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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1232261
審判番号 不服2008-32490  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-24 
確定日 2011-02-16 
事件の表示 特願2003-550648「改良呼気収集装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月19日国際公開、WO03/49595、平成17年 4月28日国内公表、特表2005-512067〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年12月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年12月6日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年5月16日付けで拒絶理由が通知され、同年8月27日付けで手続補正がなされたが、同年9月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成21年1月23日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
さらに、平成22年2月24日付けで審尋がなされ、回答書が同年6月24日付けで請求人より提出されたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成21年1月23日付け手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 肺胞呼気内の揮発性有機成分の収集用装置であって、
呼気リザーバであって、前記呼気リザーバはチューブであり、該チューブは、第1端部及び第2端部、前記第1端部に近接した呼気入口ポータル、前記第2端部に近接した呼気出口ポータル、及び前記呼気入口ポータルと前記呼気出口ポータルとの間のサンプリングポータルを具備する、前記呼気リザーバと、 近位端及び遠位端を具備する通路であって、前記近位端は前記サンプリングポータルに接続されている、前記通路と、 前記通路の遠位端に接続された凝縮ユニットであって、前記凝縮ユニットは肺胞呼気サンプルから水を除去するように構成されている、前記凝縮ユニットと、
前記凝縮ユニットに接続された吸着剤トラップであって、前記吸着剤トラップは水が除去された肺胞呼気サンプルから揮発性有機化合物を捕捉するように構成されている、前記吸着剤トラップと、を備える装置。」
から
「【請求項1】 肺胞呼気内の揮発性有機成分の収集用装置であって、
呼気リザーバであって、前記呼気リザーバはチューブであり、該チューブは、第1端部及び第2端部、前記第1端部に近接した呼気入口ポータル、前記第2端部に近接した呼気出口ポータル、及び前記入口ポータルと前記出口ポータルとの間のサンプリングポータルを具備する、前記呼気リザーバと、
近位端及び遠位端を具備する通路であって、前記近位端は前記サンプリングポータルに接続されている、前記通路と、
前記通路の遠位端に接続された凝縮ユニットであって、前記凝縮ユニットは肺胞呼気サンプルから水を除去するように構成されている、前記凝縮ユニットと、
前記凝縮ユニットに接続された吸着剤トラップであって、前記吸着剤トラップは水が除去された肺胞呼気サンプルから揮発性有機化合物を捕捉するように構成されている、前記吸着剤トラップと、を備える肺胞呼気内の揮発性有機成分の収集用装置。」
と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

上記本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明の
「肺胞呼気内の揮発性有機成分の収集用装置であって、・・・を備える装置。」を
「肺胞呼気内の揮発性有機成分の収集用装置であって、・・・を備える肺胞呼気内の揮発性有機成分の収集用装置。」とする補正を含むものであるが、該補正は、1行目に記載された装置を限定する「肺胞呼気内の揮発性有機成分の収集用」を最終行に記載された「装置」の前にも記載したものであり、実質的な補正とは認められないから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、誤記の訂正を目的とするものではなく、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなるので、本願の請求項1?6に係る発明は、平成20年8月27日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されたものであって、その請求項1に係る発明は、次のとおりであると認める。
「【請求項1】 肺胞呼気内の揮発性有機成分の収集用装置であって、
呼気リザーバであって、前記呼気リザーバはチューブであり、該チューブは、第1端部及び第2端部、前記第1端部に近接した呼気入口ポータル、前記第2端部に近接した呼気出口ポータル、及び前記呼気入口ポータルと前記呼気出口ポータルとの間のサンプリングポータルを具備する、前記呼気リザーバと、 近位端及び遠位端を具備する通路であって、前記近位端は前記サンプリングポータルに接続されている、前記通路と、 前記通路の遠位端に接続された凝縮ユニットであって、前記凝縮ユニットは肺胞呼気サンプルから水を除去するように構成されている、前記凝縮ユニットと、
前記凝縮ユニットに接続された吸着剤トラップであって、前記吸着剤トラップは水が除去された肺胞呼気サンプルから揮発性有機化合物を捕捉するように構成されている、前記吸着剤トラップと、を備える装置。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物およびその記載事項
(1) 本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である米国特許第6244096号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(当審訳は、パテントファミリーである、特表2002-518668号公報を参照し、下線は当審で付与した。)。

(1-ア) 「1. A device for detecting the presence of an analyte, wherein said analyte is a microorganism marker gas, said device comprising:
a) a sample chamber having a fluid inlet port for the influx of said analyte;
b) a fluid concentrator in flow communication with said sample chamber, said fluid concentrator having an absorbent material capable of absorbing said analyte and capable of desorbing a concentrated analyte; and
c) an array of sensors in fluid communication with said concentrated analyte.」
(公報第19欄9?19行)
「当審訳:【請求項1】 分析物の存在を検出するための装置であって:a) 前記分析物の流入のための流体入口部分を持つサンプルチャンバー;
b) サンプルチャンバーを含むフローコミュニケーション内の流体コンセントレーターであって、前記分析物を吸収でき、濃縮分析物を脱着できる、吸収剤物質を含む前記流体コンセントレーター;およびc) 前記濃縮分析物を含む流体コミュニケーション内のセンサー列:を含む、前記装置。」

(1-イ) 「In yet another aspect, the present invention provides methods for detecting or diagnosing, for example, infections, lung cancer, oral infections and halitosis using a breath sample of a mammal. Preferably, the mammal is a human being.」
(公報第3欄43?47行)
「当審訳:【0018】 さらなるもう一つの態様では、本発明は、哺乳動物の息サンプルを用いて、例えば、炎症、肺癌、口内炎および口臭を検出または診断する方法を提供する。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。・・・。」

(1-ウ) 「In certain embodiments, the sample chamber is designed for the collection of mammalian breath. Under certain conditions, mammalian breath contains marker gases indicative of certain infections, disorders and medical conditions and the devices of the present invention can be used to detect such marker gases. In certain aspects, the sample chamber is a breath collector and concentrator (BCC) and is fabricated to collect the breath of a mammal. Preferably, the mammal is a human being,・・・.
With reference to FIG. 1, in certain embodiments, the sample chamber is a cylindrical reservoir having an inlet port (10) for the influx of gas, such as breath, and an outlet port (19) for the exhaust of breath. The BCC has a first end and a second end. The cylindrical container (12) extends between the first end and the second end, and the cylindrical container has an open interior chamber (13).
The first end of the body is open for access to the interior chamber and functions as a breath inlet port and is vented by a breath exhaust. The breath inlet port optionally contains a disposable adapter for multiple use. A concentrator portal (14) opens into the interior chamber and is in flow communication with the fluid concentrator. The fluid concentrator (15) comprises an absorbent material capable of absorbing the analyte and capable of desorbing a concentrated analyte. In certain embodiments, valves control the breath flow so the sample of breath within the chamber can be directed to the fluid concentrator. The fluid concentrator optionally contains a second exhaust or exit port.
A valve (16) is mounted anterior to the outlet port with sufficient force to maintain the vent closed except when the mammal is exhaling into the chamber. Optionally, the fluid concentrator is jacketed (17) with a heater for the purpose of desorbing a concentrated analyte. As illustrated in FIG. 1, the BCC has a sensor array portal (18) that opens into the interior chamber and is in fluid communication with the desorbed concentrated analyte and the sensor array (11). In certain embodiments, the sensor array is disposed downstream of the inlet port and the concentrator portal. In other embodiments, the sensor array is disposed between the inlet port and the concentrator portal (not shown). In certain embodiments, the BCC has an adapter to provide breath from the nostril(s) to avoid cross-contamination from the mouth.
In certain aspects, the BCC can be a desktop model. As illustrated in FIG. 2, the first end (24) of the BCC (20) is open for access to the interior chamber (22) and functions as a breath inlet port and is vented by a breath exhaust (25). A fluid concentrator (23) opens into the interior chamber (27) and is in flow communication (28) with the breath exhaust (25). In this embodiment, the breath is circulated through the chamber using a fan (21). The sensor array (26) is in flow communication with the desorbed analyte.
In various embodiments, the fluid concentrator can be disposed within the sample chamber or outside the sample chamber. In addition, the sensor array can be disposed within the sample chamber or outside the sample chamber. Moreover, the sensor array can be configured to be external from the BCC and to extend into the mouth or nasal cavity. The present invention embodies all such variations.」
(公報第4欄40?第5欄35行)」
「当審訳:【0021】 ・・・ある条件下では、哺乳動物の息は、ある種の感染症、疾病および医療状態の指標となるマーカーガスを含み、本発明の装置を用いると、そのようなマーカーガスを検出することができる。ある態様では、サンプルチャンバーは、息コレクター-コンセントレーター(BCC)(breath collector and concentrator) であり、哺乳動物の息を収集するために作られる。好ましくは、哺乳動物は、ヒトであるが、・・・。
【0022】 図1に関して、ある実施態様では、サンプルチャンバーは、息のようなガス流入のための入口部分(10)および息排出用の出口部分(19)をもつ円筒状リザーバーである。BCCは、第一端および第二端を持つ。円筒状コンテナー(12)は、第一端と第二端の間に広がり、そして円筒状コンテナーは、内部チャンバー空間(13)を持つ。
【0023】 本体の第一端は、チャンバー内部に接近するために開いており、息入口部分として機能し、そして息を吐くことによって放出される。息入口部分は、所望であれば、複数での使用のための使い捨てアダプターを含む。コンセントレーター入口(14)は、チャンバー内部内に開いており、流体コンセントレーターを含むフローコミュニケーションにある。流体コンセントレーター(15)は、分析物を吸収する能力があり、濃縮された分析物を脱着する能力を持つ、吸収剤物質を含む。ある実施態様では、バルブは息の流れを制御し、そうすることによって、チャンバー内の息サンプルを、流体コンセントレーターに向けることができる。流体コンセントレーターは、所望であれば、第二の排出装置または出口部分を含む。
【0024】 バルブ(16)は、充分な力で出口部分の前方に据え付けられていて、哺乳動物がチャンバー内へ息を吐いている間を除いて、穴が閉ざされた状態を維持する。所望であれば、流体コンセントレーターは、濃縮された分析物を脱着する目的のため、ヒーターで被覆(17)される。図1に示すように、BCCは、チャンバー内部に開いているセンサー列の入口(18)を持ち、脱着された濃縮分析物およびセンサー列(11)を含む流体コミュニケーション内にある。ある実施態様では、センサー列は、入口部分及びコンセントレーター部分の下流に配列されている。その他の実施態様では、センサー列は、入口部分とコンセントレーター部分(示していない)の間に配列されている。ある実施態様では、口からの交差汚染を防ぐため、BCCは息を鼻孔から提供するためのアダプターを持つ。
【0025】 ある態様では、BCCはデスクトップモデルであることができる。図2に示すように、BCC(20)の第一端(24)は、内部チャンバー(22)に接近するために開いており、息の入口部分として機能し、息排出口(25)によって放出される。流体コンセントレーター(23)は、内部チャンバー(27)内に開いており、息排出口(25)をもつフローコミュニケーション(28)内にある。この実施態様では、息はファン(21)を用いてチャンバーを循環する。センサー列(26)は、脱着された分析物を含むフローコミュニケーション内にある。
【0026】 さまざまな実施態様では、流体コンセントレーターは、サンプルチャンバー内部に、またはサンプルチャンバーの外側に配置することができる。さらに、センサー列を、サンプルチャンバー内部に、またはサンプルチャンバー外部に配置することもできる。さらに、センサー列を、BCCから外側にあるように、そして口あるいは鼻孔内に拡がるように、配列することもできる。本発明は、そのような変化のすべてを包含する。」

(1-エ) 「After sometime period that is chosen to be adequate for sorbing the desired analytes from the vapor phase onto the material, the circulation is stopped and then the material is desorbed from the sorbent phase and released into the sensor chamber. The desorbing of the concentrated analyte for the sorbent can be by accomplished by thermal means, mechanical means or a combination thereof Desorption methods include, but are not limited to, heating, purging, stripping, pressuring or a combination thereof.
In certain embodiments, the sample concentrator is wrapped with a wire through which current can be applied to heat and thus, desorb the concentrated analyte. The analyte is thereafter transferred to the sensor array.
The process of sorbing the material onto the sorbent phase not only can be used to concentrate the material, but also can be advantageously used to remove water vapor. The water vapor is preferably removed prior to concentrating the analyte; however, in various embodiments, the vapor can be removed concomitantly or after the analyte is concentrated. In a preferred embodiment, the water vapor is removed prior to presenting the desired analyte gas mixture to the sensor array. Thus, in certain embodiments, the fluid concentrator contains additional absorbent material to not only concentrate the analyte, but to remove unwanted materials such gas contaminates and moisture.」
(公報第6欄33?67行)
「当審訳:【0033】 材料上での蒸気層からの所望の分析物の吸収に充分な選択されたある期間の後、循環を停止し、次に、材料を溶媒層から脱着し、センサーチャンバー内に放出する。溶媒に濃縮された分析物の脱着は、温熱手段、機械的手段またはその組み合わせによって成し遂げることができる。脱着方法には、限定するつもりはないが、加熱、パージング、ストリッピング、加圧またはその組み合わせが含まれる。
【0034】 ある実施態様では、サンプルコンセントレーターにワイヤーを巻き、その流れを適用して熱をかけ、それによって濃縮分析物を脱着することができる。その後、分析物をセンサー列に輸送する。 【0035】 溶媒層上に材料を吸着させるプロセスは、材料を濃縮するために用いられるだけでなく、また、水蒸気を除去するために都合良く用いることができる。好ましくは、水蒸気は、分析物の濃縮前に除去されるが;しかしながら、さまざまな実施態様では、蒸気を、付随して、または分析物の濃縮後に、除去することができる。好ましい実施態様では、水蒸気を、所望の分析物ガス混合物をセンサー列に提示する前に除去する。それ故、ある実施態様では、流体コンセントレーターは、分析物を濃縮するだけでなく、ガス混入物および水分の様な非所望物質を除去するため、さらなる吸収剤物質を含む。」

(1-オ) 図1には、コンセントレーター入口(14)と流体コンセントレーター(15)とを接続する通路が描かれている。

そうすると、これら(1-ア)?(1-オ)の記載と図面を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。

「センサー列を備えた息コレクター-コンセントレーターであって、
第一端および第二端を持ち、入口部分(10)、センサー列の入口(18)を持ち、コンセントレーター入口(14)が、内部に開いている円筒状コンテナー(12)と、
分析物を吸収する能力があり、濃縮された分析物を脱着する能力を持つ、吸収剤物質を含み、水分の様な非所望物質を除去するため、さらなる吸収剤物質を含む流体コンセントレーター(15)と、
コンセントレーター入口(14)と流体コンセントレーター(15)とを接続する通路と、を備え、
流体コンセントレーターは、濃縮された分析物を脱着する目的のため、ヒーターで被覆(17)され所望の分析物の吸収に充分な選択されたある期間の後、循環を停止し、熱をかけ、それによって濃縮分析物を脱着し、分析物をセンサー列に輸送する息コレクター-コンセントレーター。」(以下、「引用発明」という。)

(2) 本願優先日前に頒布された刊行物である特開平9-119868号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(2-ア) 「【0009】【実施例】以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は、本発明のガス採取方法において好適なサンプリング管の第1の例を示すものであり、このサンプリング管1は、金属やガラスなどのガス非透過性材料よりなる円筒状の本体2と、この本体2内に充填された吸着剤3とからなるものである。」

(2-イ) 「【0016】図4は本発明のガス採取方法において好適なサンプリング管の第3の例を示すものである。この例ではサンプリング管1の入口部4に、サンプルガス6中の有害成分を取り除くための除去管12の端部を接続した構成になっている。この除去管12にはサンプルガス6中に含まれる有害成分を吸着除去するための除去剤が充填されている。この除去剤としては、サンプルガス6中の目的成分がサンプリング管1内の吸着剤に吸着するのを妨害したり、吸着率を低下させる成分、或いは吸着剤と反応して目的成分の吸着に悪影響を与える物質であり、水分、酸性ガス、アルカリ性ガス、易分解性ガスなどがあり、呼気のサンプリングにおいては呼気中の水分の除去を目的として、水分のみを吸着する吸湿剤を設けることが望ましい。」

3 当審の判断
(1) 対比
ア 本願発明と引用発明とを対比すると、その構造・機能からみて、引用発明の「息コレクター-コンセントレーター」、「入口部分(10)」、「センサー列の入口(18)」、「コンセントレーター入口(14)」、「円筒状コンテナー(12)」、および「通路」は、それぞれ、本願発明の「呼気内の揮発性有機成分の収集用装置」、「第1端部に近接した呼気入口ポータル」、「第2端部に近接した呼気出口ポータル」、「サンプリングポータル」、「チューブであ」る「呼気リザーバ」、および「通路」に相当することが明らかである。

イ 引用発明の吸収剤物質は、分析物を吸収する能力があるから、本願発明の「吸着剤トラップ」に相当し、引用発明のさらなる吸収剤物質は水分の様な非所望物質を除去するから、本願発明の「凝縮ユニット」に相当するので、引用発明の「分析物を吸収する能力があり、濃縮された分析物を脱着する能力を持つ、吸収剤物質を含み、水分の様な非所望物質を除去するため、さらなる吸収剤物質を含む流体コンセントレーター(15)」と、
本願発明の「前記通路の遠位端に接続された凝縮ユニットであって、前記凝縮ユニットは肺胞呼気サンプルから水を除去するように構成されている、前記凝縮ユニットと、
前記凝縮ユニットに接続された吸着剤トラップであって、前記吸着剤トラップは水が除去された肺胞呼気サンプルから揮発性有機化合物を捕捉するように構成されている、前記吸着剤トラップ」とは、
「前記通路の遠位端に接続された凝縮ユニットであって、前記凝縮ユニットは呼気サンプルから水を除去するように構成されている、前記凝縮ユニットと、
水が除去された呼気サンプルから揮発性有機化合物を捕捉するように構成されている、前記吸着剤トラップ」
という点で共通する。

そうすると、両者は、
(一致点)
「呼気内の揮発性有機成分の収集用装置であって、
呼気リザーバであって、前記呼気リザーバはチューブであり、該チューブは、第1端部及び第2端部、前記第1端部に近接した呼気入口ポータル、前記第2端部に近接した呼気出口ポータル、及び前記呼気入口ポータルと前記呼気出口ポータルとの間のサンプリングポータルを具備する、前記呼気リザーバと、
近位端及び遠位端を具備する通路であって、前記近位端は前記サンプリングポータルに接続されている、前記通路と、
前記通路の遠位端に接続された凝縮ユニットであって、前記凝縮ユニットは呼気サンプルから水を除去するように構成されている、前記凝縮ユニットと、
水が除去された呼気サンプルから揮発性有機化合物を捕捉するように構成されている、前記吸着剤トラップと、を備える装置。」
である点で一致し、以下の点で相違するといえる。

(相違点1)
呼気内の揮発性有機成分の収集用装置が収集する「呼気」について、本願発明では、「肺胞呼気」であるのに対して、
引用発明では、肺胞呼気と特定されていない点。

(相違点2)
凝縮ユニットと吸着剤トラップの関係について、本願発明では、「凝縮ユニットに接続された吸着剤トラップ」であるのに対して、
引用発明では、凝縮ユニットが吸着剤トラップを含んでいる点

(2) 相違点についての判断
まず、相違点1を検討する。
本願明細書には、本願発明が呼気の内、肺胞呼気を収集するための構成に関しては、「【0021】 呼気リザーバ40は、吐出された呼気を大気に通気可能にする遠位端が開放した金属又はプラスチックチューブを備える。図1に示す実施形態では、呼気リザーバ40は、2.4cmの内径及び100cmの長さを有するチューブを含む。・・・単一の吐出された呼気は、カラムとしての呼気リザーバ40に入る。このカラム、すなわち、マウスピースから最も遠い部分の下流部分は、上部の気道、咽頭鼻部、気管及び細気管支からの死腔呼気を含む。カラム、すなわち、マウスピースに最も近接した部分の上流部分は、肺からの肺胞呼気を含む。通常の成人では、休息時の単一の呼気容積、すなわち、1回呼気は、約500mlであり、このうちの150mlは死腔呼気であり、かつ350mlは肺胞呼気である。呼気は、マウスピースに最も近接した、リザーバ40の近位端のサンプリングポートから送給される。この形状構成の重要性は、凝縮ユニット50内への呼気サンプルが死腔呼気によって実質的に汚染されていない肺胞呼気であるとことである。・・・」との記載と、呼気リザーバのマウスピースに近接した部分に、サンピリングポータルが記載されている図2の記載があり、これらの記載より、本願発明が呼気の内、肺胞呼気を収集するための構成が「呼気は、マウスピースに近接した、リザーバ40のサンプリングポートから送給される」ものであるといえる。
一方、刊行物1の図1には、入口部分に近接した、円筒状コンテナーのコンセントレータ入口が記載されていることから、刊行物1の図1記載の発明は肺胞呼気を収集するための構成を備えているものといえる。
したがって、引用発明も本願発明同様に呼気の内、肺胞呼気を収集するための構成を備えているものといえるので、相違点1は相違点ではない。

次に、相違点2を検討する。
刊行物2の記載事項である上記(2-ア)に「サンプリング管1は、・・・円筒状の本体2と、この本体2内に充填された吸着剤3とからなるものである。」と記載(なお、吸着剤3が充填された本体2が、本願発明の吸着剤トラップに相当する。)され、同じく上記(2-イ)に「サンプリング管1の入口部4に、サンプルガス6中の有害成分を取り除くための除去管12の端部を接続した構成になっている。この除去管12にはサンプルガス6中に含まれる有害成分を吸着除去するための除去剤が充填されている。この除去剤としては、・・・呼気のサンプリングにおいては呼気中の水分の除去を目的として、水分のみを吸着する吸湿剤を設けることが望ましい。」と記載(なお、吸湿剤を設けた除去管12が、凝縮ユニットに相当する。)されているように、「サンプリングポータルに接続されている通路の遠位端に凝縮ユニット、吸着剤トラップの順番で接続された構成は周知技術である。
してみると、引用発明の凝縮ユニットと吸着剤トラップに上記周知の構成を採用して、相違点2における本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものといえる。

そして、本願明細書に記載された効果も、引用発明および周知技術から、当業者が予測し得る範囲のものであり、格別顕著なものといえない。

なお,請求人は,回答書において「 2)本願発明の進歩性について・・・次に認定イ)においては、引用文献1には、呼気中の揮発性有機成分を分析できることが開示されているため、『引用文献1に記載された発明の発明者が純粋な肺胞呼気のサンプルを得ることに関心が無かったことを明瞭に示している。』との主張は認められないと認定されました。しかしながら、当該認定は承服できません。その理由は以下のとおりです。
引用文献1を参照しますと、引用文献1には、呼気中の揮発性有機成分を分析できることが開示されています。しかしながら、引用文献1の図1および2、ならびに引用文献1の第5欄の上から3段目の段落の『息はファン(21)によってチャンバー内を循環する。(the breath is circulated through the chamber using a fan (21))』との記載を考慮しますと、引用文献1に記載の装置において、死腔呼気と肺胞呼吸とがサンプルチャンバ内で混ざることは否定できません。そして引用文献1には死腔呼気と肺胞呼吸とがサンプルチャンバ内で混合されないこと、また、死腔呼気と肺胞呼吸との一方のみとなるように分離可能であることは記載も示唆もされておりません。こうした引用文献1から、死腔呼気と肺胞呼吸とが混合されること、つまり実質的に肺胞呼吸のサンプル『のみ』を得ることはできないことは明白です。さらに、引用文献1に記載の発明において実質的に肺胞呼吸のサンプル『のみ』を採取できるように変更させることは、大幅な設計変更が必要になると考えられます。このような理由から、たとえ引用文献1に呼気中の揮発性有機成分を分析できることが開示されていても、引用文献1に記載された発明の発明者が、つまり肺胞呼気のサンプル「のみ」を得ることに関心があったとは到底考えられません。したがいまして、『引用文献1に記載された発明の発明者が『純粋な』肺胞呼気のサンプルを得ることに関心が無かったことを明瞭に示している。』との主張は認められるべきものであると思量いたします。」と主張している。
しかしながら、上記(1-ウ)の「当審訳:【0025】 ある態様では、BCCはデスクトップモデルであることができる。図2に示すように、・・・。この実施態様では、息はファン(21)を用いてチャンバーを循環する。」との記載より「息がファン(21)によってチャンバー内を循環する。」ものは、図2に示された発明であり、図1に示された引用発明とは異なるものである。
また、本願発明も、死腔呼気より肺胞呼吸が多い呼吸のサンプルを得ることはできるが、肺胞呼吸のサンプル「のみ」を得ることはできないのであり、また、「3 当審の判断 (2) 相違点についての判断 」で相違点1として検討したように、引用発明も本願発明同様に呼気の内、肺胞呼気を収集するための構成を備えているものといえる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項について言及するまでもなく、本願出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-09-09 
結審通知日 2010-09-14 
審決日 2010-10-04 
出願番号 特願2003-550648(P2003-550648)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 57- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森 竜介尾崎 淳史  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 信田 昌男
竹中 靖典
発明の名称 改良呼気収集装置  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  
代理人 渡邊 隆  
代理人 実広 信哉  

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