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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B62D |
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管理番号 | 1229895 |
判定請求番号 | 判定2010-600057 |
総通号数 | 134 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2011-02-25 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2010-09-27 |
確定日 | 2010-12-17 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2694507号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びその説明書に示す「荷台用あおり戸の開閉補助装置」は、特許第2694507号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に記載するアオリ開閉補助装置(以下「イ号物件」という。)が特許第2694507号の請求項2に係る発明(以下「本件発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めたものである。 第2 本件発明 1 本件発明の構成要件 本件発明は、特許第2694507号の明細書の発明の詳細な説明(以下「本件発明の詳細な説明」という。)及び図面の記載からみて、明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載されたとおりのものであって、構成要件毎にA?Fの符号を付して示せば、次のとおりのものと認める(以下「構成要件A」などという。)。 「A.荷台の端縁部の下部に取り付けられるフレームと、 B.このフレームの奥部に先端を当接させ、水平に奥部へ延びるコイルバネと、 C.奥端がこのコイルバネの奥部端に結合し、このコイルバネ内を通り、フレーム方向へ延びるロッドと、 D.このロッドの先端と荷台の端縁部を中心にして上下に回動するあおり戸の外面とを結合し、前記フレームに支持される支点を有し、あおり戸を開いたとき前記コイルバネを圧縮して、あおり戸に重力を支える補助力を加えさせるリンク機構とからなる荷台用あおり戸の開閉補助装置において、 E.コイルバネが当接するフレームの奥部端位置を、あおり戸の閉鎖時に、リンク機構とロッドとのピン結合部がフレームの奥部端から突出してコイルバネの内部に位置するよう設定した F.ことを特徴とする荷台用あおり戸の開閉補助装置」 2 本件発明の課題、目的及び作用効果 本件発明は、本件発明の詳細な説明において 「【0003】近年、トラックは、補機類を多く使用し、荷台の下部に空間が少なくなる傾向にある。また、もとから荷台下部空間の少ない小型トラックにおいて、開閉補助装置を取り付けることが多くなってきた。 【0004】このため、開閉補助装置取り付けに当たり、補機類と干渉し、取り付け不能となることがしばしば生じるようになった。」(本件特許掲載公報第3欄第26?32行参照) と記載されるように、従来の開閉補助装置の補機類との干渉という問題点を解決することを目的とし、 「リンク機構の端をコイルバネ内に位置させ、フレームの厚さを短縮し、装置全長を短くしているので、荷台下部の狭い空間にも容易に設置することが可能となる。」(同第6欄第34?37行参照) という本件発明の詳細な説明に記載された効果を奏するものである。 すなわち、本件発明は、従来の開閉補助装置を小型化することをその目的とするものと認められる。 第3 イ号物件 判定請求書に添付したイ号説明書、イ号図面の記載及び平成22年11月5日付け判定事件答弁書の「2.被請求人の製品」における判定被請求人の説明内容を参酌すると、イ号物件は、構成毎にa?fの符号を付して示せば、次のとおりのものと認められる(以下「構成a」などという。)。 「a.荷台の端縁部の下部に取り付けられるフレーム1と、 b.このフレーム1の奥部に先端を当接させ、水平に奥部へ延びるコイルバネ2と、 c.奥端がこのコイルバネ2の奥部端に結合し、このコイルバネ2内を通り、フレーム1方向へ延びるロッド3と、 d.このロッド3の先端と荷台の端縁部を中心にして上下に回動するアオリの外面とを結合し、アオリを開いたときコイルバネ2を圧縮して、アオリに重力を支える補助力を加えさせる機構であって、 フレーム1にその後端を回動可能に取り付けた第1アーム61と、 その下端が該第1アーム61の前端に回動可能に連結され、その上端がアオリの外面に回動可能に連結された第2アーム62と、 ケース1に取り付けられたチェーンホイール64と、 該チェーンホイール64に掛けられ、その前端が第1アーム61に、その後端がロッド3の前端にそれぞれ回動可能に連結され、多数の駒を互いに回動可能に連結させて湾曲可能とされたローラチェーン63とを備えた機構 とからなるアオリ開閉補助装置において、 e.コイルバネ2が当接するフレーム1の奥部端位置が、アオリの閉鎖時に、ローラチェーン63とロッド3とのピン結合部7がコイルバネ2の内部に位置するような配置となっている f.アオリ開閉補助装置」 第4 当審の判断 イ号物件が本件発明の各構成要件を充足するか否かについて検討する。 1 構成要件A、B、C及びFの充足性について イ号物件の構成a、b、c及びfは、それぞれ、本件発明の構成要件A、B、C及びFに相当するから、イ号物件は、本件発明の各構成要件のうちの構成要件A、B、C及びFを充足するものと認められる。 2 構成要件Dの充足性について (1)動力伝達機構の構造 本件発明は、構成要件Dとして「リンク機構」を有している。リンク機構とは、1つの固定したリンクに対して複数のリンクが可動するように複数のリンクを組み合わせて構成された機構をいう。そして、本件発明は、構成要件Dの「リンク機構」の例として、本件発明の詳細な説明の段落【0016】ないし【0019】の記載にあるように、回動リンク22と結合リンク23と中間リンク24とローラ25とからなり、中間リンク24及びローラ25によってロッド18と回動リンク22との間の動力伝達を行うリンク機構を示している。 本件発明におけるロッド18と回動リンク22との間の動力伝達機構(以下「本件動力伝達機構」という。)と、イ号物件におけるロッド3と第1アーム61との間の動力伝達機構(以下「イ号動力伝達機構」という。)とを対比すると、本件動力伝達機構が中間リンク24及びローラ25であるのに対して、イ号動力伝達機構はローラチェーン63及びチェーンホイール64である。ローラチェーンは、多数の駒を互いに回動可能となるようにして直列に連結し、一端側から他端側へ力を伝達する機械要素であって、リンク機構の一部を構成するリンクには該当しないから、この点に関して、イ号物件の構成dが「リンク機構6」であると認定する判定請求人の主張は、首肯できない。すなわち、イ号動力伝達機構は、判定請求人が主張するような「ローラチエン状の中間リンク」を有するものではなく、イ号物件の構成dとして判定請求人が行った「リンク機構6」との認定は誤りである。 (2)本件発明に係る特許出願の審査段階における手続 判定請求人は、イ号動力伝達機構が本件動力伝達機構に相当する根拠として、本件発明の詳細な説明の段落【0010】及び【0029】の記載事項を挙げ、中間リンクが2以上の部材をピン結合したものであって、ローラチエン状とすることもできる点を主張している。しかし、特許出願人は、本件発明に係る特許出願の審査段階において、平成9年3月5日付けの拒絶理由通知に対し、「中間リンクが2以上の部材を、ピン結合してなる」と限定した出願当初の特許請求の範囲の請求項6を、同日付けの意見書における何らの反論もなく削除している。すなわち、「中間リンクが2以上の部材を、ピン結合し」たものであるとの限定を行ったリンク機構については、権利化を放棄したものと解するのが相当である。したがって、そもそも、本件発明に係る特許権には、2以上の部材をピン結合してなる中間リンクを含むリンク機構を備えた荷台用あおり戸の開閉補助装置は包含されていないから、この点に関して、イ号動力伝達機構を構成するローラチェーンが2以上の部材をピン結合したものであることを根拠にイ号物件が本件発明を充足する、とした判定請求人の主張は、首肯できない。 (3)動力伝達機構の目的・作用 一般に、リンク機構は、入力を異なる動作、速度、加速度に変換して出力するよう設計される。そして、本件発明のリンク機構も、本件発明の詳細な説明の段落【0023】の記載にあるように、中間リンク24及びローラ25により、ロッド18が加える力の向き及び大きさを変えて伝達するよう構成されている。これに対し、イ号動力伝達機構は、ローラチェーン63の一端側にかかる張力を他端側に伝達する際、チェーンホイール64によってローラチェーン63の延びる向きを変えることにより力の向きを変えることはするものの、その大きさを変えることはしない。よって、機構の目的・作用の点においても、本件発明とイ号物件とは異なっている。 上記(1)ないし(3)を総合すれば、イ号物件は、本件発明の構成要件Dを充足しないということができる。 3 構成要件Eの充足性について 本件発明は、上記第2の2にあるように、小型化を課題とするものである。一方、イ号物件は、動力伝達機構としてローラチェーンを用いるものであって、このようなローラチェーンを用いる動力伝達機構においては、装置の全長を短縮して装置の小型化を図るという課題が生じない。よって、課題の面でも、本件発明とイ号物件とは互いに異なったものということができる。 したがって、イ号物件は、判定請求人が認定するような「コイルバネ2が当接するフレーム1の奥部端位置を、アオリの閉鎖時に、ローラチェーン63とロッド3とのピン結合部7がフレーム1の奥部端から突出してコイルバネ2の内部に位置するよう設定した」ものではない。 すなわち、イ号物件は、本件発明の構成要件Eを充足しない。 以上のことから、イ号物件のアオリ開閉補助装置は、本件発明の構成D及びEを充足しない。 第5 むすび したがって、イ号物件は、特許第2694507号の請求項2に係る発明の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
判定日 | 2010-12-08 |
出願番号 | 特願平6-61955 |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(B62D)
|
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
林 浩 |
特許庁審判官 |
小関 峰夫 栗山 卓也 |
登録日 | 1997-09-12 |
登録番号 | 特許第2694507号(P2694507) |
発明の名称 | 荷台用あおり戸の開閉補助装置 |
代理人 | 水野 桂 |
代理人 | 加藤 恭介 |
代理人 | 福田 伸一 |
代理人 | 福田 賢三 |