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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する G11B
管理番号 1233539
審判番号 訂正2010-390134  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2010-12-27 
確定日 2011-02-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第4385040号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4385040号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第4385040号(以下「本件特許」という。)は平成14年9月12日(優先権主張 平成14年1月11日)の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成21年10月2日にその特許権の設定登録がなされたものである。
そして、平成22年12月27日に本件訂正審判が請求された後、平成23年1月27日付け手続補正により、審判請求書に添付した全文訂正明細書が補正された。

2.平成23年1月27日付けの全文訂正明細書の手続補正の適否
前記全文訂正明細書の手続補正は、補正前に、審判請求書に添付された全文訂正明細書において、表又は数式が記載されていることを表示する記号のみが記載され、表自体及び数式自体の記載がなかったところを、表及び数式を加入することで、訂正前の明細書に記載のとおりとするもので、明らかに、審判請求書に添付された全文訂正明細書の誤記を補正するものであるから、審判請求の要旨を変更するものとはいえない。
したがって、上記手続補正は、特許法第131条の2第1項の規定に適合する適法なものといえるので、上記補正を認める。

3.請求の趣旨
本件訂正審判の請求の要旨は、特許第4385040号発明(平成14年9月12日(優先権主張 平成14年1月11日)出願、平成21年10月2日設定登録)の明細書を、審判請求書に添付された全文訂正明細書(平成23年1月27日付けで手続補正)のとおりに訂正することを求めるものである。

[訂正事項]
特許請求の範囲の請求項1において、「いずれの種類の光記録媒体に対しても、該当する光ビームの集光する該情報記録面でのRMS波面収差が許容値内にある」の「許容値」を「0.035λ」と訂正する。

以下、かかる訂正事項を「本件訂正」とする。

4.当審の判断
本件訂正について検討する。

(1)訂正の目的について
本件特許発明の願書に添付した明細書には「許容値」なる文言が複数箇所に記載されるところ、本件訂正前の特許請求の範囲でいう「許容値」が次のいずれの技術内容を指すものか明りょうではなかった。

(A)使用する光記録媒体に該当する光ビームを照射・集光させた場合の
単独のRMS波面収差が「許容値」内・・0.035λ、0.033λ、0.030λ
(記載箇所;【0037】【0045】【0061】)
(B)複数種の光記録媒体に該当する光ビームを照射・集光させた場合の
RMS波面収差の二乗平均値が「許容値」内・・0.028、0.026、0.023
(記載箇所;【0040】【0047】【0063】)
(C)複数種の光記録媒体に該当する光ビームを照射・集光させた場合の
RMS波面収差の比率が「許容値」内・・1.8、1.6、1.4
(記載箇所;【0042】【0048】【0064】)

しかし、本件訂正前の特許請求の範囲に記載された「許容値」には直前の「いずれの種類の光記録媒体に対しても」なる記載が対応しているから、その技術内容は、使用する光記録媒体に該当する光ビームの波長(λ)を適用した場合の「単独のRMS波面収差」を示していること、すなわち、本件訂正が上記(A)の技術内容に該当することは明らかである。
そして、本件訂正は、本願発明の対物レンズに許容されるRMS波面収差の数値範囲(上限値)を、使用波長λ(例:第1の実施形態において、λ_(1)=655nm又はλ_(2)=790nm)の定数倍(0.035倍)であるとの記載により具体的にしている。
よって、本件訂正は、明細書の明りょうでない記載の釈明(特許法第126条第1項ただし書き第3号)を目的とするものである。

(2)特許法第126条第3項及び第4項について
本件特許発明の願書に添付した明細書には、次の記載がある。

「【0037】
(i)ここで、収差を評価するための上記の収差の許容値としては、対物レンズ1への入射レーザビームが入射角0゜である場合(即ち、光軸OAに平行な平行光)について、DVD(波長λ_(1)=655nm),CD(波長λ_(2)=790nm)ともに、RMS(Root Mean Square)波面収差で0.035λ、好ましくは、0.033λ、さらに好ましくは、0.030λとする。この第1の実施形態では、DVD,CDの波面収差がかかる許容値以下となるように、光出射面Bと光入射面Aを上記の面形状に設定しているものである。」

すなわち、RMS波面収差の具体的な値として、「0.035λ」、「0.033λ」、「0.030λ」が記載されている。そして、当該RMS波面収差の「許容値」の上限値として、前記数値のうち最も大きな値である「0.035λ」を選択しうることは明らかである。
また、上記(1)のように、本件訂正前の「許容値」が指す具体的な数値(0.035λ)は、上記(A)の記載の数値に対応している。そして、他に上記(B)や(C)に対応すると認めるべき理由ないし記載も見あたらない。
よって、本件訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり(特許法第126条第3項)、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものでない(同条第4項)。

5.むすび
以上のように、本件訂正審判にかかる請求は、特許法第126条第1項ただし書き第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項及び第4項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
対物レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にCD(Compact Disc:CD-RなどのCDも含む)やDVD(Digital Versatile Disc)など種類が異なる光記録媒体に対応できる互換型の記録再生装置に用いる対物レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、CDやDVDなどの種類が異なる光ディスクをともに再生することができるようにした互換型光ディスク装置が提案されている。CDやDVDなど(以下、これらをまとめて光ディスクという)は、いずれも透明な基板が用いられ、この透明基板の一方の面に情報記録面が設けられており、かかる基板を2枚、それらの情報記録面を向かい合わせにして、貼り合わせた構成をなすか、あるいは、かかる透明基板を透明な保護基板と、透明基板の情報記録面が保護基板と向かい合うようにして、貼り合わせた構成をなしている。かかる構成の光ディスクから光ディスク装置で情報信号を再生する場合には、光源からのレーザビームを光ディスクの情報記録面に透明基板を介して集光させる必要がある。このレーザービームは後に述べるようにCDとDVDとでは互いに波長が異なっている。このレーザビームを集光させるために、光ディスク装置では、対物レンズが使用されているが、CDでは、透明基板の厚さが1.2mm、DVDでは、透明基板の厚さが0.6mmと光ディスクの種類(レーザービームの波長の違い)に応じて情報記録面が設けられている透明基板の厚さが異なるものであり、このような種類が異なる光ディスクを再生する光ディスク装置では、このように使用する光ディスクの種類に応じて透明基板の厚さが異なっても、レーザビームを情報記録面に集光させることが必要である。
【0003】
このような光ディスク装置としては、ピックアップに光ディスクの種類毎に対物レンズを設け、使用する光ディスクの種類に応じて該当する対物レンズに交換したり、光ディスクの種類毎にピックアップを設け、使用する光ディスクの種類に応じてピックアップを交換したりすることが考えられるが、コストの面や装置の小型化を実現するために、対物レンズとして、光ディスクのいずれの種類にも同じレンズを用いることができるようにした光ディスク装置が提案されている。
【0004】
かかる対物レンズの一代表例は、正の屈折力を有するレンズであって、半径方向に3以上の輪帯状レンズ面に区分され、1つおきの輪帯状レンズ面と他の1つおきの輪帯状レンズ面とは屈折力を異にして、同じ波長のレーザビームに対し、1つおきの輪帯状レンズ面が、例えば、薄い透明基板(0.6mm)の光ディスク(DVD)の情報記録面にレーザビームを集光させ、他の1つおきの輪帯状レンズ面が、例えば、厚い透明基板(1.2mm)の光ディスク(CD)の情報記録面にレーザビームを集光させるようにしたものである(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、他の代表例は、薄い透明基板のDVDに対しては、短波長(635nmまたは650nm)のレーザビームを使用し、厚い透明基板のCDに対しては、長波長(780nm)のレーザビームを使用する光ディスク装置において、これらレーザビームに共通に使用する対物レンズであって、正のパワーを有する屈折レンズの一方の面に輪帯状の微細な段差が密に設けられてなる回折レンズ構造が形成されたものである(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
かかる回折レンズ構造は、薄い透明基板のDVDに対し、上記短波長のレーザビームの回折光を情報記録面に集光し、厚い透明基板のCDに対し、上記長波長のレーザビームの上記回折光と同一次数の回折光を情報記録面に集光するように設けられている。なお、DVDに対して上記の短波長のレーザビームを用いるのは、CDに比べてDVDの記録密度は高く、このために、ビームスポットを小さく絞る必要があるためである(よく知られているように、光スポットの大きさは、波長に比例し、開口数NAに反比例する)。
【0007】
なお、レンズ面に輪帯状位相シフタを設けた輪帯位相補正レンズ方式の対物レンズも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
これは、DVDに使用する波長λ_(1)が640nmのレーザビームで波面収差をなくすようにしたレンズ面を基準として、半径方向に複数の輪帯状の屈折面に区分し、これら屈折面を夫々この基準レンズ面から所定の段差(レンズ中心からi番目の段差をd_(i)とする)をもって形成し、かかる段差d_(i)により、夫々の屈折面によってDVDのレーザビームが基準レンズ面に対してこの波長λ_(1)の整数m_(i)倍だけ位相シフトすることにより、CD系の波面収差を低減するものである。
【特許文献1】特開平9ー145995号公報
【特許文献2】特開2000ー81566号公報
【特許文献3】特開2001ー51192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記いずれの従来例でも、DVD,CDともに共通の対物レンズを用いることができるから、対物レンズを含めてDVD,CD毎に使用部材を交換するための手段などが不要となり、コストの面や構成の簡略化の点で有利となるが、上記特許文献1では、DVD、CD毎に対物レンズでの利用する輪帯状レンズ面が異なるため、入射レーザビームに対して無効となる部分が多く、光利用効率が著しく低いという問題がある。換言すれば、レンズ面の輪帯区間毎に固有の焦点を持たせたために、1つの単色光をレンズ面全域で受けてひとつの焦点に結ばせることが出来ない点で利用効率が低下しているということになる。
【0010】
また、上記特許文献2では、回折レンズ構造による回折光を利用しているため、異なる波長に夫々対する回折効率を同時に100%にすることはできないという問題がある(なお、これでは、DVDに用いる短波長(635nmまたは650nm)のレーザビームとCDに用いる長波長(780nm)のレーザビームに対し、それらの間のほぼ705nmの波長で回折効率が100%となるようにして、これら使用レーザビームに対して回折効率がバランスするようにしている)。また、レンズ面に回折レンズ構造を設けるため、微小な段差が必要になるが、製造上の誤差の影響を受け易く、回折構造が設計からズレた場合、回折効率の劣化を招くことになる。このように、回折効率の劣化やそもそも回折効率が100%に達しないということは、入射光の全てを光ディスクの透明基板に設けられた情報記録面に集光することはできないことを意味しており、これが光量損失となる。
【0011】
さらに、特許文献3では、即ち、輪帯位相補正レンズ方式では、光利用効率は高いが、DVDのレーザビームに対して波面収差をなくすように設計したレンズ面を基準面とし、これより、CDのレーザビームに対する波面収差を低減するように、この基準面からDVDのレーザビームの波長λ_(1)の整数m_(i)倍の段差d_(i)だけ窪ませて屈折面としている。しかし、もとよりDVDを基準として、単なる段差を設けるだけでは、CDのレーザビームに対して、波面収差を充分に低減することができていない。
【0012】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、透明基板の厚さが異なる複数種の光記録媒体夫々に対し、可及的に波面収差が低減された状態で、しかも、高い光利用効率で光ビームを情報記録面に集光させることができるようにした対物レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明では、透明基板の厚さが異なる複数種の光記録媒体毎に異なる波長の光ビームが入射され、光記録媒体側で光ビームを集光させる正のパワーを有する対物レンズの設計方法において、光ビームの波長の違いによって発生する色収差で光記録媒体の透明基板の厚みの違いによって発生する波面収差を打ち消す関数を求め、この関数でもってレンズ面を構成するという設計方法を編み出した。
【0014】
また、これにより、本発明は、透明基板の厚さが異なる複数種の光記録媒体毎に異なる波長の光ビームが入射され、光記録媒体の該透明基板に設けられた情報記録面に該光ビームを屈折作用により集光させる正のパワーを有する対物レンズであって、光ビームの波長λの違いによって発生する色収差で光記録媒体の透明基板の厚みの違いによって発生する波面収差を打ち消すことにより、いずれの種類の光記録媒体に対しても、
該当する光ビームを該情報記録面にRMS波面収差が0.035λ以下で、好ましくは0.033λ以下で、さらに好ましくは0.030λ以下で集光させる、
あるいは、該当する光ビームを該情報記録面にRMS波面収差が、i番目の光ビームの波長をλ_(i)(i=1,2,……)とし、波長λ_(i)の光ビームの波面収差をW_(i)として、
【数1】

【0015】
(但し、i番目の該光ビームの波長をλ_(i)(i=1,2,……)、全ての波長にわたる個々のRMS波面収差の二乗の総和をΣW_(i)^(2)、波長λ_(i)の光ビームのRMS波面収差をW_(i)・λ_(i)とする)
好ましくは、
【数2】

【0016】
(但し、i番目の該光ビームの波長をλ_(i)(i=1,2,……)、全ての波長にわたる個々のRMS波面収差の二乗の総和をΣW_(i)^(2)、波長λ_(i)の光ビームのRMS波面収差をW_(i)・λ_(i)とする)
さらに好ましくは、
【数3】

【0017】
(但し、i番目の該光ビームの波長をλ_(i)(i=1,2,……)、全ての波長にわたる個々のRMS波面収差の二乗の総和をΣW_(i)^(2)、波長λ_(i)の光ビームのRMS波面収差をW_(i)・λ_(i)とする)
さらに好ましくは、
【数4】

【0018】
(但し、i番目の該光ビームの波長をλ_(i)(i=1,2,……)、全ての波長にわたる個々のRMS波面収差の二乗の総和をΣW_(i)^(2)、波長λ_(i)の光ビームのRMS波面収差をW_(i)・λ_(i)とする)にて集光させる、または、該当する光ビームを該情報記録面に波長表示RMS波面収差比が、該光ビームの波面収差のうちの最大の波面収差をWmax、最小の波面収差をWminとして、Wmax/Wmin≦1.8で好ましくは、Wmax/Wmin≦1.6で、さらに好ましくは、Wmax/Wmin≦1.4で集光させる対物レンズ、あるいは、複数種の光記録媒体毎に異なる波長の光ビームが入射され、該光記録媒体の該透明基板に設けられた情報記録面に該光ビームを屈折作用により集光させる正のパワーを有する対物レンズであって、いずれの種類の光記録媒体に対しても、該当する光ビームを該情報記録面にRMS波面収差が0.035λ以下に集光させることを特徴とする対物レンズを提供するものである。このことは、一面において、換言すれば、複数種類の単色光を夫々屈折作用により集光させる多波長用レンズを含む光学系であって、レンズ面全域にわたり該単色光の固有の波長に対応した単一の焦点を有するとともに、当該焦点は、異なる所定波長の該複数種類の単色光に対応して夫々異なる所定の位置に配置されている多波長用光学系を初めて提供することを意味する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、透明基板の厚さが異なる2種類以上の光ディスクに対して、回折レンズ構造を用いずに、屈折作用によって記録または再生に必要な開口(NA)で全ての光束を所望とする位置に可及的に少ない収差で集光させることができ、光利用効率をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
いま、厚さt_(1)の透明基板を用いた第1の光ディスクに対し、これを用いる光ディスク装置での対物レンズが良好に収差補正され、この基板に設けられた情報記録面にレーザビームが良好に集光するものとする。かかる光ディスク装置にこの透明基板とは異なる厚さt_(2)の透明基板を用いた第2の光ディスクを使用した場合、この透明基板の厚さt_(2)が厚さt_(1)と異なるために、この対物レンズと厚さt_(2)の透明基板とによって波面収差が生じ、この厚さt_(2)の透明基板に設けられている情報記録面にレーザビームが良好に集光しない。
【0021】
一方、かかる対物レンズと透明基板からなる光学系に異なる波長のレーザビームを用いると、色収差が生ずるが、本発明は、かかる色収差を利用して上記の波面収差を低減するものであって、基板の厚みが異なる光ディスク毎に異なる波長のレーザビームを用い、基板の厚みが異なることによって生ずる波面収差をレーザビームの波長の違いによって生ずる色収差でもって相殺し、いずれの厚みの基板に対しても、総合的な収差が許容範囲内になるようにするものである。
【0022】
このことは、基板の厚さが異なる光ディスクのいずれに対しても、その基板の厚さに対応する波長のレーザビームを用いた場合、このレーザビームの対物レンズと基板を通った全ての光線がこの基板の情報記録面上で良好に集光するような光路長を経るようにするものである。
【0023】
いま、図3において、対物レンズ1を用いて基板2の情報記録面2aにレーザビームを集光させる場合についてみる。ここで、対物レンズ1の面Aは光入射側面、面Bは光出射側面であり、基板2の情報記録面2aは対物レンズ1側とは反対側にある。
【0024】
図3は、対物レンズ1に入射するレーザビームは平行光とし(従って、図3に示す光学系は、いわゆる無限光学系である)、対物レンズ1の光軸OAからこれに垂直な方向の距離(光線高さ)hの位置P_(1)を通る光線が光軸OAを横切る点(集光点)P_(5)に達するまでの光路を摸式的に示すものである。ここで、かかる光路での対物レンズ1への入射点をP_(2)、対物レンズ1からの出射点をP_(3)、透明基板2への入射点をP_(4)とし、
点P_(1)?入射点P_(2):空間距離=S_(1h) 屈折率=n_(1)
入射点P_(2)?出射点P_(3):空間距離=S_(2h) 屈折率=n_(2)
出射点P_(3)?入射点P_(4):空間距離=S_(3h) 屈折率=n_(3)
入射点P_(4)?集光点P_(5):空間距離=S_(4h) 屈折率=n_(4)
とすると、点P_(1)から集光点P_(5)までの光路長L_(h)は、
【数5】

【0025】
で表わされる。なお、光軸OA上での光路長L_(h)は、この数5において、h=0の場合である。
【0026】
この数5は任意の光線高さhについて該当するものであり、収差補正されている場合には、夫々の光線高さhに対する集光点P_(5)が夫々の許容範囲内で情報記録面2a上にある。すなわち、本発明は、例えば厚さが異なる複数の基板夫々毎に異なる波長のレーザビームを用いることにより、色収差と波面収差とが相殺し合って夫々の光線高さhに対する集光点P_(5)が夫々の許容範囲内で情報記録面2a上にあるようにするものである。本発明の実施形態としては、対物レンズ1のレンズ面形状をこれを実現する形状とするものである。これにより、基板の厚さが異なるいずれの光ディスクに対しても、情報記録面に良好な光スポットを形成することが可能となる。なおこのことは、ディスク基板の厚みが異なっていなくても、つまり、厚みが同じで波長が異なるような場合でも前記集光点P_(5)を夫々の許容範囲内にすることにより適用可能である。また、光記録媒体に限らず、光通信などで異なる波長のレーザービームを同一のレンズもしくは光学系を通過させるような場合にも適用可能である。
【0027】
以下、本発明の実施形態を、透明基板の厚さが異なる2種類の光ディスク、即ち、DVDとCDとを例に、図面を用いて説明する。
【0028】
図1は本発明による対物レンズの第1の実施形態の作用を示す図であって、同図(a)はDVDに対するもの、同図(b)はCDに対するものであり、1はこの実施形態の対物レンズ、2はDVDの透明基板(以下、DVD基板という)、3はCDの透明基板(以下、CD基板という)、4,5はレーザビームである。
【0029】
まず、図1(a)において、対物レンズ1が図示しない光ディスク装置の光ヘッドに設けられており、DVDがこの光ディスク装置に装着されて、対物レンズ1によって平行光として入射されるレーザビーム4が集光されることにより、記録再生が行なわれる。ここで、DVD基板2の厚さt_(1)は0.6mmであり、このときのレーザビーム4としては、波長λ_(1)=655nmのレーザビームが開口数NA=0.63の光束として用いられる。かかる条件のもとに、かかるレーザビームは、DVD基板2の対物レンズ1側とは反対側の面の情報記録面2aに集光される。
【0030】
図1(b)は上記と同じ光ディスク装置にCDが装着され、同じ対物レンズ1を用いて記録再生が行なわれる場合を示す。ここで、CD基板3の厚さt_(2)は1.2mmであり、このときのレーザビーム5としては、波長λ_(2)=790nmのレーザビームがほぼ開口数NA=0.63の光束として用いられるが、実質的には、開口数NA=0.47の光束がCD基板3の情報記録面3aに集光し、ハッチングして示すほぼNA=0.47?0.63の対物レンズ1の光軸OAから離れた部分を通る光束はこの情報記録面3aで集光しない。このように、この開口数NAがほぼ0.47までの上記のレンズ領域は、DVD,CDの共通使用領域となる。
【0031】
このように、この第1の実施形態は、DVD,CDともに収差が良好に低減されて、情報記録面2a,3aで良好な光スポットが得られるようにするものであるが、このために、DVD,CDの両方共に、任意の光線高さhに対して上記数5で示す光路長L_(h)が収差を低減して許容値内とするような値とするように、対物レンズ1のレンズ面形状を設定するものである。以下、かかるレンズ面形状の一具体例を図2により説明する。
【0032】
図2において、対物レンズ1の光出射側面Bについて、光線高さhの点をc、この点cから光軸OAに平行な方向での光出射側面B上の点をdとすると、この光出射側面Bの面形状は、任意の光線高さhに対する点c,d間の距離Z_(B)により、
【数6】

【0033】
で表わされるようにする。
【0034】
なお、数6において、上記係数C,K,A_(4),A_(6),A_(8),A_(10)の値を代入して任意の光線高さh(≠0)に対する距離Z_(B)を求めると、その値は負の値となるが、これは光出射側面B上の点dが点c、従って、この光出射側面Bの光軸OAが通る面頂点eよりも入射面側(図2での左側)に位置することを示している。距離Z_(B)が正の値である場合には、逆の右側に位置することを示している。
【0035】
次に、対物レンズ1の光入射側面Aについて、光線高さhの点をa、この点aから光軸OAに平行な方向での光入射側面A面上の点をbとすると、光入射側面Aの面形状は、光線高さh(mm)とこの光線高さhに対する点a,b間の距離Z_(A)(mm)とが次の表1に示す関係となるレンズ面形状に設定される。
【表1】

【0036】
対物レンズ1の上記数6で表わされる光出射側面Bも、また、上記表1の点列データで表わされる光入射側面Aも、連続した非球面をなすものである。また、対物レンズ1の光軸上の面頂点f,e間の距離、即ち、中心厚t_(0)は2.2mmであって、波長λ_(1)=655nm(DVD)での屈折率nは1.54014であり、波長λ_(2)=790nm(CD)での屈折率nは1.5365である。
【0037】
(i)ここで、収差を評価するための上記の収差の許容値としては、対物レンズ1への入射レーザビームが入射角0°である場合(即ち、光軸OAに平行な平行光)について、DVD(波長λ_(1)=655nm),CD(波長λ_(2)=790nm)ともに、RMS(Root Mean Square)波面収差で0.035λ、好ましくは、0.033λ、さらに好ましくは、0.030λとする。この第1の実施形態では、DVD,CDの波面収差がかかる許容値以下となるように、光出射面Bと光入射面Aを上記の面形状に設定しているものである。
【0038】
この第1の実施形態では、2種類の異なる波長λ_(1),λ_(2)を用いた場合を示しているが、一般に、n種類(但し、nは2以上の整数)の異なる波長λ_(i)(但し、i=1,2,……,n)を用いる場合も、同様である。
【0039】
(ii)また、このようにn種類の波長λ_(i)を用いた場合について、これら波長λ_(i)の入射レーザビームが入射角0°である場合の夫々の波面収差をW_(i)とすると、これら収差は、
【数7】

【0040】
(但し、i番目の該光ビームの波長をλ_(i)(i=1,2,……)、全ての波長にわたる個々のRMS波面収差の二乗の総和をΣW_(i)^(2)、波長λ_(i)の光ビームのRMS波面収差をW_(i)・λ_(i)とする)を満足するようにする。このときの許容値W_(0)としては、0.028、好ましくは0.026,さらに好ましくは0.025、さらに好ましくは0.023とする。上記第1の実施形態では、DVDの波面収差をW_(1)、CDの波面収差をW_(2)とし、かつi=1,2であるから、上記数7は、
【数8】

【0041】
となる。
【0042】
(iii)あるいはまた、異なるn種類の波長λ_(i)のレーザビームを用いる場合、夫々の波長λ_(i)のうちで最大の波面収差をWmax、最小の波面収差をWminとすると、
1≦Wmax/Wmin<W_(th)
とする。この場合の許容値Wthとしては、1.8、好ましくは1.6、さらに好ましくは1.4とする。上記第1の実施形態の場合には、DVDの波面収差W_(1)とCDの波面収差W_(2)とのいずれか一方が最大波面収差Wmaxとなり、他方が最小波面収差Wminとする。
【0043】
図4はこの第1の実施形態でのRMS波面収差の測定結果を示すものであって、横軸に像高(mm)を取り、縦軸にRMS波面収差を取っている。ここで、入射角は0°であり、像高=0mmは入射ビームが平行光であることを示しており、像高が大きくなるほど、平行光からずれてくることになる。
【0044】
図4(a)はDVD(波長λ_(1)=655nm)に対するRMS波面収差を示しており、像高=0mmのときには、RMS波面収差=0.02130λ_(1)であった。また、図4(b)はCD(波長λ_(2)=790nm)に対するRMS波面収差を示しており、像高=0mmのときには、RMS波面収差=0.02410λ_(2)であった。
【0045】
かかる数値を評価するために、上記の各条件式に挿入すると、
(i)まず、DVD,CDについて、RMS波面収差が0.02130λ,0.02410λと上記の許容値0.035λ、好ましくは、0.033λ、さらに好ましくは、0.030λよりも小さい。
【0046】
(ii)DVD,CDについて、上記数8により、
【数9】

【0047】
であるから、上記の許容値0.028、好ましくは0.026,さらに好ましくは0.025、さらに好ましくは0.023以下となっている。
【0048】
(iii)DVD,CDについて、Wmax/Wminをみると、
Wmax/Wmin=0.02410/0.02130=1.1315
となるから、上記の許容値1.8、好ましくは1.6、さらに好ましくは1.4以下となっている。
【0049】
図5は上記数6で示す面形状の光出射側面Bと上記表1で示す面形状の入射側面Aとを有する対物レンズ1を用いたことによるDVD,CDの情報記録面上での光スポットの計算結果に示す図であって、横軸は情報記録面での光軸を基準点とした光軸に垂直方向の位置を距離(mm)で表わしたものであり、縦軸はこの基準点(=0mm)での光強度を1としたときの各位置の相対的光強度を表わしている。
【0050】
図5(a)はDVDに対する光スポットを示すものであって、相対的光強度が1/e^(2)(=13.5%)となる光スポット直径φ_(D)は0.85μmである。また、図5(b)はCDに対する光スポットを示すものであって、相対的光強度が1/e^(2)となる光スポット直径φ_(C)は1.37μmであった。このように、DVD,CDともに、情報記録面に良好な光スポットが得られるものであった。
【0051】
次に、本発明による対物レンズの第2の実施形態について説明する。
【0052】
この第2の実施形態は、その基本的構成は上記の第1の実施形態と同様であるが、光入射面Aを光軸から半径方向に複数の区間に区分し、夫々の区間の面形状を、DVD,CDともに収差が許容値内に良好に低減されるように、設定するものである。
【0053】
この第2の実施形態の光入射面Aの面形状を図2を用いて説明する。いま、この光入射面Aの光線高さh方向(半径方向)の光軸OA側からj番目の区間での点a,b間の距離を次の関数Z_(Aj)で、即ち、
【数10】

【0054】
で表わされる。なお、数10での光源高さhは、j番目の区間でのものである。
【0055】
そして、DVD,CDともに収差を許容値内に良好に低減するための数10での区間毎に、その範囲(hの範囲)とその各定数B,C,K,A_(4),A_(6),A_(8),A_(10),A_(12),A_(14),A_(16)を示すと、次の表2に示すようになる。
【表2】

【0056】
また、この第2の実施形態での光出射面Bの面形状Z_(B)は、次の数11で表わされる。
【数11】

【0057】
また、対物レンズ1の光軸上の面頂点f,e間の距離、即ち、中心厚さt_(0)は2.2mmであって、波長λ_(1)=655nm(DVD)での屈折率nは1.604194であり、波長λ_(2)=790nm(CD)での屈折率nは1.599906である。
【0058】
ここで、収差を評価するための上記収差の許容値としては、上記第1の実施形態と同様である。
【0059】
図6はこの第2の実施形態でのRMS波面収差の測定結果を示すものであって、横軸,縦軸は図4と同様である。
【0060】
図6(a)はDVD(波長λ_(1)=655nm)に対するRMS波面収差を示しており、像高=0mmのときには、RMS波面収差=0.01945λ_(1)であった。また、図6(b)はCD(波長λ_(2)=790nm)に対するRMS波面収差を示しており、像高=0mmのときには、RMS波面収差=0.02525λ_(2)であった。
【0061】
かかる数値を評価するために、第1の実施形態と同様、上記の各条件式に挿入すると、
(i)まず、DVD,CDについて、RMS波面収差が0.01945λ_(1),0.02525λ_(2)と上記の許容値0.035λ、好ましくは、0.033λ、さらに好ましくは、0.030λよりも小さい。
【0062】
(ii)DVD,CDについて、上記数8により、
【数12】

【0063】
であるから、上記の許容値0.028、好ましくは0.026,さらに好ましくは0.025、さらに好ましくは0.023以下となっている。
【0064】
(iii)DVD,CDについて、Wmax/Wminをみると、
Wmax/Wmin=0.02525/0.01945=1.298
となるから、上記の許容値1.8、好ましくは1.6、さらに好ましくは1.4以下となっている。
【0065】
図7は上記数11で示す面形状の光出射側面Bと上記数10及び表2で示す面形状の入射側面Aとを有する対物レンズ1を用いたことによるDVD,CDの情報記録面上での光スポットの計算結果に示す図であって、横軸,縦軸は図5と同様である。
【0066】
図7(a)はDVDに対する光スポットを示すものであって、相対的光強度が1/e^(2)(=13.5%)となる光スポット直径φ_(D)は0.89μmである。また、図7(b)はCDに対する光スポットを示すものであって、相対的光強度が1/e^(2)となる光スポット直径φ_(C)は1.30μmであった。このように、DVD,CDともに、情報記録面に良好な光スポットが得られるものであった。
【0067】
なお、一例として、先の特開2001ー51192号公報に記載のDVDとCDとの収差をみると、
DVD:0.001λ_(1) CD:0.047λ_(2)
DVD:0.019λ_(1) CD:0.037λ_(2)
但し、λ_(1)=640nm λ_(2)=780nm
の2つの例が挙げられているが、いずれにおいても、CDについては、上記の許容値0.035λを越えるものである。また、これらの
【数13】

【0068】
は、上記夫々について、0.0332,0.0294となり、いずれも上記の許容値0.028、好ましくは0.026,さらに好ましくは0.025、さらに好ましくは0.023を越えているし、さらに、これらのWmax/Wminも夫々、47,1.947となり、いずれも上記の許容値1.8、好ましくは1.6、さらに好ましくは1.4を越えている。
【0069】
このように、上記第1,第2の実施例とも、収差を上記の許容値内に抑えることができるものであるが、これは、収差がかかる許容値内に収まるように、波面収差が色収差でキャンセルし合うレンズ面形状としていることによるものである。これに対し、先の特開2001ー51192号公報では、単に入射レーザビームをDVDレーザビームの波長の整数倍分位相シフトすることにより、CDの収差低減を図るようにしたものであるから、いずれか1つの波長に対しては、収差を充分小さく抑えることができるとしても、全ての波長に対して、上記のような小さい値の許容値内に収差を同時に納めることができないのである。
【0070】
以上の実施形態では、DVDとCDとで基板厚さが夫々0.6mmと1.2mmと異なることによる波面収差が655nmと790nmとの波長の差による色収差により打ち消して総合的な収差が低減されていることが、図5及び図7に示す光スポット及び図4,図6に示す波面収差のグラフから明らかである。また、以上の実施形態では、対物レンズ1の光入射側面Aの面形状は上記表1に示す点列データ,数10及び表2で与えられ、光出射側面Bの面形状は上記数6,数11に示す非球面の式により与えられるので、先の従来例のような回折レンズ構造を用いておらず、また、記録または再生に必要な開口(NA)に対してほぼ全ての光束を集光することができるので、高い光利用効率が得られることになる。
【0071】
なお、以上の実施形態では、図1に示すように、ほぼ開口数NA=0.47から開口数NA=0.63までの対物レンズ1の外側領域はDVDのみに使用され、CDでは使用しないので、かかる外側領域での光入射側面A,光出射側面Bのいずれか一方または双方にDVDのときの波長655nmの光を透過し、CDのときの波長790nmの光を透過しない薄膜処理を施したり、あるいは、かかる外側領域での光入射側面A,光出射側面Bのいずれか一方または双方に波長655nmの光には作用しないが、波長790nmの光に作用するような回折格子を形成して、波長655nmの光利用効率を落とさずに、波長790nmの光利用効率を落とすようにしてもよい。
【0072】
即ち、以上の実施形態のごとく、異なる開口数の系に共用する際に、開口数に応じた絞りを設定できない場合には、開口数の小さな光学系においては、余分の光束をも受容することになるので、開口数の大きな光学系に合致して設計されたレンズの外側領域部分を通過する光が、開口数が小さな光学系に悪影響を及ぼさないような配慮をすることが望ましい。例えば、レンズの外側領域を通過した光がディスク面には集光しないように、横収差量が0.015mm以上となるようにするのが望ましい。
【0073】
また、以上の実施形態では、DVDとCDとの2種類の光ディスクを例としたが、本発明は、これに限らず、これら以外の種類が異なる光ディスクであってもよいし、また、基板の厚みが異なる3種類以上の光ディスクに対しても、適用可能であり、夫々毎に使用するレーザビームの波長を異ならせ、これらに応じて、色収差が波面収差を打ち消すように、レンズ面形状を設定すればよい。
【0074】
図8は本発明による対物レンズを用いた光ヘッドの一実施形態を示す構成図であって、11はDVDレーザ、12はCDレーザ、13,14はハーフプリズム、15はコリメータレンズ、16は検出レンズ、17は光検出器、18は回析格子、19はアクチュエータであり、図1に対応する部分には同一符号をつけている。
【0075】
同図において、DVDディスク2を記録または再生する場合には、DVDレーザ11を駆動する。DVDレーザ11から発生される波長655nmのレーザビームが、ハーフプリズム13で反射し、ハーフプリズム14を透過してコリメータレンズ15に入射する。コリメータレンズ15を通過して平行光となってレーザビームは、対物レンズ1に入射して集光され、DVDディスク2の情報記録面に光スポットを形成する。そして、DVDディスク2で反射した反射光が対物レンズ1により平行光となり、コリメータレンズ15に入射する。コリメータレンズ15はこの平行光を収束光にし、この収束光はハーフプリズム14,13を透過し、検出レンズ16を通って光検出器17に到達する。光検出器17の検出出力信号は信号処理回路(図示せず)に供給され、情報記録再生信号やフォーカス誤差信号,トラッキング誤差信号が得られる。図示しないシステム制御回路は、得られたフォーカス誤差信号とトラッキング誤差信号をもとに、適正なフォーカス位置とトラッキング位置に対物レンズ1が位置するように、アクチュエータ駆動回路(図示せず)を制御してアクチュエータ19を駆動する。
【0076】
CDディスク3を記録または再生する場合には、CDレーザ12を駆動する。CDレーザ12から発生される波長790nmのレーザビームが回折格子18を通り、ハーフプリズム14で反射されてコリメータレンズ15に入射する。コリメータレンズ15を通過して平行光となったレーザビームは、対物レンズ1に入射して集光され、CDディスク3の情報記録面に光スポットを形成する。そして、CDディスク3で反射した反射光が対物レンズ1により平行光となり、コリメータレンズ15に入射する。コリメータレンズ15はこの平行光を収束光にし、この収束光はハーフプリズム14,13を透過し、検出レンズ16を通って光検出器17に到達する。光検出器17の検出出力信号は図示しない信号処理回路に供給され、情報記録再生信号やフォーカス誤差信号,トラッキング誤差信号が得られる。
【0077】
なお、CDディスク3の場合のトラッキング誤差信号は、CDレーザ12からのレーザビームを、回折格子18により、0次光と土1次光の3ビームに分岐し、これら±1次光によりトラッキング誤差信号を得るようにしている。
【0078】
このようにして得られたトラッキング誤差信号とフォーカス誤差信号とにより、DVDディスク2と同様にして、適正なフォーカス位置とトラッキング位置に対物レンズ1が位置するように、アクチュエータ19を駆動する。
【0079】
なお、本発明において、対物レンズ1の代わりに、コリメータレンズ15あるいはハーフプリズム14など両ディスクに共通する光学系において、本発明における対物レンズと同様の機能を持つように光学設計することもできる。また、図示しないが、本発明の対物レンズと同等の機能を有する他の光学要素をハーフプリズム14からディスク2またはディスク3に至る光路に配置することによってもよい。
【0080】
なお、コリメータレンズ15は必ずしも必要ではなく、いわゆる有限系の光学系でも、本発明は適用可能である。
【0081】
図9は本発明による対物レンズを用いた光ディスク装置の一実施形態を示す構成図であって、20はアクチュエータ駆動回路、21は信号処理回路、22はレーザ駆動回路、23はシステム制御回路、24はディスク判別手段であり、図8に対応する部分には同一符号をつけている。
【0082】
同図において、光ピックアップ装置部分については、図8に示す構成と同様である。
【0083】
まず、装着されたディスクの種類をディスク判別手段24により判別する。そのディスク判別方法としては、ディスクの基板の厚さを光学的もしくは機械的な方法で検出する方法、ディスクまたはディスクのカートリッジに予め記録された識別マークを検出する方法などが考えられる。もしくは、ディスクの厚さ,種類を仮定してディスクの信号を再生し、正常な信号が得られなければ、別の厚さ,種類のディスクであると判断する方法でもよい。ディスク判別結果は、ディスク判別手段24からシステム制御回路23に伝達される。
【0084】
DVDディスクであると判別された場合には、システム制御回路23よりレーザ駆動回路22に対してDVDレーザを点灯させるような信号が伝達され、レーザ駆動回路22によりDVDレーザ11が点灯される。これにより、光ヘッドでは、図8に示した実施形態と同様に、波長655nmのレーザビームが光検出器17に到達する。この光検出器17からの検出信号が信号処理回路21に送られて情報記録再生信号とフォーカス誤差信号とトラッキング誤差信号とが生成され、システム制御回路23に送られる。システム制御回路23では、これらフォーカス誤差信号とトラッキング誤差信号とに基づいて、アクチュエータ駆動回路20を制御し、この制御に基づいてアクチュエータ駆動回路20がアクチュエータ19を駆動して対物レンズ1をフォーカス方向及びトラッキング方向に移動させる、いわゆるサーボ回路の動作により、フォーカス制御及びトラッキング制御が正規に行なわれて、対物レンズ1がDVDディスク2に対して正しい位置に位置するように、上記の各回路及びアクチュエータ19が動作するものとし、その結果、情報記録再生信号が良好に得られる。
【0085】
装着されたディスクがCDディスク3であると判別された場合には、システム制御回路23より、レーザ駆動回路22に対してCDレーザ12を点灯させるような信号が伝達される。これにより、CDレーザ12から波長790nmのレーザビームが発生する。これ以降の動作は図8に光ヘッドの場合と同様であり、このレーザビームが光検出器17に到達し、上記のDVDディスク2の場合と同様に、各回路やアクチュエータ19が作動してサーボ動作が行なわれ、情報記録再生信号が良好に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明による対物レンズの第1の実施形態を示す図である。
【図2】図1に示す第1の実施形態のレンズ面形状の一具体例を示す図である。
【図3】対物レンズと光ディスクの透明基板とからなる光学系での光路長を説明するための図である。
【図4】図1に示す第1の実施形態の第1の実施形態の波面収差の測定結果の一具体例を示すグラフ図である。
【図5】図1に示す第1の実施形態を用いた光ディスク装置での種類が異なる光ディスクに対する光スポットの計算結果を示す図である。
【図6】本発明による対物レンズの第2の実施形態の波面収差の測定結果の一具体例を示すグラフ図である。
【図7】本発明による対物レンズの第2の実施形態を用いた光ディスク装置での種類が異なる光ディスクに対する光スポットの計算結果を示す図である。
【図8】本発明による光ヘッドの一実施形態を示す図である。
【図9】本発明による光ディスク装置の一実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1 実施形態の対物レンズ
2 DVDの透明基板
2a 情報記録面
3 CDの透明基板
3a 情報記録面
4,5 レーザビーム
11 DVDレーザ
12 CDレーザ
13,14 ハーフプリズム
15 コリメータレンズ
16 検出レンズ
17 光検出器
18 回析格子
19 アクチュエータ
20 アクチュエータ駆動回路
21 信号処理回路
22 レーザ駆動回路
23 システム制御回路
24 ディスク判別手段
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の厚さが異なる複数種の光記録媒体毎に異なる波長の光ビームが入射され、該光記録媒体の該透明基板に設けられた情報記録面に該光ビームを集光させる正のパワーを有する対物レンズであって、
該異なる波長でかつ該異なる複数種の光記録媒体の情報記録面上に集光させる光ビームが通るレンズ面第1領域と、該レンズ面第1領域の外側に位置し該複数種の光記録媒体のうちの一種の光記録媒体の情報記録面上のみに集光させる光ビームが通るレンズ面第2領域とから構成され、
該レンズ面第1領域は、光軸を中心とする同心円状の複数の区間に区分され、該区間には夫々、該光ビームの波長λの違いによって発生する色収差と該光記録媒体の透明基板の厚みの違いによって発生する波面収差とが相殺し合うような非球面形状が設定され、
いずれの種類の光記録媒体に対しても、該当する光ビームの集光する該情報記録面でのRMS波面収差が0.035λ内にあることを特徴とする対物レンズ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2011-02-14 
出願番号 特願2006-198154(P2006-198154)
審決分類 P 1 41・ 853- Y (G11B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 肇吉野 公夫瀬川 勝久森内 正明  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 井上 信一
石丸 昌平
登録日 2009-10-02 
登録番号 特許第4385040号(P4385040)
発明の名称 対物レンズ  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  

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