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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する H02P 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する H02P 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H02P 審判 訂正 発明同一 訂正する H02P |
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管理番号 | 1233534 |
審判番号 | 訂正2010-390122 |
総通号数 | 137 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-05-27 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2010-12-15 |
確定日 | 2011-02-10 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3185724号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3185724号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1.請求の趣旨 本件審判の請求の趣旨は、特許第3185724号発明(平成 9年 9月16日特許出願、平成13年 5月11日設定登録)の明細書及び図面を審判請求書に添付した訂正明細書及び図面のとおり、すなわち、下記(1)ないし(17)のとおり訂正することを求めるものである。 (1)訂正事項1 請求項1における「前記モータを正転方向又は逆転方向のうちのいずれか一つの方向に駆動すべく前記操作部が操作されたとき、当該一つの方向にモータを駆動するためのリレーとは違う方のリレーに関し、そのリレーのコイルの電源側端子とアース側端子とを短絡させる短絡用回路を備えたことを特徴とする駆動装置。」を、 「前記操作部の操作により、正転側と逆転側とに選択的にオンする操作用スイッチと、前記正転用リレーのコイルとグランドとの間に設けられた正転用トランジスタと、前記逆転用リレーのコイルとグランドとの間に設けられた逆転用トランジスタと、前記操作用スイッチが正転側と逆転側のいずれかの側にオンしたか否かを判定し、当該スイッチが正転側にオンしたと判定した場合には、前記正転用トランジスタをオンさせ、当該スイッチが逆転側にオンしたと判定した場合には前記逆転用トランジスタをオンさせる処理手段と、前記モータを正転方向に駆動すべく前記操作部が操作されたとき、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子とアース側端子とを短絡させる短絡用回路とを備え、前記短絡用回路は、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子と電源ラインとの間に設けられた短絡用スイッチを有しており、前記短絡用スイッチは、前記操作用スイッチと連動して作動し、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子が前記電源ラインに接続された状態と、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子と前記電源ラインとの接続が断たれて、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子とアース側端子とが短絡された状態とを切り換えることを特徴とする駆動装置。」と訂正する。(下線は訂正箇所。以下同様。) (2)訂正事項2 請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 請求項3を請求項2に繰り上げ、「前記モータが車両の開閉体駆動用のモータであることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。」と訂正する。 (4)訂正事項4 請求項4を請求項3に繰り上げ、「前記開閉体は、車両のウインドウであることを特徴とする請求項2記載の駆動装置。」と訂正する。 (5)訂正事項5 請求項5を請求項4に繰り上げ、「前記開閉体は、車両のサンルーフであることを特徴とする請求項2記載の駆動装置。」と訂正する。 (6)訂正事項6 請求項6を請求項5に繰り上げ、「前記モータの正転方向の作動が、前記開閉体を開ける方向の作動であることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の駆動装置。」と訂正する。 (7)訂正事項7 【0018】における「前記モータを正転方向又は逆転方向のうちのいずれか一つの方向に駆動すべく前記操作部が操作されたとき、当該一つの方向にモータを駆動するためのリレーとは違う方のリレーに関し、そのリレーのコイルの電源側端子とアース側端子とを短絡させる短絡用回路を備えたことを特徴とする。」を、 「前記操作部の操作により、正転側と逆転側とに選択的にオンする操作用スイッチと、前記正転用リレーのコイルとグランドとの間に設けられた正転用トランジスタと、前記逆転用リレーのコイルとグランドとの間に設けられた逆転用トランジスタと、前記操作用スイッチが正転側と逆転側のいずれかの側にオンしたか否かを判定し、当該スイッチが正転側にオンしたと判定した場合には、前記正転用トランジスタをオンさせ、当該スイッチが逆転側にオンしたと判定した場合には、前記逆転用トランジスタをオンさせる処理手段と、前記モータを正転方向に駆動すべく前記操作部が操作されたとき、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子とアース側端子とを短絡させる短絡用回路とを備え、前記短絡用回路は、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子と電源ラインとの間に設けられた短絡用スイッチを有しており、前記短絡用スイッチは、前記操作用スイッチと連動して作動し、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子が前記電源ラインに接続された状態と、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子と前記電源ラインとの接続が断たれて、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子とアース側端子とが短絡された状態とを切り換えることを特徴とする。」と訂正する。 (8)訂正事項8 【0019】の記載を削除する。 (9)訂正事項9 【0020】における「請求項3」を「請求項2」と訂正する。 (10)訂正事項10 【0021】における「請求項4」を「請求項3」と訂正する。 (11)訂正事項11 【0022】における「請求項5」を「請求項4」と訂正する。 (12)訂正事項12 【0023】における「また請求項6記載の駆動装置は、前記モータの一つの方向の作動が、」を「また請求項5記載の駆動装置は、前記モータの正転方向の作動が、」と訂正する。 (13)訂正事項13 【0054】における「モータを正転方向又は逆転方向のうちのいずれか一つの方向に駆動すべく操作部が操作されたとき、短絡用回路が、モータを違う方向に」を「モータを正転方向に駆動すべく操作部が操作されたとき、短絡用回路が、モータを逆転方向に」と訂正する。 (14)訂正事項14 【0055】における「的確にモータを正転又は逆転させることができ、」を「的確にモータを正転させることができ、」と訂正する。 (15)訂正事項15 【0056】における「請求項2記載のように、」を削除する。 (16)訂正事項16 【0057】における「請求項3乃至5記載のように、」を「請求項2乃至4記載のように、」と訂正する。 (17)訂正事項17 【0058】における「特に請求項6記載のように、」を「特に請求項5記載のように、」と訂正する。 2.当審の判断 (1)訂正事項1について A.訂正の目的の適否 (ア)請求項1の訂正事項のうち、 a.「前記操作部の操作により、正転側と逆転側とに選択的にオンする操作用スイッチ」 b.「前記正転用リレーのコイルとグランドとの間に設けられた正転用トランジスタ」 c.「前記逆転用リレーのコイルとグランドとの間に設けられた逆転用トランジスタ」 d.「前記操作用スイッチが正転側と逆転側のいずれかの側にオンしたか否かを判定し、当該スイッチが正転側にオンしたと判定した場合には、前記正転用トランジスタをオンさせ、当該スイッチが逆転側にオンしたと判定した場合には、前記逆転用トランジスタをオンさせる処理手段」 e.「前記短絡用回路は、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子と電源ラインとの間に設けられた短絡用スイッチを有して」いること f.「前記短絡用スイッチは、前記操作用スイッチと連動して作動し、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子が前記電源ラインに接続された状態と、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子と前記電源ラインとの接続が断たれて、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子とアース側端子とが短絡された状態とを切り換える」ことを付加する訂正は、発明特定事項の直列的付加に該当するから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)同訂正事項のうち、訂正前の「前記モータを正転方向又は逆転方向のうちのいずれか一つの方向に駆動すべく」を「前記モータを正転方向に駆動すべく」に訂正することは、択一的記載の要素の削除に該当するから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (ウ)同訂正事項のうち、訂正前の「当該一つの方向にモータを駆動するためのリレーとは違う方のリレーに関し、そのリレーの」を「前記逆転用リレーの」に訂正することは、上位概念から下位概念への変更に該当するから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 B.新規事項の有無、特許請求の範囲の実質的拡張・変更の存否について 前記(ア)の訂正事項a?fは、それぞれ特許公報における以下の記載事項に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 ・訂正事項a: 【0010】の「座席の横に配置された操作部(不図示)を操作することにより、スイッチ14を正転側と逆転側とに選択的にオンできるようにしてある。」の記載。(なお、【0010】の記載は図7の従来例についてのものであるが、【0024】の「図6,7に示した従来の装置と同様の構成要素には同符号を付して重複する説明を省略する。」の記載、および【0025】の「本例の駆動装置は、図7に示した装置と基本構成が同じものであり、」の記載から明らかなように、本発明にも当てはまる。以下のb?dの場合も同様。) ・訂正事項b: 【0010】の「正転用リレー2のコイル2aのグランド側をオンオフする正転用トランジスタ11」の記載、および図1の記載。 ・訂正事項c: 【0010】の「逆転用リレー3のコイル3aのグランド側をオンオフする逆転用トランジスタ12」の記載、および図1の記載。 ・訂正事項d: 【0010】の「スイッチ14がいずれかの側にオンしたか否かを判定し、スイッチ14が正転側にオンしたと判定した場合には正転用トランジスタ11をオンさせ、スイッチ14が逆転側にオンしたと判定した場合には逆転用トランジスタ12をオンさせる処理手段13」の記載。 ・訂正事項e: 【0027】の「スイッチ22は、この場合、C端子がコイル3aの電源側端子に接続され、N.C端子が電源ラインE2に接続され、さらに、N.O端子がコイル3aのグランド側端子に接続されたものである。」の記載、および【0028】の「スイッチ22は、本発明の短絡用スイッチに相当し、このスイッチ22と、このスイッチ22のN.O端子をコイル3aのグランド側端子に接続するライン23とは、本発明の短絡用回路を構成している。」の記載。 ・訂正事項f: 【0027】の「スイッチ22は、この場合、C端子がコイル3aの電源側端子に接続され、N.C端子が電源ラインE2に接続され、さらに、N.O端子がコイル3aのグランド側端子に接続されたものである。・・・(中略)・・・操作用スイッチ14の一方のN.O端子(N.O1)が閉じる動作に連動して作動し、そのN.O端子が閉じる構成となっている。」の記載、【0029】の「スイッチ14に連動してスイッチ22が作動し、スイッチ22のC端子及びN.O端子と、ライン23とにより、モータ1を逆転方向に作動させる逆転用リレー3のコイル3aの電源側端子とアース側端子とが短絡し、」の記載、および図1の記載。(図1より、スイッチ22のN.O端子が閉じられない状態では、逆転用リレーのコイル3aの電源側端子が電源ラインE2に接続され、N.O端子が閉じられると、逆転用リレーのコイル3aの電源側端子と電源ラインE2との接続が断たれて、逆転用リレーのコイル3aの電源側端子とアース側端子とが短絡されることは明らかである。) また、前記(イ)および(ウ)の訂正事項は、特許公報の【0031】における「操作部が正転側に操作されると、上述した短絡用スイッチ22よりなる短絡回路の機能により、モータ1を逆転方向へ駆動するための逆転用リレー3のコイル3aの両端子が短絡されて同電圧になる。」の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 C.独立特許要件 (ア)先願発明 本件特許出願の日前である平成 9年 8月18日に出願され、本件特許出願後である平成11年 3月 5日に出願公開された特願平9-257435号(特開平11-62383号)の願書に最初に添付された明細書又は図面には、以下のとおり記載されているものと認められる。 「モータMに電源供給してモータMを正転方向に駆動するための開用リレーRY1と、モータMに電源供給してモータMを逆転方向に駆動するための閉用リレーRY2とを有し、 パワーウインドスイッチの操作により前記いずれかのリレーを作動させ、それによりモータMを正転方向又は逆転方向のいずれかの方向に駆動するモータ駆動制御回路1であって、 前記パワーウインドスイッチの操作により、正転側と逆転側とに選択的にオンする開方向スイッチSW1、閉方向スイッチSW2と、 前記開用リレーRY1のコイルとグランドとの間に設けられた開方向スイッチSW1と、 前記閉用リレーRY2のコイルとグランドとの間に設けられた閉方向スイッチSW2と、 開方向スイッチSW1、閉方向スイッチSW2が正転側と逆転側のいずれかの側にオンしたか否かを判定するCPU4と、 モータMを正転方向に駆動すべく操作部が操作されたとき、前記閉用リレーRY2のコイルの電源側端子とアース側端子とを短絡させるスイッチSW3を含む回路とを備え、 前記スイッチSW3を含む回路は、前記閉用リレーのコイルのアース側端子と電源ラインとの間に設けられたスイッチSW3を有しており、 前記スイッチSW3は、前記開方向スイッチSW1と連動して作動し、前記閉用リレーRY2のコイルの電源側端子が電源ラインに接続されたまま、当該コイルのアース側端子がCPU4に接続された状態と、当該コイルのアース側端子と電源側端子とが短絡された状態とを切り換える、モータ駆動制御回路1」(以下「先願発明」という。)(特に、段落【0022】?【0026】、図4を参照のこと)。 (イ)発明の対比 本件特許の訂正後の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明」という。)と先願発明を対比すると、先願発明の「モータ駆動制御回路1」は本件補正発明の「駆動装置」に相当し、以下同様に、「モータM」は「モータ」に、「開用リレーRY1」は「正転用リレー」に、「閉用リレーRY2]は「逆転用リレー」に、「パワーウインドスイッチ」は「操作部」に、「開方向スイッチSW1」又は「閉方向スイッチSW2」は「操作用スイッチ」に、「CPU4」は「処理手段」に、「スイッチSW3を含む回路」は「短絡用回路」に、「スイッチSW3」は「短絡用スイッチ」にそれぞれ相当する。 また、先願発明の「開用リレーRY1のコイルとグランドとの間に設けられた開方向スイッチSW1」と、本件訂正発明の「正転用リレーのコイルとグランドとの間に設けられた正転用トランジスタ」とは、「正転用リレーのコイルのグランドとの間に設けられた正転用のスイッチ」であるという概念で共通し、先願発明の「閉用リレーRY2のコイルとグランドとの間に設けられた閉方向スイッチSW2」と、本件訂正発明の「逆転用リレーのコイルとグランドとの間に設けられた逆転用トランジスタ」とは、「逆転用リレーのコイルのグランドとの間に設けられた逆転用のスイッチ」であるという概念で共通する。 そして、先願発明の「スイッチSW3を含む回路は、閉用リレーのコイルのアース側端子と電源ラインとの間に設けられたスイッチSW3を有して」いる態様と、本件訂正発明の「短絡用回路は、逆転用リレーのコイルの電源側端子と電源ラインとの間に設けられた短絡用スイッチを有して」いる態様とは、「短絡用回路は、逆転用リレーのコイルの端子と電源ラインとの間に設けられた短絡用スイッチを有して」いるという概念で共通する。 さらに、先願発明の「スイッチSW3は、開方向スイッチSW1と連動して作動し、閉用リレーRY2のコイルの電源側端子が電源ラインに接続されたまま、当該コイルのアース側端子がCPU4に接続された状態と、当該コイルのアース側端子と電源側端子とが短絡された状態とを切り換える」態様と、本件訂正発明の「短絡用スイッチは、操作用スイッチと連動して作動し、逆転用リレーのコイルの電源側端子が電源ラインに接続された状態と、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子と前記電源ラインとの接続が断たれて、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子とアース側端子とが短絡された状態とを切り換える」態様とは、「短絡用スイッチは、操作用スイッチと連動して作動し、ある状態と、逆転用リレーのコイルの電源側端子とアース側端子とが短絡された状態とを切り換える」という概念で共通する。 そうすると、両者は、 「モータに電源供給してモータを正転方向に駆動するための正転用リレーと、モータに電源供給してモータを逆転方向に駆動するための逆転用リレーとを有し、操作部の操作により前記いずれかのリレーを作動させ、それによりモータを正転方向又は逆転方向のいずれかの方向に駆動する駆動装置であって、 前記操作部の操作により、正転側と逆転側とに選択的にオンする操作用スイッチと、 前記正転用リレーのコイルのグランドとの間に設けられた正転用のスイッチと、 前記逆転用リレーのコイルのグランドとの間に設けられた逆転用のスイッチと、 前記操作用スイッチが正転側と逆転側のいずれかの側にオンしたか否かを判定する処理手段と、 モータを正転方向に駆動すべく操作部が操作されたとき、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子とアース側端子とを短絡させる短絡用回路とを備え、 前記短絡用回路は、前記逆転用リレーのコイルの端子と電源ラインとの間に設けられた短絡用スイッチを有しており、 前記短絡用スイッチは、前記操作用スイッチと連動して作動し、ある状態と、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子とアース側端子とが短絡された状態とを切り換える、駆動装置」 である点で一致し、以下の各点で相違するものと認められる。 <相違点1> 正転用リレーのコイルのグランドとの間に設けられた「正転用のスイッチ」と、逆転用リレーのコイルのグランドとの間に設けられた「逆転用のスイッチ」が、それぞれ、本件訂正発明では、「正転用トランジスタ」および「逆転用トランジスタ」であって、「操作用スイッチが正転側と逆転側のいずれかの側にオンしたか否かを判定し、当該スイッチが正転側にオンしたと判定した場合には、前記正転用トランジスタをオンさせ、当該スイッチが逆転側にオンしたと判定した場合には、前記逆転用トランジスタをオンさせる処理手段」を備えるのに対して、先願発明では、「開方向スイッチSW1」および「閉方向用スイッチSW2」であって、「開方向スイッチSW1、閉方向スイッチSW2が正転側と逆転側のいずれかの側にオンしたか否かを判定するCPU4」を備えるものの、それ以上のものでない点。 <相違点2> 本件訂正発明では、短絡用回路は、逆転用リレーのコイルの「電源側」端子と電源ラインとの間に設けられた短絡用スイッチを有しており、前記短絡用スイッチは、前記操作用スイッチと連動して作動し、「前記逆転用リレーのコイルの電源側端子が前記電源ラインに接続された状態と、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子と前記電源ラインとの接続が断たれて、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子とアース側端子とが短絡された状態とを切り換える」のに対して、先願発明では、スイッチSW3を含む回路(短絡用回路)は、前記閉用リレー(逆転用リレー)のコイルの「アース側」端子と電源ラインとの間に設けられたスイッチSW3(短絡用スイッチ)を有しており、 前記スイッチSW3(短絡用スイッチ)は、前記開方向スイッチSW1(操作用スイッチ)と連動して作動し、「前記閉用リレーRY2(逆転用リレー)のコイルの電源側端子が電源ラインに接続されたまま、当該コイルのアース側端子がCPU4(処理手段)に接続された状態と、当該コイルのアース側端子と電源側端子とが短絡された状態とを切り換える」点。 (ウ)相違点の検討 <相違点1>について スイッチのオンを判定してトランジスタをオンすることは、慣用技術の付加であって新たな効果を奏するものではないから、上記相違点1については、課題解決のための具体化手段における微差に過ぎない。 <相違点2>について 本件訂正発明と先願発明では、短絡用スイッチの設けられる箇所、および当該短絡用スイッチにより切り換わる回路状態が異なっている。 上記相違点2のような構成上の相違により、本件訂正発明は、作用効果の点においても以下のように先願発明と相違する。 先願発明では、水没時にCPU4(処理手段)が短絡状態となった場合、開方向のマニュアル操作(操作スイッチの操作)により、スイッチSW3(短絡用スイッチ)を図4でa側からb側へ切り換え、閉用リレーRY2(逆転用リレー)とCPU4(処理手段)とを接続するラインLCを強制的にしゃ断することによって、閉用リレーRY2(逆転用リレー)が動作しないようにしている(【0024】参照)。しかしながら、スイッチSW3(短絡用スイッチ)がb側へ切り換った状態で、スイッチSW2の接点M、N間が水により短絡したり、スイッチSW2が誤って接点M側へ切り換えられたりした場合は、電源(+Vcc)とグランドとの間が短絡状態となって、開用リレーRY1(正転用リレー)のコイルに電流が流れないので、モータMが正転駆動されず窓が開かなくなる。 これに対して、本件訂正発明では、水没時に操作スイッチ(14)の操作により短絡用スイッチ(22)を切り換えた際に、逆転用リレーのコイル(3a)の電源側端子を電源ライン(E2)から切り離すようにしている。このため、逆転用リレーのコイル(3a)のグランド側に設けられた逆転用トランジスタ(12)も、電源ライン(E2)から切り離されるので、たとえ水没による誤動作で処理手段(13)から逆転用トランジスタ(12)をオンさせる信号が出力されても、逆転用トランジスタ(12)はオンしない。このため、電源とグランド間が短絡状態になることはなく、正転用リレーのコイル(2a)に通電がされてモータ(1)が正転駆動されるので、正常に窓を開くことができる。 そうすると、前記のとおり、短絡用スイッチにより切り換わる回路状態が、本件訂正発明と先願発明とでは異なっていることにより、本件訂正発明は、先願発明にない作用効果を奏するものであるから、これを単なる課題解決のための具体化手段における微差ということはできない。 したがって、本件訂正発明は、相違点2に関して、先願発明と実質的に同一ではない。 以上のことから、本件訂正発明は、先願発明と実質的に同一ではなく、特許法第29条の2の規定には該当しないので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 なお、訂正後の請求項2?5は、直接的あるいは間接的に請求項1を引用しているので、請求項1に係る本件訂正発明が先願発明と同一ではなく、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである以上、訂正後の請求項2?5に係る発明もまた、先願発明と同一ではなく、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 D.したがって、上記A?Cで検討した理由により、訂正事項1は適法な訂正である。 (2)訂正事項2について 請求項2を削除する訂正は、特許請求の範囲に含まれる請求項の数を減らすものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、これによって新規事項が追加されたり、実質上特許請求の範囲が拡張・変更されることはない。 したがって、訂正事項2は、適法な訂正である。 (3)訂正事項3について 請求項3を請求項2に繰り上げて、訂正前の「請求項1又は2記載の」を「請求項1記載の」に訂正することは、多数項引用形式請求項の引用請求項を減少させることに該当するから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、これによって新規事項が追加されたり、実質上特許請求の範囲が拡張・変更されることはない。 なお、請求項1が訂正されたことにより、請求項1を引用する請求項2も間接的に請求項1の訂正事項に訂正されるが、この訂正は、請求項1と同様、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、新規事項の追加や特許請求の範囲の実質的拡張・変更を伴うものではない。請求項1を間接的に引用する請求項3?5についても同様である。 したがって、訂正事項3は適法な訂正である。 (4)訂正事項4について 請求項4を請求項3に繰り上げ、訂正前の「請求項3記載の」を「請求項2記載の」に訂正することは、請求項2の削除に伴い、請求項3が請求項2に繰り上ったこととの整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としており、新規事項の追加や特許請求の範囲の実質的拡張・変更を伴うものでもない。 したがって、訂正事項4は適法な訂正である。 (5)訂正事項5について 請求項5を請求項4に繰り上げ、訂正前の「請求項3記載の」を「請求項2記載の」に訂正することは、請求項2の削除に伴い、請求項3が請求項2に繰り上ったこととの整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としており、新規事項の追加や特許請求の範囲の実質的拡張・変更を伴うものでもない。 したがって、訂正事項5は適法な訂正である。 (6)訂正事項6について (ア)請求項6を請求項5に繰り上げ、訂正前の「請求項3乃至5の何れかに記載の」を「請求項2乃至4の何れかに記載の」に訂正することは、請求項2の削除に伴い、請求項3?5が請求項2?4に繰り上ったこととの整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としており、新規事項の追加や特許請求の範囲の実質的拡張・変更を伴うものでもない。 (イ)訂正前の「一つの方向」を「正転方向」に訂正することは、請求項1が訂正されたことに伴い、訂正後の請求項1との整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としており、新規事項の追加や特許請求の範囲の実質的拡張・変更を伴うものでもない。 したがって、訂正事項6は適法な訂正である。 (7)訂正事項7?17について 訂正事項7?17は、訂正事項1?6によって特許請求の範囲の記載が訂正されたことに件い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としており、新規事項の追加や特許請求の範囲の実質的拡張・変更を件うものでもない。 したがって、訂正事項7?17は適法な訂正である。 3.むすび 以上のとおり、本件審判請求は、特許法第126条第1項第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第5項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 駆動装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 モータに電源供給してモータを正転方向に駆動するための正転用リレーと、モータに電源供給してモータを逆転方向に駆動するための逆転用リレーとを有し、操作部の操作により前記いずれかのリレーを作動させ、それにより前記モータを正転方向又は逆転方向のいずれかの方向に駆動する駆動装置であって、 前記操作部の操作により、正転側と逆転側とに選択的にオンする操作用スイッチと、 前記正転用リレーのコイルとグランドとの間に設けられた正転用トランジスタと、 前記逆転用リレーのコイルとグランドとの間に設けられた逆転用トランジスタと、 前記操作用スイッチが正転側と逆転側のいずれかの側にオンしたか否かを判定し、当該スイッチが正転側にオンしたと判定した場合には、前記正転用トランジスタをオンさせ、当該スイッチが逆転側にオンしたと判定した場合には、前記逆転用トランジスタをオンさせる処理手段と、 前記モータを正転方向に駆動すべく前記操作部が操作されたとき、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子とアース側端子とを短絡させる短絡用回路とを備え、 前記短絡用回路は、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子と電源ラインとの間に設けられた短絡用スイッチを有しており、 前記短絡用スイッチは、前記操作用スイッチと連動して作動し、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子が前記電源ラインに接続された状態と、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子と前記電源ラインとの接続が断たれて、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子とアース側端子とが短絡された状態とを切り換えることを特徴とする駆動装置。 【請求項2】 前記モータが車両の開閉体駆動用のモータであることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。 【請求項3】 前記開閉体は、車両のウインドウであることを特徴とする請求項2記載の駆動装置。 【請求項4】 前記開閉体は、車両のサンルーフであることを特徴とする請求項2記載の駆動装置。 【請求項5】 前記モータの正転方向の作動が、前記開閉体を開ける方向の作動であることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の駆動装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、車両のパワーウインドウ開閉用などのモータを駆動する駆動装置に係り、車両の海などへの転落などによる水没事故が生じた場合でも、操作部の操作に応じて的確にモータを作動させることができる信頼性の高い駆動装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 一般に、車両のパワーウインドウなどの開閉機構においては、ウインドウの自動反転機能や多重通信制御等を実現する電子制御が主流になっており、駆動原であるモータに適宜電源供給してその動作を制御する駆動装置としては、リレーによる駆動方式が一般的になっており、この種の駆動装置の従来の基本構成は、図6に示すようになっている。以下、この装置を説明する。 【0003】 この駆動装置は、モータ1に電源供給してモータ1を正転方向に駆動するための正転用リレー2と、モータ1に電源供給してモータ1を逆転方向に駆動するための逆転用リレー3と、正転用リレー2を作動させるための正転用スイッチ4と、逆転用リレー3を作動させるための逆転用スイッチ5とを有する。そして、車両のパワーウインドウにおいては、座席の横に配置された操作部(不図示)を操作することにより正転用スイッチ4と逆転用スイッチ5とを選択的にオンできるようにしてある。これにより、正転用スイッチ4がオンするように操作部が正転側に操作された場合には、正転用リレー2が作動してモータ1が正転方向に駆動されて車両ウインドウが開き、逆転用スイッチ5がオンするように操作部が逆転側に操作された場合には、逆転用リレー3が作動してモータ1が逆転方向に駆動されて車両ウインドウが閉じる。 【0004】 ここで正転用リレー2又は逆転用リレー3は、それぞれ励磁用のコイル2a,3aと、コモン端子(以下、C端子という。),ノルマルオープン端子(以下、N.O端子という。)及びノルマルクローズド端子(以下、N.C端子という。)を有する接点部2b,3bとよりなり、コイル2a,3aの通電が行われていない非作動状態ではC端子とN.C端子が接続された状態となり、コイル2a,3aの通電が行われた作動状態ではC端子とN.O端子が接続された状態となる。 【0005】 これら正転用リレー2又は逆転用リレー3のN.O端子は、電源ラインE1に接続され、N.C端子は、グランドに接続されている。またリレー2のC端子は、モータ1のモータコイルの両端子のうち、電源側に接続されたときにモータが正転する側の端子1aに接続されている。またリレー3のC端子は、モータ1のモータコイルの両端子のうち、電源側に接続されたときにモータが逆転する側の端子1bに接続されている。 【0006】 また正転用スイッチ4又は逆転用スイッチ5は、前述した操作部の操作により作動する接点をそれぞれ一つ有し、この操作部が正転側に操作された場合には、正転用スイッチ4がオンし、逆転側に操作された場合には、逆転用スイッチ5がオンする仕組となっている。 【0007】 そして図6の場合には、これら正転用スイッチ4又は逆転用スイッチ5の接点が、正転用リレー2又は逆転用リレー3の各コイル2a,3aをグランドに接続するラインに設けられ、このラインが直接開閉操作されるものである。なお、正転用スイッチ4又は逆転用スイッチ5の接点が正転用リレー2又は逆転用リレー3の各コイル2a,3aを電源に接続するラインに設けられ、このラインが開閉操作されるタイプもある。 【0008】 上記駆動装置では、正転用リレー2又は逆転用リレー3のコイル2a,3aの端子の片側を正転用スイッチ4又は逆転用スイッチ5の接点で直接開閉することで、モータ1の作動制御が行われる。すなわち、まず正転用スイッチ4が操作されてその接点が閉じると、電源ラインE2の電圧により正転用リレー2の励磁用のコイル2aに電流が流れて接点部2bのみが作動し、接点部2bのC端子とN.O端子を介してモータ1の端子1aのみが電源E1に接続されてモータが正転方向に作動する。一方、逆転用スイッチ5が操作されてその接点が閉じると、電源ラインE2の電圧により逆転用リレー3の励磁用のコイル3aに電流が流れて接点部3bのみが作動し、接点部3bのC端子とN.O端子を介してモータ1の端子1bのみが電源E1に接続されてモータが逆転方向に作動する。 【0009】 なお、図6に示した上記駆動装置は、操作部の操作により作動する正転用スイッチ4又は逆転用スイッチ5のオンオフにより、正転用リレー2又は逆転用リレー3の通電ラインを直接開閉するものであるが、各スイッチの端子電圧をマイクロコンピュータなどの処理手段で読み込み、スイッチがオンしたか否かの判定(以下、オン判定という。)を行い、スイッチがオンしたと判定したときにこの処理手段からの出力で正転用リレー2又は逆転用リレー3を作動させてモータを駆動するタイプのものもある。 【0010】 このタイプのものは、例えば図7に示すように、正転用リレー2のコイル2aのグランド側をオンオフする正転用トランジスタ11と、逆転用リレー3のコイル3aのグランド側をオンオフする逆転用トランジスタ12と、オフ位置から正転側又は逆転側のいずれかの側にオンされるスイッチ14と、を有している。また、スイッチ14がいずれかの側にオンしたか否かを判定し、スイッチ14が正転側にオンしたと判定した場合には正転用トランジスタ11をオンさせ、スイッチ14が逆転側にオンしたと判定した場合には逆転用トランジスタ12をオンさせる処理手段13を有している。そして、車両のパワーウインドウにおいては、座席の横に配置された操作部(不図示)を操作することにより、スイッチ14を正転側と逆転側とに選択的にオンできるようにしてある。これにより、スイッチ14が正転側にオンするように操作部が操作された場合には、スイッチ14が正転側にオンしたことが処理手段13で判定されて正転用トランジスタ11がオンし、それにより正転用リレー2が作動してモータ1が正転方向に駆動されて車両ウインドウが開く。また、スイッチ14が逆転側にオンするように操作部が操作された場合には、スイッチ14が逆転側にオンしたことが処理手段13で判定されて逆転用トランジスタ12がオンし、それにより逆転用リレー3が作動してモータ1が逆転方向に駆動されて車両ウインドウが閉じる。 【0011】 この場合の操作用スイッチ14は、C端子及びN.C端子と、2個のN.O端子(N.O1,N.O2)とを有する接点部よりなり、C端子がグランドに接続され、各N.O端子が処理手段13の入力端子に接続されるとともに、抵抗15,16を介して電源ラインE3に接続されている。 【0012】 そして、操作部が正転側に操作されると、C端子と一方のN.O端子(N.O1)が接続された状態となり、このN.O1の端子電圧がグランドレベルとなることで、処理手段13が、スイッチ14が正転側にオンしたと判断し、正転用トランジスタ11をオンする駆動信号を出力して、モータ1を正転させる。また、操作部が逆転側に操作されると、C端子と他方のN.O端子(N.O2)が接続された状態となり、このN.O2の端子電圧がグランドレベルとなることで、処理手段13が、スイッチ14が逆転側にオンしたと判断し、逆転用トランジスタ12をオンする駆動信号を出力して、モータ1を逆転させるものである。 【0013】 【発明が解決しようとする課題】 ところで、装置が海や湖に水没した場合、その水質によっては、電気接点が閉じていないにもかかわらず、それらの電気接点間に電流が流れてしまう(いわゆる、リーク)という現象が生じる。 【0014】 そのために、図6に示した従来の駆動装置が水没した場合、操作部が操作されていないにもかかわらず正転用スイッチ4と逆転用スイッチ5の両方ともがリークしてしまい、正転用リレー2と逆転用リレー3の両方ともが作動した状態となってしまう可能性があった。このような状態になると、操作部の操作とは無関係に、操作部が操作されていてもされていなくても、モータ1の端子1aと1bの両方ともが電源側に接続されたままとなってしまうので、操作部を如何に操作しようとモータ1が動作不能の状態のままになってしまう。 【0015】 すなわち、図6に示した駆動装置を利用した車両のパワーウインドウにおいては、車両が海や湖に転落して装置が水没した場合、リーク現象により操作部を如何に操作しようとモータ1が動作不能の状態のままになってしまい、車両のウインドウを開閉することができずに車両から脱出できない可能性があった。 【0016】 また、図7に示したようなタイプの前述の駆動装置の場合には、操作用スイッチ14の端子電圧が一定のしきい値を越えるか否かによってオン判定を行っており、このオン判定結果に基づく正転用トランジスタ11又は逆転用トランジスタ12のスイッチング動作のみによりリレーコイルへの通電制御を行っていた。このため、水没によるスイッチ14でのリークで前記処理手段が操作部が操作されたと誤判定してしまい、リレーのコイルに不用意に電流が流れる可能性があった。このため、やはり水没によってモータの起動制御に支障を生じる恐れがあった。 【0017】 そこで本発明は、水没事故などによるリークが生じた場合でも、不用意にリレーが作動せず、操作部の操作に応じて的確にモータを作動させることができる信頼性の高い駆動装置を提供することを目的としている。 【0018】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため、請求項1記載の駆動装置は、モータに電源供給してモータを正転方向に駆動するための正転用リレーと、モータに電源供給してモータを逆転方向に駆動するための逆転用リレーとを有し、操作部の操作により前記いずれかのリレーを作動させ、それにより前記モータを正転方向又は逆転方向のいずれかの方向に駆動する駆動装置であって、前記操作部の操作により、正転側と逆転側とに選択的にオンする操作用スイッチと、前記正転用リレーのコイルとグランドとの間に設けられた正転用トランジスタと、前記逆転用リレーのコイルとグランドとの間に設けられた逆転用トランジスタと、前記操作用スイッチが正転側と逆転側のいずれかの側にオンしたか否かを判定し、当該スイッチが正転側にオンしたと判定した場合には、前記正転用トランジスタをオンさせ、当該スイッチが逆転側にオンしたと判定した場合には、前記逆転用トランジスタをオンさせる処理手段と、前記モータを正転方向に駆動すべく前記操作部が操作されたとき、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子とアース側端子とを短絡させる短絡用回路とを備え、前記短絡用回路は、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子と電源ラインとの間に設けられた短絡用スイッチを有しており、前記短絡用スイッチは、前記操作用スイッチと連動して作動し、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子が前記電源ラインに接続された状態と、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子と前記電源ラインとの接続が断たれて、前記逆転用リレーのコイルの電源側端子とアース側端子とが短絡された状態とを切り換えることを特徴とする。 【0019】(削除) 【0020】 また請求項2記載の駆動装置は、前記モータが車両の開閉体駆動用のモータであることを特徴とする。 【0021】 また請求項3記載の駆動装置は、前記開閉体が、車両のウインドウであることを特徴とする。 【0022】 また請求項4記載の駆動装置は、前記開閉体が、車両のサンルーフであることを特徴とする。 【0023】 また請求項5記載の駆動装置は、前記モータの正転方向の作動が、前記開閉体を開ける方向の作動であることを特徴とする。 【0024】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態の各例を図面に基づいて説明する。 第1例 まず、本発明の第1例について、図1により説明する。図1は、本例の駆動装置の回路構成を示す図であり、装置の外観やスイッチの操作部の構造などの図示は省略している。なお、以下では、図6,7に示した従来の装置と同様の構成要素には同符号を付して重複する説明を省略する。 【0025】 本例の駆動装置は、図7に示した装置と基本構成が同じものであり、スイッチ14と連動して接点が開閉するスイッチ21,22を備える点に特徴を有する。この場合のスイッチ21は、トランジスタ11と並列に接続されており、C端子がグランドに接続され、N.O端子が一方のコイル2aのグランド側に接続され、さらに、N.C端子が解放されたものである。そしてこのスイッチ21は、モータ1の正転方向(車両のウインドウなどの開方向)の動作を指令すべく操作部が一方向に操作された場合に、操作用スイッチ14の一方のN.O端子(N.O1)が閉じる動作に連動して作動し、そのN.O端子が閉じる構成となっている。 【0026】 なお、このスイッチ21は、モータの正転方向の動作が指令された場合に、より確実にコイル2aに通電するためのもので、水没した状態でも上記指令に応じてトランジスタ11が確実にスイッチング制御されるのであれば、このスイッチ21は必要ない。また、図2に示すように、スイッチ14の信号をそのまま利用してリレー2を作動させるようにし、このスイッチ21を削除することも可能である。 【0027】 次にスイッチ22は、この場合、C端子がコイル3aの電源側端子に接続され、N.C端子が電源ラインE2に接続され、さらに、N.O端子がコイル3aのグランド側端子に接続されたものである。そしてこのスイッチ22も、やはり、モータ1の正転方向の動作を指令すべく操作部が一方向に操作された場合に、操作用スイッチ14の一方のN.O端子(N.O1)が閉じる動作に連動して作動し、そのN.O端子が閉じる構成となっている。 【0028】 ここで、この場合のスイッチ22は、本発明の短絡用スイッチに相当し、このスイッチ22と、このスイッチ22のN.O端子をコイル3aのグランド側端子に接続するライン23とは、本発明の短絡用回路を構成している。 【0029】 すなわち、モータ1の正転方向の動作を指令すべく操作部が正転側に操作された場合には、スイッチ14に連動してスイッチ22が作動し、スイッチ22のC端子及びN.O端子と、ライン23とにより、モータ1を逆転方向に作動させる逆転用リレー3のコイル3aの電源側端子とアース側端子とが短絡し、これら端子が必ず同電圧レベルとなる。 【0030】 なお、電源ラインE1,E2,E3に供給される電圧としては、車両のバッテリーなどの電源電圧が、必要に応じて図示省略した変圧回路により変圧され、或いは必要に応じて図示省略した安定化回路により安定化された所定の電圧(例えば、E3が5V、E1,E2が12V)が印加される。 【0031】 以上のように構成された本例の駆動装置では、操作部が正転側に操作されると、上述した短絡用スイッチ22よりなる短絡回路の機能により、モータ1を逆転方向へ駆動するための逆転用リレー3のコイル3aの両端子が短絡されて同電圧になる。これにより逆転用リレー3のリレーコイル3aに電流が流れ得ることがなく、逆転用リレー3が動作し得ることがない。したがって、水没時にスイッチ14の逆転側接点間(C端子-N.O2端子間)にリークが生じていて逆転用リレー3が誤動作していたとしても、操作部が正転側に操作されれば、逆転用リレー3は動作しなくなる。そして、それと同時に、処理手段13により、操作部が正転側に操作されたことが判定されて、正転側トランジスタ11がオンされて正転用リレー2が作動するので、操作の意図どおりモータ1は正転方向に駆動されることになる。なおこの形態例では、操作部が正転側に操作されたことに連動してオンするスイッチ21が正転用トランジスタ11と並列に設けられているので、何らかの原因で正転用トランジスタ11がオンしなかったとしても、このスイッチ21がオンすることにより確実に正転用リレー2を作動させてモータ1を意図する正転方向へ駆動することができる。 【0032】 このため、水没によりリークが生じていても、操作部が正転側に操作されれば、必ず正転用リレー2のみが作動してモータが正転し、例えば車両のウインドウなどに適用された場合には、確実にウインドウなどを開けることができる。 【0033】 すなわちこの場合、例えばスイッチ14のC端子と他方のN.O端子(N.O2)との間でリークが生じたために、処理手段13の誤動作により誤って逆転用トランジスタ12が駆動されてしまったとしても、スイッチ22よりなる短絡回路の前述の動作により、リレー3のコイル3aの両端子はいずれもグランドレベルとなるために、コイル3aには必ず電流は流れない。 【0034】 またこの場合、例えばスイッチ22のC端子とN.C端子との間でリークが生じたとしても、このリーク電流は当然抵抗の少ないライン23を経由してグランドに流れ込み、やはりコイル3aには電流が流れない。また、例えばスイッチ14のC端子と他方のN.O端子(N.O2)との間でリークが生じたために、処理手段13の誤動作により誤って正転用トランジスタ11が駆動されない状況となっても、スイッチ21を経由してコイル2aのグランド側端子は必ずグランドに導通するため、確実に正転用リレー2が作動する。 【0035】 つまり、本例の駆動装置によれば、水没事故が生じた場合でも、操作部の操作に応じて的確にモータを正転させることができ、この場合にはモータの正転方向(ウインドウなどを開ける方向)での装置の信頼性が向上する。そして本例の駆動装置が、車両のパワーウインドウ開閉用のモータや、サンルーフ開閉用のモータに適用されれば、車両の水没事故が発生した場合でも、パワーウインドウやサンルーフの開動操作が確実に可能となり、車室からの脱出が容易に可能で安全性が高まる。 【0036】 なお、本例の場合には、本発明の短絡用回路を操作用スイッチ14とは別個の短絡用スイッチ22により構成するとともに、操作用スイッチ14に連動して短絡用スイッチ22が作動する構成とした。このため、図7に示すような従来の構成に対して小容量の短絡用スイッチ22を追加接続する改造を施すだけで、操作部及び操作用スイッチ14の構成を変更しなくても容易に水没対策が行えるという固有の効果がある。 【0037】 第2例 次に、本発明の第2例について説明する。図3は、本例の駆動装置の回路構成を示す図である。なお、図1の装置(第1例)と同様の要素には同符号を使用して重複する説明を省略する。本例は、図6の従来の回路構成において、逆転用スイッチ5を削除し、コイル3aの操作用スイッチとして機能するとともに、短絡用スイッチとしても機能するスイッチ31と、このスイッチ31とともに短絡用回路を構成する短絡用ライン23とを設けたものである。 【0038】 この場合のスイッチ31は、C端子がコイル3aの電源側に接続され、N.O端子が電源ラインE2に接続され、N.C端子が短絡用のライン23を介してコイル3aのグランド側に接続されたもので、操作部の逆転側への操作により、N.O端子が閉じる(N.O端子とC端子が接続する)構成となっている。 【0039】 本例の場合には、操作部が正転側に操作されると、スイッチ4が閉じてコイル2aに電流が流れリレー2が作動し、モータ1が正転する(ウインドウなどが開く方向に駆動される)。一方、操作部が逆転側に操作されると、スイッチ31が閉じてそのC端子がN.O端子に接続され、コイル3aに電流が流れて逆転用リレー3が作動し、モータ1が逆転する(ウインドウなどが閉じる方向に駆動される)。 【0040】 そして、操作部が正転側に操作されている状態(スイッチ4が閉じている状態)では、スイッチ31とライン23よりなる短絡回路の機能により、逆転用リレー3のコイル3aの電源側端子とアース側端子とが短絡し、これら端子は必ず同電圧レベル(この場合には、グランドレベル)となる。 【0041】 このため、水没によりスイッチ31でリークが生じていても、操作部が正転側に操作されれば、必ず正転用リレー2のみが作動してモータが正転し、例えば車両のウインドウなどに適用された場合には、確実にウインドウなどを開けることができる。 【0042】 すなわちこの場合、例えばスイッチ31のC端子とN.O端子との間でリークが生じたとしても、このリーク電流は当然抵抗の少ないライン23を経由してグランドに流れ込み、コイル3aには電流が流れない。このため、必ず正転用リレー2のみが作動して、逆転用リレー3は作動しない。 【0043】 なお、本発明は上記形態例に限られず、各種の態様や変形があり得る。例えば、上記形態例では、逆転用リレー3のコイル3aに対してのみ本発明の短絡用回路を設け、特にモータ1の正転方向(ウインドウなどを開ける方向)の動作信頼性の向上を図ったが、正転用リレー2のコイル2aに対して、同様の短絡用回路を設けて、モータ1の逆転方向(ウインドウなどを閉じる方向)の動作信頼性の向上を図ってもよい。 【0044】 すなわち、例えば図1に示す第1例において、操作部が逆転側にオンした状態にあるときに(スイッチ14のC端子と他方のN.O端子(N.O2)が接続された状態のときに)、正転用リレー2のコイル2aの電源側端子とアース側端子とを短絡させ、これら端子を同電圧レベルとする短絡用のスイッチ及びライン(例えば、スイッチ22及びライン23と同様のもの)を設けてもよい。 【0045】 或いは、図3に示す第2例におけるスイッチ4の代りに、例えば図4に示すようなスイッチ41を設けて、そのC端子をコイル2aのグランド側端子に接続し、そのN.O端子をグランドに接続し、さらに、そのN.C端子を短絡用ライン42を介してコイル2aの電源側端子に接続し、操作部が正転側にオンした状態となったときに、そのN.O端子が閉じる構成でもよい。 【0046】 この場合には、操作部が逆転側にオンした状態にあるときには、コイル2aの電源側端子とアース側端子とが必ず短絡した状態にあり、これら端子が同電圧レベルであるため、正転用リレー2は必ず非作動の状態に維持され、逆転用リレー3のみが作動する。 【0047】 従ってこのようにすれば、水没事故が生じた場合でも、操作部の操作に応じて的確にモータを逆転させることができ、この場合にはモータの逆転方向(ウインドウなどを閉じる方向)での装置の信頼性が向上する。但し、車両などが水没した場合には、通常はウインドウなどを開ける方向の動作信頼性が特に要求されるため、その意味では、このような態様の実用的意義は比較的少ない。 【0048】 また上記形態例での短絡用回路(スイッチ22又は31及びライン23よりなる回路)は、リレーコイルの両端をいずれもグランドレベルとする構成であるが、例えば図4に示すような短絡回路(スイッチ41及びライン42よりなる回路)のように、リレーの両端をいずれも電源電圧レベルとするものでもよい。 【0049】 また、図3及び図4に示した形態例は、操作部の操作により作動する本発明の操作用スイッチと、短絡用回路のための本発明の短絡用スイッチとが、共通のスイッチ(スイッチ31又は41)により構成されているが、これらを別個のスイッチとして構成することもできる。 【0050】 例えば図5に示すように、図6に示した従来の回路構成において、図1に示す短絡用スイッチ22と短絡用ライン23よりなる短絡用回路をコイル3aに対して新たに設け、スイッチ4(操作用スイッチ)に連動してこの短絡用スイッチ22が作動する構成でもよい。このような構成であれば、従来のスイッチ4,5や操作部の構成がそのまま使用できるという第1例と同様の効果が得られる。 【0051】 また上記第1例では、処理手段13による特別な制御処理について説明しなかったが、例えば、車両の開閉体駆動装置の場合の挟み込み防止処理などを、周知の処理内容で実行するようにしてもよい。 【0052】 すなわち、例えばモータ1を逆転方向(ウインドウなどを閉じる方向)に駆動している際のモータ1の電流を検知し、この電流がしきい値を越えたときにウインドウなどへの挟み込みが生じたと判定して、操作部の操作状態(スイッチ14などの作動状態)にかかわらず、強制的にモータ1を正転方向(ウインドウなどを開ける方向)に駆動するようにして、挟み込み防止処理を実現してもよい。 【0053】 また、処理手段13は、多重通信などの方式により送信された信号に応じてモータ1の駆動制御(ウインドウなどの開閉制御)を行う通信制御機能を有していてもよい。 【0054】 【発明の効果】 本発明の駆動装置では、モータを正転方向に駆動すべく操作部が操作されたとき、短絡用回路が、モータを逆転方向に作動させるリレーのコイルの電源側端子とアース側端子とを短絡させ、これら端子を同電圧レベルとする。 【0055】 このため、例えばモータを逆転方向に作動させる逆転用リレーのコイルに通電するためのスイッチ接点で、水没によりリークが生じていたとしても、操作部が正転側に操作されれば、逆転用リレーのコイルには必ず電流が流れず、この逆転用リレーは確実に非作動に維持されて、モータを正転方向に作動させる所定の正転用リレーのみが確実に作動して、モータは指令された正転方向に確実に作動する。すなわち、本発明の駆動装置によれば、水没事故が生じた場合でも操作部の操作に応じて的確にモータを正転させることができ、装置の信頼性が向上する。 【0056】 しかも、短絡用回路を、操作部の操作により作動する操作用スイッチとは別個の短絡用スイッチにより構成するとともに、操作用スイッチに連動して前記短絡用スイッチが作動する構成とした場合には、従来の構成に対して小容量の短絡用スイッチを追加接続する改造を施すだけで、操作部及び操作用スイッチの構成を変更しなくても容易に水没対策が行えるという効果がある。 【0057】また請求項2乃至4記載のように、本発明の駆動装置が車両の開閉体(パワーウインドウやサンルーフ等)を駆動するモータに適用されれば、車両の水没事故が発生した場合でも、この開閉体の開閉操作が確実に可能となる。 【0058】 特に請求項5記載のように、本発明の短絡用回路が機能するモータの作動方向が、車両の開閉体を開ける方向である場合には、特に車両の開閉体を開ける方向での装置の信頼性が向上し、車両の水没事故が発生した場合でも、この開閉体の特に開動操作が確実に可能となり、車室からの脱出が容易に可能で車両の安全性が高まる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1例である駆動装置の構成を示す回路図である。 【図2】本発明の第1例の変形である駆動装置の構成を示す回路図である。 【図3】本発明の第2例である駆動装置の構成を示す回路図である。 【図4】本発明の他の例である駆動装置の構成を示す回路図である。 【図5】本発明の他の例である駆動装置の構成を示す回路図である。 【図6】従来の駆動装置の構成例を示す回路図である。 【図7】従来の駆動装置の他の構成例を示す回路図である。 【符号の説明】 1 モータ 2 正転用リレー 3 逆転用リレー 2a,3a リレーのコイル 4 正転用スイッチ(操作用スイッチ) 5 逆転用スイッチ(操作用スイッチ) 11 正転用トランジスタ 12 逆転用トランジスタ 13 処理手段 14 スイッチ(操作用スイッチ) 22 スイッチ(短絡用スイッチ) 23 短絡用ライン 31 スイッチ(操作用スイッチ、短絡用スイッチ) 41 スイッチ(操作用スイッチ、短絡用スイッチ) 42 短絡用ライン |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2011-02-01 |
出願番号 | 特願平9-249258 |
審決分類 |
P
1
41・
856-
Y
(H02P)
P 1 41・ 161- Y (H02P) P 1 41・ 853- Y (H02P) P 1 41・ 851- Y (H02P) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 堀川 一郎 |
特許庁審判長 |
大河原 裕 |
特許庁審判官 |
冨江 耕太郎 藤井 昇 |
登録日 | 2001-05-11 |
登録番号 | 特許第3185724号(P3185724) |
発明の名称 | 駆動装置 |
代理人 | 奥村 秀行 |
代理人 | 奥村 秀行 |