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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1232941
審判番号 不服2007-16474  
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-13 
確定日 2011-03-07 
事件の表示 特願2005-256769「携帯端末」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月16日出願公開、特開2006- 73015〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯

本件出願は、平成13年 1月31日に出願した特願2001-22808号の一部を平成17年 9月 5日に新たな特許出願としたものであって、平成18年 9月19日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年11月27日付けで手続補正書が提出されたが、平成19年 4月27日付けで拒絶査定され、これに対して同年 6月13日付けで拒絶査定不服審判が請求されると共に、同年 7月11日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.平成19年 7月11日付けでした手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成19年 7月11日付けでした手続補正を却下する。

[理由]

(1)補正の内容について

平成18年11月27日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲は、平成19年 7月11日付けでした手続補正(以下、「本件補正」という。)により、以下のとおり補正された。


<<本件補正前の特許請求の範囲>>

「 【請求項1】
アンテナを介して信号を送受信する無線部と、
数字キーと機能メニューを表示させるための機能キーとを含む操作キーを備える入力部と、
インターネットに接続してWebページの閲覧、メールの作成及び送受信を行う機能を有する制御部と、
当該制御部から入力されたデータを表示する表示部と、
を備えた携帯端末であって、
前記表示部にWebページが表示されている状態で、前記入力部の機能キーが押下されると機能メニューが表示され、更に操作キーにより該機能メニューの中からWebページのURLをメールに貼付する機能が選択されると、前記表示部に表示しているWebページからメールの作成画面に切り換えて表示するとともに、前記表示されていたWebページのURLを当該メールに貼り付け、前記入力部からメール送信の指示が入力されると、指定された宛先に当該メールを送信し、メールの送信が完了すると、前記表示部にメール送信が完了したことを示す表示を行い、メール作成画面に移行する前に表示していたWebページへ前記表示部の表示が戻るようにしたことを特徴とする携帯端末。」

<<本件補正後の特許請求の範囲>>

「 【請求項1】
アンテナを介して信号を送受信する無線部と、
数字キーと機能メニューを表示させるための機能キーとを含む操作キーを備える入力部と、
インターネットに接続してWebページの閲覧、メールの作成及び送受信を行う機能を有する制御部と、
当該制御部から入力されたデータを表示する表示部と、
を備え、Webページが表示されているときに、当該WebページのURLを送信するためのメール作成画面に切り換えて表示し、メール送信後に前記Webページに戻る携帯端末であって、
前記表示部にWebページが表示されている状態で、前記入力部の機能キーが押下されると機能メニューが表示され、更に操作キーにより該機能メニューの中からWebページのURLをメールに貼付する機能が選択されると、前記表示部に表示しているWebページからメールの作成画面に切り換えて表示するとともに、前記表示されていたWebページのURLを当該メールに貼り付け、前記入力部からメール送信の指示が入力されると、指定された宛先に当該メールを送信し、メールの送信が完了すると、前記表示部にメール送信が完了したことを示す表示を行い、メール作成画面に移行する前に表示していたWebページへ前記表示部の表示が戻るようにしたことを特徴とする携帯端末。」

なお、審判請求人は、平成19年 8月21日付け手続補正書(方式)により補正した請求の理由において、以下のとおり主張している。

「(2)補正の根拠の明示
平成19年7月11日付け手続補正書における補正事項は、出願当初の明細書の[0032]?[0034]、[0036]?[0039]の記載及び図3,図4に基づくものである。
尚、上記補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。」

(2)本件補正前後の各請求項の対応関係について

本件補正前後の請求項の記載を対比して検討すると、本件補正前の請求項1の「携帯端末」に係る発明は、本件補正後の請求項1の「携帯端末」に係る発明に対応する。

(3)補正の目的

本件補正は、本件補正前の請求項1の「アンテナを介して信号を送受信する無線部と、数字キーと機能メニューを表示させるための機能キーとを含む操作キーを備える入力部と、インターネットに接続してWebページの閲覧、メールの作成及び送受信を行う機能を有する制御部と、当該制御部から入力されたデータを表示する表示部と、を備えた携帯端末」との事項を、本件補正後の請求項1の「アンテナを介して信号を送受信する無線部と、数字キーと機能メニューを表示させるための機能キーとを含む操作キーを備える入力部と、インターネットに接続してWebページの閲覧、メールの作成及び送受信を行う機能を有する制御部と、当該制御部から入力されたデータを表示する表示部と、を備え、Webページが表示されているときに、当該WebページのURLを送信するためのメール作成画面に切り換えて表示し、メール送信後に前記Webページに戻る携帯端末」との事項に補正するものである。

ここで、上記補正は、本件補正前の請求項1の上記「アンテナを介して信号を送受信する無線部と、数字キーと機能メニューを表示させるための機能キーとを含む操作キーを備える入力部と、インターネットに接続してWebページの閲覧、メールの作成及び送受信を行う機能を有する制御部と、当該制御部から入力されたデータを表示する表示部と、を備えた携帯端末」との事項を、「Webページが表示されているときに、当該WebページのURLを送信するためのメール作成画面に切り換えて表示し、メール送信後に前記Webページに戻る」との事項で、さらにその機能を備えるものに限定して特定するものであるから、発明を特定するために必要な事項を限定して減縮するものである。

したがって、平成19年 7月11日付けの上記手続補正により本願の請求項1に係る発明についてなされた補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(4)独立特許要件

本件補正後の請求項1に係る発明は、上記(3)で判断したとおり、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものであるから、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるのかどうか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

(4-1)本願補正発明

本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、平成19年 7月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される前記(1)の「<<本件補正後の特許請求の範囲の記載>>」に記載したとおりのものである。

(4-2)引用文献に記載の発明

(引用文献1)

原査定の拒絶の理由に引用された「快適!電子メールの便利ワザ これでアナタもメールの達人だ!,日経Click,日本,日経BP社,1998年 8月 8日,第5巻,第10号,p.320-321」(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の内容が記載されている。

(1a)『これでアナタもメールの達人だ!
今や電話だって1人で複数持つ時代。メールアドレスもいくつか持ってTPOで使い分けちゃおう。メールを別のアドレスに転送したり、1つのソフトで複数のアドレスを管理する上級ワザをご紹介!!

会社宛に来たメールを自宅に転送して、のんびりチェック!

転送機能を上手に使い分ける

・・・(中略)・・・

お気に入りのURLを送ろう

WebページのURLを伝えるのって間違いやすいよね。そこで利用したいのが「アクティブURL」という機能。ほとんどのメールソフトについているこの機能を使って、URL情報を送ってみよう。
受信したメールの中に、http://で始まる文字列があれば、自動的に認識して、青い文字で表示。クリックすると、リンクするように設定されたブラウザーが起動し、該当ページを表示してくれるのだ。中でもOutlook ExpressやNetscapeMessengerを使えば送信もカンタン。ブラウザーから直接送れる。
「このWebページは面白いよ」とか、「新聞や雑誌のWebページにこんな記事が出ていたよ」と知らせるのにとっても便利な機能だ。何よりも受信してからが楽チンなのだ。』(第320頁上段見出し?下段中欄下から1行)

(1b)『Internet Explorer4.0の「ファイル」から「送信」→「リンクを・・・」を選択すると現在表示中のURLをメールソフトにコピー』(第320頁下段右欄右上部)

(1c)「本文中にはURLが、添付ファイルにはInternet Explorer4.0のインターネットショートカットが入る。違うブラウザーのときは本文のURLをクリック」(第320頁下段右欄左下部)

したがって、上記の全ての摘記事項及び図面の記載を参酌すると、引用文献1には、以下の構成が記載されているといえる。

(ア)引用文献1には、その図面を参照すれば、「コンピュータが、マウスポインターを備えること」が記載されているといえる。

(イ)また、上記摘記事項(1b)の記載によれば、引用文献1には、「マウスポインターを備えるコンピュータが、インターネットのWebページの表示を行うブラウザーと、メールの作成及び送受信を行うメールソフトを有するソフトウェアを備える」ことが記載されているといえる。

(ウ)さらに、引用文献1の図面の記載を参酌すれば、「コンピュータは、ソフトウェアが生成する画面をマルチウインドウで表示する表示部を備える」ことが記載されているといえる。

(エ)上記摘記事項(1a)の「お気に入りのURLを送ろう・・・(中略)・・・中でもOutlook ExpressやNetscapeMessengerを使えば送信もカンタン。ブラウザーから直接送れる。」の記載及び上記摘記事項(1b)の記載によれば、「コンピュータは、ブラウザーからURLを送信するためのメールソフトへ直接URLをコピーして送信する」ものであるといえる。

したがって、上記摘記事項(1a)によれば、「ブラウザーからURLを送信するためのメールソフトへURLを直接コピーして送信するコンピュータ」が記載されているといえる。

(オ)上記摘記事項(1b)の記載及び上記摘記事項(1c)の記載からみて、「メールソフトは、表示部のウインドウ内にWebページが表示されているときに、マウスポインターによってファイルメニューが選択されるとファイルメニューの下位メニューが表示され、さらに下位メニューの中から、表示中のURLをメールソフトにコピーする機能が選択されると、表示中のURLがメールの本文中に入り、マウスポインターからメール送信のメニューが選択されると、指定された宛先にメールを送信する」ものと解することができる。

したがって、上記摘記事項(1b)及び上記摘記事項(1c)によれば、引用文献1には、「表示部のウインドウ内にWebページが表示されているときに、マウスポインターによってファイルメニューが選択されるとファイルメニューの下位メニューが表示され、さらに下位メニューの中から、表示中のURLをメールソフトにコピーする機能が選択されると、表示中のURLがメールの本文中に入り、マウスポインターからメール送信のメニューが選択されると、指定された宛先にメールを送信するメールソフト」が記載されているといえる。

上記(ア)乃至(オ)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されているといえる。

「 マウスポインターと、
インターネットのWebページの表示を行うブラウザーと、メールの作成及び送受信を行うメールソフトを有するソフトウェアと、
当該ソフトウェアが生成する画面をマルチウインドウで表示する表示部と、
を備え、ブラウザーからURLを送信するためのメールソフトへURLを直接コピーして送信するコンピュータであって、
表示部のウインドウ内にWebページが表示されているときに、マウスポインターによってファイルメニューが選択されるとファイルメニューの下位メニューが表示され、さらに下位メニューの中から、表示中のURLをメールソフトにコピーする機能が選択されると、表示中のURLがメールの本文中に入り、マウスポインターからメール送信のメニューが選択されると、指定された宛先にメールを送信するメールソフトを備えたコンピュータ。」

(引用文献2)

原査定の拒絶の理由において提示された引用文献である「矢崎茂明,携帯電話のみでWWWアクセスを実現 NTTドコモが新サービス「iモード」を99年2月22日に開始,日経オープンシステム,日本,日経BP社,1999年 2月15日,第71号,p.116-117」(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の内容が記載されている。

(2a)『携帯電話のみでWWWアクセスを実現
NTTドコモが新サービス「iモード」を99年2月22日に開始

NTTドコモは,携帯電話から銀行振り込みや航空機,コンサートのチケット予約ができる新サービス「モード」を99年2月22日から開始する。携帯電話のみでWWWアクセスやインターネット・メールの送受信ができる。

NコTドコモは99年1月25日,携帯電話の新サービスである「iモード」を99年2月22日から開始すると発表した。銀行振り込みや,航空機やコンサートのチケット予約などオンラインのサービスを利用できる。また,電子メールの送受信やWWWへのアクセスも可能である。利用するにはiモードに対応した端末が必要で,サービスを開始する2月22日に出荷するのは富士通製の「デジタル・ムーバF501iHYPER」のみ(写真1)。料金は,月額300円(パケット通信サービスの基本使用料200円と,iモードの付ヵ磯能使用量100円)の固定料金と,1パケット(128バイト)あたり0.3円の従量課金との組み合わせである。
本サービスが狙う市場は巨大だ。NTTドコモは「99年度に200万?300万ユーザー,3年後に1000万ユーザー」(ゲートウェイビジネス部長の榎啓一氏)を狙うとしている。iモードの展開にあたって同社は,あえて“インターネット”や”WWW”という言葉は前面に出していない。「留守番電話機能のような(簡単に使える)もの」(ゲートウェイビジネス企画室長の松永真理氏)として,個人へのデータ通信やWWWアクセスの浸透を狙う。

実態はDoPa+WWWプラウザ
iモードの実体は,携帯電話に,同社のPC向けパケット交換サービスである「DoPa」とほば同等の通信機能を実装し,WWWブラウザと電子メール送受信機能を備えたもの(図1)。
利用するネットワークは, DoPaと同じ「PDC-P」を利用する。ただし,利用できる帯域はDoPaの28.8Kbps 収ビット/秒)よりも低速で,9600bps までである。iモード端末はPDC-Pを経由して,インターネットや,銀行振り込みなどのサービスを提供する「サービズ・プロバイダ」にアクセスする。
利用できるエリアもDoPaと同様。99年3月末には,800MHzデジタル方式の携帯・自動車電話とほば同等のエリアになるとしている。音声の通話は従来と変わりない。
iモード端末が備えるWWWブラウザ機能は, PCで動作するWWWブラウザの縮小版だ。URLを入力して,インターネット上のコンテンツにアクセスできるが,表示に制限がある。表示できるHTMLは, HTML4.0のサブセットで「コンパクトHTML」と呼ぶ。コンパクトHTMLは,携帯電話など表示面積が小さい装置を前提にしたHTMLの規格。アクセス(URLはhttp://eee.access.co.jp), NEC,ソニー,富士通,松下電器産業,三菱電機らが共同開発した。」(第116頁第1行?第117頁左欄下から10行)

したがって、上記の全ての摘記事項及び図面の記載を参酌すると、引用文献2には、以下の構成が記載されているといえる。

(カ)上記摘記事項(2a)によれば、引用文献2には、「携帯電話のようにその表示面積が小さい装置でも表示するために、携帯電話に、PCで動作するWWWブラウザの縮小版であるWWWブラウザと、電子メール送受信機能とを備えること」が記載されているといえる。

上記(カ)から、引用文献2には、次の記載事項があるといえる。

「PCで動作するWWWブラウザの縮小版であって表示面積が小さい装置で表示するためのWWWブラウザと、電子メール送受信機能とを備える携帯電話。」

(引用文献3)

原査定の拒絶の理由において提示された引用文献である特開平10-154097号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の内容が記載されている。

(3a)「【0015】図4は、本発明の一実施例の処理動作を説明するためのフローチャートである。図2乃至図4を参照して、本発明の一実施例の動作を以下に説明する。
【0016】ホームページ管理制御部22からホームページアドレスを取得し(ステップ41)、時刻を制御する時計制御部21から現在の時刻(日時情報)を入手し(ステップ42)、ホームページのアドレス31やホームページの最終更新日32、ホームページ作成管理者の電子メールアドレス33を管理するホームページ管理制御部22からホームページの最終更新日を取得する(ステップ43)。
【0017】次に情報比較通知処理部25にて、現在の時刻がホームページの最終更新日からN日経過したか否か(最終更新日+N日≧現在の日時)を比較する(ステップ44)。
【0018】ステップ44において、N日が既に経過している場合には(ステップ44のYes)、ホームページ作成管理者にホームページの最終更新日からN日経過したことを通知するため、電子メール制御部23にて、電子メールソフトを起動し(ステップ45)、ホームページ管理制御部22からホームページのアドレス31とホームページ作成管理者の電子メールアドレス33を入手し、宛先にホームページ作成管理者の電子メールアドレスを、メールの内容にホームページアドレスと最終更新日と現在の時刻を格納し(ステップ46)、電子メール送信部23から、作成した電子メールを送信する(ステップ47)。
【0019】つづいて電子メールが正常に送信終了したことを確認後、電子メールソフトを終了する(ステップ48)。
【0020】一方、ステップ44において、現在の時刻が最終更新日からN日が未だ経過していない場合には、次のホームページアドレスを取得するステップ49へ移行する。
【0021】次のホームページについてホームページアドレスを取得し(ステップ49)、時計制御部21より今の時刻を入手する処理であるステップ42に戻る。そして、前記したホームページと同様、現在時刻と最終更新日との比較判定処理、及び現在の時刻がホームページの最終更新日からN日経過している場合にはホームページ作成者への電子メール送信処理を行う。」

したがって、上記の全ての摘記事項及び図面の記載を参酌すると、引用文献3には、以下の構成が記載されているといえる。

(キ)上記摘記事項(3a)の「【0018】・・・(中略)・・・電子メール制御部23にて、電子メールソフトを起動し(ステップ45)、ホームページ管理制御部22からホームページのアドレス31とホームページ作成管理者の電子メールアドレス33を入手し、宛先にホームページ作成管理者の電子メールアドレスを、メールの内容にホームページアドレスと最終更新日と現在の時刻を格納し(ステップ46)、電子メール送信部23から、作成した電子メールを送信する(ステップ47)。【0019】つづいて電子メールが正常に送信終了したことを確認後、電子メールソフトを終了する(ステップ48)。・・・(中略)・・・【0021】・・・(中略)・・・ステップ42に戻る。」の記載によれば、引用文献3には、「メールの送信が終了すると自動的にメールアプリケーションが終了し、処理を戻すこと」が記載されているといえる。

上記(キ)から、引用文献3には、次の記載事項があるといえる。

「メールの送信が終了すると自動的にメールアプリケーションが終了し、処理を戻すこと。」

(4-3)本願補正発明と引用文献1発明との対比

本願補正発明と引用文献1発明を対比する。

引用文献1発明の「マウスポインター」は、ユーザが入力操作するインターフェース部を構成しているから、本願補正発明の「入力部」に相当する。

また、引用文献1発明の「インターネットのWebページの表示を行うブラウザーと、メールの作成及び送受信を行うメールソフトを有するソフトウェア」との事項は、本願補正発明の「インターネットに接続してWebページの閲覧、メールの作成及び送受信を行う機能を有する制御部」との事項に相当する。

また、引用文献1発明の「当該ソフトウェアが生成する画面をマルチウインドウで表示する表示部」との事項は、本願補正発明の「当該制御部から入力されたデータを表示する表示部」との事項に相当する。

また、引用文献1発明の「表示中のURLが本文中に入り」との事項は、本願補正発明の「前記表示されていたWebページのURLを当該メールに貼り付け」との事項に相当する。

また、引用文献1発明の「マウスポインターからメール送信のメニューが選択されると、指定された宛先にメールを送信する」との事項は、本願補正発明の「前記入力部からメール送信の指示が入力されると、指定された宛先に当該メールを送信し」との事項に相当する。

そして、本願補正発明の「Webページが表示されているときに、当該WebページのURLを送信するためのメール作成画面に切り換えて表示し、メール送信後に前記Webページに戻る携帯端末」との事項と引用文献1発明の「ブラウザーからURLを送信するためのメールソフトへURLを直接コピーして送信するコンピュータ」との事項は、後記の点で相違するものの、当該「コンピュータ」は、通常、Webサーバやメールサーバと接続するクライアント端末であり、当該「ブラウザー」から「直接コピー」する処理は、当該「ブラウザー」にてWebページが表示されているときになされるものであるから、共に「Webページが表示されているときに当該WebページのURLをメールに貼り付けて、当該メールを送信する端末」である点で共通する。

また、本願補正発明の「前記表示部にWebページが表示されている状態で、前記入力部の機能キーが押下されると機能メニューが表示され」との事項と、引用文献1発明の「表示部のウインドウ内にWebページが表示されているときに、マウスポインターによってファイルメニューが選択されるとファイルメニューの下位メニューが表示され」との事項とは、後記の点で相違するものの、「選択」は、「ファイルメニュー」の位置に「マウスポインター」があるときに、マウスをクリックすることにより行われるものであるから、共に「表示部にWebページが表示されている状態で、入力部で押下されると機能メニューが表示される」という点で共通する。

また、本願補正発明の「更に操作キーにより該機能メニューの中からWebページのURLをメールに貼付する機能が選択されると」との事項と、引用文献1発明の「さらに下位メニューの中から、表示中のURLをメールソフトにコピーする機能が選択されると」との事項とは、後記の点で相違するものの、共に「更に操作により該機能メニューの中からWebページのURLをメールに貼付する機能が選択されると」という点で共通する。

したがって、両者は、

(一致点)

「 入力部と、
インターネットに接続してWebページの閲覧、メールの作成及び送受信を行う機能を有する制御部と、
当該制御部から入力されたデータを表示する表示部とを備え、Webページが表示されているときに当該WebページのURLをメールに貼り付けて、当該メールを送信する端末であって、
前記表示部にWebページが表示されている状態で、前記入力部で押下されると機能メニューが表示され、更に操作により該機能メニューの中からWebページのURLをメールに貼付する機能が選択されると、前記表示されていたWebページのURLを当該メールに貼り付け、前記入力部からメール送信の指示が入力されると、指定された宛先に当該メールを送信するようにしたことを特徴とする端末。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)

本願補正発明では、端末がアンテナを介して信号を送受信する無線部を備えるのに対し、

引用文献1発明では、そのような構成でない点。

(相違点2)

本願補正発明では、端末が携帯端末であり、そのため、
端末が、メール作成画面に切り換えて表示するものであり、
入力部が、数字キーと機能メニューを表示させるための機能キーとを含む操作キーを備え、入力部の機能キーが押下されると機能メニューが表示され、更に操作キーにより該機能メニューの中から機能が選択され、
貼り付けが、前記表示部に表示しているWebページからメールの作成画面に切り換えて表示するとともに行われるのに対し、

引用文献1発明では、端末が携帯端末ではなく、画面をマルチウインドウで表示する表示部を備えた端末であり、そのため、
端末が、上記のように構成されておらず、
入力部が、上記のように構成されておらず、
貼り付けが、上記のように処理されていない点。

(相違点3)

本願補正発明では、端末が、メール送信後に前記Webページに戻る機能を備え、メールの送信が完了すると、表示部にメール送信が完了したことを示す表示を行い、メール作成画面に移行する前に表示していたWebページへ前記表示部の表示が戻るようにした端末であるのに対し、

引用文献1発明では、端末が上記のような構成でない点。

(4-4)相違点についての判断

(相違点1について)

引用文献2の上記摘記事項によれば、引用文献2には、「PCで動作するWWWブラウザの縮小版であって表示面積が小さい装置で表示するためのWWWブラウザと、電子メール送受信機能とを備える携帯電話」との記載事項がある。

してみると、引用文献1発明を知る者が引用文献2にみられる記載事項に接すれば、引用文献1発明における「インターネットに接続してWebページの閲覧、メールの作成及び送受信を行う機能を有する制御部を備えた端末」に代えて、引用文献2に記載される「PCで動作するWWWブラウザの縮小版であって表示面積が小さい装置で表示するためのWWWブラウザと、電子メール送受信機能とを備える携帯電話」を採用して、引用文献1発明が備える「Webページが表示されているときに当該WebページのURLをメールに貼り付けて、当該メールを送信する」との機能を実現しようとすることは自然の成り行きである。

そして、引用文献1発明の端末として、引用文献2に記載される携帯端末である携帯電話を採用して、引用文献1発明が備える機能を実現しようとするのであれば、端末を「アンテナを介して信号を送受信する無線部を備える」よう構成することは、当業者であれば適宜になし得る設計的事項である。

したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用文献1発明及び引用文献2の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点2について)

上記「(相違点1について)」の項において示したように、引用文献1発明を知る者が引用文献2にみられる記載事項に接すれば、引用文献1発明における「インターネットに接続してWebページの閲覧、メールの作成及び送受信を行う機能を有する制御部を備えた端末」に代えて、引用文献2に記載される「PCで動作するWWWブラウザの縮小版であって表示面積が小さい装置で表示するためのWWWブラウザと、電子メール送受信機能とを備える携帯電話」を採用して、引用文献1発明が備える「Webページが表示されているときに当該WebページのURLをメールに貼り付けて、当該メールを送信する」との機能を実現しようとすることは自然の成り行きである。

その際、引用文献2の記載事項にみられるように、携帯電話のような携帯端末では、表示に制限があり、表示部の表示面積が小さいことを前提にしなければならないことから、引用文献1に記載されるようなマルチウインドウの表示を採用することが困難であることが自然と理解され、そのため、引用文献1に記載されるようなマルチウインドウの表示に代えて、表示部で「画面を切り替えて表示」しようとすることもまた、自然の成り行きである。

このように、引用文献1発明において、引用文献2に記載される携帯電話のような携帯端末を採用し、引用文献1発明が備える機能を実現するために、携帯端末の表示部で「画面を切り替えて表示」しようとするのであれば、画面が切り替わるとともにその画面にURLが貼り付けられるよう構成すること、つまり、「端末が、メール作成画面に切り換えて表示するものであり、貼り付けが、前記表示部に表示しているWebページからメールの作成画面に切り換えて表示するとともに行われる」よう構成することには何らの困難性はなく、当業者が容易に想到することができたものである。

また、引用文献1発明の端末として、引用文献2に記載される携帯電話のような携帯端末を採用して、引用文献1発明が備える機能を実現しようとするのであれば、そのため、「入力部が、数字キーと機能メニューを表示させるための機能キーとを含む操作キーを備え、入力部の機能キーが押下されると機能メニューが表示され、更に操作キーにより該機能メニューの中から機能が選択される」よう構成することも、当業者であれば適宜になし得る設計的事項にすぎないものである。

したがって、相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用文献1発明及び引用文献2の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

(相違点3について)

引用文献3の上記摘記事項によれば、引用文献3には、「メールの送信が終了すると自動的にメールアプリケーションが終了し、処理を戻すこと。」との記載事項がある。

してみると、引用文献1発明において、引用文献2に記載される携帯電話のような携帯端末を採用する際、さらに引用文献3の記載事項を適用することにより、メールの送信が終了すると、自動的にメールアプリケーションを終了し、処理を戻す機能を備えるように端末を構成することには、何ら困難性はなく、当業者が容易に想到することができたものである。

その際、メールの送信完了を文字によって表示し、確認することは周知事項である(その根拠については、例えば、原査定において提示された特開2000-270355号公報(段落【0002】)等参照のこと。)。

してみると、引用文献1発明において、引用文献2に記載される携帯電話のような携帯端末を採用する際、さらに引用文献3の記載事項を適用し、その際、上記周知事項を適用することにより、メールの送信が終了すると、自動的にメールアプリケーションを終了し、処理を戻す機能を備えるように端末を構成し、その際、メールの送信完了を文字によって表示し、確認するよう構成すること、つまり、「端末が、メール送信後に前記Webページに戻る機能を備え、メールの送信が完了すると、表示部にメール送信が完了したことを示す表示を行い、メール作成画面に移行する前に表示していたWebページへ前記表示部の表示が戻るようにした端末」とするよう構成することは、当業者であれば適宜になし得る設計的事項にすぎないものである。

したがって、相違点3に係る本願補正発明の構成は、引用文献1発明、引用文献2の記載事項、引用文献3の記載事項及び周知事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用文献1発明、引用文献2の記載事項、引用文献3の記載事項及び周知事項から当業者が予測できる範囲のものである。

(5)本件補正についてのむすび

よって、本願補正発明は、引用文献1発明、引用文献2の記載事項、引用文献3の記載事項及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について

(1)本願の請求項1に係る発明

上記の平成19年 7月11日付けでした手続補正は、上記でのとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記の平成18年11月27日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される上記2.(1)の「<<本件補正前の特許請求の範囲の記載>>」に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載の発明

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、これらの記載事項及び引用文献1発明は、上記2.(4)(4-2)「引用文献に記載の発明」の項に記載したとおりである。

(3)対比

本願発明と引用文献1発明とを対比すると、本願発明は、上記本願補正発明において、上記2.(3)の「補正の目的」の項において検討した特許請求の範囲を限定的に減縮するための補正事項の構成を省いたものであることから、上記2.(4)(4-3)「本願補正発明と引用文献1発明との対比」の項において検討した相違点と同じ点で相違する。

(4)判断

してみると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する上記本願補正発明が、上記2.(4)「独立特許要件」の項に記載したとおり、引用文献1発明、引用文献2の記載事項、引用文献3の記載事項及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用文献1発明、引用文献2の記載事項、引用文献3の記載事項及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび

上記のとおり、本願の請求項1に係る発明が、引用文献1発明、引用文献2の記載事項、引用文献3の記載事項及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-23 
結審通知日 2010-04-26 
審決日 2010-05-12 
出願番号 特願2005-256769(P2005-256769)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 義晴  
特許庁審判長 清田 健一
特許庁審判官 山本 穂積
田代 吉成
発明の名称 携帯端末  
代理人 社本 一夫  
代理人 千葉 昭男  
代理人 上田 忠  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小林 泰  
代理人 富田 博行  

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