日本語データ数/画像データ数)と画質を左右する整数パラメータmを1≦m≦nの範囲で選び、
m個の座標u_(1),u_(2),…,u_(m)をランダムに選び、
各u_(i)上の画像データと第i番目の日本語データとの排他的論理和をとり,その結果をu_(i)へ記録し、
座標軸上の要素の並びを暗号文として伝送する暗号化法であって、
この方法で埋め込まれた暗号文を復号するには
攪乱用画像データとu_(i)(i=1,2,…,m)を受け取り、
受信文を1次元座標軸上に並べ、
各iに対し,u_(i)上の要素と第i番目の攪乱用画像データとの排他的論理和をつくり,その結果を第i番目の日本語データとするものである暗号化法」


3.引用発明2の認定

(1)引用文献2には、上記引用文献記載事項1-2の【請求項2】の「暗号化鍵入力手段」と「暗号化手段」と「復号鍵入力手段」と「復号手段」とを「有する」「共通鍵暗号通信装置」が説明されており、該「暗号化手段」は「暗号化鍵により平文を暗号文に変換する」ものであり、該「暗号化鍵」は「画像をビット列に変換する第1画像読取手段と該第1画像読取手段の出力を画像処理し暗号化鍵を出力する手段を有する暗号化鍵入力手段」より出力されたものであるから、引用文献2には「画像をビット列に変換する第1画像読取手段と該第1画像読取手段の出力を画像処理し暗号化鍵を出力する手段を有する暗号化鍵入力手段」より出力された「暗号化鍵により平文を暗号文に変換する」暗号化法が記載されていると言える。

(2)また、引用文献2記載のものは「前記画像に対応する画像をビット列に変換する第2画像読取手段と該第2画像読取手段の出力を画像処理し復号鍵を出力する手段を有する復号鍵入力手段と、該復号鍵により暗号文を平文に変換する復号手段とを有する」のであるから、該「暗号文」は「前記画像に対応する画像をビット列に変換する第2画像読取手段と該第2画像読取手段の出力を画像処理し復号鍵を出力する手段を有する復号鍵入力手段と、該復号鍵により暗号文を平文に変換する復号手段に」よって復号されるものである。

(3)そして、上記引用文献記載事項2-7の如く前記画像は引用文献2図1にて「共通鍵画像」とも表現されるものであり、上記引用文献記載事項2-2の如く、該「共通鍵画像」は「あらかじめ、複写して相手方に郵送しておくか、あるいはファクシミリ装置等によって送付しておく」ものであり、しかも、上記引用文献記載事項2-4の如く、「一般ユーザが筆記具を用いて手書きしたもの」、「既存の印刷物」、「指紋のコピー」、「印鑑の印影」、あるいは、上記引用文献記載事項2-5記載の如く「バーコードパターン」等である。

(4)さらに、上記引用文献2等にはファクシミリ装置に適用した実施例が開示されており、その「平文」は引用文献記載事項2-6記載の如く「ファクシミリ」へ「送信すべき画像」であって、上記引用文献記載事項2-3記載の如く「CCDにより電気信号に変換され」「圧縮符号化された」「圧縮画像データ」である。

以上の?より、引用文献2には下記引用発明2が記載されていると認められる。

<引用発明2>
「共通鍵画像をビット列に変換する第1画像読取手段と該第1画像読取手段の出力を画像処理し暗号化鍵を出力する手段を有する暗号化鍵入力手段と、該暗号化鍵により平文を暗号文に変換する暗号化手段による暗号化法であって、
該暗号文は
前記共通鍵画像に対応する画像をビット列に変換する第2画像読取手段と該第2画像読取手段の出力を画像処理し復号鍵を出力する手段を有する復号鍵入力手段と、該復号鍵により暗号文を平文に変換する復号手段によって復号されるものであり、
前記共通鍵画像は、あらかじめ、複写して相手方に郵送しておくか、あるいはファクシミリ装置等によって送付しておくもので、一般ユーザが筆記具を用いて手書きしたもの、既存の印刷物や指紋のコピー、印鑑の印影、バーコードパターンなどであり、
前記平文は、ファクシミリへ送信すべき画像であって、CCDにより電気信号に変換され圧縮符号化された圧縮画像データである
暗号化法」



第4.本件発明の新規性(特許法第29条第1項第3号)について
まず、本願特許請求の範囲の請求項1?5、8、14、15、18、25に係る発明の新規性(特許法第29条第1項第3号)について検討する。


1.請求項1に係る発明の引用発明1に対する新規性について

(1)引用発明1における「日本語データ」は本願請求項1に係る発明の「原始データ」に、引用発明1における「攪乱用画像」は本願請求項1に係る発明の「主部」に、引用発明1における「暗号文」は本願請求項1に係る発明の「副部」にそれぞれ対応付けられるものであり、また、引用発明1における「排他的論理和」をとる処理は本願請求項1に係る発明の「分割する」なる処理に対応付けられる。

(2)引用発明1における「日本語データ」は「伝送したい本来の情報」であるから、「任意の」データであると言え、さらに該「日本語データ」は電子化されていることは明らかであるから、「電子データ」と言えるものである。

(3)従って、引用発明1も本願請求項1に係る発明と同様に「任意の電子データを原始データとし」ていると言える。

(4)引用発明1における「攪乱用画像」は、「意味のある記号列」であるから、「有意性のある」ものと言え、引用発明1の「攪乱用画像」は本願請求項1に係る発明における「主部」と同様に「有意性のある主部」と言えるものである。

(5)引用発明1における「暗号文」は「攪乱用画像データとu_(i)(i=1,2,…,m)を受け取り」、「受信文を1次元座標軸上に並べ」、「各iに対し,u_(i)上の要素と第i番目の攪乱用画像データとの排他的論理和をつくり,その結果を第i番目の日本語データとする」ことで復号されるものであるから、本願請求項1に係る発明における「副部」と同様に「前記主部と連係して前記原始データに復元可能な副部」と言えるものである。

(6)本願請求項1の「原始データ」を「主部」と「副部」に「分割する」との記載について本願発明の詳細な説明を参酌すると、「原始データ」と「主部」との排他的論理和などの二項演算によって「副部」を得ており、本願明細書においてはこのような二項演算も「分割」に含まれるものとして説明しているものである。一方、引用発明1においても「日本語データ」を「攪乱用画像」で「排他的論理和」演算をして「暗号文」を得ているのであるから、これも本願における「分割する」に相当するものと言える。

(7)上記(4)?(6)より、引用発明1も本願請求項1に係る発明と同様に上記原始データを「有意性のある主部と、前記主部と連係して前記原始データに復元可能な副部とに分割する」ものであると言える。

(8)そして、引用発明1も「日本語データ」を「攪乱用画像」と「暗号文」に置き換えている「暗号化法」であるから、本願請求項1に係る発明と同様に「電子データ置換法」とも言えるものである。

以上をまとめると、本願請求項1に係る発明と引用発明1とは、次の一致点で一致する。

<一致点>
「任意の電子データを原始データとし、これを有意性のある主部と、前記主部と連係して前記原始データに復元可能な副部とに分割することを特徴とする電子データ置換法。」

そして、請求項1に係る発明と引用発明1には相違点は見いだせない。

従って、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に他ならない。


2.請求項1に係る発明の引用発明2に対する新規性について

(1)引用発明2における「平文」は本願請求項1に係る発明の「原始データ」に、引用発明2における「共通鍵画像」は本願請求項1に係る発明の「主部」に、引用発明2における「暗号文」は本願請求項1に係る発明の「副部」にそれぞれ対応付けられ、また、引用発明2における「暗号化鍵入力手段」が行う「第1画像読取手段の出力を画像処理」すると言う処理と「暗号化手段」が行う「該暗号化鍵により平文を暗号文に変換する」という処理は本願請求項1に係る発明の「分割する」と言う処理に対応付けられる。

(2)引用発明2における「平文」は、「ファクシミリへ送信すべき画像」であり、「ファクシミリ」の一般的な利用形態を考慮すれば、これは「任意の」データであると言える。

(3)また、該「平文」は、「CCDにより電気信号に変換され圧縮符号化された圧縮画像データ」であるから、本願請求項1に係る発明の「原始データ」と同様に、「電子データ」と言える。

(4)従って、引用発明2も本願請求項1に係る発明と同様に「任意の電子データを原始データとし」ていると言える。


(5)引用発明2における「共通鍵画像」は、「一般ユーザが筆記具を用いて手書きしたもの、既存の印刷物や指紋のコピー、印鑑の印影、バーコードパターンなど」であるから、本願請求項1に係る発明の「主部」と同様に「有意性のある主部」と言える。

(6)引用発明2における「暗号文」は、「前記画像に対応する画像をビット列に変換する第2画像読取手段と該第2画像読取手段の出力を画像処理し復号鍵を出力する手段を有する復号鍵入力手段と、該復号鍵により暗号文を平文に変換する復号手段によって復号されるもの」であるから、本願請求項1に係る発明の「副部」と同様に、「前記主部と連係して前記原始データに復元可能な」ものと言える。

(7)本願における「分割する」なる用語の意味に関しては、上記1.(6)で論じた通りであるところ、引用発明2においては「平文」と「共通鍵画像」を基に「暗号化鍵入力手段」と「暗号化」と言う処理をして「暗号文」を得ているのであるから、この処理も本願請求項1に係る発明と同様に「分割する」とも言えるものである。

(8)上記(5)?(7)より、引用発明2も本願請求項1に係る発明と同様に上記原始データを「有意性のある主部と、前記主部と連係して前記原始データに復元可能な副部とに分割する」ものであると言える。

そして、引用発明2も「平文」を「共通鍵画像」と「暗号文」に置き換えている「暗号化法」であるから、本願請求項1に係る発明と同様に「電子データ置換法」とも言えるものである。

以上をまとめると、本願請求項1に係る発明と引用発明2とは、上記1.記載の一致点と同じ点で一致する

そして、請求項1に係る発明と引用発明2には相違点は見いだせない。

従って、本願請求項1に係る発明は、引用文献2に記載された発明に他ならない。

3.請求項2に係る発明の引用発明1に対する新規性について
本願請求項2における「観念」なる用語はその意味が明確なものではなく、本願発明の詳細な説明を参酌すると、段落【0002】に「前記有意性あるデータとは、典型的には観念を表した画像データまたは音声データである。」、段落【0031】に「第七の要素は、有意性あるデータの元となる平面的または立体的な物(例えば写真または積木)あるいは観念を表した文章、図形、色、音などの有意原始対象物(13)である。」との記載があることから類推すると、引用文献1の「攪乱用画像」も「観念を有する画像データ」と言えると認められる。
してみると、本願請求項2に係る発明と引用発明1とは「前記有意性のある主部は、観念を有する画像データで構成されている」点でも一致し、本願請求項2に係る発明と引用発明1とに相違点は見いだせない。
従って、本願請求項2に係る発明は引用文献1記載の発明である。

4.請求項2に係る発明の引用発明2に対する新規性について
また、引用文献2の「共通鍵画像」は「一般ユーザが筆記具を用いて手書きしたもの、既存の印刷物や指紋のコピー、印鑑の印影、バーコードパターンなど」であるから、これも「観念を有する画像データ」と認められる。
してみると、本願請求項2に係る発明と引用発明2とは「前記有意性のある主部は、観念を有する画像データで構成されている」点でも一致し、本願請求項2に係る発明と引用発明2とに相違点は見いだせない。
従って、本願請求項2に係る発明は引用文献2記載の発明である。

5.請求項3に係る発明の引用発明1に対する新規性について
本願請求項3における「集合的に配置された画像データ」の意味は明確なものではないが、本願発明の詳細な説明を参酌すれば、一般的な複数の画素によって構成される画像データがこれに含まれることは明らかである。
してみると、引用文献1の「攪乱用画像」も「値を有する画素が集合的に配置された画像データ」と言えるものである。また「暗号文」も、引用文献1の図1.6中で「暗号化処理画像」とも表現されているように、「値を有する画素が集合的に配置された画像データ」と言えるものである。
してみると、本願請求項3に係る発明と引用発明1とは「前記主部と前記副部はいずれも値を有する画素が集合的に配置された画像データである」点でも一致し、本願請求項3に係る発明と引用発明1とに相違点は見いだせない。
従って、本願請求項3に係る発明は引用文献1記載の発明である。

6.請求項3に係る発明の引用発明2に対する新規性について
引用発明2の「共通鍵画像」も「値を有する画素が集合的に配置された画像データ」と言えるものであるから、本願請求項3に係る発明と引用発明2とは「前記主部」は「値を有する画素が集合的に配置された画像データである」と言える点でも一致する。
そして、引用文献2には引用発明2の「暗号文」が「値を有する画素が集合的に配置された画像データ」と言えるものであるか否かは記載がなく、この点で本願請求項3に係る発明と引用文献2記載のものには一応の相違点が認められる。
しかしながら、引用発明2の「平文」も「ファクシミリへ送信すべき画像であって、CCDにより電気信号に変換され圧縮符号化された圧縮画像データ」であるから「値を有する画素が集合的に配置された画像データ」と言える。そして、画像の暗号化においては暗号化後の画像もまた画像と称するのが普通であるから(必要があれば、引用文献3(特に引用文献記載事項3-1等における「受信画」。)、4(特に引用文献記載事項3-1における「排他的論理和画像」、引用文献記載事項4-2等における「暗号化二値画像」)、5(特に引用文献記載事項5-2における「暗号画像」)等参照。)、引用文献2記載のものにおける「暗号文」も「値を有する画素が集合的に配置された画像データ」と言えるものである。
従って、上記一応の相違点は表現の相違に過ぎないものであり、実質的な相違点と認められるものではない。
従って、本願請求項3に係る発明は引用文献2記載の発明である。

7.請求項4に係る発明の引用発明1に対する新規性について
引用発明1の暗号文は、「攪乱用画像」と「暗号文」との間で演算を行うことにより「日本語データ」が復号されるのであるから、本願請求項4に係る発明と引用発明1とは「前記主部の画素の値とこれに対応する副部の画素の値との間で演算を行うことにより前記原始データへの復元が可能である」点でも一致し、本願請求項4に係る発明と引用発明1とに相違点は見いだせない。
従って、本願請求項4に係る発明は引用文献1記載の発明である。

8.請求項4に係る発明の引用発明2に対する新規性について
引用発明2の暗号文は、「共通鍵画像」と「暗号文」との間で演算を行うことにより「平文」が復号されるのであるから、本願請求項4に係る発明と引用発明2とは「前記主部の画素の値とこれに対応する副部の画素の値との間で演算を行うことにより前記原始データへの復元が可能である」点でも一致し、本願請求項4に係る発明と引用発明2とに相違点は見いだせない。
従って、本願請求項4に係る発明は引用文献2記載の発明である。

9.請求項5に係る発明の引用発明1に対する新規性について
引用発明1は「排他的論理和」を行う暗号化であるから、本願請求項5に係る発明と引用発明1とは「前記演算は排他的論理和を用いた論理演算である」点でも一致し、本願請求項5に係る発明と引用発明1とに相違点は見いだせない。
従って、本願請求項5に係る発明は引用文献1記載の発明である。

10.請求項8に係る発明の引用発明1に対する新規性について
画像データは媒体の表面に印刷されているのが普通であるから、引用発明1における「攪乱用画像」が「媒体の表面に印刷されている」ことは、引用文献1に記載されているに等しいことと認められ、本願請求項8に係る発明も引用文献1記載のものとは「前記主部または前記副部の少なくとも一方は画像データで構成されており、当該画像データは媒体の表面に印刷されている」点も実質的な相違点と言えるものではない、
従って、本願請求項8に係る発明は引用文献1記載の発明である。

11.請求項8に係る発明の引用発明2に対する新規性について
引用文献2における「共通鍵画像」は「複写して相手方に郵送しておくか、あるいはファクシミリ装置等によって送付しておく」ものであるから、媒体の表面に印刷されているものであることは明らかであり、本願請求項8に係る発明と引用文献2記載のものとは「前記主部または前記副部の少なくとも一方は画像データで構成されており、当該画像データは媒体の表面に印刷されている」点でも一致していると言え、本願請求項8に係る発明と引用発明2とに実質的な相違点は見いだせない。
従って、本願請求項8に係る発明は引用文献2記載の発明である。

12.請求項14に係る発明の引用発明2に対する新規性について
引用発明2の「共通鍵画像」は「あらかじめ、複写して相手方に郵送しておくか、あるいはファクシミリ装置等によって送付しておくもの」であるところ、引用発明2のうち「あらかじめ」「ファクシミリ装置等によって送付しておく」ものと本願請求項14に係る発明とは「前記媒体はファクシミリで受信印刷される出力用紙である」点でも一致し、両者の間に相違点は見いだせない。
従って、本願請求項14に係る発明は引用文献2記載の発明である。

13.請求項15に係る発明の引用発明2に対する新規性について
引用発明2の「共通鍵画像」は「あらかじめ、複写して相手方に郵送しておくか、あるいはファクシミリ装置等によって送付しておくもの」であるところ、引用発明2のうち「あらかじめ、複写して相手方に郵送しておく」ものと本願請求項15に係る発明とは「前記媒体はプリンタ、プロッタまたは複写機等により印刷された書面である」点でも一致し、両者の間に相違点は見いだせない。
従って、本願請求項15に係る発明は引用文献2記載の発明である。

14.請求項18に係る発明の引用発明2に対する新規性について
引用発明2の「共通鍵画像」は「一般ユーザが筆記具を用いて手書きしたもの、既存の印刷物や指紋のコピー、印鑑の印影、バーコードパターンなど」であるところ、引用発明2のうち「共通鍵画像」として「バーコードパターン」を採用したものと本願請求項18に係る発明も引用発明2とは「前記原始データ、前記主部または前記副部の少なくとも1は画像データで構成されており、当該画像データがバーコード類を構成している」点でも一致し、両者の間に相違点は見いだせない。
従って、本願請求項18に係る発明は引用文献2記載の発明である。

15.請求項25に係る発明の引用発明1に対する新規性について
引用発明1は、暗号化においても復号においても、「排他的論理和」と言う同じ演算を行っているのであるから、本願請求項25に係る発明と引用発明1とは「前記原始データを前記主部と前記副部とに分割する際に用いる演算と、前記主部と前記副部とから原始データを復元する際に用いる演算とが、同一の方法または装置により実行可能である」点でも一致し、本願請求項25に係る発明と引用発明とに相違点は見いだせない。
従って、本願請求項25に係る発明は引用文献1記載の発明である。

16.小結
以上の通り、本願請求項1?5、8、25に係る発明は、引用文献1に記載された発明である。
また、本願請求項1?4、8、14、15、18に係る発明は、引用文献2に記載された発明である。
従って、本願請求項1?5、8、14、15、18、25に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。



第5.本件発明の進歩性(特許法第29条第2項)について
次に、本件特許請求の範囲の請求項1?25に係る発明の進歩性(特許法第29条第2項)について検討する。

1.請求項1に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
上記第4.1.の通り、本願請求項1に係る発明と引用発明1との間に相違点は無いので、引用発明1を基に本願請求項1に係る発明をなす事は、何らの創意を要せずなし得ることである。
従って、本願請求項1に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

2.請求項1に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記第4.2.の通り、本願請求項1に係る発明と引用発明2との間に相違点は無いので、引用発明2を基に本願請求項1に係る発明をなす事は、何らの創意を要せずなし得ることである。
従って、本願請求項1に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

3.請求項2に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
上記第4.3.の通り、本願請求項2に係る発明と引用発明1との間に相違点は無いので、引用発明1を基に本願請求項2に係る発明をなす事は、何らの創意を要せずなし得ることである。
従って、本願請求項2に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

4.請求項2に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記第4.4.の通り、本願請求項2に係る発明と引用発明2との間に相違点は無いので、引用発明2を基に本願請求項2に係る発明をなす事は、何らの創意を要せずなし得ることである。
従って、本願請求項2に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

5.請求項3に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
上記第4.5.の通り、本願請求項3に係る発明と引用発明1との間に相違点は無いので、引用発明1を基に本願請求項3に係る発明をなす事は、何らの創意を要せずなし得ることである。
従って、本願請求項3に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

6.請求項3に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記第4.6.の通り、本願請求項3に係る発明と引用発明2との間に相違点は無いので、引用発明2を基に本願請求項3に係る発明をなす事は、何らの創意を要せずなし得ることである。
従って、本願請求項3に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

7.請求項4に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
上記第4.7.の通り、本願請求項4に係る発明と引用発明1との間に相違点は無いので、引用発明1を基に本願請求項4に係る発明をなす事は、何らの創意を要せずなし得ることである。
従って、本願請求項4に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

8.請求項4に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記第4.8.の通り、本願請求項4に係る発明と引用発明2との間に相違点は無いので、引用発明2を基に本願請求項4に係る発明をなす事は、何らの創意を要せずなし得ることである。
従って、本願請求項4に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

9.請求項5に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
上記第4.9.の通り、本願請求項5に係る発明と引用発明1との間に相違点は無いので、引用発明1を基に本願請求項5に係る発明をなす事は、何らの創意を要せずなし得ることである。
従って、本願請求項5に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

10.請求項5に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
引用発明2には排他的論理和を行う旨の記載は無いが、排他的論理和を行うことで暗号化を行うことは、当業者が適宜に採用している周知慣用技術に他ならず(必要があれば引用文献3(特に上記引用文献記載事項3-1における「原画の情報信号のない白の部分は画素単位毎の白と黒の交互点線とし、原画の信号のある部分は、その点線の白と黒を反転した点線に対応させる」なる記載。)、引用文献4(特に上記引用文献記載事項4-1等における「暗号化対象二値画像と前記鍵用二値画像との排他的論理和画像」を作る点。)、引用文献5(特に上記引用文献記載事項5-2等における「排他的論理和の演算」を施す点。)等参照。)、引用文献2記載のものにおける「暗号化」として「排他的論理和」を採用することで、本願請求項5に係る発明をなすことも、当業者であれば容易に想到し得たことである。そして、その作用効果も容易に予測し得る程度のものであり、格別顕著なものではない。
従って、本願請求項5に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

11.請求項6に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
引用文献1には「改竄有無検出符号」についての言及は無いが、改竄の有無を検出するための符号を信号に付加することは、当業者の慣用技術であり、(必要があれば、引用文献6(特に上記引用文献記載事項6-1等における「検印情報」を印刷する点。)、引用文献7(特に上記引用文献記載事項7-1等における「符号化された表現」を文書に組み込む点。)、引用文献8(特に上記引用文献記載事項8-1等における「署名者特有の誤り検査符号の生成多項式を用いて生成した認証子」を付加する点。)等参照。)、引用発明1における「攪乱用画像」や「暗号文」をこれらより生成された「改竄有無検出符号」が付加されたものとして、本願請求項6に係る発明をなすことも、当業者であれば容易に想到し得たことである。そして、その作用効果も容易に予測し得る程度のものであり、格別顕著なものではない。
従って、本願請求項6に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

12.請求項6に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
引用文献2にも「改竄有無検出符号」についての言及は無いが、上記11.記載の如く改竄の有無を検出するための符号を信号に付加することは、当業者の慣用技術であり、引用発明2における「共通鍵画像」や「暗号文」をこれらより生成された「改竄有無検出符号」が付加されたものとして、本願請求項6に係る発明をなすことも、当業者であれば容易に想到し得たことである。そして、その作用効果も容易に予測し得る程度のものであり、格別顕著なものではない。
従って、本願請求項6に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

13.請求項7に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
引用文献1には「誤り訂正符号」についての言及は無いが、誤りを訂正するための符号を信号に付加することは当業者の慣用技術であり(必要があれば、引用文献6(特に上記引用文献記載事項6-2、6-4等における「依存情報」を印刷する点。)、引用文献8(特に上記引用文献記載事項8-1等における「署名者特有の誤り検査符号の生成多項式を用いて生成した認証子」を付加する点。)等参照。)、引用発明1における「攪乱用画像」や「暗号文」をこれらより生成された「誤り訂正符号」が付加されたものとして、本願請求項7に係る発明をなすことも、当業者であれば容易に想到し得たことである。そして、その作用効果も容易に予測し得る程度のものであり、格別顕著なものではない。
従って、本願請求項7に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

14.請求項7に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
引用文献2にも「誤り訂正符号」についての言及は無いが、上記13.記載の如く誤りを訂正するための符号を信号に付加することは、当業者の慣用技術であり、引用発明2における「共通鍵画像」や「暗号文」をこれらより生成された「誤り訂正符号」が付加されたものとして、本願請求項7に係る発明をなすことも、当業者であれば容易に想到し得たことである。そして、その作用効果も容易に予測し得る程度のものであり、格別顕著なものではない。
従って、本願請求項7に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

15.請求項8に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
上記第4.10.の通り、本願請求項8に係る発明と引用発明1との間に実質的な相違点は無いので、引用発明1を基に本願請求項8に係る発明をなす事は、何らの創意を要せずなし得ることである。
従って、本願請求項8に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

また、暗号化等のなされた情報の媒体として印刷物を採用することは、当業者が適宜に採用している周知慣用技術に他ならず(必要があれば、引用文献6(特に上記引用文献記載事項6-1、6-2等において「検印情報」や「依存情報」を「印刷」している点。)、引用文献7(特に上記引用文献記載事項7-1において暗号化された情報を「文書に組み込む」点や上記引用文献記載事項7-2において「バーコードをラベルLにプリント」している点等。)、引用文献9(特に上記引用文献記載事項9-1において「スクランブルされた書類」を取り扱う点。)等参照)、本願請求項8に係る発明のうち「副部」を「媒体の表面に印刷され」た「画像データで構成」しているものとすることも、当業者であれば、引用発明1から容易に想到し得たことである。そして、その作用効果も容易に予測し得る程度のものであり格別顕著なものではない。
従って、この点からみても、本願請求項8に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

16.請求項8に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記第4.11.の通り、本願請求項8に係る発明と引用発明との間に相違点は無いので、引用発明を基に本願請求項8に係る発明をなす事は、何らの創意を要せずなし得ることである。
従って、本願請求項8に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

また、上記15.記載の如く、暗号化等のなされた情報の媒体として印刷物を採用することは、当業者が適宜に採用している周知慣用技術に他ならず、本願請求項8に係る発明のうち「副部」を「媒体の表面に印刷され」た「画像データで構成」しているものとすることは、当業者であれば、引用発明2からも容易に想到し得たことである。そして、その作用効果も容易に予測し得る程度のものであり格別顕著なものではない。
従って、この点からみても、本願請求項8に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

17.請求項9に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
「名刺」、「シール」を情報の記録媒体とすることも、周知慣用技術に過ぎない(必要があれば引用文献7(特に引用文献記載事項7-1、7-2等の「ラベル」)、引用文献10(特に引用文献記載事項10-1、の「名刺用データ記録シール・シート」)等参照)。
従って、本願請求項9に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

18.請求項9に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記17.記載の如く「名刺」、「シール」を情報の記録媒体とすることは、周知慣用技術に過ぎない。
従って、本願請求項9に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

19.請求項10に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
「有価証券」を情報の記録媒体とすることも、周知慣用技術に過ぎない(必要があれば引用文献11(特に引用文献記載事項11-1の「有価証券」)等参照)。
従って、本願請求項10に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

20.請求項10に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記19.記載の如く「有価証券」を情報の記録媒体とすることは、周知慣用技術に過ぎない。
従って、本願請求項10に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

21.請求項11に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
「プリペイドカード」、「キャッシュカード」または「クレジットカード」を情報の記録媒体とすることも、周知慣用技術に過ぎない(必要があれば引用文献11(特に引用文献記載事項11-1の「プリペイドカード」)引用文献12(特に引用文献記載事項12-1の「クレジットカード」)、引用文献14(特に引用文献記載事項14-1の「クレジット・カード」「キャッシュ・カード」)、引用文献15(特に引用文献記載事項15-2の「クレジットカード」)、引用文献18(特に引用文献記載事項18-1の「」)、引用文献(特に引用文献記載事項、の「クレジットカード」)、引用文献18(特に引用文献記載事項の「プリペイドカード」)等参照)。
従って、本願請求項11に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

22.請求項11に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記21.記載の如く「プリペイドカード」、「キャッシュカード」または「クレジットカード」を情報の記録媒体とすることは、周知慣用技術に過ぎない。
従って、本願請求項11に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

23.請求項12に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
「社員証」または「メンバーズカード」などの「組織に属する個人またはグループであることを示すカード類」を情報の記録媒体とすることも、周知慣用技術に過ぎない(必要があれば引用文献12(特に引用文献記載事項12-1の「従業員証」「会員証」)、引用文献15(特に引用文献記載事項15-2、の「IDカード」)等参照)。
従って、本願請求項12に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

24.請求項12に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記23.記載の如く「社員証」または「メンバーズカード」などの「組織に属する個人またはグループであることを示すカード類」を情報の記録媒体とすることは、周知慣用技術に過ぎない。
従って、本願請求項12に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

25.請求項13に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
「個人、法人、地方自治体、国等に関する事実が記載された書面」を情報の記録媒体とすることも、周知慣用技術に過ぎない(必要があれば引用文献12(特に引用文献記載事項、12-1の「自動車運転免許証」「危険物取扱主任者免許証」「労働安全衛生免許証」)、引用文献13(特に引用文献記載事項、13-1の「住民票」「戸籍抄本」「戸籍謄本」「印鑑証明」)、引用文献16(特に引用文献記載事項16-1、16-2等の顔写真や文字情報を記録した「IDカード」)等参照)。
従って、本願請求項13に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

26.請求項13に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記25.記載の如く「個人、法人、地方自治体、国等に関する事実が記載された書面」を情報の記録媒体とすることは、周知慣用技術に過ぎない。
従って、本願請求項13に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

27.請求項14に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
ファクシミリで受信印刷される出力用紙を情報の記録媒体とすることは周知慣用技術に過ぎない(必要があれば引用文献2(特に引用文献記載事項2-3、2-6等)、引用文献9(引用文献記載事項9-1等の「ファックス」で取り扱う点)等参照)。
従って、本願請求項14に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

28.請求項14に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記第4.12.の通り、本願請求項14に係る発明と引用文献2記載の発明との間に相違点は無いので、引用文献2記載の発明を基に本願請求項14に係る発明をなす事は、何らの創意を要せずなし得ることである。
従って、本願請求項14に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

29.請求項15に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
ファクシミリで受信印刷される出力用紙を情報の記録媒体とすることは周知慣用技術に過ぎない(必要があれば引用文献6(特に上記引用文献記載事項6-1、6-2等において「検印情報」や「依存情報」を「印刷」している点。)、引用文献9(特に上記引用文献記載事項9-1において「スクランブルされたハードコピー書類」を取り扱う点。)等参照)。
従って、本願請求項15に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

30.請求項15に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記第4.13.の通り、本願請求項15に係る発明と引用文献2記載の発明との間に相違点は無いので、引用文献2記載の発明を基に本願請求項15に係る発明をなす事は、何らの創意を要せずなし得ることである。
従って、本願請求項15に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

31.請求項16に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
画像データを表示面上に表示することは周知慣用技術に過ぎない(必要があれば引用文献17(特に引用文献記載事項17-1、17-2)、引用文献15(特に引用文献記載事項15-1等の「回折格子記録媒体」)等参照)。
従って、本願請求項16に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

32.請求項16に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記31.記載の如く、画像データを表示面上に表示することは周知慣用技術に過ぎない。
従って、本願請求項16に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

33.請求項17に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
「陰極線管表示装置」、「液晶表示装置」、「プラズマ表示装置」は、情報表示手段として周知慣用のものである(必要があれば引用文献17(特に引用文献記載事項17-2)参照。)。また「ホログラム」を利用した表示器も情報表示手段として周知慣用のものである。(必要があれば引用文献15(特に引用文献記載事項15-1等の「回折格子記録媒体」)等参照)。また、「陰極線管表示装置」の表示面は通常ガラスで構成されており、また、「液晶表示装置」、や「プラズマ表示装置」の表示面に「ガラス」を用いることも適宜採用されている構成である。従って「ガラス」を表示面とした情報表示手段も周知慣用のものであると言える。
従って、本願請求項17に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

34.請求項17に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記31.記載の如く、「陰極線管表示装置」、「液晶表示装置」、「プラズマ表示装置」は、情報表示手段として周知慣用のものであり、また「ホログラム」を利用した表示器も情報表示手段として周知慣用のものである。さらに「ガラス」を表示面とした情報表示手段も周知慣用のものである。
従って、本願請求項17に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

35.請求項18に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
情報をバーコードで表現することも周知慣用技術に他ならない(必要があれば、引用文献2(引用文献記載事項2-5)、引用文献6(引用文献記載事項6-3)、引用文献7(引用文献記載事項7-1の【請求項6】)、引用文献9?18等参照。)。
従って、本願請求項18に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

36.請求項18に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記第4.14.の通り、本願請求項18に係る発明と引用文献2記載の発明との間に相違点は無いので、引用文献2記載の発明を基に本願請求項18に係る発明をなす事は、何らの創意を要せずなし得ることである。
従って、本願請求項18に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

37.請求項19に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
音声情報とデータ情報を一緒に伝送することは従来から周知の技術思想に過ぎない(必要があれば、引用文献1引用文献記載事項1-1記載の方法を参照。)。
従って、本願請求項19に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

38.請求項19に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記37.記載の如く音声情報とデータ情報を一緒に伝送することは従来から周知の技術思想に過ぎない。
従って、本願請求項19に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

39.請求項20に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
引用文献記載事項1-1記載の方法も「人間の明瞭な言葉にならない声(ノイズ状態)の部分を巧みに使って」とあるように自然人の声を音声情報とすることは周知の事項に過ぎない。また、楽曲を音声情報とすることも常識的な周知の事項に過ぎない(必要があれば、特表平07-505984号公報(特に第4頁上左欄第3行?同頁上右欄第17行で「音楽」の著作権保護を課題としている点や、第5頁下左欄第25行?第26行にオーディオ信号として「音楽」が例示されている点。)、特開平06-231466号公報(特に段落【0433】?【0443】で「楽曲」の記録が例示されている点。)等参照))。
従って、本願請求項20に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

40.請求項20に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記39.記載の如く、自然人の声や楽曲を音声情報とすることは周知の事項に過ぎない。
従って、本願請求項20に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

41.請求項21に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
本願請求項21における「観念を有する物体」とはその技術的意味が明確ではないものの、本願発明の詳細な説明の段落【0003】の「有意性あるデータとして物体を採用した場合は、元の電子データを接触可能にする効果を持つ。」との記載を参酌すると、「観念を有する物体」とはデータを触覚で知覚可能に表現したものと推測される。しかるに、情報を「点字」で表現したり、「文字」、「記号」等を触覚で知覚可能な情報として表現することは周知慣用技術に過ぎないものである(必要があれば、引用文献18(特に引用文献記載事項18-1等の「凹凸部」)、引用文献19(特に引用文献記載事項19-1等の「文字・記号など」を「触知表示手段」で表示する点)等参照。)。
従って、本願請求項21に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

42.請求項21に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記41.記載の如く、情報を「点字」で表現したり、「文字」、「記号」等を触覚で知覚可能な情報として表現することは周知慣用技術に過ぎない。
従って、本願請求項21に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

43.請求項22に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
上記41.記載の如く、情報を「点字」で表現したり、「文字」、「記号」等を触覚で知覚可能な情報として表現することは周知慣用技術に過ぎない。
従って、本願請求項22に係る発明も、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

44.請求項22に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記41.記載の如く、情報を「点字」で表現したり、「文字」、「記号」等を触覚で知覚可能な情報として表現することは周知慣用技術に過ぎない。
従って、本願請求項22に係る発明も、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

45.請求項23に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
主情報と副情報への分割(すなわち二項演算)を複数回行うことも従来から適宜採用されている周知技術である(必要があれば、引用文献5(特に引用文献記載事項5-1の請求項6、引用文献記載事項5-2)等参照)。
従って、本願請求項23に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

46.請求項23に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記45.記載の如く、主情報と副情報への分割を複数回行うことも、従来から適宜採用されている周知技術である。
従って、本願請求項23に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

47.請求項24に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
2以上のデータ片を、見かけ上1のデータ片とすることも周知慣用技術である(必要があれば、引用文献6(特に引用文献記載事項6-3等)、引用文献14(特に引用文献記載事項14-2等)、引用文献15(特に引用文献記載事項15-3等)、引用文献16(特に引用文献記載事項16-3等)等参照。)。
従って、本願請求項24に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

48.請求項24に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
上記47.記載の如く、2以上のデータ片を、見かけ上1のデータ片とすることも周知慣用技術である。
従って、本願請求項24に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

49.請求項25に係る発明の引用発明1に対する進歩性について
上記第4.15.の通り、本願請求項25に係る発明と引用発明1との間に相違点は無いので、引用発明1を基に本願請求項25に係る発明をなす事は、何らの創意を要せずなし得ることである。
従って、本願請求項25に係る発明は、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

50.請求項25に係る発明の引用発明2に対する進歩性について
また、暗号と復号とに同じ演算を行うことは周知慣用技術に他ならない。(必要があれば、引用文献1(特に引用文献記載事項1-2における「排他的論理和」。)、引用文献3(特に引用文献記載事項3-1の「原画の情報信号のない白の部分は画素単位毎の白と黒の交互点線とし、原画の信号のある部分は、その点線の白と黒を反転した点線に対応させる」点。)、引用文献4(特に引用文献記載事項4-1の「排他的論理和」)、引用文献5((特に引用文献記載事項5-1、5-2。))等参照)。
従って、本願請求項25に係る発明は、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

51.小結
従って、本願請求項1?25に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。



第6.本願明細書等の記載要件(特許法第36条)について
本件の手続きの経緯は上記第1.1.の通りであり、本願明細書は平成8年10月1日付けの出願時に願書に最初に添付された明細書の通りのものである。
上記当審拒絶理由通知の特許法第36条第4項および第6項第1号、第2号違反である旨の理由は、上記第1.2.(1)の3.として示したものである。
そこで、以下に、該当審拒絶理由の3.で指摘した明細書の不備について、検討する。

1.理由3.(1)について
本願請求項1に「分割」とあるところ、本願発明の詳細な説明を参酌すると、「原始データ」と「主部」とを排他的論理和などの二項演算によって「副部」を得ている。本件の如き電子データ処理の技術分野においては、通常は、かかる二項演算を「分割」とは表現しない。そして、本願明細書において「分割」と言う用語を通常とは異なる別の意味のものに定義する記載は無い。
従って、本願請求項1に係る発明は明確ではない。また、本願請求項2?25は本願請求項1に従属する請求項なので、本願請求項1と同様の理由で明確でない。

また、該記載は、本願発明の詳細な説明に開示された排他的論理和などの二項演算を、一般的な意味での「分割」にまで拡張・一般化して特許を請求していることになるが、一般的な意味での「分割」でも従来技術の問題点を解決でき、所望の作用効果を奏することができることが、本願発明の詳細な説明で説明されているわけではない。
従って、本願請求項1に係る発明は、本願発明の詳細な説明で裏付けられていない(サポートされていない)発明であるとも解釈でき、本願発明の詳細な説明に記載したものではない。
本願請求項2、3、6?25も同様の理由で、本願発明の詳細な説明に記載したものではない。

2.理由3.(2)について
本願請求項1に「有意性のある」との用語が用いられているが、該「有意性のある」とは技術的にどの様なことを意味するのかが明確ではない。
例えば、「抽象画」などはこれを見る人によって有意性のあるものととらえられたり、有意性のないものととらえられたりするように、「有意性のある」ものと「有意性のない」ものとの境界は極めて曖昧なものであるから、発明の範囲が不明確となる。また、本願発明の詳細な説明中で「有意性」と言う用語を明確に定義する記載もない。従って、本願請求項1に係る発明は明確でない。
また、本願請求項2?25も本願請求項1に従属する請求項なので、本願請求項1と同様に明確でない。

3.理由3.(3)について
本願請求項2、本願請求項19?22には、「観念を有する」との用語が用いられているが、該「観念を有する」と言う記載も本願特許請求の範囲の記載からはその意味は明確でない。本願発明の詳細な説明には、段落【0002】に「前記有意性あるデータとは、典型的には観念を表した画像データまたは音声データである。」、段落【0031】に「第七の要素は、有意性あるデータの元となる平面的または立体的な物(例えば写真または積木)あるいは観念を表した文章、図形、色、音などの有意原始対象物(13)である。」との記載があるが、「観念を有する」という記載の意味を明確に定義する記載は見あたらない。
従って、本願請求項2、19?22に係る発明は明確でない。

4.理由3.(4)について
本願請求項3に「集合的に配置された」とあるが、これも通常用いられる技術用語ではなく、その意味が明確ではない。本願発明の詳細な説明を参酌すると、通常の形式の画像データが例示されてはいるが、「集合的に配置された」なる記載の意味を明確に定義する記載は見あたらない。
従って、本願請求項3に係る発明は明確でない。

5.理由3.(5)について
本願請求項4では「前記主部の画素の値とこれに対応する副部の画素の値との間で」と、あたかも「主部」「副部」が画素の値を有する画像データであることが前提であるような記載がされているが、本願請求項4は末尾の「請求項1記載の電子データ置換法」と言う記載から見て本願請求項1の従属請求項であると認められる。しかしながら、本願請求項1では「主部」「副部」が画像データである旨の限定はされていない。このため、本願請求項4で限定される事項が本願請求項1のどの事項を限定しているのかを明確に把握することができない。
従って、本願請求項4に係る発明は明確でない。

6.理由3.(6)について
本願請求項5には「前記演算は」との記載があるが、本願請求項5は末尾の「請求項1記載の電子データ置換法」と言う記載から見て本願請求項1の従属請求項であると認められる。しかしながら、本願請求項1では「演算」と言う用語は用いられていない。このため、本願請求項5で限定される事項が本願請求項1のどの事項を限定しているのかを明確に把握することできない。
従って、本願請求項5に係る発明は明確でない。

7.理由3.(7)について
本願請求項10には「前記媒体は有価証券である」との記載があるが、かかる事項は本願発明の詳細な説明には記載されていない。
従って、本願請求項10に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項10に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものである。

8.理由3.(8)について
本願請求項11には「前記媒体はプリペイドカード、キャッシュカードまたはクレジットカードである」との記載があるが、かかる事項は本願発明の詳細な説明には記載されていない。
従って、本願請求項11に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項11に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものである。

9.理由3.(9)について
本願請求項12には「前記媒体は社員証またはメンバーズカードなどの、組織に属する個人またはグループであることを示すカード類である」との記載があるが、かかる事項は本願発明の詳細な説明には記載されていない。
従って、本願請求項12に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項12に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものである。

10.理由3.(10)について
本願請求項13には「前記媒体は個人、法人、地方自治体、国等に関する事実が記載された書面である」との記載があるが、かかる事項は本願発明の詳細な説明には記載されていない。
従って、本願請求項13に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項13に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものである。

11.理由3.(11)について
本願請求項14には「前記媒体はファクシミリで受信印刷される出力用紙である」との記載があるが、かかる事項は本願発明の詳細な説明には記載されていない。
従って、本願請求項14に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項14に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものである。

12.理由3.(12)について
本願請求項15には「前記媒体はプリンタ、プロッタまたは複写機等により印刷された書面である」との記載があるが、「プロッタ」「複写機」は本願発明の詳細な説明には記載されていない。
従って、本願請求項15に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項15に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものである。

13.理由3.(13)について
本願請求項17には「前記表示面は陰極線管表示装置、液晶表示装置、プラズマ表示装置、ホログラムまたはガラスである」との記載があるが、かかる事項は本願発明の詳細な説明には記載されていない。
従って、本願請求項17に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項17に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものである。

また、「表示面」とは表示装置の表示がなされている面のことを意味するので、「表示面」は「陰極線管表示装置、液晶表示装置、プラズマ表示装置」であるという表現は、技術的に合理的な解釈ができない記載である。
従って、本願請求項17に係る発明は明確ではない。

14.理由3.(14)について
本願請求項18には「前記原始データ、前記主部または前記副部の少なくとも1は画像データで構成されており、当該画像データがバーコード類を構成していることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。」とあり、また、本願発明の詳細な説明の段落【0172】以降にその説明がなされているが、バーコード類は本願発明の詳細な説明の冒頭で説明されている従来技術と同様に「文字、数字、図形、あるいは記号などを用いて有意性ある情報として表記されたものとは異なり、特殊技能を備えた技術者以外の者にとっては可読なものではない」もの「つまり、そのバイナリデータを見ても意味を理解することができないか、少なくとも時間的あるいは思考上の相当の困難を伴う;と言える」ものに他ならない。すなわち、「画像データ」(すなわち「有意性のある主部」)を「バーコード類」としてしまっては、従来技術と同じ問題点を抱えるものに戻ってしまうことになり、本願特許請求の範囲記載の事項と本願発明の詳細な説明記載の課題とが矛盾したものになってしまう。
そして本願請求項1は本願請求項18の上位請求項であるから、本願請求項1の「有意性のある主部」も「バーコード類」を含むようなものと解釈せざるを得ない。
かかる理由から、本願発明の詳細な説明は、本願請求項1?25に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていないものである。
また、本願請求項1?25は、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、その結果、本願発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになっているものとも解することができ、本願発明の詳細な説明に記載されていない(サポートされていない)ものとも言える。

15.理由3.(15)について
本願請求項20には「前記観念を有する音声データは自然人の声または楽曲を構成している」との記載があるが、かかる事項は本願発明の詳細な説明には記載されていない。
従って、本願請求項20に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項10に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものである。

また「前記観念を有する音声データは」との記載があるが、本願請求項20は末尾の「請求項1記載の電子データ置換法」と言う記載から見て本願請求項1の従属請求項であると認められる。しかしながら、本願請求項1では「観念を有する音声データ」と言う語は用いられていない。このため、本願請求項20で限定される事項が本願請求項1のどの事項を限定しているのかを明確に把握することできない。
従って、本願請求項20に係る発明は明確でない。

16.理由3.(16)について
本願請求項21には「前記有意性のある主部は、観念を有する物体で構成されていることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法」とあるが、本願請求項1の記載によれば「有意性のある主部」とは「データ」を「分割する」ことで得られるものなので、本願請求項21の「物体」を通常の意味での「物体」と解釈してしまっては、技術的な矛盾を生じてしまう。また、本願発明の詳細な説明では段落【0003】に「有意性あるデータとして物体を採用した場合は、元の電子データを接触可能にする効果を持つ。」との記載はあるが、「物体」なる用語を通常とは異なる特別な意味の用語として明確に定義する記載は見あたらない。
従って、本願請求項21に係る発明は明確でない。

17.理由3.(17)について
本願請求項22には「前記観念を有する物体は点字、文字または記号を構成している」とあるが「前記観念を有する物体」が「文字または記号を構成している」ことは本願発明の詳細な説明には記載されていない。
従って、本願請求項22に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではない。
また、このため本願発明の詳細な説明は本願請求項22に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものである。

また「物体」が「文字」や「記号」を「構成する」とはどのようなことを表現しているのかを明確に把握できず、具体的な事物を想定することもできない。
本願発明の詳細な説明には、段落【0003】に「有意性あるデータとして物体を採用した場合は、元の電子データを接触可能にする効果を持つ。」と、【0068】に「あるいは触覚を利用して、点字を意味するピンの列びを構成するするように変換するというのでも良い。」との記載があるが、該記載も「物体」が「文字」や「記号」を「構成する」という事項の明確な定義をする記載ではない。
従って、本願請求項22に係る発明は明確でない。

また、本願請求項22は末尾の「請求項1記載の電子データ置換法」と言う記載から見て本願請求項1の従属請求項であると認められる。しかしながら、本願請求項1では「観念を有する物体」と言う用語は用いられていない。このため、本願請求項22の「前記観念を有する物体は・・・」と言う限定が本願請求項1のどの事項を限定しているのかを明確に把握することできない。
従って、この点から見ても、本願請求項22に係る発明は明確でない。

18.理由3.(18)について
本願請求項24に「前記原始データ、前記主部、前記副部、前記二次原始データ、前記二次主部まはた前記二次副部のうちの2以上のデータ片を、」との記載があるが、本願請求項24は末尾の「請求項1記載の電子データ置換法」と言う記載から見て本願請求項1の従属請求項であると認められる。しかしながら、本願請求項1では「二次原始データ」、「二次主部」と言う用語は用いられていない。このため、本願請求項24で限定される事項が本願請求項1のどの事項を限定しているのかを明確に把握することできない。
従って、本願請求項24に係る発明は明確でない。

19.理由3.(19)について
本願請求項24に「見かけ上1のデータ片として扱うことが可能である」とあるが、あるデータ片を1のデータ片と見るか複数のデータ片とみるかは、これを見る人によって異なった解釈がなされてしまうもので、「見かけ上1のデータ片として扱うことが可能である」ものとそうで無いものとの境界は極めて曖昧なものである。また、本願発明の詳細な説明中で「見かけ上1のデータ片として扱うことが可能である」とはデータ片がどのような構造であるのかを明確に定義しているわけでもない。
従って、本願請求項24に係る発明は明確でない。

20.小結
以上の通りであるから、この出願の発明の詳細な説明は、本願請求項1?25に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が十分に記載されておらず、特許法第36条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載がされていない。
また、本願請求項1?25に係る発明は、この出願の発明の詳細な説明に記載したものではないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
さらに、本願請求項1?25に係る発明は明確でないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

よって、本願明細書は、特許法第36条第4項および第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていない。



第7.意見書の主張・補正案について
以下に、上記第1.2.(2)に示した平成21年7月27日付け(同年7月29日受付)の意見書(以下単に「意見書」と記す。)、および、上記第1.2.(3)に示した平成21年10月6日の面接において提示された補正案(以下、単に「補正案」と記す。)について検討する。


1.意見書の主張について

(1)まず、意見書における
「請求項1の「分割」の語は、<発明の詳細な説明>で裏付けられている範囲に限定するように補正いたします。」
「請求項5の「前記演算」は請求項4の「演算」を指すものです。請求項5の従属先を訂正(補正)いたします。」
「「有意性」、「観念を有する」、および「見かけ上1のデータ片」なる用語については別途説明いたします。不鮮明な点は解消したいと存じます。」
「複数の請求項に関し従属関係等(「技術的な矛盾」なる指摘を含む。)が不鮮明になっている点は別途説明いたします。不鮮明な点は解消したいと存じます。」
との主張について検討するに、上記当審拒絶理由の指定期間内に補正書の提出はなかったので、この主張は拒絶の理由を覆す根拠となるものではない。

(2)また、意見書における
「請求項1は、引用文献1に対して、特許法第29条に規定に該当しないと存じます。請求項1は、引用文献1とは異なり、「情報伝送率」なる概念を導入する必要がないものです。請求項1の従属項も同様です。」
との主張について検討するに、本願請求項1?25に「情報伝送率」なる概念を導入しない旨の記載があるわけではないので、この主張も拒絶の理由を覆す根拠となるものではない。
なお、本願の発明の詳細な説明を参酌しても、「情報伝送率」なる概念の導入を積極的に除外することで、何らかの技術的課題を解決しようとする技術思想が開示されているとも認められず、これらを除外する旨を特許請求の範囲で限定する補正をしたとしても、これは願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした補正とはならず、到底特許し得るものではない。
また、引用発明1の「情報伝送率」を固定して行う暗号化法とすることは、その実施に際して当業者であれば適宜に採用しうる設計的事項に過ぎず、「情報伝送率」を用いない旨の限定がなされたとしても、この点に進歩性を認めることはできない。

(3)また、意見書における
「請求項1は、引用文献2とは異なり、「画像読取手段」は必須ではありません。請求項1の従属項(<発明の詳細な説明>の0032項または0033項適用関係を除く。)も同様です。」
との主張について検討するに、本願請求項1?25に「画像読取手段」を用いない旨の記載があるわけではないので、この主張も拒絶の理由を覆す根拠となるものではない。
また、この主張は、請求人が示す本願明細書の段落【0032】【0033】の記載と矛盾することからみても、到底認め得るものではない。
なお、本願の発明の詳細な説明を参酌しても、これら「画像読取手段」を積極的に除外することで、何らかの技術的課題を解決しようとする技術思想が開示されているとも認められず、これらを除外する旨を特許請求の範囲で限定する補正をしたとしても、これは願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした補正とはならず、到底特許し得るものではない。

(4)また、意見書における
「当該「画像読取手段」に相当するものを用いる場合でも、引用文献2で開示されている内容とは異なり、「該画像読取手段の出力を画像処理」するという概念を導入する必要がないものです(図4の電子化入力装置(14)付近、図5、および図7参照)。」
との主張について検討するに、本願請求項1?25に「画像処理」を行わないない旨の記載があるわけではないので、この主張も拒絶の理由を覆す根拠となるものではない。
また、本願明細書において例示される「分割」なる処理は、「画像処理」とも言えるものであるから、この主張は本願明細書の記載と矛盾するものであり、到底認め得るものではない。
なお、本願の発明の詳細な説明を参酌しても、これら「画像処理」を積極的に除外することで、何らかの技術的課題を解決しようとする技術思想が開示されているとも認められず、これらを除外する旨を特許請求の範囲で限定する補正をしたとしても、これは願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてした補正とはならず、到底特許し得るものではない。

(5)また、意見書における
「請求項10、11、12、13、14、15、および17は、請求項8の「媒体」について限定したものであり、これをもって各請求項が不明確になるものではないものと存じます。」
との主張について検討するに、上記当審拒絶理由の理由3.(7)?(13)においては、各請求項に記載の事項が発明の詳細な説明に記載されていない旨(特許法第36条第6項第1号違反並びに同条第4項違反)を指摘したのであって、不明確(特許法第36条第6項第2号違反)を指摘したものではない。
従って、この主張も拒絶の理由を覆す根拠となるものではない。

(6)そして、意見書における
「請求項24の「二次原始データ」および「二次主部」なる用語については、<発明の詳細な説明>の0021項および0075項に記載しております。不鮮明な点は別途説明して解消したいと存じます。」
との主張について検討するに、上記当審拒絶理由の理由3.(18)においては、本願請求項1では「二次原始データ」、「二次主部」と言う用語は用いられていないにも関わらず、該請求項1を引用する請求項24で「前記二次主部まはた前記二次副部」と記載されているため明確でない旨の記載不備を指摘したのであって、発明の詳細な説明にこれに関連した記載があるからといって、当該記載不備が解消されるものではない。
なお、本願明細書の段落【0021】には「本発明の第五の目的は、請求項1記載のデータ処理方法を2以上繰り返して適用すること、つまり再帰的な適用を可能にすることである。」と、段落【0075】には「本発明の電子データ置換処理は、2回以上繰り返して再帰的に適用することができる。これにより1のデータ片である原始データは、3以上のデータ片に分割することができる。」との記載があるが、「二次原始データ」、「二次主部」なる用語が記載されているわけでもない。

(7)以上の通りであるから、意見書の主張はいずれも当審拒絶理由通知で通知した理由を覆す根拠となるものではない。


2.補正案について

(1)補正案の請求項1について
補正案で提示される請求項1は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項1】
任意の電子データを原始データとし、これを、
別の任意の電子データ(本発明の利用者が取扱を所望する任意の内容とする。前記原始データとの一致を排除しない。)たる主部と
前記主部と連係して前記原始データに復元可能な副部
とに
増量の変換処理をする情報処理方法であって、
前記主部および前記副部から
前記原始データへ逆変換処理する際に二項演算を用いること
を特徴とする電子データ置換法。」
と言うものであり、
本願請求項1の「有意性のある主部」を「別の任意の電子データ(本発明の利用者が取扱を所望する任意の内容とする。前記原始データとの一致を排除しない。)たる主部」に、
本願請求項1の「分割すること」を「増量の変換処理をする情報処理方法であって、前記主部および前記副部から前記原始データへ逆変換処理する際に二項演算を用いること」に補正しようとするものである。

引用発明1の「攪乱用画像」も、引用発明2の「共通鍵画像」も、特定の画像に限られたものではないのであるから、本願請求項1に係る発明の「有意性のある主部」を「別の任意の電子データ(本発明の利用者が取扱を所望する任意の内容とする。前記原始データとの一致を排除しない。)たる主部」とすることで、引用発明1、2と相違するものになる訳では無い。
また、補正案における「増量の変換処理をする情報処理方法」なる用語は「原始データ」の情報量よりも「主部」と「副部」の情報量のほうが大きいことを意味すると解されるところ、引用発明において受信者に伝送されるものは「攪乱用画像」と「座標軸上の要素の並び」であるから、これも「増量の変換処理」と言えるものである。
また、引用発明1においては復号に際して「排他的論理和」を行っているのであるから、「前記主部および前記副部から前記原始データへ逆変換処理する際に二項演算を用いる」ものと言える。
従って、補正案で提示される請求項1に係る発明も引用発明1と相違の無いものであり、新規性進歩性を認めることはできない。
従って、補正案で提示される請求項1に係る発明も、引用文献1記載の発明であり、また、引用文献1記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

また、引用発明2の「共通鍵画像」も、「一般ユーザが筆記具を用いて手書きしたもの、既存の印刷物や指紋のコピー、印鑑の印影、バーコードパターンなど」が例示される如く、特定の画像に限られたものではないのであるから、本願請求項1に係る発明の「有意性のある主部」を「別の任意の電子データ(本発明の利用者が取扱を所望する任意の内容とする。前記原始データとの一致を排除しない。)たる主部」とすることで、これが引用発明2との相違点になる訳では無い。
また、上記第5.10.で論じたように、引用文献2記載のものにおける「暗号化」として「排他的論理和」を採用することが排他的論理和を行うことで暗号化を行うことは、当業者であれば容易に想到し得たことであり、かかる「排他的論理和」のごとき画素数に変化の無い演算を採用した場合には、「平文」の情報量よりも「共通鍵画像」と「暗号文」の情報量のほうが大きいものとなることは必定である。
また、暗号化に「排他的論理和」を採用した場合には、復号に「排他的論理和」すなわち「二項演算」を採用することも必定である。
従って、補正案で提示される請求項1に係る発明も、引用文献2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

(2)補正案の請求項2について
補正案で提示される請求項2は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項2】
前記二項演算は排他的論理和
であることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。」
と言うものであり、
本願請求項5における「前記演算は排他的論理和を用いた論理演算である」を「前記二項演算は排他的論理和 である」と補正しようとするものである。
この「前記二項演算」は、補正案で提示される請求項1における「二項演算」すなわち「逆変換処理する際」の「二項演算」を意味する。
しかしながら、上記(1)記載の如く、引用発明1においても復号に際して「排他的論理和」を行っており、また、引用発明2の暗号化に「排他的論理和」を採用した場合には、復号に「排他的論理和」すなわち「二項演算」を採用することも必定である。
従って、補正案で提示される請求項2に係る発明にも、新規性進歩性を認めることはできない。

(3)補正案の請求項3について
補正案で提示される請求項3は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項3】
請求項1記載の電子データ置換法の
第N(ここでNは1以上の整数。本請求項において以下同様。)回目の実施に関係する
前記原始データ、前記主部、および前記副部をそれぞれ
第N原始データ、第N主部、および第N副部と用語定義した場合において、
請求項1記載の電子データ置換法の
第N+1回目の実施において、
第N+1原始データは
前記第N主部または前記第N副部
であることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法」
と言うものであり、
本願明細書の段落【0021】の「本発明の第五の目的は、請求項1記載のデータ処理方法を2以上繰り返して適用すること、つまり再帰的な適用を可能にすることである。」と、段落【0075】の「本発明の電子データ置換処理は、2回以上繰り返して再帰的に適用することができる。これにより1のデータ片である原始データは、3以上のデータ片に分割することができる。」等の記載に対応する発明である
しかしながら、上記第5.45.及び46.で述べたように主情報と副情報の二項演算を複数回行うことも従来から適宜採用されている周知技術であるから、補正案で提示される請求項3に係る発明にも進歩性を認めることはできない。

(4)補正案の請求項4について
補正案で提示される請求項4は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項4】
前記原始データ、前記主部または前記副部のうちの2以上のデータ片を、
外観上1のデータ片として扱うことが可能
であることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。」
と言うものであり、さらに
「補足:「外観上1のデータ片として扱う」に関する明細書の記載:
【0079】
【0099】?【0103】」と補足している。
この補正案で提示される請求項4は本願請求項24に対応するものと認められ、
本願請求項24の「前記原始データ、前記主部、前記副部、前記二次原始データ、前記二次主部まはた前記二次副部」を「前記原始データ、前記主部または前記副部」とし、
本願請求項24の「見かけ上1のデータ片」を「外観上1のデータ片」
と補正しようとするものである。
しかしながら、当該「外観上1のデータ片」の解釈に際し、本願明細書段落【0079】、【0099】?【0103】等を参酌してみても、引用文献6(特に引用文献記載事項6-3等)、引用文献14(特に引用文献記載事項14-2等)、引用文献15(特に引用文献記載事項15-3等)、引用文献16(特に引用文献記載事項16-3等)等に開示のものを除外して解釈すべき理由は見当たらず、補正案の請求項4に係る発明にも進歩性を認めることはできない。
また、「外観上1のデータ片」なる用語も本願請求項24の「見かけ上1のデータ片」と同様に、あるデータ片を1のデータ片と見るか複数のデータ片とみるかは、例えこれが重なっていようとも、これを見る人によって異なった解釈がなされてしまうもので、「外観上1のデータ片として扱うことが可能である」ものとそうで無いものとの境界は極めて曖昧なものである。また、本願発明の詳細な説明中で「外観上1のデータ片として扱うことが可能である」とはデータ片がどのような構造であるのかを明確に定義しているわけでもない。従って補正案の請求項4に係る発明も明確でない。

(5)補正案の請求項5について
補正案で提示される請求項5は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項5】
前記変換処理と
前記逆変換処理とが
同一の方法または同一の装置により処理可能
であることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。」
と言うものであり、
本願請求項25における「前記原始データを前記主部と前記副部とに分割する際に用いる演算」を「前記変換処理」に
本願請求項25における「前記主部と前記副部とから原始データを復元する際に用いる演算」を「前記逆変換処理」に
補正しようとするものである。
しかしながら、上記第4.15.において述べたように、引用発明1は、暗号化においても復号においても、「排他的論理和」と言う同じ演算を行っている。また、第5.50.において述べたように、暗号と復号とに同じ演算を行うことは周知慣用技術に他ならない。
従って、補正案の請求項5に係る発明にも新規性進歩性を認めることはできない。

(6)補正案の請求項6について
補正案で提示される請求項6は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項6】
前記主部または前記副部には
各自を基に生成された改竄有無検出符号または誤り訂正符号
が付加されていること
を特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。」
と言うものであり、
本願請求項6、7を1つの請求項にまとめ、本願請求項6、7の「前記主部または前記副部の構成データより」を「各自を基に」
と補正しようとするものである。
しかしながら、上記第5.11.?14.で述べたように「改竄の有無を検出するための符号を信号に付加すること」も「誤りを訂正するための符号を信号に付加すること」も当業者の慣用技術である。
従って、補正案の請求項6に係る発明にも進歩性を認めることはできない。

(7)補正案の請求項7について
補正案で提示される請求項7は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項7】
前記主部および前記副部が画像データ
(値を有する画素が集合的に配置されたもの)
であることを特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。」
と言うものであり、
本願請求項3の「前記主部と前記副部はいずれも」を「前記主部および前記副部が」とし、
本願請求項3の「値を有する画素が集合的に配置された画像データである」を「画像データ(値を有する画素が集合的に配置されたもの)である」と補正しようとするものである。
しかしながら、「前記主部および前記副部が」「画像データ」「である」ことは、上記第4.3.?6.でも論じたことと同様に、引用発明1も引用発明2も、「前記主部および前記副部が」「画像データ」「である」といえるものである。
従って、補正案の請求項6に係る発明にも新規性進歩性を認めることはできない。

(8)補正案の請求項8について
補正案で提示される請求項8は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項8】
前記主部と前記副部の少なくとも1は画像データであり、
当該画像データは媒体の表面に印刷されていること
を特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。」
と言うものであり、
本願請求項8の「前記主部または前記副部の少なくとも一方は画像データで構成されており」を「前記主部と前記副部の少なくとも1は画像データであり」と補正しようとするものである。
しかしながら、「前記主部と前記副部の少なくとも1は画像データ」とすることは、「前記主部または前記副部の少なくとも一方は画像データで構成されており」とすることと、格別異なる構成を意味するものとは認められず、上記上記第4.3.?6.で論じたのと同様に、引用発明1、2においても「前記主部と前記副部の少なくとも1は画像データ」であるといえるものである。そして、第4.10.、11.で論じたのと同様に、引用発明1、2においても「当該画像データは媒体の表面に印刷されている」と言えるものでありる。
従って、補正案の請求項8に係る発明にも新規性進歩性を認めることはできない。

(9)補正案の請求項9について
補正案で提示される請求項9は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項9(必要に応じて複数項に分解)】
前記媒体は、
(1)名刺またはシール、
(2)有価証券、
(3)プリペイドカ-ド、キャッシュカードまたはクレジットカード、
(4)社員証またはメンバーズカードなどの、組職に属する個人またはグループであることを示すカード類、
(5)個人、法人、地方自治体、国等に関する事実が記載された書面、
(6)ファクシミリで受信印刷される出力用紙、もしくは、
(7)プリンタ、プロッタまたは複写機等により印刷された書面
であることを特徴とする請求項8記載の電子データ置換法。」
と言うものであり、
本願請求項9?15を1の請求項にまとめようとするものである。
しかしながら、本願請求項9?15に係る発明は、上記第4.12.、13.、上記第5.17.?30.で論じたように、その新規性進歩性が否定されるものであるから、補正案で提示される請求項9に係る発明にも新規性進歩性を認めることはできない。

また、1の請求項にまとめたからといって、これが発明の詳細な説明に記載されたものになるわけでは無い。
従って、補正案で提示される請求項9は、依然として本願発明の詳細な説明に記載したものではなく、本願発明の詳細な説明は補正案で提示される請求項9に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものである。

(10)補正案の請求項10について
補正案で提示される請求項10は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項10】
前記主部と前記副部の少なくとも1は画像データであり、
当該画像データは表示面上に表示されていること
を特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。」
と言うものであり、
本願請求項16の「前記主部または前記副部はいずれも画像データで構成されており」をこれよりも上位概念である「前記主部と前記副部の少なくとも1は画像データ」に拡張するものである。
従って、上記第5.31.、32.で論じたのと同様に、補正案で提示される請求項10に係る発明にも新規性進歩性を認めることはできない。

(11)補正案の請求項11について
補正案で提示される請求項11は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項11】
前記表示面は陰極線管表示装置の表示面、液晶表示装置の表示面、プラズマ表示装置の表示面、ホログラムまたはガラス
であることを特徴とする請求項10記載の電子データ置換法。」
と言うものであり、
本願請求項17の「陰極線管表示装置」を「陰極線管表示装置の表示面」とし、「液晶表示装置」を「液晶表示装置の表示面」とし、「プラズマ表示装置」を「プラズマ表示装置の表示面」と補正しようとするものである。
しかしながら、上記第5.33.34.で述べたように、「陰極線管表示装置」、「液晶表示装置」、「プラズマ表示装置」は、情報表示手段として周知慣用のものであるから、「表示面」を「陰極線管表示装置の表示面」「液晶表示装置の表示面」「プラズマ表示装置の表示面」とすることも周知慣用技術に他ならない。
従って、上記第5.33.34.で論じたのと同様に、補正案で提示される請求項11に係る発明にも新規性進歩性を認めることはできない。
また、「前記表示面は陰極線管表示装置の表示面、液晶表示装置の表示面、プラズマ表示装置の表示面、ホログラムまたはガラスである」との事項も本願発明の詳細な説明には記載されておらず、補正案で提示される請求項11に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではない。また、このため本願発明の詳細な説明は補正案で提示される請求項11に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものである。

(12)補正案の請求項12について
補正案で提示される請求項12は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項12】
前記原始データと前記主部と前記副部の少なくとも1は画像データであり、
当該画像データがバーコード類を構成していること
を特徴とする請求項1記載の電子データ置換法」
と言うものであり、
本願請求項18の「前記原始データ、前記主部または前記副部の少なくとも1は画像データで構成されており」を「前記原始データと前記主部と前記副部の少なくとも1は画像データであり」と補正しようとするものである。
しかしながら、「前記原始データと前記主部と前記副部の少なくとも1は画像データ」とすることは、「前記原始データ、前記主部または前記副部の少なくとも1は画像データで構成されて」いることと、格別異なる構成を意味するものとは認められず、上記第4.3.?6.で論じたように、引用発明1、2においても「前記原始データと前記主部と前記副部の少なくとも1は画像データ」であるといえるものである。
また、上記第4.14.、第5.35.36.等でも論じたように、「画像データがバーコード類を構成していること」とする点には、新規性進歩性を認めることはできない。
従って、補正案の請求項12に係る発明にも新規性進歩性を認めることはできない。

また、請求人は補正案にて「補足:JANコード、QRコード、PDF417などのバーコード類は、複数の長方形(多くは黒色か白色)が集合的に配置されたものですので、有意で、主部に適格です。引用文献2の図3の中のシンボルも主部に適格です。これらのバーコード類をバーコード読取装置で読み取った際に出力される値については本請求項の範囲外です。」と補足している。
しかしながら、これらのバーコード類は可視的なものではあっても通常の人間が可読なものではなく、「特殊技能を備えた技術者以外の者にとっては可読なもの」ではなく、これ「を見ても意味を理解することができないか、少なくとも時間的あるいは思考上の相当の困難を伴う;と言える」ものに他ならない。
そして補正案で提示される請求項1は補正案で提示される請求項12の上位請求項であるから、補正案で提示される請求項1の「別の任意の電子データ(本発明の利用者が取扱を所望する任意の内容とする。前記原始データとの一致を排除しない。)たる主部」も「バーコード類」を含むようなものと解釈せざるを得ない。
従って、本願発明の詳細な説明は、補正案で提示される請求項1?16に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていないものである。
また、補正案で提示される請求項1?16は、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、その結果、本願発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになっているものとも解することができ、本願発明の詳細な説明に記載されていない(サポートされていない)ものとも言える。

(13)補正案の請求項13について
補正案で提示される請求項13は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項13】
前記主部が音声データ(本発明の利用者が取扱を所望する任意の内容とする。)であること
を特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。」
と言うものであり、
本願請求項19の「前記有意性のある主部は」を「前記主部が」とし、
本願請求項19の「観念を有する音声データで構成されている」を「音声データ(本発明の利用者が取扱を所望する任意の内容とする。)である」と補正しようとするものである。
しかしながら、上記第5.37.、38.で述べた通り、音声情報とデータ情報を一緒に伝送することは従来から周知の技術思想に過ぎないのであるから、「主部」を「音声データ」とすることも当業者が容易にし得たものである。
従って、補正案で提示される請求項13に係る発明にも進歩性を認めることはできない。

(14)補正案の請求項14について
補正案で提示される請求項14は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項14】
前記音声データは
自然人の声または楽曲を構成していること
を特徴とする請求項13記載の電子データ置換法。」
と言うものであり、
本願請求項20の「前記観念を有する音声データ」を「前記音声データ」とし、引用する請求項を「請求項13」としようとするものである。
しかしながら、音声データを自然人の声または楽曲とする点は、上記第5.39.、40.で述べた様に周知の事項に過ぎない。
従って、補正案で提示される請求項14に係る発明にも進歩性を認めることはできない。

また、「音声データ」が「自然人の声または楽曲を構成していること」本願発明の詳細な説明には記載されていない。
従って、補正案で提示される請求項14に係る発明は本願発明の詳細な説明に記載したものではなく、また、本願発明の詳細な説明は補正案で提示される請求項14に係る発明の技術上の意義を理解するために必要な事項の記載がなされていないものである。

(15)補正案の請求項15について
補正案で提示される請求項15は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項15】
前記主部が立体デ-タ(物体に表す電子データであって、本発明の利用者が取扱を所望する任意の内容とする。)であること
を特徴とする請求項1記載の電子データ置換法。」
と言うものであり、
本願請求項21の「前記有意性のある主部は」を「前記主部が」とし
本願請求項21の「観念を有する物体で構成されている」を「立体デ-タ(物体に表す電子データであって、本発明の利用者が取扱を所望する任意の内容とする。)である」と補正しようとするものである。
しかしながら、上記第5.41.、42.で述べた引用文献18の「凹凸部」や、引用文献19の「文字・記号など」を「触知表示手段」で表示したもののように、データを触覚で知覚可能に表現したものも「立体デ-タ(物体に表す電子データであって、本発明の利用者が取扱を所望する任意の内容とする。)」に他ならないと解される。
従って、補正案で提示される請求項15に係る発明にも進歩性を認めることはできない。

(16)補正案の請求項16について
補正案で提示される請求項16は、上記第1.2.(3)に示した通り、
「【請求項16】
前記物体は
点字、文字、または記号を表す触覚ピン構成もしくは点字自体
であること
を特徴とする請求項15記載の電子データ置換法。」
と言うものであり、
本願請求項22の「前記観念を有する物体」を「前記物体」とし
本願請求項22の「点字、文字または記号を構成していること」を「点字、文字、または記号を表す触覚ピン構成もしくは点字自体であること」とし
引用する請求項を請求項15としようとするものである。
しかしながら、上記第5.43.?44.で述べたように、情報を「点字」で表現したり、「文字」、「記号」等を触覚で知覚可能な情報として表現することは周知慣用技術に過ぎない。
従って、補正案で提示される請求項16に係る発明にも進歩性を認めることはできない。

(17)以上の通り、本願明細書の特許請求の範囲が、補正案で提示されるとおりに補正されたと仮定しても、当審拒絶理由で通知した拒絶理由が解消されるものではない。



第8.むすび
上記第4.16.のとおり、本願請求項1?5、8、14、15、18、25に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

上記第5.51.のとおり、本願請求項1?25に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

上記第6.20.のとおり、本願明細書の記載は特許法第36条第4項及び第6項第1号、第2号に規定する要件を満たしていないものであるから、本願は特許を受けることができない。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-10-23 
結審通知日 2009-11-10 
審決日 2009-12-04 
出願番号 特願平8-278573
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04L)
P 1 8・ 537- WZ (H04L)
P 1 8・ 113- WZ (H04L)
P 1 8・ 536- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 重徳  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 鈴木 匡明
宮司 卓佳
発明の名称 電子データ置換法  

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