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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1232297
審判番号 不服2007-18749  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-05 
確定日 2011-02-17 
事件の表示 平成11年特許願第 33740号「フォトフィニッシング方法およびシステム並びに記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月22日出願公開、特開2000-232618〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】経緯(手続・査定・当審拒絶理由通知等)

[1]手続の概要

本願は、平成11年2月12日の出願であって、手続きの概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成19年 3月 2日(起案日)
意見書 :平成19年 5月10日
手続補正 :平成19年 5月10日
拒絶査定 :平成19年 5月29日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成19年 7月 5日
手続補正 :平成19年 7月13日
前置報告 :平成19年11月26日(起案日)
審尋 :平成21年10月13日(起案日)
回答書 :平成21年12月21日
補正却下の決定 :平成22年 3月17日(起案日)
(平成19年7月13日の手続補正の却下)
当審拒絶理由通知 :平成22年 3月17日(起案日)
意見書 :平成22年 5月12日
手続補正 :平成22年 5月12日

[2]拒絶査定

原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

〈査定の理由〉
本願の各請求項に係る発明は、下記刊行物(引用例)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用例1:特開平10-084555号公報
引用例2:特開平11-032349号公報

[3]特許請求の範囲(平成19年5月10日補正)
平成19年5月10日補正による、特許請求の範囲は以下のとおりである。

《特許請求の範囲(平成19年5月10日補正)》

【請求項1】 異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の生撮像データを記録媒体に記録し、
該記録媒体に記録された前記生撮像データを読出し、該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得、
該処理済みデータをプリントすることを特徴とするフォトフィニッシング方法。
【請求項2】 異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段と、
該撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の生撮像データを記録媒体に記録する記録手段と、
該記録媒体に記録された前記生撮像データを読出し、該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得る画像処理手段と、
該画像処理手段において得られた処理済みデータをプリントするプリント手段とを備えたことを特徴とするフォトフィニッシングシステム。
【請求項3】 異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段と、
該撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の生撮像データを記録媒体に記録する記録手段とを備えたことを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項4】 請求項3記載のデジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された前記生撮像データを読出し、該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得る画像処理手段と、
該画像処理手段において得られた処理済みデータをプリントするプリント手段とを備えたことを特徴とするプリンタ。
【請求項5】 請求項3記載のデジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された前記生撮像データを読出し、該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得る画像処理手段を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】 請求項3記載のデジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された前記生撮像データを読出す手順と、
該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得る手順と、
該処理済みデータをプリントする手順とをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項7】 請求項3記載のデジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された前記生撮像データを読出す手順と、
該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得る手順とをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。

[4]当審拒絶理由通知

当審が平成22年3月17日付けで通知した拒絶の理由の概略は、以下のとおりである。
なお、平成22年5月12日付け手続補正により、請求項3が削除され同補正前の請求項4?7は、同補正後の請求項3?6にそれぞれ対応するものである。

〈当審が通知した拒絶の理由〉

本願出願は、以下に示す理由A及び理由Bにより、特許を受けることができない。

《理由A(29条1項3号29条2項)》

29条1項3号
本願の請求項3に係る発明(本願発明3)は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記刊行物1?3のいずれかに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
本願の請求項1,2,4?7に係る発明(本願発明1,2,4?7)は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記刊行物2または3のいずれかに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

29条第2項
本願の請求項1?7に係る各発明(本願発明1?7)は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記刊行物1?6に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記(引用刊行物一覧)
刊行物1:特開平6-90435号公報
刊行物2:特開平6-98349号公報
刊行物3:特開平6-125488号公報

刊行物4:特開平10-200906号公報
刊行物5:特開平6-197371号公報
刊行物6:特開平11-32349号公報

《理由B(29条の2)》

この出願の請求項1?7に係る各発明(本願発明1?7)は、いずれも、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない


出願:特願平09-266613号(特開平11-112932号)

[5]当審拒絶理由通知に対する補正

当審拒絶理由通知に対してする平成22年5月12日補正による、特許請求の範囲は以下の通りである。

《特許請求の範囲(平成22年5月12日補正)》
【請求項1】 異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録し、
該記録媒体に記録された前記生撮像データを読出し、該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得、
該処理済みデータをプリントすることを特徴とするフォトフィニッシング方法。
【請求項2】 異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段と、
該撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録する記録手段と、
該記録媒体に記録された前記生撮像データを読出し、該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得る画像処理手段と、
該画像処理手段において得られた処理済みデータをプリントするプリント手段とを備えたことを特徴とするフォトフィニッシングシステム。
【請求項3】 異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段と、該撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録する記録手段とを備えたデジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された前記生撮像データを読出し、該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得る画像処理手段と、
該画像処理手段において得られた処理済みデータをプリントするプリント手段とを備えたことを特徴とするプリンタ。
【請求項4】 異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段と、該撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録する記録手段とを備えたデジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された前記生撮像データを読出し、該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得る画像処理手段を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】 異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段と、該撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録する記録手段とを備えたデジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された前記生撮像データを読出す手順と、
該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得る手順と、
該処理済みデータをプリントする手順とをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項6】 異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段と、該撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録する記録手段とを備えたデジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された前記生撮像データを読出す手順と、
該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得る手順とをコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。

〈補正前後の請求項の対応関係〉
平成22年5月12日補正後の特許請求の範囲の請求項1,2,3,4,5,6は、それぞれ、同補正前特許請求の範囲(平成19年5月10日補正による特許請求の範囲、上記[3])の請求項1,2,4,5,6,7に対応するものである。すなわち、同補正前の請求項3は削除された。


【第2】本願発明

本願の請求項1から請求項6までに係る発明は、本願明細書および図面(平成19年5月10日付け、および平成22年5月12日付けの各手続補正書により補正された明細書および図面)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1から請求項6までに記載したとおりのものであるところ、そのうち、請求項1,請求項4に係る発明(それぞれ、本願発明1,本願発明4ともいう)は、下記のとおりである。

記(本願発明1(【請求項1】)、再掲)
異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録し、
該記録媒体に記録された前記生撮像データを読出し、該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得、
該処理済みデータをプリントすることを特徴とするフォトフィニッシング方法。

記(本願発明4(【請求項4】)、再掲)
異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段と、該撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録する記録手段とを備えたデジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された前記生撮像データを読出し、該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得る画像処理手段を備えたことを特徴とする画像処理装置。

【第3】当審の判断

【第3-1】本願発明1について(進歩性判断)

[1]刊行物の記載
当審の拒絶の理由(理由Aの「イ 29条第2項」)において引用した上記刊行物1、刊行物6には、図面と共に、次に掲げる記載が認められる。

(1)刊行物1:特開平6-90435号公報の記載

〈請求項1〉
(K0)「【請求項1】 記録媒体に非圧縮形式及び1以上の所定圧縮形式で記録される撮像生情報及び所定形式の撮影画像情報を再生する装置であって、当該記録媒体から読み出す画像情報の記録形式を判別する判別手段と、当該1以上の所定圧縮形式に応じた伸長手段と、当該伸長手段の出力を所定画素量に間引く第1の間引き手段と、当該記録媒体から読み出した撮像生情報を所定画素量に間引く第2の間引き手段と、当該第1及び第2の間引き手段の出力画像を記憶する画像メモリ手段とからなり、当該画像メモリ手段に記憶される画像を映像表示用に出力することを特徴とする画像再生装置。」

〈産業上の利用分野〉
(K1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、画像再生装置に関し、より具体的には、100万画素以上の高解像度撮像素子により撮影された画像の再生装置に関する。」

〈従来の技術〉
(K2)「【0002】
【従来の技術】電子スチル・カメラは、当初、アナログ記録であったが、コンピュータ及びその画像処理能力の向上とハード・ディスク装置や固体メモリ装置の記録容量の増大により、ディジタル記録が利用されるようになった。
【0003】更には、高品位テレビジョン方式の開発及び実用化に刺激され、印刷や報道用に高品位の静止画記録装置が要求され、100万画素以上の高解像度CCD撮像素子も実用化されようとしている。」

《図2 ディジタル・スチル・カメラの従来例》
(K3)「【0004】図2は、100万画素以上の画素数を有する高解像度撮像素子を使用するディジタル・スチル・カメラの従来例の概略構成ブロック図を示す。20万乃至40万程度の画素数の撮像素子を使用するディジタル・スチル・カメラとの相違点は、撮像素子の画素数の多さを活かして、再生時に細かい色補正などを行なえるように、撮像素子の出力データをそのまま記録媒体に記録できるようにした点である。
【0005】図2において、10は、水平1300画素程度、垂直1000画素程度の画素数を有する高解像度撮像素子であり、その出力はA/D変換器12によりディジタル信号に変換されてバッファ・メモリ14に格納される。バッファ・メモリ14の出力は、γ補正、ホワイト・バランス及び輝度(Y)/色差(C)変換などのカメラ信号処理を行なうカメラ・プロセス回路16と、スイッチ20のa接点に印加される。圧縮回路18は、例えばJPEG方式ベースライン処理などの非可逆圧縮方式の回路であり、カメラ・プロセス回路16の出力を1/20?1/50程度にデータ圧縮し、その出力はスイッチ20のb接点に印加される。
【0006】スイッチ20は、バッファ・メモリ14の出力又は圧縮回路18の出力を選択して記録媒体22に印加する。記録媒体22はハード・ディスク装置、フラッシュ・メモリ装置などからなる。
【0007】撮像素子10の出力データそのもの、即ち、撮像生データを記録媒体22に記録する時には、スイッチ20はa接点に接続し、カメラ処理したY/Cデータの圧縮データを記録するときには、スイッチ20はb接点に接続する。勿論、前者の場合、撮像生データであることを示す情報がヘッダとして一緒に記録媒体22に記録され、後者の場合には、圧縮Y/Cデータであることを示す情報がヘッダとして一緒に記録媒体22に記録される。後者の場合更に、画像番号、撮影条件などの識別情報、及び圧縮時の情報などもヘッダに含めて記録されることがある。」

《再生装置》
(K4)「【0008】図3は、このように記録媒体22に記録した情報を、コンピュータに転送し、及び高品位モニタに再生出力する再生装置の概略構成ブロック図を示す。
【0009】記録媒体22から読み出された情報は、入力インターフェース24を介して、画像データ部分がバッファ・メモリ26に、ヘッダ情報がCPU30に転送される。CPU30は入力するヘッダにより、撮像生データか又は圧縮Y/Cデータかを判別でき、その判別結果に応じてメモリ制御回路28及びその他の回路を制御する。
【0010】撮像生データの場合、CPU30はスイッチ32をa接点に切り換え、バッファ・メモリ26に記憶されるデータをスイッチ32を介して出力インターフェース34に転送する。出力インターフェース34は、γ補正、ホワイト・バランス調整及びRGB変換などを行なうコンピュータに接続する。
【0011】圧縮Y/Cデータの場合、バッファ・メモリ26に記憶されるデータを伸長回路36に読み出す。伸長回路36は圧縮回路18の圧縮処理に対応する伸長処理を施してY/Cデータを復元する。RGB変換回路38は伸長回路36の出力をRGB形式に変換し、画像メモリ40に一旦、格納する。
【0012】CPU30がスイッチ32をb接点に接続すると、画像メモリ40に格納された画像データを、スイッチ32を介して出力インターフェース34に読み出すことができ、外部のコンピュータ等に転送できる。
【0013】画像メモリ40に格納された画像データはまた、読み出されてD/A変換器42に印加される。D/A変換器42はディジタルRGB信号をアナログRGB信号に変換し、その出力はドライバー回路44及び出力端子46を介して外部に出力される。出力端子46には、例えば、高解像度カラー・モニタを接続する。これにより、記録画像をその場で再生表示し、確認できる。」

〈発明が解決しようとする課題、目的〉
(K5)「【0014】
【発明が解決しようとする課題】従来例では、屋外で撮影した画像をその場で確認しようとすると、高解像度カラー・モニタを用意しなければならず、大掛かりな装置構成になってしまい、簡単ではない。
【0015】本発明は、高品位の撮影画像を簡易に確認できる画像再生装置を提示することを目的とする。」

〈実施例〉
(K6) 「【0021】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0022】図1は、本発明の一実施例の概略構成ブロック図を示す。
【0023】図1において、50は、図2に示すカメラで撮影された撮像生データ及び/又はY/C圧縮データを記録する記録媒体、52は記録媒体50とのデータ及び制御信号のインターフェースである。記録媒体50から読み出されたデータはインターフェース52へシリアル転送される。
【0024】インターフェース52は、内部にシリアル・パラレル変換回路を具備し、図4に示すように、シリアル・データをパラレル・データに変換し、シリアル・データDsとパラレル・データDpをデータ・セレクタ54に出力する。このシリアル・パラレル変換の際に、10ビット・データの下位2ビットを捨て、8ビット・データとする。
【0025】データ・セレクタ54は、インターフェース52からのパラレル・データDpをデータ・バス56を介して画像メモリ58に、シリアル・データDsを伸長回路60に振り分けると共に、撮像生データの場合に所定の間引きを行なう。伸長回路60は圧縮回路18の圧縮符号化に対応する復号化処理を行なう回路である。62は伸長回路60の出力から所定画素値を間引く間引き回路であり、その出力はデータ・バス56を介して画像メモリ58に接続する。64は画像メモリ56の書込み及び読出しを制御するメモリ制御回路である。本実施例では、画像メモリ58には輝度データのみを所定の低解像度で格納する。
【0026】66は画像メモリ56から読み出された輝度データをアナログ信号に変換するD/A変換器、68はD/A変換器66の出力画像信号をモノクロ多階調表示する液晶表示装置(LCD)、70は全体を制御するCPU、72はCPU70の制御下でD/A変換器66及びLCD68に所定の同期クロック信号を供給する同期信号発生回路、74は各部に電力を供給するバッテリである。」

《撮像素子、記録媒体50に記録態様》
(K7)「【0027】記録媒体50に撮影画像を記録するカメラの高解像度撮像素子のカラー・フィルタ配置が、図5に示す構造であるとする。即ち、マゼンタ(Mg)、グリーン(G)、イエロー(Ye)及びシアン(Cy)の市松構造になっている。生データ記録の場合には、ライン#1から順次、横方向に1280画素が順番に10ビット精度で記録媒体50に記録されている。Y/C圧縮記録の場合には、撮像信号をYUV系に変換した後のYUV信号を、4:2:2のインターリーブ構成で記録媒体50に記録してあるとする。」

《撮像生データを読み出し表示》
(K8)「【0028】記録媒体50から撮像生データを読み出した場合の処理を説明する。この場合、CPU70は、データ・セレクタ54を制御して、インターフェース52からのパラレル・データDpを選択させると共に、そのGデータのみが画像メモリ58に格納されるようにする。液晶表示装置68の表示画面を640画素×480ラインとすると、画像メモリ58の容量は640×480×8ビット以上であればよい。画像メモリ58に1画面のGデータが格納されると、メモリ制御回路64を制御して、画像メモリ58からGデータをD/A変換器66に読み出させる。D/A変換器66は、同期信号発生回路72からのクロックに従って画像メモリ58からのデータをアナログ信号に変換し、液晶表示装置68に印加する。液晶表示装置68は、撮像生データの画像を640×480画素で8ビットの階調でモノクロ表示する。
【0029】輝度信号でなくG信号で画像表示するが、撮影画像の概略を観察するには、これで充分である。・・・(以下略)」

(K9)「【0030】記録媒体50からY/C圧縮データを読み出した場合の処理を説明する。この場合、CPU70は、インターフェース52からのシリアル・データDsを選択すると共に、YYUVのブロック・シーケンスのYデータのみを通すように、データ・セレクタ54を制御する。伸長回路60は、入力するYデータを伸長し、ジグザグ・スキャンからラスター・スキャンに変換して出力する。即ち、伸長回路60はラスター・スキャンの8ビット輝度信号を出力する。
【0031】伸長回路60が出力する輝度信号は、水平方向に1280画素、垂直方向に960画素であるので、間引き回路62により、水平方向で1画素おきに、垂直方向で1ラインおきに間引いて、640画素×480ラインとする。間引き回路62の出力はデータ・バス56を介して画像メモリ58に印加され、画像メモリ58に格納される。
【0032】このように画像メモリ58に格納された後は、撮像生データの場合と同様に読み出され、D/A変換器66によりアナログ信号に変換されて液晶表示装置68に印加される。これにより、液晶表示装置68は、Y/C圧縮記録された撮影画像を256階調のモノクロ映像として表示する。
【0033】上記実施例では、液晶表示装置68の表示能力を水平640画素、垂直480ライン、256階調(8ビット)とし、これに応じて画像メモリ58の記憶容量、インターフェース52でのビット切捨て量、及び間引き回路62での間引き量を設定した。より低解像度若しくは高解像度、又はカラーのの表示装置を用いれば、それに応じて、これらの数値が変更されることはいうまでもない。記録媒体50からの読み出しもシリアル転送に限定されないことは明らかである。」

(2)刊行物6:特開平11-32349号公報の記載〉

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、デジタルカメラにより撮影された写真画像をカラープリントとして出力するカラープリンタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に写真の画質、特にカラー写真の仕上がりは、露出条件によって大きく変わるものである。したがってフィルムを使用する従来のカメラには、撮影時の明るさや被写体の輝度分布に対応して適正な露光量を設定するためのAE機構が搭載されているのが普通である。
【0003】しかし、デジタルカメラの場合には、コストや演算時間の制約からカメラ側であまり高度な処理をできないことが多い。デジタルカメラの場合には写真店を介さずに取得された画像をそのまま利用することも多いため、CRTモニタあるいはカメラに付属する液晶モニタに表示される画像など、画質許容度の比較的広いモニタ表示画像が観察に耐えうる画像であれば画質として十分であるとして、AE機構としてあまり高性能なものが搭載されない場合もある。
【0004】したがって、デジタルカメラで撮影されたデジタル画像データから写真プリントを作成する場合には、フィルムから画像データを取得する場合と同じ処理を行っただけでは高品位なプリントは得られない。このため、デジタルカメラから取り込んだ画像データについては、満足がいく画質が得られるまで画像処理およびテストプリントを個別に繰り返して、プリントを作成していた。」

「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年、デジタルカメラは、パソコンユーザに限らず、より一般的なユーザにも注目されるようになってきており、デジタルカメラで撮影した写真をプリントしたいというニーズが増加している。したがって、上述のように、プリント処理に時間やコストがかかることは、迅速なサービスを提供する上で好ましいとは言えない。
【0006】これに対し、特願平8-279205号において、撮影時の光源や明るさなどの撮影条件を画像データとともに記憶するデジタルカメラと、その撮影条件を画像データとともに取り込んで撮影条件に適した画像処理を施して高画質なプリントを作成する画像再生装置が提案されている。しかし、この方法は、デジタルカメラが前記機能を備えていることを前提としており、普通のデジタルカメラの場合には有効ではない。
【0007】本発明は、上記問題点に鑑みて、特別な機能を持たない普通のデジタルカメラから取り込んだ画像データを対象とした画像処理機能およびプリント機能を備えたカラープリンタを提供するものである。」

「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明のカラープリンタは、デジタルカメラにより撮影された写真画像をカラープリントとして出力するカラープリンタであって、デジタルカメラ用の記録媒体から該記録媒体に記録されている画像データを取り込む画像データ取込手段と、取り込んだ画像データを、該画像データの画素数がプリントサイズに必要な画素数となるように拡大あるいは縮小する拡大縮小手段と、前記画像データに対し、前記デジタルカメラのRGB原色と前記カラープリンタのRGB原色の間で色が同じになるように色変換を施す色変換手段と、前記画像データに対し、前記カラープリントの階調が好ましい階調となるように階調変換を施す階調変換手段と、前記拡大縮小手段、色変換手段および階調変換手段による処理後の画像データの色味および/または濃度バランスを判定し、該判定の結果に基づいて前記画像データに対し必要な修正処理を施す画像修正手段と、前記修正処理後の画像データをプリント台紙に記録することにより前記カラープリントを生成するプリント手段とを備えてなることを特徴とするものである。
【0009】ここで、デジタルカメラ用の記録媒体とは具体的には、デジタルカメラの内蔵メモリあるいはICメモリカードなどであり、画像データ取込手段とはデジタルカメラとの接続ケーブルやカードリーダなどのことである。また、デジタルカメラの記録媒体に記録されている画像データのフォーマットはカメラの機種ごとに、あるいはモード設定ごとに異なるため、画像データを取り込む場合には、これらのデータをプリンタが取り扱えるフォーマットの展開しなければならないが、このような処理を行うソフトウェアも上記画像データ取込手段に含むものとする。」

「【0017】
【発明の効果】本発明のカラープリンタは、デジタルカメラ用メモリから直接画像データを取り込む画像取込手段を本体に備えているため、FDなどに一旦データを移してからサービス店に持ち込む必要がない。また取り込まれた画像データは、拡大縮小手段によりプリント出力に十分な画素数となるように画素数変換が施された後に、色変換手段、階調変換手段、画像修正手段により、カメラ側では十分な露出制御が行われていないという前提で必要な色、階調変換、および修正処理が施されるため、AE機構やホワイトバランス機構を備えていない廉価版のデジタルカメラで撮影した写真であっても、フィルムスキャナで読み取った写真と同様、高画質な写真プリントとして出力することができる。」

「【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明のカラープリンタの一実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明のカラープリンタの構成を示す図である。この図に示すように、本発明のカラープリンタはデジタルカメラから画像を取り込む画像取込手段として、カードリーダ1aとケーブルインタフェース1bを備え、さらに補間拡大手段2、色変換手段3、階調変換手段4、画像修正手段5、レーザプリンタ6を備えている。・・・(以下略)
【0019】カードリーダ1aは、撮影した写真を取り外し可能なメモリカード11に記録するデジタルカメラ10aから画像データを取り込むためのものである。・・・(以下略)
【0020】略
【0021】なお、上記メモリカード11あるいはデジタルカメラの内蔵メモリに記録された画像データのフォーマットは、デジタルカメラのメーカーによって異なる場合がある。また同じデジタルカメラで撮影した場合でも、画素数の少ないモード、画素数の多いモード、圧縮モード(例えばJPEG)などのモード設定によって、記録される画像データのフォーマットは変わる。したがって、上記カードリーダ1aおよびケーブルインタフェース1bを介して画像データを取り込む際には、所定のフォーマット変換を行うソフトウェアにより(図示せず)画像データをプリンタ側が取り扱える標準フォーマットに展開する。上述のようにして取り込まれた画像データ7は、例えば標準モードで撮影された写真の場合、480×640画素程度の画素数を有している。
【0022】この画像データ7は次に補間拡大手段2により拡大され、例えば1000×1500画素程度のプリント用画像データ8となる。反対に、例えば証明写真のように小さいサイズのプリントを作成する場合には縮小される。プリント用画像データ8は、このカラープリンタの解像度に合わせ、例えばプリンタの解像度が600dpiであれば、プリント用画像データ8の解像度も600dpiとなるように補間される。
【0023】さらに、補間拡大された画像データ8は色変換手段3により、デジタルカメラのRGB原色(あるいはCMY原色)とプリンタのRGB原色の間で色が一致するように色変換される。この際、デジタルカメラにより記録された画像データの各画素の値を(R,G,B)とし、プリント台紙に記録する画像データの各画素の値を(R′,G′,B′)として、R=G=B=kで表される画素値が、R′=B′=G′=k′の関係を持つ画素値に変換されるようにするのがよい。これはすなわち、グレーをグレーとして再現するという意味であり、グレーだったものが黄味がかったり、青味がかったりすることがないようにするということである。」

「【0028】修正後の画像データはレーザプリンタ6により写真プリント9として出力される。すなわち、例えばハロゲン化銀を用いたプリント台紙(感光部材)に、画像データに対応する量のレーザ光を照射してプリント台紙を露光し、これを現像することによって、台紙上に写真画像を再生する。プリント手段としては、レーザプリンタの他、インクジェットプリンタ、昇華型プリンタなど、あらゆるプリンタが適用可能である。
【0029】以上、説明したようなカラープリンタによれば、現状普及している、ごく標準的な機能のみを有するデジタルカメラでも、カメラ本体あるいはメモリカードをサービス店に持ち込み、プリンタの画像取込部にセットするだけで、フィルムの場合と同様に高画質なカラープリントを得ることができる。」

[2]刊行物記載発明(引用発明1)

上記刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明1」という)の認定

ア 図2のディジタル・スチル・カメラ
・図2のディジタル・スチル・カメラは、「撮像素子の画素数の多さを活かして、再生時に細かい色補正などを行なえるように、撮像素子の出力データをそのまま記録媒体に記録できるようにした」{(K3)段落【0004】}ディジタル・スチル・カメラである。{→引用発明1のP0}

・「撮像素子10の出力データそのもの、即ち、撮像生データを記録媒体22に記録する時には、スイッチ20はa接点に接続し、カメラ処理したY/Cデータの圧縮データを記録するときには、スイッチ20はb接点に接続する。勿論、前者の場合、撮像生データであることを示す情報がヘッダとして一緒に記録媒体22に記録され、後者の場合には、圧縮Y/Cデータであることを示す情報がヘッダとして一緒に記録媒体22に記録される。後者の場合更に、画像番号、撮影条件などの識別情報、及び圧縮時の情報などもヘッダに含めて記録されることがある。」{(K3)段落【0007】}とあり、
記録媒体に記録された撮像生データについて、
「図1において、50は、図2に示すカメラで撮影された撮像生データ及び/又はY/C圧縮データを記録する記録媒体」{(K6)段落【0023】}、
「記録媒体50に撮影画像を記録するカメラの高解像度撮像素子のカラー・フィルタ配置が、図5に示す構造であるとする。即ち、マゼンタ(Mg)、グリーン(G)、イエロー(Ye)及びシアン(Cy)の市松構造になっている。生データ記録の場合には、ライン#1から順次、横方向に1280画素が順番に10ビット精度で記録媒体50に記録されている。」{(K7)段落【0027】}とあるところ、
「撮像素子10の出力データそのもの」である「撮像生データ」は、上記「撮像素子10」の他、これを駆動する駆動回路等を有する『撮像手段』により得られたものといえることは明らかであり、
また、図2のディジタル・スチル・カメラは、上記のように記録する『記録手段』を備えているといい得ることも明らかであるから、
図2のディジタル・スチル・カメラは、
・カラー・フィルタ配置の構造が、図5に示す構造-マゼンタ(Mg)、グリーン(G)、イエロー(Ye)及びシアン(Cy)の市松構造-である高解像度撮像素子を有する撮像手段と、 {→引用発明1のP1}
該撮像素子により撮像して得られた撮像出力データそのものである撮像生データをそのまま記録する場合、撮像生データであることを示す情報をヘッダとし、ライン#1(図5)から順次、横方向に1280画素を順番に10ビット精度で記録媒体50に記録する記録手段 {→引用発明1のP2}
を備えている、といえ、
当該ディジタル・スチル・カメラを用いて撮像して記録媒体に記録した上記撮像生データ、が記載されている。

イ また、デジタル・スチル・カメラを「撮像素子の出力データをそのまま記録媒体に記録できるように」構成したのは、「撮像素子の画素数の多さを活かして、再生時に細かい色補正などを行なえるように」したものである{(K3)段落【0004】}ことからみて、
そのようなデジタル・スチル・カメラを用いて撮像して記録媒体に記録した上記撮像生データについて、再生時に細かい色補正などの処理を施すことが予定されているといえ、
また、一般に、デジタル・スチル・カメラ等の撮像記録装置により撮像して記録媒体に記録した画像データについて、当該画像データを読み出して色補正などの処理を施して再生することは、ごく普通のこと(周知慣用)にすぎないことを考慮すれば、
上記のデジタル・スチル・カメラを用いて撮像して上記撮像生データを記録媒体に記録し、{→引用発明1のQ}
当該記録媒体に記録した上記撮像生データについて、上記撮像生データを読み出して細かい色補正などの処理を施して再生する技術思想を認めることができる。{→引用発明1のR}

ウ 引用発明1
以上のことから、本願発明1と対比する引用発明1として、下記の方法発明を認定することができる。構成要素毎にP1等の記号を付しておく。

記(引用発明1)
P0:再生時に細かい色補正などを行なえるように、撮像素子の出力データをそのまま記録媒体に記録できるようにしたディジタル・スチル・カメラであって、
P1:カラー・フィルタ配置の構造が、図5に示す構造-マゼンタ(Mg)、グリーン(G)、イエロー(Ye)及びシアン(Cy)の市松構造-である高解像度撮像素子を有する撮像手段と、
P2:該撮像手段により得られた撮像出力データそのものである撮像生データをそのまま記録する場合、撮像生データであることを示す情報をヘッダとし、ライン#1(図5)から順次、横方向に1280画素を順番に10ビット精度で記録媒体50に記録する記録手段と
P0:を備えたディジタル・スチル・カメラ
Q:を用いて撮像して上記撮像生データを記録媒体に記録し、
R:当該記録媒体に記録した上記撮像生データについて、上記撮像生データを読み出して細かい色補正などの処理を施して再生する方法。

エ 撮像生データを記録した場合の簡易再生表示
また、記録媒体50から撮像生データを読み出した場合の再生について、 前掲(K8)の、「記録媒体50から撮像生データを読み出した場合の処理を説明する。この場合、CPU70は、データ・セレクタ54を制御して、インターフェース52からのパラレル・データDpを選択させると共に、そのGデータのみが画像メモリ58に格納されるようにする。液晶表示装置68の表示画面を640画素×480ラインとすると、画像メモリ58の容量は640×480×8ビット以上であればよい。画像メモリ58に1画面のGデータが格納されると、メモリ制御回路64を制御して、画像メモリ58からGデータをD/A変換器66に読み出させる。D/A変換器66は、同期信号発生回路72からのクロックに従って画像メモリ58からのデータをアナログ信号に変換し、液晶表示装置68に印加する。液晶表示装置68は、撮像生データの画像を640×480画素で8ビットの階調でモノクロ表示する。」(段落【0028】)、
「輝度信号でなくG信号で画像表示するが、撮影画像の概略を観察するには、これで充分である。」(段落【0029】)、
前掲(K9)の「上記実施例では、液晶表示装置68の表示能力を水平640画素、垂直480ライン、256階調(8ビット)とし、これに応じて画像メモリ58の記憶容量、インターフェース52でのビット切捨て量、及び間引き回路62での間引き量を設定した。より低解像度若しくは高解像度、又はカラーのの表示装置を用いれば、それに応じて、これらの数値が変更されることはいうまでもない。」(段落【0033】)、
前掲(K0)の「当該記録媒体から読み出す画像情報の記録形式を判別する判別手段と、当該1以上の所定圧縮形式に応じた伸長手段と、当該伸長手段の出力を所定画素量に間引く第1の間引き手段と、当該記録媒体から読み出した撮像生情報を所定画素量に間引く第2の間引き手段」(請求項1)とあるところ、
これらの処理が、液晶表示装置の表示能力に対応するためにする処理であることは明らかである。

したがって、刊行物1は、次の技術、すなわち、
「引用発明1のディジタル・スチル・カメラにより撮像生データを記録した記録媒体50、から撮像生データを読み出し、
液晶表示装置の表示能力に対応するためにする処理であって、読み出したGデータのみ(「第2の間引き」し)をビット切捨てして画像メモリ58に格納し、D/A変換する再生処理を行うことにより、
液晶表示装置68に撮像生データの画像を640×480画素で8ビットの階調でモノクロ表示して、引用発明1のディジタル・スチル・カメラにより記録した記録画像の簡易再生表示を可能とする技術」
も開示するものである。

[3]本願発明1と引用発明1との対比(対応関係)

(1)本願発明1を、構成要件に分説して示せば、下記のとおりである。

記(本願発明1、分説)
A 異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録し、
B 該記録媒体に記録された前記生撮像データを読出し、該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得、
C 該処理済みデータをプリントすることを特徴とするフォトフィニッシング方法。

(2)要件Aについて
ア 「異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段」について

引用発明1のP1:「カラー・フィルタ配置の構造が、図5に示す構造-マゼンタ(Mg)、グリーン(G)、イエロー(Ye)及びシアン(Cy)の市松構造-である高解像度撮像素子」は、本願発明の「異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイス」ということができ、要件Aの上記「撮像デバイス」と相違せず、
したがって、引用発明1のP1の撮像手段は、要件Aの「撮像手段」と相違しない。

イ 「撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録し、」について

イ-1 「撮像手段により得られた、」「各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録し、」
引用発明1でも、Q:「{P1P2を備えたディジタル・スチル・カメラ}を用いて撮像して上記撮像生データを記録媒体に記録し、」としていて、「撮像手段により得られた」「生撮像データを記録媒体に記録し」としていることは明らかである。
また、P2:「該撮像手段により得られた撮像素子出力データそのものである撮像生データをそのまま記録する場合、撮像生データであることを示す情報をヘッダとし、ライン#1(図5)から順次、横方向に1280画素を順番に10ビット精度で記録媒体50に記録する」のであり、
「ライン#1(図5)から順次、横方向に1280画素を順番に10ビット精度で記録媒体50に記録し」とは、図5をみれば、
〔ライン#1;〕マゼンタ(Mg)、グリーン(G)、マゼンタ(Mg)、グリーン(G)、・・・
〔ライン#2;〕シアン(Cy)、イエロー(Ye)、シアン(Cy)、イエロー(Ye)・・・
と順に記録することを意味するから、
引用発明1における、「記録媒体に記録し」「撮像手段により得られた」とする「生撮像データ」も「各色成分の画素位置が異なる生撮像データ」といいえるものである。
したがって、引用発明1も、「撮像手段により得られた、」「各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録し、」としていて、この点、本願発明1と相違しない。

イ-2 「モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の」
また、引用発明1において、そのように記録されたデータ{〔ライン#1;〕Mg,G、Mg、G、・・・、〔ライン#2;〕Cy,Ye、Cy,Ye、・・・}は、「撮像素子出力データそのものである撮像生データ」であるから、「モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の」データであるとも言い得ることは明らかである。
また、通常、モニタは、各画素がRGB3色を有する形式のデータを受け入れるものであることからすれば、このような形式のデータは、そのままではモニタに再生表示することはできない形式であるといえることからみても、
また、撮像生データを記録した記録媒体50から、記録画像を簡易表示するのに、[2]エで上記したような「液晶表示装置の表示能力に対応するためにする処理」をしていることからみても、
「モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の」データであると言い得ることは明らかである。

したがって、引用発明1も、「撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録し、」といい得、この点において、本願発明1と相違はない。

ウ 以上によれば、構成要件Aにおいて、本願発明1と引用発明1は相違しない。

(3)要件B、Cについて
引用発明1のR「当該記録媒体に記録した上記撮像生データについて、上記撮像生データを読み出して細かい色補正などの処理を施して再生する方法」は、「該記録媒体に記録された前記生撮像データを読出し、」「該生撮像データに対して画像処理を施して画像処理済みデータを得、該処理済みデータを再生する方法」ともいい得るから、
要件Bのうち、「該記録媒体に記録された前記生撮像データを読出し、」「該生撮像データに対して画像処理を施して処理済みデータを得、」とする点においては、相違はない。
引用発明1は(処理済みデータを)「再生する」であるのに対して、
本願発明1は(処理済みデータを)「プリントするフォトフィニッシング」としていて、この点相違するところ、この相違は、『画像再現方法』の相違(「再生する」か「プリントするフォトフィニッシング」かの相違)と捉えることができる。
また、該生撮像データに対して施す「画像処理」が、
引用発明1では、細かい色補正などの処理であり、「プリントに必要な画像処理」とはしておらず、この点でも相違が認められる。

[4]一致点・相違点
以上の対比結果によれば、本願発明1と引用発明1との一致点および相違点は、下記のとおりである。

記(一致点)
A 異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録し、
B’該記録媒体に記録された前記生撮像データを読出し、該生撮像データに対して画像処理を施して画像処理済みデータを得、処理済みデータを画像再現(再生/プリントするフォトフィニッシング)する方法。

記(相違点)
処理済みデータを画像再現する方法を、
本願発明1では、(処理済みデータを)プリントするフォトフィニッシング方法としているのに対して、
引用発明1では、(処理済みデータを)再生する方法としており、
該生撮像データに対して施す画像処理を、
本願発明1では、プリントに必要な画像処理とするのに対して、
引用発明1では、細かい色補正などの処理としていて、プリントに必要な画像処理とはしていない点。

[5]相違点の判断

(1)[相違点の克服]
S1:引用発明1の、「再生する方法」を、「プリントするフォトフィニッシング方法」とし、
S2:引用発明1の、該生撮像データに対して施す画像処理(細かい色補正などの処理)を、「プリントに必要な画像処理」とすること
(以下、[相違点の克服]という)で、
上記[相違点]は克服され、本願発明1に到達する。

(2)[相違点の克服]の容易想到性の判断

ア S1:引用発明1の、「再生する方法」を、「プリントするフォトフィニッシング方法」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
詳細は以下の通り。

ア-1 引用発明1は、「細かい色補正などの処理を施して再生する」ところ、
当業者は、「再生」とは、モニターで画像を再現することだけでなく、プリンタで画像を再現することをも意味するもの
{例えば、上記刊行物6にも「撮影時の光源や明るさなどの撮影条件を画像データとともに記憶するデジタルカメラと、その撮影条件を画像データとともに取り込んで撮影条件に適した画像処理を施して高画質なプリントを作成する画像再生装置が提案されている。」(段落【0006】)とあり、また、下記周知例3にも「本発明はデジタルカメラにより取得されたデジタル画像データをプリンタやモニタ上で再生するための画像再生方法および装置、並びにその方法に使用するデジタルカメラに関するものである。」(段落【0001】)とある。}と普通に認識することから、
R:「当該記録媒体に記録した上記撮像生データについて、上記撮像生データを読み出して細かい色補正などの処理を施して再生する方法。」を、
「当該記録媒体に記録した上記撮像生データについて、上記撮像生データを読み出して細かい色補正などの処理を施してプリントする(プリント再生する)方法」とする動機付けが有るというべきである。

ア-2 《周知事項》
加えて、一般に、電子スチルカメラ等の撮像記録手段により撮像して得た画像データが記録された記録媒体から、記録された画像データを読み出して、画像データが表す画像をプリントすることは、例を挙げるまでもなく、周知のことにすぎないし、
「フォトフィニッシング」(これについて、本願明細書では何ら説明されていないが)も周知であり{例えば、特開平10-308910号公報(段落【0013】?【0017】)等参照、特開平10-161248号公報、特開平10-239780号公報、特開平11-7083号公報等}、
また、撮像して得た静止画像データが記録された記録媒体から、記録された静止画像データを読み出して、静止画像データが表す画像を写真プリント(フォトフィニッシング)することも、例えば、上記刊行物6の他、下記周知例1?4にみられるように普通に知られていることにすぎない。

周知例1:特開昭64-12687号公報
周知例2:特開平1-268289号公報
周知例3:特開平10-191246号公報
周知例4:特開平10-308910号公報

ア-3 上記ア-1、アー2を考慮すれば、上記S1:引用発明1の、「再生する方法」を、「プリントするフォトフィニッシング方法」とすることは、当業者が容易に想到することである。

イ 上記S1とする際に、S2:引用発明1の、該生撮像データに対して施す画像処理を、「プリントに必要な画像処理」とすることも当業者が容易に想到し得ることである。
詳細は以下の通り。

イ-1 「プリントに必要な画像処理」について
本願発明1でいう「プリントに必要な画像処理」とは、
本願明細書の、「【0013】また、「プリントに必要な画像処理」とは、生撮像データから上記特開平10-191246号に記載された方法のように撮像データを再構成する処理、生撮像データを所望とするプリントサイズに拡大、縮小するための補間処理、プリントサイズに応じたシャープネス強調処理、撮像デバイスの分光感度を補正する色変換処理、プリントに適した色となるように生撮像データの色を変換する色変換処理、ホワイトバランス処理等が挙げられる。これらの処理は任意の順序で行うものであってよく、さらに上記2つの色変換処理は、1つのテーブルを用いて一度に行うものであってもよい。」
{本審決註:上記「特開平10-191246号」は誤りであって、正しくは、
段落【0004】「単板CCDにおいて得られた撮像データから、各画素の輝度を表す高周波の輝度信号と、補間処理および平滑化処理による低周波の色度信号とを生成し、輝度信号および色度信号を用いて撮像データ信号を再構成するようにした方法が提案されている(特開平10-200906号、同9-65075号等)。」
に記載された、「特開平10-200906号」(上記刊行物4に同じ)、又は「特開平9-65075号」と認められる。}
に照らせば、
(i)生撮像データから撮像データを再構成する処理
(ii)生撮像データを所望とするプリントサイズに拡大、縮小するための補間処理
(iii)プリントサイズに応じたシャープネス強調処理
(iv)撮像デバイスの分光感度を補正する色変換処理
(v)プリントに適した色となるように生撮像データの色を変換する色変換処理
(vi)ホワイトバランス処理
の処理を含んでいうものであることは明らかであるところ、
少なくとも、上記(ii)、(iii)、(vi)の処理は、
当該処理をしなければ「プリント」できない処理ではなく、
当該処理をすれば、よりプリントを欲する利用者のニーズに合致するようにするための処理{例えば、(ii)}や、処理をしない時より画質の良いプリント画像とするための処理{(iii)や(vi)}であることは明らかである。

すなわち、本願発明1でいう「プリントに必要な画像処理」とは、
当該処理をしなければプリントできない処理を含むかも知れないが、そのような処理だけでなく、「プリントを欲する利用者のニーズに合致するようにするための処理や、より画質の良いプリント画像とするための処理」をも含んでいうものと解される。

イ-2 上記S1:引用発明1の、「再生する方法」を、「プリントするフォトフィニッシング方法」とすると、
引用発明のRは、「当該記録媒体に記録した上記撮像生データについて、上記撮像生データを読み出して細かい色補正などの処理を施してプリントするフォトフィニッシング方法。」となるところ、
上記「細かい色補正処理」は、「より画質の良いプリント画像とするための処理」といえ、同処理は上記イ-1のとおり、本願発明1でいう「プリントに必要な画像処理」ということができることから、
上記S2:引用発明1の、該生撮像データに対して施す画像処理(細かい色補正などの処理)を、「プリントに必要な画像処理」とすること、
に至ることになり、上記[相違点の克服]がなされ、本願発明1に至る。

そして、上記S1:引用発明1の、「再生する方法」を、「プリントするフォトフィニッシング方法」とすることが、当業者の容易想到であることは、上記ア-3のとおりであるから、上記[相違点の克服]は、当業者の容易想到である。

イ-3 上記S1とする際に、引用発明1の「撮像生データ」の形式(形態)に接した当業者は、「該撮像生データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得、該処理済みデータをプリントする」という技術思想に容易に至るものであり、上記S2とすることは当業者の容易想到である。

なぜなら、
・引用発明1の撮像生データは、〔ライン#1;〕マゼンタ(Mg)、グリーン(G)、マゼンタ(Mg)、グリーン(G)、・・・〔ライン#2;〕シアン(Cy)、イエロー(Ye)、シアン(Cy)、イエロー(Ye)・・・のデータが順に並んだデータであって、
このような撮像生データの各画素は、マゼンタ(Mg)、グリーン(G)、シアン(Cy)、イエロー(Ye)のいずれか1色のみの成分を有するものであって全色成分を含み得るものではなく、したがって、そのままでは、各画素は対応する上記1色しか表現できず、他の色を含む全ての色を表すことができないデータ形式であることは明らかである{典型的には、“黒”に代表される無彩色(灰色?黒)は、上記いずれか1色のみの成分では表せず、これら全色成分を混合することによってしか表現できない}から、
当業者は、各画素が全色成分を有するようにする画像処理、つまり、本願明細書で「プリントに必要な画像処理」の例としていう、撮像データを再構成する処理{次のイ-4(イ)で後記する(i)の処理}が必要であると普通に想定するものであり、
・また、所望のプリントサイズにプリントすることも、常であり普通であるところ、
引用発明1の上記「撮像生データ」は画素数が固定であり、そのままでは固定サイズのプリントしかできないことから、当業者は、サイズ・画素数変換をする処理(例えば、補間処理)を施してから、プリントすることを普通に想定するものであって、
これらの処理は、本願発明でいう「プリントに必要な画像処理」といえる処理である。

〈刊行物4〉
ところで、上記の、生撮像データから撮像データを再構成する処理をし、処理済みの画像信号データをプリンタに与えることは、上記刊行物4にも開示されていて、このことからみても、
引用発明1に接した当業者は、引用発明1の上記「撮像生データ」に対してそのような再構成の処理をし、処理済みの画像信号データをプリンタに与えることを想定するものということができる。
そして、そのような処理は、上記のように、本願明細書で「プリントに必要な画像処理」の例示として挙げられている処理であるから、刊行物4からみても、上記S2とすることは容易想到である。

すなわち、
上記刊行物4(特開平10-200906号公報)の、実施例2(図2、段落【0033】?【0038】)及び実施例3(図3、段落【0039】?【0046】)は、
単板CCDにおいて得られた、同一面上に分光感度の異なる複数種類の受光素子が交互に配置された単板CCDのカラー画像撮像装置による撮像信号R0,B0、G0-各画素が1色のみの成分を有するものであって全色成分を含み得るものではない点で、引用発明1の「撮像生データ」と同じ形式(形態)である信号-を、
各受光素子位置でRGB3原色信号を有するカラー画像信号R,G,Bに変換する処理(本願明細書で説明する上記の(i)生撮像データから撮像データを再構成する処理)をするものであるところ、
段落【0047】?【0051】、特に「【0048】本発明の撮像信号処理又は前記各実施例の機能部を実現するためのプログラムと、処理したい撮像信号データをフロッピーディスク装置422や通信装置420などの入力装置を経由してシステムに取り込む。そして、そのプログラムを実行させ、得られたカラー画像信号データをメモリ412に得る。この処理結果のカラー画像信号データは、例えば、ディスプレイ414やプリンタ418などの画像出力装置によって出力され、」によれば、
上記再構成する処理結果の画像信号データをプリンタに与えるのであるから、
上記の撮像信号を各受光素子位置でRGB3原色信号を有するカラー画像信号R,G,Bに変換する処理をし、処理済みの画像信号データをプリンタに与えることが開示されている。

イ-4 《よく知られた普通の技術》
上記ア-2で例示した、上記刊行物6や上記各周知例1?4においても、
撮像して得た静止画像データが記録された記録媒体から、記録された静止画像データを読み出して、静止画像データが表す画像を写真プリント(フォトフィニッシング)するのに、
静止画像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得、該処理済みデータをプリントするようにしており、
当該技術は、《よく知られた普通の技術》である。

上記《よく知られた普通の技術》を、引用発明1の、記録媒体に記録された「撮像生データ」に対して施す画像処理(細かい色補正などの処理)に適用すれば、上記S2とすることになって上記[相違点]が克服されるところ、
当該適用は、ごく自然であって、当業者が容易に想到し得ることである。
また、当該適用を妨げる事情も認められず、上記イ-3からみて指向されることであることからみても、当業者の容易想到である。

上記《よく知られた普通の技術》について、以下にみておく。

(ア)周知例3:特開平10-191246号公報
例えば、周知例3(段落【0001】?【0008】、【0016】【0024】、【0030】?【0033】、図1等)では、
「電子撮像素子を用いた電子カメラ(以下デジタルカメラという)の場合には、コストや演算時間の制約からカメラ側であまり高度な処理をできないことが多」く、「プリントとしてデジタルカメラで撮影されたデジタル画像データを再生する場合には、画質許容度の狭いプリント画像として最適な仕上がりを得るのは容易ではなく」(段落【0004】)、「写真店などでは、顧客にできる限り高画質な写真プリントを提供できるように、プリントする際に露光条件を調整して露出の過不足や色の偏りを補正する処理を施している。この場合、当然のことながら処理する写真によって行うべき画像処理は異なるため、モニタに表示された画像の微妙な違いを経験に基づいて判断しながら画像処理条件の調整を繰り返し行ったり、何枚ものテストプリントを作成してその仕上がり具合を確認したりすることによって最適な画像処理条件を求め、その求められた画像処理条件によって画像処理を施して最終的に顧客に提供するプリントを作成することが行われている。」(段落【0003】)とされ、
「プリントとしてデジタルカメラで撮影されたデジタル画像データを再生」し、「最終的に顧客に提供するプリントを作成」する場合における、「求められた画像処理条件によって画像処理を施」すことは、「プリントに必要な画像処理」と言い得る処理である。
また、「本発明の画像再生方法および装置は、撮影時に、デジタルカメラにより取得したデジタル画像データに撮影条件を表す撮影情報を付与し、再生時にその撮影情報を使用して画質を高めるための画像処理を行うようにしたので、撮影条件を考慮した再生のための画像処理ができ、テストプリントを繰り返すことなく最適な仕上がりのプリントを容易に得ることができる。」(段落【0016】)とあり、
上記「撮影条件を考慮した再生のための画像処理」は、「プリントに必要な画像処理」と言い得る処理である。
・「デジタルカメラにおいてメモリに記憶されたデジタル画像データは、カードリーダやケーブルを介して画像サーバ2に記憶され」(段落【0031】)、「本実施の形態における画像再生装置3は、上記画像サーバ2に蓄積された画像ファイル7を順次再生処理するものであり、各画像ファイル7の画像データに対し画質を高めるための画像処理を施すセットアップ処理部11と」
とあり、
上記「画質を高めるための画像処理」は、「プリントに必要な画像処理」と言い得る処理である。

(イ)上記刊行物6:特開平11-32349号公報
上記刊行物6には、図面と共に、上記[1](2)で摘示した記載が認められ、このうち、特に下線を引いた箇所によれば、
刊行物6には、
b0:デジタルカメラにより撮影された写真画像を、カラープリンタを用いてカラープリントとして出力する方法であって、
b1:デジタルカメラ用の記録媒体から該記録媒体に記録されている画像データを、カードリーダ1aを介して、カメラの機種・モード設定ごとに異な画像データのフォーマットをプリンタが取り扱える標準フォーマットに展開する処理をして取込み、
b2:取り込んだ画像データを、該画像データの画素数がプリントサイズに必要な画素数となるように拡大あるいは縮小し、
b3:前記画像データに対し、前記デジタルカメラのRGB原色(あるいはCMY原色)と前記カラープリンタのRGB原色の間で色が同じになるように色変換(グレーをグレーとして再現するという意味であり、グレーだったものが黄味がかったり、青味がかったりすることがないようにすることを含む)を施す色変換し、
b4:前記画像データに対し、前記カラープリントの階調が好ましい階調となるように階調変換を施す階調変換し、
b5:前記拡大縮小手段、色変換手段および階調変換手段による処理後の画像データの色味および/または濃度バランスを判定し、該判定の結果に基づいて前記画像データに対し必要な修正処理を施し、
b6:前記修正処理後の画像データをプリント台紙に記録することにより前
記カラープリントを生成する技術(以下、〈刊行物6記載技術〉という。)
が記載されている

上記〈刊行物6記載技術〉の、上記b2の処理、b3の処理は、それぞれ、上記イ-1でみた本願明細書でいう上記(ii)の拡大縮小処理、上記(iv)?(vi)のうちの1の処理に相当するということができるから、本願発明でいう「プリントに必要な画像処理」ということができる。
また、上記b1の処理も、「プリントに必要な画像処理」ということができることは明らかである。
したがって、〈刊行物6記載技術〉は、
デジタルカメラ用の記録媒体から該記録媒体に記録されている画像データを、カードリーダ1aで読み出して取り込み、
画像データが表す画像を写真プリントするのに、
読み出した画像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得、該処理済みデータをプリントする技術を開示している。

ウ まとめ([相違点の克服])
以上、引用発明1を出発点として、上記[相違点の克服]、すなわち、上記S1とS2を合わせてなすことで、本願発明1の構成に達することになるところ、
S1:引用発明1の、「再生する方法」を、「プリントするフォトフィニッシング方法」とすることは、上記アで示したように、当業者の容易想到であり、
上記S1とする際に、S2:引用発明1の、該生撮像データに対して施す画像処理(細かい色補正などの処理)を、「プリントに必要な画像処理とし、該生撮像データに対して画像処理を施して画像処理済みデータを得、」とすることも、上記イで示したように、当業者の容易想到であって、
上記[相違点の克服]は、周知事項、刊行物6、4記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。

(3)まとめ(相違点の判断)
以上のとおり、本願発明1は、刊行物1記載の発明(引用発明1)及び、周知事項、刊行物6、4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【第3-2】本願発明4について(刊行物1主引用例、進歩性判断)

[1]本願発明4
本願発明4は、前記【第2】のとおりであるところ、
「・・・記録手段とを備えたデジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された前記生撮像データを読出し、該生撮像データに対して・・・を施して処理済みデータを得る画像処理手段」の、
「おいて」は「記録された」に係り、「前記生撮像データ」がデジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された生撮像データであること、
「読み出し」は、「画像処理手段が行うこと」、
以上は、明細書に照らし明らかである。

したがって、本願発明4は、以下のように、構成要件に分説できる。

記(本願発明4、分説)
D1:異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段と、
D2:該撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録する記録手段と
D3:を備えたデジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された前記生撮像データ
E:(前記記録媒体に記録された前記生撮像データ)を読出し、該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得る画像処理手段を備えたことを特徴とする画像処理装置。

〈本願発明1との相違〉
本願発明4が、本願発明1と異なる点は、
・方法発明ではなく装置発明であること
・「フォトフィニッシング」を構成要件としていないこと、
・プリントを含まず、「画像処理装置」を構成要件とすること
である。

〈プリントに必要な画像処理〉
また、「プリントに必要な画像処理」は、前記【第3-1】[5](2)イ-1で、本願発明1についてした解釈同様、「プリントを欲する利用者のニーズに合致するようにするための処理や、より画質の良いプリント画像とするための処理」をも含んでいうものと解される。

以下、これらのことを踏まえて検討する。

[2]刊行物記載発明(引用発明1’)

上記刊行物1に記載された発明(以下、「引用発明1’」という)の認定

ア 本願発明4に合わせ、上記刊行物1から、物の発明として引用発明1’を認定する。

刊行物1の記載(前記【第3-1】[1](1))、及び、前記【第3-1】[2]アと同様、引用発明1’として、前記本願発明1と同様のP0?P2の「ディジタル・スチル・カメラ」を認めることができる。
イ また、デジタル・スチル・カメラを「撮像素子の出力データをそのまま記録媒体に記録できるように」構成したのは、「撮像素子の画素数の多さを活かして、再生時に細かい色補正などを行なえるように」したものである{(K3)段落【0004】}ことからみて、
そのようなデジタル・スチル・カメラを用いて撮像して記録媒体に記録した上記撮像生データについて、再生時に細かい色補正などの処理を施すことが予定されているといえ、
また、一般に、デジタル・スチル・カメラ等の撮像記録装置により撮像して記録媒体に記録した画像データについて、再生時に、コンピュータ装置等の装置を用い、当該画像データを取込んで当該画像データに対して色補正などの処理を施し、当該処理を施した画像データを画像として再現することは、周知慣用であり技術常識にすぎないことを考慮すれば、
再生時にそのような処理をする手段を備えた物の発明を認めることができる。
また、刊行物1の図3等の再生装置は、記憶媒体からの読出しを行っている{「記録媒体22から読み出された情報は・・・」(段落【0009】)とされ、図3にはデジタル・スチル・カメラから取り出されたと想定される記憶媒体22とI/F24が直接結合されていることからみて、読み出しは、デジタル・スチル・カメラではなく再生装置で行われている。}から、上記「再生時にそのような処理をする手段を備えた物」も、記憶媒体からの読み出しを行う物を認めることができる。
以上によれば、刊行物1記載の技術思想として、
上記のデジタル・スチル・カメラを用いて撮像して記録媒体に記録した上記撮像生データについて、{→引用発明T}
再生時に上記撮像生データを読出して上記撮像生データに対して色補正などの処理を施す手段を備えた物の発明を認めることができる。{→引用発明U}

ウ 引用発明1’
以上のことから、本願発明4と対比する引用発明1’として、下記の物を認定することができる。構成要素毎にP1等の記号を付しておく。

記(引用発明1’)
P0:再生時に細かい色補正などを行なえるように、撮像素子の出力データをそのまま記録媒体に記録できるようにしたディジタル・スチル・カメラであって、
P1:カラー・フィルタ配置の構造が、図5に示す構造-マゼンタ(Mg)、グリーン(G)、イエロー(Ye)及びシアン(Cy)の市松構造-である高解像度撮像素子を有する撮像手段と、
P2:該撮像手段により得られた撮像出力データそのものである撮像生データをそのまま記録する場合、撮像生データであることを示す情報をヘッダとし、ライン#1(図5)から順次、横方向に1280画素を順番に10ビット精度で記録媒体50に記録する記録手段と
T:を備えたディジタル・スチル・カメラを用いて撮像して記録媒体に記録した上記撮像生データについて、
U:再生時に上記撮像生データを読出して上記撮像生データに対して色補正などの処理を施す手段を備えた物。

[3]本願発明4と引用発明1’との対比(対応関係)

(1)要件D1?D3(デジタルカメラ、前記生撮像データ)について
前記【第3-1】[3]でした本願発明1と引用発明1との対応関係を踏まえれば、引用発明1’のP0・P1・P2・Tは、本願発明4のD1・D2D・D3と相違しない。
すなわち、引用発明1’の「ディジタル・スチル・カメラ」、「ディジタル・スチル・カメラを用いて撮像して記録媒体に記録した上記撮像生データ」は、本願発明4の「デジタルカメラ」、「デジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された前記生撮像データ」と相違しない。

(2)要件Eについて
引用発明1’のUの「再生時に上記撮像生データを読出して上記撮像生データに対して色補正などの処理を施す手段」は、
「再生時に上記撮像生データを読出して上記撮像生データに対して画像処理を施して処理済みデータを得る画像処理手段」ともいい得るから、
要件Eのうちの「(前記記録媒体に記録された前記生撮像データ)を読出し、該生撮像データに対して」「画像処理を施して処理済みデータを得る画像処理手段」においては、相違はない。
もっとも、引用発明1’の「画像処理手段」(U)は、該生撮像データに対して施す「画像処理」を「プリントに必要な画像処理」としておらず、この点相違が認められる。
また、引用発明1’は、発明全体を「画像処理装置」ともしておらず、この点でも一応の相違が認められる。

[4]一致点・相違点
以上の対比結果によれば、本願発明4と引用発明1’との一致点および相違点は、下記のとおりである。

記(一致点)
D1:異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段と、
D2:該撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録する記録手段と
D3:を備えたデジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された前記生撮像データ
E’:(前記記録媒体に記録された前記生撮像データ)をを読出し、該生撮像データに対して画像処理を施して処理済みデータを得る画像処理手段を備えた物。

記(相違点)
[相違点1]
上記画像処理手段が、該生撮像データに対して施す画像処理を、
本願発明4では、「プリントに必要な画像処理」とするのに対して、
引用発明1’では、「再生時の細かい色補正などの処理」としていて「プリントに必要な画像処理」とはしていない点

[相違点2]
本願発明4は、全体を「画像処理装置」とするのに、
引用発明1’は、「画像処理装置」とはしていない点。

[5]相違点の判断

(1)相違点1について
引用発明1’の、「画像処理手段」が該生撮像データに対して施す施す画像処理(再生時の細かい色補正などの処理)を、
「プリントに必要な画像処理」とすること(以下、「G1」という)
で、上記[相違点1]は克服される(以下、[相違点1の克服]という)ところ、
以下にみるように、[相違点1の克服]は当業者が容易に想到し得ることである。

ア 前記【第3-1】[5]相違点の判断(2)ア-1で述べたとおり、当業者は、「再生」とは、プリンタで画像を再現することをも意味するものと普通に認識することから、
引用発明1’の上記Uを、「プリンタで画像を再現する時に上記撮像生データを取込んで上記撮像生データに対して色補正などの処理を施す手段を設けた物」とすること(以下、「G0」という)は、当業者の容易想到ということができる。
このとき(「G0」とするとき)、引用発明1’の、「該生撮像データに対して施す画像処理」といい得る「再生時の細かい色補正などの処理」は、「プリンタで画像を再現する時の細かい色補正などの処理」となるところ、
当該処理は、「より画質の良いプリント画像とするための処理」といえ、同処理は前記「【第3-1】[5]相違点の判断(2)イ-1」でみたとおり、本願発明4でいう「プリントに必要な画像処理」ということができることから、 上記「G0」とすることにより、上記[相違点1の克服]がなされることとなる。
上記「G0」とすることは当業者が容易に想到し得ることであることから、上記[相違点1の克服]も、当業者が容易に想到し得ることである。

イ 上記「G0」とする際、引用発明1’の「撮像生データ」の形式(形態)に接した当業者は、引用発明1’の、「該生撮像データに対して施す施す画像処理」を、「プリントに必要な画像処理」とする技術思想に容易に至るものであり、上記[相違点1の克服]は、当業者が容易に想到し得ることである。
その理由は、前記「【第3-1】[5]相違点の判断(2)イ-3」で述べたとおりであるが、
加えて、例えば周知であり慣用されているインクジェット等のプリンタでは、シアン(Cy)、マゼンタ(Mg)、イエロー(Ye)、黒(K)の4色成分をもつ信号が用いられるのが一般的である(例えば、下記周知例5)ところ、
引用発明1’の撮像生データはそうではなく、プリントするためには、各画素のシアン(Cy)、マゼンタ(Mg)、イエロー(Ye)、黒(K)信号への色変換処理が必要であると予測されることからも、当業者は、上記技術思想に容易に至るものということができる。

ウ 《よく知られた普通の技術》
前記「【第3-1】[5]相違点の判断(2)ア-2」で例示した、上記刊行物6や上記各周知例1?4(写真プリントの例)や、さらに、下記周知例5?7等にみられるように、
撮像して得た静止画像データが記録された記録媒体から、記録された静止画像データを読み出して、静止画像データが表す画像をプリントするのに、
静止画像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得、該処理済みデータをプリントする技術は、《よく知られた普通の技術》である。

周知例5:特開平10-84555号公報
{段落【0002】?【0004】、【0006】?【0008】、【0025】
【0026】、図1等}
周知例6:特開平9-214807号公報
{段落【0002】?【0007】、【0022】?【0025】、【0033】?
【0045】、図1等}
周知例7:特開平10-126724公報
{請求項3,段落【0001】?【0004】、【0059】、図1等}

上記《よく知られた普通の技術》を、引用発明1’の、記録媒体に記録された「撮像生データ」に対して施す画像処理に適用すれば、上記G1となって上記[相違点1の克服]がなされるところ、
当該適用は、ごく自然であって、当業者が容易に想到し得ることである。
また、当該適用を妨げる事情も認められず、また、当該適用は、上記イ、前記「【第3-1】[5](2)イ-3」からみて指向されることといえることからみても、上記G1とすること、つまり、上記[相違点1の克服]は、当業者の容易想到である。

(2)相違点2について(「画像処理装置」とすることの容易想到性)
上記のように[相違点1の克服]は当業者の容易想到であるところ、
その容易に想到し得た、
U’:再生時に上記撮像生データを読出して上記撮像生データに対して色補正などの処理を施す手段(「プリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得る画像処理手段」)を備えた物、は、
プリンタとは別体の物と認識し得る物であり、全体としてもプリントに必要な画像処理を施す物といえることから、「画像処理装置」とすることも当業者が容易に想到し得ることである。
また、プリント用の画像処理をする装置を、プリンタとは別体の装置とすることもごく普通のことにすぎない{例えば、上記の周知例2、周知例4(段落【0013】?【0017】、画像取扱装置、パソコン)、周知例5(段落【0002】?【0003】【0025】)、周知例6、周知例7等参照}ことからみても、上記U’の物を「画像処理装置」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)まとめ(相違点の判断)
以上、引用発明1’を出発点として、上記[相違点1]を克服し、上記[相違点2]を克服して、本願発明4の構成に達することになるところ、それらの克服は、周知事項、刊行物6、4記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。

以上のとおり、本願発明4は、刊行物1記載の発明、及び、周知事項・技術常識、刊行物6、4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【第3-3】本願発明4について(新規性判断)

[1]本願発明4
本願発明4の認定・解釈については、前記【第3-2】[1]を援用する。

[2]刊行物の記載
当審の拒絶の理由(理由A、29条1項3号29条第2項)において引用した上記刊行物2には、図面と共に、次に掲げる記載が認められる。

〈刊行物2:特開平6-98349号公報の記載〉

〈要約、特許請求の範囲〉
(L0)「【目的】 再生装置とこの再生装置に接続される電子機器とからなり、電子機器によって、再生装置での画像データの色再現性の補正処理が制御され、簡単に高精度の色再現性が実現可能で、使い勝手のよいカラー画像処理システムとその電子機器を提供する。
【構成】 装着された媒体から再生されたカラー画像データを記憶する画像メモリ43、画像メモリ43に記憶されたカラー画像データに対して補正処理を施して出力するDSP46、CPU48、および出力I/F回路49を具備する再生装置と、該再生装置から出力されるカラー画像データを入力し、当該カラー画像データを記憶し、且つ再生装置へのカラー画像データ補正の制御コマンドを発生するコンピュータ300とを設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 装着された媒体からカラー画像データを再生する再生手段、前記カラー画像データを記憶する記憶手段及び該記憶手段に記憶されたカラー画像データに対して補正処理を施して出力する補正手段を具備する再生装置と、該再生装置から出力されるカラー画像データを入力する入力手段、該入力手段により入力されるカラー画像データを記憶する記憶手段及び前記再生装置の補正手段を制御する制御コマンドを発生する発生手段を具備する電子機器とを有することを特徴とするカラー画像処理システム。
【請求項2】 装着された媒体からカラー画像データを再生する再生手段、前記カラー画像データを記憶する記憶手段及び該記憶手段に記憶されたカラー画像データに対して補正処理を施して出力する補正手段を具備する再生装置に接続して使用される電子機器であって、前記再生装置から出力されるカラー画像データを入力する入力手段と、該入力手段により入力されるカラー画像データを記憶する記憶手段と、前記再生装置の補正手段を制御する制御コマンドを発生する発生手段とを有することを特徴とする電子機器。」

〈産業上の利用分野、従来の技術、課題〉
(L1)「【産業上の利用分野】本発明は、カラー画像処理システムおよび該システムを構成する電子機器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から電子スチルカメラで撮影された画像は、TVモニタで再生するだけでなく、パーソナルコンピュータやワークステーションなどの外部機器にデータとして取り込まれ、DTP(ディスクトップ・プランニング)に使用するはめ込み画像のソースとして、或いは、印刷、画像伝送のソースとして使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】またこの場合、例えば色再現性を向上させるためには、スチルカメラ側の処理だけでは不充分なことが多く、コンピュータなどの外部機器からの指示で、画像データが補正処理ができることが望ましい。
【0004】本発明は、前述したようなこの種のカラー画像処理の現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、再生装置とこの再生装置に接続される電子機器とからなり、電子機器によって、再生装置での画像データの色再現性の補正処理が制御され、簡単に高精度の色再現性が実現可能で、使い勝手のよいカラー画像処理システムとその電子機器を提供することにある。」

〈第1実施例、図1?図4〉
(L2)「【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1乃至図20を参照して説明する。
【0009】最初に、図1乃至図13を参照して第1の実施例を説明する。
【0010】図1は第1の実施例の構成を示すブロック図、図1は第1の実施例の画像データの説明図、図3は第1の実施例のディジタルシグナルプロセッサで処理を行う画像データブロックの説明図、図4は第1の実施例のディジタルシグナルプロセッサで処理後のデータが格納される画像メモリの説明図、図5は第1の実施例の16画面の同時表示の説明図、図6は第1の実施例の撮像素子の補色フィルタの配列の説明図である。
【0011】第1の実施例の図示せぬ記録媒体には、図2に示すように、1画面の画素数1000(V)×1200(H)の画素データが、輝度信号(Y)及び色差信号(R-Y、B-Y)の形で記録されている。16画面の取込みを実施する場合を説明すると、例えば外部機器のコンピュータ300から16画面取込のコマンドが、出力I/F49を介して、出力I/F49に接続されたCPU48に入力されると、CPU48は、CPU48に接続された入力I/F41を制御する。そこで、CPU48に制御された入力I/F41は、図示せぬ記録媒体から4ライン分の輝度信号(Y)及び色差信号(R-Y、B-Y)を取込み、入力I/F41に接続されたバッファ回路42に入力する。
【0012】バッファ回路42は、先ず図3に示す輝度信号(Y)及び色差信号(R-Y、R-B)の水平方向に4画素分のブロックb1を、バッファ回路42に接続されたDSP(ディジタルシグナルプロセッサ)46に転送する。この時、R0M47とCPU48とに接続されたDSP46は、CPU48の制御によってROM47から16分割時の処理プログラムを取り込んでいる。そこで、DSP46は該処理プログラムに従って、転送された16個のYデータ及び各8個のR-Y、R-Bデータに基づく平均化処理及びRGBデータへの変換処理を実行する。そして、得られたRGBデータは、図4に示すように、DSP46に接続され、1プレン1000×1200×8bitで3プレンからなる画像メモリ43の所定のアドレス格納される。
【0013】以下同様にして、1ライン300個のブロックのデータに対して、DSP46により平均化処理とRGBデータへの変換処理とが行われ、得られたRGBデータは画像メモリ43に格納される。このようにして、4ライン分の処理が終了すると、次の4ライン分のデータが記録媒体から読み出され、同様な処理が行われる。そして、最終的に1枚の画面の処理が終了した時点では、モニタ表示時において、図5のAの分割位置に表示される最初の画像データが画像メモリ43に格納される。その後も同様にして、残りの15枚の画像データの処理が終了すると、画像メモリ43には、図5のA?Pの各分割位置に表示される画像データが格納される。」

《第1実施例(変形例)、図6,図11》
(L3)「【0018】第1の実施例では、撮像素子からのスチル画像信号が、信号処理回路によつてY、R-Y、R-Bの形に変換されて記録媒体に記録されている場合を説明したが、各画素のディジタルデータが、記録媒体にそのまま記録されている場合もあり、この場合には、コンピュータ300側できめの細かいRGB変換処理を行い高精細な画像を得ることができる。図6は、撮像素子がマゼンタ(Mg)、シアン(Cy)、イェロー(Ye)のフィルタ配列をしている場合の説明図であり、この場合は、各素子のディジタル信号が、そのまま記録媒体に記録されている。この場合も、16個単位で画素データがDSP46に入力され、DSP46は、ROM47から対応する処理プログラムを選択し、その処理プログラムに基づいて、補色データからRGBデータへの変換処理、平均化処理などを行い、画像メモリ43の所定のアドレスにデータが格納される。
【0019】また、第1の実施例では、TVモニタに16個のマルチ画像を同時に表示する場合を説明したが、この分割数は16に限らず、ROM47に分割数に応じた処理ブログラムを格納しておいて、必要な分割に対応した動作を可能にできる。さらに、第1の実施例ではNTSCレートでモニタ表示をする場合を説明したが、例えば1000×1200画素数の表示能力のあるコンピュータ表示面への表示を行うことも可能である。この場合は、コントローラ45の読出しスピード、再生信号処理回路44の信号帯域、同期信号を、コンピュータ表示面への表示に対応可能に設定しておく必要がある。
【0020】図10は、撮影した画像の確認を迅速に行うための再生処理が可能な第1の実施例の変形例の構成を示すブロック図であり、この変形例の撮像素子は図11に示すような補色フィルタ配列をしており、有効画素数は1280(H)×960(V)であり、各素子に蓄積された電荷は、10bitのAD変換器によってディジタルデータに変換され、図12に示すように、スタートビットに続いてYeのデータD11、次いでCyのデータD12と順次、データ入力端子1に画素データが入力される。これらの画素データは、データ入力端子1に接続されたシリアルパラレル変換回路(S/P変換回路)2で10bitのパラレルデータに変換され、S/P変換回路2に接続された間引き回路6とSCSIインタフェース回路3とに入力される。そして、SCSIインタフェース回路3からは、外部機器のコンピュータからのコマンドに基づいて撮像素子の画素情報は、情報内容及び情報量を変えずにそのまま、パラレルデータ出力端子4からコンピュータなどの外部機器に転送される。また、データ入力端子1から入力される画素データは、スタートビット検出回路5に入力されて、スタートビットの検出が行われる。
・・・(中略)・・・
【0024】このように、第1の実施例の変形例によると、外部機器での処理を行なわずに、迅速に電子スチルカメラの撮影画像を確認することが可能になり、電子スチルカメラの撮影画像データは、そのまま情報内容及び情報量を変化させずに外部機器に転送され、外部機器の性能に応じた適切な処理が可能になる。」

〈第2実施例,図14、図17〉
(L4)「【0026】次に、本発明の第2の実施例を図14乃至図17を参照して説明する。ここで、図14は第2の実施例の構成を示すブロック図、図15は図14の要部の構成を示すブロック図、図16は第2の実施例に取り付け可能な表示パネルの説明図、図17は図16の動作の説明図である。
【0027】先ず、DSP76での処理を行わない場合には、入力I/F71から入力されるデータは、入力バッファメモリ72に一旦格納され、何の処理もされずにデータバス75を介して、出力I/F74から出力I/F74に接続されたコンピュータ300′に入力される。
【0028】また、生データをYCデータに変更する場合には、スイッチ78に生データをYCデータに変換する切換設定を行わせることにより、DSP76は、DSP76に接続されたROM79に格納されている処理ブログラムから該変換の処理プログラムを選択する。そして、DSP76は、データバス75を介してDSP76に接続され、入力I/F71から入力され入力バッファメモリ72に格納されている画素データに対して、YC変換処理を開始する。・・・(以下略)
【0029】このようにして、全ての画素データの処理が終了すると、入力バッファメモリ72には生データが、出力バッファメモリ73にはYCデータが格納された状態となり、コンピュータ300′は生データとYCデータとの何れをも取込むことが可能になる。」

《第2実施例(RGBデータへの変換)》
《YCデータ(メモリ72)→RGBデータ(メモリ73)》
(L5)「【0031】そして、YCデータのRGBデータへの変換処理をする場合には、スイッチ78でRGB変換処理の設定をすると、同様にしてROM79からはRGB変換処理の処理プログラムが選択され、DSP76は該処理プログラムに従って、入力バッファメモリ72から取込んだ画素のYCデータに対して、RGB変換処理を行って得られたRGBデータを出力バッファメモリ73に格納する。全ての画素データの処理が終了すると、入力バッファメモリ72にはYCデータが、出力バッファメモリ73にはRGBデータが格納された状態となり、コンピュータ300′はYCデータとRGBデータとの何れをも取込むことが可能になる。」
《生データ(メモリ72)→YCデータ(メモリ72)
→RGBデータ(メモリ73)、図17》
(L6)「【0032】以上では、DSP76は、入力バッファメモリ72のデータを入力し、演算処理後のデータを出力バッファメモリ73に出力する場合を説明したが、例えば生データをYCデータに変換し、得られたYCデータを入力バッファメモリ72に格納し、その後入力バッファメモリ72から読出したYCデータをRGB変換し出力バッファメモリ73に格納することも可能である。・・・(以下略)
【0033】また第1の実施例と同様に、図8に示したように、コンピュータ300′からの補正制御のコマンドにより、ホワイトバランス補正やガンマ補正等の画質向上のための各種補正処理も撮影時のパラメータ等を基にDSP76により実行される。
【0034】ところで第2の実施例において、どのバッファメモリにどのデータが格納され、どのデータが処理中であるかが、表示されるとオペレータにとって、大変便利である。図16は、このような場合に取り付け可能なLED表示パネルであり、この表示パネル38には、入力バッファメモリと出力バッファメモリの欄が設けてあり、入力バッファメモリの欄には、生データ、圧縮YCデータ、YCデータ、RGBデータ用のLED(A)?LED(D)が配置してあり、出力バッファメモリの欄には、YCデータ、RGBデータ用のLED(E)、LED(F)が配置してある。図17に示すように、入力バッファメモリ72に生データが格納されていると、同図(ア)に示すように対応するLED(A)が点灯し、データ転送中は点灯が点滅に変化し、データ転送が終了すると点灯に戻る。また、生データをYCデータに変換し、変換したデータを入力バッファメモリ72に戻す場合は、図17(イ)に示すように、処理中はLED(C)が点滅し、処理が終了すると同図(ウ)に示すようにLED(A)が消灯し、LED(C)が点灯する。そして、RGB変換を行うと同図(エ)に示すように、LED(F)が点滅し、処理が終了すると同図(オ)に示すように、LED(C)、LED(F)が点灯状態になる。この状態で、入力バッファメモリ72にはYCデータが、出力バッファメモリ73にはRGBデータが格納されていることが示される。」
(L7)「【0035】このように、第2の実施例によると、1台のDSP76が、ROM79から各種の処理プログラムを選択し、その処理プログラムを実行して、画像処理を行うようにしたために、小型化され低消費電力型の構成で、コンピュータの性能に依存せず各種の画像処理を行うことができると共に、コンピュータから発せられる補正制御のコマンドに基づいて、画質向上の各種の制御が可能になり、高品質のカラー画像を得ることができる。」

(L8)「【0046】このように、各実施例においては、出力I/Fに接続されるコンピュータは、DSP処理プログラムの選択、画像データの取込みなどの画像信号の転送制御に関してのコマンドを発生するだけでなく、上述したようにDSP(図1で46、図14で76、図18で267)で行われる各処理に対してのパラメータを設定することが可能である。・・(以下略)
【0047】【0048】略
【0049】ところで、コンピュータに入力された画像をプリンタに出力する場合、プリンタの特性に合わせて、諧調補正、色補正、ノイズ除去などの処理を行うことがある。この場合に、実施例によると、これらの処理をコンピュータのCPUと画像信号転送装置内のDSPとに分担処理させることが可能になる。例えば、スチルカメラの感度を高く設定して撮影した画像は、輝度の低い部分に色ノイズが目立つので、図9に示す輝度レベルと色差ゲインの特性に従って、輝度レベルに応じて色差信号のゲインを変換する処理をDSP76(図14の場合)でのRGB変換処理時に行うようにし、諧調補正、色補正などの細かいパラメータ設定が必要な処理は、出力I/F74に接続されるコンピュータのCPUで行うようにすることが可能になる。
【0050】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明によると、再生装置において、再生手段が、装着された媒体からカラー画像データを再生し、このカラー画像データに対して、、電子機器の発生手段からの制御コマンドにより、制御駆動される補正手段が補正処理を施すので、各種の条件に対応する補正が、再生装置と電子機器との簡単な操作で行われ、高精度の色再現特性で高品質のカラー画像が得られる。」

[3]刊行物2記載のもの

ア 「第2実施例のもの」
前掲(L4)?(L7)記載の第2実施例のものであって、生画像データに対する処理で、前掲(L8)「プリンタに出力する場合、プリンタの特性に合わせて、諧調補正、色補正、ノイズ除去などの処理」を行うものに着目する。
実施例2のものは、図14の71?78の装置(請求項の「再生装置」、前掲(L8)の「画像信号転送装置」)とコンピュータ300’(請求項の「電子機器」)を備えるもの{(L4)、図14}である。

イ プリンタの特性に合わせた、諧調補正、色補正、ノイズ除去などの処理
上記「第2実施例のもの」は、前掲(L8)段落【0049】によれば、「プリンタに出力する場合、プリンタの特性に合わせて、諧調補正、色補正、ノイズ除去などの処理」を、「コンピュータのCPUと画像信号転送装置内のDSPとに分担処理」-例えば、「色ノイズ」防止のための「色差信号のゲイン変換処理をDSP76(図14の場合)でのRGB変換処理時に行う」、すなわち、画像信号転送装置で行うRGB変換処理で行い、「諧調補正、色補正などの細かいパラメータ設定が必要な処理は、コンピュータのCPUで行うように」して分担処理-する。
したがって、再生装置でR,G,Bデータに変換され、当該変換中に色ノイズ防止のための色差信号のゲイン変換処理がされ、
再生装置で変換されたR,G,Bデータについて、コンピュータで、諧調補正、色補正などの細かいパラメータ設定が必要な処理がされて、プリンタに与えられると理解できる。
また、再生装置での上記ゲイン変換処理、コンピュータでの諧調補正・色補正などの細かいパラメータ設定が必要な処理は、プリンタの特性に合わせてする処理であることは、明らかである。

ウ RGB変換処理(図14)
上記「第2実施例のもの」において、上記イのRGB変換処理(図14)には、
・前掲(L5)の、YCデータ(メモリ72)→RGBデータ(メモリ73)への変換処理と、
・前掲(L6)の「生データをYCデータに変換し、得られたYCデータを入力バッファメモリ72に格納し、その後入力バッファメモリ72から読出したYCデータをRGB変換し出力バッファメモリ73に格納する」{生データ(メモリ72)→YCデータ(メモリ72)→RGBデータ(メモリ73)}変換処理があるところ、
後者の、について、第2実施例では詳細に説明していないが、
・第1実施例における、YCデータ→RGBデータへの変換処理についての、前掲(L2)記載及び、
・第1実施例の変形例における、生データ→RGBデータへの変換処理についての前掲(L3)記載、
・第2実施例では第1実施例と異なり、16分割しないから、平均化処理、間引き処理をしないこと、
を踏まえれば、
「生データ」は、撮像素子がマゼンタ(Mg)、シアン(Cy)、イェロー(Ye)、グリーン(G){段落【0018】の記載ではグリーン(G)が抜けている}の補色フィルタ配列をしていて、「各素子のディジタル信号」である「補色データ」が、「そのまま記録媒体に記録されている」形式の信号(図6、段落【0018】)であり、この生データが、
図4に示される「RGBデータは、図4に示す」「3プレンからなる画像メモリ43」に格納されるように変換される(段落【0012】)、すなわち、R,G,Bの3プレーンのデータに変換されるものと理解される。

エ 電子スチルカメラ、記憶媒体、再生装置(画像信号転送装置)
上記ア?ウからすれば、
記録媒体に記録された「生データ」は、
マゼンタ(Mg)、シアン(Cy)、イェロー(Ye)、グリーン(G)の補色フィルタ配列をした撮像素子を有する撮像手段と、
撮像素子のディジタル信号である補色データを、そのまま記録媒体に記録する記録手段を備えているといい得る「電子スチルカメラ」(段落【0002】【0024】【0049】)を用いて、
該補色データをそのまま記録媒体に記録したデータといえ、
また、記録媒体は再生装置に装着されて(請求項、段落【0050】)、記録媒体に記録された該生データは、記録媒体から読み出されるもの(段落【0013】)ということができる。

オ 以上によれば、刊行物2記載のものとして、以下のものを認めることができる。

〈刊行物2記載のもの〉
e1:マゼンタ(Mg)、シアン(Cy)、イェロー(Ye)、グリーン(G)の補色フィルタ配列をした撮像素子を有する撮像手段と、
e2:撮像素子のディジタル信号である補色データを、そのまま記録媒体に記録する記録手段と
e3:を備える電子スチルカメラを用いて、各撮像素子のディジタル信号である補色データをそのまま記録した生データ
f1:を読み出して、R,G,Bの3プレーンのデータに変換する処理であって、変換中に色ノイズ防止のための色差信号のゲイン変換をする、記録媒体が装着される再生装置と、
f2:再生装置で変換されたR,G,Bデータについて、諧調補正、色補正などの細かいパラメータ設定が必要な処理を行って、プリンタに与える、コンピュータとからなり、
f3:再生装置での上記ゲイン変換処理、コンピュータでの諧調補正・色補正などの細かいパラメータ設定が必要な処理は、プリンタの特性に合わせてする処理である、もの。

[4]対比

上記刊行物2記載のものについて、検討する。
なお、D1?D3、Eは、前掲【第3-2】[1]で付した、上記本願発明4の各構成要件を示す記号である。

ア 生データ(上記e1?e3)

ア1 電子スチルカメラ
「電子スチルカメラ」は、記録媒体にディジタル信号である補色データを記録するカメラであるから、「デジタルカメラ」ということができる。

ア2 撮像素子
e1:「マゼンタ(Mg)、シアン(Cy)、イェロー(Ye)の補色フィルタ配列をした撮像素子」は、D1「異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイス」といい得るものである。

ア3 生データ
「生データ」は、「撮像素子のディジタル信号である補色データを、そのまま記録媒体に記録」した補色データ、すなわち、
各画素のデータが、マゼンタ(Mg)のデータ、シアン(Cy)のデータ、イェロー(Ye)のデータ、グリーン(G)のデータであるところ、
通常、モニタは、各画素がRGB3色を有する形式のデータを受け入れるものであることからすれば、このような形式のデータは、そのままではモニタに再生表示することはできない形式であるといえ、
したがって、「モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データ」とも言い得ることは明らかである。
また、「撮像素子を有する撮像手段により得られた」「生撮像データ」といい得ることも明らかである。

ア4 まとめ
以上のことから、刊行物2記載のものの上記e1?e3は、
D1:異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段と、
D2:該撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録する記録手段と
D3:を備えたデジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された前記生撮像データ
ということができる。

イ 再生装置とコンピュータからなるもの(上記f1?f3)

イ1 f1の「生データを読み出して、R,G,Bの3プレーンのデータに変換する処理であって、変換中に色ノイズ防止のための色差信号のゲイン変換をする処理」は、
本願発明1について「【第3-1】[5]相違点の判断(2)イー3」でも前記したと同様、本願明細書で「プリントに必要な画像処理」の例として説明する上記(i)生撮像データから撮像データを再構成する処理、に相当する処理といえることから、
「プリントに必要な画像処理」ということができる。

イ2 f3の「再生装置での上記ゲイン変換処理、コンピュータでの調補正・色補正などの細かいパラメータ設定が必要な処理」も、「プリンタの特性に合わせてする処理」であるから、「プリントに必要な画像処理」ということができる。

イ3 以上によれば、再生装置とコンピュータからなるf1からf3のものは、
(前記生撮像データ)「を読出し、該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得る画像処理手段」を備えていて、(電子スチルカメラ、プリンタとは別体の)「画像処理装置」を構成している、といえる。

ウ 以上によれば、刊行物2記載のものは、以下の発明ということができる。
すなわち、
D1:異なる分光感度を有する複数種類の光電変換素子を単一面上に配置した撮像デバイスを有する撮像手段と、
D2:該撮像手段により得られた、モニタに再生することを前提とした画像処理が未処理の、各色成分の画素位置が異なる生撮像データを記録媒体に記録する記録手段と
D3:を備えたデジタルカメラにおいて前記記録媒体に記録された前記生撮像データ
E:(前記記録媒体に記録された前記生撮像データ)を読出し、該生撮像データに対してプリントに必要な画像処理を施して処理済みデータを得る画像処理手段を備えたことを特徴とする画像処理装置。

上記発明は、本願の請求項4記載の発明(本願発明4)そのものである。
すなわち、本願発明4は、上記刊行物2に記載された発明ということができる。

[5]まとめ(新規性)
以上、本願発明4は、上記刊行物2に記載された発明である。

【第4】むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明および周知事項・技術常識、刊行物6記載の発明、刊行物4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本願の請求項4に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明および周知事項・技術常識、刊行物6記載の発明、刊行物4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願の請求項4に係る発明は、上記刊行物2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
それ故、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-17 
結審通知日 2010-12-21 
審決日 2011-01-06 
出願番号 特願平11-33740
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
P 1 8・ 113- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 佐藤 直樹
小池 正彦
発明の名称 フォトフィニッシング方法およびシステム並びに記録媒体  
代理人 柳田 征史  
代理人 佐久間 剛  

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