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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1232249
審判番号 不服2008-16695  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-01 
確定日 2011-02-16 
事件の表示 特願2002-564165「薄膜及びトリシランを用いる薄膜の形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月22日国際公開、WO02/64853、平成16年 8月 5日国内公表、特表2004-523903〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 経緯

本件は、2002年2月12日(優先権主張:2001年2月12日、2001年3月27日、2001年8月9日、2001年9月19日、2001年11月13日、2001年11月28日、2001年12月7日 米国)を国際出願日とする特許出願であって、平成20年3月31日付けで拒絶査定がされたが、これを不服として、同年7月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年7月28日付け手続補正書が提出されて明細書を補正する手続補正がなされたものである。


2 平成20年7月28日付け手続補正について

平成20年7月28日付けの手続補正のうち、特許請求の範囲についてする補正は、以下の通りである。
(補正1)補正前の請求項1、14、27、47の「約5Årms以下だけ大きい」、「約20%以下」との記載から「約」を削除して、「5Årms以下だけ大きい」、「20%以下」とすることで、数値範囲をより明りょうにする補正。
(補正2)補正前の請求項1、27、47の「前記Si含有フィルムが、必要に応じて、ゲルマニウム、窒素、炭素、ボロン、インジウム、ヒ素、燐及びアンチモンからなるグループから選択された1つ以上の元素を含む」との記載を、出願当初の明細書の段落【0037】に記載された事項に基づいて、「前記Si含有フィルムが、純粋なシリコンフィルム、又はシリコン及びゲルマニウム、窒素、炭素、ボロン、インジウム、ヒ素、燐及びアンチモンからなるグループから選択された1つ以上の元素で構成されたフィルムである」と補正することで、Si含有フィルムの技術的範囲をより明りょうにする補正。
(補正3)補正前の請求項34の「前記トリシランを対象とする管理下で、大量輸送又はそれに近い条件で行われる」との記載を、出願当初の明細書の段落【0023】の記載に基づいて、「前記トリシランに関する多量供給可能な条件の管理下で行われる」と補正して、技術的意味を明りょうにする補正。

また、上記の特許請求の範囲についてする補正に合致するように、発明の詳細な説明の段落【0008】?【0010】を補正している。

そして、特許請求の範囲についてする上記補正1?補正3は、出願当初の明細書に記載された事項の範囲内で、かつ明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、発明の詳細な説明の補正についてする補正も、出願当初の明細書に記載された事項の範囲内においてするものであるから、本件補正は適法である。


3 本願発明

本願の各請求項に係る発明は、平成20年7月28日付け手続補正によって補正された請求項1-48に記載された事項によって特定されるものと認められ、その請求項1に係る発明は、次のとおりである。
「所定の表面粗さを有する基板が配置された反応容器内に、トリシランを含むガスを導入するステップと、
前記反応容器内において、トリシランの化学気相成長条件を確立するステップと、
前記基板上に、Si含有フィルムを成膜するステップとを含み、
成膜される前記Si含有フィルムは、10平方μm以上の表面積において、厚さが10?150Åの範囲であり、表面粗さが前記基板の表面粗さより5Årms以下だけ大きく、さらに、
前記化学気相成長条件が、温度400?750℃、全圧1?700Torr(1.3×10^(2)?9.3×10^(4)Pa)、トリシランの分圧0.0001?100%の範囲であり、
前記Si含有フィルムが、純粋なシリコンフィルム、又はシリコン及びゲルマニウム、窒素、炭素、ボロン、インジウム、ヒ素、燐及びアンチモンからなるグループから選択された1つ以上の元素で構成されたフィルムであることを特徴とする薄いフィルムの成膜方法。」(以下、「本願発明1」という。)


4 刊行物に記載された発明

これに対して、原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭63-3463号公報(以下「刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。

(刊1a)「(1)基板、ゲート、ゲート絶縁膜、チャネル半導体膜、ソース、ドレインなどから成る薄膜トランジスタにおいて、チャネル半導体膜をトリシラン(Si_(3)H_(8))以上の高次シランの熱CVDにより形成することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
・・・
(4)前記チャネル半導体膜の膜厚を600Å以下とした特許請求範囲第1項記載の薄膜トランジスタの製造方法。」(特許請求の範囲)

(刊1b)「第2図において、7はチャンバーで、内部に石英板、ガラス板、ステンレス板、シリコンウェハー等が載せられ(下向き等の場合には止め金具等で固定され)加熱される基板加熱手段8を有している。さらに基板加熱手段8の近傍にガス吹出部9を形成し、ガス供給手段10とチャンバー7内を排気する排気手段11がチャンバー7に接続されている。ガス供給手段10からガス吹出部9までの系は、ヒーター等により原料ガスの沸点(トリシランでは53.1℃)以上の温度に保たれている。・・・このような装置において、基板温度を400℃程度に加熱し、トリシラン以上の高次シランをチャンバー7内に導入すると、基板上の熱分解反応により、基板表面にアモルファスシリコン膜を形成することができる。」(第2ページ左下欄第18行?右下欄第14行)

(刊1c)「・・・図中、実線が本発明による100%トリシランの反応圧力5Torr、基板温度430℃の熱CVD試料で、・・・」(第4ページ左上欄第18?20行)

(刊1a)?(刊1c)の記載を整理すると、刊行物には次の発明が記載されている。

「基板、ゲート、ゲート絶縁膜、チャネル半導体膜、ソース、ドレインなどから成る薄膜トランジスタにおけるチャネル半導体膜をトリシラン(Si_(3)H_(8))以上の高次シランの熱CVDにより形成する方法であって、
チャネル半導体膜は600Å以下であり、
基板が配置されたチャンバー内に、トリシランガスを導入し、
基板温度430℃、100%トリシランの反応圧力5Torrとして、
前記基板表面に、アモルファスシリコン膜を形成する方法」(以下、「刊行物発明」という)


5 対比

(1)刊行物発明における「チャンバ-」及び「熱CVD」は、本願発明1における「反応容器」及び「化学気相成長」にそれぞれ相当する。

(2)刊行物発明における「基板が配置されたチャンバー内に、トリシランガスを導入」することは、本願発明1における「基板が配置された反応容器内に、トリシランを含むガスを導入するステップ」に相当する。

(3)刊行物発明における「基板温度430℃」及び「100%トリシランガス」は、本願発明1における「温度400℃?750℃」及び「トリシランの分圧0.0001?100%」の数値範囲内である。

(4)刊行物発明における「100%トリシランの反応圧力5Torr」は、100%トリシランなのであるから、トリシランの圧力、すなわち全圧であり、「全圧5Torr」に相当し、これは本願発明1における「全圧1?700Torr」の数値範囲内である。

(5)刊行物発明では、100%トリシランを導入してアモルファスシリコン膜が成長しているのであるから、本願発明1のように「トリシランの化学成長条件を確立するステップ」を有することは明らかである。

(6)刊行物発明における原料ガスは、100%トリシランであり、他の原料ガスを含むものではないから、刊行物発明における「アモルファスシリコン膜」は、本願発明1における「Si含有フィルム」及び「純粋なシリコンフィルム」に相当する。

(7)刊行物発明における「基板」は、上記記載事項(刊1b)によればシリコンウエハー、ガラス板等であって、表面に600Å以下の膜が形成されるものであるから、当該成膜ができる程度の表面粗さを有すること、すなわち「所定の表面粗さを有する」ことは明らかである。

(8)刊行物発明において成膜されるチャネル半導体膜は、程度の差こそあれ”薄い”膜であることには違いないから、本願発明における「薄いフィルム」に相当する。

(9)以上のことから、本願発明1と刊行物発明とでは
「所定の表面粗さを有する基板が配置された反応容器内に、トリシランを含むガスを導入するステップと、
前記反応容器内において、トリシランの化学気相成長条件を確立するステップと、
前記基板上に、Si含有フィルムを成膜するステップとを含み、
前記化学気相成長条件が、温度430℃、全圧5Torr、トリシランの分圧100%であり、
前記Si含有フィルムが、純粋なシリコンフィルムである薄いフィルムの成膜方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)本願発明1は、「成膜される前記Si含有フィルムは、10平方μm以上の表面積において、厚さが10?150Åの範囲であり、表面粗さが前記基板の表面粗さより5Årms以下だけ大き」いのに対して、刊行物発明では、膜厚を600Å以下としているものの10?150Åとは特定されず、さらに、表面積や表面粗さは特定されていない点。


6 判断
上記相違点について判断する。

(1)刊行物発明において、チャネル半導体膜の膜厚は600Å以下とされているが、チャネル半導体膜の厚みを、100Å程度とすることは、例えば、周知文献1?4に記載されるように周知の技術に過ぎないから、刊行物発明のチャネル半導体膜を本願発明1の数値(10?150Å)の範囲内である100Å程度とすることは、当業者が容易になし得たことである。

※周知文献1;特開2000-68519号公報(特に【0038】参照)
※周知文献2;特開2000-299470号公報(特に【0065】参照)
※周知文献3:特開平3-152514号公報(特に第3ページ左上欄第9?14行参照)
※周知文献4:特開平9-55486号公報(特に【0085】?【0087】のサンプルNo.3参照)

(2)本願発明1が「成膜される前記Si含有フィルムは、10平方μm以上の表面積において、厚さが10?150Åの範囲であり、表面粗さが前記基板の表面粗さより5Årms以下だけ大き」いとする点に関して、本願明細書の記載を整理すると、化学気相成長法によるシランを使用したSi含有フィルムの成膜では、薄くて滑らかなSi含有フィルムを得ることが極めて困難であるが、トリシランを用いることにより、薄く滑らかなSi含有フィルムを成膜することが可能になるとし(【0002】、【0008】)、トリシランを用いる際の成膜条件が、【0027】、【0033】に示され、本発明によれば、厚さが10?150Åの範囲にある好ましいSiフィルムの成膜が可能となるとしている(【0042】)。さらに、Si含有フィルムの厚さと表面平滑さ(表面粗さ)は、10平方μm以上の範囲で維持されていることが望ましく(【0052】)、表面粗さは5Årms以下だけ基板の表面粗さより粗い程度が好ましいとしている(【0054】)が、10平方μm以上の範囲で、Si含有フィルムの厚さを10?150Åとし、表面粗さを基板の表面粗さより5Årms以下だけ大きくするための特別な成膜条件は、何ら特定して記載されていない。
このような本願明細書の開示に照らせば、トリシランを用いた化学気相成長であって、【0027】、【0033】及び本願発明1で特定されるように全圧1?700Torr、トリシランの分圧0.0001?100%、温度400?750℃の範囲とすれば、表面積が10平方μm以上の表面積において、厚さが10?150Åの範囲であり、表面粗さが基板の表面粗さより5Årms以下より大きいSi含有フィルムが得られるものと言わざるを得ない。
そして、刊行物発明は、トリシランを用いた化学気相成長であって、温度及び圧力が本願発明1の範囲内のものであり、さらに上記(1)で検討したように、刊行物発明において、成膜するSi含有フィルムの厚さを本願発明1の範囲内である100Å程度とすることは当業者が容易になし得たことであるから、ここにおいて得られるSi含有フィルムは、本願発明1と同様に「10平方μm以上の表面積において、厚さが10?150Åの範囲であり、表面粗さが前記基板の表面粗さより5Årms以下だけ大き」いものと言うほかない。

(3)なお、チャネル半導体膜の表面を平滑にすることは、例えば、周知文献4?5に記載されるように周知の技術であるから、刊行物発明においても、表面粗さを小さくすることは、当業者が当然に考慮すべきものに過ぎないし、また、可及的広範囲にわたり成膜をむらなく均一に行うことも製品品質の均質化等の観点から当業者が当然に考慮すべきことである。
してみれば、刊行物発明において、「10平方μm以上の表面積において、厚さが10?150Åの範囲であり、表面粗さが前記基板の表面粗さより5Årms以下だけ大き」くすることが、当業者の予想の範囲外であったということもできない。

※周知文献4;特開平9-55486号公報(特に【0090】参照)
※周知文献5;特開平5-217908号公報(特に【0003】?【0004】参照)

(4)したがって、本願の請求項1に係る発明は、刊行物に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規程により、特許を受けることができない。


7 むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規程により特許を受けることができないものであるから、本願の請求項2?48に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-07 
結審通知日 2010-09-14 
審決日 2010-10-06 
出願番号 特願2002-564165(P2002-564165)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 徹  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 加藤 浩一
筑波 茂樹
発明の名称 薄膜及びトリシランを用いる薄膜の形成方法  
代理人 鈴木 正夫  
代理人 八木澤 史彦  
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