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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A41B
管理番号 1229272
審判番号 無効2009-800134  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-06-23 
確定日 2010-12-16 
事件の表示 上記当事者間の特許第3389573号発明「ショーツ、水着等の衣料」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件の主な手続は、次のとおりである。
(1)平成11年5月26日:特許出願
(本件特許出願は、日本を指定国とした国際特許出願である。)
(2)平成15年1月17日:設定登録
(3)平成21年6月23日付け無効審判請求
(4)平成21年8月19日付け答弁書
(5)平成21年11月26日付け弁駁書
(6)平成21年11月26日付け口頭審理陳述要領書(以下、「請求人陳
述要領書」という。)
(7)平成21年12月4日付け口頭審理陳述要領書(以下、「被請求人陳
述要領書」という。)
(8)平成21年12月18日:口頭審理
(9)平成22年1月18日付け上申書(以下、「請求人上申書」という。)
(10)平成22年1月27日付け上申書(以下、「被請求人上申書」とい う。)

2.本件発明
本件特許第3389573号に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下、本件特許の請求項1に係る発明を「本件発明」という。)
「下方開放状の足口(15)を左右対称に形成した伸縮性を有する前身頃(11)の左右端縁(16,16)の各下端部を、左右の足口内周のヒップ裾ライン(15a,15a)の下端部と交差させ、かつ、前記左右端縁(16,16)の各上下方向中間部から下端部までの間の部分を外方へ凸形の曲縁(16a)でつなぐ形に裁断し、該曲縁(16a)の上下方向中間部より下方部(16b)は直線または曲線状に形成してあり、
伸縮性を有する後身頃(12)はこれの左右端縁(19,19)の各上下方向中間部から下端部までの間の部分(19a)が下方拡がりの形に裁断してあり、
しかも、後身頃(12)の左右端縁(19,19)の下端部間の幅(P)は上記前身頃(11)の左右端縁(16,16)の下端部間の幅(H)に対して0.6倍以上で6倍以下に設定され、
これら後身頃(12)の左右端縁(19,19)と前身頃(11)の左右端縁(16,16)とは縫合され、この縫合線(L)が後部ウエスト部(24,25)からヒップの頂部(T)より外側に迂回してヒップ裾ライン(15a)に至るように形成していることを特徴とするショーツ、水着等の衣料。」

3.請求人の主張
(1)審判請求の趣旨及び理由の要旨
請求人は、本件発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件発明は、本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は無効とされるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出している。

(2)甲号証記載の発明から容易に発明できたとする理由の概要
ア.請求人は、本件発明を下記イに示すように構成要件AないしFに分説し、下記ウに示すように構成要件AないしFは、甲第1号証ないし甲第5号証のいずれかに示されており、また、構成要件Dは周知であるから、本件発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。

イ.本件発明の分説
A.下方開放状の足口(15)を左右対称に形成した伸縮性を有する前身頃(11)の左右端縁(16,16)の各下端部を、左右の足口内周のヒップ裾ライン(15a,15a)の下端部と交差させ、かつ、前記左右端縁(16,16)の各上下方向中間部から下端部までの間の部分を外方へ凸形の曲縁(16a)でつなぐ形に裁断し、
B.該曲縁(16a)の上下方向中間部より下方部(16b)は直線または曲線状に形成してあり、
C.伸縮性を有する後身頃(12)はこれの左右端縁(19,19)の各上下方向中間部から下端部までの間の部分(19a)が下方拡がりの形に裁断してあり、
D.しかも、後身頃(12)の左右端縁(19,19)の下端部間の幅(P)は上記前身頃(11)の左右端縁(16,16)の下端部間の幅(H)に対して0.6倍以上で6倍以下に設定され、
E.これら後身頃(12)の左右端縁(19,19)と前身頃(11)の左右端縁(16,16)とは縫合され、
F.この縫合線(L)が後部ウエスト部(24,25)からヒップの頂部(T)より外側に迂回してヒップ裾ライン(15a)に至るように形成していることを特徴とするショーツ、水着等の衣料。

ウ.甲号証及びその記載事項
甲第1号証(登録実用新案3022949号公報)の段落0013、0015及び図1、2には、構成要件A?Eが記載又は示唆されている。甲第1号証のこの部分に示された発明は、構成要件A?Eを備えた発明である。また、甲第1号証の図4(A)には、構成要件Fが示唆されている。
甲第2号証(特開昭62-141101号公報)の3頁右上欄13?14行及び第6図には、構成要件Fが示唆されている。
甲第3号証(特開昭50-83153号公報)の3頁(公報合冊の350頁)右下欄2?3行、同欄12?13行及び第1図には、構成要件A及びBが示唆されている。また、8頁(公報合冊の352頁)の第4図には、構成要件Fが示唆されている。
甲第4号証(特開平9-316708号公報)の図2には、構成要件Dが示唆され、図2、5、6には、構成要件Bが示唆されている。また、段落0013、0014と図6には、構成要件Fが示唆されている。
甲第5号証(特開平4-40441号公報)の2頁左欄35?37行には、構成要件Fが示唆されている。
甲第6号証ないし甲第8号証は、件外の株式会社ワコールが製造したショーツ、及び同じく件外のトリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社が製造したショーツについて、請求人が寸法を実測した結果を示すものであり、甲第6号証ないし甲第8号証に示すように構成要件Dは周知である。

4.被請求人の主張
(1)本件発明の分説について
本件発明を構成要件AないしFに分説して判断することについては否定しないが、構成要素を個々に判断するだけでは、発明の本質を正当に評価することはできない。

(2)甲号証に記載された構成要件について
本件発明は、構成要件C及びFを兼備した点が特徴であるところ、これらを兼備することは、甲第1号証ないし甲第5号証のいずれにも、開示も示唆もされていない。
また、請求人は、甲第3号証の第4図に構成要件Fに相当する構成が示されていると主張するが、甲第3号証の第6頁右下欄第2?4行の記載を参酌すれば、甲第3号証の第4図に記載のヒップ布と腰布片の縫合線は、ヒップの頂部を通るものである。
さらに、請求人は、甲第1号証及び甲第4号証に、構成要件Dが示唆されている旨主張するが、甲第1号証及び甲第4号証のいずれにも、構成要件D、すなわち、後身頃の左右端縁の下端部間の幅が、前身頃の左右端縁の下端部間の幅に対して0.6倍以上で6倍以下である、との記載はない。請求人は、甲第1号証又は甲第4号証の図面に、この寸法関係が示唆されていると主張するが、甲第1号証又は甲第4号証にそのような示唆があるとはいえない。さらに、特許図面は設計図面とは異なり、寸法関係を示す図面ではない。甲第6号証ないし甲第8号証については、そこに示されたものが本件特許出願前に存在した物であるか不明であり、構成要件Dが本件特許出願前に公知であったことを示すものではない。

5.当審の判断
(1)本件発明は、上記2で述べたように特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、請求人が分説した構成要件AないしFを備えることにより、着用時には激しく腰を曲げるなどして動いてもヒップ裾ラインのずり上がりを防止でき、直立姿勢時にヒップ下部、臀溝部に弛みじわやだぶつきが発生することが殆ど無く美しいヒップ裾ラインを出すことができ、座り姿勢でも縫合線による違和感がほとんど無く、またタイトな薄い外衣を着用したときにもその縫合線に沿ったラインが外衣に目立ちにくくなるという作用効果を奏するものである。(本件発明及びその作用効果については、当事者間に争いはない。)
そして、本件明細書の記載を総合すると、本件発明においては、構成要件C(後身頃の上下方向中間部から下端部までの間を下方拡がりの形にする点)と、構成要件E及びF(後身頃と前身頃との縫合線が、後部ウエスト部からヒップの頂部より外側に迂回してヒップ裾ラインに至る点)とを兼ね備える点に技術的意義があるといえる。
(2)一方、構成要件C、E及びFを兼ね備えることは、甲第1号証ないし甲第8号証のいずれにも記載されておらず、示唆されてもいない。
甲第2号証の第6図、及び甲第5号証の第4図には、後身頃と前身頃との縫合線がヒップの頂部より外側に迂回するものが示されており、この点で本件発明の構成要件E及びFに類似しているが、これらは、縫合線が後部ウエスト部を通るものではないから構成要件Fと異なるし、また、後身頃が下方窄まりの形状であるから構成要件Cとも異なる。したがって、甲第2号証又は甲第5号証に記載の事項を、ショーツなどの下穿類である甲第1号証に記載の発明に適用しても、本件発明のように、構成要件C、E及びFを兼ね備えた構成を得ることはできない。
また、甲第4号証の図6に示されたもので、布辺部1A1、1A2、1B1、1B2を縫合したものが、後身頃に相当すると解した場合には、構成要件E及びFを兼ね備えた構成であるということができる。しかし、この場合でも、甲第4号証の図6に示されたものは構成要件Cを備えていないから、甲第4号証に記載の事項を採用しても、構成要件C、E及びFを兼ね備えた構成を得ることはできない。
そして、甲第1号証及び甲第3号証には、構成要件F又はそれに類似した構成は記載されていないし、甲第6号証ないし甲第8号証には、構成要件C、E及びFのいずれも示されていない。
そうすると、甲第1号証ないし甲第8号証に記載された事項を総合しても、構成要件C、E及びFを兼ね備えた構成を有するショーツ、水着等の衣料を想到することが容易であるとはいえないから、本件発明を甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものということはできない。
なお、甲第6号証ないし甲第8号証については、本件特許出願前に存在したショーツの実測結果であることを示す事項は記載されていないし、請求人も甲第6号証ないし甲第8号証が本件特許出願前に存在したショーツの実測結果であることを主張していないから、甲第6号証ないし甲第8号証を、本件特許出願前に公知若しくは周知の事項を示す証拠として扱うべき理由もない。

6.むすび
以上のとおりであって、本件発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではないから、請求人の主張する無効理由には、理由がない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-09 
結審通知日 2010-02-12 
審決日 2010-02-23 
出願番号 特願2000-620828(P2000-620828)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 鈴木 由紀夫
村上 聡
登録日 2003-01-17 
登録番号 特許第3389573号(P3389573)
発明の名称 ショーツ、水着等の衣料  
代理人 庄司 建治  
代理人 木村 俊之  
代理人 鈴江 正二  

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