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審決分類 審判 全部無効 特17 条の2 、4 項補正目的  F21S
審判 全部無効 2項進歩性  F21S
管理番号 1230300
審判番号 無効2009-800208  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-09-30 
確定日 2010-07-26 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3902923号投光機の特許無効審判事件について、審理の併合のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 無効2009-800176 本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。 無効2009-800208 本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第3902923号(請求項の数[5]、以下「本件特許」という。)の出願は、平成13年7月25日に特許出願された特願2001-223967号(以下「本願特許出願」という。)であって、その請求項1ないし請求項5に係る発明についての特許が平成19年1月12日に設定登録された。
これに対して、前記本件特許の請求項1、請求項2、請求項3、請求項4及び請求項5に係る発明の特許に対して、本件無効審判請求人(以下「請求人」という。)により、平成21年8月12日に無効審判〔無効2009-800176号〕が、また平成21年9月30日に無効審判〔無効2009-800208号〕が請求されたものであり、無効審判被請求人(以下「被請求人」という。)により、無効2009-800176号に対して平成21年11月2日付けと平成21年11月6日付けで審判事件答弁書および平成21年11月6日付けで訂正請求書が提出され、また無効2009-800208号に対して平成21年12月2日付けで審判事件答弁書が提出され、その後、請求人から平成22年1月18日付けで上記両審判事件の弁駁書がそれぞれ提出され、平成22年1月21日付けで併合審理通知がなされたものである。
そして、平成22年2月26日に請求人・被請求人より口頭審理陳述要領書が提出され、同日に口頭審理が行われたものである。 その後、被請求人より平成22年3月2日付け、平成22年3月31日付け、平成22年4月27日付けで上申書が提出されたものである。

第2.当事者の主張
請求人の無効理由は次のとおりである。
1.請求人の主張
(1)無効2009-800176号に対して
(無効理由1)本件特許の請求項1ないし請求項5に係る発明は,甲第1号証ないし甲第17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきであるとし、証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証を提出している。
特に、審判請求書10頁?15頁の7.4.3において、本件特許の請求項1に係る発明をA?Eの構成に分け、下記のごとき主張をしている。

【請求項1】
A.発電機(3)を搭載する台車(1)に伸縮支柱(2)を立設すると共に、該伸縮支柱の上端に照明器具(4)を装備してなり、
B.前記照明器具が、バルーン(5)と、該バルーン内に空気を送ってバルーンを膨らませる給気手段(6)と、バルーン内に内蔵される電球(7)を備えたバルーン型照明器具(4)であり、
C.前記バルーンが筒状の胴部(5 a)を有する太鼓型又は円錐台形型又は逆円錐台形型のいずれかの形状で、該バルーンを膨らませた際に前記胴部に皺が生じないよう形成されている投光機であって、
D-1.前記バルーンが、上下を開口する円筒状の胴部形成用シート材5-1)と、該胴部形成川シート材の上下開口を塞ぐよう胴部形成用シート材に対して縫着される上面側と下面側の円形シート材(5-2、5-3)からなり、
D-2.該バルーンの胴部(5a)に文字又は図形が、印刷、貼り付け、着色のいずれかの手段で表示(13)可能に形成されている
E.ことを特徴とする投光機。
A及びEは、甲第1・2・3号各証に開示されており、Bは、甲第4・5・6・7号各証に開示されているように、周知の構成であり、Cは、甲第8・9・10号各証に開示されているように、周知の構成であり、D-1は、甲第8・9・10号各証の周知技術から自明に導出し得る縫着手段であると共に、甲第11・12・13号各証記載の縫着手段のように、当業者の設計事項に過ぎず、D-2は、甲第5・7・12・13・14号各証記載のように、周知の構成であることを考慮するならば、甲第1・2・3号各証の発明に、照明器具として甲第4・5・6・7号各証のような照明器具を採用し、その際、バルーンの形状として甲第8・9・10・11・12号各証記載のような公知の形状を採用すると共に、甲第8・9・10・11・12 ・13号各証のような自明又は設計手段に過ぎない縫着手段を採用し、更には甲第5・7・12・13・14号各証のような周知の表示可能な手段を適用することは、結局周知又は公知の構成を結合することに過ぎず、当業者が容易に想到し得た内容に過ぎない。

(無効理由2)本件特許の請求項1ないし請求項5に係る発明は,特許法第36条第6項第1号及び同第2号の規定の要件を満たしていないから、特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきである。

(2)無効2009-800208号に対して
(無効理由1)本件特許の平成18年11月27日付けでした手続補正により、請求項1に記載された「太鼓型」の用語は、本件特許の出願当初の明細書及び図面には記載されていなかった用語であるから、上記補正は新規事項追加禁止の特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、本件特許は特許法第123条第1項第1号の規定により無効とすべきである。
(無効理由2)本件特許の請求項1に記載された「太鼓型」の用語は、上下両側に「平坦面」を有する形状であり、該形状を保持するために必要な事項が、請求項1、発明の詳細な説明、更には図面に記載されておらず、3枚のシート材によって「太鼓型」の形状を保持するための構造、材質、バルーン内部の圧力制御も特定していない。また、「太鼓型」の形状のバルーンを膨らませた際に「胴部に皺が生じない」ように形成するための手段の構成についても、本件特許の請求項1及び発明の詳細な説明において特定していない。よって、本件特許の請求項1及び請求項5に係る発明は、未完成発明であり、特許法第29条1項柱書きの規定に違反するものであるから、本件特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである。

(3)被請求人は,平成21年11月6日付けで審判事件答弁書とともに訂正請求書を提出して訂正を求めており、これに対して、請求人は平成22年1月18日付けの審判事件弁駁書において、上記訂正請求は特許法第134条の2第1項及び同条第5号で準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に違反し認められないものであり、また、当該訂正請求に基づく両無効審判におけるそれぞれの無効理由1及び無効理由2についての被請求人の主張は、いずれも理由がなくすべて失当であると主張している。

2.被請求人の主張
被請求人の主張は次のとおりである。
(1)無効2009-800176号に対して
(無効理由1)本件特許の請求項1ないし請求項5に係る発明は,甲第1号証ないし甲第17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえないから,特許法第29条2項の規定に違反してなされたものではない。
(無効理由2)本件請求項1ないし請求項5に係る発明は、いずれも発明の詳細な説明に記載したものであるから特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものであり、さらに、本件特許の請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものである。

(2)無効2009-800208号に対して
(無効理由1)訂正明細書により「太鼓型」は「略太鼓型」に訂正されており、「略太鼓型」という用語は出願当初の明細書に記載されていたものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第17条の2第3項を満たしている。
(無効理由2)訂正明細書により「太鼓型」は「略太鼓型」に訂正されており、バルーンが膨らんだ場合には、上面側及び下面側の円形シート材(5-2、5-3)は必然的に上下両側に膨張するため、「平坦面」を形成することはあり得ない以上、請求項1の「太鼓型」が発明の詳細な説明及び図面に記載されている「略太鼓型」の趣旨であることは明らかである。また、本件特許における「胴部に皺が生じない」とは、「胴部において,上下両端側に接続している皺以外には、皺が生じない」との趣旨であることは明らかである。

第3.口頭審理及び口頭審理陳述要領書における請求人、被請求人の主張
1.訂正事項について
(1)被請求人
(ア)訂正事項aについて、言葉で「バルーン」の形状を正確に表現できないので、「太鼓型」形状は「略太鼓型」形状を表現していることは技術的に見て明細書、図面から必然的に一義的に導き出せる。
(イ)訂正事項bについて、胴部の上下両端側には必然的に皺はできる。本件発明は両端側以外に皺を出さないようにしたものである。
(2)請求人
(ア)訂正事項aについて、「太鼓型」という用語はそれ自体、明瞭であるから不明瞭な記載の釈明にあたらない。また、「太鼓型」に「略」を付すると完全な「太鼓型」を「太鼓型に近い形状」に変更又は拡張することに他ならないから、この訂正aは認められない。
(イ)訂正事項bは、皺が生じることを許容する範囲を新たに含ませることを意味しており、皺が生じることを認めると訂正前の「皺が生じない」という技術的意義を実質上拡張又は変更することになる。
(ウ)訂正事項bには次の4つの不明瞭な点がある。
1)どこに対しての「上下両端側」なのか。(バルーンなのか胴部なのか)
2)「側」の基準はどこなのか。
3)「接続」のしわの起点がわからない。
4)「上下両端側」は皺が上から下までつながっていると読めるのではないか。

2.無効理由について
(1)被請求人
(ア)本件の図11や請求項1に記載の「縫着」「給気手段」からバルーンは「非密閉型」であることが自明である。請求人の提出した甲5-7号証に記載されたものは「密閉型」で「密閉型」と「非密閉型」とでタイプが違うので、甲号証のものを組み合わせても本件発明の「バルーン」にはならない。
(2)請求人
(ア)甲各号証について、密閉タイプと非密閉タイプとの峻別を行い組み合わせできない旨を主張しているが、この主張は請求の範囲の記載に基づかないものである。
(イ)甲第4,5,12,13号証に記載のものも「非密閉型」である。

第4.訂正について
1.訂正請求の内容
平成21年11月6日付け訂正請求書の内容は,本件特許の請求項1ないし5に係る発明の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。

(1)特許請求の範囲における訂正
訂正前の「太鼓型又は円錐台形型又は逆円錐台形型のいずれかの形状」を「略太鼓型又は略円錐台形型又は略逆円錐台形型のいずれかの形状」(訂正事項a)に、訂正前の「胴部に皺が生じないよう形成する」を「胴部において上下両端側に接続している皺以外には、皺が生じないよう形成する」(訂正事項b)とするものである。

(2)発明の詳細な説明における訂正
発明の詳細な説明の段落【0006】、段落【0008】、段落【0020】、段落【0021】、段落【0034】、段落【0039】を訂正している。

(3)図2の訂正
図中の符号「5a」、「5b」、「5c」を削除している。また、図中、胴部形成用シート材(5-1)が膨らんだ状態を表す丸みを帯びた曲面で表現されているのを膨らむ前の状態である平面に訂正している。

2.訂正の可否に対する判断
(1)特許請求の範囲における訂正について
訂正事項aに係る「略太鼓型」を形成する状態と,訂正事項bに係る「胴部において上下両端側に接続している皺以外には、皺が生じないよう形成する」状態とは相互に一体的に関連しており、この点は口頭審理において請求人、被請求人に確認されており両者に異存はない。
まず、訂正事項aについて検討する。出願当初の明細書の【0008】には「バルーンが筒状の胴部を有する形状、例えば略太鼓型、略円錐台形型、逆円錐台形型などに形成され、バルーンを膨らませた際に前記胴部に皺が生じないよう形成されていることを特徴とする。」と記載されている。同じく【0021】にも略太鼓型、略円錐台形、逆円錐台形と記載されている。そして、原審における平成18年11月27日付け意見書(5)においても 「〔手続補正1〕新請求項1は、当初明細書における請求項1に、当初の請求項2、3における限定事項を加えると共に、段落0008、段落0021、図1?図3に基づき、筒状の胴部を有するバルーンの形状として、「太鼓型又は円錐台形型又は逆円錐台形型」の限定を加えたものです。」と記載されているように、当初明細書の「略太鼓型、略円錐台形型、逆円錐台形型」との記載を補正の根拠として「太鼓型又は円錐台形型又は逆円錐台形型」と限定しており、このことからみて、 訂正事項aは誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明に該当するものと認められる。
したがって,上記訂正事項aは、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とし、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
次に、訂正事項bについては、 訂正事項aと相互に一体的に関連しており、「略太鼓型」についていえば、バルーンが胴部形成用シート材と上下面側の円形シート材(5-2、5-3)とから構成される場合に胴部に於いては両側の縫着部、すなわち上下両端側に接続している皺が生じることは自明であり、この皺以外に「胴部に皺が生じない」とすることを前提としているものと認められる。その意味において「胴部に皺が生じない」という趣旨をより明瞭にしているといえるから、明りょうでない記載の釈明に該当するものと認められる。
なお、訂正事項bに対して、上記第3.1.(2)の(ウ)の口頭審理における請求人の挙げた4つの指摘事項1)?4)について、
1)については、「胴部において上下両端側に接続している皺以外」としているから、「上下両端側」とは必然的に胴部に対しての上下両端側であることが明らかである。
2)については、バルーンが胴部形成用シート材と上下面側の円形シート材(5-2、5-3)とから構成される場合、胴部においては両側の縫着部、すなわち上下両端側に接続している皺が生じることは自明であり、その皺における基準は 「バルーンを膨らませた際に最大径を形成し得る上下方向における略中央の線」となることは明らかなことといえる。
3)については、「胴部において上下両端側に接続している皺以外には、皺が生じないよう形成する」という技術的意味合いからみれば、胴部の表示領域の上側境界部より上の位置および下側境界部より下の位置となることが明らかである。
4)については、上記で検討した指摘事項1)や指摘事項3)で明らかになったように、「上下両端側に接続している皺」においては胴部の上下両端に跨るような皺は該当しないことが明白である。

(2)発明の詳細な説明における訂正について
段落【0008】、段落【0021】、段落【0034】における訂正は、上記(1)の訂正事項a、bの訂正と整合を図るための訂正であり、明りょうでない記載の釈明に該当するものと認められる。
段落【0006】、段落【0020】における訂正は、誤記の訂正であることが明らかである。
段落【0039】における訂正は、「バルーンの分解斜視図。」とあるのを「バルーンの各シート材に基づく分解斜視図。」と訂正しているが、もとより図2は、段落【0021】の記載および上下方向に膨張していない上面側および下面側円形シート材(5-2、5-3)が表示されていることからも明らかなように、バルーンが膨らむ前段階の各シート材に即したバルーンの分解斜視図であるから、この訂正は明りょうでない記載の釈明に該当するものと認められる。

(3)図2の訂正について
上記(2)の段落【0039】における訂正に合わせて、図2において符号「5a」、「5b」、「5c」の表現を削除することは誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明に該当するものと認められる。また、図面上、胴部形成用シート材(5-1)が膨らんだ状態を表す丸みを帯びた曲面で表現しているのを、胴部形成用シート材(5-1)が膨らむ前の状態を表す平面で表現する訂正をしているが、この訂正も上記(2)の段落【0039】における訂正に合わせて整合を図るためのものであり、誤記の訂正あるいは明りょうでない記載の釈明に該当するものと認められる。

3.以上のことから,平成21年11月6日付けの訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。

第5.本件特許発明
本件特許発明は、平成21年11月6日付け訂正請求書によって訂正された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5のそれぞれに記載された事項によって特定されるとおりのものであり、本件審判事件の対象となる請求項1ないし請求項5に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】
発電機(3)を搭載する台車(1)に伸縮支柱(2)を立設すると共に、該伸縮支柱の上端に照明器具(4)を装備してなり、
前記照明器具が、バルーン(5)と、該バルーン内に空気を送ってバルーンを膨らませる給気手段(6)と、バルーン内に内蔵される電球(7)を備えたバルーン型照明器具(4)であり、
前記バルーンが筒状の胴部(5a)を有する略太鼓型又は略円錐台形型又は略逆円錐台形型のいずれかの形状で、該バルーンを膨らませた際に前記胴部において上下両端側に接続している皺以外には、皺が生じないよう形成されている投光機であって、
前記バルーンが、上下を開口する円筒状の胴部形成用シート材(5-1)と、該胴部形成用シート材の上下開口を塞ぐよう胴部形成用シート材に対して縫着される上面側と下面側の円形シート材(5-2,5-3)からなり、該バルーンの胴部(5a)に文字又は図形が、印刷,貼り付け,着色のいずれかの手段で表示(13)可能に形成されていることを特徴とする投光機。(以下「本件特許発明1」という。)
【請求項2】
前記バルーン(5)内に、前記電球の周囲を囲む枠体(8)をさらに備え、該枠体は、その上端部を前記バルーン上面(5b)の中心部に、下端部を前記バルーン下面(5c)の中心部に、それぞれ着脱自在に固定して前記バルーンの内部中心位置に立ち上がるよう配置され、
且つ前記枠体の上端部に対する前記バルーン上面中心部の固定手段を、バルーン外側からの操作で枠体上端部に係脱自在に係合する係合手段(50)で形成すると共に、前記枠体下端部に対する前記バルーン下面中心部の固定手段を、バルーン外側からの操作で開閉するファスナー式連結手段(60)で形成して、
前記枠体(8)に対し前記バルーン(5)を交換自在に装着したことを特徴とする請求項1記載の投光機。(以下「本件特許発明2」という。)
【請求項3】
前記バルーン(5)内に、前記電球の周囲を囲む枠体(8)をさらに備え、該枠体は、前記バルーン上面の中心部に着脱自在に固定される上端板(21)と、前記バルーン下面の中心部に着脱自在に固定される下端板(22)と、それら上下両板間にわたって立ち上がる複数本のパイプ状支柱(23)と、隣接するパイプ状支柱間に着脱自在に装着される金網状の保護枠(40)からなることを特徴とする請求項1記載の投光機。(以下「本件特許発明3」という。)
【請求項4】
前記バルーン型照明器具(4)と、電球の光を反射板により前方へ向けて投光する照明器具(70)とを、選択的に装備し得るよう形成したことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の投光機。(以下「本件特許発明4」という。)
【請求項5】
前記バルーンの外側又は内側に、該バルーンからの投光範囲を任意に選択して設定することができる遮光手段を備えたことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の投光機。」(以下「本件特許発明5」という。)

第6.無効2009-800176についての当審の判断
1.無効理由1について
(1)甲各号証とその記載事項
甲第1号証:特開2000-195328号公報
甲第2号証:特開2000-222931号公報
甲第3号証:特開2001-60412号公報
甲第4号証:特開平10-188622号公報
甲第5号証:特開2000-132130号公報
甲第6号証:特表平10-500870号公報
甲第7号証:実願昭47-27678号(実開昭48-104099号)のマイクロフィルム
甲第8号証:特開平6-123910号公報
甲第9号証:特開平6-66986号公報
甲第10号証:特開平5-24584号公報
甲第11号証:特開平11-281299号公報
甲第12号証:実願平4-90193号(実開平6-43015号)のCD-ROM
甲第13号証:特公平6-79203号公報
甲第14号証:実公平4-52788号公報
甲第15号証:実願平3-61772号(実開平5-6536号)のCD-ROM
甲第16号証:実開昭61-66805号公報
甲第17号証:特開平9-293485号公報

(ア)甲第1号証の記載事項
主に夜間の道路工事等の照明として用いられる投光機に関し、さらに詳しくは、台車に立ち上げた伸縮支柱の伸縮構造に関し、図1の説明において、「発電機1を搭載する台車2に伸縮支柱3を立設すると共に、該伸縮支柱3の上端に所要数の照明具5を装備した投光機A」が記載されている。(段落【0015】参照)

(イ)甲第2号証の記載事項
例えば、土木工事現場で夜間照明などに用いられる投光機に係わり、特に、車輪を有して移動可能な投光機に関して、図1の説明において、発電機38を搭載する台車31に伸縮自在に構成されたマスト41を立設すると共に、該マスト41の上端に照明装置37を装備したトレーラ式の投光機が記載されている。(段落【0011】?【0012】参照)

(ウ)甲第3号証の記載事項
土木工事現場などの夜間照明用などに使用される投光機に係り、特に、第2マストより折畳むことができる折畳み2灯式投光機に関して、図1の説明において、発電機を搭載する車台4に伸縮自在の昇降装置5(マスト10?13)を立設すると共に、該昇降装置5の上端に照明灯6を装備した投光機1が記載されている。(段落【0012】?【0015】参照)

(エ)甲第4号証の記載事項
薄い可撓性の材料からなる膨張可能な外被を備えた照明バルーンに関して、図1の説明において、バルーン10と,該バルーン10の外皮12内に空気を送って前記バルーン10を膨らませる電気的空気吹込装置52を有する制御ユニット18と、前記外皮12内に内蔵される電球16を有する照明器具14を備え、前記外皮12の内側上部は光反射フィルムで覆われた照明バルーンが記載されている。(段落【0010】?【0011】、【0016】参照)

(オ)甲第5号証の記載事項
内から光を照らして透過させる内照式広告バルーンに関して、図1及び図3の説明において、バルーン資材16と,該バルーン資材16内に空気を送って前記バルーン資材16を膨らませるブロワー12と、前記バルーン資材16の形状は頂部が半球状で胴部が円筒体のものとし、前記バルーン資材16内に内蔵される電球を有する光源18を備え、前記バルーン資材16の胴部円筒体の表面の広告表示体(フェースシート)38に文字又は図形による広告メッセージを印刷して貼付することにより表示可能に形成された内照式広告バルーンが記載されている。(段落【0008】?【0013】参照)

(カ)甲第6号証の記載事項
膨張可能の、場合によっては照明可能の気球の改良に関して、気嚢(2)と,該気嚢(2)内にガスを送って気嚢(2)を膨らませるガス供給手段(不図示)と、前記気嚢(2)内に内蔵される照明手段(電球9,10)を備えた膨張可能気球(1)が記載されている。(特許請求の範囲、発明の詳細な説明の欄及び図1?図5参照)

(キ)甲第7号証の記載事項
繋留気球に関して、図1及び図2の説明において、透明合成樹脂皮膜またはシートからなる球形または立方体の気球1と,水素ガス供給手段(不図示)により水素ガスを充填して膨らませた前記気球1内に内蔵される蛍光灯9からなる発光体4とを備えた発光気球が記載されており、前記気球1はその表面に文字または図形もしくは模様を表してこれを灯光によって所在表示、広告等に応用することが記載されている。(実用新案登録請求の範囲、考案の詳細な説明の欄及び図1?図2参照)

(ク)甲第8号証の記載事項
水力発電所のサージタンクや水圧鉄管路等の内部の壁面等を遠隔的に点検する気球を利用した壁面点検装置に関して、図2(a)の(イ)?(ハ)に示すように、気球1は、「太鼓形」、「俵形」、「半俵形」等の形状があること、気球1の材質としては、例えばネオプレーンゴムまたは塩化ビニール等があることが記載されている。(段落【0021】?【0022】参照)

(ケ)甲第9号証の記載事項
空中浮遊式点検装置及び方法に関し、図1の説明において、空中浮遊手段としては気球があり、該気球の形状は、球形の気球でも、あるいは円柱形状の気球でもよいことが記載されている。(段落【0012】?【0013】、図1参照)

(コ)甲第10号証の記載事項
高所作業に使用される作業用飛行船に関して、図1に、太鼓型の形状の気球が図示されている。

(サ)甲第11号証の記載事項
探査機器を備えた、例えば砲弾などの高速飛翔体に関し、図2の説明において、気球部20の上端に隣接して連結される逆円錐台形状の気球形態となる補助傘10aが記載されており、該補助傘10aの材質は,機械的強度に優れたポリエステル系の織布が用いられている前述の形態を得るため、布地の合わせ部を縫合することが記載されている。(段落【0030】?【0031】、図2参照)

(シ)甲第12号証の記載事項
道路工事現場等における標示塔に関して、可撓性シート材料からなり、空気圧により膨張して所定の形状を保持することができ、かつ表面に色、柄、図形または文字、あるいはそれらの組合せからなる標示が施されてなることを特徴とする工事用標示塔が記載されており(実用新案登録請求の範囲の請求項1参照)、段落【0004】において、可撓性シート材料は、必要な形に裁断し、縫製して仕上げるか、貼着は融着、接着、粘着等の方法によること、シートの縫製はミシン、熱融着、接着等を素材に応じ採用し、縫製によって形成されるシート体の形は円錐、円筒、鉛筆型のほか人形等の異形も可能であることが記載されている。

(ス)甲第13号証の記載事項
内照式の看板あるいは広告塔に関して、「光透過性の柔軟な気密性シートで形成した成形体の表面を広告表示面となし、該成形体の内部に照明器具を内装し、前記成形体に加圧気体を供給して該成形体を膨張せしめて立体構造体となし、該立体構造体内に常時加圧気体を供給し、かつ同時に加圧気体を常時少量づつ排出せしめながら該立体構造体を所定の形状に保形するとともに、該立体構造体を固定手段にて固定したことを特徴とする内照式広告体」(請求項1参照)、「図において、1は光透過性シートで形成された成形体Aを構成する直胴部であり、該直胴部1の前面部及び後面部に広告表示面2が貼着されている。前記した広告表示面2に使用する光透過材として、長繊維フィラメントのメッシュ状基布に樹脂フイルムをラミネートしたシートを用い、該シートは、柔軟で折れ曲がり易く曲面になり易いものである。そして、前記したシートは高周波圧着によって接続することが容易であり、大型の表示用シートを形成することが可能である。」(公報第2頁右欄第2?10行)、「前記した成形体Aの形成に際しては、上部筒3の頂部に蓋4を接着し、上部筒3の下縁と直胴部1の上縁部とを肩部円錐部5で連結接着する」(公報第2頁右欄第16?18行)、 「前記の立体構造体内に加圧気体を常時供給し、同時に供給された加圧気体を少量づつ排出しながら立体構造体の形状を常に所定の形状に保形保持するものであり、これにより、広告体には歪み等が発生しないので、広告体表面の文字・図柄等が正確に表現されるものである。」(公報第2頁左欄第38?43行)、「前記シートは高周波圧着によって接続することが容易であり、大型の表示用シートを形成することが容易であり、立体像をシート面上に展開したうえで切取り、その周辺部を高周波圧着によって接続することもできるものである。」(公報第3頁左欄第28?32行、図2参照)が記載されている。

(セ)甲第14号証の記載事項
表面に必要な文字や図柄を簡単に施すことができ、アドバルーン等に好適に使用できるバルーンに関して、「この考案は、その表面に必要な文字や図柄を簡単に施すことができ、アドバルーン等に好適に使用できるバルーンに関するものである。」と記載されている。(第1頁「産業上の利用分野」参照)

(ソ)甲第15号証の記載事項
化粧台等の遮光板付き照明装置に関して、「照明用光源からの照射条件を調節できるようにその照明用光源に近接させて遮光板を回動自在に設け」と記載されている。(実用新案登録請求の範囲、請求項1参照)

(タ)甲第16号証の記載事項
照明器具に係り、「光源とこの周囲に設けた防眩用笠とを備えた照明器具において、遮光範囲の調整ができるように、前記笠の内面に可動反射板を施したことを特徴とする照明器具」(実用新案登録請求の範囲参照)

(チ)甲第17号証の記載事項
白熱電球、特に、車両用灯具等のように、照明光束を所定範囲内で遮光する遮光板を有する白熱電球に関して、「電球取付用のフランジを有する口金部と、該口金部に設けられたフィラメントと、該フィラメントを密閉状態で覆うように前記口金部に設けられたガラス管球と、該ガラス管球に塗布された赤外線反射膜と、前記ガラス管球の外側に位置し且つ前記フィラメントの発光に伴う照明光束を所定範囲内で遮光するように前記口金部に設けられた遮光板とを備えていることを特徴とする白熱電球」(特許請求の範囲、請求項1参照)が記載されている。


(2)本件特許発明1について
(ア)引用発明との対比及び一致点・相違点
上記甲第1号証の刊行物の摘記事項及び添付図面に図示された技術事項を総合すると、甲第1号証の刊行物には、次の発明が記載されているものと認められる。
「発電機1を搭載する台車2に伸縮支柱3を立設すると共に、該伸縮支柱3の上端に所要数の照明具5を装備した投光機」(以下、これを「引用発明」という。)

本件特許発明1と引用発明とを対比すると、本件特許発明1も引用発明もともに投光機であり、引用発明1の「発電機1」は本願特許発明1の「発電機(3)」に相当している。以下、同様に、「台車2」は「台車(1)」に、「伸縮支柱3」は「伸縮支柱(2)」に、「照明具5」は「照明器具(4)」にそれぞれ相当している。

本件特許発明1と引用発明の両者は、「発電機を搭載する台車に伸縮支柱を立設すると共に、該伸縮支柱の上端に照明器具を装備してなる投光機」である点で一致し、次の点で両者の構成が相違する。

相違点:投光機の伸縮支柱の上端に装備してなる照明器具として、本件特許発明1では、「照明器具が、バルーン(5)と、該バルーン内に空気を送ってバルーンを膨らませる給気手段(6)と、該バルーン内に内蔵される電球(7)を備えたバルーン型照明器具(4)であり、バルーンが筒状の胴部(5a)を有する略太鼓型又は略円錐台形型又は略逆円錐台形型のいずれかの形状で、該バルーンを膨らませた際に前記胴部において上下両端側に接続している皺以外には、皺が生じないよう形成」され、「該バルーンが、上下を開口する円筒状の胴部形成用シート材(5-1)と、該胴部形成用シート材の上下開口を塞ぐよう胴部形成用シート材に対して縫着される上面側と下面側の円形シート材(5-2,5-3)からなり、該バルーンの胴部(5a)に文字又は図形が、印刷,貼り付け,着色のいずれかの手段で表示(13)可能に形成されている」構成であるのに対して、引用発明では、上記本件特許発明1に対応する構成を有していない点。

(イ)相違点についての検討
まず、甲第1?17号証にはいずれにも、本件特許発明1の「投光機の伸縮支柱の上端に装備してなる照明器具としてのバルーン型照明器具」については記載も示唆もされていない。
本件特許発明1の「バルーンが、上下を開口する円筒状の胴部形成用シート材(5-1)と、該胴部形成用シート材の上下開口を塞ぐよう胴部形成用シート材に対して縫着される上面側と下面側の円形シート材(5-2,5-3)からなり、該バルーンの胴部(5a)に文字又は図形が、印刷,貼り付け,着色のいずれかの手段で表示(13)可能に形成されている」構成も甲第1?17号証のいずれにも記載も示唆もされていない。
甲第13号証には、加圧気体を常時供給して円柱形状に保持した立体構造体を固定手段にて固定した内照式広告体が記載され、立体像を大型の表示用シート上に展開したうえで切取り、その周辺部高周波圧着によって接続して形成することが記載されているといえるが、「上下を開口する円筒状の胴部形成用シート材と、該胴部形成用シート材の上下開口を塞ぐよう胴部形成用シート材に対して縫着される上面側と下面側の円形シート材からなる」バルーンの構成については記載も示唆もされていない。
そして、引用発明の照明器具として、甲第13号証に記載の内照式広告体の構成を適用する動機又は起因付けは認められず、甲第13号証においても、上記相違点に相当する構成も見いだすことができない。
また、バルーンの構成として引用された甲第4?12、14号証においても、上記相違点に相当する構成を見いだすことができないし、引用発明の照明器具に適用する動機又は起因付けは認められない。

本件特許発明1は、上記相違点の構成を採用することにより、本件明細書に記載の「膨らませた際に胴部において上下両端側に接続している皺以外には、皺が生じない構造のバルーンを採用したので、バルーン胴部の外周に「工事中」「注意」などの文字を印刷などにより表示することで、通行車両の運転手に注意を促すことが出来る等の効果がある。また、上記したバルーンを、円筒状の胴部形成用シート材と、上面側と下面側の円形シート材からなる三枚のシート材を相互に縫着して形成するものとしたので、バルーン製作の手間、コスト等を低減することができる。」(段落【0034】)」という作用・効果を奏するものであるといえる。
したがって、本件特許発明1は、引用発明及び甲第2号証?甲第17号証に記載の各事項を検討したが、いずれにおいても上記相違点に相当する構成は見いだすことができないから、引用発明及び甲第2号証?甲第17号証に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(3)本件特許発明2?5について
(ア)引用発明との対比及び一致点・相違点
本件特許発明2?5は、本件特許発明1を引用する形式で記載された発明であるので、本件特許発明2?5と引用発明とを対比すると、上記(2)(ア)の一致点で一致し、少なくとも「相違点」で相違する。

(イ)対比・判断
上記(2)(イ)で検討したのと同様に、引用発明及び甲第2号証?甲第17号証に記載の各事項を検討しても、本件特許発明2?5と引用発明との上記相違点に相当する構成は見いだすことができないから、本件特許発明2?5が引用発明及び甲第2号証?甲第17号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

2.無効理由2について
請求人は、発明の詳細な説明には、「略太鼓型」の記載が存在するも(段落【0008】、【0021】、【0024】)、請求項1?5の「太鼓型」が記載されていない以上、「太鼓型」の用語の使用が、発明の詳細な説明による裏付を伴っていないと主張している。
しかしながら、訂正明細書において、請求項1の「太鼓型」については、「略太鼓型」への訂正が行われており、発明の詳細な説明との表現上の相違は解消している。
さらに、請求人は、請求項1記載の「筒状の胴部(5a)」の用語は、発明の詳細な説明及び図面において発明の開示に使用されている用語ではないと主張している。
しかしながら、以下に示すように、「筒状の胴部(5a)」の用語は出願当初の明細書に使用されている。
段落【0008】においては、「バルーンが筒状の胴部を有する形状、例えば略太鼓型、略円錐台形型、逆円錐台形型などに形成され、」と記載され、段落【0021】においては「筒状の胴部5aと上下面部5b、5cで囲まれる略太鼓型に形成されている」と記載され、さらに図1、図3、図10、図11の「5a」の表示部分は、「管状」の形状を示しているから、「筒状の胴部5a」を表現している。
このことからみても、「筒状の胴部5a」は、出願当初の明細書及び図面に開示されているといえるし、「筒状の胴部5a」の表現における技術的趣旨は、「管状(パイプ状)の胴部5a」のことであって、その技術内容も明瞭である。
また、請求人の主張が、出願当初の明細書に記載された「筒状の胴部5a」の用語が「略太鼓型」の場合のみであって、「太鼓型又は円錐台形型又は逆円錐台形型」の場合の説明がなされていないという趣旨であれば、訂正明細書において、請求項1の「太鼓型又は円錐台形型又は逆円錐台形型」は、「略太鼓型又は略円錐台形型又は略逆円錐台形型」と訂正が行われており、「筒状の胴部5a」の用語も「略太鼓型又は略円錐台形型又は略逆円錐台形型」の場合におけるものといえるので、上記請求人の主張は解消されたものとなる。
したがって、「円筒状の胴部(5a)」は、発明の詳細な説明及び図面の記載を根拠にしており、特許法第36条第6項第1号に違反しているとはいえない。
次に、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された「バルーンを膨らませた際に胴部に皺が生じないよう形成されている」に対して、請求人は、バルーンを膨らませた際に該バルーンが太鼓型又は円錐台形型又は逆円錐台形型のいずれかの形状であれば、結果として胴部に皺が生じないよう形成されたものとなるのか、又は、形状に関係なく、バルーンを膨らませた際に胴部に皺が生じないよう形成するための特定の手段が講じられているのか、文言の意味内容として一義的に明確でないと主張し、前記記載部分が特許法第36条第6項第2号に違反していると主張している。
請求人の該主張は、「胴部に皺が生じない」という記載は胴部の上下両端側の接続領域に必然的に生じる皺をも含めて胴部の全領域に皺が生じないということを前提として主張しているものである。
しかしながら、胴部形成用シート材(5-1)と上面側と下面側の円形シート材(5-2、5-3)との各縫着部の両側においては、バルーンを膨らませる際、上面側と下面側の円形シート材(5-2、5-3)が上下方向に膨張することによって、縫着部の径が縮小し、その結果、当該縫着部及びその両側の接続領域において必然的に皺が生じ、結局、胴部においても上下両端側に接続している皺が生じることは、当業者においては技術上一義的に理解できる自明な事項といえる。
そして、訂正明細書においては、従来技術に関する段落【0004】、図3の開示及び実施形態に関する段落【0021】、並びに作用効果に関する段落【0034】の記載に即して、「胴部に皺が生じない」とは、「該バルーンを膨らませた際に、前記胴部において、上下両端側に接続している皺以外には、皺が生じないよう形成されている」と訂正されており、上記の趣旨が明らかにされている。
したがって、特許法第36条第6項第2号に違反しているとはいえない。
以上のことから、特許法第36条第6項第1号及び第2号及び同第123条第1項第4号に基づく無効理由2は採用することができない。

第7.無効2009-800208についての当審の判断
1.無効理由1について
請求人は、請求項1の「太鼓型」につき、上面側及び下面側が共に平坦面を呈するような「太鼓」の形状を前提とした上で「太鼓型」の用語は、出願当初の明細書及び図面に規定されていなかった用語であるが故に、請求項1において、「太鼓型」を規定するに至った手続補正が特許法17条の2第3項を充足していないため、同法第123条第1項第1号に違反すると主張している。
しかしながら、訂正明細書によりこのような「太鼓型」は「略太鼓型」に訂正されており、「略太鼓型」という用語は出願当初の明細書に記載されていたものであるから、新規事項の追加に該当しない。
したがって、特許法第17条の2第3項の規定に違反していない。

2.無効理由2について
請求人は、請求項1及び発明の詳細な説明において、「太鼓型」の形状のバルーンをどのように形成し、その形状をどのように保持するのか、そしてバルーンを膨らませた際に「胴部に皺が生じないように形成する」ための手段の構成について、どのようにして実現されるのかが明確でない以上、請求項1に係る発明は未完成であると主張している。
しかしながら、訂正明細書により「太鼓型」は「略太鼓型」に訂正され、さらに、「バルーンを膨らませた際に前記胴部において上下両端側に接続している皺以外には、皺が生じない」と訂正されたことによって、このような無効理由は解消されたことになり、請求人の主張は採用することができない。

第8.むすび
上記のとおりであるから、無効2009-800176、無効2009-800208については、その請求は何れも成り立たない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
投光機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機(3)を搭載する台車(1)に伸縮支柱(2)を立設すると共に、該伸縮支柱の上端に照明器具(4)を装備してなり、
前記照明器具が、バルーン(5)と、該バルーン内に空気を送ってバルーンを膨らませる給気手段(6)と、バルーン内に内蔵される電球(7)を備えたバルーン型照明器具(4)であり、
前記バルーンが筒状の胴部(5a)を有する略太鼓型又は略円錐台形型又は略逆円錐台形型のいずれかの形状で、該バルーンを膨らませた際に前記胴部において上下両端側に接続している皺以外には、皺が生じないよう形成されている投光機であって、
前記バルーンが、上下を開口する円筒状の胴部形成用シート材(5-1)と、該胴部形成用シート材の上下開口を塞ぐよう胴部形成用シート材に対して縫着される上面側と下面側の円形シート材(5-2、5-3)からなり、該バルーンの胴部(5a)に文字又は図形が、印刷、貼り付け、着色のいずれかの手段で表示(13)可能に形成されていることを特徴とする投光機。
【請求項2】
前記バルーン(5)内に、前記電球の周囲を囲む枠体(8)をさらに備え、該枠体は、その上端部を前記バルーン上面(5b)の中心部に、下端部を前記バルーン下面(5c)の中心部に、それぞれ着脱自在に固定して前記バルーンの内部中心位置に立ち上がるよう配置され、
且つ前記枠体の上端部に対する前記バルーン上面中心部の固定手段を、バルーン外側からの操作で枠体上端部に係脱自在に係合する係合手段(50)で形成すると共に、前記枠体下端部に対する前記バルーン下面中心部の固定手段を、バルーン外側からの操作で開閉するファスナー式連結手段(60)で形成して、
前記枠体(8)に対し前記バルーン(5)を交換自在に装着したことを特徴とする請求項1記載の投光機。
【請求項3】
前記バルーン(5)内に、前記電球の周囲を囲む枠体(8)をさらに備え、該枠体は、前記バルーン上面の中心部に着脱自在に固定される上端板(21)と、前記バルーン下面の中心部に着脱自在に固定される下端板(22)と、それら上下両板間にわたって立ち上がる複数本のパイプ状支柱(23)と、隣接するパイプ状支柱間に着脱自在に装着される金網状の保護枠(40)からなることを特徴とする請求項1記載の投光機。
【請求項4】
前記バルーン型照明器具(4)と、電球の光を反射板により前方へ向けて投光する照明器具(70)とを、選択的に装備し得るよう形成したことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の投光機。
【請求項5】
前記バルーンの外側又は内側に、該バルーンからの投光範囲を任意に選択して設定することができる遮光手段を備えたことを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の投光機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、道路工事やスポーツ施設などの夜間照明として使用される投光機に関し、詳しくは、給気手段により膨らませたバルーン内に電球を内蔵したバルーン型照明器具を装備してなる投光機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、道路工事やスポーツ施設などの夜間照明として使用される投光機として、発電機を搭載する台車に伸縮支柱を立設し、該伸縮支柱の上端に、電球の光を反射板により前方を向けて投光する照明器具を装備したものが知られている。
ところで、この種投光機からの投光は明るい方が好ましいことは言うまでもないが、道路工事等においてはその投光が通行車両の運転者に対し邪魔になる場合があり、特に高速道路等での使用に際し改善の要求がある。
【0003】
このような問題点を解消するために、本願出願人は、発電機を搭載する台車に伸縮支柱を立設し、該伸縮支柱の上端に、給気手段により膨らませたバルーン内に電球を内蔵したバルーン型照明器具を装備してなる新規な投光機を提案し、先に出願した(特願2001‐150911号参照)。
該先願のバルーン型投光機は、バルーン内の電球の光がバルーンを通して外部に間接的に照射されることで眩しさを和らげ、道路工事等においてその投光が通行車両の運転者に対し邪魔になるような虞れないという利点を奏するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
処で、前述した先願のバルーン型投光機の技術内容をより詳細に検討した場合、以下の点に改良の余地を残していた。
すなわち、この種バルーン型投光機は、バルーン周面に何も表示されていない形態においては、前述したような照明器具としての機能しか発揮しないが、バルーンの周面に「工事中」「注意」などの文字を印刷などにより表示して通行車両の運転手に注意を促すことが考えられる。しかしながら、従来のバルーン型投光機においては、バルーンの上半分を形成する上側円形シート材と、バルーンの下半分を形成する下側円形シート材とを相互に縫着してバルーンを構成しているので、バルーンを膨らませた際にバルーン周面に所々皺が生じ、バルーン周面に表示した文字が読み取れなくなる虞れがある。
これを解消するために、バルーン周面を経線方向に分割した複数枚の分割シート材からなる略地球儀型に形成して皺が生じないよう構成することも考えられるが、この場合、隣り合せる分割シート材を相互に縫着しなければならず、バルーン製作に手間とコストがかかるという不具合が生じる。
【0005】
又、バルーンは通常、投光性を有する合成樹脂シートで形成されるが、屋外での使用による劣化や電球からの発熱による劣化等の為に、所定期間毎に交換する必要が生じるが、先願のバルーン型投光機は、電球の周囲を囲んでバルーンと電球の接触を防止する枠体の上下端部において、それぞれ上下の円形板でバルーンの上面中心部、下面中心部を挟み、且つ上下の円形板はボルト・ナットで相互に固定される構成を採用しており、バルーンの交換に手間がかかるという不具合があった。
【0006】
又、先願のバルーン型投光機では、上記枠体が金網状の枠体からなり、長期の使用や強風条件下での使用に強度上の問題点を残していた。
さらに先願のバルーン型投光機は、バルーン型照明器具の専用機として構成されており、発電機を搭載する台車に伸縮支柱を立設し、該伸縮支柱の上端に、電球の光を反射板により前方を向けて投光する照明器具を装備した従来型投光機の所有者は、バルーン型投光機を別途購入しなければならず、発電機、台車、伸縮支柱を2セットづつ所有することになる。
【0007】
本発明はこの様な事情に鑑み、道路工事等においてその投光が通行車両の運転者に対し邪魔になるような虞れないバルーン型の投光機における上述した従来の不具合を解消し、使い勝手が良く商品価値の高い新規なバルーン型投光機を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を達成するための手段】
以上の目的を達成するために本発明に係る投光機は、発電機を搭載する台車に伸縮支柱を立設すると共に、該伸縮支柱の上端に照明器具を装備してなり、前記照明器具が、バルーンと、該バルーン内に空気を送ってバルーンを膨らませる給気手段と、バルーン内に内蔵される電球を備えてなり、前記バルーンが筒状の胴部を有する略太鼓型、略円錐台形型、略逆円錐台形型の何れかに形成され、バルーンを膨らませた際に前記胴部において上下両端側に接続している皺以外には、皺が生じないよう形成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、バルーンを膨らませた際に胴部において上下両端側に接続している皺以外には、皺が生じない為、バルーン胴部の外周面に「工事中」「注意」などの文字を印刷などにより表示した場合は、通行車両の運転手に注意を促すことが出来る。これら文字などを表示しない場合は、照明器具としての機能のみを発揮する。
【0009】
上記バルーンの胴部に表示するのは、文字、図形等が可能であり、またその表示方法は、印刷、貼り付け、着色等の各種手段が考えられる。
【0010】
上記バルーンは、上下を開口する円筒状の胴部形成用シート材と、該胴部形成用シート材の上下開口を塞ぐよう胴部形成用シート材に対して縫着される上面側と下面側の円形シート材からなる構成とすることで、バルーン製作の手間、コスト等を低減することができる。
【0011】
また本発明に係る投光機は、発電機を搭載する台車に伸縮支柱を立設し、該伸縮支柱の上端に照明器具を装備すると共に、該照明器具が、バルーンと、該バルーン内に空気を送ってバルーンを膨らませる給気手段と、バルーン内に内蔵される電球と、該電球の周囲を囲む枠体から形成され、上記枠体は、その上端部をバルーン上面の中心部に、下端部をバルーン下面の中心部に、それぞれ着脱自在に固定してバルーンの内部中心位置に立ち上がるよう配置され、
且つ枠体上端部に対するバルーン上面中心部の固定手段を、バルーン外側からの操作で枠体上端部に係脱自在に係合する係合手段で形成すると共に、枠体下端部に対するバルーン下面中心部の固定手段を、バルーン外側からの操作で開閉するファスナー式連結手段で形成して、
枠体に対しバルーンを交換自在に装着したことを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、バルーン上面側において係合手段を係脱操作すると共に、バルーン下面側においてファスナーを開閉操作することで、枠体に対するバルーンの着脱を容易に行うことができる。
【0013】また上記枠体を、バルーン上面の中心部に着脱自在に固定される上端板と、バルーン下面の中心部に着脱自在に固定される下端板と、それら上下両板間にわたって立ち上がる複数本のパイプ状支柱と、隣接するパイプ状支柱間に着脱自在に装着される金網状の保護枠からなる構成とした場合、金網状の枠体と比較した場合の強度が大幅に向上し、悪天下や長期の使用にも耐えうる構造とし得る。
【0014】
また、給気手段により膨らませたバルーン内に電球を内蔵したバルーン型照明器具と、電球の光を反射板により前方を向けて投光する照明器具とを選択的に装備し得るよう形成した場合、何れか一方の照明器具を選択して伸縮支柱に装備することで、使用目的や使用場所に応じた適宜な投光を得ることができる。
【0015】
また、バルーンの外側又は内側に、バルーンからの投光範囲を任意に選択して設定することができる遮光手段を備えた場合、バルーンからの投光範囲を任意に設定することが出来、例えば道路端に投光機を設置した場合、裏側に位置する民家等への投光を遮断することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、実施形態の一例を図面に基づいて説明する。
本例の投光機は図1に示すように、発電機3を搭載する台車1に伸縮支柱2を立設し、該伸縮支柱2の上端にバルーン型の照明器具4を装備してなり、該照明器具4は、バルーン5と、該バルーン5内に空気を送ってバルーン5を膨らませる給気手段としての送風装置6と、バルーン5内に内蔵される電球7と、電球7を保護する枠体8などを備えてなり、電球7からの発光を、バルーン5を通過させることにより眩しさを和らげ優しい光に変化して照射し得るよう構成されている。
【0017】
台車1は、車体ベース1-1の前後左右に車輪1-2を回動自在に軸承したもので、車輪付き発電機3を係脱可能に搭載し得るように形成されている。台車1の後部に伸縮支柱2が立設されている。尚、発電機3については車輪を持たず、台車1上に着脱可能又は固定的に搭載するも勿論良く、特に限定されるものではない。
【0018】
伸縮支柱2は、台車1の後部上面に基管柱2-1を立上げ、その基管柱2-1内に、該基管柱2-1に対して遂次内径を小さくした少なくとも一つの中管柱、図示例では二本の中管柱2-2,2-3を順次上下摺動可能に遊嵌し、これら中管柱2-2,2-3を任意な昇降手段によって順次上下摺動させることによって、照明器具4の高さを適宜に変更且つ設定し得るよう形成されている。
【0019】
中間柱2-3の上端にはジョイント部材9を介して接続支柱10の下端部が着脱自在に連結されており、その接続支柱10の上端に設置した照明器具4を、伸縮支柱2に対して着脱自在に装備し得るよう構成されている。
ジョイント部材9は図示を省略しているが、照明器具4に給電するための給電ケーブル11のコネクター11aを差込み接続するコネクターを備えている。またそのコネクターはケーブル12を介して発電機3に連絡し、発電機3から供給される電力を照明器具4の送風装置6、電球7等に供給するよう構成されている。
【0020】
伸縮支柱2の各中管柱2-2,2-3を上下摺動させる昇降手段は、特に限定されないが、例えば適宜数の滑車とワイヤー及びウインチを備える昇降手段に加え、ガスダンパーを基管柱2-1内に組み込み該ガスダンパーの反撥力を利用して、夫々の中管柱2-2,2-3の昇降操作を片手で行い得るようにした公知の構造のものが好ましく採用することができる。
【0021】
照明器具4は前述したように、バルーン5、送風装置6、電球7、枠体8などから構成されている。
バルーン5は、図2に示すように、上下を開口する円筒状の胴部形成用シート材5-1と、該胴部形成用シート材5-1の上下開口を塞ぐよう胴部形成用シート材5-1に対して縫着される上面側と下面側の円形シート材5-2,5-3からなり、胴部形成用シート材5-1の上下開口縁に沿って上下の円形シート材5-2,5-3の外周縁を縫着することで、図3に示すような筒状の胴部5aと上下面部5b,5cで囲まれる略太鼓型に形成されている。これによりバルーン5は、送風装置6の作動で膨らんだ際に胴部5aにおいて上下両端側に接続している皺以外には、皺が生じない構成となり、胴部5a外周に「工事中」「注意」などの表示13を印刷した場合、該表示13が皺で読めなくなるような虞れが無く、通行車両の運転手に注意を促すことができる。このような表示13をしない場合は、照明器具としてのみ機能することは言うまでもない。
上記各シート材5-1,5-2,5-3は、所望の投光性、耐候性、強度を有する合成樹脂製のシート材、例えばナイロン66等からなるもので、横長矩形状のシートの長手方向縁部同士を縫着して胴部形成用シート材5-1とすると共に、各シート材5-1,5-2,5-3を前述の如く相互に縫着することで略太鼓型のバルーン5を構成する。すなわちバルーン5は、3箇所の縫着作業で作製可能であり、多数の箇所を縫着する必要がある略地球儀型のバルーンに比べ、簡単且つ低コストで作製可能である。
尚、図示しないが、バルーン5の他例として、略円錐台形のもの、略逆円錐台形のものなども、本発明の好ましい態様として例示することができ、この場合は、胴部形成用シート材5-1を円錐台形の周面を展開した形状とし、円形シート材5-2,5-3を円錐台形の上面と底面を構成する形状とすることは言うまでもない。
【0022】
枠体8は、バルーン5内の中心部に電球7を支持すると共に、該電球7の周囲を囲んでバルーン5と電球7との接触を防ぐ為のもので、図4、図5に示すように、上端板21をバルーン上面部5bの中心部に、下端板22をバルーン下面部5cの中心部に、それぞれ着脱自在に固定すると共に、それら上下両板21、22間にわたって複数本のパイプ状支柱23を立ち上げて、バルーン5の内部中心位置に立ち上がるよう配置されている。詳しくは、下端板22の下面側中心部には前述した接続支柱10の上端部が連結されており、接続支柱10の上端に枠体8が設置され、この枠体8にバルーン5、送風装置6、電球7等が装備されている。
【0023】
枠体8についてさらに説明すれば、下端板22の上方には下部支持板24が設けられ、この支持板24上に、送風装置6と温度センサー25が設置されている。また下端板22と下部支持板24には、送風装置6に空気を供給するための空気孔26,27が適宜複数箇所に開設されている。28は下端板22の空気孔26と下部支持板24の空気孔27を連通させるための筒部材である。
【0024】
送風装置6はバルーン5を所定の形状(本例では略太鼓型)に膨らませるためにバルーン5内に空気を供給するもので、本例では、バルーン5内に収納状に設置されるファンモータからなる。温度センサー25は、例えば電球7が点灯したままでバルーン5が何らかの事情で萎み、バルーン5内の温度が規定値以上に上昇した場合に、これを異常発生として検出して電球7を消灯させるサーモスタットからなる。
上端板21の下方には上部支持板29が設けられ、この支持板29の下面に、電球7を装着するためのソケット30とソケットカバー31が設置されている。
32は、ソケット30に装着されて下向きに保持された電球7の先端部(下端部)を支持する電球保持体である。
【0025】
電球保持体32は図6に示すように、それぞれのパイプ状支柱23に外端側を上下摺動可能に挿入した板状バネからなる各保持片33の内端側を、枠体8の中心部付近で重ね合せ、且つその先端を上方へ立ち上げて電球先端部7aが遊嵌する保持凹部34を形成してなる。またそれぞれの保持片33には、保持片33の外端付近から側方へ延びて先端を保護枠40の所定箇所に係脱自在に引っ掛けることで電球保持体32を適宜高さ位置に固定する係止杆35が設けられている。
【0026】
保護枠40は図5、図6に示すように、円弧状に湾曲する横方向の線材41と縦方向の線材42とを組み合せてなる金網状の枠材で、横方向の線材41の左右両端部分を内側へ湾曲させてパイプ状支柱23に対し弾性により係脱自在に係合する引掛け部43を形成し、隣り合せるパイプ状支柱23,23間に亘って着脱自在に装着し得るよう形成されている。
【0027】
図4?図10に示すように、枠体8の上端板21には、バルーン上面部5bの中心部分が、バルーン5外側からの操作で上端板21に係脱自在に係合する係合手段50で固定されており、また枠体8の下端板22には、バルーン下面部5cの中心部分が、バルーン5外側からの操作で開閉するファスナー式連結手段60で連結されている。
【0028】
係合手段50は、バルーン5の外側で上端板21と重なって上端板21と共にバルーン上面部5bの中心部分を挟持する外側板51と、この外側板51の適宜複数箇所に回転可能に装着されたワンタッチ式の係合凸部材52と、それぞれの係合凸部材52の先端係合部52aが、該係合凸部材52の一方向への回転で係合し、他方向への回転でその係合が外れるよう上端板21の適宜複数箇所に形成された係合凹部53と、各係合凸部材52の先端係合部が対応する係合凹部53に挿入されるようバルーン上面部5bに開設した通孔54から構成されている。そうして、上端板21に重なるようバルーン上面部5bの中心部分外側に外側板51をセットすると共に、各係合凸部材52の先端係合部52aを通孔54を通して上端板21の係合凹部53に挿入した後、各係合凸部材52を一方向へ回転させて先端係合部52aと係合凹部53を係合させ、これにより上端板21と外側板51が重合状に連結固定されるをもって、バルーン上面部5bが枠体8の上端板21に固定される。
この状態から、各係合凸部材52を他方向へ回転させて先端係合部52aと係合凹部53の係合を解除し、これにより上端板21と外側板51が離間可能になって、バルーン上面部5bが枠体8に対し取り外し可能となる。
【0029】
ファスナー式連結手段60は、枠体8の下端板22の外周縁に沿って、バルーン下面部5cを形成するシート材5-3と同質材のシート材からなるシート縁部61を形成し、そのシート縁部61の外周に沿ってファスナーの一側の歯部列62を形成する一方、バルーン下面部5cの中心部分には、前記シート縁部61と合致する開口を設けると共に、その開口縁に沿ってファスナーの他側の歯部列63を形成し、何れか一方の歯部列に開閉金具64を設け、この開閉金具64の摺動により両歯部列が開閉するよう構成されている。
そうして、両歯部列62,63が閉じた状態でシート縁部61とバルーン下面部5cが連結するをもって、バルーン下面部5cが枠体8の下端板22に固定される。またこの状態から、開閉金具64を開方向へ摺動させて両歯部列62,63を開くと、シート縁部61とバルーン下面部5cが離間し、バルーン下面部5cが枠体8に対し取り外し可能となる。
【0030】
図11では、上述したバルーン型の照明器具4と、電球71の光を反射板により前方を向けて投光する従来型投光機の照明器具70とを選択的に装備し得るようにした例を示す。すなわちこの投光機は、バルーン型照明器具4と従来型照明器具70において、前述したジョイント部材9、接続支柱10、給電ケーブル11、ケーブル12等を共通化すると共に、伸縮支柱2の上端にはそれら照明器具4,70の各々の接続支柱10が挿入される挿入部10aを設け、それぞれの照明器具4,70を伸縮支柱2の上端に各々着脱自在に装着し得るようにし、使用目的や使用場所に合わせて適宜な照明器具を選択し得るようになっている。
【0031】
図12?図15では、バルーン型照明器具4における電球7の数を変更可能にした例を示し、図12,13は前述の例で説明した一灯式の場合、図14,15は四灯式に変更した場合を表す。
すなわちこの例においては、枠体8の上部支持板20の下面側に設けたソケットカバー31内に、ソケット30を、中央の一箇所と、周囲の四箇所とに選択的に設置し得るようになっており、一灯式の場合は図13に示すように、ソケットカバー31内の中央一箇所にソケット30を設け、四灯式の場合は図15に示すように、ソケットカバー31内の周囲四箇所にソケット30を設けるようになっている。
【0032】
また図示は省略するが、上述した各例において、本願出願人による先願(特願2001-150911号)で開示されるような遮蔽幕、遮蔽布、遮蔽板、ルーバーやその他の遮光手段を、バルーン5の外側又は内側に装備して、バルーン5からの投光範囲を任意に選択して設定することができるようにすると好ましい。
【0033】
以上、本発明に係る投光機の実施形態の数例を図面を参照して説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではなく、各請求項に記載された技術的思想の範疇において各種変更が可能であることは言うまでもない。
【0034】
【発明の効果】
本発明に係る投光機は以上説明したように構成したので、以下の効果を奏する。
(請求項1)
膨らませた際に胴部において上下両端側に接続している皺以外には、皺が生じない構造のバルーンを採用したので、バルーン胴部の外周に「工事中」「注意」などの文字を印刷などにより表示することで、通行車両の運転手に注意を促すことが出来る等の効果がある。また、上記したバルーンを、円筒状の胴部形成用シート材と、上面側と下面側の円形シート材からなる三枚のシート材を相互に縫着して形成するものとしたので、バルーン製作の手間、コスト等を低減することができる。
【0036】
(請求項2)
バルーン上面側において係合手段を係脱操作すると共に、バルーン下面側においてファスナーを開閉操作することで、枠体に対するバルーンの着脱を容易に行い得る構成としたので、長期の使用等に伴いバルーンが劣化した場合の交換を簡単に行うことができる等の効果がある。
【0037】
(請求項3)
パイプ状支柱で支持される枠体構造としたので、金網状の枠体と比較した場合の強度が大幅に向上し、悪天下や長期の使用にも耐え得るなどの効果がある。
【0038】
(請求項4)
バルーン型照明器具と、従来型照明器具とを選択的に装備することが出来るので、使用目的や使用場所に応じた適宜な投光を得ることができる。
【0039】
(請求項5)
バルーンからの投光範囲を必要最小限に限定することが出来るので、例えば夜間道路工事の際の周辺住民や通行車両の運転手に対し充分考慮した投光に設定できる等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る投光機の実施形態の一例を示す斜視図。
【図2】バルーンの各シート材に基づく分解斜視図。
【図3】文字を表示した場合のバルーンの正面図。
【図4】バルーン内部に設置された枠体,電球等の拡大正面図。
【図5】枠体の分解斜視図。
【図6】枠体下部の斜視図。
【図7】バルーン上面側の中心部分の拡大斜視図。
【図8】バルーン下面側の中心部分の拡大斜視図。
【図9】バルーンの取り付け途中状態を示す斜視図。
【図10】バルーンの取り付け完了状態を示す斜視図。
【図11】バルーン型照明器具と従来型照明器具を交換自在にした例の模式図。
【図12】一灯式バルーンにおける枠体と電球の分解斜視図。
【図13】図12におけるソケットカバーの底面図。
【図14】四灯式バルーンにおける枠体と電球の分解斜視図。
【図15】図14におけるソケットカバーの底面図。
【符号の説明】
1:台車
2:伸縮支柱
3:発電機
4:バルーン型照明器具
5:バルーン
5a:バルーン胴部
5b:バルーン上面部
5c:バルーン下面部
5-1:胴部形成用シート材
5-2,5-3:円形シート材
6:送風装置(給気手段)
7:電球
8:枠体
13:表示
21:上端板
22:下端板
23:パイプ状支柱
40:保護枠
50:係合手段
60:ファスナー式連結手段
70:従来型の照明器具
【図面】















 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2010-05-24 
結審通知日 2010-05-26 
審決日 2010-06-15 
出願番号 特願2001-223967(P2001-223967)
審決分類 P 1 113・ 57- YA (F21S)
P 1 113・ 121- YA (F21S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀川 一郎  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 小関 峰夫
植前 津子
登録日 2007-01-12 
登録番号 特許第3902923号(P3902923)
発明の名称 投光機  
代理人 岡林 義弘  
代理人 赤尾 直人  
代理人 富田 哲雄  
代理人 磯野 道造  
代理人 岡林 義弘  
代理人 町田 能章  
代理人 富田 哲雄  
代理人 赤尾 直人  
代理人 町田 能章  
代理人 磯野 道造  

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