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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
管理番号 1229619
審判番号 不服2007-32915  
総通号数 134 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-06 
確定日 2011-01-04 
事件の表示 特願2005-516600「保護パネル付き電子機器、保護パネル」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 7月14日国際公開、WO2005/064451〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年12月22日(特許法41条に基づく優先権主張:優先日 平成15年12月26日、優先権主張の基礎出願 特願2003-432628号)を国際出願日とする特願2005-516600号の出願である。原審において、平成19年8月2日付けで拒絶理由が通知され、同年10月5日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出されたものの、同年10月31日付けで拒絶査定がされた(同年11月6日発送)。
原審の当該査定を不服として、同年12月6日に本件の拒絶査定不服審判の請求がされ、平成20年1月4日付けで手続補正がされた。その後、前置報告書の内容について、審判請求人の意見を求めるために平成21年5月15日付けで審尋したところ、同年7月17日付けで回答書が提出された。同年11月25付けでいわゆる最初の拒絶理由を通知したところ、平成22年1月29日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、同年2月17日付けで再度いわゆる最初の拒絶理由を通知したところ、同年4月26日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出された。


第2 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明は、平成22年4月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものである。ただし、請求項1の第2段落においては、「前記外部接続回路」との記載があるところ、この記載の前の部分においては「外部接続回路」との記載はないから、「前記外部接続回路」は「外部接続回路」の誤記であると認める。したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりであると認める。
<本願発明>
「透明窓部(8a)を有する加飾層(9)が形成されている保護パネル(100)と、
外側面が同一平面を形成するように前記保護パネルを前記外側面側から隙間なく嵌め込まれるように形成された、開口(17)を有するパネル嵌め込み部(22)を備えるケーシング(13)と、
前記保護パネル(100)の下側に位置し、前記透明窓部を通して外部から視認可能に配置されたディスプレイ装置(15)とを備え、
前記保護パネル(100)は、
透明下部電極(2)と、前記透明下部電極の周囲に前記加飾層(9)により隠蔽されるように周縁部分に設けられ、上部回路及び下部回路の端子を保護パネル本体の上面側から下面側に引き出すための貫通穴と、前記透明下部電極の周囲に前記加飾層(9)により隠蔽されるように上側表面に設けられた外部接続回路と連通する下部回路(5b)とを備えた透明の保護パネル本体(1)と、
前記保護パネル本体(1)の透明下部電極(2)に対向する位置に設けられた透明上部電極(4)と、前記透明上部電極の周囲に前記加飾層により隠蔽されるように設けられ、前記保護パネル本体(1)の上面側に引き回された前記外部接続回路と連通する上部回路(5a)とを下面に備え、周縁部が接着されて前記保護パネル本体の上側に空気層を介するように配置された透明樹脂フィルム(3)と、
前記透明樹脂フィルム(3)の上面に設けられ、少なくとも一方の面に前記加飾層(9)が形成された透明樹脂製のカバーフィルム(8)を備えるとともに、前記加飾層(9)により隠蔽された前記保護パネル本体の前記周縁部分の前記貫通穴を介して、全ての前記下部回路及び前記上部回路の端子を前記保護パネル本体の下面側から引き出す、保護パネル付き電子機器。」


第3 特許法第29条の2の要件について
1 先願明細書及び先願明細書の記載事項
平成22年2月17日付けの拒絶理由通知書で引用した、本願の優先日前の他の出願であって、当該優先日後に出願公開された特願2003-413180号(以下「先願」という。特開2005-173970号参照)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(当審注:下記「2 先願発明の認定」において特に関連する箇所に下線を引いた。)。
(1)【特許請求の範囲】の欄
「【請求項3】
第1の透光性基板と、一方の面側が操作面側とされた第2の透光性基板とが絶縁層を介して対向配置され、それぞれの透光性基板の内面側に透明導電膜が形成され、該透明導電膜と接続された印刷回路が外周部が形成され、前記第1、第2の透光性基板に形成された印刷回路に交互に電圧が印加され電圧が印加されていない方の印刷回路から出力される電圧を検出することにより押圧された位置の座標を検出することができる座標入力装置であって、 前記第2の透光性基板の外面に加飾印刷シートが形成され、前記第1、第2の透光性基板の外周部に形成された印刷回路が前記加飾印刷シートにより隠蔽されて前記第2の透光性基板の操作面側からは視認できないようにしたことを特徴とする座標入力装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の座標入力装置を、画像表示装置の前面に備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像表示装置を表示部に備えたことを特徴とする電子機器。」

(2)段落【0001】?【0007】
「【0001】
本発明は、座標入力装置及びそれを備えた画像表示装置と電子機器に関するものであり、特に、操作面上を指示体により走査して座標の入力を行うことができる座標入力装置及びそれを備えた画像表示装置と、このような画像表示装置を備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯情報端末などの電子機器の表示部として、表示部に表示されたメニュー項目などのオブジェクトを、手指やペンなどの指示体で直接操作するために透明なタブレット(タッチパネル)が液晶表示ユニットの前面側に配設されたものが知られている。
図5は、このようなタブレットを備えた液晶表示装置の一例を示す断面図である。
図5に示す液晶表示装置100は、液晶表示ユニット120の前面側にタブレット130が配設された構成とされている。液晶表示ユニット120は、互いに対向して配置された上基板121と、下基板122との間に、シール材124で封止された液晶層123を挟持しており、上基板121の内面側(液晶層123側)に、電極や配向膜などからなる液晶制御層126が形成され、下基板122の内面側(液晶層123側)には、アルミニウムや銀等の高反射率の金属薄膜からなる反射層あるいは上記金属薄膜に透孔を形成した半透過反射層127と、電極や配向膜などからなる液晶制御層128とが下基板122上に順に積層されている。
【0003】
タブレット130は、対向して配置された透明な上基板131と下基板132とが接着層136により接合一体化された構成である。下基板132の内面側(上基板131側)に、第1の電極層133が形成され、この第1の透明電極層133上に絶縁体のスペーサ(図示略)が互いに間隔を空けて形成されている。上基板131の内面側(下基板132側)には、第2の透明電極層134が形成されている。
下基板132の内面側の周縁部には導電性金属フィラーを樹脂に分散させた導電性ペーストからなる引出回路や該引出回路と接続された接続電極部等の下側印刷回路137が形成されており、該印刷回路137に第1の透明電極層133が接続されている。また、上基板131の内面側の周縁部には導電性金属フィラーを樹脂に分散させた導電性ペーストからなる引出回路や該引出回路と接続された接続電極部などの上側印刷回路138が形成されており、該印刷回路138に第2の透明電極層134が接続されている。
また、このようなタイプのタブレット130では、上基板131が透明性を有する基材から形成されているために、印刷回路137、138が操作面側から透けてしまうため、通常はベゼルと呼ばれる枠体145を上基板131の外面側の周縁部に設けて印刷回路形成領域を覆うようにしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記構成のタブレット130は、抵抗接触式のタブレットであり、非操作時には上記接着層136、印刷回路137、138の形成膜厚や上記スペーサにより離間されている第1、第2の透明電極層133,134を、指示体140で上基板131を押圧して撓ませ、この被押圧部において透明電極層133,134を電気的に接触させることで、座標入力を行うものである。
また実際にはタブレット130は支持部材139を介して液晶表示ユニット120に固定されており、タブレット130が固定された状態では、タブレット130と液晶表示ユニット120は所定の間隔を有して互いに離間されるようになっている。
【0005】
以上の構成の液晶表示装置100によれば、液晶表示ユニット120を用いた表示を行うことができ、また指示体140(図示ではペン型の指示体)によりタブレット130の上面を走査することで、座標入力を行うことができるようになっている。従って、例えば液晶表示ユニット120に表示されたメニュー項目などのオブジェクトを選択する操作を行う場合には、オブジェクトの表示位置を指示体140により押圧することで選択動作を行うことができる。
【特許文献1】特開平10-104374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記構成の液晶表示装置100においては、タブレット130の上基板131の外面側の周縁部に枠体145が設けられているため、この液晶表示装置100を例えば図6に示すような携帯電話機601の表示部601eに実装する場合、携帯電話の厚みが厚くなる、また、表示部を視認したときに枠体145が見えてしまい、外観が悪いという問題があった。
また、タブレット130の上面(上基板131の外面)に上記のような枠体145があると、操作面(上基板131の外面)と枠体145との段差部があるため、指示体140によりタブレット130の上面を走査する際に邪魔になることがあり、使い勝手が悪く、また、上記段差部に塵等が付着し易いという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、外観を向上できるうえ、操作面上を指示体により走査して座標の入力を行い易い座標入力装置を提供することを目的の一つとする。
また、本発明は、上記のような座標入力装置を備えることにより、携帯電話等の電子機器の表示部に実装した場合に、電子機器の厚みを薄くでき、枠体と操作面との段差部に起因する塵等の付着を防止できる画像表示装置を提供することを目的の一つとする。
また、本発明は、上記のような画像表示装置を備えることにより、外観及び使い勝手が良く、表示部に塵等が付着するのを改善できる薄型の電子機器を提供することを目的の一つとする。」

(3)段落【0008】?【0016】
「【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
第1の発明の座標入力装置は、第1の透光性基板(下側の基板:固定側)と、一方の面側が操作面側とされた第2の透光性基板(上側の基板:操作側)とが絶縁層を介して対向配置され、それぞれの透光性基板の内面側に透明導電膜が形成され、該透明導電膜と接続された印刷回路が外周部が形成され、上記第1、第2の透光性基板に形成された印刷回路に交互に電圧が印加され電圧が印加されていない方の印刷回路から出力される電圧を検出することにより押圧された位置の座標を検出することができる座標入力装置であって、
上記第2の透光性基板の内面側に形成された透明導電膜と、上記第2の透光性基板との間に加飾印刷層が形成され、上記第1、第2の透光性基板の外周部に形成された印刷回路が上記加飾印刷層により隠蔽されて上記第2の透光性基板の操作面側からは視認(目視確認)できないようにしたことを特徴とする。
【0009】
第1の発明の座標入力装置では、上記第2の透光性基板の内面側に形成された透明導電膜と、上記第2の透光性基板との間に加飾印刷層が形成され、上記第1、第2の透光性基板の外周部に形成された印刷回路が上記加飾印刷層により隠蔽されたことにより、この座標入力装置を上記第2の透光性基板の操作面側から観察ときに上記印刷回路は見えることがなく、また、上記加飾印刷層は、模様、文字、マーク、絵柄、着色等の加飾が施されているので、見栄えがよく、外観が良好である。
また、上記加飾印刷層は上記第2の透光性基板の内面側に形成されているので、第2の透光性基板の外面(操作面)は平坦面とすることができ、タブレットの外面にベゼル等の枠体を設けた従来タイプであったような操作面との段差部がなく、指示体等により第2の透光性基板の外面(操作面)を走査する際に邪魔になることがなく、使い勝手が良い。また、第2の透光性基板の外面は平坦面とすることができるので、第2の透光性基板の外面に耐摩耗性を有するハードコート層を設けることも可能で、このハードコート層により第2の透光性基板を保護できる。
また、上記加飾印刷層は、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法や、転写法、あるいは蒸着法により形成できるので厚みを非常に薄くでき、上記第2の透光性基板の内面と上記加飾印刷層との段差も殆どできないため、第1の座標入力装置は、タブレットの外面にベゼル等の枠体を設けた従来タイプと比べて薄型とすることできる。
…(中略)…
【0011】
第2の発明の座標入力装置は、第1の透光性基板(下側の基板:固定側)と、一方の面側が操作面側とされた第2の透光性基板(上側の基板:操作側)とが絶縁層を介して対向配置され、それぞれの透光性基板の内面側に透明導電膜が形成され、該透明導電膜と接続された印刷回路が外周部が形成され、上記第1、第2の透光性基板に形成された印刷回路に交互に電圧が印加され電圧が印加されていない方の印刷回路から出力される電圧を検出することにより押圧された位置の座標を検出することができる座標入力装置であって、
上記第2の透光性基板の外面に加飾印刷シートが形成され、上記第1、第2の透光性基板の外周部に形成された印刷回路が上記加飾印刷シートにより隠蔽されて上記第2の透光性基板の操作面側からは視認できないようにしたことを特徴とする。
【0012】
第2の発明の座標入力装置では、上記第2の透光性基板の外面に上記のような加飾印刷シートを形成したことにより、この座標入力装置を上記第2の透光性基板の操作面側から観察ときに上記印刷回路は見えることがなく、また、上記加飾印刷シートには、模様、文字、マーク、絵柄等の加飾が施されているので、見栄えがよく、外観が良好である。
また、上記加飾印刷シートは上記第2の透光性基板の外面側に形成されているが、シート状のものであるので厚みを非常に薄くできるので、第2の透光性基板の外面は略平坦面とすることができ、指示体等により第2の透光性基板の外面を走査する際に邪魔になることがなく、使い勝手が良い。また、第2の透光性基板の外面は略平坦面とすることができるので、第2の透光性基板の外面に耐摩耗性を有するハードコート層を設けることができ、このハードコート層により第2の透光性基板を保護できる。
【0013】
また、上記加飾印刷シートは、シート状フィルム(基材)にスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法や、転写法、あるいは蒸着法により模様、文字、マーク、絵柄等の加飾印刷層が施されたものであるので厚みを非常に薄くでき、上記第2の透光性基板の外面と該加飾印刷シートとの段差も殆どできないため、第2の座標入力装置は、タブレットの外面にベゼル等の枠体を設けた従来タイプと比べて薄型とすることできる。
また、上記加飾印刷シートの一方の面には粘着層が形成されていてもよい。その場合、第2の透光性基板の外面に設ける前の加飾印刷シートは粘着層を介して支持シートに貼着されていてもよく、支持シートを剥離後に上記粘着層側の面を第2の透光性基板の外面に貼り付けることで、第2の透光性基板の外面に加飾印刷シートを形成することができる。
【0014】
第3の発明の画像表示装置は、上記のいずれかの構成の本発明の座標入力装置を、液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置の前面に備えたことを特徴とする。
第3の発明の画像表示装置では、上記第2の透光性基板の外面側の平坦性が良好であり、薄型化された上記のいずれかの構成の本発明の座標入力装置が画像表示装置の前面に備えられたことにより、座標入力装置の操作面上を指示体により走査して座標の入力を行い易く、画像表示装置に表示されたメニュー項目などのオブジェクトを選択する操作をスムーズに行うことができ、また、薄型化された画像表示装置とすることができる。また第2の透光性基板の外面側の平坦性が良好な本発明の座標入力装置が備えられているので、外面にベゼル等の枠体を設けた従来タイプのタブレットのような操作面と枠体の段差部がないので、このような段差部に起因する塵等の付着を防止できる。
また、上記のような加飾印刷層又は加飾印刷シートにより上記印刷回路が隠蔽された本発明の座標入力装置が備えられたことにより、上記印刷回路が見えることがなく、見栄えを向上できる。
【0015】
第4の発明の電子機器は、第3の発明の画像表示装置を表示部に備えたことを特徴とする。
第4の発明の電子機器では、表示部に第3の発明の画像表示装置が備えられたことにより、外観及び使い勝手が良く、表示部に塵等が付着するのを改善された薄型の電子機器を実現できる。
【発明の効果】
【0016】
以上、詳述したように本発明によれば、外観を向上できるうえ、操作面上を指示体により走査して座標の入力を行い易い座標入力装置を提供できる。
また、本発明の画像表示装置によれば、本発明の座標入力装置を備えることにより、携帯電話等の電子機器の表示部に実装した場合に、電子機器の厚みを薄くでき、枠体と操作面との段差部に起因する塵等の付着を防止できる。
また、本発明の電子機器は、本発明の画像表示装置を備えることにより、外観及び使い勝手が表示部に塵等が付着するのを改善できる薄型の電子機器を提供できる。」

(4)段落【0017】?【0034】
「【0017】
以下、図面により本発明の実施形態について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせて示してある。
(座標力装置及び画像表示装置の実施形態)
図1は、本発明の画像表示装置の一実施の形態である液晶表示装置の模式断面図である。
この液晶表示装置10は、液晶表示ユニット20と、その前面に配設された本発明の一実施形態のアナログ型抵抗膜方式のタッチパネル(座標入力装置)30とを備えて構成されている。
液晶表示ユニット20は、互いに対向して配置された上基板21と、下基板22との間に、シール材24で封止された液晶層23を挟持しており、上基板21の内面側(液晶層23側)に、電極や配向膜などからなる液晶制御層26が形成され、下基板22の内面側(液晶層123側)には、アルミニウムや銀等の高反射率の金属薄膜からなる反射層27と、電極や配向膜などからなる液晶制御層28とが下基板22上に順に積層されている。
上記液晶表示ユニット20は反射型とされており、外部から入射した外光を反射層27により反射させて表示を行うようになっている。
【0018】
タッチパネル30は、対向して配置された上側透光性基板(第2の透光性基板、操作側の基板)31と下側透光性基板(第1の透光性基板、固定側の基板)32とが略環状の接着層36により接合一体化され、これら上側透光性基板31と下側透光性基板32の間に空間部が設けられている。上側透光性基板31は、透明フィルム等の可撓性を有する材料から構成されている。下側の透光性基板32は、透明ガラス基板又はプラスチック基板又はプラスチックフィルムから構成されている。
【0019】
下側透光性基板32の内面側(上側透光性基板31側)には、第1の透明導電膜33が形成され、この第1の透明導電膜33上に絶縁層(絶縁体)のスペーサ(図示略)が互いに間隔を空けて形成されている。上側透光性基板31と下側透光性基板32は、上記絶縁層を介して対向配置されている。
下側透光性基板32の内面側の外周部には導電性金属フィラーを樹脂に分散させた導電性ペーストからなる引出回路や該引出回路と接続された接続電極部等の下側印刷回路(第1の印刷回路)37が形成されており、上記第1の透明導電膜33に上記印刷回路37が接続されている。
【0020】
上側透光性基板31の内面側(下側透光性基板32側)の外周部には加飾印刷層41が形成されている。加飾印刷層41は、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法や、転写法、あるいは蒸着法により形成された厚みが非常に薄いものである。この加飾印刷層41は、模様、文字、マーク、絵柄、着色等の加飾が施されているものである。この加飾印刷層41の厚みとしては、例えば0.01?100μm程度とされる。
加飾印刷層41を形成する範囲は、下側印刷回路(第1の印刷回路)37と後述の上側印刷回路(第2の印刷回路)38の上方位置であり、このタッチパネル30を上側透光性基板31側(第2の透光性基板の操作面側)から見たときに、下側印刷回路(第1の印刷回路)37と後述の上側印刷回路(第2の印刷回路)がこの加飾印刷41により隠蔽されていて視認(目視確認)できない位置とされる。
【0021】
加飾印刷層41は上記のように厚さが薄いものであるので、上側透光性基板31の内面と加飾印刷層41との段差は殆どないが、これら上側透光性基板31の内面と加飾印刷層41をさらに透明性を有するオーバーコート層42で覆うことにより平坦性を向上させている。透明性を有するオーバーコート層42の材質としては、紫外線硬化型のアクリル系樹脂硬化層や、ポリシラザンに由来する化合物からなるシリカ質の層等を挙げることができる。また、このオーバーコート層42の材質としては、加飾印刷層41、後述の第2の透明導電膜34、上側透光性基板31との密着性の優れた材料を用いることで、第2の透明導電膜34と加飾印刷層41との密着性を向上できる点で好ましい。このオーバーコート層42は、印刷法、転写法、蒸着法以外に後述のインモールド成形法等によっても形成することができる。
【0022】
上記オーバーコート層42の内面側には、第2の透明導電膜33が形成されている。これらの第1と第2の透明導電膜32、34はいずれもインジウム酸化錫(ITO)等の透明導電材料で形成されている。
また、上側透光性基板31の内面側の外周部には導電性金属フィラーを樹脂に分散させた導電性ペーストからなる引出回路や該引出回路と接続された接続電極部などの上側印刷回路(第2の印刷回路)38が形成されており、この印刷回路38に上記第2の透明導電膜34が接続されている。
【0023】
上記オーバーコート層42をインモールド成形法により形成するには、支持シートと、この支持シートの一面に形成した加飾印刷層41からなる転写用フィルムを用意し、この転写用フィルムから上側透光性基板31に加飾印刷層41を転写した後、これを射出成形用金型内に配置し、ついでこの金型内に上記基板31等と密着性の良い樹脂を射出成形すると、オーバーコート層42を形成することができる。
【0024】
また、上記タッチパネル30は支持部材39を介して液晶表示ユニット20に固定されており、タッチパネル30が固定された状態では、タッチパネル30と液晶表示ユニット20は所定の間隔を有して互いに離間されるようになっている。
上記構成のタッチパネル30は、抵抗接触式のものであり、非操作時には上記接着層36、印刷回路37、38の形成膜厚や上記スペーサにより離間されている第1、第2の透明導電膜33、34を、指示体40等で上側透光性基板31を押圧して撓ませ、この被押圧部において第1、第2の透明導電膜33、34を電気的に接触させる。印刷回路37、38には交互に電圧が印加され電圧が印加されていない方の印刷回路から出力される電圧を検出することにより押圧された位置の座標を検出することができる。
【0025】
以上の構成の液晶表示装置10によれば、液晶表示ユニット20を用いた表示を行うことができ、また指示体40(図示ではペン型の指示体)によりタッチパネル30の操作面(上側透光性基板31の表面)を走査することで、座標入力を行うことができるようになっている。従って、例えば液晶表示ユニット20に表示されたメニュー項目などのオブジェクトを選択する操作を行う場合には、オブジェクトの表示位置を指示体40により押圧することで選択動作を行うことができる。
【0026】
上記構成のタッチパネル30では、第2の透光性基板31の内面側に形成された第2の透明導電膜34と、第2の透光性基板31との間に加飾印刷層41が形成され、第1、第2の透光性基板の外周部に形成された印刷回路37、38が加飾印刷層41により隠蔽されているので、このタッチパネル30を第2の透光性基板の操作面側(第2の透光性基板の上面側)から観察ときに第1と第2の印刷回路37、38は見えることがなく、また、加飾印刷層41は、加飾が施されているので、見栄えがよく、外観が良好である。
また、加飾印刷層41は第2の透光性基板31の内面側に形成されているので、第2の透光性基板31の外面は平坦面とすることができ、タブレットの外面にベゼル等の枠体を設けた従来タイプであったような操作面との段差部がなく、指示体40等により操作面を走査する際に邪魔になることがなく、使い勝手が良い。
また、加飾印刷層41は、上記印刷法や、転写法、あるいは蒸着法により形成できるので厚みを非常に薄くでき、第2の透光性基板31の内面と加飾印刷層41との段差も殆どできないため、本実施形態のタッチパネル30は、タブレットの外面にベゼル等の枠体を設けた従来タイプと比べて薄型とすることできる。
また、本実施形態のタッチパネル30では、第2の透光性基板31の内面側に形成された透明導電膜34と、加飾印刷層41との間にオーバーコート層42が形成されたことにより、第2の透光性基板31の内面側の平坦性を向上できる。
【0027】
本実施形態の液晶表示装置10では、第2の透光性基板31の外面側の平坦性が良好であり、薄型化されたタッチパネル30が液晶表示ユニット20の前面に備えられたことにより、タッチパネル30の操作面上を指示体40等により走査して座標の入力を行い易く、液晶表示ユニットに表示されたメニュー項目などのオブジェクトを選択する操作をスムーズに行うことができ、また、薄型化された液晶表示装置とすることができる。また、第2の透光性基板31の外面側の平坦性が良好なタッチパネル30が備えられているので、外面にベゼル等の枠体を設けた従来タイプのタブレットのような操作面と枠体の段差部がないので、このような段差部に起因する塵等の付着を防止できる。
また、加飾印刷層41により第1や第2の印刷回路37、38が隠蔽されたタッチパネル30が備えられたことにより、第1や第2の印刷回路37、38が見えることがなく、見栄えが良い。
【0028】
なお、上記の実施形態の液晶表示装置においては、図1に示すようなタッチパネル30が液晶表示ユニット20の前面に備えられた場合について説明したが、タッチパネルとしては、図2に示すようなタッチパネル30a又は図3に示すようなタッチパネル30bであってもよい。
図2に示すタッチパネル30aが図1に示すタッチパネル30と異なるところは、第2の透光性基板31の外面側の外周部に第1と第2の印刷回路37、38を隠蔽する加飾印刷シート41aが形成され、第2の透光性基板31の内面側の外周部に第2の透明導電膜33と接続された第2の印刷回路37が形成されている点である。
加飾印刷シート41aは、平面視矩形枠状のシート状フィルム44aにスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法や、転写法、あるいは蒸着法により模様、文字、マーク、絵柄等の加飾印刷層44bが形成されたものであり、厚みが非常に薄いものである。さらに加飾印刷層44bの下面側に粘着層(図示略)が形成されている。この加飾印刷シート41aの厚みとしては、例えば0.015mm?0.3mm程度とされる。
【0029】
第2の透光性基板31の外面に設ける前の加飾印刷シート41aは、上記粘着層側の面が支持シートに貼着されており、この支持シートを剥離後に上記粘着層側の面を第2の透光性基板31の外面に貼り付けることで、第2の透光性基板の外面に加飾印刷シート41aを形成することができる。
この加飾印刷シート41aは第2の透光性基板31の外面側に形成されているので、第2の透光性基板31の内面側には図1のタッチパネル30で設けていたようなオーバーコート層42は形成されていない。
また加飾印刷シート41aは、上記のように厚みが薄いものであるので、上記第2の透光性基板31の外面とこの加飾印刷シート41aとの段差も殆どできないため、図2のタッチパネル30aは、タブレットの外面にベゼル等の枠体を設けた従来タイプと比べて薄型とすることできる。
【0030】
図3に示すタッチパネル30bが図1に示すタッチパネル30と異なるところは、第2の透光性基板31の外面側の外周部に第1と第2の印刷回路37、38を隠蔽する加飾印刷シート41bが形成され、第2の透光性基板31の内面側の外周部に第2の透明導電膜33と接続された第2の印刷回路37が形成されている点である。
加飾印刷シート41bは、平面視矩形のシート状フィルム44a’の外周部ににスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法や、転写法、あるいは蒸着法により模様、文字、マーク、絵柄等の加飾印刷層44bが平面視矩形枠状に形成されたものであり、厚みが非常に薄いものである。これらシート状フィルム44a’と加飾印刷層44bの下面側に粘着層44cが形成されている。この加飾印刷シート41bが図2の加飾印刷シート41bと特に異なる点は、シート状フィルムの形状が平面視矩形状であることと、粘着層44cがシート状フィルム44a’の下面と加飾印刷層44bの下面を覆うように形成されている点である。よって、粘着層44cは、透明性に優れ、貼り付け時の気泡除去性が良いものが望ましい。
この加飾印刷シート41bの厚みとしては、例えば0.015mm?0.3mm程度とされる。
【0031】
第2の透光性基板31の外面に設ける前の加飾印刷シート41bは、上記粘着層側の面が支持シートに貼着されており、この支持シートを剥離後に上記粘着層側の面を第2の透光性基板31の外面に貼り付けることで、第2の透光性基板の外面に加飾印刷シート41bを形成することができる。
【0032】
図2や図3に示したタッチパネルでは、第2の透光性基板31の外面に上記のような加飾印刷シートを形成したことにより、このタッチパネルを第2の透光性基板31の操作面側から観察ときに印刷回路37、38は見えることがなく、また、上記加飾印刷シートには、加飾が施されているので、見栄えがよく、外観が良好である。
【0033】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上記実施形態では、本発明の画像表示装置を反射型液晶表示装置に適用した場合について説明したが、座標入力装置と液晶表示ユニットの間にフロントライト(照明装置)が設けられていてもよい。
【0034】
(電子機器の実施形態)
図4は本発明に係る先の実施形態の液晶表示装置を備えた携帯電話(電子機器)の一例を示す斜視図である。
図4に示す携帯電話301は、上部筐体301aと下部筐体301bとがヒンジ301cによって展開自在に連結されており、上部筐体301aの操作面301d側に表示部301eが設けられている。この表示部301eに先の実施形態の液晶表示装置10がタッチパネル30側を上にして備えられている。また、下部筐体301bの操作面301jには、ダイヤル操作等を行うための入力キーボード301kが設けられている。
本実施形態の携帯電話301では、表示部301eに先の実施形態の液晶表示装置10が備えられたことにより、外観及び使い勝手が良く、表示部に塵等が付着するのを改善された薄型の携帯電話とすることができる。」

(5)【符号の説明】の欄
「【0036】
10・・・液晶表示装置(画像表示装置)、20・・・液晶表示ユニット、30、30a,30b・・・タッチパネル(座標入力装置)、31・・・上側透光性基板(第2の透光性基板)、32・・・下側透光性基板(第1の透光性基板)、33・・・第1の透明導電膜、34・・・第2の透明導電膜、37・・・下側印刷回路(第1の印刷回路)、38・・・上側印刷回路(第2の印刷回路)、41,44b・・・加飾印刷層、41a,41b・・・加飾印刷シート、42・・・オーバーコート層、44a・・・シート状フィルム、44c・・・粘着層、301・・・携帯電話(電子機器)、301e・・・表示部。」

(6)【図1】?【図6】
【図1】?【図6】にはそれぞれ下記のことが図示されている。
【図1】 実施形態を示す概略断面図
【図2】 他の実施形態を示す概略断面図
【図3】 さらに他の実施形態を示す概略断面図
【図4】 電子機器の例を示す斜視図
【図5】 従来のタブレットを備えた液晶表示装置の一例を示す断面図
【図6】 従来の液晶表示装置を表示部に備えた携帯電話の一例を示す断面図

2 先願発明の認定
(1)先願明細書に記載された事項の検討
先願明細書の【図3】に記載されたものに対応する発明について、先願明細書の段落【0028】の「なお、上記の実施形態の液晶表示装置においては、図1に示すようなタッチパネル30が液晶表示ユニット20の前面に備えられた場合について説明したが、タッチパネルとしては、図2に示すようなタッチパネル30a又は図3に示すようなタッチパネル30bであってもよい。」との記載及び段落【0030】の「図3に示すタッチパネル30bが図1に示すタッチパネル30と異なるところは、第2の透光性基板31の外面側の外周部に第1と第2の印刷回路37、38を隠蔽する加飾印刷シート41bが形成され、第2の透光性基板31の内面側の外周部に第2の透明導電膜33と接続された第2の印刷回路37が形成されている点である。」との記載に留意して検討する。
ア 先願明細書の【請求項4】の「請求項1乃至3のいずれか一項に記載の座標入力装置を、画像表示装置の前面に備えたことを特徴とする画像表示装置。」との記載、【請求項5】の「請求項4に記載の画像表示装置を表示部に備えたことを特徴とする電子機器。」との記載、段落【0028】の「なお、上記の実施形態の液晶表示装置においては、図1に示すようなタッチパネル30が液晶表示ユニット20の前面に備えられた場合について説明したが、タッチパネルとしては、図2に示すようなタッチパネル30a又は図3に示すようなタッチパネル30bであってもよい。」との記載、段落【0036】の「10・・・液晶表示装置(画像表示装置)、20・・・液晶表示ユニット、30、30a,30b・・・タッチパネル(座標入力装置)、…(中略)…301・・・携帯電話(電子機器)、301e・・・表示部。」との記載、及び、段落【0034】の「図4に示す携帯電話301は、上部筐体301aと下部筐体301bとがヒンジ301cによって展開自在に連結されており、上部筐体301aの操作面301d側に表示部301eが設けられている。この表示部301eに先の実施形態の液晶表示装置10がタッチパネル30側を上にして備えられている。」との記載を参酌すると、先願明細書には、「座標入力装置(30b)を前面に備えた、液晶表示ユニット(20)を有する画像表示装置(10)を、上部筐体(301a)の表示部に備えた電子機器(301)」が記載されていると認められる。
イ 先願明細書の段落【0018】の「タッチパネル30は、対向して配置された上側透光性基板(第2の透光性基板、操作側の基板)31と下側透光性基板(第1の透光性基板、固定側の基板)32とが略環状の接着層36により接合一体化され、これら上側透光性基板31と下側透光性基板32の間に空間部が設けられている。上側透光性基板31は、透明フィルム等の可撓性を有する材料から構成されている。下側の透光性基板32は、透明ガラス基板又はプラスチック基板又はプラスチックフィルムから構成されている。」との記載、段落【0030】の「図3に示すタッチパネル30bが図1に示すタッチパネル30と異なるところは、第2の透光性基板31の外面側の外周部に第1と第2の印刷回路37、38を隠蔽する加飾印刷シート41bが形成され、」との記載、及び、【請求項3】の「第1の透光性基板と、一方の面側が操作面側とされた第2の透光性基板とが絶縁層を介して対向配置され、それぞれの透光性基板の内面側に透明導電膜が形成され、該透明導電膜と接続された印刷回路が外周部が形成され、…(中略)…座標入力装置であって、前記第2の透光性基板の外面に加飾印刷シートが形成され、…(中略)…座標入力装置。」との記載を参酌すると、先願明細書には「座標入力装置(30b)は、透明ガラス基板又はプラスチック基板から構成された下側透光性基板(32)と、一方の面側が外面(操作面)側とされ透明フィルム等の可撓性を有する材料から構成された上側透光性基板(31)とが略環状の接着層(36)により接合一体化され、前記上側透光性基板(31)と前記下側透光性基板(32)の間に空間部が設けられており、前記上側透光性基板(31)の外面に加飾印刷シート(41b)が形成されたものであること」が記載されていると認められる。
ウ 先願明細書の段落【0019】の「下側透光性基板32の内面側(上側透光性基板31側)には、第1の透明導電膜33が形成され、…(中略)…下側透光性基板32の内面側の外周部には…(中略)…引出回路や該引出回路と接続された接続電極部等の下側印刷回路(第1の印刷回路)37が形成されており、上記第1の透明導電膜33に上記印刷回路37が接続されている。」との記載を参酌すると、先願明細書には「前記下側透光性基板(32)の内面側(前記上側透光性基板(31)側)には第1の透明導電膜(33)が形成され、前記下側透光性基板(32)の内面側の外周部には引出回路や該引出回路と接続された接続電極部等の下側印刷回路(37)が形成され、前記第1の透明導電膜(33)に前記下側印刷回路(37)が接続されていること」が記載されていると認められる。
エ 先願明細書の段落【0022】の「また、上側透光性基板31の内面側の外周部には…(中略)…引出回路や該引出回路と接続された接続電極部などの上側印刷回路(第2の印刷回路)38が形成されており、この印刷回路38に上記第2の透明導電膜34が接続されている。」との記載、及び、段落【0030】の「図3に示すタッチパネル30bが図1に示すタッチパネル30と異なるところは、第2の透光性基板31の外面側の外周部に第1と第2の印刷回路37、38を隠蔽する加飾印刷シート41bが形成され、第2の透光性基板31の内面側の外周部に第2の透明導電膜33と接続された第2の印刷回路37が形成されている点である。」(当審注:「第2の透明導電膜33」及び「第2の印刷回路37」は、それぞれ、「第2の透明導電膜34」及び「第2の印刷回路38」の誤記である。)との記載を参酌すると、先願明細書には「前記上側透光性基板(31)の内面側(前記下側透光性基板(32)側)には第2の透明導電膜(34)が形成され、前記上側透光性基板(31)の内面側の外周部には引出回路や該引出回路と接続された接続電極部等の上側印刷回路(38)が形成され、前記上側印刷回路(38)に前記第2の透明導電膜(34)が接続されていること」が記載されていると認められる。
オ 先願明細書の段落【0024】の「印刷回路37、38には交互に電圧が印加され電圧が印加されていない方の印刷回路から出力される電圧を検出することにより押圧された位置の座標を検出することができる。」との記載を参酌すると、先願明細書には「下側印刷回路(37)及び上側印刷回路(38)に交互に電圧が印加され、電圧が印加されていない方の印刷回路から出力される電圧を検出することにより押圧された位置の座標を検出することができること」が記載されていると認められる。
カ 先願明細書の段落【0030】の「加飾印刷シート41bは、平面視矩形のシート状フィルム44a’の外周部ににスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等の印刷法や、転写法、あるいは蒸着法により模様、文字、マーク、絵柄等の加飾印刷層44bが平面視矩形枠状に形成されたものであり、厚みが非常に薄いものである。これらシート状フィルム44a’と加飾印刷層44bの下面側に粘着層44cが形成されている。この加飾印刷シート41bが図2の加飾印刷シート41bと特に異なる点は、シート状フィルムの形状が平面視矩形状であることと、粘着層44cがシート状フィルム44a’の下面と加飾印刷層44bの下面を覆うように形成されている点である。」との記載、及び、【請求項3】の「前記第2の透光性基板の外面に加飾印刷シートが形成され、前記第1、第2の透光性基板の外周部に形成された印刷回路が前記加飾印刷シートにより隠蔽されて前記第2の透光性基板の操作面側からは視認できないようにしたことを特徴とする座標入力装置。」との記載を参酌すると、先願明細書には「前記加飾印刷シート(41b)は、平面視矩形のシート状フィルム(44a’)の外周部に前記下側印刷回路(37)及び前記上側印刷回路(38)を隠蔽する加飾印刷層(44b)が平面視矩形枠状に形成されるとともに、前記シート状フィルム(44a’)の下面と前記加飾印刷層(44b)の下面を覆うように透明性に優れた粘着層(44c)が形成されたものであること」が記載されていると認められる。
キ 先願明細書の段落【0031】の「第2の透光性基板31の外面に設ける前の加飾印刷シート41bは、上記粘着層側の面が支持シートに貼着されており、この支持シートを剥離後に上記粘着層側の面を第2の透光性基板31の外面に貼り付けることで、第2の透光性基板の外面に加飾印刷シート41bを形成することができる。」との記載、及び、【請求項3】の「前記第2の透光性基板の外面に加飾印刷シートが形成され、前記第1、第2の透光性基板の外周部に形成された印刷回路が前記加飾印刷シートにより隠蔽されて前記第2の透光性基板の操作面側からは視認できないようにしたことを特徴とする座標入力装置。」との記載を参酌すると、先願明細書には「前記加飾印刷シート(41b)の前記粘着層(44c)側の面を上側透光性基板(31)の外面に貼り付けることで前記上側透光性基板(31)の外面に前記加飾印刷シート(41b)が形成され、前記上側透光性基板(31)側(前記上側透光性基板の操作面側)から見たときに、前記下側印刷回路(37)及び前記上側印刷回路(38)が加飾印刷層(44b)により隠蔽されていて視認できないようにしたこと」が記載されていると認められる。
ク 先願明細書の段落【0027】の「第2の透光性基板31の外面側の平坦性が良好なタッチパネル30が備えられているので、外面にベゼル等の枠体を設けた従来タイプのタブレットのような操作面と枠体の段差部がないので、このような段差部に起因する塵等の付着を防止できる。」との記載を参酌すると、先願明細書には「ベゼル等の枠体と前記操作面の段差部がなく、前記段差部に起因する塵等の付着を防止できること」が記載されていると認められる。

(2)先願発明の認定
以上を総合すると、先願明細書には、下記の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
<先願発明>
「 座標入力装置(30b)を前面に備えた、液晶表示ユニット(20)を有する画像表示装置(10)を、上部筐体(301a)の表示部に備えた電子機器(301)において、
前記座標入力装置(30b)は、
透明ガラス基板又はプラスチック基板から構成された下側透光性基板(32)と、一方の面側が外面(操作面)側とされ透明フィルム等の可撓性を有する材料から構成された上側透光性基板(31)とが略環状の接着層(36)により接合一体化され、前記上側透光性基板(31)と前記下側透光性基板(32)の間に空間部が設けられており、前記上側透光性基板(31)の外面に加飾印刷シート(41b)が形成され、
前記下側透光性基板(32)の内面側(前記上側透光性基板(31)側)には第1の透明導電膜(33)が形成され、前記下側透光性基板(32)の内面側の外周部には引出回路や該引出回路と接続された接続電極部等の下側印刷回路(37)が形成され、前記第1の透明導電膜(33)に前記下側印刷回路(37)が接続され、
前記上側透光性基板(31)の内面側(前記下側透光性基板(32)側)には第2の透明導電膜(34)が形成され、前記上側透光性基板(31)の内面側の外周部には引出回路や該引出回路と接続された接続電極部等の上側印刷回路(38)が形成され、前記上側印刷回路(38)に前記第2の透明導電膜(34)が接続され、
前記下側印刷回路(37)及び前記上側印刷回路(38)に交互に電圧が印加され、電圧が印加されていない方の印刷回路から出力される電圧を検出することにより押圧された位置の座標を検出することができ、
前記加飾印刷シート(41b)は、平面視矩形のシート状フィルム(44a’)の外周部に前記下側印刷回路(37)及び前記上側印刷回路(38)を隠蔽する加飾印刷層(44b)が平面視矩形枠状に形成されるとともに、前記シート状フィルム(44a’)の下面と前記加飾印刷層(44b)の下面を覆うように透明性に優れた粘着層(44c)が形成されたものであり、
前記加飾印刷シート(41b)の前記粘着層(44c)側の面を前記上側透光性基板(31)の外面に貼り付けることで前記上側透光性基板(31)の外面に前記加飾印刷シート(41b)が形成され、前記上側透光性基板(31)側(前記上側透光性基板の操作面側)から見たときに、前記下側印刷回路(37)及び前記上側印刷回路(38)が前記加飾印刷層(44b)により隠蔽されていて視認できないようにし、
ベゼル等の枠体と前記操作面の段差部がなく、前記段差部に起因する塵等の付着を防止できる、
電子機器。」


3 本願発明と先願発明の対比
(1)先願発明の発明特定事項と本願発明の発明特定事項の対応関係
先願発明の下記の発明特定事項が本願発明における下記の発明特定事項に対応することは当業者には明らかである。
<先願発明> <本願発明>
座標入力装置(30b) 保護パネル(100)
上部筐体(301a) ケーシング(13)
液晶表示ユニット(20) ディスプレイ装置(15)
下側透光性基板(32) 保護パネル本体(1)
上側透光性基板(31) 透明樹脂フィルム(3)
シート状フィルム(44a’) カバーフィルム(8)
第1の透明導電膜(33) 透明下部電極(2)
加飾印刷層(44b) 加飾層(9)
下側印刷回路(37) 下部回路(5b)
第2の透明導電膜(34) 透明上部電極(4)
上側印刷回路(38) 上部回路(5a)

(2)本願発明と先願発明の対比
上記の対応関係を踏まえて、本願発明の発明特定事項の記載順に沿って、本願発明と先願発明を対比する。
ア 先願発明における「前記座標入力装置(30b)は、……前記上側透光性基板(31)の外面に加飾印刷シート(41b)が形成され、」及び「加飾印刷層(44b)が平面視矩形枠状に形成されるとともに」を、本願発明における「透明窓部(8a)を有する加飾層(9)が形成されている保護パネル(100)」と対比すると、両者は「透明窓部(8a)を有する加飾層(9)が形成されている保護パネル(100)」の点で一致する。
イ 先願発明における「座標入力装置(30b)を前面に備えた、液晶表示ユニット(20)を有する画像表示装置(10)を、上部筐体(301a)の表示部に備えた電子機器(301)において」及び「ベゼル等の枠体と前記操作面の段差部がなく、前記段差部に起因する塵等の付着を防止できる」を、本願発明における「外側面が同一平面を形成するように前記保護パネルを前記外側面側から隙間なく嵌め込まれるように形成された、開口(17)を有するパネル嵌め込み部(22)を備えるケーシング(13)」と対比すると、先願発明の上部筐体(301a)が開口を有することは技術常識からして明らかであり、また、段差部をなくして段差部に起因する塵等の付着を防止するという目的からして、座標入力装置(30b)と上部筐体(301a)の間に隙間がないようにすることも技術常識にすぎないから、両者は、「外側面が同一平面を形成するように前記保護パネルとの間に隙間がないように形成された、開口を有するケーシング(13)」の点で一致する。
ウ 先願発明における「座標入力装置(30b)を前面に備えた、液晶表示ユニット(20)を有する画像表示装置(10)を、上部筐体(301a)の表示部に備えた電子機器(301)」を、本願発明における「前記保護パネル(100)の下側に位置し、前記透明窓部を通して外部から視認可能に配置されたディスプレイ装置(15)」と対比すると、先願発明において、液晶表示ユニット(20)が加飾印刷層(44b)の矩形枠の内側のところを外部から視認可能であることは当然のことであるから、両者は、「前記保護パネル(100)の下側に位置し、前記透明窓部を通して外部から視認可能に配置されたディスプレイ装置(15)」の点で一致する。
エ 先願発明における「前記下側透光性基板(32)の内面側(前記上側透光性基板(31)側)には第1の透明導電膜(33)が形成され、前記下側透光性基板(32)の内面側の外周部には引出回路や該引出回路と接続された接続電極部等の下側印刷回路(37)が形成され、前記第1の透明導電膜(33)に前記下側印刷回路(37)が接続され、」、「前記加飾印刷シート(41b)は、平面視矩形のシート状フィルム(44a’)の外周部に前記下側印刷回路(37)及び前記上側印刷回路(38)を隠蔽する加飾印刷層(44b)が平面視矩形枠状に形成されるとともに」及び「前記加飾印刷シート(41b)の前記粘着層(44c)側の面を前記上側透光性基板(31)の外面に貼り付けることで前記上側透光性基板(31)の外面に前記加飾印刷シート(41b)が形成され、前記上側透光性基板(31)側(前記上側透光性基板の操作面側)から見たときに、前記下側印刷回路(37)及び前記上側印刷回路(38)が前記加飾印刷層(44b)により隠蔽されていて視認できないようにし」を、本願発明における「透明下部電極(2)と、前記透明下部電極の周囲に前記加飾層(9)により隠蔽されるように周縁部分に設けられ、上部回路及び下部回路の端子を保護パネル本体の上面側から下面側に引き出すための貫通穴と、前記透明下部電極の周囲に前記加飾層(9)により隠蔽されるように上側表面に設けられた外部接続回路と連通する下部回路(5b)とを備えた透明の保護パネル本体(1)」と対比すると、先願発明において下側印刷回路(37)が何からの外部接続回路と連通することは技術常識からして明らかであるから、両者は、「透明下部電極(2)と、前記透明下部電極の周囲に前記加飾層(9)により隠蔽されるように上側表面に設けられた外部接続回路と連通する下部回路(5b)備えた透明の保護パネル本体(1)」の点で一致する。
オ 先願発明における「透明ガラス基板又はプラスチック基板から構成された下側透光性基板(32)と、一方の面側が外面(操作面)側とされ透明フィルム等の可撓性を有する材料から構成された上側透光性基板(31)とが略環状の接着層(36)により接合一体化され、前記上側透光性基板(31)と前記下側透光性基板(32)の間に空間部が設けられており、前記上側透光性基板(31)の外面に加飾印刷シート(41b)が形成され」、「前記上側透光性基板(31)の内面側(前記下側透光性基板(32)側)には第2の透明導電膜(34)が形成され、前記上側透光性基板(31)の内面側の外周部には引出回路や該引出回路と接続された接続電極部等の上側印刷回路(38)が形成され、前記上側印刷回路(38)に前記第2の透明導電膜(34)が接続され」、「前記加飾印刷シート(41b)は、平面視矩形のシート状フィルム(44a’)の外周部に前記下側印刷回路(37)及び前記上側印刷回路(38)を隠蔽する加飾印刷層(44b)が平面視矩形枠状に形成されるとともに、前記シート状フィルム(44a’)の下面と前記加飾印刷層(44b)の下面を覆うように透明性に優れた粘着層(44c)が形成されたものであり」及び「前記加飾印刷シート(41b)の前記粘着層(44c)側の面を前記上側透光性基板(31)の外面に貼り付けることで前記上側透光性基板(31)の外面に前記加飾印刷シート(41b)が形成され、前記上側透光性基板(31)側(前記上側透光性基板の操作面側)から見たときに、前記下側印刷回路(37)及び前記上側印刷回路(38)が前記加飾印刷層(44b)により隠蔽されていて視認できないようにし」を、本願発明における「前記保護パネル本体(1)の透明下部電極(2)に対向する位置に設けられた透明上部電極(4)と、前記透明上部電極の周囲に前記加飾層により隠蔽されるように設けられ、前記保護パネル本体(1)の上面側に引き回された前記外部接続回路と連通する上部回路(5a)とを下面に備え、周縁部が接着されて前記保護パネル本体の上側に空気層を介するように配置された透明樹脂フィルム(3)」と対比すると、先願発明において上側印刷回路(38)が何らかの外部接続回路と連通することは技術常識からして明らかであるから、両者は、「前記保護パネル本体(1)の透明下部電極(2)に対向する位置に設けられた透明上部電極(4)と前記透明上部電極の周囲に前記加飾層により隠蔽されるように設けられ、外部接続回路と連通する上部回路(5a)とを下面に備え、周縁部が接着されて前記保護パネル本体の上側に空気層を介するように配置された透明フィルム(3)」の点で一致する。
カ 先願発明における「前記加飾印刷シート(41b)は、平面視矩形のシート状フィルム(44a’)の外周部に前記下側印刷回路(37)及び前記上側印刷回路(38)を隠蔽する加飾印刷層(44b)が平面視矩形枠状に形成されるとともに、前記シート状フィルム(44a’)の下面と前記加飾印刷層(44b)の下面を覆うように透明性に優れた粘着層(44c)が形成されたものであり」及び「前記加飾印刷シート(41b)の前記粘着層(44c)側の面を前記上側透光性基板(31)の外面に貼り付けることで前記上側透光性基板(31)の外面に前記加飾印刷シート(41b)が形成され、前記上側透光性基板(31)側(前記上側透光性基板の操作面側)から見たときに、前記下側印刷回路(37)及び前記上側印刷回路(38)が前記加飾印刷層(44b)により隠蔽されていて視認できないようにし」を、本願発明における「前記透明樹脂フィルム(3)の上面に設けられ、少なくとも一方の面に前記加飾層(9)が形成された透明樹脂製のカバーフィルム(8)」と対比すると、先願発明においてシート状フィルム(44a’)が透明であることは自明であるから、両者は、「前記透明フィルム(3)の上面に設けられ、少なくとも一方の面に前記加飾層(9)が形成された透明のカバーフィルム(8)」の点で一致する。

(3)本願発明と先願発明の一致点及び相違点の認定
上記の検討を総合すると、本願発明と先願発明は、
「透明窓部(8a)を有する加飾層(9)が形成されている保護パネル(100)と、
外側面が同一平面を形成するように前記保護パネルとの間に隙間がないように形成された、開口を有するケーシング(13)と、
前記保護パネル(100)の下側に位置し、前記透明窓部を通して外部から視認可能に配置されたディスプレイ装置(15)とを備え、
前記保護パネル(100)は、
透明下部電極(2)と、前記透明下部電極の周囲に前記加飾層(9)により隠蔽されるように上側表面に設けられた外部接続回路と連通する下部回路(5b)備えた透明の保護パネル本体(1)と、
前記保護パネル本体(1)の透明下部電極(2)に対向する位置に設けられた透明上部電極(4)と、前記透明上部電極の周囲に前記加飾層により隠蔽されるように設けられ、外部接続回路と連通する上部回路(5a)とを下面に備え、周縁部が接着されて前記保護パネル本体の上側に空気層を介するように配置された透明フィルム(3)と、
前記透明フィルム(3)の上面に設けられ、少なくとも一方の面に前記加飾層(9)が形成された透明のカバーフィルム(8)を備える、保護パネル付き電子機器」
の点で一致し、以下の「相違点1」ないし「相違点3」の点で一応の相違があると認められる。

<相違点1>
本願発明の透明フィルム(3)及び透明のカバーフィルム(8)は樹脂製であるとの限定があるのに対し、先願発明の透明フィルム等の可撓性を有する材料から構成された上側透光性基板(31)及び平面視矩形のシート状フィルム(44a’)は材質が明示的に明らかにはなってはいない点。

<相違点2>
本願発明の透明の保護パネル本体(1)は、透明下部電極の周囲に加飾層(9)により隠蔽されるように周縁部分に設けられ、上部回路及び下部回路の端子を保護パネル本体の上面側から下面側に引き出すための貫通穴を備え、前記貫通穴を介して、全ての前記下部回路及び前記上部回路の端子を前記保護パネル本体の下面側から引き出すとの特定があり、上部回路(5a)が連通する外部接続回路は、保護パネル本体(1)の上面側に引き回された外部接続回路であるのに対し、先願発明の下側透光性基板(32)と、上側印刷回路(38)が連通する外部接続回路には、そのような限定がされていない点。

<相違点3>
本願発明のケーシング(13)は前記保護パネルを前記外側面側から隙間なく嵌め込まれるように形成された、開口(17)を有するパネル嵌め込み部(22)を備えるのに対し、先願発明の上部筐体(301a)にはそのような限定がされていない点。


4 相違点についての判断
(1)相違点1について
先願発明の「透明フィルム等の可撓性を有する材料から構成された上側透光性基板(31)」及び「平面視矩形のシート状フィルム(44a’)」は、いずれも、「座標入力装置」の可撓性電極側に形成される透明フィルムであるところ、上側透光性基板(31)が可撓性を有するから、これに積層されるシート状フィルム(44a’)も可撓性を有することは明らかである。そして、これらの材料が特に明示されていなくても、「可撓性を有するフィルム」という場合に、まず想起される材料は樹脂であるから、相違点1は実質的な相違点ではない。また、座標入力装置の可撓性電極側に形成される透明フィルムとして樹脂製のフィルムを用いることは、座標入力装置の技術分野において本願の優先日当時の技術常識である(一例として、特開平5-114329号公報(特に、段落【0009】及び【0016】を参照)ことからしても、相違点1は実質的な相違点ではない。

(2)相違点2について
ア 相違点2の評価
座標入力装置の下側基板(固定電極側基板)に、上部回路及び下部回路の端子を保護パネル本体の上面側から下面側に引き出すための貫通穴を設け、前記貫通穴を介して、全ての前記下部回路及び前記上部回路の端子を前記保護パネル本体の下面側から引き出すことは、座標入力装置の技術分野において本願の優先日当時の周知技術である(例えば、特開2003-202959号公報(特に、段落【0023】?【0035】及び図1?4を参照)、特開平8-336855号公報(特に、段落【0057】?【0064】及び図2を参照)、特開2002-108566号公報(特に、段落【0006】?【0023】及び図4?9を参照)。ここで、上部回路の端子を保護パネル本体の上面側から下面側に引き出すと、上部回路が連通する外部接続回路は、保護パネル本体の上面側に引き回されたものとなる。また、本願発明においては、「貫通穴」の位置について、透明下部電極の周囲に加飾層(9)により隠蔽されるように周縁部分に設けられているとの限定があるところ、先願発明においては、下側印刷回路(37)及び上側印刷回路(38)が加飾印刷層(44b)により隠蔽されていて視認できないようにするのであるから、貫通穴を設ける場合に、第1の透明導電膜33の周囲に加飾印刷層(44b)により隠蔽されるように周縁部分に設けることは当業者の当然の配慮事項である。
以上の点を考慮すると、相違点2は、先願発明における「上部印刷回路(38)」及び「下部印刷回路(37)」の外部との接続の方法として本願の優先日当時において当業者に周知の技術を採用したものに限定したことにすぎず、新たな効果を奏するものではない。したがって、相違点2は微差にすぎず、実質的な相違点ということはできない。

イ 請求人の主張についての検討
(ア)請求人の主張
平成22年2月17日付けの拒絶理由通知書の末尾において、「本拒絶理由に対し特許請求の範囲を補正した場合には、補正後の請求項に係る発明が、平成21年11月25日付けの拒絶理由通知書に記載した拒絶理由2(特許法第29条の2)及び拒絶理由3(特許法第29条第2項)を解消している理由についても、意見書で説明して下さい。」と伝えたところ、平成22年4月26日付け意見書において、請求人は、今回の拒絶理由に対して特許請求の範囲を補正したが実質的に内容が大きく変わるものではないから、平成21年11月25日付けの拒絶理由通知書に対して提出した、平成22年1月29日付けの意見書の内容を参照して欲しい旨の回答をしている。
そこで、平成22年1月29日付けの意見書を参酌すると、請求人は「前記加飾層(9)により隠蔽された前記保護パネル本体の前記周縁部分の前記貫通穴を介して、全ての前記下部回路及び前記上部回路の端子を前記保護パネル本体から引き出す」こと、すなわち、複数の引き回し回路から外部への複数の接続端子を一箇所に集めたのち、一箇所に集められた複数の接続端子を1つの集合体として外部に取り出すための貫通孔を透明の保護パネル本体(1)に備え、かつ、その貫通孔を加飾層(9)で隠蔽すること(明細書の段落番号0067など、図2及び図3など参照)については、周知技術を例示するために挙げた文献には全く開示も示唆もされていない旨主張している。

(イ)請求人の主張についての検討
請求人は、本願発明の発明特定事項である「前記保護パネル本体の前記周縁部分の前記貫通穴を介して、全ての前記下部回路及び前記上部回路の端子を前記保護パネル本体の下面側から引き出す」ことを「複数の引き回し回路から外部への複数の接続端子を一箇所に集めたのち、一箇所に集められた複数の接続端子を1つの集合体として外部に取り出すための貫通孔を透明の保護パネル本体(1)に備え」と言い換えているが、請求項1には、このような言い換えた事項、すなわち、一箇所に集められた複数の接続端子を1つの集合体として(一つの貫通穴から)外部に取り出すことは記載されていない。
また、明細書の段落【0067】の「また、フィルムコネクタ18を用いずに、保護パネル本体1の周縁部分に貫通穴を開けて全ての回路5a,5bの端子を保護パネル本体1の背面に引き出してもよい。この場合、保護パネル本体の下面に回路5a,5bの端子が配置されることとなるので、例えば、当該保護パネル側の端子(回路5a,5bの端子を保護パネル本体1の背面に引き出すための回路(接続回路)によって、回路5a,5bの端子を当該接続回路の先端まで延長させるように保護パネル本体1から引き出した端子)と接触する別の端子を、ケーシングの凹部22の保護パネルを支持する底面に設けることが好ましい。」との記載及び明細書のその他の記載並びに図面を参酌しても、一箇所に集められた複数の接続端子を1つの集合体として一つの貫通穴から外部に取り出すことは記載されていない。さらに、本願の優先日当時において、タッチパネルにおいて、下側基板に複数の貫通穴を設け、上下の電極の接続端子をそれぞれ別の貫通穴から外部に取り出すことが周知の技術であったことにかんがみると、本願明細書の段落【0067】の記載を本願の優先日当時において当業者が客観的に読んだ場合には、貫通穴は1つではなく、複数であると考えるのが通常であると認められる。したがって、請求項に記載されていない事項を含めて本願発明を認定しなければならない特段の事情は認められないが、仮にそのような事情があったとしても、請求人が言い換えた技術事項は本願の明細書の記載からは把握できない事項であるから、本願発明の発明特定事項として認定することはできない。
したがって、請求人の主張は、請求項の記載に基づかない主張であるから、採用することができない。
なお、仮に請求項の記載において、一箇所に集められた複数の接続端子を1つの集合体として一つの貫通穴から外部に取り出すことが記載されたとしても、当該事項は、特開平11-251702号公報、特開平9-102657号公報、特開平6-283835号公報、特開平7-202421号公報及び実願平1-140780号(実開平3-79480号)のマイクロフィルム等に開示されているように、配線技術としての技術常識にすぎないから、実質的な相違点ということはできない。

(3)相違点3について
先願発明の座標入力装置(30b)は、画像表示装置の保護パネルとしての機能及び表示窓としての機能を有しているところ、外側面が同一平面を形成するように保護パネルや表示窓を外側面側から隙間なく嵌め込まれるように形成された開口を有するパネル嵌め込み部をケーシングが備えることは、保護パネルや表示パネルが付いた表示装置を備えた電子機器の技術分野において、本願の優先日当時の周知技術である(例えば、実願平2-115139号(実開平4-72222号)のマイクロフィルム(明細書の第2頁第5行?第3頁第4行、第3図)、特開平10-143078号公報(特に、段落【0013】、図1?4)、特開2003-150066号公報(特に、前側カバー23の段差部29にタッチパネル26の縁部が嵌合され、タッチパネル26前側カバー23の段差部28とタッチパネル26の表面が面一となる点(段落【0013】、図5))を参照)。したがって、相違点3は、本願の優先日当時における周知の技術を適用したものにすぎず、新たな効果を奏するものではないから、相違点3は微差にすぎず、実質的な相違点ということはできない。

(4)相違点についての判断の小括
以上のとおりであるから、本願発明は先願発明と実質的に同一である。

5 本願発明と先願発明についての発明者及び出願人の関係
本願発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記先願の出願人と同一であるとも認められない。

6 特許法第29条の2の要件についてのまとめ
以上検討のとおり、本願発明は先願明細書に記載された発明と実質的に同一であり、かつ、本願発明の発明者が先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないから、本願発明は特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。


第4 特許法第29条第2項の要件について
1 刊行物及び刊行物の記載事項
(1)引用例1及び引用例1の記載事項
平成22年2月17日付けの拒絶理由通知書で引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平7-306748号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(当審注:下記「2 引用発明の認定」において特に関連する箇所に下線を引いた。)。
ア 【特許請求の範囲】の欄
「【請求項2】 液晶表示パネルにペン入力面となる表面板を備えたペン入力電子機器において、表面板は弾性を有する合成樹脂から成り、そのペンと接触しない面は防眩処理され且つ表面板のペンと接触する側の面に取着された感圧シートタブレットのペンと接触する面が書き味調整用処理を施されたことを特徴とするペン入力電子機器。
【請求項3】 表面板と液晶表示パネルとの間に隙間を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のペン入力電子機器。
【請求項4】 表面板のペンと接触する側の面と筐体窓枠の間に段差がないことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のペン入力電子機器。」

イ 段落【0001】?【0015】
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ペン入力ができるペン入力電子機器に係り、特にペン入力を行なう画面部分において、品質,操作性ならびに耐久性が確保されたペン入力電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のペン入力電子機器においては、液晶パネル(以下、LCDパネルと称す)の外側にペン入力面となる表面板が設けられているが、図3(a)に示すように表面板1がガラス板2の上面に感圧シートタブレット3を貼り付けたものや、図3(b)に示すように、表面板1がガラス板2の下面に電磁タブレット4をコーティングまたは貼り合わせたものを採用している。
【0003】また、実装構造は、図4(a),(b)に示すように、表面板1を筐体窓枠5の下に取り付けている。このため、筐体の窓枠上面6から一段落ち込んだ所に表面板1の上面1aがあり、さらに、この表面板1は、内側にあるLCDパネル7と密着している構造になっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】図3(a)に示す表面板の場合、表面板1の上側が位置検出用の感圧シートタブレット3で上表面の防眩処理がなされておらず、画面の表示が見にくい。あるいは、防眩処理が施されていても、種類が少なく、程度もあまり良くないのが一般的である。
【0005】図3(b)に示す表面板の場合、上表面がガラス板2で防眩処理がされていないか処理が弱く、また、ペン8が滑り易く、書きにくい。
【0006】図3(a)および図3(b)の両者とも、ガラス板2を母材としているため、ペン8で書いたときのタッチ感が固く、長時間書いていると疲れる。さらに、ガラス板2は割れて飛散する危険性がある。
【0007】また、図4(a),(b)に示す構造の場合、筆圧や腕の荷重が直接LCDパネル7等の機能部材に作用する。さらに、表面板1が撓んでLCDパネル7の中央部に力が加わり、LCD内部のスペーサの偏りによる色むら等、ダメージを与える恐れがある。また、表面板1の上面1aと筐体の窓枠上面6との間に段差があり、ペン入力時に端まで来ると、この段差にペン8を持つ手が乗り上げ、書きづらくなる。
【0008】そこで本発明は、上記の諸欠点をなくし、操作性,耐久性が良好で、違和感なくペン入力ができるペン入力電子機器を提供することを目的とする。
…(中略)…
【0010】また、本発明のペン入力電子機器は、LCDパネルのペン入力面となる表面板は弾性を有する合成樹脂から成り、そのペンと接触しない面は防眩処理され且つ表面板のペンと接触する側の面に取着された感圧シートタブレットのペンと接触する面が書き味調整用処理を施されたことを特徴とする。
【0011】また、上記の各ペン入力電子機器は、表面板とLCDパネルとの間に隙間を設けたことを特徴とし、さらに、表面板のペンと接触する側の面と筐体窓枠の間に段差がないことを特徴とする。
【0012】
【作用】本発明のペン入力電子機器においては、表面板が弾性を有する合成樹脂で形成されているため、ペンで書いたときの感触が柔らかく、ガラスのものに比べて割れにくく、もし割れても破片があまり危険でなく、また飛散しない。さらに、樹脂板なので防眩処理が容易に安価にでき、選択の種類も多い。
【0013】表面板の両面に防眩処理を施すことにより、外光によるぎらつきが防止され、LCDパネル画面の表示が見易くなるとともに、表面板とLCDパネルとの間の隙間に起因するニュートンリング(外光による干渉縞)の発生が防止され、LCDパネル画面の表示が見易くなる。また、表面板や感圧シートタブレットのペンと接触する側の面に書き味調整用処理を施したことにより、ペンが滑りにくくなり、書き味が良くなる。
【0014】また、表面板とLCDパネル上面の間に隙間を設けたことにより、ペンで書いたときの感触が柔かくなり、また、筆圧,腕の荷重がLCDパネルに加わらず、たとえ表面板が撓んだとしても、LCDパネルに接触しにくくなる。また、水分の吸着によるニュートンリング(干渉縞)の発生が防止される。
【0015】表面板のペンと接触する側の面と筐体窓枠の間に段差をなくしたことにより、ペンで文字などを入力しているとき、端まで来たとき手が段に乗り上げて書きづらくなるということがなくなる。」

ウ 段落【0016】?【0026】
「【0016】
【実施例】以下、図面に示した実施例に基いて本発明を詳細に説明する。
【0017】図1(a),(b)に本発明の一実施例のペン入力電子機器の構成を示す。図1(a)に示すように、ペン入力面となる表面板11は、弾性を有する合成樹脂、例えば透明なアクリルから成り、そのペンと接触する側の面11aおよびペンと接触しない面11bに防眩処理が施され、且つペンと接触する側の面11aにザラツキを持たせた書き味調整用処理が施されている。そして、この表面板11は、電子機器の筐体12の表面板11板厚にほぼ等しい段差部13aを有する筐体窓枠13の上に取り付けられている。したがって、表面板11のペンと接触する側の面11aと筐体窓枠13の上面13bの間に段差がなく、図1(b)に示すように平坦な形状となる。
【0018】LCDパネル7は、その下面7bに非接触方式タブレット、例えば電磁タブレット4がコーティングまたは貼り合わせによって取着されており、筐体窓枠13の下面に取り付けられている。したがって、表面板11のペンと接触しない面11bとLCDパネル7の上面7aの間には隙間14が形成されている。
【0019】上記のように構成された本発明一実施例のペン入力電子機器においては、表面板11が弾性に富む合成樹脂、例えばアクリルで形成されているため、ペン8で書いたときの感触が柔らかく、ガラスのものに比べて割れにくく、もし割れても破片があまり危険でなく、また飛散しない。さらに、合成樹脂板なので防眩処理が容易に安価にでき、選択の種類も多い。
【0020】また、表面板11のペンと接触する側の面11aに防眩処理を施してあるため、外光によるぎらつきが防止され、LCDパネル7の画面の表示が見易くなる。また、表面板11のペンと接触する側の面11aにザラツキを持たせた書き味調整用処理を施してあるため、ペン8が滑りにくくなり、書き味が良くなる。さらに、表面板11のペンと接触しない面11bに防眩処理を施してあるため、表面板11のペンと接触しない面11bとLCDパネル7の上面7aとの隙間14に起因するニュートンリング(外光による干渉縞)の発生が防止され、LCDパネル7の画面の表示が見易くなる。
【0021】表面板11のペンと接触しない面11bとLCDパネル上面7aの間に隙間14を設けたので、ペン8で書いたときの感触が柔かくなり、また、筆圧,腕の荷重等がLCDパネル7に加わらず、たとえ表面板11が撓んだとしても、LCDパネル7に接触しにくくなる。また、水分の吸着によるニュートンリング(干渉縞)の発生が防止される。【0022】表面板11のペンと接触する側の面11aと筐体窓枠13の上面13bとの間に段差がない構造にしたので、ペンで文字などを入力しているとき、端まで来ても手が段に乗り上げて書きづらくなるということがなくなる。
【0023】次に、本発明の他の実施例を図2を参照して説明する。
【0024】この実施例のペン入力電子機器は、図2に示すように、筐体窓枠13への表面板11およびLCDパネル7の取り付け構造は、図1の実施例と同様であるが、位置検出用の感圧シートタブレット3が、アクリルなど合成樹脂で作られた表面板11のペンと接触する側の面11aに貼り付けられている場合である。
【0025】この場合は、表面板11はそのペンと接触しない面11bのみ防眩処理を施され、感圧シートタブレット3のペンと接触する側の面3aにザラツキを持たせた書き味調整用処理が施されていることを特徴とする。
【0026】この構成のペン入力電子機器においては、ペン8で書いたときの感触が柔い、割れにくい、防眩処理が容易且安価、表面板11のペンと接触しない面11bの防眩処理によりLCDパネル7との隙間14に起因するニュートンリングの発生が防止されること、感圧シートタブレット3のペンと接触する側の面3aに施した書き味調整用処理によってペンによる書き味が良く且つ外光によるぎらつきも防止されて表示が見易い、表勘板11とLCDパネル7間の隙間14による書き味の柔かさ,LCDパネル7への筆圧等の荷重不伝達,水分吸着に起因するニュートンリング発生の回避、表面板11の感圧シートタブレット3のペンと接触する側の面3aと筐体窓枠13の上面13bとの間に段差がなく、ペン入力時に端で手が段に乗り上げて書きづらくなることがない、等の効果を得ることができる。」

エ 【図1】?【図4】
【図1】?【図4】にはそれぞれ下記のことが図示されている。
【図1】 本発明の一実施例のペン入力電子機器の要部の(a)断面図及び(b)斜視図
【図2】 本発明の他の実施例のペン入力電子機器の構成を示す要部断面図
【図3】 従来例の表面板
【図4】 従来例のペン入力電子機器の要部の(a)断面図及びb)斜視図

(2)引用例2及び引用例2の記載事項
平成22年2月17日付けの拒絶理由通知書で引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-311059号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア 段落【0001】
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はノートパソコンや液晶モニターなどに接続されるタブレット入力装置に関する。」

イ 【0014】?【0018】
「【0014】
【実施例】図1は、本発明のタブレット入力装置を汎用液晶ディスプレイと組合せた場合を示す正面図である。同図に示すようにタブレット入力装置(以後入力部と書く)12は、汎用液晶ディスプレイの画面と略等サイズの検出部1aをもつ透明なタッチパネル本体1とそれを固定する透明な支持体2、そしてその支持体2の背面にとりつけられた薄手の固定用部材3を備えた構成からなる。
【0015】タブレット入力装置12は、図2に示すように液晶ディスプレイ8の前面に装着して画面操作を行ったり、また図6に示すようなディスプレイ8周辺の机上に直接載置してペン入力をしたりするなど二通りの使用方法が可能である。
【0016】前記支持体2は、図1に示すように液晶ディスプレイ8の全体を覆うような寸法に作成せず、支持体2のサイズを縦方向はタッチパネル本体1と等しく、横方向は固定用部材3や保護カバー4などを取り付けるのに最小限必要な寸法にすることで、同サイズが小さく抑えられ、図2のように画面サイズの大きなノートパソコン8の狭い画面枠の場合でもロック8aやストッパー8bに引っかかることなく装着できる。
【0017】また各サイズへ対応して製作する場合も、変更必要な寸法はタッチパネル本体1と支持体2の設計のみであるため、比較的容易に低コストで可能になる。タッチパネル本体1のサイズは、ノート型パソコン等の汎用ディスプレイと同サイズ、例えば対角線長が12.1インチのサイズとしてある。タッチパネル本体1は公知のアナログ抵抗膜式のタッチパネルでその構成と検出原理は特開平10-111748号等に詳しく、既に公知なのでこれ以上の説明は省略する。
【0018】図3又は図4に示すように、前記タッチパネル本体1は実際には支持体2のタッチパネル貼り付け部2aの上に接着剤や粘着テープ等で全面接着される。またタッチパネル本体1の配線部分は例えば着色テープや印刷などで表から見えないような加工を行う。」

ウ 【図1】?【図7】
【図1】?【図4】にはそれぞれ下記のことが図示されている。
【図1】 本発明のタブレット入力装置の形態を示す正面図
【図2】 タブレット入力装置をノートパソコンのディスプレイ前に装着した説明図
【図3】 図1のA1?A1’断面図
【図4】 図1のA2?A2’断面図
【図5】 タブレット入力装置とノートパソコンの接続方法説明図
【図6】 タブレット入力装置をパソコンの横に載置しての使用説明図
【図7】 タブレット入力装置をパソコンの横に載置して使用する際に使用する枠体の説明図

(3)引用例3及び引用例3の記載事項
平成22年2月17日付けの拒絶理由通知書で引用した、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開平5-114329号公報(以下「引用例3」という。)には、図面とともに、下記の事項が記載されている。
ア 【特許請求の範囲の欄】
「【請求項1】 一方の面に透明な可動電極が形成され他方の面にハードコート層が形成された可動電極支持フィルムと、透明な固定電極が形成された固定電極支持板とが、スペーサーによってわずかな間隔で隔てられ、両電極が対向するように重ね合わさている透明タッチパネルにおいて、可動電極支持フィルムが、二枚の透明フィルム間に表示柄層および接着層を設けたものであることを特徴とする表示柄付き透明タッチパネル。」

イ 段落【0001】
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表示柄およびディスプレイ画面の視認性に優れ、表示柄が形状自在に形成された表示柄付き透明タッチパネルに関するものである。」

ウ 段落【0007】?【0018】
「【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明の表示柄透明タッチパネルは、一方の面に透明な可動電極が形成され他方の面にハードコート層が形成された可動電極支持フィルムと、透明な固定電極が形成された固定電極支持板とが、スペーサーによってわずかな間隔で隔てられ、両電極が対向するように重ね合わさている透明タッチパネルにおいて、可動電極支持フィルムが、二枚の透明フィルム間に表示柄層および接着層を設けるように構成した。
【0008】以下、図面を参照しながら本発明についてさらに詳しく説明する。図1は本発明の表示柄透明タッチパネルの一実施例を示す断面図、図2は本発明の表示柄透明タッチパネルの他の実施例を示す断面図である。1は可動電極、2はハードコート層、3は可動電極支持フィルム、4は固定電極、5は固定電極支持板、6はスペーサー、7は表示柄層、8は透明フィルム、9接着層をそれぞれ示す。
【0009】可動電極支持フィルム3は、二枚の透明フィルム8間に表示柄層7と接着層9を設けたものである。透明フィルム8としては、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルムが用いられる。表示柄層7は、樹脂バインダー中に適切な色の染顔料を含有する着色インキを用いて所望のパターンに形成される。樹脂バインダーとしては、ポリエステル樹脂などが好ましい。表示柄層7の形成方法としては、スクリーン印刷法がある。接着層9としては、アクリル系粘着剤があり、二枚の透明フィルム8を全面接着させる。接着層9の形成方法としてはロールコート法がある。可動電極支持フィルム3は、図1に示すように表示柄層7と接着層9のうち接着層9に近い側に可動電極1が形成されてもよいし、図2に示すように表示柄層7と接着層9のうち表示柄層7に近い側に可動電極1が形成されてもよい。
【0010】可動電極支持フィルム3の作製法は、二枚の透明フィルム間に表示柄層および接着層が設けらた構成であればとくに限定しないが、たとえば、一方の面に接着層8が全面形成され他方の面に透明な可動電極1が形成された透明フィルム8と、一方の面に表示柄層7が形成され他方の面にハードコート層2が形成された透明フィルム8とを貼り合わせることができる。
【0011】固定電極支持板5としては、透明フィルムも用いられるがガラス板を用いることが多い。
【0012】可動電極1および固定電極4としては、通常の透明タッチパネルに使用される金、酸化錫、またはITO(インジウム・チン・オキサイド)などの透明導電膜材料が用いられる。両電極1・4は、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどにより透明タッチパネルの設計に応じて種々のパターンに形成される。
【0013】ハードコート層2としては、通常の透明タッチパネルに使用されるシロキサン、アクリル、エポキシなどの樹脂が用いられる。
【0014】スペーサー6は、フォトプロセス法や印刷法などによって、通常の方法で図1および図2に示すように固定電極4上に形成されるほかに、可動電極1上に形成されてもよく、あるいは電極1・4以外の場所に形成されてもよい。
【0015】なお、可動電極支持フィルム3と固定電極支持板5とは、その電極面周縁部分に塗布された接着剤により固定されている。
【0016】
【実施例】厚さ25μmの長尺のポリエステルフィルムを透明フィルム8として用い、その一方の面にITOをスパッタリングした後パターニングして可動電極1を形成したのち、フィルムの他方の面にアクリル系粘着剤をロールコーター法で30μm厚さに全面コートして接着層9を形成した。次に、厚さ125μmの長尺のポリエステルフィルムを透明フィルム8として用い、その一方の面にロールスクリーン印刷機で所要の表示柄層7を形成し、フィルムの他方の面にシロキサンをハードコート処理を施してハードコート層2を形成し、先の粘着剤コートしたフィルムと表示柄層7側が接着されるようにロールラミネーターで貼り合わせた。
【0017】その後、取り扱い単位サイズに裁断し、引き回し回路の形成を行ない、製品一個の単位に打ち抜いた。別途にITOを用いて固定電極4が形成された厚さ1.1mmのガラス板と上記の貼り合わされたフィルムとを、両電極1・4が対向するように重ね合わせ周縁部分を接着剤で固定して表示柄付き透明タッチパネルを作製した。
【0018】この表示柄付き透明タッチパネルは、表示柄が形状自在に形成され、パネルをディスプレイ上に配置し入力装置として使用したところ、表示柄10およびディスプレイの視認性に優れていた。」

エ 【図1】?【図5】
【図1】?【図5】にはそれぞれ下記のことが図示されている。
【図1】 本発明の表示柄付き透明タッチパネルの一実施例を示す断面図
【図2】 本発明の表示柄付き透明タッチパネルの他の実施例を示す断面図
【図3】 表示柄の一実施例を示す平面図
【図4】 従来の表示柄層が透明タッチパネルに設けられた状態を示す断面図
【図5】 従来の表示柄層が透明タッチパネルに設けられた状態を示す断面図

2 引用発明の認定
引用例1の【図2】に記載されたものに対応する発明について、引用例1の段落【0024】の「この実施例のペン入力電子機器は、図2に示すように、筐体窓枠13への表面板11およびLCDパネル7の取り付け構造は、図1の実施例と同様であるが、位置検出用の感圧シートタブレット3が、アクリルなど合成樹脂で作られた表面板11のペンと接触する側の面11aに貼り付けられている場合である。」との記載に留意して検討する。
ア 引用例1の【請求項2】の「液晶表示パネルにペン入力面となる表面板を備えたペン入力電子機器において、表面板は弾性を有する合成樹脂から成り、……ペン入力電子機器。」との記載を参酌すると、引用例1には「液晶表示パネルにペン入力面となる表面板を備えたペン入力電子機器において、前記表面板は弾性を有する合成樹脂から成ること」が記載されていると認められる。
イ 引用例1の【請求項4】の「表面板のペンと接触する側の面と筐体窓枠の間に段差がないことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のペン入力電子機器。」との記載、及び、段落【0017】の「この表面板11は、電子機器の筐体12の表面板11板厚にほぼ等しい段差部13aを有する筐体窓枠13の上に取り付けられている。したがって、表面板11のペンと接触する側の面11aと筐体窓枠13の上面13bの間に段差がなく、図1(b)に示すように平坦な形状となる。」との記載を参酌すると、引用例1には「前記表面板は、前記電子機器の筐体の前記表面板の板厚にほぼ等しい段差部を有する筐体窓枠の上に取り付けられ、前記表面板のペンと接触する側の面と前記筐体窓枠の間に段差がないこと」が記載されていると認められる。
ウ 引用例1の段落【0018】の「LCDパネル7は、その下面7bに非接触方式タブレット、例えば電磁タブレット4がコーティングまたは貼り合わせによって取着されており、筐体窓枠13の下面に取り付けられている。したがって、表面板11のペンと接触しない面11bとLCDパネル7の上面7aの間には隙間14が形成されている。」との記載を参酌すると、引用例1には「前記液晶表示パネルは前記筐体窓枠の下面に取り付けられていること」が記載されていると認められる。
エ 以上を総合すると、引用例1には下記の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「液晶表示パネルにペン入力面となる表面板を備えたペン入力電子機器において、
前記表面板は弾性を有する合成樹脂から成り、
前記表面板は、前記電子機器の筐体の前記表面板の板厚にほぼ等しい段差部を有する筐体窓枠の上に取り付けられ、前記表面板のペンと接触する側の面と前記筐体窓枠の間に段差がなく、
前記液晶表示パネルは前記筐体窓枠の下面に取り付けられている、
ペン入力電子機器。」

3 本願発明と引用発明の対比
(1)本願発明の発明特定事項と引用発明の発明特定事項の比較検討
以下、本願発明の発明特定事項と引用発明の発明特定事項を技術常識を踏まえて比較し、一致点を検討する。
ア 引用発明の「感圧シートタブレット」が「取着された」「表面板」は、「液晶表示パネル」の視認側に形成されているから、引用発明の「感圧シートタブレット」が「取着された」「表面板」は、「液晶表示パネル」を保護する機能を有していると認めることができる。したがって、引用発明の「感圧シートタブレット」が「取着された」「表面板」と、本願発明の「透明窓部(8a)を有する加飾層(9)が形成されている保護パネル(100)」は、「保護パネル(100)」の点で一致する。
イ 引用発明の「表面板の板厚にほぼ等しい段差部を有」し、「前記表面板のペンと接触する側の面と前記筐体窓枠の間に段差がな」いように「前記表面板」を「上に取り付け」る「筐体窓枠」と、本願発明の「外側面が同一平面を形成するように前記保護パネルを前記外側面側から隙間なく嵌め込まれるように形成された、開口(17)を有するパネル嵌め込み部(22)を備えるケーシング(13)」は、「外側面が同一平面を形成するように前記保護パネルを前記外側面側から組み付けられるように形成された、開口(17)を有するパネル嵌め込み部(22)を備えるケーシング(13)」の点で一致する。
ウ 引用発明の「表面板」は「前記電子機器の筐体の前記表面板の板厚にほぼ等しい段差部を有する筐体窓枠の上に取り付けられ」ているのに対し、引用発明の「液晶表示パネル」は「前記筐体窓枠の下面に取り付けられ」ているから、引用発明の「液晶表示パネル」は「表面板」の下側に位置することは明らかである。また、引用発明の「液晶表示パネル」が、「感圧シートタブレット」が「取着された」「表面板」を通して外部から視認可能に配置されていることは明らかである。したがって、引用発明の「表面板」の下側に位置し、前記「表面板」を通して外部から視認可能に配置された「液晶表示パネル」と、本願発明の「前記保護パネル(100)の下側に位置し、前記透明窓部を通して外部から視認可能に配置されたディスプレイ装置(15)」は、「前記保護パネル(100)の下側に位置し、前記保護パネル(100)を通して外部から視認可能に配置されたディスプレイ装置(15)」の点で一致する。

(2)本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
以上の検討を踏まえて、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、
「保護パネル(100)と、
外側面が同一平面を形成するように前記保護パネルを前記外側面側から組み付けられるように形成された、開口(17)を有するパネル嵌め込み部(22)を備えるケーシング(13)と、
前記保護パネル(100)の下側に位置し、前記保護パネル(100)を通して外部から視認可能に配置されたディスプレイ装置(15)とを備える、保護パネル付き電子機器」
の点で一致し、以下の相違点1及び相違点2において相違すると認められる。
<相違点1>
本願発明の「保護パネル(100)」は、「透明下部電極(2)と、前記透明下部電極の周囲に前記加飾層(9)により隠蔽されるように周辺部分に設けられ、上部回路及び下部回路の端子を保護パネル本体の上面側から下面側に引き出すための貫通穴と、前記透明下部電極の周囲に前記加飾層(9)により隠蔽されるように上側表面に設けられた外部接続回路と連通する下部回路(5b)とを備えた透明の保護パネル本体(1)」と、「前記保護パネル本体(1)の透明下部電極(2)に対向する位置に設けられた透明上部電極(4)と前記透明上部電極の周囲に前記加飾層により隠蔽されるように設けられ、前記前記保護パネル本体(1)の上面側に引き回された前記外部接続回路と連通する上部回路(5a)とを下面に備え、周縁部が接着されて前記保護パネル本体の上側に空気層を介するように配置された透明樹脂フィルム(3)」と、「前記透明樹脂フィルム(3)の上面に設けられ、少なくとも一方の面に前記加飾層(9)が形成された透明樹脂製のカバーフィルム(8)」を備え、「前記加飾層(9)により隠蔽された前記保護パネル本体の前記周縁部分の前記貫通穴を介して、全ての前記下部回路及び前記上部回路の端子を前記保護パネル本体の下面側から引き出す」のに対し、引用発明の「感圧シートタブレット」が「取着された」「表面板」にはそのような限定がない点。

<相違点2>
本願発明の「ケーシング(13)」の「パネル嵌め込み部(22)」は「保護パネルを」「外側面側から隙間なく嵌め込まれるように形成され」ているのに対し、引用発明の「筐体窓枠」の「段差部」にはそのような限定がない点。

4 相違点についての判断
(1)相違点1について
ア 感圧シートタブレットとして、固定電極が形成される下側透明基板と、可撓性電極が形成される上側可撓性透明基板とを空気層を介して周縁部を接着するとともに、前記下側透明基板及び前記上側可撓性透明基板の周囲に外部接続回路と連通する引き回し配線やバスバー電極が形成されたものは、本願の優先日当時における技術常識である(例えば、特開2001-216090号公報(特に図2)参照)から、引用発明の「感圧シートタブレット」にこのようなものが含まれることは明らかである。
そして、座標入力装置の下側基板(固定電極側基板)に、上部回路及び下部回路の端子を保護パネル本体の上面側から下面側に引き出すための貫通穴を設け、前記貫通穴を介して、全ての前記下部回路及び前記上部回路の端子を前記保護パネル本体の下面側から引き出すことは、座標入力装置の技術分野において本願の優先日当時の周知技術である(例えば、特開2003-202959号公報(特に、段落【0023】?【0035】及び図1?4を参照)、特開平8-336855号公報(特に、段落【0057】?【0064】及び図2を参照)、特開2002-108566号公報(特に、段落【0006】?【0023】及び図4?9を参照)。ここで、上部回路の端子を保護パネル本体の上面側から下面側に引き出すと、上部回路が連通する外部接続回路は、保護パネル本体の上面側に引き回されたものとなる。
そうすると、引用発明の「感圧シートタブレット」を、固定電極が形成される下側透明基板と、可撓性電極が形成される上側可撓性透明基板とを空気層を介して周縁部を接着するものとし、前記下側透明基板及び前記上側可撓性透明基板に外部接続回路と連通する引き回し配線やバスバー電極が形成されたものとし、下側基板(固定電極側基板)に、前記下側透明基板及び前記上側可撓性透明基板の引き回し配線の端子を下側透明基板の上面側から下面側に引き出すための貫通穴を設け、上側基板(可撓性電極が形成された基板)の周囲に設けられた引き回し配線と連通する外部接続回路を下側透明基板の上面側に引き回されたものとし、貫通穴を介して、前記下側透明基板及び前記上側可撓性透明基板の引き回し配線の全ての端子を下側透明基板の下面側から引き出すようにすることは、当業者が適宜なし得た事項であると認められる。
イ 引用例2に、液晶ディスプレイの前面に装着されるタッチパネルにおいて、タッチパネルの配線部分を着色テープや印刷などで表から見えないようにすることが記載されているように、見栄えを良くするために、配線等を隠蔽するように着色層を設けることは、当業者にとっては適宜なし得る設計事項にすぎない。そして、引用例3には、タッチパネルの一部に着色層を形成する手段として、着色層が形成された透明樹脂フィルムを、前記着色層が可動電極側に向くようにして、前記可動電極が形成された透明樹脂フィルムの上に形成することが記載されている(当審注:技術常識を踏まえれば、引用例3の「表示柄層」が着色層を含むことは明らかである。)。してみれば、引用発明において、引き回し配線、バスバー電極及び貫通穴を有する感圧シートタブレットを採用するに際して、引き回し配線、バスバー電極及び貫通穴を表から見えないようにするために、これらを隠蔽するための着色層が形成された透明樹脂フィルムを上側可撓性透明基板に形成することは、当業者にとって発想の飛躍を要することではなく、当業者が適宜なし得たことであると認められる。
ウ 上記の「第2」の「4」の「(2)」の「イ 請求人の主張についての検討」において述べたように、請求人は「前記加飾層(9)により隠蔽された前記保護パネル本体の前記周縁部分の前記貫通穴を介して、全ての前記下部回路及び前記上部回路の端子を前記保護パネル本体から引き出す」こと、すなわち、複数の引き回し回路から外部への複数の接続端子を一箇所に集めたのち、一箇所に集められた複数の接続端子を1つの集合体として外部に取り出すための貫通孔を透明の保護パネル本体(1)に備え、かつ、その貫通孔を加飾層(9)で隠蔽することについては、周知技術を例示するために挙げた文献には全く開示も示唆もされていない旨主張している。
しかしながら、当該主張は請求項の記載に基づかない主張であり、採用することができないことは、前述のとおりであり、かつ、請求人の主張する相違点が仮に請求項に記載されたとしても、当該事項が配線技術としての技術常識にすぎず、実質的な相違点ということはできないことは、前述のとおりである。
エ 以上検討のとおり、上記相違点1は格別なものであるとは認められない。

(2)相違点2について
引用発明の「感圧シートタブレット」が「取着された」「表面板」は、「液晶表示パネル」を保護する機能を有するとともに、表示窓としての機能も有している。そして、外側面が同一平面を形成するように保護パネルや表示窓を外側面側からケーシングに組み付けるに当たり、前記保護パネルや前記表示窓が前記ケーシングに対し隙間なく嵌め込まれるように前記ケーシングのパネル嵌め込み部を形成することは、保護パネルや表示パネルが付いた表示装置を備えた電子機器の技術分野において本件出願の優先日当時の周知技術である(例えば、実願平2-115139号(実開平4-72222号)のマイクロフィルム(明細書の第2頁第5行?第3頁第4行、第3図)、特開平10-143078号公報(特に、段落【0013】、図1?4)、特開2003-150066号公報(特に、前側カバー23の段差部29にタッチパネル26の縁部が嵌合され、タッチパネル26前側カバー23の段差部28とタッチパネル26の表面が面一となる点(段落【0013】、図5)。)を参照。)。したがって、相違点2は実質的な相違点ではなく、格別なものではない。

(3)特許法第29条第2項の要件についてのまとめ
以上検討のとおり、上記相違点1及び相違点2には格別なものではなく、当業者が適宜なし得たことにすぎない。そして、本願発明の効果は引用発明、引用例2ないし引用例3に記載された事項及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用例2ないし引用例3に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるからから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第5 むすび
以上のとおり、本願発明は先願明細書に記載された発明と実質的に同一であり、かつ、本願発明の発明者が先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないから、本願発明は特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
また、本願発明は、引用発明、引用例2ないし引用例3に記載された事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-10-28 
結審通知日 2010-11-02 
審決日 2010-11-15 
出願番号 特願2005-516600(P2005-516600)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09F)
P 1 8・ 161- WZ (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 圓道 浩史  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 小松 徹三
岡田 吉美
発明の名称 保護パネル付き電子機器、保護パネル  
代理人 和田 充夫  
代理人 山田 卓二  
代理人 田中 光雄  

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