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審決分類 |
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1229141 |
審判番号 | 不服2005-2326 |
総通号数 | 134 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-02-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-02-10 |
確定日 | 2010-12-15 |
事件の表示 | 特願2000-614793「自動装着機の作動方法、自動装着機、自動装着機用の交換可能なコンポーネント、並びに自動装着機と交換可能なコンポーネントとからなるシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月 9日国際公開、WO00/67544、平成14年12月17日国内公表、特表2002-543602〕についてした平成20年7月8日付けの審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成20(行ケ)第10432号、平成21年8月20日判決言渡)があったので、さらに審理の結果、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判に係る出願は、2000年4月3日(優先権主張1999年4月30日、ドイツ)に国際出願されたもので、平成13年10月30日付けで特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書が提出され、平成16年5月17日付けで拒絶理由通知書が送付され、同年10月21日付けで願書に添付した明細書又は図面についての手続補正がされ、同年11月10日付けで拒絶査定された。 本件審判は、この査定を不服として平成17年2月10日に請求されたもので、同年3月8日付けで上記明細書又は図面についての手続補正がされ、平成20年7月8日付けで「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がされた。 この審決(以下、「一次審決」という。)に対し、平成20年11月20日に取消訴訟が提起され、知的財産高等裁判所の平成21年8月20日言渡の判決により、一次審決は取り消された。 第2 平成17年3月8日付けの手続補正について 【補正却下の結論】 平成17年3月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 【補正却下の理由】 1.本件補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の記載につき、以下の(cl)を(CL)と補正する事項を含む。 (cl);「【請求項1】 制御装置(6)を有する自動装着機(7)の作動方法であって、前記制御装置は、サブストレート(1)への構成素子(2)の装着を制御するようにした当該の作動方法において、 自動装着機(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた、該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データを自動装着機(7)内へのマウント前に求め、交換可能なコンポーネント(3,5,17)に割り当てられた記憶装置(15,16,18)内に記憶し、 自動装着機(7)内への交換可能なコンポーネント(3,5,17)のマウント後、先ず、特性データの少なくとも一部を、記憶装置(15,16,18)から自動装着機(7)の制御装置(6)内へ転送し、 特性データを、自動装着機(7)の作動中制御装置(6)により考慮するようにしたことを特徴とする自動装着機の作動方法。 【請求項2】 交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的データをマウント前に測定することを特徴とする請求項1記載の自動装着機(7)の作動方法。 【請求項3】 交換可能なコンポーネント(3,5,17)の記憶装置(15,16,18)と、自動装着機(7)の制御装置(6)との間のデータ交換が電気的線路を介して行われるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の自動装着機(7)の作動方法。 【請求項4】 交換可能なコンポーネント(3,5,17)の記憶装置(15,16,18)と自動装着機(7)の制御装置(6)との間のデータ交換を無線で行うことを特徴とする請求項1又は2記載の自動装着機(7)の作動方法。 【請求項5】 自動装着機の作動のための制御装置(6)を有し、構成素子(2)を受容するためと、後続してサブストレート(1)上へ構成素子(2)をおろして装着するための装着ヘッド(5)を有する自動装着機(7)において、 制御装置(6)は読出し装置を有し、該読出し装置により、自動装着機(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた、該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データが、前記交換可能なコンポーネント(3,5,17)に結合された記憶装置(15,16,18)から読出し可能であり、 制御装置(6)は、読み出された特性データを記憶し、装着プロセスのため使用するように構成されていることを特徴とする自動装着機(7)。 【請求項6】 自動装着機(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた、該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データに対する所属の記憶装置(15,16,18)を有することを特徴とする自動装着機(7)用の交換可能なコンポーネント(3,5,17)。 【請求項7】 記憶装置(15,16,18)は、無接触式に書き込み可能及び、読出し可能なメモリとして構成されており、該メモリは、交換可能なコンポーネント(3,5,17)に直接接続されていることを特徴とする、請求項6記載の交換可能なコンポーネント(3,5,17)。 【請求項8】 交換可能なコンポーネント(3,5,17)は、装着ヘッド(5)として構成されていることを特徴とする請求項6又は7記載の交換可能なコンポーネント(3,5,17)。 【請求項9】 自動装着機(7)と自動装着機(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)とから成るシステムにおいて、 自動装着機(7)は制御装置(6)を有し、 交換可能なコンポーネント(3,5,17)に、該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた、該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データに対する記憶装置(15,16,18)が結合されており、 制御装置(6)は、記憶装置(15,16,18)から特性データを読出し、それらのデータを装着プロセスのために使用するように構成されていることを特徴とする自動装着機(7)と自動装着機(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)とから成るシステム。」 (CL)「【請求項1】 制御装置(6)を有する自動装着機(7)の作動方法であって、前記制御装置は、サブストレート(1)への構成素子(2)の装着を制御するようにした当該の作動方法において、 自動装着機(7)の交換可能な装着ヘッド(5)の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて求められた、該交換可能な装着ヘッド(5)の他の保持装置(4)の幾何学的特性データを、自動装着機(7)内へのマウント前に求め、交換可能な装着ヘッド(5)に割り当てられた記憶装置(15)内に記憶し、 自動装着機(7)内への交換可能な装着ヘッド(5)のマウント後、先ず、特性データの少なくとも一部を、記憶装置(15)から自動装着機(7)の制御装置(6)内へ転送し、 特性データを、自動装着機(7)の作動中制御装置(6)により考慮するようにしたことを特徴とする自動装着機の作動方法。 【請求項2】 該交換可能な装着ヘッド(5)の他の保持装置(4)の幾何学的特性データをマウント前に測定することを特徴とする請求項1記載の自動装着機(7)の作動方法。 【請求項3】 交換可能な装着ヘッド(5)の記憶装置(15)と自動装着機(7)の制御装置(6)との間のデータ交換が電気的線路を介して行われるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の自動装着機(7)の作動方法。 【請求項4】 交換可能な装着ヘッド(5)の記憶装置(15)と自動装着機(7)の制御装置(6)との間のデータ交換を無線で行うことを特徴とする請求項1又は2記載の自動装着機(7)の作動方法。 【請求項5】 自動装着機の作動のための制御装置(6)を有し、構成素子(2)を受容するためと、後続してサブストレート(1)上へ構成素子(2)をおろして装着するための装着ヘッド(5)を有する自動装着機(7)において、 制御装置(6)は読出し装置を有し、該読出し装置により、自動装着機(7)の交換可能な装着ヘッド(5)の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて、自動装着機(7)内へのマウント前に求められた、該交換可能な装着ヘッド(5)の他の保持装置(4)の幾何学的特性データが、前記交換可能な装着ヘッド(5)に割り当てられた記憶装置(15)から読出し可能であり、 制御装置(6)は、読み出された特性データを記憶し、装着プロセスのため使用するように構成されていることを特徴とする自動装着機(7)。 【請求項6】 該記憶装置(15)は、無接触式に書き込み可能及び、読出し可能なメモリとして構成されていることを特徴とする請求項5記載の自動装着機(7)。 【請求項7】 自動装着機(7)と自動装着機(7)の交換可能な装着ヘッド(5)とから成るシステムにおいて、 自動装着機(7)は制御装置(6)を有し、 交換可能な装着ヘッド(5)に、該交換可能な装着ヘッド(5)の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて、自動装着機(7)内へのマウント前に求められた、該交換可能な装着ヘッド(5)の他の保持装置(4)の幾何学的特性データを記憶する記憶装置(15)が設けられており、 制御装置(6)は、記憶装置(15)から特性データを読出し、それらのデータを装着プロセスのために使用するように構成されていることを特徴とする自動装着機(7)と自動装着機(7)の交換可能な装着ヘッド(5)とから成るシステム。」 (上記の下線部は、以下の「2.(1)」で認定する補正前後の各請求項の対応関係に基づく補正箇所を示す。) 以下、ここ「第2」において、本件補正前の特許請求の範囲(cl)の各請求項を、各項番を付して「旧請求項1」、「旧請求項2」…といい、本件補正後の特許請求の範囲(CL)の各請求項を、各項番を付して「新請求項1」、「新請求項2」…という。 2.本件補正の目的適合性について (1)新旧請求項の対応関係について 本件補正前後の特許請求の範囲の記載を対比すると、新請求項1?4,5,7は、それぞれ旧請求項1?4,5,9と発明の対象(作動方法、自動装着機、システム)が共通し、旧請求項の特定事項である「交換可能なコンポーネント(3,5,17)」及び「記憶装置(15,16,18)」を、それぞれ「装着ヘッド(5)」及び「記憶装置(15)」と限定する補正を含むから、新請求項1?4,5,7は、それぞれ旧請求項1?4,5,9と対応関係にあると認められる。 また、新請求項6は、「記憶装置(15)は、無接触式に書き込み可能及び、読出し可能なメモリとして構成されて」との特定事項が旧請求項7と共通し、旧請求項6,8には上記の特定事項が存在しないから、新請求項6は、旧請求項7に対応するものと認める余地がある。 そこで、対応関係にあると認められる各旧請求項を各新請求項とする補正が、「第36条第5項に規定する請求項の削除」(以下、単に、「請求項の削除」という。)、「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」(以下、「限定的減縮」という。)、「誤記の訂正」又は「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」(以下、単に、「明りようでない記載の釈明」という。)のいずれを目的としているか、について、以下に検討する。 (2)旧請求項1を新請求項1とする補正について ア 本件補正により、旧請求項1の「交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた、該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」は、新請求項1において、「交換可能な装着ヘッド(5)の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて求められた、該交換可能な装着ヘッド(5)の他の保持装置(4)の幾何学的特性データ」と特定されたから、旧請求項1の「交換可能なコンポーネント(3,5,17)」は、新請求項1において、「交換可能な装着ヘッド(5)」であって、「一つの保持装置」と「他の保持装置」を有するもの、すなわち、「2以上の保持装置を有する交換可能な装着ヘッド(5)」に実質的に特定され、旧請求項1の「幾何学的特性データ」は、新請求項1において、「一つの保持装置に関連付けられて求められた…他の保持装置の」ものに特定されたといえる。 イ これに対して、旧請求項1の「交換可能なコンポーネント(3,5,17)」は、「交換可能な装着ヘッド(5)」を含む概念であることが認められ、装着ヘッドであれば、装着物を保持する「保持装置」を有することも、技術常識から自明の事項であると認められる。 ウ しかし、旧請求項1には、装着ヘッドの「保持装置の数」についての特定事項は含まれていないし、保持装置の数が1つの装着ヘッドはあり得るから、装着ヘッドであれば、保持装置の数が常に2以上であることが自明であるとも認められない。 エ そうすると、旧請求項1を新請求項1とする補正は、保持装置の数についての新たな発明特定事項を付加するとともに、「幾何学的特性データ」について、「一つの保持装置」、「他の保持装置」という旧請求項1に存在しない特定事項を用いる限定を加えるものであるから、旧請求項1に記載した発明の限定的減縮を目的とするものに該当しない。 また、当該補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当しないことも明らかである。 (3)旧請求項2?4をそれぞれ新請求項2?4とする補正について 新請求項2?4は、それぞれ新請求項1の記載を引用しているから、新請求項2の「幾何学的特性データ」や、新請求項3,4の「データ交換」に係る「データ」は、「交換可能な装着ヘッド(5)が2以上の保持装置を有する」ことを前提として、「一つの保持装置」、「他の保持装置」との特定事項を用いて限定される事項である。 これに対して、旧請求項2?4は、保持装置の数を特定事項として含まない旧請求項1の記載を引用しているから、旧請求項2の「幾何学的特性データ」や、旧請求項3,4の「データ交換」に係る「データ」は、「交換可能な装着ヘッド(5)が2以上の保持装置を有する」ことを前提としない特定事項である。 そうすると、新請求項2?4は、旧請求項2?4に特定されない事項を前提とする発明特定事項を含むから、旧請求項2?4をそれぞれ新請求項2?4とする補正は、限定的減縮を目的とするものに該当しない。 また、当該補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当しないことも明らかである。 (4)旧請求項5,9をそれぞれ新請求項5,7とする補正について これらの補正も、上記「(2)ア」と同様に、旧請求項5及び9の「交換可能なコンポーネント(3,5,17)」を、新請求項5及び7において「2以上の保持装置を有する交換可能な装着ヘッド(5)」に実質的に特定する補正事項を含むから、上記「(2)イ」?「(2)エ」と同様の理由により、限定的減縮、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明のいずれをも目的とするものに該当しない。 (5)旧請求項7を新請求項6とする補正について ア 新請求項6は、新請求項5を引用しているから、独立形式で表現すると、以下のとおりとなる。 「自動装着機の作動のための制御装置(6)を有し、構成素子(2)を受容するためと、後続してサブストレート(1)上へ構成素子(2)をおろして装着するための装着ヘッド(5)を有する自動装着機(7)において、 制御装置(6)は読出し装置を有し、該読出し装置により、自動装着機(7)の交換可能な装着ヘッド(5)の定置の基準点としての一つの保持装置(4)に関連付けて、自動装着機(7)内へのマウント前に求められた、該交換可能な装着ヘッド(5)の他の保持装置(4)の幾何学的特性データが、前記交換可能な装着ヘッド(5)に割り当てられた記憶装置(15)から読出し可能であり、 該記憶装置(15)は、無接触式に書き込み可能及び、読出し可能なメモリとして構成されており、 制御装置(6)は、読み出された特性データを記憶し、装着プロセスのため使用するように構成されていることを特徴とする自動装着機(7)。」 イ これに対して、旧請求項7は旧請求項6を引用しているから、独立形式で表現すると、以下のとおりとなる。 「自動装着機(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた、該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データに対する所属の記憶装置(15,16,18)を有し、 前記記憶装置(15,16,18)は、無接触式に書き込み可能及び、読出し可能なメモリとして構成されており、該メモリは、交換可能なコンポーネント(3,5,17)に直接接続されていることを特徴とする自動装着機(7)用の交換可能なコンポーネント(3,5,17)。 」 ウ 新請求項6に記載した発明は、「自動装着機」に係る発明であるが、旧請求項7に記載した発明は、「コンポーネント(3,5,17)」に係る発明である。 そして、発明の詳細な説明の記載から明らかなように、「自動装着機」は「コンポーネント(3,5,17)」が交換可能にマウントされるものであって、「コンポーネント」そのものではないから、旧請求項7を新請求項6とする補正は、発明の対象である特定事項を変更するものである。 さらに、新請求項6は、旧請求項7に存在しない「制御装置」、「読出し装置」、「一つの保持装置」、「他の保持装置」との特定事項を含んでいる。 したがって、当該補正は、限定的減縮を目的とするものに該当しない。 また、当該補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当しないことも明らかである。 3.まとめ 以上のとおり、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 原査定の拒絶理由について 1.本件の発明 本件補正は、先に「第2」で述べたように却下すべきものであるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、本件補正前の願書に添付した明細書の請求項1に記載の事項により特定されるものと認める(「第2 1.」の(cl)【請求項1】の記載参照)。 2.原査定の拒絶理由 原査定の拒絶理由の1つは、概略、以下のものである。 「この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1乃至4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物1;特開平7-15172号公報 刊行物2;特開平5-13998号公報 刊行物3;特開平6-244598号公報 刊行物4;特開平4-311097号公報 」 3.刊行物1の記載事項 刊行物1には、以下の記載が認められる。 A;「【特許請求の範囲】 【請求項1】 パーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量を記憶する記憶手段と、この記憶手段のデータからパーツカセットのずれ量を読み出し、その大きさに応じて部品供給動作を位置補正する制御手段とを備えた部品供給装置。」 B;「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、電子部品をプリント基板に実装する電子部品実装機に設けられる部品供給装置に関するものである。」 C;「【0004】 パーツカセット1の交換作業は図4に示すように行われる。 まず、工程1において、部品切れや、段取り替えによりパーツカセット1の交換を実施する。各パーツカセット1は位置補正を行わなければその部品供給位置が所定の基準位置(装着ノズルの基準吸着位置)に対してずれており、このずれ量(オフセット寸法)は各パーツカセット1で異なるため、次の工程2で、そのパーツカセット1に該当するX,Y方向の位置や高さhの補正値の入力を行う。 この操作は、オペレーターが手作業で実施する。次に工程3において装着ノズル3の位置を補正して電子部品2の実装運転を開始する。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記従来構成では、部品供給部のパーツカセット1を入れ換えるたびに、そのパーツカセット1のX,Y方向の位置や高さhの補正値を同時に入力しなければならず、操作が繁雑で手間がかるため、実現困難となっていた。 その結果、パーツカセット1を入れ換える際に、生産性が低下したり、吸着率や精度が変化したりしていた。 【0006】 本発明は上記問題を解決するもので、パーツカセットを入れ換えた場合でも手間を掛けることなく、高い吸着率、精度を確保できる部品供給装置を提供することを目的とするものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】 上記問題を解決するために本発明は、パーツカセットに記憶手段を設け、その記憶手段に、各パーツカセットに対応するずれ量である高さおよびX-Y位置の補正値を記憶させておき、生産時には、その内容を読み出して装着ノズルの吸着動作時に位置補正を制御手段により行うものである。」 D;「【0010】図1に示すように、各パーツカセット1には、パーツカセット1の部品供給位置と所定の基準位置(装着ノズル3の基準吸着位置)とのずれ量である高さhおよびX-Y位置の補正値を記憶するメモリー4が取り付けられている。また、部品供給装置には、このパーツカセット1のメモリー4から補正値を読み出す読み取りヘッド5と、この読み取りヘッド5により読み取られた補正値の大きさに応じて部品供給動作を位置補正する制御手段6とが備えられている。 【0011】上記部品供給装置の動作について図2を参照しながら説明する。図2における工程1において、部品切れまたは段取り替えのためパーツカセット6を交換する。工程2において、パーツカセット1に取り付けられたメモリー4から、高さh、X-Y位置の補正値を読み取りヘッド5を使って読み出して制御手段6に伝達させる。工程3において、制御手段6は運転時に、装着ノズル3の位置を前記補正値をもとにX,Y,h方向に補正し、正確に電子部品2を吸着するように動作させる。」及び【図1】 4.引用発明の認定 刊行物1には、記載Aによれば、「パーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量を記憶する記憶手段と、この記憶手段のデータからパーツカセットのずれ量を読み出し、その大きさに応じて部品供給動作を位置補正する制御手段とを備えた部品供給装置」が記載され、この部品供給装置は、記載Bによれば、電子部品をプリント基板に実装する電子部品実装機に設けられるものであるから、結局、刊行物1には、『パーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量を記憶する記憶手段と、この記憶手段のデータから上記ずれ量を読み出し、その大きさに応じて電子部品供給動作を位置補正する制御手段とを備えた部品供給装置が設けられた、電子部品をプリント基板に実装する電子部品実装機』の発明が記載されていると認められる。 そして、上記発明は、電子部品実装機という、装置に係る発明ではあるものの、部品供給装置の備える制御手段により電子部品供給動作を制御する『電子部品実装機の作動方法』に係る発明としても解することができるものである。 また、この電子部品実装機の構成及び動作を具体的に説明した記載Dによると、上記の記憶手段は、『交換可能なパーツカセット1に取り付けられた』メモリー4としてであり、上記のずれ量は、『パーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置(装着ノズル3の基準吸着位置)との高さや平面位置の補正値として求められた』ものであって、この電子部品実装機は、『パーツカセット1が交換された後、該補正値を該メモリー4から読み取りヘッド5を使って読み出し、制御手段6に伝達し、該制御手段6により該補正値に基いて電子部品の吸着動作が正確に行われるように制御する』ものと認められる。 してみると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。 『制御装置を備えた部品供給装置が設けられた電子部品実装機の作動方法であって、プリント基板に電子部品を実装する当該作動方法において、 電子部品実装機における交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値を求め、パーツカセットに取り付けられた記憶手段に記憶し、 パーツカセットの交換後、上記補正値を、上記記憶手段から電子部品実装機の上記制御装置へ伝達し、 上記制御装置により、上記補正値に基いて電子部品の吸着動作を制御する、電子部品実装機の作動方法。』 5.対比 本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明の『部品供給装置が設けられた電子部品実装機』、『交換可能なパーツカセット』、『プリント基板』、『電子部品』及び『記憶手段』は、本件発明の「自動装着機(7)」、「交換可能なコンポーネント(3,5,17)」、「サブストレート(1)」、「構成素子(2)」及び「記憶装置(15,16,18)」に相当する。 そして、引用発明の『交換可能なパーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量である高さや平面位置における補正値』についてみると、この補正値は、パーツカセットの部品供給位置から所定の基準位置までの高さや平面位置における離間距離といえ、所定の基準位置に関連付けて求められた幾何学的な特性データといえるものであるから、本件発明の「交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた、該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」に相当する。 また、引用発明の『パーツカセットの交換後』は、本願発明の「自動装着機(7)内への交換可能なコンポーネント(3,5,17)のマウント後」に相当し、引用発明の『上記補正値に基いて電子部品の吸着動作を制御する』工程は、電子部品実装機の作動の一部である部品吸着動作中に、ずれ量である補正値を考慮しつつ部品吸着をすることに他ならないから、本件発明の「特性データを、自動装着機(7)の作動中、考慮するようにした」に相当する。 してみると、本件発明と引用発明とは、以下の一致点、及び相違点を有するものと認められる。 一致点;「制御装置(6)を有する自動装着機(7)の作動方法であって、サブストレート(1)への構成素子(2)の装着をする当該の作動方法において、 自動装着機(7)の交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた、該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データを求め、交換可能なコンポーネント(3,5,17)に割り当てられた記憶装置(15,16,18)内に記憶し、 自動装着機(7)内への交換可能なコンポーネント(3,5,17)のマウント後、先ず、特性データの少なくとも一部を、記憶装置(15,16,18)から自動装着機(7)の制御装置(6)内へ転送し、 特性データを、自動装着機(7)の作動中制御装置(6)により考慮するようにした自動装着機の作動方法。」 相違点1; 本件発明では、交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データを、自動装着機(7)内へ「マウント前に」求めているのに対して、引用発明では、パーツカセットの補正値(幾何学的特性データ)を、電子部品実装機におけるパーツカセットの交換前(自動装着機内へのマウント前)に求めているのか明らかでない点 相違点2; 本件発明では、制御装置は「サブストレート(1)への構成素子(2)の装着を制御する」のに対して、引用発明では、制御装置は電子部品(構成素子)の吸着動作を制御するが、それに加えて、プリント基板(サブストレート)への電子部品(構成素子)の装着を制御するのか不明である点 6.相違点についての検討 (1)相違点1について 刊行物1の記載Cによると、従来の自動装着機においては、パーツカセットの交換後、各パーツカセット毎に異なる補正値を入力する必要があったため、パーツカセットの交換のたびに補正値の入力作業が生じ、煩雑であったところ、引用発明は、上記の課題を解決するために、パーツカセットに記憶手段を設け、その記憶手段に、各パーツカセットに対応する補正値を記憶させておき、生産時にその内容を読み出すことにより、パーツカセットを入れ替える場合でも手間をかけることなく、精度の高い部品供給動作を行うところに技術的意義があるものと認められる。 そうすると、刊行物1には、引用発明における各パーツカセットの補正値をどの時点で求めるのか、具体的に記載されていないが、上記の技術的意義を考慮して、引用発明において、パーツカセットを交換後に手間をかけることなく生産が開始されるように、各パーツカセットの補正値を交換前に予め求めておくとすることは、当業者が容易になし得る設計事項であるといえる。 (2)相違点2について プリント基板に電子部品を装着する電子部品実装機の作動方法において、電子部品実装機の制御装置が、電子部品の吸着と装着の制御を行うことは、例えば刊行物2【0007】、【0008】に記載されるように、この出願の優先権主張日前、周知慣用の技術であるから、引用発明における制御装置に、この電子部品の装着を制御する機能を付加することも、当業者が容易になし得る設計事項であるといえる。 7.補足 審判請求人は、原審における意見書、及び取消訴訟における準備手続において、本件発明の「交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点」は、「交換可能なコンポーネント(3,5,17)上の定置の基準点」又は「交換可能なコンポーネント(3,5,17)内に属する基準点」であり、それに関連付けられて求められた「該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」は、「該交換可能なコンポーネント(3,5,17)自体の幾何学的データ」であるのに対して、引用発明の「所定の基準位置」は、「パーツカセット(交換可能なコンポーネント)外の所定の基準位置」であり、それに関連付けられて求められた「ずれ量」は、「パ-ツカセットと基準位置との相対的位置関係を示すデータ」であるから、引用発明の「パーツカセットの部品供給位置と所定の基準位置とのずれ量」は、本件発明の「コンポーネント(3,5,17)の定置の基準点に関連付けて求められた、該コンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」に相当せず、原査定及び一次審決ではこの点を相違点として認定していない誤りがある旨、主張していると認められる(意見書「2.」、原告第1回準備書面第8頁第1行?第10頁第26行。下線は本審決で付した。以下、同様。)。 しかしながら、本件明細書の特許請求の範囲には、「交換可能なコンポーネント(3,5,17)上の定置の基準点」や「交換可能なコンポーネント(3,5,17)内に属する基準点」、「該交換可能なコンポーネント(3,5,17)自体の幾何学的データ」とは記載されていないし、「交換可能なコンポーネント(3,5,17)の定置の基準点」を「コンポーネント外の定置の基準点」を含むものと解し、「該交換可能なコンポーネント(3,5,17)の幾何学的特性データ」を、「コンポーネントと基準位置との相対的位置関係を示す幾何学的なずれ量(である補正値)」を含むものと解することを阻害する特段の事情も見出せないから、上記の審判請求人の主張は、独自の解釈に基づくものであり、当を得たものでない。 なお、審判請求人が上記の主張の根拠として挙げている本件明細書の発明の詳細な説明の【0023】は、交換可能なコンポーネントが複数の吸着ピペット(4)を有する装着ヘッド(5)である場合に、その幾何学的特性データの求め方について、審判請求人の独自の解釈と矛盾しない一例を記載したものにすぎず、他の場合について何も示唆するところがないから、上記の主張の根拠として足るものではない。 8.まとめ したがって、本件発明は、引用発明に基いて、その出願の優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 結び 以上のとおり、原査定は、妥当である。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-20 |
結審通知日 | 2008-06-26 |
審決日 | 2009-12-14 |
出願番号 | 特願2000-614793(P2000-614793) |
審決分類 |
P
1
8・
574-
Z
(H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K) P 1 8・ 572- Z (H05K) P 1 8・ 573- Z (H05K) P 1 8・ 571- Z (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 永安 真 |
特許庁審判長 |
吉水 純子 |
特許庁審判官 |
山本 一正 青木 千歌子 |
発明の名称 | 自動装着機の作動方法、自動装着機、自動装着機用の交換可能なコンポーネント、並びに自動装着機と交換可能なコンポーネントとからなるシステム |
代理人 | 高橋 佳大 |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 杉本 博司 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | 二宮 浩康 |
代理人 | 星 公弘 |