• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B44F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B44F
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B44F
管理番号 1229243
審判番号 不服2008-21018  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-15 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 平成10年特許願第177950号「物品」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月23日出願公開、特開平11- 48700〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成10年5月22日(優先権主張 平成9年6月2日)の出願であって、平成19年5月24日付けで拒絶理由(最後)の通知がなされ、同年8月3日付けで特許請求の範囲の請求項の削除、明りょうでない記載の釈明を目的とする手続補正がなされ、同年10月1日付けで拒絶理由(最後)の通知がなされ、同年11月14日に手続補正がなされたが、平成20年7月4日付けで、特許法第53条第1項の規定によりその手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで明細書を対象とする手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされ、平成21年10月20日付けで審尋がなされ、同年12月9日に回答書が提出されたものである。


第2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
本件補正は、明細書の特許請求の範囲について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項1について、補正前後の記載は、補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

(1)補正前(平成19年8月3日付け手続補正による)
「亀甲模様を施した、透過部を有する構造体に、同じ亀甲模様を施した透過部を有する構造体を角度を30度回転させた状態で間隙を設けて重ね合わせて構成されてなる物品。」

(2)補正後
「図1の図形模様を施した、透過部を有する構造体と、図1の図形模様を前記構造体の図形模様に対し角度を30度回転させた状態で施した、透過部を有する構造体とを 間隙を設けて重ね合わせて構成されてなる物品。」

2.補正の適否
本件補正の特許請求の範囲の請求項1についての補正は、「亀甲模様」なる事項を「図1の図形模様」とするとともに、「同じ亀甲模様を施した透過部を有する構造体を角度を30度回転させた状態で間隙を設けて重ね合わせ」るという事項を「図1の図形模様を前記構造体の図形模様に対し角度を30度回転させた状態で施した、透過部を有する構造体とを 間隙を設けて重ね合わせ」ると補正するものである。
上記補正の「同じ亀甲模様を施した透過部を有する構造体を角度を30度回転させた状態で間隙を設けて重ね合わせ」るという事項を「図1の図形模様を前記構造体の図形模様に対し角度を30度回転させた状態で施した、透過部を有する構造体とを 間隙を設けて重ね合わせ」と補正することは、「30度回転」させる対象を、「構造体」から、「図形模様」へと変更することになるから、発明を特定する事項を限定することによる特許請求の範囲の減縮を目的とするものということはできず、また、誤記の訂正を目的とするものとも、明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも認められない。
したがって、本件補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

また、本件補正が、仮に、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであったとしても、本件補正における「図1の図形模様」とは、図1に示されている個別の亀甲模様(六角形の模様)のことを意味するのか、複数の亀甲模様(六角形の模様)が集合して形成された集合体により形成される模様のことを意味するのか、もしくは、図1に示される全体の形状からなる模様を意味するのか明らかでなく、特許を受けようとする発明が明確となるように特許請求の範囲の記載が記載されたものではないから、特許法第36条第6項第2号の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記検討のとおり、本件補正は、いずれの理由においても却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1ないし2に係る発明は、平成19年8月3日付けで補正された明細書及び願書に最初に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.1.(1)に示す請求項1に記載されたとおりである。

2.刊行物に記載された事項
これに対し、原査定で引用された優先日前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭56-78790号(実開昭57-189900号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.明細書第1ページ5行?8行
「透明又は半透明板に適当な幾何学模様を多数形成し、該板の少なくとも2枚を重ね合わせて、その各板を相対的に移動させてモアレ模様を表出させるべく構成したことを特徴とする装飾板。」

イ.明細書第2ページ7行?第3ページ19行
「図中(1)は透明板であつて、その少なくとも一方の外表面に適当な幾何学模様例えば6角模様(2)を縦横方向に等間隔をあけて規則正しく多数形成する。
そして前記透明板(1)の2枚(1a),(1b)を用い、該各板(1a),(1b)を第2図に示すごとく適宜隙間をあけて対向状に重ね合わせると共に、前記一方の透明板(1a)を他方の板(1b)に対して回動可能に支持させ、この一方の透明板(1a)を回動させることにより、該板(1a)と前記他方の板(1b)とに各形成した模様(2),(2)の間に、面積の異なる重なり部分、つまり第3図の斜線で示した前記各模様(2),(2)と織別される暗色部分(3)を規則正しく形成し、これら面積の異なる暗色部分(3)により、第3図に示すような花柄のモアレ模様(4)を多数表出させ、前記透明板(1a)の回動角度に応じて、前記花柄モアレ模様(4)を大小変化させたり、異なる位置にモアレ模様(4)を順次表出させるべくなすのである。
前記各透明板(1a),(1b)に形成する模様(2)は、図面に示すような6角形状に限らず、その他の多角形状、丸、線模様或は文字などで形成してもよいのであり、また、前記模様(2)は輪郭線内部を白抜き模様としてもよいのである。
さらに前記模様(2)には各種の色彩を施してもよく、特に各透明板(1a),(1b)における模様(2)の色彩をそれぞれ変えると、該各板(1a),(1b)における模様(2)の互に異なる色彩と、各模様(2)の相重なる部分の合成色彩とが外面に表出され、色彩変化に富むモアレ模様(4)が得られる。」

ウ.明細書第4ページ第8行?10行
「また前記各透明板(1a),(1b)は、無色透明及び有色透明又は半透明となすことが可能である。」

エ.明細書第5ページ第2行?19行
「以上のごとく構成した装飾板において、いま透明板(1a),(1b)をその各6角模様(2),(2)が互に重なり合うように対向位置させ、この状態から一方の透明板(1a)を他方の板(1b)に対して約5度回動させると、その回動中心点を中心とする中心地域と周辺地域に、大柄の花柄モアレ模様が表出され、前記透明板(1a)をさらに回動させると、前記模様が順次小さく、かつ多く表出され、周辺地域の模様は表出位置が順次変動され、・・・さらに約30度回動させたときには、第6図に示すごとく回動中心地域及び周辺地域に小柄の花柄モアレ模様が多数表出されるのである。」

これらの記載事項を、図面を参照しつつ、技術常識を考慮しながら本願発明に照らして整理すると、引用例には以下の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されていると認める。

「6角模様(2)を施した、透明板(1a)に、同じ6角模様(2)を施した、透明板(1b)を角度を30度回動させた状態で隙間を設けて重ね合わせて構成されてなる装飾板。」

3.対比
本願発明と引用例発明とを対比する。
広辞苑第四版(株式会社岩波書店 平成3年11月15日発行)によれば「亀甲形」とは、「亀の甲のように六角形が上下左右に並んだ模様」(第631ページ)のことであるから、引用例発明の「6角模様(2)」は、本願発明の「亀甲模様」に相当するといえる。
また、引用例発明の「30度回動させた状態」は、本願発明の「30度回転させた状態」に相当し、以下同様に、引用例発明の「隙間」、「装飾板」は、それぞれ、本願発明の「間隙」、「物品」に相当する。
さらに、引用例発明の「透明板(1a),(1b)」と、本願発明の「透過部を有する構造体」は、「構造体」という限りにおいて一致している。
したがって、本願発明と引用例発明とは、次の点で一致している。

「亀甲模様を施した、構造体に、同じ亀甲模様を施した構造体を角度を30度回転させた状態で間隙を設けて重ね合わせて構成されてなる物品。」

そして、本願発明と引用例発明とは、以下の点で相違している。

相違点
構造体が、本願発明では、「亀甲模様を施した透過部を有する」ものであるのに対して、引用例発明では、透明板(1a),(1b)に6角模様(2)を施したものである点。

4.相違点の検討
そこで、上記相違点について、以下検討する。
引用例の「透明板(1a),(1b)」は、上記2.ウ.で摘記したとおり、「無色透明及び有色透明又は半透明」であり、この外表面に6角模様(2)を縦横方向に等間隔をあけて規則正しく多数形成されるものである。そして、無色透明及び有色透明又は半透明な透明板(1a)において、隣り合う6角模様(2)により形成される部分は、透明板(1a)が露出する部分となるから光が透過する透過部であることがうかがえ、また、第3図から、一方の透明板(1a)もしくは(1b)の6角模様(2)の間から、他方の透明板(1b)もしくは(1a)の6角模様(2)が見えるとともに、6角模様(2)の重なり部分には、暗色部分(3)が形成され、モアレ模様(4)が表出していることが看取できる。
以上のことから、引用例発明における透明板(1a),(1b)に施された隣り合う6角模様(2)により形成される部分は、透過部であるということができるから、引用例発明の透明板(1a),(1b)は、亀甲模様を施した透過部を有する構造体であるといえる。
したがって、上記相違点は実質的な相違点ではない。

また、「亀甲模様」自体が「透過部」であるとしても、引用例には、上記2.イ.で摘記したとおり、「・・・前記模様(2)は輪郭線内部を白抜き模様としてもよいのである。・・・」と記載されており、透明板(1a),(1b)の外表面に設けた模様(2)の輪郭線内部を白抜き模様とするように設計変更してもよいことが示唆されている。
また、同摘記事項として、「さらに前記模様(2)には各種の色彩を施してもよく、特に各透明板(1a),(1b)における模様(2)の色彩をそれぞれ変えると、該各板(1a),(1b)における模様(2)の互に異なる色彩と、各模様(2)の相重なる部分の合成色彩とが外面に表出され、色彩変化に富むモアレ模様(4)が得られる。」と記載されており、模様(2)の相重なる部分は、その合成色彩が外面に表出される程度に光が透過するように構成されるものであることも明らかである。
したがって、引用例発明において、そのモアレ効果を考慮しつつ6角模様(2)の輪郭線内部の色彩や透過性を適宜変更することは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないから、「亀甲模様」自体が「透過部」であったとしても、上記相違点に係る事項は、当業者であれば想到容易のものである。

5.本願発明の作用効果について
本願発明が奏する作用効果は、引用例発明から当業者が予測できる程度のものであって格別のものではない。

6.請求人の主張について
請求人は、平成19年11月14日付け意見書において、
「一方引用文献1には6角模様を縦横方向に等間隔をあけて規則正しく多数形成した幾何学模様であり、本願発明の亀甲模様とはまったく相異するものであります。
・・・
しかしながら、引用文献1に記載された模様は、引用文献1第2頁第8?10行の記載から明らかなように『6角模様を縦横方向に等間隔をあけて規則正しく多数形成された』模様であり、具体的には6角形が点在した第1図のような構成を有する模様であります。
一方本願発明の図形模様は、本願添付図面の図1に示すように、亀甲模様同志が隙間なく互いに連接された状態に構成されているものであって、引用文献1のように6角形が縦横方向に等間隔をあけて規則正しく多数形成したものとはまったく別異の構成による図形模様であります。
(6)そしてこれらの図形模様を間隙を設けて重ね合わせることによって構成される図柄は、本願発明にあっては本願添付図面に示すような『曼荼羅模様』を構成する図形模様ができるのであります。一方引用文献1にあっては第4図?第6図に示されたような単調な図柄しか構成することができません。
このように、本願発明は図2に示す曼荼羅模様を得るために図1に示すような図形模様を間隙を設けて重ね合わせることによってはじめて構成することができるのであり、かかる図柄は引用文献1の幾何学模様から当業者と云えども容易に想到実施し得るものではありません。」(【意見の内容】(3)、(5)及び(6))と主張する。

しかしながら、本願の請求項1には「亀甲模様を施した」としか記載されておらず、上記請求人の主張するような、本願発明特有の模様や配置を表しているとは言えない。
また、本願発明においても、例えば図1を参酌するに、亀甲模様間に境界を見てとることができ、この境界部分の幅については、何ら説明されていない。そして、6角模様(2)をどの程度のピッチ(隙間)で形成するか、また、どの範囲で6角模様(2)を形成するかは、モアレ効果を考慮して、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎないのであるから、引用例発明において、6角模様(2)の配置の際に、それぞれの6模様(2)間の距離等を調整することで、本願発明と同様の配置とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

さらに、請求人は、平成20年8月15日付け審判請求書において、「このように本願発明は一方の構造体に施した図形模様に対し、図1の図形模様を特定角度(一方に対して30度回転させた状態)回転させた状態で他の構造体に施し、これらの構造体を間隙を設けて重ね合わす構成とすることによってはじめて図2に示すような曼荼羅模様を呈する図2に示すような図柄を有する物品が得られるのであります。
かかる本願発明の優れた技術的効果は当業者と言えども想到実施し得るものではありません。」(「5.本願発明と引用発明との対比」)と主張する。

当該請求人の主張は、平成20年8月15日付け手続補正に基づくものであるが、上記第2.本件補正についての補正却下の決定 において述べたとおり、当該手続補正は、却下されたため、当該請求人の主張は採用できない。
また、仮に、当該手続補正が適法なものであり却下されないものであったとしても、「構造体に対し、角度を30度回転させた状態で、図1の図形模様を施した透過部を有する構造体」なる事項については、上記第3.2.刊行物に記載された事項 で示したとおり、引用例発明は、「6角模様(2)を施した、透明板(1a)に、同じ6角模様(2)を施した、透明板(1b)を角度を30度回動させた状態で間隙を設けて重ね合わせ」たものであって、模様を施した構造体自体を30度回動させるか、あらかじめ構造体に30度回動させた状態で模様を施すかは、相対的な関係を考慮して当業者が適宜なし得る設計事項にすぎず、格別の困難性もない。

よって、上記請求人の主張は、いずれも採用できない。

なお、審尋に対する平成21年12月9日付け回答書に、特許請求の範囲及び図1の補正案が示されているが、補正案には法的根拠はない。
仮に当該補正案を勘案したとしても、上記第2.2.補正の適否 で述べた理由と同様、「図1の図形模様」が、同補正案の図1を参酌しても、どのような図形模様を意味するのか明確ではないから、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものである。
また、上記の点が、仮に、明確であると判断されるとしても「前記構造体に対し、角度を30度回転させた状態で、図1の図形模様を施した透過部を有する構造体」なる事項については、上述したとおり、当業者にとって想到容易であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、当該補正案を採用したとしても、特許性を見いだすことはできない。

以上のことから、本願発明は、引用例発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


7.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-23 
結審通知日 2010-03-30 
審決日 2010-04-28 
出願番号 特願平10-177950
審決分類 P 1 8・ 57- Z (B44F)
P 1 8・ 121- Z (B44F)
P 1 8・ 537- Z (B44F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金澤 俊郎栗田 雅弘  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 千葉 成就
遠藤 秀明
発明の名称 物品  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ