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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G01G
管理番号 1230328
審判番号 無効2010-800014  
総通号数 135 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-03-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-01-21 
確定日 2010-09-21 
事件の表示 上記当事者間の特許第2681104号発明「組合せ計量装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 本件特許に係る手続の経緯
本件特許第2681104号(以下、「本件特許」という。)は、昭和61年11月15日に特願昭61-272685号として特許出願したものであって、平成9年8月8日に特許権の設定の登録(発明の名称は「計量装置」、発明の数は1である。)がなされたものである。

その後、被請求人より、平成19年2月13日に、訂正審判(訂正2007-390016号)が請求され、同年3月8日付けで訂正を認める旨の審決がなされ、確定した。
その後、請求人より、平成19年7月13日に特許無効審判(無効2007-800133号)が請求され、本件特許を無効とする旨の平成20年6月18日付け審決がなされたところ、被請求人より、同年7月2日に上記審決に対する訴え(平成20年(行ケ)第10248号)が提起されるとともに、同年7月28日に訂正審判(訂正2008-390084号)が請求され、知的財産高等裁判所において、同年9月29日付けで特許法第181条第2項の規定に基づく審決取消の決定がなされ、その決定は確定した。
差し戻された審判の審理において、被請求人より、同年10月14日に訂正請求がなされ(以下、「先の訂正請求」という。また、先の訂正請求により上記訂正審判(訂正2008-390084号)の請求は、同法第134条の3第4項の規定により取り下げられたものとみなされた。)、同年12月15日付けで、訂正を認める、本件審判の請求は成り立たない旨の審決がなされ、請求人より平成21年1月19日に上記審決に対する訴えが提起されたところ、同年10月8日に知的財産高等裁判所において請求を棄却する旨の判決(平成21年(行ケ)10015号)が言い渡され、確定した。なお、先の訂正請求の確定により、本件特許に係る発明の名称は「組合せ計量装置」となった(発明の数は1である。)。
また、本件特許に関して、請求人より平成19年7月27日に特許無効審判(無効2007-800148号)が請求され、平成20年4月1日付けで本件審判の請求は成り立たない旨の審決がなされ、請求人より同年5月8日に上記審決に対する訴えが提起されたところ、同年10月27日に知的財産高等裁判所において請求を棄却する旨の判決(平成20年(行ケ)10170号)が言い渡され、確定している。
さらに、本件特許に関して、請求人より平成20年4月1日に特許無効審判(無効2008-800059号)が請求され、平成20年8月7日付けで請求は成り立たない旨の審決がなされ、請求人より同年9月18日に上記審決に対する訴えが提起されたところ、知的財産高等裁判所において請求を棄却する旨の判決(平成20年(行ケ)10339号)が言い渡され、確定している。

今般、請求人より、平成22年1月21日に本件特許無効審判(無効2010-800014号)が請求され、被請求人より本年4月27日付け答弁書の提出があり、本年7月16日に第1回口頭審理がなされ、当日付けで、請求人、被請求人双方より、それぞれ口頭審理陳述要領書(1)、口頭審理陳述要領書(2)の提出があった。

なお、本件特許に係る損害賠償請求事件(平成19年(ワ)2076号、原告は被請求人、被告は請求人である。)についての判決が、本年1月28日に大阪地方裁判所において言い渡され、請求人を控訴人、被請求人を被控訴人とする控訴事件(平成22年(ネ)10013号)が知的財産高等裁判所に係属している。

以下、確定した先の訂正請求により訂正された明細書及び願書に添付した図面を併せて、「本件特許明細書等」といい、訂正された明細書の特許請求の範囲に記載された発明を「本件特許発明」という。

第2 請求人の主張
請求人は、本件特許を無効とする旨を請求の趣旨とし、その理由として、下記甲第1号証から甲第65号証の証拠方法を提出するとともに、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものであると主張している。
そして、本件特許を無効とすべき無効理由の内容は、審判請求書、口頭審理陳述要領書(1)、同(2)、第1回口頭審理調書を総合すれば概略以下のとおりである。

1 特許無効理由
(1) 無効理由1
本件特許発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物であるGood Packaging Magazine誌(甲第3号証)に記載された発明及び周知技術AないしCに基づいて本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は同法第123条第1項第2号により無効とすべきものである。(以下、「無効理由1」という。)

ア 甲第3号証に記載の発明
そして、甲第3号証から次の発明が認定できる旨主張している。
「被計量物を貯蔵し排出するスケールホッパ及びホールディングビンと、
スケールホッパ及びホールディングビンの各排出口に設けられたドアと、
スケールホッパ及びホールディングビンに対して個別に設けられてスケールホッパ及びホールディングビンのドアを比較的単純なリンク機構を介して開閉駆動する電子制御式モータとを備えた組合せ計量装置であって、
ドアの速度及び開度により規定されるドアの開き方の特性(プロファイル)をメモリに任意に設定する設定手段と、
組合せ演算の結果選択されたホッパについて設定されたドアの開き方の特性に基づいて電子制御式モータを制御する制御手段とを設け、
入力手段としてリモート操作コンソールを備え、
被計量物の種類や重量に応じてドアの動作を任意に制御できるようにした
組合せ計量装置。」

イ 周知技術AないしC
また、周知技術AないしCについては、次のとおり主張している。
(ア) 周知技術A
従来のカム制御技術では従動体の動作モードの変更に対応できず自在性に欠けていたことを課題として、カムの回転パターンをプログラムする基礎データを記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された回転パターンに基づいて当接している従動体に所定の動作を与えるカム駆動モータの作動を制御するための制御装置とを設け、被駆動部材の動作モードに変更があってもプログラムの変更のみで対処し得るようにした被駆動部材の動作制御方法は、本件特許の出願当時、周知技術であった。
(イ) 周知技術B
被駆動部材の刻々の動作変化をステップモータの動特性データとしてテーブルあるいはメモリ等に任意に設定することによって該被駆動部材の動作を任意に制御できるようにしたステップモータ制御装置は、本件特許の出願当時、周知技術であった。
(ウ) 周知技術C
組合せ計量装置の技術分野において、その運転に先立って、計量ホッパ及び供給ホッパを含む指定されたホッパについてゲートの開放時間を任意に設定する技術的手法は、以下に示すように遅くとも本件特許の出願当時、周知技術であった。

(2) 無効理由2
本件特許発明は、甲第3号証に記載された発明及び本件特許の出願前に頒布された刊行物である特開昭61-35192号公報(甲第4号証)に記載された発明並びに周知技術B,Cに基づいて本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は同法第123条第1項第2号により無効とすべきものである。(以下、「無効理由2」という。)

ア 甲第3号証に記載された発明
甲第3号証に記載された発明については、上記「(1)ア」と同じである。

イ 甲第4号証に記載の発明
そして、甲第4号証に記載の発明は、次のとおりであると主張している。
「等速カム11の動作手順をプログラムするのに必要な従動体3の動作に関する基礎データをCPU16に入力するデータ入力手段17と、前記データ入力手段17により設定された動作手順に基づいて当接している従動体に所定の動作を与えるカム駆動モータとしてのパルスモータ13をプログラム制御するために、前記パルスモータ13の回転速度、回転角度、正転逆転の別、停止時間を決定する各データをモータコントローラ15に送出するCPU16と、該データに従って駆動パルスを発生するモータコントローラ15とを設け、従動体3の動作モードに変更があってもプログラムの変更のみで対処し得るようにしたモータ制御装置。」

ウ 周知技術B,C
周知技術B,Cについては、上記「(1)イ(イ)、(ウ)」と同じである。

2 証拠方法
(1) 審判請求書
無効理由1及び無効理由2について、請求人が審判請求書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。
・甲第1号証 :平成20年10月14日付け訂正請求書及び添付された全文訂正明細書
・甲第2号証 :特許第2681104号公報 (本件特許掲載公報、平成9年11月26日発行)
・甲第3号証 :Good Packaging Magazine誌、Vol.47、No.10、1986年10月発行、40-41頁
・甲第4号証 :特開昭61-35192号公報(発明の名称:カム動作制御装置、出願人:株式会社東芝、公開日:昭和61年2月19日)
・甲第5号証 :実願昭58-28565号(実開昭59-135639号公報)のマイクロフィルム (考案の名称:半導体チップの移送装置、出願人:新日本無線株式会社、公開日:昭和59年9月10日)
・甲第6号証 :特開昭59-21531号公報(発明の名称:塑性物質のたねを供給するためのフィーダ機構、出願人:エムハート・インダストリーズ・インコーポレーテッド、公開日:昭和59年2月3日)
・甲第7号証 :特開昭61-182888号公報(発明の名称:ダイボンダー、出願人:東京測範株式会社、公開日:昭和61年8月15日)
・甲第8号証 :特開昭58-195207号公報(発明の名称:間歇駆動装置、出願人:東洋食品機械株式会社、公開日:昭和58年11月14日)
・甲第9号証 :特開昭59-123494号公報(発明の名称:パルスモータ制御装置、出願人:株式会社東京計器、公開日:昭和59年7月17日)
・甲第10号証 :特開昭59-702号公報(発明の名称:加減速パルス発生装置、出願人:株式会社日立製作所、公開日:昭和59年1月5日)
・甲第11号証 :杉山坊著「マイコンとデジタルサーボ技術入門」近代図書株式会社、昭59年4月20日初版発行、18?21頁
・甲第12号証:海老原大樹・岩佐孝夫編著『ステッピングモータ活用技術』株式会社工業調査会、昭59年9月5日初版発行、4?7頁
・甲第13号証:『ランダムハウス英和大辞典第2版』小学館、1973年10月1日初版発行、2158頁、2159頁、2759頁
・甲第14号証: 『Webster's New World College Dictionary Third edition』A. Simon & Schuster Macmillan Company発行、1074頁、1363頁
・甲第15号証: 『大辞林第三版』三省堂、1988年11月3日発行、1717頁
・甲第16号証:P. P. Acarnley著『Stepping Motors: a guide to modern theory and practice -2nd edition』Peter Peregrinus Ltd.、1984年第2版発行、96?101頁
・甲第17号証:Takashi Kenjo著『Stepping motors and their microprocessor controls』CLARENDON Press、1984年発行、150?153頁
・甲第18号証:CCW-Z-216B-WP カタログ
・甲第19号証:CCW-Z-208P-WP カタログ
・甲第20号証:CCW-Z-210W カタログ
・甲第21号証:CCW-Z-214W 14-Head Modular Concept Weigherカタログ
・甲第22号証:CCW-Z-214W Modular Concept Gentle Slope Weigherカタログ
・甲第23号証:CCW-Z-214W-T カタログ
・甲第24号証:CCW-Z-214W-WP カタログ
・甲第25号証:CCW-Z-214W-S/60-WP カタログ
・甲第26号証:大阪地裁平成19年(ワ)第2076号原告準備書面(24)
・甲第27号証:『データウェイ取扱説明書 ADW-X23Rシリーズ』大和製衡(株)、1985年3月20日、表紙、目次頁、B-3-00頁、B-7-00頁、D-15-00頁、D-16-00頁、D-22-00頁、E-3-00頁
・甲第28号証:『ADW-221R型取扱説明書』昭和58年7月、表紙,目次頁,17,31,33頁
・甲第29号証:ADW-130RWの納品用承認図面
・甲第30号証:『ADW-130RW1型取扱説明書』、表紙,目次頁,6,10,25,28,29頁

(2) 口頭審理陳述要領書
無効理由1及び無効理由2について、口頭審理陳述要領書(1)、同(2)に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。
・甲第31号証:牧野洋著、『自動機械機構学』、日刊工業新聞社、昭和51年6月1日発行、154-161頁
・甲第32号証:富塚清編、『機械工学概論』改訂版、森北出版株式会社、昭和49年8月1日発行、56-59頁
・甲第33号証:社団法人日本機械学会編、『機械工学便覧改訂第6版分冊7』、社団法人日本機械学会、昭和50年12月20日発行、151-157頁
・甲第34号証:堀川明著、『機械工学入門』、株式会社朝倉書店、昭和50年9月5日発行、160-165頁
・甲第35号証:伊藤美光著、『新しい機械設計法』、日刊工業新聞社、平成3年9月20日発行、258-263頁、286-291頁
・甲第36号証:小川潔著、『リンク・カムの設計』、株式会社オーム社書店、昭和42年5月31日発行、207-215頁
・甲第37号証:林杵雄著、『機械要素(1)10版』、株式会社コロナ社、昭和42年4月20日発行、36-49頁
・甲第38号証:牧野洋・高野政晴著、『機械運動学』、株式会社コロナ社、昭和53年9月30日発行、100-113頁
・甲第39号証:実願昭57-67392号(実開昭58-169532号)のマイクロフィルム(考案の名称:組合せ計量装置、出願人:株式会社石田衡器製作所、公開日:昭和58年11月12日)なお、被請求人が答弁書に添付して提出した乙第9号証と同一証拠である。
・甲第40号証:実願昭58-58197号(実開昭59-163929号)のマイクロフィルム(考案の名称:自動計量装置におけるホッパ開閉装置、出願人:株式会社石田衡器製作所、公開日:昭和59年11月2日)
・甲第41号証:特開昭61-61014号公報(発明の名称:組合せ計量装置、出願人:X、公開日:昭和61年3月28日)
・甲第42号証:米国特許第4193465号明細書(発明の名称:SCALE HOPPER DOOR MECHANISM、権利者:The Woodman Company,Inc.,、公開日:1980年5月18日)
・甲第43号証:実願昭49-59738号(実開昭50-149059号)のマイクロフィルム(考案の名称:計量装置における自動排出装置、出願人:明治機械株式会社、公開日:昭和50年12月11日)
・甲第44号証:実願昭57-164887号(実開昭59-69197号)のマイクロフィルム(考案の名称:ホッパーの開閉機構、出願人:株式会社寺岡精工、公開日:昭和59年5月10日)なお、被請求人が答弁書に添付して提出した乙第12号証と同一証拠である。
・甲第45号証:特開昭56-129823号公報(発明の名称:定量秤のホッパー開閉装置、出願人:東京電気株式会社、公開日:昭和56年10月12日)
・甲第46号証:特開昭59-74092号公報(発明の名称:ゲート開閉装置、出願人:大和製衡株式会社、公開日:昭和59年4月26日)
・甲第47号証:特開昭55-31987号公報(発明の名称:穀粒の自動計量装置におけるシャッタの制御装置、出願人:X、公開日:昭和55年3月6日)
・甲第48号証:実願昭58-101360号(実開昭60-8843号)のマイクロフィルム(考案の名称:組合せ秤におけるホッパー構造、出願人:株式会社寺岡精工、公開日:昭和60年1月22日)なお、被請求人が答弁書に添付して提出した乙第10号証と同一証拠である。
・甲第49号証:実願昭56-132244号(実開昭58-37520号)のマイクロフィルム(考案の名称:組合せ計量機におけるホッパーの駆動装置、出願人:株式会社石田衡器製作所、公開日:昭和58年3月11日)なお、被請求人が答弁書に添付して提出した乙第8号証と同一証拠である。
・甲第50号証:杉山坊著、『マイコンとデジタルサーボ技術入門』、近代図書株式会社、昭和59年4月20日発行、9-15頁、28-29頁、84-85頁
・甲第51号証:P. P. Acarnley著、『Stepping Motors: a guide to modern theory and practice-2nd edition』、Peter Peregrinus Ltd.、1984年発行、98-101頁
・甲第52号証:Takashi Kenjo著、『Stepping motors and their microprocessor controls』、Clarendon Press、1984年発行、184-191頁
・甲第53号証:特開昭60-190197号公報(発明の名称:パルスモータ制御回路、出願人:日本電気株式会社、公開日:昭和60年9月27日)
・甲第54号証:特開昭61-69397号公報(発明の名称:パルスモータ速度制御方式、出願人:株式会社リコー、公開日:昭和61年4月9日)
・甲第55号証:特開昭59-122400号公報(発明の名称:ステッピング・モータ制御方式、出願人:富士通株式会社、公開日:昭和59年7月14日)
・甲第56号証:特開昭60-129809号公報(発明の名称:位置決め制御装置、出願人:日本電装株式会社、公開日:昭和60年7月11日)
・甲第57号証:特開昭59-144906号公報(発明の名称:デジタル弁制御装置のテーブル情報作成方法、出願人:株式会社東京計器、公開日:昭和59年8月20日)
・甲第58号証:特開昭60-48514号公報(発明の名称:ロボットの動作制御装置、出願人:株式会社日立製作所、公開日:昭和60年3月16日)
・甲第59号証:特開昭60-213298号公報(発明の名称:ドア移動制御方法及び装置、出願人:ウエスチングハウス・エレクトリック・コーポレーション、公開日:昭和60年10月25日)
・甲第60号証:『CCW-402RC-SP取扱い説明書』
・甲第61号証:『イシダ・コンピュータスケール総合カタログ』
・甲第62号証:大阪地裁平成22年1月28日判決(平成19年(ワ)第2076号)
・甲第63号証:「ISHIDA TRAINING SESSION FRIDAY 28 JANUARY 1994」と題する被請求人の社内教育資料(抜粋)
・甲第64号証:DATAWEIGH MODEL ADW-110 取扱説明書(抜粋)
・甲第65号証:「電子式高性能計量装置データウェイ」カタログ

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない旨の審決を求め、その請求には理由がないことについて、証拠方法として下記乙第1号証から乙第12号証を提出するとともに、答弁書、口頭審理陳述要領書(1)、同(2)及び第1回口頭審理調書によれば、概略以下のとおり反論している。

1 無効理由1について
甲第3号証に記載の発明は以下のとおりに認定すべきであり、してみると甲第3号証には、本件特許発明の技術的特徴が記載も示唆もされていない。
さらに、周知技術A、Bは、いずれも、組合せ計量装置の技術分野とは無関係の技術であるし、また、周知技術Cが周知であるとの主張は事実に反する主張である。
よって、当業者といえども甲第3号証に記載された発明及び周知技術AないしCに基づいて容易に発明をすることができたものではない。
(甲第3号証記載の発明)
「物品を貯蔵し排出するスケールホッパ及びホールディングビンと、
スケールホッパ及びホールディングビンの各排出口に設けられたドアと、
速度とドアの開時間を正確に制御する個別に設けられた電子制御式モータと、
各ドアを開閉する機構がカムである組合せ計量装置であって、
最大99個の物品について、事前にプログラムすることができ、メモリからそれらを呼び出すことができるコンソールを備え、
パフォーマンスを最大化するよう、個々の物品とその重量に応じて、ドアの開時間を設定する。このドアの開時間とモータ速度(規定値)に応じて、ドアの開閉のプロファイルが決まる。」

2 無効理由2について
甲第3号証記載の発明は前記したとおりであり、また、甲第4号証に記載の発明及び周知技術Bは、いずれも、組合せ計量装置の技術分野とは無関係の技術であり、しかも、周知技術Cが周知であったとの主張は、事実に反する。
よって、当業者といえども甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された発明並びに周知技術B,Cに基づいて容易に発明をすることができたものではない。

3 証拠方法
被請求人が答弁書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。
・乙第1号証: 無効2007-800133号特許審決公報(平成22年2月26日発行)
・乙第2号証: 知財高裁平成21年10月8日判決(平成21年(行ケ)第10015号)
・乙第3号証: 乙第2号証判決の確定証明
・乙第4号証: 知財高裁平成21年3月24日判決(20年(行ケ)第10339号)
・乙第5号証: 乙第4号証判決の確定証明
・乙第6号証: ランダムハウス英和大辞典第1版(1973年第1版)
・乙第7号証: Woodman社「Commander2」取扱マニュアル
・乙第8号証: 実願昭56-132244号(実開昭58-37520号)のマイクロフィルム(考案の名称:組合せ計量機におけるホッパーの駆動装置、出願人:株式会社石田衡器製作所、公開日:昭和58年3月11日)なお、甲第49号証と同一証拠である。
・乙第9号証: 実願昭57-67392号(実開昭58-169532号)のマイクロフィルム(考案の名称:組合せ計量装置、出願人:株式会社石田衡器製作所、公開日:昭和58年11月12日)なお、甲第39号証と同一証拠である。
・乙第10号証:実願昭58-101360号(実開昭60-8843号)マイクロフィルム(考案の名称:組合せ秤におけるホッパー構造、出願人:株式会社寺岡精工、公開日:昭和60年1月22日)なお、甲第48号証と同一証拠である。
・乙第11号証:特開昭60-22626号公報(発明の名称:組合せ計量装置、出願人:X、公開日:昭和60年2月5日)
・乙第12号証:実願昭57-164887号(実開昭59-69197号)のマイクロフィルム(考案の名称:ホッパーの開閉機構、出願人:株式会社寺岡精工、公開日:昭和59年5月10日)なお、甲第44号証と同一証拠である。

第4 当審の判断
1 本件特許発明
本件特許発明は、確定した先の訂正請求に係る訂正請求書に添付された明細書の特許請求の範囲に記載された下記のとおりのものである。 なお、便宜のために主な段落毎に改行してある。
「被計量物品を貯蔵し排出する複数種類のホッパと、各ホッパの排出口にそれぞれ設けられたゲートと、各ゲートをリンク機構を介して開閉駆動するモータとを備えた組合せ計量装置であって、
前記モータは、ホッパ毎に設けられたステップモータであり、前記ステップモータによりゲートを開閉駆動する、指定されたホッパについて、当該ホッパの前記ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記ステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段と、
組合せ演算の結果選択されたホッパについて設定されたゲートの動作変化に基づいて前記ステップモータを制御する制御手段とを設け、
前記入力手段はコントロールパネルに含まれており、
被計量物の種類や供給量に応じて、前記指定されたホッパについての前記ゲートの動作を任意に制御できるようにしたことを特徴とする組合せ計量装置。」
(無効2007-800133特許審決公報の訂正(管理番号:第1216533号、平成22年6月25日発行、以下「本件特許審決公報」という。)の26頁に記載の特許請求の範囲の記載を参照のこと。以下、「本件特許発明」という。)

2 本件特許発明の意義
本件特許発明の意義を明らかにするために、本件特許明細書等の記載を参酌する。
(1) 本件特許明細書等の記載
ア 発明の詳細な説明
本件特許明細書等には、「特許請求の範囲」として、上記「1」の記載があるほか、「発明の詳細な説明」には、次の記載がある。

(ア) 産業上の利用分野
「本発明は、ホッパゲートの開閉をモータにより自由に制御できるようにした計量装置に関する。」(本件特許審決公報26頁15行)
(イ) 従来の技術
「計量装置には種々のホッパが用いられているが、第9図には組合せ計量装置Aの概略構成が示されている。図において、被計量物品は、分散テーブルa、供給トラフb、プールホッパdを介して計量ホッパeに供給され、ロードセル等の重量検出器により重量が計量される。ハウジングcは、分散テーブルa、供給トラフbを支持している。
計量ホッパで計量された被計量物品は、外側シュートf、または内側シュートgよりタイミングホッパh、jに供給され、下側シュートiまたはkより排出される。
このような計量装置のホッパゲートを開閉するアクチュエータとしては、特開昭59-74092号公報に開示されたエアシリンダによるものや、実開昭58-37520号公報、実開昭58-169532号公報等に開示されたモータによるもの等が知られている。」(本件特許審決公報26頁17行?25行)
(ウ) 発明が解決しようとする問題点
「ところが、これら従来のアクチュエータは、ゲートの開閉を自由に、かつ細かに制御することができないので、種々の問題が生じていた。即ち、
(1)ホッパに供給される毎回の供給量が第10図のように僅かな場合は、ゲートを半開にするだけで直ちに排出されるにもかかわらず、従来のアクチュエータでは、ゲートを必ず全開にしなければならなかったので、ゲートの開閉周期の短縮による計量速度の向上は望めなかった。
(2)ゲートの開閉リンクの摩耗等によってクリアランスが拡大するとゲート開閉時の騒音が大きくなるが、従来のアクチュエータでは、このクリアランスを補正するような動作特性の変更、例えばゲートが閉じる直前のスピードをより遅くするような変更ができなかった。
(3)エアシリンダを使用するものでは、各ホッパのゲート開閉スピードを個別に変えることは容易であるが、逆に全てのスピードを同じに調節することは難かしいので、計量スピードは、ゲート開閉のスピードが最も遅いものに合さなければならないという難点があった。又、エアシリンダを使用するものでは、特性の経時変化が大きいので、メンテナンスを欠かすことはできず、整備のための時間とコストが多くかかるという問題があった。
そこで、本発明はこのような従来技術の問題点の解消を目的とした計量装置を提供するものである。」(本件特許審決公報26頁27行?40行)
(エ) 問題点を解決するための手段
「本発明の計量装置は、被計量物品を貯蔵し排出する複数種類のホッパと、各ホッパの排出口にそれぞれ設けられたゲートと、各ゲートをリンク機構を介して開閉駆動するモータとを備えた組合せ計量装置であって、前記モータは、ホッパ毎に設けられたステップモータであり、前記ステップモータによりゲートを開閉駆動する、指定されたホッパについて、当該ホッパの前記ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記モータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段と、組合せ演算の結果選択されたホッパについて、設定されたゲートの動作変化に基づいて前記ステップモータを制御する制御手段とを設け、前記入力手段はコントロールパネルに含まれており、被計量物の種類や供給量に応じて、前記指定されたホッパについての前記ゲートの動作を任意に制御できるようにしたことを特徴とするものである。」(本件特許審決公報26頁42行?49行)
(オ) 作用
「本発明の計量装置は、ホッパゲートを開閉駆動するモータの動特性データを、被計量物品の種類や供給量に応じて予めテーブルに、パルス周期、パルス数、回転方向等に関して設定しておき、該テーブルの情報に応じてホッパゲートを開閉制御するので、ゲート開度を被計量物の供給量に応じて任意に調整でき、計量スピードも任意に変えることができる。また、前記モータの動特性データを外部記憶装置に複数記憶し、必要に応じて切り替えられるので、複数の被計量物のデータを記憶しておき被計量物が変わったときに迅速にデータの変更ができる。」(本件特許審決公報26頁末行?27頁4行)
(カ) 実施例
a 「以下、図により本発明の実施例について説明する。第1図は、本発明の概略構成を示すブロック図である。
図において、1はコンピュータでタイマ2と接続され、また、入力装置や表示装置を含むコントロールパネル3と通信ラインで接続される。コンピュータの出力指令は、ドライバ4を介してステップモータ5に送出され、ステップモータは図示しないリンク機構を介してホッパのゲートと連結されてホッパ6のゲートを開閉制御する。コンピュータとコントロールパネルを接続する通信ラインには、他のメモリから後述するテーブルデータをロードする。」(本件特許審決公報27頁6?11行)
b 「第2図は、ステップモータの動作サイクル図であり、例えば、ステップモータを100パルスドライブするとホッパゲートが半開となり、200パルスドライブしたときにホッパゲートが全開となるように設定されているとする。
このようなステップモータを例えば、第2図のように、
t1 期間は等速
t2 期間は漸次減速
t3 期間は停止
t4 期間は逆方向に漸次増速
t5 期間は逆方向に等速
t6 期間は逆方向に漸次減速
となるように動作させる場合、第2図に対応させた第3図から第1表のテーブルを作ることができる。但し、このテーブルは、ホッパゲートの半開を基準に作成している。(本件特許審決公報27頁12行?末行)

c 「ここで、第1表のようなテーブルを基に、各パラメータ(Ti、Pi、Fi)の定数を、入力装置を用いて、予めコンピュータに登録しておき、ホッパゲートの開度設定に際しては、例えば、第4図(a)に示すようなメッセージを表示装置に表示させて、開度、周期を指定する。そして、例えば開度が100%、周期も100%に指定された時は、パルス周期(Ti)の各定数をそれぞれ1/2に、パルス数(Pi)の各定数をそれぞれ2倍にした新たなテーブルをコンピュータ内部で作成して記憶する。これにより、変更後のテーブル情報は、第2図の点線で示す全開の動作曲線に対応したものとなる。同様に、開度が75%であれば、Tiの各定数は3/4に、Piの各定数は4/3倍にそれぞれ変更され、又、周期が200%に指定された時は、パルス周期(Ti)の各定数はそれぞれ2倍に変更される。
但し、以上の例は、半開の場合を基準にしたものであって、全開のテーブル情報を予めコンピュータに登録した場合は、開度指定に伴う各パラメータ(Ti,Pi)の倍率は異なって来る。即ち、開度100%と指定された時は、各パラメータの定数はそのままで良いが、開度が50%に指定された時は、パルス周期(Ti)の各定数は2倍に、パルス数(Pi)の各定数は、それぞれ1/2に変更される。
こうして、ステップすなわち、ゲートの開閉スピード、加速度、開度を計量物品の種類や貯蔵量に応じたそれぞれのモータの動作特性値が作成され記憶されると、コンピュータは、この情報に基づいてステップモータを駆動する。」(本件特許審決公報28頁下から10行?29頁5行)
d 「以上の説明のように、本発明によれば、
(1)ステップモータは、ドライバ用のテーブルを作ることによって任意に制御できるので、ホッパゲートをできるだけ速く開放させて、排出スピードを速めたり、或は、ゲートの急激な開閉運動による衝撃音を和らげるために、運動の始めと終わりを指数関数的に立ち上げ、或は収束させるようにして、騒音を押えることができる。
(2)又、粘着性のある被計量物を計量する場合は、ホッパ内面やゲートへの被計量物の付着が問題となるがこのような場合は第7図のようにゲートが開ききった時に、ステップモータを微小期間、微小ステップ幅だけ正転、逆転させてゲートに微振動を与え、これによって、被計量物の付着を防止することもできる。
(3)ホッパゲートの開度指定やスピード変更は、全てのホッパを対象にして一括して設定することもできれば、個々のホッパ毎に個別に指定することもできる。
例えば、第4図(b)に示すようなメッセージを表示させて、ホッパ毎に個別に指定しても良い。このように個別に指定できるようにすると、例えば、特開昭58-223718号公報に開示されているような、所謂親子計量において有効となる。即ち、親機と子機とでは、それぞれ動作スピードが異なるし、又、ホッパへの供給量も異なるので、それぞれに適したスピードとゲート開度を指定することによって最適制御を行わせることができる。」(本件特許審決公報29頁19行?33行)
e 「ところで、計量ホッパは、計量中においてはアクチュエータに連結されたレバーと分離されていなければならないので、ゲートが閉じた状態では、レバーとゲート開閉リンクのローラとの間には第9図Bの部分を示した第8図のように所定のクリアランスが設けてある。
このためゲートを開放させる指令を受けてもレバーがローラに当接してゲートが開き始めるまでには、若干の遅れ(50msec程度)が発生する。これが計量スピードを遅らせる1つの原因となっていたが、この発明では、この応答遅れをなくすことができる。
次に、このような本発明の制御について、第6図のフローチャートにより説明する。
計量中は他の処理例えば、入出力装置からの信号をチェックし、その信号に基づいた処理を行ない(ステップP2)、レバーをローラから退避させて、ローラとの間に所定のクリアランスを設けておくが、計量が終ると、直ちにステップモータを微小ステップ数だけドライブして、レバーをローラに軽く接触させておく(ステップP1、P3)。この場合、ゲートの開閉リンクには若干の遊びがあるので、ゲートは閉じたままである。そして、組合せ演算の結果、選択されて排出指令を受けると、ステップモータを直ちにドライブして、レバーにより、応答遅れなくローラをプッシュしてゲートを開放させる(ステップP4~P6)。そして、ゲートの閉鎖サイクルでは、レバーとローラとの間に所定のクリアランスが生じる初期位置まで、ステップモータの逆回転でレバーを引き戻す(ステップP7)。また、組合せ選択されなかった計量ホッパに対しても、次の計量に備えて、レバーを初期位置まで引き戻しておく。
こうした制御は、ステップモータをどのようにドライブするかの動作曲線を前述のように描き、これに基づいてデータを設定してテーブルを登録しておくことにより、容易に実現できる。」(本件特許審決公報29頁34行?末行)
(キ) 発明の効果
「以上説明したように、本発明によれば次のような効果が得られる。
(1)ホッパの供給量に応じてゲート開度を任意に調整することができるので、供給量に応じて計量スピードを変えることができる。
(2)ゲート開閉の動作特性を入力装置で簡単に変えることができるので、設計の自由度が増し、あらゆる被計量物の性状に応じたゲート開閉制御を行なうことができる。特に粘着性のある被計量物に対しては、ゲートを開放した姿勢でゲートに微振動を与えることができるので、付着による計量誤差をなくすことができる。
(3)各ホッパ毎に任意に開閉スピードを変えることができるので、親子計量のような特殊な計量方式のものにも使用でき、又、各ホッパの開閉スピードを異ならせることにより特開昭58-41324号公報のような時間差排出を行なわせることもできる。さらには、上部分散供給部をパーティションで複数に分割して、各々に種類の異なる被計量物を供給して所謂ミックス計量(特開昭58-19516号公報)する場合にも有効となる。
(4)ゲートをどのように開閉させるかは、データとして登録しておくことができるので、実開昭59-27425号公報に示すように、被計量物の性状に応じた最適なゲート開閉データを被計量物毎にメモリに登録しておき、被計量物を指定すれば、登録された所定のデータが呼び出されて最適なゲート開閉を行なわせることができる。又、目標重量値の大小に応じても同様にできる。
(5)ゲート開閉リンクの摩耗によってゲート開閉時の騒音が大きくなっても、ゲート開閉特性をデータの変更によって調整することにより簡単に騒音を押えることができる。」(本件特許審決公報30頁4行?19行)

イ 図面
本件特許明細書等の図面として、図面の簡単な説明とともに、以下の記載がある。
(ア) 第1図は本発明の概略構成を示すブロック図

(イ) 第2図はホッパゲートの動作特性図

(ウ) 第4図(a)、(b)は説明図

(エ) 第8図は説明模式図


(2) 本件特許発明の意義
以上の本件特許明細書等の記載によれば、本件特許発明の意義は、ホッパゲートの開閉をモータにより自由に制御できるようにした計量装置に関し((1)ア(ア))、従来のホッパゲートを開閉するアクチュエータ(駆動源)としては、エアシリンダによるものや、モータによるもの等が知られていたところ((1)ア(イ))、これらの従来技術では、ゲートの開閉を自由に、かつ細かに制御することができないことから、ゲートの開閉周期の短縮による計量速度の向上が望めず、ゲート開閉時の騒音が大きくならないよう、例えばゲートが閉じる直前のスピードをより遅くするような変更ができず、さらに、エアシリンダを使用するものでは、計量スピードは、ゲート開閉のスピードが最も遅いものに合さなければならないという難点があったため((1)ア(ウ))、これらの問題を解決すべく、本件特許発明では、ステップモータをホッパ毎に設け、指定されたホッパについて、ホッパのゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化をモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定するようにした点に特徴があり((1)ア(エ))、この特徴点によれば、ゲート開度を被計量物の供給量に応じて任意に調整でき、計量スピードも任意に変えることができるよう作用するため((1)ア(オ))、供給量に応じて計量スピードを変えることができる、ゲート開閉の動作特性を入力装置で簡単に変えることができる、各ホッパ毎に任意に開閉スピードを変えることができる、ゲートをどのように開閉させるかを、データとして登録しておくことができる、ゲート開閉リンクの摩耗によってゲート開閉時の騒音が大きくなっても、ゲート開閉特性をデータの変更によって調整することにより簡単に騒音を押えることができる、との作用効果を奏する((1)ア(キ))という点にあると認められる。

3 甲号各証から把握される技術事項等
請求人が提出した甲号各証から把握される技術事項等は、それぞれ以下のとおりである。

(1) 引用発明1(主引用例)
甲第3号証は、「Good Packaging Magazine」と題する雑誌であって、無効理由1及び無効理由2で引用された主引用例である。
甲第3号証には、その1頁の右上ヘッダー及び左下フッターに「OCTOBER 1986」と記載されており、さらに、同頁の右上に「Volume 47 Number 10」との記載もある。また、同頁右下欄に「Good Packaging Magazine(ISSN-0017-2162) is lithographed by Erich Printing and Lithographing,1315 East Julian Street, San Jose California 95116. 」(当審訳:グッド パッケイジング マガジンは、カルフォルニア、サンノゼのイースト ジュリアン通り1315にあるエリッチ印刷により印刷された。)との記載もある。
よって、甲第3号証は、遅くとも本件特許の出願前である昭和61年10月末日までには、米国において頒布された月刊誌であると認められる。
そして、その記載の概要は、米国クリッククロック・コーポレーションのウッドマンシステム部門が、11月に開催されるPMM2パック・エクスポに出品する予定の組合せ計量装置「コマンダー2」についての紹介記事である。技術内容の詳細については、後述する。

(2) 引用発明2(副引用例)
ア 甲号証の記載事項
甲第4号証は、本件特許の出願前に頒布された公開特許公報(発明の名称:カム動作制御装置、出願人:株式会社東芝、公開日:昭和61年2月19日)であって、無効理由2で引用された副引用例であるところ、以下の記載がある。
(ア) 「当接している従動体に所定の動作を与えるカムと、該カムに機械的に接続されたカム駆動モーターと、該モーターを所要の速度で所要の角度だけ正転若しくは逆転させ、または所要時間だけ停止させるモーター制御手段と、プログラムされた前記カムの動作手順に従い前記モーターの回転速度、回転角度、正転逆転の別、停止時間を決定する各データを該モーター制御手段に送出して前記モーターをプログラム制御するCPUと、前記カムの動作手順をプログラムするために必要な前記従動体の動作に関する基礎データを該CPUに入力するデータ入力手段とを具備したことを特徴とするカム動作制御装置。」(特許請求の範囲)
(イ) 「[発明の技術的背景]
従来から第6図に示したような所定形状のカム1をこれに機械的に接続されたカム駆動モーター2を等角速度で回転させることによって該カム1に当接する従動体3に所定の動作を付与するカム制御技術が知られている。この種カム制御技術は、例えば第7図に示した如き複雑な形状のカム1をカム軸5を中心にして回転させることによって第8図のカムダイヤグラムで示したような動作を従動体3(第6図)に付与しようとするものである。」(1頁右下欄5?14行)
(ウ) 「[従来技術の問題点]
しかしながら従来から行なわれているカム制御技術では、従動体の動作モードが変るとそれに見合った形状のカムを新たに設計製造せねばならず、例え従動体の動作モードの変更が軽微なものであっても新規にカムを設計製造し直さねばならず、設計製造に要する工数が大きくなる等の問題点を有している。」(1頁右下欄15行?2頁左上欄2行)
(エ) 「[発明の目的]
本発明は叙上の問題点に鑑みなされたもので、例え従動体の動作モードに変更があってもカムを新たに設計製造し直すことなくカム駆動モーターを制御するプログラムの変更のみでこの事態に対処し得るカム動作制御装置を提供することを目的とする。」(2頁左上欄3?9行)
(オ) 「[発明の詳細な説明の実施例]
本発明の好ましい実施例を第1図を参照して詳述する。本発明のカム動作制御装置10は、カムとしての等速カム11と減速機12とカム駆動モーターとしてのパルスモーター13とモータードライバー14とモーター制御手段としてのモーターコントローラー15とCPU16とデータ入力手段17と原点センサー18とで構成されている。まず第2図に示した様なカムダイヤグラムを呈する第3図に示した等速カム11は、当接している従動体としてのカム接触ロッド(第6図)3に所定の動作を与えるものである。また減速機12は、例えば減速比1/1.8で機械的に等速カム11に接続されている。そしてパルスモーター13は、減速機12を介して等速カム11に機械的に接続されていて例えば1.8°/PULSEの出力特性を有している。このパルスモーター13に電気的に接続されたモータードライバー14は、該モーター13を直接に駆動するものである。またCPU16と電気的に接続されたモーターコントローラ15は、CPU16より送出されてきたデータを取り込んでそのデータに従ってパルスを発生しモータードライバー14に送り込むものであり、パルスモーター13を所要の速度で所要の角度だけ正転若しくは逆転させ、または所要時間だけ停止させんとするものである。さてCPU16は、カム接触ロッド(第6図)3の動作モードに即してプログラムされた等速カム11の動作手順に従いパルスモーター13の回転速度、回転角度、正転逆転の別、停止時間を決定する各データをモーターコントローラ15に送出してパルスモーター13をプログラム制御するものである。更にデータ入力手段17は、等速カムの動作手順をプログラムするために必要なカム接触ロッド(第6図)3の動作に関する基礎データをCPU16に入力するものである。また原点センサー18は、等速カム11の原点をセンシングするセンサーであり、このセンスされた信号をCPU16に送出するものである。次に以上のように構成されたカム動作制御装置の動作を説明する。この本発明のカム動作制御装置で用いられる等速カムは第3図で示されるような外形を有しており、このカムダイヤグラムは第2図に示す如くカム回転角度に対するカムリフトの変化量が比例したものとなっている。まず一例として第4a図に示したようなカムダイヤグラム仕様で1サイクル時間が1080msecで完結するカムの動作手順は、第5図(a)(b)(c)に示すフローチャートで説明される。このカムの動作手順を第4b図を参照して略説すると以下の様になる。この場合において外部よりCPU(第1図)16にスタート信号が入力されるタイミングを0msecとすると、
0 ?90msecモータ停止 (カム接触ロッド接触ポイントa)
90?180msecモータ正転 ( ” ” a←→b)
180?360msecモータ停止 (カム接触ロッド接触ポイントb)
360?540msecモータ正転 ( ” ” b←→c)
540?810msecモータ停止 ( ” ” c)
810?990msecモータ逆転 ( ” ” c←→a)
990?1080msecモータ停止 ( ” ” a)
というようにパルスモータ(第1図)13をプログラム制御することにより、従来から用いられている第7図に示したカム1が一回転したと同様の動作をカム接触ロッド(第6図)3に付与したことになる。また第4a図に示すように各カムリフト間のつなぎは、パルスモーター(第1図)13の発振周波数を増減可能な状態にプログラム制御することにより速度を可変させて対応することができる。このようにすることによって自在性が要求される精密機械への応用が期待される。」(2頁右上欄5行?3頁左上欄20行)
(カ) 第3図(カムの動作制御装置で用いられる等速カムの平面図)

(キ) 第6図(カム接触ロッド、カム、カム駆動モータの配置図)

イ 引用発明2
上記記載事項(ア)ないし(キ)より、甲第4号証には、請求人の主張のとおりの、次の発明が記載されていると認められる。
「等速カム11の動作手順をプログラムするのに必要な従動体3の動作に関する基礎データをCPU16に入力するデータ入力手段17と、前記データ入力手段17により設定された動作手順に基づいて当接している従動体3に所定の動作を与えるカム駆動モータとしてのパルスモータ13をプログラム制御するために、前記パルスモータ13の回転速度、回転角度、正転逆転の別、停止時間を決定する各データをモータコントローラ15に送出するCPU16と、該データに従って駆動パルスを発生するモータコントローラ15とを設け、従動体3の動作モードに変更があってもプログラムの変更のみで対処し得るようにしたモータ制御装置。」(以下、「引用発明2」という。また、「甲第4号証に係る技術事項」ということもある。)

(3) ステップモータ
ア 甲号各証の記載事項
甲第11号証は、本件特許の出願前に頒布されたマイコンとデジタルサーボ技術に関する図書であって、以下の記載がある。
(ア) 「1.3 サーボ機構」として、「オープンループ方式」、「セミクローズド方式」、「クローズド方式」の3種類の方式が挙げられている。(18?20頁)
(イ) 「メカトロニクスに活用されるマイコンとデジタルサーボの問題点」という章において、「制御部からの指令に従ってメカ部を動かすには駆動源が必要である。この章では駆動源として代表的な、パルスモータとDCサーボモータをとりあげ、・・・」(21頁)
また、甲第12号証は、本件特許の出願前に頒布されたステッピングモータ活用技術に関する図書であって、以下の記載がある。なお、原文は、丸数字であるが、括弧数字で代用してある。
(ウ) 「1.3 ステッピングモータの特徴と用途 ステッピングモータは従来形モータにない特徴を数多く有している。これらの特徴を以下に述べる。(1)ディジタル信号で直接オープンループ制御ができ,システム全体が簡単である。(2)パルス信号の周波数に比例した回転速度が得られるため,速度制御が広範囲にできる。(3)起動,停止,正逆転,変速が容易であり,応答性も良い。(4)モータの回転角度と入力パルス数が,完全に比例する。」(4頁)

イ 周知技術
以上の記載事項(ア)ないし(ウ)によれば、本件特許の出願当時、
(ア) パルスモータ(ステップモータと同義である。)は電子制御式モータの代表例であること、
(イ) ステップモータが、被駆動部材の位置と速度とを同時に制御するための電子制御式モータとして、動作の設定および制御の両面において、従来のモータに比較して有利であること、がいずれも周知であったことが認められる。

(4) profile(プロファイル)
ア 辞典
(ア) 甲第13号証は、英和辞典であり、profile(プロファイル)の意味として、「3.(物の)外形、外郭、輪郭;波の形」や、「5.(変化・推移・活動などを示した)概要;輪郭、水準;分析表、図表、一覧表」、「7.(人・物の)特徴、特性のまとめ」が記載されている。
(イ) また、甲第14号証は、英英辞典であり、profile(プロファイル)の意味として、「2. a view of anything in contour; outline」(請求人訳:物を曲線あるいは輪郭で表した姿)や「4. a graph, diagram, piece of writing, etc. presenting or summarizing data relevant to a particular person or thing」(請求人訳:特定の人や物に関連するデータあるいはその概要を示す図表や文章)が記載されている。

イ 用語の使用例
甲第16号証は、本件特許の出願前に頒布されたステッピングモータに関する図書であって、以下の記載が認められる。以下、本審決書において、原文(英語)の次にある括弧内に記載された訳文は、全て当審による訳文である。
(ア) Fig.6.6の説明として、
「Acceleration to the pull-out and deceleration to the target position
a velocity profile
b corresponding position/time response」(96頁)
(プルアウトまでの加速と目標位置までの減速
a 速度のプロファイル
b 対応する位置/時間応答)
との記載があり、同図のグラフaは、その縦軸がvelocity(速度)、横軸がtime(時間)である。
(イ) Fig.6.9の説明として、「Velocity profile for acceleration from rest」(100頁)(停止状態からの加速に対する速度プロファイル)
との記載があり、同図のグラフは、その縦軸が stepping rates(ステッピングレート)、横軸が time(時間)である。
また、甲第17号証は、本件特許の出願前に頒布されたステッピングモータとそのマイコン制御に関する図書であって、以下の記載が認められる。
(ウ) Fig.5.46の説明として、「Pulse frequency profile in the RC ramping」(151頁)(RCランピングにおけるパルス周波数プロファイル)との記載があり、同図において、縦軸が Stepping rate(ステッピングレート)、横軸が Time(時間)である。
(エ) Fig.5.48の説明として、「Commanded speed vs. time profile relation」(153頁)(命令された速度対時間プロファイル関係)との記載があり、同図において、縦軸が Stepping rate(ステッピングレート)、横軸が Time(時間)である。
(オ) 以上の記載事項(ア)ないし(エ)を総合すれば、本件特許の出願当時、ステッピングモータを利用して制御対象物を制御する場合、速度やステッピングレートの時間変化グラフをprofile(プロファイル)と称していることが認められる。

ウ 被請求人による使用例
(ア) 甲第18号証は、被請求人の製品である計量装置「CCW-Z-216B-WP」に係る英文カタログであり、以下の記載が認められる。
a グラフの説明として、「Hopper gate motion profile」(ホッパゲート動作プロファイル)との記載があり、そのグラフの横軸が「Hopper gate open period」(ホッパゲート開時間)、縦軸が「Hopper gate open angle」(ホッパゲート開度)である。
b 「The CCW-Z-216B-WP weigher is protected by one or more of the following patents・・・Japan1556704」(The CCW-Z-216B-WP 計量装置は、次の1つ又は複数の特許で保護されている。・・・特許第1556704号)
ここで、特許第1556704号は、職権調査によれば、特許庁における登録日が平成2年4月23日である。よって、甲第18号証は、本件特許の出願前に頒布されたものではない。
(イ) 甲第19号証は、被請求人の製品である「CCW-Z-208P-WP」に係る英文カタログであり、グラフの説明に関し、甲第18号証と同内容(上記「(18)ア(ア)」)のことが記載されている。
また、本カタログには、「The CCW-Z-208B-WP weigher is protected by one or more of the following patents・・・Japan1377496」(The CCW-Z-208B-WP 計量装置は、次の1つ又は複数の特許で保護されている。・・・特許第1377496号)と記載されている。
ここで、特許第1377496号は、職権調査によれば、特許庁における登録日が昭和62年5月8日である。よって、甲第19号証も、本件特許の出願前に頒布されたものではない。
(ウ)甲第20号証は、被請求人の製品である「CCW-Z-210W」に係る英文カタログであり、グラフの説明に関し、甲第18号証と同内容(上記「(18)ア(ア)」)のことが記載されている。
また、本カタログには、「The CCW-Z-210W weigher is protected by one or more of the following patents・・・Japan1556684」(The CCW-Z-210W 計量装置は、次の1つ又は複数の特許で保護されている。・・・特許第1556684号)と記載されている。
ここで、特許第1556684号は、職権調査によれば、特許庁における登録日が平成2年4月23日である。よって、甲第20号証も、本件特許の出願前に頒布されたものではない。
(エ) 甲第21号証は、被請求人の製品である「CCW-Z-214W」に係る英文カタログであり、グラフの説明に関し、甲第18号証と同内容のことが記載されている。
また、本カタログには、「The CCW-Z-214W weigher is protected by one or more of the following patents・・・Japan1599273」(The CCW-Z-214 W計量装置は、次の1つ又は複数の特許で保護されている。・・・特許第1599273号)と記載されている。
ここで、特許第1599273号は、職権調査によれば、特許庁における登録日が平成3年1月31日である。よって、甲第21号証も、本件特許の出願前に頒布されたものではない。
(オ) 甲第22号証は、被請求人の製品である「CCW-Z-214W」に係る英文カタログであり、グラフの説明に関し、甲第18号証と同内容のことが記載されている。
また、本カタログには、「The CCW-Z-214W weigher is protected by one or more of the following patents・・・Japan1377496」(The CCW-Z-214W 計量装置は、次の1つ又は複数の特許で保護されている。・・・特許第1377496号)と記載されている。
ここで、特許第1377496号は、甲第19号証と同様に、特許庁における登録日が昭和62年5月8日であるから、甲第22号証も、本件特許の出願前に頒布されたものではない。
(カ) 甲第23号証は、被請求人の製品である「CCW-Z-214W-T」に係る英文カタログであり、グラフの説明に関し、甲第18号証と同内容のことが記載されている。
また、本カタログには、「The CCW-Z-214W-T weigher is protected by one or more of the following patents・・・Japan1556704」(The CCW-Z-214W-T 計量装置は、次の1つ又は複数の特許で保護されている。・・・特許第1556704号)と記載されている。
ここで、特許第1556704号は、甲第18号証と同様に、特許庁における登録日が平成2年4月23日であるから、甲第23号証も、本件特許の出願前に頒布されたものではない。
(キ)甲第24号証は、被請求人の製品である「CCW-Z-214W-WP」に係る英文カタログであり、グラフの説明に関し、甲第18号証と同内容のことが記載されている。
また、本カタログには、「The CCW-Z-214W-WP weigher is protected by one or more of the following patents・・・Japan1377496」(The CCW-Z-214W-WP 計量装置は、次の1つ又は複数の特許で保護されている。・・・特許第1377496号)と記載されている。
ここで、特許第1377496号は、甲第19号証と同様に、特許庁における登録日が昭和62年5月8日であるから、甲第24号証も、本件特許の出願前に頒布されたものではない。
(ク)甲第25号証は、被請求人の製品である「CCW-Z-214W-S/60-WP」に係る英文カタログであり、グラフの説明に関し、甲第18号証と同内容のことが記載されている。
また、本カタログには、「The CCW-Z-214W-S/60-WP weigher is protected by one or more of the following patents」(The CCW-Z-214W-S/60-WP 計量装置は、次の1つ又は複数の特許で保護されている)と記載されているとともに、Japan1556704と記載されている。
ここで、特許第1556704号は、職権調査によれば、特許庁における登録日が平成2年4月23日である。よって、甲第25号証も、本件特許の出願前に頒布されたものではない。
(ケ) 甲第63号証は、「ISHIDA TRAINING SESSION FRIDAY 28 JANUARY 1994」と題する被請求人の社内教育資料であり、ステッピングモータの駆動に関してプロファイルという用語が用いられていることが認められるところ、甲第63号証も、本件特許の出願前に頒布されたものではない。

(5) tailor(テイラー)
甲第13号証には、tailorの意味として、「2.<案・行動などを>特殊な好み[目的、要求など]に適応させる、合わせる」が記載されている。
また、甲第14号証には、「2. b) to cut, form, or alter so as to meet certain conditions」(ある条件を満たすように、切ったり、形作ったり、変更したりすること)が記載されている。
また、甲第15号証は、国語辞典であり、日本語においてテーラー(tailor)の意味として、「紳士服を注文で仕立てる洋服屋。」が記載されている。

(6) 周知技術A
ア 甲号各証に記載の技術事項
(ア) 甲第5号証は、本件特許の出願前に頒布された公開実用新案公報の全文(考案の名称:半導体チップの移送装置、出願人:新日本無線株式会社、公開日:昭和59年9月10日)であるところ、次の技術事項が記載されていると認められる。
「板カムを使用する方法では、その板カムの形状によって設定されたプログラムを変更することができないことを課題として、偏心カム5の回転パターンをプログラムする基礎データを記憶する記憶手段と、該記憶された回転パターンに基づいて当接している従動体に所定の動作を与えるカム駆動モータとしてのモータ1を駆動制御する制御装置2とを設け、被駆動部材であるコレット8の動作モードに変更があってもプログラムの変更のみで対処し得るようにした半導体チップの移送装置の制御方法。」(以下、「甲第5号証に係る技術事項」という。)

(イ) 甲第6号証は、本件特許の出願前に頒布された公開特許公報(発明の名称:塑性物質のたねを供給するためのフィーダ機構、出願人:エムハート・インダストリーズ・インコーポレーテッド、公開日:昭和59年2月3日)であるところ、次の技術が記載されていると認められる。
「異なる寸法や形状のたねを製造する時に、剪断刃の時間曲線上の位置を新しいカムを必要とせず且つ機械を停止しなくても変えることを課題として、カム34の回転パターンをプログラムする基礎データを記憶する記憶装置と、該記憶装置に記憶された回転パターンに基づいて当接している従動体に所定の動作を与えるカム駆動モータとしてのモータ52の作動を制御するための電気命令信号を発生するように構成された制御手段とを設け、被駆動部材である剪断刃10の動作モードに変更があってもプログラムの変更のみで対処し得るようにしたフィーダ機構の制御方法。」(以下、「甲第6号証に係る技術事項」という。)

(ウ) 甲第7号証は、本件特許の出願前に頒布された公開特許公報(発明の名称:ダイボンダー、出願人:東京測範株式会社、公開日:昭和61年8月15日)であって、次の技術が記載されていると認められる。
「従来の方法では加工速度を変更する場合は、1サイクルの時間を遅くするか、カムの割付角度を変更し、数種類のカムを製作し、実験の必要があり、カムの変更については製作期間、制作費、装置への組込み、確認実験の問題があったことを課題として、電気カム37,40の回転パターンをプログラムする基礎データを入力するキーボード47と、該入力された基礎データを記憶するバックアップメモリ44と、該記憶された回転パターンに基づいて当接している従動体に所定の動作を与えるカム駆動モータとしての前後用パルスモーター19及び上下用パルスモーター19aを駆動制御するCPU46とを設け、被駆動部材であるボンディングヘッド1の動作モードに変更があってもプログラムの変更のみで対処し得るようにしたダイボンダーの制御方法。」(以下、「甲第7号証に係る技術事項」という。)

イ 周知技術A
甲第5ないし7号証に係る技術事項及び前記甲第4号証に係る技術事項を総合すると、本件特許の出願当時、
「カム動作制御装置、半導体チップの移送装置、塑性物質のたねを供給するためのフィーダ機構、ダイボンダーの技術分野において、従来のカム制御技術では従動体の動作モードの変更に対応できず自在性に欠けていたことを課題として、カムの回転パターンをプログラムする基礎データを記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された回転パターンに基づいて当接している従動体に所定の動作を与えるカム駆動モータの作動を制御するための制御装置とを設け、被駆動部材の動作モードに変更があってもプログラムの変更のみで対処し得るようにした被駆動部材の動作制御方法。」は、請求人主張のとおり周知であった(以下、「周知技術A」という。)といえる。

(7) 周知技術B
ア 甲号各証の記載の技術事項
(ア) 甲第8号証は、本件特許の出願前に頒布された公開特許公報(発明の名称:間歇駆動装置、出願人:東洋食品機械株式会社、公開日:昭和58年11月14日)であるところ、次の技術が記載されていると認められる。
「負荷を駆動する一連の駆動パルス信号のデータを書き込んであるP-ROM(B)16と、前記一連の駆動パルス信号により所定のタイミングと速度でロータリモータ7の往復回転を制御するマイクロプロセッサ13とを設け、カム、リンク等の複雑な機構を用いることなく、前記P-ROM(B)16を交換することにより負荷を駆動するタイミング時間、速度、周期等の各種の変更に対して容易に適応できるようにした間歇駆動装置。」(以下、「甲第8号証に係る技術事項」という。)

(イ) 甲第9号証は、本件特許の出願前に頒布された公開特許公報(発明の名称:パルスモータ制御装置、出願人:株式会社東京計器、公開日:昭和59年7月17日)であるところ、次の技術が記載されていると認められる。
「時間軸をN分割した各区分毎にパルスモータ10を駆動するパルス数及びパルス間隔をメモリ3aのACテーブル及びメモリ4aのTSテーブルにそれぞれ記憶する移動量設定器1及びパターン設定器2と、前記ACテーブル及びTSテーブルに記憶された移動パターンに基づいて前記パルスモータ10を制御するパルス発生器とを備え、任意の移動量に向かって指定した速度変化をもってパルスモータを制御することができ、モータ負荷に要求されるあらゆる制御特性に適合した制御を実現できるようにしたモータ制御装置。」(以下、甲第9号証に係る技術事項)という。

(ウ) 甲第10号証は、本件特許の出願前に頒布された公開特許公報(発明の名称:加減速パルス発生装置、出願人:株式会社日立製作所、公開日:昭和59年1月5日)であるところ、次の技術が記載されていると認められる。
「所望の各種の速度曲線の加減速パターンをパターンメモリ1に書き込む書込回路2と、前記パターンメモリ1から読み出される速度曲線に対応する加減速パルスをパルスモータに出力するプロセッサ12とを設け、加減速曲線を各種に変化することが可能で、減速時間を短くしたいときは直線で減速させ、停止精度を重視するときは正弦曲線または指数曲線を用いて減速させることができるようにしたモータ制御装置。」(以下、「甲第10号証に係る技術事項」という。)

イ 周知技術B
甲第8ないし10号証に係る技術事項を総合すると、本件特許の出願当時、「被駆動部材の刻々の動作変化をステップモータの動特性データとしてテーブルあるいはメモリ等に任意に設定することによって該被駆動部材の動作を任意に制御できるようにしたステップモータ制御装置。」は、請求人主張のとおり周知であった(以下、「周知技術B」という。)といえる。
また、甲第50号証ないし甲第59号証からも、上記周知技術Bを認めることができる。

(8) 周知技術C
ア 甲号各証の記載事項
甲第27号証は、請求人の製品に係る組合せ秤である「データウェイ ADW-X23Rシリーズ」の取扱説明書であり、以下の記載がある。なお、原文は、丸数字であるが、括弧数字で代用してある。
(ア) 「[プログラムの設定-1]・・・計量しようとする各品物に対し、それぞれの要求(製品重量)に応じた定数の設定を運転に先立って、行なっておく必要があります。データウェイは、2種類の設定モードがあり、各々リモート操作ボックス上のキー操作にて入力できます。・・・、(4)設定重量・・・、(7)目標ホッパ重量・・・、(9)計量ホッパの“開”時間、(10)供給ホッパの“開”時間・・・」(D-16-00頁)
(イ) 「[プログラムの設定:手動プログラム-5]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
[計量ホッパの開く時間を設定して下さい。]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
[供給ホッパの閉じる時刻を設定して下さい。]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(D-22-00頁)
(ウ) 「[用語の定義-2]・・・(13)計量ホッパの“開”時間 計量ホッパのゲートが開き、品物を排出する時間を示します。この時間が過ぎると、ゲートは再び閉じ始めます。
(14)供給ホッパの“開”時間 供給ホッパのゲートが開き、品物を計量ホッパに供給する時間を示します。・・・」(E-3-00頁)

甲第28号証は、請求人の製品に係る組合せ秤である「データウエイ ADW 221R型」の取扱説明書であり、以下の記載がある。
(エ) 「7.設定および調整手順 7-1 プログラムのセットアップ
計量する各製品は、それぞれの設定定数をプログラムする必要があります。設定は遠隔制御パネルのキー操作で次の項目を順次入力します。・・・4)ターゲット重量(TARGET WEIGHT)、・・・6)計量ホッパのゲートの開いている時間、7)フィードホッパのゲートの開いている時間、8)計量ホッパの安定時間、9)フィーダ動作時間、・・・入力方法は、キースイッチに鍵を差し込み、ポジション1の方向へ廻します。」(31頁)
(オ) 「次にデータウエイの動作に重要な時間定数の設定を行います。・・・6)計量ホッパゲートが開き始めてから閉じるまでの時刻を設定します。・・・」(33頁)

甲第30号証は、請求人の製品に係る組合せ秤である「データウエイ ADW 130RW1型」の取扱説明書であり、以下の記載がある。
(カ) 「コントロールパネル」(6頁 組合せ秤の図面の右下部分)、
(キ) 「6.設定および調整手順・・・設定はリモート操作ボックスのキー操作で次の項目を順次入力します。1)プログラムNo.・・・6)計量ホッパのゲートの開いている時間、7)フィードホッパのゲートの開いている時間 ・・・」(25頁)
(ク) 「・・・6)計量ホッパゲートが開き始めてから閉じるまでの時刻を設定します。テンキーで設定値を入力して下さい。入力した値はプログラム表示器に表示されます。・・・7)供給ホッパゲートの閉じる時刻を設定します。この設定時刻は計量ホッパゲートが開き始めてから供給ホッパゲートが閉じるまでの時間であり、供給ホッパの開いている時間は (供給ホッパの閉じる時刻)-(計量ホッパの開いている時間)となります。テンキーで設定値を入力して下さい。入力した値はプログラム表示器に表示します。・・・」(28?29頁)

イ 周知技術C’
上記記載事項(ア)ないし(ク)によれば、本件特許の出願当時、「組合せ計量装置の技術分野において、その運転に先立って、計量ホッパや供給ホッパ等のホッパの種類毎にゲートの開放時間を任意に設定すること。」は周知であった(以下、「周知技術C’」という。)ということができる。
また、上記周知技術C’については、甲第60,61,64,65号証からもいえる。
ところで、上記甲号各証から把握される周知技術は、上記周知技術C’にとどまるのであって、請求人が主張する周知技術Cである「組合せ計量装置の技術分野において、その運転に先立って、計量ホッパ及び供給ホッパを含む指定されたホッパについてゲートの開放時間を任意に設定する技術的手法は周知であった。」とまでは認定できない。(下線は、当審で付した。)
すなわち、甲第27号証、甲第28号証及び甲第30号証の記載によれば、ゲートの開放時間に関して設定できるのは、
α 「計量ホッパの開時間」、「供給ホッパの開時間」、
β 「計量ホッパのゲートの開いている時間」、「フィードホッパのゲートの開いている時間」、
γ 「計量ホッパのゲートの開いている時間」、「供給ホッパのゲートの開いている時間」、
とされている。
したがって、例えば計量ホッパについてみると、多数の計量ホッパ全体のゲートの開放時間を、一律に、任意に、設定することは読み取れるものの、多数の計量ホッパのうち、特定の指定されたホッパについてそのゲートの開放時間を任意に設定すること、すなわち、個々の計量ホッパ毎にそのゲートの開放時間を任意に設定することまでは読み取れない。このことは、供給ホッパについてもいえる。
また、以上のことは、甲第60,61,64,65号証についても、同様である。

(9) カム
甲第31号証ないし甲第38号証は、いずれも、機械設計、機械工学に関する基本書であり、これら甲号各証によれば、カムの輪郭形状を適宜設定ないし設計することにより、被駆動部材(従動体)に対し所望の動作変化を与えるようにすることは、本件特許の出願当時に周知技術であったことが認められる。

(10) カムを用いたホッパゲートの動作変化
甲第39号証ないし甲第43号証は、いずれも、本件特許の出願前に頒布された、組合せ計量装置に関する公開実用新案公報(全文)、公開特許公報又は米国特許明細書であるところ、これら甲号各証によれば、本件特許の出願当時、組合せ計量装置において、カムを用いてホッパゲートの動作変化を設定することは周知技術であったことが認められる。

(11) カムの輪郭形状とホッパゲートの開閉動作
ア 甲号各証の記載事項
なお、以下において、下線は当審で付した。
(ア) 甲第40号証は、本件特許の出願前に頒布された実願昭58-58197号[実開昭59-163929号公報]のマイクロフィルム(考案の名称:自動計量装置におけるホッパ開閉装置、出願人:株式会社石田衡器製作所、公開日:昭和59年11月2日)であるところ、以下の記載が認められる。
・「然して上記カム40は、第5,6図に単体で示すように、回転時に従動ローラ54を介して従動部材53ないしプッシュロッド18a(18b,18c)を所定のリフト特性(カムの回転角に対する従動ローラ等のリフト量の変化の特性)に従って往復動させるカム面40aと、リフト零の位置aの前後一定範囲で従動ローラ54を案内する案内部40bとを有する。」(11頁3行?10行)
・第5図には、ホッパゲート駆動用カムの輪郭形状が複雑な形状をしていることが見て取れる。
(イ) 甲第41号証は、本件特許の出願前に頒布された特開昭61-61014号公報(発明の名称:組合せ計量装置、出願人:A、公開日:昭和61年3月28日)であるところ、以下の記載が認められる。
・「・・・タイムチャートに基づき動作を設定した形状のカムに回転を与えこれに係合するカムフォロア、リンクを介して上下運動に変え、複数本のスライド軸に上下動自在に軸支されたプールホッパー開閉作動盤、計量ホッパー開閉作動盤とその周辺部に各プールホッパー、計量ホッパーに対応して設けたプールホッパー開閉器、計量ホッパー開閉器と一体に所定の距離の上下運動として伝え、・・・するホッパー排出プレートを開き被計量物を排出し再び排出プレートを閉ぢる動作をその計量サイクルの一回毎に行う事を特徴とする組合せ計量装置。」(特許請求の範囲(1))
・「それぞれのホッパー開閉カム26,29はタイムチャートに基いた形状の回転溝型の確動カムとし原動部7のフレームに設けたリンク支持ブラケット3へ33′にてプールホッパー用リンク34と計量ホッパー用リンク65の一端をビン56にて揺動可能に軸支し・・・」(2頁右下欄15?20行)
・ここにおいて、組合せ計量装置において、プールホッパーを開閉するためのカムの輪郭形状は、タイムチャートに基づき動作を設定したものであることが示されているということができる。
(ウ) 甲第42号証は、本件特許の出願前に頒布された米国特許第4193465号明細書(発明の名称:SCALE HOPPER DOOR MECHANISM、権利者:The Woodman Company,Inc.,、公開日:1980年5月18日)であるところ、以下の記載がある。
・「The profile of the cam is such as to rapidly open and close the door for dumping and provides smooth vibration-free operation.」(要約)
(カムの輪郭形状は、排出のためにドアを素早く開閉すると共に、なめらかで振動のない動作を実現するようになっている。)
・「The cam has a profile especially adapted to carry out the desired function of the gate more efficiently than has been accomplished in the past. An initial operative lobe portion has a rapid, but smooth rise, to provide quick vibration-free opening of the door as soon as weight has been made.」(第2欄46-51行)
(このカムは、ゲートの望ましい機能を従来行われていたよりも効果的に実現するように適合された輪郭形状を備えている。初期駆動部分は素早く、かつ、スムーズな立ち上がりを持ち、計量が完了したらすぐに、迅速でしかも振動を起こさずにドアを開けることができる。)
(エ) 甲第43号証は、本件特許の出願前に頒布された実願昭49-059738号(実開昭50-149059号)のマイクロフィルム(考案の名称:計量装置における自動排出装置、出願人:明治機械株式会社、公開日:昭和50年12月11日)であるところ、以下の記載がある。
・「・・・この場合底板2が開いている時間は、あらかじめカム13の形状を適当に定めることによって決まるから、」(5頁7行?9行)
・「・・・底板2の開閉がカム13の回転によって管理される機構的動作のため、カム13の形状に従がい開き時間を一定に、また所望の如く保つこともできるので、被計量物によってこれを適度のものとなせば、運転速度を早めても内容物を残りなく確実に排出させる作用を営ませて、計量作業の能率を向上させることができる利益があるとともに、底板2の開閉がきわめて静かに行われ、殊に閉鎖の際、計量ホッパーに激しく衝突するおそれがないから、計量検出部分に衝撃を与えることがなく、また、従来のものの如く計量物のたれ流し現象を生ずる懸念もないので、計量装置における自動排出装置として頗る有効である。」(5頁16行?6頁9行)

イ 周知事項
上記記載事項(ア)ないし(エ)によれば、カムを用いた組合せ計量装置におけるホッパゲートの開閉動作は、使用されるカムの輪郭形状に大きく依存するものであることが本件特許の出願当時に周知であったことが認められる。

(12) ホッパゲートの動作変化の設定
ア 甲号証に記載の技術事項
(ア) 甲第44号証は、実願昭57-164887号(実開昭59-69197号)のマイクロフィルム(考案の名称:ホッパーの開閉機構、出願人:株式会社寺岡精工、公開日:昭和59年5月10日)であるところ、ホッパゲートの開閉動作を所望なものとするために、カムとゲートとの連結をトグル機構を構成するリンク機構で実現するようにした組合せ計量装置が示されている。
(イ) 甲第45号証は、特開昭56-129823号公報(発明の名称:定量秤のホッパー開閉装置、出願人:東京電気株式会社、公開日:昭和56年10月12日)であるところ、摺動スリットを用いて、ホッパゲートの開閉動作を所望なものとした組合せ計量装置が示されている。
(ウ) 甲第46号証は、特開昭59-74092号公報(発明の名称:ゲート開閉装置、出願人:大和製衡株式会社、公開日:昭和59年4月26日)であり、本件特許明細書等に従来技術として挙げられた文献であるところ、アクチュエータ(駆動源)としてエアシリンダを用いた組合せ計量装置において、所定のリンク機構を用いてゲートの開閉動作を所望なものとしたものが示されている。
(エ) 甲第47号証は、特開昭55-31987号公報(発明の名称:穀粒の自動計量装置におけるシャッタの制御装置、出願人:X、公開日:昭和55年3月6日)であるところ、ゲート開閉動作におけるゲートの開度を半開等に調整するようにした自動計量装置が示されている。

イ 周知技術
以上の技術事項(ア)ないし(エ)によれば、本件特許の出願当時、組合せ計量装置において、種々の機構を用いてホッパゲートの動作変化を所望なものに設定することは周知技術であったことが認められる。

(13) ステップモータの使用
甲第48号証及び甲第49号証は、いずれも、本件特許の出願前に頒布された組合せ計量装置に関する公開実用新案公報(全文)であり、それぞれ、乙第10号証及び乙第8号証と同一証拠であるところ、これら各証によれば、組合せ計量装置において、ホッパゲートを開閉駆動するアクチュエータ(駆動源)としてステップモータを用いることは、本件特許の出願当時に周知技術であったことが認められる。

4 乙号各証から把握される技術事項等
被請求人が提出した乙号各証の記載事項及び把握される技術事項等の概要は以下のとおりである。
(1) profile(プロファイル)とtailor(テイラー)
乙第6号証は、英和辞典であり、「profile」及び「tailor(他動詞)」の各々の語義として、前者が「(変化・推移・情勢などを表す)概要、大要、大略、分析表、図表」であり、後者が「適応させる」であることが記載されている。

(2) Commander2(コマンダー2)のマニュアル
乙第7号証は、Woodman(ウッドマン)社「Commander2(コマンダー2)」の取扱マニュアルであるところ、以下の記載がある。

ア「TABLE OF CONTENTS
・・・・・・
1. BEFORE OPERATING 3
・・・・・・
2. OPERATION 5
1 Introduction 5
・・・・・
7 Prompt Organization 8
・・・・・
10 Using the PARAMETER SECTION 19
・・・・・
3. SERVICE 48
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」(1頁)
(目次
1.操作の前に
2.操作
1 はじめに
・・・・・・・
7 プロンプト機構
・・・・・・・
10 パラメータセクションの使用
・・・・・・・
3.サービス)

イ「7 Prompt Organization
・・・・・・・・・・・
7.3 ・・・・・・・・・Prompts in the PARAMETER SECTION are listed in Table 2.2 and described in depth in Section 10.
・・・・・・・・・・・・・・・・」(8頁)
(7 プロンプト機構
・・・・・・・・
7.3 ・・・・・・・パラメータセクションのプロンプトは表2.2に掲載され、より詳細は第10節にて説明されている。
・・・・・・・・・・・・・・・)
ウ「Prompts # Prompt
・・・・・・・・・・・・
45 Door Open # 1 or 2
・・・・・・・・・・・・・・
Table 2.2 PARAMETER SECTION prompts」(10頁)
(プロンプト♯ プロンプト
・・・・・・・・・・・・・
45 ドア開 ♯1又は2
・・・・・・・・・・・・・・
表2.2 パラメータセクション プロンプト)

エ「10 Using the PARAMETER SECTION
・・・・・・・・・・
10.23 Prompt #45, Door open #1 or 2, provides a choice of two door open times. The first opens the door fully and shuts it immediately. The second, intended for especially large charges, opens the door fully, delays about 150msec. and then closes the door.」(19?21頁)
(第10節 パラメータセクションの使用
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
10.23 プロンプト ♯45、ドア開 ♯1又は2により、ドアについて2つある開時間から一方を選択できる。第1は、ドアが完全に開くと共に瞬時に閉じるものである。第2は、かなり大きな量を意図して、ドアを完全に開き、およそ150ミリ秒経過後にドアを閉じるものである。)

(3) 乙第8号証
乙第8号証は、本件特許明細書等に従来技術として記載され、本件特許の出願前に頒布された実願昭56-132244号(実開昭58-37520号)のマイクロフィルム(考案の名称:組合せ計量機におけるホッパーの駆動装置、出願人:株式会社石田衡器製作所、公開日:昭和58年3月11日)であるところ、図面とともに以下の記載がある。
ア 記載事項
(ア) 「次に上記駆動装置(b)の具体的な構成を第2図乃至第5図において説明すると、(9)は駆動装置(b)の中央部に設置したギヤモータで、その駆動軸(10)の先端に太陽歯車(11)を装設している。(12)は太陽歯車(11)の外周に、所定の間隔を隔てて多数個(図面では10個)噛合配置した小歯車で、上記ギヤモータ(9)と平行して並設させた伝導軸(13)の先端に固設させている。(14)(15)は伝導軸(13)の長手方向に沿つた定位置に、所定の間隔を隔てて装設した2組のカム板、(16)(17)はカム板(14)(15)の一端で、且つ上記伝導軸(13)の外周に装設したクラツチ・ブレーキ機構で、当該クラツチ・ブレーキ機構(16)(17)は制御部から発信される信号にて上記カム板(14)(15)を回転する様構成されている。」(4頁17行?5頁10行)
(イ) 「(18)(19)はその一端をギヤモータ(9)と平行に立設した支持板(20)の定位置に、ピン(21)を介して枢着させたカムレバーで、その長手方向の定位置に設けたカムフオロワー(22)(23)を上記カム板(14)(15)の外周面に常に圧接させ、上記カムレバー(18)(19)をカム板(14)(15)の回動に伴ない揺動可能に枢着保持させている。(24)(25)はカムレバー(18)(19)の他端に形成した長溝、(26)(27)は長溝(24)(25)内に嵌合させたローラ(28)(29)を介して上記カムレバー(18)(19)と直交する方向に吊り下げ支持させた開閉レバーで、その両側の定位置を、底板(30)の上面に複数個立設したレバー支え部(31)にて支承させていると共に、その先端をプールホツパー(3)及び計量ホツパー(4)の開閉蓋(3a)(4a)の定位置に適当な手段にて連結している。即ち、上記カムレバー(18)(19)の揺動運動をローラ(28)(29)を介して開閉レバー(26)(27)の往復直線運動に変換する様構成してあり、且つ当該開閉レバー(26)(27)の上記往復直線運動により、前記両ホツパー(3)(4)の開閉蓋(3a)(4a)を開閉動作せしめている。」(5頁16行?6頁16行)
(ウ) 「即ち、本考案に係る組合せ計量機の駆動装置は、その計量機本体の中心部、即ち、プールホツパー(3)及び計量ホツパー(4)の内側の空間部分(a)内に、上記両ホツパー(3)(4)を開閉動作させる駆動装置(b)の駆動源であるギヤモータ(9)を単一で配置することにより、部品点数の削減及び動力効率の向上を図る様にしたものである。」(6頁16行?7頁3行)
(エ) 「尚、本実施例の駆動装置はクラツチ・ブレーキ使用による例を示したがこれに限定されるものではなく、例えば駆動源は分散型とするものの、ステツピングモータ、エアーシリンダ、油圧シリンダ等を利用して、上記駆動源を上述した実施例と同様中央部に配置させてもよい。」(9頁13?18行)
(オ) 第3図(駆動装置の正断面図)


イ 技術事項
以上の記載事項(ア)ないし(オ)より、乙第8号証には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「1つのステッピングモータにより、カム板(14)、カムレバー(18)及び開閉レバー(26)、並びにカム板(15)、カムレバー(19)及び開閉レバー(27)をそれぞれ介して、プールホッパー(3)の開閉蓋(3a)と計量ホッパー(4)の開閉蓋(4a)とを、共に開閉駆動するようにした組合せ計量装置。」(以下、「乙第8号証に係る技術事項」という。)

(4) 乙第9号証
乙第9号証は、本件特許明細書等に従来技術として記載され、本件特許の出願前に頒布された実願昭57-67392号(実開昭58-169532号)のマイクロフィルム(考案の名称:組合せ計量装置、出願人:株式会社石田衡器製作所、公開日:昭和58年11月12日)であるところ、図面とともに以下の記載がある。
ア 記載事項
(ア) 「上記構成の駆動ユニツト(20)は、既述第3図図示の如く台座(21)上に配列固定した設置状態において、モーター(24)を駆動させて伝達シヤフト(28)を常時回転させておくと共に、クラツチ(35)を分離状態とする。この場合、ギヤ(33)(38)は回転せず、従つてカム(37)は駆動しない。しかして、プールホツパー(16)と計量ホツパー(17)の開閉蓋(19a)(19b)(19c)のいずれかを開いて被計量物を下方排出する場合、所定信号によりクラツチ(35)を作動させてシヤフト(28)とギヤ(33)とを連動させると、対応するギヤ(38)が回転してカム(37)を駆動し、このカム(37)の動きに応じてレバー(41)がばね(48)の付勢力に抗して前方側へ摺動し、これに伴つてプツシユロツド(43)が第7図で示す如く矢印方向に前方突出し、開閉蓋(19a)(19b)(19c)にそれぞれ連結された駆動アーム(70a)(70b)(70)の所要の一端を押圧板(51a)(51b)(51)が押圧し、開閉蓋(19a)(19b)(19c)の所要の1つが開放される。この時、プツシユロツド(43)の突出状態がフオトカプラー(52)を介して検出され、その信号によりブレーキ(40)が作動してギヤ(38)の回転を被計量物の排出に要する所定時間だけ停止させると同時にクラツチ(35)も分離状態となる。続いて所定時間の経過後、所定信号に基いてブレーキ(40)が解除されると共にクラツチ(35)が接続状態となり、カム(37)が回転して元の位置(第4図参照)に戻るに伴なつてレバー(41)がばね(48)の付勢によつて後退し、プツシユロツド(43)が後退姿勢に復帰する。しかしてこの復帰が完了すると同時にクラツチ(35)が分離状態となり、ギヤ(33)(38)の回転が停止する。」(8頁15行?10頁5行)
(イ) 「さらに、上記実施例ではホツパー開閉ユニツトの各々に駆動源としてモーター(24)を設けているが、モーター等の駆動源が複数もしくは全部のホツパー開閉ユニツト(20)に共通するように構成してもよく、例えば第8図で示す如く、放射状に配列したホツパー開閉ユニツト(20)で囲まれた中央空間部に適当な駆動源により回転する駆動シヤフト(71)を配置し、このシヤフト(71)に大径ギヤ(72)を取付けて各ホツパー開閉ユニツト(20)の伝達シヤフト(28)の従動ギヤ(29)に噛合させ、全ホツパー開閉ユニツト(20)の駆動力を駆動シヤフト(71)より得る構造等に種々変形可能である。」(10頁14行?11頁4行)
(ウ) 第7図(ホツパー開閉ユニツトによるホツパーの開閉動作を説明する要部側面図)

イ 技術事項
以上の記載事項(ア)ないし(ウ)より、乙第9号証には、次の技術が記載されていると認められる。
「1つのモータ(24)により、カム(37)、レバー(41)、プッシュロッド(43a)及び駆動アーム(70a)、並びにカム(37)、レバー(41)、プッシュロッド(43b,43c)及び駆動アーム(70b,70c)をそれぞれ介して、プールホッパー(16)の開閉蓋(19a)と計量ホッパー(17)の開閉蓋(19b,19c)とを、共に開閉駆動するようにした組合せ計量装置。」(以下、「乙第9号証に係る技術事項」という。)

(5) 乙第10号証
乙第10号証は、前記無効2007-800133号に係る確定審決における無効理由の主引用例として引用され、本件特許の出願前に頒布された実願昭58-101360号(実開昭60-8843号)マイクロフィルム(考案の名称:組合せ秤におけるホッパー構造、出願人:株式会社寺岡精工、公開日:昭和60年1月22日)であるところ、図面とともに以下の記載がある。
ア 記載事項
(ア) 「本考案実施例の組合せ秤を第1図乃至第2図により説明すれば、図中(1)は縦長の板を隣り合うように設けてなる分散板であり、該分散板(1)上の被計量物を互いに異なる方向に搬送するように分散板(1)の下方に電磁振動式のフイーダ(9)を設けると共に、分散板(1)の外側辺に供給トラフ(2)を列状に並設する。供給トラフ(2)は断面略コの字状に形成した搬送路であり、下方に電磁振動式のフイーダ(10)を設けると共に、各供給トラフの搬出端にプールホッパー(5)を設ける。プールホッパー(5)はホッパー本体(3)と底蓋(7)とからなる被計量物貯溜用のホッパーであり、各プールホッパー(5)の下方に計量ホッパー(6)を配設する。計量ホッパー(6)はホッパー本体(4)と底蓋(8)とからなり、ロードセル(11)を介してフレーム(12)に設けたもので、該ホッパー(6)内の被計量物を計量するものである。上記底蓋(7)(8)は夫々軸(13)(14)を介してフレーム(12)に設けてなり、その開閉機構は夫々リンク(15)(16)、カム(17)(18)及びパルスモータ(19)とからなる。即ちパルスモータ(19)の回転によってカム(17)(18)が回転して、リンク(15)(16)を夫々所定角度回動して底蓋(7)(8)を開閉動するものである(第3図)。」(3頁12行?4頁18行)
(イ) 第3図(組合せ秤の要部拡大図)


イ 技術事項
以上の記載事項(ア)及び(イ)より、乙第10号証には、次の技術が記載されていると認められる。
「1つのパルスモータ(19)により、カム(17)及びリンク(15)、並びにカム(18)及びリンク(16)をそれぞれ介して、プールホッパー(5)の底蓋(7)と計量ホッパー(6)の底蓋(8)とを、共に開閉駆動するようにした組合せ計量装置。」(以下、「乙第10号証に係る技術事項」という。)

(6) 乙第11号証
乙第11号証は、本件特許の出願前に頒布された特開昭60-22626号公報(発明の名称:組合せ計量装置、出願人:X、公開日:昭和60年2月5日)であるところ、図面とともに以下の記載がある。
ア 記載事項
(ア) 「 尚、プールホツパ10の下端排出口には開閉蓋15がその基部を枢支され、引張スプリング28に係合する開閉蓋作動リンク23を介して通常閉じ方向に付勢されている。
又、計量ホツパ12にあつては同じく引張スプリング29を介して一対の内外の開閉蓋16,16′が開閉蓋作動リンク24,25を介し常に閉じ方向に付勢されている。」(4頁左下欄20行?右下欄7行)
(イ) 「そして、該カバープレート31内の機構を第3図以下の図面で説明すると、第3図に示す様に、ロアーフレーム4′の中央下側には減速機付きモータ17が固設されており、その出力軸に設けた図示しないピニオンが同じく図示しないギヤ機構を介して駆動スプロケツト32を駆動するようにされ、該駆動スプロケツト32はチエーン33を介して一対の従動スプロケツト34,34を駆動するようにされている。」(4頁右下欄19行?左上欄10行)
(ウ) 「又、上記サブフレーム43には一対のプツシユロツド20,20が放射方向に進退自在にされ、その外側先端には計量ホツパ12の2個の開閉蓋16,16′を各々開閉する開閉蓋作動リンク24,25の2つのフオーク状のフツク30にそれぞれ対向するローラ49が側方に設けられており、又、その内側端部のフランジ部と該サブフレーム43との間には圧縮スプリング50が介設されてプツシユロツド20を内側に向け戻り付勢するようにされている。
尚、各プツシユロツド20はスライダ45に対しても挿通されて相対的に進退自在されている。」(5頁右下欄12行?6頁左上欄2行)
(エ) 「上述構成において、図示しない装置の作動ボタンを押し、モータ17を起動させると、ギヤ機構を介してスプロケツト32が回動し、従動スプロケツト34,34を介し、カム35,35′が回動してカムフオロワ39,39′の従動を介し、アーム38,38′が設定角揺動旋回動し、これによりロータリリンク40,40′が同じく設定角設定周期で相対揺動旋回動する。
その結果、該ロータリリンク40,40′の周縁にピン42,42…を介して設けた設定数のコンロツド41,41′…の基端が揺動旋回動し、これによつて各スライダ45,45′はそれぞれの対応するサブフレーム43,43′…に対しガイドバー44,44′…を介して放射方向に進退動することになる。」(6頁右上欄13行?左下欄6行)
(オ) 「そして、図示しない制御装置を介してアツパーフレーム4の下側に設けられた各サブフレーム43′のガイドバー44′を介して放射方向に前後動するスライダ45′のソレノイド53が作動すると、チツプ55は圧縮スプリング54に抗して側方に突出し、それまで圧縮スプリング50を介して内方に付勢されて停止していたプツシユロツド20′のラツク52に対して該ラツク56が噛み合うことになり、そこでプツシユロツド20′も一体的に該圧縮スプリング50に抗して該サブフレーム43′に対し放射方向に進退動することになり、外方に突出するプロセスでプールホツパ10の開閉蓋作動リンク23のフオーク状のフツク30に侵入して該開閉蓋作動リンク23をして開閉蓋15を引張スプリング28に抗して開放し、それまで貯留していた被計量物を下側に設けられている計量ホツパ12に投入する。
そして、そのストロークが後退行程に移ると、制御装置のタイマー作用により、ソレノイド53が解放されて圧縮スプリング54によりチツプ55は内側に退行し、ラツク52と56の噛み合いは外れ、プツシユロツド20′は圧縮スプリング50の付勢力により内方に退行し、元の姿勢に戻り、プールホツパ10の開閉蓋15は引張スプリング28により付勢されて締まる。」(6頁左下欄15行?右下欄18行)
(カ) 「又、このような作用は計量ホツパ12の開閉蓋16についても同様に作用するものである。
而して、該計量ホツパ12内に投入された被計量物の重量は直ちにサブフレーム43に取り付けられているロードセル11により検出されてその検出信号が図示しないマイクロコンピユータに入力され、全ての計量ホツパ12,12,12…の重量は比較演算されて設定重量に対して合致するかプラス最小オーバー量の設定になる組合せの最適計量ホツパ12,12…がどれとどれであるかと共に、内外の集合シユート13,14のいづれに排出するかが決定され、その決定信号が各サブフレーム43のスライダ45のソレノイド53に入力され、したがつて、それまで遊状態でガイドバー44に対して放射方向に前後動されていたスライダ45の2個のチツプ55,55のうちの排出決定されたシユートに対応する開閉蓋16,16を作動する側のロツド20に係合するソレノイド53が通電され、対応するチツプ55は圧縮スプリング54に抗して側方に突出し、それまで圧縮スプリング50により内方に後退していたプツシユロツド20のラツク52に対してラツク56が上述同様に噛み合い、圧縮スプリング50に抗してプツシユロツド20を前方へ一体随伴して突出させ、その先端のローラ49は該計量ホツパ12の開閉蓋作動リンク24、又は、25のフオーク状のフツク30内に入り、引張スプリング29に抗して指定された集合シユート側の開閉蓋16,16′を開き、収納している被計量物を指定された集合シユート13、又は、14に放出する。」(7頁左上欄7行?右上欄14行)
(キ) 第3図(内部空間の駆動機構部の部分断面拡大側面図)


イ 技術事項
以上の記載事項(ア)ないし(キ)より、乙第11号証には、次の技術が記載されていると認められる。
「1つのモータ(17)により、カム(35')、ロータリーリンク(40')、コンロッド(41')、スライダ(45')及びプッシュロッド(20')、並びにカム(35)、ロータリーリンク(40)、コンロッド(41)、スライダ(45)及びプッシュロッド(20をそれぞれ介して、プールホッパ(10)の開閉蓋(15)と計量ホッパ(12)の開閉蓋(16)とを、共に開閉駆動するようにした組合せ計量装置。」(以下、「乙第11号証に係る技術事項」という。)

(7) 乙第12号証
乙第12号証は、本件特許の出願前に頒布された実願昭57-164887号(実開昭59-69197号)のマイクロフィルム(考案の名称:ホッパーの開閉機構、出願人:株式会社寺岡精工、公開日:昭和59年5月10日)であるところ、図面とともに以下の記載がある。
ア 記載事項
(ア) 「次にプールホツパー1及び計量ホツパー2の開閉機構を説明すれば、プールホツパー1には枢軸5を中心とする底蓋3を、計量ホツパー2には枢軸6を中心とする底蓋4を夫々設けてなる。
上記底蓋3に枢軸17を中心に回動するL字リンク9をリンク7を介して連結してトグル機構を構成する。同様に底蓋4に枢軸14を中心に回動するL字リンク10をリンク8を介して連結してトグル機構を構成する。
L字リンク9,10には夫々閉動スプリング11,12を連結し、リンク7とL字リンク9、リンク8とL字リンク10が夫々直線になつて底蓋3,4を閉動するようにする。即ち閉動スプリング11,12が閉動時の駆動部となる。
楕円カム15は上記L字リンク9の駆動端13と接離するもので、モータMにて駆動される回転軸23に電磁クラツチ(図示せず)を介して設ける。該電磁クラツチをオンにすると楕円カム15が一体状に回転し駆動端13を押し上げて底蓋3を開動する。即ち楕円カム15が開動時の駆動部となる。
カム16はL字リンク10に接離するL字形の中間リンク18と接離するもので、回転軸23に電磁クラツチ(図示せず)を介して設ける。該電磁クラツチをオンにするとカム16が一体状に回転し中間リンク18を軸19を中心に回動させてL字リンク10を押し上げて底蓋4を開動する。カム16がこの開動時の駆動部となる。」(3頁19行?5頁5行)
(イ) 第3図(組合せ秤の要部拡大図)


イ 技術事項
以上の記載事項(ア)及び(イ)より、乙第12号証には、次の技術が記載されていると認められる。
「1つのモータ(M)により、楕円カム(15)、リンク(7)及びL字リンク(9)、並びにカム(16)、リンク(8)及びL字リンク(10)をそれぞれ介して、プールホッパー(1)の底蓋(3)と計量ホッパー(2)の底蓋(4)とを、共に開閉駆動するようにした組合せ計量装置。」(以下、「乙第12号証に係る技術事項」という。)

5 無効理由1について
(1) 甲第3号証の記載事項
甲第3号証である「Good Packaging Magazine誌」の40-41頁には、以下の記載アないしウがある。
ア 「The Commander 2, a 12 scale statistical weigher, features a totally new modular design concept. Each precision strain gauge scale is housed in an individual tower which also includes the complete door opening drive system and microprocessor control of scale tower logic.」(40頁中央列13行?右列1行)
(コマンダー2は、12台の秤を備えた統計秤であり、全く新しいモジュール設計思想を特徴としている。各々の高精度のストレンゲージ計は個別のタワーの内部に設けられており、それぞれのタワーはドアを開くための完結した駆動システムと、計量タワーの演算ロジックを制御するマイクロプロセッサを内蔵している。)

イ 「Opening of the scale hopper and holding bin attached to each tower is accomplished using separate electronically controlled motors providing precise control over both the speed and amount of door opening. As a result, the door opening profile can be tailored to maximize performance for individual products, weights and speed. In addition, the door opening mechanism is a simple cam, thereby eliminating the need for complicated linkages.」(40頁右欄7?18行)
(各々のタワーに取り付けられたスケールホッパとホールディングビンの開きは、個別に設けられた電子制御式モータにより行われるため、ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できる。
その結果、ドアの開き方のプロファイル(特性)は、個々の物品、重量や速度に応じて、パフォーマンスが最大化するよう適合させることができる。加えて、ドアを開く機構は単純なカムであるため、複雑なリンク機構が不要となる。)

ウ 「Controls are designed around a 16 bit microprocessor with an advanced software program to provide exceptional weight accuracy. Up to 99 different products can be pre-programmed with minimal specification input and instantly recalled from memory through a user friendly remote operator console.」(41頁左欄15?22頁)
(16ビットのマイクロプロセッサと先進のソフトウェアプログラムを用いた制御により、非常に高い計量精度が得られる。最大で99個の異なる物品について、最小限の入力仕様でもって事前にプログラムすることができ、顧客にとって使いやすいリモート操作コンソールを介してメモリからすぐに呼び出すことができる。)

エ 「profile can be tailored」の訳
前記アないしウの当審による訳文のうち、profile can be tailoredの和訳については、当事者間に争いがあるので、以下に説明しておく。
(ア) まず、「profile」との用語について検討する。
「profile」は、「「(物の)外形、外郭、輪郭;波の形」、「(変化・推移・活動などを示した)概要;輪郭、水準;分析表、図表、一覧表」や「(人・物の)特徴、特性のまとめ」」(甲第13号証)、「2. a view of anything in contour; outline」(物を曲線あるいは輪郭で表した姿)や「 a graph, diagram, piece of writing, etc. presenting or summarizing data relevant to a particular person or thing(特定の人や物に関連するデータあるいはその概要を示す図表や文章)」(甲第14号証)又は「(変化・推移・情勢などを表す)概要、大要、大略、分析表、図表」(乙第6号証)とあるように、種々の日本語としての意味を有するほか、日本語としてそのまま「プロファイル」ということもあるところ、甲第3号証に記載のものは組合せ計量装置のドアの開閉動作に関するものであるから、変化・推移などを表す「プロファイル(特性)」と訳すのが妥当である。このことは、下記((6)エ(イ))で示すステッピングモータ(ステップモータと同義である。)により駆動される制御対象物の速度の時間変化のことを、「プロファイル(特性)」と呼んでいることとも符合する。
(イ) 次に、「tailor」は、日本語として、「2.<案・行動などを>特殊な好み[目的、要求など]に適応させる、合わせる」(甲第13号証)、「適応させる」(乙第6号証)との意味があるところ、組合せ計量装置のドアの開閉動作に関する文脈で使用されていることを考慮すると、「can be tailored」は「適合させることができる」と訳すのが妥当である。
よって、「the door opening profile can be tailored・・・」は、上記イのとおり、「ドアの開き方のプロファイル(特性)は、・・・適合させることができる。」と訳した。

(2) 出願当時の技術水準
甲第3号証に記載の技術事項を的確に把握するために、まず、組合せ計量装置に関する本件特許の出願当時における技術水準がどうであったか、について検討する。
ア アクチュエータ(駆動源)としてのモータ
組合せ計量装置に関し、乙第8号証に係る技術事項ないし乙第12号証に係る技術事項(前記「4(3)?(7)」)を総合すると、組合せ計量装置に共通する技術事項として、ゲート(底蓋又はドアともいう)を開閉駆動するためのアクチュエータ(駆動源)としてモータ(ステップモータを含む)を使用した組合せ計量装置において、ゲートの開閉動作に関する本件特許の出願当時の技術水準は、以下のとおりであったことが認められる。
(ア) モータの回転運動をカム機構により周期的な往復運動に変換し、変換された周期的な往復運動をリンク機構によりホッパのゲートにまで伝達して、ゲートの開閉動作を行うようにすることが一般的であった。
(イ) モータはプールホッパと計量ホッパとから構成される計量機毎に設けられており、1つのモータによりプールホッパと計量ホッパのゲートの開閉駆動を、共に行うようにすることが一般的であった。

イ ゲートの開時間
次に、本件特許の出願当時の技術水準を示すものとして、甲第27号証ないし甲第30号証に記載の組合せ計量装置について検討する。
(ア) 甲第27号証に記載の組合せ計量装置は、計量ホッパの開時間を設定できるものであるところ、同証の記載によれば、開時間とは、品物を排出する時間を示し、その時間が過ぎると再び閉じ始めるというのであるから、計量ホッパのゲートが開き切った状態の時間を意味するものと認められる。よって、甲第27号証より、計量ホッパのゲートが開き切った状態の時間を設定できるようにした組合せ計量装置が把握できる。
また、甲第28号証から、計量ホッパやフィードホッパのゲートが開き始めてから閉じるまでの時間を設定できるようにした組合せ計量装置が把握できる。
さらに、甲第30号証から、計量ホッパやフィードホッパのゲートが開き始めてから閉じるまでの時刻を設定できるようにした組合せ計量装置が把握できる。
(イ) 以上を総合すると、組合せ計量装置において、計量ホッパやフィードホッパのゲートが開き切った状態の時間や、開き始めてから閉じるまでの時間(以下、これらを単に「ゲートの開時間」という。)に関する本件特許の出願当時の技術水準は、ゲートの開時間をホッパの種類毎に任意に設定できるものが一般的であった。

(3) 甲第3号証から把握される技術事項
上記組合せ計量装置に関する本件特許の出願当時の技術水準、及び技術常識を踏まえて、甲第3号証の記載事項を検討する。
ア 組合せ計量装置
まず、甲第3号証に記載のコマンダー2なる装置が組合せ計量装置であることは、上記記載事項(1)アないしウ及びその40頁に記載のコマンダー2の上部外観を写した写真から明らかである。
よって、甲第3号証に明示的な記載はないけれども、コマンダー2なる組合せ計量装置は、組合せ計量装置として必須な、組合せ演算の結果選択されたスケールホッパ又はホールディングビンのドアの開閉動作を電子制御式モータにより制御するための何らかの制御手段を備えているものといえる。

イ カムとリンク機構
次に、上記記載(1)イの「加えて、ドアを開く機構は単純なカムであるため、複雑なリンク機構が不要となる。」との記載に関して検討する。
コマンダー2なる組合せ計量装置は、ドアを開く機構にカムを使用しているというのであるから、上記本件特許の出願当時の技術水準((2)ア(ア))を踏まえると、コマンダー2なる組合せ計量装置は、電子制御式モータの回転運動をカムによって周期的な往復運動に変換し、変換された往復運動をリンク機構を介してドアに伝達することによってドアの開閉動作を行っている、と解するのが自然である。
また、本件特許明細書等(特許審決公報26頁23行)に記載されている本件特許発明の従来技術として挙げられた特開昭59-74092号公報(発明の名称:ゲート開閉装置、出願人:大和製衡株式会社、公開日:昭和59年4月26日)(甲第46号証、以下、「従来例」ともいう。)や、当審の職権調査による特開昭61-246630号公報(発明の名称:組合せ計量装置、出願人:株式会社石田衡器製作所、公開日:昭和61年11月1日)、又は請求人に係る組合せ計量装置であるADW-X23Rシリーズ(取扱い説明書1985年3月20日)(甲第27号証)によれば、本件特許の出願当時、組合せ計量装置において、ホッパゲートの開閉駆動を行うアクチュエータ(駆動源)としてエアシリンダを用いることは、モータを用いることと並んで、一般的であったといえる。
そして、上記従来例によれば、ゲートの開閉動作を所望なものとするために、その特許請求の範囲に「上部に投入口を下部に排出口を有するホツパと、上記排出口を開閉蓋可能に鉛直面内において回転可能に上記ホツパに設けたゲート板と、上記ホツパの側方に設けられており第1及び第2の腕を有しその中途を中心として上記鉛直面内において回転可能に設けられ第1の腕を上記ゲート板の回転中心以外の位置に第1の連結ロツドを介して枢軸結合すると共に第2の腕を直接または間接に第2の連結ロツドに枢軸結合した中間リンクと、この中間リンクとは離れて上記ホツパの側面に設けられ第1及び第2の腕を有しその中途を回転の中心として上記鉛直面内で回転可能に設けられ第1の腕に駆動装置によつて回転力が与えられ第2の腕を第2の連結ロツドに枢軸結合した駆動側リンクとからなり、上記ゲート板が上記排出口を開蓋した状態で上記中間リンクの第1の腕と第1の連結ロツドとがほぼ一直線状に位置すると共に、上記駆動側リンクの第2の腕と第2の連結ロツドとが角度をなすように位置し、上記ゲート板が上記排出口を閉蓋した状態で上記中間リンクの第1の腕と第1の連結ロツドとが角度をなすように位置すると共に、上記駆動側リンクの第2の腕と第2の連結ロツドとがほぼ一直線状に位置することを特徴とするゲート開閉装置。」とあるように、複雑なリンク機構を採用したことが認められる。
また、前記「(2)ア(ア)」で説示したように、ゲートを開閉駆動するためのアクチュエータ(駆動源)としてモータを使用した組合せ計量装置にあっては、リンク機構を用いることが一般的であった。
してみると、前段の「ドアを開く機構は単純なカムであるため」との文言は、「ドアを開く機構として、(エアシリンダー式に比べて)カムという単純な機構を採用しているから」を意味していると解するのが妥当である。
また、後段の「複雑なリンク機構が不要となる。」との文言は、「複雑でない、比較的単純なリンク機構で済む。」と解するのが妥当である。
よって、上記「加えて、ドアを開く機構は単純なカムであるため、複雑なリンク機構が不要となる。」との記載は、「加えて、ドアを開く機構として、カムという単純な機構を採用しているから、リンク機構については、複雑なリンク機構は不要で比較的単純なリンク機構で済む。」ということを意味しているものと解するのが相当である。
なお、請求人は、この箇所の意味するところは、「加えて、ドアを開く機構にその輪郭形状が単純なカムを使用するので、比較的単純なリンク機構で済む。」である旨主張している。
しかしながら、まず、甲第3号証には、カムのうち輪郭形状が単純なカムを使用する旨の記載はないし、ホッパゲートを開閉駆動するアクチュエータ(駆動源)として電子制御式モータを用いた組合せ計量装置において、電子制御式モータの回転運動を往復運動に変換するためのカムの輪郭形状は単純なものとなるとの技術常識もない。
よって、請求人の主張は採用できない。

ウ モータ
また、「各々のタワーに取り付けられたスケールホッパとホールディングビンの開きは、個別に設けられた電子制御式モータにより行われるため、・・・」((1)イ)の記載に関し、ここにいう「個別」は、原文に「each tower」と記載され、また、「motors」と、複数形で記載されていることから、スケールホッパ毎に、及びホールディングビン毎に個別に設けると解釈され得る。
他方、スケールホッパとホールディングビンとが1組となって1つのタワー(すなわち、計量機)を構成するものであるところ、本件特許の出願時の技術水準(上記(2)ア(イ))によれば、モータについては、計量機毎に設けることが一般的であったこと、タワーは全部で12ある(前記(1)ア)ことから、「motors」とモータについて複数形で記載されていると見ることもでき、よって、ここにいう「個別に」は、タワー(計量機)毎に個別に設けるとも解釈され得る。

エ 入力手段
また、コマンダー2なる装置にあっては、「ドアの開き方のプロファイル(特性)は、個々の物品、重量や速度に応じて、パフォーマンスが最大化するよう適合させることができる。」(上記(1)イ)、「最大で99個の異なる物品について、最小限の入力仕様でもって事前にプログラムすることができ、顧客にとって使いやすいリモート操作コンソールを介してメモリからすぐに呼び出すことができる。」(上記(1)ウ)というのであるから、コマンダー2は、ドアの開き方のプロファイル(特性)をメモリに、そのパフォーマンスが最大化するように適合するべく設定するための何らかの入力手段を備えていると解するのが自然であり、また、その入力手段はリモート操作コンソールに含まれているものと解される。

(4) 甲第3号証に記載の発明
上記甲第3号証の記載事項(1)及び本件特許の出願当時の技術水準を踏まえた甲第3号証から把握される上記技術事項(3)を総合勘案すると、甲第3号証には次の発明が記載されていると認める。
「物品を貯蔵し排出するスケールホッパ及びホールディングビンと、スケールホッパ及びホールディングビンの排出口にそれぞれ設けられたドアと、各ドアをカム及び比較的単純なリンク機構を介して開閉駆動するモータとを備えた12台の秤を備えた統計秤であって、
前記モータは、個別に設けられた電子制御式モータであり、前記電子制御式モータによりドアを開閉駆動する、スケールホッパ又はホールディングビンについて、当該スケールホッパ又はホールディングビンの前記ドアの開き方のプロファイル(特性)を、パフォーマンスが最大化するよう適合させるべく、ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できるようメモリに設定する入力手段と、
組合せ演算の結果選択されたスケールホッパ又はホールディングビンについて設定されたドアの開き方のプロファイル(特性)に基づいて前記電子制御式モータを制御する制御手段とを設け、
前記入力手段はリモート操作コンソールに含まれており、
個々の物品、重量や速度に応じて、前記スケールホッパ又はホールディングビンについての前記ドアの開きをパフォーマンスが最大化するように、ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できるようにした12台の秤を備えた統計秤。」
(以下、「引用発明1」という。)

(5) 対比
ア 相当関係
本件特許発明と引用発明1とを構成毎に対比する。
(ア) 引用発明1の「物品」、「スケールホッパ及びホールディングビン」、「ドア」、「スケールホッパ又はホールディングビン」、「12台の秤を備えた統計秤」、「メモリ」、及び「個々の物品、重量や速度に応じて」は、
本件特許発明の「被計量物品」、「複数種類のホッパ」、「ゲート」、「ホッパ」、「組合せ計量装置」、「テーブル」、及び「種類や供給量に応じて」にそれぞれ相当する。
(イ) 「カム」(cam)とは、「回転軸からの距離が一定でない周辺を有し、回転しながらその周辺で他の部材に種々の運動を与える装置。」(広辞苑第5版)のことであり、「リンク」(link)とは、「運動または力を伝達する装置。連動装置。」(広辞苑第5版)のことである。
よって、引用発明1の「カム及び比較的単純なリンク機構を介して」も、本件特許発明の「リンク機構を介して」も、共に、「運動変換伝達機構を介して」である点で共通する。
(ウ) 引用発明1の「個別に設けられた電子制御式モータ」も、本件特許発明の「ホッパ毎に設けられたステップモータ」も、共に、「アクチュエータ(駆動源)としての電子制御式モータ」である点で共通する。
(エ) 引用発明1の「電子制御式モータによりドアを開閉駆動する、スケールホッパ又はホールディングビンについて、」も、本件特許発明の「ステップモータによりゲートを開閉駆動する、指定されたホッパについて、」も、共に、「電子制御式モータによりゲートを開閉駆動する、ホッパについて、」である点で共通する。
(オ) 引用発明1の「ドアの開き方のプロファイル(特性)を、パフォーマンスが最大化するよう適合させるべく、ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できるようメモリに設定する」も、本件特許発明の「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記ステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する」も、共に、「ゲートの開き方のプロファイル(特性)をテーブルに設定する」点で共通する。
(カ) 同様に、引用発明1の「設定されたドアの開き方のプロファイル(特性)に基づいて」も、本件特許発明の「設定されたゲートの動作変化に基づいて」も、共に、「設定されたゲートの開き方のプロファイル(特性)に基づいて」である点で共通する。
(キ) 引用発明1の「前記ドアの開きをパフォーマンスが最大化するように制御できるようにした」も、本件特許発明の「ゲートの動作を任意に制御できるようにした」も、共に、「ゲートの動作を制御できるようにした」点で共通する。

イ 一致点
してみると両者の一致点は以下のとおりである。
「被計量物品を貯蔵し排出する複数種類のホッパと、各ホッパの排出口にそれぞれ設けられたゲートと、各ゲートを運動変換伝達機構を介して開閉駆動するモータとを備えた組合せ計量装置であって、
前記モータは、アクチュエータ(駆動源)としての電子制御式モータであり、前記電子制御式モータによりゲートを開閉駆動する、ホッパについて、当該ホッパの前記ゲートの開き方の変化のプロファイル(特性)をテーブルに設定する入力手段と、
組合せ演算の結果選択されたホッパについて設定されたゲートの開き方の変化のプロファイル(特性)に基づいて前記ステップモータを制御する制御手段とを設け、
前記入力手段はコントロールパネルに含まれており、
被計量物の種類や供給量に応じて、前記ホッパについての前記ゲートの動作を制御できるようにしたことを特徴とする組合せ計量装置。」

ウ 相違点
他方、両者の相違点は以下のとおりである。
・相違点(ア) ゲートの開き方のプロファイル(特性)について、
本件特許発明は、「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化をステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段」を備え、それにより、「被計量物の種類や供給量に応じて、・・・ゲートの動作を任意に制御できるようにした」のに対し、引用発明1では、「スケールホッパ又はホールディングビンのドアの開き方のプロファイル(特性)を、そのパフォーマンスが最大化するよう適合させるべく、ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できるようメモリに設定する入力手段」を備え、それにより、「個々の物品、重量や速度に応じて、・・・ドアの開きをパフォーマンスが最大化するように、ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できるようにした」ものであるにとどまる点。

・相違点(イ) ゲートを開閉駆動するための運動変換伝達機構が、
本件特許発明は、「リンク機構」であるのに対し、引用発明1は、「カム及び比較的単純なリンク機構」である点。

・相違点(ウ) アクチュエータ(駆動源)としてのモータに、
本件特許発明は、「ステップモータ」を用いているのに対し、引用発明1は、「電子制御式モータ」を用いるとしているにとどまる点。

・相違点(エ) モータとホッパの関係について、
本件特許発明は、「・・・複数種類のホッパと、・・・前記モータは、ホッパ毎に設けられたステップモータであり、・・・指定されたホッパについて、当該ホッパの前記ゲートの・・・動作変化を・・・設定する・・・組合せ計量装置。」とあるように、「モータは、ホッパ毎に設けられ」ており、「指定されたホッパについてゲートの動作変化を設定する」ものであるのに対し、
引用発明1は、「スケールホッパ及びホールディングビンと、・・・前記モータは、個別に設けられた電子制御式モータであり、・・・当該スケールホッパ又はホールディングビンの前記ドアの開き方の特性を、・・・設定する・・・12台の秤を備えた統計秤。」とあるように、「電子制御式モータは、個別に設けられ」ているとされているにとどまり、ホッパ毎に、すなわち、スケールホッパ毎に及びホールディングビン毎に、モータが設けられているかどうかについては、必ずしも明らかではなく、しかも、指定された特定のスケールホッパ又はホールディングビンについてドアの動作変化を設定できるかどうかも明らかでない点。

(6) 想到容易性の判断
上記相違点(ア)ないし(エ)について、以下に検討する。
まず、相違点(ウ)について検討する。
ア 相違点(ウ)
ステップモータは、アクチュエータ(駆動源)としての電子制御式モータの代表例として、本件特許の出願当時に周知であった(3(3)ステップモータ)から、引用発明1の「電子制御式モータ」は、本件特許発明の「ステップモータ」を十分に示唆しているといえる。

イ 相違点(ア)及び相違点(イ)
相違点(ア)と相違点(イ)とを、それらの技術的関連性に鑑み、併せて検討することとする。

(ア) ゲートの開き方のプロファイル(特性)とカムの使用の観点からの検討
a ゲートの開き方のプロファイル(特性)
ゲートの開き方のプロファイル(特性)に関し、引用発明1は、「スケールホッパ又はホールディングビンのドアの開き方のプロファイル(特性)を、そのパフォーマンスが最大化するよう適合させるべく、ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できるようメモリに設定する入力手段」を備えることにより、「個々の物品、重量や速度に応じて、スケールホッパ又はホールディングビンについての前記ドアの開きをそのパフォーマンスが最大化するように、ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できる」ものとされている。

b 問題の所在
してみると、「ドアの開き方のプロファイル(特性)を、パフォーマンスが最大化するよう適合させるべく、ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できるよう・・・設定する」ようにした引用発明1が、本件特許発明の如き「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を・・・任意に設定する」ことに実質的に相当するのか、あるいは、実質的に相当しないとしても、そのことを示唆するものであるかどうか、が問題となる。

c 刻々の動作変化の意義
そこで、まず、本件特許発明における「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を前記ステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する」ことの意義について検討する。
(a) 本件特許発明においては、ゲートの開き始めから閉じるまでを複数の期間(t1ないしt6)に区分し、例えば、t1 期間は等速、t2 期間は漸次減速、t3 期間は停止、t4 期間は逆方向に漸次増速、t5 期間は逆方向に等速、t6 期間は逆方向に漸次減速といったゲートの開閉動作が任意に実現されるようにすることを目的としており、そのために、各期間t1ないしt6のそれぞれを、更に1つ以上のi(以下、期間tと区別して、「区間i」という。)に区分し、区間i毎に、パルス周期(Ti)、パルス数(Pi)及び回転方向(Fi)を、それぞれ任意に設定できるようにしている(2(1)ア(カ))。
したがって、区間i毎のパルス周期(Ti)、パルス数(Pi)及び回転方向(Fi)の変化が本件特許発明にいう「刻々の動作変化」に当たると解される。
(b) そして、本件特許発明は、「ステップモータの動特性データ」として「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を任意に設定する」ものであるところ、甲第12号証によれば、ステップモータとは、モータに対してパルス信号を与えることでモータを回転させ、与えたパルスの周波数に比例して正確にモータを回転させることができるので、容易に高精度の位置決めをすることができるものである。(3(3)イ)
そうすると、本件特許発明にいう「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化」についても、ステップモータが本来備えた上記の特性と関連付けて理解すべきであるから、「ゲートの開き始めから閉じるまでの、ステップモータの動特性データとして設定される動作変化」を意味するというべきである。

d 運動変換伝達機構
次に、ゲートを開閉駆動するための運動変換伝達機構について検討する。 甲第3号証に記載のコマンダー2なる組合せ計量装置は、ゲートを開閉駆動するための運動変換伝達機構として、「カム及び比較的単純なリンク機構」を用いている。
(a) ここで、カムとは、「回転軸からの距離が一定でない周辺を有し、回転しながらその周辺で他の部材に種々の運動を与える装置。」(広辞苑第5版)のことをいうほか、以下の文献にそれぞれ解説されている内容を総合すれば、一般に、「回転する軸に取り付けられ、軸の回転角度に対応した曲面が円周に形成されている機械要素のことであり、これを回転する軸に取り付け、その円周に接する従動体に周期的な運動を与えることができるようにしたものである。」といえる。
α 甲第32号証:富塚清編「機械工学概論改訂版」森北出版株式会社1974年[昭和49年]8月1日発行、57頁2行?5行)には,次の各記載がある。
「カムは特殊の輪郭をもった部品で、この輪郭に、ナイフエッジ,ローラー,円筒面あるいは平面をもつ接触子を直接に接触させて運動を伝えるもので、カム、接触子およびこれらを支持するフレームの3部分で構成される機械構造をカム機構という・・・」
β 甲第33号証機械工学便覧改訂第6版[分冊7]」社団法人日本機械学会 昭和50年12月20日発行、7-151頁右欄10行?13行)には,次の各記載がある。
「カム装置とは特殊な形状をもった節と、ナイフエッジ、ローラ、平面などの単純な形状の接触子を持った節との直接接触によって、従動体に所要の周期的運動を与える機構である。」
なお、上記カムについては、同様なことが、甲第31,34?38号証からも認められる。
(b) また、リンクとは、「運動または力を伝達する装置。連動装置。」(広辞苑第5版)のことであるところ、リンク機構とは、一般に、「複数のリンク(形の変化しない構造物のことで、節ともいう。)をジョイント(関節ともいう。)によって連結した機械要素のことであり、通常、入力を異なる動作、速度、加速度に変換して出力することで、機械的倍率を得るように設計されたものである。」といえる。

e 出願当時の技術水準
(a) 本件特許の出願当時、アクチュエータ(駆動源)にモータ(ステップモータを含む)を使用した組合せ計量装置にあっては、モータの回転運動をカム機構により周期的な往復運動に変換し、変換された周期的な往復運動をリンク機構によりホッパのゲートにまで伝達し、ゲートの開閉動作を行うようにすることが一般的であった。((2)ア(ア))。
(b) さらに、本件特許の出願当時、ゲートを開閉駆動するための運動変換伝達機構としてカムを使用した組合せ計量装置において、ホッパゲートの開閉動作は、用いられるカムの輪郭形状に大きく依存するものであることも、周知技術であり、技術常識であった。(3(11)イ)

(c) 上記本件特許の出願当時の技術水準(a)、(b)及び機械要素としての「カム」が備える機能(上記d(a))を総合すると、本件特許の出願当時、「アクチュエータ(駆動源)にモータ(ステップモータを含む)を使用し、ゲートを開閉駆動するための運動変換伝達機構としてカムを使用した組合せ計量装置にあっては、モータの回転運動をカム機構によりカムの輪郭形状に応じた周期的な往復運動に変換し、変換された周期的な往復運動をリンク機構によりホッパのゲートにまで伝達し、ゲートの開閉動作を行うようにする。」ことが技術常識であったといえる。
してみると、引用発明1は、ドアを開閉駆動するための運動変換伝達機構として「カム及び比較的単純なリンク機構」を採用し、かつ、アクチュエータ(駆動源)として「電子制御式モータ」を使用しているから、上記技術常識を踏まえると、引用発明1においても、ドアの開閉動作については、電子制御式モータの回転運動をカム機構によりカムの輪郭形状に依存した周期的な往復運動に変換し、変換された周期的な往復運動を比較的単純なリンク機構によりホッパゲートにまで伝達し、ゲートの開閉動作を行うようにしているものと解される。
したがって、引用発明1におけるドアの開き方のプロファイル(特性)は、まずは、カムの輪郭形状、すなわち、円周に形成された軸の回転角度に対応した曲面の形状によって定まるものといえる。また、アクチュエータ(駆動源)として電子制御式モータを用いているから、電子制御されたモータの動作によっても定まるといえる。
すなわち、引用発明1におけるドアの開き方のプロファイル(特性)は、用いられているカムの輪郭形状によって規定されるとともに、電子制御されたモータの動作によっても規定されるものである。

f 論点
そこで、進んで、引用発明1において、カムの輪郭形状と、電子制御されたモータの動作とにより規定されるような「ゲートの開き方のプロファイル(特性)」なるものが、本件特許発明の特徴部である「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を・・・任意に設定する」ことに実質的に相当するか、あるいは実質的に相当しないとしても、そのことを示唆するか、について以下検討する。
この点について、次の論点(a)ないし(c)に分けて検討する。
(a) カムの使用と刻々の動作変化との関係
α 引用発明1は、ドアを開閉駆動するための運動変換伝達機構として、カム及び比較的単純なリンク機構を用いている。
ところで、前記「e(b)」で説示したように、一般にホッパゲートに開閉動作を行わせるためにカムを用いた場合、ゲートの開閉動作の仕方は、カムの輪郭形状に大きく依存するものである。すなわち、カムが所定の速さで回転運動をしていたとした場合、カムの外周曲面に係る半径の、軸の回転角度に対する変化率が大きい部分にリンク機構の一端が摺接するときは、ドアの開閉動作は速くなり、逆に、該変化率が小さい部分にリンク機構の一端が摺接するときは、ドアの開閉動作は遅くなる。
したがって、仮に、引用発明1も、本件特許発明のように、ステップモータの動特性データとしてゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を任意に設定することが可能であるとすると、ドアの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を所望なものに設定するためには、その動特性データは、カムの輪郭形状の複雑さに依らず、該カムの輪郭の形状を加味したものとせざるを得ず、よって、そのような動特性データの設定は単純ではない。
β そこで、かかる動特性データの設定に関し、まず、本件特許発明について検討する。
本件特許明細書等には、「ところで、計量ホッパは、計量中においてはアクチュエータ(駆動源)に連結されたレバーと分離されていなければならないので、ゲートが閉じた状態では、レバーとゲート開閉リンクのローラとの間には第9図Bの部分を示した第8図のように所定のクリアランスが設けてある。」(2(1)ア(カ)e)との記載があり、その様子が第8図に説明模式図として示されている(2(1)イ(エ))。
そして、本件特許発明を規定する特許請求の範囲には、「・・・各ゲートをリンク機構を介して開閉駆動するモータ・・・」とあるように、「カム」については記載されていない。
よって、これらの記載によれば、アクチュエータ(駆動源)であるステップモータの回転に伴い、レバーがその軸の回りに回動し、リンク機構の先端に設けられたローラが該レバーに摺動することで、リンク機構の他端に連結されたゲートの開閉動作が実現されることが把握できる。
ここで、リンク機構の先端に設けられたローラに摺動しているのは、第8図に示されているようにレバーである。そして、レバー(lever)とは、「梃子」(広辞苑第5版)のことであり、一般に、「てこの原理を応用した操作棒」を意味する機械要素である。
よって、レバーは、外周面に接する対象物にその輪郭の形状に従った往復運動を実現する機械要素であるカムとは全くその機能が異なるものであって、このようなレバーによれば、ステップモータの動特性データとして設定された、ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を、ホッパゲートに、およそそのまま与えることができるものと解される。
ところで、本件特許発明においては、パルス周期(Ti)、パルス数(Pi)及び回転方向(Fi)からなる動特性データを区間i毎に設定したものがテーブルとして本件特許明細書等の第1表に示されている(2(1)ア(カ)b)ところ、この第1表に示された動特性データに関するテーブルと、第2図に示されたホッパゲートの動作特性図(2(1)イ(イ))とを併せて見てみる。
まず、等速期間である期間t1に着目すれば、区間iは1のみで、区間i=1における、パルス周期(Ti)は0.67msec、パルス数(Pi)は89及び回転方向(Fi)は+に設定しており、区間iの時間は0.67msec×89=60msecである。この結果、期間t1においては、ホッパゲートが60msecに亘り直線的に開いていく様子が第2図から見て取れる。
次に、漸次減速期間であるt2に着目すれば、回転方向(Fi)は、+で不変であるけれども、期間t2を構成する区間i=2では、パルス周期(Ti)を1.2msec、パルス数(Pi)を5と設定し(区間i=2の時間は6msecとなる。以下、同様。)、区間i=3では、パルス周期(Ti)を2.0msec、パルス数(Pi)を3に設定し(6msec)、以下同様に、区間i=4ではそれぞれ、4.0msec、2に設定し(8msec)、区間i=5ではそれぞれ10msec、1に設定(10msec)している。この結果、期間t2においては、ホッパゲートは、期間t1に引き続き更に開いていくけれども、その開きの動作は漸次減速していく様子が第2図から見て取れる。
このように、本件特許発明においては、刻々の動作変化として、ホッパゲートの開閉動作が所望なものとなるよう、各期間(t1,t2)を構成する区間i毎に所定の動特性データを設定しているところ、その動特性データは、ホッパゲートが等速に(t1)、あるいは漸次減速に動作する(t2)態様を略そのまま動特性データとして設定したものといえる。このことは、他の期間t3ないしt6についても同様である。
γ これに対し、引用発明1においては、ドアを開閉駆動するための運動変換伝達機構として、カム及び比較的単純なリンク機構を用いている。そして、一般にホッパゲートに開閉動作を行わせるためにカムを用いた場合、ゲートの開閉動作の仕方は、カムの輪郭形状に大きく依存するものであるから、ステップモータの動特性データとしてゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を任意に設定することが可能であるとすると、ドアの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を所望なものに設定するためには、その動特性データは、該カムの輪郭の形状を加味した複雑なものとせざるを得ず(上記α)、所望の動特性データをテーブルに設定しようとすると、カムの輪郭の形状に応じて、その都度、動特性データを作り直す必要があるものと考えられる。
この点に関し、甲第3号証には、そもそも、電子制御式モータの動特性データとしてドアの動作変化を設定する旨の記載はなく、ましてや、カムの輪郭形状と動特性データとの関係についての記載もない。
δ よって、カムの使用と刻々の動作変化との関係から見ると、引用発明1は、ドアを開閉駆動するための運動変換伝達機構として、カム及び比較的単純なリンク機構を用いており、しかも、本件特許発明にいう「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化」は、「ゲートの開き始めから閉じるまでの、ステップモータの動特性データとして設定される動作変化」のことと解すべき(c(b))であるから、引用発明1に係る、カムの輪郭形状と、電子制御されたモータの動作とにより規定されるような「ゲートの開き方のプロファイル(特性)」は、もはや、本件特許発明に係る「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を・・・任意に設定する」ことに実質的に相当するものではないことはもちろんのこと、このことを示唆するものでもない。

(b) パフォーマンスが最大化するよう適合させるとしている点
α 引用発明1は、「ドアの開き方のプロファイル(特性)を、パフォーマンスが最大化するよう適合させるべく、ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できるようメモリに設定する入力手段」を備え、それにより、「個々の物品、重量や速度に応じて、・・・ドアの開きをパフォーマンスが最大化するように、ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できるようにした」ものであるところ、ここにいう「パフォーマンス」とは組合せ計量装置としての性能や機能をいうと解され、また、一般に、組合せ計量装置としての性能、機能を最大化するとは、被計量物の量、種類や求められる計量速度に応じて最適な計量となるよう、ゲートの開き方のプロファイル(特性)を設定することであると認められる。
β この点に関し、本件特許の出願当時の技術水準によれば、ゲートの開閉動作に関して、任意に設定できるのは、単純なゲートの開時間であった((2)イ(イ))こと、及びゲートの開閉速度はモータの回転速度に依存することから、本件特許の出願当時の技術水準を踏まえると、引用発明1におけるカムの輪郭形状と、電子制御されたモータの動作とにより規定されるような「ドアの開き方のプロファイル(特性)」が意味するのは、被計量物の量や求められる計量速度に応じて、ドアの開時間や電子制御式モータの回転速度、すなわち電子制御式モータに与えるパルス周期を設定することにより実現されるような、ドアの開き方のことにとどまると解するのが妥当である。
γ また、引用発明1においては、ゲートを開閉駆動するための運動変換伝達機構として、カム及び比較的単純なリンク機構を用いているというのであるから、電子制御式モータの回転とともに回転するカムの外周に摺動するように設けられたリンク機構が周期的な往復運動を行うことで、該リンク機構に連結されたドアの開閉動作が実現されるものである。
そして、引用発明1において運動変換伝達機構として用いられているリンク機構は比較的単純なリンク機構というのであるから、カムの輪郭の形状に摺動して動作するリンクの従節作動端が行う往復運動が、およそそのままドアに伝達されていると解するのが自然である。
なるほど、引用発明1においては、アクチュエータ(駆動源)として電子制御式モータを用いているというのであり、また、ゲートの開時間を任意に設定することが本件特許の出願当時の技術常識であった((2)イ(イ))ことから、引用発明1において、ドアの開閉動作の全期間に亘って、一様に、例えばパルス周期を小さくすることでドアの開閉動作を速くしたり(したがって、ゲートの開時間は短くなる。)、逆に、一様に、パルス周期を大きくすることで、開閉動作を遅くする(したがって、ゲートの開時間は長くなる。)ことは、十分に示唆しているものと認められる。
しかしながら、このように、パルス周期の大きさを設定したとしても、ドアの開閉動作についてみると、開閉時間全体の長短が変化するにとどまり、結局、カムの輪郭の形状に依存したドアの開閉動作が実現されるに過ぎない。
δ これに対し、本件特許発明においては、「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を・・・任意に設定する」ものであるところ、この「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化」は、「ゲートの開き始めから閉じるまでの、ステップモータの動特性データとして設定される動作変化」と解されるべきものである。(c(b))
ε よって、引用発明1が「パフォーマンスが最大化するよう適合させる」ものであっても、そのことは、引用発明1に係る、カムの輪郭形状と、電子制御されたモータの動作とにより規定されるような「ゲートの開き方のプロファイル(特性)」が、本件特許発明に係る「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を設定する」ことに実質的に相当するとの根拠となるものでも、このことを示唆するとの根拠となるものでもない。

(c) ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できるとしている点
α 「ドアの開きの速度」に関し、引用発明1は、「・・・パフォーマンスが最大化するよう適合させるべく、ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できるようメモリに設定する・・・」ものであるところ、引用発明1は、電子制御式モータを用いているから、ステップモータを始めとする電子制御式モータの有する特性(c(b))を活かして、モータに与えるパルス周期を変更することでドアの開きの速度を変更することが可能である。
β 次に、「ドアの開きの量」(amount of door opening)について検討するに、「ドアの開きの量」との文言については、単に「開きの量」との表現にとどまるから、「ドアの開度」を意味するとも解されるほか、本件特許の出願当時、アクチュエータ(駆動源)としてモータを使った組合せ計量装置において、ゲートの開閉動作に関しては、ゲートの開時間を任意に設定することが一般的であった((2)イ(イ))ことから、「ドアの開き時間」を意味するとも解される。
γ 「ドアの開きの量」を、「ドアの開度」又は「ドアの開き時間」のいずれに解釈したとしても、引用発明1における「ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できる」との文言は、精確な制御を可能とするとのステップモータを始めとする電子制御式モータが本来備えた特性を活かして、ドアの開閉速度及びドアの開きの量の両方を精確に制御できる、ようにしたものと解されるから、引用発明1が「ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できる」ものであっても、やはり、そのことは、引用発明1に係る、カムの輪郭形状と、電子制御されたモータの動作とにより規定されるような「ゲートの開き方のプロファイル(特性)」が、本件特許発明に係る「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を・・・任意に設定する」ことに実質的に相当するとの根拠になるものでも、このことを示唆するとの根拠となるものでもない。
δ なお、請求人は、上記「amount of door opening」を「ドアの開度」と解すべき旨主張しているので、検討しておく。
甲第18?25号証によれば、ホッパゲートの開度を英語表現として、「Hopper gate open angle」が用いられており、これによれば、「ドアの開度」を一義的に表現するには「open angle」との文言が明記されるべきものと認められるところ、甲第3号証は、「amount of door opening」との曖昧な表現にとどまっている。
よって、請求人の主張は採用できない。

(d) そして、引用発明1における「ドアの開き方のプロファイル(特性)」について、「パフォーマンスが最大化するよう適合させる」点、及び「ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できる」点を併せて検討しても、前記(b),(c)で説示したように、それぞれが有する技術的意義以上のものを認めることはできない。
よって、引用発明1における「ドアの開き方のプロファイル(特性)」が「パフォーマンスを最大化するよう適合させる」ものであり、かつ、「ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できる」ものであっても、それらのことは、やはり、引用発明1に係る、カムの輪郭形状と、電子制御されたモータの動作とにより規定されるような「ゲートの開き方のプロファイル(特性)」が、本件特許発明に係る「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を・・・任意に設定する」ことに実質的に相当するとの根拠となるものでも、このことを示唆するとの根拠となるものでもない。

(e) まとめ
以上のとおり、引用発明1に係る、カムの輪郭形状と、電子制御されたモータの動作とにより規定されるような「ゲートの開き方のプロファイル(特性)」は、カムの使用と刻々の動作変化との関係の観点から見れば、およそ、本件特許発明の特徴部である「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を・・・任意に設定する」ことに実質的に相当するものでも、このことを示唆するものでもない。
また、引用発明1における「ドアの開き方のプロファイル(特性)」が、「パフォーマンスが最大化するよう適合させる」としており、「ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できる」としているとしても、それらのことは、引用発明1に係る、カムの輪郭形状と、電子制御されたモータの動作とにより規定されるような「ゲートの開き方のプロファイル(特性)」が、本件特許発明の特徴部である「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を・・・任意に設定する」ことに実質的に相当するとの根拠になるものでも、このことを示唆するとの根拠となるものでもない。((b),(c))

g 甲第3号証に記載のコマンダー2なる組合せ計量装置の実際
(a) ところで、甲第3号証には、「Woodman systems division of Kliklok corporation will introduce this complete system for the first timer at the PMMI Pack Expo in November.」(41頁右欄15?19行)(クリッククロック・コーポレーションのウッドマンシステムズ部門は、11月に開催されるPMMIパック・エキスポにおいて、この完全なシステムを初めて出品する。)との記載があるから、甲第3号証は、コマンダー2なる組合せ計量装置の紹介記事であるといえる。
他方、乙第7号証には、その表紙に
「 Commander 2
Computerized Weigher Operator Manual
PRELIMINARY With 183 Program
WOODMAN KLIKLOK WOODMAN」
と記載されているから、乙第7号証は、甲第3号証で紹介されたコマンダー2なる組合せ計量装置の操作マニュアルであると認められる。

(b) 乙第7号証
そこで、乙第7号証を参照すると、そのプロンプト#45として、ドア開の動作に関して、オペレータは、#1又は#2から一方を選択可能であり、#1は、ドアが完全に開くと共に瞬時に閉じるものであり、#2は、量が多い場合に、ドアを完全に開き、およそ150ミリ秒経過後にドアを閉じるものが示されている。(4(2)ウ、エ)
すなわち、乙第7号証によれば、甲第3号証で紹介されたコマンダー2なる組合せ計量装置の実際は、ドアの開き方については、2通りが用意されているに過ぎず、しかも、その開き方にしても、以下のようなものと認められ、本件特許発明のような、「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を・・・任意に設定する」ようなものとはおよそ異なる。
このことは、組合せ計量装置において、計量ホッパやフィードホッパのゲートの開時間(ゲートが開き切った状態の時間や、開き始めてから閉じるまでの時間)を設定できるようすることは一般的であった、という本件特許の出願当時の技術水準((2)イ(イ))にも適うものである。
また、一般に、組合せ計量装置に限らず新製品の紹介記事は、いわゆる技術レポートと相違し、紙面の制限もあって、ややもすれば実現する機能以上のものが解釈され得るような表現を使用することがあるのは、良く経験するところである。
以上のことからも、甲第3号証に記載のコマンダー2なる組合せ計量装置は、本件特許発明のような、「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を・・・任意に設定する」ようなものではないとした上記判断は妥当であったと裏付けることができる。
(コマンダー2のドアの開き方)
#1(量が少ない場合)全閉 → 全開 → 全閉
#2(量が多い場合) 全閉 → 全開(150msec全開状態を維持)→ 全閉

h まとめ
以上のとおり、甲第3号証記載の発明(引用発明1)における「ドアの開き方のプロファイル(特性)を、パフォーマンスが最大化するよう適合させるべく、ドアの開きの速度及び開きの量の両方を精確に制御できるよう・・・に設定する」ことは、本件特許発明の「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を・・・任意に設定する」ことに、実質的に相当するものでもなく、また、このことを示唆するものでもない。

(イ) 周知技術AないしCの適用の観点からの検討
a 周知技術A
前記「3(6)イ」で示したように、甲第4号証ないし甲第7号証によれば、請求人主張のとおり、本件特許の出願当時、下記周知技術Aが周知であったということができる。
(周知技術A)
「カム動作制御装置、半導体チップの移送装置、塑性物質のたねを供給するためのフィーダ機構、ダイボンダーの技術分野において、従来のカム制御技術では従動体の動作モードの変更に対応できず自在性に欠けていたことを課題として、カムの回転パターンをプログラムする基礎データを記憶する記憶手段と、該記憶手段に記憶された回転パターンに基づいて当接している従動体に所定の動作を与えるカム駆動モータの作動を制御するための制御装置とを設け、被駆動部材の動作モードに変更があってもプログラムの変更のみで対処し得るようにした被駆動部材の動作制御方法。」
しかしながら、たとえ、周知技術A自体に、「従来のカム制御技術では従動体の動作モードの変更に対応できず自在性に欠けていた」という課題があったとしても、引用発明1には、上記(ア)で説示したように、そもそも、「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を任意に設定する」という課題自体を示唆するものでもないし、しかも、ゲートの動作変化を変更するためにはカムを別の輪郭形状のものに取り替える必要があり、その取り替えは組合せ計量装置を分解等しなければならず簡便に行うことは困難であるところ、甲第3号証には、かかるゲートの動作変化を簡便に変更するという、前提となるべき動機付けについての記載も示唆もない。
さらに、組合せ計量装置において、ゲートを開閉駆動するための運動変換機構として、「カム」を用いた場合の問題点や、本件特許明細書等に記載された本件特許発明が解決しようとする問題点も、いずれの甲号各証によっても、本件特許の出願当時に知られていたとも認められない。
加えて、周知技術Aは、一般的なカム動作制御装置(甲第4号証)、半導体チップの移送装置(甲第5号証)、溶融ガラス等の塑性物質のたねを供給するためのフィーダ機構(甲第6号証)、ダイボンダー(甲第7号証)の技術分野に係るものであり、組合せ計量装置という特定の技術分野に係るものでもない。
よって、引用発明1に周知技術Aを適用することはできない。

b 周知技術B
前記「3(7)イ」で示したように、甲第8号証ないし甲第10号証又は甲50第号証ないし甲第59号証によれば、請求人主張のとおり、本件特許の出願当時、下記周知技術Bが周知であったということができる。
(周知技術B)
「被駆動部材の刻々の動作変化をステップモータの動特性データとしてテーブルあるいはメモリ等に任意に設定することによって該被駆動部材の動作を任意に制御できるようにしたステップモータ制御装置。」
しかしながら、「被駆動部材の刻々の動作変化をステップモータの動特性データとしてテーブルあるいはメモリ等に任意に設定することによって該被駆動部材の動作を任意に制御できるようにしたステップモータ制御装置。」が周知技術Bとして周知であったとしても、引用発明1には、そもそも、「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を任意に設定する」という課題自体を示唆するものでもないし、しかも、ゲートの動作変化を変更するためにはカムを別の輪郭形状のものに取り替える必要があり、その取り替えは組合せ計量装置を分解等しなければならず簡便に行うことは困難であるところ、甲第3号証には、かかるゲートの動作変化を簡便に変更するという、前提となるべき動機付けについての記載も示唆もないことは前記「a周知技術A」で説示したと同様である。
加えて、周知技術Bの認定の根拠となった甲号各証は、プレスにおけるシート状の打抜素材の送り装置、物品供給装置、罐詰、壜詰等の充填装置、フイルムによる包装装置、工作機械、コンベヤ、シーマ、シーラ等の各種の機械に用いる間歇駆動装置(甲第8号証)、一般的なパルスモータ制御装置(甲第9号証)、パルスモータ又は直流モータ等に用いる加減速パルス発生装置(甲第10号証)、ステップモータ(ステップモータ)についての一般的教科書(甲第50?52号証)、二電圧駆動するパルスモータ制御回路(甲第53号証)、複写機の原稿スキャナ駆動、プリンターのキャリッジ駆動等に応用し得るパルスモータ速度制御方式(甲第54号証)、ステッピング・モータ制御方式(甲第55号証)、位置決め制御装置(甲第56号証)、油圧制御装置に用いられるデジタル弁制御装置のテーブル情報作成方法(甲第57号証)、ロボットの動作制御装置(甲第58号証)、乗客用ドア移動制御方法及び装置(甲第59号証)の技術分野に係るものであり、組合せ計量装置という特定の技術分野に係るものでもない。
よって、引用発明1に周知技術Bを適用することはできない。

c 周知技術C’
(a) 前記「3(8)イ」で示したように、甲第27,28,30号証又は甲第60,61,64,65号証よれば、本件特許の出願当時、下記周知技術C’が周知であったということができる。
(周知技術C’)
「組合せ計量装置の技術分野において、その運転に先立って、計量ホッパや供給ホッパ等のホッパの種類毎にゲートの開放時間をホッパの種類毎に任意に設定すること。」
(b) しかしながら、上記「a周知技術A」、「b周知技術B」で説示したように、周知技術A及び周知技術Bが、いずれも引用発明1に適用できないのであるから、たとえ、引用発明1に周知技術C’を適用したとしても、ゲートの開き方のプロファイル(特性)に関する相違点(ア)に係る、本件特許発明の特徴部である「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を・・・任意に設定する」が構成されることにはならない。

(ウ) 作用効果
そして、本件特許発明は、本件特許発明の特徴部である「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化をステップモータの動特性データとしてテーブルに任意に設定する入力手段」を備えることにより、前記「2(2)本件特許発明の意義」で説示したとおりの、ゲート開度を被計量物の供給量に応じて任意に調整でき、計量スピードも任意に変えることができるよう作用するため、供給量に応じて計量スピードを変えることができる、ゲート開閉の動作特性を入力装置で簡単に変えることができる、各ホッパ毎に任意に開閉スピードを変えることができる、ゲートをどのように開閉させるかを、データとして登録しておくことができる、ゲート開閉リンクの摩耗によってゲート開閉時の騒音が大きくなっても、ゲート開閉特性をデータの変更によって調整することにより簡単に騒音を押えることができる、との本件特許明細書等に記載の作用効果を奏するものである。

(エ) まとめ
以上のとおりであるから、乙第7号証に依拠するまでもなく、本件特許発明は、相違点(ア)、(イ)において、本件特許の出願前に、当業者といえども引用発明1並びに周知技術A、周知技術B及び周知技術C’に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

ウ 相違点(エ)について
(ア) 対比・検討
本件特許発明では、モータはホッパ毎に設けられているところ、組合せ計量装置においては、複数種類のホッパを構成する例えばプールホッパ及び計量ホッパは、いずれも、組合せとして選択されるよう、それぞれ複数個あるものである。よって、本件特許発明において「ホッパ毎に設けられたステップモータ」とは、「ステップモータが複数種類に亘る個々のホッパ毎に設けられていること」を意味すると認められる。しかも、本件特許発明は、「・・・指定されたホッパについて、当該ホッパの前記ゲートの・・・動作変化を・・・設定する入力手段と、・・・組合せ計量装置。」とあるように、「指定されたホッパについてゲートの動作変化を設定する」ものである。
これに対し、引用発明1は、電子制御式モータがスケールホッパ及びホールディングビン毎に設けられているかどうかについては、必ずしも明らかではない((5)ウ 相違点(エ))ところ、ゲートを開閉駆動するアクチュエータ(駆動源)としてモータ(ステップモータを含む)を使用した組合せ計量装置において、本件特許の出願当時の技術水準によれば、1つのモータにより、種類の異なるホッパ(プールホッパと計量ホッパ)のゲートの開閉駆動を、共に行うようにすることが一般的であるというにとどまり((2)ア(イ))、甲号各証によっても、複数種類に亘る個々のホッパ毎にモータ(ステップモータを含む)を設けることが周知技術であったということはできない。
さらに、引用発明1においては、指定された特定のスケールホッパ又はホールディングビンについてドアの動作変化を設定できるかどうかが明らかでない((5)ウ 相違点(エ))ところ、甲第27号証、甲第28号証及び甲第30号証や甲第60,61,64,65号証によっても、「組合せ計量装置の技術分野において、その運転に先立って、計量ホッパや供給ホッパ等のホッパの種類毎にゲートの開放時間をホッパの種類毎に任意に設定すること。」(周知技術C’)が周知であったというにとどまり、指定された特定のホッパについてゲートの開放時間を任意に設定する技術的手法が周知であったとはいえないことは、前記「3(8)イ 周知技術C’」で説示したとおりである。(イ(イ)c(c))

(イ) 作用効果
そして、本件特許発明において、ステップモータはホッパ毎に、すなわち、複数種類に亘る個々のホッパ毎に設けられていることから、本件特許明細書等に記載のとおりの、「ホッパゲートの開度指定やスピード変更は、全てのホッパを対象にして一括して設定することもできれば、個々のホッパ毎に個別に指定することもできる」(2(1)ア(カ)d)ものである。
すなわち、本件特許発明は、「ステップモータは複数種類に亘る個々のホッパ毎に設けられている」ことを前提に、前記相違点(エ)に係る「指定されたホッパについてゲートの動作変化を設定する」ものである構成とあいまって、特定のホッパゲートが所定の動作変化を行うよう、対象となる特定のホッパを指定することにより、指定された特定のホッパゲートは、所定の動作変化を行うことができたものということができる。
この結果、本件特許明細書等に、「例えば、第4図(b)に示すようなメッセージを表示させて、ホッパ毎に個別に指定しても良い。このように個別に指定できるようにすると、例えば、特開昭58-223718号公報(発明の名称:組合せ計量装置、出願人:株式会社石田製作所、公開日:昭和58年12月26日)に開示されているような、所謂親子計量において有効となる。即ち、親機と子機とでは、それぞれ動作スピードが異なるし、又、ホッパへの供給量も異なるので、それぞれに適したスピードとゲート開度を指定することによって最適制御を行わせることができる。」(2(1)ア(カ)d)と記載されているように、いわゆる親子計量への適用にあたっては、親機と子機とで、各ホッパゲートの動作変化をそれぞれ適した開度や開閉スピードに設定できるとの作用効果を奏するものといえる。
すなわち、上記本件特許明細書等に親子計量機の例示として挙げられた上記特開昭58-223718号公報によれば、親子計量機は、プールホッパ12b、計量ホッパ12dを含む計量セクション12を多数有し、このうち補正充填用セクション12Aを子機、荒充填用計量セクション12Bを親機というものであるところ、仮に、計量セクション12毎にモータを設けたものであったとすると、共通する1つのモータで親機及び子機のそれぞれについて、プールホッパ12b及び計量ホッパ12dの開閉動作を行うこととなるから、各ホッパゲートの開閉動作は、必然的に、互いに所定の関係を持った動作変化となるところ、「ホッパ毎に設けられたステップモータ」とし、「指定されたホッパについてゲートの動作変化を設定する」ものである本件特許発明にあっては、親機及び子機毎に、それぞれ、プールホッパ12b及び計量ホッパ12dについて、そのゲートの動作変化を設定することができるから、「それぞれ適した開度や開閉スピードに設定できる」との本件特許明細書等に記載(2(1)ア(カ)d、(キ))の作用効果を奏するものといえる。

(ウ) まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明は、相違点(エ)においても、本件特許の出願前に、当業者といえども引用発明1及び周知技術C’に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

エ 請求人の主張について
(ア) 引用発明1’
a 請求人は、口頭審理陳述要領書(1)において、新たに甲第31?62号証を提出するとともに、これら甲号各証に示された本件特許の出願当時の技術水準を踏まえると、甲第3号証より、次の発明が実質的に認定できるとも主張しているので、検討しておく。
「被計量物品を貯蔵し排出する複数種類のホッパと、各ホッパの排出口にそれぞれ設けられたゲートと、各ゲートをリンク機構を介して開閉駆動するモータとを備えた組合せ計量装置であって、
前記モータは、ホッパ毎に設けられた電子制御式モータであり、前記電子制御式モータによりゲートを開閉駆動するホッパについて、当該ホッパの前記ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化をテーブルに任意に設定する設定手段と、
組合せ演算の結果選択されたホッパについて設定されたゲートの動作変化に基づいて前記電子制御式モータを制御する制御手段とを設け、
入力手段がコントロールパネルに含まれており、
被計量物の種類や供給量に応じて、前記ゲートの動作を任意に制御できるようにしたことを特徴とする組合せ計量装置。」(以下、「引用発明1’」という。)
b そこで、請求人が本件特許の出願当時の技術水準を示すものとして挙げた上記甲第31?62号証について、以下に順次検討する。
(a) 甲第31?38号証によれば、請求人主張のとおり、「カムを用いて被駆動部材の動作変化を設定すること」が、本件特許の出願当時、周知技術であったことが認められる。(3(9))
(b) 甲第40?43号証によれば、「カムを用いてホッパゲートの動作変化の設定を行うこと」が、本件特許の出願当時、周知技術であったことが認められる。(3(10))
(c) 甲第44?47号証によれば、組合せ計量装置において、本件特許の出願当時、種々の機構を用いてホッパゲートの動作変化を所望なものに設定することが、周知技術であったことが認められる。(3(12)イ)
(d) 甲第48,49号証は、それぞれ乙第10,8号証と同じ刊行物であるところ、これら甲号証各証によれば、請求人の主張のとおり、組合せ計量装置において、ゲートを開閉するアクチュエータ(駆動源)としてステップモータを用いることが、本件特許の出願当時、周知技術であったことが認められる。(3(13))
(e) 甲第50?59号証によれば、請求人主張のとおり、ステップモータを使用して被駆動部材の動作を制御するために、被駆動部材の刻々の動作変化をステップモータの動特性データとしてテーブルあるいはメモリ等に任意に設定することによって該被駆動部材の動作を任意に制御できるようにすることが、本件特許の出願当時、周知技術であったことが認められる。(3(7)イ)

c しかしながら、上記甲号各証を根拠とするこれら周知技術によっても、請求人が実質的に認定できるとする引用発明1’のうち、本件特許発明の特徴部である「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を・・・任意に設定する」点が導けないことは、前記「イ 相違点(ア)及び(イ)」で説示したと同様である。
よって、請求人の主張は採用できない。

(イ) プロファイル
a 請求人は、甲第16,17号証や甲第51,52号証を挙げて、速度やステッピングレートの時間変化グラフの形状がなめらかな曲線形状となっているものを(時間変化の)プロファイルというのであるから、「ドアの開き方のプロファイル(特性)」と記載された甲第3号証に記載のコマンダー2なる組合せ計量装置(引用発明1)におけるドアの開き方についても、刻々の動作変化をするものと解すべき旨主張している。
なるほど、甲第16号証によれば、ステッピングモータを利用して制御対象物を制御する場合、速度やステッピングレートの時間変化グラフをprofile(プロファイル)と称しており、そのグラフは、あたかも本件特許明細書等の第2図に示された「ホッパゲートの動作特性図」(2(1)イ(イ))と類似する、なめらかな曲線形状となっている。同様に、甲第17号証によれば、ステッピングモータを利用して制御対象物を制御する場合、ステッピングレートの時間変化グラフをprofile(プロファイル)と称しており、そのグラフは2つのなめらかな曲線が結合された形状となっている。このことは、甲第51,52号証についても同様である。
b ところで、職権調査により引用する刊行物である特開昭61-150700号公報(発明の名称「ステッピングモータ駆動装置」、出願人 テクトロニックス・インコーポレイテッド、公開日 昭和61年7月9日)には、次の記載(a),(b)があり、下記記載(a)及び第3a図から線形加速/減速のプロファイル(特性)が、また、下記記載(a)及び第3b図から非線形加速/減速のプロファイル(特性)が、それぞれ見て取れる。
(a) 「ステッピングモータはX-Yプロッタやプリンタ等の機器の精密駆動部に使用されている。斯る機器の可動体は、選択された速度に加速し、また減速する必要がある。その加速/減速プロファイル(特性)は線形の場合もあれば非線形の場合もある。第3a図に示す如き線形加速/減速プロファイルでは、変化点でリンギングを生じることとなる。最高速度で最適化した非線形加速/減速プロファイルの場合には、第3b図に示す如く低速では省略しているので、この場合にもリンギングが生じる。」(1頁右上欄1-10行)
(b) 従来のステッピングモータの加速/減速プロファイル図である第3図

c このように、一般に、速度やステッピングレートの時間変化は、制御対象物をどのように制御するかによって定められるべきものであるから、制御対象物が、例えば時間の経過と共に速く移動し、また時間の経過と共に遅く移動するよう制御しようとするときには、速度やステッピングレートの時間変化のグラフの形状は、その制御の態様に応じた曲線(非線形加速/減速、FIG.3b)となるけれども、制御対象物が一定割合で加速し、一定速度に維持され、一定割合で減速するよう移動するように制御するときは、時間変化グラフの形状は折れ線(線形加速/減速、FIG.3a)である。
したがって、甲第16,17号証及び甲第51,52号証から、速度やステッピングレートの時間変化グラフの形状がなめらかな曲線形状となっており、よって、制御対象物の動作が刻々に変化している様子が見て取れるような時間変化グラフのことを、「(時間変化の)プロファイル(特性)」ということが把握できたとしても、逆に、「(時間変化の)プロファイル(特性)」との記載のみをもって、(速度やステッピングレートの)時間変化グラフの形状が曲線形状のものを一義的に意味することにはならず、ひいては、制御対象物の動作が刻々に変化するものを一義的に意味することにもならない。
したがって、甲第3号証の「ドアの開き方のプロファイル(特性)を・・・適合させる」との記載及び甲第16,17,51,52号証を根拠に、甲第3号証に記載のコマンダー2なる組合せ計量装置(引用発明1)の「ドアの開きのプロファイル(特性)」は、ドアの刻々の動作変化を意味すると解すべきであるとする請求人の主張は、採用できない。

(ウ) 被請求人による使用例
さらに、請求人は、甲第18号証ないし甲第25号証である組合せ計量装置に関する製品カタログを挙げ、被請求人に係る組合せ計量装置においても、横軸が「Hopper gate open period」(ホッパゲート開時間)、縦軸が「Hopper gate open angle」(ホッパゲート開度)のグラフのことを、「Hopper gate motion profile」(ホッパゲート動作プロファイル)と説明しており、しかも、そのグラフの形状は、本件特許明細書等の第2図に示されたホッパゲートの動作特性図と酷似しているから、甲第3号証に記載の「ドアの開きのプロファイル(特性)」は、ドアの刻々の動作変化を意味すると解すべきである旨、主張している。
たしかに、これら甲号各証によれば、「ホッパゲート動作プロファイル」と題するグラフは、全てなめらかな曲線形状をしており、本件特許明細書等の第2図に示されたホッパゲートの動作特性図と同様のホッパゲートの開き始めから閉じるまでの動作変化が刻々に変化している様子が見て取れる。
しかしながら、前記「3(4)ウ」で説示したとおり、これら甲号各証である組合せ計量装置に係る英文カタログは、いずれも、本件特許の出願後に頒布されたものであるから、上記甲号各証に記載の「ホッパゲート動作プロファイル」という用語に類する、甲第3号証に記載の「ドアの開きのプロファイル(特性)」との文言が、本件特許発明に係る「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化」を意味することの根拠とはならない。
ところで、上記製品カタログに記載された被請求人の製品である組合せ計量装置は、全て本件特許を使用しており(3(4)ウ)、本件特許発明の特徴は、「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を・・・任意に設定する」ものであるところ、この特徴点を最も良く表すものが、本件特許明細書等の第2図に示された「ホッパゲートの動作特性図」である。
してみると、むしろ、上記甲号各証によれば、製品カタログに記載した組合せ計量装置が本件特許品であることを説明するために、本件特許発明の特徴を良く表すものとして、「ホッパゲート動作プロファイル」に係るグラフをカタログに記載して、本件特許の出願後に製品カタログとして頒布したものと解するが妥当である。
また、請求人は、この点に関し、追加的に甲第63号証を挙げているが、同証には、「FRIDAY 28 JANUARY 1994」と記載されており、本件特許の出願後に頒布されたものと認められるから、上記と同様に、甲第3号証に記載の「ドアの開きのプロファイル(特性)」との文言が、本件特許発明に係る「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化」を意味することの根拠とはならない。
よって、請求人の主張は採用できない。

(7) まとめ
以上のとおり、本件特許発明は、本件特許の出願前に、当業者といえども、引用発明1並びに周知技術A、周知技術B、及び周知技術C’に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることができず、よって、本件特許は同法第123条第1項第2号により無効とすべきものではない。

6 無効理由2について
(1) 甲第4号証に記載の発明
甲第4号証から把握される発明(引用発明2)は、請求人主張のとおり、前記「3(2)イ」に記載のとおりの、以下のものである。
「等速カム11の動作手順をプログラムするのに必要な従動体3の動作に関する基礎データをCPU16に入力するデータ入力手段17と、前記データ入力手段17により設定された動作手順に基づいて当接している従動体3に所定の動作を与えるカム駆動モータとしてのパルスモータ13をプログラム制御するために、前記パルスモータ13の回転速度、回転角度、正転逆転の別、停止時間を決定する各データをモータコントローラ15に送出するCPU16と、該データに従って駆動パルスを発生するモータコントローラ15とを設け、従動体3の動作モードに変更があってもプログラムの変更のみで対処し得るようにしたモータ制御装置。」

(2) 対比
本件特許発明と引用発明1とを対比するに、両者の一致点、相違点は、前記「5(5)イ、ウ」に記載したとおりであるところ、相違点の骨子のみ再掲すれば、以下のとおりである。
・相違点(ア) ゲートの開き方のプロファイル(特性)
・相違点(イ) ゲートを開閉駆動するための運動変換伝達機構
・相違点(ウ) アクチュエータ(駆動源)としてのモータ
・相違点(エ) モータとホッパの関係

(3) 想到容易性の判断
そこで、まず、上記相違点(ア)及び(イ)について検討するに、引用発明1には、そもそも、「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を任意に設定する」という課題自体がないし、また、ゲートの動作変化を変更するためにはカムを別の輪郭形状のものに取り替える必要があり、その取り替えは組合せ計量装置を分解等しなければならず簡便に行うことは困難であるところ、甲第3号証には、かかるゲートの動作変化を簡便に変更する、という前提となるべき動機付けについての記載も示唆もないことは、前記「5(6)イ(イ)a 周知技術A」で説示したと同様である。
さらに、組合せ計量装置において、ゲートを開閉駆動するための運動変換機構として、「カム」を用いた場合の問題点や、本件特許明細書等に記載された本件特許発明が解決しようとする問題点も、いずれの甲号各証によっても、本件特許の出願当時に知られていたとは認められないことも、前記「5(6)イ(イ)a 周知技術A」で説示したと同様である。
加えて、引用発明2は、カム動作制御装置に関する発明であって、組合せ計量装置という特定技術分野の発明ではない。
よって、無効理由1に関して説示したと同様に、引用発明1に引用発明2を適用することはできない。
さらに、引用発明1に周知技術Bを適用できないことは、無効理由1に関して、前記「5(6)イ(イ)b 周知技術B」で説示したと同様である。
また、周知技術C’を引用発明1に適用したとしても、ゲートの開き方のプロファイル(特性)に関する相違点(ア)に係る、本件特許発明の特徴部である「ゲートの開き始めから閉じるまでの刻々の動作変化を・・・任意に設定する」が構成されることにはならないことも、無効理由1に関して前記「5(6)イ(イ)c 周知技術C’」で説示したと同様である。
よって、本件特許発明は、相違点(ア)、(イ)において、本件特許の出願前に、当業者といえども、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術B及び周知技術C’に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、無効理由1に関して前記「5(6)ウ」で説示したと同様に、本件特許発明は、相違点(エ)においても、本件特許の出願前に、当業者といえども、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術B及び周知技術C’に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。

(4) まとめ
以上のとおり、本件特許発明は、本件特許出願前に、当業者といえども、引用発明1及び引用発明2並びに周知技術B及び周知技術C’に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとすることができず、よって、本件特許は同法第123条第1項第2号により無効とすべきものではない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する無効理由1、無効理由2は、いずれも理由のないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては本件特許を無効とすることができない。
また、本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2010-08-09 
出願番号 特願昭61-272685
審決分類 P 1 113・ 121- Y (G01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 榮永 雅夫  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 下中 義之
松浦 久夫
登録日 1997-08-08 
登録番号 特許第2681104号(P2681104)
発明の名称 組合せ計量装置  
代理人 岩坪 哲  
代理人 藤岡 宏樹  
代理人 速見 禎祥  
代理人 加古 尊温  
代理人 伊原 友己  
代理人 特許業務法人 有古特許事務所  
代理人 吉村 雅人  

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