• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010800002 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 一部無効 2項進歩性  C08J
審判 一部無効 1項2号公然実施  C08J
審判 一部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
管理番号 1234349
審判番号 無効2010-800011  
総通号数 137 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-05-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-01-13 
確定日 2011-03-14 
事件の表示 上記当事者間の特許第3935907号発明「連続気孔弾性体及びその製造方法、並びに吸水ローラー及びスワブ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3935907号の請求項1、2、6及び7に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
(1)本件特許第3935907号(以下、「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成16年12月1日に出願され(特願2004-348452)、平成19年3月30日にその特許権の設定の登録がされたものである。請求項の数は7である。
(2)本件特許について、本件請求人は平成19年9月21日に別件無効審判を請求し(無効2007-800200)、本件被請求人は平成20年3月24日に本件特許明細書、特許請求の範囲及び図面について訂正請求をしたところ、当該無効審判事件は、同年8月25日付けで「訂正を認める。本件審判の請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決がなされ、本件請求人はこの審決を不服として知的財産高等裁判所に出訴したが(平成20年(行ケ)第10359号)、平成21年7月29日に請求棄却の判決が言い渡され、当該審決は同年12月15日に確定した。なお、訂正による請求項の数に変更はない。
(3)請求人は、平成22年1月13日に審判請求書を提出して本件無効審判を請求した。
(4)被請求人は、同年4月26日に審判事件答弁書を提出した。なお、被請求人は、本件無効審判事件においては、本件特許明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正を請求していない。
(5)同年9月14日に、特許庁第1審判廷で公開のもと、第1回口頭審理が開催された。この口頭審理に先立ち、被請求人は同年8月30日付け口頭審理陳述要領書を、請求人は同月31日付け口頭審理陳述要領書を提出し、口頭審理においてこれらの書面は陳述された。なお、請求人は、口頭審理陳述要領書と同時に検証申出書を提出したが、同年9月10日付け上申書により当該検証の申出は撤回された。また、この口頭審理において、以降は書面審理とすることが宣された。
(6)口頭審理の後、両当事者は次の書面を提出している。
請求人:同年10月5日付け上申書、同日付け審判記録閲覧制限の申立書、同月12日付け上申書、同月19日付け上申書、及び、同年12月1日付け上申書
被請求人:同年10月5日付け上申書、同月22日付け上申書、及び、同年11月2日付け上申書

第2.本件特許発明
本件特許については、先に述べたとおり、別件無効審判事件(無効2007-800200)において、被請求人が願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の訂正を請求し、その訂正を認める旨の審決がすでに確定していることから、本件特許の請求項1、2、6及び7に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1、2、6及び7」という。)は、本件特許請求の範囲の請求項1、2、6及び7に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
ポリウレタンからなり、その骨格の平均太さが20μm以下で、骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである3次元網目状の気孔構造を有し、見掛け密度が0.2?0.4g/cm^(3)であり、かつHLB値が8以上の界面活性剤を含有することを特徴とする連続気孔弾性体。
【請求項2】
界面活性剤のHLB値が8?19であることを特徴とする請求項1に記載の連続気孔弾性体。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の連続気孔弾性体を用いることを特徴とする吸水ローラー。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の連続気孔弾性体を用いることを特徴とするスワブ。」

第3.請求人の主張
請求人は、「特許第3935907号の請求項1、2、6及び7に係る特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めているところ、特許を無効とする理由は、第1回口頭審理調書に記載されたとおり、次の点にある。

無効理由1:
本件請求項1,2,6及び7に係る発明は、「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」ことが発明特定事項とされているが、その内容は、特許請求の範囲の記載からは不明であり、また、発明の詳細な説明の記載を参酌しても明らかではないから、その発明の外延を当業者が把握することのできない、明確性を欠く記載であるから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

無効理由2:
本件請求項1,2,6及び7に係る発明の「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」という構成は、発明の詳細な説明に一切記載がないから、本件請求項1,2,6及び7に係る発明が、発明の詳細な説明に記載されたものであるとすることができないから、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

無効理由3:
本件請求項1,2,6及び7に係る発明は、「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」ことを発明特定事項として備えるものであるが、「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」ことの内容や測定方法について、本件特許明細書に具体的で一義的に明確な記載がない以上、当業者が出願時の技術常識を考慮しても、本件請求項1,2,6及び7に係る発明を実施することは困難であるから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

無効理由4:
本件請求項1,2及び6に係る発明は、請求人トーヨーポリマー株式会社が本件特許出願前に日本国内において、三菱電機ホーム機器株式会社に対し、三菱電機ホーム機器株式会社が製造する掃除機「ストロングサイクロン」用「ふきローラー(製品名『ROTARY-BRUSH*S2』)」(以下、「公用物件1」という。)を製造販売することで公然実施した発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができない。

無効理由5:
本件請求項7に係る発明は、公用物件1に周知技術を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

無効理由6:
本件請求項1及び2に係る発明は、請求人トーヨーポリマー株式会社が、本件特許出願前に日本国内において、有限会社幸信ゴム工業に対し、吸水ローラー用のロール「ルビーセル(A10-4022-520)」(以下、「公用物件2」という。)を販売することで公然実施した発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができない。

無効理由7:
本件請求項6及び7に係る発明は、公用物件2に周知技術を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

無効理由8:
本件請求項1,2,6及び7に係る発明は、被請求人株式会社伏見製薬所が、本件特許出願前に千葉市に所在する幕張メッセで開催された「セミコン・ジャパン2004」において、展示し、販売の申し出を行うことで公然実施した「テクノポーラスローラー」(以下、「公用物件3」という。)に周知技術を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

<証拠方法>
◎審判請求書とともに提出されたもの
甲第1号証:トーヨーポリマー株式会社中央研究所知財管理室竹本和生作成の2009年12月21日付け「実験報告書」
甲第2号証:三菱電機株式会社のカタログ「三菱掃除機ストロングサイクロン」(2003年9月作成)
甲第3-1号証:トーヨーポリマー株式会社の2003年10月1日付け「出荷指示伝票(指示No.03092409)」(出荷指示先名なし、商社名:泰陽株式会社、品名:ZT490C190G02、指示数量:3,162、実績数量:1024、ユーザー:三菱電機ホーム機器株式会社、納入先:株式会社吉田製作所)
甲第3-2号証:福山通運の平成15年10月10日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:243-3299-9876)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(株)吉田製作所、品名:ZT490C190G02 1,024本)
甲第3-3号証:三菱電機ホーム機器(株)宛てのトーヨーポリマー株式会社作成「検査成績書」2通(品名:ROTARY-BRUSH*S2、品番:ZT490C190G02、出荷日:平成15年10月10日、LOT No.223040902 792本及びLOT No.223180901 232本)
甲第4-1号証:(株)UBE科学分析センター有機材料分析研究室作成の平成21年9月28日付け「分析結果報告書(FT-IR測定)」
甲第4-2号証:(株)UBE科学分析センター高分子材料分析研究室作成の平成21年11月24日付け「分析結果報告書(SEM観察)」
甲第4-3号証:(株)UBE科学分析センター物性評価研究室作成の平成21年9月17日付け「分析結果報告書(密度測定)」
甲第4-4号証:(株)UBE科学分析センター有機材料分析研究室作成の平成21年11月19日付け「分析結果報告書(界面活性剤の定性分析)」
甲第5号証:特開平10-229871号公報
甲第6号証:特開2002-52369号公報
甲第7号証:特開2003-4605号公報
甲第8-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年2月22日付け「出荷指示伝票(指示No.3332)」(出荷指示先名:岡山第2、商社名:白石カルシウム(株)東京、品名:A10-4022-520、指示数量:6本、納入先:(有)幸信ゴム工業)
甲第8-2号証:トーヨーポリマー株式会社の(有)幸信ゴム宛て「出荷案内書」(品名:A10-4022-520 6本、出荷日:2001年2月26日)
甲第8-3号証:トーヨーポリマー株式会社宛て「受領書」(品名:A10-4022-520 6本、出荷日:2001年2月26日)
甲第9号証:弁護士田上洋平作成の平成21年12月30日付け「報告書」
甲第10-1号証:(株)UBE科学分析センター有機材料分析研究室作成の平成21年12月1日付け「分析結果報告書(FT-IR測定)」
甲第10-2号証:(株)UBE科学分析センター高分子材料分析研究室作成の平成21年12月16日付け「分析結果報告書(SEM観察)」
甲第10-3号証:(株)UBE科学分析センター物性評価研究室作成の平成21年12月10日付け「分析結果報告書(密度測定)」
甲第10-4号証:(株)UBE科学分析センター有機材料分析研究室作成の平成21年12月11日付け「分析結果報告書(界面活性剤の定性分析)」
甲第11号証:特開平4-111387号公報
甲第12号証:特開平8-272063号公報
甲第13号証:特開平5-346657号公報
甲第14号証:SEMIジャパン編集「セミコン・ジャパン2004 出展社案内」SEMIジャパン、2004年11月、表紙及び209頁
甲第15号証:トーヨーポリマー株式会社東京支店営業1課堀則行から岡崎良年、伊原敬裕、浜田健志、北浜知宏、竹本和生及び冨尾三七喜に宛てた2004年12月1日18時53分送信の電子メール(件名:セミコン(伏見)情報)及び添付された画像ファイル6個
甲第16号証:特願2004-348452の出願書類及び出願受付情報に関する特許庁長官の平成21年10月2日付け証明書(出証番号:出証特2009-4000081)
甲第17号証:株式会社伏見製薬所のカタログ「テクノポーラス^((R))ローラー」(作成日不明)
甲第18号証:トーヨーポリマー株式会社中央研究所知財管理室竹本和生作成の2009年12月21日付け「実験報告書」
甲第19号証:特公昭36-2034号公報
甲第20号証:特開昭61-78819号公報
甲第21号証:特開平10-226733号公報
甲第22号証:再公表特許公報WO2002/034374
甲第23号証:特開平7-278343号公報
甲第24号証:今堀和友・山川民夫監修「生化学辞典(第3版)」株式会社東京化学同人、第4刷2000年3月1日、955?956頁

◎口頭審理陳述要領書とともに提出されたもの
甲第25号証:トーヨーポリマー株式会社知財管理課課長竹本和生作成の2010年8月24日付け「実験報告書」
甲第26号証:トーヨーポリマー株式会社知財管理課課長竹本和生作成の平成22年8月24日付け「陳述書」
甲第27-1号証:トーヨーポリマー株式会社の2003年9月26日付け「出荷指示伝票(指示No.03092409)」(出荷指示先名なし、商社名:泰陽株式会社、品名:ZT490C190G02、指示数量:4,162、実績数量:1,000、ユーザー:三菱電機ホーム機器株式会社、納入先:株式会社吉田製作所)
甲第27-2号証:福山通運の平成15年10月1日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:246-5295-5320)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場研究開発1課、お届け先:(株)吉田製作所、品名:ZT490C190G02 1,000本)
甲第27-3号証:三菱電機ホーム機器(株)宛てのトーヨーポリマー株式会社作成「検査成績書」3通(品名:ROTARY-BRUSH*S2、品番:ZT490C190G02、出荷日:平成15年10月1日、LOT No.223040902 200本、LOT No.223040901 778本及びLOT No.223220803 22本)
甲第28-1号証:トーヨーポリマー株式会社の2003年10月28日付け「出荷指示伝票(指示No.03092409)」(出荷指示先名なし、商社名:泰陽株式会社、品名:ZT490C190G02、指示数量:638、実績数量:400、ユーザー:三菱電機ホーム機器株式会社、納入先:株式会社吉田製作所)
甲第28-2号証:福山通運の平成15年10月31日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:246-5295-5493)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場研究開発1課、お届け先:(株)吉田製作所、品名:ZT490C190G02 400本)
甲第28-3号証:三菱電機ホーム機器(株)宛てのトーヨーポリマー株式会社作成「検査成績書」(品名:ROTARY-BRUSH*S2、品番:ZT490C190G02、出荷日:平成15年10月31日、LOT No.223250902 400本)
甲第29-1号証:トーヨーポリマー株式会社の2003年11月14日付け「出荷指示伝票(指示No.03100063)」(出荷指示先名なし、商社名:泰陽(株)、品名:ZT490C190G02、指示数量:3,338、実績数量:100、ユーザー:三菱電機ホーム機器、納入先:吉田製作所)
甲第29-2号証:福山通運の平成15年11月18日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:246-5295-5596)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場研究開発1課、お届け先:(株)吉田製作所、品名:ZT490C190G02 100本)
甲第29-3号証:三菱電機ホーム機器(株)宛てのトーヨーポリマー株式会社作成「検査成績書」(品名:ROTARY-BRUSH*S2、品番:ZT490C190G02、出荷日:平成15年11月18日、LOT No.223161002 100本)
甲第30号証:トーヨーポリマー株式会社技術資料「ROTARY-BRUSH*S2色調見本」(作成日:平成15年8月5日)の台紙2通
甲第31-1号証:「仕込み/混練工程管理記録」(2003年9月17日作成)
甲第31-2号証:阪本薬品工業株式会社作成の2003年8月6日付け「試験成績表(SYグリスターML-750)」
甲第32号証:(株)UBE科学分析センター有機材料分析研究室作成の平成22年7月27日付け「分析結果報告書(LC-MS分析、界面活性剤の定性分析)」
甲第33号証:有限会社幸信ゴム工業代表取締役清水育男作成の平成22年8月10日付け「陳述書」
甲第34号証:佐川急便のホームページに掲載された「料金表」(http://www.sagawa-exp.co.jp/search/fare/sagawa_faretable/faretable-9.html)
甲第35-1号証:トーヨーポリマー株式会社「仕込み/混練工程管理記録」(平成13年1月23日作成)
甲第35-2号証:阪本薬品工業株式会社作成の2000年12月1日付け「試験成績表(SYグリスターML-750)」

◎平成22年10月5日付け「上申書」とともに提出されたもの
甲第36号証:三菱電機「サービスハンドブック・掃除機・No.H8L03070(TC-CCV6形/(株)エディオン様向)」三菱電機ホーム機器株式会社、2003年9月、5頁、7頁及び14?15頁
甲第37-1号証:三菱電機ホーム機器「部品表(ROTARY-BRUSH*W*ASSY)」2003年5月14日作成
甲第37-2号証:三菱電機ホーム機器株式会社「部品構成表(ROTARY-BRUSH*W*ASSY)」2003年5月14日作成
甲第38-1号証:トーヨーポリマー株式会社の2003年9月5日付け「出荷指示伝票(指示No.03070122)」(出荷指示先名なし、商社名:泰陽(株)、品名:ZT490C190G01、指示数量1081、実績数量:400、ユーザー及び納入先:三菱電機ホーム機器)
甲第38-2号証:福山通運の平成15年9月9日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:246-5295-5180)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場研究開発1課、お届け先:(株)吉田製作所、品名:ZT490C190G01 400本)
甲第38-3号証:三菱電機ホーム機器(株)宛てのトーヨーポリマー株式会社作成「検査成績書」2通(品名:ROTARY-BRUSH*S2、品番:ZT490C190G01、出荷日:平成15年9月9日、LOT No.223220801 277本及びLOT No.223220802 123本)
甲第39号証:大阪弁護士会会長金子武嗣から三菱電機ホーム機器株式会社特許課に宛てた「三菱電機ホーム機器株式会社に対する弁護士法第23条の2第2項に基づく照会」(整理番号第09150号、平成22年10月1日大阪弁護士会受付)
甲第40号証:有限会社幸信ゴム工業代表取締役清水育男作成の平成22年9月21日付け「陳述書」
甲第41号証:トーヨーポリマー株式会社の平成12年4月17日付け「出荷指示伝票(指示No.2196)」(出荷指示先名:東京支店、商社名:白石カルシウム東京、品名:A10-3012-600、指示数量:4本、納入先:(有)幸信ゴム工業)
甲第42号証:トーヨーポリマー株式会社の平成12年4月27日付け「出荷指示伝票(指示No.2219)」(出荷指示先名:岡山第2、商社名:白石カルシウム東京、品名:A10-5026-700、指示数量:10本、納入先:幸信ゴム工業)
甲第43号証:トーヨーポリマー株式会社の平成12年5月8日付け「出荷指示伝票(指示No.2233)」(出荷指示先名:広瀬様、商社名:白石カルシウム東京、品名:A10-3012-600、指示数量:6本、納入先:(有)幸信ゴム工業)
甲第44号証:トーヨーポリマー株式会社の平成12年5月8日付け「出荷指示伝票(指示No.2232)」(出荷指示先名:岡山第2、商社名:白石カルシウム東京、品名:A10-4018-650S、指示数量:6本、納入先:幸信ゴム工業)
甲第45号証:トーヨーポリマー株式会社の平成12年5月10日付け「出荷指示伝票(指示No.2236)」(出荷指示先名:岡山第2、商社名:白石カルシウム東京、品名:A10-4018-700S、指示数量:2本、納入先:幸信ゴム工業)
甲第46号証:トーヨーポリマー株式会社の平成12年8月24日付け「出荷指示伝票(指示No.2566)」(出荷指示先名:岡山第2、商社名:白石カルシウム東京、品名:A10-3012-600、指示数量:8本、納入先:(有)幸信ゴム工業)
甲第47号証:トーヨーポリマー株式会社の平成12年9月19日付け「出荷指示伝票(指示No.2635)」(出荷指示先名なし、商社名:白石カルシウム東京、品名:A10-2515-650、指示数量:2本、納入先:(有)幸信ゴム工業)
甲第48号証:トーヨーポリマー株式会社の平成12年9月19日付け「出荷指示伝票(指示No.2636)」(出荷指示先:岡山第2、商社名:白石カルシウム東京、品名:A10-3010-650、指示数量:10本、納入先:(有)幸信ゴム工業)
甲第49号証:トーヨーポリマー株式会社の平成12年10月17日付け「出荷指示伝票(指示No.2758)」(出荷指示先:岡山第2広瀬様、商社名:白石カルシウム東京、品名:A10-3012-620、指示数量:8本、納入先:(有)幸信ゴム)
甲第50号証:トーヨーポリマー株式会社の平成12年11月14日付け「出荷指示伝票(指示No.2881)」(出荷指示先:岡山第2、商社名:白石カルシウム東京、品名:A10-3010-L950、指示数量:2本、納入先:(有)幸信ゴム)
甲第51号証:トーヨーポリマー株式会社の平成12年12月11日付け「出荷指示伝票(指示No.2998)」(出荷指示先:岡山第2、商社名:白石カルシウム東京、品名:A10-3012-600、指示数量:7本、納入先:(有)幸信ゴム工業)
甲第52号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年1月16日付け「出荷指示伝票(指示No.3082)」(出荷指示先:岡山第2、商社名:白石カルシウム(株)東京、品名:A10-4010-340、指示数量:6本、納入先:(有)幸信ゴム工業)
甲第53号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年1月30日付け「出荷指示伝票(指示No.3192)」(出荷指示先:岡山第2、商社名:白石カルシウム(株)、品名:A10-4018-300、指示数量:1本、納入先:(有)幸信ゴム)
甲第54号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年2月5日付け「出荷指示伝票(指示No.3200)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム(株)東京、品名:A10-3522-550、指示数量:6本、納入先:(有)幸信ゴム工業)
甲第55号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年2月22日付け「出荷指示伝票(指示No.3332)」(出荷指示先:岡山第2、商社名:白石カルシウム(株)東京、品名:A10-4022-520、指示数量:6本、納入先:(有)幸信ゴム工業)
甲第56号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年2月26日付け「出荷指示伝票(指示No.3359)」(出荷指示先:岡山第2、商社名:白石カルシウム(株)東京、品名:A10-5012-800、指示数量:4本、納入先:(有)幸信ゴム工業)
甲第57号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年3月9日付け「出荷指示伝票(指示No.3412)」(出荷指示先:岡山第2、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:6本、納入先:(有)幸信ゴム工業)
甲第58-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年3月27日付け「出荷指示伝票(指示No.3511)」(出荷指示先:岡山第2、商社名:白石カルシウム(株)、品名:A10-5026-700、指示数量:40本、納入先:幸信ゴム)
甲第58-2号証:佐川急便の2001年4月2日付け「送り状(控)(問い合せNo.134-7675136)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場製造2課、荷受人:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-5026-700 40本)
甲第59-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年4月2日付け「出荷指示伝票(指示No.3546)」(出荷指示先:岡山第2、商社名:白石カルシウム(株)、品名:A10-4010-L1050、指示数量:10本、納入先:(有)幸信ゴム工業)
甲第59-2号証:佐川急便の2001年4月3日付け「送り状(控)(問い合せNo.134-7675140)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場製造1課、荷受人:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-4010-L1050 10本)
甲第60-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年5月8日付け「出荷指示伝票(指示No.3676)」(出荷指示先:岡山第1、商社名:白石カルシウム(株)、品名:A10-4018-L950、指示数量:2本、納入先:(有)幸信ゴム工業)
甲第60-2号証:佐川急便の2001年5月15日付け「送り状(控)(問い合せNo.134-7675151)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場製造1課、荷受人:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-4018-L950 2本)
甲第61-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年5月21日付け「出荷指示伝票(指示No.6732)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A-10-30x12x600、指示数量:6本、納入先:幸信ゴム)
甲第61-2号証:佐川急便の2001年5月23日付け「送り状(控)(問い合せNo.134-7675162)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場製造1課、荷受人:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 6本)
甲第62-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年6月14日付け「出荷指示伝票(指示No.41475)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム東京、品名:A10-3012-600、指示数量:2本、納入先:幸信ゴム)
甲第62-2号証:佐川急便の2001年6月14日付け「送り状(控)(問い合せNo.134-7675173)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場製造1課、荷受人:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 2本)
甲第63-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年7月9日付け「出荷指示伝票(指示No.6925)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:4本、納入先:幸信ゴム)
甲第63-2号証:佐川急便の2001年7月11日付け「送り状(控)(問い合せNo.134-7675184)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場製造1課、荷受人:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600)
甲第64-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年7月12日付け「出荷指示伝票(指示No.6939)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-4522-200、指示数量:1本、納入先:幸信ゴム)
甲第64-2号証:佐川急便の2001年7月13日付け「送り状(控)(問い合せNo.134-7675195)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場製造1課、荷受人:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-4522-200 1本)
甲第65-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年8月9日付け「出荷指示伝票(指示No.7033)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:3本、納入先:幸信ゴム)
甲第65-2号証:佐川急便の2001年8月20日付け「送り状(控)(問い合せNo.134-7675206)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場製造1課、荷受人:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 3本)
甲第66-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年9月5日付け「出荷指示伝票(指示No.7100)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:4本、納入先:幸信ゴム)
甲第66-2号証:佐川急便の2001年9月6日付け「送り状(控)(問い合せNo.134-7675210)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場製造1課、荷受人:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 4本)
甲第67-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年10月17日付け「出荷指示伝票(指示No.7237)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:2本、納入先:幸信ゴム)
甲第67-2号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年10月17日付け「出荷指示伝票(指示No.7238)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3208-1000、指示数量:3本、納入先:幸信ゴム)
甲第67-3号証:佐川急便の2001年10月18日付け「送り状(控)(問い合せNo.134-7675232)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、荷受人:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 2本及びA10-3208-1000 2本)
甲第68-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年10月17日付け「出荷指示伝票(指示No.7239)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3208-1200、指示数量:1本、納入先:幸信ゴム、問い合わせNo.PT-0666)
甲第68-2号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年10月17日付け「出荷指示伝票(指示No.7239)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3208-1200、指示数量:3本、納入先:幸信ゴム、問い合わせNo.PT-0607)
甲第68-3号証:佐川急便の2001年11月8日付け「送り状(控)(問い合せNo.134-7675254)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、荷受人:(有)幸信ゴム工業、品名:PT-0607 3本及びPT-0666 1本)
甲第69-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年11月2日付け「出荷指示伝票(指示No.7318)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:4、納入先:幸信ゴム、問い合わせNo.PT-0665-1)
甲第69-2号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年11月2日付け「出荷指示伝票(指示No.7318)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:1、納入先:幸信ゴム、問い合わせNo.PT-0665-2)
甲第69-3号証:佐川急便の2001年11月5日付け「送り状(控)(問い合せNo.134-7675243)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、荷受人:(有)幸信ゴム工業、品名:PT-0665-1 4本及びPT-0665-2 1本)
甲第70-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年11月19日付け「出荷指示伝票(指示No.7379)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3208-1200、指示数量:4本、納入先:幸信ゴム)
甲第70-2号証:福山通運の平成13年12月25日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:216-9487-4655)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第一製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3208-1200 4本)
甲第71-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年11月27日付け「出荷指示伝票(指示No.7405)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:3本、納入先:幸信ゴム、問い合わせNo.PT-0743)
甲第71-2号証:佐川急便の2001年11月28日付け「送り状(控)(問い合せNo.134-7675265)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、荷受人:(有)幸信ゴム工業、品名:PT-0743 3本)
甲第72-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成13年12月4日付け「出荷指示伝票(指示No.7427)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:5本、納入先:幸信ゴム)
甲第72-2号証:佐川急便の2001年12月5日付け「送り状(控)(問い合せNo.134-7675276)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、荷受人:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 5本)
甲第73-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年1月7日付け「出荷指示伝票(指示No.02010218)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム(株)、品名:A10-3012-600、指示数量:4本、納入先:幸信ゴム工業)
甲第73-2号証:福山通運の平成14年1月9日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:216-9487-4692)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 4本)
甲第74-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年1月11日付け「出荷指示伝票(指示No.02010512)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム(株)、品名:A10-3012-600、指示数量:6本、納入先:幸信ゴム)
甲第74-2号証:福山通運の平成14年1月15日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:216-9487-4714)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 6本)
甲第75-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年1月15日付け「出荷指示伝票(指示No.02010693)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム(株)、品名:A10-4020-600、指示数量:4、納入先:幸信ゴム)
甲第75-2号証:福山通運の平成14年1月16日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:216-9487-4736)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-4020-600 4本)
甲第76-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年1月21日付け「出荷指示伝票(指示No.7588)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3208-1000、指示数量:3本、納入先:幸信ゴム)
甲第76-2号証:福山通運の平成14年1月23日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:216-9487-4751)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3208-1000 3本)
甲第77-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年2月5日付け「出荷指示伝票(指示No.7651)」(出荷指示先:広瀬様1/2、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:5本、納入先:幸信ゴム)
甲第77-2号証:福山通運の平成14年2月6日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8754)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 5本)
甲第78-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年3月15日付け「出荷指示伝票(指示No.7783)」(出荷指示先:広瀬様1/2、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3208-1000、指示数量:4本、納入先:幸信ゴム)
甲第78-2号証:福山通運の平成14年3月18日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8161)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3208-1000 4本)
甲第79-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年3月28日付け「出荷指示伝票(指示No.7824)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:5本、納入先:幸信ゴム)
甲第79-2号証:福山通運の平成14年4月1日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8172)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 5本)
甲第80-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年4月4日付け「出荷指示伝票(指示No.7843)」(出荷指示先:広瀬様1/2、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:10本、納入先:幸信ゴム)
甲第80-2号証:福山通運の平成14年4月8日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8183)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 10本)
甲第81-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年4月15日付け「出荷指示伝票(指示No.02041097)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム(株)、品名:A10-3208-1000、指示数量:1本、納入先:(有)幸信ゴム)
甲第81-2号証:福山通運の平成14年5月28日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8194)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3208-1000 1本)
甲第82-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年5月30日付け「出荷指示伝票(指示No.02052034)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム(株)、品名:A10-3208-1000、指示数量:4本、納入先:幸信ゴム工業)
甲第82-2号証:福山通運の平成14年6月3日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8205)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3208-1000 4本)
甲第83-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年6月11日付け「出荷指示伝票(指示No.02060957)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム(株)、品名:A10-3012-600、指示数量:2本、納入先:幸信ゴム)
甲第83-2号証:福山通運の平成14年6月13日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8216)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 2本)
甲第84-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年6月14日付け「出荷指示伝票(指示No.8111)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3208-1000、指示数量:5本、実績数量:4、納入先:幸信ゴム、問い合わせNo.PT-1329)
甲第84-2号証:福山通運の平成14年6月17日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8220)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3208-1000(PT-1329)4本)
甲第85-1号証:トーヨーポリマー株式会社の2002年6月17日付け「出荷指示伝票(指示No.8111)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3208-1000、指示数量:1本、納入先:幸信ゴム、問い合わせNo.PT-1329)
甲第85-2号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年6月17日付け「出荷指示伝票(指示No.8118)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3208-1000、指示数量:2本、納入先:幸信ゴム、問い合わせNo.PT-1342)
甲第85-3号証:福山通運の平成14年7月10日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8242)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3208-1000(PT-1329)1本及びA10-3208-1000(PT-1342)2本)
甲第86-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年7月5日付け「出荷指示伝票(指示No.8171)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:7本、納入先:幸信ゴム)
甲第86-2号証:福山通運の平成14年7月9日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8231)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 7本)
甲第87-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年7月31日付け「出荷指示伝票(指示No.8231)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:5本、納入先:幸信ゴム)
甲第87-2号証:福山通運の平成14年8月1日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8253)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 5本)
甲第88-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年9月12日付け「出荷指示伝票(指示No.8353)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:6本、納入先:幸信ゴム)
甲第88-2号証:福山通運の平成14年9月13日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8264)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 6本)
甲第89-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成14年11月15日付け「出荷指示伝票(指示No.8562)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:8本、納入先:幸信ゴム、問い合わせNo.PT-1709)
甲第89-2号証:福山通運の平成14年11月19日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8275)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600(PT-1709)7本)
甲第90-1号証:トーヨーポリマー株式会社の2002年11月19日付け「出荷指示伝票(指示No.8562)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:1本、納入先:幸信ゴム)
甲第90-2号証:福山通運の平成14年11月26日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8290)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 1本)
甲第91-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成15年1月9日付け「出荷指示伝票(指示No.8747)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:8本、納入先:幸信ゴム)
甲第91-2号証:福山通運の平成15年1月10日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8301)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 8本)
甲第92-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成15年2月13日付け「出荷指示伝票(指示No.不明)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム株式会社、品名:A10-3012-600、指示数量:6本、納入先:幸信ゴム)
甲第92-2号証:福山通運の平成15年2月14日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8312)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 6本)
甲第93-1号証:トーヨーポリマー株式会社の平成15年2月20日付け「出荷指示伝票(指示No.03021993)」(出荷指示先なし、商社名:白石カルシウム(株)、品名:A10-3012-600、指示数量:10本、納入先:(有)幸信ゴム工業)
甲第93-2号証:福山通運の平成15年2月21日付け「送り状お客様控(お問合せ番号:223-5089-8323)」(荷送人:トーヨーポリマー(株)岡山工場第1製造課、お届け先:(有)幸信ゴム工業、品名:A10-3012-600 10本)
甲第94号証:トーヨーポリマー株式会社東京営業部部長伊原敬裕作成の平成22年9月30日付け「陳述書」

◎平成22年10月12日付け「上申書」とともに提出されたもの
甲第95号証:大阪弁護士会会長宛の平成22年10月7日付け「弁護士法第23条の2第2項に基づく照会に対する回答(整理番号第09150号)」(回答者:三菱電機ホーム機器株式会社技管課市之瀬時男)

◎平成22年10月19日付け「上申書」とともに提出されたもの
甲第96号証:(株)UBE科学分析センター有機材料分析研究室宮内康次<29687u@ube-ind.co.jp>からトーヨーポリマー(株)竹本和生に宛てた2010年10月12日19時4分送信の電子メール(表題:Re: MSによる分析トライのお願い)
甲第97号証:株式会社日東分析センター作成の2010年10月15日付け「分析結果報告書(界面活性剤の定性分析)」

◎平成22年12月1日付け「上申書」とともに提出されたもの
甲第98号証:(株)UBE科学分析センター有機材料分析研究室宮内康次<29687u@ube-ind.co.jp>からトーヨーポリマーの竹本和生に宛てた2010年11月9日17時26分送信の電子メール(表題:界面活性剤の分析について)

なお、被請求人は第1回口頭審理において、甲第1号証?甲第35-2号証の成立を認めている。

第4.被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、そのため、以下の証拠方法を提出しつつ請求人の主張する無効理由に反論している。

<証拠方法>
◎答弁書とともに提出されたもの
乙第1号証:山田俊雄ほか編集「新潮現代国語辞典」株式会社新潮社、平成4年4月30日第1版第6刷、1170?1171頁及び1176?1177頁
乙第2号証:株式会社伏見製薬所製造技術室室長伊藤喜章作成の平成22年4月22日付け「実験証明書」
乙第3号証:株式会社伏見製薬所製造技術室室長伊藤喜章作成の平成22年4月22日付け「UBE分析結果報告書に関する疑問」と題する文書
乙第4号証:株式会社伏見製薬所のカタログ「テクノポーラス^((R))ローラー」(作成日不明)及びその一部の拡大し加工した図面
乙第5号証:特開2006-104436号公報

◎平成22年10月5日付け上申書とともに提出
乙第6号証:株式会社伏見製薬所製造技術室室長伊藤喜章作成の平成22年10月4日付け「骨格径測定方法の比較報告書」
乙第7号証:株式会社伏見製薬所製造技術室室長伊藤喜章作成の平成22年10月4日付け「LC-MS分析に関する実験証明書」

◎平成22年11月2日付け「上申書」とともに提出
乙第8号証:株式会社日立ハイテクノロジーズのホームページ「何ができるのLC/MS」(http://www.hitachi-hitec.com/science/ms/nf_basic.html)
乙第9号証:志田保夫ほか「これならわかるマススペクトロメトリー」(株)化学同人、2004年7月1日第1版第6刷発行、8頁及び76?77頁

また、被請求人は口頭審理陳述要領書とともに次の参考資料を提出している。
・株式会社伏見製薬所製造技術室室長伊藤喜章作成の平成22年8月30日付け「実験証明書」

なお、請求人は第1回口頭審理において、乙第1号証?乙第5号証の成立を認めている。

第5.無効理由1ないし3について
(1)無効理由1は、上記したとおり、「本件請求項1,2,6及び7に係る発明は、『骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである』ことが発明特定事項とされているが、その内容は、特許請求の範囲の記載からは不明であり、また、発明の詳細な説明の記載を参酌しても明らかではないから、その発明の外延を当業者が把握することのできない、明確性を欠く記載であるから、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」というものであり、また無効理由2は、「本件請求項1,2,6及び7に係る発明の『骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである』という構成は、発明の詳細な説明に一切記載がないから、本件請求項1,2,6及び7に係る発明が、発明の詳細な説明に記載されたものであるとすることができないから、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」というものであり、さらに無効理由3は、「本件請求項1,2,6及び7に係る発明は、『骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである』ことを発明特定事項として備えるものであるが、『骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである』ことの内容や測定方法について、本件特許明細書に具体的で一義的に明確な記載がない以上、当業者が出願時の技術常識を考慮しても、本件請求項1,2,6及び7に係る発明を実施することは困難であるから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」というものであるが、これらの無効理由はすべて請求項1における「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」との発明特定事項についての問題である。

(2)本件特許発明1における「その骨格の平均太さが20μm以下で、骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである3次元網目状の気孔構造を有し」との発明特定事項に関連し、本件特許明細書及び図面(以下、「本件特許明細書」という。)には次の記載がある。
a.「本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、3次元網目状の気孔構造を有し、その骨格の太さが細く均一であり、見掛け密度が所定の範囲内であって、かつHLB値が高い界面活性剤を含有する連続気孔弾性体が、付着水を瞬時に吸水することができることを見出した。」(段落0010)
b.「本発明は、先ず、ポリウレタンからなり、その骨格の平均太さが20μm以下で、骨格の80%以上が2?20μmの範囲の太さである3次元網目状の気孔構造を有し、見掛け密度が0.2?0.4g/cm^(3)であり、かつHLB値が8以上の界面活性剤を含有することを特徴とする連続気孔弾性体(請求項1)を提供する。
3次元網目状の気孔構造とは、図1に示されるような構造であって、3次元方向に連結する網がポリウレタンの骨格からなり、その骨格間に形成される気孔が互いに連続しており、網目を塞ぐ膜がみられない構造を言う。本発明の連続気孔弾性体は、その骨格の平均太さが20μm以下であることを特徴とする。
さらに、本発明の連続気孔弾性体は、その網目構造を構成する骨格の太さが、ほぼ均等であることを特徴とする。具体的には、80%以上の骨格が2?20μmの範囲の太さを有する。好ましくは、80%以上の骨格が6?15μmの範囲の太さを有する。このように、骨格の太さがほぼ均等であることにより、水を吸収した後の連続気孔弾性体を外力で圧縮する際に、効率よく水を吐き出す性質がより優れたものとなり、吸水ローラーとしての用途に好適に用いることができる。」(段落0012?0014)
c.「本発明は、さらにポリウレタン、溶剤、及び水溶性でかつ溶剤と分子化合物を形成する気孔生成剤を、主原料として、含有する組成物を混練する工程、当該組成物を脱泡、成形する工程、得られた成形物を凝固する工程、及び、凝固された成形物から前記気孔生成剤を水抽出して除去しその後乾燥する工程を有することを特徴とする連続気孔弾性体の製造方法(請求項3)を提供する。この製造方法により、ポリウレタンからなり、骨格の平均太さが20μm以下の3次元網目状の気孔構造を有し、見掛け密度が0.2?0.4g/cm^(3)である連続気孔弾性体を製造することができる。
本発明者は、ポリウレタン、溶剤及び水溶性でありかつ溶剤と分子化合物を形成する気孔生成剤を、主原料として含有する組成物を混練すると、粘度に類似した可塑性と保形性をもつ成形に適した混練組成物が得られることを見出した。……
又粘土状の可塑性と保形性を有する混練組成物を用いることにより、その太さが細くかつ均一で3次元網目状に広がった骨格を有する成形体が得られやすい。……
気孔生成剤の添加量は、固形分30重量%の溶液型ポリウレタン100重量部に対して20?100重量部が好ましい。……
なお、この添加量により、最終的に得られる連続気孔弾性体の見掛け密度と、3次元網目状気孔の網を構成する骨格の平均太さを調節することができる。すなわち、添加量が少ないと、見掛け密度と骨格の平均太さは増加し、添加量が多いとこの逆になる。
前記本発明の製造方法により得られる連続気孔弾性体、すなわち骨格の平均太さが20μm以下の3次元網目状の気孔構造を有し、見掛け密度が0.2?0.4g/cm^(3)である連続気孔弾性体が、HLB値が8以上の界面活性剤を含有することにより、前記の本発明の連続気孔弾性体となり、水を瞬時に連続気孔弾性体内に吸収するとの優れた効果を発揮する。」(段落0021?0030)
d.「ポリウレタン、溶剤及び気孔生成剤等を含有する組成物を混練した後、混練組成物を脱泡、成形する。……
成形の後、当該成形物を取り出して凝固する。凝固の方法としては、……湿式法等が例示される。湿式法の中でも、水中に成形物を漬けて脱溶剤させて凝固する水凝固法は、保形性がよく、又後工程の水抽出工程への移行が容易であり、均一なスポンジ構造が得られやすいので好ましい。」(段落0033?0034)
e.「本発明の連続気孔弾性体の製造方法によれば、ポリウレタンからなり、骨格の平均太さが20μm以下で、骨格の80%以上が2?20μmの範囲の太さである3次元網目状の気孔構造を有し、見掛け密度が0.2?0.4g/cm^(3)である連続気孔弾性体であって、所望の形状を有するものを、工程中に高温に加熱することなく、酸やアルカリなどの薬品を使用することなく、高価な多孔材料を用いた成形金型を準備する必要がなく、製造することができる。」(段落0042)
f.「先ず、各実施例及び比較例で得られた連続気孔弾性体の評価方法を示す。
評価方法
……
[連続気孔弾性体の多孔状態及び骨格の平均太さ]
前記の細断後の断面の外観を、目視及び走査型電子顕微鏡写真で観察して多孔状態を評価した。又、この走査型電子顕微鏡にみられる3次元網目構造の骨格のうち、棒状に伸びた部分10箇所の太さを測定し、その平均値を3次元網目の骨格の平均太さとした。」(段落0059?0062)
g.「実施例1
下記のポリウレタン樹脂、溶剤、気孔生成剤を原料として使用した。
レザミンCUS-1500
(大日精化工業(株)製ポリカーボネート系ポリウレタン、固形分30%) 100重量部
ジメチルホルムアミド 50重量部
無水塩化カルシウム 50重量部
これらを、ニーダーの容器に投入し、回転数15rpmで混練した。混合開始と同時に発熱するので、水循環ジャケット付き容器で冷却しながら行なった。これを、外径46mm、内径20mmのチューブ成形用口金を接続したスクリュー径40mm(40φ)のベント式押出機から押出し、凝固させ、洗濯機にて水洗、箱型乾燥機にて乾燥を行ない、切断し、外径42mm、内径19mm、長さ450mmの筒状連続気孔弾性体を得た。このようにして得られた連続気孔弾性体の評価結果を表1に示した。また、この走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。
比較例1
無水塩化カルシウムの代わりに、ポリビニルアルコール50部を使用した以外は実施例1と同様にして、組成物を混練した後押出し以降の各工程を行なって、連続気孔弾性体を得た。このようにして得られた連続気孔弾性体の評価結果を表1に示した。また、この走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。
比較例2
無水塩化カルシウムの代わりに、粒径が100μm未満の塩化ナトリウム350部を使用した以外は実施例1と同様にして、組成物を混練した後、押出し以降の各工程を行なって連続気孔弾性体を得た。このようにして得られた連続気孔弾性体の評価結果を表1に示した。また、この走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。
【表1】

表1及び図1に示す結果より明らかなように、実施例1(本発明)の連続気孔弾性体は、押出性、保形性に優れたものである。さらに網目を塞ぐ膜が見られない3次元網目状の気孔構造をしており、網目構造を構成する骨格はほぼ均等な太さをしている。一方、比較例1、比較例2で得られた成形物は、図2,3に示されるように、気孔構造を有するものの、網目を塞ぐ膜が見られ、骨格の太さも不均一であった。
実施例2
実施例1の組成物原料に、さらにノニオンOT-221(日本油脂(株)製、ポリエチレングリコールソルビタンモノオレエート HLB値15.0)の5部を追加して、混練以降の各工程を同様に行ない評価した。このようにして得られた連続気孔弾性体の評価結果を表2に示した。また、この筒状成形品の中心孔にシャフトを装着しローラーを形成した。その後、ローラー表面の平滑度、真円度を高めるために研磨加工を行ない、上述の方法で残留水分量を測定した。結果を表2に示した。
実施例3
ノニオンOT-221が1重量%含まれる40℃の水溶液に、実施例1で得られた連続気孔弾性体を浸漬し、10分間放置した後、取り出して遠心脱水を行なった。浸漬前の連続気孔弾性体の重量は111gであったが、遠心脱水後の重量は189gであった。これを100℃の箱型熱風乾燥機で乾燥した後、実施例2と同様の方法で研磨加工を行ない、残留水分量等を測定した。結果を表2に示した。
……
【表2】

」(段落0066?0075)
h.「【図1】

【図2】

【図3】

」(図面の図1?図3)

(3)無効理由1について
上記したような本件特許明細書の記載からみて、「3次元網目状の気孔構造」とは、「図1に示されるような構造であって、3次元方向に連結する網がポリウレタンの骨格からなり、その骨格間に形成される気孔が互いに連続しており、網目を塞ぐ膜がみられない構造」(摘示事項b)を言うものであり、「その骨格の平均太さが20μm以下で、骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」とは、「その骨格の太さが細く均一」(摘示事項a?d)であることを意味するものであって、「骨格の太さが細く」の程度が「骨格の平均太さが20μm以下」、また「骨格の太さが均一」の程度が「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さ」ということになる。
ところで、「骨格の太さが細く均一」との趣旨にかんがみれば、「骨格の平均太さが20μm以下」とは、3次元連続気孔弾性体を構成するすべての骨格の太さの平均値が20μm以下であり、「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さ」とは、3次元連続気孔弾性体を構成するすべての骨格のうち80%以上の骨格(本数)が6?15μmの範囲の太さであることを意味するものと認められる。
なお、本件特許発明1における「その骨格の平均太さが20μm以下で、骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである3次元網目状の気孔構造」を、上記のように解することについては請求項1の記載にしたがって当業者が容易に理解できることであり、また、このように解することが請求項1の記載から自然であるといえる。

そうすると、本件特許発明1における「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」との発明特定事項について特に明確でないとする点は見当たらず、請求項1は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているものである。
また、請求項2、6及び7に関する無効理由1についての請求人の主張は、結局のところ請求項1における上記発明特定事項の明確性を問題にするものであるところ、上記したとおり、請求項1に無効理由1に関する不備はないのであるから、請求項2、6及び7についても同様に特許法36条第6項第2号に規定する要件を満たしているものである。

なお、請求人は、「本件発明1は『骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである』(構成要件C)ことを発明特定事項とする。 しかし、特許請求の範囲の記載からはどのような連続気孔弾性体であれば構成要件Cを充たすのかは不明である。 すなわち、『骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである』とは6?15μmの範囲の太さの骨格が連続気孔弾性体の体積あたり80%以上存することを指すとも解釈でき、また、6?15μmの範囲の太さの骨格の長さが連続気孔弾性体の全骨格の長さの総和の80%以上であることを指すとも解釈できる。さらには、単に骨格の特定部分の太さを測定した測定数のうち、80%以上の部分で太さが6?15μmの範囲の値であることを指すとも解釈できる(もっとも、その骨格の特定部分がどこであるかは特許請求の範囲の記載からは分からない)。 このように、本件発明1の『骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである』(構成要件C)との記載はいかような意味にも解釈が可能であり一義的にその内容が明らかではない。」(審判請求書5頁18行?6頁7行)と主張するが、3次元網目状の気孔構造の骨格の太さについて評価する際に、「6?15μmの範囲の太さの骨格が連続気孔弾性体の体積あたり80%以上存する」とか、「6?15μmの範囲の太さの骨格の長さが連続気孔弾性体の全骨格の長さの総和の80%以上である」などと、骨格の体積や長さについての存在割合として解することは、特にそのように規定されていないかぎり自然な解釈ということはできない。
ただし、「単に骨格の特定部分の太さを測定した測定数のうち、80%以上の部分で太さが6?15μmの範囲の値である」と解釈することは、製造された連続気孔弾性体のすべての骨格の太さを測定することは現実的ではないため、実際にはこのような評価方法が採用されることになるのは当然の帰結である。本件特許明細書においても「走査型電子顕微鏡にみられる3次元網目構造の骨格のうち、棒状に伸びた部分10箇所の太さを測定し、その平均値を3次元網目の骨格の平均太さとした」(摘示事項f)との記載も、このような考え方に沿ったものであるといえる。(ただし、たった「10箇所」の測定によって平均値を出すことの適切性については疑問がないわけではなく、このことは、被請求人自身、乙第2号証の「実験証明書」では80箇所の測定から平均値を求めている事実からも窺えるが、この点は措く。)そうすると、請求人の「骨格太さ」に関する上記解釈は、現実的な「骨格太さ」に関する要件の評価方法として妥当なものであり、問題とすべきものということはできない。
また、請求人の提出する甲第1号証及び甲第25号証の各実験報告書においても、本件特許明細書の図面1の走査型電子顕微鏡写真において「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」との発明特定事項を満足するか否かを確認するために、骨格の複数箇所を測定し、その太さが6?15μmの範囲にあるものの割合を計算する作業を行っており、この割合が80%以上であることが「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」ことを意味することは、結局請求人も理解しているものと認められる。
なお、このことは、両当事者間の別件の無効審判事件(無効2007-800200)において、請求人がこの「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」との事項について何ら明確性を問題にすることなく、公知刊行物に記載の発明との対比を行っていた事実からも首肯しえることである。

(4)無効理由2について
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記したとおりの記載(摘示事項a?g参照)がある。
ここで、摘示事項gにおける実施例の記載をみると、「骨格の平均太さ」については測定しており、本件特許発明1で特定する「骨格の平均太さが20μm以下」の事項を満足することが示されているが、「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さ」であるとの事項については、「実施例1(本発明)の連続気孔弾性体は、押出性、保形性に優れたものである。さらに網目を塞ぐ膜が見られない3次元網目状の気孔構造をしており、網目構造を構成する骨格はほぼ均等な太さをしている。」(段落0071)並びに「均一3次元網目状」(表1及び表2の実施例1?3の「多孔状態」の欄)及び「7.5(均一)」(表1の実施例1の「骨格の平均太さ μm」の欄)と「均等な太さ」とか「均一」との評価は記載されてはいるが、実際にどのような数値であるかについては具体的な記載はなく、したがって、実施例1?3でさえ本件特許発明1における「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」との発明特定事項を満足するものであることを、当業者が客観的に理解できるものではない。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例以外の記載をみても、摘示事項b及びeに、「骨格の80%以上が2?20μmの範囲の太さである」ことが記載され、摘示事項bに「本発明の連続気孔弾性体は、その網目構造を構成する骨格の太さが、ほぼ均等であることを特徴とする。具体的には、80%以上の骨格が2?20μmの範囲の太さを有する。好ましくは、80%以上の骨格が6?15μmの範囲の太さを有する。」と記載されているのみで、これ以外に「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」との発明特定事項に関する記載はない。そして、これらの記載は、特許請求の範囲の記載をそのまま引き写しているにすぎないものであるから、これらの記載をもって、「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」との発明特定事項が発明の詳細な説明に記載されたものということはできない。

そうすると、本件特許発明1における「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」との発明特定事項については、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえず、請求項1に係る発明は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
また、請求項2、6及び7に関する無効理由2についての請求人の主張は、結局のところ請求項1における上記記載を問題にするものであるところ、請求項2、6及び7に係る発明についても請求項1に係る発明と同様に特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものである。

(5)無効理由3について
本件特許発明の連続気孔弾性体は、「その骨格の平均太さが20μm以下で、骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである3次元網目状の気孔構造」を有するものでなければならないことは自明である。
ここで、「骨格の平均太さ」については発明の詳細な説明に「この走査型電子顕微鏡にみられる3次元網目構造の骨格のうち、棒状に伸びた部分10箇所の太さを測定し、その平均値を3次元網目の骨格の平均太さとした。」(摘示事項f)と記載されているが、骨格太さの均一性についての評価方法については発明の詳細な説明に何ら記載されていない。
先に述べたように「骨格の平均太さが20μm以下」とは、3次元連続気孔弾性体を構成するすべての骨格の太さの平均値が20μm以下であるから、「骨格の平均太さ」について、「走査型電子顕微鏡にみられる3次元網目構造の骨格のうち、棒状に伸びた部分10箇所の太さを測定し、その平均値を3次元網目の骨格の平均太さとした」(摘示事項f)という測定方法も、妥当か否かは別として、簡易な評価方法として受け入れられる余地はあるとしても、これを「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さ」の評価方法として考えるときには、どのような測定を行えばよいのか明確にされているとは言えない。
すなわち、「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」か否かを確認するには、すべての骨格の太さを決定する必要があるが、各骨格中の太さをどのようにして測定するのか(例えば、各骨格の測定する位置についての選定基準や測定する骨格を選定する必要があるのならその選定方法など)については本件特許明細書には何ら記載がなく、不明と言わざるを得ない。特に、骨格の均一性の観点からすれば、「6?15μmの範囲」にあるのは“平均太さ”ではなく、実測値でなければならず(太さが均一でなくても、平均値は一定の範囲になりうるから、平均値は均一性の指標とはならない。)、したがって、各骨格のどのような箇所の太さを測定するかは箇所の選択はこの発明特定事項の充足性の判断には極めて重要となる。それにもかかわらず、発明の詳細な説明には、この点について何ら触れるところはなく、また、当業者において自明の事項ということもできない。
そうすると、この発明特定事項を充足するか否かの判断をすることができないから、当業者は本件特許発明1を発明の詳細な説明の記載に基づいて実施することができないものである。

ところで、被請求人は、次の主張を行っている。
「本件特許の明細書の段落0062には『連続気孔弾性体の多孔状態及び骨格の平均太さ』の測定方法が記載されており、具体的には『前記の裁断後の断面の外観を、目視および走査型電子顕微鏡写真で観察して多孔状態を評価した。又、この走査型電子顕微鏡写真にみられる3次元網目構造の骨格のうち、棒状に伸びた部分10箇所の太さを測定し、その平均値を3次元網目の骨格の平均太さとした。』と記載されている。 すなわち、本発明の要素である平均太さを求めるためには、10本の棒状に伸びた骨格についてその太さが測定されるのであり、その測定値に基づいて、平均太さが求められるのである。従って、同じく本発明の要素であり、しかも、同じく骨格の太さに関する要素である『骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである』も、10本の棒状に伸びた骨格についての太さの測定値に基づくことは、当業者に自明である。実際、請求人も、新規性進歩性に関する主張において、この方法にて測定している。 すなわち、『骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである』との発明の構成要素の判断において、 測定対象の骨格とは、棒状に伸びた部分を有するものであること、 その中で任意に選んだ10本の骨格の棒状に伸びた部分の太さを測定し、その8本(80%)以上が、6?15μmの範囲の太さであるか否かにより、この発明の構成要素の判断ができることも、当業者に明らかな事項である。」(審判事件答弁書5頁7?25行)
しかし、問題となるのは、10本の骨格の選択及び各骨格における測定位置が明確ではないということである。「骨格の平均太さ」については平均値であるが、被請求人の主張によっても骨格太さの均一性については、平均値ではなく、測定値そのものを使用している。そして、測定数が少ないほどどこを測定するかは重要な意味を持ち、それゆえ測定箇所の選択方法は客観的に理解できるように決めておく必要がある。そうすると、先に述べたとおり、骨格のどの位置を測定するかは、この要件を評価するにあたり、大きな影響を与えるというべきである。
また、そもそも、たった10箇所の骨格太さの測定値から、「骨格太さの均一性」を示すことができるとすることには大きな疑問がある。先にも述べたとおり、被請求人が提出する「実験証明書」(乙第2号証)においては80箇所もの骨格太さの測定を行っているが、このことは、被請求人自身、10箇所の骨格太さの測定から「骨格太さの均質性」を示すことには無理があると認識していることを示すものといえる。
これらのことからも、段落0062(摘示事項f)の「棒状に伸びた部分10箇所の太さを測定し、その平均値を3次元網目の骨格の平均太さとした。」との記載は、その記載どおり「3次元網目の骨格の平均太さ」を評価する手法にすぎず、「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さ」にあることを、この記載にしたがって、「棒状に伸びた部分10箇所の太さを測定」することにより評価することが本件特許明細書に示されているということはできない。
なお、被請求人は「『棒状に伸びた』とは、『(細長い木、竹、金属、てんびん棒、指揮棒等のように)まっすぐに、そのまま伸びた形』を指すものであり、この意味は明確である。……まっすぐに、そのまま伸びた形とは、その断面の大きさ(すなわち太さ)の長さ方向での変化が小さい形を意味するから、棒状の太さとは、ほぼ均一の太さを有する部分の太さであることも明らかであり、その太さの測定値も、発明の範囲を不明確にするほどのバラツキはない。」(審判事件答弁書6頁13?25行)と主張しているが、図1の走査型電子顕微鏡写真を見る限りにおいて、被請求人が主張するような意味の「棒状に伸びた骨格」すなわち「断面の大きさ(すなわち太さ)の長さ方向での変化が小さい」骨格を明確に特定することはできない。
さらに、被請求人は「本特許の明細書(段落【0062】等)では、棒状に伸びた部分のどの位置の太さを測定するべきか明示していない。」(平成22年10月5日付け上申書3頁16?17行)と被請求人自身、本件特許明細書に骨格の測定位置についての記載がないことを認めているが、一方で、被請求人は「測定者は、偏った意図を持たずに任意(ランダム)に測定位置を選定するべきである。測定位置を任意に選定した場合、各骨格中の平均的太さの位置より、太い位置が選定される場合及び細位置が選定される場合がともにあり得るが、段落【0062】の記載に基づき10箇所以上を選定すれば、それぞれの選定数は、ほぼ同等となることが自然である。」(同上申書3頁17?22行)とも主張している。この点についての考え方自体はそのとおりであると言えるとしても、例えば、走査型電子顕微鏡写真を撮影するための試料を作成する際の切断面の一定面積内にある全ての骨格の太さを測定するなど、測定箇所の選択に測定者の意思が入らない手法を採用するのであれば格別、そうでなければ「偏った意図を持たずに任意(ランダム)に測定位置を選定」したか否かは客観的に判断できるものではなく、したがって、「甲第25号証においては、24箇所の全てについて、各骨格中の平均的太さの位置より、細い位置が選定されており全く不自然である。ましてや、任意で選択して、24箇所中14箇所が最も細い部分となることはあり得ない。従って、請求人の測定位置の選定は全く不自然、不適切であり、より細い位置を選定しようとの偏った意図に基づいて行われたと考えざるを得ない。」(同上申書3頁23?27行)というのは直ちには受け入れることができないものである。そもそも「各骨格中の平均的太さ」を基準とする考え方は本件特許明細書に記載がないし(この点については被請求人も平成22年11月2日付け上申書3頁6?10行において認めている。)、被請求人の主張は、結局のところ、図1の連続気孔弾性体は「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さ」の要件を満たしているとの結論を前提にした考え方でしかないと言わざるを得ない。

本件無効審判事件において、請求人は実験報告書(甲第1号証及び甲第25号証)を提出し、本件特許明細書の図1の走査型電子顕微鏡写真における連続気孔弾性体の骨格の太さについて測定しているが、被請求人は実験証明書(乙第2号証)及び「骨格径測定方法の比較報告書」(乙第6号証)を提出し、請求人の同測定について争っている。
しかし、このような骨格の太さの測定について、その同じ走査型電子顕微鏡写真においても、測定する骨格の選択及び各骨格の測定箇所の選択に両当事者の見解の一致がみられないこと自体、本件特許明細書の記載が不十分であることに起因するものと言え、このことからも本件特許明細書の発明の詳細な説明は当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえないことを裏付ける証拠といえる。

そうすると、本件特許発明1における「骨格の80%以上が6?15μmの範囲の太さである」との発明特定事項については、この事項を充足するか否かの評価方法が明細書に記載されておらず、また、当業者において自明であるということもできないから、発明の詳細な説明に当業者が本件特許発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、したがって、請求項1に係る発明に関する明細書の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものである。
また、請求項2、6及び7に関する無効理由2についての請求人の主張は、結局のところ請求項1における上記記載を問題にするものであるところ、請求項2、6及び7に係る発明についても請求項1に係る発明と同様に特許法36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものである。

第6.無効理由4及び5について
(1)無効理由4は、上記したとおり「本件請求項1,2及び6に係る発明は、請求人トーヨーポリマー株式会社が本件特許出願前に日本国内において、三菱電機ホーム機器株式会社に対し、三菱電機ホーム機器株式会社が製造する掃除機『ストロングサイクロン』用『ふきローラー(製品名『ROTARY-BRUSH*S2』)』(公用物件1)を製造販売することで公然実施した発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができない。」というものである。
請求人は、公然実施された発明として「三菱電機ホーム機器株式会社が製造する掃除機『ストロングサイクロン』用『ふきローラー(製品名『ROTARY-BRUSH*S2』)』」を示し、そして、公然実施に該当する事実として、当該「ふきローラー」を「請求人が三菱電機ホーム機器株式会社に対し、商社である泰陽株式会社(なお、請求人は審判請求書9頁20行において『秦陽株式会社』と記載しているが、甲第3-1号証、甲第27-1号証、甲第28-1号証、甲第29-1号証及び甲第38-1号証の記載からみて『泰陽株式会社』の誤記と認める。)を経由して製造販売した」ことを主張している。

(2)公然実施について
甲第2号証は2003年9月に作成された「三菱掃除機ストロングサイクロン」のカタログであるが、同号証によれば、三菱電機ホーム機器株式会社は2003年9月の時点で「ふきローラー」が組み込まれた「床すっきりワイパー」を搭載した「掃除機ストロングサイクロンTC-CCV6形」を製造していたことが読み取れる(同号証5?6頁)。なお、この「ふきローラー」は、交換用別売部品の型番としては「AM-20形」と記載されているが(同号証6頁)、「ROTARY-BRUSH*S2」なる製品名は同号証には記載されていない。
しかし、三菱電機ホーム機器株式会社の説明によれば、「AM-20形」は「ROTARY-BRUSH*2」と同じものであり(甲第39号証及び甲第95号証)、このことは、甲第36号証、甲第37-1号証及び甲第37-2号証の記載からも見て取れる。

ところで、品名ROTARY-BRUSH*S2が、請求人トーヨーポリマー株式会社から商社である泰陽株式会社を通じて三菱電機ホーム機器株式会社へ以下のとおり出荷されたことは証拠に照らし明らかである(ただし、納入先は株式会社吉田製作所)。
●2003年9月9日に、品番ZT490C190G01を400本(LOT No.2232220801及び223220802)(甲第38-1号証ないし甲第38-3号証)
●2003年10月1日に、品番ZT490C190G02を1000本(LOT No.223040902、223040901及び223220803)(甲第27-1号証ないし甲第27-3号証)
●2003年10月10日に品番ZT490C190G02を1024本(LOT No.223040902及び223180901)(甲第3-1号証ないし甲第3-3号証)
●2003年10月31日に品番ZT490C190G02を400本(LOT No.223250902)(甲第28-1号証ないし甲第28-3号証)
●2003年11月18日に品番ZT490C190G02を100本(LOT No.223161002)(甲第29-1号証ないし甲第29-3号証)
なお、甲第37-1号証及び甲第37-2号証によれば、2003年9月19日に品名ROTARY-BRUSH*S2の部品番号をZT490C190G01からZT490C190G02に変更したことが明らかであり、このことは、上記出荷日と品番に対応するものである。すなわち、2003年9月9日出荷分は品番がZT490C190G01であるが、同年10月1日以降出荷分はすべて品番がZT490C190G02となっている。さらに、三菱電機ホーム機器株式会社の説明によれば、「品名ROTARY-BRUSH*S2(品番ZT490C190G01)」及び「品名ROTARY-BRUSH*S2(品番ZT490C190G02)」はいずれも同一のものであり、この品番変更は吸水ローラー径の寸法公差の変更に伴うものとされているが(甲第39号証及び甲第95号証)、このことも2003年9月9日出荷分の検査成績書(甲第38-1号証)の下欄に「外径30.0 +0mm -1.0mm」と記載されているのに対し、同年10月1日以降出荷分の検査成績書(甲第3-3号証、甲第27-3号証、甲第28-3号証及び甲第29-3号証)では「外径30.0 +0.5mm -0.5mm」と記載されていることでも裏付けられている。
また、出荷指示伝票(甲第3-1号証、甲第27-1号証、甲第28-1号証及び甲第29-1号証)の納入先欄に「株式会社吉田製作所」と記載され、福山通運の送り状(甲第3-2号証、甲第27-2号証、甲第28-2号証及び甲第29-2号証)のお届け先が「(株)吉田製作所」となっているが、三菱電機ホーム機器株式会社の説明によれば、株式会社吉田製作所は三菱電機ホーム機器株式会社の生産外注先としていることにかんがみれば(甲第39号証及び甲第95号証)、三菱電機ホーム機器株式会社が納入場所として株式会社吉田製作所を指定したものと認められる。(なお、甲第38-1号証の出荷指示伝票はユーザー及び納入先ともに三菱電機ホーム機器とされているが、甲第38-2号証の福山通運の送り状はお届け先が(株)吉田製作所となっていることからも上記した両者の関係が窺える。)
そうすると、請求人トーヨーポリマー株式会社から株式会社吉田製作所への納入をもって三菱電機ホーム機器株式会社へ譲渡されたものいえる。このことは、出荷指示伝票(甲第3-1号証、甲第27-1号証、甲第28-1号証、甲第29-1号証及び甲第38-1号証)のユーザー欄に「三菱電機ホーム機器株式会社」又は「三菱電機ホーム機器」と記載されていることや検査成績書(甲第3-3号証、甲第27-3号証、甲第28-3号証、甲第29-3号証及び甲第38-3号証)の宛先が「三菱電機ホーム機器(株)」と記載されていることとも合致し、また三菱電機ホーム機器株式会社自身もその購入について認めていることから明らかである(甲第39号証及び甲第95号証)。

以上のことから、「三菱電機ホーム機器株式会社が製造する掃除機『ストロングサイクロン』用『ふきローラー(製品名『ROTARY-BRUSH*S2』)』」(公用物件1)を、「本件出願日である平成16年12月1日より前に請求人が三菱電機ホーム機器株式会社に対して製造販売した」ことが明らかであるから、当該行為を以て本件特許の出願前に公然実施していたと言うことができる。

被請求人は、「請求人の提示した証拠では、吉田製作所から三菱電機に納入されたことは証明されていない。出荷指示伝票(甲第3-1号証)にユーザー名が記載されていても、実際当該ユーザーに納入されたことは証明されない。当該ユーザーへの納入が取止めになったかも知れない。又、三菱電機に納入されたとしても、ふきローラーに使用されたことは全く証明されていない。甲第2号証によっては、納入品とふきローラーとの関係は全くわからず、他にも納入品とふきローラーとの関係を示す証拠はないからである。従って、吉田製作所への納入品がふきローラーとして販売されたことは全く証明されていない。」(平成22年10月5日付け上申書10頁4?13行)と主張する。
しかし、株式会社吉田製作所に納入されたことをもって三菱電機ホーム機器株式会社へ譲渡されたものと言えることは上記したとおりであり、また、株式会社吉田製作所に納入された品番ZT490C190G01及びZT490C190G02のものが三菱電機ホーム機器株式会社が製造する掃除機「ストロングサイクロン」用の「ふきローラー(製品名『ROTARY-BRUSH*S2』)」に使用されたものであることも上記したとおりであるから、被請求人の主張は受け入れられない。

(3)公用物件1の分析について
次に、「ふきローラー(製品名『ROTARY-BRUSH*S2』)」(公用物件1)が本件特許発明に該当するか否かを検討する。
請求人は、公用物件1が本件特許発明1、2及び6に該当することを立証するために、平成15年8月5日に作成された請求人トーヨーポリマー株式会社の技術資料「ROTARY-BRUSH*S2 色調見本」に貼付されていた見本品を分析したと主張している。すなわち、公用物件1として「ふきローラ(製品名『ROTARY-BRUSH*S2』)」を示す一方で、その分析は「ふきローラ(製品名『ROTARY-BRUSH*S2』)」ではなく甲第30号証として提出された「ROTARY-BRUSH*S2 色調見本」に貼付されていた見本品を使用するものであるから、「ふきローラ(製品名『ROTARY-BRUSH*S2』)」と甲第30号証「ROTARY-BRUSH*S2 色調見本」に貼付されていた見本品との同一性については慎重な立証が必要となる。
ところで、甲第30号証として提出された「ROTARY-BRUSH*S2 色調見本」は、分析に供された後のものであって、すでに見本品は貼付されていないものである。(なお、分析した後のものとする残骸が添えられている。)
この甲第30号証として提出された「ROTARY-BRUSH*S2 色調見本」に関し、請求人は、審判請求書において、「請求人が、平成15(2003)年8月27日、三菱電機ホーム機器株式会社に対して提供した公用物件1の限度見本(技術資料 ROTARY-BRUSH*S2 色調見本)が現存していたことから、この一部を用いて以下のとおり各種分析を行い、公用物件1の構成を確認した。」と主張するのみで、甲第30号証として提出された「ROTARY-BRUSH*S2 色調見本」がどこに、どのような状態で存在し、どのような経緯で発見され、誰がどのようにして分析会社である株式会社UBE科学分析センターへ持ち込んだのか一切説明していない。
このような状況では、甲第4-1号証ないし甲第4-4号証に係る株式会社UBE化学分析センターに持ち込まれ、分析に供された「ROTARY-BRUSH*S2 色調見本」(甲第30号証)に貼付されていた見本品と公用物件1との同一性はなんら担保されていない。

ところで、被請求人の「色調見本と台紙は、取り外し不能には作られていないので、請求人において、台紙上の色調見本の交換(貼り替え)は、容易に行える。 色調見本は三菱電機ホーム機器株式会社から借用したか、返却を受けたものなのか判別できないが、仮に借用したものとすれば、三菱電機ホーム機器の保有物件として分析に出すはずであるのに、そうなされていない。 返却を受け請求人の支配下に戻してから分析に出したとすれば、取り外し・交換の余地がある。分析結果報告書の宛先が請求人となっていては、客観性が損なわれる。」(答弁書9頁13?22行)との主張に対し、請求人は、「請求人が貼り替えなど行っていないことは、甲第4-1ないし4号証の分析に供した後の台紙を見れば一目瞭然である(甲第30号証 色調見本台紙)。すなわち、甲第30号証のどこを見ても、貼り替えを行った形跡は存在しないのである。」(口頭審理陳述要領書7頁9?15行)と主張するが、甲第30号証を見るかぎり、請求人の主張を裏付ける証拠は見当たらない。
また、請求人は「貼り替えの有無については、貼り替えをわざわざ請求人が行ったと認めるに足る合理的理由は一切示されておらず、理由がないことは明らかである。なお、被請求人は貼り替えの不存在は全く証明されていないとするが、消極的事実の証明責任(=ないことの証明)を請求人が負わなければならない理由はない。むしろ、被請求人において積極的に貼り替えを行ったという事実を証明する必要がある。審判手続の証拠の扱いに民事訴訟法の規定が準用される以上(特許法151条)、消極的事実の証明責任を負わせるには、法律上の推定規定(例えば、過失の推定についての特許法103条のような規定)が必要である。」(平成22年10月19日付け上申書12頁20行?13頁1行)と主張する。しかし、そもそも請求人は公用物件1の「ふきローラ(製品名『ROTARY-BRUSH*S2』)」をもって、本件特許発明が特許法第29条第1項第2号に該当すると申し立てているのであるから、公用物件1が本件特許発明1、2及び6の実施品であることを明確に立証する責任があり、そのために立証すべき事実として分析に供された「ROTARY-BRUSH*S2 色調見本」(甲第30号証)に貼付されていた見本品と公用物件1との同一性は不可欠のものといえる。被請求人の上記主張は、請求人において公用物件1が本件特許発明1、2及び6の実施品であるとの主要事実の立証が尽くされていないことを指摘するにすぎないものであり、被請求人が立証責任を負うべき筋合のものではない。

なお、甲第30号証の「ROTARY-BRUSH*S2 色調見本」には、三菱電機ホーム機器の株式会社の2003年8月27日付け受領印が押されている。そして、請求人代理人弁護士速見禎祥が行った「弁護士法第23条の2第2項に基づく照会」(甲第39号証)において「(5)色調見本について」で「貴社は、依頼者から、平成15(2003)年8月27日、『ROTARY-BRUSG*S2』色調見本を受領しましたか。」及び「貴社は、上記『ROTARY-BRUSH*S2』色調見本を現在も保管されていますか。」と照会したのに対し、三菱電機ホーム機器株式会社はそれぞれ「平成15年(2003年)8月27日、『ROTARY-BRUSH*S2』色調見本を受領している。」及び「現在も保管している。」(甲第95号証)と回答していることからすれば、2003年8月27日付けで三菱電機ホーム機器株式会社が受領した「ROTARY-BRUSH*S2 色調見本」は現在も三菱電機ホーム機器株式会社が現在も保管していることが明らかであるから、分析に供された「ROTARY-BRUSH*S2 色調見本」(甲第30号証)は、三菱電機ホーム機器株式会社が2003年8月27日に受領したものであるとするには大きな疑問がある。

(4)無効理由4のまとめ
そうすると、「ROTARY-BRUSH*S2 色調見本」(甲第30号証)に貼付されていた見本品を分析したとする株式会社UBE科学分析センターの分析結果(甲第4-1号証ないし甲第4-4号証)は公用物件1を正しく分析したものということができないので、その分析結果にかかわらず、公用物件1は本件発明1、2及び6を実施したものと認めることはできない。
したがって、無効理由4は採用できない。

(5)無効理由5について
無効理由5は、上記したとおり「本件請求項7に係る発明は、公用物件1に周知技術を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。」というものである。
しかし、上記したとおり、公用物件1は本件特許発明1及び2を実施したものということはできないから、ポリウレタン等の多孔質体をスワブとして用いることが本件出願時の周知技術にすぎないとしても(甲第5号証乃至甲第7号証)、本件特許発明1又は2を引用して特定する本件特許発明7は当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
したがって、無効理由5は採用できない。

第7.無効理由6及び7について
(1)無効理由6は、上記したとおり「本件請求項1及び2に係る発明は、請求人トーヨーポリマー株式会社が、本件特許出願前に日本国内において、有限会社幸信ゴム工業に対し、吸水ローラー用のロール『ルビーセル(A10-4022-520)』(公用物件2)を販売することで公然実施した発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができない。」というものである。
請求人は、公然実施された発明として「吸水ローラー用のロール『ルビーセル(A10-4022-520)』を示し、そして、公然実施に該当する事実として、当該「吸水ローラー用のロール」を「請求人が有限会社幸信ゴム工業に対し、商社である白石カルシウム株式会社を経由して製造販売した」ことを主張している。

(2)公然実施について
出荷指示伝票(甲第8-1号証)及び出荷案内書(甲第8-2号証)によれば、品名A10-4022-520が、請求人トーヨーポリマー株式会社から商社である白石カルシウム(株)を通じて(有)幸信ゴム工業への平成13年2月26日に出荷されたことが窺えるが、受領書(甲第8-3号証)には受領印等の(有)幸信ゴム工業が受け取ったことを確認できる記載がない。
ところで、請求人代理人弁護士田上洋平作成の報告書(甲第9号証)には、以下の記述がある。
「第1 幸信ゴムにおける引き取り
……
2 同日午前10時44分、幸信ゴム(住所:……)に到着し(写真1)、同社を訪問した。
すると、幸信ゴム代表者清水育男氏(以下『清水氏』という。)(資料1 名刺)が応対し、貴社との取引開始に至るいきさつ等について会話を行った。その後、貴社が幸信ゴムに納入し、未開封であるというポリウレタンスポンジの所在を尋ねたところ、ダンボール箱のまま同社のアングル棚の上に無造作に積まれている状態であった(写真2-1)。清水氏によると、貴社が納期に間に合わなかったため、幸信ゴムの顧客にも納入できず、そのまま在庫として放置されていたとのことであった。
3 アングル棚の上に置かれている状況は、写真のとおりであり、特に開封された痕跡は見あたらなかった(写真2-2ないし8)。……
4 アングル棚から降ろしたところ、箱の上面には送り状と『出荷案内書在中』『(有)幸信ゴム工業』と記載されている貴社の封筒が貼付されていた(写真3-1ないし3)。
……
当該ダンボール箱の6面を確認したところ、いずれも透明なテープによって密閉され、当該テープが剥がされたり、再度貼り直したと認められる形跡は存在しなかった(写真3-4ないし27)。
その他、開封済みである貴社納入のポリウレタンスポンジの在庫も幸信ゴムに存在したが、上記の未開封品のみ譲り受け、午前11時33分、幸信ゴムを後にした。」
「第3 株式会社UBE科学分析センターへの分析依頼
……
5 続いて、当職は同段ボール箱の上面に貼付されていた封筒の中身を確認するべく、同封筒を開封したところ、貴社作成にかかる幸信ゴム宛の『受領証』、『出荷案内書』及び『ローラーチューブ出荷検査票』が封入されていた。(写真9-1ないし6)。」
また、有限会社幸信ゴム工業代表取締役清水育男作成の平成22年8月10日付け陳述書(甲第33号証)には、次の記述がある。
「トーヨーポリマー株式会社(以下『トーヨーポリマー』といいます。)から平成13年2月ころに納品を受けた、ポリウレタンスポンジ性の吸水ローラー『A10-4022-520』(以下『本製品』といいます。)について、次の通り陳述いたします。」
「本製品につきましても、同じように顧客からの注文に応じて、軸挿入及び外注による研磨加工後顧客に納入するために、白石カルシウム株式会社を通じてトーヨーポリマーに対して発注した製品でした。しかしながら、トーヨーポリマーから本製品が弊社に納入された時には、既に納期が過ぎており、弊社も顧客に対して納期どおり納入することが不可能であったため、そのままストックとして弊社のアングル棚の上に放置していたものでした。そのため、納品書も開封せずにそのまま放置してしまったのだと思います。
なお、本製品の代金はおそらく請求書が白石カルシウム株式会社から発行されていると思いますので、請求書に従って支払っていると思いますが、ずいぶんと前のことなのではっきりとは覚えていません。」

ここで、甲第9号証の報告書の第3の5項に記載されている「受領証」(なお、甲第8-3号証からみて「受領書」の誤記と認める。)及び「出荷案内書」がそれぞれ甲第8-3号証及び甲第8-2号証に該当するものと認められるから、請求人が甲第8-1号証ないし甲第8-3号証により公然実施していたと主張する公用物件2に係る「A10-4022-520」(なお、これが「ルビーセル」と称されるものであることはなんら立証されていない。)は、当該報告書(甲第9号証)の第1の2項ないし4項の記載からみて、有限会社幸信ゴム工業に配送された後、箱を開封しないまま有限会社幸信ゴム工業のアングル棚の上(甲第9号証の写真2-1ないし2-8によれば、アングル棚の最上部)に放置されていたものと認められるが、その受領書が未開封の箱とともに有限会社幸信ゴム工業にそのまま残っていたことからすると、公用物件2の所有権が正式に有限会社幸信ゴム工業に移転されたか否か不明と言わざるを得ない。
そして、公用物件2が有限会社幸信ゴム工業において放置されることとなった原因は、甲第9号証の報告書及び甲第33号証の陳述書の記載から、請求人トーヨーポリマー株式会社から有限会社幸信ゴム工業への納入が納期に間に合わなかったことにあることにあるのは明らかであり、このような請求人トーヨーポリマー株式会社に瑕疵があると考えられる状況においては、その代金の支払いも行われなかったと考えるのが自然であり、この点につき有限会社幸信ゴム工業代表取締役清水育男は、甲第33号証の陳述書において、代金の支払いについて「はっきりと覚えてない」旨述べ、代金の支払いを明確に肯定していないことからも窺える。
そうすると、この平成13年2月22日付け出荷指示書(甲第8-1号証)に基づく「A10-4022-520」の出荷をもって、同月26日付けで当該「A10-4022-520」が請求人トーヨーポリマー株式会社から有限会社幸信ゴム工業へ譲渡されたということはできない。
この取引について、有限会社幸信ゴム工業代表取締役清水育男は、甲第33号証の陳述書において、「トーヨーポリマーから本製品が弊社に納入された時には、既に納期が過ぎており、弊社も顧客に対して納期どおり納入することが不可能であった」と述べているが、出荷指示伝票(甲第8-1号証)の作成日は「13年2月22日」であり、納期は「13年2月即日」、出荷月日は「13年2月26日」と記載されている。請求人トーヨーポリマー株式会社の受注日及び有限会社幸信ゴム工業の受領日は定かではないが(甲第33号証の陳述書においても甲第40号証の陳述書においても有限会社幸信ゴム工業代表取締役清水育男は「平成13年2月頃に納品を受けた」としか述べておらず、受領日についてはまったく立証されていない。)、このような状況で「トーヨーポリマーから本製品が弊社に納入された時には、既に納期が過ぎており」、「弊社も顧客に対して納期どおり納入することが不可能であった」というのは、どのようなスケジュールで発注・納入が行われたのか理解できず、その陳述内容をそのまま受け入れることはできない。
その上、甲第9号証の報告書及び甲第33号証の陳述書によれば、公用物件2の入っていた箱は、平成13年2月26日に納入されてから平成21年11月27日に請求人代理人弁護士田上洋平が引き取りに行くまでの約8年9月の間、有限会社幸信ゴム工業のアングル棚の最上部に放置されていたものであるが(甲第9号証の写真2-1ないし2-8)、その箱の上の面にほこりをかぶっていた形跡がなく(甲第9号証の写真3-1ないし3-3、3-5、3-7ないし3-10)、また、箱の底面(甲第9号証の写真7-14ないし7-19、7-21及び7-22)と比較してその他の面が日焼けした形跡がない。そうすると、そもそも公用物件2の入っていた箱が約8年9月の間有限会社幸信ゴム工業のアングル棚の最上部に置かれていたものであることについて合理的な疑いが生じる。
また、有限会社幸信ゴム工業代表取締役清水育男は、甲第33号証の陳述書において、公用物件2を約8年9月もの間放置(保管)していた理由をまったく述べていないし、請求人もこの点について何も説明していない。公用物件2はすでに使用するあてもないと考えられるものであるから、請求人トーヨーポリマー株式会社から有限会社幸信ゴム工業が正しく譲渡を受けていたものであれば、有限会社幸信ゴム工業の判断で適当な時期にその処分ができるはずである。請求人は「デッドストックとして保管しておいた」(口頭審理陳述要領書10?11頁の「6-3-2 被請求人の主張はいずれも失当」の項)と主張するが、約8年9月の長期にわたってデッドストックを保管する理由は不明のままである。
これらのことにかんがみても、公用物件2が請求人トーヨーポリマー株式会社から有限会社幸信ゴム工業へ販売されたものであることを受け入れることができない。

なお、請求人は「甲第8-1号証と、甲第9号証における公用物件2が収められていたダンボール箱との間に、品名、数量、ロット、出荷日、運送便、納入先、伝票番号全てにおいて齟齬が存在しないことからすれば、公用物件2が平成13年2月に有限会社幸信ゴム工業に対して販売されたものであることは明白である。」(口頭審理陳述要領書10頁7?10行)と主張しているが、そもそも売買契約で売買対象物を売主が買主に納入しただけではその所有権は移転したとはいえず、したがって「譲渡」されたものとはいえない。そのためには代金の支払いを立証することが不可欠である。
また、請求人は「受領書が返送されていないことをもって、販売でないとするのは暴論である。受領書を返送しなければ売買(譲渡)が成立しないなどという商慣習や経験則など存在せず、まさに被請求人独自の見解というよりほかない。」(口頭審理陳述要領書11頁最下行?12頁2行)とか、「公用物件2が請求人から白石カルシウム株式会社を通じて幸信ゴムに納入したことは、特許法第2条3項1号にいう『譲渡』に該当することは明白である」と主張しているが、請求人は公然実施を立証するために売買に基づく譲渡の事実を立証する必要があるのにもかかわらず、受領書が返送されていないことは否定せず、代金支払いの事実も積極的に立証していない。これでは、有限会社幸信ゴム工業が公用物件2を受領した事実もその代金を支払った事実も立証していないのであるから、他のどのような証拠に基づき売買(譲渡)の成立を立証したというのか理解できない。

(3)無効理由6のまとめ
以上のことにかんがみれば、請求人が提示する公用物件2を、平成13(2001)年2月26日に、請求人が商社である白石カルシウム株式会社を経由して有限会社幸信ゴム工業に対し販売した事実を認めることができないので、当該公用物件2は本件特許の出願前に公然実施したものということはできない。
そうすると、公用物件2を分析したとする株式会社UBE科学分析センターの分析結果(甲第10-1号証ないし甲第10-4号証)にかかわらず、公用物件2は本件発明1及び2を本件特許の出願前に公然実施したものと認めることはできない。
したがって、無効理由6は採用できない。

(4)請求人の主張について
請求人は、平成22年10月5日付け上申書において、以下のとおり述べている。
「甲第41号証ないし甲第93-2号証は、請求人から白石カルシウム株式会社を通して幸信ゴムに販売した製品の出荷指示伝票及び送り状控又はお客様控である。出荷指示伝票及び送り状又はお客様控とに同一の書証番号を付して、枝番としているものは同一の書証番号を付した出荷指示伝票に基づく製品の送り状ということである。このことは、出荷指示伝票の出荷月日欄及び問い合わせ欄の番号と、送り状の年月日及び伝票番号が同一であることから明らかである。
公用物件2と全く同一の製品は存在しないが、『A10』というポリウレタンスポンジの素材としての性質を示す部分は同一であり(甲第94号証 陳述書(伊原氏))、単にサイズ(外径・内径・長さ)が異なるにすぎない。
すなわち、請求人から白石カルシウム株式会社を通して幸信ゴムには、公用物件2と同一組成のポリウレタンスポンジ製吸水ローラーが、長期間にわたり反復継続して納入されているのである。
なお、甲第41号証ないし甲第93-2号証は、公用物件2が公然実際されたことを推認させる間接事実として、公用物件2と同一素材のポリウレタンスポンジ製吸水ローラーを、長期間にわたり反復継続して幸信ゴムに納入されていた事実を立証するための間接証拠であり、その追加提出が請求の理由の要旨変更にあたらないことは明白である。」(10頁5?22行)
しかし、無効理由6に関連し、請求人は審判請求書において、「請求人は、本件特許出願日前である平成13(2001)年2月26日、商社である白石カルシウム株式会社を経由して、有限会社幸信ゴム工業に対し、吸水ローラー用のロール『ルビーセル(A10-4022-520)』(公用物件2)6本を販売」(17頁3?8行)したことをもって、特許法第29条第1項第2号の規定(公然実施)に該当するとの無効理由を申し立てていたのであるから、新たに甲第41号証ないし甲第93-2号証を提出して、別の日に別の製品(少なくとも「A10-4022-520」が付された製品は同号証の中にはない。)が請求人トーヨーポリマー株式会社から商社である白石カルシウム株式会社を通じて有限会社幸信ゴム工業に納入されていた事実は、この無効理由6とはなんら関係のないものである。そして、これらの事実は公用物件2が平成13年2月26日に請求人トーヨーポリマー株式会社から有限会社幸信ゴム工業に譲渡されたことを間接的に立証するものでもない。
なお、甲第41号証ないし甲第93-2号証により立証される事実をもって、公然実施を主張するのであれば、これは請求書の要旨を変更するものであるから、特許法第131条の2第1項及び第2項の規定に照らし許されないものである。

(5)無効理由7について
無効理由7は、上記したとおり「本件請求項6及び7に係る発明は、公用物件2に周知技術を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。」というものである。
しかし、上記したとおり、公用物件2は本件特許発明1及び2を本件特許の出願前に公然実施したものということはできないから、ポリウレタン等の多孔質体を吸水ローラーやスワブとして用いることが本件出願時の周知技術にすぎないとしても(甲第5号証ないし甲第7号証並びに甲第11号証ないし甲第13号証))、本件特許発明1又は2を引用して特定する本件特許発明6及び7は当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
したがって、無効理由7は採用できない。

第8.無効理由8について
(1)無効理由8は、上記したとおり「本件請求項1、2、6及び7に係る発明は、被請求人株式会社伏見製薬所が、本件特許出願前に千葉市に所在する幕張メッセで開催された『セミコン・ジャパン2004』において、展示し、販売の申し出を行うことで公然実施した『テクノポーラスローラー』(公用物件3)に周知技術を適用することで、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。」というものである。
請求人は、公然実施された発明として「テクノポーラスローラー」(公用物件3)を示し、そして、公然実施に該当する事実として、当該「テクノポーラスローラー」を「被請求人株式会社伏見製薬所が、本件特許出願前に千葉市に所在する幕張メッセで開催された『セミコン・ジャパン2004』において、展示し、販売の申し出を行った」ことを主張している。

(2)公然実施について
まず、本件特許に係る特許出願が出願された日時は、特許庁長官の証明書(甲第16号証)によれば、平成16年12月1日15時24分であることが明らかである。
ところで、「セミコン・ジャパン2004 出展社案内」(甲第14号証)によれば、「セミコン・ジャパン2004」は幕張メッセにおいて2004年12月1日から同月3日の10時から17時に開催されたことが明らかであり、同号証の209頁の「(株)伏見製薬所」の欄には、「[出展製品]テクノポーラスローラー(ポリウレタン及びポリオレフィン)、……」及び「[出展製品の見どころ]独自の連続微細気孔化技術により新規なポリウレタン、ポリオレフィン系スポンジを開発しました。商品名テクノポーラス^((R))。ロール、シート、スワブ、ロッド等の形状があり、吸水性、耐薬品性、耐溶剤性、清浄性、柔軟弾力性等に優れております。……」と記載されている。さらに、甲第15号証は、請求人トーヨーポリマー株式会社の東京支店営業1課の堀則行が2004年12月1日18時53分に送信した「セミコン・ジャパン2004」の被請求人株式会社伏見製薬所のブースを見学し、「テクノポーラスローラー」等が展示されていたことを請求人トーヨーポリマー株式会社の他の従業員に知らせる電子メールである。
これらの証拠から、2004年12月1日から同月3日に開催された「セミコン・ジャパン2004」において「テクノポーラスローラー」が展示されていた事実は窺えるとしても、甲第15号証の電子メールの送信日時が「2004年12月1日18時53分」となっていることからすると、本件特許の出願日時である2004年12月1日15時24分より前に「テクノポーラスローラー」が展示されていたことまでは立証されていない。

(3)公用物件3について
請求人は、「セミコン・ジャパン2004」において、展示し、販売の申し出を行った「テクノポーラスローラー」を公用物件3としているが、そもそも、当該「テクノポーラスローラー」自体は証拠として提出されていない。提出されているのは、甲第17号証の「テクノポーラス^((R))ローラー」のカタログのみである。
そして、請求人トーヨーポリマー株式会社の中央研究所知財管理室竹本和生作成の2009年12月21日付け「実験報告書」(甲第18号証)においても、測定対象は甲第17号証の「テクノポーラス^((R))ローラー」のカタログに記載されていた「気孔拡大写真」であって、「テクノポーラスローラー」自体を自ら分析したものではない。
すなわち、請求人は公用物件3の「テクノポーラスローラー」を直接分析するのではなく、甲第17号証の「テクノポーラス^((R))ローラー」のカタログに記載されていた「気孔拡大写真」を分析して、その結果を公用物件3のものと主張しているが、甲第17号証の「テクノポーラス^((R))ローラー」のカタログに記載されていた「気孔拡大写真」が公用物件3そのものであることについては、請求人はなんら立証していない。
なお、甲第15号証によれば、請求人は「セミコン・ジャパン2004」において「テクノポーラスローラー」のサンプルを入手しているものと認められるから、その分析は可能なはずであり、その分析ができないことについてやむを得ない事情があったことも主張していない。
ところで、甲第14号証や甲第17号証によれば、「テクノポーラスローラー」には「ポリウレタン」製のものと「ポリオレフィン」製のものがあることが明らかであるが、「セミコン・ジャパン2004」において実際に展示され、販売の申し出が行われた「テクノポーラスローラー」が、どのような材質のものであったかは特定されておらず、不明である。甲第15号証によっても、その点については明らかにされていない。
なお、請求人は、「被請求人が『セミコン・ジャパン2004』において頒布した公用物件3のカタログ(甲第17号証[テクノポーラスローラーカタログ])によれば、『一般物性』として『材質』『ポリウレタン』と記載されている。従って、公用物件3は、ポリウレタンからなる。」(審判請求書24頁最下行?25頁4行)と主張するが、公用物件3とは甲第17号証のカタログではなく、「セミコン・ジャパン2004」において実際に展示され、販売の申し出が行われた「テクノポーラスローラー」であるから、甲第17号証のカタログに、その材質の一つとして「ポリウレタン」が記載されていることをもって、公用物件3の材質を「ポリウレタン」と特定することはできない。公用物件3がポリウレタン製であると認定するためには、「セミコン・ジャパン2004」において実際に展示され、販売の申し出が行われた「テクノポーラスローラー」が甲第17号証のカタログに「ポリウレタン」製と記載された型番「U-16W」又は「U-26W」のものであったことを立証する必要がある。
なお、被請求人は、甲第17号証又は乙第4号証の「テクノポーラス^((R))ローラー」のカタログに記載されたものは被請求人が出願した別の特許出願(特願2005-37689)に係る発明を実施したものであると主張していることから、当該出願の公開公報(乙第5号証)の記載についても精査してみるに、同号証にはポリウレタン系のものとポリオレフィン系のものが両方とも実施例として具体的に記載されていることが明らかであり、この点からも当該カタログに記載された「気孔拡大写真」がポリウレタン系のものであると認めることはできない。
そうすると、請求人は、公用物件3が具体的にどのようなものであるのかを特定しておらず、そのような公用物件3に基づいて進歩性の判断をすることはできない。

(4)小括
以上のことからすると、請求人は、公用物件3が、本件特許の出願日時前に、展示し、販売の申し出がされたものであることを立証していないから、公用物件3は本件特許の出願前に公然実施したものということはできず、したがって、公用物件3は特許法第29条第1項第2号に掲げる発明とすることはできない。
そのうえ、公用物件3が記載されたとするカタログ(甲第17号証及び乙第4号証)及び当該カタログの写真を分析したとする請求人トーヨーポリマー株式会社中央研究所知財管理室の竹本和生作成の実験報告書(甲第18号証)並びにその他の証拠によっても、公用物件3の材質がポリウレタンであることについては明らかにされていない。
そうすると、公用物件3に基づいては特許法第29条第2項の規定を適用することができず、また、公用物件3がポリウレタン製であることを前提とする点においてすでに誤りがあることから、ポリウレタン等の多孔質体に界面活性剤を含有させることが周知技術であること(甲第19号証ないし甲第24号証)を参酌するまでもなく、請求人の主張する公用物件3に基づく進歩性阻却事由も成り立たない。
したがって、無効理由8も採用できない。

第9.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1、2、6及び7にかかる発明についての特許は、いずれも特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、本件請求項1、2、6及び7に係る発明についての特許は無効とすべきものである。
審判に関する費用については、同法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-14 
結審通知日 2011-01-18 
審決日 2011-01-31 
出願番号 特願2004-348452(P2004-348452)
審決分類 P 1 123・ 121- Z (C08J)
P 1 123・ 536- Z (C08J)
P 1 123・ 537- Z (C08J)
P 1 123・ 112- Z (C08J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内田 靖恵  
特許庁審判長 松浦 新司
特許庁審判官 小林 均
藤本 保
登録日 2007-03-30 
登録番号 特許第3935907号(P3935907)
発明の名称 連続気孔弾性体及びその製造方法、並びに吸水ローラー及びスワブ  
代理人 岩坪 哲  
代理人 速見 禎祥  
代理人 田上 洋平  
代理人 神野 直美  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ