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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1229173
審判番号 不服2008-18826  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-24 
確定日 2010-12-24 
事件の表示 特願2003-401289「加入者識別モジュール、そのデータアクセス阻止方法および携帯通信端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月23日出願公開、特開2005-167463〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年12月1日を出願日とする出願であって、平成19年10月19日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の平成19年12月18日に意見書と共に手続補正がなされたが、平成20年6月20日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年7月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年8月21日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成20年8月21日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年8月21日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、平成19年12月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項10は、次のように補正された。
「基地局において、携帯通信端末装置から位置登録要求があったとき、その要求とともに受信された加入者番号情報を、データを保護すべき加入者識別モジュールの加入者番号情報と比較するステップと、
比較の結果、加入者番号情報が一致したとき、当該携帯通信端末装置に対して、データ保護に関する指示を送信し、前記加入者識別モジュールに記憶されているアプリケーションプログラムを前記携帯通信端末装置の使用者の意思によらず自動的に実行させるステップとを備え、
この実行によって、携帯通信端末装置内のファイル管理情報およびファイル情報の少なくとも一方の記憶内容を直接変更することにより前記加入者識別モジュール内のデータへのアクセスを阻止することを特徴とするデータアクセス阻止方法。」(下線は補正箇所を示す。)

2.補正の目的
本件補正は、請求項10に記載した発明を特定するために必要な事項であるアプリケーションプログラムを実行させるステップにおいて、そのアプリケーションプログラムの実行によって変更する動作を「ファイル管理情報及びファイル情報の少なくとも一方の記憶内容を直接変更する」と限定するもので、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項10に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2003-219475号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a)「このUSIMカードは、基地局との通信に必要な認証アルゴリズムや、無線通信システムが携帯無線電話機に割り当てたこの携帯無線電話機を識別する識別情報である電話番号に関する情報等以外に、USIMカードが端末で装着されたときに発着信に利用する電話番号とこの電話番号に対応する相手先名称を記憶される、いわゆる、電話帳データを記憶可能な構成となっている。具体的には、USIMカードは、図6に示すようにMF(Master File)、DF(Dedicated File)、ADF(Application Dedicated File)、EF(Elementary File)からなり、種々の情報はEFに含まれている。」(段落番号【0004】、下線は当審で付与、以下同様)

b)「携帯無線電話機99がUSIMカードの保護処理動作を図2を参照して説明する。まず、USIMカードブロック情報検出手段101は、携帯無線電話機99が無線部106、及びHWC105を経由して取得した情報から、挿入されているUSIMカード100のアクセスを禁止する情報であるUSIMカードブロック情報を検出する(ステップ201)。USIMカードブロック情報検出手段101によりUSIMカードブロック情報が検出されると、検出された情報は認証情報取得手段102に通知される(ステップ201)。
【0017】認証情報取得手段102は、USIMカードブロック情報に含まれているPIN(Personal Identification Number)の値を読み出し、読み出したPINの値を認証コマンド制御手段103に送る(ステップ202)。認証コマンド制御手段103は、認証情報取得手段102から受け取ったPIN照合が必要である(PIN状態がEnable)かPIN照合が不必要(PIN状態がDisable)かで次の2つの処理のいずれかを行う。PIN認証が必要であるか否かの情報は、既に携帯端末が保持している。
【0018】PIN照合が必要な場合(PIN状態がEnable)、そのPINの値を用いてUSIMカード100に対して認証コマンド(具体的にはVERIFY PIN)を発行する(ステップ203)。PIN照合が不必要な場合(PIN状態がDisable)、そのPINの値を用いてUSIMカード100に対してPINEnableコマンド(具体的にはENABLE PIN)を発行する。この発行した認証コマンド或いはPINEnableコマンドに対してUSIMから照合成功(たとえば、SW(Status Word)=9000)のレスポンスがあった場合(ステップ204)、認証コマンド制御手段103はコマンド発行は成功したと判断する(ステップ205)。
【0019】これにより携帯無線電話機99は、無線部を経由して通知されたUSIMカードブロック情報は、USIMカード100の正当な使用者からのもと判断する。以降携帯無線電話機99は、挿入されているUSIMカード100が不正利用されるのを保護する処理に移る。USIMカード保護手段104は、USIMカード100が不正利用されない様にUSIMカード100に対して種々のコマンドを発行する。ここでUSIMカードブロック情報は例えば次の様に携帯無線電話機に送信されることが想定される。
【0020】携帯無線電話機及びその携帯無線電話機に挿入されているUSIMカードの正当な使用者は、携帯無線電話機を紛失した場合にUSIMカードの保護処理を依頼するために、無線通信システムに存在するUSIMカード管理センターに、たとえば、USIMカードの電話番号とUSIMカードを利用するための正しいPIN(Personal Identification Number)の値を登録する。PINの登録方法は、通常の電話による登録やインターネット経由の登録やメイルによる登録等様々な方法が考えられる。たとえば、USIMカード管理センターは登録された情報を無線通信システムに存在する位置登録センターに通知し、位置登録センターは図3のように通知された電話番号と対応するPINの値からなるUSIMカードブロックリストを作成する。位置登録センターは、携帯無線電話機が位置登録されるごとにUSIMカードブロックリストを参照し、該当する電話番号が存在するか否かを検索する。
【0021】該当する電話番号が存在した場合、無線通信システムは、その電話番号に対応する携帯無線電話機に対して着信情報(ページングチャネル)を送信する。その後、携帯無線電話機と無線通信システムの間で呼設定が確立される間にやり取りされる制御信号(例えばSACCH(SLOW ASSOCIATED CONTROL CHANNEL)等)中にUSIMカードブロック情報を設定して送る。このUSIMカードブロック情報は、例えば図4のように“PINの値の長さ”を設定するエリアと“PINの値”を設定するエリアからなる。
【0022】この制御信号を受け取ったUSIMカードブロック情報選択手段101は、その中に含まれるUSIMカードブロック情報を取り出し、USIMカード保護手段104がUSIMカード100が不正利用されない設定を行う。」(段落番号【0016】?【0022】)

c)「USIMカード保護手段104の具体的な動作を説明する。たとえば、USIMカード100に対して不正なPINを連続発行することによりPINをblock状態に遷移させる。具体的には、USIMカードブロック情報で通知されたPINの値が正しいと判定されたら、USIMカード保護手段104はその正しいPINの値以外を用いて照合コマンド(具体的にはVERIFY PIN)を連続発行する。
【0026】USIMカード保護手段104が不正なPINの値を用いて照合コマンドを連続3回発行すると、USIMカード100はカードにアクセスできない状態であるblock状態に遷移する。この状態でUSIMカード保護手段104はコマンドの発行を停止することも可能であり、更に不正なUNBLCOK PINコマンドの発行を継続してもよい。USIMカード保護手段104が引き続きUNBLCOK PINコマンドを連続10回発行すると、USIMカード100はユーザ操作によるblock状態解除不可能な状態に遷移する。これらの操作によりUSIMカード100はblock状態に遷移し、PINのアクセス条件のあるファイルに読み書きが不可能となり、USIMカード100が不正に使用されるのを防ぐことが出来る。
【0027】また、他の例としては、USIMカードに含まれる特定のEFに対して、そのEFを非活性するコマンドを発行することも可能である。具体的には、USIMカードブロック情報で通知されたPINの値が正しいと判定されたら、USIMカード保護手段104は、特定のEFに対して非活性化するコマンド(具体的にはDEACTIVATE FILE)を発行する。これにより、非活性化されたEFの読み書きが不可能となる。この実施の形態ではPINのアクセス条件のあるファイルが読み書き不可能となるのではなく、非活性化したEFだけが読み書き不可能になるため、対象のEFの読み書き不可能となり、USIMカード100が不正に使用されるのを防ぐことが出来る。
【0028】また、USIMカードに含まれる特定のEFに対して、そのEFの内容を意味のないものにする為、書きこみコマンドを発行することも可能である。具体的には、USIMカードブロック情報で通知されたPINの値が正しいと判定されたら、USIMカード保護手段104は、特定のEFに対して書き込みコマンド(具体的にはUPDATE)を発行して意味を持たないデータを書き込む。これにより、意味を持たないデータを書き込まれたEFは、読み出しても無意味なものとなる。これらの操作により、USIMカード100が不正に使用されるのを防ぐことが出来る。」(段落番号【0025】?【0028】)

これらの記載によれば、引用例1には、
「無線通信システムにおいて、無線通信システムに存在する位置登録センターは、携帯無線電話機が位置登録されるごとにUSIMカードブロックリストを参照し、該当する電話番号が存在するか否かを検索し、
該当する電話番号が存在した場合、無線通信システムは、その電話番号に対応する携帯無線電話機に対してUSIMカードブロック情報を設定して送り、この制御信号を受け取ったUSIMカードブロック情報選択手段101は、その中に含まれるUSIMカードブロック情報を取り出し、USIMカード保護手段104がUSIMカード100が不正利用されない設定を行い、
この設定によって、USIMカードに含まれる特定のEFに対して、非活性化するか若しくはそのEFの内容を意味のないものにする為、書きこみコマンドを発行するデータアクセス阻止方法」の発明(以下「引用例1記載の発明」という。)が開示されていると認めることができる。

4.対比
そこで、本願補正発明と引用例1記載の発明とを比較すると、引用例1記載の発明の「携帯無線電話機」は、本願補正発明の「携帯通信端末装置」に相当し、以下同様に「USIMカード」は「加入者識別モジュール」に、「USIMカードブロック情報」は「データ保護に関する指示」に、「USIMカードに含まれる特定のEF」は、「携帯通信端末装置内のファイル情報」に、それぞれ相当し、さらに、引用例1記載の発明の「特定のEFに対して、非活性化する」ことは、EFのファイル属性を変更していることから、本願補正発明の「ファイル管理情報の記憶内容を直接変更する」ことに相当する。そして、本願補正発明における「基地局」は、引用例1記載の発明の「位置登録センター」と、ネットワーク側の装置である点で共通しており、また、本願補正発明における「加入者番号情報」は、データを保護すべき対象の加入者情報であると認められることから、引用例1記載の「電話番号」と、データを保護すべき加入者識別モジュールの加入者情報である点で一致している。さらに、本願補正発明における「アプリケーションプログラム」は、データアクセスを阻止する機能を有することから、引用例1記載の「USIMカード保護手段104」と、データアクセス阻止手段である点で一致する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ネットワーク側の装置において、携帯通信端末装置から位置登録要求があったとき、その要求とともに受信された加入者情報を、データを保護すべき加入者識別モジュールの加入者情報と比較するステップと、
比較の結果、加入者情報が一致したとき、当該携帯通信端末装置に対して、データ保護に関する指示を送信し、データアクセス阻止手段を前記携帯通信端末装置の使用者の意思によらず自動的に実行させるステップとを備え、
この実行によって、携帯通信端末装置内のファイル管理情報およびファイル情報の少なくとも一方の記憶内容を直接変更することにより前記加入者識別モジュール内のデータへのアクセスを阻止することを特徴とするデータアクセス阻止方法。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本願補正発明は、基地局おいて、携帯通信端末装置からの位置登録要求があったかどうかを判断しているのに対し、引用例1記載の発明では、ネットワーク側のどの装置で判断しているのか明らかでない点。
<相違点2>
本願補正発明は、受信された加入者番号情報を、データを保護すべき加入者識別モジュールの加入者番号情報と比較するのに対し、引用例1記載の発明は、受信された電話番号を、データを保護すべき加入者識別モジュールの電話番号と比較する点。
<相違点3>
本願補正発明は、データアクセス阻止手段として、アプリケーションプログラムであることが明記されているのに対し、引用例1記載の発明は、データアクセス阻止手段であるUSIMカード保護手段が、ソフトウエアであるかどうかが不明である点。
<相違点4>
本願補正発明は、データアクセス阻止手段であるアプリケーションプログラムが、加入者識別モジュールに記憶されているのに対し、引用例1記載の発明は、データアクセス阻止手段であるUSIMカード保護手段が携帯通信端末装置本体上に具備する点。

5.相違点の判断
<相違点1について>
無線通信システムにおいて、基地局を備えることは、当然のことであり、また、携帯通信端末装置からの位置登録要求があったかどうかをネットワーク側のどの装置で判断するかは、単なる設計的事項にすぎないことから、相違点1に係る本願補正発明のようにすることに格別の困難性はない。
<相違点2について>
加入者番号情報と電話番号とは、ネットワーク側装置において携帯通信端末装置を管理するために一対一で管理されており、保護すべき加入者識別モジュールの加入者情報を比較する際に、その加入者情報として、加入者番号情報を用いるか、電話番号を用いるかは、当業者が適宜選択できる事項である。よって、加入者情報を比較する際に、引用文献1記載の電話番号に換えて、電話番号と一対一で管理されている加入者番号情報を用いて相違点2に係る本願補正発明のようにすることに格別の困難性はない。
<相違点3について>
一般に携帯通信端末装置を制御するための手段として、その手段をソフトウエアで構成することは、当該技術分野において慣用されている技術であり、相違点3に係る本願補正発明のようにすることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。
<相違点4について>
携帯通信端末装置を制御するアプリケーションプログラムを加入者識別モジュールに記憶させ、実行させる様にすることは、周知の技術(例えば、特開2001-249809号公報の【0028】?【0032】のAPP3、APP4に関する記載)である。
そして、当該相違点4に係る本願補正発明の構成は、引用例1記載の発明のデータアクセス保護手段であるUSIM保護手段に、当該周知の技術を採用したものであって、当業者が適宜なし得る程度のことである。

したがって、相違点1ないし相違点4に係る本願補正発明の構成は、引用例1記載の発明に、当該技術分野における周知、慣用の技術を適用したものであり、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明が奏する作用、効果についてみても、引用例1記載の発明及び周知、慣用の技術から当業者が予想できる程度のものである。

よって、本願補正発明は、引用例1記載の発明及び周知、慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成20年8月21日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項10に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年12月18日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「基地局において、携帯通信端末装置から位置登録要求があったとき、その要求とともに受信された加入者番号情報を、データを保護すべき加入者識別モジュールの加入者番号情報と比較するステップと、
比較の結果、加入者番号情報が一致したとき、当該携帯通信端末装置に対して、データ保護に関する指示を送信し、前記加入者識別モジュールに記憶されているアプリケーションプログラムを前記携帯通信端末装置の使用者の意思によらず自動的に実行させるステップとを備え、
この実行によって、携帯通信端末装置内のファイル管理情報およびファイル情報の少なくとも一方を変更することにより前記加入者識別モジュール内のデータへのアクセスを阻止することを特徴とするデータアクセス阻止方法。」

第4 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2の3.引用例」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「記憶内容を直接変更する」と限定のあるところを削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2の5.相違点の判断」に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知、慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知、慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-28 
結審通知日 2010-10-29 
審決日 2010-11-11 
出願番号 特願2003-401289(P2003-401289)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
P 1 8・ 575- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 海江田 章裕冨田 高史  
特許庁審判長 水野 恵雄
特許庁審判官 近藤 聡
青木 健
発明の名称 加入者識別モジュール、そのデータアクセス阻止方法および携帯通信端末装置  
代理人 山野 睦彦  

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