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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1229451
審判番号 不服2006-1061  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-16 
確定日 2010-11-29 
事件の表示 平成10年特許願第133904号「インターネットを利用した顧客支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月22日出願公開、特開平10-340144〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は,平成10年5月15日(パリ条約による優先権主張1997年5月15日,韓国(KR))の出願であって,平成16年3月16日付けで拒絶の理由が通知され,これに対して同年9月24日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされ,平成17年10月14日付けで拒絶査定され,これに対して平成18年1月16日に拒絶査定不服審判が請求され,同年2月15日付けで特許請求の範囲の補正を含む手続補正(以下,「特許請求の範囲等に対する手続補正」という。)と共に審判請求書の請求の理由を補正することを含む手続補正(以下,「請求書補正」という。)がなされ,当審において平成20年12月25日付けで審尋の通知がされ,これに対し平成21年4月6日付けで回答書が提出され,同年6月18日に面接をしたものである。

2.平成18年2月15日付けの特許請求の範囲等に対する手続補正について補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成18年2月15日付けの特許請求の範囲等に対する手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正の内容について

本件補正により,少なくとも特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された。

「【請求項1】 所定の製品に対する顧客支援サービスを,インタネットを利用して提供する顧客支援システムにおいて,
前記所定の製品に対する顧客支援サービスを提供する顧客支援エンジンと前記顧客支援エンジンが利用する製品関連情報を格納しているデータベースとを具備した顧客支援サーバと,
前記インタネットを介して前記顧客支援サーバに接続可能なインタネット通信手段を具備した使用者コンピュータとから構成された顧客支援システムであって,
前記顧客支援サーバの前記顧客支援エンジンは,
前記顧客支援システムのホームページとして所定の顧客支援サービスに対するメニュを提供するゲートページと,
前記ゲートページで提供された所定のメニュが選択された場合に,前記選択されたメニュに対応する顧客支援サービスを提供する複数のサービスページを具備し,
前記サービスページは,
少なくとも前記製品に関するソフトウェアを前記使用者コンピュータにダウンロードするダウンロードページを具備すると共に,前記ダウンロードページを含む複数のサービスページ相互間を直接移動するための移動メニュを具備し,
前記サービスページは,
前記製品モデルと前記製品に関連した各種装置の使用方法と前記製品に関連した技術資料を提供するための使用案内ページであり,
前記使用案内ページは,
前記製品モデルを選択するモデルメニュ画面部と,
前記製品モデルの仕様および関連する各種情報などの細部項目を選択する仕様画面部と,
前記製品の関連情報を格納するデータベースにアクセスして,前記製品の使用方法および技術資料を提供する使用案内サービス部と,
を含み,
前記使用案内サービス部は,
前記製品がパソコンである場合には,
前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,
前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,
前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,
前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報とを少なくとも提供し,
前記ダウンロードページは,
前記パソコンモデルを選択するモデルメニュ画面部と,
前記使用案内サービス部により少なくとも提供される前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報とを基にして,前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する細部項目メニュ出力部と,
前記選択した細部項目に対応するプログラムを前記使用者コンピュータにダウンロードするダウンロードサービス部とを含む
ことを特徴とするインタネットを利用した顧客支援システム。」

上記補正は,本件補正の前の請求項1に「前記サービスページは,
前記製品モデルと前記製品に関連した各種装置の使用方法と前記製品に関連した技術資料を提供するための使用案内ページであり,
前記使用案内ページは,
前記製品モデルを選択するモデルメニュ画面部と,
前記製品モデルの仕様および関連する各種情報などの細部項目を選択する仕様画面部と,
前記製品の関連情報を格納するデータベースにアクセスして,前記製品の使用方法および技術資料を提供する使用案内サービス部と,
を含み,
前記使用案内サービス部は,
前記製品がパソコンである場合には,
前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,
前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,
前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,
前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報とを少なくとも提供し,
前記ダウンロードページは,
前記パソコンモデルを選択するモデルメニュ画面部と,
前記使用案内サービス部により少なくとも提供される前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報とを基にして,前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する細部項目メニュ出力部と,
前記選択した細部項目に対応するプログラムを前記使用者コンピュータにダウンロードするダウンロードサービス部とを含む」と補正しようとするものである。

(2)本件補正の適否(平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に適合するか)について

(a)請求人の主張について
上記(1)の本件補正の内容のうち「前記使用案内サービス部により少なくとも提供される前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報とを基にして,前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する」とする事項(以下,「本補正事項」という。)について,請求人は審判請求書(平成18年2月15日に補正された請求書による)の「(2)補正の根拠の明示」において,「また,補正後の本願請求項1,9,16に記載の「前記使用案内サービス部により少なくとも提供される前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報とを基にして,前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する」は,本願明細書の段落0028及び図8には,パソコンモデル本体の前面又は背面等に関するグラフィック及び文字情報と,パソコンモデル本体に必要なプログラムをダウンロードするためのアイコンとが画面上に表示されることが記載され,本願明細書の段落0035にはグラフィック及び文字情報を提供するサービスからプログラムをダウンロードするサービスにレベルを維持したまま横方向に横断的に移動することが記載され,本願明細書等の図11には上記パソコンモデルに必要なプログラムをダウンロードするための画面が図示されていることから,細部項目メニュ出力部は上記ダウンロード画面を表示するために上記グラフィック及び文字情報などを基にしてパソコンモデルに必要なプログラムを選択するのは,いわゆる新規事項追加には該当しない。」と主張している。(下線は当審で付与。以下同様。)

(b)本補正事項に対する検討
本願の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下,「当初明細書等」という。)の段落【0027】から【0031】,【図6】から【図8】には「【0027】また,使用案内ぺ一ジ310は,パソコン製品のモデル案内やパソコンと関連した各種装置の使用方法や装置の技術的資料を提供するモジュールである。この使用案内ページ310は,図5に示すように,製品モデルのメニュを表示するモデルメニュ画面部312,製品モデルの仕様など細部項目のメニュを表示する仕様画面部314,パソコン関連情報を格納しているデータベース114にアクセスし,選択した装置の使用方法や技術的資料を顧客支援サーバ110に提供する使用案内サービス部316などから構成される。このモデルメニュ画面部312が表示するモデルメニュ画面は,図6に示すように,オペレータが選択することが可能なパソコンモデルの種類が表示されている。
【0028】そして,このモデルメニュ画面を通じてパソコンモデルを選択すると,図7に示すように,選択したパソコンモデルの仕様やパソコン関連の各種装置を選択する細部項目のメニュ画面が表示される。この細部項目のメニュ画面では,選択したパソコンモデルのシステム本体の前面,システム本体の背面,主基板及びスイッチセッチングのシステム外観や,CPU,メモリ,ビデオ/オーディオカード,CDーROM,HDD,モデム,通信関連事項,ソフトウェアコレクションなどのハードウェア装置や,ソフトウェアに関する技術的情報などを,グラフィック情報およびテキスト情報として提供する。例えば,図8に示すように,システム本体の前面に対する情報をグラフィック及びテキスト情報として提供した画面が表示される。
【0029】ダウンロードページ320は,パソコンを使用している途中で特定プログラムが損傷した場合や,現在使用しているソフトウェアをバージョンアップした場合や,新たに応用ソフトウェアを設置する場合などに,オペレータが所望するパソコン関連ソフトウェアを端末器にダウンロードするためのモジュールである。
【0030】このダウンロードページ320は,図9に示すように,オペレータがサービスを所望する製品モデルのメニュを表示するモデルメニュ画面部322,製品モデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアなどの装置を表示する細部項目メニュ出力部324,細部項目メニュで選択した装置に対応するプログラムを使用者コンピュータ140にダウンロードするダウンロードサービス部326などから構成される。
【0031】このモデルメニュ画面部322が表示するモデルメニュ画面では,図10に示すように,パソコン製品のモデル名を選択メニュとして表示する。そして,オペレータがモデル名を選択すると,図11に示すように,選択したモデルについての必要な各種ユーティリティ,ドライバー,バンドル用ソフトウェアなどを選択する細部項目メニュを表示する細部項目メニュ画面が表示される。この細部項目メニュ画面には,ダウンロードするプログラムをキーワードを通じて検索できるキーワード検索部が設けられており,キーワード検索部によって検索したプログラムを前記ダウンロードサービス部326を通じて使用者コンピュータ140にダウンロードすることができる。このような細部項目メニュは,多段階メニュ駆動方式で具現化することができる。」と記載され,
さらに,段落【0035】,【0036】には「【0035】なお,各サービスページには,サービスページ相互間を直接移動することができる移動メニュが設けられており,現在提供されているサービスから直ちに他のサービス提供ぺ一ジに移動することができるので,迅速なサービスを受けることができる。
【0036】本実施形態は,以上のように構成されており,オペレータが対処できる製品のトラブルについては,アフターサービスに依頼せずにオペレータ自身が対処して解決し,アフターサービスの要請件数を減らしてアフタサービス要員のサービス品質を向上させるとともにアフタサービス費用を節減することができる。」と記載されている。
そして,当初明細書等の段落【0027】,【0028】には,「使用案内ページ」の説明(以下,「使用案内ページ説明」という。)が記載されている。
しかしながら,該使用案内ページ説明には「使用案内ページを構成する細部項目のメニュ画面では,選択したパソコンモデルのシステム本体の前面,ソフトウェアコレクションなどのハードウェア装置や,ソフトウェアに関する技術的情報などを,グラフィック情報およびテキスト情報として提供する。例えば,図8に示すように,システム本体の前面に対する情報をグラフィック及びテキスト情報として提供した画面が表示される。」との記載はあるが,請求人が主張する「細部項目メニュ出力部は上記ダウンロード画面を表示するために上記グラフィック及び文字情報などを基にしてパソコンモデルに必要なプログラムを選択する」とすることは記載されていない。また,当初明細書等の段落【0027】,【0028】に記載されているように,「使用案内ページ」に係る【図6】に図示された「モデルメニュ画面」,【図7】に図示された「選択したパソコンモデルの仕様やパソコン関連の各種装置を選択する細部項目のメニュ画面」,【図8】に図示された「システム本体の前面に対する情報をグラフィック及びテキスト情報として提供した画面」には,「主メニュー:使用案内 FAQ ダウンロード ウィンドウ95」の記載が見て取れ,一応,当初明細書等の段落【0035】に記載されているように「各サービスページには,サービスページ相互間を直接移動することができる移動メニュが設けられている」ことは記載されていると認められるものの,請求人が主張する「細部項目メニュ出力部は上記ダウンロード画面を表示するために上記グラフィック及び文字情報などを基にしてパソコンモデルに必要なプログラムを選択する」とすることが記載されているとは認められない。
さらに,当初明細書の段落【0029】から段落【0031】には,「ダウンロードページ」の説明が記載されているが,請求人の主張する「細部項目メニュ出力部は上記ダウンロード画面を表示するために上記グラフィック及び文字情報などを基にしてパソコンモデルに必要なプログラムを選択する」とすることが記載されているとは認められない。

以上のとおり,当初明細書等の段落【0027】から【0031】,【0035】,【0036】,【図6】から【図8】,及び当初明細書等のほかの記載を総合してみても,請求人が主張する「細部項目メニュ出力部は上記ダウンロード画面を表示するために上記グラフィック及び文字情報などを基にしてパソコンモデルに必要なプログラムを選択する」とする事項,及び本補正事項である「前記使用案内サービス部により少なくとも提供される前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報とを基にして,前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する」とする事項は当初明細書等に記載されていない。

(c)本件補正に対する当審の判断
上記(b)のとおりであるから,本件補正の内容のうち本補正事項を含む「前記ダウンロードページは,
前記パソコンモデルを選択するモデルメニュ画面部と,
前記使用案内サービス部により少なくとも提供される前記選択されたパソコンモデル本体のモデル種類と,前記選択されたパソコンモデル本体の前面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデル本体の背面のグラフィック及び文字情報と,前記選択されたパソコンモデルの主基板及びスイッチセッティングに対するグラフィック及び文字情報とを基にして,前記選択したパソコンモデルに必要な各種ユーティリティ,各種ドライバー,バンドル用ソフトウェアを選択する細部項目メニュ出力部と,
前記選択した細部項目に対応するプログラムを前記使用者コンピュータにダウンロードするダウンロードサービス部とを含む」とする事項は,当初明細書等に記載された事項ではなく,そして,本補正事項は当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものでない。

(3)むすび
したがって,本件補正は,願書に最初に添付された明細書及び図面に記載された事項の範囲内においてなされたものではないから,平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成18年2月15日付けの特許請求の範囲等に対する手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願発明は,平成16年9月24日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「【請求項1】 所定の製品に対する顧客支援サービスを,インタネットを利用して提供する顧客支援システムにおいて,
前記所定の製品に対する顧客支援サービスを提供する顧客支援エンジンと前記顧客支援エンジンが利用する製品関連情報を格納しているデータベースとを具備した顧客支援サーバと,
前記インタネットを介して前記顧客支援サーバに接続可能なインタネット通信手段を具備した使用者コンピュータとから構成された顧客支援システムであって,
前記顧客支援サーバの前記顧客支援エンジンは,
前記顧客支援システムのホームページとして所定の顧客支援サービスに対するメニュを提供するゲートページと,
前記ゲートページで提供された所定のメニュが選択された場合に,前記選択されたメニュに対応する顧客支援サービスを提供する複数のサービスページを具備し,
前記サービスページは,
少なくとも前記製品に関するソフトウェアを前記使用者コンピュータにダウンロードするダウンロードページを具備すると共に,前記ダウンロードページを含む複数のサービスページ相互間を直接移動するための移動メニュを具備する,
ことを特徴とするインタネットを利用した顧客支援システム。」

4.当審の判断
(1)引用例

原査定の拒絶の理由に引用された,福田良一著,デジタル・メイキングシリーズ ホームページ作成の現場,日本,エーアイ出版株式会社,1996年11月20日発行,第1版第1刷,p.12-23,26-27,38-41(以下,「引用例」という。)には,図面と共に以下の事項(a)から(g)が記載されている。

(a)第12ページについて
該ページ上部に「インターネット関連の技術にも力を入れているアップルコンピュータのホームページでは,その名に恥じることのない,膨大な量の情報が掲載されている。
知りたいことは必ずあるという,この情報量こそホームページの醍醐味である。」と記載され,該ページ右上部に「米アップルコンピュータのホームページを中心に,技術情報,製品情報から,ダウンロード用のデータまで,非常に多様多種のページが用意されている。Macintoshに関して何かを知りたいと思ったら,その情報は必ずWeb上のどこかで見つけることができると言っていいだろう。」と記載されている。

(b)第13ページについて
該ページ右上部に「世界中のアップルサイトでは,ほぼ同じフォーマットが使用され,アイデンティティの統一を図っている。アップルジャパンでもそのフォーマットに基づいてさまざまなサイトが構築されており,本書で紹介するAPPホームページもそのひとつだ。」と記載され,そして,該ページ右下の図面の上部に「Apple Publishing Partner」と,中部に「Apple製品ガイド パブリッシング・テクノロジー FAQ システム・アップデート トレーニング イベント&キャンペーン」との記載が見て取れる。

(c)第26ページについて
該ページ左欄に「■『APPホームページ』について
ここから先は、実際に筆者が「編集長」として関わった『APPホームページ』を例に、その制作プロセスを紹介していく。
APP(Apple Publishing Partner)とは、Macintosh販売店のなかでも特にパブリッシングに関する高度なスキルとノウハウを持つ店の総称だ。そのホームページの狙いは、パブリッシングに関する様々な情報を広く提供すること。
APPがスタートしたのは95年10月。ホームページは翌11月に暫定スタートし、96年1月に正式スタートした。その後は月に数回程度の更新を重ねていたが、6月に「パブリッシングのすべてが分かるサイト」を目指して全面刷新を行ない、大幅なボリュームアップを図った。その後筆者は直接の制作からは離れたが、内容は以降も更新され続けている。
本書では、主にその6月の改訂の際にどのような流れで制作を行なっていったかを紹介しようと思う。
クライアントは、アップルコンピュータ株式会社パブリッシングマーケットディベロップメント(現在の部署名はパブリッシングエンターテインメント&ニューメディア)。制作受注は株式会社テックデザイン。筆者はテックデザインとの契約である。
6月末の段階で、総ページ数はHTMLファイルが96個、画像その他のファイルが260個、いわゆるA4換算※で約300ページであった。」と記載されて,該ページ右欄に「■サイトの内容
このサイトで掲載している内容を、トップページに沿って紹介すると以下のようになる。
大別すると「アップルコンピュータが発信するパブリッシング情報=Apple Publishing」と「一般的なパブリッシング情報=Publishing Information」の二つ。それぞれを見出しとしてくくり、その中にさらに細かい項目を設けている。例を挙げると、「Apple Publishing」ではアップルのパブリッシング関連製品の紹介、パブリッシングのためのテクノロジー紹介等、「Publishing Information」ではパブリッシング関連の雑誌紹介や、サードパーティの製品情報等。
そしてそれらからは独立させて、「Masters of Media」の項目がある。これはアップルコンピュータが提唱しているパブリッシングに対する概念で、「Cross-Media Authoring」「Network Color」「Digital Brand Building」からなる。雑誌でいえば第一特集企画の位置づけであり、その入り口は、グラフィックを用いて最も目を引くように置いている。
その他、サイト内の新着情報=What’s New、APPを紹介しているWhat’s APP、全国のAPPの販売店リストを都道府県別に掲載したAPP List等々がある。これは、雑誌でいえば定期ものに当たるだろう。
それでは、このAPPホームページをどのように制作していったかを、次のページから順を追って紹介する。」と記載されている。

(d)第27ページについて
該ページ第1行に「●APPホームページ(http://www.apple.co.jp/app/)」と記載され,当該記載以下に図面が示され,その図面左部に「トップページ」,同じく中部に「第2階層」,同じく右部に「第3階層」との記載が見て取れ,当該左部の「トップページ」の記載以下に四角形の線でに囲まれた内側に「【2】」,「Apple Publishing Partner」との記載,当該記載以下に「Apple製品ガイド パブリッシング・テクノロジー FAQ システム・アップデート トレーニング イベント&キャンペーン」,これら記載の下方に「基本形に沿ったAPPのトップページの構成。【1】時事的な特に見せたいものを大きく特別に示す。【2】サイト全体のコンテンツを,項目を整理して並べる。【3】What’s Newを含むその他のページを,ひとまとめにして示す。【4】初めて訪れた人にもどんなサイトかわかるように解説をつける。」との記載が見て取れる。
前記図面中部には,前記「パブリッシング・テクノロジー」の記載に「○」が付されると共に矢印線が引かれ,第2階層を指し示している記載が見て取れ,前記「第2階層」の記載以下に「Technology」との記載,当該記載以下に「第2階層のページは,さらに細かい項目への入り口としている。」との記載が見て取れる。
前記図面右部には,前記「Technology」のページから矢印線が引かれ,第3階層を指し示す記載が見て取れ,前記「第3階層」の記載以下に「Technology」との記載,当該記載以下に「第3階層から具体的な紹介が始まる。」との記載が見て取れる。

なお,上記において,図面中の「●」内の白抜数字は「【1】」,「【2】」,「【3】」,「【4】」として表記した。

(e)第38ページについて
該ページ左欄には「■サイトの構成を考える。
構成をまとめるには,大別してふたつの方法がある。ひとつは,まずサイトに盛り込みたい項目を,すべて細かく書き出して,その中でまとめられるものはまとめ,似たものをグループ化していく方法。もうひとつは,逆に大きな見出しを先に立ててしまい,そこに入る項目を後から細かく決めていく方法だ。
ともかくここで,トップページから各グループ,各項目,個々の内容へと分かれていく樹系図を起こす。同時に階層の深さと全体のおおよそのページ数も決める。
ホームページを訪れる人は,どちらにせよ上から下の階層に降りていくのだから,その順でページを追って自然に入っていける流れを作るようにしたい。」と記載されている

(f)第40ページについて
該ページ左欄には「■構成とインターフェイスは同時に決める
ホームページは,単独の1ページだけを読ませて終わることはまずありえない。読者にどこかをクリックさせたり,またはフォーム※等で何らかの入力をさせたりして,それに応じて他のページに移ったり,サーバーのプログラムが働いてその結果を表示したりする。そうした双方向性があることは,ホームページの重要な要件だ。だからこそ,それぞれのページでどこまでを見せるか,そして読者に何をさせて次のどんな内容に移っていくかを決める時に,そのためのインターフェイスもしっかりと設計するべきだ。
各ページのどこをクリックすれば良いのか自然に分かるようにすること,参照程度のリンクと,次の展開につながってゆくリンクとが自然に区別できるようにすること,などサイト全体の構成を固めると同時に,混乱のないインターフェイス作りが重要になる。」と記載されている。

(g)第41ページについて
該ページ上欄には「●APPホームページのインターフェイス(リンク表示)例」と記載され,当該記載以下に図面が示され,該図面上部に「Training」,該図面下部に「main pageone (中略) Products Technology FAQ System Update Event&Campaign (中略) Contact Us Help」との記載が見て取れ,該図面下部の記載の右に「フッターのスタイルは,アップルのサイトでは世界中で共通。このフッターから,米アップルコンピュータのトップページをはじめ,各サイトの主立ったページに行ける。画像リンクによるリンクボタンと,画像を表示しない人のためのテキストリンクを用意している。」との記載が見て取れる。
さらに,該ページ下欄には「※フォーム
ホームページ上で読者が入力を行える領域,またはその形式。入力された内容はサーバーの指定されたプログラムに送られ,その処理結果が読者に返される。入力内容をメールとして指定されたアドレスに送ることもできる。」と記載されていおり,当該記載は,第40ページ記載の「フォーム※」の注釈であると認められる。

したがって,引用例には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

「米アップルコンピュータのホームページを中心に,技術情報,製品情報,ダウンロード用のデータまで,多様多種のページが用意され,Macintoshに関して知りたい情報をWeb上で見つけることができるMacintoshの販売店であるAPPが提供するホームページであって,
前記ホームページは,トップページ,第2階層のページ,第3階層のページで構成され,
トップページは,
サイトのコンテンツである,製品ガイド,テクノロジー,FAQ,システム・アップデート,トレーニング,イベント&キャンペーンを備え,
トップページで指定された項目により第2階層のページに行くことができ,
各ページには,リンクボタンとテキストリンクの用意されたフッターが設けられ,フッターによりトップページ,又は各サイトの主立ったページに行くことでき,
クリック,又はフォームに入力させることより,他のページに移動したり,入力された内容がサーバーの指定されたプログラムに送られ,その処理結果が返される,
APPが提供するホームページ。」

(2)対比
本願発明と引用発明を対比する。

なお,本願発明における「インタネット」は,通常「インターネット」と呼ばれるものと同一であると認める。

(a)本願発明の「所定の製品に対する顧客支援サービス」について
引用発明は,ホームページから「Macintoshに関して知りたい情報をWeb上で見つけることができるもの」である。ここで,Webは一般に,インターネットを利用したシステムであり,インターネットを利用して,Webに情報を発信するWebサーバーと呼ばれるものと該Webサーバーに情報を要求するWebクライアントにより構成され,通常Webクライアントとしてコンピュータが用いられる。そして,引用発明のホームページは「APP」というMacintosh販売店により様々な情報を提供,サービスするものであり,該ホームページの利用者は,Macintosh販売店である「APP」の利用者,すなわち「顧客」といえ,引用発明は,該「顧客」に対しMacintoshに関して知りたい情報を見つけることができるようにする,すなわち顧客の支援をするものといえるから,引用発明には「Macintoshに関して顧客支援サービスを提供する」ことが記載されている。そして,引用発明は,アップルコンピュータ株式会社(以下,「アップルコンピュータ社」という。)の製品である「Macintosh」に関して顧客支援サービスを「Web」を利用して提供するものであるから,引用発明は「所定の製品に対する顧客支援サービスを,インターネットを利用して提供する顧客支援システム」に関するものであるといえる。

(b)本願発明の「ゲートページ」,「サービスページ」について
(b-1)引用発明において「製品ガイド」,「テクノロジー」,「FAQ」,「システム・アップデート」,「トレーニング」,「イベント&キャンペーン」は,「トップページ」に備えられた項目であり,該項目は「トップページ」において該項目が指定されることにより,「第2階層のページ」に行き,指定された項目に関する情報を提供している。指定された項目に関する情報を提供することは,「サービス」といえ,前記「製品ガイド」,「テクノロジー」,「FAQ」,「システム・アップデート」,「トレーニング」,「イベント&キャンペーン」の項目は,顧客の支援のために設けられた項目であるから,該項目は「顧客支援サービスに対するメニュ」に相当し,引用発明の「第2階層のページ」は「サービスページ」であるといえる。そして,引用発明は当該「サービスページ」を「顧客支援サービスに対するメニュ」それぞれに対応するように複数具備しているといえる。

(b-2)引用発明の「システム・アップデート」について
「システム・アップデート」とは「システムの新バージョンのデータを入手し,システムを新バージョンにすること」を意味することは明らかであり,システム・アップデートのための該「データ」は一般に「ソフトウェア」として提供され,使用者のコンピュータに「ダウンロード」される。そして,引用発明において「トップページ」の項目である「システム・アップデート」を指定することにより,「第2階層のページ」である「ダウンロード用のデータのページ」に移動するから,本願発明の「サービスページ」といえる引用発明の「第2階層のページ」は,システム・アップデートのための「少なくとも製品に関するソフトウェアを使用者コンピュータにダウンロードするダウンロードページを具備する」といえる。

(b-3)引用発明の「フッター」は,「リンクボタン」及び「テキストリンク」からなり,「トップページ」,又は各サイトの主立ったページに行く,すなわちページ相互間を直接移動する機能を「トップページ」,「第2階層のページ」に具備するものであるから,該「フッター」は,複数のページ相互間を直接移動できる点で,本願発明の「移動メニュ」に一致し,引用発明の「第2階層のページ」は「複数のページ相互間を直接移動するための移動メニュを具備する」といえる。

(b-4)上記(a),(b-1)から(b-3)より,引用発明の「トップページ」は,顧客支援システムのホームページとして顧客支援サービスに対するメニュを提供するページであるから,本願発明の「ゲートページ」に相当している。

したがって,引用発明と本願発明は次の点で一致,相違する。

<一致点>
「所定の製品に対する顧客支援サービスを,インターネットを利用して提供する顧客支援システムにおいて,
顧客支援システムのホームページとして顧客支援サービスに対するメニュを提供するゲートページと,
前記ゲートページで提供された所定のメニュが選択された場合に,前記選択されたメニュに対応するサービスを提供する複数のサービスページを具備し,
前記サービスページは,
少なくとも前記製品に関するソフトウェアを使用者コンピュータにダウンロードするダウンロードページを具備すると共に,複数のサービスページ相互間を直接移動するための移動メニュを具備する,
ことを特徴とするインターネットを利用した顧客支援システム。」

<相違点1>
本願発明は「前記所定の製品に対する顧客支援サービスを提供する顧客支援エンジンと前記顧客支援エンジンが利用する製品関連情報を格納しているデータベースとを具備した顧客支援サーバ」を備えているのに対して引用発明には「サーバ」に関する記載がない点。

<相違点2>
本願発明は「前記インタネットを介して前記顧客支援サーバに接続可能なインタネット通信手段を具備した使用者コンピュータ」を備えているのに対して引用発明には「使用者コンピュータ」について記載がない点。

<相違点3>
「ゲートページ」,「サービスページ」を本願発明は「顧客支援サーバの顧客支援エンジン」に備えているのに対して,引用発明には明記がない点。

<相違点4>
本願発明も引用発明も共に「移動メニュ」が「複数のサービスページ相互間を直接移動するため」のものである点で一致しているが,「複数のサービスページ相互間」について本願発明は「前記ダウンロードページを含む」構成を備えているのに対して,引用発明には記載がない点。

(3)相違点の検討
<相違点1>から<相違点3>について
(a)上記「(2)対比」の「(a)本願発明の「所定の製品に対する顧客支援サービス」について」に記載したとおり,引用発明は「Web」を利用した「顧客支援システム」であるといえるので,該「顧客支援システム」はインターネット,Webサーバー,Webクライアントから構成されるものであることは明らかであり,通常Webクライアントにはコンピュータが用いられている。

(b)引用発明には,明記はされていないものの,上記(a)より,引用発明が顧客からコンピュータによるMacintoshに関して知りたい情報の要求に対し,Webサーバーがその情報を顧客に提供していることは明らかである。
該Webサーバーに,Macintoshに関して知りたい情報である,技術情報,製品情報,ダウンロード用のデータまで多様多種のページを用意,すなわち格納することは明白であるから,該Webサーバーが,本願発明の「ゲートページ」に相当する「トップページ」,及び本願発明の「サービスページ」に相当する「第2階層のページ」を具備することも明白であり,情報を「データベース」に格納することは一般的に行われている技術的手段に過ぎない。そして,該Webサーバーに格納された情報が顧客支援サービスを提供する際に利用されることも明らかである。
以上より,該Webサーバーには,所定の製品に対する顧客支援サービスを提供する機能と共に,「ゲートページ」及び「サービスページ」が具備されていると認められるから,該Webサーバは,本願発明の「顧客支援エンジン」に相当する機能,及び顧客支援サービスを提供する際に利用する製品関連情報を格納する構成を備えているものであり,該Webサーバーは本願発明の「顧客支援サーバー」に相当するので,<相違点1>のように「所定の製品に対する顧客支援サービスを提供する顧客支援エンジンと前記顧客支援エンジンが利用する製品関連情報を格納しているデータベースとを具備した顧客支援サーバ」の構成とすると共に,<相違点3>のように「顧客支援サーバの顧客支援エンジン」が「ゲートページ」及び「サービスページ」を備える構成とすること,すなわち本願発明のように「前記顧客支援サーバの前記顧客支援エンジンは,
前記顧客支援システムのホームページとして所定の顧客支援サービスに対するメニュを提供するゲートページと,
前記ゲートページで提供された所定のメニュが選択された場合に,前記選択されたメニュに対応する顧客支援サービスを提供する複数のサービスページを具備し」とする構成は,引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
また,コンピュータはWebクライアントとして通常用いられるものであるから,該Webサーバーに顧客からの要求を行う際にインターネットを介して接続可能とするためにインターネット通信手段をコンピュータに具備する構成とすることに,格別な技術的困難はない。そして,該コンピュータは顧客により使用されるものであるから,<相違点2>のように「前記インタネットを介して前記顧客支援サーバに接続可能なインタネット通信手段を具備した使用者コンピュータ」を具備する構成とすることは,引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点4>について
本願発明の「サービスページ」に相当する「第2階層のページ」に,引用発明は,本願発明の「ダウンロードページ」に相当する「ダウンロード用のデータのページ」を備え,さらに,該「第2階層のページ」は「フッターにより」「トップページ,又は各サイトの主立ったページに行くことでき」る構成を備えているのであるから,引用発明において「フッターによりダウンロード用のページを含む複数の第2階層のページに行く」構成とすることは,当業者が適宜なし得た事項である。
したがって,<相違点4>のような「複数のサービスページ相互間を直接移動するための移動メニュ」において,「前記ダウンロードページを含む複数のサービスページ相互間を直接移動するための移動メニュ」の構成とすることは,引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

そして,本願発明のように構成したことによる効果も引用発明から予測できる程度のものである。

したがって,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお,請求人代理人は,平成21年6月18日の合議体との面接時に,本願補正発明のようにしてホームページのサービスページにより情報を提供することは,トラブル対応の点から効果がある旨主張したが,ホームページの内容をどのようにするかは,情報を提供する側が必要に応じて決めるべき事項であり,前記主張は採用できない。

5.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本願は,他の請求項に論及するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり,審決する。
 
審理終結日 2009-07-08 
結審通知日 2009-07-14 
審決日 2009-07-27 
出願番号 特願平10-133904
審決分類 P 1 8・ 55- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 慎太郎  
特許庁審判長 江嶋 清仁
特許庁審判官 角田 慎治
近藤 聡
発明の名称 インターネットを利用した顧客支援システム  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  

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