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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1229636 |
審判番号 | 不服2008-10207 |
総通号数 | 134 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-02-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-04-23 |
確定日 | 2011-01-04 |
事件の表示 | 特願2001-376060「光記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月13日出願公開、特開2002-260227〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本願発明 本願は、平成13年12月10日(国内優先権主張平成12年12月8日)を出願日とする出願であって、平成19年4月2日付けの拒絶理由通知に対して、同年6月13日付けで手続補正がされたが、平成20年3月21日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年4月23日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年5月21日付けで手続補正がされたものである。 そして、本願の請求項1ないし14に係る発明は、平成20年5月21日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、「記録感度(アシンメトリー値β=0±2%以内となる、最小記録パワー)が14mW以下であり、かつβ≦0%で熱干渉が生じない」という数値限定を含む構成を採るのであるならば、光記録媒体全体がどのような材料からなる記録層、反射層及び基板をどのような配置・寸法にするかまでを規定することが必要であって、単に請求項1?8に記載された発明における(1)?(9)の条件と光記録媒体として記録層に所定の吸収極大波長を有する色素を含むという構成のみで本願発明の作用効果を奏するものではないことが当業者にとって明らかである点を考慮すると、当該請求項に係る発明は依然として明確ではないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないというものである。 3.当審の判断 原査定の理由について、検討する。 特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり記載されている。 (なお、検討の便宜上、(ア)ないし(エ)に分節して示した。) 「【請求項1】 (ア)記録/再生用レーザー光の案内溝が螺旋状または同心円状に形成された基板上に、少なくとも記録層および反射層を有し、該反射層の膜厚が40nm?200nmであり、波長λw(nm)(但し、λw≦700nm)の記録光にて記録可能な光記録媒体であり、 (イ)該記録層が、記録光波長λwに対して(λw-55nm)<λA≦(λw-40nm)である吸収極大波長λAを有する色素Aを含み、 (ウ)下記の(1)?(9)を満たす条件で記録/再生した場合に、記録感度(アシンメトリー値β=0±2%以内となる、最小記録パワー)が14mW以下であり、かつβ≦0%で熱干渉が生じないことを特徴とする光記録媒体。 (エ)(1)(n-2)個の記録パルス(n=3?14の整数)と、(n-2)個のオフパルスが交互に繰り返されるパルストレインよりなる、記録用レーザー光を照射することにより、記録データnT(Tは基準クロック周期。1T=12.7ns)の記録マークを形成する記録方法において、記録パルス照射区間αおよびオフパルス照射区間γが以下の関係を満たす。 α(n,1)=1.30T±2.5ns、(但しn=3) α(n,1)=1.50T±2.5ns、(但しn=4?14) α(n,2)?α(n,n-3)=0.60T±2.5ns、(但しn=5?14) α(n,n-2)=0.90T±2.5ns、(但しn=4?14) γ(n,1)=(1.50T?1.70T)±2.5ns、(n=3?14。但し、α(n,1)+γ(n,1)=3.00T±2.5ns) γ(n,2)?γ(n,n-3)=0.40T±2.5ns、(但しn=5?14) γ(n,n-2)=0.60T±2.5ns、(但しn=4?14)(但し、α(n,k)は該パルストレインにおけるk番目の記録パルス照射区間(時間的長さ)を表し、kは1?n-2の整数である。γ(n,l)は該パルストレインにおけるl番目のオフパルス照射区間を表し、lは1?n-2の整数である。) (2)記録用レーザー光波長λw=655nm?660nm (3)NA(対物レンズの開口数)=0.65 (4)ランダム信号の、EFM+変調方式によるマーク長変調記録 (5)記録線速度が10.5m/s、再生線速度は3.5m/s (6)再生パワーPr=0.7mW、バイアスパワー(オフパルス照射区間におけるレーザー光照射に際し、印加されるパワー)Pb=0.5mW、再生光波長λr=λw (7)記録パワー(記録パルス照射区間におけるレーザー光照射に際し、印加されるパワー)は15mW以下 (8)溝上記録(案内溝の溝部分に記録する) (9)螺旋状または同心円状に設けられた案内溝の1周分を1トラックとした時、1トラックのみに記録する。」 ところで、本願発明は、従来の記録層に有機色素を含む光記録媒体(上記(ア)の「光記録媒体」)において、高速記録時に発生する熱干渉を評価することができる記録条件(上記(エ))を見出したことにより、該条件下での光学的記録における記録感度の下限値と、熱干渉を生じるアシンメトリーβ値の下限値を定めることにより、従来困難であった高速での記録が可能な光記録媒体の提供を可能とするものである。(本願明細書の段落【0011】等) そうすると、上記(エ)の試験条件は、本願で初めて見いだされた試験条件であるから、記録層に従来知られていた色素を用いた記録媒体が、上記(ウ)に該当するか否かを予測することはできず、実際に試験を行わない限り判断することができないことは明らかであって、どのような光記録媒体であれば、上記(ウ)の条件を満たすものであるのか、明確であるということはできない。 また、本願発明の光記録媒体を得るためには、記録層に用いられる有機色素が特定の条件を満たすことが必要であるところ、(本願明細書の段落【0035】?【0038】等参照)、色素については「記録光波長λwに対して(λw-55nm)<λA≦(λw-40nm)である吸収極大波長λAを有する色素A」と特定されているに過ぎない。 しかし、かかる条件を満たす色素(比較例2)であっても熱干渉が発生しており、具体的にいかなる色素Aを用いれば、本願発明の(ウ)の条件を満たす光記録媒体となるのか、不明であるといわざるを得ない。 したがって、本願の請求項1に記載された、特許を受けようとする発明は明確ではないから、本願は、特許請求の範囲が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 3.結び 以上のとおり、本願の特許請求の範囲に記載された、特許を受けようとする発明が明確ではないから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-10-28 |
結審通知日 | 2010-11-02 |
審決日 | 2010-11-15 |
出願番号 | 特願2001-376060(P2001-376060) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲吉▼澤 雅博、溝本 安展 |
特許庁審判長 |
山田 洋一 |
特許庁審判官 |
横尾 俊一 早川 学 |
発明の名称 | 光記録媒体 |
代理人 | 真田 有 |