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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1229779 |
審判番号 | 不服2009-22631 |
総通号数 | 134 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-02-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-11-19 |
確定日 | 2011-01-04 |
事件の表示 | 特願2000-308878「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月16日出願公開、特開2002-113198〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第一.手続の経緯 本願は、平成12年10月10日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成21年4月3日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、同年11月19日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、拒絶査定不服審判の請求と同じ日に手続補正がなされたものである。 また、当審において、平成22年4月5日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から同年5月28日に回答書が提出されている。 第二.平成21年11月19日付の手続補正書についての補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年11月19日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1(以下「本願補正発明」という。)は次のとおりである。 「 遊技機の動作を全体的に制御する主制御手段と、前記主制御手段が送信する表示指令信号を受信し、受信した表示指令信号に応答して表示装置の表示制御を行う表示制御手段とを備えた遊技機において、 前記主制御手段は、 特定遊技状態が成立するか否かの抽選を行う抽選手段と、少なくとも前記抽選手段の抽選結果に応じた表示指令信号を送信する送信手段と、を備え、 前記表示制御手段は、 受信した前記表示指令信号に応答して前記表示装置に数字やキャラクタによる図柄で構成される識別情報を変動表示させた後、その変動表示を停止させる変動表示制御手段と、前記変動表示制御手段により前記表示装置に前記識別情報を変動表示させた後、その変動表示を停止させるまでの期間において、前記表示装置に表示する背景画像を切り換える際に、前記識別情報を縮小表示させながら前記表示装置の表示エリアの一端角部に移送して、前記表示装置にその変動表示を継続する場合を含むとともに、前記期間中に前記識別情報を継続して前記表示装置の表示エリアに出現させて、前記識別情報が前記表示装置の表示エリアに出現する前記識別情報以外の他のキャラクタ画像等によって隠れたり、前記識別情報自体が前記表示エリアから消滅したりすることなく、前記識別情報の全体像が前記期間内は継続して把握可能に、前記識別情報が変動している状態を継続して表示可能となるように表示制御を行う継続表示制御手段とを備えたことを特徴とする遊技機。」 2.補正要件(目的)の検討 請求項1についての補正は、請求項1、2、3を引用する旧請求項4(平成21年4月3日付け手続補正書に記載のもの)に対し、「主制御手段」及び「送信手段」を新たに追加して「遊技機の動作を全体的に制御する主制御手段」及び「前記主制御手段は、特定遊技状態が成立するか否かの抽選を行う抽選手段と、少なくとも前記抽選手段の抽選結果に応じた表示指令信号を送信する送信手段と、を備え」とし、さらに、「表示制御手段」について、「表示制御手段」が「前記主制御手段が送信する表示指令信号を受信し、受信した表示指令信号に応答して表示装置の表示制御を行う」ことを特定することで、「表示制御手段」と、「主制御手段」及び「送信手段」との関係を明確にし、「表示制御手段」が「変動表示制御手段」、「継続表示制御手段」を備えていることを特定し、この「変動表示制御手段」が「受信した前記表示指令信号に応答して前記表示装置に数字やキャラクタによる図柄で構成される識別情報を変動表示させた後、その変動表示を停止させる」点を具体化し、「前記期間内において前記識別情報を縮小表示させながら前記表示装置にその変動表示を継続する場合がある」を「その変動表示を停止させるまでの期間において、前記表示装置に表示する背景画像を切り換える際に、前記識別情報を縮小表示させながら前記表示装置の表示エリアの一端角部に移送して、前記表示装置にその変動表示を継続する場合を含む」と限定したものであるから、本件補正は請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。 3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討 (1)引用刊行物記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、特開2000?210435号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 【0020】次に、パチンコ機10によるパチンコ遊技を実現するメイン制御部100および表示制御部200の構成や作動等について、図3を参照しながら説明する。これらのメイン制御部100および表示制御部200は、いずれもパチンコ機10の背面側に設けられている。図3に示すように、メイン制御部100は、CPU(プロセッサ)110,ROM102,RAM104,入力処理回路106,出力処理回路108,表示制御回路112,通信制御回路114等を有する。CPU110は、ROM102に格納されている遊技制御プログラムを実行してパチンコ機10を制御する。上記遊技制御プログラムには、後述する第1種始動口処理や図柄変動処理,変動表示処理,変動開始処理,リーチ処理等を実現するためのプログラムが含まれる。このROM102はEPROMを用いるが、EEPROMやフラッシュメモリ等を用いてもよい。RAM104には、保留球数,大当たり判定用乱数RA等の各種乱数,停止時の特別図柄等のような各種データあるいは入出力信号を格納する。このRAM104にはDRAMを用いるが、SRAMやフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いてもよい。 【0024】次に、表示制御部200はメイン制御部100から送られる表示データを受けて、表示すべき図柄や画像等を適切に加工して特別図柄表示器22に表示する処理を行う。この表示制御部200はVDP(Video Display Processor )とも呼ばれ、CPU210,ROM202,RAM204,通信制御回路206,表示制御回路212等によって構成されている。CPU210は、ROM202に格納されている表示制御プログラムに従って特別図柄表示器22の表示制御を行う。ROM202には、上記表示制御プログラムのほかに、特別図柄,複数の変動パターン,装飾図柄等のようなパチンコ遊技を行う上で必要な表示用の全データが格納されている。このROM202には一般にEPROMが用いられるが、これに限らずEEPROMやフラッシュメモリを用いてもよい。RAM204には一般にDRAMが用いられるが、SRAMやフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いてもよい。このRAM204には、各種データや入出力信号が格納される。通信制御回路206はメイン制御部100との間においてデータを送受信するための回路である。表示制御回路212はCPU210からバス218を介して送られた表示データを受けて、特別図柄表示器22に対して図柄や画像等を加工して表示する制御を行う。上記各構成要素は、いずれもバス218に互いに結合されている。 【0025】次に、上記構成をなすパチンコ機10において本発明を実現するための処理手順について、図4?図8にそれぞれ示すフローチャートを参照しながら説明する。これらの図に示す処理手順は、いずれも図3に示すメイン制御部100においてROM102に格納されている遊技制御プログラムをCPU110が適当なタイミングで実行することによって実現される。 【0026】まず、図4に示す第1種始動口処理は、第1種始動口30に対するパチンコ球の入賞判別を行う。すなわち、第1種始動口30にパチンコ球が入賞したか否かを判別する〔ステップS10〕。具体的には、図3において始動口センサ56から検出信号が出力された場合には入賞した(YES)と判別し、検出信号が出力されなければ入賞しない(NO)と判別する。そして、第1種始動口30にパチンコ球が入賞したときには、保留球数が上限値(例えば4)に達しているか否かを判別する〔ステップS12〕。保留球数が上限値に達していなければ(NO)、その保留球数を加算する〔ステップS14〕。この加算に伴って表示制御回路112に表示データを出力し、保留球ランプ28で点灯するLEDの個数を変える。その後、各種乱数の読み込みと記憶を行い〔ステップS16〕、第1種始動口処理を終了する。なお第1種始動口30にパチンコ球が入賞していない場合(ステップS10のNO)や、保留球数が上限値に達している場合(ステップS12のNO)には、何もせずにそのまま第1種始動口処理を終了する。 【0027】ここで、各種乱数には大当たり判定用乱数RA,大当たり図柄用乱数RB,リーチアクション乱数RC,確率変動用乱数RDがある。大当たり判定用乱数RAは、大当たりか否かを判別するための乱数である。大当たり図柄用乱数RBは、大当たり判定用乱数RAによって大当たりと判別された場合において、特別図柄表示器22に停止して表示する特別図柄を特定するための乱数である。リーチアクション乱数RCは、特別図柄表示器22に表示されている特別図柄によってリーチになった後、残りの特別図柄が停止するまでの変動パターンを特定するための乱数である。「リーチ状態」とは、未だに変動している残りの特別図柄を除き、他の特別図柄が大当たり図柄と一致している状態を意味する。確率変動用乱数RDは大当たりになった後に大当たりになる確率を変更するか否かを判別するための乱数である。 【0029】図6に示す変動表示処理では、まず「大当たり」か否かを判別する〔ステップS40〕。具体的には、上記ステップS22で読み込んだ大当たり判定用乱数RAが大当たり値と一致したか否かによって判別する。大当たり値は通常は1個であるが、遊技状態(例えば確率変動時)等によっては複数個としてもよい。もし、「大当たり」ならば(YES)、図4のステップS16で記憶した大当たり図柄用乱数RBを読み込み〔ステップS42〕、特別図柄を変動させ始めるべくステップS44に進む。当該大当たり図柄用乱数RBによって、最終的に停止して確定する予定の図柄(以下「停止予定図柄」と呼ぶ。)を決定する。一方、ステップS40で「はずれ」と判別されたならば(NO)、はずれ図柄を特別図柄表示器22に表示するため、はずれ図柄データをRAM104から読み込む〔ステップS60〕。その後、当該はずれ図柄データにリーチ図柄を含むか否かを判別する〔ステップS62〕。「リーチ図柄」とは、リーチになったときに停止して表示されている図柄である。ステップS62を実行するのは、最終的には「はずれ」になるが、途中でリーチになる態様である。もし、リーチ図柄を含むならば(YES)、ステップS44に進む。一方、リーチ図柄を含まないならば(NO)、ステップS64に進む。 【0030】そして、特別図柄の変動開始処理を行なった後に〔ステップS44〕、リーチ処理を行う〔ステップS46〕。ここで、図7を参照しながら変動開始処理の具体的な処理内容を、図8を参照しながらリーチ処理の具体的な処理内容をそれぞれ説明する。図7に示す変動開始処理はリーチに達するまでの第1期間における特別図柄の変動処理を行う。具体的には、まず特別図柄を変動させ始める〔ステップS70〕。変動開始は、左特別図柄72,中特別図柄74,右特別図柄76をほぼ一斉に行なってもよく、一つずつ順番に行なってもよく、その順番を問わない。その後、共通アクションを行う〔ステップS74〕。共通アクションとしては、例えば特定の変動パターンに従って中特別図柄74を変動させる(後述する図9?図11参照)。そして、必要に応じて他のアクション(他の変動パターンに従う図柄の変動)を行い〔ステップS76〕、左特別図柄72,右特別図柄76の変動を停止させ〔ステップS78〕、変動開始処理を終了する。 【0033】リーチ処理を終えると図6に戻り、特別図柄を停止させる〔ステップS48〕。具体的には、リーチとして先に停止させた左特別図柄72,中特別図柄74に加えて、停止することなく変動していた右特別図柄76を停止して表示する。一方、ステップS62でリーチ図柄でないときは(NO)、ステップS44と同様に特別図柄を変動し始め〔ステップS64〕、はずれ図柄の変動パターンに基づいて変動表示し〔ステップS66〕、その後に特別図柄を停止させる〔ステップS48〕。そして、確率変動か否かを判別し〔ステップS50〕、確率変動ならば確率変動処理を行なった後〔ステップS52〕、変動表示処理を終了する。確率変動か否かは、図4のステップS16で記憶した確率変動用乱数RDが所定値と一致しているか否か、あるいは画面22aに実際に停止して表示された特別図柄とチャンス図柄とが所定の組み合わせで表示されたか否か等によって行う。所定の組み合わせは例えば表示制御部200のROM202等に記憶(記録)されており、例えば特別図柄が「777」であり、チャンス図柄が青色という場合である。当該所定の組み合わせは一定の組み合わせのみならず、遊技状態等に応じて変化させてもよい。確率変動処理の具体的な処理内容については、既に周知の処理と同様であるので説明を省略する。なお確率変動処理が実行されると、今回の大当たり遊技終了後から次回の大当たりになるまで、特別図柄による大当たりおよび/または普通図柄による当たりになる確率が高まるとともに、特別図柄および/または普通図柄の変動期間が短縮される。一方、確率変動でなければ(ステップS50のNO)、何もせずにそのまま変動表示処理を終了する。 【0035】次に、上記図4?図8に示すフローチャートを実行することによって特別図柄表示器22の画面22aに表示する変動パターン(作動態様)について、図9?図12を参照しながら説明する。図9?図12にはいずれも画面に表示された特別図柄の一例を示すが、簡単のためにチャンス図柄の図示を省略している。まず、共通アクションを含み大当たりになる可能性の高いリーチアクションとして変動パターンδを行う例について説明する。図7のステップS70を実行すると、図9(A)に示すように特別図柄(左特別図柄72,中特別図柄74,右特別図柄76)をほぼ一斉に変動させ始める。そして、図7のステップS74を実行すると、図9(B)→図9(C)→図9(D)→図10(A)の順番で示すように特別図柄が変動したり一時停止したりするパターンを繰り返す。その後、図7のステップS74を実行すると、左特別図柄72と右特別図柄76を停止して表示する。例えば左特別図柄72と右特別図柄76がともに図柄ならばリーチであり、図8に示すステップS84を実行してリーチ表示を行う。リーチ表示の一例を図10(B)に示す。 【0036】リーチ表示を行なった後は、図8のステップS86を実行してリーチアクションを行う。具体的には図8のステップS86aを実行し、図10(C)→図10(D)→図11(A)→図11(B)の順番で示すように中特別図柄74が変動したり一時停止したりするパターンを繰り返す。こうして最終的には図6のステップS48を実行し、例えば図11(C)に示す大当たり図柄「777」あるいは図11(D)に示すはずれ図柄「767」を表示する。ここで中特別図柄74に注目すると、リーチ前後では変動状態と一時停止状態とを繰り返しており、両方の変動パターンに共通する共通パターン(共通アクション,共通態様)を含む。このように、リーチ後において大当たりになる可能性の高い変動パターンに含まれる共通パターンでリーチ前の図柄変動を行うと、遊技者は大当たりになる可能性の高い変動パターンがリーチ後にも行われ、ひいては大当たりになることを期待する期待感を持つことができる。 また、 図14(a)?(c)には、特別図柄の変動表示中に背景画像が切り換わっていることが図示されている。 摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「メイン制御部100は、CPU(プロセッサ)110,ROM102,RAM104,入力処理回路106,出力処理回路108,表示制御回路112,通信制御回路114等を有し、CPU110は、ROM102に格納されている遊技制御プログラムを実行してパチンコ機10を制御するものであり、表示制御部200はメイン制御部100から送られる表示データを受けて、表示すべき図柄や画像等を適切に加工して特別図柄表示器22に表示する処理を行い、上記遊技制御プログラムには、第1種始動口処理や図柄変動処理,変動表示処理,変動開始処理,リーチ処理等を実現するためのプログラムが含まれるものであり、特別図柄表示器22の画面22aに表示する変動パターン(作動態様)については、特別図柄をほぼ一斉に変動させ始め、特別図柄の変動表示中に背景画像が切り換り、最終的には、例えば大当たり図柄「777」あるいははずれ図柄「767」を表示する、 パチンコ機10。」 (2)引用発明と本願補正発明との対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを比較すると、 引用発明の「メイン制御部100」は、本願補正発明の「主制御手段」に相当し、以下同様に、 「表示データ」は「表示指令信号」に、 「表示制御部200」は「表示制御手段」に、 「パチンコ機10」は「遊技機」に、 「特別図柄」は、「識別情報」に、各々相当する。 さらに、引用文献1の記載等からみて、以下のことが言える。 a.引用文献1の段落【0025】には、「図4?図8にそれぞれ示すフローチャートを参照しながら説明する。これらの図に示す処理手順は、いずれも図3に示すメイン制御部100においてROM102に格納されている遊技制御プログラムをCPU110が適当なタイミングで実行することによって実現される。」との記載があり、この記載から、図4には、メイン制御部100が遊技制御プログラムを用いて実行するフローチャートが図示されているものと認められる。 さらに、引用文献1の図4のフローチャートを説明する段落【0026】の「その後、各種乱数の読み込みと記憶を行い〔ステップS16〕」との記載、及び段落【0027】の「ここで、各種乱数には大当たり判定用乱数RA,大当たり図柄用乱数RB,リーチアクション乱数RC,確率変動用乱数RDがある。大当たり判定用乱数RAは、大当たりか否かを判別するための乱数である。大当たり図柄用乱数RBは、大当たり判定用乱数RAによって大当たりと判別された場合において、特別図柄表示器22に停止して表示する特別図柄を特定するための乱数である。・・・確率変動用乱数RDは大当たりになった後に大当たりになる確率を変更するか否かを判別するための乱数である。」との記載から、「メイン制御部100」は、大当たり判定用乱数RAによって大当たりと判別する手段及び、大当たりになった後に大当たりになる確率を変更するか否かの確率変動用乱数RDの抽選を行う手段を有し、さらに、引用文献1の段落【0033】の「確率変動か否かは、図4のステップS16で記憶した確率変動用乱数RDが所定値と一致しているか否か、あるいは画面22aに実際に停止して表示された特別図柄とチャンス図柄とが所定の組み合わせで表示されたか否か等によって行う。所定の組み合わせは例えば表示制御部200のROM202等に記憶(記録)されており、例えば特別図柄が「777」であり、チャンス図柄が青色という場合である。当該所定の組み合わせは一定の組み合わせのみならず、遊技状態等に応じて変化させてもよい。確率変動処理の具体的な処理内容については、既に周知の処理と同様であるので説明を省略する。」との記載から、大当たりになった後に大当たりになる確率を変更した「確率変動」が、本願補正発明における「特定遊技状態」に相当し、この「確率変動」は、確率変動用乱数RDが所定値と一致しているか否かで決定されるものであるから、引用発明と、本願補正発明とは、「前記主制御手段は、特定遊技状態が成立するか否かの抽選を行う抽選手段を備え」ている点で共通する。 さらに、「メイン制御部100」は、確率変動用乱数RDが所定値と一致している場合には、特別図柄を例えば「777」とし、チャンス図柄を青色とする変動表示処理を行うものであり、また、引用文献1の段落【0024】の「表示制御部200はメイン制御部100から送られる表示データを受けて、表示すべき図柄や画像等を適切に加工して特別図柄表示器22に表示する処理を行う。」との記載から、「メイン制御部100」が決定した変動表示処理の内容は、「表示データ」として「表示制御部200」に送られ、「特別図柄表示器22」に表示する処理を行うものと認められるので、引用発明と、本願補正発明とは、「前記主制御手段は、少なくとも前記抽選手段の抽選結果に応じた表示指令信号を送信する送信手段を備え」ている点で共通する。 b.上記a.で認定した点(すなわち、「「メイン制御部100」が決定した変動表示処理の内容は、「表示データ」として「表示制御部200」に送られ、「特別図柄表示器22」に表示する処理を行う」点)、引用発明の「表示すべき図柄や画像等を適切に加工して特別図柄表示器22に表示する処理を行」う点、及び「特別図柄をほぼ一斉に変動させ始め、最終的には、例えば大当たり図柄「777」あるいははずれ図柄「767」を表示する」点を勘案すると、引用発明と本願補正発明とは、「前記表示制御手段は、受信した前記表示指令信号に応答して前記表示装置に数字やキャラクタによる図柄で構成される識別情報を変動表示させた後、その変動表示を停止させる変動表示制御手段」を有する点で共通する。 c.引用発明において、特別図柄の変動表示中に背景画像を切り換えるための何らかの手段を備えていることは自明である。 以上を総合すると、両者は、 「 遊技機の動作を全体的に制御する主制御手段と、前記主制御手段が送信する表示指令信号を受信し、受信した表示指令信号に応答して表示装置の表示制御を行う表示制御手段とを備えた遊技機において、 前記主制御手段は、 特定遊技状態が成立するか否かの抽選を行う抽選手段と、少なくとも前記抽選手段の抽選結果に応じた表示指令信号を送信する送信手段と、を備え、 前記表示制御手段は、 受信した前記表示指令信号に応答して前記表示装置に数字やキャラクタによる図柄で構成される識別情報を変動表示させた後、その変動表示を停止させる変動表示制御手段と、 前記変動表示制御手段により前記表示装置に前記識別情報を変動表示させた後、その変動表示を停止させるまでの期間において、前記表示装置に表示する背景画像を切り換える手段とを備えた遊技機。」の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明は、「継続表示制御手段」が、「前記変動表示制御手段により前記表示装置に前記識別情報を変動表示させた後、その変動表示を停止させるまでの期間において、前記表示装置に表示する背景画像を切り換える際に、前記識別情報を縮小表示させながら前記表示装置の表示エリアの一端角部に移送」するのに対し、引用発明は、「特別図柄表示装置22」が、そもそも「前記識別情報を縮小表示させながら前記表示装置の表示エリアの一端角部に移送」する変動表示を行っていない点 [相違点2] 本願補正発明は、「継続表示制御手段」が、「前記変動表示制御手段により前記表示装置に前記識別情報を変動表示させた後、その変動表示を停止させるまでの期間において」、「前記表示装置にその変動表示を継続」し、「前記期間中に前記識別情報を継続して前記表示装置の表示エリアに出現させて、前記識別情報が前記表示装置の表示エリアに出現する前記識別情報以外の他のキャラクタ画像等によって隠れたり、前記識別情報自体が前記表示エリアから消滅したりすることなく、前記識別情報の全体像が前記期間内は継続して把握可能に、前記識別情報が変動している状態を継続して表示可能となるように表示制御を行う」のに対し、引用発明では、「特別図柄表示装置22」の「特別図柄」が、変動表示させた後、その変動表示を停止させるまでの期間において、特別図柄以外の他のキャラクタ画像等によって隠れたり、特別図柄自体が表示エリアから消滅したりすることなく、特別図柄の全体像が前記期間内は継続して把握可能に、特別図柄が変動している状態を継続して表示可能となるように表示制御を行う点が明らかでない点 (3)相違点の検討及び判断 [相違点1について] 原査定の拒絶の理由において周知例として提示された、特開2000?185139号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 「【0028】・・・図7(a)において、最初に左図柄11xが「7」で停止し、次に図7(b)において右図柄11zが「7」で停止している。 【0029】次に、ステップS33において、リーチ状態の特別図柄11b及びチャンス図柄11cを第1の位置に移動させる。図7(c)では、リーチ状態の特別図柄11b及びチャンス図柄11cを縮小しながら表示画面11aの上部に移動させている。次に、ステップS34において、表示画面11aのスペースに「装飾表示1」を表示する。図7(c)では、「装飾表示1」としての小さなキャラクター11f(女性)を表示画面11aの下部の中央に表示している。次に、ステップS35において、表示画面11aにてリーチ状態の特別図柄11b及びチャンス図柄11cを第2の位置に移動させる。」 また、図7(b)、(c)の図示から、特別図柄11が変動中に縮小していることは明らかである。 また、図7(c)では、図7(b)には表示がなかった、「「装飾表示1」としての小さなキャラクター11f(女性)を表示画面11aの下部の中央に表示している」(段落【0029】)ことから、図7(b)から図7(c)に移る際に、背景画像を切り換えているものと認められる。 また、段落【0029】のステップS33、S34における説明及び、図5のステップS33、S34の図示から、表示画面11aは、リーチ状態の特別図柄11bは縮小しながら表示画面11aの上部に移動させた後に、背景画像を切り換えているものと認められる。 以上のことから、総合的に判断すると、引用文献2には、「特別図柄11bが変動中に、表示画面11aに表示されたリーチ状態の特別図柄11bを縮小しながら表示画面11aの上部に移動させた後に、背景画像を切り換える技術」(以下「引用文献2の技術」という。)が開示されているものと認められる。 そうすると、引用文献2の技術と本願補正発明とは、背景画像の切り換えを行うタイミングと、識別情報の縮小表示を行うタイミングとの前後関係は別にして、「前記変動表示制御手段により前記表示装置に前記識別情報を変動表示させた後、その変動表示を停止させるまでの期間において、前記表示装置に表示する背景画像の切り換えを行い、前記識別情報を縮小表示させながら前記表示装置の表示エリアの一端部に移送」する点で共通する。 そして、引用発明と引用文献2の技術とは、表示装置に識別情報を変動表示させた後、その変動表示を停止させるまでの期間において、表示装置に表示する背景画像の切り換えを行うパチンコ機で共通するので、引用文献2の技術を引用発明に適用することは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって容易に想到しうる程度のことである。 また、引用文献2の技術において、表示画面11aにおける背景画面を切り換える際に、リーチ状態の特別図柄11b及びチャンス図柄11cを縮小しながら表示画面11aの上部に移動させる構成に改変することは、当業者にとって設計的変更にすぎない。 さらに、引用文献2の技術において、「リーチ状態の特別図柄11b及びチャンス図柄11cを縮小しながら表示画面11aの上部に移動させ」る構成を「表示画面11aの上部且つ、角部に移動させ」る構成に変えることは、特別図柄を表示装置の一端角部に表示する技術が、特開2000?37523号公報(特に、段落【0040】、図2参照)、特開平4?90778号公報(特に、第3頁右上欄第20行?同頁左下欄第4行参照)に記載されているように、従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)であるから、当該周知技術1に基づき、当業者にとって想到容易である。 [相違点2について] 相違点2は、要するに、本願補正発明が「継続表示制御手段」によって、識別情報が、変動開始から、停止させるまでの期間に、他のキャラクタ画像によって隠れたり、識別情報自身が消滅することなく、前記識別情報が変動している状態を継続して表示制御を行うものであり、引用発明においては、この点が明らかでない点で相違するものである。 すなわち、引用文献1の図14?図16には、背景画像に対して、特別図柄が、背景画像やキャラクタに対して隠れることなく優先的に表示されているものが図示されているものの、引用文献1のいずれにも、継続的に特別図柄が背景画像やキャラクタより優先的に表示することや、特別図柄自身が消滅せずに継続して表示を行う点について、記載がない。 しかしながら、特別図柄を、背景画像、キャラクタに対して優先的に表示する技術は、例えば、特開平9?140877号公報(特に、段落【0155】、段落【0158】、段落【0172】、段落【0182】?【0183】、図24、図26、図28参照)、特開平11?192353号公報(特に、段落【0051】、図24?29参照)に記載されているように従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。 そして、特別図柄は変動表示開始から停止まで、継続的に表示されることが一般的であることを鑑みれば、引用発明において、変動表示開始から停止までの間、特別図柄を他の画像(例えば、背景画像やキャラクタ画像など)に対して優先的に表示することで、他のキャラクタ画像に隠れたり、特別図柄が消滅したりせず、継続して遊技者が把握可能に表示することは、当業者にとって想到容易である。 さらに、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2の技術、及び周知技術1、2に基づき、当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2の技術、及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.むすび 以上のとおりであるので、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しており、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第三.本願発明について 1.本願発明 平成21年11月19日付の手続補正書は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年4月3日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される。以下のとおりのものである。 「 表示装置を備えた遊技機において、 数字やキャラクタによる図柄で構成される識別情報の変動表示を開始してから停止表示を行なうまでの期間内において、前記識別情報を継続して前記表示装置の表示エリアに出現させて、前記識別情報が他のキャラクタ画像等によって隠れたり、前記識別情報自体が前記表示エリアから消滅したりすることなく、前記識別情報の全体像が前記期間内は継続して把握可能なように表示制御を行う表示制御手段を備えたことを特徴とする遊技機。」 2.特許法第29条第2項の検討 (1)引用刊行物記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。 (2)引用発明と本願発明との対比 本願発明は、本願補正発明の「主制御手段」及び「送信手段」を削除し、さらに、「表示制御手段」について、「前記主制御手段が送信する表示指令信号を受信し、受信した表示指令信号に応答して表示装置の表示制御を行う」限定がなくなり、さらに、「継続表示制御手段」を削除し、「変動表示制御手段」が「受信した前記表示指令信号に応答して前記表示装置に数字やキャラクタによる図柄で構成される識別情報を変動表示させた後、その変動表示を停止させる」限定がなくなったものである。 そうすると、本願発明の構成要件の一部を下位概念化するとともに複雑化したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(3)」に記載したとおり、引用発明、引用文献2の技術、及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、相違点1に係る構成は本願発明の構成要件とはなっていないから、本願発明は、引用発明、及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び周知技術2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3.むすび 本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-10-29 |
結審通知日 | 2010-11-02 |
審決日 | 2010-11-17 |
出願番号 | 特願2000-308878(P2000-308878) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤脇 昌也、土屋 保光 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
井上 昌宏 川島 陵司 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 森 哲也 |
代理人 | 内藤 嘉昭 |
代理人 | 田中 秀▲てつ▼ |