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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C04B |
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管理番号 | 1229244 |
審判番号 | 不服2006-19633 |
総通号数 | 134 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-02-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-08-09 |
確定日 | 2010-12-08 |
事件の表示 | 特願2001-188853「遠赤外線放射セラミックスとその容器」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月27日出願公開、特開2002-338337〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年5月21日の出願であって、平成18年5月15日付け拒絶理由通知が起案され、同年6月16日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年7月6日付けで拒絶査定が起案され、これに対して同年8月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成21年9月10日付けで拒絶理由通知が起案され、同年10月26日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。 2.当審の拒絶理由の内容 当審において平成21年9月10日付けで起案(発送日は9月15日)した、拒絶理由通知の理由のうちで実施可能要件違反「[5]特許法第36条第4項に規定する要件について 発明の詳細な説明は、以下の(あ)?(か)の点で、請求項1?請求項3に係る発明を当業者が実施しうる程度に明確かつ十分に記載しているとすることができず、特許法第36条第4項に規定する要件を満足しないものである。」についての指摘事項(え)は、次のとおりのものである。 「(え)段落【0019】には「【発明の効果】本発明のセラミックスは・・・燃焼効率を向上させる・・・等の新たな用途にも有効な作用を示す効果が見いだされた。」と記載され、段落【0017】には、C配合のセラミックスを含む特殊なセラミックスについて、「容器に入れて、・・・自動車の給油口11に固定して、燃費試験を行ったところ、図7に示すデータ1を得た。」と記載され、図7には、12月が、通常走行で7.8km/l、セラミックス使用時で12.1km/lであり、他の月でも、同様であるという結果が示されているから、段落【0017】には、請求項3に係る発明の実施の形態において、55%もの燃費向上がもたらされるという技術常識に比して過大な効果が示されている。 しかし、燃費向上に係る前記「55%」という数値は、再現性のある数値であると考えるにはあまりにも大きな値であるうえに、燃費の測定における試料の作製条件(焼成条件)、試験条件(セラミックスの燃料に対する使用量、自動車の走行条件等)、再現性に係るデータが明確でなく、請求項1及び請求項2に記載の条件で製造される試料も、前記(う)に記載したように、自動車の燃費試験を行うことが可能な程度に形状維持性を有するとは考えられないものである。 してみると、段落【0017】の燃費に関する記載は、当業者が請求項3の発明に係るセラミックスを燃焼効率(燃費)に優れたものとして使用することができる程度、すなわち、その発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとすることができない。」 3.請求人の平成21年10月26日付け意見書における主張 当審拒絶理由通知に対して請求人は、以下のように主張している。 「3.特許法第36条第4項について。 (1) 拒絶理由中[5](あ),(え),(お),(か)について。 本意見書と同日付で提出した手続補正書により、本拒絶理由は全て解消したものと思量いたします。」 4.本願明細書等の記載 4-1.本願の特許請求の範囲の記載は、平成21年10月26日付け手続補正書によって補正された以下のとおりのものである。 「【請求項1】シリカ(SiO2)69.6wt%,アルミナ(Al2O3)17.8wt%チタニア(TiO2)1.2wt%,酸化第2鉄(Fe2O3)1.8wt%,酸化ナトリウム(Na2O)0.5wt%,酸化カリウム(K2O)2.5wt%,ジルコニア(ZrO2)0.15wt%,5酸化リン(P2O5)0.03wt%,水 6.42wt%を混合したセラミックス原料を、時間当たり100℃の割合で400℃まで昇温する第1の行程と、400℃で30分間保持する第2の行程と、100℃?200℃の範囲内に自然降下する第3の行程と、3時間で600℃まで昇温する第4の工程と、600℃で0分間保持する第5の工程と、400?450℃の範囲内に自然に降下する第6の工程と、3時間で800℃まで昇温する第7の工程と、800℃で30分間保持する第8の工程と、600℃まで自然降下する第9の工程と、3時間で1000℃まで昇温する第10の工程と、1000℃で30分間保持する第11の工程と、常温まで自然降下する第12の工程を経て焼成された遠赤外線放射セラミックスの製法。 【請求項2】シリカ(SiO2)68.0wt%,アルミナ(Al2O3)20.4wt%チタニア(TiO2)0.63wt%,酸化第2鉄(Fe2O3)0.07wt%,酸化ナトリウム(Na2O)0.57wt%,酸化カリウム(K2O)4.64,ジルコニア(ZrO2)0.2wt%,酸化カルシウム(CaO)0.35wt%,酸化マグネシウム(MgO)0.09wt%,水 5.05wt%を混合したセラミックス原料を、時間当たり100℃の割合で400℃まで昇温する第1の行程と、400℃で30分間保持する第2の行程と、100℃?200℃の範囲内に自然降下する第3の行程と、3時間で600℃まで昇温する第4の工程と、600℃で30分間保持する第5の工程と、400?450℃の範囲内に降下する第6の工程と、3時間で800℃まで昇温する第7の工程と、800℃で30分間保持する第8の工程と、600℃まで自然降下する第9の工程と、3時間で1000℃まで昇温する第10の工程と、1000℃で30分間保持する第11の工程と、常温まで自然降下する第12の工程を経て焼成された遠赤外線放射セラミックス原料の製法。」 4-2.本願の発明の詳細な説明の段落【0017】の記載は、平成21年10月26日付け手続補正書によって補正された以下のとおりのものである。 「実験例1 (燃焼の効率化) 前記4種類(図1のA配合(請求項1)1種,B配合2種(内請求項2が1種),C配合1種のセラミックスを混合した本発明遠赤外線放射セラミックスを容器に入れて、ステンレスワイヤーのコイル6で自動車の給油口11に固定して、燃費試験を行ったところ、図8に示すデータ2を得た。尚、データ2は、スポットで燃料別に行った燃費試験の結果である。 この結果より全ての自動車用燃料においてその効果を発揮していることが分かる。また、処理の異なるセラミックスを混合したのは、別途行なったケースでA配合(請求項1)で12.2Km/1,B配合(請求項2のもの)で11.7Km/1C配合で1.4(11.4の誤記と推認される)Km/1に対してA,B,Cの配合品は13.1Km/1との結果を受けたものである。以上の結果により内燃機関(ディーゼル車及びガソリン車)又はそれらの燃料(化石燃料等)を使用する全ての動力機の燃焼の効率化が可能である事が分かった。」 4-3.本願の図面の簡単な説明における図7及び図8についての記載は以下のとおりのものである。 「【図7】 燃費試験のデータ1である。 【図8】 燃費試験のデータ2である。」 4-4.本願の図7及び図8は、以下のとおりのものである。 5.当審の判断 先ず、補正事項について検討する。 平成21年10月26日付け手続補正書によって補正された段落【0017】は、平成18年6月16日付け手続補正書によって補正された段落【0017】における「その差は歴然としており、年間の燃費差も通常のものよりも向上しており、特に冬場には効果を発揮していることがわかる。」を削除し、「図7に示すデータ1を得た。」を「図8に示すデータ2を得た。」とし、「図8のデータ2は、スポットで燃料別に行った燃費試験の結果である。この結果より全ての自動車用燃料においてその降下を発揮していることが分かる。」を「尚、データ2は、スポットで燃料別に行った燃費試験の結果である。 この結果より全ての自動車用燃料においてその効果を発揮していることが分かる。」とするものである。 これらについては、拒絶理由で指摘した段落【0017】の「C配合のセラミックスを含む特殊なセラミックスについて、「容器に入れて、・・・自動車の給油口11に固定して、燃費試験を行ったところ、図7に示すデータ1を得た。」と記載され、図7には、12月が、通常走行で7.8km/l、セラミックス使用時で12.1km/lであり、他の月でも、同様であるという結果が示されているから、段落【0017】には、請求項3に係る発明の実施の形態において、55%もの燃費向上がもたらされるという技術常識に比して過大な効果が示されている。」に対してなされたものと推測される。 しかしながら、当該補正事項にも関わらず段落【0017】においては、図8により依然として燃焼の効率化の効果を主張するものである。即ち、データ2の最終行に示されたディーゼル車は通常走行時7km/lの燃費だったものが、セラミック走行時には8.5km/lとなり、約21.4%の燃費の向上が謳われている。この結果は、図7における「55%」よりは控えめな値であるものの、燃費向上の効果としてはきわめて顕著なものといわざるを得ず、単に記載を削除し、参照するデータ番号を変更した程度の補正によってでは、拒絶理由で指摘した「燃費の測定における試料の作製条件(焼成条件)、試験条件(セラミックスの燃料に対する使用量、自動車の走行条件等)、再現性に係るデータが明確でなく、」「段落【0017】の燃費に関する記載は、当業者が請求項3の発明に係るセラミックスを燃焼効率(燃費)に優れたものとして使用することができる程度、すなわち、その発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとすることができない。」という記載の不備は、解消したものとすることはできない。 そして、上記したように図面の簡単な説明には、【図7】が「燃費試験のデータ1である。」ことを残し、【図7】がセラミック使用時と通常走行の燃費の月毎の比較を示し、12月が、通常走行で7.8km/l、セラミックス使用時で12.1km/lであり、他の月でも、同様であるという結果が示されているのであるから、これらによっても記載の不備は解消していないといわざるを得ない。 さらに、当審の拒絶理由において「なお、燃費向上の数値は、社会的にも注目されるものであり、5?40%という本願発明よりも低い値であっても、商品への表示に際しては合理的な裏付けが必要とされ、平成20年2月8日には、公正取引委員会から、表示の合理的な裏付けがないとして、表示をなした商品の排除命令(平成20年(排)第8?23号)が出されているのが現状である(http://www.jftc.go.jp/pressrelease/08.february/08020801.html)]ことを考えると、前記5?40%よりも大きい値である55%の燃費向上を達成できるとの記載に際しては、前記の「試料の作製条件」や「試験条件」や「再現性のデータ」を明らかにするのみでなく、公的機関による実験成績証明書等の、さらなる裏付け資料の提示が必要であるといえる。」と客観的データの提出を求めた点には、請求人は、何も対応してこなかったことを付記する。 してみると、当審において通知した、平成21年9月10日付け拒絶理由通知の理由である、特許法第36条第4項(実施可能要件)違反は、妥当なものである。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないので、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-01-06 |
結審通知日 | 2010-01-12 |
審決日 | 2010-01-26 |
出願番号 | 特願2001-188853(P2001-188853) |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(C04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 三崎 仁 |
特許庁審判長 |
松本 貢 |
特許庁審判官 |
五十棲 毅 斉藤 信人 |
発明の名称 | 遠赤外線放射セラミックスとその容器 |